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    中国「ゲノム編集」ベビーは許されるか

    中国広東省の南方科技大の賀建奎・元副教授がゲノム編集で遺伝子を改変した受精卵を使い、世界で初めて双子の女児を誕生させた。倫理面や安全性への懸念が広がる中、研究者の功名心や利益目的との報道も出て、まさに批判一辺倒である。負の側面ばかりが注目されるゲノム研究。本当に議論の余地もないのか。

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    中国「ゲノム編集」ベビーを悪行と決めつけていいのか?

    よって、ほとんどの国内外の報道は賀副教授の資質を、「デザイナーベビー」の作出を、ひいては中国における科学振興と規制を批判した。 しかし、冷静に事態を見つめると、ルルとナナを「デザイナーベビー」と烙印(らくいん)を押すのは、行き過ぎである。欧米に先天的にCCR5変異を持つ人は実在し、HIV抵抗性を除けば、一般の人々とかけ離れた外見や特性を持つわけではない。過熱報道で見失う「本質」 また、賀副教授の主張によれば、双子は「健康」に生まれたという。1978年、英国で初の体外受精児、ルイーズ・ジョイ・ブラウンが誕生したときも同様の騒動があった。科学界から先天異常が深刻に懸念されたが、誕生したルイーズはごく普通の女の赤ちゃんだった。母親のレスリーは卵管閉塞(へいそく)で胎内受精が起こらず、不妊であった。体外受精がなければ、今は2児の母であるルイーズはこの世に存在しなかった。 日本社会は不妊治療として体外受精や顕微授精を受け入れてきた。2015年の総治療回数は42万4151回とおそらく世界トップクラスだ。一方、ルイーズに懸念された先天異常があったとしたら、今日のような生殖医療の隆盛は起きなかったかもしれない。 日本から中国の道徳観や規制を直截(ちょくさい)に批判することは実は難しい。まず、日本の道徳の概念は中国の儒教や老荘思想と西洋のモラルと二つの起源を有する事実がある。 また、中国と同様、日本でも遺伝子改変児の作出の規制は強制力のある法規制ではなく、行政指針をとる現状がある。具体的には「遺伝子治療等臨床研究に関する指針第七 生殖細胞等の遺伝的改変の禁止」であるが、これは遺伝子導入のみが対象であり、賀副教授のようにゲノム編集の酵素をタンパク質やmRNAの形態で胚に注入する場合は対象とはならない。 ヒトゲノムは細胞の中で核以外にミトコンドリアにもあるが、厚生労働省は近年大阪で実施されたミトコンドリアゲノムを改変する不妊治療の臨床研究を擁護した経緯がある。さらに、サミット後の12月6日、参議院厚生労働委員会で、薬師寺道代参院議員(無所属)がゲノム編集の生殖利用を法的禁止にすることを求めたが、「法の改正は困難であり、進展が早い医療分野は指針が妥当」と厚生労働省は抗弁した。国際会議で質問に答える中国の南方科技大の賀建奎副教授=2018年11月、香港(共同) 今はヒトゲノム編集を禁止とするが、生殖のイノベーションが見通せる時がいずれ到来することを予期し、当面は国会審議を経ずに速やかに解禁できる行政指針で様子をみていく意向なのかもしれない。 過熱気味の報道に気を取られすぎると、ヒト生殖、家族形成と医療の関係の本質を見失う。賀副教授のゲノム編集の生殖利用が不適切であったなら、他にどのような利用が考えられるだろうか。生殖イノベーションの前に 配偶子提供制度が未確立の日本では、多くの場合、夫婦間で不妊治療を繰り返している。体外受精を受けて出産に至った女性の割合はわずか11・7%だった(2015年)。その主な理由として染色体異常などを特徴とする卵子老化が指摘されるが、遺伝子変異による不妊もありそうだ。 賀副教授はサミットに先立つ11月25日、YouTubeで双子誕生を世にアピールし始めた。翌26日、私はその動画を見たというある男性からEメールで相談を受けた。彼の妻はTUBB8遺伝子の変異が原因で体外受精を3回受けても胚が育たないため、夫婦でゲノム編集を伴う生殖医療研究に参加したいがどう思うか、という内容であった。難治不妊を克服するためのゲノム編集の臨床利用、これは日本に現在存在する切実な生殖ニーズを満たすかもしれない。 しかし、この生殖イノベーションに進む前に、合わせて検討すべきアジェンダ(課題)がある。それは生殖医療と「両親と子の遺伝的つながり」のバランスの問題だ。第三者からの配偶子の提供を受ければ、難治不妊は解消できるが、片方の親と子で遺伝的つながりがない。しかし、特別養子縁組制度があることを考えると遺伝的つながりがない親子に問題があるとは言えまい。 一方、配偶子提供自体、問題が多い。 目下、法務省で親子関係を明確にすべく検討が進んでいるが、配偶子提供者の個人情報保護、ヒト配偶子の道具化、女性から数限られた卵子の搾取、子の出自を知る権利などの問題は残置されたままだ。欧州などの国々では配偶子提供の法制度を既に整えているが、日本は本件について完全解決をみないままゲノム編集を伴う生殖医療に進むべきだろうか。 私たちは誰一人として自ら同意して誕生していない。私たちの誕生は全て親たちが決めたのだ。ゆえに夫婦で同意書にサインすれば生殖医療を受けることができる。 では、急速に技術進展し、リスクが低減しつつあるゲノム編集を生殖医療として使う場合、どのような目的なら夫婦の同意で実施が許容されるのだろうか。その利用目的は現在の日本社会の道徳観にかない、また切実なものだろうか。 そもそも、このような受精卵の遺伝子を操作する生殖医療を解禁した場合、生まれる子の健康や福祉を損なうリスクは低いと言えるのか。一人でも先天異常の子が生まれたら、どうすればいいのか。一方、配偶子提供制度の確立に本腰を入れなくていいのか。メディアのヘッドラインで思考停止に陥らず、深く考えたいものである。■「日本人ノーベル賞でお祭り騒ぎ」メディアの思考停止が目に余る■28歳の女医があえて「Dr.コトー」を目指したワケ■麻生さん、病気に「自己責任論」を持ち出すのはやっぱり酷です

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    ゲノム双子「カリスマ研究者」を潰せない中国当局の戸惑い

    究は)大学外で報告なく行われたことで、倫理と学問的規範に違反している」との声明を発表。中国を代表する科学者122人も連名で賀氏を批判した。当局「戸惑い」のワケ 『環球時報』は、いわゆる「左派系」(日本でいう「右派」)に分類されるメディアで、外国に対する厳しい論調が持ち味の国際情報紙だ。もし、賀氏の研究が誇るべき成果であれば、外国の反応や他の国内メディアの反応がどうであれ、その功績を称揚する論陣を張ったはずだ。賀氏の研究成果は、まさに四面楚歌(そか)という展開になったのである。 あるメディア関係者は「こうした場合、次に考えられるのは賀氏が公表した研究が虚偽であったと発表されることや、何らかのトラブルで彼が逮捕される展開です」と話す。 ニュースが拡散した直後には「実際に誕生した嬰児(えいじ)が公開されていない」といった批判も多く、どの研究者も「もし本当なら…」という断りを入れていたことが印象的であった。また、騒動から約1週間後に報じた香港紙は、賀氏が大学当局から軟禁されているというショッキングな記事を掲載した。世界から脚光を浴びた賀氏の周りに、暗雲が立ち込めるようであった。 本来であれば、中国でお決まりの「消息不明」から「逮捕」という流れに向かっていくことになる。だが、発覚当初、当局はそのつもりではなかったらしい。 「実は、今回の騒動で戸惑っているのは当局の方だったのです。研究者や専門機関からの反応は確かにネガティブなものが目立つのですが、国民の賀氏への支持は極めて高いのです。海外の反応は気にしつつも、何が何でも彼を処分するといった雰囲気ではありませんでした」 困惑ぶりをこう振り返った党機関紙の記者がさらに続ける。「そもそも賀氏は、この騒動が起きる前から有名な研究者です。米国でも実績を残したことから、中国の未来を担う一人と目されています。特に中国が国として力を入れていこうとしている最先端の分野を担い、同時に会社も8社ほど立ち上げている『若者のカリスマ』ですから。最初から、彼に対して『潰し』ありきの選択はできなかったのでしょう」 AP通信のインタビューの中で、賀氏は「私の責任は重大だと感じている。単に、初めてのケースというだけでなく、彼女を一つの成功例としていかなければならい」と語り、「もし予想外の副作用が出た場合は、その痛みを共有して全責任を負う」と語っていた。折しも、同じ11月末に中国のエイズ感染者が85万人に達したと報じられたのは、何かの因縁だろうか。2018年11月、香港で開かれた国際会議で講演する中国・南方科技大の賀建奎副教授(共同) 2019年に入って、広東省当局の調査結果が公表され、双子誕生のみならず、別の女性1人も妊娠中であることを確認した。賀氏の行為も「自らの名誉と利益のため」と断罪され、立件に向けて公安機関に送致されると、国営新華社通信が報じた。当局の認定により、お決まりの方向に進むことは避けられなくなったのである。■ ファーウェイ敵視にも動じない中国「祖流我放」の冷めた感覚■ 「習近平独裁」を中国人はなぜ歓迎するのか■ ファン・ビンビン巨額脱税、中国当局が狙い撃つ人気女優の利用価値

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    「ゲノム双子誕生」中国を批判、周回遅れの日本が言える立場か

    も多いだろう。だが、多くの日本のメディアは、中国の研究者を倫理的側面から批判した。一方で西側先進国の科学研究に一刻も早く追いつこうとした中国の焦りを指摘した報道もある。 私は、一連の報道は妥当だと考える。ただ、今回の件では、中国を批判するだけでいいのだろうかと疑問に思う。私は今こそ、ゲノム編集技術の基礎となる「ゲノム研究」の在り方について議論すべきだと考えるが、そのような指摘は残念ながら皆無である。 ゲノム研究を推し進める原動力は、個別化医療の推進だ。個別化医療とは、主にがんの診療分野で、がんのゲノム情報に基づき治療法を変更することである。この診断・治療法が普及すれば、多くのがん患者が正確に診断され、適切な治療を受けられるようになる。副作用を減らし、より高い治療効果も期待できる。 近年、個別化医療が急速に進歩した理由はゲノムシーケンス(DNAの配列決定)技術の急速な発達にある。1990年に米国が主導して始まったヒトゲノム計画の完遂には、13年の歳月と30億ドルの予算を要したが、最近では数時間、1千ドル程度で解読することが可能になった。 近年は中国企業なども積極的に参入し、競争が激しい。コストは半額以下になるとも言われる。今回、問題となったゲノム修復技術は、その背景を知れば見方が変わってくる。 このような技術革新は、医療業界のパワー・ポリティクス(力の政治)に影響を与えた。具体的には製薬企業や検査メーカーが仕切る領域にIT企業が参入するようになった。最初の標的は遺伝子ビジネスだった。米国では「23andMe」をはじめとした複数の遺伝子検査会社が、DTC(消費者への直接販売)による遺伝子検査を始めた。ちなみに、同社の株主はグーグル創業者の妻である。 また、わが国でもDeNA社が、2014年8月から同様のサービスを開始した。このサービスを利用すれば、唾液を採取して検査会社に送るだけで、がんや糖尿病などにかかるリスクや、肥満や薄毛の体質などが解析できる。費用は検査項目によって異なるが、おおよそ1~3万円だ。 このような成果は当然ながら、がん医療にも応用できる。※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ) 2014年には米国で「マイ・パスウェイ試験」という多施設共同臨床研究が始まった。この臨床研究では、手術や細胞の一部を切り取って調べる「生検」などで患者から採取したがん組織を用いて、「HER2」「EGFR」「BRAF」「ヘッジホッグシグナル伝達系遺伝子」という4種類の遺伝子の変異を調べた。そして、遺伝子の変異の状況に併せて、分子標的治療薬「トラスツズマブ」や「ベムラフェニブ」などの投与を決めた。難病治癒に貢献 個別化医療の進歩は、これだけではない。特定の遺伝子だけでなく、すべてのゲノム配列を分析し、難病の診断や治療に役立てようという動きも始まっている。 例えば、米国のニコラス・ヴォルカー君という4歳児のケースだ。がんではないが、診断・治療の過程が興味深いのでご紹介したい。ヴォルカー君は、出生時より下痢、血便などの腸炎を繰り返していた。さまざまな病院を受診したが、「原因不明の難病」として対症的に治療されただけだった。 2009年、米ウィスコンシン医科大学の研究者たちは、ヴォルカー君の全エクソーム解析(全遺伝子解析)を行い、腸を細菌の攻撃から守る働きに関係していると考えられている「XIAP遺伝子」の変異であることを突き止めた。腸炎の原因は先天性の免疫異常だったのである。 ヴォルカー君は臍帯血(さいたいけつ)移植を受け、その後病気は治癒した。全遺伝子解析を受けていなければ、「原因不明の難病」として、遅かれ早かれ命を落としていただろう。 ヴォルカー君は全遺伝子解析が救命した世界初の症例として注目を集めた。米紙「ミルウォーキー・ジャーナル・センティネル」の取材班は2010年12月にこのニュースを報じ、翌年ピューリッツァー賞を受賞した。 では、日本の状況はどうだろうか。昨年12月、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会は、シスメックス社が承認申請していた遺伝子変異解析キット「オンコガイドNCCオンコパネルシステム」の承認を了承した。 これは、同社が国立がん研究センターと共同で、がんに関する複数の遺伝子を一括で調べる「パネル検査」(パネルシーケンス)だ。※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ) もう一つ、中外製薬が米ファウンデーション・メディシン社から導入した「FoundationOneCDxがんゲノムプロファイル」という同様の検査も承認が了承された。パネル検査が保険適用になれば、多くのがん患者が遺伝子検査を受け、その結果に基づいた効果の高い抗がん剤治療を受けられるようになる。 しかしながら、今回の承認では、使用は一部の施設に限定され、受診のハードルは高い。対象患者が原発不明がん、標準治療のない希少がん、標準治療が終了または終了が見込まれる「固形がん」で全身状態が日常生活に支障のないレベルの元気な患者という条件がつく。全ての患者が遺伝子パネル検査を受けられるわけではない。 以上の通り、わが国はパネル検査がようやく始まったところだが、果たしてパネル検査だけで十分と言えるだろうか。周回遅れの日本 前出の米ウィスコンシン医大の研究チームで、全遺伝子シーケンスにより発見された約5千の変異を半年間かけて、XIAP遺伝子の変異が原因であることを突き止めたのは、リズ・ワーシー氏だ。 同氏は2017年3月に東大医科学研究所を訪れ、講演している。彼の講演に参加した井元清哉・東大医科研教授は「(冒頭に紹介したパネルシークエンスも全ゲノムシークエンスも)両方をやっている彼らが、全ゲノムシーケンスを推奨していたのは示唆に富みました」という。 実は、パネルシーケンスは、半分以上の関連遺伝子を見逃してしまうことが分かっている。全ての遺伝子を解析できる全ゲノムシーケンスや全遺伝子シーケンスと、特定の遺伝子だけを解析するパネルシーケンスのポテンシャルの差は明らかである。 世界では、ゲノムにとどまらず、全クリプトーム(全転写産物、RNAのこと)解析の臨床応用が始まっている。昨年12月、米ニューヨークゲノムセンターは、全ゲノム解析と全トランスクリプトーム解析を組み合わせたサービスを開始すると発表した。 一方で、パネルシーケンスがようやく承認される見通しとなったわが国は、世界の最先端から「周回遅れ」と言っていい。遺伝子修復ベビーが批判を浴びた中国は、この分野で最先端を走っている。今後、この差はますます広がるだろう。その理由は二つある。 まずは、個別化医療の推進に必須な「情報工学者」の不足である。今や世界のゲノム研究を推し進めるのは、医師ではなく情報工学者だ。 既に知られた遺伝子変異に対しては、それに対する治療法も決まっており、どの医師でも判断できる。しかし、それ以外の遺伝子変異が見つかった場合にどう対処するのか、医師だけでは判断できない。その遺伝子の役割、変異によって引き起こされる病態について、あらゆる論文データを検討しなければならないからだ。 わが国のゲノム研究の中心は、理化学研究所と東大医科学研究所のチームだ。現在のリーダーは情報工学者である宮野悟・東大医科研ヒトゲノム解析センター長だが、2013年には従来の治療が効かない白血病患者の全遺伝子を解読し、IBMの人工知能ワトソン(質問応答システム)を用いて、患者に最適な治療法を提案した。※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ) この患者の治療は劇的に反応した。これは「人工知能が救命した最初の患者」として報じられたが、このプロジェクトをリードしたのが宮野教授である。前出の井元教授の上司でもある。宮野教授は九州大を卒業した数学者であり、井元教授も九大を卒業した統計家だ。 2人とも医師ではない。今後、個別化医療の研究を進めるには、情報工学の専門家と医師が協同しなければならない。ところが、医学部や医学系研究所における情報工学者のポストは圧倒的に少ない。財政難の国立大学で、医学部に情報工学者のポストを新設するのは難しい。医学部と情報系の学部の交流を加速させるしかないが、昨今の不祥事をみても明らかなように医学部は閉鎖的だ。現状では難しいと言わざるを得ない。変わるがん治療のパラダイム むろん、政治リーダーの見識も不可欠である。米国でがんの個別化医療を推進したのは、バラク・オバマ前大統領だ。彼は自らが主導した2016年度予算で、約2億1500万ドルを「プレシジョンメディスン(精密医療)」に投資した。これはがんの撲滅を目指す「ムーンショット計画」の一環だ。 「プレシジョンメディスン」とは、ゲノム情報などに基づき、最適な治療方法を最適なタイミングで提供することだ。個別化医療の発展形である。特定のがんに対して、特定の抗がん剤をパッケージで投与する従来型の「標準療法」とは対極の考え方である。 個別化医療にとって重要なのは、患者の状況を正確に把握することに尽きる。その一つががんのゲノム情報だが、もう一つは病状及び治療効果の判定だ。この点で注目すべきは「リキッドバイオプシー」という新規技術である。 リキッドバイオプシーとは、血液などの体液のサンプルを用いて、診断や治療効果の判定を行う手法である。ゲノム解析を行うことも可能だ。従来の生検と比べて、はるかに低い侵襲で大きなデータを入手できる。また、患者の状態によっては手術や生検ができないケースも多々あるが、血液検査であれば誰でも簡単にできる。 ただ、この方法には高度な技術を要する。血液中を循環する腫瘍細胞及び腫瘍細胞由来のDNAなどの物質は、ごくわずかだからだ。腫瘍細胞の場合、通常1ミリリットルの血液中に10細胞以下しか存在しない。 とはいえ、世界中の企業が現在、技術開発にしのぎを削っている。既にいくつかの興味深い研究成果も報告されている。 米ジョンズ・ホプキンス大の研究者たちは、昨年1月に米科学誌『サイエンス』に自らが開発した「CancerSEEK」と呼ばれるリキッドバイオプシーの研究成果を公表した。この研究では、一般的な8つのがんを対象に検査を行ったところ、卵巣がんでの診断率は98%だった。臨床応用は近いかもしれない。ただ一方で、乳がんでは40%を下回ったという。 この技術は開発途上だが、企業側の鼻息は荒い。技術開発の筆頭を走るのは、米シリコンバレーのグレイル社だ。ゲノムシークエンス最大手、イルミナ社から2016年に独立した。同社は「2019年までに最初のリキッドバイオプシーを実現する」と宣言している。 この見解に懐疑的な関係者も多いが、遅くとも数年の間に、この技術は臨床応用されるだろう。そうなれば、ゲノム情報に基づく個別化医療だけでなく、がん治療後の再発のスクリーニング(選別)や、がん検診にも応用が期待できる。現在のがん治療のパラダイム(認識の枠組み)が大きく変わることになる。※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ) がんは多くの先進国で死因の首位を占め、関心を集めている。がんの診断・治療法の開発は、ゲノム研究の進歩とともに日進月歩だ。中国での遺伝子修復ベビーの誕生も、このような流れの一環として理解すべきだろう。この領域では米中がヘゲモニー(主導的地位)を握りつつある。 一方、わが国は米中と比べ「周回遅れ」になりつつある。遺伝子修復ベビーの誕生に関しては、中国を批判するだけでなく、その背景にあるゲノム研究の進歩を理解し、前向きに議論しなければならない。■夢のがん治療薬は国を滅ぼす? ボロ儲け製薬企業の「暴走」を阻止せよ■がんはいずれ「理想の死に方」になる■カネではタフな研究者は育たない 日本人がノーベル賞を取れる理由

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    遺伝子治療の最前線、「クリスパー・キャス9」の衝撃

    ドイツのマックスプランク研究所のエマニュエル・シャルパンティエ博士、カリフォルニア大学バークレー校の科学者ジェニファー・ダウドナ教授と、マサチューセッツ工科大学(MIT)ブロード研究所のフェン・ザン氏が相次いで論文を発表した。 細菌がウイルスの侵入に際して、ウイルスの遺伝子を自分の遺伝子の中に取り込んで記憶し、同じウイルスが再侵入した場合、直ちにそのウイルス遺伝子を切断するという働きを応用したものだ。 その際に目印となる遺伝子配列(ガイドRNAやPAM)があることで改変する位置を正確に認識でき、これまでの技術と比較して短時間に低コストで作業が可能になり、「高校生でも扱える」と専門家の間で言われるほど、画期的な編集技術だと称賛されている。現在、両者はこの技術を巡って特許紛争をしている。 米国では当局が遺伝子治療の推進に舵を切っている。昨年12月、FDA(米食品医薬品局)は網膜ジストロフィーという目の難病に対して、遺伝子治療をする治験を承認した。FDAのスコット・ゴットリーブ・コミッショナーはこの承認に際して「17年に3件の遺伝子治療を承認したが、これからは難病の治療は遺伝子治療が中心になるだろう。18年はガイドラインを作る」と述べ、遺伝子治療を積極的に評価、後押しする方針だ。(出所)各種資料より作成 バイオテクノロジーの世界で最大の発明と称される「クリスパー・キャス・ナイン」の技術の素晴らしさは認められているが、遺伝子治療を医療現場で応用するとなると、解決すべき課題が山積している。そうしたなかで遺伝子治療を実用化に近づけようと、日本でも研究が進められている。 東京大学大学院の生物科学専攻の濡木理(ぬれきおさむ)教授は「『クリスパー・キャス・ナイン』は素晴らしい技術だが、臨床現場では使い勝手が悪い部分がある。いまの『キャス・ナイン』(酵素たんぱく質)は大きすぎて、『クリスパー』(遺伝子配列)を修復したい遺伝子まで運ぶのが難しいので、これを小型化して遺伝子の編集作業を自在にコントロールできる『ミニ・キャスナイン』ができないか研究をしている。この技術が遺伝子治療に幅広く使えるようになれば大きく飛躍できる」と期待する。1億円を超える世界最高薬価 都心から電車に2時間ほど乗った栃木県下野市にある自治医科大学。広いキャンパスの一角にある研究棟ビルの中でブタが十数頭飼育されている。濡木教授は自治医大の再生医学研究部の花園豊教授と連携して、開発した新技術をブタを使って試している。人間に用いるのと同じX線透視装置や手術支援ロボットを備えた手術室もある。 花園教授は「マウスだと小さすぎて、必ずしも正確なデータが得られないが、ブタは人間とサイズや生理学的特徴がよく似ているので、臨床に役立つ結果が得られる。ブタを用いてのこれだけの医療設備があるところはほかにない」と話す。現在、遺伝子の変異によって起きるとされる難病SCID(X連鎖重症複合免疫不全症)の治療がゲノム編集でできないか研究中で、ブタで成功すれば人間による臨床に移り、実用化の可能性が高まる。 いままでFDAが承認した遺伝子治療は、昨年末に承認した網膜ジストロフィーのケースも含めて変異した遺伝子はそのままにしておいて、正常な遺伝子を体内に導入する手法だ。だが、「クリスパー・キャス・ナイン」を使えば、変異遺伝子に狙いを定めて修復ができる。正常な遺伝子を入れる手法の場合、入れた位置が悪かったりして白血病などの副作用を起こすリスクがあるといわれている。 それに比べ、遺伝子を修復する方法は、そうしたリスクが低く、安全性が高い点が指摘されている。「人体の設計図」を意図的に変更することになる遺伝子編集は、安全性を抜きにして実用化はできない。 「クリスパー・キャス・ナイン」のゲノム編集技術は、難病の治療に使われようとしているが、日本人の2人に1人がなるとされる、がんの治療につながるかというと、そう簡単ではない。なぜなら、がん患者は多くの場合、いくつもの遺伝子が変異を起こしているケースが多く、どの遺伝子の変異が、がんの発症につながっているのか識別するのがいまの医療技術では難しいという。このため、いまのところゲノム編集技術は、一つの遺伝子の変異によって発症しているとみられる病気の治療に応用されようとしている。 実際の遺伝子治療はようやく緒についたところだ。17年7月までに全世界で約2400件もの遺伝子治療の臨床研究が行われてきたという。しかし、販売が承認された治療製剤はわずか10件で、日本での承認はない。 開発が順調に進展しなかった理由は、リスクの見極めの難しさにある。いままでの化学薬剤とは異なり、一度遺伝子を改変すると、長期にわたり人体に影響を及ぼす。欧州ではその副作用で白血病を発症し、被験者が死亡した悲劇もあった。 そのため、数年以上の緻密な安全性評価が必要となり、さらに規制を厳格にしたことで研究マインドは冷えていった。しかしこの教訓は生かされ、この数年、欧米でより安全な遺伝子治療の承認が相次いでいる。そこに新しい技術であるゲノム編集が加わり、熱い視線が集まっている。自治医科大学の実験室(写真・WEDGE) 北海道大学の石井哲也・安全衛生本部教授は、開発費用と保険適用の問題を喚起する。「欧米で承認された遺伝子治療製剤は、患者一人あたり数千万円以上と軒並み高額で、中には1億円以上と世界最高薬価を記録した製剤もある。国からみれば高額薬の登場は財政上の問題だ。しかし、患者数が少なく、真に有効な治療法がなかった希少疾病に対する遺伝子治療製剤でさえ国の健康保険でカバーしないなら、それは国民皆保険制度の趣旨から外れる」と指摘する。実際、英国は希少疾病に対する遺伝子治療は保険対象とする見通しだ。 それだけに承認する側の厚労省としては慎重にならざるを得ない。しかし、これをあまりにも厳しくし過ぎると、製剤を開発する側の意欲をそぐことになり、そのバランスが難しい。同省ではがんや難病の治療に遺伝子治療を役立てようと、治療のガイドラインの見直し作業を進めている。目をつけるベンチャーファンド また、がん患者の遺伝子情報に基づいて最適な治療薬を選ぶ「がんゲノム医療」を4月から全国規模で行うことになり、同省は3月27日に100の病院を指定した。手術、抗がん剤、放射線など従来の治療法では効果がなかった希少がん患者などに対して、遺伝子を調べ、臨床研究の結果で適した薬があれば投与、治療する。 ゲノム編集技術は、いま実用化に向けて世界の研究者がしのぎを削っている。米国では一昨年あたりから多くのベンチャーファンドがこの技術の実用化でひとヤマ当てようと、技術の開発に巨額の資金をつぎ込んでいる。ゲノム編集が実用化されると、難病やがんの治療だけでなく、美容やアンチエイジングへの応用も期待されている。 また動植物の遺伝子編集により、人間にとって効率的な食料生産ができるようになるなど、将来的にはマーケットが大きく広がる可能性がある。このため、バイオベンチャーの多いボストンやサンフランシスコでは、先物買いによる遺伝子治療への投資がブームになり、新規上場により資金調達する企業も多い。 濡木教授はこの開発を加速するために、16年1月に産学連携のベンチャーEDIGENE(エディジーン、東京都中央区、森田晴彦社長)を設立。ボストンにもオフィスを構え、米国の研究者をスカウトして遺伝子治療技術の実用化を急ごうとしている。そのためには開発資金が必要で、製薬、化学会社などから16億円の資金を集めることに成功した。日本の製薬会社やベンチャーキャピタルはこれまで、こうしたベンチャーに対して資金を提供することに消極的だった。 しかし、ゲノム編集技術の進化から遺伝子治療実現の期待が高まってきているため、積極的に資金を提供しようとする動きも出始めている。昨年12月、先端医療分野を将来の事業の柱と位置付ける富士フイルムがエディジーンに対して4億7000万円の出資を決定、思い切った先行投資に踏み切った。 同社はこれまで培ってきた高度なナノ技術を活用し、有効成分を効率的に患部に届けて薬効を高めるリポソーム製剤の技術を、遺伝子治療の開発に役立てたいとしている。 中国では15年の時点で医療関係者の間でタブー視されてきた人間の生殖細胞の遺伝子編集を行い、世界の医療関係者のひんしゅくを買った。この分野は米国と中国で先陣争いをしており、科学雑誌「Nature」(16年11月24日付)はその模様を1950年代の旧ソ連の人工衛星開発競争に例えて、「スプートニクVer2」と揶揄している。米国では既にエイズ治療にゲノム編集技術を使っているが、中国はさらに先に進んで、肺がんの治療にこの技術を使っているという。遺伝子(ゲノム)をピンポイントで操作できるのがゲノム編集の特徴(ゲッティイメージズ) 一方、日本はこの分野の論文数や特許件数では大きく出遅れている。日本の製薬会社は、リスクを恐れずに果敢に挑戦してもらいたい。また厚労省もこうした新薬を開発するチャレンジに対しては、15年から新薬の審査期間を通常の半分の6カ月に短縮する「先駆け審査指定制度」を導入、世界レベルの開発競争に負けないように対応しようとしている。 こうした官民の努力が成果を挙げることができれば、日本も遺伝子治療の最先端分野の競争の仲間に入ることができ、将来、大きな果実を得ることができるかもしれない。なかにし・とおる 経済ジャーナリスト。1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

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    中国の科学者がヒト受精卵に遺伝子操作 欧米で激しい論争に

