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    今度こそ安倍総理は「桜を見る会」疑惑から逃れられない

    有田芳生(参院議員) 安倍晋三首相が2012年12月に2度目の政権についてから7年。第1次政権との通算で桂太郎内閣を超える最長政権の記録に達して権勢の頂点にありながら、いま最も信頼性への不信が広がっている。「桜を見る会」疑惑の噴出である。 菅原一秀経産相の辞任から6日後に河井克行法相が辞任。いずれも公選法違反疑惑が報じられ、説明責任を果たさず、逃げるように大臣の職を辞した。事実上の更迭である。次はどの大臣の疑惑が出るかとうわさが流れていたが、いわば「天守閣の住人」への疑惑が出てきたのが、首相主催の「桜を見る会」であった。内閣委員会での質疑や報道などを含め、この原稿が公開されるときも事態はまだ流動的だろう。 ポイントを二つ指摘しておく。第一の問題は「桜を見る会」の前夜に行われた安倍晋三後援会のパーティー代金の謎である。参加費は5千円。会場となったホテルニューオータニでの立食パーティーは1万千円からだ。だが、この金額は150人以下の宴会である。5千円で800人なら400万円だ。金額が合わない。果たして安倍事務所からの補塡(ほてん)はあったのか。 会場前で支払いが行われており、ホテルの領収書も渡されている。政治家が飲食を伴う会合を行うとき、事前に店から領収書をもらい、参加者に渡すことがあるから、ホテルの領収書があったことは不思議ではない。前夜祭の出席者は約800人。ホテルの規約では30日前に入金することになっている。安倍事務所が立て替えておき、当日に参加者から集金し、まとめてホテルに払ったなら、立て替えたときの支出とパーティー後の入金を政治資金収支報告書に記載しなければならない。 だが安倍首相の説明は違った。11月20日に行われた参議院本会議での答弁によると、パーティー会場に安倍事務所の担当者が立ち、参加者が代金を支払い、ホテル関係者が領収書を渡し、総額がホテルに支払われたという。安倍事務所への入金はないから政治資金規正法には抵触しないというわけだ。 参加者の多くがホテル宿泊者なら、料理の割引もあって不思議ではない。首相はそう答えていた。だが宿泊者はANAインターコンチネンタルホテルとホテルオークラ東京だった。首相はのちに手違いがあって別のホテルになったと説明した。なぜ説明が変化したのか。首相は料理や会場費などの明細書がないというが、商取引において、常識的にはありえない。ホテル側と安倍後援会との間に何らかの便宜供与があったのだろうか。 第二の問題は「桜を見る会」のあり方である。安倍政権になってから参加人数がどんどん増えていき、約1万人の予定が約1万5千人になった原因である。「桜を見る会」追及チームの初会合で関係省庁の職員(手前)からヒアリングする野党議員=2019年11月12日、国会内(春名中撮影) すでに明らかになったように、自民党改選参議院議員が1人あたり「一般の方(友人、知人、後援会等)を、4組までご招待いただけます」と推薦ではなく招待できたこと、総理枠は1千人、副総理、官房長官、官房副長官枠が1千人、自民党枠が6千人だ。この数字は11月20日の衆議院内閣委員会で菅義偉官房長官から明らかにされた。内閣府は招待者の書類を破棄したと説明してきたのに、なぜこの数字が分かったのだろうか。首相が記者に語ってきたことが、なし崩しに訂正されていく。醜態をさらしたくない 安倍首相のお膝元の山口県では地方議員レベルまで、定員なしに希望者を招待できたから、安倍後援会からは約800人もの出席があった。これでは各界の功労者を中心に招待するという本来の趣旨から遠く離れていき、首相の後援会や自民党関係者を税金でもてなしたという批判を受けるのも当然だろう。安倍首相が来年の「桜を見る会」を中止して、招待者の見直しをするとしたのも、その実態にやましさを覚えたからだろう。 首相がいわゆる「ぶら下がり」会見で説明を終わらせようとしたことにも問題は残る。