高橋知典(弁護士)

 今回の日本大アメリカンフットボール部の会見は、宮川泰介選手側の会見に比べ、本当にお粗末なものであった。アメフト部の主張は、部活動でハラスメント問題が起きた際によく見られる典型的な学校側の言い訳でしかない。

 実際、内田正人前監督は「私の指示ではございません」と述べ、井上奨(つとむ)前コーチも、「クオーターバック(QB)をつぶしてこい」とは言ったが、「相手のケガを目的としては言っていない」と強調した。これはまさに、言葉の解釈で言い訳して逃れようとする典型例といえるだろう。

 大学スポーツの現場は、指導者次第で部内の環境が変わるため、時には常識を超えたものになりやすい。選手たちはみんな若く、監督ら指導者の力を信じて入部するだけでなく、チームのために多大な献身を繰り返し、指示に応じて過酷な練習を繰り返す特殊な環境だからだ。

 こうした環境で、選手は監督の指示なら何でも従うのが当然と思い込むようになる。その上、選手として結果を出すには、監督にどうにかして認めてもらい、試合に出させてもらう必要がある。また、スポーツ特待で大学に入学した場合、活躍の場も就職の機会も部活動の大きな影響を受けるため、逃げ出すことが難しいのも事実だ。

 その中で、試合などで思い余って起きる不祥事に対し、学校がよく切り出すのが「そんな指示は出しておらず、選手が指示の解釈を誤った」という言い訳である。学生を切り捨てることで、部や監督への責任追及を回避しようとするのである。
 
 そもそも本件の危険タックル行為は世間の批判を集めただけではなく、傷害罪が成立し刑事責任を問われる可能性がある。人を傷つけるような危険行為であっても、スポーツでその行為が許されている理由は、スポーツ中の行為は「正当業務行為」とされ、違法性がないと考えられているからである。
関西学院大学との定期戦での反則行為の問題で会見する、日本大学アメリカンフットボール部の内田正人前監督=2018年5月23日、東京都千代田区(松本健吾撮影)
関西学院大学との定期戦での反則行為の問題で会見する、日本大学アメリカンフットボール部の内田正人前監督=2018年5月23日、東京都千代田区(松本健吾撮影)
 今回のような悪意のあるルール違反については、もはやスポーツの域を越えるただの暴力であり、正当業務行為とはいえない。傷害罪が成立する場合、タックルを行った選手は実行者であることから、刑事責任を回避することは困難だろう。

 これに対し、監督ら指導者の刑事責任に関しては、選手にルール違反のタックルを指示して実行させたといったような状況であれば、傷害罪の共謀共同正犯に該当する可能性がある。

 ただ、内田前監督は会見で「信じていただけないと思うが、私の指示ではございません」と改めて関与を否定している。その一方で「フィールドで起こったことなので、すべては私の責任です。申し訳ございません」とも言っている。