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    元教授手記、東京福祉大「消えた留学生」の元凶を暴く

    田嶋清一(東京福祉大学元教授) 独立行政法人「日本学生支援機構」が実施した「外国人留学生在籍状況調査」によると、東京福祉大学に在籍する留学生数は、2018年5月1日現在、5133人(全国留学生数が多い大学ランキングは、早稲田大学に次いで第2位)で、その8割の4208人は研究生(学位が授与されない非正規の留学生)として受け入れられています。この研究生については、法令上受け入れ人数の上限は規定されていません。このことが、東京福祉大が研究生数をこの4年間で10倍以上に激増させ、今回の大量所在不明者を出した土壌になっていると考えられます。 東京福祉大は、今年2月6日付で文部科学省に対し、中島恒雄元総長(以下、中島氏)の経営や教育への関与の有無などについての回答書を提出しています。回答書の「外国人留学生における在籍管理について」の項目によると、2016年度の所在不明者259人と17年度の所在不明者484人を合わせて、2年間で計743人が所在不明のため除籍になったことを、大学側が認めています。このような大量の所在不明は、多くの不法就労や不法残留の温床になる可能性があるとされています。  また、この回答書の大きな問題は、事実とは違うと思われる記述が随所にある点です。例えば、回答書の「ファカルティ・ディベロップメント(大学の授業改革、以下FD)専門部会からの要請に基づく、教員研修会への出席、授業見学について」には、以下のような記述があります。 「(中島氏による)助言は、あくまでも中島氏に同行するFD部会員をはじめとした教職員に向けてだけであり、授業をしている教員や学生に対し、直接講義したり、指導したりするなどは行っておりませんでした。この授業見学について学生から本学への苦情は一切ありませんでした」 「全学生が希望する教員や公務員に全員合格できるように、キャリア支援授業を更に充実させていますので、学生や保護者から感謝の声は沢山ありますが、苦情は一切ありません」   「(中島氏は)FD関係者の依頼を受けたため、遠慮しながら間接的なアドバイスをしただけ」 回答書には「苦情は一切ありません」などと記載されていますが、実際には、多くの学生から労働組合(交通ユニオン)事務所に苦情のメールが来ています。 中島氏も臨席して行われた公務員試験対策授業を受けていた学生からのメールには、「対策授業をしている先生に対して、自分(中島氏)が気に入らない教え方であれば注意し、あることないことで文句を言ってきます。また、授業中にもかかわらず、中島氏は隣に座る特任教授と名乗る人と普通の(大きさの)声でしゃべり、携帯電話はマナーモードにしておらず、携帯電話が鳴ると電話に出て普通の声で話しているのは迷惑極まりないだけでなく、かなり常識に欠けている人だと思いました。最近の研究生のことがニュースになり、行政から立ち入り調査が入ったので、もう二度と関わらなくなるだろうとは思いましたが、このカリキュラムを見る限り、今年も中島氏が対策授業に来るとなれば恐怖を覚えます。このカリキュラムには私を含め、クラスのほとんどの人が不満を言っております」との証言があり、回答書の記述が事実ではないことが明らかです。 以下、研究生大量所在不明の原因として、研究生への管理体制が整っていないことに加え、巨額の金もうけ主義が、背景にあることを明らかにします。  記者会見する東京福祉大元教授の田嶋清一さん(右)=2019年4月10日、文科省 2008年1月に、刑事事件を起こした罪で懲役2年の実刑判決を受けた中島氏は、同年10月の控訴審で判決が確定し収監されました。しかし、中島氏は10年7月の出所後まもなく、2年間の収監を経ても大学内における権力が低下していないことを、教職員に対して誇示しようとしました。この行為は大きく二つあります。  一つは、人事権の誇示です。中島氏は出所後すぐに、当時東京福祉大の理事長だった実母の名義を使い、幹部教職員への解職降格人事を次々と断行し、いわば恐怖政治による裏支配体制を敷いたのです。実刑判決確定や理事長辞任によって法的に権限はなくなっても、実際の「権力の所在」が自分にあることを知らしめるために、理事長、学長、事務局長などの重要ポストを解職降格させ、その代わり、自分が「意のままに操れる人物」を就任させていきました。それはまさに今日に至るまで続いている、中島氏による裏支配体制です。432億円の荒稼ぎプラン もう一つは、経営能力の誇示です。研究生をターゲットにした、432億円(その内訳は、大学が4年間累計2万人で240億円、専門学校で192億円)の荒稼ぎプランを、中島氏が、2011年9月21日の会議で次のように語っています。 「研究生は10万円、レギュラーコースは20万円入学金払ってくれれば…、仮合格証を出しますよと、よそ受かったら…入学金預かったのは返しますと、留学生から見ると…、行くとこが決まって、ビザ心配しなくていい、受験して全部落ちたら、ビザ心配せなあかんだろ。ビザは安心ですよ、それからお金は返しますよ、というと、いっぱい来るんですよ。だから、これ、パンフレットに載っけるなっつってんだよ、まねするから…、よその大学が。おれのところだけがやるから、これは稼げるわけだよ。何でかって言ったら、定員がないからいくらでも入れられる。(事務局長:8千人っていうのが。いや、一応、460人となっているんですけども、それは関係ないですね)8千人まで入れていいんか。(事務局長:8千人まで、8千人以下)合計してみていくらになる?(財務担当課長:192たす240。432ですね。432億。)432億円の大きな学校になりますよ。おれ、経理わかんないけど、こんな風にしてこうやったら、こんだけ銭がもうかる」 このように、中島氏は、自身の権力が低下していないことを、教職員に対して誇示する必要上から、研究生への管理体制をほとんど考えないまま、巨額の金もうけ主義を先行させたのです。そのことが、研究生大量所在不明問題に繋がっていることは明らかです。 そもそも中島氏は実刑判決確定以降、文科省の行政指導によって「大学の経営と教育に関与してはならない」とされています。ゆえに「法的に権限のない中島氏が、なぜ出所後も、大学の経営と教育に関して影響力を行使できるのでしょうか?」と、最近この質問が記者からの取材を受ける中で最も多いのです。 この質問への答えは明白です。教職員に大学のやり方(つまり中島氏のやり方)への批判を禁止して、自由にものを言わせない組織をつくってきたから行使できるということです。自由にものを言う人格を否定する構造があらかじめできているのが現状です。中島氏の長年の口癖は「(教職員の)代わりはいくらでもいる」であり、これで教職員を抑えつけているのです。 具体的には、中島氏に対するイエスマン以外、1年雇用の契約とさせられていること、全ての教職員に対する研修会での威圧、及び中島氏による幹部教職員への個人的恫喝です。その結果、大学の前身の専門学校時代以来、辞める教職員が多く、教職員の中で密かに「回転の速い学校」と言われています。 しかしその一方で、諸般の事情で辞めなかった教職員の中には、自由にものを言えない雰囲気の中で萎縮して、何をしてもどうせ駄目だと思い、無力感に陥り、体調を崩して鬱々とする状態が少なからず見られます。これは心理学用語で「学習性無力状態」と呼ばれ、まさにこうした状況です。東京福祉大学王子キャンパス=2019年3月14日、東京都北区(市岡豊大撮影) また、2015年11月12日に、私は大学を被告として損害賠償請求訴訟を起こしましたが、直接学長室で同月25日に聴取した限りでは、東京福祉大の学長は、そのことについて、ほとんど知らされていませんでした。大学の現状及び、あり方について、計3回にわたって私が聴取した際の学長の口癖は、「私は無力ですから」というものでした。 そんな彼らを、法的に権限のない中島氏が、大学の経営と教育に関して、裏支配し影響力を行使するのは難しくないのです。ただ、水面下で力を蓄えて大学の「民主化」を志す方々がいらっしゃるはずです。彼らの今後に期待したいと思います。学生からの抗議メール ところで、研究生大量所在不明問題への対処としては、多すぎる研究生(非正規留学生)について、勉学環境に見合った定員を設けるべきです。  なぜなら、第一に、現在の状況では、まず勉学に希望をもって来日した研究生に対する教育機関としての責任が果たせないからです。報道されていたように、銭湯の2階で授業をするなど、研究生が多すぎて失踪せざるを得ない環境をつくっているのは大学側で、これは重大な問題です。 第二に、研究生の教育は、教職員への負担が大きい点が挙げられます。担当教員によれば、辞書を引く習慣がある者はほとんどいない、よって全部説明する必要があります。また、研究生の勉学意欲に個人差が大きく、意欲の低い学生はテキストを買わないし、予習復習の習慣が身についていないのです。なお、日本で就職したいなら、日本語能力試験1級(N1)に合格して、報告書が書けるレベルに達する必要があるようです。よって、研究生の教育は、教職員への負担が大きいことからも、勉学環境に見合った定員を設けるべきです。  こうした現状を踏まえ、多くの学生たちからも、中島氏の強引なやり方に反対する抗議メールが来ています。先に記載した学生たちの苦情メールをもう少し記しておきます。 「私は今年の春に4年生になりましたが、4年生の春のカリキュラムが明らかにおかしいと思いました。(中略)そして、対策授業の最初に大学のビデオを見させられました。内容としましては、①大学のこと(ほとんどが中島氏がどれほどすごい人なのか)②各試験の合格率と合格した人の声(公務員試験対策授業に参加したという声)③卒業式について。大まかに分けると以上の3つです。ビデオを見る限り、明らかに中島氏を大々的に持ち上げるような内容でした。(中略)この対策授業は、中島氏が関与しています。(中略)このカリキュラムには私を含め、クラスのほとんどの人が不満を抱いております。授業で抗議する人もいました。そして、それを受け持つ先生方にも負担がかかっています。もはや、独裁政治そのものです。(以下略)」 また、別の学生からは以下のようなメールもありました。 「心理学部に在籍しながら社会福祉士の資格を取得できるため、この大学に入学することを決めました。 当時の大学の売りは、文系私立大学就職率第3位であることと、福祉や教育系の資格取得ができることでした。しかし、昨年突然、『公務員』を全面的に推し進める方針へと変わりました。当初は予定してなかった公務員試験対策のための『キャリア1』という科目が心理学部の必修科目となりました。しかし、教員免許や社会福祉士資格取得のための科目を受講している生徒は、『キャリア1』を受けることができないカリキュラムになっていました。(中略)日本は職業を選択する自由が保証されているにもかかわらず、半強制的に公務員試験を受験させる大学を絶対に許せません。就職活動にも支障が出る時間割です。学生のことを考えているとはとても思えません(以下略)」 他にも、昨年10月に行われた東京福祉大への抗議を訴える「東京総行動」のチラシを見た学生(教育学部3年生ら)から、交通ユニオンの事務所に、中島氏の勝手なカリキュラム変更に困惑し怒っている、とするメールが数通届いています。また、東京総行動当日、池袋キャンパス9号館前での街宣行動の際に、勝手なカリキュラム変更に困っている、という学生の声を数人から直接に聞いています。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) 東京福祉大(及び同グループの専門学校)では、他にも、中島氏による教職員へのパワハラ(複数の教職員への恫喝)、出所後の中島氏による女子留学生へのセクハラ(200万円の示談金支払い済み)といった問題が起きています。また、過去の監督官庁(入管センター、文科省、法務省、東京都庁)から特任教授、事務局長、理事としての天下り、警察・検察OBの天下り、第三者大学認証評価機関(日本高等教育評価機構)との癒着及び同機構による内部告発情報の大学への漏洩、大学と中島氏から各メディアや国会議員へ(過去の大学敗訴の判決を無視し、かつ私を精神異常者だと誹謗中傷する)複数文書が送付されたといった問題もありますが、これらについては別の機会に詳しく説明したいと思います。■「日本の中に別の国」安倍政権はローマの失敗を直視せよ■青林堂社長にこれだけは言いたい 「パワハラに右も左も関係ない」■256万人の「移民予備軍」に口ごもる自民党の矛盾

