溝畑宏(大阪観光局長、元観光庁長官)

 海外からの観光客が急増している大阪が世界を代表する国際観光都市になるには、安心・安全・快適な宿泊環境を伴う世界トップレベルの受け入れ環境を実現することが重要な課題である。

 そのため、関西、特に大阪の宿泊においては、歴史ある旅館や老舗ホテル、高級ホテルなどに、宿泊施設の整備、充実を進めていただいている(「大阪主要13ホテル稼働率92・9%」2018年日経新聞まとめ)。

 しかし、新しく生まれた民泊という分野においては、その実態が十分に把握されていないのが現状であり、それゆえにヤミ民泊の騒音やゴミ投棄など、多くの問題が発生している。これらの問題は、私の推進する安心・安全・快適な宿泊環境とはまさに正反対のものだ。違法または不当な民泊については、監督や規制を強化すべきであると思う。

 ただ、民泊新法施行を迎えるにあたり、大阪府は良質で安心・安全・快適な民泊づくりを推進している。大阪市が民泊の国家戦略特区に認定されて以降、関連する条例を制定し、対策に取り組んできた。世界トップレベルの受け入れ環境を実現することだけでなく、現代における多様な旅行スタイル、楽しみ方を提供する上で幅広い選択肢を準備することが重要だからだ。

 大阪における2017年の来阪外国人観光客数は1111万人を超え、われわれの調査によれば、このうち20%程度は民泊を利用している。このことは単純な宿泊施設不足が原因ではなく、新たな旅行における楽しみ方の一つになっているのだと考えられる。

 これまで宿泊と言えば、ただ眠るだけの場所という認識だったものが、よりその国の文化や地域の歴史を理解し楽しみたいという「思い」が形になった事例の一つが民泊だろう。
訪日外国人を始め多くの観光客で賑わう大阪屈指の繁華街・ミナミ=大阪市中央区(須谷友郁撮影)
訪日外国人を始め多くの観光客で賑わう大阪屈指の繁華街・ミナミ=大阪市中央区(須谷友郁撮影)
 そもそも、良質な民泊とは、家主と一緒になって地元の文化・歴史を知り、地元の食材を食べ、うまい酒を飲みながら地元の人々とざっくばらんに話すことができ、特別な空間として思い出を残せるような場だと考えている。

 私はフランスとイタリアに住んだ経験があり、地域の人々は自らの文化や伝統に誇りを持っていた。大阪においても伝統・文化・芸術・食・スポーツなどに誇りを持つべきである。