田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 6月18日朝、大阪府で震度6弱の強い地震が生じた。この論説を書いていた同日午前の時点で被害の全貌はわかっていなかったが、ブロック塀の倒壊などで5人の方が亡くなり、また300人近くが負傷したという。

 そして、発生が通勤時間中だったこともあり、関西地方を中心に交通網がまひし、ビルのひび割れ、落下物、インフラ不全などの情報が伝わっている。多くの人は不安を抱えて、地震の大きさに恐怖している。被害に遭われた方々を心中からお見舞いするとともに、今後も余震など十分に警戒していただきたい。

 今回の地震でも、ツイッターをはじめとするソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で、地震の個人的な体験や公的情報などを伝える動きが活発である。誤った情報も少なからずあるだろうが、SNSが被災時に機能し、非常に便利であるのは間違いない。

 日本は地震大国であるにもかかわらず、経済対策の側面では、地震に全く弱い国だと言わざるを得ない。しかも弱いだけではなく、災害につけ込んで、官僚や政治家が「私的な利益」をむさぼろうとする国でもある。

 東日本大震災のとき、筆者は経済評論家の上念司氏と共著で『震災恐慌』(宝島社)を出版した。この本は後に、嘉悦大の高橋洋一教授の補論を備えて、さらに内容を強化して『「復興増税」亡国論』(宝島社新書)として刊行した。

 題名からも趣旨は明瞭だが、東日本大震災からの復興を名目にして行われようとしていた「復興増税」を中心とした、政府と日本銀行の緊縮政策を批判する内容であった。当時、われわれは国会議員などとも協力し、増税反対の国民運動を展開したが、残念ながら「復興増税」は復興特別税として実施されてしまった。

2011年11月、東日本大震災に関する
復興増税や消費増税を食い止めようと、
約1500人が「増税NO」の
シュプレヒコールをあげながらデモ行進した(緑川真実撮影)
 この税は現在も所得税、地方税を対象に継続中だ。所得税は2037年まで、地方税も2023年まで上乗せされており、長期間の負担が続く。

 もちろん、被災地支援のためにお金が必要なのは当然である。だが、当時の民主党政権の時代は、今日とは異なり、リーマンショックと長期停滞の「合わせ技」で、極めて深刻な不況に陥っていた。そこに増税を課すのは、日本経済にダメージをさらに負わせ、もちろん被災地にも深刻で回復不能の打撃を与えると、われわれは警鐘を鳴らしたのである。

 そのため、増税よりも、それこそ永久ないし超長期の復興国債を発行することによって、日本銀行がそれを事実上引き受け、積極的な復興支援を行うべきだとした。これが長期停滞への脱出と、震災復興の両方を支援できる経済政策だというのが当時のわれわれの主張であった。

 だが、財務省を中心とする増税勢力にはそんな論法は通じなかった。彼らのやり口は実に巧妙であり、「復興増税」を民主党、そして当時は野党だった自民党と公明党で実現させたのである。さらに、この三党協調をもとに、おそらく当初からその狙いであった消費増税の実現にまで結び付けた。当時の日本経済からすればまさに人災に等しい「大緊縮路線」の成立である。