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    東京福祉大「消えた留学生」の波紋

    東京福祉大で発覚した留学生大量失踪の波紋が広がっている。学生数減による苦境に対し、定員のない非正規留学生の大量受け入れが発端だった今回の問題。運営側の特異性も要因だが、留学生に関する法整備や少子化時代の私大のあり方といった課題が改めて浮き彫りになった。深刻さを増す「消えた留学生」問題の真相に迫る。

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    東京福祉大「留学生」悪用で生じた二つの偏見を正す

    石渡嶺司(大学ジャーナリスト) 東京福祉大学(東京都豊島区)から大量の留学生が消えたことが問題になったのは、2019年3月のことであった。以来、改めて留学生制度の問題点などが大きな話題となったので、本稿でも振り返りたい。 実は、留学生の大量失踪事件は東京福祉大が初めて、というわけではない。2001年には酒田短大(山形県)で中国人留学生の不法就労が事件化し、3年後には廃校となった。この問題以降も、大学や短大、専門学校で同様の事件が起きている。2001年 七尾短大(石川県)で14人が失踪→2004年廃止2002年 萩国際大(山口県)で中国人留学生の除籍、風俗店などでの不法就労が発覚→2007年に改称、2014年にも再改称(現・至誠館大)2004年 城西国際大(千葉県)で220人の「幽霊学生」疑惑が浮上2011年 青森大(青森県)で約140人の留学生が大量除籍2018年 日中文化芸術専門学校(大阪府)で大量除籍。ベトナム人留学生7人が学校側を提訴2018年 西日本新聞が九州の私立大37校を調査。過去5年の留学生4551人中、卒業以外の理由では20・1%が除籍・中退(2018年1月8日朝刊「留学生2割消えた 九州私大37校の退学・除籍 受け入れ急増で「ひずみ」も 少子化穴埋め焦る大学」)2019年2月 東海学院文化教養専門学校(茨城県取手市)が定員3倍超の外国人留学生を受け入れ。入学予定の留学生の在留許可を取り消し2019年3月 東京福祉大の留学生(研究生)3200人のうち、約700人が所在不明となり問題化2019年6月 保育・介護・ビジネス名古屋専門学校が定員超過の疑いから県と出入国在留管理庁が立ち入り調査(同校は東京福祉大のグループ校) 過去に同様の事件を起こした大学や短大、専門学校はいずれも正規の学生であった。これに対して、東京福祉大の場合、何よりも規模が過去の事例とは比較にならないくらい多い。 さらに、注目したいのが研究生という制度である。大学と短大は言うなれば文部科学省の許認可事業であり、「大学設置基準」が定められている。大学設置基準は、正規学生の収容定員を定めて、そのためのキャンパスや施設、設備から教員までを固め、これに違反した場合、補助金の減額などのペナルティがある。 ところが、この基準では、研究生を含む非正規学生はそもそも大量に入れる、ということが想定されていない。研究生は聴講生や科目等履修生と同じく、正規学生になる前の、言わば「慣らし運転」的な位置づけだ。そこまで多く入ることを文科省が想定しておらず、結果的に東京福祉大はこの盲点をうまく突いた、ともいえよう。 文科省と4月に発足した法務省の外局、出入国在留管理庁は東京福祉大の不明留学生について、2016年から18年度の3年間で約1600人に上るとする調査結果を公表した。公表結果を受けて、文科省は東京福祉大に、7月中に留学生の在籍管理などに関する改善計画の提出を求めている。 さらに、当面は新たに入学する学部研究生への在留資格(留学)付与を認めない方針も示した。2008年の福田康夫内閣以降、留学生受け入れは国策となっているが、文科省が、大学などに対して留学生受け入れの制限を求めるのはこれが初めてだ。文部科学省(ゲッティイメージズ) もっとも、研究生制度の悪用が判明した以上、東京福祉大に対する受け入れ制限方針は当然ともいえる。ただし、研究生制度を悪用しているのは東京福祉大だけではない、との風聞がある。今後、文科省の調査などで明らかにすべきであろう。 合わせて必要なのが、「まさか大量に受け入れなどするはずがない」という性善説に立った研究生制度にメスを入れることだ。大量受け入れの際の罰則や、教育内容の事前確認など制度改革を進めることが、国や文科省には求められる。単に東京福祉大を罰するだけでは、他の大学などで同じ事件が起こるに違いないからだ。 今回の東京福祉大の問題では、大学教育における質の低下や、経営状態の悪さを指摘する意見もあった。「大学が多すぎる」イメージ 確かに、留学生を大量に受け入れることにより、教育収入は増える。しかも、東京福祉大のケースでは、正規留学生ではなく非正規となる研究生なので、国が交付する補助金には影響がない。とはいえ、大量に受け入れたことによって教育収入増に成功したわけである。 さらに、東京福祉大は研究生受け入れにあたって「中国籍か否か」によって学費の差をつけた。国籍によって学費に差をつけるのは人種差別以外の何物でもない。 日本は1918年、第1次世界大戦後のパリ講和会議において、世界で初めて人種差別撤廃を提案した。その国の大学が、中国籍を持つ留学生に人種差別的な学費格差を設けるのは国辱もの、とすら思える。  話を大学経営に戻そう。ところで、東京福祉大以外でも、留学生の大量受け入れによって経営改善を図った大学が過去にもある。 ここで想起されるのが、定員割れを起こす大学が増加した、という報道だ。これに学生の学力低下を報じるニュースなども合わせると、分かりやすい構図ができる。「大学は定員割れ大学が増えている」→「学力が不足している学生も受け入れるほどだ」→「留学生を不正に大量に受け入れてもいる」→「いずれ、経営難の大学がさらに増え、潰れていく」→「不正犯罪の温床にもなりかねない」→「ダメな大学はどんどん潰して行くべきだ」 実に分かりやすい構図だ。 2012年には大学が増えすぎ、との認識もあって、当時の田中真紀子文科相が「量より質が重要」(2012年11月3日産経新聞朝刊)として新設3校を認めない、と発言し大騒動となった(その後撤回し、3校は予定通り開校した)。2012年11月、3大学の新設不認可問題について会見する田中真紀子文科相(野村成次撮影) この騒動を受けて、産経新聞がオピニオン面で「大学は多すぎるか」をテーマにしたところ、「大学は多すぎると思うか」は92%、「定員割れ大学の淘汰を進めるべきか」は89%、「大学新設に歯止めをかけるべきか」は74%がそれぞれYESと回答した(2013年1月4日)。 この印象は7年たった現在もほぼ同じであろう。だからこそ、東京福祉大の事件発覚後に、分かりやすい構図をもって論じる人が出てくるのだ。「定員割れ」大学への誤解 しかし、個別論で当てはまることがあるにしても、構図全体として考えれば、実は相関関係が強いとは言いがたい。 まず、大学の数は1989年に499校だったものが、2019年現在は782校と、283校も増加している。それでいて、廃校した大学は統合例を除けば、わずか15校しかない。 先述の通り、大学は国・文科省の設置認可事業であるが、その中には大学が経営難に陥っても、教育が円滑に運営されるように、「安全装置」が二重三重に働く制度設計が施されている。それもあって、廃校に追い込まれる大学は世間一般が考える以上に少ない。 定員割れの大学が多いことは事実だが、これもよく誤解される。定員割れということは、それだけ教育収入も不足することを意味する。 民間企業であれば、経営収支の赤字状態が続くと遠からず倒産に追い込まれる。大学だって同じことだ、と誤解する人が実に多い。とあるビジネス週刊誌も、この誤解に基づき、そう簡単には廃校するわけがない国際基督教大(ICU)や創価大、玉川大などを「危ない私大」リストに入れ、関係者の怒りと失笑を買った。 定員割れ大学は日本私立学校振興・共済事業団「私立大学・短期大学等入学志願動向」によると、2018年度で私立大学の582校中210校、つまり36・1%もある。 産経新聞で定員割れ問題を論じた初めての記事は1993年3月24日朝刊「大学淘汰の時代が始まった」である。同年、定員割れ大学は385校中19校、全体の4・9%だった。 増えてはいるが、「一時期に増加して、現在は減少傾向にある」が正しい。私大の定員割れがピークだったのは2014年で578校中265校、45・8%と実に5割近くを占めていた。4年には約36%なので、約10ポイントも低下したことになる。 さらに注目したいのが、極端にひどい定員割れ状態だ。2019年、高等教育無償化法が可決され、来年からの実施が既に決まっている。経営状態の悪い大学は対象外となり、その基準の一つが「定員充足率80%未満が3年以上」というものである。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) そこで、定員充足率80%未満の大学校数と比率について調べると、ピークは2014年で122校、21・1%だった。それが、2015年以降は114校、19・7%、117校、20・3%、90校、15・5%と減っていき、2018年は39校、6・7%にまで低下している。 背景には、地方私大を中心に大学改革が進んでいること、四年制大学の進学率の上昇、地方での地元志向の高まりなどが挙げられる。大学よりも危険な学校 いずれにしても、極端にひどい定員割れ状態の大学は減少傾向にあり、東京福祉大の事件をもって、大学経営の是非を論じるのは牽強付会もいいところ、と考える。 大学の是非を論じるのであれば、むしろ危険性が高いのは専門学校の方だと、私は指摘したい。4月25日に文科省は「私立専門学校における留学生の受入れ状況の把握に関する都道府県の取組についての調査結果とそれを踏まえた一層の取組について」を公表した。 この調査によると、私立の専門学校2610校中、留学生を受け入れている専門学校は871校ある。そのうち、「留学生が半数を占める」195校、「90%以上を占める」101校、「全生徒が留学生」でも45校と衝撃的な数字が並んだ。 専門学校は大学や短大と違い、経営状態の公表義務がない。それだけにブラックボックスの部分が多くある。 定員割れ大学について、留学生不正受け入れの温床、と非難するのであればいかがであろうか。大学以上に専門学校についても、厳しく見るべきであろう。 2018年、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を方針として決定した。事実上の「移民政策の転換(緩和)」と見ている。 いくら、「移民政策を厳しくしろ」と言ったところでどうだろうか。現実は、東京や大阪などの大都市部だけでなく、地方でもコンビニや居酒屋、ファミリーレストランなどでは、外国人店員がいないと成立しない業態ばかりだ。2019年6月、「適正校」の認定を取り消された名古屋市中区にある東京福祉大の系列専門学校 もちろん、急速な移民の受け入れ拡大は、米国や欧州諸国のように国家の分断を招きかねない。しかし、少子化が進み、労働力人口自体が減少している以上、移民政策の転換(政府が言うところの、外国人労働者の受け入れ拡大)は必須である。 今後も何段階かに分けて、移民政策は進めていく必要があるだろう。その際に改善すべきは、東京福祉大が今回悪用した研究生(非正規留学生)の制度だけではない。大学や短大だけでなく、専門学校も含め、留学生の制度もさらに改善する必要がある。具体的には、就労目的の留学生であっても、学業と就労が並立できるようにすること、日本語教育とその認定を厳格化すること、違反した大学や短大、専門学校への罰則を強化することなどだ。 現状のままでは、学校が「不法就労の温床」という状態が続くだけだ。この曖昧な状態を悪用する海外の不法就労斡旋業者や一部の学校経営者にとっては好都合だろうが、日本全体としては、未来を損なうだけに過ぎない。 東京福祉大の事件を機に、外国人労働者の受け入れ拡大策と合わせて、留学生制度のさらなる改善を国と文科省には求めたい。■ 「外国人労働者は移民ではない」日本はドイツの失敗を直視せよ■ 大移民時代に突入した「亡国のニッポン」を憂う■ 矛盾だらけの外国人労働者受け入れで浮かぶ「日本沈没」シナリオ

