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    日本が「反面教師」韓国から学べること

    うが、その目論見(もくろみ)は今のところ大外れで、彼らの自尊心は大きく傷ついたことでしょう。 戦後の日韓関係においては、韓国が喚(わめ)けば、どんな無理難題でも日本が折れて、最終的には彼らの要求をのんできました。敗戦国であるという負い目や、誤った戦後教育で植え付けられた罪悪感から何となく、彼らの要求を受け入れてきた日本人も日韓ワールドカップで生の韓国を知り、日韓関係のあり方に疑問を持つようになりました。 そして、インターネットを中心に学校で教えてくれなかった本当の歴史を知るにしたがい、だんだんとエスカレートする彼らの際限なき要求や言い掛かりに怒りを覚え、この歪(いびつ)な日韓関係に終止符を打ちたいと思う人が増え、昨年のホワイト国指定解除につながったのだと思います。 わが国が韓国をホワイト国から除外したのは、あくまで単なる輸出入管理の問題なので、これほどまで大騒ぎするほどのことではないのですが、以前の日本政府であれば、その当たり前の措置すらできたかどうか疑わしいです。 そもそも欧州連合(EU)ですらホワイト国に指定していない韓国をなぜ日本が指定したのか、そこにも韓国の言いなりになった日本政府の姿が想像できます。そんな韓国の言いなりであった日本が変わったのは安倍晋三という個人の資質もさることながら、国民世論が政府の後押しをしたことが大きく、それは現政権の対韓政策を国民の7割が支持するというアンケートの数字に表れています(韓国のホワイト国除外について、経産省が今年7月に実施したパブリックコメントの結果は総数4万666件のうち賛成が約95%、反対は約1%であった)。G20大阪サミットで韓国の文在寅大統領(左)を出迎える安倍晋三首相=2019年6月28日、大阪府大阪市住之江区(代表撮影)  おそらく今回、歪な日韓関係を変えようと思っている人たちは日韓GSOMIAが破棄されることを歓迎し、それを機会に韓国とできるだけ距離をとりたいと願っていたのだと思いますが、良い意味でも悪い意味でも期待を裏切ってくれるのが大韓民国という国です。 しかし、今回の結果を前向きにとらえれば、実質的には既に対馬海峡まで下りてきている38度線(防衛線)が名目的にもわが国の眼前まで迫り、韓国軍60万が完全に敵に回るまでの時間稼ぎと考えることもできますが、現在国会で行われていることを見ると、いくら時間を稼いでも無駄なような気がしてため息しか出ません。どう見られても気にしない また今回、韓国が行ったマッチポンプから自爆した一連の騒動はわれわれから見ると「情けない」の一言で言い表せるものですが、彼らは他国からどう見られようが一向に気にしません。 嘘も百回繰り返せば真実になると思い込み、自己主張だけを繰り返す面の皮の厚さは「こんなことをすれば世界からどう見られる」とか「国際社会は云々(うんぬん)」といったように他国の目を過剰に気にするわが国(特に外務省の役人)は、ある程度見習うべきだと思います。という私の感想はさておき、わが国では日韓GSOMIAを破棄しても日本に全く影響がないと言う人もいれば、逆に大問題だと言う人もいるのが実情で、さらに破棄が問題であるという人の中にも日本のためを思っている人と、韓国のためを思って言っている人がいるので問題はやや複雑です。 そこで日韓GSOMIAは、わが国の国益にかなうのか否かという観点から話を進めていきたいと思いますが、古くは日米安保、最近では安保法制など、問題の中身を知らずイメージだけで批判する人も少なくないので、そもそもGSOMIAというものは何なのかという話から始めたいと思います。 GSOMIAというのは「General Security of Military Information Agreement」の頭文字をつなげた略語で、日本語で言うと「軍事情報に関する包括的保全協定」です。一般的には、秘密情報を共有するものと勘違いされている方も少なくありませんが、相手国から提供された情報を他国に漏らさないという約束です。 大ざっぱに言えば「〇〇国のミサイル発射情報を教えるけど、それを他の国には言ってはいけませんよ」というもので、教えたくない情報を教える義務はなく、情報は軍事関連のものに限られますので、一部の人が言う拉致事件に関するものは含まれません。 そして今回の経緯について、日韓どっちもどっちというような言い方で双方が悪いというような言い方をする人もいますが、韓国側から一方的に破棄を宣言してきたものであるということを強調しておきます。 さらに言えば本協定は2016年11月23日に発効されたものですが、その約4年半前の2012年6月29日、日韓GSOMIA締結1時間前に韓国側の一方的な都合で延期された過去があることを忘れてはいけません。つまり、締結も破棄も韓国が自国の都合で一方的に日本を振り回しているのが実情なのです。 また、この問題は日韓だけではなく実質的には日米韓3国の問題であることも理解しておく必要があります。今回、米国が多数の高官を送り込むなど執拗(しつよう)に韓国に対して破棄撤回を求めたのは、米国としては朝鮮半島有事の際に日韓GSOMIAは必要不可欠であるという認識を持っているからです。ホワイトハウスで韓国の文在寅大統領(右から2人目)らを出迎えたトランプ米大統領(同3人目)=2019年4月11日、ワシントン(ロイター=共同) 常に戦争という選択肢を持ち続ける米国は、朝鮮半島有事の際に日韓GSOMIAがなければ日韓が情報を共有するため、米国が両国の橋渡しをしなければならず、一刻を争う緊迫した場面では命取りになりかねないという現実的な懸念を持っているのです。この米国のリアリズムを日本と韓国は共有すべきなのですが、日本の国権の最高機関は「花見」の話でまともな審議が行うことができず、韓国は従北政権と保守派の内戦状態で大混乱、北京と平壌から高笑いが聞こえてきそうです。 そして、決定的なのは軍事的技術的な問題よりも政治的に他国に与える影響の大きさで、本来、朝鮮半島での対立構造は日米韓(自由民主主義)VS露中朝(独裁全体主義)の3対3であったものが、韓国が日韓GSOMIAを破棄することによって事実上日米VS露中朝韓の2対4という図式になってしまうことで、パワーバランスが崩れると紛争が起きるという古来からの教訓に鑑みれば、戦争を望まない米国が必死に阻止するのは当然です。韓国は約束を守るか 技術的から見ても、日本にとって自国を狙う北朝鮮のミサイル情報は多いに越したことはありません。普通に考えれば発射地点の情報は発射地点に近い韓国が、着弾地点の情報は着弾地点に近い日本がより精度の高い情報を持っているわけですから、お互いに情報を共有することはプラスにこそなれマイナスになるはずがありません。 ですから、日韓GSOMIA破棄は日本の国益にとってはマイナスであると言えますが、それは韓国がまともな国で、国と国との約束を守るという前提の話です。果たして韓国が国と国との約束を守るまともな国であるかというと、「日韓基本条約」「日韓漁業協定」「いわゆる慰安婦合意」等々の経緯を見れば、彼の国が日本との約束をまともに守る国だとは誰も言えないでしょう。 国と国との約束だけではなく、イラクで銃弾を供与したときもいろいろと理由をつけて感謝もせず、自衛隊員との記念写真の後ろで竹島のプロパガンダプラカードのようなものを掲げてみたり、昨年の旭日旗掲揚禁止の申し入れや、海上自衛隊の哨戒機に対する火器管制レーダー照射事件など、現場の軍隊においてさえも共に戦うに足る国とはとても思えません。 もっと言えば、本来の主敵である北朝鮮に対するため、陸軍が中心となった防衛政策をとるべきであるにもかかわらず、海軍を増強し、艦船名に「独島」や「安重根」などとわが国に対する挑戦的な名称を付し、日本の領土である竹島周辺において軍事演習を行うなど、わが国を仮想敵国とする態度を見るにつけ、韓国は既に友好国ではないと考えるのが妥当だと思います。 現場で実際に戦う者の身となって考えれば、友軍に裏切られればかなりの確率で壊滅的な打撃を受けるので「関ケ原の戦い」で東軍に寝返ったとされる小早川秀秋のような奴は最初から敵として扱うほうが無難だということです。わが国は昭和20年に日ソ中立条約を結んでいた当時のソ連に停戦の仲介役を頼んだ結果、見事に裏切られ一方的な条約破棄の後に行われた侵略により、国土や国民の生命を奪われたという教訓を忘れてはいけません。 条約や協定というものは約束を守る相手と締結してこそ価値があるものであり、約束を守らない国と約束をしても意味がないということです。特にわが国は相手に約束を守らせる力(軍事力)がなく、力ずくで相手国に約束を守らせることができませんので、条約や協定を結ぶ相手は慎重に選ばなければなりません。 さらに、韓国から得る情報が正しいものであるという保証はなく、逆にわが国の情報が中朝に漏れるという懸念もあります。実際に米国は例年行ってきた米韓軍事演習を実際の演習から机上演習に切り替えたのは経済的な問題だけではなく韓国から北朝鮮に自国の情報が漏れることを恐れたからだという説もあります。 今回の騒動の真相は結局のところ、さすがの韓国も本気の米国には逆らえなかったということなのでしょうが、韓国は「日本が譲歩したから、破棄を一時停止した」と言い張っています。 あくまでも自身の非を認めない姿勢には逆にあっぱれとも言いたくなりますが、日本はここで少しの隙(すき)をも見せてはいけません。ましてや、今回の件が「日本の完全勝利だ」などと浮かれていては足元をすくわれかねません。 あくまで今回の件は韓国が意味なく勝手に拳を振り上げ、米国に脅されやむなく拳を静かに下ろしたというものですから、わが国が勝ったとか負けたとかいう問題ではなく、大騒ぎする必要はありません。 ただし韓国の宣伝工作には気を付け、彼らが嘘を世界に発する度に、それを否定していかなければ「いわゆる従軍慰安婦の問題」のように彼らの嘘が世界に広まってしまいかねません。「対華21カ条要求」で袁世凱中華民国初代大統領にだまされた教訓を生かすべきです。韓国・ソウルで「GSOMIA延長を糾弾する」と抗議する人々=2019年11月22日(共同) また、これを機に「日本も韓国に歩み寄れ」などという人がいますが、とんでもない話で、わが国は一点の非もないのですから1ミリも譲る必要はありません。今回の騒動を見ても分かるように、毅然とした態度をとれば、相手は為す術はないのです。 今後、私が懸念するのは韓国がさまざまな方法で日本に対して嫌がらせをしてきているのに対して、わが国はホワイト国からの除外という一手しか打てていないにもかかわらず、これだけ大騒ぎして、どっちもどっちという雰囲気になれば、日本が次の一手を打ちにくくなることです。崩れるパワーバランス 今でさえ「自称徴用工問題」に関して日本企業の財産が差し押さえられているにもかかわらず、日本側は「日本企業に実質的な被害が出たら報復する」などと、差し押さえという実質的な被害が出ているにもかかわらず、まるで被害がないかのように問題を矮小化して彼らが差し押さえた財産を現金化するまで何もしないかのような態度で、唯一の立法機関である国会は報復措置のために必要な根拠法令の検討も行わず、花見の話に終始しています。 これでは韓国になめられても仕方がありません。今わが国がやるべきことは「自称徴用工問題」などの韓国の嫌がらせに対する報復ではなく、わが国が持つ当然の権利を韓国に対して主張することです。 具体的な項目は下記に列記しますが、いずれも極当たり前のことで、それを今まで行ってこなかったことの方が問題です。◎竹島返還◎「李承晩ライン」に関する犠牲者への謝罪と賠償◎日韓基本条約やウィーン条約などの条約遵守◎いわゆる慰安婦像撤去◎いわゆる慰安婦合意遵守◎知的財産権の保護や著作権法遵守◎反日教育の撤廃◎近隣諸国条項撤廃◎債務の返還◎窃盗品返還◎捏造歴史の拡散中止◎日本に対する内政干渉の禁止◎火器管制レーダー照射、天皇侮辱発言、軍艦旗侮辱に対しての謝罪◎日本から韓国への水産物禁輸解除◎輸出管理厳格化 どうせ彼らは日本の要求に応えることはないでしょうが、ここで大切なのは世界に向けて日本の正当性と彼らの弁明を発信することです。それとは別に国会は韓国が行った差し押さえに対抗するための根拠法令の審議に入り「備えあれば憂いなし」の法制化を急ぐべきです。 今まで日本から韓国に対して何らアクションを起こさなかったから一方的にやられてきたのです。「攻撃は最大の防御」わが国には捏造(ねつぞう)しなくても攻撃材料はたくさんあるのですから、遠慮なくどんどんと正当な要求を突き付けていくべきです。 また、気を付けなければならないのは彼らの譲歩です。彼らは形勢が不利と見るや最小限譲歩し、最大限の利益を得ようとします。人の良い日本人は騙されやすいので、相手が譲歩した途端、こちらも譲歩しなければならないと考え、相手より大きく譲歩してしまいがちですが、よくよく考えてみてください。今回の件も「自称徴用工問題」にしても、彼らが勝手に言い掛かりをつけてきたようなもので、それを撤回したからと言って日本が何かをしなければいけないものではありません。 近隣トラブルに例えると、隣地との境界線で揉めているときに隣家が突然騒音をまき散らし始めた挙げ句、「それを止めるから自分に有利な境界線を認めろ」と言うようなもので、無茶苦茶な話なのです。 ですから今後、GSOMIAや「自称徴用工問題」が少しでも好転したとたんに「韓国に歩み寄るべきだ」というような風潮をマスコミが煽(あお)り、それに政府が迎合して譲歩してしまうことは絶対に避けねばなりません。わが国が目指すべきは、その場しのぎの安易な解決方法ではなく問題の根本的な解決で、ひいては真の日韓友好です。 今回の問題もそうですが、韓国の日本に対する外交姿勢の特徴として、存在しないものを捏造して問題化し、本来の問題から目をそらそうとする傾向があります。レーダー照射事件のときも、火器管制レーダーの照射という問題から低空飛行という存在しない問題に話をすり替え、有耶無耶(うやむや)にしてしまいました。 そんな彼らにもうだまされてはいけません。日韓関係の最大の問題は捏造された「いわゆる従軍慰安婦」や「自称徴用工」ではなく竹島です。政府には、その大原則を念頭に置いて対韓外交を行っていただきたいものです。 日韓GSOMIA破棄は回避されましたが、韓国では従北勢力と親米勢力が対決し、内戦状態になっているだけでなく、文大統領により韓国軍が北朝鮮軍に対して一種の武装解除状態になっています。そのため朝鮮半島のパワーバランスは大きく崩れつつあり、いつ紛争が起きてもおかしくない状態です。韓国の鄭景斗国防相(右端)と会談する河野太郎防衛相(左端)=2019年11月17日、タイ・バンコク(共同) また香港や台湾の情勢に鑑みると中共(中国共産党)が危険な行動に出る可能性もあります。いずれにしても米軍が朝鮮半島から撤退する方向にあり、38度線が対馬海峡まで下りてきつつあるという現状を踏まえると、わが国は一刻も早く憲法改正を行い、自国を自国の力で守ることができる普通の国にならねばなりません。あわせて朝鮮半島有事に備え、拉致被害者の奪還、現地邦人の保護、難民対策等々、喫緊の課題が山積です。いずれの問題も忘れてはならないのが朝鮮半島の背後に控える中共の存在で、目の前の韓国にだけ気を取られ、真の敵を見誤ってはなりません。(文中一部敬称略)

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    「マウンティング韓国」を黙らせる方法

    日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄は土壇場で回避された。だが、負けを認めたくない韓国は「いつでも失効させられる」と、苛立ちを隠せない。ただ、日本に対してむやみにマウント(優位)を取りたがる韓国の言いなりになっていては、健全な関係は築けない。そろそろ日本も本気を出すべきではないか。

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    アメリカをマジギレさせた韓国「GSOMIAファイター」の誤算

    韓国人は「日本」「軍事」という言葉を目にすると、瞬時に頭に血がのぼる。文大統領はこの感情を利用して、日韓関係の破壊にいそしみ、反米政策を採り続けたのだ。 GSOMIA締結を強く望んでいたのは米国だった。米情報機関によると、米国が入手した機密情報が韓国経由で北朝鮮に流される事実をつかみ、頭を痛めていた。 このため、米国は日本に機密情報の70%以上を教えても、韓国には5割程度しか伝えない、と言われていた。それでも、日本に与えた情報が韓国経由で北朝鮮に伝わることを警戒し、日韓にGSOMIA締結を求めた。 韓国で「左翼」という言葉は新聞報道でも使われず、「革新勢力」「進歩勢力」と呼ばれる。韓国の「左翼」は北朝鮮を支持し同調する人たちの意味で、文在寅政権は明らかに左翼勢力を糾合した政権である。韓国のMBCテレビの番組に生出演し、参加者の質問を受ける文在寅大統領=2019年11月19日、ソウル(聯合=共同) 彼らの多くは、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領などの保守政権下で逮捕や拘束され、不利益を受けた人たちだ。1965年に結ばれた日韓基本条約を不平等条約や国際法違反だとして、見直しを求める方針で一致している。 だから、慰安婦問題や徴用工問題で、日本政府に補償や賠償させることで日韓基本条約を骨抜きにし、再交渉につなげる戦略を展開した。その道具として、慰安婦問題と徴用工問題に関する判決が利用された。その先に待つのは米韓同盟の解消だ、と米国は警戒したのである。韓国左派の「こだわり」 文大統領が、GSOMIA破棄を決断した裏には、中国への恐怖と尊敬がある。韓国の歴代政府は、中国の脅威を決して口にすることはない。中国の反発を恐れると同時に、中国がやがて超大国になると展望しているからだ。 「将来の超大国」に対応するためには、日本と米国との関係を徐々に弱体化させる必要がある。特に、日本がアジアの二流国に没落することを期待している。 また、文在寅政権を支える左派勢力が強く意識しているのが、在韓米軍の撤退だ。 韓国の左派勢力は、国家の正統性が北朝鮮にあると考え、「反体制運動」を展開した人々の集まりだ。彼らの考えからすれば、他国の軍隊が駐留する韓国は「独立国家」ではないことになる。一方、北朝鮮は外国軍隊が駐留しないため、真の「独立国家」に位置付けられる。 だから、韓国が本当の独立国家としての正統性を確立するには、在韓米軍の撤退が不可欠だと考えている。韓国政治で絶対に譲れない儒教的価値観が正統性だからだ。 しかも、「北朝鮮が韓国に戦争を仕掛けることはなく、脅威にはならない」と考えている。この安全保障に対する理解が、日米とは全く異なるのだ。 このように、GSOMIAの破棄問題には、文在寅政権と韓国左派が考える日韓基本条約の再交渉と北朝鮮支援、そして対中政策という「三つの期待」が隠されていた。韓国・平沢の米軍基地を訪問した康京和外相(中央)。左はエイブラムス在韓米軍司令官=2019年9月20日(韓国外務省提供・共同) 日本は、「日韓友好」の美名に惑わされずに、韓国に対して冷徹な現実認識で臨む必要があることには変わりない。ただ、外交においては、「文政権と国民を分離する」戦略をとって、韓国国民の反発を買う言動や政策を避けなければならない。 だからこそ今回、韓国から破棄通告の停止を引き出したのは、現実認識と戦略に立った日本と、米国との協力による勝利の証しだといえる。こうして、文外交は全面敗北の道をたどったのである。

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    文在寅がどうしても勝てなかった本当の敵

    小倉正男(ジャーナリスト) 11月22日午後6時、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の「終了通告の効力を停止する」と発表した。日韓のGSOMIAは23日午前0時に失効期限が迫っていただけに、兆候はいくつかあったが、まさかのドタン場での転換である。 金有根(キム・ユグン)国家安保室第1次長は、「いつでも効力を終了させることができるという前提で8月23日の終了通告を停止させることにした。日本政府はこれについて理解を示した」とGSOMIA延長を告げた。 心中はあくまで見せない硬い表情で、金第1次長は文書を読み上げた。だが、韓国政府としては「負け惜しみ」の会見というか、ほぼ「全面降伏」に近い内容と言えるのではないか。「いつでも効力を終了させることができる」という前提条件をわざわざ冒頭に語らなければならなかったところに苦しさがにじみ出ている。 「われわれは日本に二度と負けない」。文大統領は8月、日本が下した「ホワイト国」除外の決定を受けてこう檄を飛ばしていた。それだけに、過激な「反日」発言に連動して日本商品不買・日本旅行忌避といった運動を国民にあおってきた文大統領の中核的支持層は、ハシゴを外された格好だ。「二度と負けない」、あの言葉は何だったのか。支持層が呆然としたのは無理もない。 一方、この情報が流れると、GSOMIA終了を見越して売り込まれて安値となっていた韓国通貨ウォンが慌ただしく急上昇をみせた。※写真はイメージ(ゲッティイメージズ) 通貨というものは、通貨を発行している国家の信用や安全性によって価値が日々変動するものである。通貨の価値変動は、その国家の「格付け」のようなものだ。しかも、株式も同様だが、通貨のマーケットは、本来政府権力などに容易にコントロールされにくい性格を持っている。 資本、あるいはおカネといってもよいが、その国家が危ないとみれば株式を売る、通貨を売るということに遠慮や躊躇(ちゅうちょ)はない。通貨を売ってドルに替える、ゴールド(金)に替える、安全資産に逃げる、そうしたことが即刻行われる。その極端なケースが「通貨危機」である。それを防止するために外貨準備がなされているのだが、いったん通貨危機に火が付けば、外貨準備などすぐに底をつくことになりかねない。 GSOMIA延長決定の背景として考えられるのは、ウォンの通貨不安、通貨危機の一種の分岐点だった可能性がある。最近の文大統領の政策への不安から、資本、おカネは韓国からとうとうと逃げ出す動きが続いてきた。ウォンは“古強者” GSOMIA破棄・終了となれば、米韓同盟に亀裂が生じて東アジア、すなわち韓国の安全保障に根本的な不安・危機が生まれる。外資系金融機関はもちろんのこと、韓国の財閥企業なども資本、すなわちおカネを逃避させる行動が一気に表面化しかねない。資本、おカネにはナショナリズム、すなわち「反日」や愛国は通用しないのだ。 そもそも、ウォンはこれまで何度も通貨危機を経験している。つまり、通貨危機ではウォンは“古強者”であり、1997年の国際通貨基金(IMF)による資金救済以降も通貨下落・通貨危機を度々経験している。“古強者”とは言えるが、必ずしも勝者ではない。要するに、ウォンは信用や信頼では強い通貨という評価は得られておらず、危機や不安に際しては、さっさと躊躇なく売られる脆弱な通貨にほかならない。 文大統領の政策はGSOMIA問題に限らず、資本、おカネが逃げ出すという特徴を持っている。言い換えれば、資本、おカネは文大統領の政策を一貫して嫌っているということだ。また、彼の政策は、資本、おカネを敵に回す宿命を持っているともいえる。 実際、GSOMIA延長が発表された直後からウォンの価値が上がって買い戻されたのは、文大統領が自らの政策を破棄したからだ。ウォンは、GSOMIA延長という文大統領の手痛い頓挫を諸手をあげて歓迎したことになる。 文政権がGSOMIA破棄から一転延長に踏み切らざるを得なかった主たる要因は、やはり米国の強い圧力だったと報道されている。エスパー国防長官らが、「日韓のGSOMIAの延長がなければ中国、北朝鮮を喜ばせるだけだ」と文大統領に転換を迫っていたようだ。 折しも米国は、韓国に対して米軍駐留経費を50億ドルと、これまでの5倍超の引き上げ要求を行っている。米国内からも「正気の沙汰ではない」という声が出た代物である。韓国国内からは「核を持てば在韓米軍は不要だ」という応酬がなされたようだが、核を持つことで米韓同盟から離脱して自立するという脅しである。極論を言えば、中国、北朝鮮の方に走るというブラフ(威嚇)に近い。だが、トランプ大統領、50億ドルの駐留経費要求を取り下げる気配は一切見せていない。歓迎式典で言葉を交わす米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長(右)と韓国軍制服組トップの朴漢基合同参謀本部議長=2019年11月、ソウル(聯合=共同) 仮に日韓のGSOMIAが延長されなければ、在韓駐留米軍は安全性が低下し、リスクが増大する可能性を抱える。駐留経費をディスカウントするというなら、米国は駐留米軍から1個旅団を撤収させるだろう。 この駐留経費を巡っては、韓国メディアが米国の過大な要求に加えて「米韓同盟」の危機を報道し、安全保障問題に一気に火が付くことになった。そして米韓同盟の危機は、マーケットに動揺をもたらし、韓国の通貨や株価は売られる局面にさらされた。米国の圧力はマーケットにウォン売りを誘導したことになる。それが文大統領のGSOMIA延長決断直前の状況だった。「左派ポピュリズム」の実態 これまでの文大統領の政策を振り返ると、GSOMIA効力停止のみならず、先にも触れたが、資本やおカネが逃げ出すものばかりである。文大統領の政策のベースは、いわば左派(社会主義)ポピュリズムだが、資本やおカネに嫌われる、あるいは資本やおカネを敵に回すものばかりだったということだ。 この左派ポピュリズムの具体例の一つに、文大統領の念願とも言える最低賃金の大幅な引き上げがある。文大統領は、最低賃金を18年に16・4%、19年に10・9%と大幅な引き上げを行った。 韓国はサムスングループといった財閥企業が経済の大半を支配しており、そもそも労働者の賃金が低かったのは事実である。それを改革するために「労働尊重社会」を掲げ、「所得主導成長」経済ということで賃金を大幅に上げたのだ。しかし、これはサムスンなど財閥企業のみならず、中小企業、個人商店にも大幅なコストアップをもたらした。 それだけではない。もう一つは日本流でいえば「働き方改革」なのだろうか、労働時間を週68時間から週52時間に短縮した。確かに、週68時間というのは今どき世界的にみて劣悪な状態というしかない。  「夕方のある暮らし」を実現するという触れ込みなのだが、給料(賃金)はそのままだから、週52時間労働制は実質的な大幅賃上げといえる。これも財閥企業など大企業で実施された。大企業の正規雇用の労働者にはベネフィット(恩恵)であり、既得権益となった。ただし、企業にとっては大幅コストアップ要因でしかない。 いずれも独善的で、韓国経済から見れば実力を顧みないという拙速な政策になっている面がある。独善で拙速というのは文大統領の身についたトレンドだが、左派ポピュリズムに傾き過ぎているというより、自らの観念やイデオロギーに縛られ過ぎている。結果、その落とし穴にはまっており、裏目となっている。韓国のMBCテレビの番組に生出演した文在寅大統領=2019年11月、ソウル(聯合=共同) 企業は人件費コストの上昇から新規雇用に慎重にならざるを得ない。米中貿易戦争の長期化で、韓国の主輸出先である中国が景気低迷に突入したことも雇用にはマイナスに作用した。韓国の輸出は、この1年は毎月続落をたどっており、結果的に失業者を増大させる事態を生み出すことになった。 体力のある財閥企業はともあれ、中小企業、個人商店などでは閉店に追い込まれる事態も多発している。文大統領の独善で拙速な「労働規制」は、韓国経済を縄でグルグル巻きに縛って身動きをできないものにし、財閥企業などが生産拠点の海外移転や、資本やおカネを海外に移転させる動きを加速させた。資本、おカネはいわば自律的に文大統領の政策から逃避する行動を採らざるをえなかったということだ。根底にある「財閥憎し」 歴史を振り返れば、第二次世界大戦前の大恐慌時、イタリアのムッソリーニ、フランスのレオン・ブルムは、週70~80時間という労働時間を週40時間に短縮した。ムッソリーニには「イタリアの国鉄がダイヤ通りに動いた」という伝説が残されている。労働時間の改善で労働者の士気が向上したという逸話である。人民戦線内閣のブルムは世界で初めて「有給休暇」を実行した。旧ロシア及び旧ソ連は「レーニン憲法」で有給休暇を宣言したが、実行はできなかった。ブルムはそれを実現した。 ムッソリーニ、ブルムも社会主義政権であり、「レーニン憲法」をモデルにして労働者に「時短」をもたらした。「時短」は労働時間は減らすが、賃金はそのままだから実質的に大幅賃上げに等しいことになる。ワークシェアリング効果で新規雇用が増加するという目論見(もくろみ)だ。賃上げと雇用増は、景気を押し上げる妙策といわれ、当初は絶大な支持を得ることにつながっている。観念というか、机上の計算ではよいことばかりである。 しかし、問題は資本、おカネが逃げるという面である。資本、おカネも本能的で、敵を知っているわけである。資本、おカネが祖国を捨てて国外に逃げれば、その国の経済は低迷して雇用は減少するという「落とし穴」が控えている。 このように、文政権は、ムッソリーニ、ブルムの政策に相似する政策を行った。資本やおカネを敵に回し、資本やおカネに逃げ出されるという結果も相似している。当初は圧倒的な支持を得ているのも似ている。そして、「落とし穴」もまったく同じだったといえる。 しかも、文大統領は財閥企業などの大企業法人税率を22%から25%に引き上げた。財閥企業が、韓国経済の富を独占しており、文大統領は財閥企業を目の敵にしてきた。「財閥企業憎し」というルサンチマン(恨みの念)によるもので、そのルサンチマンは理解できないものでない。 だが、韓国経済の実体から見ると、これも拙速というか、あるいは思考が足りなかったということになる。文大統領によるGSOMIA破棄から延長への転換でもその拙速さや思考が及ばないというクセやトレンドは払拭(ふっしょく)されていない。それどころかトレンドはまったく克服されず踏襲されている。GSOMIA破棄を実行していれば、資本、おカネを敵に回して、結果は資本、おカネに追い詰められることになった。 GSOMIA延長時に文大統領の韓国政府が無表情に語った延長の前提である「いつでも効力を停止させることができる」ということは「弁慶の勧進帳」のようなものでしかないのではないか。韓国大統領府で開かれた会合でGSOMIAに関する報告を受ける文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同) 通貨ウォン売りといった資本、おカネの反乱が文大統領のGSOMIA延長をもたらしたと言ってよいだろう。繰り返すが、資本、おカネの反乱の前に「いつでも効力を停止させることができる」というのはおそらく「空文」「負け惜しみ」に近いものでしかない。 文政権は、レームダック(死に体)に陥っているとみられるが、それは文大統領自らの独善で拙速な左派ポピュリズム政策による帰結であるだけに、敗北感は深いだろう。

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    日韓外交「言った」「言わない」と双方の説明が真逆になる訳

    と文大統領を酷評した。 国内向けには「強い指導者」を演じる文大統領だが、その“内弁慶の虚構”は決して日韓関係の改善にプラスにはならない。関連記事■GSOMIA破棄なら半島危機も ソウルが金正恩に占領される■韓国大統領が米国大統領よりも「広範囲な権限」を持つ理由■【動画】韓国軍の蛮行伝えるライダイハン像、英国で公開■日韓“歓談”写真 安倍首相の左手から見えてくる文政権の焦り■韓国紙「北朝鮮が日本製レーダー設置」報道 なぜ日本製が?