     中国の科学者がヒト受精卵に世界初の遺伝子操作──タブーを冒したこの実験について、欧米では学術誌からマスメディアまで、その是非をめぐり大論争となっている。 世界を驚愕させたその実験は今年4月に生物学・生物医学の学術誌「プロテイン&セル」に掲載された論文で明らかになった。中国広東省にある中山大学の黄軍就副教授らの研究チームがヒト受精卵の「ゲノム編集」を行ったというのだ。ゲノム編集とは何か。サイエンスライターの島田祥輔氏が解説する。「ゲノムはあらゆる生物がもつ、いわば設計図です。生物の身体を料理に例えるとゲノムはレシピにあたり、そこに書かれた情報を基に生物のかたちができあがる。ゲノム編集とは、人為的にこのレシピを書き換えることで生物のかたちを変える技術の一種です。従来の遺伝子組み換えより簡単で、成功率の高い優れた技術です」 ゲノム編集の有益性は高く、農作物の品種改良や新薬の開発、遺伝子治療など様々な分野に応用できる。米国ではHIVに感染したヒトの体細胞からウイルスを取り除く臨床研究が始まっている。 今回の実験が問題視されたのは、世界で初めてヒト受精卵にゲノム編集を施したからだ。欧米ではタブー視される行為であり、激しい論争を巻き起こした。 なぜ、ヒト受精卵のゲノム編集は問題なのか。目や髪の色、筋肉の質や量などの遺伝的特質を人為的に操作して「設計」された「デザイナーベビー」の誕生につながるからだ。個人のさまざまな特質や能力の元となるゲノム情報を「書き換える」ことで、「ヒト作り替え」が可能になる。 さらに問題なのは、ゲノム編集した受精卵から生まれた子供の遺伝子が永遠に受け継がれる点。これにより、現時点でわかっていない副作用などが将来世代に及ぶリスクがある。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)「ゲノム編集技術を用いれば、目の色や体質だけでなく、運動能力や体格、IQ(知能指数)すら思い通りに操作できるようになります。SF世界のような“強化人間”も技術的には可能です。しかし、どこまで人間のレシピを書き換えていいのか、そもそも書き換えていいのかという”境界”の議論は世界的に進んでいません。線引きが曖昧な状態のまま中国の論文が発表され、科学界に大きな衝撃が走りました」(島田氏) 今回、中国の研究チームは胎児に成長する能力のない受精卵を使っており、科学的・倫理的な問題点はクリアしたと主張するが、この研究が「ヒト作り替え」の最初の一歩となりうることは間違いない。欧米の科学者は中国の「暴挙」に激しく反発した。黄副教授に電話インタビューを行った英「ネイチャー」誌のデービッド・シラノスキー記者が言う。「黄副教授はとてもオープンで意思疎通のできる研究者でした。しかし、欧米の人々はこの実験を好意的に見ていない。反対派は将来的に生殖目的でゲノム編集が行われることに危惧を抱いています」関連記事■ 長寿遺伝子と呼ばれるサーチュイン遺伝子は腹が減れば活性化■ 遺伝子検査で分かる 85歳までに80%の確率でボケる遺伝子■ 大黒摩季、46才の不妊治療 受精卵凍結してチャンスに備える■ ハキーム、宮部藍梨らアフリカ系選手が活躍の背景に遺伝子説■ 元内閣官房参与の科学者が初めて明かす「人智を超える何か」

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    「プラ製ストローは害」という欺瞞に日本人が付き合う道理はない

    その大半は中国で捨てられたことが明らかだ。また、私は一度もストローは見たことがない」という。 日本は科学技術立国と言われるが、「科学」というのは「思想」を後退させて、まずは事実を整理し、考えること、そして自分の考えを他人に押し付けないことが基本だ。だが、「環境問題」は常に他人を押さえつけるために使われてきた。 これらのことを頭に入れて論を進めていきたい。  環境省などによると、石油などから作られるプラスチックは年間約4億トン近く製造され、そのうち、約800万トンが海に放出されているという。だが、特殊で高価な工業部品以外のプラスチックは比重が1・0以下で軽く水に浮くので、もし分解されなければ海の表面を覆うはずである。すでに40年ほど前からプラスチックは大量に使われているので、海に放出されたプラスチックがそのまま漂流を続けていたら、海水面はプラスチックで覆われている計算になる。 しかし、現実はそうなっていない。ならば、プラスチックが海に流れることは道徳的には望ましくはないが、科学的にはプラスチックによる海洋汚染は当面は考えなくてもよいことになる。これは以下に示す科学的原理や、長年の実績とも合っている。 そもそも、プラスチックは油性だから海に存在する有害な有機性化合物が付着すると言われているが、魚もプランクトンもプラスチックと同じ油性である。プランクトンや魚の存在量は明確ではないものの、40億トン程度とみられ、それからみると、プラスチックの流出量は0・2%に過ぎない。ゆえに、大量の油性生物に対し、プラスチックが環境を汚染することはあり得ない。 一方、地上の生物の食料はすべてCO2(温暖化ガス)が原料であり、それを還元して作る「炭素-炭素結合(C-Cボンド)」が生物の体を作り、エネルギーを供給する。したがって、生物の死骸である石油はC-Cボンドの化合物からなり、それは人間にとっても生物にとっても最も大切なエネルギー源である。 人間はC-Cボンドをすぐに分解できないので、食料にすることはできないが、多くの生物はこの貴重なエネルギー源を利用する。海洋に流出したプラスチックは一部の微生物にとって貴重な食料であり、分解して自分の体にしたりエネルギーにしたりする。これが海洋に流出するプラスチックが減少する理由である。プラスチック製に代わり、ヒルトン大阪で使われている紙製のストロー=2018年7月29日、大阪市北区(柿平博文撮影) 環境問題でよく出される写真に「海底でのペットボトル」などがあるが、これは実に不思議である。ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類ならともかく、エステル結合を持つポリエステルが海底でそのまま分解せずに存在することは不可能だからである。おそらく、この手の写真は「投下されたばかりのもの」を選択して撮影していることは間違いない。 筆者は20年にわたって多摩美術大学でデザインを教えてきたが、デザインや映像でやってはいけないことは自らの才能を生かして「事実ではないこと」を強く印象付ける手法をとることである。これは絶対「NO!」である。環境問題のほとんどがウソ 筆者の著書『生物多様性のウソ』(小学館101新書)や『科学者が読み解く環境問題』(シーエムシー出版)で詳しく書いたが、1990年から吹き荒れているリサイクルの破綻、ダイオキシンや環境ホルモンの害の他、生物の絶滅が早くなっていること、温暖化で海水面が上がっていること、森林がCO2を吸収すること、アルプスの氷が解けていること、などはいずれも一部の科学者の見解であって根拠がない。 リサイクルについては、「リサイクルしなければ8年で廃棄物処理場が満杯になる」という宣伝は、筆者が正確に計算したところ150年だった。また、「ダイオキシンは猛毒だ」と言われたときだけテレビに患者が出て、テレビが報道しなくなったら世界で一人の患者も出なくなった。今の若い人たちは「ダイオキシン」という名前すら覚えていないだろう。ゆえに、当時ダイオキシンが猛毒だと思っていた人がどういう情報ソースを持っていたかを検証することは意味がある。 さらに、環境ホルモンについては、生物の多くがオスとメスが入れ替わる事実を大衆が知らないことを狙った全くのウソであった。これは質の悪い誤報にすぎなかった。他にも、温暖化はアルキメデスの原理や相平衡の温度など中学校で教える理科でも分かる非科学的な結論ばかりである。 なぜ、こんなウソに大人がウロウロするのかというと、「科学オンチ」、「感情優先」、さらには「環境利権」がキーワードだが、もっと端的に言えば「日本人の幼児化」だろう。 プラスチックは年間4億トンも使っているから、汚染の可能性はあるが、現実には800万トン程度しか海に流出しておらず、さらにプラスチックが大量に使用されてから数十年も経て、今ごろ「海洋がプラスチックで汚染されている」という事実もないのに騒ぎだけが始まる。 特に、日本の環境省はひどい。日本近海のプラスチックのほとんどが中国で流され、それが海流に乗ってきていることを知っていて、国際的に「日本近海が多い」と表現するのだからはっきりした反日官庁である。 環境汚染を防止するというのは「まじめな活動」でなければ意味がない。「事実として海洋を汚染していること、海洋におけるプラスチックの分解が遅いこと、特にポリエチレン、ポリプロピレンの分解がどうなっているか」など重要な環境科学は研究の必要はあるが、緊急性はない。 まして、プラスチック・ストローなどは海洋に放出されるプラスチックの1万分の1にもならないことは明白だ。それを問題にするのだからまさに「幼児」と言えるだろう。東京農工大のチームが東京湾で採取したマイクロプラスチック=2015年1月 そもそも、ヨーロッパの北西に居住するアングロサクソン、ノルマン、ゲルマンというアーリア民族はややこしい。世界中で侵略を繰り返し、自分たちだけ豊かな生活をしながら、やれリサイクルだ、たばこやストローが害だと言い出して他人の生活を制限する。 でも、そんな民族が「震源地」の誤った環境問題に右往左往する日本人も魂を失ったものだ。この際、ダイオキシンやたばこの錯覚に思いを致し、日本人の誇りを取り戻してほしいものである。

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    トランプが想定する宇宙戦争はどのようなものか

    大貫剛(科学ライター) 今年6月、米トランプ政権が宇宙軍の創設を指示したことが話題となった。宇宙軍と聞けば、アニメ『機動戦士ガンダム』のような宇宙戦争を想像する人も少なくないだろう。 筆者もいわゆる「ガンダム世代」なので気持ちは理解できるのだが、現実に宇宙で戦闘機やロボットが格闘戦をするには、現代科学の限界を遥かに超えた高性能エンジンを必要とする。まさに「サイエンス・フィクション(SF)」そのものだ。 米軍全体の目的は米国の安全保障であって、相手として想定しているのは異星人や宇宙植民国家ではなく、地球上で脅威となる国家やテロ集団だ。従って、米国の軍事衛星の目的は、地球上における米国の外交や、米軍の行動を有利にすることにある。これは米軍に限ったことではなく、どの国でも軍事衛星は地球上の安全保障のための道具であって、派手な宇宙戦争を見据えているわけではない。 そこで本稿では、そもそも軍事衛星とはどのようなものであり、どのような課題を抱えているのか、日米を中心に解説していく。 まず軍事用途はさておき、人工衛星そのものの基本的な特徴を確認しよう。人工衛星の利点は、年単位の長期間にわたって高い場所を飛行し、地球上を広く見渡せることにある。また宇宙空間は領土や領空のような国家主権が及ばないため、平時においても他国上空を飛行できる点は、軍事衛星にとっては大きなメリットとなろう。 一方、航空機などと比べた場合のデメリットは地球上から宇宙へ出たり、地球上へ戻ったりするのに莫大(ばくだい)なコストがかかる点にある。このため軍事非軍事にかかわらず人工衛星の用途は、物体の運搬ではなく情報のやり取りに関するものが大半だ。安全保障においても情報が重要であることは言うまでもなく、一般に軍事衛星と呼ばれるもののほとんどは、外交・公安・軍事といった安全保障に役立つ情報の取得を目的としている。2016年5月、ダイバーシティ東京プラザの広場に立つ全長18メートルの実物大「RG1/1 RX-78-2ガンダムVer.G FT」 日本政府は宇宙開発基本計画を策定し、安全保障や科学、民間活動などさまざまな用途に役立つ人工衛星の整備を掲げている。この中で安全保障用途の色が濃い衛星を挙げていこう。 情報収集衛星(IGS)は、日本が保有する衛星の中でも特に安全保障用途に特化した衛星だ。 宇宙から地上を撮影する地球観測衛星は、安全保障目的で利用される場合は偵察衛星と呼ばれることが一般的だ。基本的には用途の違いであって機能に大きな差はないが、偵察衛星は非軍事衛星より高性能で、撮影した画像などは公開されないことが多い。 IGSは安全保障のほか、大規模災害の際も画像を収集する目的の衛星とされているが、撮影された画像は特定秘密に指定され公開は極めて限られている。災害時の国内外への画像公開は主に宇宙研究開発機構(JAXA)の衛星が担当しており、IGSは事実上安全保障専用の偵察衛星と言える。恐るべき米偵察衛星の精度 偵察衛星にはデジタルカメラのように光で撮影する光学衛星と、電波を反射させるレーダー衛星がある。光学衛星は1メートル以下の物体を見分けるほど精細な画像を撮影できることがメリットで、IGSの光学衛星は30センチ程度の物体を見分けられる性能(分解能)があるとされているが、米国の光学偵察衛星は20センチ未満とみられる。 レーダー衛星は、分解能こそ1メートル程度と光学衛星に劣るものの、雲を透視して地上を撮影できることや、夜間も撮影できることが大きなメリットだ。このため光学衛星で識別した目標の移動を追跡するといった使い方ができる。 IGSは光学衛星とレーダー衛星を2機ずつの計4機、予備機などを含めると計7機(8月31日現在)が運用中で、1日に地球上の一つの場所を光学で昼間2回、レーダーで昼夜2回ずつ撮影可能な体制となっている。今後は撮影間隔を短くするため、IGSの数を倍の8機に増加することが決まっている。 安全保障寄りの衛星はIGSのほか、測位衛星の準天頂衛星システム「みちびき」を内閣府で、防衛通信衛星「きらめき」を防衛省の民間資金活用による社会資本整備(PFI)事業で運用している。測位衛星は安全保障だけでなく民間も含めあらゆる活動の役に立つ衛星だが、代名詞ともなっている米国の衛星利用測位システム(GPS)は軍事用に開発されたもので、民間用途に開放された現在も空軍が運用しているなど、安全保障にも欠かせない衛星と言える。 宇宙基本計画ではIGS以外にも、将来の安全保障目的の衛星の検討が掲げられている。 早期警戒衛星はミサイル発射の火炎を宇宙から探知する衛星で、冷戦時代の目的は「敵の核ミサイル発射を探知し、こちらが全滅する前に核ミサイルを発射して報復すること」だった。このため核を保有しない日本には不要な衛星だったのだが、現在はイージス艦や地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などの弾道ミサイル防衛システムに第一報を発することも重要な目的となっている。 現在、自衛隊は弾道ミサイル発射の探知を米軍の早期警戒衛星に頼っているほか、国民に弾道ミサイルの危険を伝える全国瞬時警報システム(Jアラート)もこの情報を利用している。そこで宇宙基本計画は「早期警戒機能」の調査研究を掲げており、防衛省が開発したミサイル探知用の赤外線センサーをJAXAの地球観測衛星「だいち3号」に搭載して、2020年に技術実証を行う予定だ。 また、宇宙基本計画には記載がないが、防衛省の平成31年度概算要求では「宇宙領域における電磁波監視態勢の在り方に関する調査研究」が新規事業として掲載された。これは地球上の通信電波を傍受する電子情報収集(エリント)衛星を指すものと思われる。米国のものは直径約100メートルもある巨大なパラボラアンテナを備える衛星だ。日本の衛星「みちびき」の想像図(準天頂衛星システムウェブサイトより) 宇宙基本計画には特定の衛星開発だけではなく、総合的な施策である宇宙状況監視(SSA)や海洋状況把握(MDA)も掲げられている。 SSAは人工衛星や宇宙ごみ(スペースデブリ)がどのような軌道を飛行し、どんな形状をしているのかを観測して把握することを指す。現在はJAXAが観測を行っているが、加えて防衛省がSSA用レーダーを整備するなど、体制を強化している。また宇宙空間で他の衛星やデブリを観測するための専用衛星の検討も挙げられている。宇宙戦争、実はありえる? MDAは海上の船舶の位置や航行方向を宇宙から観測するもので、短い間隔で繰り返し観測する必要があるため既存衛星に加えて小型衛星も活用するなど、大量の観測データの集約や共有に主眼を置いている。 これらは事故防止など民間にとっても有益な情報となるが、他国の軍事衛星や艦船の活動を監視する安全保障目的の意味合いが強いと言えるだろう。 また、冒頭では困難だと説明した宇宙空間での戦闘だが、方法がないわけではない。米国や中国は地上から発射したミサイルで衛星を破壊する実験を行ったことがあるが、大量のスペースデブリが発生するため、実戦での使用は自国の衛星にとっても脅威となりかねない。しかし、衛星を粉砕するのではなく強力な電波やレーザーで衛星の機能を失わせたり、偽の命令信号を送って衛星を乗っ取るなどの方法であれば、スペースデブリを増加させずに衛星を無力化することができる。 また、低い軌道のスペースデブリは大気の抵抗で数日~数年程度で落下することが見込めるため、スペースデブリ発生のリスクを承知の上で攻撃することも、あり得ないことではない。このような脅威から人工衛星を守る方法は今後の課題となっている。 このように安全保障分野における人工衛星の役割は増加の一途をたどっている。トランプ政権が宇宙軍創設を発表したのも、航空機を重視する空軍から宇宙部門を分離することでより積極的な宇宙戦力整備を図ろうという意図がある。と同時に、多数の衛星が必要となるMDAでは日米の衛星情報を共有するなど、同盟国の負担にも期待している。 米国防総省の宇宙予算は日本円で2兆円以上もあり、軍事宇宙開発だけで日本のJAXAの10倍以上、日本の防衛費の半額に相当する。日本がどの程度の宇宙戦力を保有するのが妥当なのかは、慎重な検討が必要だ。早期警戒衛星や電子情報収集衛星は検討段階だが、もし衛星を開発し運用することになれば数千億円単位の予算が必要だろうし、宇宙基本計画や防衛省予算要求などでも衛星の開発までは明記していない。 収集した情報を分析するノウハウの取得や、人材の育成も大きな課題だ。画像に写っているものが何なのか、短時間で正確に分析するには職人的な技能を必要とする。 ディープラーニング(深層学習)など人工知能(AI)による自動処理も考えられるが、いずれにせよ費用と時間がかかる。衛星だけ整備しても情報分析に十分な予算を確保できなければ、衛星は役に立たない「張り子の虎」となるだろう。2018年8月、安倍晋三首相(右)に対し、スペースデブリに関する勉強会の申し入れを行う(左から)小泉進次郎ワーキングチーム座長と河村建夫宇宙・海洋開発特別委員長(春名中撮影) 地球上の防衛力と同様、宇宙でも日本単独で全てを賄うのに要する予算の獲得は不可能だろう。米国をはじめとする諸外国と衛星を持ち寄り、情報を交換するなど協力して課題に対応することが求められる。 また、安全保障専用とするのではなく民生用途にも活用することで費用対効果を改善したり、ベンチャー企業が開発する小型の衛星やロケット、データ利用事業を活用してコストを抑えるなど、宇宙ビジネスとの相乗効果にも期待が寄せられている。

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    戦闘機の技術をロケットにつなげた「宇宙開発の父」糸川英夫

     戦時中の日本の航空技術は、その後のロケット開発にも貢献した。そこには、GHQの「航空禁止令」に負けなかった男たちがいた。元航空エンジニアでノンフィクション作家の前間孝則氏がつづる。* * *  戦時中、国民に圧倒的な人気を誇っていたのは零戦ではなく、三菱重工と双璧をなしていた中島飛行機製の「一式戦闘機・隼」だった。その隼の空力計算を担った人物に、後に「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる糸川英夫がいた。 敗戦を迎えGHQから航空機の設計や研究を禁じられた「航空禁止令」が下されると中島飛行機の技術者たちは、散り散りになり廃業する者もいた。東大で無人誘導弾の研究をしていた糸川も「飛行機屋失業」で「陸に上がった河童」となったが、敗戦に打ちひしがれてはいなかった。 糸川は中島飛行機時代から「共振(フラッター)」なども専門としていた。そこで東大病院の医師から声を掛けられ、「脳波診断器」の研究に打ち込む。また、大学では「音響工学をやる」と宣言し、バイオリン製作なども行った。 主権回復後の昭和28年、米国の有人宇宙飛行計画を知った糸川は、かつての航空研究者などに呼びかけた。「ロケットをやろうじゃないか」 この呼びかけには、中島飛行機の流れをくむ富士精密工業のエンジン技術者・中川良一や戸田康明らも応じた。世間がジェットエンジン開発へ邁進する中、富士精密工業は一歩先のロケット研究を見据えていたのだった。ここにかつて最先端を追求し先進すぎる企業とまでいわれた旧中島飛行機の英知が再集結した。「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる糸川英夫 糸川らは昭和30年、日本初となるロケット(ペンシルロケット)の発射実験を成功させる。それを皮切りに、次々とロケットのシリーズを開発し、「ロケット博士」「日本の宇宙開発の父」と呼ばれることになった。 糸川をはじめとした日本の技術者たちは時代の常識を超え、突飛とも思える夢やアイディアをぶち上げていた。ときに糸川らは「大言壮語の山師か!」と言われつつも、目標に向かってまっしぐらに突き進んだ。その突破力が重苦しい占領下の時代であっても変わることはなかったからこそ、日本は航空宇宙技術の花を咲かすことができたのだ。関連記事■ 中国の戦闘機と日米の戦闘機どっちが強いのか専門家が分析■ 東芝開発の3D技術で「テレビと医療の技術融合」がスタート■ 中国宇宙開発 メンバー構成が共産党支配時代の終焉物語る?■ 宇宙開発利用関係予算に復興予算から22億円 内閣府の言い分■ 中国の宇宙開発加速、2031年以降に有人月面探査計画

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    UFO研究、矢追純一は正しかった

    矢追純一。この名前にピンと来た人もいるだろう。かつて、お茶の間を席巻したUFO(未確認飛行物体)ブームの火付け役である。先ごろ、米紙ニューヨーク・タイムズが米国防総省によるUFO調査の事実を報じ、にわかに彼のこれまでの研究を見直す人が増えているという。その矢追純一がついに、iRONNAに衝撃手記を寄せた。

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    【矢追純一衝撃手記】僕が40年追い続けたUFO極秘文書のすべて

    矢追純一(テレビプロデューサー、ジャーナリスト) 米国防総省が2007年から5年間にわたって、「UFOの調査をしていた」と報じられたことが話題になっているようだ。だが、今さらの感がぬぐえない。米国の公的機関がUFOを調査していることは、とうの昔に明らかにされているからだ。 1978年、米中央情報局(CIA)が市民団体に訴えられる事件が起こり、アメリカでは大きな話題になった。裁判は、「CIAがUFOに関する極秘文書を隠している」ことをつかんだ市民団体によって起こされた。 被告のCIAは、当初「UFOの存在は認めていない」ので、「極秘文書などはない」と主張していた。しかし、連邦裁判所は最終的に「CIA敗訴」の判決をくだしたのだ。CIAは、しぶしぶながら「ない」といっていたはずのUFO極秘文書を935ページにわたって提出した。※写真はイメージ(iStock) そこには、米軍の最重要軍事基地が次々にUFOに侵入され、手も足も出なかった事件が軍の報告書として多数記録されていたのだ。ミシガン州ワートスミスAFB(空軍基地)をはじめ、メイン州ローリング、モンタナ州マームストロムなど、何州にもわたって、空軍基地がUFOに上空侵犯された事件が数多く報告されていた。 僕が現地調査した中で、最もエキサイティングな事件をご紹介しよう。 ニューメキシコ州カートランド空軍基地の司令官、エドワード少佐が空軍に提出した報告書によると、「1980年8月8日深夜、マンザノ兵器庫エリアを警備中のラス・カーティス警備兵が、兵器庫の裏に強い光を発見、近づいてみると大きな円盤状の物体が着陸していた。応援を呼ぼうとしたが、なぜか無線が通じなかった。カーティス警備兵が、ショットガンを構えて、恐る恐る近づくと、物体は突然飛び上がり、アッという間に消え去ってしまった」とされている。 空軍の報告書にはさらにもう一つの文書が添付されていた。 「事件を詳しく調査するため、特別調査部のリチャード・ドウテイ少佐が、カ-ティス警備兵を厳しく尋問した結果、事実であることが判明した。ほかにも、同物体が上空を飛びまわるのを、3人以上の兵士が目撃していることがわかった。カーティス警備兵および、ドウテイ少佐が宣誓供述書にサインして、事実を認証した…」 カートランド空軍基地は、全米でも最も重要な軍事基地の一つで、基地内には空軍兵器研究所や核兵器研究所など、機密施設が散在している。その重要機密基地が、UFOに着陸までされて、何ら防衛も攻撃もできなかった。これは、アメリカの国家安全保障上、重大な問題であるはずだ。ウソやでっち上げの余地なし だが、相手がテクノロジー的に、あまりにも優れているため、手の施しようがない、というのが現実なのだ。 しかも、これらの文書はすべて、軍の正式報告書で、ウソやでっち上げの余地はない。この事件だけでも、米軍部がUFOの存在と脅威をハッキリと認識している証拠と言える。さらに、CIAは、この裁判で「実は、まだ、57件の極秘文書を隠している。が、公表すると、国家安全保障上、重大な問題が生じるので、差し控えたい…」と申し立てた。 実は、この裁判は「情報自由法」に基づいて起こされた。情報自由法というのは、「政府は、市民からの要請があれば、どのような、秘密文書でも公開しなくてはならない」という法律だった。しかし「もし、文書の内容が国家安全保障上、重大な支障をもたらす場合は、その限りではない」という免責条項がついていた。 CIAは、この条項に基づいて、非公開を主張したのだ。裁判官は、当然、その文書に眼を通したうえで「公開しなくてもよい」という判決を下した。とすると、そこに書かれていた内容とは、どんなものだったのだろうか。UFOに関して、「公表すると、アメリカの国家が揺らぐようなこと」とはいったい何だろうか…。 推測するしかないが、ロズウエルその他の地域で墜落したUFOが回収された後、現在どこに隠されているかと、その分析結果、乗っていた宇宙人の遺体の保管場所と鑑定結果、彼らがどこから来ているか、などに関する記述が考えられる。※写真はイメージ(iStock) 言い換えると、軍部は、それらの情報を握っていながら、隠しているということなのだ。このCIA裁判に触発されて、空軍、海軍、FBI(米連邦調査局)、DIA(国防情報部)、NSA(国家安全保障局)など、いろいろな機関から、UFOに関する報告書が続々と公表されてきた。  その中の一つにFBIの極秘テレタイプがある。FBI長官に宛てた、ワシントンのSAC(戦略空軍司令部)のガイ・ホッテル氏という情報将校からの緊急電報で、1950年3月22日付けになっている。 「現地調査をした、✖✖✖(名前が、墨で黒く塗り潰されている)によると、ニューメキシコ州に3機のUFOが墜落し、回収された。UFOは直径約50フィート(15メートル位)の金属製の円盤で、中央がドーム状に盛り上がっていた。内部には、それぞれ3体ずつの、人間に似た小さな生物の遺体があった。身長およそ3フィート(約90センチ)…キメの細かい金属繊維で出来た優美な服を着ていた。彼らは、テストパイロットが着るような、失神防止用のシートベルトのようなもので固定されていた。UFOが墜落した原因は不明だが、この地域の基地が一斉に、強力な軍用レーダーでUFOを追跡していたため、UFOの推進機関になんらかの故障が発生し、コントロールを失ったせいではないかと推測される。詳細は、後日…」 相手がFBI長官であること、差出人が戦略空軍司令部の情報将校であることなどを考えると、この内容が、単なるウワサ話やでっち上げなどである可能性は低い。とすると、米軍部は少なくとも、3機のUFOと、9人の宇宙人の遺体を確保していて、どこかに隠していることになる。詳細に記録された証言 また、在イラン米大使館付き武官のマッケンジー将軍から、米国防総省情報センター宛てに送られた極秘テレックスも公開された。だが、これも興味深い。「1976年9月20日未明、イランの首都テヘラン上空にUFOが出現。市民の通報により、現地空軍司令官も肉眼で確認、基地のレーダーでも捕捉された。直ちにF4ファントム戦闘機に緊急発進を指令、数分後、テヘランの西方75マイル上空でUFOを確認した旨、報告が入った。 パイロットによれば、UFOはボーイング707型給油機と同じくらいの巨大な円盤で強烈な光を発しているため細部は確認不能。半径25マイル以内に接近しようとするたびに、UFOは猛烈なスピードで遠ざかり、再び我々が接近するのを待って、また逃げるという不可解な行動をとっているとのこと。さらに、銃撃手がM9ミサイルの照準をUFOに合わせ、ロックしたところ、すべての電気系統が停電状態になり、ロックを外すと、元通りになるという奇怪な現象が起きているという。 ある時UFOから小さな光体が飛び出し、急速に接近してきた。攻撃されたと感じた銃撃手は、慌ててミサイルの引き金を引いたが、その途端、再び、すべての電気系統がブラックアウトし、弾丸は発射されなかった。パイロットはパニック状態に陥り、とっさにネガテイヴGダイブ(緊急降下回避措置)をとり、衝突を免れた。機体が下を向き、ミサイルの銃口がUFOから逸れたとたん、電気系統は元通りに復活した。その後、小さな光体はUターンして、もとの巨大なUFOの中に戻ってしまった。F4ファントムの燃料切れが近づいたため、基地へ帰投しようとしたが、パイロットはUFOの強烈な光のため、一時的な失明状態になり、基地の滑走路が肉眼で確認できなかった。 そこで、司令部から、しばらく上空で旋回待機するよう指令が出された。UFOは、このF4ファントムを見守るように、すぐ後ろについて、無事着陸するまで、一緒に旋回飛行を続けた。この間、地上の将兵たちによって、肉眼でUFOが確認され、基地および、機上のレーダーによっても確認された」 非常に長いテレックスだが、UFOの動きと迎撃した戦闘機の乗組員たちの行動が詳細にわかる。電文はさらに続く。 「UFOは、F4ファントムの着陸を見届けると、遠ざかりはじめた。ただちに、別のファントムが発進、追跡したところ、UFOから、再び小さな光体が飛び出し、今度は地上に向かって激突せんばかりのスピードで落下していった。だが、光体は、激闘する代わりにふわりと着陸し、半径1・5マイルに亘って強烈な光を放射した。パイロットは、さらに近づいて状況を確認しようとしたが、接近するたびに機上の全計器が異常を起こし、無線も交信不能になるため、危険を感じて、いったん基地へ帰投することにした。翌朝、その地点へ軍の調査隊がヘリコプターで向かった。その報告によると、現地付近の住民は、昨夜UFOらしい怪しい光と『ビービー』という不気味な音を耳にしたという。着陸地点にもっとも近いところには、一軒の小屋があり、一人の老人がいた。現場付近の放射能検査をしたところ…」 残念ながら、この後の電文が削除されてしまっている。ここには、事件の様子が非常に詳細に述べられている。特にUFOの行動が非常に興味深い。ベールに包まれた真相 我々の最新鋭ジェット戦闘機を子供のように扱い、からかっているかと思えば、基地へ帰ろうとする戦闘機をエスコートするかのように、ついてきて、無事を見守っている。翌日のUFOの行動は謎だが、この後、なにが書かれていたのかも気になる。 僕は、この事件を分析したDIA(国防情報局)の情報分析担当官、ローランド・エヴァンス少佐にインタビューしていた。 少佐は「このテレックスは第一級の、信頼がおけるUFOに関する極秘文書です。まず第一に、軍の最高官である、将軍からのものであること。次に基地の将兵たちが肉眼で確認し、基地と機上のレーダーが同時に確認していることです」と、言っている。 これらの公開された公文書には、トップシークレットなどの記述と、情報自由法にもとづいて「✖✖✖の部署から公表された」と書かれた日付入りの印が押されている。従って、密かに盗み出されたものでも、ニセものでもない。 このように、数多くの事実が、公文書によって明らかにされているにもかかわらず、今さら改めて、「UFOの調査をしている」と公表する意図はどこにあるのか。 これも推測の域を出ないが、トランプ大統領の政権でのゴタゴタを国外、つまり、宇宙のUFOに眼を外らすことでゴマかすという、よくある政治的手法なのか。それとも何十億円もかかったという莫大な費用に対する言い訳の一環なのか、わからない。矢追純一氏 軍事機密というベールに包まれた真相は、通常、我々庶民のところには、絶対と言っていいほど漏れてくることがないのだ。世間では、僕のことをUFO好きとか、宇宙人好きとか言っている人もいる。でも、正直いってそんなことはどうでもよい話。そんなことより、僕はジャーナリストとして、この証言をテレビの「特番」というかたちで何度も暴露しただけなのだが…。

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    懐疑論者でさえ興奮した米軍撮影「UFO映像」の衝撃

