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    地方経済を再生させる「企業とまちのたたみ方」

    冨山和彦(経営共創基盤〈IGPI〉代表取締役CEO)  2014年秋の臨時国会では、「地方創生」が大きなテーマとなった。安倍総理は、内閣改造で石破茂氏を地方創生担当大臣に任命するとともに、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置した。政府は、地方創生の理念を定めた基本法案を臨時国会早々に提出し、速やかに可決。省庁のタテ割りを排した地域活性化に全力を挙げる方針と報じられている。 地域活性化はこれまでの政権も力を入れており、すでに内閣官房には、「都市再生本部」「構造改革特別区域推進本部」「地域再生本部」「中心市街地活性化本部」「総合特別区域推進本部」の5つの本部が置かれている。今回、地方創生を進めるといっても、従来型の施策の焼き直しに止まるのではないかとの見方も根強い。 政府に地方創生に対する危機感を募らせるきっかけとなったのは、増田元総務大臣を中心とする日本創成会議がまとめた、「大都市への人口移動が収束しなければ、2040年には全国1800市区町村のうち約半数の896が消滅可能性都市になる」とするレポートであった。これを受けて、骨太の方針も「50年後にも1億人程度の安定的な人口構造を維持することを目指す」と、初めて人口減少への対応を盛り込んだ。 本格的な人口減少という局面で、地域活性化という古くて新しい課題に、どうすれば起死回生策を見出すことができるのか。『なぜローカル経済から日本は甦るのか』の著者である冨山和彦氏とともにそのヒントを探った。<聞き手:荒田英知(PHP総研主席研究員)>人手余りから人手不足に転じた地方経済荒田 冨山さんのご著書『なぜローカル経済から日本は甦るのか』は、グローバル(G)とローカル(L)という2つの世界を対比し、わが国のGDPの7割を占めるLの方の経済成長戦略を解き明かされたことが実にタイムリーでした。夏には、菅官房長官の愛読書であると新聞記事に取り上げられたり、地方創生本部事務局の参考図書リストに載っているとも伝えられたりしています。先日はある研究会のゲストにお迎えした公明党の石井啓一政調会長が、カバンから同書を取り出し、「これを読んで、なぜローカル・アベノミクスが必要か、一目瞭然にわかった」と仰っていました。冨山 私は、本来はLでなくてGの世界の人間なんですけどね(笑)。当社(経営共創基盤)の子会社に「みちのりホールディングス」という地方公共交通の運営会社があります。岩手県北バス、福島交通、会津バス、茨城交通、関東自動車の5グループを抱えて、合わせて約3500人の従業員と2000台近いバスとタクシーを保有しています。これらの会社の経営に関わることを通じて、地方経済に問題意識を持つようになりました。荒田 地方創生という古くて新しい課題に対して、これまでと何が違うのか、どうあるべきとお考えでしょうか。冨山 地方経済をめぐる環境面では、現在、人手不足という極めて大きな変化が起こっています。これまでは人手余りの中での地域活性化だったのです。人手が余って仕事がないからどうするかという議論でした。結果的には、それらの政策はワークしませんでした。それが今度は人手不足です。景気低迷の中で、都市よりも地方で先に人手不足が起こっているという環境変化があります。人手不足の中で地方創生をどうするかが問われます。政策展開するときの自由度、選択肢の広がりは、人手が不足している時の方が大きいと思います。荒田 Lの世界で成長の鍵を握るのは、生産性の低い企業の「緩やかな退出」であるという指摘は全く同感です。けれども、これを現実に進めようとすると簡単にはいきません。従来と何を変えることが効果的なのでしょうか。冨山 これまでは人手が余っていましたから、それを吸収するためには生産性の低い企業や産業が存続することが、必ずしも悪いことではなかったのです。ローカル経済圏の主役は労働集約的な非製造業、いわゆるサービス業ですから、それらを低い労働生産性のまま、金融措置や助成金で延命させるということをやってきたのです。人手不足のいま、これを続ける理由はなくなりました。生産性の低い会社は退出するか、生産性の高い会社や業種を応援して、そこに雇用を引き取ってもらう、ということが政策の基本になります。産業政策と社会政策は別ものである荒田英知・PHP総研主席研究員荒田 これまで地方自治体は、地域の産業政策と称して、地場企業に対してさまざまな補助金や助成金を出してきました。しかし、それは産業振興政策というよりも、延命するための社会福祉政策になっているのが実態だと思います。冨山 バブル崩壊以降は、人手余りは続いていましたから、それを失業という形で顕在化させるよりも、企業の側に社会政策を代替してもらったということですね。その限りでは延命政策は功を奏したといえなくもありません。しかし、いまや人手不足の局面ですから、そういう政策を引っ張る必要は社会政策的にもなくなったのです。荒田 「緩やかな退出」という方向性は地域で共有できると思うのですが、それが予定調和的に進むとは限りません。ご著書では地域金融機関の「目利き」としての役割を重視していますが、はたして金融再編が続いた中で地場の金融機関にそうした人材が育っているかが気になります。冨山 結局は人材の問題に帰着します。解決策は2つしかなくて、もし大都市と地方で人材の不均衡があるなら、それをどう還流させるかです。ちょうど、当社(経営共創基盤)のスタッフがみちのりホールディングス傘下の東北のバス会社に張り付くイメージです。もう1つは、どこにも人材がいないなら、時間をかけて育てるしかないということです。荒田 地域のコーディネート役としては、地方自治体への期待もあるのですが、多くの場合は目利き役までは期待できそうにありません。しかし、たとえば農業の退出戦略を考えようとすると、農地の土地利用の問題とか、自治体の積極的な関与というかデザイン力が求められる場面も想定されます。冨山和彦・経営共創基盤代表取締役CEO冨山 ここは難しい問題です。役人が「こういう風にすれば、うまくいく」というように商売の中身に口を出すと必ず失敗します。それは無理なんです。それができるなら自分でやればいい。そうすると自治体ができることは何か、という話になります。地方自治体にしても中央政府にしても政府部門の役割は、能力があってやる気のある人たちが起業しようとした時に「邪魔をしない」ことにつきます。邪魔の仕方には2つあって、1つは余計な規制をいっぱいつくること。2つめは能力もやる気もない人でも貰える補助金をつくることです。弱者救済型のお金の出し方はダメです。この2つをずっとやってきたのです。大事なことは、規制にしても政策金融による支援にしても、よりイノベイティブで高収益な会社、ブラックな会社よりもホワイトな会社の方が得をするような監督や支援の仕方をすることでしょう。荒田 そういう見極めは、中央政府が一律にやるよりも、本来なら地域に密着した地方自治体の方が得意でないといけないですよね。冨山 それはそうです。