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    GSOMIA破棄で示したかった韓国・文政権の野望

    秋元千明(英国王立防衛安全保障研究所アジア本部所長) 韓国が日本と結んでいたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄したことによって、日本だけではなく米国政府も懸念と失望を表明した。韓国のこの突然の決定は単に日本の輸出管理の強化に対する韓国の報復でしかないのだろうか。その背景には、韓国の文在寅政権が持つ国家的野心が見え隠れしているように思えてならない。 まず念頭に置きたいのは、GSOMIAは秘密情報を保全することを国と国が保証し合う協定であり、国家が所有する情報を無制限で共有することを決めたものではないということである。情報当局者間で必要と判断された情報に限って、情報を共有するものである。したがって、通称Five Eyes(ファイブアイズ)と言われる米国、英国、カナダ、豪州、ニュージーランドの5カ国が結んでいるUKUSA協定のように加盟国がデータベースにアクセスすることによって自由に各国の情報を閲覧できる仕組みにはなっていない。 事実、日本が2016年11月にGSOMIAを韓国と結んで以来、これまでに交換された情報はわずか29件であり、平均して年間10件というのは情報協力関係と呼ぶにはかなり少ない数である。 GSOMIAにかかわらず世界には各国の情報当局同士の協力関係は様々な形で存在しており、特にいわゆる西側各国の情報当局の交流は壮大なネットワークのように構築されている。共通の利益を守るためである。 ところが、この世界の情報コミュニティーの中にあって、韓国の存在感はほとんどない。それは各国が韓国に求める情報が北朝鮮関連に限定されていることや、それ以外の一般的な国際情報を取得したり、分析する韓国の能力はそれほど高くないからである。 それに対して、日本の情報収集能力は通信を傍受して解析する分野ではアジアではトップクラスである。具体的には、1979年2月、中国がベトナムに侵攻した際、中国人民解放軍の越境を真っ先に察知したのは日本の通信諜報であったと言われているし、83年9月、カムチャツカ半島付近の上空で韓国の大韓航空機が消息を絶った事件では、大韓航空機が旧ソビエトの空軍機によって撃墜されたことを最初に確認したのは米国でも韓国でもなく、日本の通信諜報であった。 そして現代、日本は情報衛星という事実上の偵察衛星7基を保有、運用しており、単に通信情報だけでなく、衛星写真など画像情報の収集能力も大きく向上させており、東アジア全域で米国を情報面からも支援している。つまり、日本の情報組織は、朝鮮半島だけを相手にしている韓国とは違って、国際的なインテリジェンス網の一翼を担っている。 そのため、最近では、Five Eyesの枠組みに日本も参加すべきだという意見や、米国と英国と連携し、新たなThree Eyes(スリー・アイズ)を創設すべきだという意見が情報当局者同士の間でしばしば議論されている。 このようにGSOMIAは韓国にとって世界のインテリジェンス網にアクセスできる重要なパイプであったのに、それを自ら遮断するということは合理性を欠いた行為というしかない。2019年9月23日、米ニューヨークで記念撮影に応じるトランプ大統領(右)と韓国の文在寅大統領(聯合=共同) 韓国のGSOMIA破棄について、米国務省報道官は「文政権に対し、協定を破棄すれば米国および同盟諸国の国益に悪影響を及ぼすと繰り返し明確にしてきた。(破棄の決定は)文政権が北東アジアで私たちが直面する深刻な懸案を正しく理解していないことの表れだ」と述べ、これまでになく強い調子で文政権を批判した。しかし、文政権が徴用工や輸出管理の問題でことあるごとに歴史問題を引っ張り出して日本を非難し続ける背景には、歴史問題を利用してなにかを成し遂げようとする別の意図があるように思える。 それはおそらく、韓国をこれまでとは別の国家に変貌させようとする野望、良く言えば野心的な国家戦略のように思える。米国がこれまでにない強い調子で韓国を批判するのもそれを感じ取ってのことのように思える。韓国の重大な地政学的過ち 文政権の外交姿勢は日本の輸出管理強化の問題が起きる前から、明らかにこれまでの韓国の政権とは異なっていた。一口に言えば、親北、親中、離米、反日である。 米国に対しては、文政権は日米が中心になって推進しているインド太平洋戦略にいまだに消極的な姿勢を取っている。それが中国の推進する世界戦略「一帯一路」を牽制するものであるからだろう。また、米国が韓国に配備した迎撃ミサイルTHAADに対して中国が反発し、韓国に様々な経済報復をしたことに対しては、文政権は、ミサイルの配備規模を拡大しない、ミサイル防衛に参加しない、日米韓の連帯を軍事同盟化しないなどと、米国の方針とは相いれない合意を中国と結んだ。最近では米国がロシアとのINF(中距離核兵器)全廃条約を破棄し、将来の中距離核の配備先について打診したところ、文政権は全く関心を示さなかったと言われている。 一方、文政権は中国に対しては極めて寛容である。THAADに反発した中国による経済制裁で韓国の企業が大きな打撃を受けても有効な対抗策を取ることはなかった。また、歴史的に中国は朝鮮戦争に介入して南北を固定化させた責任があるのに、中国に対して反省や謝罪を求めたということは聞いたことがない。 そして、文政権の外交で最も注目されるのが北朝鮮との融和姿勢である。今回の日本の輸出管理の強化に対抗して、文大統領は、2045年に南北を統一して、新国家が日本を追い抜くと明言した。文大統領は政府内部の会合で「南北の経済協力で平和経済を実現すれば、日本を一気に追い抜く」と発言したという。南北が一体となれば日本の経済力を凌駕できるなどと考えるのは科学性を欠いた発言である。 東西冷戦後、旧東側陣営では最も豊かと言われた東ドイツを吸収した西ドイツでさえ、統一後20年以上、EUの協力があったにもかかわらず財政負担にあえいできた。それなのに、ただでさえ経済が悪化している韓国が多くの国民が飢餓に苦しむ北朝鮮を吸収することが可能なのだろうか。日米が相当な協力をしたとしても難しい。中国からの莫大な援助を期待しているのかもしれないが、それは中国に朝鮮半島を事実上売り渡すということになる。 このように文政権は、日本に対しては徹底して威嚇や非難を行って敵対し、米国に対しては機嫌を損ねないよう少しずつ距離を置き、反対に北朝鮮や中国とはこれまで以上に良い関係を築こうとしているように見える。そこから文政権のめざす新しい国家像が透けて見えてくる。つまり、日本や米国とは一線を画し、中国やロシアに近い経済大国を朝鮮半島に作ろうとする野望である。 しかし、現実にそんなことが可能なのだろうか。地政学的視点にたてばその答えは明白にノーである。朝鮮半島は今も昔も地政学の主戦場である。朝鮮半島は数百年もの昔から、大陸内部に拠点を置く国家、通称ランドパワーと海に拠点を置く国家、通称シーパワーのせめぎ合いの場所であった。朝鮮半島の歴史を簡単に俯瞰してみよう。 朝鮮半島には紀元前2世紀頃、最初の国家として衛氏朝鮮が誕生し、その後、高句麗、百済、新羅の三国時代や高麗の時代を経て、14世紀末には朝鮮民族の最後の王朝であり、統一国家である李氏朝鮮が誕生した。その時代は1895年、日清戦争で日本が清を破り、下関条約によって朝鮮を独立国として認めさせるまで続いたが、その間、朝鮮半島の国家はほぼ一貫して、中国の属国である冊封国であった。つまり、朝鮮半島は国家が誕生して以来、中国というランドパワーの支配下に長く置かれていた。 しかし、これは決して安定したものではなかった。16世紀には日本の豊臣秀吉が当時の中国、明の征服を目指して李氏朝鮮に侵攻した。文禄・慶長の役である。これに対して、明は援軍を朝鮮に差し向け、朝鮮半島を舞台にランドパワー・明とシーパワー・日本の間で、休戦期間をはさんで通算3年以上にわたって戦争が続いた。この時代にあって世界的にも類例のない大戦争であった。2019年10月、韓国・大邱の空軍基地で開かれた「国軍の日」式典で最新鋭ステルス戦闘機F35Aを観閲する文在寅大統領(車上右)(共同) 結局、豊臣秀吉の明征服の野望は途中で頓挫し、戦争は終結したが、この時以来、日本は朝鮮半島を大陸進出の出入り口として戦略的に注目するようになり、19世紀後半の日清戦争にまで引き継がれた。日清戦争後、独立を認められた李氏朝鮮は大韓帝国として独立するが、中国の影響力は大幅に低下した。するとロシアが朝鮮半島への進出を狙うようになり、それを認めない日本との間で日露戦争が勃発した。日露戦争は朝鮮半島を経由して海に進出しようとするランドパワー・ロシアと、それを阻止しようとするシーパワー・日本の戦争であった。 その結果、日本が勝利し、大韓帝国と日韓併合条約を結び、韓国を併合した。これによって、シーパワー・日本が朝鮮半島を統治することとなり、その状態が第二次世界大戦による日本の敗戦まで続くことになるが、日本の敗戦が濃厚になると、再びロシア(旧ソビエト)は朝鮮半島東北部に侵攻し、朝鮮半島に関心を示すようになった。不安定化する東アジア そして、第二次世界大戦後、朝鮮半島は南北に分断され、北を支援するランドパワー・中国とロシア、南を支援するシーパワー・アメリカなど西側諸国の間で戦争が起こり、朝鮮半島は日本の支配が終わった後、再び戦火に包まれたのである。 このように朝鮮半島の歴史は勢力圏を朝鮮半島全域に拡大しようとする大陸のランドパワーと、それを阻止しようとする太平洋のシーパワーの衝突の歴史であり、その構図は現代でも基本的には変わっていない。 こうした歴史の事実を振り返れば、地政学上、韓国が発展するには二つの道しかないことがわかる。 それは、太平洋のシーパワーと連帯して大陸のランドパワーに対峙するか、もしくは大陸のランドパワーに寄り添い、太平洋のシーパワーと対峙するかである。実際に現代の韓国がこれまで進んできた道はシーパワーと連帯する道であり、米韓同盟はまさにそのシンボルである。韓国はこれまで米国の核の傘のもと安全を確保し、日本の莫大な経済支援を受けながら経済発展を遂げてきたのであり、日米韓のシーパワーの連帯こそが韓国の発展の源泉であることを忘れてはならない。 ところが、文大統領の国家観は韓国発展の基盤となってきたシーパワーの連帯を否定し、大陸のランドパワーに寄り添おうとしているようにさえ見える。李氏朝鮮時代への回帰である。 地政学を海軍戦略へと発展させた著名な米国の戦略家であり、海軍軍人だったアルフレッド・セイヤー・マハンは100年以上前、次のように説いた。「いかなる国家もランドパワーであるならシーパワーにはなれず、シーパワーであるならランドパワーにはなれない」。このマハンの指摘が正しいことは次のようにすでに近代の歴史が証明している。▼ランドパワーの帝政ロシアはシーパワーになろうと南下政策を進め、日本に撃退された。それを契機に国家の威信が傷つき、革命が起きた。▼ランドパワー・ドイツは二つの世界大戦を通して海岸線を拡張してシーパワーへの転換を図ろうとしたが失敗し、結局、破滅した。▼冷戦時代のランドパワー・旧ソビエトは海洋支配を試みたが、シーパワーの西側諸国との冷戦に敗れ、結局、国家が崩壊した。▼シーパワー・日本は第二次世界大戦前、大陸へ進出し、ランドパワーになろうとしたが失敗し、破滅した。 国家は本来備えている地理的要因からどのような国家になれるかは自ずから限定されており、輸送や通信の技術がいくら進歩しても、その特性は変えられない。その意味で、文政権のめざす新しい国家戦略が最終的にどのような結末を迎えるのか、すでに過去の歴史が明らかにしているところである。 この文政権の地政学的チャレンジに呼応して、大陸のランドパワーは一斉に反応している。日本の輸出規制をめぐって日本と韓国の対立が先鋭化すると、ロシアと中国は7月23日、日本海の上空で共同の軍事演習を始め、戦略爆撃機や早期警戒機を日本の竹島の上空に意図的に進入させた。そこは韓国が防空識別圏を設定している空域であり、日本と韓国の対立をあおり、日米韓の連帯を牽制しようという意図が明確にうかがえる。北朝鮮が5月9日に発射した短距離弾道ミサイル(朝鮮中央通信=共同) また、韓国が8月22日、日本とのGSOMIA破棄を決定すると、北朝鮮は24日、国連安保理決議に違反する短距離弾道ミサイルを発射し、ロシアも同日、北極圏のバレンツ海から最新型のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を行った。これら一連の出来事が韓国のGSOMIA破棄決定の前後に集中して起きていることは、明らかに大陸のランドパワーが日米韓のシーパワーの連帯に揺さぶりをかけようとして行ったものである。 このように日本の輸出管理の強化に対して、文政権がGSOMIAを破棄し、歴史問題を絡めて日本非難を繰り返していることは、背景に「反日」を利用して韓国を新しい国家に変貌させようとする文大統領の野望があることを強く想起させる。しかし、それは、これまで緊張しつつも安定を維持してきた東アジアに地政学的な大変動をもたらす極めて危険な実験であると言わざるをえない。

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    GSOMIA維持で、韓国は「大人の対応」をしたとの意見が登場

     11月22日、韓国が日韓の軍事情報包括保護協定「GSOMIA」を破棄しないことを発表した。その後、経産省は局長級の対話を再開することを発表。韓国側が輸出管理問題について、WTOへの提訴を中断し、輸出管理改善の意欲を示したことをその理由とした。 しかし、その後韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長は経産省の発表は事実と異なり、意図的に歪曲して発表したとして遺憾の意を表明。日本に外交ルートで抗議し、謝罪を受けたと説明。しかし、読売新聞は、「日本の外務省幹部は取材に対し、『そのような事実はない』と否定した」とこれに反論する記事を出した。 経産省は「意図的に歪曲」については24日、ツイッターで「その方針の骨子は、韓国政府と事前にすり合わせたものです」と韓国側の説明を否定。さらに、「外交ルート」をめぐっても大手韓国紙・中央日報の日本語版には〈「謝罪があった」という青瓦台の発表に…日本外務省「そのような事実はない」〉との見出しの記事も登場。記事の中では前出の読売新聞の一説を紹介している。 こうした展開に5ちゃんねるでは〈【いつもの】韓国「抗議したら日本が謝罪した」→日本「そのような事実はない」→韓国「確かに謝罪を受けた」〉というスレッドが立ち上がり、毎度食い違う両国の発表をめぐり意見が次々と書き込まれている。 22日の韓国によるGSOMIA維持決定がこの「言った言わない」騒動の発端だが、そもそものこの決定について「大人の対応」という意見も当時多数ツイッターには書き込まれた。 ツイッターのまとめサイト・togetterには〈「GSOMIAで韓国は『大人の対応』をした」…との評価や、それへの異論など〉というまとめが登場。まとめた人は『「GSOMIA 大人の対応」などで検索してみました。』とこれらのツイートを選んだ方法について言及した。 ここを見ると、元新潟県知事の米山隆一氏の「文大統領偉いじゃないですか」や、元朝日新聞記者の佐藤章氏による「正義への安倍の報復は韓国民や文在寅にとって屈辱だったろうが概ね大人の対応」などが紹介されている。2019年3月10日、ソウルの韓国大統領府で記者団と懇談する(左から)鄭義溶国家安保室長、盧英敏秘書室長ら(共同) 韓国が「大人の対応」をしたという多くの人の声を見ることができる。また、安倍晋三首相のことを「幼稚で恥ずかしい」と書いたり、日本の対応を「幼稚」とする人も。 こうした意見には異論も出ており吉本新喜劇に出演する身長149cmの池乃めだかがチンピラにボコボコにされた後、「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」と言ってチンピラがズッコケる様を想像すると述べる人も。あとは、日本が韓国による「子供のわがまま」に付き合わなかったとする意見も出ており、異論!反論!OBJECTION状態となっている。関連記事■ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ベトナムの韓国大使館前に「ライダイハン母子像」建立計画■日韓外交「言った」「言わない」と双方の説明が真逆になる訳■ライダイハン里親「ベトナムには韓国兵相手の買春街あった」■ライダイハン問題 世界が注目するも韓国政府は一切対応せず

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    GSOMIA破棄撤回、朝日が仕掛けた日韓「仲良しゲーム」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 日本と韓国との軍事情報に関する共有の取り決めであるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)を破棄するという韓国政府の発言は、協定の失効直前の6時間前になって撤回された。韓国政府は、このGSOMIA破棄を日本の輸出管理の強化に対する報復措置と位置付けていたが、そのもくろみは破綻した。 韓国政府は、輸出管理強化を日本側の元徴用工問題に対する「報復」と見なしていた。この見解になびいていた日本のメディアや識者も多かったため、今回のGSOMIA破棄撤回は日本国内の親韓国勢力にもショックだったろう。個人的には韓国側の自滅であり、極めて当然の展開に思えるのだが、それを認めたくない勢力もあるのだ。 日本の親韓国勢力の狙いは、安倍晋三政権への打撃である。そのために、薄っぺらい韓国との「協調」や「友好関係」を説いている。 要するに、国内政局のために韓国を利用しているのであり、本当の意味で「親しい」と考えているわけではない。これは、文在寅(ムン・ジェイン)政権を代表例とする韓国の歴代政権がことあるごとに日本との対立を演出し、韓国国内の政局打開に利用してきた経緯と似ている。 そんな日本の反安倍政権の人たちは、しばしば「日本の外交だけが蚊帳の外」論をぶつことが多い。その人たちから見ると、日本は国際的に孤立を深めていることになっている。 しかし、今回の文政権によるGSOMIA問題の顛末(てんまつ)をみると、外交的に追い詰められたのは韓国側だった。この事実を認めたくないのが親韓国勢力だろう。GSOMIAの失効が回避され、取材に応じる安倍首相=2019年11月、首相官邸 日本のメディアでも論調がはっきり分かれている。産経新聞や読売新聞の社説は、明瞭に文政権による外交の失敗という論調だ。また、日米韓の協調を両紙とも説いているが、あくまで3カ国の安全保障面が揺らいだ責任は韓国側にあるという認識に立っている。 日本経済新聞や毎日新聞は、韓国側の失政を明示することは避け、日韓、日米韓の協力をあいまいに訴えている。ただ、何といっても特異だったのが、朝日新聞の社説であった。正直、読んだときには驚いたものである。韓国の理屈をそのまま踏襲 朝日の社説「日韓情報協定 関係改善の契機とせよ」では、「文政権が誤った対抗措置のエスカレートを踏みとどまった以上、日本政府も理性的な思考に立ち返るべきである。輸出規制をめぐる協議を真摯(しんし)に進めて、強化措置を撤回すべきだ」と説いている。 この主張は全く間違っている。政治学者で大和大講師の岩田温氏は最近開設した動画サイトで、この朝日の社説を徹底的に批判していて、筆者も完全に同意できる内容だった。 韓国政府は輸出管理強化について、「元徴用工問題に対する日本政府の報復措置だ」という理解をさかんに喧伝(けんでん)している。朝日の社説は、韓国側の理屈をそのまま踏襲している。つまり、朝日の社説では、日本の輸出管理強化が「理性的な思考」の産物ではないことになる。 しかし、日本の輸出管理強化は、通常兵器などに転用される恐れのある資材の輸出をきちんと管理するという、国際的な取り決めの一環に基づいて行われている。いわば日韓間の問題に見えても、輸出管理強化とは、実は国際的な約束を「理性的」に施行しているだけなのだ。 むしろ、日本政府が元徴用工問題の解決を目指して、輸出管理の強化策を取り下げてしまえば、国際的な批判を免れることはできなくなる。要するに、輸出管理問題は輸出管理問題でしかない。他の話題と関連させて考えることは理性的ではないのである。 今回の撤回で、韓国側は輸出管理問題に関する世界貿易機関(WTO)への提訴手続きを中断することを表明した。この手続きも元から無理筋の話だっただけで、自由貿易をめぐる問題でもなんでもないものを騒ぎ立て、WTOを単に悪用していただけにすぎない。韓国はさまざまな国際会議の場で、本筋とは離れて日本の輸出管理強化の非を何度も叫んできたが、その類いと同じである。 そもそも、朝日新聞がおかしいのは、韓国側がGSOMIA破棄を撤回したのだから、それに応じるべきだと主張している点にある。だが、GSOMIA問題は、韓国政府が自ら生み出し、自ら炎上させ、自滅した問題である。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が回避されたことを報じる2019年11月23日付の韓国主要紙(共同) そんな問題になぜ日本が付き合う必要があるのだろうか。こちらが見る気もない「一人芝居」が終演しただけの話である。もちろん、この背景には、米国の圧力があることは間違いない。 GSOMIA自体は、東アジアにおける日米韓の安全保障上のインフラの一つである。この協定から韓国が離脱すれば、ロシアや中国、北朝鮮からは「好機」に映る。相変わらずの「偽情報」 たがが緩めば、緩みに乗じてごり押ししてくる国が現れるのが国際社会のパターンである。韓国政府がGSOMIA破棄の撤回を表明した途端、中国政府が「第三国に不利益をもたらさないように」とクギを刺してきたのはその表れである。 米国は現状の東アジアにおいて、安全保障上の秩序の変更を望んでいない。日本政府はむしろ秩序強化を意図しており、その意図は正しい方向だといえる。 今回、米国の圧力が前面に出たことで、韓国政府が大幅譲歩というか政治的な敗北を喫したことは、文政権という左翼イデオロギーに凝り固まった集団を抑制する上で、何よりも日本にとってよかったのではないだろうか。 だが他方で、問題の終わりはいまだに見えない。実際に、韓国側は、既に日本側が輸出管理問題について「謝罪」したなどという偽情報を流しているようだ。相変わらずとしか言いようがない。 また、日本メディアも輸出管理規制の局長級「対話」をわざわざ「協議」と伝えることで、意図してか意図しないかは分からないが、結果的に韓国政府の代弁者になっている。 日本政府の対応を分析すると、韓国の非理性的な対応には一切関わらなかったことが分かる。この姿勢は今後も継続すべきだろう。2019年11月22日、韓国・天安で演説する文在寅大統領。韓国大統領府は同日夕、GSOMIAを当分維持することを決めたと発表した(聯合=共同) さらに、元徴用工問題については、1965年の日韓請求権協定に基づき、国際法遵守の観点から韓国側に対峙(たいじ)し続けることが求められる。むしろ、日本政府は日本企業の損失に応じて、韓国側に報復措置をも辞さないことを望みたい。 相手が非理性的な行為に出てくれば、それに対して「しっぺ返し」をする。この戦略こそが交渉相手の裏切りを中長期的に予防する上でも正しい。朝日新聞の社説が打ち出す安易な「仲良しゲーム」には一切乗らないことが肝要なのである。

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    「GSOMIA狂騒曲」日韓が口をつぐむアメリカの本音

    。だから、協定延長に意味がないとまでは言わない。 さらに言えば、ひたすら非難の応酬になっている現在の日韓関係を見れば、何か一つでも両国が合意に達することがあれば、少しはホッとできるという要素があるかもしれない。その合意に、長期的な視点では問題があるとしても、一息ついている間に、本筋の徴用工問題などで対話をする雰囲気が醸成されることを期待する向きもあるかもしれない。 しかし、軍事的な正解が、必ずしも政治的にも正解だとは限らない。また、GSOMIAがこれほど問題になる背景にあるのは、そもそも日米韓関係の実体が政治面でゆがんでいることにある。 その実体面での関係を正常化させる努力はしないまま、GSOMIAだけを何とかしようとしても、手術が求められる患部を放置したまま、湿布で痛みを緩和して済ませるようなものであり、患者の容体が深刻化するだけだ。議論が過熱する背景にある日米韓関係の歪みこそ正されるべきではないか。 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の発言を見ていると、果たしてどういう日米韓関係を望んでいるのか、さっぱり分からない。ご自分も分かっていないのではないか、とさえ感じる。 そもそも、GSOMIAを必要だと思っているのかどうか。日本による輸出管理の強化措置を踏まえ破棄を決定したことは、それが冷静な判断ではなく激情に駆られたものとはいえ、絶対に必要だというほどの思い入れはないのだろう。 しかも、韓国国民の多数がGSOMIAの破棄を支持しており、市民運動に依拠して誕生し、政権運営をしてきた文大統領も、本音はそこにあるのかもしれない。ソウルの韓国国防省前でGSOMIA破棄を訴える市民団体メンバーら=2019年11月15日(聯合=共同) 一方で、韓国側から聞こえてくるのは、日本が輸出管理の強化を撤回すれば、GSOMIAを失効させることはしないということであった。ということは、GSOMIAが、別の何かと引き替えできる程度の軽い気持ちから破棄が決められたものだとしても、本当は存在していた方がいいというのが、文大統領の本音なのだろうか。 文大統領が目指しているのは、まずは北朝鮮の非核化を実現し、さらには南北統一を実現することだ。しかも、それを平和的な話し合いで成し遂げようとしているはずだ。文大統領に残った「恨み」 それならば、日米韓の軍事関係の強化から距離を置き、その軍事的結束を緩めることをテコにして、北朝鮮に働きかけるという選択肢があったはずなのだ。 GSOMIAは北朝鮮を直接の視野に置いた協定なのだから、破棄することは対北朝鮮外交の打開のために生かせる格好の手段だったのに、文大統領の頭にはなかった。あったのは「日本が韓国を信頼できない国だとして輸出管理の強化措置をとった」という恨みだけだったように思う。 文大統領の政治姿勢はいびつだ。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領以来の左派政権を誕生させたのは、北朝鮮を敵と位置づけ、それに異を唱える勢力、思想を徹底弾圧する軍事独裁政権を打倒した市民の力であった。だから、慰安婦問題や徴用工問題に見られるように、軍事独裁政権下では声に出せなかった日本による植民地支配時代のことを、今あれほど糾弾するのである。 その長期間にわたる軍事独裁を支えたのは、他でもない米国であるし、日本も経済では支えた面があった。そして、民主化運動を誕生させた最大の動機は、多大な犠牲を生んだ80年の光州事件における軍事弾圧を在韓米軍司令官が許可したことにあった。だから現在の韓国の市民運動家たちは「米国は韓国国民の命を大切にしない」とみなしている。 ところが、文大統領はそのような市民の声は大事にしていない。「市民主導政治」は、日本に対しては発揮できても、米国が支配する軍事分野には及んでいないのだ。かえって軍事同盟を絶対化する古い政治に縛られている。 文大統領が市民主導政治を貫くというのであれば、「GSOMIAをどうすべきか」といった細かい問題にこだわって、日本だけを批判の相手にしていてはいけない。客観的には、戦後ずっと続いてきた日米韓の「軍事一体化」そのものを解消するかどうかという、根幹の問題に手をつけるべきなのだ。そうでなければ、文大統領は早晩市民から見放され、引きずり下ろされることになるだろう。 日本もまた、岐路に立つ日米韓関係を正確に把握していないようだ。結果として、適切に対応しているようにも見えない。 日本は、北朝鮮のミサイル対応を理由に、GSOMIAを維持したいとの考えを韓国に何回も伝えている。だが、文大統領は「安全保障面で信用できないとして輸出管理の優遇措置対象から韓国を外した日本と、軍事情報を共有するのは難しい」と反論してきた。2019年11月15日、ソウルの大統領府でエスパー米国防長官(左から2人目)と握手する文在寅大統領(韓国大統領府提供=共同) これに対する日本の反論は弱々しい。「輸出管理と安全保障は別問題」と反論しているというが、韓国を優遇措置の対象から除外するにあたって、日本政府は徴用工問題への報復措置であることを隠すため、「韓国の対応に、安全保障面で信用できない事態が生まれたからだ」と繰り返し説明した。今になって、別問題だと言っても支離滅裂である。 日韓関係は「同盟」とは呼ばれない。しかし、戦後の日米韓は、北朝鮮をはじめとするアジアの社会主義を標的にした事実上の同盟関係を結んできたと言っても間違いはないだろう。 日本は、いわば準同盟の相手に公然と「軍事面で信用できない」と表明したのである。今になって、日本政府はミサイル問題での日韓連携が必要だと言うが、その連携を崩してきたのが日本なのだ。日本の「脅威」が消えた? しかも、日本がそういう態度をとれたのは、実は本音では、以前ほど北朝鮮を「脅威」と見ていないからではないのか。昨年末、韓国軍によるレーダー照射問題が焦点となった際、韓国が事実関係を認めないことに怒り、問題を公然化したのも日本側だった。 脅威が目の前にあると本気で信じているならば、たとえ準同盟国の言動に問題を感じていても、その脅威の前で暴露するようなことはしない。戦後の日韓はそのような関係だった。安倍政権は、そのようなことはもはや不要だと判断したのである。 つまり、韓国だけでなく日本を見ても、北朝鮮を脅威とした日米韓の結束は転機を迎えているということだ。韓国を軍事面で信用しないと公言する日本政府の「勇み足」も、その実態の反映なのだ。それならば、実体面での変化を素直に受け入れ、変化に対応した新しい外交を目指すべきではないか。 日本はこれまで、国連による北朝鮮人権非難決議の共同提出国に加わっていたが、今回は外れた。「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と無条件で対話したい」という、安倍晋三首相の言明を何とか実現するテコにしたいのであろう。 実は、日本政府も変化に対応した新しい外交を模索しているのだ。ただし、この程度ではインパクトは小さい。北朝鮮からの反応もないようだ。 ならばいっそのこと、GSOMIAの失効をバネにすることで、北朝鮮との関係を再構築すべきではないか。既に述べたように、軍事的正解が必ずしも政治的正解というわけではない。 GSOMIAを延長して、北朝鮮のミサイル情報を瞬時にやり取りすることは、ミサイルからの安全確保上、米国を経由するよりも即時性という点で意味があるだろう。けれども、米国経由でもやり取りできる、つまり軍事面での利益がなくなるわけではないのだから、拉致問題をどう動かすかという点に、知恵と力を使うべきだと思う。 具体的に言おう。日本と韓国は準同盟関係にあるといっても、米韓合同演習に加わっているわけではない。 そういうオモテに見える現実を上手に利用して、「日本は自衛の場合を除き、北朝鮮に対する軍事行動をとるための態勢は一切とらない」という宣言ぐらいしてもいいのではないか。ただ、膠着(こうちゃく)した拉致問題を動かす上で、宣言程度では足らないことを忘れてはならない。2回目の会談後、トランプ米大統領と握手する安倍首相=2019年8月、フランス南西部ビアリッツ(共同) それにしても、日米韓の関係をこれほどゆがませたのは、最近の米国の「迷走」にある。米国は3国関係をどうしたいのか、はっきりさせる必要がある。 GSOMIAの失効期日を前に、エスパー国防長官をはじめ、米高官が何人も韓国入りして説得に当たった様子は壮観とも言えた。韓国を説得できる立場にない日本としては「米国効果」を期待していたであろう。しかし、米国の説得には何の効果もなかったどころか、かえって韓国の自主独立の気概を駆り立てたように見えた。「脳死」する日米韓 それは当然である。この問題を説得するのに、米国以上に不似合いな国はないからだ。 エスパー長官は「GSOMIAが失効すると、北朝鮮や中国に間違ったメッセージを与える」と強調したそうだ。けれども、それが本当に間違っているのであれば、トランプ大統領が発するメッセージは間違っていないとでも言うのか。 冒頭で述べたように、北朝鮮では、国連安保理決議に違反する弾道ミサイルの発射実験が行われている。トランプ大統領は、日本や韓国が当事者となる短距離ミサイルの場合「問題ない」と繰り返し表明している。 GSOMIAで焦点となるのは、どうやってミサイル情報を素早く交換するかだ。だが、トランプ大統領はミサイルの発射自体に問題ないと「お墨付き」を与えているのである。 問題のないミサイルであれば、何のために情報交換がそれほどまでに必要なのか。大統領を説得できない国防長官が、米国の権威をかさに着て、他国を強引に説き伏せるなどみっともないとしか言いようがない。 最近、フランスのマクロン大統領が、北大西洋条約機構(NATO)の現状を「脳死」と表現したことが話題になった。対「イスラム国」(IS)作戦で重要な貢献をした少数民族クルド人でさえ平気で見捨てるトランプ大統領なのだから、「自分の国だけは米国が助けてくれる」とNATO加盟国も思えなくなっているのも無理もないだろう。 実は、日米韓の軍事関係でも同じような事態が進行している。NATOと異なり、心理面での米国依存から抜けきれない日本と韓国だから、いまだに表面化していないだけだ。 今、米国が日本と韓国に対し、米軍駐留経費の負担を、それぞれ現行の4倍、5倍にせよと提案していることが報じられている。一方で、日韓を目がけた北朝鮮のミサイルは問題にしていない。 この現実を目の当たりにして、米国は自国のもうけになるなら駐留するが、もうからない他国防衛には本気ではないと、誰だって本音では思っているはずだ。日韓の政府高官も心の奥で思っていても、何十年もの習慣に縛られて口にできないだけなのだ。2019年7月25日、北朝鮮が発射した「新型戦術誘導兵器」(朝鮮中央通信=共同) だから、どこからどう見ても、今問われているのは「GSOMIAをどうするか」という枝葉末節の問題ではない。「日米韓の関係を今後どうしていくのか」という本質的なことなのだ。 議論すべきは根幹の問題である。より明確に言えば、頼りにならない米国をあてにせず、どうやって日本の防衛戦略を構築していくのか、ということだ。問題点をあぶり出すことができただけ、「GSOMIA狂騒曲」は無意味ではなかったといえるのではないか。

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    無理強い対話と無限の謝罪要求、韓国の「お約束」に付き合うな