国会でルールに基づいて予算委員会の開催を要求しても、与党はそれを無視したままだ。安倍首相は野党の疑問に答えるために予算委員会に出席する義務がある。そのことを問われると「国会のことは国会でお決めになること」と答弁するが、本気で意思があれば自民党総裁として与党に出席すると命じればいいだけである。都合の悪い事実が明らかになっていき、追及にガマンできずヤジを発したりする姿をさらしたくないのが本音だろう。 私が驚くのは「桜を見る会」の招待券が売買されていたことである。元自民党職員が30万円で売ったと週刊朝日が2008年に報じていたが、今年4月にはフライデーが芸能界でも小遣い稼ぎに使われていたことを明らかにした。関係者によると、芸能事務所に20枚ほど招待状が配られるという。それを入手して1枚8万円で売ったという話もある。売れていないタレントが購入し、会場でテレビに映ったり、著名政治家と写真を撮って宣伝するのが目的である。公的行事が私的利益追求の場となっているのである。さらにはネットを中心に「反社会的勢力」の参加を疑う声もある。 「桜を見る会」は、昭和27(1952)年にサンフランシスコ講和条約の発効を記念する「観桜会」として吉田茂内閣からはじまった。最初はアメリカ、イギリス、フランス、ソ連などの外交官、陸海軍武官など「内外名士千余名」が参加したが、いまや安倍政権のもとで約1万5000人に膨れ上がった。 その「膨れた」人数の内訳が問題なのである。総理枠、副総理枠、官房長官枠、官房副長官枠、自民党枠で8千人、さらに安倍昭恵夫人枠まであり、それがタダで飲食できたという事実は衝撃的だ。これは買収行為が行われたと批判されても仕方ないだろう。参院本会議で答弁する安倍晋三首相=2019年11月20日、国会(春名中撮影) 在職期間で史上最高の記録に達した11月20日という記念すべき日に、日本社会で問題になっているのが、安倍首相の税金の使途への疑惑であるとは、何とも恥ずかしい。

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    「桜を見る会」と「沢尻エリカ逮捕」世論に鳴り響く不思議な陰謀論

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 合成麻薬「MDMA」を所持していたとして、俳優の沢尻エリカ容疑者が麻薬取締法違反の疑いで警視庁に逮捕された。沢尻容疑者の事件自体、筆者は彼女の俳優としての将来性を大きく閉ざしてしまったことを残念に思っている。 また事件を機に、日本での薬物事犯の検挙人数や件数の推移をチェックしたが、ここ数年、大麻の検挙者・件数の急増も受けて、総数で高止まりしている深刻な事態を確認することができた。沢尻容疑者が所持していたとされるMDMAなどの合成麻薬も、違法な薬物事犯の中で検挙件数も人員もなかなか減っていない。 日本の経済学者は、違法薬物の売買を対象に含む、いわゆる「地下経済」について関心が低い。欧米では、経済ジャーナリストが麻薬カルテルを取材し、その経済合理的な組織運営に注目した『ハッパノミクス-麻薬カルテルの経済学』(邦訳、みすず書房)をはじめ、多くの研究が知られている。 ただ、日本でもこの分野を持続的に対象としている学者がおり、その「権威」が経済評論家の門倉貴史氏である。門倉氏の推計によると、東京都内で流通している違法薬物の市場規模は、約4200億円だという。かなりの市場規模だが、これに加えて薬物使用がもたらす健康被害、社会的評価の損失などを換算すると数兆円に上るかもしれない。 ところで、沢尻容疑者の事件をきっかけにして、ある種の「陰謀論」がインターネットを中心に巻き起こった。今までも、北朝鮮のミサイル発射と安倍晋三政権に関する政治問題が時期的に重なることで、ネット上で「安倍政権のスキャンダル隠しで、北朝鮮がミサイル発射して注意をそらした」といった根拠不明な陰謀論が流布されていた。沢尻エリカ容疑者=2019年9月(矢島康弘撮影) 一笑に付すべき話だが、実際にはこの種の陰謀論や根拠なき噂は後を絶たない。