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    「外国人留学生増加で授業の質低下、日本人さらに減る」現実

     大阪の専門学校で起きた「外国人留学生300人超退学事件」。なぜ、大量の留学生が「退学」させられたのか。長年、日本における外国人留学生問題を取材するジャーナリストの出井康博氏は、この一件の背後にある「深い闇」の存在を指摘する。* * * 今年9月、大阪市の専門学校「日中文化芸術専門学校」で300人以上の留学生が退学となっていたことが発覚し、新聞などで大きく報じられた。同校は定員を大幅に超える留学生を受け入れた後、管轄の大阪府などから是正を求められ、一部の留学生を退学にしていた。退学となった留学生のうち7人のベトナム人は、同校理事長らに損害賠償を求める訴えを起こしている。 なぜ、「日中」を名乗る専門学校に多くのベトナム人留学生が在籍し、定員超過の末に退学という事態が起きたのか。実は今回の一件の背後には、急増著しい留学生の受け入れをめぐる深い「闇」が存在している。 独立行政法人「日本学生支援機構」によれば、専門学校に在籍する留学生の数は2017年度には5万8711人と、5年間で3万人以上も増えている。そして『読売新聞』の調査(10月8日朝刊掲載)で、留学生の割合が9割以上という専門学校が全国で少なくとも72校、学生全員が留学生という学校も35校あることが判明した。日中文化芸術専門学校も9割以上が留学生だった。首都圏の日本語学校経営者はこう話す。「日本人の学生が集まらない専門学校が、経営維持のため留学生の受け入れに走っているのです。うちの日本語学校にも(生徒の卒業後の進路として)全国の専門学校から“営業”がある。日本語が全くできなくても留学生を入学させる専門学校はいくらでもあります」 かつて文部科学省は、専門学校における留学生の割合を学生全体の50%以下にするよう定めていた。だが、その規制は2010年に撤廃された。政府が2008年に「留学生30万人計画」を定め、留学生を増やし始めた影響だ。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 留学生が50%を超える学校に対しては、今も所轄の都道府県から指導は入る。しかし、「日本人学生を集める努力をしている」と言えば、それ以上は咎められない。結果、留学生頼みの学校が増え続けている。留学生が学生全体の9割以上を占める関西地方の専門学校幹部が言う。「今回問題になった(日中文化芸術専門)学校は、営利目的で大幅な定員超過をやっていました。それはさすがに行政も見逃さなかった。しかし、留学生を大量に受け入れている学校の実態は、うちも含めどこも似たようなもの。留学生が増えれば授業の質は落ち、日本人の学生はさらに減る。学校にとって留学生は“禁断の果実”ですが、経営のためには仕方ない」【PROFILE】いでい・やすひろ/1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙「ザ・ニッケイ・ウィークリー」記者、米シンクタンクの研究員等を経てフリーに。著書に、日本の外国人労働者の現実を取材した『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社刊)などがある。関連記事■ベトナム人留学生の犯罪が増加 なぜ彼らは犯罪に走るのか■コンビニで外国人店員急増 留学生がバイトに精を出す理由■コンビニ店員20人に1人が外国人 大手3社だけで4万人超■検挙件数が中国人抜き1位、在日ベトナム人「犯罪SNS」潜入■千葉女児殺害・ベトナムのリンちゃん一家はなぜ日本に?

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    すでに「移民国家・日本」、どこへ向かうのか

    本多カツヒロ (ライター) 外国人観光客だけでなく、コンビニや居酒屋で働く外国人労働者を目にする機会が多くなった。それもそのはずで、1988年には94.1万人だった在留外国人の数は2018年末時点で273.1万人と3倍近くも増えている。政府も外国人労働者の受け入れに積極的な姿勢を見せ、2018年に出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)を改正、多くの外国人労働者を受け入れると明言している。そこで『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(講談社)を上梓した「ニッポン複雑紀行」編集長でライターの望月優大氏に、日本の「移民政策」の特徴、外国人労働者の実態、今後の「移民政策」について話を聞いた。――最近新しい在留資格「特定技能」の創設や技能実習生の失踪など外国人労働者の受け入れについて話題になることが多いです。日本政府は、「移民」という言葉を避け、「外国人材」という言葉を使い、外国人労働者に関する政策を「移民政策」でないとしていますね。しかしながら、実質的には外国人労働者がここ30年で急増しています。日本の「移民政策」にふれる前に、まずは先進各国の移民政策の特徴について教えていただけますか。望月:各国ともそれぞれに違いがありますが、先進国については大きく2つにわけられます。アメリカやカナダ、オーストラリアといった伝統的な移民国家の場合、国の成り立ちからして、さまざまな国からの定住を前提とした移民を受け入れることが国のあり方自体に組み込まれています。 一方、フランスやドイツなどのヨーロッパ諸国では、第2次世界大戦によって多くの若者が死亡し、戦後の復興のために大量の労働力が必要になりました。そこで、相対的により貧しかったイタリアやスペイン、東欧諸国、またアフリカなどの旧植民地や中東の国々などから、期限付きの労働者、ゲストワーカーを大量に受け入れていきます。しかし、1970年代に入るとオイルショックに直面するなど、経済成長にも陰りが見えてきます。そこで、新規の外国人労働者の受け入れを停止することになるのですが、すでに国内にいる数多くの外国人労働者についてはいきなり帰国させるわけにもいかないため、彼らについては母国から家族を呼び寄せることを含めて定住を認めていくことになりました。以降、これらの国々では移民やその子どもたちと既存の社会とをどう統合していくかという問題に本格的に直面することになったのです。――それらの国々と比較して、日本の「移民政策」にはどのような特徴があるのでしょうか?※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)望月:日本は、フランスやドイツに比べて経済成長が遅かったため、外国人労働者の受け入れが本格化したのは80年代になってからです。旧植民地に由来する在日コリアンの方など「オールドカマー」に対して「ニューカマー」と言われることもありますが、バブル期の前後までは国内の外国人よりも海外で暮らす日本人の方が多かったと言われています。「移民政策」の矛盾 ここ数十年の日本の「移民政策」の基調は、低賃金の出稼ぎ労働者に政府が言うところの「いわゆる単純労働者」として一定期間働いてもらい、その期間が終了したら定住せずに帰国してもらうというものです。この「いわゆる単純労働者」は、表向きは労働者としてではない形で入国している技能実習生や留学生などによって構成されています。政府は表向きは一定の技能をもつ外国人だけを受け入れるとしてきましたが、実際にはその逆のことしてきたわけです。結果として永住権を持つ外国人も増加し、現在では在留外国人全体の4割を超えています。 スキルのある外国人労働者に関しては、家族の呼び寄せも許可し、その受け入れを表向きも促進してきましたが、実際には外国人労働者全体に占める割合はそれほど多くないというのが現実です。――80年代以降に外国人が増えてきたのはなぜでしょうか?望月:ベトナムからの難民であるボートピープル、エンターテイメントのビザで入国しパブなどで働くフィリピンやタイの女性たちなど、様々な理由で経済成長を遂げた日本に対するアジア諸国からの流入が加速していきました。また、バブル景気に伴う人手不足によって、短期の観光ビザなどで入国して低賃金の労働者として働く出稼ぎの外国人も多かった。当時は、現在ほど取り締まりが厳格でなく、そうしたいわゆるオーバーステイの労働者の存在が許容されていたと言われています。 大きかったのが日系ブラジル人やペルー人など日系人の受け入れが拡大され、89年の入管法改正により3世まで入国できるようになったことです。このときの入管法改正によって現在につながる在留資格の仕組みが整備されました。――望月さんは、会社員時代から難民支援協会などNPOの支援に携わり、現在も日本の移民文化・移民事情を伝えるウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」の編集長として外国人労働者の方々と接しています。日本では、外国人労働者は単に労働力として見られる側面が強いわけですが、かれらの日本での生活ぶりとは?望月:例えば多くの外国人は工場で働いているのですが、工場内での仕事の時間だけで生活が完結するわけではなく、当然工場の外での日常生活があります。そうなると住まいや病院、買い物、銀行での本国への送金、子どもの教育などさまざまな課題が出てくる。こうした生活面での困りごとに関しては、いわゆる集住地域を中心に自治体が手厚くサポートしているケースもあれば、派遣会社などが通訳を通じて生活環境を整えている場合もあります。地域のNPOやボランティアの方による支援も大きいです。しかし、国という視点で見ると、あくまで労働力として受け入れている側面が強いため、生活面での支援は不十分であるというのが現状です。外国人の生活保護――生活面での支援で特に課題だと考えているのはどういった面でしょうか?望月:それぞれの状況によって困っていることは千差万別だとは思うのですが、個人的には言葉の課題が大きいと考えています。日本語を学習する機会が制度として保障されていないため、自ら勉強しなければなりません。子どもに関しては、公立学校での受け入れを通じてそれなりのサポートを受けられる可能性もあります。ただ、学校によって対応力に差があるのも事実です。 一方、大人の場合はそうした制度的な基盤が基本的に存在しません。ボランティアの方々が休日に公民館で教えるといった形でなんとか対応されている地域もありますが、週一回のレッスンだけでは日本語能力の伸びにはどうしても限界があります。さらに、外国人がそれほど多くないいわゆる散在地域ではこうしたインフラもない場合がもちろんあります。 言葉の問題は、仕事面ではキャリアアップ上の制約となり、生活においても様々な局面で大きな制約になります。子どもがいる家庭では、子どもの方が日本語の上達が早く、同時に親の母語の習得がうまくいかずに、親子間でコミュニケーションが難しくなるケースもあります。日本語と母語の両方が不十分な発達にとどまってしまう子どもたちもいます。――子どもたちに就学義務はないのでしょうか?望月:日本国憲法には、親が子どもに義務教育を受けさせる就学義務がありますが、その対象はあくまで「国民」であるとされているため、外国人の親や子どもにはその義務が無いことになっています。しかし、日本は子どもの権利条約を批准していることもあり、義務教育相当の公立学校では外国人の子どもを無償で受け入れています。ただ、義務ではないため、就学状況の調査が不十分であるなど、通学しなくても仕方ないというスタンスを許容しているように見えます。結果として不就学の子どもの割合が高いというのが現実です。――外国人労働者は社会保障を受けることができるのでしょうか?望月:日本はベトナムなどからの難民・ボートピープルを受け入れましたが、1981年に難民条約に加盟したこともあり、社会保障に関する内外人平等の原則へと徐々に移行していきました。在日コリアンの方たちなど、制度の対象外とされてきた人々による分厚い社会運動の歴史も非常に重要です。 時折「生活保護を外国人に支給するのは違法だ」という記事が拡散していますが誤りです。現在、外国人は生活保護の対象外とされているのは事実ですが、実際には永住者や定住者など特定の在留資格をもつ外国人に関して、厚労省からの通知にもとづき生活保護の準用が行われています。移民政策の新展開――昨年の入管法改正により、「特定技能」を持つ外国人の受け入れが決定しました。日本の移民政策は新しい段階に入っていくのでしょうか?望月:今回の新制度導入で、政府は2019年からの5年間で最大34.5万人の外国人を新たに受け入れるとしています。「大きな転換点」だという声もありますが、すべてが新しいわけではなく、以前の政策から引き継がれている部分も多く残っていることに注意が必要です。すでにお話した通り、外国人を低賃金の労働者として活用していく構造は少なくとも30年以上続いています。これまでの「いわゆる単純労働者」は、技能実習生や留学生など表向きは「労働者」ではなかった。新たな「特定技能」は就労目的の在留資格なわけですが、技能実習からの移行を前提とするなど古い制度との関係性に目を向ける必要があります。――たとえばどのような「移民政策」をお考えですか?望月:方向性としては労働面と生活面の大きく2つにわかれます。まず労働面ですが、人権侵害が度々指摘されている建前と現実の乖離した「事実上の外国人労働者」の受け入れの構造を変える必要があります。技能実習生や留学生の中には日本に渡航する費用を多額の借金で賄っている方も少なくないために、仮に約束より低い賃金での重労働や様々なハラスメントに直面してもなかなか逃げ出すことができない。最悪の場合は人身売買にも接近するリスクのあるこうした構造を解消しなければなりません。そのためには、労働者を労働者として受け入れる人権に配慮した制度をしっかり整備し、それ以外の受け入れ口を畳んでいくことが必要です。 次に生活面ですが、すでに日本で暮らす数多くの外国人について、これまで国として本格的に取り組んでこなかった日本語に関する支援など、社会的に包摂するための仕組みの構築が急務です。これまではNPOや自治体に丸投げされてきた部分について、国としても本腰を入れて取り組んでいく必要があります。 この2つを実行するとなれば予算も含めて大変なこともたくさんあるでしょう。しかし、新たな外国人労働者の受け入れを議論する際にはこれらの点を含めて議論する必要がありますし、そもそもこれから受け入れるかどうかということではなくてすでにこの国で暮らしている300万人近い外国人の存在を忘れてはいけません。『ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実』(望月優大、講談社)――出版後、さまざまなメディアに出ていますが、反響はいかがですか?望月:新聞やテレビなどの報道では「留学生が所在不明」「技能実習生の失踪」などそれぞれバラバラのトピックスとして出てくることが多いので、日本の移民問題や外国人労働者に関する情報の全体像はなかなかわかりづらいと感じていた方は多いと思います。そうした方から「はじめてこの問題の見取り図を得ることができた」といった感想をいただけるのは嬉しいですね。ほんだ・かつひろ 1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。

