職員から見れば二重行政だろうが三重行政だろうが、それぞれはがんばっているのだからいいでしょうと考えるのは当然かもしれない。だからこそ、政治家が大都市大阪の広域行政と基礎自治機能の最適化の方向性を示し実行しなければならない。

 ゆえに、私が知事に就任してから6年半、今の大阪に府市の対立、「不幸せ」と揶揄される二重行政はない。2011年の大阪府知事選と大阪市長選のW選挙で橋下徹氏が市長、私が知事になり、まず府市の行政を一体で進めるための行政組織「府市統合本部」を立ち上げたからだ。

 そして、知事が本部長、市長が副本部長に就任して府市の担当部局で合意できない場合は、両者が協議して本部長である知事が最終的に意思決定するというルールを定めた。

 もちろん、私と橋下市長が目指す大阪の将来像に違いはなかったので、広域行政一体化は一致しているが、これまでそれぞれで実施してきた行政施策を現実に一体で実施するとなると、担当部局同士では具体的な予算の配分や人員配置で折り合わないことは頻繁にあった。

 例えば、広域インフラである高速道路や鉄道、JR大阪駅前の再開発「うめきた二期」においては府市で一緒に整備する方向は私と橋下市長で確認していた。だが、うめきた二期開発の公園整備の財源負担となると、大阪府財政当局は大阪市が維持管理する公園に大阪府が財政負担する理屈がないと主張した。
「うめきた2期」再開発地区(手前)=大阪市北区
「うめきた2期」再開発地区(手前)=大阪市北区
 さらに、大阪市を中心に放射線状の鉄道ネットワークを横につなぐ大阪モノレールの延伸については、その大部分が大阪市以外に路線建設されるので、大阪市が財源負担に難色を示すといった具合である。

 このような場合は、知事、市長がそれぞれの事務方の言い分を聞いて話し合い、最終的に府市統合本部会議で意思決定する。うめきた二期開発公園事業と大阪モノレール延伸の財政負担は1対1とすることとしたが、これで事業の段取りが全て整ったわけではない。府市統合本部の意思決定はあくまで大阪府と大阪市の幹部の意思決定であり、最終的にそれぞれの議会の議決が組織の意思決定となる。

 一方で、この6年半の間に、行政組織が合意しても議会の同意に長時間を要したり、同じ政党なのに府議会と市議会で意見が異なり暗礁に乗り上げている案件もある。

 政府が進めていた国立大学の法人統合の議論もその一例だ。少子化によって大学生人口が減少するため、今後定員割れする大学が多数にのぼることが予想される。だが、言うまでもなく、大学はイノベーションの拠点であり、生み出された成果が経済成長に直結する。

 だからこそ税金を投入して維持する値打ちがあるのだが、学生が減少し経営が逼迫(ひっぱく)すれば新しい研究もままならず、税金投入の価値はなくなる。これは国立や公立だけでなく、私学でも同様であり、大阪府と大阪市の府立大と市立大も例外ではない。府立大と市立大の運営負担金は年間百億円規模にのぼるが、世界の大学と競争できる環境とは言えない。

 そこで、府立大と市立大を統合し公立大学として学生数最大規模、関西で唯一の獣医学部と医学部を有する希少価値の高い大学を目指すことにした。この再編は、2011年から議論をスタートし、18年4月から府立大と市立大の経営法人が統合することとなったが、この法人統合も同じ政党が府議会と市議会で考えが一致せず、長時間を要した。

 府議会では17年9月議会で維新、公明、自民が賛成、民進(当時)と共産が反対したが、賛成多数で可決した。一方、大阪市議会は半年遅れの18年2月議会で可決成立したが、維新と公明が賛成、自民と共産は反対した。

 この議決の会派の態度に象徴されるのが、大阪の自民の考えは府議会と市議会でバラバラだということだ。自民大阪府連合会という同じ組織に所属しながら、府議会と大阪市議会は意見をまとめられなかったのだ。