藤江直人(ノンフィクションライター)

 サプライズのない顔ぶれが、ひな壇の中央に座った日本代表の西野朗監督から一人ずつ読み上げられていく。むしろ誰の目にもコンディションが不十分に映った岡崎慎司(レスター・シティ)、千葉県内で行われてきた合宿で別メニュー調整を強いられた乾貴士(エイバル)が選出されたことが、逆の意味でサプライズと言ってよかったかもしれない。

 都内のホテルで5月31日午後4時から行われた、ワールドカップ・ロシア大会に臨む日本代表メンバー23人の発表会見。ガーナ代表に0-2の完敗を喫した前夜のガーナ代表とのワールドカップ壮行試合でベンチ入りした26人から、浅野拓磨(シュツットガルト)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)、井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)の3人が選外となった。

 浅野と井手口は日本代表が6大会連続6度目のワールドカップ出場を決めた昨年8月31日のオーストラリア代表とのアジア最終予選でともにゴールをゲット。前者は23歳で、後者は21歳。西野監督をして「将来有望な若手」と言わしめる存在だったが、所属クラブで出場機会を失っている状況がネックとなり、本大会までにゲーム勘などが戻らないと判断された。

 もっとも、ガーナ代表戦で与えられた背番号を見れば、22歳の三竿を含めた、リオデジャネイロ五輪世代の3人の序列が当初から下だったことがわかる。浅野が「25」番、三竿が「26」番、井手口が「27」番で、ガーナ代表戦でピッチに立ったのは途中出場の井手口だけだった。

 けがで無念の離脱を強いられた青山敏弘(サンフレッチェ広島)が背負う予定だった「6」番を空き番号として、ガーナ戦ではGK川島永嗣(FCメス)の「1」番から順に26人が背番号を与えられていった。この時から出来上がっていた経験と実績が重視された序列が、最後まで覆らなかったことになる。

 一方で同じくガーナ代表戦に出場せず、当落線上にいると見られた植田直通(鹿島アントラーズ)が23人入りを果たした。ガーナ代表戦で採用された3バックを本大会でも導入する、という見方に立てば左から槙野智章(浦和レッズ)、長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)、吉田麻也(サウサンプトン)で組む主力組をバックアップする選手が必要になってくる。
ガーナ戦に臨む日本イレブン。(前列左から)長谷部、長友、宇佐美、大島、山口蛍、(後列左から)GK川島、原口、吉田、槙野、大迫、本田=2018年5月30日、日産スタジアム(撮影・中井誠)
ガーナ戦に臨む日本イレブン。(前列左から)長谷部、長友、宇佐美、大島、山口蛍、(後列左から)GK川島、原口、吉田、槙野、大迫、本田=2018年5月30日、日産スタジアム(撮影・中井誠)
 槙野のバックアップが昌子源(鹿島アントラーズ)、長谷部のそれが遠藤航(浦和レッズ)、吉田のそれが植田と考えれば合点がいく。しかも遠藤は右ストッパー、ボランチ、4バックで戦う場合の右サイドバックと複数のポジションを務められる、いわゆる「ポリバレント(多様性)」のある選手でもある。

 左右のウイングバックおよびサイドバックでプレーできる酒井高徳(ハンブルガーSV)、もともとはサイドアタッカーながら今回の合宿では右ウイングバックでもプレーした原口元気(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)、フォワードに加えて一列下のシャドーも務められる岡崎らを含めて、ポリバレント系の選手を多く招集したのも、本大会中に起こり得る不測の事態を想定したからに他ならない。