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    留学生1400人失踪の東京福祉大 「10万円払えば合格」発言録

     過去3年でベトナム人、ネパール人など約1400人の留学生が行方不明になっていることが判明した東京福祉大学に対し、文科省がついに調査に乗り出した。同大は2000年に開学し、全国に4つのキャンパスを持つ私立大学で、外国人留学生の受け入れ数(5133人)では早稲田大学に次ぐ全国2位(2018年度)。 なぜこれほど大量の失踪者が生まれたのか。その“ルーツ”が窺い知れる、同大創設者で元総長であるA氏の発言録を入手した。 同大との雇用関係を巡って地位保全の裁判を起こした元職員が裁判資料として提出した、A氏と職員たちの会合(2011年9月)の録音データを書き起こしたもの。そこにはA氏のこんな発言が記録されている。〈おれは2000人ぐらい集めようと思っている〉〈うちの場合は、編入生大歓迎、留学生に公平な試験、外国での大学卒業の学歴認める、単位を認めると〉〈研究生は10万円、レギュラーコースは20万円入学金払ってくれれば、合格書、仮合格書を出しますよと〉〈上手にやりゃ、(中略)勝手な試算だけど120億円入る〉〈募集やらないと(中略)倒産するぜ〉※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) この発言について、同大関係者が解説する。「A氏はその時点で総長の地位になかったが、創設者として絶大な影響力を維持しており、“留学生を大量に入れて4年間で入学金・学費を含め120億円を獲得する”というプランを描き、留学生を入れるだけ入れようとしていた」 そうしたA氏の発言が“過剰な留学生受け入れ”の後押しになったのではないか──東京福祉大にそう問うと、こう回答した。「私的な集まりがあって、その中でA氏が留学生募集を強化する案を大学関係者に話したことはあるようですが、本学の経営や教育には関与していません」 発言の記録まで“失踪”させてはならない。関連記事■中国人が接待で「女体盛り」を要求、要した費用は32万円■日本人女性との偽装結婚を検討した中国人不法就労者の告白■急増する日本語学校 教師養成講座で日本人がトラブルも■留学生受け入れは「親日」育てる目的なのに“嫌日”が急増中■中国富豪男の夢「蒼井そらを1晩300万円でセッティングしろ」

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    外国人労働者と消費増税「令和元年」リスクの裏に官僚あり

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 新しい元号が「令和(れいわ)」と発表された4月1日、日経平均株価は「ご祝儀相場」も手伝って、303円22銭高で終えた。 新元号の「意外性」は、おおむね好意的に国民に迎えられた。「ら」行で始まる文字、そして『万葉集』という国文学からの初引用など、新時代を迎える日本社会を象徴するものであろう。その新元号発表と同日に、経済的に重要な出来事があった。 一つは日銀の企業短期経済観測調査(短観)の発表である。この連載でも指摘してきたように、3月の短観では企業の景況感が急速に悪化してきていることを端的に示していた。 景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業で6年3カ月ぶりの大幅な下げ幅となった。米中貿易戦争の影響で、企業が海外取引の縮小に伴って、設備投資を低下させた結果だろう。また、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)とトランプ政権の政策協調が上手くいっていないことも原因ではないだろうか。 いずれにせよ、日本経済の先行きに黄色ランプが点灯している。これが「危険信号」に転換してしまうのではないか、と筆者は懸念する。 その大きな契機は、もちろん、10月に予定されている消費税率の10%引き上げである。日本経済が脆弱(ぜいじゃく)性を増す中、どうして大規模な増税が行われるのか、合理的な説明が全くつかない。安倍晋三首相の最終決断がどのようになるか、極めて重大な局面を迎えることになる。 「経済的に重要な出来事」のもう一つが、改正出入国管理法の施行である。制度的な詳細は省くが、これは「単純労働」に従事する外国人労働者を年々増やしていく政策である。5年間で建設や農業、介護など14業種に、最大34万5150人の受け入れをするという。前週末比303円以上の上げ幅となった日経平均株価の終値を示す株価ボード=2019年4月1日、東京都中央区 現段階で、日本の外国人労働者数は約150万人にのぼる。特に、国内の経済状況が好転した2014年以降、その数を急速に拡大させ、毎年15~20%近くの伸び率を記録している。 外国人労働者の担い手は、技能実習生と留学生の資格外活動、または永住者・配偶者などの身分に基づく在留資格者など、あらゆる種別でその人数を拡大している。その中で、改正入管法が施行され、「単純労働」の受け入れに門戸を開いたわけである。筆者は単純労働の受け入れには反対であり、その主張は今も変わらない。まず「日本人ファースト」 反対の理由は、主に2点ある。一つは、外国人労働者を移入する前に日本人の労働者の働く環境を向上させることが急務であるからだ。 長く続く経済停滞の影響で、多くの日本国民が「賃金など報酬が不足している」と感じている。実際に、働き盛り世代である30代後半から40代の貯蓄不足は深刻である。 これは統計的な問題はあるにせよ、この世代の人たちの生涯年収が「失われた20年」の影響で抑制されてきたことの表れだと考えていいだだろう。何よりも、この世代の稼得所得をできるだけ向上させることが必要だ。 しかし、外国人労働者の増加は、受け入れ国である日本人労働者の賃金を低下させることにつながるだろう。他方で、外国人労働者の賃金は母国で働いていたときよりも向上する。 労働市場が完全に機能していると、外国人労働者のメリットが、日本人労働者のデメリットを上回る。だから国際的な経済厚生の観点からは望ましい、というのが、教科書的な説明である。 だが、上述の通り、外国人労働者を大幅に導入する前に、「日本人ファースト」で待遇改善を実現させる必要がある。では、日本人労働者も、外国人労働者と同じように待遇を改善できる可能性はあるのか。 実は、ここに二つ目の反対理由がある。実態としては既に書いたように、150万人ほどの外国人が現在日本で働いている。その人たちが賃金の引き下げ効果をもたらしているかどうかは実証すべき問題だろう。 10年ほど前の実証では、外国人労働者による賃金引き下げ効果はなかった。人手不足の加速を考えれば、最近でも、外国人労働者増加の影響で、賃金引き下げ効果があったとしても限定されているだろう。これは、毎年の最低賃金引き上げが、失業率増加をもたらしていないことと同じ理屈だ。出入国在留管理庁の看板除幕式を行った(左から)山下貴司法務相と佐々木聖子出入国在留管理庁長官=2019年4月1日(鴨川一也撮影) つまり、この人手不足は通説と違い、人口減少よりも取りあえずの景気拡大によってもたらされたものだ。完全失業率が低下し、就業者数が増加し、そして有効求人倍率も増加している。これらは14年の消費増税やその後の世界経済の不調で、一時期足踏みしたが、16年以降は再び改善している。 要するに、外国人労働者を受け入れても、日本人労働者との競合が避けられてきたのは、この景気拡大に依存しているということだ。だが、景気拡大に黄色信号が点滅している現在、さらなる消費増税を実施すれば、赤信号に転ずるのは言うまでもないだろう。健保「ただ乗り」問題 それほど、消費増税と外国人労働者の増加の組み合わせは、日本の雇用を大きく悪化させる可能性がある。安倍政権だけではなく、それを継承する政権が外国人労働者の受け入れを拡大させたまま、消費増税をはじめとする緊縮政策を行えば、日本社会の停滞や分断にさえ発展するだろう。 その可能性が否定できない現状では、筆者は外国人労働者の大幅な拡大に寄与する政策に反対し続ける。外国人労働者たちも、日本に来たところで、不景気による失職や悪化する雇用環境に直面すれば不幸なことだろう。まずは消費増税の凍結・撤回が何よりも優先される。 また、国民健康保険の制度設計にも問題がある。いわゆる外国人の国民健康保険の「ただ乗り」問題である。 現状の制度では、日本に3カ月滞在しただけで保険証をもらえる。さらに、被保険者の海外在住の扶養者にも健康保険が適用されてしまう。 問題の核心は、2012年まで在留1年未満では国民健康保険に加入できなかったのを、厚生労働省の官僚の判断だけで3カ月で加入を認めることに変更したことにある。類似制度を有する諸外国に比べても、「在留3カ月」は極めて短期間と言わざるをえない。保険証発行については、以前と同じように在留1年以上の条件に戻すべきだ。 また日本で働くと偽り、医療を受けることがそもそもの目的でやって来る不正受給者の存在も話題になっている。この不正受給問題については、月刊誌『Hanada』で経済評論家の上念司氏との対談で、安倍首相が次のように発言していた。安倍 もちろん健康保険の不正受給についても、これまでの事例を見ながら厳正に対処していきたいと思います。月刊『Hanada』2019年2月号「安倍総理×上念司 日本経済を語り尽くす」 おそらく、不正受給が起こる原因の一つは、あまりに短期の在留期間で国民健康保険に加入できることにある。安倍首相はまずはこの点を厚労省に変更させることが、上念氏への「約束」を履行するために重要だと思う。2018年11月、出入国管理法改正案が衆院で可決し、腕時計を見る安倍晋三首相(中央) 日本に来る外国人労働者に対し、母国にいる段階で民間の健康保険に加入することを、日本での就労の条件にすることも一案である。これはいくつかの国では実施されており、何ら珍しい政策ではない。 消費増税の裏には財務官僚、そして、国民健康保険の「ただ乗り」懸念の裏にも厚労官僚の存在がある。日本の官僚問題は新しい元号の世になっても変わらない「日本の病理」だ。■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ 韓国よりも生ぬるい「ギャンブル依存症」対策で大丈夫か?■ 望月衣塑子記者に教えたい「硬骨のエコノミスト」の戒め

