例えばしばしば「財政健全化」の一つの目標のようにいわれる基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化。この概念は、そもそも経済不況を根絶するために積極的な財政政策を支持した経済学者、エブセイ・ドーマーによって主張されたものである。

 つまり、緊縮財政を唱える論者を否定するために持ち出した概念が、なぜか財務省的発想で緊縮財政のために利用されているのである。まさにゆがんだ官僚精神をみる思いで、あきれるばかりである。

 PBは、経済が停滞から脱出し、経済成長率が安定すれば、それに見合って財政状況も改善するということを言いたいのが趣旨だ。何度もいうが、これが逆転して、増税勢力に都合のいい「財政再建」や「社会保障の拡充」という緊縮政策に悪用されてしまっている。

 しかも経済学的には意味を見いだしがたいPBの黒字化目標を、2020年度から25年度にずらしたところで、緊縮病から抜け出せるわけではない。あくまで目標にするのは経済の改善であって、PB目標などどうでもいいのだ。

 だが、PB先送りについて、朝日新聞の論説にかかると「骨太の方針 危機意識がなさ過ぎる」んだそうである。まずは、この朝日新聞の論説を書いた人の経済認識こそ、危機意識が足りないと思う。
地震で崩れた外壁=2018年6月18日、大阪市淀川区(渡辺恭晃撮影)
地震で崩れた外壁=2018年6月18日、大阪市淀川区(渡辺恭晃撮影)
 また、国債市場では取引が不成立なことがしばしば起こることをもって、「国債危機」的な煽り記事もある。これは、単に日本銀行が「今の積極的な金融緩和を続けるためには、もっと政府が新規の国債を発行することを求めている」、市場側のシグナルの一つでしかない。つまり経済は、緊縮よりももっと積極的な経済政策を求めている。だが、全ては「財政危機」「社会保障の拡充」という上に書いたようなゆがんだ経済認識に利用されているのが実情だ。

 数年前、いや今も天災さえも利用して自らの増税=緊縮政策を貫いた財務省を核とした「ブラックな集団」が日本に存在していること、これこそが日本の「最大級の人災」である。そして対策は、このブラック企業顔負けの集団の核である、財務省の解体しかないことを、世間はより強く知るべきではないだろうか。