近くでみた方が、規制やお金の使い方は判断がしやすいでしょう。だからこうした政策転換の効果をきめ細かく測定して、PDCAを粘り強く回す役割は重要です。けれども、近くにいると弊害もあって、近くの困った人たちがすごい勢いで来るので、しがらみでたいへんなことになります(笑)。その意味では、近いのと遠いのと五分五分でしょうか。しがらみにお付き合いしなくて良い防衛線を国が設定して、自治体が「国のせいでできません」といえるようにしてあげることも必要かもしれません。荒田 だれが悪者になるか、という話ですね。冨山 ある意味、不利益の再分配ですからね。従来は強い人も弱い人も救われるやり方をやってきました。結局、弱い人が足を引っ張って全体が沈んでいくという構図が地方の産業にはあったわけです。これを「強い人は天まで上がれ、弱い人は穏やかにエグジットを」ということを進めていくわけですから、前者は応援するけど後者はできないというルールは、現場から離れた霞が関で決めた方がうまくいくのではないでしょうか。 社会政策的にみれば、これには不公平感があるでしょう。「強きを助けて、弱気を挫いて」いるような見え方をするんです。でも、産業政策とは、そういうものです。「強きを挫いて、弱気を助ける」のは社会政策の役割です。社会政策は本来的には企業ではなく個人に対して講じられるべきでしょう。企業に対して社会政策をやると、成長力を阻害するという大きな社会的コストが発生するということを肝に銘じるべきです。地方に足りないのは「高質」な仕事冨山 人手が不足している局面では、企業に雇用を吸収してもらう必要はなくなります。むしろ期待すべきは、生産性と賃金をあげること。「地方に仕事がない」とよくいいますが、地方でバス会社をやっている実感からするとウソです。都会よりも生産労働人口が先行的に減っているので、量的な意味での仕事は相対的に十分にあるんです。地方に足りないのは「高質」な仕事です。賃金水準が高く、雇用形態が安定的な仕事がない。現実に、地方で公共工事を増やしているけれども消化できずにいます。あれだけ労賃が上がっているのに、やる人がいないんです。理由は簡単で、仕事がハードということもあるけれど、工事が終わったら仕事がなくなるということをわかっているから。一方で、継続的に雇用されるサービス業の方は相対的に賃金が安い。そうすると、高質な仕事はなんとなく東京にあるように錯覚して、「都会へいってみよう」ということになる。ところが実は、東京でも事情は同じで、一般事務職の正社員という雇用はほとんどないんです。地方から出てきた若者が、気がついたらコンビニや居酒屋のバイトだった、ということになっています。荒田 都会に出て行っても、地方で就ける仕事と大差なくなっていると。冨山 そうなってしまうんです。これは不幸な状況です。もちろん、運のいい人は最近のユニクロみたいに正社員化の流れに乗ったりします。この流れを全国に広げるべきです。なぜユニクロが正社員化できるかというと、高生産性だからです。赤字の会社に賃金を上げろといってもできません。つぶれますからね。まず、赤字の会社が生産性を上げて黒字にするのが先なんです。黒字になったら賃金を上げられます。これが地方の企業のやるべきことです。荒田 今回の地方創生の成否を占う尺度として、若者の流出に歯止めがかかるかがあります。潜在的な大都市への憧れに対抗できるだけの、働く場としての地方都市の魅力をいかにつくるかが問われていると思います。ご著書では、退出と集約が進んだ後の課題として、寡占的安定と適度な規律の両立が重要と指摘し、それを実現する仕組みの一つとして「非営利ホールディングカンパニー」という概念を提唱していますが、どのような形態なのでしょうか。冨山 株式会社と公益法人の中間形態として、医療・介護をはじめとした公共性の高い分野で成立可能とみています。サービス産業はもともと公共性の高い分野ですから。公共交通も当てはまるかもしれません。教育もいけるかもしれませんね。そうした領域で生産性を高めていくためのフォーマットとして、このやり方があるのかなと思います。サービス産業の中でも、社会福祉系に加えて地方公共交通は隠れた成長産業なんです。要は高齢者が増えるからです。 こうした産業分野は、資本価値の最大化だけの価値観で走られたのでは困るんです。典型的なマルチステークホルダー型の企業形態です。社会や公共の利益と株主の利益、従業員の利益、サービス受益者の利益それぞれを持続的にバランスを取る。地域の中で共創共生的にやっていくための会社のガバナンスのあり様なんです。だから、資本の構成は工夫する必要があります。近年、アメリカでも広がっています。荒田 日本でも再生可能エネルギーを大手資本でなく地域主導で進めていこうという問題意識をもった地域で、似たようなスキームが生まれています。たとえば長野県の飯田市では市民出資の「おひさまファンド」を活用して、公共施設や一般家庭の屋根にソーラーパネルを置いて太陽光発電の普及を進めています。ここでも持続性が活動のキーワードになっています。冨山 エネルギーも公共的ですから、似ていますね。持続性というのがとても大事なんです。G(グローバル)の論理でいくと、グローバル競争に生き残るための持続性の方が大事になってしまうから、L(ローカル)における持続性は犠牲にして、グローバルでトータルに生き残るという志向になります。このグローバル経済圏の論理を地域に持ち込むと必ず軋轢が生じます。地域はあくまで地域循環型のモデルを考えなければなりません。荒田 持続的な地域循環モデルを構築するためにも、退出と集約を進めるべき分野があるのかもしれません。医療・介護に加えて、公共交通、エネルギー、場合によっては教育はどうでしょうか。冨山 教育の生産性格差も極めて大きいと思います。今日の公共サービスは、経済的な自立力と公共的な責任との関係がトレードオフではなくて、経済的自立力が高いから、より少ない税金でより高い公共サービスを担うことができるという関係になっています。したがって、より高い生産性や付加価値をより高い効率で実現するということからすれば、生産性の低い人は公共性という付加価値をつけることができないということになります。結局のところ、良い経営をするという点においては、教育機関も同じだと思います。 短期的な収益性を追求するだけなら、バス会社でも古いバスを使い続けて排気ガスもどんどん出せばよいということになります。しかし、それでは地域と折り合いがつかなくなります。持続性がないのです。そういう会社で働きたいと思う人も減っていきます。地域と持続的に共創共生していくという命題が入った瞬間に、先ほどのトレードオフの議論はナンセンスなものになってしまうのです。 Gの世界の人はLの世界から逃げも隠れもできるんです。地域から逃げも隠れもできない存在が大事で、だから金融でいえば、地域金融機関が大事なんです。ほかの地域では競争力もなにもないから(笑)。彼らは、地域の中でやっていくことにこそ比較優位があります。《社会変革プラットホーム「変える力」より》※この記事は全2回のうちの第1回です。第2回はこちら。http://www.kaeruchikara.jp/article/1552/?Page=4冨山和彦(とやま・かずひこ) 株式会社経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。