    るむきもあったようだ。だが突発的な対話で、日韓問題の解決の糸口が見いだされるわけもない。 両首脳は、日韓関係が重要であるとの認識と懸案事項の対話による解決という原則の確認に終始した。特に安倍首相は、いわゆる元徴用工問題について、日韓請求権協定に基づき、既に解決済みであるという従来の日本側の正当な主張を繰り返した。「常套手段」を繰り出す問題人物 これに対する文大統領の対応はなかった。つまり、外交交渉などと呼ぶものではなく、単なる文政権の国内向けのイメージ戦略でしかない。 報道によれば、文大統領は「必要があれば、高位級協議も検討したい」と一応提案したという。だが、実務者レベルで、輸出管理問題や自衛隊機へのレーダー照射問題に関し、あれほど不誠実な対応を繰り返した韓国側に、より高位級の要人で協議に応じる筋合いが日本側に全くない。 むしろ、高位級レベルで応じるのであれば、いわゆる元徴用工問題における現在の韓国側の対応から、報復措置を通告することが望ましい段階とさえいえる。 韓国の外交攻勢は、文大統領の「無理強い対話」だけにとどまらない。韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長が20カ国・地域(G20)国会議長会議で来日したが、今回の文議長の言動にも韓国の常套(じょうとう)手段が見て取れる。 文議長といえば、譲位前の上皇陛下に謝罪を求めた発言で知られている。天皇陛下を海外の重職者が自国のために政治利用しようという無法な態度といい、単に日本国民に対しても計り知れないほどの無礼を行った人物である。 最近の朝日新聞のインタビューで、文議長がこの件について「謝罪」したとする見出しのついた記事が掲載されていた。ところが一読すると、トンデモない内容だった。 文議長は「謝罪」どころか、日本国民が元徴用工などに謝罪すべきだと述べているのである。まさに「無限の謝罪要求」という韓国の常套手段である。東京で行われたG20国会議長会議に臨む韓国国会の文喜相議長。手前は山東昭子参院議長=2019年11月4日(佐藤徳昭撮影) 日本に対する政治的なマウント取りの手段として、韓国が慰安婦問題、元徴用工問題などを謝罪と賠償の無限ループで利用していることは、よほどの無知か、韓国への偏愛がない限り自明である。その意味では、文議長に日本に対する謝罪の意思はなく、謝罪要求だけが強いとみて差し支えない。むしろ日本の国益上、入国を拒否すべきぐらいの人物ではないだろうか。 このような指摘を書くと、日本では「ネトウヨ」などと戯言(たわごと)並みの批判が出てくる。しかし、日本国憲法では、天皇の政治的な言動が禁じられている。他国の憲法を踏みにじり、天皇陛下に謝罪させるという政治的利用を狙った人物に日本政府が明確な「ノー」を突き付けることは正当な対応である。 会議に先立って、山東昭子参院議長が文議長に書簡を送り、発言の撤回と謝罪を要求していたことが分かった。その要求に文議長は事実上返答しなかったため、山東議長との会談は見送られた。賠償のバイパスとなる「提案」 このような山東議長の対応は評価すべきだ。他方で、政治的な腐臭にまみれているのが、超党派の日韓議員連盟に属する何人かの政治家たちだ。 文議長は、いわゆる元徴用工問題について、日韓の企業と個人から寄付をもとにして、日本企業に訴訟を起こした元徴用工らに金銭を支給する法案を作ったと述べている。バカげた案という他はない。 いや、バカげた案以上に、仮に法案が韓国で成立しても、訴訟を起こされている日本企業は乗るべきではない。韓国の無限の謝罪と賠償要求のゲームに付き合わされるだけである。 個人レベルでは、鳩山由紀夫元首相のように無限の謝罪や賠償に付き合うことを私的に表明している人もいるので、どうでもいい。もちろん、元首相の行動という観点から、批判を受けるべき行いになることだろう。 それにも増して問題なのが、エネルギー分野など経済協力名目の日韓共同ファンドの創設が可能だとの認識を示した日韓議連の河村建夫幹事長(自民党)だ。エネルギー分野に限るとはいえ、今のタイミングで賠償のバイパス(抜け穴)にもなりかねない「提案」をするとは、国益を見ないまさに「韓国に媚(こ)びている」と批判されるべき姿勢である。 日韓企業が賠償額相当の金額を出資する案について、日本政府は公式に否定している。つまり、日本政府側から積極的に関与することを拒否しているわけだが、当たり前の話だ。 現在、韓国の裁判所の決定により、日本企業の資産が差し押さえられ、処分が進められている。これは国際法上、全く許容できる事態ではない。日韓議連の幹事長を務める河村建夫元官房長官=2019年9月(春名中撮影) そのような中で、日本政府が7月から始めた輸出管理の強化を、韓国への報復措置とみなす筋違いの見解があるが、それは違う。日本は韓国側の無法に対して、いまだ報復措置を執っていない。 人的交流の制限になるか、金融面での制約になるかは分からないが、具体的な対応はこれから可能だ。韓国側の「無法」に対して、法をもって厳しく「しっぺ返し」すべきだ。 そのことが韓国による日本への謝罪を引き出し、賠償要求という政治利用の歯止めにもなる。さらには、日韓議連などに象徴されるように、日本の政治家による他国に媚びる姿勢を牽制することにもなるだろう。

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    徴用工判決から1年、日本に渦巻く「嫌韓」の原点

    重村智計(東京通信大教授) 2018年10月30日、韓国大法院(最高裁)は、新日鉄住金(現日本製鉄)に対し、韓国人元徴用工へ計4億ウォン(約4千万円)の賠償支払いを命じた2審判決を支持し、企業側の上告を棄却した。だが、最高裁は、精神的苦痛を与えた加害者を特定する構成要件を明らかにすることはなかった。 判決の衝撃は大きく、文在寅(ムン・ジェイン)政権を批判する者と嫌韓や怨韓の論調を批判する者、両者の対立が日本で激化した。判決から1年たっても、嫌韓・怨韓感情の収まる気配は一向にないが、その原点は朝鮮半島問題の教科書的存在といえる著名な日本の雑誌が展開した二つの「運動」にある。 筆者は、1975年に高麗(こうらい)大に留学してから40年以上も韓国・北朝鮮問題を取材し、多くの本や論文を執筆してきた。だから、韓国人と朝鮮人に好意を抱いているし、尊敬すべき多くの韓国人にも助けられてきた。市井の韓国人は素朴で親切だが、政治や運動に携わる人たちは平気で嘘をつく。 徴用工問題が話題に上るたび、筆者は一人の若者を思い出す。三十数年前、米スタンフォード大のキャンパスで出会った李隆(イ・ヨン)君だ。山口県出身の在日韓国人だが、韓国語は使えない。 人を「在日の敵か味方か」見極める目つきがギラギラしていたのが印象的だった。でも、韓国人留学生と韓国語で自由に話す様子を認めたのか、警戒を解いた李君はすぐに筆者と打ち溶け、ある日こんなことを話してくれた。「在日が強制連行で日本に来たのは嘘ですよ。オヤジに日本人に絶対に話すなと言われた」 李君の父親は戦前徴用工として八幡製鉄所(現日本製鉄)で働かされたが、毎月給与はきちんともらえたし、仕事上で差別もいじめもなかった。それに、終戦で韓国に帰る際には退職金も渡されたし、日本人工員たちも送別会を開いて、餞別(せんべつ)までくれたという。2019年8月17日、韓国・釜山に設置された元徴用工を象徴する像の周辺で開かれた集会(共同) ところが、韓国に帰国したものの、仕事がなく食べていけなくなって、再び日本に密航したのであった。「日本人に話すな。強制連行と思い込んでいるから、本当の話をするな」と李君に念押ししたのも無理もない。 李君の父親のような証言は長きにわたって封印されてきた。こうした証言収集に取り組んだ学者も攻撃に遭い、存在をも否定されてしまった。目的のために平気で嘘をつく なぜか。戦後の朝鮮半島問題は革新系の学者が先導したからだ。しかも、その多くは戦前に朝鮮の植民地化を支持した人たちだ。 彼らは韓国を否定し、北朝鮮を肯定する「運動」に取り組むことで、自分の過去を合理化してきた。そうして「日本人にいじめられた朝鮮人もいただろうが、それが全てではない」と主張する者に激しく攻撃を加えたのである。 筆者は新聞社に勤務していた75年、韓国の延世(ヨンセ)大と高麗大に留学し「韓国はやがて先進国になる」と書いたところ、社の内外から「韓国の手先」と陰口を叩かれて、いじめを受けた。それが、94年に月刊誌『中央公論』で「北朝鮮は石油がないから戦争できない」と指摘すると、「北朝鮮の手先」と攻撃されるようになった。 日本の新聞は、朝鮮戦争について長い間「北朝鮮が始めた」とは書けず、日本人拉致が「北朝鮮の犯行」と指摘するのもはばかられたころの話である。そのような時代に、「真実」を書く場所を筆者に与えてくれた『中央公論』の宮一穂編集長には本当に感謝しかない。 筆者は新聞社の先輩に「記者や学者が『運動』に加担するようになったら終わりだ」と口を酸っぱくして言われたので手を染めることはなかったが、運動に乗せられた記者も少なくなかった。運動に加担すれば、目的のために平気で嘘をつくようになる。このように、日本で扱われる朝鮮半島問題は、運動が主流となり、運動の前に「真実」は妨害され続けてきたのである。 そのような中で、記憶に残る韓国人学者もいる。国民大の韓相一(ハン・サンイル)名誉教授は、著書『知識人の傲慢(ごうまん)と偏見』(韓国・キパラン社)で、月刊誌『世界』の「親北反韓」の姿勢を厳しく批判した。 韓氏は、日本人と韓国人が友好的で平和的な関係を築くには、互いに尊敬し合えるようになることが重要だと説く。それなのに、『世界』と執筆陣は「南朝鮮(韓国)」への差別感情をむき出しにしながら、「人権抑圧の独裁国家」北朝鮮礼賛に人々を導き、日本人拉致を否定してきた。 北朝鮮の工作活動として使われた「代表作」が、『世界』で73年から約15年続いた連載「韓国からの通信」だ。駆け出し記者のころの筆者も愛読したほど、多くの新聞記者の「教科書」だった。2019年9月2日発売、小学館『週刊ポスト』の「韓国なんて要らない」と題した特集記事 ところが、実はこの連載は日本で書かれていて、ジャーナリズムの基準に照らし合わせれば「捏造(ねつぞう)」であったことが後に分かる。当時の『世界』編集長も韓国月刊誌のインタビューで「自分も執筆している」と認めている。本当に韓国から届いた寄稿だと思っていた記者たちはすっかり騙されたことになる。 「韓国からの通信」は、韓国でも反体制派学生の翻訳により地下出版されていた。筆者がソウル特派員時代、翻訳本を持参した学生は「日本人が韓国の状況を『宮廷闘争』のように楽しんでいるが、その参考のために翻訳した。日本人の差別意識が分かる」と発刊の理由を語った。この思いは本の序文にもつづられていたほどだ。解放された「呪縛」 そもそも、『世界』は掲載論文に大韓民国(韓国)という用語を使わせず、84年10月号まで「南朝鮮」と表記させた。明らかな韓国蔑視だが、「韓国という国は存在しない」という北朝鮮の主張に従ったものである。 エピソードでも分かるように、日本人の心の底にある「韓国・朝鮮人蔑視」の感情を、『世界』が韓国人にだけ向けさせたと韓氏は指摘する。だが、同誌から反省の言葉は聞かれない。 韓国蔑視、北朝鮮礼賛の「呪縛」から解放されたことで、ようやく日本での論調が変化した。常識的な日本人は「南朝鮮」の表記や「日本人拉致はない」という一連の主張に疑問を感じていたのだ。 反韓親北の運動を展開した雑誌の部数が激減し、保守論調の雑誌が部数を拡大した現実がそれを物語っている。一部の主張には過激で理解不足も見受けられるが、呪縛からの独立が生んだ反動であり、やがて正常化していくだろう。 このように、朝鮮半島問題の真実は、日本人の心の底にある「差別意識」を南北朝鮮の当事者双方が利用し、敵対する相手に向けさせた「運動」と「工作」の歴史にある。つまり、北か南か、どちらかの「旗振り役」にさせる運動と工作が展開されてきた。 この構図は「(日本文化人による)日本的オリエンタリズム」だといえる。「オリエンタリズム」はパレスチナ出身の批評家、エドワード・サイードが解明した欧米によるイスラム蔑視の理論である。 韓国の革新勢力は、すなわち北朝鮮支持者たちである。徴用工判決の背後には、北朝鮮を支援する日韓左派の「運動協力」がある。 米コロンビア大のキャロル・グラック教授によれば、日韓対立は「記憶の戦争」であって、真実の解明ではないという。徴用工判決は「日本の植民地支配は違法であった」ことを法的根拠にしたが、日韓併合条約は大韓帝国皇帝が自ら決断したもので合法であると、多くの国際法学者が認めている。約1年ぶりとなる会談を前に握手を交わす韓国の李洛淵(イナギョン)首相(左)と安倍晋三首相=2019年10月24日、首相官邸(春名中撮影) 現在の日本国民が「朝鮮の植民地化はよくない」と反省している事実は、韓国では理解されない。戦後の日本人が変わった事実すら認めない。日本国憲法の掲げる「平和主義」も知られていない。 「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に尽力した加藤康子元内閣官房参与は、元工員や鉱夫の証言を地道に集め、嘘の証言を検証しながら真実を解明するという、気の遠くなるような仕事に取り組んでいる。それでも、ウェブサイト「軍艦島の真実―朝鮮人徴用工の検証」でも見られる加藤氏の成果は、韓国人に理解されることはないのである。

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    韓国の「終わりなき旅」はなぜ反日にたどり着くのか

    る。だが、日本メディアのソウル特派員は、誰もこの「悪だくみ」を指摘しようとしない。 韓国の政治混乱と日韓関係悪化の背後には、「儒教的正統性」の混乱とアイデンティティー喪失という「韓国病」がある。このリアルを見落として、韓国政治は語れない。 朝日新聞の記者だった田中明さんは日本における韓国研究の権威者であり、慰安婦問題での一時的な「金配り解決」を痛烈に批判したが、日本政府は耳を貸さなかった。また、アジア女性基金の発足当時の理事には、韓国語もできず、韓国人の心も知らない人たちが選ばれたにもかかわらず、田中さんを理事にすることもなかった。 この反省を踏まえれば、安倍政権の「国際法(条約)に従うべき」という主張は正しい。日本政府の政策立案者たちは、韓国の主張の背景にある政治文化の病巣と、国民のアイデンティティー喪失という病理を全く理解せず、放置し続けた。これからは「日韓友好」や「対話」の美名に騙されてはいけない。2018年11月、ソウルの中心街で開かれた北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の来訪を呼び掛ける集会。南北首脳会談の写真が展示された(共同) 国家同士の対話と友好は、相手を尊重しながら、徹底した対立と論争を続け、違いを乗り越え妥協できるとの「覚悟」から生まれる。相手の主張を何でも受け入れるのは、友好ではない。 日韓民衆の自由往来が実現してから、わずか30年しかたっていない。歴史の時間尺度から考えれば、日本側には「遠くて遠い関係」というリアルな認識が必要だ。当然短時間で解決する問題ではなく、時間のかかる息の長い隣国関係だとの理解を求めたい。

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    疑惑の法相よりむしろ危ない文在寅の対日「タマネギ政策」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国の「疑惑のデパート」ともいえる曺国(チョ・グク)前大統領府民情首席秘書官が9日、法相に任命された。この人事は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領がマスコミや野党の反対を押し切って強行したと報じられている。 曺氏をめぐる疑惑は複数あるが、特に注目を浴びている問題が2件ある。一つは、東洋(トンヤン)大で教授を務める曺氏の妻が、娘の釜山(プサン)大大学院入試について不正を行った問題である。 娘が医学部受験をする際に「娘が東洋大から総長賞を受けた」と、曺氏の妻が受験書類に記入した。ところが、この表彰の事実はない。 さらに、問題発覚後、曺氏の妻が東洋大の総長に事実隠蔽(いんぺい)を電話で依頼したとされている。韓国の検察は、既に曺氏の妻を私文書偽造の罪で在宅起訴している。 もう一つは、曺氏の家族が行った私設ファンドへの投資が不正ではないか、というものだ。このファンドは、家族の投資を受けた後、公共事業で多額の収益を得ている。 問題の焦点は、曺氏の政治的影響力がどの程度関与しているかにあるようだ。この投資問題については、やはり検察が既に動いていて、私設ファンドの代表らに横領容疑で逮捕状を請求しているという。韓国大統領府で開かれた曺国氏(右)の法相任命式で記念撮影する文在寅大統領(左)=2019年9月9日、ソウル(聯合=共同) 曺氏については、疑惑が次から次へと出てくるので、韓国国内で「タマネギ男」と揶揄(やゆ)されているらしい。でも、本当にただのタマネギならば、むいてもむいても疑惑だけで、最終的には空っぽになってしまうだけだ。「タマネギ」が日本に飛び火? 個人的には、他国のこのようなスキャンダルには、いつもは関心がない。だが、今回ばかりは日本への飛び火を懸念している。 曺氏の問題をめぐって、韓国国内的には、司法改革を断行したい文政権と検察側とのバトルとして描かれている。文政権の一応の「お題目」は、政権による検察や裁判官などへの政治的介入や癒着の払拭(ふっしょく)であった。 日本との関連でいえば、いわゆる「元徴用工」問題で、日本企業の責任と賠償を認めた裁判所の判断を最も重要視していることにも表れている。この司法判断を、「三権分立」ゆえに「何もできない」と政治的不介入を主張し、もって日本との国際法上の取り決めや常識を無視していいとする態度を、文政権は採用している。 要するに、国内向けに「正義」を主張する材料で、日本を利用しているのだろう。「反日」は韓国政治において、簡単な人気取りの手法だからだ。 反日的な政策は、輸出管理問題を境に大きく沸騰した。日本への露骨な報復措置である「ホワイト国」外しや、国際的な多国間交渉における場違いな日本批判、文大統領自身による度重なる日本批判、そして軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄などは、韓国経済にほとんど影響を与えない輸出管理問題への対応としてはあまりにも過剰である。この過剰に反応する背景は、反日政策が世論受けするからだろう。 報道の経済学には「悪魔理論」というものがある。世論の支持を受けやすい報道の在り方として、悪魔を政府とし、天使は政府を批判する側にしたうえで、常に悪魔が負けるシナリオが好まれる。韓国の場合では、この通常の悪魔理論に加えて、日本を「悪魔」に仕立てることで、日本を批判する側が「天使」になる構造がそもそも存在しているようだ。韓国の文在寅大統領の側近で法相候補の曺国氏に対する国会聴聞会について報じた主要各紙=2019年9月(共同) 実際に輸出管理問題が生じてからというもの、そしてGSOMIA破棄に至るまで、文政権の支持率は上昇に転じた。ただし、現在はまだ支持率が不支持率を上回っているが、曺氏の疑惑報道を受けた支持率低下に伴い、不支持率との差はほとんどなくなりつつある。「反日」でてこ入れ ところで、曺氏もまた「反日」的発言をする政治家として知られていた。ジャーナリストの崔碩栄(チェ・スギョン)氏は『週刊文春』の記事で、曺氏が「元徴用工判決を非難するものは『親日派』である」とレッテルを貼ることなどで、韓国民を「反日」に誘導している典型的な人物と評価している。 文大統領が曺氏の法相任命を強行した動機については、もちろん多様な解釈が可能だ。筆者はその解釈の一つとして、曺氏の法相任命によって支持率がさらに低下しても、「反日」的な政策をてこにして、再浮上することを目論んでいるのではないか、と思っている。 つまり、任命することの政治的ダメージを、「反日」的な政策でまた補おうとするのではないか。しかも、前者のダメージが大きいほど、後者の「反日」政策もまた大きなインパクトを有するものになるのではないか、という懸念を持っている。 一つの可能性でしかないが、例えば、来年の東京五輪・パラリンピックに関して、日本側の対応をより国際的な規模の枠組みで批判してくる可能性はないだろうか。 既に、パラリンピックのメダルが旭日旗に似た「放射光背(ほうしゃこうはい)」であるとして、韓国の大韓障害者体育会が対応を求めていた。また、旭日旗の五輪会場持ち込み問題についても、現状よりも大きな騒動になってしまわないか。 また、文政権は日本をそれほど重視していないから、日本の保守層が主張するほど「反日」的な政策を採用してはいない、そう見えるだけだ、という主張にも記憶がある。だが、問題を重視していないこと自体が問題なのである。曺氏のタマネギよりも、文政権の対日政策の「空洞(タマネギ政策)」の方がよほど深刻である。2020年東京パラリンピックの(左から)銀、金、銅の各メダルの表面 これに加えて、日本の識者や世論の一部には「韓国政府の政策を批判したら嫌韓である」という理解しがたい風潮が生まれている。この風潮と相まってしまえば、問題のさらなる複雑化は防げそうにない。■ 韓国GSOMIA破棄、懸念表明の裏で「歓迎」する日米のホンネ■ 韓国に「本当の制裁」を行う覚悟はあるか■ 対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗

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    「なぜ嫌韓は高齢者に多いのだろうか」を改めて考える

    った12年で、前年比23ポイント減の39.2%にまで落ち込んだ。朴槿恵政権初期に慰安婦問題をめぐって日韓関係が悪化した時期にはさらに下落し、慰安婦問題での日韓合意前年の14年には過去最低の31.5%となった。そこから徐々に持ち直して、昨年は90年代後半までと大差ない39.4%だった。ここまでが世代を通じた全体の流れである。新大久保駅前(ゲッティイメージズ) 次に、「親しみを感じる」と答えた人が5割を記録した2000年以降の調査を見てみよう。興味深いのは、いつも大きな世代差があるわけではないことだ。 常に若者の方が韓国を好意的に見ているのだが、好感度が過去最高だった09年には20代と70歳以上の差は5ポイントしかなかった。ところが、日韓関係が暗転した12年にはこの差が30ポイントに拡大し、13年も24.2ポイント、好感度が最悪となった14年に31.8ポイントとなった。15〜17年にはいったん格差が縮小したが、18年は再び27.8ポイントに広がった。好感度の低下を主導したのが高齢層であることがうかがえる。請求者の平均年齢 ちなみに12年より前に20代と70歳以上の差が20ポイントを超えたのは、02年の23.4ポイントと07年の20.5ポイントだけだ。07年は理由を思いつかないのだが、02年に「親しみを感じる」と答えたのは20代が前年比7.6ポイント増の63.7%だったのに、70歳以上は同0.6ポイント減の40.3%だった。W杯効果が若年層だけに出たことが原因だと考えていいように思われる。 コラムでも取り上げたのが、朝鮮学校への補助金支出を批判するブログにあおられて約1000人が弁護士への懲戒請求を行った問題だ。匿名でできるというブログのウソを信じて署名なつ印した書類を弁護士会に送り、逆に弁護士から損害賠償を求められているというお粗末な話である。 NHKの「クローズアップ現代+」が昨年10月29日に放送した「なぜ起きた? 弁護士への大量懲戒請求」の番組内容を紹介している公式サイトによると、懲戒請求を送った人のうちNHKの調べで住所などが判明したのは470人。平均年齢は55歳で、およそ6割が男性。職業は、公務員や医師、主婦や会社経営者など幅広かった。接触に成功した91人に聞いた動機として最も多かったのは、「日本をよくしたいという正義感から」だったという。 この番組では背景として、自分が好む情報ばかり表示される「フィルターバブル」や同じ情報ばかりが行き交う「エコーチェンバー(共鳴室)」と呼ばれる現象がネット上では起きやすいと指摘。さらに、匿名性の中で意見が過激化しやすい「脱抑制」や、より強い意見に引きずられる「集団極性」という現象もネット上に見られ、結果として極端な行動に出やすくなるという見方が示された。 一方、在特会などについての研究『日本型排外主義』(樋口直人、名古屋大学出版会、2014年)は「インターネットは、政治的な立場を変えるほどの影響力を持つわけではなく、既存の立場を拡張する媒介になると考えた方がよい」と指摘する。もともと持っていたイデオロギー的背景が排外主義的な考え方につながっているという研究結果だ。排外主義運動の活動家というレベルにまでなる人は、ネットにあおられる以前に、そうした考え方の芽を持っていたということになる。 冒頭に述べたように、きちんとした根拠のある批判はなんら問題とされるものではない。そして近年における韓国の対日外交には批判されるべき点が多いのも事実だ。 実際には、日韓両国を取り巻く過去30年の環境変化を見れば、韓国側の理屈はそれなりに理解できるものだ。そう考える私にしても近年の韓国外交には批判的な見方をせざるをえないのだから、不快に感じる人がいても不思議ではない(「日韓関係の構造的変化を考える」と題して4回の連載に書いた)。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) しかし、だからといって根拠のない決め付けが許されるわけではないし、排外主義など論外である。感情的な議論は、自らの国益を害することにもなる。 在韓日本大使館に勤務した経験のある友人と「韓国に対してうんざりするのと、根拠のない決め付けに基づく嫌韓やヘイトスピーチは区別する必要がある」と話しているのだが、その区分があいまいにされがちなのも現在の日本における大きな問題だろう。

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    【法律相談】「韓国人お断り」の貼り紙は憲法違反か

     日韓関係はお世辞にも良好とは言えない状況が続いている。韓国側の不条理な要求に腹を立てる日本人がいても不思議ではないが、そういった考えの商店主が「韓国人観光客、入店お断わり」という貼り紙をした場合、これは憲法違反か? 弁護士の竹下正己氏が回答する。【相談】 最近、徴用工訴訟問題などもあり、韓国との関係が冷え込んでいます。日本にやって来る韓国人は少なくありませんが、韓国人観光客の入店を断るような貼り紙を店が出した場合、このような差別的扱いは法的に許されるのですか。【本文】 韓国人を差別する貼り紙を店先に公然と掲げるのは、いわゆるヘイトスピーチの表現行為です。平成28年制定のヘイトスピーチ解消法では、外国人に対する差別的言動がない社会を目指し、国や自治体に相談体制の整備や教育・啓蒙活動を求め、自治体もヘイトスピーチ解消に向けて取り組んでいます。 例えば、大阪市は「ヘイトスピーチへの対処に関する条例」により、特定の人種などの一定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を排除する目的で、相当程度に侮辱する言動を不特定多数の人が知りうる状態ですることをヘイトスピーチだと定義しました。表現の自由に留意しつつ、一定の手続きを経て、行為者の氏名を公表できるとしています。 もっとも、特定人の名誉毀損や侮辱になる貼り紙でなければ、刑罰が科されることはありません。しかし、民事的には、この貼り紙を盾にとって韓国人に対し、飲食サービスを拒否すると、不法行為になる可能性があります。当事者は本来契約するかどうかは自由が原則。店も客を選べる営業の自由があります。ただし、差別禁止は憲法の基本理念です。 憲法は公権力と個人との関係を規律するもので、直接私人間の契約に適用されませんが、合理的根拠を欠いた社会的に許容できない差別は、憲法の理念に反します。個人的交際や閉鎖的な団体内の差別の場合は別かもしれませんが、外国人というだけの理由で取引を拒否すると、客の法的利益を侵害する不法行為になります。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) それこそ「外国人お断わり」の貼り紙をして、外国人の入場を拒否した公衆浴場に対し、不合理な差別であり、社会的にも許容できる限度を超えており、不法行為になるとして、慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります。【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。関連記事■【法律相談】近所の家がゴミ屋敷寸前 対処方法は?■【法律相談】母が遺した現金 世話をした姉は多くもらえる?■【法律相談】マンションがペットOKに アレルギーある場合■【法律相談】洗い場の掛け持ちで肘痛 労災申請はどちらに■【法律相談】博多で起きた道路陥没事故 責任はどこに?

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    「韓国を敵にした」誤解を招く石破茂の豊富な想像力

    もまた、輸出管理問題を日韓の歴史問題の文脈で理解しているようである。GSOMIAの破棄についても、「日韓関係は問題解決の見込みの立たない状態に陥った。わが国が敗戦後、戦争責任と正面から向き合ってこなかったことが多くの問題の根底にあり、さまざまな形で表面化している」とブログで評している。 本当に文大統領らと同じ方向での「想像力」が豊富である。日本の総理大臣に石破氏が就いたら、と想像すると、彼の緊縮政策志向も踏まえれば、日本が沈没しないか心配になってしまう。■ 韓国GSOMIA破棄、懸念表明の裏で「歓迎」する日米のホンネ■ 韓国に「本当の制裁」を行う覚悟はあるか■ 対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗

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    韓国GSOMIA破棄、懸念表明の裏で「歓迎」する日米のホンネ

    鍛冶俊樹(軍事ジャーナリスト) 日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄か継続かをめぐり、22日朝のニュースは「午後に韓国政府が決定する」と伝えていた。韓国系メディアの多くは「継続」と予想していたが、ともかく決定の発表を待つ他なかった。 待つ間、「何か映画でも」と探したところ、格好の映画があった。『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』という韓国映画で1990年代、対北工作に関わった韓国情報部員の実話に基づいている。 私は韓流ファンではないし、日本製品が韓国製品に劣るはずはないと信じているが、唯一の例外は映画で、日本映画にはもはや秀作を期待できない中、韓国映画にはたまに秀作があるという現実を認めざるを得ない。 この映画もその秀作の一つで、派手なスパイアクションがあるわけでも、セックスシーンがあるわけでもなく、緊密な画面構成の上に俳優たちの演技が生かされ重厚なストーリーが展開していく作品である。 こうした映画は、もはや日本では到底実現できないと私は思うが、そのわけは一口に言って軍事アレルギーの有無である。すなわち日本は憲法9条からくる軍事否定の風潮の下で、自衛ではなく軍事を前提にしたドラマの製作は不可能なのだ。 振り返れば、韓国では共産主義の浸透に危機感を抱いた軍部が1961年にクーデタを起こし、以後30年間、軍事政権が続いていた。民主的な選挙で軍出身でない大統領が選出されるようになったのは1992年からである。 当時、すでにソ連は崩壊しており、欧州では共産主義の脅威は過去のものとなっていたが、東アジアでは中国、北朝鮮、ベトナムなど共産主義国家は厳然としてあった。中国やベトナムは改革開放などに動き出していたが、北朝鮮は旧態依然どころかむしろ過激化し、核兵器開発に狂奔し始めた。 また、北朝鮮の韓国に対する浸透工作は、韓国の民主化に伴い軍事政権時代よりも取り締まりがゆるくなったため、かえって拡大していた。当時の韓国の保守政権は韓国に左翼政権が誕生すれば、北朝鮮に乗っ取られてしまうと懸念していたのである。 韓国の保守政権が左翼政権の出現を阻止するために、当時の北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)政権にカネを渡して、朝鮮半島危機を演出させようとするストーリーは、実際に起きた事件を明確になぞっており、迫真性に富んでいる。 現在に置き換えれば、トランプ政権が金正恩(キム・ジョンウン)政権と手を結んで韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権の転覆を企てるというような物語になろうか。この映画は、韓国に左翼政権が出現するのを阻止するため、北朝鮮が韓国保守派と結ぼうとした状況を綿密に描いているのである。韓国大統領府で開かれた会合でGSOMIAに関する報告を受ける文在寅大統領(左から2人目)=2019年8月(韓国大統領府提供=共同) さて、韓国は大方の予想を裏切ってGSOMIAをあっさり破棄してしまった。日米は失望、遺憾を表明しているし、「韓国が日米陣営から中露陣営に寝返った」というような論評も見られる。しかし、果たして真相はどうか?トランプと金正恩が手を組む? 確かに日米の高官は、失望、遺憾、懸念を表明したが、本音では歓迎しているのではないだろうか。韓国の決定は韓国メデイアの予想も裏切るものだったが、実は韓国政府は破棄を望んでおらず、不本意ながら破棄に追い込まれたのではないだろうか。 というのも、そもそもGSOMIAは韓国を利するだけで日米にとっては有害無益の協定に堕していたからである。 昨年12月、韓国海軍と韓国海洋警察が能登半島沖の日本海で、漂流する北朝鮮船舶を保護し、哨戒活動で飛んできた日本の海上自衛隊哨戒機に射撃用レーダーを照射、威嚇して追い払った。いわゆる「韓国レーダー照射事件」だが、これにより日韓の安全保障上の信頼関係は完全に崩壊したと言ってもいい。 どういうことかと言えば、まず、通常なら漂流する船舶は救難信号を出すはずなのに、北朝鮮の船舶は出していなかった。にもかかわらず、韓国はこの船舶の異常を知り、保護したのだから、北朝鮮からの依頼を受けたとしか考えられない。 しかも、救難活動は情報を公開し、各国が協力して行わなければならないのが国際法の常識なのに、日本の哨戒機を追い払って真相を隠蔽したのである。一説によれば、北朝鮮の要人が日本に亡命を図ったものの、船舶が途中で故障して漂流したところを北朝鮮の依頼を受けた韓国が、捕獲して真相を隠したまま北朝鮮に送還したとも言われている。 いずれにしても韓国は同盟国であるはずの日本に情報を伝えず、敵国であるはずの北朝鮮と通じていたのだ。しかも、韓国はその非を認めないばかりか真相を明かすことさえしなかった。防衛省が公開した韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射の映像=2018年12月、能登半島沖(防衛省提供) こうなれば在韓米軍の情報が韓国を通じて北朝鮮に漏れる事態も懸念される。米国は3月に予定されていた米韓大規模軍事演習を中止し、実動を伴わない米韓図上演習に切り替えた。米軍の実動部隊の情報が韓国を通じて北朝鮮に漏れることを懸念したのだ。 北朝鮮が第2回目の米韓図上演習を夏に挙行することについて非難し、短距離弾の発射を繰り返したが、そのとき、北朝鮮が公開した一部の写真に写っていたのは何と米国製の戦術ミサイルシステム「ATACMS」だ。 これは、韓国にも配備されており、流出経路は韓国からの公算が極めて高い。米国が韓国に事実関係の究明を求めたのは間違いない。説明に窮した韓国の答えがGSOMIAの破棄だったわけだ。 ここで興味深いのは、北朝鮮が米国製兵器を入手している事実を積極的に公表し、米国は、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を一向に非難しない点であろう。トランプと金正恩が手を結んで文在寅政権を転覆させる? そんなストーリーの映画も、いずれ公開されるのではないだろうか。■韓国に「本当の制裁」を行う覚悟はあるか■韓国人の反日感情はこうして増幅されていく■「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる

