時に、ペナルティーエリア内は子供たちの試合でなりがちな「団子サッカー」のように密集したが、アイスランドはそこまで徹底して、ドリブルのコースを消し切った。そして、内をガチガチに締める一方、外から入れてくるクロスに対しては、自慢の高さと強さではね返す戦略を徹底していたのである。

 「メッシ頼み」。一方、タレントを多く集めるアルゼンチンだが、南米予選でもメッシ依存の傾向は強く出ており、この試合も同様だった。メッシ1人で11本ものシュートを記録したが、狭いスペースをワンパターンで突破する攻撃に対し、アイスランドは11人で耐えた。

 アルゼンチンのホルヘ・サンパオリ監督は「アイスランドが非常に守備的に戦ったため、メッシはスペースを見つけられず、快適な状況ではなかった。前半はプレーテンポが遅く、後半は改善してスピードと創造性を増したが、ゴールを割ることはできなかった」と語っている。ホイッスル後のメッシの表情からも、彼がこの試合で受けたストレスは明らかだろう。

 それでも、アルゼンチンにとって千載一遇のチャンスは、後半19分に訪れた。PKを獲得した場面だ。キッカーは当然メッシ。アイスランドのゴールマウスを守るのは、GKハネス・ハルドルソンである。

  「メッシのPKを研究した。自分のPKにおけるプレーも振り返った」と語るGKは、メッシが蹴るぎりぎりの瞬間まで我慢し、右へ跳んだ。そして見事にセーブ。「思い描いた通りだった」と語るハルドルソンが、大きな仕事を果たした。ハルドルソンはマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)にも選出されている。

 ハルグリムソン監督は「時間と共に快適になった」と、守備がはまっていく手応えを感じていた。さらに攻撃についても、一定の評価を与えた。「守備だけではなく、私たちはいくつかのチャンスを作ることもできた。本当はそれ以上に、彼らの裏のスペースを使いたかったけれど…。でも、ボールを持たなければ、それは難しいことだ」と振り返っている。
アルゼンチン-アイスランド 後半、PKをGKに阻まれたアルゼンチンのメッシ(中央)=モスクワ(共同)
アルゼンチン-アイスランド 後半、PKをGKに阻まれたアルゼンチンのメッシ(中央)=モスクワ(共同)
 試合はそのまま1-1のドローで終了した。クロアチア、ナイジェリアと、くせ者ぞろいのグループDにおいて、初戦から勝利を飾りたかったアルゼンチンだが、残念ながら引き分けに終わった。

 逆にアイスランドは大興奮だ。ハルグリムソン監督は「これはアイスランドにとって大きな成功だ。アルゼンチンは間違いなく、今後も勝ち進むチームだと信じている。だからこそ、われわれにとってはファンタスティックな結果だったんだ」と喜びを語っている。

 初出場チームがアルゼンチンと対戦する構図は、1998年のフランスW杯で、日本も経験した。当時の日本は0-1で敗れたが、強豪との対戦経験がなかった日本とは違い、アイスランドは欧州のハイレベルな予選でもまれている。2016年の欧州選手権でもベスト8に躍進し、彼らは自信に満ちあふれていた。
 
 メッシを望めない人口33万人の小国が、一致団結し、至高の天才を生み出したサッカー大国と、勝ち点1を分け合った。これ以上、見事な結果はないだろう。