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    日本を狙う中国系「偽装難民」はこうして生まれる

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師、作家)(青林堂『移民戦争』より) みなさんご存じの通り、アメリカは中国製品に関税をかけて自国内で売れないよう、実質的な中国製品の不買とも言える状態を作り出すという「経済戦争」に踏み込んでいます。これは既にマスコミも伝えている文字通りの「戦争」です。 そして、この戦争を小休止するとした昨年(2018年) 12 月1日のうちに、今度はファーウェイ創業者の娘で次期トップと目されていた孟晩舟氏が逮捕されました。その当事者であるトランプ大統領は、周辺諸国を巻き込みながら、どのレベルまでやると思いますか? そして習近平はどこら辺で降参すると思いますか? トランプさんはもちろん、習近平がきっちり謝罪して、アメリカが持つ国際的著作権の侵害をやめるだけでなく、その補償を勝ち取るまでやるでしょう。というより、二度と中国が台頭しないよう、アメリカ製品を買うだけの国にしたいはずです。日本に原爆を投下して70年以上も戦争しない国、というより「戦争できない国」にしたようにです。 しかし、国家主席の地位にある習近平が自分自身の実生活で、その締め上げの苦しさに気付くにはかなりの時間がかかるはずです。アメリカが求める経済的「完全降伏」を決断するまでには、相当な時間がかかります(そもそも中国人は謝罪しません。国交においては国民性を見るべきです)。当然ながら、経済混乱の末のさらなる治安悪化や、地方政府の崩壊、これに伴う少数民族の蜂起、人民の広範囲における暴力的なデモや暴動が発生する段階に至るでしょう。 当然、その状況が日本に報じられれば、日本滞在中の中国人たちはそんな自国に帰国できないことを理由に難民申請をします。在留する中長期滞在者(実質的には移民)75万人ほどと、旅行客などの短期滞在者を含めた100万〜150万人の中国人たちが、自国を帰国に値しない、もしくは帰国できない国であると判断したその時、彼らは一斉に難民申請を始めます。 日本には中国大混乱の報道から数日のうちに10万人前後の難民が発生し、その数は増え続けます。渡航するより先に国内から大量の難民が湧き出るのです。 日本が警戒すべきは2〜3万程度の海を渡ってくる難民ではなく、報道で湧き出す100万以上の国内難民なのです。日本の保守派の多くがトランプの政策に溜飲を下げ「もっとやれ〜!」と楽しそうに声援を送っていますが、政治家も政府も追従するばかりで、ほとんどの人が気付いていません。 この状況を、その時潰れかけた中国共産党が放置すると思いますか? しかも後から黒潮に乗って、福建省や上海から中華「ボートピープル」がやって来て上陸し、てんてこ舞いの警察や拡張しても追いつかない入管の手を易々とすり抜け、ツテを頼って潜伏して働き始め、その結果、海外での難民問題同様に、苦しくなれば善悪ではなく生死をかけて暴れる「暴徒ピープル」となるのは目に見えています。※画像はイメージ(ゲッティ・イメージズ) 私が中国大使なら、もう既にその時の準備を終わらせていますよ。具体的には各領事館を使って、日本に滞在し続けるための人権デモを画策し、同時にメディアが中国に不利益となる報道をさせないために、党中央に対し日本進出中の企業がメディア広告をふんだんに打てるよう援助を要請し、中国人留学生組織である中国人留学生学友会の幹部と頻繁に連絡を取って、即扇動可能なレベルにあることを日々点検・確認しつつ、日本人が容易に越えることができない言葉の壁をネットでも実生活でもフルに使い、混乱極まるであろう大陸ではなく、この日本に民族生存の権利や特権を確立します。スパイ防止法のない日本 もっともこの報道対策は既に確立しています。テレビ番組を支えるCMスポンサーのほぼ100%が東アジアに進出している大手企業であり、ちょっと考えただけでも、テレビ局がこうした企業を中国国内で危うい立場にさらすような番組を放映できないことくらいは、皆さんもお分かりのはずです。 電通によれば、平成29年の日本の広告費総額は6年連続でプラス成長して6兆3907億円に達しています。特に広告掲載度の高い上位10社は、どの企業も中国と関わりが深いのです。 普段接することの多い新聞・雑誌・テレビ・ラジオの四部門に費やされる広告費は全体の約半分、迂闊(うかつ)に中国現地関連企業の利益や安全を脅かす中国記事を放送・掲載すれば、中国政府の横暴や中国人民の暴力に恐れをなす企業が一斉に広告を引き上げ、メディア企業は広告収入がなくなる恐れがあるという社会経済の仕組みがあることを今一度考えてください。テレビで見たニュースを新聞で裏付けても、全く意味をなさないのです。 難民一つとってもこの状態です。そして我が国にはスパイ防止法がありません。それを良いことに、外国人が外患を作り出すため接近し、あるいは潜伏して活動し、日本人が内憂を助長して「犯罪」的な要素を含む「反日」活動を目の当たりにしながら何もすることができません。 各国に派遣されている大使は、その接受国の元首に対して派遣されており、外交交渉、全権代表としての条約の調印・署名、滞在する自国民の保護などを任務としているのですから、その国で自国民を守る義務があり、その権利は接受国(日本)政府でさえ不可侵です。 これと対立する日本の治安組織や、今後発生するかもしれない民間防衛実力団体が自国民に害を加えた場合、自国民保護を名目に有形力的な抵抗を合法化するため、全権を委任された国家政府の代表として「国防動員法」の部分動員発令を母国政府に促し、暴動による破壊活動に関しても法を裏付けとして合法化することを(いかにもそれができるかのように)宣伝・扇動し、最も組織化しやすい留学生の実力組織を中心に、民族のための一大勢力を作りたい……と私が大使ならそれくらいのことは普通に考えますよ。当たり前ですよ。私ならやります。 先進国G7のうちスパイ防止法に類する法を持たないのは日本だけで、これでよくG7に入っているものだと感心します。日本は明らかに「情報後進国」。先進国が後進国にODAなどの資金を援助するのはよくあることですが、情報後進国たる日本の一部勢力は「特定」先進諸国からODAとは違う「別の援助」を受けて我が国を後進国のままにし続けているのです。G7首脳会議に臨む各国首脳。手前右は安倍首相=2018年6月、カナダ・シャルルボワ(代表撮影・共同) そして日本人は、着々と進む反日工作に気づかないまま、最終的には難民化した100万人を超える中国系移民による武装蜂起さえ無防備のまま迎えてしまうかもしれません。 それはまさにアメリカが経済的に中国に仕掛けた「経済戦争」のような移民で仕掛ける「移民戦争」。その時が目前に迫りながら全くと言っていいほどそれに気づいていない情況にあるということをご理解いただければと思います。ばんどう・ただのぶ 宮城県出身。警視庁で交番勤務員、機動隊員を経て北京語通訳捜査官を歴任し、警視庁本部、新宿、池袋署などで中国人犯罪者や参考人を扱う。平成15年に退職後、地方司法通訳、作家として活動し、外国人犯罪の実態をわかりやすくタブーに切り込みながら、さまざまな角度で分析、問題提起している。著書に『寄生難民』(青林堂)。

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    中国が仕掛ける「移民戦争」日本侵略はもう始まっている

