しかも、そこからロシアはほとんど手数をかけることなくサウジアラビアのゴール前まで難なく運ぶ展開が続いた。それでも何とかペナルティエリアの手前で持ちこたえるシーンが目立ったのは中盤の底に構えるオタイフ、センターバックのオマル・ハウサウィとオサマ・ハウサウィの奮闘によるところが大きいが、彼らが頑張るだけでは厚みのある守備にはなりえず、押し切られるように失点を重ねることとなった。

 ロシア陣内まで攻めかかったところからボールを奪われると一気に自陣深くまで押し込まれるという繰り返しの中で、サウジアラビアの攻撃陣はあまりスムーズに上下動できず、ロシア側のボール保持者に対して組織でプレッシャーをかけることもできず、1対1では全くボールを奪えないため、最後に後手後手で体を張るしかない。

 デュエルの差はあらゆるシーンで歴然としていたが、それを補おうとするハードワークがサウジアラビアに全く見られなかった。実際データを参照するとロシアのチーム走行距離が118キロだったのに対してサウジアラビアは105キロ。つまり、一人当たり平均1キロ以上も差があったのだ。

 これでは勝負にならない。18時キックオフだった試合時の気温は17度、湿度43%と快適だったが、攻めてはボールを持たされる状況でボールを持っていない選手の動き出しが少なく、守備ではロシアの推進力になかなか付いていけなかった。

 ロシアとしては勝ち点3がほしい相手から勝ち点3を取り、しかも大きく得失点差を付けて開催国のノルマとも言えるグループリーグ突破に前進した。同組のエジプト、ウルグアイはサウジアラビアより格段に強敵だが、堅守からのカウンターで相手を仕留めることを得意としており、この日のように待ち構えて懐深い位置でボールを奪う戦い方も有効ではあるだろう。

 サウジアラビアより前線がはるかに強力であり、攻撃でも開幕戦のように簡単にボールを運ぶことはできないだろうが、最低スコアレスドローを2試合続けても勝ち点5となり、得失点差を考えても突破の芽は大きくなる。
ロシア-サウジアラビア 後半、フリーキックでチーム5点目を決め、祝福されるロシアのゴロビン(中央・17番)=モスクワ(中井誠撮影)
ロシア-サウジアラビア 後半、フリーキックでチーム5点目を決め、祝福されるロシアのゴロビン(中央・17番)=モスクワ(中井誠撮影)
 それにしてもサウジアラビアの惨状は目を覆うばかりで、下手をすればカバーニやスアレスを擁するウルグアイ、プレミアリーグ得点王のサラーを擁するエジプト相手にさらなる大量失点を重ねて敗退する可能性も十分にある。同じアジア勢としては日本も対岸の火事ではすまされないが、スペースの活用の仕方の差に加えて、力が落ちる側がハードワークの部分で相手を下回るとこうなるという事例が示された試合だった。