    寺薗淳也(会津大准教授、「月探査情報ステーション」編集長) 2017年12月、米軍が極秘に未確認飛行物体(UFO)の調査を行っているということが明らかになった。最初に報道した米紙ニューヨーク・タイムズによると、調査は07年から5年間にわたって行われたという。ネバダ州出身のハリー・リード元上院議員の要請によってスタートしたこの計画は、ある意味では当然だが、完全な機密プロジェクトとして進行した。 報道とともに公開された資料映像には、上空を高速で飛行するUFOと思われる物体をパイロットが追跡し、驚嘆の声を上げる映像などが含まれていて、大変衝撃的である。また、物的証拠が保管されているとの情報もある。また、このプロジェクトは12年に終了したとされているものの、実は現在でも継続中なのではないかという情報も出てきている。 かつてUFOというものをどっぷりと信じた高校、大学時代を過ごし、いまはむしろ懐疑派(スケプティクス)に回っている私としては、この報道に触れ、久々に少年時代のUFO熱を呼び覚まされたような興奮を覚えた。なんといっても「米軍が」「極秘に」「UFOを」研究していたのである。まるで映画『インデペンデンス・デイ』のようなプロットではないか。 ところでこの報道が出るまで、最近は意外とUFOについて大手のメディアで語られることが少なくなっていた。 UFOをどっぷり信じた少年のころは、テレビでも盛んにUFO特番が放送されていて、もちろんそれらが情報源だった。でも、最近はそういった番組もめっきり減り、特に若い人はひょっとすると「そもそもUFOってなに?」「UFOってどう読むの?」という人も多いかもしれない。例えば、読み方についてさらっと触れておくと、日本では「ユーフォー」が一般的だが、欧米では「ユーエフオー」を使うことがほとんどである。ケネス・アーノルドが目撃したと主張する「空飛ぶ円盤」について特集した米雑誌(Wikimedia Commons) そこで、この機に少しUFOについておさらいをしておきたい。 もちろん、昔からUFOの目撃例はあった。しかし、近代においてUFOが注目されるきっかけになったのは、ほぼ70年前の1947年に起きたある事件にさかのぼる。 この年の6月24日、米国の実業家、ケネス・アーノルドが米ワシントン州上空を飛行する9つの不思議な物体を目撃したと語ったことから、現代のUFOの「物語」が始まる。アーノルド自身はこの物体の飛び方を「水面を跳ねる皿のような」、つまり水切り石のイメージと表現した。ところが、報道が増えるに連れてそれが誤って伝わり、物体の形がまるで皿であるかのように広まってしまった。これが今でいう「空飛ぶ円盤」の語源ともなってしまっている。 アーノルド自身は実業家であり、地元の名士でもあり、政財界とも広い交友関係があった。また優れたパイロットでもあり、そのような人物が嘘や間違いを公言するということは考えられなかった。この一件がまさに、現代のUFO物語の発端となるのである。「米政府が隠している」疑い始めた大衆 その後、米国各地でUFOの目撃談が相次ぐようになる。当時は冷戦がまさに起ころうとしつつあるときだ。第2次世界大戦後、脅威となっているのは旧ソ連であった。UFOは宇宙人の乗り物としてではなく、旧ソ連、あるいはひょっとしたらいるかもしれないナチスの残党による乗り物としても捉えられたのである。 高まる脅威論を受けて、米空軍はUFOの調査に乗り出す。48年にはUFO調査のための機関「プロジェクト・サイン」が設置された。その後「プロジェクト・グラッジ」と改名、52年には「プロジェクト・ブルーブック」として再編され、69年まで調査が行われた。 しかし、最終的には「アメリカ合衆国の脅威となる証拠はみつからない」として、プロジェクトは解散することになった。一方ではこのような経緯が「政府が何かを隠している証左」として捉える向きが多かったことも確かである。 UFOが宇宙人と本格的に結び付けられるようになった大きな理由としては、50年代に活躍した作家、ドナルド・キーホーの活躍が挙げられる。彼が1949年に出版した本『空飛ぶ円盤は実在する』では、空飛ぶ円盤=UFOは地球外からやってきた生命体、つまり宇宙人の乗り物であり、政府はそれを隠しているという仮説を提唱した。つまり、今に続くUFO物語のプロットがこの本で完成されていたのである。キーホーはその後も何冊ものUFO関係の本を著し、米国の大衆に「UFO=宇宙人」の構図を植え付けていく。 61年には「ヒル夫妻誘拐事件」が発生する。休暇先のカナダから自宅があるニューハンプシャー州に戻るため車を運転していたベティとバーニーのヒル夫妻は深夜、奇妙なものを目撃する。自分たちの車を追いかけてくる光体である。やがてその物体は車の前に回りこんだと思うと、彼らの記憶は途絶え、気がついたらその地点から60キロも離れた場所にいたのである。彼らが催眠術師によって取り戻した記憶によると、そのとき、彼らはなんと宇宙人に誘拐され、UFOの中で身体検査を受けていたというのである。(iStock) この事件によって、UFOに対する米国人の認識は一変した。それまでは単に空を飛び回る不思議な物体であったものが、そこに登場する宇宙人たちが人間に対して、身体検査であれメッセージの伝達であれ、何らかの働きかけを行う存在へとランクアップしたのである。 米国ではこれ以降「宇宙人に誘拐され、身体検査を受けた」と主張する人々が激増することになる。さらにそれは、米政府がパニックを恐れ、そのような宇宙人の地球への訪問を隠しているという陰謀論へと発展していくのである。ブーム最高潮に起きた「事件」米第34代大統領、ドワイト・アイゼンハワー(Wikimedia Commons) 70年代から80年代にかけては、この陰謀論の完成の時期ともいえる。映画の世界でも取り上げられ、『未知との遭遇』や『E.T.』といった大ヒット映画により、UFOは私たちにとって本当に身近な存在となった。テレビ番組でも盛んに取り上げられるようになり、まさにUFOブームといってもよい状況が訪れる。その最高潮が80年代後半に起きた「マジェスティック・トゥエルブ(MJ-12)事件」であろう。 あるテレビ番組制作者のもとに匿名で届けられた文書に、MJ-12と称するグループについての記述があったことから、この事件は始まる。その文書は52年、次期大統領に選出されたアイゼンハワー氏にUFOに関する情報を申し送りするために書かれたトップシークレットだった。12人からなる最高機密グループ(MJ-12)の存在や、表沙汰にされていない数多くのUFO墜落事件、そしてその際の宇宙人回収などの経緯が書かれていた。米国中をセンセーションに巻き込んだMJ-12文書であったが、最終的にニセ文書と断定され、急速に収束していく。 そして90年代に入り、あれほど世間を賑(にぎ)わせていたUFOブームは次第に、しかし着実に下火になっていくのである。その理由はいくつか考えられる。一つは冷戦の終結だろう。ソ連という敵がいなくなったことで軍事予算も縮小され、UFOと誤認されるような新型航空機の開発も少なくなった。 UFOについての情報があまりにセンセーショナルになりすぎたということもあるだろう。前述のMJ-12の内容があまりに衝撃的だった割に、ニセ文書であることがすぐに明らかになったことで、いってみれば世間が期待する「UFOバブル」があっという間に弾けてしまったということもあると思われる。また、「宇宙人は間もなく姿を現す」「もう少しで米政府はUFOに関する文書を全面公開する」といった噂が飛び交っては結局そうならなかったことも、人々を失望させる元となっていった。 インターネットの普及やコンピューター技術の急激な向上も、UFOブームの沈静化に一役買ってしまったと思われる。ネットにより人々が多くの情報を得るようになると、テレビなどで放映されていた情報の「真の姿」が明らかになり、多くの人が本当のことを知るようになってしまった。衝撃的なUFO写真や映像なども、実はコンピューターで加工したものであるというケースが多数存在し、そのような解析をコンピューターで行う技術も急速に発展した。その中で、多くの人がかつてなら信じたであろうUFO関連の写真や映像も、「またどうせニセモノだろう」と疎んじられるようになっていった。 また、50~70年代に盛んにUFOや宇宙人について喧伝(けんでん)していた人たちが高齢化し、一線から退いていったことも大きいだろう。かくして、21世紀に入ると、あれほど盛り上がっていたUFOや宇宙人についての話はすっかりと下火になってしまったのである。ブームに投げ込まれた今回の報道 そんな中で出てきた今回のUFO文書公開が、なぜ多くの人の関心を集めるようになったのだろうか。一つの理由は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に代表される、ネット世界の関心の多様化ではないだろうか。 筆者の感覚では、2010年くらいから再びUFOへの関心が高まってきているように思える。もちろん往時ほどの高さはないようであるが、それでもUFOが話題に出ることがひところよりは増えてきていることを感じる。そのような話題が出る場所の多くはSNSだ。例えば映像がユーチューブに公開されたり、話題がツイッターで共有されたりしていく。 SNSは、同じような趣向を持っている人たちが話題を共有しあうとともに交流することができる絶好のプラットホームである。そして、そのような人たちとの交流を盛んに続ける一方で、他の話題には振り向かなくなる傾向が強まるにつれ、UFOや宇宙人の訪問などをかたくなに信じる人たちが再び増えてきているのではないだろうか。(iStock) また、SNSもそうだが、ネットニュースメディアの普及により、「大手の新聞社やテレビ局が伝えていない」情報が手に届きやすくなった。そういった情報の中にUFOや宇宙人に関する情報があれば、それがやはりSNSで共有され、信じる人が多くなっていく。さらに、主流メディアが伝えていないことを逆に捉え、実は陰謀論的な圧力が加わっているのではないかという考え方に至るケースもある。 そのような、いってみれば水面下でじわじわと広がっているようなUFO「ブーム」の中に、まるで投げ込むように出てきたのが今回の報道だったわけである。UFO、宇宙人、政府の隠蔽(いんぺい)というプロットにちょうどぴったり当てはまる今回の内容は、そのようなことを信じるコミュニティーにあっという間に受け入れられたというわけである。 では、今回ニューヨーク・タイムズが報じた内容は本当にUFOなのだろうか。その前に、ひとつ整理しておく必要がある。ここまでお読みになった皆さんなら気づいていると思うが、「UFO=宇宙人の乗り物」ではない、という点に注意する必要がある。「陰謀論」の落とし穴 UFOというのはあくまで「未確認」、つまりその正体がわかっていない「飛行物体」である。それが宇宙人の乗り物と正体がわかってしまえば、もはやUFOとは呼べない。宇宙船とでも呼ばなければならなくなるわけである。ニューヨーク・タイムズの報道で出ていた内容はあくまでUFOであり、その正体はいまだ不明である。 ただ、過去のUFO関連の映像や画像とされるものについては、詳細な解析の結果、鳥や飛行機、星などの見間違いなどがほとんどを占めるということがわかっている。残念ながら、宇宙人の乗り物であると断定された目撃例は現在のところ1件もないのである。これまで70年以上私たちが騒いできたにもかかわらず、である。 さらにはニセの画像や映像を作るということも多く起きている。その目的は、注目されたいというものから、企業やグループのプロモーションまで枚挙にいとまがない。もちろん、「これはニセモノです」と最初からうたっているならまだいいのだが、そうではないフェイク画像・映像もネット上に多数存在する。また、当初はちゃんとネタばらしをしているにもかかわらず、それがネット上を伝わっていくうちに情報が変わったりなくなったりすることで、いつの間にか「衝撃のUFO画像(映像)」になってしまうケースも多い。(iStock) 私はUFOや宇宙人についてのテレビ番組や本を読み、その知識にどっぷり漬かって、その存在を信じていた時期があった。しかしあるとき、それが陰謀論という流れにハマっていることに気づいて、もっと大局的な視点から眺めなければいけないと反省したのである。 陰謀論は、わからないものごとへの説明をものすごく簡略化してしまい、人間に安心感を与える。一方で、物事の真の姿を見つめるという姿勢を奪ってしまうものだ。空にみえる不思議な物体を「あれは宇宙人の乗り物だよ」と説明すれば、多くの人はそれで納得して安心してしまうだろうが、それが真実なのかどうかは置き去りにされてしまう。そのような姿勢を続けていけば、ものごとの真の姿を見るよりも、わからないがゆえに不安な自分に安心感を与えることを優先してしまいがちになる。そのような姿勢の先には、真実に基づく議論ではなく、信じたいものを信じてそれ以外をかたくなに拒否する、不幸な道が待っているだけである。 今回話題になったUFOが本当に宇宙人のものなのかどうかと問われれば、私としては「調査はしなければならないとは思うが、おそらく(またもや)違うだろう」と答えるだろう。現在も公開されたビデオを元にいろいろな人が解析を行っているので、遠からずその結果が出てくることだろう。 しかし、短いビデオだけでは解析にも限界がある。結局はウヤムヤなまま、長いUFOの歴史に「解明不能」というファイルがまた一つ増えるだけかもしれない。それでも私自身は、いつかある日、本物の「UFO」と出会えることを心待ちにしている。私が世の中のUFO情報を懐疑的にみているのは、そのいつの日かのためである。

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    超低予算の極秘調査でアメリカが見せたUFO解明への本気度

    。日本語なら「先端航空宇宙脅威同定計画」とでも言うべきか。舌をかみそうな名前だが、要するに、人類より科学技術が進んだ宇宙人が空から地球にやってきていて、それが脅威なのかどうかを調べるプロジェクトということらしい。 この計画は2007年から2012年まで続き、今でも別の仕事を兼務する係官が宇宙人の脅威について調べているのだという。つまり、独立の予算計上はやめたが、ひっそりと調査は続行中ということらしい。 AATIPは、5年にわたり、毎年約20億円の予算を使って遂行された。大金といえば大金だが、そもそも米国の国防予算は60兆円以上なので、総額からすれば微々たるものだとも言える。それにしても、なぜUFO(未確認飛行物体)探しに米政府が公的資金を注ぎ込んでいたのか。 いきなり脱線するが、年末に『バトルシップ』というSFアクション映画を見た。NASA(米航空宇宙局)が宇宙人と交信しようと、ゴルディロックスゾーン(生命生存可能領域)にある系外惑星に強い電波を送ったら、彼らは地球にやってきた。だが、NASA上層部の予想とは逆に、彼らは敵対的で、どうやら地球を侵略しに来たらしい。地球の科学技術をはるかにしのぐバトルシップを持つ彼らに立ち向かうのは…という痛快アクションで、大いに楽しめた。 だが、何光年も何十光年も先から「すぐ」にやって来られるということは、少なくともアインシュタインの重力理論を超える理論を知っていて、宇宙のトンネル「ワームホール」を自在に制御することができることを意味する。人類が同じ科学技術レベルに達するのには、何千年もかかることだろう。 映画ではうまく敵を撃退したが、彼らがすぐに地球にやって来られるという時点で、本当は地球人になすすべがない。映画では宇宙人と地球人の関係をコロンブスとアメリカ先住民の関係に例えていたが、発達した宇宙文明が未開の地球文明をどう扱うかも、実際のところ、皆目見当がつかない。撤去を免れることが決まった米ニューヨーク市にある探検家コロンブスの像(UPI=共同) だから、もしかしたら彼らはすでに地球を訪れているかもしれない。しかも、巧みに「超ステルス技術」を駆使し、人類の観測網に引っかからない可能性は否定できない。来ているのは軍人ではなく、科学者だったり、場合によっては観光客かもしれないが。 そんな中、2017年10月19日に「オウムアムア」という小天体を天文学者たちが発見した。ハワイ語で「遠方からの最初の使者」という意味の小惑星は、長さ400メートルの「ロケット」のような形をしていたため、世界中のUFOファンが狂喜乱舞した。通常の小天体は多かれ少なかれ楕円(だえん)軌道を描いている。その楕円が細長くなることはあっても、楕円は楕円なので、太陽系内にとどまっている。20億円という「調査費」の意味 ところが、オウムアムアの軌道を計算してみたところ、そもそも太陽系の脱出速度を超えていて、開いた双曲軌道になるらしい。それはつまり、太陽系の「外」から飛来したことを意味する。オウムアムアは、太陽系外の「上」から飛来し、太陽系の「レコード盤」の少し下まで行ってから、太陽の重力に引き戻され、「し」の字の軌道を描いて、再び太陽系の上へと飛び去っていった。まるで、NASAやJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙探査船が天体の重力を利用して軌道を変える「スイングバイ」ではないか。UFOファンでなくとも、どこかの宇宙人が飛ばした探査船ではないかと疑いたくなる。太陽系の外から飛んできた小惑星「オウムアムア」の想像図(欧州南天天文台提供・共同) 天文学者たちは、オウムアムアの周囲が金属ではなく30センチほどの炭素の膜で覆われているから宇宙船ではないと考えているようだ。確かに地球の宇宙船は金属で覆われているが、はるかに文明の発達した宇宙人が、宇宙船の外壁に金属ではなく炭素を使っていても不思議ではない。カムフラージュの可能性だって否定できないだろう。などと、いつのまにか私もUFOファンみたいな発言をしかけているが、未確認飛行物体という意味では、オウムアムアだって立派なUFOなのかもしれない。 話を元に戻そう。私は、AATIPが極めて合理的な計画だと考えている。宇宙から観光客やロケット型の探査船がやってきているだけなら調査の必要もない。だからこそ、映画『バトルシップ』の冒頭シーンに出てくる「コロンブスとアメリカ先住民」というせりふは、実に意味深長だ。地球人が科学技術(=軍事力)で劣るのは明らかだから、その脅威がどれくらいかを調査しておくに越したことはない。全面戦争になったら地球は壊滅するだろうが、彼らとて何十光年も旅してくるにはコストが半端なく、おいそれと大軍団を送りこむことはできないはず。だとしたら、UFO情報をじっくり調査して、その脅威を同定し、局地戦で勝ち抜くための作戦を立てておいたほうが良いに決まっている。 備えあれば憂い無し、取りあえずやっておこう…という思惑。おそらく、それが60兆円のうちの20億円という「調査費」の意味なのだ。 個人的に、私はUFOが地球にまだやってきていないと考えてはいる。でも、オウムアムアが宇宙船の可能性は十分にあると思うし、宇宙に無数にあるゴルディロックスゾーンには、われわれみたいな知的生命体がゴロゴロしていると信じている。 米国は合理的な予算で未知なる脅威を調査していたわけだが、日本はどうだろう。内閣調査室が実際にUFOや宇宙人の脅威に国家予算を注ぎ込んで準備しているだろうか。おそらくないだろう。 『バトルシップ』では、米国と日本の軍人が協力して敵対的宇宙人の脅威に立ち向かったが、万が一のときは米国だけが戦うことになるのかもしれない。

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    人類はなぜUFOの正体を解明できないのか

    学特任教授) 米国防総省がUFOの調査をしていた事実が明らかになり、話題になっているが、これは「現代科学の低迷」を示す典型的なニュースである。 もともと、人間の五感には「触覚(圧力)、臭覚(化学反応=科学ポテンシャル)、視覚(電磁波)、聴覚(音波、粗密波)、味覚(化学反応)の五つがあって、私たちが「ある」と認めるのはこの五つの情報しかない。このうち、電磁波を除く他の物理的影響や化学反応は古くから発見されているが、電磁波は19世紀に見つかったもので、まだ150年ほどしかたっていない。 だが、人類というのは「地球上」に、しかも「温度、気圧などある特定の条件下」で発生した生物であり、その生物が感知できる情報手段しかこの宇宙に存在しない、とするのは根拠もないし、あまりに飛躍がある。つまり、人間の五感という伝達手段以外の観測方法が宇宙のどこかに必ずあると考える方が科学的である。 また、別の視点から整理すると、UFO以外にも、多細胞生物の細胞間伝達、生物同士のテレパシー、現代科学で説明が困難な飛行物体という超自然現象や、人間が山に入ったときに感じる森林浴と呼ばれる心理的緩和効果、集団的生物に顕著にみられる「集団の中の個の存在」の認識など、比較的観測が容易な分野でさえ、作用と効果の関係が明らかになっていないものは多くある。iStock これらは「現代の科学で解明されていない」ということで「超自然現象」と言われているが、「超自然」という言葉は「すでに人間はすべての自然現象を解明した」という傲慢(ごうまん)な前提がある。 一方、1950年以後の科学は原理的発見が少なく、情報技術、遺伝子技術にみられるように「改良型科学の発展」が主たるものになっている。ダイオードやトランジスタ、DNAなどの画期的原理発明はいずれも1950年代までに行われていて、それ以後すでに60年がたつのに科学的に新しい原理の発見はほとんど見られない。 材料分野のような実学的領域においても、金属材料では20世紀初頭のアルミニウムの時効硬化の発見、プラスチック材料では1970年代の液晶プラスチックが新材料発見としては最終的なものとされている。 このような基礎科学の停滞が、経済や社会の進歩を遅らせていることは間違いない。人間は科学の恩恵を受けすぎた キュリー夫人の原子核の発見、アインシュタイン、ポーリングなどが活躍した20世紀の初頭、電磁波、量子力学、原子力、通信などの大規模な発見が続き、それが後に自動車、航空機、重工業、家電製品、情報産業へと発展したことを考えると、現代社会の停滞は「基礎科学の巨人」が出現しないことと密接に関係することもまた事実である。 では、このような状況をどう考えるか。 一つは人間はすでに科学の原理をすべて発見して、もう発見するものがないという判断、もう一つは、科学の基礎的研究が少なくなり、お金に関係する技術の方に優れた研究者が集中しているという二つの解釈がある。 どちらが本当であるかは、今後の科学の進歩が示すことであり、ここで判断できることではない。しかし、UFOの研究を米国防総省の調査として行うこと自体が、基礎科学の進歩を阻害するものであることは間違いない。 なぜなら「新しい知覚手段、未知の通信手段」は、すでに観測されている「不思議な現象」から、その存在は間違いないにもかかわらず、「国防の観点ですぐ役に立たないから」という理由で、細胞間伝達にもUFO(通常の手段では科学的原理に反すると考えられる)の存在の研究にも、研究費が支出されないからである。iStock 今から100年ほど前、オランダに「極低温にすると電気抵抗がなくなるのではないか」という奇想天外なことを考えたオンネスという学者がいた。その学者に膨大な研究費を付けたからこそ、実験によって「超電導現象」という新しい現象が発見された。それまでの電気伝導度に関するキャベンディッシュの発見、オームの法則を覆すまったく意外な結果だったが、今では多くの産業で活用されている。 この超電導現象の着想に比べれば、人類の知らない飛行物体が存在する可能性は、はるかに高い。ただ、この100年間に人間は科学の恩恵を受けすぎて、科学の可能性や夢を失ってしまった。スマホから家電製品に至るまで、私たちの人生は科学の成果で覆われ、それに圧倒され、新しい科学に期待しなくなった。「どこでもドア」の可能性 もし、UFOの調査が米国防総省でなく、世界で飛行物体に興味がある学者が行ったら、その成果は単に政治的なものではなく、広く人類の福利に貢献することになるだろう。 今回のニュースは、日本で猛威を振るい、日本の衰退の原因を作っている「役に立つ科学」「お金のもうかる研究」の延長線上にあり、UFOの存在以前の大きな問題を孕(はら)んでいる。 ところで、人間の知覚し得る情報伝達手段(電波、音波、重力波、引力、逐次化学反応など)の範囲内でもUFOが存在する可能性はある。現在の宇宙は138億年前にできたとされているが、宇宙は私たちが知覚し得るもの一つ(ユニバース)ではなく、多数(マルチバース)存在するのはすでに物理学でも有力である。ただ、すでに述べたように現在の人間の知覚手段では感知できない。しかし、同一空間に、異なった宇宙の異なる空間が同居できるというマルチバースの特徴から、知覚手段を研究することによって、UFOもあるいはドラえもんの漫画に出てくる「どこでもドア」も発見される可能性がある。iStock もし異なる宇宙の観測手段が分かれば、旅行に行くときに「どこでもドア」を開けてそこに荷物を預けて手ぶらで旅行をし、必要な時に「どこでもドア」を開けて必要なものを取り出すことができるようになるだろう。「超自然現象」の基礎的研究は、やがてかつての超電導現象の発見と同様の大きな新しい事実を私たちの目の前に示し、それが次の時代を開くことになると考えられる。 1000年以上前に「源氏物語」を書いた紫式部にスマホを見せて、「これで光源氏に電話したら」と言ったら、彼女は「あなたは鬼?」といぶかるだろう。私たちが今、当然と思っているこの世界はまだまだ狭く、本当の世界のごく一部であると知ることが、今回のニュースの意義ではないかと思う。

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    元民主議員「日本は異星人問題に向き合う姿勢が欠けている」

    ような状況があるのかどうか、ということを確認しておきたかった。日本の場合、超能力や異星人などの問題に科学的に真摯に向き合う姿勢が欠けている」 と大真面目に答えた。 まさか夏の参院選の最大の争点は「UFOの襲来に備えるための憲法改正」――なんてことにはならないよね。関連記事■ 皮肉好き外務官僚 前原氏に「お子様ランチ」のあだ名つける■ 隠し子発覚のミヤネ屋・宮根誠司氏 「子供はどちらも宝」■ 元防衛官僚が安倍政権の安全保障政策の問題点について語る本■ 紅白出場危機の小林幸子の衣装「メガツリー」構想があった■ 球場デート発覚のアンガールズ山根 彼女の両親にも挨拶済み

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    宇宙人との遭遇体験で米男性「数百人の赤ん坊がいる」と証言

     宇宙人やUFOとの関連をにおわせる事件は世界各地で報告されてきた。その中には宇宙人と遭遇したというばかりではなく、性交渉までしたという報告も含まれる。「異星人は、地球人を性的対象としてみている」──こう指摘する専門家まで存在するのだ。iStock ディスカバリーチャンネルの番組『UFO 遭遇と交信』の中では、初めて宇宙人と性的な交渉を持ったとされるアメリカ人のヒル夫妻が、ある夜の奇妙な体験を告白している。 1961年、ニューハンプシャー州。ヒル夫妻は夜更けの国道でUFOに遭遇し、気を失った。意識が戻ると、UFOを目撃した地点より50キロ以上も南にいたという。しかも妻ベティの服が裂け、いたるところから肌が露出していた。 後日、夫妻は精神科医の催眠療法を受け、空白の記憶を取り戻した。その結果、恐るべき事実が明らかになったという。 夫妻は無理やりUFOに連れ込まれた。皮膚をこすり取られ、爪や髪の毛を採取されるなど、いくつもの“検査”を受けた上で、最後には記憶を消されていた、という。宇宙人たちは夫バーニーの生殖器に興味を持ち、ベティは服を脱がされた。催眠療法中の映像で、彼女はその様子をこう語っている。「彼らは私の肌に興味を持った様子で外観を観察し、体内を調べ始めたの。医者らしき異星人が来て、おへそに注射されたわ。みたことのない太い針だった。彼が顔の前で手を振ると痛みが消えたの」 宇宙人との性的な体験を語るのは夫妻だけではない。ある男性は、1960年代にUFOで土星付近へと連れていかれ、「異星人とセックスをした」と語る。「船内の霧がかかった部屋に通されると、いつのまにか僕は全裸になっていた。そして、胸が大きく全身ヒョウ柄の女性のなすがままだった」 現在進行形で性交渉を重ねていると、告白する男性もいる。その米国人男性が長く関係を続けているという“クレセント”は、ロズウェル事件の宇宙人のように身体の構造は人間とよく似ているが、頭髪が生えているという。「“クレセント”とは、ロマンティックな時間を過ごしている。いい身体をしているんだ。彼女は寝室へくると毛布をはいで私の上に乗り、私が絶頂に達すると毛布をかけ帰っていく。前戯はないよ」 そして、宇宙人との間にはなんと、子どもまでいると証言する。「彼らに案内された部屋にはおそらく、数百人の赤ん坊が集められていたと思う。一体誰の子かときくと、私を指さしたんだ」 番組では、宇宙人の子をお腹に宿したと語る女性も紹介されている。流産を装って赤ちゃんを奪われたが、現在もUFOですくすく育っていると彼女は信じている。「育児のため、何度もUFOに誘拐されたわ。床から円柱が出ていて、手を乗せると私のエネルギーが吸い取られるの。それは愛情として、赤ちゃんに注がれるのよ」 彼らの証言はにわかには信じがたい。果たしてリアルなのか、ファンタジーなのか。真相は、謎に包まれている──。関連記事■ 円谷プロの怪獣2500体超から厳選 怪獣知識を試す特撮クイズ■ ウルトラマンで善悪を説く教師 宇宙人や怪獣の存在意義を語る■ 山姥メイク娘とH男「宇宙人抱いてるみたい」と途中戦意喪失■ 中国 今年中に初の女性宇宙飛行士による有人宇宙飛行計画中■ 北海道の中学教師 「ジャミラ」を題材に人間の善悪を説明する

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    共同通信「松吉」署名ツイートと山中教授「印象操作」の根深い病理

    る東京・港区の汐留メディアタワー=2009年5月撮影 共同通信が1月25日に配信し、当初は「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」と題した記事が問題の「印象操作」である。ネット世界でもこの報道は批判の対象として論じられ、また一部の報道でも「印象操作」とするものがあった。なぜこの記事が「印象操作」かを、以下で簡単に説明したい。 京大iPS細胞研究所に所属する助教が作成し、専門雑誌に掲載された論文に不正が発見された。当初は外部からの通報から始まり、委員会を立ち上げて調査し、その不正を確かめた。研究所の所長である山中氏は記者会見の席上で謝罪したが、それは社会通念上からは妥当だったろう。 現在、大学を含む研究機関では研究者が不正を行わないことを厳しく求める研究者倫理の研修も行われている。ただし、単に研究者倫理だけを声高に求めても、研究者側に動機付けがないと問題の解消にはならない。例えば、期限付きの研究職の採用だと、その期限内で一定の研究成果を厳しく求められているケースが多いだろう。もし、その成果のハードルが研究環境や研究者の能力を超えるものであったならば、今回のような不正行為が生まれる可能性がある。今回の不正がどのような動機付けで行われたかは不明だが、論文不正は研究者倫理だけの問題ではない。 記者会見では、山中所長の責任や辞任の可能性について質問する記者がいて、そのことも報道で広まっていた。その中で今回の共同通信の報道があった。だが、筆者は記事を読んだときに、いったい何が問題なのかさっぱりわからなかった。 「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」の「科学誌」とはその不正論文が掲載された専門雑誌のことを指す。記事からの印象では、あたかも山中氏がその雑誌の創刊にかかわったことで「何か問題をはらむ」かのような印象をもたらすものだった。このような印象に誘導された人は筆者だけではない。多くの人たちが同様の印象を持った。 もちろん専門雑誌の創刊にかかわることと、今回の不正論文がその専門雑誌に掲載されたことには、全く関係がない。特に不正にかかわる因果関係もなんらない。だが、記事はそのような注記もなく、なにか問題があるかのように「匂わせた」のである。まさに「印象操作」といっていいだろう。「謝ったら死ぬ病」に感染したマスコミ この「印象操作」はネットを中心にして専門家や識者、そして一般の人たちから猛烈な批判を浴びた。一部報道によれば、共同通信側が「新たな要素を加えて記事を差し替えました。編集上、必要と判断しました」とのことで、ネット配信の記事のURLは同じまま、内容を大幅に書き換えた。この行為はおそらく多くの読者に不信を引き起こしただろう。また共同通信の配信を利用している地方紙では「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」と見出しがそのままに大きく取り上げられた。ネット上の批判を知らない人たちにとって「印象操作」は放置されたままである。 だが、共同通信は今回の件で反省もなければ、もちろん山中氏や読者への謝罪もないままだ。経済評論家の上念司氏は今回の問題をうけて次のように指摘している。共同通信の山中教授を巡る印象操作記事で分かったこと。マスコミは「謝ったら死ぬ病」に罹っている。しかも、記事で批判する対象にも「絶対に間違えない」ことを強要し、謝罪、訂正はむしろ叩きまくり。まさに「謝ったら死ぬ病」の感染源だな。お前はアンブレラ社かと。上念司氏の公式ツイッター 実際に、共同通信が「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」と題した記事は、上念氏が指摘するように、記者会見で謝罪した山中氏をさらに「叩く」要素があることは誰の目にも明瞭だろう。対して自社の記事については誤りを率直に認めない姿勢も今回はっきりしている。ちなみに「アンブレラ社」とは映画やゲームの『バイオハザード』シリーズで、ゾンビを生み出す根源となった企業名である。ゾンビものが好きな上念氏らしい表現といえる。京都市内で講演する京都大iPS細胞研究所の山中伸弥所長=2018年1月24日 もちろん「絶対に間違えない」「謝ったら死ぬ病」で表されるメディアの無謬(むびゅう)性へのこだわりは、なにも今回の共同通信の件だけではない。新聞やテレビなどのマスメディアでも陥りやすいだろうし、筆者を含め識者たちも陥りやすい罠ともいえる。今回の共同通信の件はその意味でも、公に意見を表明する者が深く教訓とすべきだろう。 前述のように、共同通信からはまだ何の反省の声もない。このことに関して、筑波大学の前田敦司教授が興味深い指摘をしている。共同通信といえば、こんな事件もあった。電通からカネをもらって特定の薬を持ち上げる記事を(広告とせず)配信していた。証拠を突きつけられるまでは否定。前田敦司氏のツイッター加計問題でもうかがえた「印象操作」 これは前田氏も参照している記事に詳細に書かれているのでそれをまず参照してほしい。記事を読めば、いかに共同通信の無謬性へのこだわりが強いかが少なくともわかるだろう。もし、報道記事がある程度の客観性を持つことを要求されるならば、無謬性はもっとも否定しなければならない態度である。常に反証可能性に開かれた態度でいなければならない。 筆者はこの山中氏に関する記事を共同通信の公式ツイッターで見た。そのツイートには「松吉」という署名があった。「松吉」はイニシャルなのか本名なのかはっきりしない。ただ、「松吉」の署名が記載されたツイートが参照している記事は多くなく、その意味では特に強調したい記事にこの署名が利用されているのだろう。 この「松吉」の署名記事で興味深い特徴があったので、加計学園問題を例として取り上げる。共同通信の記事から、具体的な加計学園問題の、そもそも「問題」が具体的に指摘されたことはないだろう。いままでも論点として提示されたものの根拠は、前川喜平前文部科学事務次官の証言だけである。「松吉」の署名ツイートでは、一貫して加計学園問題について徹底的に追求する姿勢が綴られ、また前川氏に関しては「官邸からすさまじいプレッシャーを受けながら、逆境をはね返した前川氏の内面の強さ、心の原点にスポットを当てた」とされる他の記者の署名記事を参照するものがあった。共同通信の公式ツイッターで、「松吉」署名のツイート 「官邸からプレッシャーを受けたとされながらも、『捨て身』の証言を行った前川氏。6月23日の日本記者クラブでの会見にそのヒントが隠されていました。(松吉)」というが、そのような前川氏の内面の「強さ」を報じることは、彼を政権批判の英雄として祭りあげることになりはしないだろうか。実際にこの記事が公表された前後は、前川氏をそのような政権批判のヒーローとして扱う人たちもいた。 そもそも「官邸からのプレッシャー」が本当にあったかなかったかも問題の大きな論点であろう。これが実際あったかなかったかでも大きく報道の「印象」は変わる。だが、その種の検証をこのツイッターの投稿も記事自体も行ってはいない。その意味で、この記事もまた「印象操作」に堕しているといっていいだろう。 今回の山中氏に関する報道は「印象操作」の氷山の一角なのだろうか。その点はより地道な検証が必要だろう。だが、ぜひ共同通信、またそれに限らずマスメディアはネットを含む世論の批判を柔軟に聞く耳を持つべきである。今回の山中氏についての報道とその後の対応は、その意味であまりにも頑迷だからである。