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師、作家)(青林堂『移民戦争』より) 「ぱよぱよちーん」という変なフレーズを目にしたことのあるネットユーザーは多いと思いますが、その詳細を知る人は案外少ないようです。 簡単な経緯を申し上げますと、イラストレーターはすみとしこさんが、難民の偽装に関するイラストを掲載したことから、そのイラストをヘイトと位置づけた特定の勢力が、これに賛同した者のフェイスブック上のアカウントから情報を抜き出し、Googleのスプレッドシートにて300人分以上の個人情報をリスト化、イラストに賛同した人々を的に掛けるかのような活動を始めたのですが、これを作成したのが大手ITセキュリティ企業F-Secureのマーケティングマネージャー兼採用担当で、日本スマートフォンセキュリティ協会パブリックリレーションズ部会のマーケティングコミュニケーション・ワーキンググループのリーダーだった人物であることが判明しました。 日本のITセキュリティ社会における人材管理面での問題を浮き彫りにした出来事だったのですが、テレビ・新聞も全く取り上げず、ゆえにネットユーザーの一部しか知らないプライバシーに関わる大事件だったのです。本件の詳細は本書の趣旨から外れますので、読者の皆様には「ぱよぱよちーん」で検索いただくとして、その発端になったのは、「そうだ難民しよう!」というイラストでした。 そもそもヨーロッパで問題になっている「難民」問題の全てとはいいませんが、その多くが「自称難民」であり、その実質的には集団違法入国による民族出稼ぎであること、その難民や移民がその国の文化を破壊していることが本国人との大きな摩擦の種になっていることは、拙著『寄生難民』にもご説明したとおりです。 では、日本ではどうでしょうか? 事実、日本においても私たちがイメージするボートピープルのような、難民船で救助を願う難民(空海港上陸申請者)は、一昨年(平成29年中)は初回申請者1万9629人中113人、全体のたった0・67%しかいません。その前年(2016年)6月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がプレスリリースした「グローバル・トレンズ2016」において世界で避難を余儀なくされている人の多い上位5か国(シリア、コロンビア、アフガニスタン、イラク、南スーダン)からの申請者はわずか36人。 さらに性別で見ると男性1万3679人(申請総数の約70%)、女性5950人(同約30%)となっており、男性・女性ともに20代が最多、さらに20歳から34歳までの年齢の申請者が占める割合は、男性で約66%、女性で約64%と、命からがら逃げてきたにしては、まるで出稼ぎに来ているかのような構成になっているのです。実際本人の申請を元に現地の情況などの精査の結果、難民に認定されたのは初回認定の19人と、一度却下されて不服を申し立てていた1人の合計20人、これに加え難民としての要件には該当しないものの人道的見地から保護を必要とされた45人が加えられ、合計65人の滞在が認められていましたが、その割合は初回申請者全体の0・33%、異議申し立て申請者を入れると全体の0・28%に過ぎなかったというありさまです。はすみとしこ氏の「そうだ難民しよう!」イラスト さらに年内に一次申請で処理した1万1367人のうち却下された者(1万1348人=99・7%)のうち、その47・9%は「知人・近隣住民・マフィアとのトラブル」なのです。(さらに言うならマフィアとのトラブルを理由に申請した人は、この中の3・4%) また、一見いかにも難民らしい「政治活動」「宗教」「人種」といった理由も入っていますが、これらはあくまで「申請理由」であり、調査の結果、その申請された情況が確認できず、その立証もできなかったため却下されているのです。中国で発生する大量失業 こんな情況ですから「そうだ難民しよう!」というイラストもあながちウソではなく、少なくとも日本においては99%言い得ていたと評価できるイラストなのです。詳しくは入国管理局が公表している「平成29年における難民認定者数等について」をご確認ください。 さて、こうした難民の実態に直接接し、なおかつその人権を最大限に尊重して対処していた入管も、現場からの報告と突き上げ、業務の困難化や、法やシステム構築の前提としていた外国人像と実際の姿の乖離に直面し、円滑かつ効率的な職務遂行のためには組織を上げて対処せざるを得ませんでした。そこで昨年2月にこの審査システムを大幅改善し、審査のスピード化と真正難民へのバックアップ強化を図ると同時に、偽装難民の身柄確保と排除を実行し、その実績をもって覚悟を示しています。 その結果、昨年1月から3月の間に難民認定を申請した外国人は、前年同期比13%減の3015人(速報値)だったことを発表。四半期の比較で減少は8年ぶりだそうですが、なぜ入管が審査システムを変えたらたったの3カ月で申請件数が減るほど世界が平和になったのか? 世の中は複雑過ぎて私ごときには読めませんが(笑)、減った理由はみなさんがご想像の通りでしょう。 そして冒頭でお伝えした法改正により入管は「入国管理局」から「入国在留管理庁」として拡大拡充することで、来るべき東京五輪に付随する来日外国人の入国、さらには中長期滞在者(つまり移民)の「在留」を管理できる組織に生まれ変わろうとしているわけです。 しかし、ここで米中貿易戦争や情報インフラの防衛戦が展開され、解放軍の影響が強い中国通信機器メーカーのファーウェイが世界市場から排除され兼ねない事態となりました。 さらに、反中共勢力メディアの「大紀元」が昨年(2018年)12月28日、アップルがiPhone生産の拠点を中国からインドに移し、これに伴い下請けのフォックスコン(富士康/鴻海科技集団)もインドに拠点を移すとの噂が中国国内を駆け巡って人々の間に不安が生じているとの記事を掲載。記事によれば、韓国聯合通訊社が12月28日付の報道でアップル社は大部分の携帯端末機器の製造を中国最大のフォックスコンに依頼しているとのこと、さらにその下請けの関連零細企業まで含めると、アップル社の業務には中国国内で480万カ所の業務単位が関連しているとのことでした。 これが本当なら、中国で大量失業の発生は間違いなしでしょう。もともとインド市場ではアップルの人気が低すぎて、実績あるベテラン幹部3人が市場開拓をしくじった末に退職するなど「絶望的展開」だったのですが、その不人気の原因はiPhone端末自体がインドの平均収入に比してあまりに高価だから。 逆に言うなら、インドなら安い人件費で大量に生産できまますし、さらに本社があるアメリカの大統領方針決定と、これを支持するトランプさんが抑えに回っているほどに怒りの熱を帯びた米議会の様子を知っているはずで、企業としてそのように舵を切る可能性も高く、噂によって失業率の増加も現実化する可能性は高いといえるでしょう。 ファーウェイが失速し、失業者が増加し、その上また米中貿易戦争がさらに進んだりする中、職を失くした民衆が極端な収入格差を目の当たりにしながら苦しい生活を続けていれば、必ず暴動が発生します。中国・上海にあるアップルショップ(ゲッティイメージズ) 台湾系技術者の話によると、中国の地方都市は既に経済的に壊滅状態であり、その税収が進まず困窮した地方都市政府(地方自治体)に目をつけたロシアのファンドが、なんとその収税業務を地方政府から高額で買い取っていて、地方政府はそこで得た多額の資金を切り崩しながら細々と職員の給料を支払っているため、警察も公共機関もろくに機能していないそうです。そして、そうした各級地方政府が全国の半数近くに上っており、この金が尽きたときが中国の終わりの時であるという。そして、それを知っている中国の資産家が今国外に資金を移して、いつでも身一つで脱出できるように準備を進めるものが増えているらしいのです。「対岸の火事」ではない それを聞いたときには私もびっくりしました。台湾国語(台湾訛りのある北京語)で聞いたため、一瞬聞き間違えたかと思いましたが、その場にいたもう一人も驚いて英語で聞き直したので、これは間違いないと思います。そして、これら資産家の間では、そのタイムリミットはあと3年(昨年9月ころに聞いたので執筆段階から言えば、あと2年半ほど)とみているらしいのです。この話はロシアに行った友人からも全く別ルートで聞いておりますので、そういうことが発生しているのは間違いないと思います。 そして、そうした状況の発生を喜ぶ勢力も存在します。反習近平派や反共産党勢力、あるいは宗教団体や、決起して当然の少数民族過激派団体が暴動を扇動し、場合によっては連携してデモから暴動に移行するため、中国各都市を中心に経済だけでなく、政府活動そのものが停止することになると思われます。つまり暴動が起きてもこれを鎮圧する部隊が動かない可能性があるのです。 しかし日本のマスコミはスポンサーが不機嫌になって広告を引き上げるようなネタは、それが事実であっても報道しません。具体的に言うと、中国市場においてスポンサー企業の販売利益に損害が出る、あるいは現地工場の生産性に悪影響を及ぼすニュースは報じません。当然ながら中国各地で暴動が発生したとしても、新聞各社やテレビ各局は伝えざるを得ない状況に追い込まれるまで、決して伝えることはないのです。 逆に言うと、テレビや新聞で日本に中国での暴動の様子が伝えられるようになった時点では、もうかなりやばいことになっている可能性が大です。したがって、テレビの報道で情報を得ることが多い日本人から見ると、事態が急加速・急展開しているように見えるかもしれません。だが、実際にはその予兆は既に現れていて、それは私がこれまでの拙著でお伝えしている通りなのです。 日本人はその様子をむしろ「当たり前だろ」「もっとやってりゃいいんだ」と、起こるべくして起こった因果応報的な対岸の火事を生暖かく白眼視したり、「いいぞトランプもっとやれ!」と声援を送ったりすると思いますが、すでに突き進んだその状況は刻々と変化、拡大していきます。 最悪の事態を想定してみましょう。特に暴動が激化し空港の運営にまで支障をきたせば、来日・在日中国人たちも帰国できなくなりますし、もちろんその時点では中国警察の治安維持活動が期待できるレベルではないのも確実です。帰えるに帰れず帰っても祖国が不安定であるなら、難民申請するしかなくなるでしょう。 まあ、私個人としては広大な中国領土の一角に暴動発生が認められない地方が僅かにでも存在するなら、そこが出身の省であろうがなかろうが、中国人としてお帰りいただくのが筋であると思いますし、「そこに行くのは嫌だ」と言っても強制送還すべきだと思いますけどね。「上海人」や「北京人」として来日を許可しているのではなく、滞在期限内に帰国することを前提とした「中国人」として入国を許可しているのですから、内陸にまだ平和なエリアがあるなら、その近くの空港に下ろしても問題ないはずです。 しかしこうなるともう、難民申請者1万9000人を超えたところで危機を感じ、舵を切った「入管」も対処できません。なぜなら日本には昨年の段階で74万人を超える中長期滞在者と、これを遥かに上回る旅行客などの短期滞在者が存在していて、その数は軽~く100万人を超えるからです。中国の上海浦東国際空港(ゲッティイメージズ) 実際の数を書くと現実離れしていてみなさんピンとこないでしょうから、私も明記するのを避けていますが、実際にはこれら中長期滞在者=移民74万人の他、平成29年中のデータを参考にするなら、中国人「短期滞在」資格では新規入国人口だけでも473万人弱。これから先の話ですし、それがいつ発生するのかを考えると、特に短期滞在者人口に関しては不透明ですが、仮にその審査が受け付けられれば認定前であるとしても、実質上の一時滞在者になることは確実です。当然ながら、既存の収容施設に全員を収容するのは不可能ですから、彼らは私たちと同じ空間にそれまで同様に生活します。 そして彼ら自身も生きるため、カネを生む仕事を必要とします。一方、彼らを安く使いたくて仕方ない企業はたくさんあります。移民の増加を不安視しながらも、そんな企業が作る安い製品を喜んで買う日本国民もいるのですから、彼らが定着しないわけがないのです。これもまた因果応報 前例がないほどに数を増し、低賃金と長時間労働から不満を募らせた外国人たちが、かつてないほどの密度で横連絡を可能とした携帯端末を使い、個々の意識を確認・共感して共通の利益を求め団結すれば、社内で暴力的手段により賃上げ要求を繰り出すに至るまでには、そう時間はかからないでしょう。また、仕事を求めてデモを始め、暴徒化する可能性もあります。 なぜなら●同じく情報端末の普及により連絡密度を濃くして情報をキャッチし共有できるようになった日本社会では、犯罪者による民族的悪評や、中国人各自が無意識のうちに日本人に与える道徳レベルの差が周知の事実となりつつあり、中国人の社会的評判は決して良くないため、彼ら自身が疎外感を感じている●おまけに本来は来日して働く必要がなかった旅行客までもが難民として職を求める結果、既に存在する特定技能1号などの実質的単純労働者と労働市場が競合してしまい、低賃金雇用が加速して日本人労働者の雇用や収入にも影響を与えるため、最も多い中国人は日本社会でさらに怨みを買いやすい●日本人レベルでは奴隷労働と認識し得ない当たり前のレベル達成を求められるため、中国人はこれを苦役と感じる●中国人難民を含めた外国人の雇用に伴う賃金低下によりデフレも深刻化するため、今よりさらに社会感情的な悪化を肌で感じるなどの状況が発生します。 しかし、そんな日本の労働社会に反発する民族的動きに気付いて情報を拡散する語学力を持った人間は少ないため、日本人が言葉の壁を超えて、そうした彼らの思いや動きに気づくことは遅れるでしょう。怒りを爆発させた彼ら中国人労働者は、日本人のようにお行儀良くあぐらをかいて座りこみ団体交渉したりしません。 昭和の左翼労働運動が華やかだった頃のように、社長室で社長や幹部を監禁状態に置いて問い詰めたりするならまだ上出来で、複数の幹部を殺害したり仕事場を破壊したりするのはよくあることです。中国共産党の地方政府や警察は、そうした状況に手を焼いていたからこそ、軍事費を上回る治安関連予算を組んでいるのです。 「自分の会社を破壊するような賃上げ要求なんかするわけない」 「中国人なら不満があれば暴れると決めつける坂東はヘイト野郎だ」 という人は、50都市を超える中国各地で自分の街の商店や工場を襲い破壊し、火を付け略奪し車をひっくり返して気炎を上げて自国民に死傷者まで出した2012年の反日暴動の動画を、いま一度点検すべきでしょう。また日本国内で集団暴徒化した彼らの様子は、2008年の北京オリンピックに際し、長野で行われた聖火リレー通過時の暴れっぷりを動画検索してご覧いただくのが一番ですが、あれは聞くところによれば、領事館の指示に従い日当5000円に弁当付きで集まった、滞在資格身分のある中国人留学生諸君です。切羽詰まった中国人による、自らの利害や生存を賭けた暴徒集団ではない部分を差し引いて、参考までに御覧ください。中国新疆ウイグル自治区のカシュガル市の毛沢東像(ゲッティイメージズ) そしてそこには、なぜか中国共産党だけでなく日本共産党も長年目指していた、日本政府の根本的「改革」、つまり国家転覆への希望の光が差し込むのです。これらの動きを利用しようとする左翼系市民団体も連携し、日本人をどこかに置き去りにした「人権」のために立ち上がることは明白でしょう。仕方がありません。 実際に大企業は奴隷労働的、低賃金長時間労働者を欲していて、その大企業のサービスを平然と受けていた国民が私たちなのですから。そしてそうした奴隷的労働は実在し、私も不法滞在者などからその実態を聞いているので、同じアジア人として同情すべき部分はあるのも事実です。これもまた因果応報というものです。血で血を洗う接近戦 それでも私たちは生きなくてはいけません。そして警察組織人口を超える彼らの暴力的集団犯罪には打つ手がありません。各地で多発する暴動でてんてこ舞いの警察や機動隊が来てくれるまで、「暴力反対」を訴えながら、傷つけられる大切な家族や仲間を目の前に、話し合いで時間をつくりますか? 加害者たる暴徒たちの人権を守って「殺すより殺されよう」と仲間に呼びかけますか? この状況に至って、それでも日本の国を守るなら、血で血を洗う接近戦を覚悟した日本人有志の武装団結による武力的防圧殲滅活動以外、日本人と善良な外国人の生命・身体・財産の安全を確保する方法はなくなるでしょう。今、ヨーロッパがこの境地に差し掛かっています。 そしてもう一点。 こうした状況を作るのは、中国だけではないという点を忘れないでください。難民を出して、あるいは日本国内から難民を発生させて、そうした状況を作る可能性が高いのはむしろ、お隣の韓国です。 あの国が●「民族の悲願」どおりに平和裏に南北統一して経済混乱した場合●または不信感をつのらせた米軍が撤退し、統一より金王朝存続の可能性が高いと見た北朝鮮が武力統一の好機と捉えて南下してきた場合●アメリカに睨まれ、北朝鮮の抑えも効かない切羽詰まった中国が、国境を超えて北朝鮮に攻め込んだ場合などなど、半島難民が発生するに至るいくつかの経緯が考えられますが、こっちの方がはるかに深刻かもしれません。 対馬のすぐ対岸には韓国第二の都市、釜山があり、海流は山口県から青森県まで警察官人口の少ない日本海沿岸の各自治体を沿うように流れ、しかも上陸可能地点は太平洋側より多く、沿岸線も長い。これを匿(かくま)い、あるいは利用しようとする半島系組織は既に全国各地に存在しているのですから。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) みなさん、心の準備は出来ていますか? 何を準備すべきだと思いますか? そのために、あなたに出来ることは何ですか? 政府に任せっきりにして政治に文句を言うだけでなく、国民一人ひとりができる予防と対策を、手を尽くして講じるべきでしょう。ばんどう・ただのぶ 宮城県出身。警視庁で交番勤務員、機動隊員を経て北京語通訳捜査官を歴任し、警視庁本部、新宿、池袋署などで中国人犯罪者や参考人を扱う。平成15年に退職後、地方司法通訳、作家として活動し、外国人犯罪の実態をわかりやすくタブーに切り込みながら、さまざまな角度で分析、問題提起している。著書に『寄生難民』(青林堂)。

