河治良幸(サッカージャーナリスト)

 ロシアW杯の開幕戦は5−0という結果が示す通り、開催国の圧勝だった。試合のデータを見るとボール保持率はサウジアラビアが60%、パス成功率も86%で76%のロシアを大きく上回っている。しかしながら、試合内容を見るとそうしたデータは逆説的な意味を物語っているように受け取れる。

 開幕前には3バックが予想されたロシアだが「4−3−2−1」のフォーメーションで「4−1−4−1」のサウジアラビアと対峙(たいじ)してきた。前半の12分に左コーナーキックの流れからMFゴロビンがクロスを入れて、MFガジンスキーがヘッドで合わせて早くも先制したロシアは高い位置からボールを奪いに行かず、中盤まではある程度サウジアラビアにボールを回させ、縦に入れようとするところでタイトに締めてボールを奪う。

 そこから前線のFWスモロフに当てて、効率よくゴロビンやMFジャゴエフが前を向いて仕掛ける局面を作り出した。前半の途中に攻撃の要であるジャゴエフが負傷退場したことはチェルチェソフ監督にとっても誤算だったに違いないが、代わりに入ったチェリシェフが個人技の高さを発揮してサウジアラビアのディフェンスを翻弄(ほんろう)したため、ロシアの勢いはさらに高まった。

 前半43分の2点目は右サイドバックのフェルナンデスが相手ディフェンスの裏にグラウンダー(ゴロ)のボールを出し、スモロフからパスを受けたMFゾブニンがうまくためて左を走るMFチェリシェフに通すと、DFアルブライクのタックルを鮮やかにかわしたチェリシェフが左足でゴールに蹴り込んだ。後半にもクロスから交代出場で入ったFWジューバのヘッド、さらにチェリシェフの技巧的なシュートによる4点目、ゴロビンの右足FKでダメを押した。

 終盤は明らかにサウジアラビアの意気消沈が見られたが、そもそも90分を通して変わらなかったのがデュエル(1対1)とセカンドボールの奪取力の差だ。
ロシア―サウジアラビア 前半、パスを出すロシアのゴロビン(中央)=モスクワ(共同)
ロシア―サウジアラビア 前半、パスを出すロシアのゴロビン(中央)=モスクワ(共同)
 最終予選後に監督が二度にわたって交代し、現在はチリ代表の前監督、ピッツィが指揮するサウジアラビア。しっかりとトライアングルを作りながらのパス回しはトレーニングされているが、ピッチの前3分の1に入るところから侵入していくことができず、こぼれ球をほとんどロシアに回収された。