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    小惑星衝突、人類が「第二の恐竜」になる確率は意外に高かった

    、イリジウムなどをはじめとする希少金属「レアメタル」が多く含まれているからだ。しかし、この説は当時の科学者から懐疑の目をもって迎えられることになる。そもそも、衝突したクレーターがどこにあるかを示せなかったという点は大きかった。 しかし1990年代になり、メキシコ・ユカタン半島に、直径180キロという巨大クレーター「チクシュルーブ・クレーター」が発見され、これが6500万年前にできたことが明らかになったことで、すべての疑問は氷解した。いまや誰もが、恐竜の絶滅を引き起こした小惑星の衝突でできたクレーターがメキシコに存在することを知っている。この衝突は、直径10キロの小惑星が引き起こしたと考えられている。 では、このような小惑星の地球衝突は、6500万年前が最後なのだろうか。そのようなことはない。それは、明日にも起こるかもしれない、地球最大の危機なのである。 2013年2月15日の朝、ロシア中部に位置する都市、チェリャビンスクの人たちは、空に強烈な閃光(せんこう)が走るのを目撃した。太陽の明るさをも超える閃光は、人々の目に、車に搭載されたカメラに、監視カメラに多数目撃され、捉えられた。隕石(いんせき)の落下である。 空を見上げる人々に、その直後、強烈な衝撃波が襲いかかった。超音速で地球大気に侵入した隕石が引き起こした衝撃波は、街中の窓ガラスを破壊し、建物の壁を崩した。結果として負傷者1500人を出すという事態に至ったのである。隕石の落下によって、これだけ大規模な人的な被害が出たのは史上初のことである。「大きめの岩石」で被害大 この災害を引き起こした小惑星の大きさは直径17メートルと推定されている。たった直径17メートル。宇宙規模からすれば大きめの岩石レベルといっても差し支えないだろう。同じ小惑星でも、例えば日本の小惑星探査機「はやぶさ」が探査に向かったイトカワは差し渡しが535メートル。キロメートルを超える小惑星は無数に存在する。小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載して打ち上げられるH2Aロケット26号機=2013年12月3日、鹿児島県南種子町(甘利慈撮影) チェリャビンスクに落ちた隕石(宇宙に存在したときは小惑星)であったこの天体が小さかったことは、私たちにとってせめてもの救いであった。もし、それがイトカワくらいのサイズであったら、あるいは恐竜を絶滅させるサイズの小惑星だったら…。人類の文明が崩壊してしまってもおかしくなかったのだ。その「かもしれない」は、決して大げさなことではない。 そうはいっても、そんなに頻繁に小惑星が落ちてくることはないだろう、と多くの方は思われるであろう。確かに、毎日小惑星の地球衝突が起こるわけでもない。それに、落ちてくる場所はたいてい人里離れた辺鄙(へんぴ)な場所である。仮に落ちてきたとしても、人間に被害を及ぼすことはそうめったにないことであるということもまた確かである。 例えば今から約100年前の1908年、シベリアの奥深くにあるツングースカという場所で大爆発が発生した。半径30キロの森林はなぎ倒され、炎上し、1000キロ離れたところの窓ガラスが割れる被害が出た。この「ツングースカ大爆発」は近年になって小惑星の衝突により引き起こされたものと断定されたが、死者は出なかった。あまりに辺鄙な場所に落下したため、人的被害がなくて済んだのである。 このときも私たちは、「不幸中の幸い」という言葉が当てはまる状況で難を逃れたのだ。大都市を隕石が直撃するのはハリウッドの映画の中だけ、そう考えている人も多いのではないだろうか。 ここで、興味深い試算結果を紹介しよう。米テュレーン大学のスティーブン・ネルソン教授がまとめた、小惑星の地球衝突で死ぬ確率の試算である。 この試算では、人間の一生を80年とし、その間に小惑星や彗星(すいせい)などの落下によって死ぬ確率を160万分の1としている。同じ計算では、例えば交通事故で死ぬ確率は90分の1と極めて高く、洪水で死ぬ確率は2万7000分の1、飛行機事故で死ぬ確率は3万分の1と算出されている。確かにこう並べれば、小惑星衝突で死ぬ確率はそれほど高くないと思われるかもしれない。ちなみにこれより低い確率として、例えばボツリヌス菌による食中毒で死ぬ確率(300万分の1)やサメの攻撃により死ぬ確率(800万分の1)が挙げられている。 死ぬ確立は低いのか? しかし、この計算にはもう1つの数字がある。いま私が挙げた「160万分の1」という数字は、「局地的な災害を引き起こすような小惑星・彗星などの衝突」により死ぬ確率なのだ。もしそれが、全世界的な災害を引き起こすような大規模衝突だったらどうなるだろうか。教授はその数値も計算している。その値は7万5千分の1。先ほどの航空機事故により死ぬ確率の数字などと比べてほしい。決して途方もない数値ではないのだ。 もちろん、これらの数値の計算結果に異議を唱える人も多いだろう。基本的にこの数値はおそらく米国の数値を用いており、航空機の数が日本などに比べて段違いに多い(飛行機の数が多ければ確率も上がる)米国の数字をそのまま比較してもいいのだろうか、という疑問は湧くだろう。しかしそうだとしても、小惑星衝突、それも大規模な衝突で死ぬ確率が航空機事故の確率と大きく違わないという点に、私たちはもっと注意すべきだろう。 チェリャビンスク、あるいはツングースカのような局地的な衝突では、落下地域一帯に大きな被害がもたらされる。それは先ほど述べたような衝撃波によるものや熱線・熱風、地震動、海に落ちた場合には津波などが考えられる。2013年、ロシアのチェリャビンスク州に落下した隕石の破片(佐々木正明撮影) これらも恐ろしいが、実は大規模な小惑星衝突では、より恐ろしいことが起こる。衝突や火災によって舞い上げられたチリが地球全体を覆い、数十年にわたって太陽の光を遮ってしまうのだ。そうすれば植物は育たなくなり、農業が立ち行かなくなることはもちろん、植物が育たなくなり、生態系が崩壊する。人類を含め、地球上の生命は崩壊の瀬戸際に立たされることになるのだ。 このグローバルな災害こそ小惑星衝突で、私たちが最も恐れるべき事態である。 では、このような恐ろしい事態に対して、私たちが今すぐ打てる手はないのだろうか。正直に申し上げると、直接的に回避する手段はない。 「直接的に回避する」とは、地球に衝突しそうな小惑星を何らかの方法で破壊したり、その軌道をそらしたりするということである。確実に回避する方法は? 例えば、核爆弾で小惑星を粉々にするというアイデアもある。しかし、その破片があらぬ方向へ飛んでいき、地球にぶつかってしまう可能性もある。 また、「はやぶさ」の成果から見いだされた考え方もある。「はやぶさ」が探査したイトカワの比重は1・9と見積もられている。水の比重が1であり、平均的な岩石の比重は3・3~3・5程度である。どうみても岩石でできているイトカワの比重が1・9であるということは、内部に多くの隙間ができているということを意味している。このように隙間だらけの小惑星の内部で核爆弾を爆発させても、そのエネルギーの多くは隙間で吸収され、効果的に小惑星を破壊できない可能性が高いのだ。惑星探査機「はやぶさ2」=2014年8月31日、神奈川県相模原市(大西史朗撮影) もちろん、そういった爆発物をどのようにして運び、また内部をどのようにして掘削するのかという点も考えなければならない。そうなれば、他にどんな方法があるのだろうか。実は、ある。 例えば、小惑星に何らかの物体をぶつけて軌道をずらす方法だ。これは現在、欧州宇宙機関(ESA)が「ドン・キホーテ」と名づけて検討しているもので、2機の探査機で構成された1組の探査機が小惑星へ向かい、そのうち1機が小惑星に衝突、その衝撃で軌道を変えようというものである。 一方、米国では、小規模な「ロケット」を使って小惑星の軌道を変えよう、という考え方がある。米国は現在、小惑星を総合的に探査する枠組み「小惑星イニシアチブ」を実施しているが、その中で計画されている小惑星サンプルリターン探査「アーム」では、サンプルリターン後に探査機がそのエンジンで小惑星を「押し」、軌道を変える実験を行う計画である。 どちらにしても、何らかの力を人工的に加えて軌道を少しだけでも変えさえすれば、小惑星の地球衝突を避けることが可能である。 しかし、いずれの計画も検討段階であり、しかもその進展はどうにも心もとない。ドン・キホーテについてはESAにおける進捗(しんちょく)はほとんど聞こえてこない。アーム計画は、トランプ政権発足に伴う米国の宇宙開発計画の変更が影響したのか、もはや風前のともしびとなっており、中止されたらしいとの情報も私のもとに入ってきている。資金面での問題もある となると、残るのはとにかく危なそうなものを見つけて監視することだけである。米国の小惑星イニシアチブのもう1つの柱は「小惑星グランドチャレンジ」と呼ばれる計画で、これは民間や大学などを含めた多くの望遠鏡で、地球に近づく軌道をとる小惑星を監視しようという計画である。日本でも、NPO法人の日本スペースガード協会が、岡山県井原市にある「美星スペースガードセンター」で、小惑星の観測・監視活動を行っている。 しかし、これらの監視にはお金と人材が必要である。小惑星は小さいため発見が難しく、大型の望遠鏡がどうしても必要になるが、それにも資金が必要である。さらに、小惑星は小さいために他の天体の引力による影響を受けやすく、軌道が変わりやすい。そのため、継続して監視を行うことが必要なのだ。無数にある小惑星を1つ1つ発見し、軌道を正確に決定するためには、全世界に望遠鏡を配置し、その望遠鏡のネットワークという形で観測していく必要がある。 しかしその監視活動もまた、大変心細い状況である。小惑星グランドチャレンジもまた、先に述べた米国の宇宙開発計画の方針変更の影響を受ける可能性が高い。日本の監視活動も国ではなくNPO法人の手に託されているのが現状だ。危険な小惑星の監視ですらおぼつかないというのが世界と日本の現状なのである。 さらに、監視をしたからといって、それが小惑星衝突を直接防げるわけではない。実際に小惑星の軌道を特定し、地球衝突の可能性が大きいと判断されてから、いかに人的・物的被害を最小にするのか、その明確なシナリオはまだない。例えば、危険な小惑星を発見したらどこへ報告するのか、誰がそれを危険であると宣言するのか、国がどう対応すべきなのか。考えるべきこと、決めるべきことは山ほどあるにも関わらず、全く手がつけられていない。 このような現状を変えようという試みも、科学者を中心としたグループで行われている。5月15日から19日まで、東京・お台場にある日本科学未来館で、「地球防衛会議」(PDC)と呼ばれる会議が開催された。今年で5回目になるこの会議は大きな特徴がある。実際に小惑星が地球に衝突するという想定(シナリオ)をもとに、科学者や市民がどう対応するかを実際にグループに分かれて討議、問題点を洗い出すというものだ。今回は架空の小惑星「2017 PDC」が東京近辺に衝突する可能性があるというシナリオをもとに、8つのグループに分かれた討議を行い、それぞれの成果が発表された。人類が冷静に協力できるか このような会議における地道な議論の積み重ねにより、最終的には小惑星の地球衝突に関する国レベル、あるいは世界レベルでの対応の方針が決定され、私たちが危機に対して冷静に対応できる。そのようなことを、私としては期待している。 もう1つ重要なのは、この問題が重要である、という認識を多くの人に持ってもらうことである。PDCの目的の1つもその「認識をより広める」という点にある。会議が科学者だけでなく一般の人も参加できるようになっていたり、インターネットで中継されたり、会議終了後の土曜日には一般の人向けの特別イベントが設定されたりしていたのも、この問題がどれほど重要であるかということをより多くの人に知ってほしい、というメッセージなのである。 確かに、私たちは日々の生活に忙しい。生活の中で危ないと思うことは、交通事故であったり、家の中での事故であったり、あるいは犯罪などといった身近なことであり、まさか空から降ってくる天体によって命を奪われるということまで思いをはせる人は、そう多くないだろう。 しかし、ここまで本記事をお読みくださった方は、小惑星の地球衝突という事態は、決して絵空事でもなければ可能性が低いわけでもないということ、そしてそれが明日にも起こる可能性があるということを認識していただけただろう。チェリャビンスクでの災害を引き起こした小惑星は事前に見つかっていなかった。いまも私たちが見つけられていない小惑星が、地球に向けて進路を取る、あるいは何らかの影響で地球への進路をとってしまっているかもしれないのだ。 そしてそれが、人類を「第ニの恐竜」と化してしまう可能性も、ゼロではない。私たちは、その危機を認識し、実際に小規模はあるが、それに立ち向かおうとしている。「今そこにある危機」に対して最も強力な対処法は、私たちがその危険を冷静に認識し、それを回避するために確実に動きを取ることである。 人類は、恐竜が持たなかった科学技術という武器を手に、いますぐにこの戦いに立ち上がるべきである。なぜなら、この問題は「起きるか起こらないか」ではなく「いつ起きるか」という問題だからだ。

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    無人宇宙船や核爆発、リアル「地球防衛軍」の議論はここまで進化した

    うなことが起こりうるのである。天体衝突については、映画は決して大げさではない。 今年5月15日、日本科学未来館(東京)にて、天体衝突をテーマにした国際会議が開催された。「プラネタリー・ディフェンス・コンファレンス」(PDC)である。欧米を中心に23カ国から200人以上が集まり、5日間にわたって天体の地球衝突問題が議論された。 この会議は、今回で7回目となった。欧米以外で行われるのは今回が初めてである。なお、天体の地球衝突問題を扱う活動は「スペースガード」とも呼ばれてきたが、最近では「プラネタリー・ディフェンス」という言葉も使われるようになった。 天体衝突が映画の世界のみの事象ではないということは、2013年2月にロシアに落ちたチェリャビンスク隕石が記憶に新しい。100キロ以上にわたって窓ガラスや建物の壁が壊れ、1500人もの人が負傷した。 このときに落ちてきた天体の大きさはせいぜい20メートルくらいだという。天体の直撃ではなく、衝撃波によって広範囲に被害が生じた。さらに時代をさかのぼり1908年、シベリアで大爆発が起こり、2千平方キロに渡って森林がなぎ倒され焼け焦げてしまった。ツングースカ大爆発と呼ばれる出来事である。  この場合、大きさが60メートルくらいの天体の衝突が原因だと言われている。そして、遙か昔の6550万年前、恐竜を含む多くの生物種が絶滅したが、そのきっかけとなったのが直径10キロくらいの天体衝突だと言われている。 直径10キロとは言わないまでも、例えば「300メートルくらいの天体が東京に落ちてきたら」、まさにそのような想定での議論がPDCでは行われたのである。この会議についてはまた別の場所で報告することにして、ここでは天体衝突という問題にどのように対応すべきなのか、考えてみることにする。 天体の地球衝突は、衝突してくる天体がある程度以上大きくなると、究極の自然災害である。現在起こっている、地震・津波、火山の噴火、気象災害などに比べて、はるかに大きな災害となり得る。 しかし、これらの災害と異なる点が1つある。それは「予測可能」ということである。地球に衝突する天体を事前に発見しその軌道を正確に推定することができれば、その天体がいつどこに衝突するかが完全に予測できてしまうのである。これは、何年も先の日食や月食が正確に予測できるのと同じことである。例えば、今後、数十年から100年くらい先までの天体衝突なら予測可能なのである。相次いで確認される地球接近天体 予測ができれば対策も取れる。したがって、まず重要なことは地球に衝突する天体を発見し軌道を正確に推定することだ。地球に接近しうる天体を地球接近天体(NEO:Near Earth Object)と呼ぶが、NEOには小惑星と彗星がある。 確率的には小惑星の地球衝突の方がはるかに高いので、プラネタリー・ディフェンスとしては、地球に接近する小惑星を探すことになる。実際、1997年くらいから地球接近小惑星の発見が急増した。 これは、90年代に天体の地球衝突という問題が重要であるということが認識され、観測技術も向上したことによって積極的にNEOの観測が行われるようになったためである。現時点(2017年5月)で、発見されているNEOの数は1万6千個を超えている。この数は今後もますます増えることであろう。 幸いなことに現在発見されている1万6千個余りのNEOが近い将来に地球に衝突する可能性はない。しかし、問題なのはまだまだ未発見のNEOが非常に多いということである。現在、NASAが主導するかたちで米国のいくつかのプロジェクトが中心となりNEOの観測が進められている。 最近では欧州宇宙機関(ESA)もプラネタリー・ディフェンスに力を入れだした。日本では、岡山県に美星スペースガードセンターという施設がありNEOの観測を行っている。ただし、日本を含めアジア地域ではNEOの観測は低調である。米国・欧州・アジアと3つの地域で観測が行われるのが好ましいので、日本もNEO観測にさらに力を入れるべきであろう。 このようにNEOを探す活動はすでに20年前から始まっている。では、もし地球に衝突する天体が発見されたらどうするのか。もちろん地球衝突回避をしたいわけであるが、実はこれが難しい。 よくある映画のシーンのように、地球に衝突してくる天体に宇宙飛行士が行って爆弾をしかけて爆破するーこれは映画的には面白いが、現実的ではない。その理由は、仮に天体を爆破したとしても、その破片が地球に衝突してくるので、結局、広範囲にわたって被害が生じてしまうためである。 では、どうするか。最も良いのは、地球に衝突してくる天体の軌道をそらすことである。軌道をそらすには、現在の技術では、例えば無人宇宙船をその天体に衝突させればよい。米国はすでに彗星に探査機を衝突させる実験を行っている。※画像はイメージ 日本も、「はやぶさ」や「はやぶさ2」のように小惑星に探査機を送ることができる。ただし、打ち上げることができる探査機や宇宙船は小惑星に比べればはるかに小さい。小惑星に衝突させてもその影響はわずかである。 例えば、大きさが100メートルくらいの小惑星でかつ地球衝突までに十分な時間的猶予(例えば10年程度以上)があれば、宇宙船を衝突させることで小惑星の軌道を微妙にずらし、そのずれが時間の経過とともに拡大して最終的に地球に衝突しないで通り過ぎる、ということは可能なのである。 しかし、相手の天体が大きかったり、衝突までの時間的猶予がなかったりすると、このやり方では衝突回避はできない。小惑星の軌道を変える方法としては、この他にもいくつか提案されてはいるが、あまり現実的ではない。観測は将来への贈りもの その中で、特に議論に挙がるのが核爆発を使うものである。これも、小惑星を破壊するのではなく、小惑星の近くで核爆発を起こすことで、小惑星の軌道を変化させようとするものである。エネルギー的には核を使う必要があるが、本当にうまくいくかは分からないし、核廃絶という動きに逆行することにもなるので、慎重な議論が必要である。 このほか、例えば衝突回避に失敗して別の国に天体が衝突してしまったらどうするかとか、特に大都市に天体が衝突する場合など人々の避難をどうするか、衝突回避のための費用は誰が出すのか、経済的な打撃にどう対応するのか等々、難しい問題がいろいろある。このような問題についてもPDCでは議論されているのである。 以上のように、まず地球に接近し得る天体を観測するというところについてはどんどん進めればよく、実際に観測が進められているのであるが、天体の地球衝突回避や被害への対応については、いろいろ難しい問題が山積しているのである。※画像はイメージ このような問題については、国際的な協力が必要であり、2000年前後からは国連の機関でも議論が始まり、13年には、プラネタリー・ディフェンスに関連してIAWNとSMPAGという2つの国際的なグループが組織された。 IAWNは「International Asteroid Warning Network」というもので、地球に接近する天体を積極的に観測していこうという目的で設立されたものである。一方、SMPAGSは「Space Mission Planning Advisory Group」で、天体の地球衝突回避を目的としたグループである。IAWNの方はNEOの観測を行っている天文台や研究チームがメンバーとなっており、SMPAGの方は各国の宇宙機関がメンバーである。 流れ星や小さな隕石のように、小さな天体は常に地球に衝突しているわけであるが、大きな被害を伴うような天体の衝突頻度は小さい。頻度は小さいけれども起こると大きな災害となる。 そのような「低頻度巨大災害」にどのように対応するのがよいのかは難しい課題であるが、天体の地球衝突問題については、まずは地球に接近しうる天体であるNEOを発見すればよい。今、NEOの観測をしておくことは、「人類としての危機管理」でもあるし、将来の人類への贈りものともなる。

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    巨大隕石「地球最後の日」は回避できるか

    9月1日、過去最大級の巨大隕石「フローレンス」が、地球からわずか700万キロの近傍を通過した。米航空宇宙局(NASA)によると、直径は4キロに及び、地球からこれほど近い距離を通過する小惑星としては観測史上最大だったという。「人類最大の危機」はどうすれば回避できるか。

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    北朝鮮核より怖い隕石衝突、直径10メートルでも破壊力は原爆1千倍

    カデミー(IAA)主催の国際会議「プラネタリー・ディフェンス・カンファレンス」(PDC)が東京・日本科学未来館で開催された。この会合は、地球に衝突する恐れのある小惑星の発見や回避策などを話し合うもので、欧米以外で開催するのは初めてである。 今回の会議では、大きさ100-250メートル程度の小惑星が10年後に1%の確率で地球に衝突すると想定し、危機対応策や衝突回避方法などが議論された。わが国で隕石(いんせき)の落下(小惑星の地球衝突)が話題にされることはあまりないが、PDCが東京で開催されたことを機会に、防災の観点からこのような危機にどのように対処すべきか考えてみたい。 わが国の社会資本の整備や管理にあたって、隕石(いんせき)の落下を想定することはほとんどない。しかし、近年は隕石の問題に限らず、地震・火山の活動が活発化していること、異常気象が発生しやすくなっていることから、あらゆる危機を想定して防災に取り組まなければならないという機運が高まっている。阪神・淡路大震災の発生で大きく傾いたビル。その後倒壊した=1995年1月21日 そもそも土木事業などの社会資本整備は、欧米先進国に追いつこうとキャッチアップの時代が長く続いた。設計上想定する外力をあまりに大きく設定すると高コストとなり整備が進まない。このため、設計の対象とする地震や雨・風などの外力は、近年の観測記録の最大値にとどめるのが通常であった。しかし、2011年の東日本大震災を経験してからは、発生し得ると考えられる最大の現象も想定して人命などの深刻な被害を軽減しようという考え方が取り入れられはじめている。地震の揺れ、津波、そして洪水に関する設計上の考え方を整理しよう。 構造物の設計における地震の揺れの取り扱いについては、1923年の関東大震災や、95年の阪神・淡路大震災など近年の数々の震災経験を経て、想定する外力が順次見直され、現在は、震度7の揺れに対して人命などに致命的な被害を受けないようにするという考えに至っている。 津波に対する堤防などの設計にあたっては、100年ほどの記録のある範囲での最大程度の津波高が想定されていたが、2011年の東日本大震災以降見直され、現在は100年に1回程度の発生率の津波に対して防御するだけでなく、1000年に1回程度の最大級の津波に対しても人命を守り被害を最小限にするという二段構えになった。隕石が落ちる可能性は何%? 洪水の想定については、大河川の堤防やダムなどの整備の将来目標としては100-200年に1回程度の発生確率の洪水を対象としている。しかし、河川整備には長年月を要するため、向こう20-30年間の整備目標として、戦後実際に経験した洪水の規模を対象とするのが通常である。このように、洪水防御の施設整備では、津波対策のように発生し得る最大級の外力を想定するには至っていない。ただし、この5月に水防法が改正され、住民に提供されるハザードマップに、発生し得ると考えられる最大級の洪水を想定した浸水想定区域図を示そうということになった。 地震の揺れ、津波、洪水などの自然外力については、このようにあらゆる危機を想定しようという考えが取り入れられはじめている。それでは、隕石の落下は想定しているだろうか。いや、いまだに想定されることはほとんどない。社会資本の整備・管理にあたって、隕石の落下をどのように取り扱うべきか考えてみたい。 約6500年前に恐竜絶滅の原因になったとされる隕石落下のような事態を想定すべきであろうか。隕石の直径は10-15キロ程度であった。米航空宇宙局(NASA)によると、直径10キロ超の小惑星は1億年に1回程度の頻度で地球に衝突する。そして、その10分の1の直径1キロ超の小惑星になると100万年に1回の頻度とされている。この大きさの小惑星でも地球に衝突すれば文明を終わらせかねない。だが、直径1キロ以上の小惑星の95%以上は、既に調査が終えられており、それらの軌道から考えて地球に衝突する可能性は極めて低いとされている。 直径1キロ以上の小惑星は、地球に衝突する確率が極めて小さいが、衝突が起きれば文明の存続も危うくなるほどの影響がある。引き続きこの規模の小惑星の調査に注力する必要があるが、わが国の社会資本整備で対応するのは困難と思われ、国内の防災対策を考えるうえで、とりあえず想定の外におくのもやむないであろう。 それでは、直径1キロより小さい小惑星となるとどうであろうか。小さいサイズになるほど数多く存在するが、NASAなどが発見しているのはごく一部である。直径300メートルから1キロの大きさのものは40%、直径100-300メートルのものは5%以下、直径30-100メートルのものは1%以下しか発見されていない。シベリアに落ちた隕石は原発の1000倍 一方、大きさが小さくなるにつれ地球に衝突する頻度は高くなり、例えば直径300-600メートルのものは2万5000年に1回、直径30~140メートルのものは250-500年に1回とされている。ただし、直径100メートル以下の隕石であっても落下の場所によっては、都市が破壊されるなどの甚大な被害を及ぼし得る。 実際、1908年6月にシベリアのツングースカ上空で発生した直径数10メートルともいわれる隕石による大爆発により、2000平方キロにわたって森林がなぎ倒された。シベリアの奥地であったため人的被害はほとんどなかったが、もし落下が3時間ずれていたらモスクワは完全に壊滅状態になっていただろうといわれている。そのエネルギーは、広島に投下された原子爆弾の1000倍以上と推測されるすさまじいものであった。 また、2013年2月には、ロシア中部のチェリャビンスク州に直径17メートルほどの隕石が落下した。大気圏突入時の爆発の衝撃で東西100キロあまりにも及んで建物のガラスが割れるなどして、住民およそ1500人が負傷した。ロシア・チェリャビンスク上空の隕石のビデオ映像=2013年2月(AP=共同) このような直径100メートル以下の小惑星でも地球に衝突すると多大な被害を及ぼすが、見つけることが難しく、ほとんどがまだ発見されていない。そのような隕石落下にどのように対処すればよいのか。 まず、衝突の可能性のある小惑星を早期に発見できるように監視態勢を強化する必要がある。NASAは2020年までに直径140メートル超の小惑星の90%を発見することを目標としているが、これが確実に達成されることを期待したい。それより小さい小惑星は見つけることが難しく、その多くが発見されていない。今般のPDCで議論されたように、各国が連携して精度の高い観測網を構築することが重要である。 それに加えて、地球に衝突しそうな小惑星が見つかった場合にその軌道を変えるための技術をさらに開発する必要がある。日本では、小惑星に人工衛星を衝突させてその軌道を変えるための技術開発に必要なデータを小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」で集めている。小惑星の衝突を防止するこのような宇宙技術の開発は、地球の安全と平和を維持するためのものであり、わが国はこれまで以上に積極的に取り組むべきであろう。「隕石」の減災対策が進まない理由 また、社会資本の整備・管理において、隕石落下が重大な影響を及ぼし得ると思われるケースにおいてはこれを外的要因として想定し、隕石落下時に人命や社会・経済に壊滅的な被害を及ぼさないよう、あるいは被害を少しでも軽減できるよう方策を検討する必要がある。特に、原子力発電所などの発電施設や水源施設は、被害を受けると深刻な事態になる場合がある。施設整備のハード面と警戒・避難といったソフト面の両面で対策を検討する必要がある。さらに、国民生活の生命線といえる基幹道路、電気・ガス・水道、下水道などのライフラインについては、リダンダンシー(冗長性)の観点から被災した場合の代替機能確保についてあらかじめ検討しておくことも重要だ。 ここで注意したいのは、これまでは、最悪な事態を想定した議論をすると周辺住民から危険な施設とみなされ、反対運動が高まるため、議論を避けようとする傾向があったのではないだろうか。「絶対」の安全はないということを前提に、最悪の事態を想定することについて住民も冷静に議論を受け止める自覚を持ち、事業者側・施設管理者側は真摯(しんし)にあらゆる事態を想定して減災対策を論じるべきである。 最近は、一部の地方自治体で北朝鮮からのミサイル着弾に備えた住民避難訓練が行われるようになった。着弾する前にミサイルを迎撃するハード面の対策も進める必要があるが、警戒・避難といったソフト面の対策を強化することも重要だ。弾道ミサイル飛来を想定した避難訓練で、屋内で身をかがめる参加者=8月26日、津市 隕石落下については、地震・水害・土砂災害などに比べて頻度が小さく、またミサイル着弾に比べても現実離れしているように思われがちだが、必ず地球に衝突してくるものである。巨大隕石の落下であれば手の打ちようもない事態も考えられるが、対応策を講じておくことで、被害を最小化できる可能性はある。国家が壊滅するような事態を阻止することができるかもしれない。日本で初めてPDCが開催されたのを機に、隕石落下に対する備えを積極的に検討する機運が高まることを願う。

