政府の中央防災会議が「現時点では確度の高い科学的手法はない」と匙を投げるなど、地震予測は長く不可能なものとされてきた。しかし「MEGA地震予測」は、全国各地のGPSデータを元に着実に的中実績を積み重ねている。さらにその精度を高めるために村井俊治・東大名誉教授が選んだのは、AI(人工知能)の導入だ。膨大なデータを解析するMEGA地震予測とAIの親和性は高い。従来の予測を飛躍的に進化させる試みを初公開する。

精度を高く、客観的に

 測量学の世界的権威である村井氏は、2013年以降、本誌やメールマガジンで『MEGA地震予測』を発表し続けてきた。

 全国約1300か所にある電子基準点のGPSデータをベースとする同予測は、震度5クラスの大地震の前兆を幾度となく捉え、実績を積み重ねている。

 しかし、地質やプレートの変動を調査することを前提とする地震学の世界においてその予測方法は「異端」と見なされてきた。そのため、「地震学の知識がない」「ノイズのような数値を使った“占い”だ」といった批判を浴びてもいる。

 それでも村井氏が予測を続けるのは、7年前の東日本大震災の「苦い教訓」があるからだ。

「3.11の半年前から、東北地方の太平洋側の電子基準点に次々と沈降現象が起きていた。私の予測に従えば、それは紛れもない大地震の予兆だったわけですが、“パニックになるのではないか”と躊躇し、広く注意を呼び掛けることができませんでした。研究者として、これほどの無念はありません。ですから測量学者としての地位や名誉をたとえ失うことがあっても、私の知見と信念に基づいて異常を警告していくと決めたのです。そして、少しでも予測の精度を上げるため、あらゆる知識と技術を採用してきました」

 そうしたバージョンアップの集大成といえるのが、この3月から実用化されたAI(人工知能)による予測である。

「これまでは、電子基準点のデータを私と数人のスタッフのみで分析してきた。しかしデータは膨大で、マンパワーだけに頼るには限界がありますし、解析のノウハウも伝えきれない。AIを活用できれば、より客観的で高精度の予測が行なえると考えました」
※画像はイメージです(iStock)
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 村井氏が会長を務める民間会社JESEA(地震科学探査機構)は、2年前から工学博士(品質工学)の手島昌一氏が代表取締役を務めるアングルトライ株式会社と、AIシステムの共同開発を始めた。手島氏が解説する。

「我々が用いるのは、MT法(マハラノビス・タグチ法)というもので、世界の大手自動車メーカー工場などで不良品の発生予知や検査などに使われている人工知能です」

 AI地震予測の解析対象は、これまでの『MEGA地震予測』と同じく、国土地理院が全国に設置する電子基準点だ。

 村井氏と手島氏は、2005年からの現在までの電子基準点データ全てをAIにインプット。それを最新の電子基準点の動きと照合すれば、AIが「異常変動」を察知し、地震発生のリスクを割り出す。

 AI地震予測は、これまでの『MEGA地震予測』と同じ理論をベースにしているため、基本的には村井氏の予測と似たような結果を弾き出すことが多い。しかし時には例外もあるという。

「AIは私が予想もしていなかった地域を警戒ゾーンとすることがあるのです。将棋の人工知能ソフトが定石外れの手を指すことがあるように、地震予測でも私の経験則を超えてくることがある。AIの存在が私の予測そのものにも広がりを与えています」(村井氏)

●JESEAでは毎週水曜日にスマホ・PC用ウェブサービス「MEGA地震予測」(月額378円)で情報提供している。詳しくはhttp://www.jesea.co.jp

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