1960年生まれ。ボストン コンサルティンググループ、コーポレイト ディレクション代表取締役を経て、2003年、産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。解散後、IGPIを設立、数多くの企業の経営改革や成長支援に携わる。現在、オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役、経済同友会副代表幹事、財務省・財政投融資に関する基本問題検討会委員、内閣府・税制調査会特別委員、文部科学省・国立大学法人評価委員会「官民イノベーションプログラム部会」委員、経済産業省・「稼ぐ力」創出研究会委員、金融庁・コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議メンバー、公正取引委員会・競争政策と公的再生支援の在り方に関する研究会委員等を務める。著書に、『会社は頭から腐る』『結果を出すリーダーはみな非情である』(以上、ダイヤモンド社)、『カイシヤ維新』(朝日新聞出版)、『挫折力 ‐ 一流になれる50の思考・行動術』『30代が覇権を握る!日本経済』『なぜローカル経済から日本は甦るのか』(以上、PHP研究所)などがある。荒田英知(あらた・ひでとも) 政策シンクタンクPHP総研 地域経営研究センター長 主席研究員。1962年、福岡県生まれ。85年、鹿児島大学法文学部を卒業。同年PHP研究所入社。 87年から、同研究所内に松下幸之助が設立した新政策研究提言機構「世界を考える京都座会」の事務局に勤務し、 各種研究プロジェクトのコーディネーターを務める。89年に京都座会の国土創成研究会が提言した「ジャパン・コリドール・プラン」は、 リニアモーターカーの活用による均衡ある国土利用の実現をめざしたもので、 新聞などで「民間版四全総」とも評された。これを契機に、 地域政策分野の研究に専念。 独自の視点からの自主研究や講演活動に取り組んでいる。これまで、全国各地の地域連携や広域行政、市町村合併などを数多くフィールドワーク。 「平成の大合併」以降の市町村のあり方についての諸方策や、大都市制度・地域主権型道州制について研究・活動している。関連記事■ 地方経済を再生させる「企業とまちのたたみ方」〔2〕■ 人口減少時代の自治体像 ~不都合な現実を直視せよ■ 「ネオ・アベノミクス」のすすめ■ 中国のこれからと日本が果たすべき役割〔1〕■ 「ザクとうふ」の相模屋食料、急成長の秘密

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    日本はイタリア地方都市のように国家や政府に頼らず世界化を

     消費税増税をなんとか実施したい安倍政権にとって、「地方創生」は最重要課題である。関連2法が成立したが、法律ができたところで、地方が蘇ることはない。そう断言する大前研一氏が、地方創生のモデルプランを提起する。大前氏はイタリアのあり方に注目しているようだ。* * * イタリアは財政破綻国家という印象が強いが、実は国家が滅びても地方は全く困らない。それどころか、どっこい地方は栄えている。なぜなら約1500の小さい町の大半が自前の産業を持って世界化し、経済的に自立しているからである。いわば「国破れて地方都市あり」なのだ。 もともとイタリアは都市国家の集合体である。都市国家は「自衛」「自治」「自分で稼ぐ」という意識が非常に強く、その歴史と伝統から各地方都市の多くが「世界で1位のものを1つだけ」作っている。バッグの留め金だけ、ベルトのバックルだけ、照明器具だけといった具合である。 たとえばニットの伝統的な産地は、カルビという人口1500人ほどの小さな町だ。ニットは、とくに女性ファッションで非常に重要な商品であり、その中心地のカルビでは年1回、来シーズンのファッションのためのニットショーが開かれる。そこに世界中から有名なファッションデザイナーやバイヤーがやってきて、翌年の商品を注文していくのだ。 イタリアに見習いたいもう1つのポイントは、生産部門を他国に切り離しても、デザイン部門は頑として動かさなかったことだ。 靴やバッグをはじめとする革製品、洋服、家具などの製造部門はトルコやルーマニアに拠点を置いて製造ノウハウを移転しているが、デザインだけは絶対に教えない。 イタリアからデザイナーが金曜日の夜に現地へ飛んで日曜日の夜に帰ってくる、というようなことまでして死守している。イタリア製品にとってデザインは“生命線”だからである。 一方、日本の地方都市で自前の産業を持って世界化している例としては、福井県鯖江市の眼鏡フレームが挙げられる。しかし、残念ながらOEM(相手先ブランド名製造)が大半で、世界に通用する自前のブランドを持っていない。デザインを他人に依存し、受託生産しているのが現状だ。 あるいは日本には、陶磁器なら薩摩焼や伊万里焼、九谷焼など素材としては素晴らしい伝統工芸品がある。しかし、海外では知名度がまだまだ低く、多くの上流家庭が食器棚に並べている常備品にはなっていない。 今こそ、産地の市町村がイタリアの地方都市のように、国家や政府に頼らず自力で世界化を目指すべきであり、その気になれば高額商品を世界中に普及・販売することも不可能ではないはずだ。 実際、イタリアに限らず、ドイツのマイセンやローゼンタール(以下、陶磁器・洋食器の産地・メーカー)、デンマークのロイヤル・コペンハーゲン、イギリスのウェッジウッド、ハンガリーのヘレンドなどはそれを実践し、世界に高額商品を売りさばいている。 日本の地方がイタリアモデルに学ぶべきことは、実に多い。もはや、選挙対策にすぎない「地方創生」などのスローガンを掲げる国家には頼っていられないのである。関連記事■ 地方の人口減少や都市の高齢者激増等の今後の対策を考える本■ ポルノ産業1人あたり売り上げ 韓国が世界一、日本は2位■ 長岡市名物の「イタリアン」 全国区だと信じている市民多い■ Jポップの歌詞の分析を基にしながら今後の日本を考える社会論■ 日本人のSEX 回数はギリシャの29%で快感達成率は伊の41%

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    東京一極集中が地方を救う

    地方創生」―。この言葉のモヤモヤ感がたまらない。日本の人口がどんどん減り、海外との競争がより厳しくなる将来を考えれば、地方よりも前に東京や大阪などの中核都市の競争力をもっと引き上げる必要があるのではないか。このままでは世界はおろか、アジアの都市にも勝てない。

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    世界であまり例がない 東京一極集中の是非を考える

    矢理に地方分散投資を急ぐのではなく、ヒト・モノ・カネの地方分権をした方が効果的だ。 安倍晋三政権の「地方創生」がその突破口になるべきであるが、どうも道州制のような長期ビジョンがなく、小粒感は否めない。関連記事■ 自治体の消滅 「東京集中」破綻の警告だ■ 石破氏、「地域再生」キーワードは自立■ 地方の生き残り、30万都市圏で若者定着を