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    巨大隕石「東京に落ちたら被害者1000万人」と専門家が予測

    1200人以上、建物4700棟以上に被害が及び、被害総額は31億円にものぼるという。東京大学地球惑星科学専攻の杉浦直治教授が説明する。「地球には宇宙から年間何百万個もの落下物が落ちてくるんですが、隕石として認識される大きさのものは年間10個から20個ほど。そのほとんどが上空で燃え尽きてしまいます。今回のように17mもの大きさのものが落下し、人的被害を出すというのはかなり珍しい事態です」 日本スペースガード協会・高橋典嗣理事長は東京での隕石落下の確率をこう解説する。「今回と同規模の隕石の落下はおよそ100年に1度と考えられています。それが、東京に落ちるという確率はかなり低いといえますが、はっきりはわからないんです。世界中の天体観測所で危険な隕石の観測を行っているのですが、これまでに予測できたのはたったの1度。2008年、スーダンに落ちた隕石ですが、それも落ちてくる20時間前の発見でした」 半径100kmにわたる地域に被害を及ぼした今回の隕石。落下した場所は幸いにも、大都市でも、人家そのものでもなかった。しかし、もし今回の規模の隕石が、人口過密地の首都東京に落ちてしまったら…。前出の高橋理事長が緊急シミュレーションをしてくれた。「衝撃波で高層ビルから大量のガラス片が降り落ち、車や飛行機などの交通機関で大きな事故が起き、被害者は1000万人にものぼるでしょう」関連記事■ ロシアの隕石落下に矢追純一氏「UFOの可能性が非常に高い」■ 東電エコキュート 原発影響で部品調達できず受注制限状態■ ミサイル発射失敗の北朝鮮 不足するコメ2年分がパーになる■ 地表に落ちた放射性セシウムが風で飛散する危険性大と専門家■ 珍品収集男 一番の自慢の品は「3階から落ちて死んだアリ」

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    ロシア隕石落下 その時核施設爆発の街は

    にやってきた軍や研究者が、この激突後に湖面にできた直径8メートルの穴のまわりを調べた。そして、ロシア科学アカデミー隕石委員会の会員で、ウラル連邦大学のグロホフスキー教授が穴の周りにあった黒い石を持ち帰り、科学鑑定を行った。すぐに、地球にはない石の特徴を示し、隕石の一部と断定した。 石は10%が鉄分でできており、かんらん石や亜流酸塩も含んでいた。そして、教授は「この石は『普通コンドライト』で出来ている」とも語り、隕石説を主張した。「普通コンドライト」とはこれまで世界各地で発見されたほとんどの隕石が主成分として持つ物質である。教授は発見場所にちなみ、「チェバルクリ隕石」と名づける方針を公表し、解析データは2、3カ月後に国際隕石学会に提出され、正式に決まるのではないかとの見通しも明らかにした。 NASAの解析は早かった。アラスカの観測所が捉えた大気圏突入時の音波記録などをふまえ、何度か修正した後に隕石落下の数値を割り出した。衝撃は広島原爆の30倍 この隕石の元になった小惑星は直径17メートルほどで、重さは約1万トン。秒速18キロ(時速6万4800キロ)で大気圏に突入し、大気との摩擦でも燃え尽きず、チェリャビンスク上空20~25キロで爆発した。 そのときの衝撃のエネルギーは、広島型原爆の30倍を超える約500キロトンだったという。一方で、ロシア科学アカデミーはこれよりも小さい100~200キロトンと主張している。 小惑星は地球の地表面に対して、20度未満の浅い角度で突入してきた。地球に至る推定軌道はラグビーボール型をしており、太陽に近いところでは金星軌道付近を通り、遠いところでは火星軌道の外側を通る。日本の探査機「はやぶさ」が砂粒を回収した小惑星「イトカワ」の軌道に似ているという。 軌道の判明で、同じ時期に地球に大接近した直径45メートルの小惑星「2012DA14」とは全く関係のないこともわかった。 一方で、今回の隕石には「彗星だったのではないか」と主張する専門家も現れている。 ロシアの静止衛星は隕石の落下時、軌道上で水の分子を大量に採取した。ロシア科学アカデミー会員の専門家、アレクサンドル・バグロフ氏は「爆発した天体は主に氷で構成され、内部に隕石の物質はほとんどなかった」と話し、「彗星」だった可能性があることを示唆した。 かつてのツングースカ大爆発も、彗星説がある。今後、ロシアの専門家チームは、周囲に落下したとみられる隕石の破片を集め、この天体物質が何だったかの解析を進めることにしている。 ところで、今回、隕石が落下する様子は、多くのデジタルカメラが撮影していた。これは、車につけられた撮影装置による映像で、ロシアではこの装置を1万円ほどで購入できる。SDカードなどの記録容量が大きくなり、車の前方を撮影して、走行中の様子を記録する。主に事故があったときのための証拠として採用されている。 ロシアでは交通事故を調べる警察官が汚職にまみれており、近年、自衛策としてカメラの車載が普及したのである。100年に1度の貴重な天体ショーが映像として残ったのは、ロシアの警察腐敗が間接的に関与していたことは非常に興味深い。 そして、ある車に搭載されていたカメラは、落下する隕石に、謎の高速物体、つまりUFOが激突したような様子を映し出している。 ネットユーザーたちは「UFOが身を挺して、地表での隕石直撃を助けてくれた」とのべ、盛り上がっている。 ロシアの専門家はこの映像も入手し、この高速物体が何だったかの解析も進めているという。

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    中国に落下の隕石は384億円? 発見者と政府が裁判

     シルクロードで知られる中国新疆ウイグル自治区に落下した17.8トンもの隕石の所有権をめぐって、発見者と同自治区政府の双方が所有権を主張、自治区政府側が隕石を無断で持ち去ったことに抗議して、発見者とその息子が訴訟を起こした。判決は今後半年以内に下されるという。一部の隕石コレクターは、これまでの売買例から、この隕石全体の値段を3億2000万ドル(約384億円)と想定しており、どのような判決が下されるかが話題になっている。 中国では土地の所有権は国家にあり、土地の使用権が個人や企業に付与されることから、このような隕石の所有権がどちらにあるのかは判然とせず、隕石の所有権をめぐる判決が下されれば初のケースとなる。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。 この隕石は1986年8月、同自治区の少数民族であるカザフ族の遊牧民のA氏が牛などを放牧している際、発見した。 A氏は専門家に依頼して、この石の成分を調べてもらったところ、ケイ素や鉄分などを含有しており、宇宙からの隕石であることはほぼ間違いないと分かった。 その後、手を尽くして、この値段も調べたところ、一部のコレクターから「3億2000ドル」との返事をもらった。このため、近隣の住民らにうわさが伝わり、インターネットで情報が拡散。この情報が同自治区政府の関係者にも伝わったことから、政府関係者が現場に駆けつけ、A氏に無断で隕石を運び去ってしまったという。 このため、A氏は上海市に事務所を持つ弁護士に依頼して、裁判所に提訴。このほど審理が終わり、今後半年以内に判決が下される予定だ。 しかし、18トン近い隕石とはいえ、これほどの値段がするのかについて、同紙が米国の専門家らに取材した。それによると、これまでの例では隕石1グラムは平均して1ドル45セントで取引されており、17.8トンだと「2400万ドルになる」というものから、「全部でせいぜい3万ドル」というものまでまちまちだったという。 同紙は今後の判決の見通しとして、中国の専門家の見解として、「中国では、所有権などの問題では、個人の言い分よりも政府の見解が重視される傾向が強い」と報じている。関連記事■ 巨大隕石「東京に落ちたら被害者1000万人」と専門家が予測■ 中国内モンゴル自治区幹部 6.5億円のほか21か所不動産を収賄■ ロシアの隕石落下に矢追純一氏「UFOの可能性が非常に高い」■ 小沢一郎氏「土地取引で強制起訴も無罪判決」全文を一挙公開■ 自爆テロが相次ぐ新疆ウイグル自治区 観光客に9000円を提供

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    なぜ世界で唯一ニュージーランドだけがヒアリを「根絶」できたのか

    村上貴弘(九州大学決断科学センター准教授) 5月26日に兵庫県尼崎市のコンテナ内から「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているヒアリが発見されてから1カ月あまり。次々に見つかるヒアリに付近住民のみならず多くの人々が心配をしている状況です。私の知り合いの息子さんもヒアリに刺される夢をみているという連絡があり、心を痛めています。多くの人々に正しい情報を提供し、正しく恐れることを目的に本稿を書き進めたいと思います。ヒアリの女王アリとみられる個体(環境省提供) まず、第一点目は、ヒアリの毒はアリの中で最も強い毒というほど強くはないということです。世界には、もっと強い毒を持ったアリが複数存在します。 では何が問題なのでしょうか? 一番の問題はその繁殖力です。現在、米国では、アラバマ州、テキサス州、フロリダ州など南部の18の州に定着しています。そして、地域住民の約50~90%(約1000万人)がヒアリに刺された経験を持つといわれています。この数の多さが厄介なのです。 その中でアナフィラキシーショックを示すのが約1~2%、亡くなられた方が約100名ということで致死率は0・001%程度です。したがって、死への恐怖をあおるというのは正しくなく、広範囲に定着して多くの人が刺されてしまうということを心配することが正しいと思います。 現段階の日本の現状をまとめてみましょう(2017年7月11日現在)。これまで6地点(尼崎、神戸、大阪、名古屋、春日井、東京)で侵入が確認されています。そのうち春日井市(愛知県)の事例を除いてすべてが港のコンテナ内、もしくはコンテナ保管場所から見つかっています。内陸の春日井市では1個体の働きアリが見つかっています。女王アリは大阪港で見つかっています。これらの情報から現段階で日本へのヒアリの進出状況は『侵入』段階で、『定着』には至っていません。 ヒアリの駆除には初期対応が重要です。ヒアリは1930年代にアメリカ合衆国に侵入・定着した後、カリブ海、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、中国に侵入・定着しています。 アメリカ合衆国は、もっとも対応を誤ってしまった国です。問題点として①気づいたときには多くのヒアリが定着していた(初期対応の不足)、②ヒアリ駆除の方法論が確立されていなかった、③レイチェルカーソン著「沈黙の春」でヒアリの被害が過小評価され、DDTやBHCなどの強力な殺虫剤を使えない状態になってしまった、④南米では天敵となっているノミバエを使った生物防除の大規模実証研究もしていますが、有効な手段にはなっていません。 現在、米国では年間5000~6000億円の経済被害が出ています。おもな被害は農作物の食害、電気設備の配線を食い破りショートさせる、公園などに営巣したコロニーの除去、敷地内に巣がある場合の不動産価値の低下などがあげられています。中国と台湾の場合 オセアニア2カ国は非常に参考になる対応をしています。 まずニュージーランドですが、01年にオークランドの空港そばの敷地にヒアリの巣を空港関係者が発見しました。その後、ニュージーランド農務省は迅速に対策チームを結成し、殺虫剤を使ったコロニーの駆除、発見場所から1キロ圏内を定着ハイリスクエリアに設定し徹底してモニタリング、5キロ圏内を要注意エリアとして調査を行うことで03年の夏までに根絶宣言を出すことができました。この作業にかかった費用は約1億2千万円です。その後も複数回港のコンテナ内からヒアリが発見されましたが、定着前に駆除されています。 オーストラリアでも01年にブリスベーンに定着が確認されました。ニュージーランドに比べると定着した巣の数が多く、駆除は難航しました。ニュージーランド同様、迅速にヒアリ根絶国家プログラムが発動し、6年後の07年にはブリスベーンに定着したヒアリの99%を駆除できたと発表しています。しかし、残りの1%は現存しており、いまでも繁殖の危険性はゼロにはできていません。また、14年と15年にも侵入が確認され、継続的に予算をつぎ込んでおり、この15年間で270億円を費やしています。 この2カ国の対策の違いは非常に参考になると思います。ニュージーランドで発見されたヒアリの巣は定着後半年から1年以内と推定され、わずか1コロニーだけでした。この場合、根絶は可能でした。しかしながら、ブリスベーンでは巣は複数同時に確認され、ニュージーランドより大規模に根絶プログラムが発動しましたが、根絶できませんでした。かかった費用も約200倍以上です。いかに初期対応(定着前に発見すること)が重要か分かると思います。 隣の台湾には04年に侵入・定着しています。台湾も国家紅火蟻防治中心(National Red Imported Fire Ant Control Center)を迅速に設立し国家プロジェクトでヒアリの根絶を進めています。08年の報告では桃園のヒアリの88%、嘉義では94%を駆除できたとしています。台湾ではヒアリ探索犬を開発するなどユニークな取り組みをしていますが、それでも根絶にはいまだにいたっていません。台湾では年間約2億円の予算を計上していました(09年当時)。 中国も2004年に深圳市に侵入・定着し、急速に分布範囲を広げており、07年の報告では広東省、広西チワン族自治区、湖南省、福建省、江西省まで拡大しています。中国本土でも駆除対策のみならず、基礎研究を行っており2013年の論文では95本の研究論文が少なくとも報告されていることが明らかになっています。 以上のように、これまで侵入・定着した国と地域で根絶に成功したといえるのはニュージーランドのみです。繰り返すようですが、初期対応の違いで大きく結果が違ってきます。巣を壊したときの反応 次に、ヒアリの特徴を説明します。 ヒアリはもともとブラジル、アルゼンチン、パラグアイ国境の熱帯雨林に生息するアリです。体長は2.0ミリ~6.0ミリとばらつきが大きいのが特徴です。体は、頭部と胸部がやや赤茶色、腹部が黒色で全体的に光沢があります。 ただ、一般の方がヒアリを形や色からだけで識別できるかというと、かなり難しいのではないかと思います。現在、日本社会性昆虫学会がサイトでQ&A形式で基本的な情報をビジュアル付きで解説しております。 日本のアリとの大きな違いはその動きと攻撃性です。たとえば、巣を壊したときの反応が非常に素早く、また躊躇(ちゅうちょ)なく刺してきます。  また、女王アリの産卵能力が高いことでも知られており、1個体の女王アリが条件さえ整えば1時間に平均80個ほど卵を産むことができます。女王アリの寿命は6~7年。生涯で産む卵の数は200~300万個といわれています。 原産地では一つの巣に女王アリは1個体いることが多いのですが、侵入地では10個体前後、多いときには100個体を超える女王アリがいて、それぞれが産卵している場合もあります。このことが、さらに繁殖力を高めています。 原産地では、ヒアリは熱帯雨林の中に巣を作らずに川べりの赤土の露出したところに巣を作ることが多いです。そういった場所は雨期には増水し、巣を破壊します。そのときにヒアリは働きアリ同士が協力して「イカダ」を作ります。その上に女王アリや幼虫・卵・さなぎを乗せ、川を下っていきます。そうして適した場所にたどり着いたら、上陸しそこでまた新たな巣を作っていきます。コンテナ周辺でヒアリがいないか確認する鳥取県職員ら=7月6日、境港市の境港 まさに、自然条件下でも厳しい環境の変化に適応しており、それが侵略的外来種としての特質をすでに持っていたということもいえるかもしれません。  これから私たちはどのようにしていけばよいのでしょうか? まずは落ち着いて行動しましょう。現在、過度にヒアリの被害を強調されています。それらの情報に振り回されないよう冷静に対処しましょう。現段階でヒアリがすぐに大繁殖することはありません。その上で適切な対応を考えていきましょう。 特にこれは行政・研究者レベルの話ですが、まずは供給源となっている地域を特定し、その地域と連携しながらヒアリの駆除プロジェクトを立ち上げるべきです。 より広範囲にわたって貿易を行い、しかもそのスピードも頻度もどんどん増加している21世紀。私たちは今回のヒアリの侵入から、人間活動の活発化がもたらす光と影を深く理解し、影の部分のリスクに対してしっかりとした覚悟を持って対処していくことが大切です。

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    もう手遅れ? 「殺人」ヒアリの猛威

    この夏、小さな「殺人アリ」が日本を席巻している。南米原産の強毒外来種、ヒアリ。女王アリを含む固体が各地で見つかっており、生息域の拡大に懸念が広がる。ひとたび定着すれば、根絶は不可能とも言われるヒアリの生態。水際で防ぐことはできるのか、それとも既に手遅れなのか。

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    「殺人ヒアリ」恐るるなかれ、マムシやスズメバチより危険度は低い?

    (2017年7月11日時点)。東京・大井ふ頭で見つかったヒアリ=4日(環境省提供) 筆者のような基礎科学をもっぱらとするアリ研究者のもとへも各方面からの問い合わせが寄せられたが、これもひとえに、ヒアリが人への健康被害をもたらし、莫大(ばくだい)な経済的損失の原因となる危険生物だからである。長らく時間の問題だといわれていた国内への侵入が確認された今、これ以上の分布拡大をくい止めるべく最大限の努力が払われる必要があると同時に、現前のリスクを「正しく怖がる」態度が重要である。 ヒアリの被害が最も多く報告されているのは、1930年代から定着している米国南部一帯である。現地では刺されることによる人や家畜への被害や農作物への食害、配線をかじられることによる電気設備への被害も生じ、米国での経済的な損失は年間6,000億円にものぼるという。他の有毒生物とは比べものにならない被害の規模は、ヒアリがもつ「社会性」に起因するところが大きい。 10万匹以上のアリがコロニーと呼ばれる巣に同居し、コロニーの中では産卵に特化した女王アリと巣を維持する働きアリとが分業体制を敷いている。ヒアリの働きアリは非常に攻撃的であり、また女王アリは1時間に80個もの卵を産む能力があるとされるが、これらも効率的な分業体制によって可能になっているものと考えられる。生物進化の歴史の中でヒアリが獲得した「社会性」が、同じく社会性を持ったわれわれにとってのリスクとなっていることはなんとも皮肉である。 ヒアリの原産地は南米であるが、世界の温帯・熱帯地域で繁殖できる能力を持っているとされ、北米を経由地とした分布拡大は、現在でも世界的な規模で続いている。21世紀に入ってからはオーストラリアやニュージーランド、さらには中国、台湾、東南アジア諸国への侵入が報告されている。これらはすべて、今回の日本への侵入と同じく物流を介して生じたと思われ、経済活動のグローバル化が意図せぬ弊害をもたらした格好だ。 ヒアリ発見のニュースの中で筆者が驚いたのは、輸入されたコンテナが国内でも頻繁に移動しているという事実である。ヒアリの自然状態(巣の移動や翅アリの飛翔)での分布拡大能力は米国での事例では年に10キロメートル程度とされる。しかし、物流に伴う人為的な移動はそれをしのぐスピードで国内の港湾など物流拠点間での飛び火的な移動を助長する可能性がある。ヒアリは幹線道路脇や都市公園など人工的な環境に好んで生息するため、いったん物流拠点での定着を許してしまうとその後の陸続きの分布拡大にも同時並行的な対処が必要となってしまう。ヒアリの研究は進んでいる 現実のものとなってしまったヒアリのリスクを前に、われわれにはどのような対策が可能だろうか。まずは、これ以上の分布拡大を阻止しなくてはならない。現時点での情報から判断すれば、日本へのヒアリの侵入は港湾部や事業所の倉庫内などに留まっており、他の場所で刺された被害も報告されていないことから、国内での世代交代はまだ生じていない段階であると思われる。近隣諸国への侵入以来警戒されていたことが功を奏して、定着後の発見とならなかったことは不幸中の幸いである。 発見された場所では、殺蟻剤による迅速かつ念入りな処置が必要である。港湾部などの人工的な環境では、在来生物の多様性は比較的低いとは思われるが、在来アリとの餌や住み場所をめぐる競合や天敵によってヒアリの分布拡大を抑制できることも可能性としては考えられることから、発見場所周辺の生物相や殺蟻剤の影響には継続的なモニタリングが肝要であることは指摘しておきたい。根絶に成功したニュージーランドの事例は参考になるであろう。 発見場所の近隣に住む人々にとって一番の気がかりは、健康被害の可能性であろう。ヒアリが発見された場所の周辺では、無用にアリに触らないことが望ましい。ヒアリに刺されてしまった場合に重篤なアレルギー反応を生じる可能性がある人の割合は、米国などでは1〜5%とされている。その場合、早急に適切な治療を受けることが推奨されている。 筆者の個人的見解であるが、マムシやスズメバチとは異なり、ヒアリに遭遇する可能性が高いのは都市部であるため、刺された場合でも最寄りに医療機関がある場合がほとんであろうから、治療が遅れたために命を落とすということは起こりにくいのではないだろうか。医療機関にヒアリに刺された場合の症状についての知見があれば、迅速な対応が可能になるのみならず、ヒアリの分布拡大を察知することにもつながるだろう。 日本という新しい環境に侵入したヒアリが、実際にどのような被害を引き起こすかを事前に予測することは難しい。ただ、死亡者数などのセンセーショナルな情報が先行して、地域ごとに異なる生態的・社会的背景を無視した議論が起こることは望ましくない。基礎研究に携わる者として強調しておきたいことが一つある。 ヒアリはゲノム情報の解読をはじめ、アリの中では基礎研究・応用研究ともに研究が最も進んでいるものの一つである。公的機関・研究機関から出されている情報は、最新の研究成果を反映しており、典拠を明示してあるものも多い。何がわかっており何がわかっていないのか明確にし、わかっていないことに関しては先行事例を参考にしながら他のリスクと比較衡量しつつ行動する。リスクを「正しく怖がる」という態度が、結果的に被害を軽減し、ヒアリ根絶にもつながる早道であろう。

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    ワカメやコイも 「世界を侵略する」日本固有の生物はこんなにいた!

    草刈秀紀(WWFジャパン) 1971年2月、日本で『侵略の生態学』(※1)という書物が出版された。通称『エルトンの侵略の生態学』という。原著は58年に刊行されている。本書の日本語版前書きには、次のような記述がある。「…なかでも人類の働きによる生物種の移動は、世界のどの地域においてもたいへんなもので、新しい生物が、それまで住んでいなかった地域へ、つぎつぎに“侵略”して行っています。これには、人間が意図して持ち運ぶ場合も、また意図しないにもかかわらず移動させてしまう場合もありますが、とにかく最近百年間には、この動きがとくに激しくなっているのです。こうした結果、一連の“生態的撹乱(かくらん)”がまき起こり野生の動植物間に何千万という全く新しい相互関係を生み出すと同時に、人間の健康や天然資源、さらには人間環境全体をも狂わしています」 『エルトンの侵略の生態学』が指摘する点は、現在、世界中で起こっている外来種の問題そのものであり、話題となっている外来種による影響と対策は、既に日本語版で46年前に指摘されていたことになる。 外来種の影響は、生態系の攪乱のみならず、人間の健康や天然資源、さらには人々の環境全体をも狂わしているのである。 昨今の外来種問題や防除対策などの法的根拠として、生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)の第8条(h)「生態系、生息地若しくは種を脅かす外来種の導入を防止し又はそのような外来種を制御し若しくは撲滅すること(第8条・生息域内保全)」がよく引用されている。国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているワカメ 外来種対策は、そもそも生物多様性を保全するという大きな将来目標を実現するための一つの対策として、考えられているものである。 海外から侵入した外来種による問題が昨今、多く取り上げられているが、日本も世界の生物多様性に影響を及ぼしている加害者である。ワカメもコイも「侵略者」 例えば、私たちが日ごろから食しているワカメは、国際自然保護連合(IUCN)による「世界の侵略的外来種ワースト100」の選定種の1つである。ワカメの遊走子(べん毛を持って水中を泳ぐ胞子)が日本からの商船の「バラスト水」に混入した状態でニュージーランドやオーストラリア、ヨーロッパ諸国の沿岸域に運ばれ、そこでバラスト水とともに放出されて、沿岸域に定着。増殖して、侵略的な外来生物になっている。ワカメを食べない文化圏の国々にとっては、大きな問題となっている。 バラスト水は、船舶が空荷の時に、船舶を安定させるため、重しとして積載する海水で、主に貨物を積む港において排出される。世界では、年間30-40億トンのバラスト水が移動していると推計されている。日本には、年間およそ1700万トンのバラスト水が持ち込まれ、約3億トンが持ち出されているとみられる。バラスト水に存在する生物が、船舶を介して本来の生息域でない海域に侵入し、繁殖して、被害が発生するのである。国際自然保護連合の「世界の侵略的外来種ワースト100」に入っているコイ 日本の河川や公園の池でよく見かけるコイは、比較的流れが緩やかな川や池や沼、湖、用水路などにも広く生息する淡水魚である。しかし、コイは、汚染に強く雑食性で何でも食べ、さらに低温にもよく耐える生きものである。30センチを超す大きさに育つので天敵が少なく、淡水域の水底において優占して問題となっている。移入された北アメリカでは泥臭いという理由で食用にされないこともあって、爆発的に個体数を増やして問題となっている。 日本の固有種ではないが、日本から生物が海外に広がり希少なカエルが絶滅したと思われる例もある。生態系への深刻な影響として、一時話題となった、カエルツボカビ症問題にふれざるを得ない。 カエルツボカビは感染力が強く、野外での根絶が不可能といわれ、海外では、地域的にカエル類の絶滅が起こったり、一部のカエルが絶滅したりしているケースが見受けられる。アジア起源のカエルツボカビが世界に拡散 2006年12月、日本で初めて飼育下におけるカエルツボカビ症が確認された。そして、07年1月「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」がWWFジャパンも含めさまざまな学会から16団体が共同署名して、全国に発信された。その後、飼育下および流通過程において、カエルツボカビ症の感染が明らかとなり、6月には、野生のウシガエルからカエルツボカビ菌が検出された。そこで、全国のカエルツボカビの拡散状況が研究者によって調べ上げられた。特定外来生物に指定されているウシガエル 国立環境研究所などの調査で日本のカエルから約30系統のカエルツボカビ菌が見つかったが、中米や豪州では1系統しか見つかっていないということで、アジア起源のカエルツボカビが世界に拡散し被害をもたらしたと考えられている。日本・中国・韓国などで感染の報告があっても被害の報告がないこととも符合する。 10年9月時点で50タイプのカエルツボカビ菌が確認されており、調査したカエルのサンプルの3%が菌に感染していたが大量死は発生していないこと、1932年のオオサンショウウオの標本からもこの菌が検出されていることなどから、日本ではカエルツボカビ菌が昔から自然に存在し、日本の両生類は、これにすでに抵抗力を持っている可能性が高いと考えられている。むしろ日本の研究者や採集家が用いるフィールドワーク時の装備などを通じて、カエルツボカビ菌が世界に拡散した可能性があると揶揄(やゆ)された。 『エルトンの侵略の生態学』の原著が59年前に出版されており、半世紀以上が過ぎた。この間、私たちは、外来生物対策として、今まで何をしてきたのだろうか。先人の知恵を謙虚に受け止め、学び、対処していれば、防げたことが世の中に多数存在するのではないだろうか。 外来種対策は、私たちが将来健全に生活していくために必要な生物の多様性や生態系を健全に保つための一施策である。 環境省では、外来生物被害予防三原則として、(1)入れない(悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に入れない)、(2)捨てない(飼っている外来生物を野外に捨てない)、(3)広げない(野外にすでにいる外来生物は他地域に広げない)としている。だが、日本起源の外来種が世界で悪影響を及ぼさないためにも、4項目めとして、「日本から出さない」ということを加えたい。引用文献(※1)川那部浩哉・大沢秀行・安部琢哉訳(1971):侵略の生態学,思索社(※2)カエルツボカビ症について:WWFジャパン(※3)日本由来の外来種

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    日本を侵略する外来種との「終わりなき戦い」を食い止める方法がある

    辻村千尋(日本自然保護協会保護室室長) 「ヒアリ」が発見されたというニュースが日本列島を席巻しています。毒を持っていることから人的被害への恐れがこのニュースをより大きくしている側面もあります。しかし、外来種問題の本当の恐ろしさは、人的被害だけではありません。そのことの理解のために「外来種とは何か」というところから整理します。 外来種とは、人の移動手段が人力から動力に変化し移動速度が格段に上がってから、人の手によって移動させられた生きものをいいます。日本では明治時代以降になります。そして、その外来種の中でも、他に競合する生きものがなく、もともとその地で暮らしていた生きもの(在来種)を駆逐して爆発的に生息・生育地を拡大していくものを「侵略的外来種」としています。 歴史的にできあがった自然のつながりが壊されることこそが、外来種問題の本当に怖いことなのです。ヒアリや、同時期に見つかった毒アリ「アカミミアリ」も生態系への影響に対する危険を重視しなければいけません。外来種の侵入が確認された場合、初期段階で完全駆除を徹底しなければなりません。一度定着してしまうと、根絶は非常に困難になってしまうからです。天然記念物アカガシラカラスバトの繁殖地を「サンクチュアリー」に設定し生態系保護に取り組む=東京都小笠原村父島(2011年撮影) 世界自然遺産に登録されている小笠原諸島での外来種問題をみれば、そのことの意味がよくわかると思います。 小笠原はその自然の価値から世界自然遺産に登録されています。しかし、登録前から外来種問題を抱えており、その対策の確実な履行が登録の条件でもありました。最も遺産の価値として位置付けられたカタツムリなどの陸産貝類については、再生能力を持つ扁形(へんけい)動物「プラナリア」の侵入により父島では壊滅的な状況になっていますし、特定外来生物のトカゲ「グリーンアノール」により固有の昆虫類も父島では絶滅してしまったものもいます。 野生化した猫「ノネコ」は絶滅危惧種のアカガシラカラスバトや海鳥類、ノヤギは固有の植物にそれぞれ大きなダメージを与えました。環境省や林野庁、東京都などの行政機関や研究者、地元のNPO等の活動で、例えばノネコの捕獲が進んだことでアカガシラカラスバトの生息数が劇的に改善されたり、属島からノヤギが完全駆除されたりと成果も多く上がっています。外来種問題を引き起こさない方法とは しかし、その一方で新たにグリーンアノールが兄島という無人島に侵入してしまうなど次々に問題も浮上しています。さらには、捕獲して減少したノネコの影響でクマネズミが増加したり、ノヤギによって被圧されていた外来植物が繁茂拡大する問題も起きています。このように一度定着してしまうと単純に駆除すればよいという状況ではなくなり、生物間の相互作用を予測評価しながらの対策が必要となり、結果、完全駆除ができないものも出てきてしまうのが、外来種問題の大きな課題です。 ところで、費用対効果が高く、かつ外来種問題を引き起こさない方法として、どんな方法が思い浮かびますか? それは、外来種を「入れない」ことです。しかし、グローバルなつながりがある現代では、最も難しいことでもあります。ヒアリもそうでしたが、外来種はいろいろなものと一緒に混入して運ばれてくるので、物流を止めない限り実現できないからです。もう一度鎖国するということは現実的ではありません。神戸港のコンテナヤードを調査する環境省の職員ら=6月16日(神戸市提供) それでも、できることもあります。それは不必要な物資の移動をやめることです。日本は島国です。そしてその成り立ちから地形や地質が複雑に入り組んだ箱庭のような自然環境をしています。同じ日本という国であっても、その土地土地でそれぞれの生態系があります。ましてや、国内といっても海を挟んだ島と島では生態系は全く別物のこともあります。 せめて、島と島の間で土砂の移動を制限するとか、やむをえず入れなければならないのであれば徹底した検疫システムを作るなど、できることもあるのです。 固有種の多い島では、島外から持ち込む海の埋め立てに使う土砂は、すべて焼却処理を施すことも考えられます。そんな対策をしたらいったいいくら費用がかかるのか、費用がかかりすぎて現実的ではないとの意見もあるでしょう。しかし、外来種が蔓延(まんえん)し、在来の自然に致命的な打撃を与え、多くの絶滅種や危惧種を作りながらも「終わりなき戦い」を続けることと比較した場合、どちらが「安い」のでしょうか。一度そのことを真剣に議論するべき時に来ているのではないでしょうか。

