スペイン相手の初戦でロナウドがいきなり派手な活躍をしたことで世界中が「ロナウド、ロナウド」となっているが、日頃あまりサッカーを見ない人には逆に世界的スター選手の「個」以上に、個が輝くために確実に監督やチームメイトが用意している「戦術」に注目してもらいたい。

 他の団体スポーツであれ、ビジネスの世界であれ、本当の意味で「個人」が活躍するためには、そのチーム、グループとしての行動規範(サッカーにおいては戦術、プレーモデル)があり、その中で個人に求められるポジションやタスクが明確化されていなければいけない。

 このスペイン戦のポルトガルのプレーモデルはざっくり説明するとこういうものだった。

 「ボールはスペインに持たせた中で、奪ったボールを素早く前線2トップのゲデスに入れる。スペースがある場合にはゲデスを走らせてのカウンター。スペースがない場合はゲデスの胸か頭に入れて、ロナウドに落とす。それをロナウドが突破かシュート」

 88分のロナウドの直接FKからのポルトガルの3点目も中盤のウィリアン・カルバーリョから2トップめがけて入ったロングボールをロナウドが収め、相手DFにファールを受けたことがきっかけだった。つまり、上記のポルトガルのプレーモデル通りの攻撃の実行に起因している。

 試合としてはスペインが一旦は3−2と逆転に成功するもポルトガルが試合終了間際のロナウドの同点FK弾で追いつき、ドローとなったことでスペインにとっては「勝ち点3をとりこぼした試合」に映るかもしれない。

 しかし、両チームのプレーモデルから試合内容を評価した場合、逆に「勝ち点3を逃したのはポルトガルだった」と言及しておきたい。

 なぜなら、スペインのプレーモデルとは、66%のボール支配率に象徴されるように「ボールを保持しながら敵陣に人数をかけて攻撃し、ボールを失ったとしても敵陣で即時回収して相手のカウンターを封じる」というものであるにもかかわらず、失点シーン以外にもスペインはポルトガルのカウンターを何度も受けていたからだ。
ポルトガル-スペイン 後半、2点目のゴールを決めるスペインのディエゴ・コスタ(右)=ロシア・ソチ(ロイター=共同)
ポルトガル-スペイン 後半、2点目のゴールを決めるスペインのディエゴ・コスタ(右)=ロシア・ソチ(ロイター=共同)
 実際のスペインの得点の形もディエゴ・コスタの2点はロングボールを前線に放り込んでコスタ一人の力で打開した形と、FKからのものでスペインがこれまで築き上げてきた「攻撃も守備も敵陣で行うサッカー」からの形ではなかった。

 ただし、スペインが本来のサッカーを実行できなかったのは監督交代の影響以上にポルトガルという「相手の良さ」が原因だ。このようにサッカーは必ず「相手がある」相対的なスポーツであり、チームの勝ち負け、個人の良し悪しは「相手との噛み合わせ」も含めて判断しなければいけない。

 3−3という派手な打ち合い、優勝できる実力国同士の痺(しび)れるシーソーゲームの裏で、サッカーという知的な駆け引きの面白さも存分に垣間見える素晴らしい大一番だった。中でも好発進をしたポルトガルとロナウドには要注目だ。