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    それは「東京」でなければいけないのか

    2期」を迎えることになった安倍政権によるアベノミクス。その目玉として掲げられるローカルアベノミクス=地方創生の理論的支柱となっているのが、元岩手県知事で日本創成会議座長を務める増田寛也氏だ。その著書『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)は「このままでは896の自治体が消滅しかねない」と訴えかけ、大きな衝撃とさまざまな議論を呼んでいる。 「消滅」の真意や東京一極集中の是非、にわかにクローズアップされてきたコンパクトシティ構想の実現可能性について、エコノミストの飯田泰之氏が聞く。異なる「地方」観と異なる政策が必要だ飯田:ご著書の『地方消滅』については類書や批判本が書店店頭に溢れていて、もはやひとつのジャンルになってしまった感さえあります。これだけ多くの方にインパクトを与えた背景には、現内閣の掲げる「地方創生」以前から、地方が危機に瀕しているという問題意識が広く共有されていたことがあったのだと思います。その分、このタイトルは衝撃的でしたし、やはりそうか、と多くの人に再認識させるものでした。 お話をうかがっていく前に確認させていただきたいのは、この本が前提としている「地方」のスケール感です。というのは、人によってこの言葉でイメージする人口規模や広さは、大きく異なる印象があります。増田寛也氏増田:厳密な定義ではなくあくまでも指標ですが、まずは人口40万人以上の都市が地方経済の牽引力にならないと厳しいという実感を持っています。それらが活躍すれば、その近隣の5万~10万人都市や中山間地域でも、波及効果や機能連携で住みやすくなりますし、20万~30万人都市であれば40万人都市との共生で、独自の産業や雇用を生み出すこともできるでしょう。サービス産業が成立するかどうかがひとつの試金石になります。飯田:牽引役が必要だということですね。増田:そうです。それによって日本の人口の大きな部分を抱えている5万~10万人都市も、住みやすい地方であり続けることが可能になるでしょう。 中山間地域、5万~10万人、20万人以上、40万人以上、それぞれに機能分担をして別の施策を考えていくべきだと思いますが、この議論をすると「20万人以下は捨てろということか」という批判を受けやすい。それはまったくの誤解で、実際にこの本では全国の市町村区の将来人口推計を掲載して、モデルやスケールを分けて考察しています。増田:さらに「地方」は東京以外の話ではなく、たとえば豊島区など、東京23区にも消滅可能性があることを指摘しています。この本での「地方」とはすべての自治体のことなんです。飯田:基礎自治体の維持可能性を検証している、と。増田:そうです。ですからいわゆる「田園が消滅する」「里山が放棄される」といった議論ではありません。飯田泰之氏飯田:「限界集落をどう維持するか」という議論でもないということですね。増田:それはまた別の社会政策的アプローチが必要になるのだと思います。飯田:この本への批判にも、議論が混在している印象がありましたが、いまのお話で論点がクリアになったように思います。 増田さんは1995年から2007年までの3期12年間にわたって、岩手県の知事としてご活躍されてきました。私も縁があって岩手県にはよく行くのですが、県全体で見ると都市機能の多くは盛岡市に集約されていて、三陸沿岸部は漁港とそれに付随する施設や産業などで街が構成されている印象です。逆にいえば大きな漁港のない地域は厳しい状況にあるように思います。 これは全国共通の問題で、4月に施行される改正地方自治法では人口20万人以上が「中核市」となりますが、実際はほとんどの場合は「まず県庁所在地をどうするか」ということになるだろうと思います。それらが活性化して地方経済の牽引力になるために、必要な産業とは何でしょうか?増田:人口減少が続く岩手県内でもトヨタ関連やセブン-イレブン・ジャパンなどの大型の企業誘致を続けている北上市の場合、2014年11月時点での有効求人倍率は1.87倍で、地元だけでは労働力が不足している状況です※。 海外との競争力のある製造業のある都市とその周辺地域では、まだ可能性があります。ただ、製造業誘致はどこでやってもうまくいくわけではありません。 やはり柱は広義のサービス産業になっていくでしょう。百貨店や商店などの物販はある程度までeコマースに代替されてしまうでしょうが、交通事業者や医療介護など、人的資本が必要とされる業種そのものは高齢化で今後しばらくは需要が増していくはずです。こういった業界が、若者にもっと給料を払えるようにならないと厳しい。※参照記事:「岩手日報」2015年1月5日付労働力不足に外国人採用の動き 北上、数百人規模かhttp://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20150105_1飯田:製造業は大きな工場が来た時の、雇用へのインパクトが非常に大きかったですし、しかも被雇用者の熟練が進むという大きなメリットがあります。だからこそ、これまでの雇用政策では企業誘致の花形だった。その一方でサービス産業は、「食べさせられる人数が少ない」という点からこれまでの地域雇用政策ではともすると軽視されていたように感じます。増田:サービス産業ひとつひとつはそれほど多くの雇用を抱えることはできませんが、現実に製造業をはじめとして他産業がどんどん衰退しています。製造業頼みはシャープの亀山工場のように、ほんの数年で状況が一変することもあり、かなり厳しいでしょう。飯田:これから増やすという目標を発生するためには輸送条件に優位性がないと厳しいですよね。その意味で製造業立地に向く都市は幸運だということにはなる。増田:おっしゃる通りです。新たに公共事業を行って立地環境を整えるような時代ではなくなっています。現状のなかでのベスト、新しい産業の芽が残っているのがサービス産業であるならば、そこで新しいビジネスやサービスの可能性を探っていく必要があるでしょう。農業や漁業など第一次産業に優位性があり他の産業が難しい地域では、中核となる都市との連携を考えなければいけない。そのためにも中核となりうる集積地でいろいろな施策を打って、周辺地域の牽引力となってもらう必要があります。政策的に集住を進めることは日本ではとても難しい面があるので、今ある集積地への政策がカギになると思います。「それでも東京にいる意味」を問いなおす飯田:この「WEDGE Infinity」でも対談をしたまちづくりコンサルタントの木下斉さん(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4257)は、若者が安心して小さなお店を起業しやすい街が若者にとっての「住みたい街」になることを重視しています。中央からの目線では...。増田:そう思います。地方には空き家も空き店舗もたくさんあります。