武田邦彦(中部大学特任教授)

 米国防総省がUFOの調査をしていた事実が明らかになり、話題になっているが、これは「現代科学の低迷」を示す典型的なニュースである。

 もともと、人間の五感には「触覚(圧力)、臭覚(化学反応=科学ポテンシャル)、視覚(電磁波)、聴覚(音波、粗密波)、味覚(化学反応)の五つがあって、私たちが「ある」と認めるのはこの五つの情報しかない。このうち、電磁波を除く他の物理的影響や化学反応は古くから発見されているが、電磁波は19世紀に見つかったもので、まだ150年ほどしかたっていない。

 だが、人類というのは「地球上」に、しかも「温度、気圧などある特定の条件下」で発生した生物であり、その生物が感知できる情報手段しかこの宇宙に存在しない、とするのは根拠もないし、あまりに飛躍がある。つまり、人間の五感という伝達手段以外の観測方法が宇宙のどこかに必ずあると考える方が科学的である。

 また、別の視点から整理すると、UFO以外にも、多細胞生物の細胞間伝達、生物同士のテレパシー、現代科学で説明が困難な飛行物体という超自然現象や、人間が山に入ったときに感じる森林浴と呼ばれる心理的緩和効果、集団的生物に顕著にみられる「集団の中の個の存在」の認識など、比較的観測が容易な分野でさえ、作用と効果の関係が明らかになっていないものは多くある。
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 これらは「現代の科学で解明されていない」ということで「超自然現象」と言われているが、「超自然」という言葉は「すでに人間はすべての自然現象を解明した」という傲慢(ごうまん)な前提がある。

 一方、1950年以後の科学は原理的発見が少なく、情報技術、遺伝子技術にみられるように「改良型科学の発展」が主たるものになっている。ダイオードやトランジスタ、DNAなどの画期的原理発明はいずれも1950年代までに行われていて、それ以後すでに60年がたつのに科学的に新しい原理の発見はほとんど見られない。

 材料分野のような実学的領域においても、金属材料では20世紀初頭のアルミニウムの時効硬化の発見、プラスチック材料では1970年代の液晶プラスチックが新材料発見としては最終的なものとされている。

 このような基礎科学の停滞が、経済や社会の進歩を遅らせていることは間違いない。