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    ヒアリの恐怖は命以外にも、米で6000億円超の経済的被害

     神戸港で水揚げされたコンテナから日本に上陸したことが5月下旬に確認されて以来、連日のようにメディアで報じられている「ヒアリ」。攻撃的な性格と尻の毒針によって、米国では毎年100人もの命が奪われている。国内初確認となる「ヒアリ」が見つかった神戸港のコンテナヤード=神戸市中央区港島「刺されて死ぬこと」はもちろん恐ろしいが、そればかりではない。1930年代からヒアリ被害に悩まされる米国では経済的にも深刻な打撃を受けている。 テキサスA&M大学農業経済学部のカーティス・ラード氏らの2006年の調査によれば、ヒアリの定着が確認されている米14州の経済的被害の合計額は54.6億ドル(約6069億円。6月22日現在、以下同)にのぼる。 被害の内訳は「一般家庭」が年間約36.7億ドル(4075億円)、次いで「電気・通信」が6.4億ドル(711億円)となっている。 巣が建物や道の下に作られれば、倒壊や陥没の危険性があるほか、通信ケーブルや電気設備を破壊することが報告されている。 農業への影響ももちろん甚大で、年間4.2億ドル(466億円)の被害があるという。ヒアリは作物を枯らす原因となるである害虫・アブラムシの数を激増させるからだ。神戸港のヒアリ駆除を担当した、環境省外来生物対策室の若松佳紀氏が言う。「ヒアリはアブラムシが出す甘い体液を好むため、共存関係を維持するべくアブラムシを保護する習性があります」 もし日本にもヒアリが定着すれば、甚大な被害は避けられない。日本経済への影響を、アリの生態に詳しい九州大学の村上貴弘准教授がこう予測する。「今は温暖な地域にしか生息できないといわれているが、ヒアリは環境適応能力が高いため、関東から沖縄までなら住み着く可能性は十分にある。各地の農業への影響はもちろん、東京、大阪、名古屋といった大都市で定着すれば、その被害額は甚大でしょう」“蟻の一穴”の時点から凶暴すぎる。関連記事■ 47都道府県の経済力 東京=インドネシア、群馬=オマーン■ 【日韓比較・経済編】名目GDP、国際特許出願件数、対外投資■ 資産2.3兆円のアリババ会長 上場で孫正義氏も笑い止まらない■ イスラム国 外国人戦闘員の月給は約72万円で油田が資金源■ 中国の外貨準備高が5000億ドル激減 人民元防衛で市場介入か

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    ブラックバスと肩を並べる「侵略的外来種」の恐るべき“被害”

    与えるという確たるエビデンスはない。だが放流するのであれば少なくとも「たぶん大丈夫だろう」ではなく、科学的な知見を基に行うべきだろう。「予防原則」の下、生態系に影響がないことを確認してから放流を行うべきではないだろうか。ニシキゴイや金魚のような美観目的の放流に限らず、漁獲量向上を狙った放流についても効果を疑問視する意見は根強い。規制する法律がない放流 アユは放流のリスクが表面化した好例だ。川や湖などの内水面では、漁業法により「獲ったら増やす」の増殖義務が漁協に課せられている。義務履行の手段として大部分を占めるのが放流だ。釣り人から徴収するアユの遊漁料が経営の柱という内水面漁協も多く、琵琶湖産のアユが友釣りに適しているとして人気を集め、戦前からこぞって全国の川に放流されてきた。 しかし90年代に入ると、アユの漁獲量が激減した。サケ由来の致死性の感染症・冷水病が湖産アユに伝染、放流によって全国に拡散したのが原因とされる。さらにある業界関係者は「冷水病のパンデミックは90年代からだが、むしろよくここまで何事もなかったなという印象。エドワジエラ・イクタルリ症など、第二の冷水病になりうる病気はアユで確認されている」と警鐘を鳴らす。 またアユは回遊魚であり、川で卵からかえり、稚魚の間を海岸近くの海で過ごした後、遡上する。しかしアユの生態に詳しい長崎大学の井口恵一朗教授は「湖産アユは琵琶湖の淡水環境に適応した『陸封アユ』であり、在来アユと比べると海水への耐性で著しく劣る。湖産アユ同士の仔はもちろん、湖産と在来の交雑個体も海水環境では多くが死んでしまうと予想される。少なくとも海から遡上してきた個体に湖産の特徴は現段階で見出されていない」と指摘する。ヤナ漁で捕れた琵琶湖のアユ この反省から、最近では川のアユを卵から育てた人工アユ種苗が放流量の過半を占めている。しかし養殖場で育った“温室育ち”の人工アユ種苗はカワウなどの捕食者を天敵と認識できず、野生では生き延びられないとされる。井口教授は「湖産アユ放流も人工アユ種苗放流も、再生産に資する増殖効果はほとんどなく、放流でアユを再生産することは期待できない。産卵場や魚道の整備によって天然アユを増やすのも、やり方によっては増殖義務の履行になる。そちらの方が良いのではないか」と語る。 海への放流で最も大きな割合を占めるのがヒラメだ。2015年現在で放流量の3割を占める。しかしこの放流も、ヒラメの再生産に寄与しているかは疑問符がつく。1999年をピークに放流量は右肩下がりであり、2015年にはピーク時の半分以下になったが、それ以後も漁獲量は6000トンから8000トンの周辺で増減を繰り返しながら横ばいに推移している。 一方、震災でヒラメの種苗生産施設が被災し、放流量・漁船数が共に激減した宮城県では、11年の漁獲量288トンに対して12年は197トンと減少したものの、13年は987トン、15年には1644トンと急増している。自然に任せることが何よりの漁獲量向上につながる方策のようだ。 話をニシキゴイに戻すと、ニシキゴイの放流を規制する法律はない。では全国各地で行われている放流を防ぐ手段はあるのだろうか。 放流を規制できるのはブラックバスなどが指定されている外来生物法のみだが、運搬や飼育なども禁止されてしまうため、産業として成立しているニシキゴイを同法の対象にするのは実質的には不可能だ。そうなると、都道府県レベルでの条例や漁業調整規則、内水面漁場管理委員会指示での放流規制が最も現実的である。 しかしこれを実現できている自治体は存在しない。ブラックバスのキャッチアンドリリース禁止など生物多様性保護では先進的と専門家から言われている滋賀県でも同様だ。愛知県では10年、既存の条例に盛り込む形で外来種の放流禁止を規定したが、指定対象選定の際にコイを加えるかどうかが議論になった。だが「コイ放流に歴史と文化がある」「広くなじまれている」など愛着を理由に指定を見送った。

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    NASA発見の新惑星が「第二の地球」になる条件はこんなにも厳しい

    福江翼(神戸市外国語大学准教授、京都大学博士(理学)) 「トラピスト1」と呼ばれる星の周囲に、地球のような小さな惑星が7個も発見され、大々的な話題となった。すでに太陽系の外には3000個以上もの惑星が報告されているにも関わらず、なぜこれほど話題になったのか。それは、生命の存在しうる惑星が、地球から近いところに見つかったのではないか、ということがポイントであろう。 今回の研究では、宇宙空間に設置されたスピッツァー宇宙望遠鏡や地球上の複数の望遠鏡を駆使した大規模な観測が行われており、観測の合計時間は1000時間を軽く超えている。非常に精度の高い巨大なデータがもたらした貴重な成果といえる。 発見された惑星は地球クラスの小型の惑星だった。一般的に、遠くにある小さなものを探すことは困難であり、地球のような小さな惑星探査は現在の天文学においてもけして簡単なことではない。実際、2016年の時点でトラピスト1には惑星の発見報告が一部あったのだが、詳細な観測をさらに進めた結果、実は7個もあったことが今回やっとわかったのである。見つかった惑星の想像図。地表には液体の水があり、 空には太陽に相当する恒星や他の惑星が浮かぶ(NASA提供・共同) 今回見つかった新たな惑星は、宇宙と生命の観点からも注目されている。地球の生命は「液体の水」が生きていく上で必要になっている。そこで宇宙の生命探査においても、惑星に液体の水が存在できるのか、という観点が欠かせない。 地球の場合、太陽から届く日光のおかげで液体の水が存在できている。トラピスト1においても、この星から惑星が遠くなりすぎると、届く光が減るために、(水という物質が存在したとしても)氷になってしまうだろう。逆に、星に近すぎると熱くなりすぎて蒸発するだろう。惑星が中心の星から「適度な距離」に存在していれば、惑星の気温も適度なものとなり、液体の水を保持している可能性が高くなる。 トラピスト1で発見された7個の惑星のうち、3個の新たな惑星が星からの距離が適度な場所(ハビタブル・ゾーン)に存在していると見積もられた。この見積もりは温室効果などの惑星環境にも依存するため、さらに増える可能性もある。 また、これらの惑星はその大きさもその重さも、いずれも地球クラスのものであることが観測から判明した。惑星の密度も地球と似ており、たとえば密度の低いガス惑星である木星のそれとは異なっている。つまり地球のような大地を持つ可能性がある。もし液体の水が十分に存在しているのならば、それは「海」と呼べるかもしれない。 もしかすると今回の発見は、生命の居住可能性を持つ惑星(ハビタブル・プラネット)、見方によれば「第二の地球」の発見に近付いているのかもしれない。そのために今回ニュースになっており、研究者としても宇宙のファンとしても注目している。太陽よりずっと軽くて温度が低い さて、トラピスト1は太陽よりはずっと軽く温度が低い星である。太陽の温度は約5800度であるのに対して、この星はおよそ2600度と見積もられていて、「超低温度星」に分類されている。この星が太陽とは異なるタイプであることは留意しておきたい。加えて、見つかった惑星はいずれもが、地球と比べると中心の星に近い場所にある。 そのため、星からの惑星への影響、ひいては生命への影響が、短期的にも長期的にも地球の場合とは異なってくる可能性がある。 地球やその周囲には太陽から日光以外にさまざまな影響が及んでいる。たとえば、わたしたちの太陽ではフレアと呼ばれる爆発現象が日ごろから起きており、フレアに伴ってX線などが発生している。そのため、生命に有害なX線や紫外線などが地球に降りかかっている。しかし幸いにも現在の地球では、オゾン層などの大気や磁気圏が地球表面の生命を上手く守りきっている。 それでは、トラピスト1で新たに発見された惑星はどうか? トラピスト1からは、比較的強いX線が発せられていることが、「XMM-ニュートン望遠鏡」を用いてすでに見つかっている。新たに発見された惑星に降りかかるX線や紫外線が大気や海にどのように影響するかはさらに研究が必要だろう。地球 もし惑星表面に有害な紫外線が大量に到達するなら、そこは生命の居住に適さなくなる。トラピスト1の惑星が地球と似た紫外線環境にとどまるためには、地球のような厚い大気やオゾン層が惑星にあるかなどに依存するとのことだ。今後は惑星大気の観測の重要性がさらに増すだろう。また、もし仮に生命体が、危険な紫外線から逃れるように海の中や地下に逃げ込んでいるならば、その探査はさらに工夫が必要になるとの指摘もある。 太陽系や地球とは異なるタイプの惑星環境において、生命はどのように誕生できるのか、もしくは生息できるのか、という問題はさらに複雑になってきている。アストロバイオロジーと呼ばれる学問分野において、これからの重要な課題になっている。 今後の新たな観測や理論研究に期待がかかる。幸いにも、トラピスト1は地球から比較的近い。地球からの距離は約39光年である。地球にもっとも近い星であるケンタウルス座のプロキシマ・ケンタウリ星が約4光年であることを考えれば、かなり近いことがわかるだろう。  一般的には、地球から近い方が望遠鏡に有利であり、それゆえに研究の発展性も見込まれる。しかもトラピスト1の惑星はトランジット惑星と呼ばれるタイプであり、適用できる天文学の手法が比較的多い。惑星大気の研究も進むかもしれない。 トラピスト1のようなタイプの星は他にも多く存在する。トラピスト1の惑星やその宇宙環境、もしかすると生命に関する話題が、この宇宙の典型的な例となるのかどうか。今後の研究に期待したい。参考文献Gillon, M. et al., 2017, Nature, 542, 456Wheatley, P. J. et al., 2017, MNRAS, 465, L74 (arXiv:1605.01564)Gillon, M. et al., 2016, Nature, 533, 221 (arXiv:1605.07211)Kopparapu, R. K., et al., 2013, ApJ, 765, 131 (arXiv:1301.6674)O'Malley-James, J. T., Kaltenegger, L., 2017, MNRAS submitted (arXiv:1702.06936)

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    「七つの地球」大発見に隠されたNASAの思惑

    寺薗淳也(会津大准教授、「月探査情報ステーション」編集長) ロマンあふれる発表…科学者として、私自身曖昧な言葉である「ロマン」という言葉はあまり使いたくないのだが、今回の発表に、一人の人間として改めて宇宙への憧れ、ロマンをかき立てられることになった。今回、NASAが発表した太陽系外惑星(系外惑星)についての発表は、これまで数多く行われてきた系外惑星に関する発表の中でも最大級の衝撃を持つものといってよいであろう。 ことによっては、この発表が、人類の歴史にとって長く記憶されることになるものになる可能性も十分にある。 今回のNASAの発表のキーワードには、3つの重要なポイントが隠されている。「赤色矮(わい)星」「ハビタブルゾーン」、そして「地球型惑星」である。この3つのキーワードを手がかりに、今回の発見の重要性を探ることにしよう。宇宙でありふれた「赤色矮星」 まず最初に出てくる言葉が、あまり耳慣れない言葉「赤色矮星」である。「矮星」という言葉は小さい恒星を指すものである。私たちがよく聞く言葉として、「白色矮星」がある。これは、太陽サイズの恒星がその寿命の最後に達する構成である。太陽は数十億年後には寿命を迎える。そのとき、太陽は大きく膨張し、周囲のガスは太陽系全体へと流れ出す。そして中心に残るのは、小さく白く輝く恒星「白色矮星」である。 しかし、赤色矮星はそのような星の最後の姿ではない。単にサイズが小さく、赤く輝いている星である。 星が出すエネルギーは、その大きさでだいたい決まる。大きい恒星は通常多くのエネルギーを放つため、表面温度が高く、白く輝く。それに対して、小さい恒星が出すエネルギーは少ないため、表面の温度が低く、赤く輝くことになる。恒星の大きさはさまざまであり、小さい恒星が存在してもよい。このような、小さく輝く恒星が赤色矮星である。 今回の発見の舞台となった赤色矮星「トラピスト1」を中心とした系外惑星系は、地球から39光年離れたところにあり、中心星の大きさは質量にして太陽のわずか0.08倍、木星より少しだけ大きいサイズと考えられている。恒星としてはまさに「極めて小さい」という言葉がぴったりである。 赤色矮星は、放出するエネルギーが少ないため非常に寿命が長い。多くのエネルギーを出す大きな恒星は、まるで浪費を止められないお金持ちのようにそのエネルギーを急速に使い、最後は超新星となって爆発するという運命をたどる。それに対し、赤色矮星は自らのエネルギーを細々と使い、数十億年以上、あるいは場合によっては宇宙の寿命に匹敵するほどの長い寿命を持つとされている。 また、赤色矮星は小さい分、宇宙における数が多いとされている。実際、赤色矮星は宇宙で最も多い恒星のタイプとされている。にもかかわらず、私たちがそれほど多くその姿を見つけることができないのは、ひとえに赤色矮星が出すエネルギー量が少ないためである。星が放つエネルギー量が少ないということは、私たちに届くエネルギーも少ないということであり、望遠鏡で発見できる可能性も少ないということである。 今回の赤色矮星は幸いにして39光年という「近い」距離にあったため発見できたが、宇宙には同じような赤色矮星が、私たちに見つけられることもなく「星の数ほど」あることが考えられる。実際、今回の赤色矮星は、銀河系内で最もありふれた恒星のタイプだとのことである。 つまり、このようなありふれた存在である赤色矮星に地球のような惑星が発見されたということは、このような組み合わせ、すなわち惑星を持つ赤色矮星(それも地球サイズの惑星を持つもの)もありふれた存在であるということを示唆するものである。 将来さらに技術が進めば、今回のトラピスト1のような赤色矮星と系外惑星の組み合わせがさらに多数発見され、今回と同じように生命が存在する可能性を秘めた惑星もみつけられることが期待できる。液体の水の存在は生命につながる液体の水の存在は生命につながる では、私たちの地球のような惑星が存在すれば、そこに必ず生命が存在できるのか。そのようなことはない。 私たちのような生命が存在するため最も重要なものは、水、それも液体の水である。ご承知の通り、液体の水は0度から100度までの間でしか存在できない。それより熱ければ水は水蒸気となる。0度より低ければ氷である。 生命の存在には水が欠かせない。おそらくはるか昔、地球に生命が生まれていく段階では、水の中に溶け込んでいたさまざまな物質、特に有機物が大きな役割を果たしたのだろう。いろいろなものを溶かすことができ、化学反応を促進できる存在である水は、こういった重要な役割に欠かすことができない存在なのである。太陽系のイメージ図 しかし、宇宙で水が液体で存在できる領域となると、意外に少ないのだ。例えば私たちの両隣の惑星をみてみよう。太陽に「少し」近い金星は、温度が高いため水が液体で存在できず、水に大気の二酸化炭素が溶けこむことがなく残ってしまい、強烈な温室効果によって表面が500度近い地獄と化してしまった。太陽から「少し」遠い火星は、かつては温度がある程度高く水があった可能性が高いが、今は温度が低く、水はふつう氷としてしか存在できない。 太陽系でさえ、水の存在は貴重なのである。このように、水が存在できる、つまり生命の存在の可能性が期待できる領域のことを「ハビタブルゾーン」という。英語では「生命が居住できる(ハビタブル)領域(ゾーン)」という意味である。 ハビタブルゾーンは、中心にある恒星からの距離と、その恒星の明るさ(エネルギーの強さ)によって決定される。これは、ストーブとその暖かさで考えれば分かりやすいだろう。 大きなストーブを中心に据えれば、かなり離れていても暖かさを感じられる。逆に、小さなストーブで暖めれば、その熱はそう遠くへ届くことはない。ストーブを恒星と考えれば、小さな恒星ほど系外惑星の内側に、大きな恒星であれば外側にハビタブルゾーンができる。 今回問題となっている恒星は、上で述べた通り赤色矮星というかなり小さく、放出するエネルギーが小さい恒星である。従ってハビタブルゾーンは系外惑星系の割と内側にあり、領域はあまり広くないはずである。にもかかわらず、今回のNASAの発表では発見された7つの惑星のうち、3つはこのハビタブルゾーンの圏内だという。 注意すべき点は、ハビタブルゾーンは水の存在が可能である領域であるというだけで、「水が必ず存在する」ということを示しているわけではない。まして、生命に必要な他の要素、例えば有機物や大気といったものの存在までは規定しているわけではない。ただ、ハビタブルゾーンに惑星があることによって、生命が生まれている可能性がぐっと高まることは間違いなく、しかも3つも圏内に入っているということは、将来より詳しい探査によってこれらの天体を調べるべきであることを意味している。明かされる「7つの驚異」の世界明かされる「7つの驚異」の世界 さらに今回、一般の人だけでなく科学者をも驚かせたのは、このような系外惑星系で、地球と同じようなサイズの惑星が同時に7つも発見されたということである。赤色矮星「トラピスト1」を周回する7つの惑星を地球から超高性能の望遠鏡で観測したイメージ(NASA-JPL/Caltech) 私たちの太陽系にある8つの惑星は、地球や火星のように主に固体(岩石や金属)からできている小さな惑星と、木星や土星のように主にガス(中心部は固体からなるケースが多いと推測される。ガスは木星や土星は水素やヘリウム、天王星・海王星はメタンなどが主)からなる大きな惑星の2つのグループに分かれる。小さな惑星のグループは地球型惑星、大きな惑星のグループは木星型惑星(さらに、天王星・海王星はひとまとめにして「天王星型惑星」とされることもある)と呼ばれる。 このうち、生命が期待できるのは、やはり地球型惑星であろう。ただ、地球型惑星は小さいため、系外惑星でこのような小さい惑星を発見することは大変難しい。チームメンバーも大型望遠鏡やさまざまな技術を駆使してこの快挙を成し遂げている。 今回、このトラピスト1の惑星系にある7つの惑星は、内側からb、c、d、e、f、g、hと名付けられており、全体として地球の0.4~1.4倍の質量を持つ(最も遠いhの質量はまだ完全に確定できていない)。ざっくりいえば「地球とほぼ同じようなサイズ」といってよいだろう。観測により、これらの天体が岩石質である(木星などのように、ガスが主体の惑星ではない)ことも明らかになった。 惑星のうち、最も内側にあるbは、太陽系でいえば水星よりも内側を公転していることになり、ここに水が存在するのは難しい。上で述べたハビタブルゾーンに属する惑星はe、f、gの3つである。 ただ、水の存在についてはいくつか問題がある。今回の発見では大気の存在までは確認できていない。もし大気が存在しないとすれば、表面の液体の水が蒸発し、宇宙空間へとやがて逃げていってしまう可能性も考えられる。ただ、地球サイズの天体であれば大気を十分に保持できると考えられるので、今後の発見には期待が持てそうだ。 また、ハビタブルゾーンに属する3つの惑星(e、f、g)については、公転周期がなんとそれぞれ6~12日と、地球(365日)に比べれば大変短い。中心の恒星からの距離も、eが0.03天文単位、fが0.04天文単位、gが0.05天文単位(天文単位とは地球と太陽との距離…約1億5000万キロで、太陽系などで距離を表す際に使われる指標である)と、地球に比べるとこれまたとんでもなく中心に近いところを回っている。ただ、中心の恒星の光が弱いため、このくらい近い距離であってもハビタブルゾーンに属していることになるのだ。仮に水や大気が存在したとしても、その惑星の世界は地球とは相当かけ離れたものとなっているに違いない。 さらに興味深いことに、外側1つを除く6つの惑星は、いずれももともとあったものではなく、どこかほかのところからやってきて、この天体の重力に捕まったものと研究者たちは考えている。 7つとも地球型惑星だとはいえ、それぞれの世界が多様であることが十分に推測できる。もちろん、ハビタブルゾーンの3つの惑星に最も強い関心が集まるであろうが、その他の惑星が魅力的でないわけではない。むしろ、それぞれが「7つの驚異」の世界だと考えると楽しいだろう。 このあたり、研究メンバーの1人であるマサチューセッツ工科大学のジュリアン・デ・ウィット氏は、「ロゼッタストーン(エジプト古代文字の解読につながった石板)は7つの言語で書かれていた。私たちはこの7つの惑星から、その世界を読み取ることができるのだ。」と語っている。 これらの惑星がどのようにして誕生し、いまに至ったのか。それぞれの惑星がどのような環境を持ち、互いにどのような影響を及ぼしているのか。恒星のそばを早い周期で回るような環境の惑星に生命が存在しうるのか。私たちは今はじめて、地球や金星、火星などと直接比較できる、まったく別の世界へと足を踏み入れようとしているのである。NASAの「あおり」にそそのかされるな 今回の発見は、もちろん「宇宙人の発見」でもなければ「生命の発見」でもなかった。これまで、NASAの重大発表というアナウンスがあると、かなりとてつもない発表が行われるという期待がメディアやインターネットを駆け巡り、その後実際の発表のあと落胆する、ということがしばしばあった。このようなNASAの「あおり」の一因は予算獲得にもあるのだろう。大きな成果を強調し、プロジェクトや組織全体への予算要求を正当化し、議員などへの説明に使おうということだと考えられる。 従って、今回の発表をオオカミ少年のような形で扱うことは適当ではなく、科学的にその内容を冷静に吟味することが必要だ。私たちも、ロマンあふれる発表とはいえ、あくまでまだ「生命存在の/水の存在の」可能性が示されているというだけであり、一気に飛躍して考えるべきではない。 にもかかわらず、今回の発見の衝撃は大きい。赤色矮星というありふれた存在に、地球型惑星が数多く存在し、そのうちの多くが生命存在の可能性のある領域にあるとなれば、宇宙に私たち以外の生命がいるかどうかという人類究極の疑問への答えが一歩、それもイエスに近い方向に進むことになる。 そのうえで、まず今後はこの恒星、そして系外惑星系の観測をよりしっかりと行っていくことが重要だ。取り急ぎ最も重要なのは大気の存在とその成分の確定であろう。大気があるとなればさらに水の存在の可能性は高まる。生命へとつながる。 また、他の恒星、とりわけ赤色矮星系に似たような惑星系が存在しているのかを調べることも重要だ。赤色矮星はそれ自体が暗いために発見が難しく、惑星はさらに暗いため、惑星の発見はまさに至難の業といえる。丹念な観測が必要だ。 より長期的には、こういった宇宙観測を強化する体制が必要であろう。日本でも国立天文台が中心となって、口径30メートルという超大型望遠鏡「TMT」の開発を進めている。このような次世代型巨大望遠鏡と、超高感度のセンサーを組み合わせれば、これまでみつけられなかったものを発見できる可能性はぐんと高まっていく。 宇宙望遠鏡も、もちろん活躍してくれるであろう。NASAが開発中で、2018年打ち上げ予定の新世代の宇宙望遠鏡、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡は、これらの惑星の大気観測に活用できると考えられる。 もちろん、宇宙に生命が発見されたからといって、明日から私たちの暮らしが急に変わるわけではない。給料が上がるわけでもなければ、生活が便利になるわけでもない。しかし、このような科学的な発見が世の中を変えていったことは歴史が証明している。そして、私たちに好奇心というものがある限り、発見しようという人類、そして科学者の熱意がついえることはない。 私たちにできることは、こういった科学的な発見のニュースを理解し、いろいろな形で科学を支援し、そして科学的なものの考え方を身に着けていくことであろう。そうすれば、ある日「生命発見」のニュースが流れたときに、私たちは冷静に、自分たちが新しい時代に足を踏み入れたことを理解し、喜べるはずだ。そしてそのとき、今回のニュースを、自分たちがそのような「科学的なものの見方」に誘ったきっかけとして振り返ることになるだろう。今回の発表の衝撃は、その事実もさることながら、私たちのものの見方に与える衝撃でもあるのだ。

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    スーパー宇宙望遠鏡が「トラピスト星人」を発見する日

    堀川大樹(慶応大先端生命科学研究所特認講師) 2017年2月21日、NASAは太陽系外の惑星に関する新発見について記者会見を開くことをアナウンスした。「これは間違いなく、地球外生命探査にかかわる新知見だろう」。筆者はそう確信した。 というのも、ここ数年、NASAは1年に1〜2回ほどのペースでこのような会見を開いているが、これらの発表内容はすべて、地球外生命探査にかかわるものだからだ。「この宇宙には我々以外に生命がいるのだろうか?」という大きな問いを解明するための挑戦は、冷戦終了後の世界における、宇宙開発の大きな目的になっている。 2017年2月22日(日本時間23日)にNASAが開いた会見の内容は、「第二の地球」候補の惑星を複数含む太陽系外の「トラピスト1惑星系」についてのものだった。やはり、地球外生命探査にかかわる内容だった。ケネディ宇宙センター 今回、太陽よりもはるかに小さく低温の赤色矮性「トラピスト1」を、地球に近いサイズの7つの惑星が周回していることがわかった。さらにこの7つのうちの3つは、(もしも大気があればの話だが)水が液体の状態で地表に存在できる環境条件であることが、観測と計算により推定されたのである。 我々人間、そして、地球上の他の生物を見ればわかるように、生命が生きていくためには液体の水の存在が欠かせない。逆にいえば、地球外のとある惑星に、もしも液体の水があるとすれば、その惑星では生命が誕生し、蔓延っている可能性がある。もしかしたら、そのような惑星には我々人類と同等、あるいはそれ以上の文明をもつ地球外生命体がいる可能性もあるのだ。 このようなわけで、生命探査には、液体の水が存在しうる、つまり、生命が棲息しうる環境(ハビタル)な惑星を探すことが欠かせない。 だが、太陽系外のにこのような惑星があるかどうかは、最近まで不明であり、謎とされていた。もっといえば、太陽系外に「惑星があるかどうか」すら、長いあいだ見つかっていなかったのである。 太陽系外の惑星が初めて確認されたのは、1990年代に入ってからである。恒星のふらつきを検出することで、その周りを回る惑星の存在を予測するドップラー法や、恒星からやってくる光の減退を検出することでその前を横切る惑星の存在を確認するトランジット法などの観測技術が向上したことにより、系外惑星が次々と認定されるようになった。とくに2009年に打ち上げられたケプラー宇宙望遠鏡の活躍により、新たに認定される系外惑星の数は飛躍的に増加している。最強の宇宙望遠鏡で明らかになるもの だが今回のトラピスト1惑星系のように、太陽系外のひとつの惑星系に、地球サイズのハビタブルな惑星が3つも確認されたのは、これまでで初めてのことである。ただし、今回の研究成果からは、トラピスト1の惑星群に大気や水が存在するかは、まだ分からない。大気や水が存在するかどうかは、今後の観測と分析を待たなくてはならない。 さて、これらを調べるにはどうしたらよいだろうか。トラピスト1は、太陽系からおよそ40光年離れているため、そこまで探査機を飛ばして調べることは、残念ながらできない。だが、地上および宇宙で望遠鏡を用い、はるか遠くからやってくる光を分析することにより(トランジット分光法)、これらの惑星群の「プロファイル」を調べることが可能になる。報道公開されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の主鏡=メリーランド州グリーンベルト、ゴダード宇宙飛行センター 今後の観測の中でもとくに期待されているのが、次世代宇宙望遠鏡のジェームズウェッブ宇宙望遠鏡だ。2018年10月に打ち上げ予定のジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、高感度の赤外線観測ができる。簡単にいえば、これまでのどの望遠鏡でも見えなかったものを見ることのできる「目」をもった望遠鏡である。このスーパー望遠鏡により、トラピスト1の惑星群をはじめ、そのほかのハビタブルゾーンにある「第二の地球」候補である系外惑星のプロファイルを、これまでにない精度で分析することが可能になる。 ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測で、トラピスト1の惑星群からもしも水が検出されれば、生命が潜んでいる可能性が出てくる。酸素も、生命の存在を示唆する重要な指標(バイオマーカー)だ。酸素は反応性が高いため、すぐに他の物質と結合してしまう。酸素が存在するということは、植物様生命体による生命活動により絶えず酸素が待機中に供給されている可能性が高いからだ。そのほかに、オゾンやメタンなどの物質も重要なバイオマーカーとなる。 あと2~3年後には、今回の発表とは比べものにならないほどのインパクトをもつ新発見が、次々と発表される可能性が高い。「真の第二の地球が見つかった」と喜ぶ地球の人々。そのようすを眺めながら、「今ごろになって、やっとかよ」とほくそ笑むトラピスト星人が、もしかしたらいるかもしれない。