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    「安倍時代の終焉」が現実的とは言えない理由

    坂場三男(日本戦略研究フォーラム顧問、元外交官)  安倍総理の在任期間が、戦後はもとより、戦前を加えた日本憲政史上でも歴代最長となる可能性がある。平成の30年間を振り返って、短期政権に慣れた国民一般の目からすれば信じがたいほどの長期政権である。しかも、驚くべきは、この間の内閣支持率が一貫して高いレベルにあり、ごく一時期を除いて常に不支持率を上回っていることである。 民主党時代を含めて内閣支持率というものは総理在任1年もしないうちに下落するというのが常識であったから、安倍政権について単に在任期間が長いというだけでなく、その間の内閣支持率がおおむね高いレベルを維持し続けていることに驚嘆せざるを得ない。これはなぜなのか。 私は元外交官であり国内政治の専門家ではないので安倍政権長期化の理由、背景を総括的に解説することはできない。一般に言われていることは、「アベノミクス」という経済財政政策が長期デフレに苦しむ日本経済に再生の可能性を示し、国民に対して明るい未来展望を切り開くことに成功したこと、その一方で3年3カ月余にわたる民主党政権3代の失政に多くの国民が失望し、野党として自民党に取って代わり得る存在と見られていないこと、の2点のようである。 もちろん、自民党内に安倍総理の後継たり得る有力な政治家が見えてこないという事情もあるが、安倍内閣への支持率が相対的に高い以上、総理に退任いただくべき事由はないので、後継不在の問題は安倍政権長期化の主たる理由にはならない。 国民の多くが安倍政権を支持し続ける理由の一つに総理の外交手腕に対する高い信頼があるように思う。日本外交の柱は何といっても日米関係の安定・強化であるが、安倍総理はオバマ大統領、トランプ大統領という全く異質な米国指導者二人とそれぞれ良好な関係を構築するという驚くべき対人能力を発揮した。 しかも相互の信頼関係のレベルも共に極めて高く、日本の歴代総理と比べても傑出した外交成果であると評価されなければならない。これは安倍総理の人柄もさることながら、何よりも、東アジアをはじめとする世界情勢全般に対する認識を共有し、外交・安全保障戦略をおおむね分かち合える関係を構築できたからに他ならない。その第一が安保法制の整備だったと私は考える。カナダでのG7サミットでドナルド・トランプ米大統領(右端)に向かい身を乗り出すドイツのメルケル首相(中央左)=2018年6月9日(ドイツ政府提供、AP=共同) それでは、中国や朝鮮半島の問題についてはどうか。過去10年ほどの地域情勢を特徴づけるものは中国の超大国化と覇権主義的な対外政策、そして北朝鮮の核・ミサイルの開発である。これらはいずれも短期的な問題ではなく、中長期にわたって日本を取り巻く安全環境の桎梏(しっこく=手かせ足かせ)となるものであり、小手先の外交対応は意味をなさない。 この点で日本の政治指導者には確固たる外交理念を打ち出すことが求められるが、安倍総理には多くの国民を納得させるだけの信念があり、このことも政権の長期化が支持される理由になっているのではないか。 習近平国家主席にしろ金正恩労働党委員長にしろ一筋縄ではいかない人物であり、しかも長期にわたって指導者の地位にとどまることが確実である以上、日本の総理にコロコロと代わられては困るのである。韓国の文在寅大統領についてはいまだ在任2年に満たず、安倍総理からすれば「新参の政治家」であって余裕をもって対応できる。韓国側がドタバタすればするほど、日本側のどっしりとした腰の据え方が光ることになる。短期政権にはない安定感が際立ち、国民の支持を得ることにもつながっている。メルケルに学ぶべきこと もう一つ、安倍外交の特徴は環太平洋連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった広域自由貿易圏の構築に積極的なことである。これは「自由で開かれたインド太平洋戦略」と相まってアジア大洋州各国の対日信頼を醸成することに寄与している。 特に、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国は日本との関係を重視しており、安倍総理への信頼も厚い。広域自由貿易圏の構築は「アベノミクス」の柱の一つだが、それと同じくらい関係各国の経済発展にも寄与する。長期政権でなければこうした外交は展開できない。 先進7カ国(G7)の中で安倍総理の在任期間はドイツのメルケル首相に次いで長い。そのメルケル首相も昨年末にキリスト教民主同盟の党首を辞任し、首相としての在任期間も最長で2021年9月までの現任期をもって終了することが確実である。 2005年11月にドイツ首相に就任して以来13年が過ぎ、「ヨーロッパの顔」としての彼女の権威にも陰りが見え始め、「メルケル時代」の終焉(しゅうえん)が近いことを感じさせる。メルケル首相の強みは堅実な経済運営と中道の左右両派を取り込んだ政治の安定だった。 しかし、2015年からの難民・移民の大量流入に寛容な政策をとったことが国民の反発を招き、拠って立つ支持基盤であるキリスト教保守層も離反・弱体化して、2017年の連邦議会選挙で敗北、昨年秋には2つの有力州における議会選挙に連続して大敗したことで与党党首の座から降りざるを得なくなった。 確かに、難民問題は選挙敗北の直接の引き金ではあったが、もう少し長い政治潮流の中で見れば、キリスト教保守層という従来の支持基盤が崩れたことと、世論が右派ナショナリズムと左派ポピュリズムに分裂していく中で国民の多くがキリスト教民主同盟の中道路線に飽き足らないものを感じ始めていたという事情がある。 このことは日本の与党、特に自民党にとって教訓に満ちている。自民党にとっては長いこと農協を軸とした農業従事者が支持基盤とされたが、今や状況は大きく変貌しているし、国民世論も右に傾いて中道を志向する空気ではなくなっている。ドイツと違って安倍政権が安定を維持している背景には安倍総理個人、そして自民党が日本国内におけるこうした政治潮流の変化をしっかりと読み切り、適切に政権運営をしているという事情があるのではないか。首脳会談を前にドイツ・メルケル首相(左)と握手を交わす安倍晋三首相=2019年2月4日、首相官邸(春名中撮影) 今、トランプ政権の登場と「アメリカ第一主義」が国際政治経済に大きな影響を及ぼし、米国と欧州の対立が深まる中で、安倍総理の存在は両者をつなぎとめる鎹(かすがい)になっている。G7の会合でも決裂しかかる議論の流れを押しとどめ協調と連帯を何とか維持する上での安倍総理の役割はますます大きい。 中国が超大国化し強権的な対外政策を展開する中でアジア諸国の多くが安倍総理にバランサーとしての役割を期待している。国民は内政面だけでなく対外関係においても安倍総理の存在・役割が大きいことを感じており、これが政権の長期化を支えるもう一つの重要な要因になっているように思われる。

