終盤国会は安倍政権内で“疑惑の主人公”がシーソーゲームのように入れ替わる展開だ。〈「そういう新しい獣医大学の考えはいいね。」〉──安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎・加計学園理事長と面会(2015年2月25日)した際の言葉が記述された「愛媛県文書」が公開されると、世論の批判の矛先は明らかに変わった。

 それまでは森友文書の改竄問題と相次ぐ失言で麻生太郎・副総理兼財務相が集中砲火を浴びていたが、一転、“やっぱりそうだったのか”と国民の疑惑の目は安倍首相の加計問題に向けられた。首相は否定に躍起になった。

「指摘の日に理事長と会ったことはない。念のため記録を調べたが確認できなかった。獣医学部新設について加計氏から話をされたこともないし、私から話をしたこともない」

 女房役の菅義偉・官房長官も「首相が説明した通りだ」とかばったものの、安倍・加計会談が行なわれたか否かの証拠となる首相官邸への来訪者を記録した入邸記録については「業務終了後速やかに廃棄される取り扱いになっている」と苦しい言い訳を繰り出した。

 都合の悪い記録をよく捨ててしまう政権であるが、その説明は結果的に「会っていない根拠となる記録の存在」の信憑性という、新たな「安倍疑惑」まで招いてしまった。

 そんな大慌ての2人の様子をみてほくそ笑んでいるのが、バッシングを浴びていた麻生氏だ。安倍首相の「加計問題」に注目が集まれば、財務省が舞台の「森友文書改竄問題」が霞み、失言続きの麻生氏への批判も薄まる。“加計は俺の友達じゃねーからな”というわけだ。
2018年4月、政府与党連絡会議に臨む(左から)麻生太郎副総理兼財務相、安倍晋三首相菅義偉官房長官ら(斎藤良雄撮影)
2018年4月、政府与党連絡会議に臨む(左から)麻生太郎副総理兼財務相、安倍晋三首相菅義偉官房長官ら(斎藤良雄撮影)
 だが、それも束の間、財務省が「廃棄した」と説明してきた森友との交渉記録の存在が発覚し、国会に提出されると、再び麻生氏が批判の矢面に立たされた。それをかわすためなのか、麻生周辺からはこんな声もあがっている。

「入邸記録を確認できなかったなんて、菅さんはあんなこと言って本当に大丈夫かね」

 財務省は“首相をかばって証拠を隠してもバレたら致命傷になる”ことを思い知らされた。「次に批判が向かうのは菅だ」というニュアンスが感じられる。

 本来なら、結束して批判の火消しにあたらなければならない安倍首相、麻生氏、菅氏の3人が、互いに団扇を持って“批判の火の手はあっちに行け”と煽り合いを始めている光景である。

 それには理由がある。「最強の官庁」と呼ばれる財務省の次期次官人事を巡るパワーゲームだ。現在、財務省では改竄問題で佐川宣寿・国税庁長官が辞任したのに続いて福田淳一・事務次官もセクハラ問題で辞任。国会会期中にトップ2人が1か月以上にわたって空席という異常事態が続いている。