本来はこれらを無料で貸し出して、維持管理はテナント側にやってもらうくらいでもいい。でもそうなっていないのは、そんな視線をもったプロモーターがいないからです。商工会議所も商工会も身内で固まっていて、なかなか新しい風が入らない。増田:大都市の大学を出た人の雇用がないのは大きな問題で、とくに若い大卒女性にとって魅力のある職種が不足しています。おっしゃるように小さな商売を起こしやすいことはその魅力になりえますが、それは従来型の商売とは違うので商工会にも自治体にもノウハウがありません。金融機関がノウハウを提供してくれるのがもっとも相応しいのですが、そうなってもいません。飯田:自治体や商工会、商店街が音頭を取ると行政にお願いして立派な複合施設を建てるとか、そういったことになりがちですね。増田:ハコモノに目が行きがちですね。飯田:立派なハコの建築費から家賃を逆算すれば、その家賃を払えるような新規事業者はいなくなってしまうので、東京からチェーン店を誘致することになる。増田:チェーン店は撤退する逃げ足も速いですし、地元のお祭りにもなかなか参加してくれません。ハコを作るにしても小さな起業者を集められるような設計が必要ですね。飯田:私はJC(公益社団法人日本青年会議所)のイベントや講演のお仕事をさせていただくことが多いので、地方の商店主の二代目、三代目の人たちと接する機会は少なくありません。しかし、彼らのなかでも東京の大学を卒業していて、今でも月に2回くらいは東京に来ている、そんなライフスタイルの人が少なくない。継ぐ商売があるから故郷に帰っているわけですが、継ぐものがない人はやはり東京周辺に住み続けることになるでしょう。高校までは地方で教育を受けた人的資本が東京に集中しているわけです。裏返せばよそが育てた人的資本が集中しているからこそ、東京は生産性が高いということでもあります。 この状況を転換させることは容易ではないですが、東京一極集中を避けながら、クリエイティブなビジネスを地方に集積させ維持するためには何が必要なのでしょうか?増田:その答えは、おそらくまだ誰も持っていないのでしょう。東京への集積をいたずらに崩すことは、日本全体にとってかえってマイナスです。 しかし東京という都市の持続可能性を見れば、集積により地価も高くなっていて現役世代が土地を取得することも家賃を払うことも厳しい。高齢者の介護施設入所待ち、いわゆる「待機老人」も43000人に上ります。これは団塊世代が後期高齢者になる時点で一気に増えることになります。増田:高度経済成長は人口移動で見ると、東京に集めるだけの一方通行で、集まった人間が適度に散らばることはありませんでした。もちろん、それを今度は東京の都合だけで高齢者を地方に分散させるというわけにもいきませんが、何らかの方法で人口は対流させないと、若者にとっても住みにくい国になってしまいます。高齢者だけではなく待機児童問題の深刻化もご存知の通りです。 暮らしやすさという意味の利便性は、東京よりも地方都市にあります。とはいえ二地域居住は富裕層にしかできませんし、東京の郊外から都心部に通うのでは通勤時間ばかり長くなります。若年層では往復3時間を超えるような人も増えていて、生活しやすい状況とはとてもいえません。 集積のメリットは享受しつつ、生活の利便性を保つには、東京に集めざるをえない機能とそうではないものを切り分ける必要があります。たとえば小松製作所は教育研修部門を、創業の地である石川県小松市にすべて移転させました。主要工場である粟津工場もあり研修効果も高く、宿泊施設は作らずにすべて市内の旅館などを利用するので、宿泊や飲食といった経済効果も地元に還元できます。工場の跡地に大きな体験型広報施設(こまつの杜 http://www.komatsunomori.jp/)を作るといった取り組みもされています。 高い地価を払ってでも東京での集積が必要な部門と、そうではない部門はどの大企業にもあるはずです。ICTも大いに活用できるでしょう。高い地価や生活環境の悪さに見合う対価を得ているか、考えるべきでしょう。ますだ・ひろや 1951年東京都生まれ。77年に東京大学法学部卒業し、建設省入省。95年から2007年まで岩手県知事、07年から08年まで総務大臣を務める。2009年より、野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授。2011年より日本創成会議座長。いいだ・やすゆき 1975年東京生まれ。エコノミスト、明治大学准教授、シノドスマネージング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書に『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『ゼロから学ぶ経済政策』(角川Oneテーマ21)、『脱貧困の経済学』(共著、ちくま文庫)など多数。やなせ・とおる フリーランス編集者、ライター。1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に飯田泰之・雨宮処凛『脱貧困の経済学』、五野井郁夫『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』、若田部昌澄『もうダマされないための経済学講義』、五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』など。※この記事は前篇です。続きの後篇はこちら。http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4731関連記事■ 自治体の消滅 「東京集中」破綻の警告だ■ 石破氏、「地域再生」キーワードは自立■ 地方の生き残り、30万都市圏で若者定着を

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    農業による地方創生は「日本全国、ブルゴーニュ化」

    淳(東洋学園大学教授) 内閣改造後1カ月、安倍晋三内閣の政策課題の柱として位置付けられているのは、「地方創生」である。筆者は、本来、対外関係に掛かる政策にもっぱらの関心を抱いているので、内治に掛かる政策には特段の知見を持たない。ただし、筆者は、青森県八戸市から「八戸特派大使」を委嘱されている立場上、どのような対外戦略の相の下に地方振興に掛かる政策が展開されるかには、相応の関心がある。日本の「ブルゴーニュ化」 石破茂地方創生担当相は、農業を「地方創生」の中核として位置付ける旨、語っている。「和食」が世界文化遺産に登録された流れの中では、石破大臣の認識は、正しいのであろう。それならば「地方創生」を対外戦略に位置付ける論理は一層、明確にされてよい。 筆者は、農業を軸とした「地方創生」の理念は、「日本全国、ブルゴーニュ化」とでも呼ぶべきものなのであろうと考えている。フランス・ブルゴーニュ地方が、その豊かな食文化によって世界の美食家にとっての「憧憬(しょうけい)の場所」になっているように、日本という国というよりは日本の各地方が、海外から憧憬のまなざしを向けられるようにしなければならない。 