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    人類は「七つの地球」に移住できるか

    39光年先の宇宙で地球によく似た7つの太陽系外惑星を、米航空宇宙局(NASA)が発見した。生命に不可欠な水が液体の状態で存在する可能性があり、地球外生命への期待も高まる。いつの日か、人類が「第二の地球」に移住できる日は来るのか。世紀の大発見の意義を読み解く。

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    地球外生命体による電波? 遠い星から届く奇妙なメッセージ

    見つけたという研究発表があったそうだ。遠い星から届く奇妙なメッセージは「おそらく宇宙人からのもの」と科学者が論文で発表 – GIGAZINE 人知をはるかに超え、無限の広さを持つとも言われる宇宙について人間はまだまだ知らないことが多すぎるといえます。その中には、地球以外の惑星における知的生命体の存在が含まれているのですが、カナダのケベックにあるラヴァル大学の研究チームは、深宇宙から届いた数々の不可思議な電波を分析して、「おそらく地球外生命体によって発信されたものだ」とする論文を発表しました。Strange messages coming from the stars are ‘probably’ from aliens, scientists say | The Independenthttp://www.independent.co.uk/news/science/aliens-proof-evidence-facts-stars-scientists-extraterrestrial-life-et-intelligence-a7377716.html論文を発表したのは、ラヴァル大学で研究を行っているErmanno F. Borra氏とEric Trottier氏です。両名は宇宙から届く電波の研究の中で、特に地球から遠く離れた深宇宙から飛んでくる電波をフーリエ変換して調査したところ、特殊な変調が見られることを発見。その特異な変調パターンから、これらが地球外知的生命体によって発された存在を知らせるための電波である可能性があるとしています。 問題は、その信号を解読できるかどうかだね。起源がまったく異なる知的生命体の、未知の言語を解読するのはかなり困難。数学は宇宙共通……という考え方もあるのだが、それすらも人類の思考パターンやロジックに依拠している。10進法や2進法などで記述される数学でも、未知の種族が数学を別の表現で形にしていたら、我々には理解できない。逆もしかり。知的生命体は宇宙のどこかにはいる ラジオ放送の初めての実験は1900年なので、116年前。そのときの電波が宇宙空間に飛んでいたとしても、まだ116光年しか届いていない。もっとも、このとき使用された火花式送信機は出力が弱く、遠距離には届かなかったので宇宙空間にまでは達していない。 本格的なラジオ放送は1920年代からだが、100光年先で受信することはほぼ不可能だろう。現在では、様々な周波数で電波が飛び交っているが、それらが他の恒星系で受信されることがあるだろうか? かすかに届いていたとして、そこから意味あるメッセージを解読できるとは思えない。 「地球から遠く離れた深宇宙から飛んでくる電波」というのが、何光年先なのか書かれていないが、距離は重要だろう。あまりに遠いと、発信源の電波はかなり強力でないと届かないからだ。 また、日本語記事には書かれていないが、この論文の対象となった恒星は、恒星のスペクトルが「K1~F2スペクトルの太陽型恒星で234個から発見された」とソース元には記されている。さらに、「銀河ハローにおける非常に独特の化学組成に起因する可能性もあり」という可能性も示唆されている。 なかなかに興味深いのだが、自然現象の可能性が高い気がする。というのも、地球においてすら、もっぱら受信することに精力を注いでいて、こちらから大出力の電波をどこかの恒星系に向けて積極的に発信しているわけではないからだ。 知的生命体は宇宙のどこかにはいる。それは間違いない。なぜなら、私たち人類が存在しているからだ。銀河の数は、最近、2兆個と推定され直した。CNN.co.jp : NASA、銀河の数を2兆個と発表 従来推定の10倍に 米航空宇宙局(NASA)は13日、観測可能な宇宙の範囲内にある銀河の数は2兆個と、これまで推定されてきた数の10倍に上ると発表した。英ノッティンガム大学の研究チームが数学モデルを駆使し、現在の望遠鏡では見ることのできない銀河の数も含め算出した。 2兆個の銀河×2000億の恒星=4*10の23乗=4000垓(がい) 人類の存在の確率が、1/4000垓というのはほとんどゼロ(不可能)に近いことになってしまう。 おそらく、どんな恒星系でも惑星をもっていれば、バクテリアのレベルだとしても生命は存在するだろうし、生命は誕生したら進化するだろう。その進化がどこまで進むかは、生存環境がどれだけ安定しているかに左右される。地球ですら、全球凍結や恐竜絶滅の決定打となった小惑星の衝突などを経て、人類にまで辿り着いている。 宇宙の隣人は、どこかにいる。ただ、それが電波を観測することで見つかるかどうかは、また別の問題。(「諫山裕の仕事部屋」より2016年11月1日分を転載)

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    新発見の惑星で生命誕生と進化を可能にする「小さな太陽」の正体

    彦(東京薬科大教授) 7つの岩石惑星が地球から39光年の場所にある星の周りで発見されたことが、英国の科学雑誌ネーチャーで発表されました(Gillon, M. et al. Nature 542, 456-460)。その解説記事も同じ号に載っています(Snellen, I. A. G. Nature 542, 421-422)。 太陽の周りには7つの惑星が回っています。夜空の星は、地球から遠く離れた場所で、太陽のように輝いています。その周りにも、多くの惑星があることがわかってきています。発見された7つの惑星と太陽の役割をする赤色矮星のイメージ(NASA-JPL / Caltech) それらの惑星を直接見ることは望遠鏡でも難しいのですが、星の輝きを観測すると、惑星があることを推定することができます。遠くの星と地球の間を惑星が通り過ぎると、惑星が通り過ぎる間、星の光がほんの少し遮られることになります。この方法で、これまでに3500もの惑星が見つかっています。 ただし、この方法にはいくつもの難しい問題があります。例えば、星の大きさが大きい場合です。大きな星の前を遮る惑星が小さいと星の光はほとんど減らないので検出は難しくなります。惑星の軌道面が地球からみて傾いていれば、惑星が星の前を遮ることはありません。 さらに、惑星の周期が長いと、たとえば数年あると、観測している間には星の前を遮る可能性は大変低くなってしまいます。これまで見つかった3500個は、こうした問題点を超えて見つかった惑星の数なので、これよりも遙かに多数の惑星が宇宙にはあるのだろうと想像されています。 今回の発表では太陽よりも遙かに小さい、トラピスト1という名前の星を観測してその惑星の探査が行われました。トラピスト1は太陽よりもかなり小さく、木星をすこし大きくしたほどの大きさしかありません。 星の大きさが小さいと明るさが遙かに弱く、暗い星です。星が暗いので、その前を遮る惑星が小さくても検出できるわけです。その結果、地球とほとんど同じ大きさをした惑星が、7つも一度に見つかりました。 これまで、地球と同じくらいの惑星も見つかっていましたが、数はそれほど多くありませんでした。一つの星の回りにいっぺんに7つも見つかった事は、地球と同じくくらいの大きさの星が実は宇宙にはまだたくさんあるということを想像させます。 これらの7つの惑星は、トラピスト1の近くを回っていますが、7つのうち、内側の6つの周期は1.5日から13日と地球に比べると遙かに早い周期で回っていました。「トラピスト1」は太陽の数百倍長生き さらに、おもしろいことは、これらの惑星の周期がきちんとした整数比になっていたことです。つまり、一番内側の惑星が8回周回する間に、2番目の惑星は5回、3番目の惑星は3回、4番目の惑星は2回周回するという関係を持っていました。こういう関係があると良いことがあります。 つまり周期がおたがいに整数倍だと、いくつかの惑星がある時、近い距離にくることになり、その時の相互作用によって惑星の周回速度がほんの少し変化するのです。その変化の度合いを調べると、遙か彼方の惑星の質量がわかってしまいます。 惑星が星の回りを通り過ぎる時の暗くなる程度は、惑星の大きさ(直径)によっているので、惑星の直径もわかります。こうして、惑星の質量が判明し、直径がわかると惑星の比重が確認できます。今回見つかったトラピスト1の惑星の比重がわかり、トラピスト1の惑星が地球や火星の様に、多分岩石でできているだろうということも判明したのです。※写真はイメージ トラピスト1の惑星の周期がわかるので、星からどれくらいの距離を回っているかが算出できます。星の明るさから、そのトラピスト1の表面がどれくらいの温度かもわかります。 今回発見された、7つの惑星は星から大変近い場所を回っているのですが、トラピスト1が暗いので惑星の温度は十分低く、もし水があれば液体の状態を保っていられる程度に低い温度なのです。水が本当にあるかどうかはわかりませんが、海があるかもしれないという事を想像させます。 この星は地球から39光年しか離れていません。39光年というと光の速度で39年かかるという距離ですから、遙かかなたには違いありません。しかし、宇宙の大きさが138億光年であることから比べると太陽系に非常に近い距離にあることになります。 来年ジェームス・ウェッブという宇宙望遠鏡が打ち上げられる計画です。この望遠鏡は、遠くの惑星の大気を観測することができます。トラピスト1の惑星に大気があるのかどうか。観測が行われるかもしれません。 トラピスト1は大変小さい星ですが、小さい星の温度が低いと言うことは、星の中で進行する核融合反応の速度が非常にゆっくりと進むことになります。すると、星の寿命は長くなり10兆年長生きすることになります。 太陽は46億歳ですが、あと数十億年で寿命が尽きます。トラピスト1はその数百倍も長生きをします、生命が誕生して進化するのには十分すぎる時間だろうと、ネイチャーの解説はこう締めくくっています。

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    重量8tの中国宇宙ステーションが制御不能で頭上に落ちてくる

     いまや米露と並ぶ宇宙大国となった中国。人民解放軍主導で進められる宇宙開発への懸念は、軍事的脅威の拡大だけではない。拓殖大学客員教授の石平氏が解説する。* * * 近年、中国の宇宙開発は目覚ましい進展を遂げている。昨年10月には6度目となる有人宇宙船の打ち上げに成功(神舟11号)。軌道上の宇宙ステーション実験機「天宮2号」にドッキングし、飛行士2名が33日間に及ぶ宇宙滞在を実施した。さらに2018年には「天宮」のコアモジュール(本体)を打ち上げ予定で、2022年には宇宙ステーションの完成を目指すという。 中国の宇宙開発の主な狙いは2つ。一つは国威発揚だ。冷戦時代に米ソが宇宙開発で覇を競ったように、宇宙開発は国力の象徴となる。習近平には、国内外に技術力の高さを見せつけ、宇宙開発の分野でも中国が覇権を握りつつあることをアピールする意図もある。 もう一つは、言うまでもなく軍事目的だ。1990年代から本格化した中国の宇宙開発は人民解放軍主導で進められ、有人飛行、月面探査、宇宙船のドッキングを次々と成功させてきた。 さらに中国は、2007年1月に自国の気象衛星を弾道ミサイルで破壊した。この実証実験は米国をはじめとする国際社会を震撼させた。 米国の軍事行動は人工衛星に大きく依存しており、中国が地球上からのミサイル発射で衛星を確実に破壊する技術を持てば、ハイテク化された米国軍は無力化されてしまう。これは重大な軍事的脅威である。 そうしたなか、中国の宇宙開発に新たな懸念が広がっている。2011年に打ち上げられた宇宙ステーション実験機「天宮1号」が、今年後半に地球へ落下することが報じられているのだ。 当初、中国当局は「天宮1号」が制御不能に陥っていることを否定していたが、最近になってこれを認めた。背景には、宇宙開発を急進するあまり、技術が追いついていない現実がある。(iStock) 8tもある「天宮1号」の本体のほとんどは大気圏で燃え尽きるとされているが、米国の宇宙物理学者でハーバード大教授のジョナサン・マクダウェル氏によれば、「燃え尽きなかった一部のパーツが地上に降り注ぐかもしれず、落下地点も予測できない」という。 一方、「地球の表面の7割は海だから、陸地に落下する可能性は低い」との見方もある。だが、2015年11月にはスペインで、衛星の破片と見られる物体が一週間のうちに3つも落下し騒動となった。毎年、いくつもの宇宙ゴミが陸地に落ちていることを考えれば、「天宮1号」の破片が地表に降り注ぐ可能性は否定できない。 当の中国は国際社会への 影響よりも自国の利益を優先する国だから、たとえ誰かの頭に金属の塊が落ちてきても習近平は何の関心も持たないだろう。私たちは中国がそういう国であることを自覚し、禍に巻き込まれぬよう祈るしかないのだ。●せき・へい/1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒業。四川大学哲学部講師を経て、1988年来日。1995年、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了後、評論活動に入る。2007年、日本に帰化。『なぜ中国人は日本人を憎むのか』、『なぜ中国はいつまでも近代国家になれないのか』(いずれもPHP研究所刊)、『帰化人が見た靖国神社のすべて』(海竜社刊)など著書多数。関連記事■ 江角マキコ 「実際は4時間、同席者いた」A氏との関係語る■ イ・ボミ超えの韓国美女2人参戦へ 女子ゴルフが開国ムード■ テレ朝局内不倫報道 田中萌アナと加藤泰平アナの明暗■ 大谷翔平 コース料理では足らず1万円松葉ガニ3杯おかわり■ 松方弘樹さんの事実婚妻 自分で納骨希望、財産分与は難航か

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    俺にもノーベル賞のチャンスはある! 湯川秀樹の背中を追った日本人

    文化研究科准教授) 2000年以降、日本人のノーベル賞受賞者(以下、物理学、化学、生理学・医学の自然科学3賞を指す)が増えていることが注目されている。日本人といっても国籍が日本ではない受賞者や、受賞対象となった研究が国外で行われた受賞者もいるが、日本で高等教育を受けた人々による日本で行われた研究が受賞する例が格段に増えていることは間違いない。 近年の受賞者が受賞対象となった研究を行ったのは、おおよそ1960年代から1990年代であり、戦後の復興から脱した日本が次の段階に向けた成長を遂げた時期であった。研究が行われた環境は個々の場合によって異なる。しかし、戦後、若干でも余裕が生じた時期に、能力のある若者が科学研究に進み、独創性に富む研究を行うようになったことの淵源は、日本の科学の歴史の中に見出すことができる。夏目漱石 日本が大規模に西洋由来の科学を導入するようになったのは明治維新後のことである。とはいえ明治初期は学習に忙しく、研究を志す若者が目立つようになるのは明治20年頃になってからであった。当時、ほとんどが外国語で書かれていた教科書を開けば、目に入るのは西洋人の名前ばかりであるから、日本人あるいは東洋人が果たして研究を行う能力を持つのかどうかさえいぶかしく、一生を研究に捧げようと決意するには勇気が必要であった。たとえば物理学者の長岡半太郎は、東洋人には独創的な科学研究を行う能力がないのではないかと考えたが、中国の古典を紐解き、オーロラや地磁気の発見は中国人が西洋人に先駆けて行っていることを見出したうえで、ようやく安心して物理学に進んだ。 長岡の場合は、東洋人も西洋人に負けない学術上の貢献を行いうることを見せたいという強い熱意を持っており、これが学問に進んだ動機の一つであった。明治半ばの学問を志す若者の間では、こうした意欲の持ち方は珍しくはなく、夏目漱石は英文で優れた著作を送り出し世界に問いたいとして英文学を専攻し、近代鳩山家の祖の鳩山和夫は法学をそのような場として選んだ。医学者の北里柴三郎がドイツ留学によって研鑽を積みたいと考えたのも学術で世界に知られた日本人がいないことを憂えてのことであった。 個別の学問への理解が進むと、しかし、世界に挑戦するのに適した領域と、そうではない領域があることが次第に気付かれていった。夏目漱石は年少の友人で物理学を志す寺田寅彦に、科学はコスモポリタン的性格をもつが英文学ではそうではないとロンドンから書き送り、鳩山和夫も国ごとの違いの大きい法学では世界規模での挑戦はできないと息子に語っている。世界を舞台にした競争や、西洋への挑戦は、どの学問分野でも行いうるというわけではなく、長岡の選んだ物理学や北里の進んだ医学、すなわち自然科学という領域においてより成立しやすい。山極勝三郎への評価で生じたノーベル賞への不信感北里柴三郎 もちろん、科学を生み育ててきた西洋の伝統は長く、日本からの挑戦は容易には成果を生まなかった。20世紀初めには、挑戦の成果を最もわかりやすく示すノーベル賞が誕生しており、北里柴三郎がその初回の賞に推薦されるなど、日本の科学者もごく初期から関わりは持っていた。しかし、受賞というかたちで挑戦の成果が現れることは、戦前期にはなかった。 戦前期でも、日本人が健闘した例はある。山極勝三郎が1915年に世界で初めて人工的に癌を発生させたのは最も顕著な研究であり、1925年に日本から、翌年にはドイツから、ノーベル賞への推薦があった。しかし、同系統とみなされた研究で1927年にデンマーク人がノーベル賞を単独で受賞し、1930年に山極が死去すると(死者にはノーベル賞は授与されない)、関係者は、これほどの業績も西洋人は評価しないのかと落胆した。東洋人に対しては偏見があり、学術上の評価もそうした偏見に左右されているのではないかともささやかれるようになった。 物理学賞については、長岡半太郎は長年にわたってノーベル物理学賞の選考委員会から推薦を依頼されていたが、1910年代から1938年に至るまでに彼が推薦したのはすべて外国人であり、この期間には彼が評価するに値すると判断できる研究者は、日本からは現れなかった。1940年になって長岡は初めて日本人の名前を挙げたが、そのときの候補者が湯川秀樹であり、推薦の対象とした研究は湯川の中間子論であった。この時点では湯川の理論は実験的な確証が得られていなかったが、1947年に宇宙線中に中間子が発見され、1949年に湯川は日本の科学者として初めてノーベル賞を受賞することになる。 1945年に太平洋戦争が終結したばかりであり、この戦争では日本は「科学戦」に敗れたとする指摘もまだ声高に唱えられていた時期であったから、1949年の湯川のノーベル賞受賞は国民全体に大きな自信を与えた。当時すでに日本の原子核・素粒子物理学は世界的水準にあったが、自身の能力を試したいと思う若者がこの領域にさらに流れ込んだ。2016年現在に至っても、日本のノーベル賞受賞者のうち6名(米国籍の南部陽一郎を含めれば7名)はこの領域、あるいは関連領域の研究者である。湯川の受賞を見て、素粒子物理学は無理でも物理学のその他の領域に、あるいは物理学ではなくともそれ以外の科学の領域に進んだ若者も多かったものと思われる。湯川の受賞で高まったノーベル賞への「信頼」 ほかの領域ではなく物理学で日本からの「挑戦」が成功した事情を理解するには、日本のみならず世界の状況をも考える必要がある。エックス線の発見などに端を発する、19世紀末から続いた物理学上の変革は、1930年代に至って量子力学という新しい基礎理論の誕生という帰結をもたらしていた。物理学研究を行うための枠組みはこれによって大きく変化し、17世紀末のニュートン力学の誕生に次ぐ変革がこの分野にもたらされた。湯川秀樹=昭和42年7月 基本的な規則の変更であったから、旧来の科学研究において長い伝統をもつ地域の人々が必ずしも有利なわけではなく、新たに科学研究に参加した地域の人々のほうが、新しい発想や方法に基づく研究で成果を挙げるという事態が生じた。そのような集団として目覚ましい躍進を遂げたのはアメリカの物理学者たちであったが、日本でも小規模ではあったが同様の事態が生じた。1937年に日本を訪れたニールス・ボーアに、湯川が自身の中間子論(発表は1934年)の構想を話したところ、ボーアは「新しい粒子が好きなんだね」と軽くあしらった。しかしボーアが日本を離れて間もなく、その中間子が前年に宇宙線中で発見されていたという報告がアメリカで行われ、湯川の理論は世界の研究者の関心を集めるようになる。 結果的には1936年に発見された粒子は中間子ではなかったが、上述のように第二次大戦後に湯川の理論は実験的確証を得てノーベル賞を受賞し、素粒子物理学は日本が高い国際競争力を誇る領域となった。さらに、日本人・東洋人であっても、有無を言わせぬ成果を挙げればノーベル賞の選考者はこれを評価するということも明らかになった。長岡の例で見たように、物理学賞や化学賞では、戦前に日本人が推薦された例は極めて少なく、物理学賞で本多光太郎と湯川秀樹、化学賞で秦佐八郎と鈴木梅太郎が候補になっているのみであるが、湯川が受賞して以降、1965年に朝永振一郎が物理学賞を受賞するまでに、朝比奈泰彦、外山修之、水島三一郎、山藤一雄が日本の科学者によって推薦されている。ノーベル賞に対する信頼や期待が、湯川の受賞によって高まったことがわかる。 明治期以降、日本の科学者が積み重ねてきた努力が、国際的な学問の潮流と相まって、ノーベル賞受賞という分かりやすいかたちでの成果が最初にもたらされたのが素粒子論、物理学においてであった。科学分野において突破口を開いたこの領域は日本の誇る研究分野であり続けている。同時に、湯川秀樹の受賞は、日本人も科学研究において第一級の成果を挙げることが可能であり、また優れた成果であれば日本人のものであっても公正に国際的評価が与えられることを明らかにした。1949年という時期にこのことが明示されたという事実は、日本の社会、特に知的能力に自信をもつ若者たちの間で、科学研究への期待と研究業績に対する国際的評価への信頼が回復し、その後も維持され続けていくうえで大きな意味を持ったと考えられる。

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    オートファジーと遺伝子組み換え食品の「不都合な真実」

    ばれ、もともと酵母菌で見つかった作用でした。(中略)その分子レベルのメカニズムは東京工業大学の日本人科学者によって発見されましたが、近いうちにノーベル賞をとるといわれている大きな業績です〉 まるで大隅栄誉教授のノーベル賞受賞を「予言」していたかのような記述だが、オートファジー研究のどのような点が画期的なのだろうか。同書の著者である村上篤良氏(「一般社団法人 最先端医科学研究会」代表)は、こう解説する。「もともと細胞には、侵入してきたバイ菌や異物をファゴソームという消化用の袋に閉じ込めて分解酵素と混ぜることで消化分解し、外敵から身を守ると同時に細胞内でアミノ酸などの栄養素を取り出して利用する仕組みがあります。オートファジーは、その現象が外敵だけではなく、細胞自身の持つタンパク質などの分解・再利用にも使われていた点が驚くべき発見だったわけです。 この発見のずっと以前から、酵母菌は食物を与えなくてもある程度の期間、生き延びられることが知られており、“不老不死の菌”として研究されていました。オートファジーが発見されたことで、人間の細胞内でもタンパク質やアミノ酸の再利用システムが機能していることがわかり、医学や栄養学を根本から見直すきっかけになっています」 村上氏は同書で、生命が進化の過程でそうした機能を獲得したということは、それだけ生物の身体を形作るタンパク質やアミノ酸の合成が身体に大きな負担となるからだと指摘し、同書のテーマであるサプリメントの活用が人間の健康維持に重要であることを説いているのだが、同時にこれはある社会的テーマの再考を促す事実であると警告する。いつかの“割烹着リケジョ”の反省はないのか「これだけバイオテクノロジーが発展しているにもかかわらず、なぜか学校では教えていないことですが、実は人間の遺伝情報を記録しているDNAには2つの作られ方があります。原子や分子を一から組み立てて作る『デノボ合成』というやり方と、食物として摂取した動物や植物のDNAユニットを分解して再利用する『サルベージ経路』というやり方です。 赤ちゃんのうちはデノボ合成が8割くらいありますが、成長するにしたがってサルベージ経路の割合が増え、70歳くらいでほぼ0になります。つまり、人間は食べた動植物のDNAを再利用しなくては生きていけなくなるのです。オートファジーという機能があるのと同じ理由で、たんぱく質やアミノ酸を合成することは、生物にとってとてもエネルギーを大食いする大変な作業だからです」(村上氏) それ自体は人体の優れた機能であるが、心配もあるという。村上氏が続ける。「近年、懸念されている遺伝子組み換え食品が本当に人間の遺伝情報に影響を与えないかという問題です。これまでの科学的調査では、そうした影響はないとされていますが、食べた動植物のDNAが人間のDNAの材料になっているのですから、影響がないのは“たまたま”かもしれません。人間に取り込まれたら病気を引き起こすような食品中のDNAが、消化不良で塊のまま、荒れてデコボコの腸壁から吸収されてしまう可能性もないとはいえないのです。 例えばがん細胞は、遺伝情報のバグによって変異した人間自身の細胞です。大隅教授の快挙を祝福するだけで終わらず、この機会にそうした問題にも目を向けるきっかけになればいいですね」(村上氏) いつかの“割烹着リケジョ”の反省があるのかないのか、テレビや新聞は大隅氏のヒゲが似合っているとか、研究仲間が「七人の侍」と呼ばれているなどとお祭り騒ぎをしているが、せっかく一般には知られていない専門分野に注目が集まったのだから、我々の生活や健康に関わる問題に広く光を当ててもらいたいものだ。関連記事■ 祝ノーベル賞! iPS細胞の基礎から可能性までが分かる本■ 物理的刺激で再生医療応用へ 期待の「メカノバイオロジー」■ 車椅子が要らなくなる? 「STAP細胞」で何が実現されるのか■ アジア人の陰茎は10.2~14cm チンパンジーの8cmに勝つ■ 雌チンパンジーに性的刺激与える実験したら「もっと!」と要求

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    韓国紙 日本人のノーベル賞受賞に「うらやましいばかり」

    二の3氏の受賞が決定した直後の2014年10月9日、『中央日報』(電子版)は社説で、〈1人のノーベル科学賞の受賞者も輩出できない韓国の立場としては、うらやましいばかりだ〉と、思わず本音をぽろり。 一方、2016年3月14日のネットニュース『マネートゥデイ』は、韓国が今年から、ノーベル賞の発祥国・スウェーデンの学術財団と交流事業を開始することを伝えた。その中で、〈日本のノーベル科学賞受賞の成果は、スウェーデン政府・ノーベル委員会・国家研究所・大学などを中心とした執拗なまでの科学外交と関連がある〉 と専門家の分析を引用し、日本が際立っているのは科学技術力ではなく“外交努力”であると、負け惜しみにも見える主張を展開した。 こうした論法を使い、韓国メディアはユネスコの世界記憶遺産にも噛みついた。昨年、中国の「南京大虐殺関連資料」が記憶遺産に登録されたことを巡り、日本政府はユネスコへの拠出金停止を検討。それを受け、『朝鮮日報』(電子版・2015年10月13日)の社説は、「ユネスコを脅迫する日本の品格」と題した社説を掲載した。〈韓国は1988年、中国は1985年と、日本より先に(世界遺産条約に)批准した(中略。日本は)金をちょっと出しているばかりに、世界を見下しているようだ。安倍政権の傍若無人ぶりは感じていたが、これほど品格がないとは思わなかった〉「金に物を言わせて尊大に振る舞う日本」と言わんばかりだが、言うまでもなく、日本政府が拠出金の停止を検討したのは中国側の資料が客観性に乏しく、審議の過程が不透明だったからだ。日本が不幸になったり不利になったりすると喜ぶ一方で、日本が主張するのは面白くないらしい。 韓国が「国家の品格」を保つためには、まずはメディアが「事実を客観的に伝える」という報道の大原則を学ぶ必要がありそうだ。関連記事■ 韓国「科学研究の本質を忘れノーベル賞に没頭」との指摘あり■ ノーベル賞の受賞者 日本は22人で中国は3人で韓国は1人■ ウリジナルで発明多数を主張の韓国 ノーベル賞は平和賞1人■ 「活版印刷」と「羅針盤」 韓国が起源は韓国人の間では常識■ 韓国では「独島」問題となると正論、常識はもはや通用しない

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    ノーベル賞ラッシュで人気の理系研究者 必要なのは「文系力」

    竹内健(中央大学理工学部教授) 日本人のノーベル賞の受賞が相次いでいるせいか、子供たちが将来就きたい職業として、理系の研究者が人気を集めているそうです(「将来就きたい職業に「研究者」 子どもの人気集める」)。 この調査結果によると、研究者に憧れる子どもが増加中。小学校を卒業した子どもたちに将来就きたい職業を尋ねた結果、「研究者(理系)」が男の子2位(9・8%)、女の子7位(4・1%)と上位に入ったそうです。 理系の研究者としては嬉しいですね。一昔前のイメージでは、理系の研究者はネクラ(この言葉も死語ですが)、決して良いイメージではなかったと思います。子供に憧れられたり、女性にもてたりするのとは対極の存在。社会とは隔絶されて、趣味に走っている変な人、というイメージだったでしょうか。 こうして理系の研究者になりたいという子供たちが増えているのはありがたいことですが、その一方、理系の研究者とはどんな仕事だと思われているのでしょうか。ひとり机に向かっていたり、白衣を着て実験室で好きな研究にひたすら邁進する、というイメージでしょうか。それは学部や大学院の学生として研究をしたり、組織の中で雇用される立場で研究する場合には合っているかもしれません。 しかし、大学であろうと企業であろうと、研究をリードする立場になると全く違います。資金のかからない理論的な研究でしたら、研究自体に集中することも可能かもしれませんが、実験などでお金を必要な研究ならば、まずは研究資金を獲得しなければ研究のスタートラインにさえつけません。学会発表するための旅費だって、自分で稼がなければいけないのですから。 実は研究に必要な人モノ金を集め、マネジメントすることこそが、研究者の重要な仕事なのです。研究できる環境を与えられた状態で、研究自体ができるのは当たり前。むしろ差がつくのが、研究するための環境を整え、研究組織をマネジメントする部分です。 iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞された山中先生が研究費をカンパするために、マラソンに出ていたりしたのは、決して例外的なことではありません。山中先生ほど劇的なことをしないまでも、日々、研究費を集めるために提案書を書いたり、企業をまわっている、という理系の研究者は多いのではないでしょうか。 研究者は足で稼ぐ、営業職でもあるのです。資金獲得は努力賞はない弱肉強食の世界です。研究のアイデアがあるのは当たり前、それに加えてプレゼン、交渉力、対人関係など文系的な力が必須なのです。 私のような応用研究をしていると、研究成果を実用化する企業に研究チームに入ってもらえないと、研究提案も通りません。自分が好きなことを研究するというだけではなく、企業・社会の役に立つ技術は何かを考え、共同研究してもらえるように企業の方を説得する。日々そのようなことばかりです。大学の理系の研究者に必要な素養として、人モノ金を集めるマネジメント能力に加え、へこたれない精神力も大切です。 入試と違って資金の公募も、回数の上限はありません。数を打ち、落ちても提案し続ける気持ちの強さがある人が、最後は採択されます。ひょっとしたら、研究だけに集中したいのであれば、資金集めに奔走する大学教員よりも大企業の研究者の方が良いかもしれませんね。 ただ、名門企業もあっという間に傾く時代ですから、大企業の研究者もいつまで安泰かわかりません。研究者の実像は、テレビドラマほど劇的ではないにしろ、下町ロケットの主人公をイメージしてもらえば良いと思います。 最近は国の財政難を反映して、国家プロジェクトの公募の競争率は上がり、採択されても研究できる年数は減っています。この研究公募の面接に落ちたらもう研究できなくなる、という場面に追い込まれることも珍しくありません。 また、運よく公募に採択され、研究資金を頂けても厳しい進捗フォローを受けます。資金を出す側だって、有効にお金を使ってもらい、成果が出ないと困るのですから。研究者の日常とはこんな感じで自転車操業で走り回っていますので、落ち着いた環境で好きな研究だけしている、と想像している人が来ると「そんなはずでなかった!」と思うかもしれません。 前向きに考えると、理系の研究者の仕事は、自分のアイデア・夢を実現するために、自ら主体的に動いて人モノ金というリソースを集め、組織を作って研究をマネジメントする。これほど自分がやったことが、良くも悪くもそのまま自分にはね返ってくる世界、というのもそうないかもしれません。 理系的な研究だけでなく文系力も必要とされますから、まさに、自分という人間の総合力、ありのままが結果に反映されるのです。そういった主体的に生きることが好きな人にとっては、これほど面白い仕事も無いのではないでしょうか。(ブログ「竹内研究室の日記」より2016年2月2日分を転載)