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    韓国に「本当の制裁」を行う覚悟はあるか

    一色正春(元海上保安官) 令和元年8月2日、わが国政府は韓国を輸出管理において優遇措置を受けることのできる優遇対象国(ホワイト国)から除外する閣議決定を行い、同月28日にその政令が施行されます。  これは同年7月4日に半導体の生産に必要なフッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス(フッ化水素)の3つの化学製品(以下、3品目)を原則3年間は個別に許可が要らない包括許可品目のリストから除外したことに続く韓国に対する輸出管理の見直し措置です。 ただし、この2つの措置の大元は同じものであり、時期がずれるのは根拠が通達であるか政令であるかの違いで(政令は通達に比べると手続きに時間がかかる)、巷(ちまた)で言われている制裁措置が一歩進んだという性質のものではありません。 これを受けて大半のマスコミは輸出規制という「禁輸」を連想させる単語を使って、さもわが国が韓国に対して輸出を行わないかのような報道を行い、それを受けて野党や現政権に批判的な方々は一様に今回の措置を非難しています。 一方で現政権に好意的な人たちは「よくやった」「戦後、初めて韓国に対して明確に国家の意思を示した」と好意的にとらえているようです。しかし、これはそんなに単純な話なのでしょうか。 詳細は後述することとして、まずは客観的な事実をまとめてみましょう。・韓国がホワイト国に指定されたのは2004年(小泉内閣)・日本がホワイト国に指定しているのは韓国を含む27カ国・そのうちアジアでは韓国のみ・EUは韓国をホワイト国に指定していない・本来、輸出は契約ごとに個別の許可が必要である・ホワイト国とは、これを簡略化し、一度許可を得れば3年間有効となる・ホワイト国指定を継続するには厳格な輸出管理が行われているか否かを確認するための協議が必要・西村康稔官房副長官は日本と韓国との間で「少なくとも3年以上の間、十分な意思疎通、意見交換が行われていない」と記者会見で述べた。・3品目は大量破壊兵器等に転用される恐れがある・韓国産業通商資源省は2015年から19年3月にかけて大量破壊兵器に転用可能な戦略物資の不正輸出を156件摘発したと発表 これらのことを普通に読めば、韓国がわが国に対して行っている「不当な輸出規制」という批判は当たらないことが分かります。そもそもの原因は3年間、韓国がわが国からの協議に応じてこなかったことにあり、しかも2004年以前の状態に戻しただけで、他のアジア諸国と同様の待遇です。これで世界貿易機関(WTO)に提訴可能であれば、わが国は他のアジア諸国からも訴えられかねません。もっと言えば韓国は日本だけではなく、EUも訴えるのでしょうか。日本政府が「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを報じるソウル駅のテレビ=2019年8月2日(共同) そもそも外交問題という難しい話以前に、「優遇」ということの性質上、するかしないかは、するほうが勝手に決めていいものではないでしょうか。人間関係に置き換えてみれば、異性に対して「自分を好きになれ」と言っているようなもので、よく臆面(おくめん)もなく言えるものだと思います。 おまけに8月初旬、タイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の場で、韓国の外相は、もともと日本から優遇措置を受けていないアジア諸国の代表に対して「日本が韓国に対して不当な経済報復措置を行っている」と訴えたようですが、それを言われた相手がどう思うのかということすら想像できないのでしょうか。大騒ぎする韓国シンパ 今回の件もそうですが、韓国はわが国との間に問題が起こる度に、自身を被害者、わが国を加害者と勝手に決めつけます。そもそも国と国との関係を単純に被害者と加害者に二分すること自体、良くないことなのですが、戦前はともかく戦後韓国がわが国に対して行ってきた以下のような行為を見ると、わが国が一方的な被害者であるとしか言いようがなく、このリストを見るだけで、なぜ2004年の時点で韓国をホワイト国に指定したのかという疑問がわいてきます。・終戦直後の日本人に対する乱暴狼藉・竹島不法占拠と、それに伴う日本人拉致および虐殺・その人質を使った卑怯な外交交渉・歴史捏造(ねつぞう)に基づく日本民族に対する民族差別・日本国内、しかも首都東京における主権侵害(金大中事件)・度重なる内政干渉・第三国における日本の評価を下げるためのプロパガンダ・国家ぐるみの仏像窃盗・わが国新聞記者に対する司法を用いた言論弾圧・ウイーン条約無視の日本大使館前での嫌がらせ・日韓基本条約を無視した差し押さえ・自衛隊航空機に対する火器管制レーダー照射・国家元首に対する侮辱発言・軍艦旗に対する侮辱・科学的根拠のない水産物禁輸・いわゆる慰安婦合意の一方的な破棄 このような事実があるにもかかわらず、われわれ日本国民は長らく公教育やマスコミ報道により、日本は韓国に対して一方的に酷いことばかりをしてきたという虚偽を繰り返し刷り込まれたため、それがさも真実であるかのように思い込むようになり、その結果として多くの日本人が韓国に対して漠然とした贖罪(しょくざい)意識を持つようになりました。 韓国は日韓が対立する場合、この日本人が持つ贖罪意識を最大限利用して高圧的な態度で無理難題を要求し、それを日本が受け入れるというパターンが戦後一貫として繰り返されてきました。それだけではなく一時期は、少しでも韓国側の非を指摘すると「差別だ」とマスコミに袋叩きされるため公の場で韓国を悪く言うことはタブーのようになっていました。なにしろ「日本は併合時代良いこともした」と、韓国の悪口ではなく、日本の善行に少し触れただけで首が飛んだ大臣がいたほどです。 ところが2002年の日韓ワールドカップにおける韓国の振る舞いを見て、若い人たちを中心に韓国に対する疑問や批判がネットを中心に語られるようになり、『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)など、正面から韓国を批判する動きが出始めました。それから約15年の今、わが国においては本件に関するパブリックコメントを見る限り、95%の人が日本の措置に賛成しており、ようやく多くの日本人が反日教育の呪縛から解き放たれつつあるという実感がわいてきました。 しかし、一方の韓国では、相変わらず「日本=悪」という固定観念から抜け出せていない人が大多数のようで、彼らは今回の措置が自称徴用工問題の報復であると勝手に決めつけ、根拠もなく日本批判を繰り返し、挙げ句の果てには自分たちが不利益をかぶるような対抗措置を行い、これからも行おうとしています。 わが国においても大多数の国民が今回の措置に賛意を表している一方で、マスコミ、自称知識人、野党の人たちなどは、今回の措置に反対し、現政権を批判しています。 彼らは「日本が政治問題の報復を不当な経済制裁という形で行ったため韓国は傷つき、日本も返り血を浴びるだろう」と韓国政府の主張をそのまま繰り返していますが、その大半は事実誤認です。 一例をあげるとマスコミは「ホワイト国除外で個別許可が1000品目以上に増え、韓国にダメージが…」などと、ことさら今回の措置で韓国が甚大な損害をかぶる被害者であるかのように報じ、日本が、さも過激な制裁を行うかのようなイメージ作りに躍起になっているようですが、それは事実に反します。 確かに韓国は国として個別許可の対象から外れましたが、輸出業者が一定の条件を満たせば包括許可の対象になるため、まともな業者であれば、今回の措置の影響を受けることはほとんどありません。ソウルの日本大使館前で開かれた安倍政権を糾弾する集会=2019年8月3日(共同) 実際、8月8日にわが国の経済産業省が半導体などの原材料について、一部の企業に優遇措置解除後初めて輸出許可を出す方針であることを発表しており、正規の輸出手続きをとれば従来通りの貿易は可能なのです。しかるに、韓国およびそのシンパは、なぜ大騒ぎするのでしょうか。やましい取引をしたいのか、単なる無知なのか、とにかく現政権を叩きたいだけなのか。それとも戦後一貫して敵対してこなかった日本が反抗したことに耐えられないのか、いずれにしてもまともな国の反応とは言えません。まるで「日韓離反工作」 そして彼らが今回のような異常な反応を示すのは相手が日本の場合だけであるということも理解しておかねばなりません。北朝鮮には朝鮮戦争で自国民を何百万人も殺され、拉致され、さらに国土の半分を不法占拠され、今も北朝鮮国内で同胞を迫害されているにも関わらず、日本に対する態度と比べると、何も言っていないのと同じです。 わが国より多い拉致被害者や離散家族の問題に関しても無為無策で、これは政権が北寄りだからという訳ではなく、比較的反北の李明博政権の時でも同じで、哨戒艦が撃沈されても島に砲撃を受け、死者が出ても実のある対抗措置は何も行いませんでした。 これは中共(中国共産党)に対しても同じで、韓国が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入を決めた途端、輸入規制、韓流禁止令、韓国への団体旅行禁止、韓国企業への営業妨害など、THAADが他国を攻撃する兵器ではないにもかかわらず露骨な制裁措置を行いましたが、それに対する韓国の反発は一部の中共製品に対してダンピング税を適用するなど極僅かでした。    これは彼らが日本人を蔑視しているからなのですが、実は彼らだけの問題ではなくわれわれ日本人にも責任があります。今回のように日本のマスコミが争点を作り出し、それを受けた韓国のマスコミが大騒ぎして韓国国内で世論が盛り上がり、韓国政府がそれを後ろ盾にわが国政府に無理難題を要求して来たことが過去に何度もありましたが、今までわが国は事なかれ主義に徹し、ただ問題を鎮静化させようとへりくだって相手の要求を一方的に聞いてきました。 しかし、そのようなわが国の姿勢が彼らを増長させ、いわゆる従軍慰安婦問題のように、かえって問題を複雑化させてきたのです。そもそも、いわゆる従軍慰安婦、自称徴用工、靖国神社に対する言いがかり等々、現在の日韓間の問題の大半は「MADE IN JAPAN」なのです。 今回の件も日本メディアの「か弱い韓国に対する日本の非情な仕打ち」というような紋切り型の報道や、自称知識人の「日本悪玉論」に基づく解説が韓国メディアに取り上げられ、河野談話のように「日本人も、こう言っているではないか」と彼らが日本を批判する根拠になっています。 それだけではなく、マスコミ、自称知識人、野党の人などがメディアで過剰に韓国を擁護することによって結果的に多くの日本人の反韓感情を煽(あお)り、本来の日韓友好の妨げになっています。 一方で最近、国連人権理事会で日韓問題における韓国の非を明らかにした落星台(ナクソンデ)経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究員のような人が韓国にいるという、多くの日本人が好意的に受け取りそうなニュースや、その発言のために彼が韓国国内で暴行を受けたという、韓国国内では様々な意見があるが、表では発言し辛いという韓国の一面を知らせるニュースなどは一切報じません。 その様を見ると、彼らは表向き韓国を擁護しているようですが、本人が自覚しているか否かは分かりませんが、実はどこかの国の意向に沿って日韓離反工作を行っているのではないかと疑りたくなります。われわれは韓国を叩く前に、こういった事実を認識し、日韓問題が悪化する根本的な原因を断ち切らなければなりません。韓国の文在寅大統領(右)と会談する安倍首相=2018年9月25日、ニューヨーク(共同) 逆に今回の措置をよくやったと手放しで褒める意見もあるようですが、私はこれに対しても懐疑的です。 戦後初めて韓国に対して意思表示をしたのは確かですが、巷で言われているように報復措置であるとすれば、前述したとおり実害はなく、公式発表通り安全保障上の理由であるならば、この3年間にいくらでもホワイト国除外のタイミングはあり、遅きに失した感があります。今回の措置は米国主導? むしろ、私は今回の措置は日本政府の自発的意思ではなく、米国に促されて行ったのではないかと疑っています。 米国がイランや北朝鮮などが禁輸措置を受けているにもかかわらず、大量破壊兵器の製造に必要な3品目をどこからか入手しているという情報をつかんで探っていったところ、日本韓国ルートが怪しいという結論に達したというのが、私の推測です。 その状況証拠として下記の事例を挙げることができます。・この3年間、日本から韓国への3品目の輸出量が急増し、同様に韓国の不正輸出も急増している。・韓国は北朝鮮に対して瀬取り(洋上で物資を移し替える行為)を行い、国連制裁に違反した疑いが濃厚である・韓国大統領の日ごろの言動から、北朝鮮に対して強いシンパシーを抱いていることは明白・韓国は国際法を守らない しかし、これだけでは具体的措置に踏み切るだけの根拠には成り得ません。おそらく決定的な証拠をつかんだのだと思いますが、それはわが国ではなく米国でしょう。 何しろわが国は海外で情報収集こそ行っていますが、対外諜報機関と呼べるような代物はなく、この手の情報は米国頼みだからです。 にもかかわらず、米国高官が今になって日韓がもめることは望ましくないというような趣旨の発言をしているのはフェイクニュースかもしれませんが、本当であればわが国は米国という仏様の手のひらの上で遊ばされている孫悟空(そんごくう)のようなものです。 情けない話ですが、わが国は独自の軍隊も諜報機関もなく、自衛隊の主力装備品のほとんどは米国製、対外情報も米国頼みなのですから、口でいくら対米自立を叫んでみてもむなしいだけで、このままの体制が続く限り米国の意向に逆らう外交などできるはずもありません。 わが国は、羅針盤もエンジンもないまま大海に乗り出した船のようなもので、米国という船に曳航(えいこう)されているため自分で行きたい方向を決めることができません。 今、何の備えもなしにいきなり曳航ロープを外せば漂流するだけでなく、大波が来れば転覆してしまいかねません。わが国が、自分の行きたい方向に進もうと思えば、まずは軍隊というエンジンと情報機関という羅針盤を備えなければなりません。 特に今回の措置で韓国が完全に敵に回り、在韓米軍が撤退するような事態になれば、味方の軍隊が60万人減り(本当に味方であったかどうかは疑わしいですが)敵方の軍隊が60万人増えるだけではなく、わが国の防衛ラインが対馬海峡になるという事実を重く受け止めなければなりません。 ただでさえ中共(中国共産党)がシナ海を侵略し続けながら類を見ないスピードで軍拡を続け、北朝鮮までが核兵器やミサイルを増強する中で、頼みの綱の米軍が徐々に撤退し、日米安保の見直しまで言及しているにもかかわらず、わが国は国権の最高機関において憲法改正論議をわずか2~3分しか行えないという有様です。わが国が直接攻撃されなくとも朝鮮半島において有事が発生した場合、大量の難民がわが国に流れ込んできますが、それすら現行法では十分に対処できないというのに、もどかしいかぎりです。海上自衛隊護衛艦「かが」を視察したトランプ米大統領と安倍晋三首相=2019年5月28日、神奈川県横須賀市(代表撮影) 現時点で今回の措置を日米どちらが主導で行ったのかはわかりませんが、いずれにしても、この日清日露戦争前夜とも重なる事態において、韓国との輸出問題で一矢報いたと溜飲を下げている場合ではないのです。これ以上、韓国の敵対行動が止まらないようであれば、冷静に本当の制裁を科して韓国にとどめを刺す一方で、わが国に迫りくる侵略の魔の手に備えるための防衛力を一刻も早く整備することが急務です。本当の敵は韓国ではないのですから。■なぜ韓国は北朝鮮と事を構えたがらないのか■韓国人にとって靖国神社とはいかなる存在なのか■なんでもありの「世論戦」韓国に日本が捧ぐべきメッセージ

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    日韓対立を煽るタチの悪い人々

    ただ、もっとタチが悪いのはことさら今回の措置を騒ぎ立て、韓国がかわいそうだと煽る人たちだ。彼らこそが日韓関係を悪化させる火種にほかならない。(写真は聯合=共同)

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    日本たたきに国民の目を集めて始まる「文在寅の陰謀」

    韓国が明らかに「反日国家」に変貌した以上、日本の「甘い期待」は裏切られるだけだ。左派政権が続く限り、日韓関係は好転しない。 それでも、「日本は大国で、韓国は小国である」との現実を十分に理解すべきだ。小国にレベルを合わせた対応をせずに、あくまで大国としての余裕と品位を保つ必要がある。一般の韓国民や野党政治家を大切にしながら、将来に備える。そうすれば、やがて解決策が生まれるはずだ。■ 枝野幸男の「自慢」が文在寅とダブって仕方がない■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 天皇陛下に上から目線の祝電を送った文在寅の「炎上外交」

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    韓国と対峙するうえで想定すべき「国際世論戦」

    ック・アライアンス総研所長)日韓慰安婦問題、元徴用工訴訟、そして輸出管理の問題をめぐって亀裂を深める日韓関係――。日本政府は安全保障の観点から、韓国の「ホワイト国」除外を決めた。気鋭の政治アナリストでパシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏は、安倍政権の決定を支持しながらも、国際世論戦における悪手を指摘。日本が真にとるべき道を提言する。 安倍政権閣僚のメディア向けメッセージが適切なものにならなかった理由の一つは、本人たちは認めないだろうが、輸出管理見直し措置が参議院議員選挙を意識したものだったこともあるだろう。 対ロ外交、対イラン外交、G20に関しても選挙戦にインパクトを与えるほどに目覚ましい成果が上がったとはいえず、今年に入ってから「外交の安倍」の看板に有権者から疑問符が付き始めたことは否めない。 また、保守系の支持者からも同政権に対して過剰に阿る人びとを除いて、同政権の韓国の振る舞いに対する中途半端な対応についてフラストレーションが溜まっている状態も生まれていた。 そこで、直近の外交交渉相手のなかでは最弱国である韓国に対し、自国内の手続きを変えるだけの措置で実行できる手段を用いて、国威発揚のデモンストレーションを実施することは、選挙向けに手っ取り早く外交成果を得る方法としては妥当なものといえる。 そのため、選挙戦略上の趣旨から、韓国の輸出管理に関する安全保障面の懸念のみに言及すべきところで、自ら徴用工などの歴史問題という余計な話題に触れざるをえなかったのだろう。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 3年間も放置されてきた問題に対して同見直し措置が選挙直前に実施されたこと、そして選挙期間中の最終盤に外務大臣が駐日韓国大使を説教したことなど、WTO(世界貿易機関)での係争開始を見据えた場合、デメリットしかないタイミングだといえる。 万が一、閣僚の発言を根拠の1つとして韓国側の主張がWTOで認められる事態となった場合、日本政府は韓国に対して自国内の輸出管理すらも自由に運用できない状況に追い込まれることになる恐れもあり、それらの安易な発言を行なった人びとはどのように政治責任を取るつもりなのだろうか。トランプの「対日カード」 さらに、文大統領がトランプ大統領に日本政府の輸出管理運用見直しについて仲裁を依頼したことが明らかとなっている。 もちろん安倍首相とトランプ大統領はきわめて良好なリレーションを維持しているため、韓国側の主張が理不尽な形で日本に押し付けられる可能性は高くないだろう。 ただし、韓国側から対日関与の依頼がトランプ大統領に行なわれたことは、同大統領にとっては興味深い対日カードを新たに1つ手に入れたことを意味している。 安倍政権とトランプ政権との貿易交渉は参議院議員選挙後に大詰めを迎える段階となっているが、そのような重要な局面において本件はトランプ大統領に無用な借りをつくってしまうことになるだろう。 仮にトランプ大統領が同見直し措置の問題に介入する場合、それは日本の対韓政策の敗北といえる。 したがって、安倍政権はトランプ政権による介入を絶対に回避しなくてはならないため、トランプ政権は労せずして日本政府に対してきわめて有効な貿易交渉カードを手に入れたことになる。 また、ロシアや中国は安倍政権が両国に対して強い態度に出てこない姿勢を笑っているに違いない。ロシアは北方領土を奪って平気な顔をしているどころか、領土交渉も日本側から果実を引っ張り出した上で意図的に内容を後退させている。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 中国は現地邦人を不当に拘束した上、急速な軍拡を実施しながら日本に対する示威行為を繰り返している。 筆者には、傍若無人な振る舞いを繰り返す国々に対して生温いメッセージを送りながら、韓国という弱国にしか強気に出られない政権と、中露両国がまともに外交交渉を行なうとは思えない。きわめて粘着質の国 しかも、同見直し措置の意図すら純粋な安全保障目的ではなく、参議院議員選挙目的のように見えかねない現状に鑑み、両国の独裁者たちから日本が鼻で笑われても仕方ないだろう。 日本国民は単発の行為としては「よくやった」と思える外交措置であったとしても、それに伴うメッセージや実行のタイミングなどの全体像を踏まえた上で、二国間交渉ではなく多国間レベルの視座をもって日本政府はどのように振る舞うべきか、ということを意識するべきだ。 二国間交渉において交渉相手をやり込めることは当然のこととして、交渉行為自体を第三国との交渉に有利な影響を与えるように設計し、政権担当者がそれらの設定を踏まえた発言を行なえるよう事前に準備しておくことが重要だ。 少なくとも外交政策を展開し始める前に、必ず国際的な世論戦の形を想定してからスタートするべきである。 筆者は今回のように参議院議員選挙直前という「事前に周到に準備された発言」以外の不測の発言が飛び出しやすい環境で、韓国半導体産業に対する締め上げに直結する重要なカードを切るという安倍政権の判断には疑問をもたざるをえなかった。 WTOでの訴訟の結果が出るまで数年かかる見通しであるが、結果が出るころには安倍政権は次の政権に道を譲っていることになるだろう。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 今後、韓国のようなきわめて粘着質の国と対峙するにあたっては、将来的に責任をもつことができる政権が万全な体制を築いて戦いを挑むようになることに期待したい。関連記事■ 混迷の日韓関係、日本政府が行なった“手痛い悪手”■ 海軍反省会ー当時の中堅幹部が語り合った400時間の記録■ 韓国が日本政府を侮辱し続けても、止められない「ごね得」■ 日米開戦を「近衛総理に一任」した及川古志郎海相を、元・海軍中堅幹部はどう評価するのか■ 拡大する韓国の武器輸出 日本が国益のために「取るべき行動」

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    韓国、WTOで日本を非難するも中国は訴えず一貫性なし

     韓国の国際機関への訴えによって、日韓の対立は否応なく国際世論をめぐる争いに発展した。気になるのは、世界がこの争いをどう見ているのかということだ。歴史認識をめぐってはこれまで日本が国際社会から批判を浴びてきた経緯がある。だが、ここに来て一気に風向きは変わっていた。 いよいよ日韓バトルは世界に飛び火した。日本が打ち出した韓国に対する半導体素材の輸出管理強化について、韓国は7月24日にジュネーブで開かれた世界貿易機関(WTO)一般理事会で、「不当な措置で自由貿易からの逆行」だと日本を非難した。それに対し日本側は「自由貿易とは武器に転用可能なモノや技術を管理・条件なしに取引するものではない」と応酬した。 さて、このやり取りを世界はどう受け止めたのか。この日の会議について、英ロイター通信(7月25日付)は、〈韓国は国際社会を動員して日本の動きを牽制するために一般理事会にこの問題を持ち込んだが、会議では第三国による発言はなかった。日韓以外の複数国の代表はロイターに、複雑な歴史が絡む2国の対立に巻き込まれたくはないと述べた〉と報じている。 そもそもWTOでは、多国間交渉のルールについて話し合うのが原則で、韓国が二国間の交渉ごとを持ち込むこと自体が異例だった。が、韓国の激しい主張にも他国の同調は広がらず、意見が出ないまま最後は議長が打ち切ったという。他の参加国が冷ややかに見ている様子が窺える。 ところがこのWTO理事会から帰国した金勝鎬(キムスンホ)・新通商秩序戦略室長は、ラジオ番組に出演し、日本を「ライオンがけんかに負けて、隅っこに行って傷をなめているようなもの」と評した上で、こう言ってのけた。「日本側の対応があまりに荒唐無稽だったため、他の国は開いた口が塞がらないほど呆れていた」 韓国に言わせれば、他国は日本に呆れていたから、何も言えない状態になっていたということになる。日韓が対立する今、双方の見方が食い違うのは仕方ないが、韓国側の見解は第三国の報道ともあまりにかけ離れてはいないか。 WTOへの働きかけが空振りに終わった一方で、韓国は別の問題にも直面している。世界12位の経済大国であるにもかかわらず、韓国はこれまでWTOでは開発途上国と位置づけられ、高率関税による自国産業保護が許されるなどの優遇措置を受けてきた。そのときどきに応じて先進国と開発途上国を都合よく使い分けてきたのである。 そうした行為を問題視し、トランプ米大統領は7月26日、「WTO加盟国の3分の2が自国を開発途上国と定義し、優遇されてきた。経済成長を遂げた国々がこのような優遇を受けられないよう、あらゆる措置を講じてもらいたい」と米通商代表部に指示した。 トランプ大統領と金正恩委員長の米朝会談をお膳立てし、喜色満面だったはずの文在寅大統領だったが、気がつけば対米関係でも追い詰められつつある。国際ジャーナリストの山田敏弘氏はこう言う。「そもそもアメリカ側は、韓国をあまり信頼していないようです。WTOで韓国は日本の対韓輸出規制強化が不当だと訴えましたが、一方で在韓米軍がTHAADミサイルを配備したことで韓国への団体旅行を禁じたり、現代自動車の工場を封鎖に追い込んだりした中国のことはWTOに訴えない。一貫性がないのです。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) ましてトランプ大統領と安倍首相の『ブロマンス』(仲のいい男同士のこと)という関係がある現在、日本には何をしてもいいと考えている韓国の言動を、トランプ大統領は快く思っていないはずです」 トランプ大統領は日韓対立について「双方が求めるなら、私は関与するだろう」と仲裁を示唆しているが、韓国への不信感がネックになるかもしれない。関連記事■韓国で女児の胸が大きくなる「性早熟症」、囁かれる原因■ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■広末涼子 長男バスケ大会に現れ「キレイすぎ…」と騒然!■忍者、蕎麦、桜… 韓国の主張と日本の正論【ウリジナル編】■中国富豪男の夢「蒼井そらを1晩300万円でセッティングしろ」

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    徴用工問題、輸出管理強化…海外メディアはどう伝えているか

     現在の日韓対立の原因の一つとなっている徴用工問題について、海外メディアの多くはいたって冷静である。スペインのEFE通信社の配信記事(2019年7月27日付)では、東アジア政治史が専門のアルゼンチン国立科学技術研究所のマリア・デル・ピラール・アルバレス教授がこの問題を論じている。 日本は1965年の日韓国交正常化で5億ドルの経済援助をしたが、韓国政府はその資金をインフラ整備に使ってしまったという背景を述べたうえで、〈従って、日本側としては、韓国政府が犠牲者に対して支払いを行なわなければならない〉と主張しているとし、〈しかし、韓国は対話が必要だと言っている〉とつじつまが合わない韓国の対応を非難している。 ワシントンポスト紙(7月15日付)は、今回の輸出管理強化の理由は、徴用工判決などの韓国の動きが、〈日本にとってのレッドラインを越えたからだ〉としている。 アジアで非常に人気の高い香港のニュースサイト、アジア・タイムズ(7月16日付)は、韓国への輸出優遇措置廃止を取り上げ、日韓の歴史的な因縁が背景にあると解説している。〈1990年代には、反日主義は反共産主義に取って代わり、韓国政界の中でもっとも強力に感情に訴える力となった。朝鮮戦争のほうが多くの血が流され、大きな破壊を引き起こしたのにもかかわらず、植民地時代のほうが韓国史の暗黒時代であったと広く描かれている〉 朝鮮戦争ではおよそ130万人の韓国人が死んだが、北朝鮮は同胞であり、日本はいまだ敵国扱いである。〈植民地時代のもっとも醜い部分のみが学校で教えられ、博物館で展示される。(中略)報道機関は自己検閲する。学者は、少しでもこの路線から逸れた意見を言うと、大騒動になって黙らされる。訴えられたり、罰金を受けたり、論文を却下されたり、仕事を失うことさえある〉(同前) 韓国には言論の自由がないと伝えているのだ。事実、この7月半ばには大統領首席秘書官や報道官が、日本の輸出管理強化以降、政権批判を強めていた「朝鮮日報」と「中央日報」を名指しして「売国的だ」と批判したが、それ以降、両紙から政権批判の記事はぱったりと消えている。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) ウォールストリート・ジャーナル紙やタイム誌などに寄稿している韓国在住アメリカ人記者、スティーブン・ボロウィッツ氏は現在の日韓対立をこう見ている。「韓国政府のスタンスは感情に突き動かされている。ここ数週間、韓国人と話をしながら、感情で大騒ぎしても外交でまともな議論は生まないと説明してきましたが、彼らは『被害者のことを考えろ!』と私にまで言うのです。韓国には、日本に対する敵意を永遠に維持し、断じて和解すべきではないと言う人々がいる。その少数の人たちが国家の政策を左右すべきではないと思うのですが……」関連記事■韓国、WTOで日本を非難するも中国は訴えず一貫性なし■【動画】韓国、体感失業率は25% 漢江大橋が自殺スポットに■徴用工の“証拠写真” 韓国は間違い発覚しても訂正しない■わずか3品目の輸出管理強化で韓国大打撃 市場関係者も驚愕■ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」

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    「報復除外」韓国政府が幼稚な対日政策をやめられない理由

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国政府は、12日午後、日本を輸出管理上の優遇措置を取る「ホワイト国」から外す制度改正案を発表し、9月からの実施を見込んでいるとした。この韓国政府の対応は、もちろん日本政府による同国への輸出管理の変更に対する「報復措置」である。 しかも、この韓国の「報復措置」は、同国のずさんな輸出管理体制そのものを表している。日本をホワイト国から外すだけではなく、明らかに恣意(しい)的な区分で、日本だけを対象とした新グループを創設していることからも明瞭である。簡単に言って「嫌がらせ」だ。 正直、ここまで恣意的な運用は、むしろ韓国の輸出管理体制がいかに国際的な基準から問題をはらんでいるかを、自ら証明しているともいえる。ルールに基づいた運用を行っていないのだ。 確かに、日本側はホワイト国から除外したが、それでも他の諸国よりも優遇した扱いを維持している。具体的には、「ホワイト国」をグループAにし、「非ホワイト国」をグループB、C、Dにした。 韓国は国際的な輸出管理レジームに参加し、一定要件をみなす国としてバルト3国などと同じ扱いである。韓国のように日本だけの「別扱い=嫌がらせ」はしていない。 言っても仕方がないことではあるが、なんともお粗末な対応である。ルールなき人治主義の表れだと思う。 ちなみに、韓国からホワイト国を外されても、日本が被る経済的な影響は軽微だ。韓国政府は日本に対する「ホワイト国外し」を交渉材料にしたいようだが、日本は相手にすべきではない。「経済報復」などと書かれた紙を細断するパフォーマンスを行い、日本の輸出規制強化に抗議する韓国の若者ら=2019年8月10日、ソウル(共同) ここで輸出管理問題について、おさらいしておこう。対外的な取引には主に二つの面がある。一つは経済的な貿易面、そしてもう一つは安全保障面の交渉である。 輸出管理問題は、この貿易面と安全保障面の接点に位置する話題である。核兵器などの大量破壊兵器の開発、または通常兵器に利用される可能性の高い輸出案件に関する問題が今回の「輸出管理問題」の全てである。この領域に関わる財の数量は極めて限定的である。幼稚な対日政策 元経済産業省貿易管理部長で、中部大の細川昌彦特任教授は、先行して行われた半導体などの原材料となるフッ化ポリイミドなど3品目の日本への依存度は高いものの、今回の管理強化で対象となるのはごくわずかであると指摘している。細川氏は一例として、「許可の対象は日本供給のレジストのうちたった0・1%で、新製品の試作段階のもの。半導体の量産品に使われるものは許可不要」とツイッターでの投稿やテレビ番組で説明している。 韓国の半導体産業や国際的なサプライチェーンの脅威になることはあり得ない。もちろん「禁輸」でもなく、全ての品目でいちいち個別許可が必要という話でもない。今回の輸出管理については、一般財団法人安全保障貿易情報貿易センターの解説が参考になる。 もっとざっくりした言い方をすれば、本当に危ない事例だけを管理したいだけの話である。韓国がテロ支援国家でもなければ、大きな経済問題になりえない水準なのだ。 いくら文在寅(ムン・ジェイン)大統領は「北朝鮮びいき」とはいえ、韓国がそのような核兵器開発を極秘裏に進めることもありえないだろう。日本政府があらかじめ懸念しているいくつかの事例さえ払拭(ふっしょく)されればいいだけの話を、自ら日本政府の信頼を損ねる対応を重ねてしまうという政策の失敗により、ホワイト国から外されたわけである。まずは韓国政府が輸出管理の不備を進んで正す、それが最優先の課題なのだ。 文大統領をはじめとして、韓国側は政治もマスコミも、そして一部の韓国民もみんな、日本の輸出管理問題を同国の経済に甚大な脅威として捉えているが、それは誤りである。ただ韓国政府関係者は、十分にこのことを理解しているに違いない。 むしろ文政権は、同国の経済的な困窮を日本の責任に転嫁する機会として捉えている可能性が大きい。実際に、輸出管理問題が生じてから、文政権の支持率は上昇して人気回復に貢献している。 さらに注目すべきは、日本と韓国の間での紛争事項である元徴用工問題やレーダー照射事件、慰安婦問題における「ちゃぶ台返し」などについて、日本側は今後、事態によっては報復措置も辞さない構えであることだ。 韓国政府は、もちろん報復措置の可能性を十分に認識しているだろう。そのため、韓国経済に与える影響が少ない輸出管理問題を大げさに取り上げ、日本製品不買運動など韓国民をあおることに加担し、日本による「本当の報復措置」を大きくけん制しようとしているのかもしれない。「輸出管理でも、われらはこれだけ反発しているので、日本側が本当に報復措置をするなら覚悟したほうがいい」とでもいうように、国を挙げて「けん制」しているかのようだ。2019年8月12日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席した文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同) 日本政府はこのような韓国政府の脅しに屈することがないようにお願いしたい。ここで安易な妥協をすることは、韓国政府が長年続けている、国内の苦境を日本の責任に転じる政策を止めることはないだろう。 日本は韓国の都合のいい欲求不満のはけ口ではない。韓国の「幼稚な対日政策」を完全に転換させるためには、日本政府は国際ルールに沿いつつ、国際世論の闘いに負けることなく、その姿勢を強固なものにする必要がある。■ なんでもありの「世論戦」韓国に日本が捧ぐべきメッセージ■ 対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗■ 韓国人の反日感情はこうして増幅されていく

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    なんでもありの「世論戦」韓国に日本が捧ぐべきメッセージ