ちなみに、たとえばフランス産ワインには、ブルゴーニュに限らず、ボルドー、シャンパーニュ、ロワールといった産地があり、中でもボルドー・メドック地区産のものは、5つの階級に格付けされている。その格付け筆頭に位置付けられるワインには、高名な「シャトー ラトゥール」や「シャトー マルゴー」といった銘品が含まれる。 こうした「平等」の建前に反するような仕方もまた、実は海外からの憧憬の感情を刺激する仕掛けになっている。日本酒や牛肉に代表される農産品を海外に展開するに際しては、たとえ日本国内での「摩擦」を覚悟してでも、こうしたフランスの仕方に倣うことは、大事であろう。称号を付けて銘品を紹介 加えて、この文脈で参照すべきは、英国における「ロイヤル・ワラント」(英国王室御用達)制度である。 19世紀、ビクトリア女王統治期の英国では、安価な外国産品から国内産業を保護するために、12世紀に始まっていた「ロイヤル・ワラント」制度の拡充が図られた。「ロイヤル・ワラント」一覧には、紳士服、靴、革製品、陶磁器から紅茶、文房具に至るまで、「英国の魅力や声望」の代名詞として諸国の名士たちの垂涎(すいぜん)の的になった銘品の名前が並ぶ。吉田茂が「ターンブル・アンド・アッサー」でシャツを仕立て、「ヘンリー・プール」で紳士服をあつらえていたという挿話は、そうした銘品に反映された「英国の魅力や声望」の意味を物語る。 ちなみに、NHK-BSプレミアムが放映する『イッピン』という番組では、日本各地の銘品が紹介され、たとえば「愛媛・今治のタオル」「岩手の南部鉄器」「新潟・燕のカトラリー」「岐阜・関の包丁」「広島・熊野の筆」といったものが取り上げられている。筆者の提案は、こうした各地の銘品に「日本のロイヤル・ワラント」の称号を付した上で、海外に広く紹介していくことである。 実は、明治以降、昭和20年代までは、宮内省御用達という「日本のロイヤル・ワラント」制度は厳然として存在し、それは近代日本の「殖産興業」の一翼を担っていた。現在、東京・銀座に軒を連ねる老舗の名店には、過去に宮内省御用達の栄誉を拝していた事例が多い。 無論、昔日の宮内省御用達制度と同じものを平成の御代に復活させることが適切であるかは、意見が割れるかもしれないけれども、こうした日本各地の銘品が銘品である所以(ゆえん)を世界中に認知させていく仕組みは、適宜、用意されていくべきなのではないか。 「メード・イン・ジャパン」の質の高さは、既に広く知られているかもしれないけれども、今後は、「どのような『メード・イン・ジャパン』か」が問われることになるであろう。そうしたことを海外に緻密に伝える努力は、決して十分であるとはいえないではないか。地方の魅力を海外に伝える 「地方創生」という政策課題ですらも、「グローバリゼーション」が進展した現状では、対外戦略における位置付けを考慮しないままならば、実の伴った対応は難しいであろう。目下、「クール・ジャパン」の言葉で「日本の魅力や声望」を伝える努力は、さまざまに行われているかもしれないけれども、「地方創生」の文脈で主眼が置かれるべきは、たとえば「青森の魅力」や「島根の魅力」といったように、それぞれの地方の魅力を直接に海外に伝える努力である。 前に触れた日本各地の銘品は、そうした努力に「説得性」を与える材料として扱われるべきものである。「地方創生」の文脈で考慮されるべきことは、多面的である。関連記事 ■ 安倍首相は「中興の祖」となるか■ 石破氏、「地域再生」キーワードは自立■ 地方の生き残り、30万都市圏で若者定着を

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    新幹線で地方は復活するのか

    、ライター) 人口減少の進行と地方経済の衰退を受けて、第二次安倍改造内閣が重要課題として掲げている「地方創生」。「官僚や有識者を地方に派遣し、地域の声を聞く」「補助金バラマキにはしない」などと政権内部からは勇ましい声が聞こえてくるが、具体像はまだ見えていない。 一方で、「創生」される側である地方に目を移すと、B級グルメやゆるキャラのブームが全国津々浦々まで浸透した感もあるものの、それによって本当に地域の活性化は果たされたのか、疑問も多い。 まちをひとつの「会社」に見立てて経営を立て直す事業に携わる木下斉氏と、経済学の立場から都市と地方のあり方を模索する飯田泰之氏の対話は、戦後日本と地方の関係を象徴する「新幹線」を問い直すことから始まった。交通網の発達で 人もお金も地方から大都市へ 木下:北陸新幹線が来年の春に開通します。地方には相変わらず新幹線待望論が根強いのですが、それが果たして地域活性化につながるのかというと、そうとは限らないと思うんです。つまりそれで地元に流入するお金が増加するのかという問題ですね。 飯田:新幹線の駅があるということには、とてつもないメリットがありますが、それは移動する人、つまりは頻繁に地域間を、もっといえば東京とその地区を行き来する人にとっての利便性でしかないですよね。 木下:その移動に関するメリットは絶大ですよね。地方から仕事の依頼を受けるときも、近くに空港か新幹線駅があるかどうかはすごく気になります。どちらもない場所に行くためには半日、場合によっては丸一日かかってしまう。地域外から行く人にとってのハードルは、きわめて高いですよね。飯田泰之さん(左)と木下斉さん(右) 飯田:そうですね。空港から大きな街が近いとか新幹線の駅前が中心街という地区だと下手すると関東近県のちょっと不便なところよりも「東京に近い」とさえ感じられますからね。 木下:地元の方にとっても利便性がまったく違います。アクセス圏内に駅か空港があれば、地域内から地域外への人の移動は確実に増大します。 飯田:入ってくる人が多くなるということは、出ていく人が多くなるということでもありますよね。 木下:まず個人的なレベルで言えば、お金も時間があるから当然ですけど、やはり富裕層ほど移動が多くなります。知り合いの地方在住者でも、空港の圏内に住んでいる人の中には、年間の交通費が300万円を超えるという方もいます。彼らはちょっとした集まりがあれば、すぐに東京に出てくる。東京にセカンドハウスをもって行き来している場合もあります。国内なら飛行機だったらまぁ1時間半くらいですし、新幹線でも5時間あれば東京などに出てこれる。お金に余裕があって、消費意欲がある人の財布ほど、多様な消費する場が集積している消費地に吸い寄せられてしまう。木下斉さん 企業などの場合にも、新幹線が開通すれば、それまで分散して支社・支店を設けていたものを統廃合してしまいます。出張で行き来できるような範囲にわざわざ事務所を固定的に置くことはしません。ましてや地方は市場縮小のプロセスにあるので、より効率的な配置をしていく。東京資本の企業の支店勤務者は地方では高所得者層になり、地元消費でもそれなりのポジションを占めていたのが、一気に薄くなってしまう。事務所機能なども新幹線などの高速移動網で接続された大都市に、一気に吸い上げられていく。 飯田:交通網の発達により、人とお金が地方から大都市に吸い寄せられてしまう「ストロー現象」は以前から指摘されています。近年の典型例は東北新幹線でしょう。割を食うかたちになったのが盛岡と仙台です。 