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    インチキか本物か、水素水ブームを読む

    いま「水素水」が空前のブームだという 。愛飲する著名人らがこぞって美容効果や健康効果をうたい、ブームに拍車がかかっている。でも、この手の話に懐疑的な人もきっと多いはず。結局のところ、水素水の効能はインチキなのか、本物なのか。水素水ブームの「真実」を読み解く。

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    高濃度でも効果は水分補給、水素水ビジネス・伊藤園とパナの品格

    話が続くが、水素水とは何なのか。 きっかけは、著者である日本医科大学の太田成男教授が2007年、有名科学雑誌「ネイチャー・メディシン」に発表した1本の論文だ。水素分子が、生物がエネルギーを作る時に生じるヒドロキシルラジカル等の有害な活性酸素を消去し、スーパーオキシドラジカルなどの有用な活性酸素は消去しないことが培養細胞にて確認されたというものだ。Masataka Namazu伊藤園の付加価値は"消費者の勝手な期待感" しかし、水素水を販売している飲料大手、伊藤園の広報担当者によれば、「水素水はあくまでも清涼飲料水。体に良いとは言っていません」 伊藤園は、08年から青いアルミ缶の「還元性水素水」を販売していたが、15年7月からはアルミパウチの「高濃度水素水」の販売を開始(どちらも自社通販サイトでの販売が中心)。健康食品メーカーの通販や雑誌などで静かなブームを迎えていた水素水市場に、大手飲料メーカーが本格参入したことで話題になった。「高濃度水素水」も、健康に関心の高い50代、60代を中心に売れており、前年比2桁増。売り上げはまだ伊藤園全体の1%以下だが、この4月11日より大手スーパーやコンビニの棚にも展開すべく、シルバーのアルミ缶、HyperAQUA「水素水H₂」という商品の販売も始めて、「水素水市場の活性化を図って」(プレスリリース)いる。 体に良いとは言っていないとしながらも、伊藤園の謳い文句は、「業界トップクラスの高濃度」。水素が抜けにくいアルミパウチを使い、特許を取った「水素封入方式」で充塡しているため、水の中に水素が長時間存在するというが、効果効能を尋ねると「水分補給です」。水素と関係ない水分補給が効果効能なのであれば、なぜ水素の濃度や抜けにくさを強調するのだろう。悪びれないパナソニック しかも、パウチ入りは1本200ミリリットルで278円(税別)と普通のミネラルウォーターと比べれば高額だ。パウチのパッケージが高いためと説明するが、新しいアルミ缶商品も185円(同)と普通のアルミ缶入り清涼飲料水より高く、トクホ(消費者庁が許可する特定保健用食品)飲料並みである。再度理由を問うと、「お客様に価値を見出してもらいたいから」。 茶カテキンなどの研究所をもつ伊藤園自らが、水素についての研究を行い、トクホを取るなどの予定はなく、太田氏ら外部の研究者が論文を出してくれるのを期待しているという。 08年の輸入水ブーム、11年の東日本大震災などをきっかけに着実に拡大を続けている水市場。水飲料ブランドの1位、全飲料の3位ブランドでもある「サントリー天然水」を例に取っても、03年に年間2130万ケースだった出荷量は14年には8300万ケースと約4倍に激増している。 一方、05年をピークに横ばいの緑茶飲料を主力製品とする伊藤園は、06年には「磨かれて、澄みきった日本の水」の販売開始、08年にはカルピスから仏ダノングループ「エビアン」の独占販売権を買収と、かねてから水飲料にも力を入れているが、水飲料すべて合わせても、飲料ブランド総合第2位、年間8500万ケースを売り上げる「お~いお茶」の足元にも及ばない。首都圏のスーパーに並ぶ伊藤園の「水素水H2」は、伊勢志摩サミットでも海外報道陣にふるまわれた 水素水市場は前年比3割増、市場規模は150億円とも200億円とも言われ、水素水生成器大手、日本トリムの株価上昇、中京医薬品の水素水売り上げ好調を理由とした経常利益上方修正のニュースも出る中、効果は謳わず、研究はせずとも、「消費者の勝手な期待感」を付加価値として「コストはかけずに水を高く売る」というのが伊藤園の戦略のようだ。悪びれないパナソニック「ええ、できあがった水素水はアルカリイオン水と同じですよ」 そう答えるのは、水道の蛇口に取り付ける水素水生成器を発売しているパナソニックのマーケティング担当者だ。パナソニックは1980年頃から「アルカリイオン整水器」を発売しているが、水を電解してアルカリ水を作る過程で、水素も発生することは以前から認識していた。 水素水は身体に良いという話が広まると、13年10月「還元水素水生成器」の販売を開始。それまでは、アルカリイオン整水器のカタログに「水素も含む」という表記をするにとどめていたが、いよいよ"水素水"というラベルで売り出した。パナの水素水生成器とアルカリイオン整水器、同構造でも価格は全く違う!? 当初は「パナソニックのお店」と呼ばれる系列店での取り扱いだったが、15年秋に家電量販店での販売を開始。同年12月に三宅裕司氏がMCを務めるTBSテレビ「健康カプセル! ゲンキの時間」で取り上げられると、パナソニックのウェブサイトにある水素水コーナーのページビューが700倍に。発売中の3機種が一時品切れに陥るほどで、現在も供給が追い付かなくなってきていると言う。 パナソニックによれば、水素水生成器とアルカリイオン整水器の基本構造、基本原理は「全く同じ」。違いを問うと、社内整理としては「電極が5枚以上あり、かつ"水素チャージボタン"がついているものを還元水素水生成器と呼んでいる」と言う。同社ウェブサイトによれば、水素チャージボタンとは、電解しづらい水質でも電解し、水素をたっぷり発生させる機能らしい。水素チャージボタンがないアルカリイオン整水器でも、もちろん水素は発生する。 構造・原理は同じでも、価格の方は全く異なる。アルカリイオン整水器は、普及帯は電極3枚で3万円代、電極7枚の最上位機種は水素チャージボタンがないだけで実売8万円を切るのに、水素水生成器は同じ電極7枚で、上位機種17万円、初代機種も12万円と極めて高額(いずれも価格比較サイト「価格ドットコム」の平均価格)。水素水生成器の売れ行き(台数ベース)は、15年度が13年度の約4倍と好調だ。 アルカリイオン整水器(法律上の名称は電解水生成器)の薬事法承認は1960年代と古く、「慢性下痢、消化不良、胃腸内異常発酵、制酸、胃酸過多に有効である」と謳うことができる。効果の機序ははっきりせず、現在では、効果そのものも危ぶまれているが、90年代には成人病、アトピー、がん等に効くといった表示まで氾濫し、厚生省(当時)が不適切広告を禁止する通知を出すに至っている。パナソニックは水素水生成器と並行して今もアルカリイオン整水器を販売している。 ところで、アルカリイオン整水器では、飲料水としての安全性を確保するために㏗(水素イオン指数)は10以下を保つ必要がある。しかし、パナソニックによれば、㏗を守ると水素濃度は0.6ppmから0.7ppm程度止まりになる。伊藤園の水素水はどうか。圧力をかけるなどして常温常圧時の飽和濃度1.6ppm以上の「高濃度」で水素を充填していると謳うが、開栓時に保証する濃度はボトルで0.3ppm、パウチでも0.4ppm。冒頭に挙げた太田氏の著書によれば、水素水の健康効果を得るためには最低0.8ppmの濃度が必要だというが、いずれもこれを下回る。 しかし、そもそも太田氏の言う0.8ppmという数字にも科学的根拠があるのか。著書によれば、0.8ppmは「尿が出やすくなる濃度」。0.2ppmでもトイレに行きたくなる人はいるだろうから水素水に効果はあり、濃ければ濃いほどよいだろうとしているだけである。要は、水素水の濃度を競うのも、濃度にケチをつけるのもあまり意味がないということになる。 15年現在、350の論文が発表されているという水素水。濃度はさておき、科学的にはどの程度の効果が確認されているものなのか。水素水研究の第一人者の次男は「水素水入り化粧品」を売る 太田氏の著書によれば、水素ガス、水素水、水素風呂など様々な形で水素を体に取り入れることが病気の治療や予防に効果を持つことが分かっており、再現性実験や大規模治験などの検証を待つまでもない。太田氏が最も効果を実感するのは水素風呂だといい、太田氏の次男、太田史暁氏の経営する企業は水素入り化粧品「Auter(オーター)」を販売する。 病気も老化もすべてはフリーラジカルで説明できるとの立場をとり、10年前の写真と比べると確かに若くなっているとする太田氏。取材を申し入れたところ、「取材に関しての申し合わせ」という文書にサインを求められた。記事全てを開示して事前承諾を取り、太田氏が承服できない場合は氏名を出してはならないという内容だった。サインはできないと伝えると「話を聞くだけであればよい」と言うので、筆者は太田氏の研究室を訪ねている。太田氏のキャラクターあふれるやり取りを記事にできないのが心残りだ。製造が簡単であり、ありふれた物質である水素の特許取得が難しい事情を鑑みると、同情の念が生じないわけではない。中国へはばたく水素水ビジネス しかし、論文として発表されているデータは細胞実験や動物実験と、母数の少ない試験的な臨床試験のみ。治験が始まっているとも聞くが、実用レベルでの効果や安全性はまだ確認されていない。テレビやファッション誌で息子の販売する化粧品を推奨するなど"盛りすぎ感"が否めない科学者としての態度や、それに便乗する大手メーカーは、改めて品性が問われる。 水素分子の研究開発を続けてきたというMiZ(ミズ)株式会社(神奈川県鎌倉市)は最近、新聞に全面広告を出し、水素の効果効能を調べた337の英語論文を一覧で紹介した。日本以外の論文で、欧米の大学・研究所によるものは34に過ぎない。一方中国は196を数え、近年存在感を増している。水素水ビジネスは、水への不安感が強く、日本とは許認可体制が異なる中国へと拠点を移し始めている。

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    水素水で動脈硬化が緩和した! 半信半疑を覆した驚きの実験結果

    身体の中で起こることはないと知る。水素分子の抗酸化効果?何を馬鹿な!直感的にそう思った。 生物学や医科学に携わる科学者の大半は実験研究者である。数式では予測できないほど複雑な生命と身体の仕組みを知るには、実際に起こった現象から理屈を考えねばならない。実験こそが命なのだ。 10年以上も前のこと、私が日本医科大学太田成男教授の研究室に在籍していた当時、培養皿の上で増やした細胞に水素分子を添加し、酸化ストレス障害を与えてみた。翌日のぞいてみると驚いたことに水素分子を加えた細胞のダメージが小さかったのだ。何か間違えたのだろうか? 様々な方法と条件で水素分子の効果を試してみたが、結果は同じで細胞障害を抑制する。こうなると生体で酸化ストレス抑制作用があると考えなくてはならない。まだ半信半疑の私と違い、太田教授は早々に確信を持たれたようだ。実際、動物を使った脳梗塞のモデル実験で水素ガスを吸わせると虚血再灌流障害が緩和された。動物実験で血管の蓄積物が減少! 太田教授と一つの仮説を立てた。水素分子は酸化ストレスを引き起こす活性酸素のなかで最も反応性が高いヒドロキシラジカルとは反応できるはずだ!実際、試験管の中でこの反応を確かめることができた。こうして水素分子に関する研究は世界で最も権威ある医学雑誌に掲載された。 現在、心肺停止で慶應義塾大学病院に担ぎ込まれると水素ガスの吸入療法を希望するか聞かれる。水素分子によって脳や心肺に重篤な後遺症が残るのを防ぐことができるか臨床研究を進めるためだ。自分が携わった研究が患者さんの命を救うために役立つ。研究者冥利に尽きる。 では水素水は?私自身、水素分子の効果を検証した後でも水素分子を高濃度に含む単なる水に何の効果があろうかと懐疑的であった。水素水で摂取できる水素分子は水素ガスとして吸引した時よりもはるかに少ない上、大半は30分程度で体外に排出される。 実験結果は驚きであった。動脈硬化のモデル動物に水素水を飲ませると血管の蓄積物(アテローム)を減らすことができたのである。以降、我々を含めた国内外の研究者から、動物実験や人での臨床試験により、水素水は糖尿病の進行を遅らせ、ストレスやアレルギーによる炎症を抑え、抗がん剤による副作用を緩和し、パーキンソン病では水素水を飲まれた患者さんで病気の進行が抑えられるといった結果が続々と報告されている。画像はイメージ ただ、何にでも著効というわけではない。我々の研究では、炎症を主とする疾患の予防で特に良好な結果を得ているが、まったく健康な人が飲んだ時に何か効果が期待できるのか、まだまだ検討が必要だ。 不思議なことだがパーキンソン病モデル動物に水素ガスを吸わせ続けても水素水のような病気を抑える効果は見られなかった。吸わせた方が体内に高濃度の水素分子が行き渡るのに何故か?その理由を知るために今も多くの大学や研究機関で地道な研究が続けられている。 ちなみに高濃度の水素ガス吸入は避けて欲しい。ヘリウムガスのような吸引事故が起きる可能性がある。また、水素ガスを発生する入浴剤も販売されているが、これにも水素水のような効果が期待できるのか、さらに調べてみる必要がある 現在、水素水は多くのメーカーから販売されている。研究成果を人々の健康に役立てることができると期待しているが、3つの大きな問題がある。懐疑論を増幅させる水素分子量が不明な商品群 第一は非科学的な宣伝だ。先日、ある浄水器メーカーのショールームに立ち寄ったところ、水で赤茶けたクリップの横に水素分子を含むアルカリ性電解水に入れられたクリップが置かれていた。錆びていない。水素分子に鉄錆を防ぐ力は全く無く、これはアルカリの特性によるものだ。そもそも鉄が錆びないからといって我々の身体で活性酸素が減るわけではない。 さらに「抗がん効果がある」といったひどい宣伝まで見かける。厳しい状況に置かれた患者さんにつけ込むような行為は許せない。また、活性水素や還元水素、マイナス水素イオンとは何であろう?我々が探求している水素分子とは別物だと理解している。 第二は水素分子が入っているのか不明な商品群だ。無味無臭の水素分子だから、測定器無しでは入っているのか全くわからない。動物実験の結果から考えて、飽和の半分である0.8ppm程度の濃度は欲しいところである。 水の電気分解による装置は電極の性能によって水素水を造る量と速さが決まる。1杯目は良くても2杯目は水素分子が検出できないというケースも考えられる。この時に陽極で発生する有毒なオゾンの混入は抑えられているのであろうか? 一方、アルミパウチに入った水素水は比較的安心できるが、それでも問題がある。充填時は過飽和の2ppmなどと表記されている商品でも購入して実測すると1ppm程度だ。すでに半分抜けているのだが、これが高温の保管庫に置かれているとさらに激減する。たまに信頼しているメーカーの商品をスーパーで購入するが、濃度が0.5ppmに満たないことがある。保存状態に問題があったのだろう。消費者に安定供給するための企業努力が求められる。 第三は、1日にどのくらいの量を飲めば良いのか十分なデータが無いことだ。一口で良いのか、1リットルなのか要検討である。 神秘の水でもなく、特別な人にだけ効果があるわけでもない水素水。内外の研究者が万人の健康長寿に役立てようと研究を続け、毎年出される科学論文はカテキンの1/10程度に達する。歴史と研究者の数から考えて、この数は決して少なくない。今後、人でのデータが益々増えるものと期待される。

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    常識は否定されるものだ! 水素水「効果なし」に敢えて反論する

    を徹底検証)が、どうもすっきりしません。 今出ている一番いい解説はこちらだと思います(水素水、「ニセ科学」と切り捨ててはいけないが、エビデンスありとは言い難い)。そしてネットギークにも書かれている、そして村中さんも指摘している企業のあり方が悪いからと否定するのは水素水そのものにとって少し見当違いです。これは法律の問題なのですから。 医薬品、特保、清涼飲料水。この順番で開発費はかかります。特に医薬品にしたとすれば、本当に効果が出るのなら売上も間違いなくブロックバスターになるでしょう。ではなぜ医薬品にしないのか。 臨床論文はまずまず出ています。もちろん指摘にあるように少数対象の研究でまだまだ医薬品として認可されるものではありません。ただ若返り、動脈硬化予防、がん抑制など効能の範囲が広すぎるため適応開発の費用は莫大なものになります。まして予防効果を証明しようとすれば観察期間は10年以上になるでしょう。それができる臨床試験は難しい、いや不可能なのが現状です。それならば医薬品にしてお金をかけるより企業のリスクが少ない清涼飲料水の方が儲かると会社は考えたのです。効果があると言ったら法律違反 ネットギークは伊藤園が効果がないと言っていると記事にしてますが、効果があると言ったら法律違反なんですよ。それこそただの水でも高く売れるのであれば問題ないし、まして悪いものではないと、少なくとも副作用は少ないと自負されているのでしょう(それはそれで問題なんですが)。 ただこの状況は「法的には違反していない、でも不適切」なのかもしれませんが。 基本特保、清涼飲料水は副作用が少ないものが選ばれます。俗に言う健康食品もそうです。それこそ乳酸菌なども間違いなくいろいろな効果がありますし、薬品と特保どちらがいいのかわかりません。(ビオフェルミンなどとヤクルト成分はほぼ同じ)。それでもウコンを含め副作用は出ますし、水素水でも副作用を経験しています(健康食品は毒にもなる)。このことが副作用も何もない健康食品より私が評価している裏返しなのですが。そしてそういう者に限って人によって効果の出方が変わります。だから評価が難しい。 ヨーグルト、納豆、緑茶カテキン、青汁、グルコサミン、ウコン。どれも本当体に良いと言いながら巷で売られています。現在の水素水。使ってよかったと藤原紀香さんが宣伝されていますが、逃げ道は個人の感想。他の食品と変わりません。この感想が100になり1000になりすれば薬の開発となるかもしれません。それこそ、放射線副作用予防、アルツハイマー予防なども出て来れば補助食品としての適応も出るでしょう。もちろん潰れていったたくさんの健康食品と同じものになるかもしれません。要するにまだわからないというものです(水素水 とんでもかどうかはもう少し待ちなさい)。 この清涼飲料水の段階で企業は利益を出し、研究費を研究者に出されていると思います。研究者は一生懸命研究し、とんでも医療ではないことを証明しようとされています。一生懸命研究されている方と、企業とはWin Winである必要があります。だからこそ私は今現在とんでも医療と断定するには惜しいと感じています。 ちなみにPD−1抗体の開発時、プロの製薬会社は小野薬品以外誰も信じませんでした。また今はやりの低炭水化物ダイエットも糖尿病専門医の一部は真っ向から否定していました。常識が変わるのが医療。一つの例として挙げておきます。常に門戸は開けておきたいものです。(「中村ゆきつぐのブログ」より2016年6月9日分を転載)

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    本当に身体に良いのか? 科学として確立していない水素水のリスク

    気体を発生させる菌がいるので、水素気体を吸うだけで効果があるのはおかしい」という対抗理論さえある。 科学の現場では、妥当な理論が構築できていない段階ではふつう、市民への成果応用は控えるものである。なぜなら、理論がなければ、「どのような問題を抱えている人が、どの程度の量を摂取したら、どのくらいの確率で改善するか、それに伴い予想される副作用はないか」などが、推測できないからである。 その意味で、水素気体の医学研究は今後の発展が期待されるものの、現状ではまだ科学として確立されていない段階と判断される。 科学としての要件について詳しくは、拙書『なぜ疑似科学が社会を動かすのか~ヒトはあやしげな理論に騙されたがる』(PHP新書)を参照いただきたい。 医療の現場では、十分に理論が確立していない薬品が処方されているではないかと、医師から反論が来るかもしれない。しかし、医薬品は病人に処方されるという、特殊事情があることが指摘できる。病人の場合は、病気を治癒する必要があり、病気であるという現状が続くことのほうがデメリットなのである。そのため、治癒の可能性が低くても、あるいは副作用があったとしても、かりに治癒した場合のメリットが大きいので、理論が確立していない薬品であっても、あえてリスクに賭ける意義がある。 それに対して食品の場合は、健康な人々が摂取するので、現状が維持されることが前提となる。そのため、十分に理論が確立していない成分を、薬品のように摂取することは効果がないばかりか、隠れた副作用がある恐れが指摘できるので、控えたほうがよい。 水素水は人々の健康維持が目的とされているようであるから、健康食品に準じた扱いをすべきだろう。食品の場合、安全性は長年食されているという歴史によって担保されるという考え方になっている。水素水のように、これまで摂取してきた経験のない物質の持続的な摂取については、極めて慎重になるべきである。 そしてそれは、水素水に限らず、目新しい食品成分を高濃度で摂取する他のサプリメントも同様に抱えている問題点と言えるのだ。

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    バナHの水素水って、マルチ商法のインチキ商品なんでしょうかね?

    では必死に治る治る言うので、何だろうねと思ったんだが、天然の水素が大量に水に溶けているという説明の非科学ぶりとかマジ笑える。 いやさ、例えば私がフェーズ末期の癌患者で、藁にもすがる思いであらゆる民間療法を試したいとか、親族に不治の病がいてとか、そういうのだったら金払っちゃうことはあるかもしれないけど、それはそれで人間としてどうなんだよと思うよなあ。 で、良く話聞くとえれー高いこと言ってるの。2リットルで4千円とか言ってたかな。こんな話にどこの馬鹿が騙されるんだよと思いながら聴いていた。日テレの巨人戦中継のスポンサーしてた、とか、くだらないこと言ってて、日テレの考課はどうなってるのか、そっちが逆に気になったんだよね。 話が長いので「それ、本気で信じて言ってるんですか」とか「インチキくせえですなあ」とか「で、これで旦那は幾ら儲かってるんですか」とか言ってたら、何か怒って帰っちゃったよ。喉渇いてたから一本ぐらい貰っておけば良かった。むしろ、夏暑いときに水をおいしく冷やして毎日持ってきて欲しいぐらいだ。 少なくとも、営業口上聞く限りでは病気が治るを連呼してたし、置いてった資料見ると水素が溶け込むとかマジありえナスだし、被害額が小さい分すぐの立件はむつかしいだろうけどこれは詐欺商法ぽい雰囲気がすると言われても否定できない可能性が高い気もする。 サイトを見物に逝ったら、相変わらずクソ下手糞なゴミ楽曲が勝手に流れてきて、商品はアレだわ出てる宣伝女もアレだわ楽曲もクズだわ超笑った。バナHの社長が石川某氏で、歌ってるのが石川某嬢ということは、実のご息女ということでFAですかね。分かりませんけど。しかし、さすがに現代は技術革新が進んで、ジャイアンリサイタルを自宅にいながらにして視聴できるようになったんですねえ。くわばらくわばら。注意! 何か音が出ますhttp://dr-vana.co.jp/(2009年5月15日「やまもといちろう オフィシャルブログ」より転載)

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    芸能人らが愛好する水素浴、EDの改善を実感する中高年男性も

     勃起不全(ED)に悩む中高年男性を救う「奇跡の風呂」があるという。この風呂に浸かっている都内在住の50代後半の男性会社員が証言する。 「友人から勧められて試したが、体の芯からポカポカ温かく、全身はもちろん、アソコも熱く滾(たぎ)ってくる。驚いたことに“もう歳だから”と諦めていたのに、5年ぶりに朝勃ちしたんです」 まず種明かしをすると、この「風呂」に入っているのは「水素」である。歌舞伎界のプリンス・片岡愛之助(43)を射止めた女優の藤原紀香(44)もブログで取り上げるほどのお気に入りで、高畑淳子(60)や浜崎あゆみ(36)ら多くの女性芸能人が水素風呂の愛好家として知られる。 もともと「水素水」は、アスリートの間で注目を集めていた。これは水素をミネラルウォーターに溶かしたもので、様々な病気の原因といわれる活性酸素と体内で結びついて、水として排出させることができるとされる。「肌荒れ」「シミ」などを改善するほか、疲労回復や動脈硬化、がん、認知症予防にも役立つのではないかと期待されている。 その水素を飲料ではなく、入浴を通じて体内に取り込むのが「水素風呂」だ。水素風呂用の入浴剤を浴槽に入れて10分ほど待ち、水素が充分に発生したところで入浴する。『水素水とサビない身体』(小学館)の著者で、水素研究の第一人者である日本医科大学大学院教授の太田成男氏がこう語る。 「水素水を一度に大量に経口摂取するのは難しいですが、水素風呂なら全身の皮膚を通じて効率よく水素を体内に取り込むことができます。水素入浴では、入浴時間にもよりますが、水素水を飲んだ時の100倍の量の水素を取り込むことも可能です。およそ7分間の入浴で隅々にまで水素が行きわたり、その先々で活性酸素を除去する効果で期待できます」 注目すべきは、そんな水素風呂に浸かった男たちの声だ。水素によって男性性機能障害の改善を実感したという中高年男性が少なくないのだ。臨床水素治療研究会代表理事で、辻クリニック院長の辻直樹氏が解説する。 「水素が活性酸素を除去することで、血管内皮細胞の酸化劣化を止めたことが理由の一つと考えられます。この細胞は血管を拡張させる一酸化窒素を産生する。それで陰茎に血液が流れ、勃起しやすくなったのでしょう。これは基本的に『バイアグラ』などのED治療薬の作用と同じ原理です。 うちのクリニックの患者の大半は50代以上の男性で、当初の目的は高血圧や動脈硬化の改善だったのですが、勃起不全が改善したという人は多い。『バイアグラがいらなくなった』という方もいらっしゃいます」 ただし、市販されている水素の入浴剤には、“粗悪品”も多いという。 「体に有害な物質を使っている入浴剤もあります。成分表示を確認し、化粧品成分にも認められている『水素化マグネシウム』を使用した商品を選ぶことを勧めます」(前出・太田氏)関連記事■ 悪玉活性酸素を抑制する水素水 肌荒れ、便秘、冷え性に効果■ 今後1年で株価6倍に上昇する可能性秘めた水素関連銘柄とは■ 快眠のコツ ぬるいお風呂に入眠の30分~1時間前に入ること■ 仰天! 「風呂に入れるラー油」が発売されていた■ 注目の燃料電池車 再生エネルギーを使えば環境負荷はほぼゼロ 

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    「良い健康食品」と「悪い健康食品」の見分け方はあるのか?

    はほとんど「まぎれ」がない。 機能性表示食品は、昨年、新たに導入された制度で認められたカテゴリーで、科学的根拠に(一応)基づいた機能性を表示できる食品。ただし、消費者庁長官の許可を必要とせず、事業者の責任で表示が可能。個別の商品ごとに「ヒト試験」などを必要としないため、玉石混淆となる可能性が指摘されており、消費者の信頼を得るには至っていない。 これに対し、特定保健用食品(いわゆるトクホ)は、その歴史も長く、個別に国の許可が必要な食品であり、また、単純に「一定量以上の栄養成分が含まれている」というだけにとどまらず「なにがしかの健康効果を謳える」食品であるため、消費者の認知度も高く、ある程度の信頼を得ているといってよいだろう。このトクホの信頼性をさらに高めて、他の保健機能食品やいわゆる健康食品と差別化しよう、というのがこの専門調査会のネライであろう。 裏を返せば、トクホといえどもまだ消費者からはあまり高い信頼を得られてないという証でもある。信頼を今以上に高めるためには、厳しい基準や審査が求められることになる。「トクホの原点」を確認すべき消費者庁も事業者も「トクホの原点」を確認すべき トクホの信頼性を今よりも高めるためには、まだ、いろいろやることがあると私は考えている。同様に、専門調査会の委員たちも、まだまだ法的整備が必要だと判断しているようだ。専門調査会では、たとえば、次のようなことが検討された。 まず、基本的な考え方として「トクホの原点に戻るべき」という指摘が上がった。トクホの原点というのは、その食品(トクホ)を摂取することを通じて「健康の増進や食生活の改善をする」ことを目的とするという点だ。トクホを摂取することが、直接、血糖値や血圧を下げたり体脂肪を減らしたりするわけではない。微妙ではあるが、この「違い」を、消費者も事業者もきちんと理解する必要がある。その点が(とりわけ)この頃あいまいになってきているのではないか、という危惧を多くの委員たちが持っている。 テレビやネットなどの宣伝で、このところ、この原点を逸脱している食品が多く、それがトクホ全体の信頼性を損なっている。これを防止するためにどうすればいいかが問われているといってもいいだろう。 広告や表示の表現を規制するためには、食品表示法だけではなく健康増進法(健増法)を積極的に適応すべきだという考え方も示された。さらに、健増法の中にある「著しい誤認」という文言のうちの「著しい」という言葉をカットすべきだという意見もあった。消費者に「(普通の)誤認」を与えただけで健増法を適用しようというのだ(さすがにこれは報告書には盛り込まれないだろうが…)。 また、景品表示法にある「不実証広告規制」(※4)を健増法にも取り入れるべきだという意見も出された。これは事業者にとって相当にハードルが高くなる。当然のことながら、事業者側委員からは「実行可能性が低くなる」という反対意見も出された。基準だけを厳しくしても実行されなければ制度そのものに意味がなくなる、というわけだ。 「報告書」をとりまとめるにあたって、他にも様々な意見が出されたが、全体的に「キビシイ」意見が多かった。なぜだろうか? この間、取材をしていて感じたことだが、どうやら、この専門調査会ではトクホを他の「いわゆる健康食品」とは一線を画した「いい健康食品」として位置づけようとしているようだ。見方を変えれば、トクホ以外の「いわゆる健康商品」は「悪い健康食品」ということになるのだろうか…。 しかし、現在のところ、トクホとして認められている食品であってもその効果はきわめて限定的である物のほうが多い。いたずらに「いい健康食品」と持ち上げてしまうことには賛成できない。トクホ以外の保健機能食品、たとえば機能性表示食品のレベルが低いために、相対的にトクホのレベルが上がっている現状(これは私の解釈)で、トクホを「いい健康食品」と位置づけるのは早計のように感ずる。 間違っても、トクホの質の向上が伴う前(制度の改善が整う前)に、なし崩し的に評判だけが上がってしまうことのないようにしてほしい。ここは冷静に「トクホを摂取することで健康増進が図られるわけではなく、トクホの摂取を通じて食生活が改善することで健康増進が実現する」という原点に、もう一度立ち戻るべきだ。 冒頭のライオンに対する勧告は、その強い意志を表わすものであればいいのだが…。(「Yahoo!ニュース個人」より2016年3月19日分を転載)(※1)http://bylines.news.yahoo.co.jp/satotatsuo/20160218-00054536/(※2)http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin1529.pdf#search='%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3+%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%A2%97%E9%80%B2%E6%B3%95'(※3)http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/tokuho2/senmon/007/shiryou/index.html(※4)不実証広告規制 事業者は、消費者庁長官から「広告等の表現が消費者に著しい誤認を与えていないという証し」を求められたときは、その裏付けとなる資料をすみやかに提出しなければならない。これが敵わない場合は「不当表示」と見なされる。