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が上昇している。世論調査会社のリアルメーターによれば、支持率は50%台に回復し、不支持率の40%台前半を上回っている。最近までの人気凋落(ちょうらく)が過去の出来事になったかのような急速な回復ぶりだ。 しかも、与党「共に民主党」の支持率も回復している。この背景にあるのは、もちろん日本の韓国に対する輸出管理問題だ。 日本政府は、フッ化水素など3品目について、今までの包括的輸出許可から個別的輸出許可に変更した。それに加えて、韓国そのものを輸出管理で優遇する「ホワイト国」から外すことを閣議決定する方針を固めた。 日本政府の動きに、文政権は「恫喝(どうかつ)」に近い発言を繰り広げている。李洛淵(イ・ナギョン)首相は25日、「事態をこれ以上は悪化させず、外交協議を通じて解決策を見つけるべきだ。日本がもし、状況を悪化させれば、『予期せぬ事態』へとつながる懸念がある」と発言した。 また、康京和(カン・ギョンファ)外相は30日、日本がホワイト国から韓国を外さないよう強く要求した。同時に、韓国がこの問題で国際的に有利になるように、いわゆる「世論戦」を行うと表明している。 実際に、韓国政府は世界貿易機関(WTO)の一般理事会で、日本側の非をしつこく発言した。もちろん日本側も、輸出管理問題が日本国内の対処であり、韓国政府には反論する資格もないと説明した。2019年7月16日、ソウルの大統領府で開かれた会議に出席する文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同) そもそも、WTOの一般理事会はどのような問題でも原則話すことはできる。だが、それはWTOの本旨である、多国間交渉の問題だけの話だ。 日韓の問題は、一般理事会での議題のルールにそぐわない。だが、そんなことは韓国の「世論戦」には通じない。国際的な道理よりも、どれほど不作法で、時には無法な手段を用いても自国の立場を主張するのが、同国の「世論戦」の中身のようだ。韓国政府のあくなき「世論戦」 最近では、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の事務レベル会合でも、韓国側が輸出管理問題を繰り返し取り上げている。RCEPは日本や韓国、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)など計16カ国が参加する多国間交渉の場であり、財・サービス、お金の移動などの取引ルールをつくる自由貿易圏構想である。 WTO一般理事会と同じく、この会合でも日本と韓国の2国間問題は討議に全く関係ない。ましてや、輸出管理問題は日本の国内的な手続きの問題であり、2国間交渉の枠外である。 もちろん、そんなことは韓国政府も十分知っていて行っているに違いない。つまり、これも「世論戦」なのである。 輸出管理問題に関しては、世耕弘成経済産業相によるツイッター解説がすっかり最近おなじみだが、今回の会合では「交渉会合議長のインドネシアからは『RCEPに集中すべき』との発言があった」とのことである。インドネシアの議長の発言は当然正しい。 だが、正しさと声の大きさは違うことが、韓国の「世論戦」のくせ者のところだ。おそらく、これ以後も場違いな舞台で、日本政府の対応を繰り返し非難していくだろう。 そのような不誠実な対応は、日本政府の韓国政府に対する信頼を著しく失墜させるだけで、この問題は改善しない。韓国政府のすべきことは「世論戦」ではなく、自国の輸出管理の枠組みをきちんと設計することだ。2019年7月24日、ジュネーブでWTO一般理事会に参加した韓国代表団(ロイター=共同) 特に、通常兵器に転用される技術や資材については、現在も全く不透明なままである。これでは「ホワイト国」から除外されても仕方がない。 ところで、このような韓国政府の「世論戦」に似た動きが日本国内でも起こっている。今までも、この輸出管理問題を、日本のメディアや識者の一部が「輸出規制の強化」「事実上の禁輸」といった誤解を生みやすい表現や論点を用いて議論している。失政を「転嫁」する可能性 当たり前の話だが、あくまで優遇措置を止めただけであり、禁輸でもなんでもない。手続きを行えば、まずよほど不透明な行いをしていない限り、韓国企業は日本からの該当する資材を購入できるだろう。 時間がたてば、より鮮明になるだろうが、日本の輸出管理は自由貿易を制限する規制ではない。そのため、輸出管理方式の変更が対韓輸出を急減させることはないだろう。だが、問題はそうきれいに分けられない可能性もある。 例えば、韓国経済の減速が理由で、韓国の対日貿易が縮小してしまうとしよう。そのときに、本当は韓国経済そのものの不振が原因でも、日本の貿易「規制」が貿易量の減少を招いたと、国内外に韓国政府が喧伝(けんでん)する可能性も否定できない。それが、なんでもありの韓国の「世論戦」の方向性ではないか。 文政権の経済政策は破綻しているといっていい。最低賃金の急激な引き上げと、労働組合の強化などで、若い労働者は職を得るのが難しくなっている。若年失業率に至っては2けた近くで高止まりしている。 また、財政政策だけは積極的でも、金融政策は引き締めスタンスを変えようとしない。このため、韓国経済を十分に安定軌道に乗せることができない。 確かに、米中貿易戦争の影響はあるが、むしろ文政権の国内経済政策の失敗が、今の韓国経済の低迷を生み出している。このような文政権の失政そのものを、日本の責任に転嫁したうえで「謝罪」を問う可能性すらあるだろう。それが「無限謝罪要求国家」ともいえる韓国の一面ではないか。2019年7月、韓国への輸出管理について、記者会見する経済産業省の貿易経済協力局の岩松潤・貿易管理課長(鴨川一也撮影) 日本は常に国益を無視して韓国に強く配慮し、事実上「謝罪」を要求される。先ほど指摘したように、このような韓国が好む「世論戦」に近いものが、日本のメディアの一部には根強い。 最近では、「韓国は『敵』なのか」という日本の大学教授らが中心となった声明が出されている。呼びかけ人には、和田春樹東京大名誉教授をはじめ、金子勝、香山リカ、山口二郎各氏が名を連ねており、いつもの安倍晋三政権批判者という印象が強い。韓国政府批判が「ヘイト」? この声明を読むと、「冷静な対話」のために輸出管理(声明文では「輸出規制」)を取り下げる必要があるという。しかし、そもそも輸出管理問題についての対話を積極的に行わなかったのは韓国政府であった。 また、輸出管理の優遇が取り消された後は、経産省からの説明の場を「協議」と呼称するなど、一方的に誤情報を広めたり、全く関係ない国際協議の場において、日本政府を事実上非難しているのは韓国である。つまり、対話しようとしていないのは韓国政府の方なのだ。 この点について、「韓国は『敵』なのか」の声明は一切踏まえていない。そのうえ、この輸出管理問題が、まるでヘイトスピーチやネトウヨといったものと関係しているかのように書いている。 全く理にかなっていない。まさか、韓国政府を批判したら「ヘイトスピーチ」とでも言うのだろうか。意味不明である。 韓国政府は「敵」ではない。だが「裏切り者」ではある。これはゲーム理論上の意味においての話だ。 韓国の不誠実な対応に対して、日本政府が取るべきは「しっぺ返し」戦略である。その戦略を強化するためにも、韓国をホワイト国から除外し、標準的な扱いに戻すべきである。 そして、韓国の国際的な世論戦に徹底的に抗していく必要がある。日本の世論戦に対しても同様だ。2018年11月、オーストラリアのダーウィンでモリソン首相(手前)と会談する安倍首相。左は世耕経産相(共同) 幸い、日本国民の世論は政府の「しっぺ返し戦略」に肯定的である。日本政府は油断なく、今回の戦略を全うすべきだ。それが安易な妥協による「協調」ではなく、長期的な日韓の協調を生み出すだろう。■ 河野太郎の真っ当な抗議をかき消すテレ朝の「ちょっとした印象操作」■ 対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗■ 韓国人の反日感情はこうして増幅されていく

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    河野太郎の真っ当な抗議をかき消すテレ朝の「ちょっとした印象操作」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 参院選の期間中、「韓国への輸出管理問題が選挙目当ての対応である」という皮相な見方が存在していた。とりわけ韓国メディアでは、このような論調が多く見受けられた。 他方で、日本でも同様の見解を主張する人たちも少なからずいた。だが、輸出管理問題は、あくまで安全保障上の問題であり、中長期的な見地から採用された日本政府のスタンスだ。選挙が終われば終息すると考えるのは、よほど道理を心得ない人たちであろう。 その参院選では、事前の予想とほとんど変わらない形で、与党が勝利した。確かに、マスコミのしばしば指摘する「改憲勢力」の3分の2議席獲得には届かなかったが、もともと改憲にどこまで熱意を持っている「勢力」なのか疑問がつく。 では、その「勢力」とされる公明党は本当に改憲志向だろうか。公明党の参院選のマニフェストにある「『重点政策』4つの柱」には、憲法改正は含まれていない。むしろ、政治的温度としてはほとんどマイナスに近いのではないか。 こうして見ていくと、「改憲勢力」とは、マスコミのほとんどでっち上げに等しい「線引き」でしかないように思う。つまり、「改憲勢力」が3分の2に達しても達しなくても、政治的にほとんど意味を成さないのではないだろうか。 用語一つとっても、マスコミによる自作自演の印象操作的手法は相変わらず深刻である。それはちょっとした見出しの違いからも誘発されている。 例えば、いわゆる「元徴用工問題」について、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国政府が応じなかった。これを受け、19日に河野太郎外相が南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼んで抗議した。徴用工訴訟をめぐる問題で、呼び出した南官杓駐日大使と握手を交わした河野太郎外相(左)=2019年7月19日(三尾郁恵撮影) 河野氏の抗議は極めて正しい。韓国政府が日韓請求権協定を事実上裏切る態度を続けていることは極めて深刻であり、国際法上でも認められない暴挙だろう。適切な「無礼」発言 ところが、「文政権は単に日本に関心がないだけで、日本の保守層が思うほど日本を差別的待遇しているわけではない」と不見識な見方をする専門家たちが時折見受けられる。もちろん、そのような「無関心」というか「無視」が、今日の国際法違反の状況を韓国政府自ら招いている。いわば、韓国政府の外交上の失政のツケを、日本側に押し付けているといっていい。 19日の河野氏と南氏の面談で、韓国側が日本の提案を全く「無視」して手前勝手な発言をしてきた。まるで上記の専門家たちと同じ姿勢だ。 このような「無視」について、河野氏は「極めて無礼」という厳しい言葉を放った。産経新聞で詳細が報じられているが、河野氏のやりとりは適切であると考える。 だが、テレビ朝日『報道ステーション』のインターネットサイトでは、「河野大臣激怒に韓国『むしろ違反は日本』」という見出しで記事配信されていた。これが上記の「ちょっとした見出しの工夫での印象操作」といえるのではないか。この見出しでは、河野氏が感情的な対応をしたことに対し、韓国側目線からの異議を道理のあるもののように扱っている印象を与えはしないか。 さらに記事では、旧朝鮮半島出身者問題を輸出管理問題の報復と関連させる韓国側の言い分を紹介して終わっている。だが、両者は全く別の問題である。実際に、河野氏の「極めて無礼」発言は、韓国側が異なる問題を絡めて主張する不誠実な態度を批判する言葉が含まれていた。 それが「この旧朝鮮半島出身労働者の問題を他の問題と関連しているかのように位置づけるのはやめていただきたい」という箇所だ。この言葉を紹介しないで、単に韓国側のデタラメな発言を引用して終わるのは、やはり一定方向への誘導といわれても仕方がないのではないか。 輸出管理問題でも印象操作はある。関連報道を見ても、いまだに「韓国への輸出規制問題」とか「輸出規制強化」いう見出しが目立つ。かりゆしウエア姿で閣議に臨む菅義偉官房長官、安倍晋三首相、河野太郎外務相ら=2019年6月(春名中撮影) だが、「規制」とは、従来に比べて貿易取引量を政策的にコントロールすることにある。マスコミの大半は、「規制強化」と報じているので、「これは一種の保護貿易的な規制だ」とでも言いたいのだろう。ただ、この施策は、単に各国と同じ待遇に戻すだけで、禁輸措置でも自国の産業を保護するための政策でもないことは、以前の論考でも述べたように明らかだ。 自由貿易の国際的な枠組みである世界貿易機関(WTO)においても、安全保障上による例外規定として輸出管理が認められている。輸出管理手続きの簡素化は必要だが、それでも日本の対応は先進国並みであり、特に厳しいものではない。優遇こそ「異例」 むしろ、韓国を「優遇」しすぎたことが、かえって異例であり、リスクを生じるものだったにすぎない。各国並みに戻すことは、世界の安全保障上から考えても妥当だろう。 「通常兵器及び関連汎用(はんよう)品・技術の輸出管理に関するワッセナー・アレンジメント」は、安全保障上の国際的な枠組みの一つだ。当然、日本もこの申し合わせを順守している。通常兵器や技術の無制限な国際的拡散を防止したり、テロでの利用を防ぐ目的を有する政策レジームだ。 同時に、これはあくまで国内法上の問題であり、海外とはこの政策レジームを共有するだけで足りる。しかし、この問題をあたかも韓国と交渉すべき外交問題とみなす日本のマスコミにもあるが、今書いたように国内の手続き上の問題でしかない。韓国が文句をいうのはお門違いである。 もし、再び「優遇」してもらいたいなら、今後、信頼に足るパートナーとして長期間、例えば1世紀単位にわたる地道な努力をすべきだろう。もう政権が交代するたびに、ころころ変わってしまう「不可逆的」な約束を交わす意義は乏しい。 マスコミの「ノイズ」がひどいので、以下では日本政府の主な韓国への対応をまとめた。(1)韓国への輸出管理問題「優遇」措置を信頼欠如に伴い、並の扱いに戻しただけ。貿易自由化に逆行する「規制」でも、禁輸でも政治的報復でもない。国内の事務的手続きでしかない。国際的な政策レジームから見ても、韓国との交渉事案ではない。(2)旧徴用工問題などへの対応正確には、「旧朝鮮半島出身の労働者」と表記すべき話。この問題は、日韓請求権協定を韓国側が一方的に裏切る国際法違反。韓国政府に対する強い異議表明は妥当である。また、韓国側の日本からの提案「無視」が招く事態(日本企業への損失)については、対抗措置の実施秒読み段階にある。2019年7月、ソウルの韓国大統領府で握手する文在寅大統領(右)と、保守系最大野党「自由韓国党」の黄教安代表(左)(聯合=共同) 二つの問題は全く異なっていて、よほど歪(ゆが)んだ見方をしない限り、日本政府の方針は妥当なものだ。妙なバランスをとる報道の合理性は乏しいと言わざるを得ない。■ 対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗■ 「戦犯企業ステッカー」韓国人も冷めた行き過ぎた民族主義■ 韓国人の反日感情はこうして増幅されていく

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    『報ステ』後藤謙次が安倍首相に求めたお門違いの「えこひいき」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) いわゆる「韓国輸出規制問題」が生じてからというもの、日本のマスコミや識者の意見を分析していると、ゲームの「ルール」が明らかに変わったことが分かる。その一方、日韓の「政治ゲーム」のルールが変更されたにもかかわらず、従来と同じ次元で、どう考えても韓国びいきな価値観をあらわにしている韓国専門家がいる。 また、安易に「友好」を持ち出して、日本側からの非合理的な妥協を口にするジャーナリストがテレビで発言していたりする。この人たちは、ゲームのルールの変化に適応するのに失敗している思考の「守旧派」と言える。 ゲームのルール変更について、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者でニューヨーク大のトマス・サージェント教授は「レジーム転換」と形容した。サージェント氏は「人間の行動を規定するものはゲームのルールである」と述べている。ゲームのルールが変われば、人間の行動も変化する。 野球のルールが変更されたとしよう。もし、攻守交代がスリーアウトではなくフォーアウトで行われるなら、野球選手の行動も当然変わることになるだろう。実は、サージェント氏が提唱する以前の経済学では、そのようなゲームのルール変更を政策分析に明示的な形では入れていなかった。 サージェント氏は、ある特定のゲームのルールを選択することを、「レジームの選択」と呼んだ。また、あるレジームから他のレジームに変更することを「レジーム転換」と表現したのである。 サージェント氏はレジーム転換を経済学上で考えたが、政治的な現象にも広く応用できるものだ。今回の韓国への輸出規制問題は、まさにレジーム転換と言えるだろう。 改めて韓国への輸出規制問題を説明すると、20カ国・地域(G20)首脳会談(サミット)明けの7月4日に、フッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス(フッ化水素)の化学製品3品目に関して、簡素な輸出手続きをやめて、契約ごとの輸出認可方式に切り替えたことを指す。韓国メーカーの半導体製品 これら3品目は軍事転用が可能な戦略的物資だが、安全保障上の友好国への優遇措置として手続きを免除していた。だが、不適切事案の発生や、また韓国側に呼び掛けていた協議の提案を無視され、信頼関係を損ねたことが、今回の輸出認可方式の変更を招いたわけである。お門違いの解釈 また現在、他の戦略物資についても、個別の輸出許可申請が免除されている外為法の優遇制度「ホワイト国」から韓国を除外する手続きが進行中である。政府が24日までパブリックコメントを受け付けた上で最終判断する。 ちなみに、これらの手続きは特に異例なことでもない。今まで韓国を優遇してきた措置を、他国並みに戻しただけにすぎない。 対象品目を禁輸したわけでもなければ、この手続き変更が保護貿易を目指すような「規制」ですらない。「輸出規制問題」としばしば報道されているが、妥当な表現とは思えない。 はるか昔、海外への出国審査で、液体の持ち込みに厳しい制限は設けられていなかったはずだ。現在はどの空港でも厳格である。 では、この措置を「旅行客の数量規制」と表現するだろうか。あくまでテロ予防などの安全対策をしているにすぎない。今回の手続き変更も、それと同じ趣旨と理解すべき問題だろう。 テレビ朝日系『報道ステーション』での党首討論で飛び出した、コメンテーターの後藤謙次氏の発言は、まさにこの全くお門違いの解釈と言えよう。後藤氏は、安倍晋三首相(自民党総裁)に対して「G20で自由貿易を高らかにうたいあげたのに、その直後に対韓輸出規制することはそのメッセージと逆行するのではないか」と疑問を呈していたからである。ジャーナリストの後藤謙次氏=2012年3月撮影 一方で、韓国専門家にも今回の措置を自由貿易に逆行するものと解釈する人がいて、筆者は違和感をぬぐえない。ひょっとしたら、専門家すぎて「ミイラとりがミイラになる」ほど韓国を愛しすぎたのかもしれないと思えてくるほどだ。 個人的な「愛情」はできるだけ控えた方がいいと思うのだが、この種の発言をすると、筆者の会員制交流サイト(SNS)のアカウントにまで食いついてくる人たちが出てくる。この種の反応は、他ではあまり見られないだけに、「韓国政府への批判」というものは特殊な成分を持つ危険なワードなのかもしれない。 また、優遇措置を改める際に、政府は上記の「不適切な事案」が生じていること以外にも理由を挙げている。世耕弘成経済産業相は「今年に入ってこれまで両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の動きが相次ぎ、その上で、旧朝鮮半島出身労働者問題については、G20までに満足する解決策が示されなかった」ことを、ツイッターで説明を重ねている。感情的なのはどちらだ これは、いわゆる「旧徴用工問題」での韓国政府側の不当な対応を意味している。安倍首相も党首討論の席上で、「相手の国が約束を守らない中では優遇措置は取れないということであり、当然の判断。世界貿易機関(WTO)に違反するということでは全くない」と述べている。 要するに、今回の措置が「報復」ではなく、信頼関係が構築できない理由として挙げているわけである。これは正しい認識だろう。 この連載でも何度も考察してきたことだが、現在の日本と韓国に信頼関係は構築できていない。これは、もっぱら旧徴用工問題や慰安婦問題における文在寅(ムン・ジェイン)政権による「ちゃぶ台返し」ともいえる、日韓合意への「裏切り行為」に原因がある。 韓国の動きに対しては、日本が「しっぺ返し戦略」を採ることが、長期的な利益を得る上で日韓「双方」に好ましいと、筆者は提案してきた。韓国が強烈なしっぺ返しを受ければ、それ以降の行動を「協調」的な姿勢に変更する可能性が高まる。それは要するに、日本と韓国の長期的に安定した関係をもたらすだろう。 もっとも、今の文政権は、WTOへの提訴をちらつかせたり、文大統領が自ら撤回を求めた際に「世界が懸念している」と言及するなど、高圧的な態度に変わりはない。日本政府は現在の姿勢を強く堅持して、安全保障の国際的取り決めに準拠して、今後も「ホワイト国」の見直しなどを進めていくべきだろう。ソウルのスーパーで陳列棚から下ろされた日本メーカーのビールやたばこ、食品など=2019年7月7日(聯合=共同) 先の後藤氏は「国民の感情を抑えるのがリーダーの務め」と述べ、安倍首相に今回の対応の見直しを迫った。しかし、ここまで解説したように、韓国に今までと同様の輸出手続きを認めることが、よほど感情的なもの、つまり韓国に対する「非合理的な身びいき」として国際社会から糾弾されかねない。 JNNの世論調査では、「韓国輸出規制」の強化について「妥当だと思う」人は58%で、「妥当だと思わない」の24%を大きく上回っている。これを「国民の感情」的リアクションだと思うのは、あまりに国民を見下した意見ではないだろうか。 世論の熱狂から距離を置き、冷静に報道することはもちろん重要だ。だが、「対韓禁輸」だとか「旧徴用工のことを持ち出せば、WTO訴訟で負ける」などという事実とも違い、また論点がずれている物言いをする人たちこそ、とても感情的に思えて仕方がない。■対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗■「お疲れさま」安住アナまで叱られる奇妙なアベガー論法■米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス

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    対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗

    本政府は事態を説明する国際政治上の責任を新たに負うことになる。 そしてそれを万一、徴用工問題における日韓関係の悪化に求めるなら、それは日本政府が自ら、この措置が政治的報復であり、経産省が掲げる安全保障上の理由は「単なる建前」にすぎないと示したことになる。日本側がどのような論理を積み上げても、その論理に内実がなく、国際社会に信じられなければ、国際社会で敗北することになるのは、日本政府がこれまで福島沖水産物や捕鯨を巡る国際紛争で経験したことであり、事態は全く異なる展開を見せることになる。これが二つ目のシナリオである。 この二つのシナリオのどちらを採用するかで今回の措置は、政治的にも経済的にも全く異なる意味を持つことになるが、日本国内では矛盾した報道が続けられている。「制裁」の効果 第二に考えなければならないのは、これらの措置による個々の企業活動への影響があることと、それが韓国経済全体に与える影響、例えば国内総生産(GDP)に対する押し下げ効果がどの程度あるかは別の問題だ、ということである。 例えば、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題に対して、中国政府が団体旅行客の渡航を制限した際には、観光産業をはじめとする特定の産業に明らかな影響は出たものの、韓国経済全体に与えた影響は限定的なものにとどまった。だからこそ韓国政府はこの問題で中国に譲歩せず、THAAD配備はそのまま続けられた。 そしてとりわけ、輸出管理の運用見直しに伴う物流に与える影響が、短期間にとどまる一つ目のシナリオの場合、韓国政府の当該産業に対する支援などにより、経済全体に与える影響は吸収されてしまう可能性が強い。韓国政府が事態の展開を座して見守るだけだ、ということは考えにくいからだ。 現段階において、外資が大きな割合を占める韓国の株式市場において、関連企業の株価はいまだ大きく下落しておらず、マーケットがその先行きに深刻な懸念を抱いている、とは言えない。個々の企業の経営に対するミクロの影響と、経済全体のマクロの状況は区別して考える必要があるのは経済学の基礎である。ミクロな現象の断片のみから韓国経済全体に与える状況を予測することは慎まねばならない。 とはいえ、それ以上に重要なのは、そもそもこの措置が何のために行われており、その目的は果たしてこの措置により実現に向かうのか、ということだ。これが今回の措置を考える第三のポイントである。セッション3開始前、韓国の文在寅大統領と握手を交わした後、厳しい表情を見せる安倍晋三首相=2019年6月29日、大阪市住之江区(代表撮影)   産経新聞は、今回の措置について「いわゆる徴用工問題で事態の進展が見通せないことから、事実上の対抗措置に踏み切った」と報じている。また朝日新聞は、7月2日の記者会見で菅義偉(よしひで)官房長官が今回の措置を徴用工問題などへの「対抗措置ではない」と述べる一方で、「両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上に20カ国・地域(G20)首脳会合までに満足する解決策が示されなかった」ことが今回の措置に至る背景の一つであることを明らかにした、と報じている。 既に紹介した読売新聞の記事の「事実上の禁輸措置」という表現をはじめとして、ほとんどの日本メディアの報道は、今回の措置の背後に、徴用工問題といった歴史認識問題により悪化する日韓関係があるという点で一致している。制裁は「十分条件」ではない それでは今回の措置を強めることで、日本はその目的を達成することができるのであろうか。考えなければならないのは、仮に今回の措置が経済制裁と言える内容を持つ場合、その制裁が政治的効果を持つには、最低限、次の二つの条件が必要だ、ということだ。すなわち、第一には制裁が実際にその国の経済に影響を与えることであり、第二はその経済の影響がその国をして相手国への譲歩を促すような効果を持つ、ということである。 既に明らかなように、事態が先に示した二つのシナリオのうちの一つ目、すなわち、今回の措置が短期的かつ限られた影響しか持たない場合には、韓国が日本への譲歩に「追い込まれる」ことは考えにくい。7月3日の時点で、韓国政府は関連業界に対する大型投資の支援を表明しており、その措置は主として国内企業の活動を支援するものになるだろう。 それでは事態が二つ目のシナリオ、つまり日本からの特定産品に関わる流通が長期的に阻害された場合にはどうなるだろう。 この場合にも先に述べたように、それが経済全体に与える影響が小さければ、やはり当該業界に対する支援で事足りてしまうから、韓国政府が積極的な外交的対応を行う理由にはなり得ない。この結果、韓国政府から支援を受ける韓国企業は自らの設備投資などを行うことにより、短期的には苦しんでも、中長期的には新たなサプライチェーン(部品の調達・供給網)を作り上げてしまうことになるだろう。それでは単に日本企業が自らの市場をみすみす失うだけの結果に終わることになる。 事実、東日本大震災による影響で日本からの部品供給が途絶えたことを受けて、韓国の一部業界ではサプライチェーンを切り替えている。今回、韓国企業は政府からの支援を受けることもあり、時間は必要になるものの、最終的には同じ展開になる可能性が強い。日本政府の韓国向け輸出規制強化を1面トップなどで伝える韓国紙=2日、ソウル(共同) だとすると、事態が一定の政治的な効果を持つには、日本からの特定産品に関わる物流が長期にわたり阻害され、かつそれが経済的にも大きな影響を与えた場合に限られることになる。しかしながら、問題はこの状態もまた、韓国政府が歴史認識問題などにおいて日本への譲歩に向かう「十分条件」にはなり得ないことだ。必要な戦略とは何か なぜなら、制裁の結果として生まれた人々の不満が、韓国政府をして日本への譲歩に追いやる方向へ働くとは限らないからである。例えば、先に述べたTHAAD問題に伴う中国の経済制裁は、むしろ朴槿恵(パク・クネ)政権初期には好意的であった韓国人の対中感情を大きく悪化させる方向へと機能した。 朴槿恵弾劾の結果として登場し、前政権を否定する政策を連発する文在寅(ムン・ジェイン)政権ですらTHAAD配備を継続した背景には、このような中国の制裁の「失敗」による韓国人の対中国感情の変化が存在する。世論の意向に反して政策を実行するのはいかなる政府にとっても大きな困難を伴うことになるからである。 そして今、韓国に渦巻くのは、日本による突然の「輸出管理の運用の見直し」に対する強い反発である。状況はTHAAD問題に伴い中国が制裁を開始したときと極めて類似しており、韓国世論は日本に対する強硬姿勢に傾きつつある。 7月4日にリアルメーターが発表した世論調査によれば、日本側の措置に対して「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は22%に過ぎず、約46%が世界貿易機関(WTO)への提訴を含む国際法的対応を、約24%は経済的報復措置による対処を求めている。 注意しなければならないのは、経済への影響を危惧して文在寅政権の「無策」を批判する野党に近い保守系の人々ですら、その結果として日本に譲歩することを求めているわけではないことだ。すなわち、保守的な志向を持つ人々の間でも「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は38・5%のみであり、過半数は国際法的対応、または、経済的報復措置を求めている。さらに言えば、この「外交的交渉」の中身には、先に韓国政府が提案して日本政府に拒絶された「財団案」などによる解決も含まれているから、韓国側が外交的に折れて日本側の主張に従うことを求めている人は、実際には極めて少ない計算になる。 このような中、そもそも対日関係を軽視する文在寅政権が、世論の風向きに反して日本への譲歩に向かう可能性は極めて少ない。頭に入れておかなければならないのは、政治は、経済的合理性に基づいてではなく、政治的合理性に基づいて動く、ということである。仮に韓国経済が日本側の措置により大きなダメージを受けたとしても、それによりむしろ日本側への敵意が高まるなら、政治家にはそれに抗して動く必要は存在しない。与党である「共に民主党」支持者のうち「外交的交渉により解決すべき」と答えた人はわずか5・7%。これでは外交的交渉を始めることすら難しい。 だとすれば今回の措置により、われわれは本来の目的からますます遠ざかっていることになる。忘れてはならないのは、そもそも経済制裁、それもある1カ国のみによる経済制裁で他国が外交方針を変えることは容易に存在しない、ということだ。例えばそれはアメリカとイランの関係がそうであり、われわれは北朝鮮に対して周辺国と協調して経済制裁を行ったものの、目指す結果を何ら得ていない。だからこそ経済制裁とは他の手段と組み合わせて使うものであり、ただやみくもに用いても相手側の対応を硬化させる効果しか持っていない。韓国の康京和外相(右)と会談に臨む河野太郎外相=2019年5月23日、仏パリ(AP=共同) 外交、否、政治に対する評価は本来、何を目的として掲げ、そしてその目的をどう実現したかによってなされるものだ。ナショナリスティックな欲望を抑えて、自らの国益が何であり、それを実現するためにはどうすべきかを真摯(しんし)に考察する。「目的合理性」に基づいた、より冷徹な戦略が必要になってくるだろう。■日韓関係は最悪、北朝鮮問題で出番なくとも安倍外交は「78点」■慰安婦より根深い「徴用工問題」を蒸し返した韓国の裏事情■徴用工判決と日韓の正義、いつまで「歴史戦」を続けるのか

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    「お疲れさま」安住アナまで叱られる奇妙なアベガー論法

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 日本で初開催となった20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)での米中首脳会談から、衝撃的な米朝首脳会談の実現。この数日、トランプ米大統領の「政治ショー」に世界がくぎ付けになった。 トランプ大統領がツイッターを政治手法として採用してから、数年になる。その中でも、今回の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長への対談の呼びかけと成功は、旧来のメディアを中心にしている多くの人たちこそ衝撃的だったろう。 日本では、その旧来型メディアを利用した政治的な「印象報道」が極めて多い。その中から、政策当事者の発言という1次ソースに、多くの人たちが直接触れることのできる会員制交流サイト(SNS)は、旧来型メディアの濁ったフィルターを通さずに、個々の人たちが自由に判断できるだけに便利だ。 しかも、単に政策当事者の発言を真に受けるだけではなく、瞬時にさまざまな異論や反論が現れ、それがまた多くの人に可視化されていく。もちろん、政治的・文化的な分断の可能性は常に存在するが、それでも人々がSNSの使用をやめないのは、メリットの方が純粋に大きいからだ。 今回のG20でも、旧来型メディアの「印象報道」は強力に展開した。また新聞やテレビだけではなく、それらのマスコミ各社のSNSや、それに連動するかのように、識者たちの発言も注目を集めた。 私が注目したのは、TBS系列の番組『新・情報7DAYS ニュースキャスター』で同局の安住紳一郎アナウンサーが、G20での安倍晋三首相の動向を伝えたときである。安住アナは、「安倍さんの首相動向を調べたんですけど見てください。テレビ、マスコミで政権与党の事を褒めるといろいろお𠮟りを受ける向きもあるんですけど、安倍さんお疲れさまでした」と、その分刻みの過密スケジュールをこなした首相の行動を評価したことだ。G20大阪サミットで行われた女性活躍推進のイベントに出席する、安倍首相(左)、トランプ米大統領(右)と長女のイバンカ大統領補佐官=2019年6月29日午前、大阪市(ロイター=共同) 安住アナの素朴な感想は妥当なものだろう。だが、それさえも「お𠮟りを受ける向き」を意識しないといけないようだ。マスコミが政府の広報になる必要はないが、他方で「政府批判ありき」では偏った報道になってしまうだろう。「成果」より「失策」 ところで、インターネット上では、安倍首相が各国首脳に「無視」されたとするフェイクニュースが一部の心ない「識者」によって拡散されている。しかし当たり前だが、首相は議長として、精力的に活動を行っていた。 精力的だけではなく、戦略的な展開も見せていた。特に、韓国に対しては、相当練られたものだったのではないか。 具体的には、G20の間、日韓首脳会談を非公式含めて行わなかったことだ。さらには、G20明けに、スマートフォンのディスプレー部分に使われるフッ化ポリイミドなど化学製品の輸出規制をはじめとする制裁措置を発表した。 これらは、韓国政府が採用を続ける元徴用工や慰安婦問題での「裏切り行為」に対する、日本からの「しっぺ返し戦略」である。日本の「しっぺ返し戦略」は、韓国政府に将来的な「裏切り行為」を自制させるために合理的だと、筆者は評価できる。 ところが、多くのマスコミは上述のような「戦略」を評価するよりも、むしろ、安倍首相がG20の夕食会で、「一つだけ大きなミスを犯した」と大阪城のエレベーターについて言及したことを取り上げ、それの批判に忙しい。要するに、「成果」よりも「失策」が旧来型メディアの好む報道になっている。集合写真の撮影を前に、安倍晋三首相(中央)の前を歩く韓国の文在寅大統領(右)=2019年6月28日午後、大阪市中央区(代表撮影) これは、この連載でもたびたび指摘しているが、新聞やワイドショーなどの報道が「報道の経済学」でいう「悪魔理論」の枠組みを採用しているからだ。「悪魔理論」では、政府が「悪魔」であり、それを批判する側は常に「天使」である。 そして、悪魔である政府のなすことは常に「失敗」するものと運命づけられている。運命といっても、本当の評価ではない。新聞やワイドショーがそのような「政府のやることは必ず失敗する、ろくなものではない」と印象報道するということである。 当然の話だが、報道は提供する側の理屈だけで成り立っているのではない。新聞やワイドショーに情報源を依存するような人たちがいてこそ成り立つ。「蚊帳の外」論のなぜ 南北の軍事境界線にある板門店で行われた3度目となる今回の米朝首脳会談でも、安倍政権を「悪魔」扱いした日本の報道や、それに連動するかのような識者たちの発言がある。いわゆる「蚊帳の外」論だ。 つまり、安倍政権は北朝鮮問題で国際的に孤立しているというわけだ。ツイッターを見て、トランプ大統領が金委員長と会談したい意図があると知ったのは、当事者である北朝鮮を含めて、韓国も日本もそうだったに違いない。 だが、トランプ大統領のツイッター発言を事前に日本の外務省が知っていなければならないし、板門店で米朝韓3カ国に交わって、日本も加わらないといけないらしい。どの国でもできないようなむちゃなハードルを暗に設定して、それが満たされなければ「蚊帳の外だ」というのは、全く不合理な意見としかいいようがない。 他方で、今回の米朝会談において、韓国が「事実上」外されたことはあまり注目されていない。一部のマスコミが伝えただけにすぎない。 米朝首脳会談が終わった後、金委員長を見送るトランプ大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の姿がワイドショーなどでしきりに流されている。また「韓国はわき役に徹した」という趣旨の韓国メディアの報道を取り上げたり、文政権の外交的成果であると持ち上げる日本のメディアもあった。 果たして本当にそうだろうか。文政権が、今回の米朝首脳会談では「わき役に徹した」というよりも、最初から「わき役」だっただけだろう。板門店で対面するトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央)、韓国の文在寅大統領=2019年6月30日(聯合=共同) 韓国政府の外交にかなり好意的な論評まである。どうも「悪魔理論」は、なぜか韓国政府に適用されないようである。不思議でならない。 これから日本政府の韓国に対する経済的な制裁がより鮮明な成果を上げてくるだろう。この中で日本のマスコミの多くが、この合理的な「しっぺ返し戦略」をめぐって、日本を「悪魔」にし、韓国を「天使」に仕立て上げて報道しないか、それが心配である。■ 「金正恩に足元見られた」報ステが言うほど北朝鮮は単純じゃない■ 韓国の裏切りには最強の「しっぺ返し戦略」で応じるほかない■ 石破茂まで乗っかったキラーコンテンツ「安倍叩き理論」