社会問題の話だけではなく、個人レベルでもこの種の陰謀論やデマの被害に遭っている人は多いだろう。 筆者もその一人で、なぜだか一部の人たちの間で消費増税の積極論者になっている。この連載をお読みいただいている方々はお分かりだろうが、終始一貫して消費増税に反対を訴えている。「桜を見る会」政権の陰謀論 だが、その一部の人たちの「ムラ社会」には真実が伝わらない。真実を拒否し、嘘であることでも「真実」として流通する現象だといえる。 この現象をイタリア・IMTルッカ高等研究所のウォルター・クアトロチョッキ氏は「エコーチェンバー」(共鳴室)と名付けた。エコーチェンバーは、同質的で閉鎖的なネットのコミュニティーが生み出すという。 今回の沢尻容疑者の事件が起きてまもなく、このエコーチェンバーから独特の音が鳴り響いてきた。沢尻容疑者逮捕の報道が、それまでマスコミの話題となっていた安倍首相主催の「桜を見る会」にかかわる疑惑報道を打ち消してしまう、という話だ。 マスコミの報道を分析して、単に放送時間や取り上げられる回数の変化を指摘するだけなら、何の問題にもならない。だが今回、エコーチェンバーから聞こえてきたものは、「桜を見る会」の報道が安倍政権にとってまずいので、問題から国民の関心を移すために沢尻容疑者が逮捕された、というニュアンスを多く含んでいた。まさに陰謀論である。 しかも、著名な識者の多くがこの陰謀論めいた話に参加していた。しかも、素朴に観察したところ、多くの人たちがこの陰謀論を信じているようでもある。まさにネット社会の分断をまざまざと示している。「桜を見る会」を巡り、記者の質問に答える安倍首相=2019年11月15日、首相官邸 「桜を見る会」自体は、社会的評価が高かったり、社会貢献をした人たちを参集させるよりも後援会関係者の参加が目立つなど、最近の人数や経費の急増とともに見直すべき話だと思う。しかし、過去何十年と同じパターンで繰り返されてきた行事の運営を、安倍政権が何か違法な事態を引き起こしたと誘導する報道があまりにも多い。 そもそも、何が違法に当たるのか、そこも分からない。法的な論点に関心のある人は、元弁護士の加藤成一氏の論考『桜を見る会「疑惑」の法的検討:買収罪は成立するか』が参考になるだろう。モリカケから続く「疑惑商法」 それに、今はどうも「桜を見る会」ではなく、その前日に行われた後援会か支持者の集まりだかの「前夜祭」における、領収書をめぐる話題が熱いらしい。いつもながらの話だが、ゴールポストがころころ変わり、しかも違法性かモラルの問題かさえも分からない。 そうして、単に「疑惑が深まった」報道をマスコミは垂れ流すだけである。これは安倍政権下で、いわゆる「モリカケ問題」から続いている話題づくりの手法だ。 つまり、一部マスコミとエコーチェンバー化した政治家や識者たちが生み出した「疑惑商法」というものだ。おそらく真実がいくら列挙されても、「疑惑」は晴れるどころか、むしろ深まるだけかもしれない。 国会でも、この「桜を見る会」問題が議論の中心となるという。立憲民主党の枝野幸男代表は、この話題をきっかけにして衆院の解散に追い込みたいと発言しているようだ。 どのような理由で解散を迫るかは自由だが、この問題が話題となった後に実施された世論調査を見たところ、野党の支持率は減少トレンドにある。エコーチェンバーの内部は知らないが、国民は野党の「モリカケ手法」にとことん愛想が尽きているのかもしれない。「桜を見る会」を巡る追及チームの会合で省庁側出席者(手前)から聞き取りする野党議員ら=2019年11月14日 もちろん、安倍首相は国会から求められれば、事実を丁寧に説明すればいいと思う。他方で、消費増税に伴う悪影響への対策、ウイグル自治区住民に対する弾圧や香港デモでも明らかな中国政府への対応、韓国の独善的な外交姿勢への対抗策など、課題は山積みだ。今、筆者には「桜を見る会」よりはるかに重要に思える。 それらの課題に国会全体の努力を傾けることを切に望みたい。もうモリカケ商法はおなかいっぱいである。