僕自身は、4時間以内の移動時間だったらなるべく電車で動きたいんですよ。飛行機は本数も限られているし搭乗前に余分な時間を40~50分は取られてしまうこともある。それに比べると新幹線はギリギリに飛び乗ることができますから。『Wedge』も新幹線で毎号読んでいます(笑)。 木下:「買っています」じゃないんですね(笑)。地方の方でもグリーン車に乗っているから読んでいるという方は多いですね。 飯田:まさに地方の富裕層が、東京に出てきて消費してしまう。これは地元経済にとっては非常に深刻な問題です。日本におけるお金持ちはいわゆる名家や地元財界人、医者。そういう人たちが、地元のデパートの外商部を家に呼ぶ、そんな文化は交通網の発達により、おそらくほとんど消滅してしまいました。お客が少なければ品揃えも薄くならざるを得ません。その結果ますます地元百貨店よりも東京や大阪に行って消費ということになるわけです。 木下:そうなんですよね。今の地方の富裕層は本当に良いモノを知っているので、地元百貨店の品揃えではもう満足しなくなっている。消費地に出て行って消費をするというライフスタイルが確立してしまった。北陸新幹線の開通に関しても「これで活性化する」といまだに言われていますが、そんな単純ではない。全国各地の新幹線駅周辺を見れば分かります。普通に東京からの日帰り可能エリアに完全になってしまうわけですから、個人の面でも、企業の面でも、流入よりも吸い上げられる危機感を優先して持ったほうがよいだろうと思うわけです。 飯田:利用する側にとって交通網の整備は本当にありがたい。さらに大消費地にとっては新規顧客のチャンスというわけですが。その一方で、「地元のためになる」を額面通りに受け取ってはいけない部分もあるでしょう。 木下:そうなんですよ、何といっても便利ですからね。「国」という単位で見れば、お金を持っている人の移動が活発になって消費なども喚起され、企業活動が効率化されていくことはメリットですが、「地方」にとっても同じ構造とは限らない。 飯田:交通手段の発達によって、都市への集中はますます進みやすくなっていますからね。 木下:しかも今後はさらにより大きな都市への集中がどんどん進むでしょう。危機感を持たなければいけない人たちが、今は持っていないんです。地域活性化とは「貧困の解消」である 飯田:インターネットが普及し始めたときに、「これで地方でも東京にいるのと同じように仕事ができる」などとさかんに言われました。 木下:はい、リモートワークでどこでも仕事できるという考え方ですね。 飯田:実際は、ほぼすべての実証研究が正反対の結論を出しています。リチャード・フロリダ※などが指摘するところですが、知的生産やクリエイティブと呼ばれるような職種ほど、同じような職種の人たちが集積している場所でないとできないことがわかってきています。 ※リチャード・フロリダ:都市経済学者。「クリエイティブ・クラス」に着目した地域発展論を提唱。邦訳書に『クリエイティブ都市論』(ダイヤモンド社)など。 木下:「分散するだろう」と言われていたのとは、逆の現実なんですね。 飯田:なぜシリコンバレーがいまだに存在しているか、を考えれば明白です。事前の予想では世界で一番リモート・ワークに向いていそうだと思われた人たちが、一番地理的な集積を選んでいるわけです。 木下:物理的に集まっているほうが営業効率も高いし、人材集めも行い易く、何もかもが進めやすいですよね。わざわざ全てを分散させるメリットを探すほうが難しい。しかも多くは付加価値の高い生産をしている人なので、大都市で暮らすコストは吸収できてしまいます。余暇に海や山に行けるのは地方に暮らしたり、サテライト・オフィスなどを設けるメリットではあるけれど、そこを中心拠点にする理由はなかなか見いだせないですよね。小さいうちはできても、規模が大きくなったらやはり大都市に出てこざるを得ない。 飯田:集中することのメリットは確実にある。その上で、あられもなく根本的な話なのですが、いったい何をすれば「地域活性化」なのでしょうか(笑)。飯田泰之さん 木下:僕らがやっているのは「域内をひとつの会社として見立てる」ということなんです。その上で、その「会社」の収支を改善する。論理はシンプルで、地域に入ってくるお金をいかに増加させ、出て行くお金をセーブするか。域内になるべく留保させて、地域内での消費を活性化させる。それが可能になる環境を整備することが「活性化」、というのが我々の定義です。 飯田:ジェイン・ジェイコブス※の「輸入代替」の視点ですね。入ってくるものを自給できるようにし、内部循環を作るという。 ※ジェイン・ジェイコブス:ノンフィクション作家・ジャーナリスト。主著に『都市の経済学-発展と衰退のダイナミクス』(ちくま学芸文庫)など。 木下:ところが、今は稼ぐ手段もなければ、投資する先も地域内になくて地元外になってしまって、どんどん資金も人材も出て行く一方というのが多くの地方の現実です。「地方の衰退」という言葉で語られることが多いですが、我々はあえて「地方の貧困」として捉えています。 それは如実に「貧困」なんです。教育機会も低下していますし、人口も20万人から15万人、さらに10万人と規模が小さくなっていくと、高校ごとの学力レベルの違いもなくなってきて、みんな同じレベルになってしまう。学力の高い子ほど高校入学時点から地域外に出なければいけない状況になってしまうのは、その地域の人口規模の大きさによって、当然のことですが皆が出せる教育負担の総額は縮小するわけで、結果として教育機会の多様性も失われてしまうからです。高い能力のある人ほど、早い段階で地域を離れるのがその個人にとってプラスになる。そして逆の構造もまたそこにある。これは貧困の連鎖であり、そういう地域を活性化するということは、「貧困の解消」を意味します。結局は産業であり、所得であり、それに紐づく税収の問題です。だからすべての問題が経済に立脚しているともいえますね。 飯田:学歴そのものというよりもその都市が稼げる都市か否かの方が収入には有意に影響するというエンリコ・モレッティ※の指摘がありますが、そのキーになる移住の可能性を高めるのはやはり学歴ではないかと私は考えています。大卒者が少ない地域では、そもそも「大学に行く」という概念が希薄です。これは文化資本の問題ともいえると思いますが、大学に行くカルチャーがなければ、高校受験段階で進学校に行く、行きたいという考え方にも至りにくい。つまりは勉強しなければいけないという空気がないんです。 ※エンリコ・モレッティ:労働経済学者。労働人口や投資、雇用の増減に着目し、都市間の格差拡大を分析した『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』(プレジデント社)が大きな話題に。 飯田:先進国に共通の現象として、大卒者の年収はその国の経済成長率とおおむね同じペースで伸びていきます。ところが高卒者の就く仕事の年収はほとんど上がっていない。ただし起業家の年収になると学歴は関係なくなりますが、これも起業というカルチャーがなければ起こらない。 マーケティング理論では「消費者の選択肢に入る」ということが重視されます。人生においても選択肢に入らない、言い換えれば思い浮かばないものを選ぶことはできないんです。