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    映画『主戦場』で語られなかった慰安婦問題の核心

    清義明(フリーライター) ノンフィクション作家、山崎朋子氏の代表作『サンダカン八番娼館』を二十年ぶりに読み返した。「からゆきさん」と呼ばれた、東南アジアなどで娼婦として働いていた日本人女性の物語だ。熊井啓監督による映画化もされているので、こちらの方がなじみがある人がいるかもしれない。ネットで安く視聴も可能なので、ご興味がある方はぜひともご覧いただきたい。栗原小巻、田中絹代、高橋洋子が主演の1974年の映画である。原作にほぼ忠実で、映画のつくりとしても古びていない。 明治のころから日本は海外に多数の日本人娼婦を送り出していた。まだ日本が南洋にさしたる貿易もなかった時のことだから、これは異彩を放っている。例えば、1886(明治19)年にシンガポールに在留していた日本人は約1000人。そのうち900人以上は女子であり、そのほとんどすべてが「醜業婦」であったことが、当時の駐シンガポール日本領事員によって記録されている。特筆すべきはその多くが誘拐されてきたものと領事員が記録していることである。この「誘拐」というのが、どういう行為なのかは注意が必要だが、高い給与を提示して甘言を弄(ろう)して、前渡し金のもとに拘束的な身分条件をつけて働かされていたのが、おおよその状況であったと言われている。貧しい家の娘が売られていくという話である。 『サンダカン八番娼館』の主人公である女性も、そのようにして売られていった一人である。もちろん商行為としての契約は交わされているが、それは幾ばくかの前渡し金を渡され、それを家元に置いていき、その借金を払うまでは売春を強制されるもので、当時でもこれは違法である。この主人公の場合は、「外国さん行けば、毎日祭日(まつりび)のごたる、良か着物ば着て、白か米ン飯ばいくらでも食える」と聞かされて、やはり極貧の生活の中にあった友人たちを誘って、業者の後をついて行ったのである。その仕事というのが売春とは彼女たちは知らない。当時彼女たちは10歳になったばかりである。 当時はそのようにして「給料のよい稼ぎ口がある」とだまされて売られた日本女性が、あらゆる東南アジアの港町にいたのだ。インドネシア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイ。これらの国々には探していけば当時の日本人墓地があるのだが、その朽ち果てた小さな墓標の群れにはことごとく女性の名前が刻まれている。そのほとんどが娼婦であろうと推測されている。※写真はイメージです(GettyImages) 私はシンガポールと香港のそうした日本人墓地を訪ねたことがある。現地の日本人会によって今でも手入れされている墓地は南国の明るい日差しと緑に囲まれていて平穏である。その女性たちの墓標はせいぜい20~30センチのものばかりで、それが延々と続いていた。明治の中頃の香港にいた日本人も、そのほとんどが女性だったという。もちろんそれは売春婦である。 日本人が海外に進出するときに、まずは売春業から取り掛かるというのは、どこでもそうだったようで、明治の初期の釜山(プサン)などでもそうだったらしい。先ごろ香港は司法制度の改悪に抗議する民主勢力のデモが200万人で埋め尽くされたが、そのデモ隊が集結した湾仔(ワンチャイ)は、今では香港人の集まる香港屈指の繁華街であるが、当時は日本人売春宿が軒を並べている場所だったということだ。こういう事情から、東南アジアの港町では、たいがいは日本人の居住者のうち女性の方が多かったのである。そんなに単純なものか 1869(明治2)年、日本政府はこれまでの法体系を整理して、文明開化の道を歩むための刑法の整備に着手した。そのときに早くも人身売買の問題が取り扱われている。すでにこの段階からして、婦女子が借金や多額の前渡し金によって人身拘束されてしまうことが問題視されていた。いわく「人を売買することは古来あるまじき事なり。和漢西洋ともに、古来から人を売って奴婢(ぬひ、奴隷)とする悪風がある。奴婢は人を牛馬と同じで、人道開明(人権意識)が広がるにつれてなくなりつつある。ところが皇国には今なお娼妓がいて、それは期限を区切って売られたものである。牛馬と同じである。娼妓がいるため、女子を売買する悪風がある」(『人身売買』牧英正著/岩波新書より意訳) このため1870(明治3)年の段階から、人を売春目的で売ることや、奴婢とすることは違法とされていた。ただし自由意志であればそれは致し方ないともしているのは欧米でもそうだったからだろう。そして、のちに国家が売春の商行為を管理するようになる。これが「公娼制」である。ここでも、建前上は前借金により自由を拘束されるようなことは禁じられてきた。しかしこれはあくまでも建前であった。事実上、借金を支払わぬ限りは、彼女たちの自由は制限されてきた。 日本では長らくこのような人身売買が平然と行われてきたわけである。これは江戸時代から戦前にいたるさまざまな娼妓・娼婦をめぐる物語によって広く伝えられていることでもある。そして、それは悲劇的であるとともに、美談のようにさえ扱われてきた。親の借金を支払うために、健気(けなげ)に働く孝行ものというように。「おしん」のような、年少者の奉公や富岡製糸場の女工も、この一つのバリエーションである。 そしてこの悪習は、東南アジアの各地にたくさんの娼婦を送り込み、やがてそれを植民地である朝鮮や台湾にも広めていき、さらには戦時になると軍がこの慣習を利用して従軍慰安婦制度をつくっていった。 従軍慰安婦について、さまざまな議論がなされているが、まずは私がこのような日本国内の事情について考えたい。国際的な認識からすれば、これは奴婢と同じ奴隷制度であり、人道開明が広がる(人権意識が高まる)につれ、許されないことになりつつあるというのは、もう150年前から分かっていながら、なおも日本人はそれを必要悪として許してきたのである。慰安婦問題の根底にはこの事実がある。 映画『主戦場』を見た。 従軍慰安婦というのは「娼婦にすぎなかった」として日本軍の責任はなかったとする、いわゆる保守の慰安婦否定派に、さまざまな角度から批判を与えるドキュメンタリーである。慰安婦は「性奴隷」などではない、という否定派の意見も小気味よく反論されていく。整理された論旨は非常に分かりやすい。映画『主戦戦』(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC ドキュメンタリーというのは残酷である。書き言葉とは違い、微妙な言葉のニュアンスや子細な表情までをも映し出してしまうし、インタビューの服装や髪形までの総合的な情報までもが提示される。それらが多角的にスクリーンに提示されながら結論が導き出される。 従軍慰安婦問題を日本の戦争加害の一つとして解決しなければならない問題だと認識して考える人には、痛快で胸のすくようなドキュメンタリー作品となっただろう。 だが、本当にこれでいいのかというモヤモヤ感は残り続けている。ここまでそんなに単純なものなのだろうかと。被害感情のナショナリズム もちろんこのドキュメンタリーでも提示されているように、慰安婦否定派の程度の低い議論もあるのは確かである。明治の初めから「奴隷」と認識されてきた人身売買の事実があっても、まだ「性奴隷」という表現に噛みついているところなど、その一例である。さらに、彼らの最大の錯誤は、まだ当事者が存命である人権問題を、あたかも歴史認識の問題のように取り扱うところにある。さまざまな事情がある慰安婦に対して、「売春婦にすぎない」というのは、「人道開明」の世の中、さすがに理解されるのは難しいのではないか。 歴史であるからには多面的な見方が必要であり、現代の人権意識で判断されるべきではない。当時の認識から言えば、あれは致し方なかったことだ。恥じる必要はない。そもそも日本が先の戦争は正義の戦争であったし、その一部として理解するべきだ。それに彼らが申し立てていることはウソばかりじゃないか。こういう思いが否定派の根底にあるのだろう。 私はこの見方にほとんど賛成はできない。それでも歴史は多面的に見なければならないという部分については同意せざるをえない。 一例として、慰安婦問題について、私たちの政府はどのように対応してきたかと言えば、それは必ずしも現在韓国側が責め立てるほどに酷いものとはいえないという事実がある。 映画にも少しだけインタビューされている世宗大学教授の朴裕河(パク・ユハ)氏(『帝国の慰安婦』朝日新聞出版)やジャーナリストの松竹伸幸氏(『慰安婦問題をこれで終わらせる』小学館)は、日本政府によってこれまで繰り返しなされてきた謝罪や事実上の賠償の方法について、そこまで非難を浴びるようなものではないと論じている。 私はこの見方を妥当なものとする。慰安婦問題が政治問題として動き出したのは1991年のことだが、この日本軍関与の責任を認めた、いわゆる93年の「河野談話」の見解を歴代、引き継いできている。国際世論を考えると今後も変更することは当面あり得ないだろう。(参考:「慰安婦問題に対する日本政府のこれまでの施策」外務省) 補償問題にしても、日韓基本条約の枠組みを維持しながら事実上の政府補償を行った「アジア女性基金」を河野談話の翌年には早々に立ち上げている。アジア女性基金は、日本と同じように「戦時補償は解決済み」とするドイツが、かつてアメリカ在住の戦時強制労働者への補償を行った際の方法と同じものだ。こうして詳細に見ていけば、日本政府は解決に向けて、いたずらに冷淡な態度に終始してきたわけではないことが分かるはずだ。 ところが、これは韓国ではまったく響かない。そればかりか、ますます問題が悪化するばかりである。そしてそこには韓国側の持つ、解決することができない因子、ナショナリズムの存在が見え隠れしてしまう。 世界中を見渡せば、隣り合った国で歴史問題や領土問題が存在しない方が珍しいことではある。ましてや「植民地」に(朝鮮は植民地ではないという右派の議論があるようなので、「併合」と言い換えてもいい)した国とされた国の間で、非難の応酬があるのは全く当たり前のことだ。 よく韓国の「反日感情」だけが特殊であるかのような議論を見かけることもあるが、いたって「井の中の蛙(かわず)」の議論であると言わざるをえない。イギリスとアイルランド、セルビアとクロアチア、ギリシアとマケドニア、インドとパキスタン、タイとミャンマー、フィリピンとインドネシア…と例をあげていけばキリがない。そうして、双方が歴史の中でどちらが正当な歴史観を持つか、延々とさや当てを続け、それは時に流血の惨事にまで発展する。戦争にもなる。 特に歴史上弱い立場にあり、征服されたり同化されそうになったりした経験のある国家は被害感情を露骨に表に出す。その被害感情は隣国に再び自由を奪われるような事態が起きるのではないかという恐怖を核にして、国民の統一した意思を紡ぎ出していく。犠牲者のナショナリズムと呼ぶべきか、被害感情のナショナリズムというべきか、そのような弱者として自分たちをとらえて国民統合を図る。映画『主戦戦』(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC なお、日本の原爆文学や空襲や飢えなどの戦争体験も、このような被害者ナショナリズムの一つだということができるだろう。ただし日本の場合はこれがいたって内向的な風景に収斂(しゅうれん)されてしまうのだが。一方の韓国はどちらかというと、これが世界的には普通と言えるように日本の過去を断罪し、これでもかと追及し続ける。 私はこれを二つの側面から理解する。 つまり慰安婦問題は、人権問題として解決するべき必要があり、それは繰り返してはならない歴史として日本は認識すべきものだというのが一つ。 かたやもう一つは、これが被害者のナショナリズムとして過大に扱われる危険性についてである。ナショナリズムの高揚は、もう一つのナショナリズムにぶつかり合うことで、そちらも激しくさせてしまうからだ。日本の慰安婦否定論の跋扈(ばっこ)はこれが原因といっても過言ではない。『主戦場』に足りないもの 『主戦場』では、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協、現在の略称は「正義連」)という慰安婦支援の活動団体代表のインタビューもあった。「これは『反日』という話ではなく、あくまでも人権問題なのだ」と、これがナショナリズムとは関係ないことのように否定するのだが、これには過去の挺対協のふるまいを知っている私は素直に聞くことができなかった。 2017年、『主戦場』に先立ち、日本で公開された『沈黙-立ち上がる慰安婦』というドキュメンタリー映画があった。これも日本の右翼勢力からの批判を浴びたということだが、この映画に一つ注目するべきポイントがあった。 この映画で取り上げられている慰安婦支援団体は、先の挺対協と分裂して出て行ったグループのことを扱った映画なのである。 どうしてこの団体が挺対協と対立することになったかと言えば、日本政府が関与した「アジア女性基金」からの「償い金」を、この団体が支援する元慰安婦たちが受け取ったからである。これを挺対協は「民族の裏切り者」として非難し、のちにさまざまな嫌がらせとも言える活動で追い込んでいる。支援者団体の代表はこれがために韓国に入国拒否されかかっている。挺対協からすれば、日本政府の謝罪や「補償」はまやかしのものであり、これを受け入れるのは、娼婦が金銭をもらうのと同じこと、というような論旨を展開する。 「民族の裏切り者」? 補償金を受けとるか受け取らないかは本人の自由意志のはずで、ましてやそれが「民族」という名前で非難されるのは、首をひねらざるをえない。さらには、個人を犠牲にして全体のために尽くすという押し付けが、悪しきナショナリズム以外の何ものでもないとも思わざるをえない。 私はソウルの慰安婦像も、釜山のそれも、さらには香港にも最近できた慰安婦像も見てきた。韓国第三の都市である大邱(テグ)では慰安婦歴史館も訪れたことがある。慰安婦像の横には誰も座っていない椅子がある。それはまだ未解決の名もなき慰安婦たちの存在を意味するという。 韓国の人たちはそこに腰かけて笑顔で記念撮影をする。悲劇や悲壮感は感じられない。日本で広島や長崎や沖縄の戦跡でそのような記念撮影の仕方をしたら不謹慎だと一喝されるのは間違いないだろう。そこで感じられたのは、あっけらかんとした被害者との連帯意識である。これは、よく韓国通と言われる人たちが言う「恨」の感情とは無縁のものだ。私はこの光景に私たちが理解できず、かつ慰安婦問題が決して解決に向かうことがない理由の一つが隠されているような気がしてならない。 映画『主戦場』には、そうした慰安婦問題に秘められた韓国ナショナリズムの謎を解く材料は一つもなかったと言ってもいい。映画『主戦戦』(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC たしかに人権問題としての慰安婦を論じる素材としては優れているかもしれない。この映画は「歴史修正主義者」による戦前回帰について警鐘を鳴らしている。安倍政権批判にこれが収斂されていくのだが、自分はなにをか言わんやの気持ちとなり、映画館を出ていくことになった。慰安婦問題で否定派と慰安婦支援派の間にある溝を埋めるのに、これでいいのかといいう鬱屈した気持ちにならざるをえない。 『サンダカン八番娼館』の物語に戻ってから本稿を閉じたい。この作品には、人身売買された、からゆきさんと著者の出会いから別れまでが綴られているのだが、これに後日談というのもある。 サンダカンには、多くは人身売買された、韓国の従軍慰安婦と同じ境遇のからゆきさんの墓があるというのだ。ボルネオの南洋の山の中に、著者はこの墓を探し当てるのだが、その墓はこぞって日本の方向を向いていなかったというのだ。国家は無縁のまま死んでいった彼女たちに何もしなかった。韓国は慰安婦問題を国をあげて支援し続けるという。ただし、個人の自由意志は国家によって許されない。私はこういう対照的に見えて、相似的な輪郭を描く光景を、映画『主戦場』のように善悪二元論に単純化して説明することはできない。■徴用工「残酷物語」は韓国ではなく日本が生んだイメージだった■悲しくも滑稽な映画『軍艦島』にみた韓国人の心の奥■慰安婦を「ゲスな演出」でアピールする韓国に反論してもムダである

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    中韓に誤ったシグナルを送る岩屋防衛相の「未来志向」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) シンガポールで行われたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)における岩屋毅防衛相の中国、韓国に対する対応は、端的に言って悪いシグナルを国内外に伝えるものでしかなかった。 まず、昨年末に起きた海軍艦艇による自衛隊機への火器管制レーダー照射問題において、韓国は自国の責任を認めるどころか、悪質な映像のねつ造や、論点ずらしといった国防・外交姿勢を重ねたことは記憶に新しい。 この問題については、今までの日韓における、取りあえずの安全保障上の「協力」関係に、韓国側から「裏切り」行為が生じたものと解釈できる。日韓の安全保障上の協力関係では、朴槿恵(パク・クネ)大統領時代に発効した日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)や、部隊間交流などがあった。 そのような日韓の「協力」関係は、昨年末の韓国側からの「裏切り」により、日本側はそれに対応する形で大臣クラスの積極的な交流を避けてきた。また、海上自衛隊の護衛艦「いずも」の釜山入港を見送る対応をしてきた。 その流れにもかかわらず、岩屋氏はレーダー照射問題が生じてからというもの、韓国の「裏切り」に一貫して甘い姿勢であった。率直に言ってしまえば、韓国に媚びる発言をしばしば繰り返していたのである。 2月の記者会見でも、岩屋氏は韓国との防衛協力を急ぐ考えを示し、現場交流を再開していた。北朝鮮のミサイルや核兵器の脅威があり、日韓米の協調体制が必要とはいえ、このような岩屋氏の姿勢は合理性を欠いた。むしろ、日韓、そして日韓米の防衛協力を長期的に毀損(きそん)する可能性があるといえる。非公式会談で握手する岩屋防衛相(右)と韓国の鄭景斗国防相=2019年6月1日、シンガポール(韓国国防省提供・共同) 日本と韓国の防衛協力が、韓国側の「裏切り」で揺らいでいるのは偶然ではないだろう。文在寅(ムン・ジェイン)政権に代わって、この問題も日本への姿勢が明らかに変化したシグナルととらえるべきだ。求められる「限定的合理性」 慰安婦問題の蒸し返しや、いわゆる「元徴用工」問題といった国内問題に関して、韓国は日本に責任をなすりつけ始めた。このことでもわかるように、文政権の日本への姿勢転換は鮮明である。この文脈上で、レーダー照射問題を、岩屋氏の中途半端で性急な「媚韓」的態度で対応すべきではないと考える。 こう書くと、中途半端な自称「リベラル」系の人たちや、「ハト派」と表現されれば誇らしいと信じている愚かしい人たちの意見が出てくる。「そういう強硬な意見は、単に愛国主義的な意見の歪みだ」という手合いだ。全く理に適う思考に欠けていると思う。 この種の意見は、見かけの「平和」や「友好」を口にする一種の「偽善者」ではないだろうか。ちなみに、政治学者で大和大講師の岩田温氏の『偽善者の見破り方』(イーストプレス)には、その種の「偽善者」たちのわかりやすいサンプルが多数あるのでぜひ参照されたい。 「協力」関係がまずあって、それに対して相手側が最初に「裏切り」を選んでくるならば、こちらもそれに対して「裏切り」で応じるのが、長期的には「両者」とも最も得るものが大きくなる。これはゲーム理論でいう「しっぺ返し戦略」(オウム返し戦略)であり、最も協力関係を生み出しやすい戦略である(参照:渡辺隆裕『ゼミナール ゲーム理論入門』、ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学』)。 相手と同じことをするので、相手側は「裏切り」をやめて、「協力」を表明すれば、こちらもそれに応じて「協力」することになる。間違っても自分の方から「協力」を持ち出すべきではない。そうすれば、再び協力関係が構築できず、日韓の関係は不安定になり、両国が損失を被る。 特に、現在の東アジア情勢のように、一寸先には何が起こるかわからない不安定要素な状況では、最初から長期的な予想を積み上げていくことは困難である。場に合わせて対応していく手法を磨いていくことが望ましい。会談前に握手する(左から)韓国の鄭景斗国防相、シャナハン米国防長官代行、岩屋防衛相=2019年6月2日、シンガポール(共同) 完全に将来を合理的に予測するのではなく、その場その場の情報を元に戦略を組み上げていく「限定的合理性」を前提にした政治や安全保障の戦略が大切になる。つまり、「しっぺ返し戦略」は、限定合理性の観点からも望ましい戦略なのである。 今回は、韓国側が裏切ったのだから、岩屋氏は「裏切り」、つまり非協力姿勢を採用するのが最も望ましい。たとえ甘言だとしても、自ら進んで「協力」を言い出すべきではないのだ。岩屋大臣の「愚かしさ」 だが、今回のシンガポールでの会議では、岩屋氏はむしろ積極的に、韓国国防相との非公式会談を行った。それどころか、その場でレーダー照射問題を棚上げし、記者団に対して「話し合って答えが出てくる状況ではない。未来志向の関係を作っていくために一歩踏み出したい」と発言した。 この岩屋氏の発言は、もちろん防衛関係者だけではなく、日韓の国民やメディアに間違ったシグナルを送ったことは間違いない。つまり、日本は「しっぺ返し戦略」を採用する能力も意志もない、というメッセージとなる。 これを聞けば、韓国側は「裏切り」行為を今後も続けていくだろう。もちろん、それは日韓の長期的な協力関係を不安定なままにするだけだ。 本当に愚かしい大臣としか言いようがない。ジャーナリストの門田隆将氏や経済評論家の上念司氏らは岩屋氏の罷免や退任を要求する趣旨の発言を会員制交流サイト(SNS)で表明した。 私も彼らと前後して同様の感想を書いた。別段、それはイデオロギー的な偏見ではない、上記で説明したようなゲーム理論からの省察である。 岩屋氏の姿勢は韓国に対してだけの話ではない。シンガポールでの中国の魏鳳和国防相との会談後、訪中の意向を改めて表明している。 尖閣諸島の周辺では、中国海警局の船舶による接続水域の航海が記録的な回数に上り、日本側に重圧を与えている。このような戦略を採用し続ける国に対して、岩屋氏の訪中の意欲は、韓国の場合と同様に、むしろ日中の関係を長期的に危ういものにするだろう。要するに、岩屋氏の「ニセの未来志向」は日本の国益を損ねるだけである。「アジア安全保障会議」に臨む韓国の鄭景斗国防相(左)と岩屋防衛相=2019年6月1日、シンガポール(共同) 安倍政権にとって、10月に控える消費税率10%引き上げと、岩屋防衛相は日本を誤らせる重荷でしかない。「一歩踏み出して」早めに辞めさせるべき人物である。■ 田母神俊雄手記「レーダー照射、韓国軍の実力では自衛隊と戦えない」■ レーダー照射「論点ずらし」は韓国の反転攻勢だ■ レーダー照射、韓国が日本に期待した「KY過ぎる甘え」

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    韓国にはホトホト疲れました

    韓国京畿道議会に先月提出された「日本の戦犯企業製品」にステッカー貼付を義務付ける条例案は、内外から批判が集まり、事実上の取り下げになった。慰安婦問題に徴用工、レーダー照射、天皇謝罪発言…。いやはや、日本に広がる「韓国疲れ」もここに極まれりである。(写真は聨合=共同)

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    「戦犯企業ステッカー」韓国人も冷めた行き過ぎた民族主義

    のが上程され、さまざまな論議を呼んだ。この条例案については日本でも大々的に報道され、ただでさえ険悪な日韓関係をさらに悪化させるという憂慮の声も強かった。条例案は、いったん取り下げられたものの、再び審議される可能性は残っている。この条例案に関する日本での報道は極めて断片的であり、その背景や反応については深く触れられてはいない。ここでは、こうした条例案が韓国の地方議会に発議された背景や一般の韓国人の反応について考察してみたい。 まず、この条例案が発議されたのは韓国の首都・ソウルを取り囲むように位置している京畿道(キョンギド)の議会。「道」は日本の「都道府県」に当たる。京畿道の人口は約1300万人。地方議会とはいえ、田舎の小都市の議会に発議された条例案ではないのである。 件(くだん)の条例案は3月26日から開かれた京畿道議会の臨時会で発議された。その内容は「学校で使うプロジェクターやカメラ、コピー機などの備品のうち、日本植民地時代の戦犯企業が生産した製品」に「戦犯企業の製品であるステッカーを貼付するように義務づける」というものだ。「戦犯企業」というのは、去る2012年、国務総理室が「植民地時代に収奪や徴用を行った」と発表した299社の日本企業のうち、現存する284社。東芝や日立、川崎、三菱、住友などが含まれている。 この条例案の「条例案発議趣旨」には「制定理由」として「一部日本企業らが『対日抗争期』当時、戦争物資提供などの目的実現のためにわが国民を強制的に動員して労働力を搾取した。長い歳月が流れた今も(日本が)公式的な謝罪や賠償どころか歴史を否定し、美化しているのは深刻な問題」「学生たちに正しい歴史認識を確立させ、教職員に警戒心を抱かせるため、戦犯企業が生産した製品であることを明確に表示しなければならない」という内容が記されていた。 「対日抗争期」とは耳慣れない言葉であるが、要するに日本の植民地期ということである。最近、韓国では歴史を美化し脚色するための「言い換え」が行われているが、この用語もその一つである。その一方で、「日本は反省も謝罪も補償も一切していない」という事実無根の定番フレーズが用いられている。 自分が愛国者であることをアピールするために、韓国人が日本製品の不買や排斥を呼びかけるのはよくあることで、特段珍しいことではない。現に、この京畿道の条例案に先立ってソウル市議会にも日本製品の排斥を行おうとする条例案が発議されそうになった前例がある(市議会に上程されず常任委員会で否決)。ただし今回の京畿道の条例案は日本製品の排斥を公式的に行おうとするもので、過去に例がなかったものである。2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に参加した市民(共同) 条例案の発議を主導した黄大虎(ファン・デホ)議員は「日本の『戦犯企業』は太平洋戦争当時、日本帝国主義のためにわが国民を強制徴用する反倫理的行為を犯し、またこれを通じて莫大(ばくだい)な利益創出と人類史に罪悪を及ぼしたにもかかわらず、何の反省も補償もなかった」「ドイツの戦犯企業は反省し、ナチスの犠牲者に対して補償を行ったので、戦犯企業だとしても例外」「日本の『戦犯企業』が過去を反省せず美化する行為をやめない以上、消費者は戦犯企業を記憶しなければならない」などと述べている(「日刊京畿」)。ここでも「ドイツは反省したが、日本は反省していない」というお決まりのフレーズが登場している。ドイツがアフリカの植民地支配に対して謝罪したことなどないのだが。自国民から非難殺到 京畿道議会の開会に先立ち、条例案のこうした内容が明らかになると、京畿道のみならず韓国政府関係者からも憂慮の声が上がった。3月20日、日本の教育委員会に当たる京畿道教育庁は「戦犯企業」に関する明確な定義がなく、混乱をもたらす恐れがあるなどとして「受け入れ難い」とする意見書を道議会に送った。また、京畿道教育庁の李在禎 (イ・ジェジョン)教育監も同日、「韓日外交に大きな影響を与えかねないため、まず政府側が立場を決めなければならない」と述べた。また、同月21日には康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が「政府として具体的な評価をすることは適切ではない」「自治体議会の審議過程で慎重に検討される必要がある」と述べている。 そもそも、この条例案を発議した黄大虎議員とは何者なのか。公開されているプロフィールによると、1986年6月、京畿道水原(スウォン)市生まれ、当年32歳。明知(ミョンジ)大学校体育学科卒業後、成均館(ソンギュングァン)大学や崇実(スンシル)大学校の大学院を修了している。昨年6月の地方選挙で現政権と同じ「共に民主党」所属候補として出馬し、初当選。議会では「第2教育委員会」に所属している。1年生議員ゆえに現在まで特に注目すべき実績もない。今回の条例案にしても、特に緊急性や必要性を持つものではなく、強いて言えば、有権者の反日感情に訴える点数稼ぎに見えないこともない。 実は、こうした指摘や批判は韓国国内でも提起された。黄議員のフェイスブックには「(戦犯企業の)ステッカーをお作りになるついでに、朝鮮戦争の戦犯である中国製品と北朝鮮製品に貼るステッカーをお作りになれば公平ですね」とか「私も外国生活を10年してみたが、このような軽率な行動をすれば、その被害はすべて在外韓国人が受けます。本心から国民のために働く政治家になりたいなら、深く考えて慎重に行動してください」などという、かなり痛烈な批判も書き込まれていた。さらに京畿道議会のホームページの自由掲示板に書き込まれた意見も辛辣(しんらつ)なものばかり。そのうちのいくつかを紹介しよう。 「やい、京畿道議会の民主党議員の大馬鹿野郎ども。一体、お前らは幼稚園児なのか、何なのか。発想が幼稚すぎて話にならない。今、国を滅ぼそうとしているのか、何なのか。(中略)どうすればこんな発想ができるのか。いま、激変している国際情勢の中では、世界的なマインドを持たねばならない。もちろん、過去に日本が過ちを犯したのは言うまでもないが。昔の植民地時代の考え方にとどまっているお前らが哀れだ。(中略)もし、条例案が通過したらどうなるのか。韓国人であるわれわれも理解できない条例案なのに、外国ではどう見るか。(外国企業は)不安で韓国などと商取引などできないだろう」 「このような行き過ぎた民族主義は恥ずかしくて情けないです。子供たちの前で恥ずかしくないのですか。大人たちが率先して、このような振る舞いをすれば、それを見て育つはずです。このような条例案を発議する議員も議員ですが、賛成する人も人です。こんなくだらない条例案を作るよりも、国民に役立つことからやってください。(中略)『戦犯ステッカー』? 本当に幼稚で、恥ずかしさで顔が赤くなります。こんな発想は小学生でもやらないはずです。京畿道議員のレベルを表していると思います」 「過去は過去、歴史は流れて行くものだ。日本の植民地期にあったすべてのことを清算するというのはたやすいことではない。それならば、清平ダム(京畿道加坪郡所在、1944年完成※引用者注)も、京畿道にある数十カ所の貯水池も、京釜線の鉄道もすべて爆破しなればならないだろう。(中略)京畿道民の日本旅行も禁止すべきだ。まったく、道議員という方々の意識水準を疑うほかはない」 この他にも「教育を政治扇動に利用するな」とか、「(黄議員は)若いからちょっとましだと思っていたが失望した」とか「中国や北朝鮮には何も言えないくせに、国民の反日感情を煽りたてるのはやめろ」とか、条例案の内容を非難する内容がほとんどで、賛成する書き込みは皆無だ。「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品です」と書かれたステッカー(韓国・京畿道議会ホームページから・共同) 3月19日には「韓国大学生フォーラム」という保守系の学生団体が、この条例案を批判する論評を発表。論評では条例案の内容を「100年前と現在を区別できない安物民族主義」「グローバルな市民としての教育を受けて育った現代の世代に対するとんでもない民族主義注入」「こうした民族主義は、大和民族論、ナチの優生学、北朝鮮の太陽民族論などと同様のもので、その弊害は深刻」と激しく批判した上で、「教育委員会の場にふさわしくない非哲学的な思考しかできない黄大虎道議員は辞職せよ」とまで述べている。自爆した「反日扇動」 さらに、条例案の内容が日本でも報道され、国際問題にまで発展する様相を呈してくると、さすがに黄議員も危機感を覚えたらしい。自分のフェイスブックに弁明とも反論ともつかない長大な文章を掲載したのが、そこではまず、国内外の批判や反論を「愚かな反対」と一蹴。その上で条例案に対する自分の愛国的な心情を長々と吐露した。「学校現場で学生が直接戦犯業ステッカーの付着を行うのか、それとも他の方法で実現するのかを学生自治会で討論する最小限の制度を用意しようと思う」などと中途半端な妥協案を示した上で、「条例案に対する道民の皆さんのご意見を熟慮します」などと謙虚な姿勢を見せた。 ところが、条例案を報じる日本のマスコミ(「情報ライブ ミヤネ屋」)に触れると文体が一変。「だが、皆さん、これだけは必ず覚えていてください! あの日本の放送に出演している、歴史を否定する極右勢力と同じ認識を持っている勢力が、いまだ韓国の国会と社会指導層に存在するということです!!」と煽って文章を締めくくっている。 どう見ても、「ミヤネ屋」のレギュラー出演陣が「極右勢力」とは思えないのだが、韓国では自分が気に入らない意見を述べる日本人を「極右勢力」呼ばわりするのはよくあること。まさに「反日扇動」の典型である。これに感動して黄議員を熱烈に支持する書き込みを行っている韓国人(おそらく支持者)も多いのだが、ところどころに冷めた書き込みも散見されるのは前述の通りである。 さて、この条例案によって、地方議会の一年生議員にすぎなかった黄議員は一躍時の人になったのであるが、ちまたの耳目が集中したあまり、黄議員自身も「戦犯企業」の製品を使っているという非難を浴びることになった。 ことの発端は黄議員のフェイスブック。黄議員は昨年3月17日、フェイスブックに「地域商店街連合会の方々と対話の時間を持ちました」という書き込みとともに、ボールペンが差し込まれたシステム手帳の写真を公開した。このボールペンは三菱鉛筆の「ユニ・ジェットストリーム」。 黄議員はかねてから公の場で「新日鉄住金、三菱、ニコン、パナソニックなどは戦犯企業」などと発言しており、「自分も『戦犯企業』の製品を使っていながら、戦犯企業ステッカー条例案を推進している」という手厳しい非難を受けることになった。 黄議員もこれを明らかに意識したと見られ、問題となった書き込みと写真を削除している。ただし、問題となった「三菱鉛筆」はスリーダイヤのマークこそ同じであるが「戦犯企業」とされている「三菱」とはまったく関係がない企業である。黄議員が三菱鉛筆について正確な知識を持っていたならば、書き込みと写真を削除したりせずに、堂々と反論すれば済むだけのことだ。それをしなかったということは、おそらく黄議員自身も「戦犯企業」に対して明確な知識がないのだろう。「戦犯企業」に対する定義があやふやのまま、条例案を提出したのではないか、という疑いを持たせるのに十分である。2019年4月1日、本社受付に掲げた新社名の看板前で会見を行う日本製鉄の橋本英二社長 条例案の発議に加わった議員は「共に民主党」25人、自由韓国党1人、正義党1人。京畿道議会は142議席だから、発議に加わった議員は決して多い数ではない。ただし楽観は許されない。「共に民主党」は議会で135議席を占めており、圧倒的な勢力を保っている。さらに現京畿道知事の李在明氏は「共に民主党」所属で、「日本は仮想敵国」などという放言歴もある。条例案の行方は予断を許さない状況であった。 条例案の審議は3月29日に行われる予定だったが、なぜか審議が「留保」されてしまう。条例案を発議した黄議員自身が「検討過程が十分ではなかった」「公論化を通して社会的な合意を経た後で、条例の審議を準備する」と述べ、条例案の上程を取り下げたためである。予想外に韓国内で厳しい批判を浴びたのがこたえたと思われる。 今回の事例で見られたように、韓国では、日本をダシに使えば、手っ取り早く愛国者ぶることができ、巷間の注目を集め、手軽に名を売ることができる。こうした「愛国者コスプレ」に対しては表立った批判もしにくいため、その行為はどんどんエスカレートし、常軌を逸した奇行にまで行き着くことが多い。 今回は条例案の中身があまりに突拍子もなかったため、韓国国内からも批判の声が上がったが、今後も第二、第三の黄議員が現れることは容易に想像がつく。すでに「最悪の状態」にまで行き着いたとされる日韓関係であるが、こうした扇動者の軽挙妄動によって、さらなる関係悪化もありえるということは覚悟しておくべきだろう。■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 元徴用工裁判、日韓「解釈の違い」をどう埋めるべきか■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!

