清水英斗(サッカーライター)

 「メッシは育てられたのではない。天から降ってきたのだ」。どうやってリオネル・メッシを育てたのか。その秘密をアルゼンチンで聞くと、このような答えが返ってくるかもしれない。天才は育てるものではなく、見つけるものだ、と。南米ではこのような考え方をよく聞く。

 そして、天才を輩出するための重要ポイントは、なんと言っても競技人口だ。わずか100人からメッシを探すよりも、1万人から探したほうが、見つかる可能性は高い。

 アイスランドの人口は約33万人。東京都新宿区の人口とほぼ同じだ。サッカー競技人口は約2万人にすぎない。一方、アルゼンチンの人口は約4000万人。サッカー競技人口は260万人もいる。そこには100倍もの差があり、後者は実際に、メッシを見つけた。

 サッカー小国と、サッカー大国の対決。ロシアW杯3日目、16日に行われたグループDの初戦は、大会初出場のアイスランドが、強豪アルゼンチンに挑む構図となった。

 試合はアルゼンチンがポゼッション率(支配率)72%をキープし、一方的に攻撃を仕掛ける展開だった。その流れの中、先制にも成功した。

 前半19分に左センターバックのマルコス・ロホが、ボールを持ってフリーで持ち上がると、思い切りシュートか、あるいはシュート性の縦パスと思われるボールを蹴った。これをゴール正面でセルヒオ・アグエロが受け止め、相手のマークから離れつつ、左足で強烈なシュート。ゴール上隅に突き刺し、先制弾を挙げた。

 ところが、先制されても、ボールを持たれっぱなしでも、アイスランドはへこたれない。すぐに前半23分、得意のサイド攻撃からシンプルに右サイドを突破し、クロスを上げた。こぼれ球を再び左サイドから折り返し、さらにこぼれ球をもう一度、右サイドからクロス。右から左から、しつこく攻め立てられたアルゼンチンの守備は後手に回り、最後はギルフィ・シグルズソンのクロスを、GKウィリー・カバジェロがはじき、こぼれ球にアルフレッド・フィンボガソンが詰めて1-1の同点に追いついた。

 その後も「4-4-2」システムで整った守備ブロックを組むアイスランドが、アルゼンチンの攻撃に粘り強く対応し、1-1をキープした。アイスランドのハミル・ハルグリムソン監督は、その戦術的な狙いを、次のように語っている。
アルゼンチン-アイスランド 後半、アイスランドの選手に囲まれるアルゼンチンのメッシ(中央)=モスクワ(共同)
アルゼンチン-アイスランド 後半、アイスランドの選手に囲まれるアルゼンチンのメッシ(中央)=モスクワ(共同)
 「アルゼンチンは素晴らしいスキルを持った選手が、攻撃を仕掛けてくる。彼らと1対1で戦うのではなく、チームが一つになって、ピッチ上のすべての場所で団結して戦うようにした。11人全員が守備に走り、選手たちもそれに納得し、よく頑張ってくれたと思う。彼らを称賛したい」

 アルゼンチンはメッシにボールを集めて仕掛けてくるが、アイスランドは緊密なブロックチェーンを作り、どこか一カ所がやられそうになっても、すぐにその門を閉じて対応した。