起業することを思い浮かべない人は起業家にはならないし、進学という選択肢が頭から排除されている人は大学には行かない。カルチャーの有無は世代を重ねていくことによって、地域間の格差を拡大させます。いわば国がしだいに分解していくことを意味しています。Uターン組が役所に就職してしまう 木下:分離していく方向性はすごく強いですね。地域のプロジェクトを我々がやっていても、不幸だなと思うのは、せっかく東京で勉強したり、仕事して地元に戻ってきた大卒者の方が付加価値を生まない側に回ってしまうことがとても多いんです。つまり、役所などの公共セクターで働いてしまう。 飯田:そうですね。大卒で、地方で、雇われるとなると公的セクター以外に選択肢がないに等しいという地域もあります。 木下:そうです。教育を受けている世代は非生産的な地域のコストセンターに回ってしまい、逆に地元に残った選択肢が少ない側の人達のみが、自分でできる範囲の商売をしているという現実もあります。こちらもまた公務員になる層とは大きく乖離しています。結局は高卒でバリバリ店やっているとか、中小企業継いでいる人とかのほうが地方経済を支えていて、高度教育だけは受けた人材が行政で地域経済の重荷になってしまうという地方の構造があるのです。 木下:例えば、地域で新たな事業をやろうとして、役所の人たちと話していても、埒が明かないことが多いわけです。東京とかでバリバリ事業をやりたいとか、リスクを取って起業しようとかいう志向がないからこそ、地元に戻ってきて役所に就職して落ち着いてしまっている、基本的にはそういう場合が多いわけです。 そういう方に新規事業の話をしても理解してもらえない。目の前に与えられた仕事をちゃんとやろうというモチベーションは正しいものですが、それだけではもうどうにも地方が立ち行かないことが明らかになっているのに、これまでの仕事の枠組み、進め方以外を自分で開拓していこうとは思わないことが多い。しかし彼らは行政組織として許認可を含めた権力を有しているわけです。ただし、若手の一部にはまだ環境に毒されずに、どうにか新しいことに取り組みたいという人もいます。だけど、自分からは行動できない。このあたりを狙い撃ちにします。 一方で、やる気はあってリスクもバリバリとって事業やるけど、権力もなければオーソライズもされていない人たちこそが、地域で様々な事業を起こし始めています。これらの人たちを街で飲み歩いて発掘することも大切です。 権力を持っているけれど自分達が率先して挑戦できない人と、やる気があってバリバリ挑戦するけど地元では公的立場のない人を組み合わせて事業化を図っていく、これは我々の仕事では極めて重要な役割です。外部の人間であり、かつ市役所にも一定認知されている、そういう存在が間をつなぎながら、地元にいても相容れない2つの層が、互いのメリットを認めて事業をやる枠組みにしないと、しっかりとした実績を上げることは難しいです。 飯田:東洋大学の川崎一泰さん(財政学・公共経済学)※の研究では、地方公務員と民間の官民給与格差が大きい地域ほど、労働生産性が低いことが指摘されています。 ※川崎一泰(2013) 「官民給与格差が地域経済に与える影響」,『官民連携の地域再生――民間投資が地域を再生させる』(勁草書房)、第四章。 合理的に判断する人ほど、給料が高ければ公務員になってしまう。地元に愛着を持っていて、地元を何とかしたいと思っている人は多いでしょう。でも、さあ何をやるか、となるとビジネスに向かわずに、地方公務員になってしまう。 木下:もっとビジネスマインドのある人は東京に来てしまうし、海外にだって行ってしまいますよね。おっしゃるように地域内での給与体系は公務員が一番高いケースが多いし、様々な社会保障も恵まれています。ビジネスを起こそうと思った時に、よりチャンスのあるところでと思うのが自然です。 だからある意味で相対的に行政のポジションが低い「大都市集中」が進んでいくのは自然な流れだと思います。せっかく頑張って地元で事業を興しても、役所で淡々と仕事をしている人のほうが給料高かったら、やはりバカバカしくなるし、生産性なんてあがらないですよね。だから、地域で事業を興しても、規模が一定以上になると大都市に拠点をシフトしてしまう人も少なくありません。地域経済の規模は小さい割にしがらみは多くて、さまざまな「調整」もかかったりします。ビジネスの自由さや公正さでいえば、大都市のほうがフェアなんですよね。 飯田:「都市は人を自由にする」は現代にも生きているのかもしれません。よほど強い動機がないと、地方で事業を興して継続していくのは難しい現実があるわけですね。 きのした・ひとし 1982年生まれ。一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事、内閣官房地域活性化伝道師、熊本城東マネジメント株式会社代表取締役、一般社団法人公民連携事業機構理事。高校時代に全国商店街の共同出資会社である商店街ネットワークを設立、社長に就任し、地域活性化に繋がる各種事業開発、関連省庁・企業と連携した各種研究事業を立ち上げる。以降、地方都市中心部における地区経営プログラムを全国展開させる。2009年に一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス設立。著書に『まちづくりの経営力養成講座』(学陽書房)、『まちづくりデッドライン』(共著、日経BP社)など。 いいだ・やすゆき 1975年東京生まれ。エコノミスト、明治大学准教授、シノドスマネージング・ディレクター、財務省財務総合政策研究所上席客員研究員。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。著書に『経済は損得で理解しろ!』(エンターブレイン)、『ゼミナール 経済政策入門』(共著、日本経済新聞社)、『歴史が教えるマネーの理論』(ダイヤモンド社)、『ダメな議論』(ちくま新書)、『ゼロから学ぶ経済政策』(角川Oneテーマ21)、『脱貧困の経済学』(共著、ちくま文庫)など多数。やなせ・とおる フリーランス編集者、ライター。1972年伊豆大島生まれ。企画・編集をした本に飯田泰之・雨宮処凛『脱貧困の経済学』、五野井郁夫『「デモ」とは何か―変貌する直接民主主義』、若田部昌澄『もうダマされないための経済学講義』、五十嵐泰正・他『みんなで決めた「安心」のかたち―ポスト3.11の「地産地消」をさがした柏の一年』、片岡剛士『アベノミクスのゆくえ』など。※この記事は全4回のうちの第1回です。第2回以降はこちら。第2回 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4260第3回 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4262第4回 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4270関連記事■ 3割が地方定住希望 引退後は地方で学生満喫■ 地方の生き残り、30万都市圏で若者定着を■ 石破氏、「地域再生」キーワードは自立