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    無意味な反日活動を蒸し返す韓国「共に民主党」の正体

    によるものだ。始まった文在寅批判 三つ目として指摘すべきことは、官主導の反日の闇だ。文政権誕生以来、日韓関係は最悪の状態に陥っている。日韓基本条約で解決したはずの「徴用工問題」、日韓両政府の間で決着をつけたはずの「慰安婦問題」を持ち出したのは韓国政府だ。 レーダー照射問題では、韓国政府が意図的に日韓関係を悪化させるつもりだったのではないか、との声すら聞こえる。その背景には文政権が進める北朝鮮との宥和政策、北朝鮮との連携を強めようとする国政運営の方針がある。 文政権が北朝鮮と共有できる価値観といえば「反日」だからだ。京畿道議会が政治主導で「日本の戦犯企業」ステッカー条例を作ろうとしたのは、このような文政権の「官主導反日」に倣(なら)ったものと言っていい。 このような反日活動で一部の政治家は得をするかもしれないが、一方でこのような時代錯誤的なことで国家のイメージは失墜し、経済に影響が出るのも必至だ。京畿道議会が戦犯企業に指名した日本企業にはパナソニックやニコンのような企業も含まれるが、韓国からこのような企業の製品をなくしたらどうなるだろうか。韓国のテレビ局、新聞社の人たちはこれから日本の放送機器やカメラを持って堂々と世界を歩くことができるだろうか。 文政権誕生以来、韓国では1894年までさかのぼり、日本の朝鮮進出のきっかけとなった東学党の乱の再調査が進められている。それだけでなく、1950年に勃発した朝鮮戦争をめぐって、金日成(キム・イルソン)国家主席の韓国占領を阻止すべく敢行された「仁川上陸作戦」によって被害を受けた民間人に賠償金を支払う条例案も話題になっている。 韓国では一連の反日活動に象徴されるように、こうした過去の無意味な蒸し返しが繰り返されており、このままでは韓国は国際社会から真に孤立しかねない。2019年4月3日夜、韓国の政権与党「共に民主党」と候補者を一本化し国会議員補欠選挙で辛勝した革新系野党「正義党」の候補者(中央左)ら(聯合=共同) ただ、ステッカーの条例案については、保守系学生団体の韓国大学生フォーラムは「過去と現在、感情と外交を区別できない共に民主党は扇動政治をやめるべきだ」との声明を発表している。 学生を中心とした若者は「反日活動」に扇動されやすいが、韓国メディアや学生の一部から非難の声が上がり始めており、これらは日韓関係の改善に向けた一縷(いちる)の望みかもしれない。■ 米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス■ 「何をしても許される」天皇謝罪発言、韓国政治の根底にあるもの■ 「日本を奴隷扱い」文在寅の外交ゲームを攻略するベスト戦術

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    韓国人の反日感情はこうして増幅されていく

    杉山崇(神奈川大人間科学部教授) 韓国における反日感情は長く日韓関係の懸念材料になっています。一般的に、心理学者は政治や外交の問題を語らないものです。ただ、時には反日姿勢の背景に心理学要因が垣間見えることもあります。 特に、韓国の地方議会で提出された、「日本の戦犯企業が生産した製品です」と明示したステッカーの添付を学校に義務付ける案には、心理学的な要因を強く感じてしまいます。本稿では、心理学者としてはちょっとした冒険をするつもりで、「戦犯企業ステッカー」問題を考えてみたいと思います。 最初に、何が起こったのか整理をしてみましょう。ことの舞台はソウル近郊の京畿道(キョンギド)議会で、道内の小中、高校に置かれている「メイド・イン・ジャパン」の備品に上記のステッカーを張り付けさせるという条例が議論されています。背景にある、いわゆる「徴用工問題」などについては今回割愛しますが、この条例案には韓国国内からも慎重論や批判の声が上がっています。 韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は慎重派です。韓国の主要紙の社説でも批判論調が目立っており、東亜日報は「時代錯誤的な発想と言わざるを得ない」との見解を発表しています。どうやら、韓国の識者も行き過ぎた姿勢だと感じたようです。 「思わぬ」反響のせいか、審議が保留となりましたが、同様の提案は他でもあり、ソウル市議会でも「日本製品不買条例」が発議されそうになりました。何が地方議会を行き過ぎた案に導いたのでしょうか。筆者には「コーシャスシフト」と「リスキーシフト」、そして人のある本能が影響しているように見えました。 まず、コーシャスシフトとリスキーシフトについてご紹介しましょう。どちらも会議で見られやすい現象で、両現象を合わせて「集団極性化」とも呼ばれています。 突然ですが、あなたは一人で考えるときとみんなで考えるときと、どちらがより良い案を見いだせると思いますか。ことわざでは「三人寄れば文殊の知恵」といわれています。 「みんなで考えると妙案が出てくる」と思う方も多いかもしれません。しかし、実際の会議では「どうしてこうなった?」と思ってしまうような奇想天外な案が出てきたこと、あなたの身の回りにもないでしょうか。2019年1月、河野外相(手前)と会談する韓国の康京和外相=スイス・ダボス(共同) 実は、会議とは集団の力学によって「行き過ぎた意見」に集約しやすい場なのです。会議には「社会的促進」と言われる効果があり、社会的刺激への感度がいい個人を高揚させて張り切らせることがあります。 政治家は公人であり、選挙という社会的競争で選ばれています。感度のベクトルや種類に個人差がありますが、社会に対する感度は相対的に高い方が多いことでしょう。議会は社会的促進が起こりやすい場であり、言い換えれば「インパクトのある意見を言わなければ」と個人を駆り立てやすい場だと言えるでしょう。通った意見に潜む人間の「本能」 しかし、斬新さでインパクトがある意見は周りのリアクションがわかりません。そこで、会議の冒頭ではもう一つのインパクトを狙った意見が出ることがあります。それは「みんなが共感する」というインパクトです。 「反日姿勢なら皆が共感する」と思っているかどうかわかりませんが、まずは徴用工問題を契機とした反日姿勢の意見から会議が始まったものと考えられます。誰かが多くのメンバーに共感される意見を出すと、それに被せた意見が多く続きます。 発言はしないまでも、うなずくなどで共感の意志を示すメンバーも多いことでしょう。他の意見が言えない雰囲気、つまり同調圧力が作られます。こうして、極端にこれまで通りの案に集約する現象がコーシャスシフト(用心深い体制変化)です。 ただ、コーシャスシフトで会議が終わるのも、物足りないことがあります。何も変わらないからです。 社会的促進で高揚しているメンバーが多いとなおさら物足りないことでしょう。こうなると大胆な案が提案されることになります。コーシャスな結論に沿っていれば共感される可能性が高いので、発想は次々と冒険的になります。 その中で「誰も考えたことがない案」が光り輝いて見えることがあります。高揚した雰囲気だと人は大胆になるので、物珍しいものに惹かれやすいのです。 こうして慎重さに欠ける案が採用されてしまうことがあります。これがリスキーシフト(冒険的な体制変化)です。この会議でも「反日姿勢の斬新なアクションを!」と展開したのかもしれません。 今回は韓国国内で徴用工問題による反日姿勢が強まっている中だったので、工業製品と絡ませれば広く共感されると考えたのでしょう。法案の発議を主導した京畿道議会の黄大虎(ファン・デホ)議員は「私は全国的に国民が共感する事案だと考える」とコメントしています。このコメントから察するに、議会は反日姿勢に共感する雰囲気の中で展開し、反日姿勢を象徴するステッカーの添付を義務付ける形になったものと思われます。 このように会議とは極端に中庸か、極端に大胆な案が出やすいものですが、最後に人が持つある一つの本能が関わっていた可能性を考えてみたいと思います。それは「仲良くしたい、でも優位に立ちたい」という本能です。ソウル市内に掲げられた独立運動家の安重根を題材としたミュージカルのポスター=2019年1月(共同) 本当に嫌いなら、その相手を徹底的に無視すればいいわけです。無視できずに「優位に立とう、優位に立とう」とあの手この手になるときは、気になって仕方がないから…ということが多いようです。無視できないのであれば仲良く協力し合えないものか…と思ってしまいます。 おっと、心理学者としてはちょっと踏み込んだことを書いてしまったかもしれません。私にも何らかのリスキーシフトが発生しているようですので、今回の論考はここまでにさせてもらいます。■ 米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ BTS「原爆Tシャツ」に通底する韓国社会のホンネ

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    日本は韓国より立場が弱くなったのか

    澤田克己 (毎日新聞記者、元ソウル支局長) 日韓関係がここまで悪化している背景には、冷戦終結の時期を前後して起きた両国関係の構造的変化がある。そうした認識からこれまで、主として韓国側の事情に焦点を当てたコラムを3本書いてきた。簡単に振り返ってみると、▽現在の韓国では「反日」は重要なイシューとなっていない(第1回 韓国国会議長による「天皇謝罪」発言の裏側)▽冷戦終結によって韓国は自由に行動できるようになったし、経済成長にも成功したので日本への依存度が低くなった(第2回 「日本は韓国にとって”特別な国“」は冷戦終結で終わった)▽1987年の民主化によって歴史上の不正義を正そうとする「過去の清算」という動きが表面化するようになった(第3回 韓国の民主化の「副作用」、日本への配慮を忘れていった社会)——ということである。「日韓関係の構造的変化を考える」と題したシリーズの最後となる今回は、日本側の事情について考えてみたい。 まずは政治について考えてみよう。日本は冷戦時代、共産主義勢力に対する盾として韓国を見ていた。韓国では1960年に李承晩が退陣に追い込まれた内政混乱の後、朴正煕がクーデターを起こした。この時に首相を退いて間もない岸信介は「釜山まで共産主義が浸透してきたときの日本の地位を考えるとき、ことに近接した中国地方の山口県などからみると、非常に治安上、重大な問題だと思う」と語った。そして、「革命を起こした朴正煕その他の連中がやっていることは、ある意味からいって《自由韓国》を守る“最後の切り札だ”」と、朴正煕政権を支える必要を力説して回った。(大岡越平「『自由韓国』を守る」、中央公論1962年1月号) 韓国が北朝鮮とにらみ合ってくれているおかげで、日本は軽武装の経済重視路線を突き進むことができた。クーデターの大義名分を経済再建に求めた朴正煕は日本の資金と技術を必要としたが、安定した韓国の政権を作ることは日本の国益にもかなっていたのだ。そして日韓を協力させることは、互いの同盟国である米国からの強い要求でもあった。 こうした考え方は、1969年の日米首脳会談での共同声明に「朝鮮半島に依然として緊張状態が存在することに注目。韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要」と盛り込まれた。これは「韓国条項」といわれ、その後の日米首脳会談や日韓首脳会談で踏襲された。 そして全斗煥政権は1981年、安全保障と経済協力を直接関連させて60億ドルの借款を日本に求めた。「韓国の立場から見て、冷戦の前哨で戦っている韓国に自らの安全保障の多くを依存している日本は、韓国が果たしている戦争抑止の努力に対して応分の支払いをしなければならないと考えられた」(南基正「戦後日韓関係の展開 —冷戦、ナショナリズム、リーダーシップの相互作用—」『GEMC Journal』No.7、2012年3月、69ページ)ということだ。日韓両国は1983年、40億ドルの借款を日本が韓国に提供することで合意した。 冷戦終結によって、この構図は激変した。韓国にとっては総じて前向きな変化だったと言えるだろうが、日本には違う光景が見える。北朝鮮が核・ミサイル開発を進めて日本にとって直接の脅威となったのは冷戦終結を受けてのことだし、中国も冷戦後のグローバリゼーションの中で急速に台頭して覇権主義的な行動を取るようになってきた。どちらも日本の安全保障にとってマイナスの動きである。 朝鮮半島情勢に詳しい日本の外交官は「冷戦時代の韓国にとって、日本は(1)経済協力の提供者(2)軍事政権にとっての米国への影響の経路(3)未だ国交を有していない中国への経路といった戦略的な位置付けを持っていた。一方で日本にとっての韓国は、北朝鮮及び北朝鮮を通じてのソ連の脅威への防波堤だった。ところが、冷戦構造の崩壊と韓国の民主化、日本のバブル崩壊などがあって、韓国にとっての日本の戦略的な位置付けは3つとも失われた。ところが、日本にとっての韓国の位置付けは『ソ連』を『中国』に置き換えれば、現在もそのまま変わらない」と話す。※画像はイメージです(ゲッティイメージズ) 問題はそれだけではない。日本にとっての直接的な脅威となった北朝鮮の問題に対処するためにも、韓国の協力を取り付けるかどうかは大きい。韓国の協力など不要だと切り捨てるなら、日本の負う政治・経済的コストは増大する。米中の対立激化という状況についても、韓国がどのような態度を取るかは日本に大きな影響を与える要素となった。在韓米軍の撤退などという事態になれば、日本の安保政策は根本的な見直しを迫られる。日本の財政がその負担に耐えられるかは疑問である。 基本的な要素として韓国の国力伸長も見逃せない。冷戦時代の韓国は弱小国だったから国際社会での影響力は極めて小さかった。ところが現在はG20(主要20カ国・地域)のメンバーであり、世界10位前後の経済力を持つ。国際政治というゲームの中で簡単に無視できる相手ではない。経済でも大きな変化 経済面でも大きな変化が起きた。財務省が公開している「貿易相手国上位10カ国の推移(輸出入総額、1995〜2017年)」を見ると、韓国の定位置は米中に次ぐ3位、シェアは6%前後で安定している。冷戦終結を前後して貿易相手国の多角化が一気に進み、日米のシェアが急落していった韓国とは様相が異なる。日本はそれ以前から経済大国として世界中の国々と貿易をしていたから、韓国ほど急激な変化がないのは当然だろう。 サムスン電子やLG、現代自動車といった韓国企業が世界市場で広く認知されるようになったのも冷戦終結後のことだ。米インターブランド社が2000年から算出している世界ブランド価値ランキングでは、2000年に上位75社に入ったのは43位のサムスンだけ。2005年に現代が84位、LGが97位と初めて上位100社の仲間入りをした。2018年のランキングで上位100社に入ったのはサムスン6位、現代36位、起亜71位だ。ちなみに同年の上位3社は、アップル、グーグル、アマゾンの順で、日本企業トップはトヨタの7位だった。 日経新聞は3月14日付朝刊で「韓国、日本の経済制裁警戒」という記事を国際面トップに載せたが、これは「韓国側が身構えている」というだけの内容ではない。サブ見出しにある「水平分業 双方に打撃」という点を無視しては語れないのが現在の状況だ。サムスン電子など韓国を代表する企業が日本の部品・素材に依存しているのは事実だが、逆もまた真なりであって、日本の部品・素材メーカーにとって韓国企業は大切な大口顧客になっている。近年は東レなどが先端工場を韓国に建設しているが、大きな理由のひとつは納入先企業との協業体制を築くことだ。 韓国の部品メーカーが力を付けてきている点も無視はできない。統計分類コードの種類によって若干のずれはあるが、日韓間の自動車部品貿易に関しては2014年ごろに収支が逆転した。ずっと日本の黒字だったのが、韓国の黒字に変わったのだ。東日本大震災の際に日本製部品の供給中断に見舞われた韓国の完成車メーカーが日本製部品への依存度を下げたことや、韓国製部品の性能向上を受けて日本の完成車メーカーが韓国からの部品輸入を増やしたことが背景にあるという(韓成一「日本の対韓国自動車部品貿易の赤字転換と九州自動車産業への影響」『東アジアへの視点』2015年12月号)。 韓国における日本の存在感は、政治(安全保障)と経済の両面で1980年代後半から一本調子で低くなってきた。これに対して日本にとっての韓国の存在感というのは、それほど単純ではない。冷戦時代に弱小国だった韓国が国力を付けたことによって、むしろ存在感は高まったといえる。中国の台頭という冷戦後の地域情勢は、韓国においては単純に日本の存在感低下を招いたが、日本の受け止め方は全く違う。そういった違いがあまりにも軽い韓国の対日外交を生むと同時に、日本側の対応を極めて難しいものにしている。そう考えると、日本の方がある意味で弱い立場に立たされていると言えそうだ。 最近の日韓関係に憤り、1993年に韓国でベストセラーになった本『日本はない』(田麗玉著)を引き合いに出して、「小欄も『韓国はない』と思うことにしようか。」と結ぶ新聞コラムがあった(「産経抄」『産経新聞』2019年3月2日)。 そう言いたくなる気分がわからないでもないが、この本を引き合いに出すのは注意すべきだ。この本は、さまざまな事例を挙げながら「日本なんてたいしたことない」「日本はひどい国で、手本にするようなことは何もない」と声高に主張するのだが、それは実は「そう思いたい」という韓国人の願望を代弁するものだったからだ。著者はこの本のあとがきで、日本式経営や社員教育などを追い求める当時の韓国の風潮を「しかたのない面もありますが、これはむりやり我々に日本式の方法を強要しているにすぎません」と強く主張した。この訴えは、バブル経済に浮かれて絶好調だった日本に押しつぶされるのではないかと恐れる韓国人の悲鳴のようだった。ソウル中心部にあるサムスンのオフィス(ゲッティイメージズ) 興味深いのは、この著者が10年後の2003年に再び日本をテーマに書いた本だ。著者はこの本の前書きで、日本での楽しい思い出がたくさんあるけれど、今まで書いたことはないと告白する。そして、こう続けたのだ。 私が暮らした1990年代初め——スーパーパワーになろうという野望を持ち、貪欲でギラギラすることをやめようとしなかった(あの時の)「日本はない」。今の日本は「かつての日本」ではない。だから、穏やかな気持ちで、日本について軽く書くことができた。(田麗玉『札幌でビールを飲む』、カッコ内は筆者注) 日本と韓国が互いを見つめる視線の変化は、こうした言葉によく表れているのだろう。さわだ・かつみ 毎日新聞記者、元ソウル支局長。1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

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    朝鮮半島における「礼儀・礼節」 日本とは意味が違う

     正しいこと、称賛されることはその時代や社会、国や地方によって少しずつ異なるものだ。似たような言葉で指している内容が、根本的に意味が異なることもある。評論家の呉智英氏が、隣国・韓国における「礼節・礼儀」の意味は、どのように日本と異なるのかについて、解説する。* * * 保守系の月刊オピニオン誌「WiLL」四月号の特集は「さすが『礼節』の国 韓国!!」。一読してみたが、どうも予想とちがう。朝鮮(南も北も)は昔から礼節・礼儀の国と呼ばれる。昨今の韓国の暴走ぶりを皮肉って逆説的に「さすが」としたらしい。 こういう皮肉表現はよくある。性犯罪で逮捕された宗教家を「さすが聖職者」とするように。しかし、この特集名は少し変なのだ。九人の執筆者の主張自体は特にまちがってはいない。とすると、この特集名は編集部がつけたものか。 そこで思い出したのが、二〇〇〇年五月三十日付朝日新聞の論説委員コラム「窓」欄である。少し古い記事だが、私は某大学の比較文化論の講義資料として十年以上使っていた。この日のタイトルは「礼節の国」、筆者は一字署名で〈黄〉となっている。 当時、森喜朗首相は「日本は天皇を中心とする神の国」と発言し、国内からも韓国からも批判を浴びた。しかし、五月二十九日に森首相と会談した金大中大統領はこれに触れなかった。それは「言いたい気持ちをじっと抑えて、静かに笑って」いる「『礼節の国』と言われる韓国の本来の姿」であり「そうした隣人の気持ちに思いを致」す配慮が森首相に欲しい、というのだ。 私は講義でこの「窓」欄のプリントを配り、学生に聞く。韓国に行ったことがある人はいるか。五、六人の手が挙がる。韓国の人たちって、言いたい気持ちを抑えて静かに笑っている「礼節」ある人たちだったか。学生たちはちょっと困ったように首を横に振る。 じゃあ、朝日の記事にこんなことが書いてあるのは何故だ。朝日は革新系だから韓国をほめるなんていう答えは駄目だぞ。 学生たちは考え込む。やがて、ピンと来た一人が答える。文化のちがいですか。礼節の意味がちがっているとか。 正解である。 我々が今「礼儀」という時、それは基本的に西洋由来のもので、交際術のことだ。その要点は、お互いに害意を持っていないことの確認である。礼儀を英語でマナーというのはマニュアル(手引き書)と同原である。交通ルールを交通マナーというのも同じで、車が相互に左側通行するのは、お互いに「被害」に遇わないためだ。 一方、朝鮮における「礼儀」は世界観の象徴化である。宗教儀礼に近い。礼を「のり(規範)」「あや(文化)」と読むのはそのためだ。お辞儀にも細かな意味づけがある。単なる交際術ではない。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 朝日新聞の論説委員も「WiLL」の編集者も、保革逆だが、ともに文化のちがいが分かっていない。「WiLL」特集で執筆者の一人大野敏明は、韓国滞在中、返事をしなかった警官を怒鳴った話を書いている。「韓国は儒教の国」なので「高齢者である私」に返事をしないのは失礼になる。怒鳴ったら「直立不動」で返事をしたという。これが朝鮮の礼節である。大野は産経新聞元記者で韓国文化に詳しい。この一節だけが特集名にふさわしい。●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。関連記事■もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった■韓国人はなぜ今「日本叩き」に躍起になっているのか■ソウル 日本製品不買条例案に日本好き韓国人「恥ずかしい」■100年前のロシヤ革命、革命と反革命どちらなのか論じるべき■福澤諭吉「天は人の上に…」と聖徳太子「和を以て…」への誤解

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    韓国人はなぜ今「日本叩き」に躍起になっているのか

     北朝鮮との融和ムードが高まる韓国だが、日本との関係は最悪だ。ほとんど言いがかりのような内容も含み、日韓関係を壊しかねない勢いで反日が盛り上がっている。これまでに200回以上韓国を訪れている経営コンサルタントの大前研一氏が、なぜ今、「日本叩き」がいつになく盛り上がっているのか、その背景を分析する。* * * 日韓関係は日増しに冷え込み、改善の兆しが全く見えない。韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた「元徴用工」訴訟問題や日韓合意に基づく元慰安婦のための財団の解散、海上自衛隊P-1哨戒機に対する韓国海軍駆逐艦の火器管制レーダー照射問題に加え、文喜相国会議長が元慰安婦への謝罪は「天皇が望ましい」「その方は戦争犯罪の主犯の息子」などと発言したことで、日本の対韓世論は悪化の一途をたどっている。 韓国の反日運動は今に始まったわけではないが、このところ立て続けに日本に難癖や言いがかりをつけているのは、歴史教科書問題や竹島問題のような日本側の動きに対する反発というよりも、「韓国発」の盛り上がりである。 たとえば、慶尚南道教育庁は庁舎前にあった日本の学名がついたヒノキ科の常緑針葉樹「カイヅカイブキ」を別の場所に移し、その跡地に韓国固有の松を植えた。「カイヅカイブキは日帝時代の残滓」と指摘する韓国メディアの報道が続いたからだという。 また、忠清南道教育庁は道内の小中学校・高校29校に掲示されていた日本人校長の写真や日章旗、刀を差した日本人教師の写真を撤去する、と報じられた。こちらも理由は「日帝残滓の清算」である。2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に出席した文在寅大統領夫妻(共同) なぜ、いま韓国でこれほど反日運動が激しくなっているのか? その背景には、北朝鮮との南北統一に向けた文大統領をはじめとする韓国人の高揚感がある。戦後一番の高揚感戦後一番の高揚感 文大統領は今回の米朝首脳会談を前にしたトランプ大統領との電話会談で、南北の鉄道・道路連結や経済協力事業の活用を申し出た、と報じられている。事実上の制裁緩和につながることを米朝首脳会談の議題にするよう提案したのである。 もし、文大統領の思惑通りに南北統一へと進んだら「ユナイテッド・コリア」として南北連合政府を作ることになるだろう。だが、今のところ、その統治機構がどのような形になるのか、という絵は全く描けない。北朝鮮でも民主的な選挙でユナイテッド・コリアのトップを選ぶことになり、南北の鉄道・道路が連結されて人や情報の交流が進めば、いずれ国民の本音が出てくるはずだ。となると“暴君”の金委員長が北の代表に選ばれることはないだろう。 金委員長もそれが分かっているから、アメリカに対して「体制の保障」を要求し、かつてのカンボジアのシアヌーク国王のような中国亡命の道を模索しているのではないかと思う。 そして、そうなれば、韓国に“核付き・金正恩抜きの労働植民地”が転がり込むことになる。言い換えれば、核武装した人口7700万人の南北統一国家が誕生するわけで、その高揚感が現在の「日本恐るるに足らず」という気運の高まりにつながっているのだ。 私はこれまで仕事や講演などで韓国を200回以上訪れているが、韓国の友人たちと酒を飲むと、酔っ払った彼らは必ず「南北統一が実現すれば、核戦力と安い労働力が自分たちのものになる」というシナリオを口にしていた。それが目の前に見えてきたから、いま韓国で急に反日運動が盛り上がっているのである。 私は以前、韓国で起きている問題については「放っておいても日本にとって実害はほとんどないし、日本に年間754万人も来てくれるありがたいお客さんなのだから、静観するのが最も賢明な選択だ」と述べた。この主張は、韓国の『中央日報』日本語版(2月11日配信)でも紹介された。 だが、それは現実を無視すればよいということではない。日本が過剰に反応して非難の応酬を繰り返したり、ビザなし渡航の制限や国交断絶などを叫んだりして火に油を注ぐべきではない、という意味だ。やはりこれも以前、指摘したように、韓国人は自分の国が大嫌いだ。そういう歪んだ劣等感を持つ彼らがこれからどう動くか、冷静に注視すべきなのである。 なぜなら、統一コリアにとっての“仮想敵”は日本だからだ。核保有国の中国やロシアと喧嘩するはずがないし、統一後に在韓米軍が撤退したら、反米感情も下火になるだろう。となれば、核ミサイルのターゲットは日本しかない。核保有国になることで日本の優位に立ち、いつでも寝首をかくことができるわけだ。その“妄想”があるから、韓国人は戦後70年で最も気分よく高揚しているのだ。 この現実に日本は危機感を持ち、アメリカはもとより台湾や東南アジア、オーストラリアなどと連携・結束して統一コリアの誕生に備えるべきである。関連記事■もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった■ソウル 日本製品不買条例案に日本好き韓国人「恥ずかしい」■「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人■ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■文在寅氏に大ブーメラン 徴用工被害者1386人が韓国政府訴えた

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    米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス

    め、文大統領が狙ったのが「安倍より先の訪米」だった。 背景には「米韓関係の悪化」「南北関係の悪化」「日韓関係の悪化」「中韓関係の悪化」「第3回米朝首脳会談への対応」「日朝首脳会談の動き」「良好な日米関係に対する牽制(けんせい)」「欧州と東南アジア外交の失敗」と数え上げればきりがない。日米中朝だけでなく、欧州や東南アジア諸国にも自らの失態で見放され、文大統領はまさに「六面楚歌」である。 米韓関係は、懸案だった在韓米軍の駐留経費増額問題で一応は合意したが、トランプ大統領はなお不満を募らせている。米国は、物別れに終わった第2回米朝首脳会談における文大統領の動きに不信感を強めている。首脳会談直前に、ハノイでの南北首脳会談を画策したが拒否され、米韓朝の3国首脳会談も打診したが、全く相手にされなかった。 さらに韓国は、洋上で積み荷を移し替え、石油精製品などを密輸入する北朝鮮の「瀬取り」を黙認した「証拠」を米国から突きつけられ、厳しい取り締まりを求められた。こうした問題に対する弁明の機会をつくることが、米韓首脳会談の理由だ。2018年5月、ホワイトハウスでトランプ米大統領(右)と話す韓国の文在寅大統領(ゲッティ=共同) 米国は、北朝鮮融和策を進める文大統領を「邪魔者」と考えている。それでも、同盟国として北朝鮮への圧力強化に必要なので我慢しているだけだ。米国のマスコミが文大統領を「北朝鮮の手先」と酷評した背景には、ホワイトハウスの意向がある。失敗続きの韓国外交 一方、北朝鮮も第2回米朝会談の決裂後に、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が文大統領を「米朝の仲介者ではない」と批判し、韓国に裏切られたとの感情を示した。文大統領は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に「開城(ケソン)工業団地が再開できる」「朝鮮戦争終戦宣言が出せる」「韓国の支援も可能になる」「資金も送る」「在韓米軍が撤退する」「瀬取りの密輸は黙認する」と、甘い見通しを並べ立てていたから、怒り心頭になるのも無理はない。 韓国の外交は失敗続きだ。日米中朝という北東アジアの関係4カ国に加え、昨秋のアジア欧州会議(ASEM)に伴う欧州訪問や3月の東南アジア歴訪も、文大統領自らの「外交的欠礼」で批判された。もはや各国の信頼を失っている。それでいて、安倍晋三首相が6月までトランプ大統領と3回も首脳会談を行うのは耐えられない。 安倍首相の動きに、文大統領は韓国民から「日本に後れを取った」と批判され、さらに支持率も下がることは確実だ。それを阻止するために考えたのが、安倍首相より先にトランプ大統領に会う「田舎芝居」だ。 これまで、文大統領は「米朝の仲介役」を公言してきた。それが第2回米朝会談の決裂により完全に崩壊した。米朝両国からも信頼されていない事実が明らかにされたのである。 面目を失った文大統領は米国の意向を探り、北朝鮮に伝えようとしている。探りたい問題は「スペインの北朝鮮大使館襲撃は『トランプの意図』なのか」「第3回米朝首脳会談はいつやるのか」だ。この二つの問題をトランプ大統領から聞き出し、金委員長に伝えることで失地を回復しようとしている。 北朝鮮の首都、平壌(ピョンヤン)は今、在スペイン大使館襲撃事件の衝撃に揺れている。盗まれたコンピューターには暗号解読の文書が入っていた。このため、海外公館や工作員に暗号文書を送れない状態にある。さらに、これまでの文書や指示が全て米国に解読されたと考えている。2018年4月、板門店宣言に署名後、共同発表に臨む韓国の文在寅大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(韓国共同写真記者団・共同) この襲撃事件は、単に反北朝鮮団体のハプニングか、米中央情報局(CIA)の仕業か、それともトランプ政権が北朝鮮崩壊を狙ったいわゆる「金正恩斬首作戦」の一環なのか。北朝鮮首脳部は判断に苦しんでいる。 もしトランプ政権による意図的な「作戦」なら、米朝首脳会談を中止して、核とミサイル実験を再開するしかない。だが、実験再開はより強硬な対北朝鮮制裁を招くと苦悩を深めている。文在寅、最大の「心配の種」 平壌の混乱を知らされた文大統領は、「米朝仲介役」である自分の出番と誤解し、トランプ大統領に「スペイン大使館襲撃」の真実を聞き出し、金委員長にその回答を伝えることで、恩義を売ろうとしているわけだ。でも、トランプ大統領は「知らない」と答えるだろう。 また、文大統領は、米朝両国がひそかに第3回の首脳会談の準備や接触をして、「韓国外し」を行っているのではないかと憂慮している。そのために米朝の動きを聞き出そうとしている。 文大統領がもう一つ心配しているのは、日朝首脳会談の動きだ。拉致問題を担当する菅義偉(よしひで)官房長官の5月訪米に、韓国が強い関心を寄せている。 韓国に、日本の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者から「自分たちが日朝首脳会談の準備をしている。菅と接触している」との連絡も来たが、たぶん偽情報だと思われる。平壌からは、高官の間で「米朝がダメなら、日朝首脳会談がある」との意見もある、との動きも入った。「内閣官房参与が近く訪朝する」との情報も東京の韓国大使館から届いた。 韓国は、南北関係より先に日朝関係が前進するのを常に妨害してきた。韓国の大統領が訪朝できないのに、日本の首相に訪朝されてはメンツを失う。このように、「文在寅訪米」の背後では多くの情報工作が展開されているのである。 公安関係者によると、北朝鮮の工作機関につながる組織が平壌に「安倍はいつでも動かせる。われわれの思うままだ。安倍が膝をかがめ、日朝首脳会談をわれわれにお願いしてきた」と連絡している、という。2018年5月、日中韓サミットを前に記念撮影に臨む安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領(代表撮影) 平壌では、金委員長が朝鮮総連の情報を信用せず、「総連幹部は、金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記にウソの報告ばかりしてきた」と述べている事実が知られている。北朝鮮問題では「百鬼夜行」の工作が展開される。官邸の内外に、北朝鮮工作機関の手先がいるのではないかと、危惧する声も出ている。■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「日本を奴隷扱い」文在寅の外交ゲームを攻略するベスト戦術

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    日韓関係は最悪、北朝鮮問題で出番なくとも安倍外交は「78点」

    に対峙した。 これより前の同年8月には、李明博(イ・ミョンバク)による竹島上陸と天皇謝罪発言があり、日韓関係は悪化を見せていた。さらに、12月には北朝鮮が初の「人工衛星」の軌道投入に成功しており、13年3月に3回目の核実験も実施されている。 これらを踏まえれば、発足直後の第2次安倍政権を迎えた朝鮮半島を巡る情勢は、お世辞にも良好とは言い難いものだった。不安要因は他にもあった。日本国内外では、政権に復帰した安倍が歴史認識問題などで修正主義的な施策を展開するのではないか、という観測があり、その言動が日本の朝鮮半島政策を支える大きな柱になる日米関係を傷つけるのではないか、という憂慮が広がっていた。 一方、当時のアメリカはオバマ政権下にあり、人権問題に強い関心を持つリベラルな大統領との関係にも疑問が投げかけられた。そして当初は、その危惧は現実のものとなるかに見えた。 ピークはおそらく13年12月の靖国神社参拝だった。事実、第2次世界大戦の戦勝国であるアメリカはこの動きに「失望」を表明している。同盟関係にある日米関係としては異例の事態であったということができる。 このような状況の中、朴槿恵政権は慰安婦問題で攻勢を強め、アメリカをはじめとする各国に対する宣伝攻勢を展開した。日本国内で「告げ口外交」と揶揄(やゆ)された動きである。当時の韓国では「道徳的優位」という言葉が用いられ、韓国政府は国際社会における自らの優位に自信を有しているように見えた。 しかしながら、このような動きは、14年に入ると変わってくる。転換をもたらしたのは二つの要素であった。一つは南シナ海問題を巡る米中関係の悪化であり、このような中、中国への接近を強める朴槿恵政権の動きにアメリカは警戒を強めることとなった。「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念行事で演説する習近平国家主席(中央後方)。手前は(左から)カザフスタンのナザルバエフ大統領、韓国の朴槿恵大統領、ロシアのプーチン大統領=2015年9月、中国・北京(共同) だが、それと同じほど重要だったのは、二つ目のポイント、すなわち、この時期、第2次安倍政権が歴史修正主義的な言辞を封印していったことである。ピークは15年8月のいわゆる「安倍談話」だろう。第1ラウンドは日本優位 同年3月に河野談話の見直しを断念していた第2次安倍政権は、この「談話」にて第2次世界大戦における日本の行為に対して「深い悔悟」の念の表明のみならず、「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たち」がいたことについてもあえて触れ、慰安婦問題に対しても間接的な言及を行った。 このような第2次安倍政権による歴史修正主義的な言辞の封印は、結果として、朴槿恵による慰安婦問題に関わる宣伝攻勢を大きく無力化し、同年12月、アメリカの強い圧力下での慰安婦合意へと結実する。 自らが主張してきた慰安婦問題での法的賠償請求権を放棄させられた韓国では強い敗北感が広まった。第2次安倍政権下のワシントンを舞台とした日韓両国の競争は、この第1ラウンドでは日本優位の下、終わりを告げた。 しかしながら、こと朝鮮半島にかかわる状況は、17年に入ると変わってくる。転換点は韓国とアメリカの新政権の成立であった。 弾劾された朴槿恵の後を受けて政権についた文在寅(ムン・ジェイン)の最大の外交的目標は、北朝鮮との対話再開である。文在寅はここで、先立つ朴槿恵政権と自らが大統領秘書室長として直接携わった盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の二つの失敗を参考に、この目標の実現のためにはまずはアメリカの事前の了承を取り付けることが必要だとして、ワシントンへの積極的な外交攻勢を行った。 すなわち、政権成立当初から文在寅政権は2週間に1度を超える頻度でワシントンに使節を飛ばし、アメリカに対して北朝鮮との対話の重要性を説く外交攻勢に出たのである。 このような戦略を文在寅政権が取った理由は、同じ年に成立したアメリカのトランプ政権の性格にもあった。古いリベラルなエリートに支えられたオバマ政権とは異なり、ポピュリスティックなトランプ政権は気まぐれな大統領のリーダーシップに支えられている。 だからこそ、ワシントンに巣食う安全保障エリートたちを通じて間接的に訴えるのではなく、ホワイトハウスに近い人々に直接自らに有利な観測を積極的に伝えていけば、気まぐれな大統領に率いられたアメリカの政策を自らの望む方向に誘導できる、と考えたわけである。会談で握手するトランプ大統領(右)と安倍晋三首相=2018年9月、米ニューヨーク(共同) そして、少なくとも昨年実施された初めての米朝首脳会談実現までは、この韓国の戦略は上手く機能した。18年1月の北朝鮮「新年の辞」に始まる極めて早い事態の展開の中、韓国はアメリカを交渉に引き出すことに成功し、自らも宿願であった北朝鮮との対話再開を実現することができたからである。北朝鮮問題で失点した日本 他方、進展する北朝鮮を巡る状況の中、ワシントンの古い安全保障エリートたちと、数少ない安倍・トランプ間の首脳会談に多くを依存した日本の外交戦略はスピード感を欠き、日本は北朝鮮問題にかかわる足場を喪失することとなった。その意味でワシントンにおける日韓両国の競争の第2ラウンドは、韓国の優位に進んだように見える。 しかしながら、事態は再び変化を見せている。ここでも転換点を二つ挙げるなら、一つはあまりに事態が早く展開した結果、韓国が次の戦略目標を見失ったことである。 17年に成立した文在寅政権は、北朝鮮によって繰り返される核とミサイル実験の中、北朝鮮との対話の実現は容易ではないと考え、ゆえにまずその実現を目指していた。 だからこそ、その対話が早々に実現された今、彼らは「ここから何をすべきか」について明確な展望を有していない。北朝鮮の核廃棄を早々に実現することが困難なのは明らかであり、これを巡る米朝協議の停滞は、当然ながらアメリカを大きくいら立たせることになる。そして、これを解決する方法を韓国政府は有していない。 もう一つは、やはり事態のあまりに早い展開の結果、韓国が日本の影響力を過小評価するようになったことである。18年後半に入り、旭日旗問題や徴用工判決、さらにはレーダー照射問題や国会議長による天皇謝罪発言にみられる、いたずらに日本を刺激する発言が目立った。 この背景には、日本政府の反対にもかかわらず、北朝鮮を巡る対話が急速に進んだことで、ワシントンにおける日本の影響力を小さく見るようになったことがある、と言われている。文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐官が2月の東京における講演で述べたように「北朝鮮問題で日本の役割はない」という認識が広がっている。 だとすると、安倍政権の朝鮮半島外交における手腕は、この日韓両国の競争の第3ラウンドでこそ問われることになる。重要なのは、この朝鮮半島を巡る日韓両国の競争が、単に東京とソウルの間でのみ行われているのではなく、主としてワシントン、さらには国際社会における影響力競争として行われていることである。中韓ビジネス・サミットに臨む(左から)文在寅大統領と安倍晋三首相=2018年5月、東京・大手町の経団連会館(斎藤良雄撮影) 日本外交の最大の武器は、自らの経済力でも軍事力でもなく、同盟国アメリカをはじめとする各国との協力関係だ。そのことを確認して、この小稿を終えることとしたい。(文中一部敬称略)■「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■天皇陛下を「おじさん」 韓国議長、もう一つの侮辱発言■安倍総理の「やってる感」に愛想を尽かした拉致家族のホンネ

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    韓国の裏切りには最強の「しっぺ返し戦略」で応じるほかない

    するならば最適な戦略となるのである。 政治的にはかなり「タカ派」のように思えるかもしれないが、現実の日韓関係を考察すると、この「しっぺ返し戦略」はかなり有効に機能するのではないだろうか。慰安婦問題で合意を見たはずの「最終的かつ不可逆的な解決」も、韓国側が完全に「裏切り」行為をしたことは言を俟たない。2019年2月、三菱重工本社を訪問した元徴用工訴訟の原告側代理人弁護士(右)ら(宮崎瑞穂撮影) おそらく、韓国政府は「歴史問題」を、国内政治の人気取りや、北朝鮮や中国との関係構築のカードとして、今後も使い続ける可能性が大きい。ならば、そのような「裏切り者」に対して、この「しっぺ返し戦略」を日本が採用する価値は一層高くなったはずだ。 実際、日本国内でも「しっぺ返し戦略」採用に向けての動きが出始めている。まだ、報道レベルだが、上記の差し押さえ請求を契機にして、韓国の多数の輸入品に対する関税引き上げを実施する対抗措置を、日本政府が検討しているという。裏切りへの「協調」こそ愚か さらに、一部の政治家や識者からは、韓国国民のビザ(査証)発給制限や韓国内における日本資産の引き上げなども指摘されている。いずれも日本側に経済的損失が出る可能性があるが、それでも長期的に日韓関係が安定化するなら帳尻は十分に合う。短期的にはタカ派の行動に見えても、長期の平和を望むための有効な方法なのである。 今こそ「しっぺ返し戦略」を採用する好機だと、筆者は思っている。国際的にも韓国政府の不公平な対日姿勢を積極的にアピールする必要がある。 日本を「歴史」の奴隷のように処する姿勢と、北朝鮮という独裁国家の「エージェント」と化した文政権のやり方を、併せて世界に告知する必要があるだろう。そのためには一定の予算化が必要だ。 もちろん、これは政治や経済的関係だけではない。安全保障面でも採用できる方法だ。 レーダー照射問題以降、防衛を巡る日韓関係も「しっぺ返し戦略」の観点から再考すべきである。今の岩屋毅防衛相や自衛隊の幹部には、なぜか韓国との防衛交流を急ぐ姿勢が強い。 だが、そのような韓国の「裏切り」に対する「協調」は、最も愚かしい戦略と言わざるを得ない。過去の韓国政府の出方を分析する限り、この戦略の甘さが、韓国軍も同様に「裏切り」を続ける土壌を生み出す背景にあるのではないか、と不安である。 「裏切り」の兆候は既に明らかであろう。7閣僚が交代した3月8日の文政権の内閣改造でよく分かる。 この改造では、対北朝鮮政策で慎重な姿勢をみせていたと評価される趙明均(チョ・ミョンギュン)統一相を事実上更迭し、代わりに北朝鮮への制裁解除を強く志向する金錬鉄(キム・ヨンチョル)氏を登用した。他の閣僚は、外交関係も安保関係も留任であり、いわば「北朝鮮傾斜」「日本軽視」の方針を引き続き採ることを内外に示したといえる。2018年5月、第6回日中韓ビジネス・サミットに臨む(左から)韓国の文在寅大統領、安倍晋三首相(斎藤良雄撮影) ベトナムの首都、ハノイで行われた米朝首脳会談に関して、文政権は「北のエージェント」外交を展開したが、会談決裂とともに失敗に終わった。もちろん、外交や安保関係の閣僚続投が、これらの政策の失敗を国内外に印象づけるのを避けるためという見方もできるだろう。いずれにせよ、日本に対する「裏切り」姿勢に今後も変化はないだろう。 それを助長しているのは、相手が「裏切り」行為をしても、愚者のように「協調」路線を堅持する、日本側の非合理的な姿勢にある。日本政府は、経済面での制裁、そして防衛協力の見直しをワンセットで韓国に提示し、「しっぺ返し」戦略への転換を急ぐべきである。

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    レーダー照射事件、元海自パイロットが韓国を完全論破する

    え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    韓国レーダー照射、もう白黒つけよう

    米朝首脳会談や先の天皇謝罪発言、徴用工をめぐる賠償問題などが重なり、韓国軍によるレーダー照射事件はすっかり尻すぼみになった感がある。とはいえ、これもいまだ解決のめどは立っていない。「真実を語る方が強い」とは安倍首相の言葉だが、もういい加減、この事件も白黒つけようではないか。

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    レーダー照射「論点ずらし」は韓国の反転攻勢だ

     さらには、こうした観点に立って、日韓双方とも両国関係の将来を展望し、冷静に議論を進めることに努め、日韓関係の現状をできるだけ早く良好なものにするよう率直な対話を行うプロセスの中で、再発防止のための枠組みについて協議していくべきものと考える。■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    韓国レーダー照射、軍事的「忍耐」で戦争の火種を消し去れ

    の侵略」「併合・植民地化」「慰安婦・徴用工」などの火種に油を注ぎ、韓国の対日感情を昂(たかぶ)らせ、日韓関係を一層悩ましく深刻な状況に陥れるだけだろう。そこで、事件の整理が解決の示唆となると考え、いくつかの視点を示したい。 まず、軍事上の視点である。そもそもFCレーダーは、その多くの性能や仕組みが外部に知られたくない、知らせたくない、秘匿されるべき装備である。例えば、自衛隊の使用電波の周波数、波長を敵が知れば、敵が電波特性に合わせてピンポイントの電子妨害を行って、自衛隊の探知能力や、ミサイルなど火器の命中率を低下させる。 逆に、自衛隊が敵の諸元を知り、敵の照準波を妨害すれば被害を局限できる。日韓に限らず、電子妨害は「秘中の秘」であり、相手装備の性能諸元を知る「手の内を公開する」こと自体、軍事的には「愚かな行為」である。 2013年には、中国海軍が海自艦艇、および搭載ヘリに向けてFCレーダーを照射した事件があった。これによって、中国海軍が使用するFCレーダーの電波諸元を知ることができ、ミサイルなど自衛隊に対する火器の照準を妨害しやすくなった。このように、「脅威の諸元」が取得できると考えれば、今回の事件は、黙して歓迎すべき類(たぐ)いの事象かもしれないのだ。防衛省 それでは、日本政府がどのような経緯で韓国に抗議することになったのか。発端は明らかだが、「抗議に至った経緯」は見えない。当然、事件は現場から指揮系統を通して官邸まで報告されたのであろう。 「陸自の『日誌報告』が防衛省トップに上げられていなかった問題」で処分が行われて以来、対外的事案の報告は、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」現状が想像される。そして、「韓国をギャフンと言わせたい」空気に満ちているタイミングで「抗議」に移り、現に軍事上、「昨日の友を今日の敵」にしてしまう重大事に発展させつつある。文民統制の難しさ また、現場の秘匿事項が「シビリアンコントロール(文民統制)の俎上で暴露されてしまった」ことは悩ましい限りである。言動が法的に正当であっても、それは一般論で言う合理性であって、自衛官には「殺戮・破壊を勝利のための手段とする一般社会と乖離(かいり)した合理性」があり、当然「戦いを有利に導くさまざまな保全」が求められる。他方、シビリアンコントロールの難しさは、「軍事」と「社会性」を区別することだ。 次に、「海上救難活動の任務」は、主として日本や米国の場合、「海上保安庁」や「沿岸警備隊」が担う。韓国では、いわゆる「Coast Guard」 組織が、14年のセウォル号沈没の不手際以降、組織改革が一転二転し、現在は「韓国海洋警察」が任務に就いている。 しかし、今回のケースでは「韓国海軍」が出動していた。それでは海軍が出動した理由は何か。遭難船舶近傍を航行中という偶然が考えられるが、そうであれば、日本のEEZでの事象であることから、海自が「韓国海軍艦艇」の動態情報を得て事情を把握できるはずであり、問題発生を機に、「友軍」間で諸情報を共有できる「衝突防止拡大協定」に向けた協議が生まれてもいいはずだ。 これまでの韓国側の声明は、日本へのクレームに偏っており、歯切れが悪い印象を受ける。その原因としては、保全を優先した装備や行動にかかわる「軍事上の秘匿」があったからではないだろうか。本来、保全上触れるべきでない、忖度(そんたく)があってしかるべき事態に対する日本の振舞いに、自衛隊との友好を重ねてきた韓国軍人であっても首を傾(かし)げたのだろう。従って、日本は、忖度なき「突っ込み」を控えるべきだった。 そして2019年に入り、海自P1哨戒機の韓国艦艇への「異常接近」にクレームがつけられた。韓国の「事の状況によってしかるべき対応をとる」という公的メッセージである「威嚇飛行に必要な措置」には、戦争との距離を縮める空気を感じさせた。それほどまでに韓国が頑(かたく)なになる事情について、密かに忖度し合える機会が作れなかったのだろうか。 今回の事件が「軍事的緊張度を高め、敵対意識の発生を助長する」ことになるという深謀遠慮がなく、「証拠を突きつける」行為に走った「日本外交」はうなずけない。韓国側のキーワードは、「韓国海軍艦艇」「北朝鮮船舶」「FCレーダー照射」「頑なな反発」「異常接近と危険飛行への警告」であった。 これらから、「韓国海軍艦艇の行動は秘匿性が高い」「対北朝鮮政策の潜在」「制裁決議に抵触」をうかがわせる状況、そして想定外の「日本の妨害」が組み合わせられた。しかも、軍事上、電子機器にかかわる秘匿事項を公にした日本の行為に対し、韓国、別けても軍が激怒したとも考えられる。記者会見で映像公表の意向を表明する岩屋毅防衛相=2018年12月、防衛省(宮川浩和撮影) そもそも、軍事上の緊張は質(たち)が悪い。友好関係にあった国家間に、相互が「不愉快」に受け止める特異な衝突が発生すると、「入ったひび」の修復に時間がかかるだけではなく、衝突が重なると、より重大な事件に発展しかねない。米国も見せた「忍耐」 いったん生じた「いがみ合い」の治療には、「忍耐と慎重と認識の共有」が良薬である。日韓両国間においてはこれまで、「半世紀にわたる交流」(2018年『防衛白書』)が行われてきた。・防衛駐在官の派遣(陸自・海自・空自各1人)(1954年以降継続)・防衛首脳日韓ハイレベル交流21回(2015年5月~18年6月)・留学生交流15人(2017年度)・当局者定期協議(日韓安保対話11回、防衛実務者対話20回)・部隊間交流10回(15年10月~18年3月)・日米韓3カ国協力21回(15年4月~18年6月)・その他―研究交流/安全保障対話/各種共同訓練(日米韓・日米韓豪加・西太平洋潜水艦救難・多国間海賊対処)・セミナー/各種協定協議 これらは、自衛隊と韓国軍の間に、意思疎通が容易で良好な関係を構築、維持し、信頼を醸成している証左でもある。 今回の事件は、この友好関係を背景に「初動」で「自衛隊・韓国軍の事実認識と誤解の鎮静」が行われるべきであった。今からでも遅くない、シビリアンコントロール下において、「自衛隊と韓国軍の良好な関係に基づく話し合いに託する」ことを一考してほしい。 これは、武力の対峙、行使の危惧を排除して軍事組織間の友好関係を活用する「間接的衝突抑止」である。今日、この作戦は「ハイブリッド戦略・戦術」の一つでもある。それには「忍耐と寛容」という精神要素が不可欠であることを付言しておきたい。 振り返れば、その前例がないわけではない。軍事的「忍耐」について、筆者の体験から次の事例を紹介する。 日本の対領空侵犯措置の任務が在日米空軍から空自に移管された1960年代の過渡期、ソ連機の領空侵入に緊急発進した米要撃戦闘機のレーダー・スコープ上の輝点が、ソ連機輝点と交差し、米軍機のレーダー反射が消え、ソ連機の輝点が母基地へ向かうという事件があった。明らかに米軍機は撃墜されたのだが、大戦へのエスカレーションを回避するため米国は忍耐して看過した。 冷戦時代、日米哨戒機のオホーツク海域流氷調査、電波情報収集飛行に対して、ソ連の地対空誘導弾部隊からFCレーダーの照射を受けている。もう一方で、ベトナム・カムラン湾と沿海州基地間往復便のソ連機も日本周辺海域を飛行し、電波情報を収集していた。 しかし、空自高射部隊が追尾レーダーを照射してレーダー諸元を知られる愚は犯していない。また、空自スクランブル機は、領空侵犯の恐れがあるソ連機の行動監視のため肉眼で見える距離に接近した。その際、「TU-16」(ソ連の戦略爆撃機)などの機銃銃口が向けられることは珍しくなかった。防衛省が公開した韓国駆逐艦によるレーダー照射の映像。能登半島沖(日本EEZ内)で海上自衛隊P1哨戒機により撮影された=2018年12月(防衛省提供) これらを総ずると、いかにシビリアンコントロールに安全保障の機微、安定がかかっているかが見えてくる。今回の事件の教訓は、安全保障にかかわる事象については一層の慎重さ、冷静さ、そして忍耐が求められていくと考える。■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    韓国軍「秘密の海上作戦」は金正恩への面会料受け渡しだった!

    え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    高須院長「日本はそろそろ韓国を切り捨てる決断を」

    国会議長による「謝罪要求発言」などについて話をうかがいました * * *──相変わらず冷めきっている日韓関係ですが、韓国の文喜相国会議長が、「慰安婦問題の解決には天皇の謝罪が必要」と発言し、波紋を呼びました。高須:本当に無礼な発言だよ。しかも、日本側が反発の姿勢を見せると、「謝罪する側が謝罪しろとは何事だ。盗っ人猛々しい」と言ったらしいじゃないか。本当に恐ろしい。一体どういうつもりで、そんなわけのわからないことを口走ることができるのか。文議長が発した言葉をそのまま返すしかないよ。──また、日本側が反発していることについて文議長は「安倍政権が今回の問題を争点化している」などともコメントしているようです。高須:いやいや、それこそこっちの台詞だよね(笑い)。慰安婦問題にしろ、竹島問題にしろ、国内の支持率稼ぎのために散々争点化してきたのが、歴代の韓国政権じゃないか。文議長は、何を言っているんだ? もしかして、日本を批判するフリをして、自国に対する皮肉を言っているのかな? つじつまが合わなすぎて、なんだかこっちも混乱してしまうよ(笑い)。──たしかに矛盾だらけの発言を繰り返していますよね。レーダー照射問題にしても、何一つ証拠となるようなものは出さずに、ただただ「日本が悪い」と駄々をこねているかのような弁明が続きました。高須院長が韓国との決別を提言高須:結局、日韓関係は何一つ進んでいないどころか、韓国が言いがかりをつけてくるせいでどんどん後退している状態だ。まあ、今の日本にしてみれば、韓国との関係が悪化しても大して困らないから、これでもいいのかもしれないけどね。韓国もそう思っているんだろう。当分は今みたいな状態が続くんだろうな。 でも、僕としてはこの状況に納得いっているわけではない。あまりにも無礼な態度を続ける韓国政府は許せないよ。それに、韓国のナメた態度を許し続けると、他の国まで「日本はナメても大丈夫」って思い始めてしまうかもしれない。日本としては、韓国よりも重視すべき国はいくらでもあるわけで、そういった国との関係に悪影響が出る可能性もあるということだ。そういう意味では、日本が韓国を切り捨てる決断をしなくてはならない時に近づいているんだよ。まるで自爆テロ 韓国政府の反日的な態度というものは、韓国民に対するガス抜きだからね。とにかく日本を貶めることで国民を喜ばせて、政権の支持率をあげたいというだけのもの。つまり、それは単なる手段であって、目的ではないんだよ。結局、確固たる思想があったうえでの反日ではないから、口からでまかせみたいな矛盾だらけの悪口が次々と出てくる。それこそ、諸外国から「韓国は何をおかしなことを言い続けているのだ?」と思われてもまったく構わないと思っているのだろう。自分たちが馬鹿に見えても、日本を貶めたい──というのが韓国なんだよ。言葉は悪いけど、ある意味自爆テロにも近いものを感じる。そんなものに、真正面から付き合っていては、こちらが潰されてしまうだけ。本当に強い態度で突き放していくべきだね。──しかし、海上自衛隊のセミナーに韓国軍が参加すると発表されるなど、防衛交流は継続しています。高須:韓国は日本が動かないと思っているから、言いたい放題やったうえで、いけしゃあしゃあとやってくるんだよ。日韓の連携は平和のために重要なことだ、なんてきれいごとを言うのだろうけど、日本に喧嘩をふっかけて平和を壊そうとしているのは韓国の方だからね。もう許してあげる必要もないと思う。そろそろ堪忍袋の緒が切れるころだよ。 * * * さすがに、やりたい放題の韓国に対する不満が爆発寸前といった雰囲気の高須院長。韓国以外の国との関係を守るという意味でも、韓国への態度をあやふやにはしておけない時期にきているのかもしれない。【プロフィール】高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。昭和大学医学部客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。脂肪吸引やプチ整形など、日本に「美容整形」を広めた第一人者。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子氏との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)、『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)、『行ったり来たり 僕の札束』(小学館)、『ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて』(小学館)、『炎上上等』(扶桑社新書)、『かっちゃんねる Yes! 高須 降臨!』(悟空出版)など。最新刊は『大炎上』(扶桑社新書)。関連記事■ 高須院長 レーダー照射問題に憤怒「韓国はフェイク国家」■ 高須院長 ウーマン村本と「いつかは会って話してみたい」■ 高須院長 前澤社長の1億円お年玉に「金の使い方を知ってる」■ 高須院長 イスラム国を分析「わらしべ長者みたいなもの」■ 児玉清氏 死の直前に「僕はそろそろだから、会いに来て」

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    もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった

     韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射問題は解決の糸口が見えない。「交戦の一歩手前」といえる状況が発生したにもかかわらず、無理筋の主張を続ける韓国を見ていると、“同盟国”のはずの日本と本気で事を構える気でもあるのか──という疑念さえ浮かんでくる。実際のところ、そんな事態になって困るのは韓国軍のはずなのだが……。 韓国軍・政府の動きは、理解不能だ。海上自衛隊の哨戒機に“ロックオン”し、言い分を二転三転させた挙げ句、具体的な証拠を示さずに「悪いのは日本」という主張を繰り返している。背景に、韓国軍の“変質”があるとみるのは軍事ジャーナリストの井上和彦氏だ。「徴兵制を敷く韓国では、国民の意識の変化が軍に大きく影響する。文在寅政権の誕生や昨年の平昌五輪などで南北融和ムードが広がって、『北朝鮮は敵国』という意識が薄れてしまった。これに影響されて軍の緊張感が薄れる一方、文在寅政権下の韓国はもはや日本を唯一の敵とみなしている感がある」 近年、“韓国軍の反日アピール”は、激しくなる一方だ。軍艦の名称にしても、イージス艦「世宗大王」(2007年進水)は15世紀に対馬を侵略した王の名前。伊藤博文を暗殺した「安重根」の名を冠した潜水艦(2008年進水)もある。昨年は韓国海軍主催の国際観艦式で、海自艦艇に自衛艦旗(旭日旗)の掲揚自粛を求めてきた。 ただ、幼稚な挑発を繰り返す隣国の軍の“実力”はというと──。軍艦が漂流 単純に「量」だけを比較すれば、韓国軍は日本の自衛隊を圧倒する。人口が日本の半分以下でありながら、韓国軍の総兵力は63万人。23万人の自衛隊をはるかに上回り、予備役に至っては310万人を数える(自衛隊では3万人)。また、日本の防衛費はGDPのおよそ1%だが、韓国はそれを大きく上回り、2%超となっている。 では、韓国軍の実力が自衛隊を凌駕しているかといえば、そうではない。前出・井上氏がいう。2019年2月、海上自衛隊幹部学校で開かれた国際セミナー。韓国海軍の中佐(左奥から2人目)も参加した「戦闘機をはじめとした作戦機体数でも韓国軍は自衛隊を上回る。その性能を見ても、たとえば韓国の主力戦闘機F15Kは、航空自衛隊のF15Jと比べて“上”と言えるでしょう。ただ、練度や運用に疑問符がつきます。過去には地上走行中のF15Kの車輪がマンホールにはまって傾き、機体を損傷したこともあります」 米軍や日本の自衛隊が志願制なのに対し、「韓国軍は徴兵制で兵士の士気にバラつきもあり、最新鋭の武器を揃えていても部隊運用に問題が出てくる可能性がある」(同前)わけだ。韓国軍のレベルダウン 2016年2月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際は、日米韓のイージス艦がそれぞれ弾道を追ったが、韓国の「世宗大王」だけがミサイルを見失い、日米に問い合わせる事態となった。「日本も韓国も、イージス艦には米国直輸入の最新鋭レーダーシステム『SPY-1』を搭載していたが、韓国軍だけ追尾する能力が足りなかった」(同前) 2013年には、これまた日本への嫌がらせのような名前の強襲揚陸艦「独島(不法占拠中の島根県・竹島の韓国名)」が、“平時の海”で航行不能となり、漂流した。原因は艦内の火災。搭載した2つの発電機のうち1つから出火し、消火中に海水が流れ込んできてもう1つの発電機も停止したという。「2010年の延坪島砲撃事件では、北朝鮮の撃った砲弾がターゲットである韓国軍のK9自走砲に命中した一方、韓国側の反撃弾のほとんどが北朝鮮陣地後方の畑に落ちた。しかも韓国軍が配していた自走砲6門のうち実際に動いたのは3門だけ。整備、運用の不備を露呈してしまった。これは、高い稼働率を誇る日本の自衛隊ではとても考えられないレベルです」(井上氏) 韓国軍の兵士の“レベルダウン”も進んでいる。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏の指摘。「今の若い兵士は消費社会の空気の中で育っています。彼らの待遇改善の要望に応えるかたちで軍施設にはカラオケルームや健康設備がつくられ、兵舎のロッカーを開けると化粧品でいっぱいだといいます。一人っ子家庭が増える中、男子を送り出す母親も神経質で、軍当局は訓練で兵士が怪我したらいちいちその経過を報告する。家族のケアに翻弄されている実情がある」北と核ミサイルを共同開発!? 1993年に韓国で発売された小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(金辰明・著)は、日本が“独島”を急襲し、軍事占領したことで日韓開戦となるストーリーだ。当初、押されていた韓国側が、北朝鮮と共同で開発した核ミサイルを東京湾に打ち込み戦況が一変、日本が白旗を揚げる──という結末だが、こうした作品が大人気となるのが韓国だ。黒田氏はこうため息をつく。「同書は100万部を超える大ベストセラーになり、映画化もされました。同様の設定は韓国の大衆小説の定番。しかも、話は日本による“侵略”から始まるものばかりです。『独島防衛』が、韓国人の戦意を最も刺激する“元気の素”ということなのでしょう」 当然ながら、日米韓は連携して「北朝鮮の脅威」と向き合わなくてはならない。実力もないのに“戦意”ばかり旺盛な“同盟国”では、有事の際の不安は募るばかりだ。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい■ 韓国作成「徴用工企業299社リスト」に日本企業の担当者絶句■ これまでタブー視されてきた「日本核武装論」米国で噴出

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