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    青山繁晴手記「総理、足元の声をお聴きですか」

    青山繁晴(参議院議員、作家) 諫言(かんげん)などという格好の良いこと、偉そうなことは、できませぬ。しかし、かりそめにも日本の唯一の主人公である有権者から負託されたからには、お聞きせざるを得ません。 総理、どうなさいましたか、と。声をお聴きになっていますか、と。 いや、安倍晋三総理も総理官邸の人々も、国民の声を聴いているおつもりなのだ。 すなわち世論調査では、「モリカケ」という悪質な冤罪によって安倍総理を追い詰めたオールドメディアの行う世論調査であっても、最近では安倍政権の支持率は上がり、不支持率は下がっている。いずれも振り幅は小さいが、ほぼすべての調査に共通する傾向だ。 そして外国の国民を労働者として急に増やすこと、実質的に永住させることを盛り込んだ入管法(出入国管理・難民認定法)改正案も支持が不支持を上回っている。さらに消費増税も支持が不支持を上回る傾向だ。 安倍改造内閣の押し進める政策で、はっきり不支持が多いのは軽減税率やプレミアム付き商品券、ポイント還元制度といった分かりにくい増税対策だけである。しかし消費増税そのものは「やむを得ない」と受け止める国民が多いことになっている。 もちろん世論調査によって色合いは異なるが、なべて言えば、現在こうだ。落とし穴の一つは、実に、ここにある。 かつてはタウンミーティングのように国民の声を直接に聴く場も、ほんの少しはあった。だがこれもやらせ疑惑が出るなどして中止。長くても残り3年弱、来夏の国政選挙で敗北すれば短くてあと8カ月強の「最期の安倍政権」は世論調査しか、耳を持たないのだ。2018年11月、参院予算委で答弁を行う安倍晋三首相(春名中撮影) オールドメディアのそれ以外に、政府与党も長年のノウハウと蓄積データを持つ世論調査を非公開でやる。こちらはオールドメディアほどには質問に仕掛けを作らないので、客観性は高い。だがこの調査も結果は同じ傾向だ。 そのために安倍総理には「保守色の強い支持層には入管法改正や消費増税が不評でも、広範な国民には支持がむしろ回復している」という安心感が生まれている。さらに「これまでも保守政権だからこそやれるという不人気政策をあえて実行してきた。路線が変わったわけじゃない」と政権みずから納得している。「なぜ妊婦をいじめるの」 だが世論調査は、特に安倍政権には間違いの元になる。なぜか。再登板後の安倍政権は、歴代の自由民主党中心の歴代政権とはまったく違う特色を持つからだ。 それは、選挙権を得たばかりの18歳や19歳に支持が高く、50代以上の世代にまったく人気が無いことだ。 世論調査は、回答者が特定の世代に偏らないようノウハウを持って各世代に万遍なく電話で質問していく。ところが法改正でせっかく有権者となった18歳、19歳はほとんど答えない。この世代の回答率は何と、およそ1%である。100人のうち1人答えるか答えないか。したがって世論調査は、安倍政権の本来の支持層が「たった今の政策」をどう考えているかをほとんど反映しない。一方、高齢世代は「日本はすべて悪かった」という教育を受けて育ち、インターネット上の情報の活用もまだまだ少ない。この世代は安倍総理が日本の敗戦後の歩みを変えることを強く警戒してきたから「この頃の現実路線には安心感がある」(70代の元教員)となる。 安倍総理はまずは、足元の党内の声を聴くべきではないか。 例えば、参議院の厚生労働委員会である。わたしはこの委員会に属していない。しかし1回生議員として「雑巾がけ」を積極的にやると決めているから、出席できない議員の差し替えを務めていた。すると野党議員が「妊婦加算」について「おかしいではないか」と問うた。病院で妊婦と分かれば治療費を余計に払えという制度が4月から始まっている。わたしの周りの自由民主党席には医師でもある女性議員が複数いる。その議員らから「人手が足りないから無理にでも外国人を入れようとしているのに、なぜ妊婦を苛(いじ)めるの」という秘めた声が幾つも聞こえた。 わたしは議事の邪魔にならないよう他には聞こえない声で「レントゲン一つとっても医師の負担増は分かりますよね。しかしそれは妊婦ではなく国が負担すべきです。人手不足は人口減で起きているのだから、妊婦こそ国の宝ですね」と応じた。そして野党議員が質問を終えるとき、男女を問わず自由民主党席から自然に大きな拍手が起きた。 この厚労委では、水道法改正案の趣旨説明も行われた。水道事業がこれも人口減で行き詰まりを見せ、老朽化した施設を更新できないでいる。だから自治体が水道の運営権を民間に売れるようにする法改正で、すでに前国会で衆院を通過している。この運営権にフランスの水メジャーと中国が強い関心を持っているとされるが、命の水、ことに日本は水の邦(くに)でもある。少なくとも外資規制を掛けるべきだ。青山繁晴参院議員=2018年9月(仲道裕司撮影) 厚労委で自由民主党のあるベテラン議員は、わたしに「安倍総理は何を考えている。水道法も妊婦加算も入管法改正も人口減への対処が間違ってるよ」と小声で言い、「(自由民主党本部で開かれた)法務部会で青山さんがずっと入管法改正に反対していたあの主張、全く正しいよ。俺(おれ)は立場上、言えないけどね。地元でもみな、そう言っているよ。このままじゃ選挙に負ける。頑張ってほしい」とわたしの眼を覗き込んだ。 その法務部会では、「業界から頼まれてきた。早く外国人が欲しい」と正直に、あるいは露骨に発言した議員もいらっしゃった。ある意味、ミッション(使命、作戦)を帯びた反対論潰しの試みがあったわけだ。ところが部会の外では閣僚経験者や党の重鎮までが党本部のエレベーターや国会議事堂の廊下で「入管法改正反対は正しい。主張を続けてください」と仰る。「反対論はおかしい」という声は部会の外では、皆無だ。総理の真意はどこに おのれに都合のいい声だけを取り上げているのではない。 例えば、選挙の足腰を支える地方の女性党員はどうか。わたしは今、党女性局の史上初の男性事務局長を務めている。配偶者が日本女性で初めて大型船の船長資格を取り、現在も研究調査船に乗船してメタンハイドレートや熱水鉱床といった日本が建国以来初めて抱擁する自前資源の探索にあたり、彼女が幼い子二人を残して遠洋航海に出た時は、忙しい政治記者だったわたしが子育てをした、そんな事実が影響しているのかもしれない。 その女性局事務局長の務めとして参加した地方のブロック会議で、公式会議が終わると地方議員の女性が複数、寄ってこられ「妊婦に金銭負担やストレスを与え、何より大事な水を売り渡し、日本の女性や中高齢者を雇わずに外国人を、総理が国会で答弁なさっていることと違って、実際には多くは低賃金で雇う。総理はいったい何なの。これで来年、選挙をやれと言うの」とわたしに厳しく問うた。 では総理の真意はどこにあるのか。 再登板後の安倍総理は現実主義者である。不肖わたしも長年、安全保障・危機管理を民間から担う実務者であったから、現実を常に見ている。ところがお話ししていると総理には、はっとさせられるほどリアルな現実把握、みごとな現実認識がある。 安倍総理がたった今、冷徹に把握している現実は、後継者がいない事実だ。日韓合意以来、わたしと安倍総理は意見の違うことばかりだが「安倍総理の後継総理は国家観、歴史観が共通する人でないと、苦闘の果てに積み上げてきた平和安全法制や特定秘密保護法という敗戦後の日本の在り方見直しが無に帰する怖れがある」という認識では一致している。 だから総理は今、「一定の仕上げを自分でやっておかないと」という危機意識でいっぱいだ。そのために「人手不足倒産をとりあえず解消しないとアベノミクスが続かない。水道をはじめインフラの更新をとりあえずできるようにしないといけない」となる。 前者には「最大でも35万人の外国人だから、あくまで労働者だ。移民じゃない」、後者には「水道の管理責任はあくまで公(おおやけ)、自治体にある」という自己弁明が付く。そして妊婦加算は、国会で答弁を求められるまではおそらくあまりご存じなかった。 これらは不肖わたしの推測だが、もとより単なる推測ではない。総理側と交渉をするなかで明瞭に伝わってきた総理の真意である。 わたしは一回生議員に過ぎない。入管法改正の廃案を叫び、ただ反対するだけなら一回生議員にもできる。だが叫ぶだけだ。おのれの支持者の喝采を待ち、結果には責任を持たない、一つの保身である。内政だけでもズレがある まだ後輩議員もいない身も顧みず、やらねばならないのは政府原案修正の実現だ。入管法改正案はこのままでは、ぼくらの祖国を見知らぬ国にしてしまう。日本国民の中高齢者、女性、そして引き籠もりや鬱によって就職できずにいた若者の就労を実現する、あるいは外国の国民が日本の社会保障を悪用しないと同時に、日本国民と同じ人権が守られる。そのための法案修正に与野党が合意するよう、勝手に、非力のまま水面下で動いている。 そのとき、もっともしっかり確認しておかねばならないのが総理の意思だ。 修正は議員間で行われる。しかし特定秘密保護法も、安倍総理と渡辺喜美・みんなの党代表(当時)の秘密合意があったから、議員間修正が実現した。入管法改正についても「修正OK」という総理の意志が背景にないと修正が進まない。それを確かめる過程で、わたしなりに総理の危機意識を把握したのだった。 その危機感を知りつつ、あえて総理にお尋ねしたい。長年、選挙への出馬要請を断ってきたわたしがついに決断したのは、西暦2016年6月の参院選公示が迫るなか、突然に掛かってきた総理からの電話がきっかけだった。 「青山さんが国会に来れば、外務省が変わる。あと経産省も変わるな。それから部会で発言すれば自民党の議員も変わる」。これは順に、拉致被害者帰還交渉の難渋、メタンハイドレートをはじめ自前資源の意図的な放置、党の利権構造、それらを変えたいという安倍晋三総理の強い願いの表れであり、現場で協力してほしいという要請に他ならなかった。 総理は忙しさでお忘れかもしれないが、これほど印象深い電話も、半生にない。記憶はまことに鮮明だ。そして法務部会で熱心にわたしの反対を聞いてくれた自由民主党代議士のひとり、行政経験の豊かな神谷昇・元泉大津市長は、わたしが講演でこのエピソードを話したとき、「変わった、変わった。確かに議員が変わった」と明るい声で叫ばれた。 総理、まずは足元の党内の声を聴き、それぞれの地元の有権者の声を集めることを急ぎ、なさってくださいませんか。それ無しでは、来年、仮に衆参ダブル選挙に打って出ても、野党の選挙協力の成否にかかわらず大敗し、政権を失いかねません。ロシアのプーチン大統領と会談後、取材に応じる安倍首相=2018年11月、シンガポール(共同) 本稿では訪中、北方領土交渉という最近の安倍外交には、字数の制約もあり、あえて言及しなかった。だが内政だけでこれだけの足元の声とのズレがある。改憲と拉致被害者の全員救出、この再登板後の安倍政権の本来の目的のためにも、ここではわたしが僭越ながら、こころの電話をお掛けします。「批判されても仕上げを急ぎたい真意を受け止めたうえで、総理、日本を取り戻すためという再登板の志に戻りましょう」と。

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    「移民法案」このままで大丈夫か

    外国人労働者の受け入れ拡大を図る出入国管理法改正案が衆院を通過した。法案はこれまで認めなかった単純労働を容認し、実質的に外国人の永住に道を開く内容である。事実上の「移民法案」とも揶揄され、将来に禍根を残しかねない。労働市場の人手不足が大義名分とはいえ、なぜ急ぐ必要があるのか。

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    「外国人労働者は移民ではない」日本はドイツの失敗を直視せよ

    雨宮紫苑(ドイツ在住フリーライター) 日本に一時帰国するたびに、働いている外国人を見かける回数が明らかに増えている。 羽田空港国際線の免税店では、資生堂の販売員も、酒類の販売員も、レジ係も、みんな外国人だった。銀座のアップルショップでも対応してくれたのは外国人販売員。居酒屋やコンビニ、スーパーや回転寿司といった場所でも、言葉のイントネーションや見た目、名前から、外国人と思われる人と日常的に遭遇した。 外国人労働者数を調べてみると、10年前の2008年は約49万人だったが、17年は約128万人と年々増加しているらしい。外国人を見かけることが多くなったのも、当然といえば当然である。 しかし不思議なのが、日本で語られるのは主に「外国人労働者」についてであって、「移民」については全くといっていいほど言及されていないことだ。 国連広報センターによると、「国際(国境を越えた)移民の正式な法的定義はありませんが、多くの専門家は、移住の理由や法的地位に関係なく、本来の居住国を変更した人々を国際移民とみなすことに同意」しているのだそうだ。ちなみに移民の移動の形として、移住労働者や出稼ぎなどを例として含めている。 つまり、居住地を海外に変更し、変更先に一定期間住んでいれば、現地で仕事をしていようが留学していようが『移民』と認識できるわけだ。 一方、日本の定義は違う。自民党は「『移民』とは、入国の時点でいわゆる永住権を有する者であり、就労目的の在留資格による受け入れは『移民』には当たらない」としている。2018年10月の自民党厚労部会がまとめた外国人受け入れに関する決議の内容を法務部会で説明する小泉進次郎部会長。左は長谷川法務部会長(春名中撮影) しかし、このまま「外国人労働者は移民ではない」と言い張っていいのだろうか。日本が戦後ドイツの歴史をなぞっているように思えて、どうしても危機感を覚えてしまう。「手遅れ」となったドイツ ドイツが現在、移民と難民問題で揺れているのは周知の事実だ。2018年10月、メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は南部バイエルン州と西部ヘッセン州の地方選で得票率を大きく落とし、メルケル首相は21年に政界を引退することを発表した。難民政策の失敗が大きく影響しているのは、言うまでもない。移民や難民の受け入れは、ドイツにおいて最も関心度が高い政治テーマの一つだ。 とはいえ、ドイツの外国人受け入れについてのニュースが日本で大々的に報じられるようになったのは15年の難民危機以降である。もしかしたら、「それまではうまくやっていたのに一度に大量の難民が押し寄せてきたからパンクしたんだろう」と思っている人もいるかもしれない。 しかし、歴史を振り返ってみれば、決してそういうわけではないことが分かる。ドイツの外国人受け入れ政策の失敗の一つに「外国人労働者を移民と認めなかったこと」が挙げられるからだ。 旧西ドイツは、戦後の人口増加が緩やかだった上に、戦死者が多く、経済成長に伴い人手不足に陥った。労働時間短縮や有給休暇制度の改善を求める権利闘争が盛んになったこともあり、外国人を「ガストアルバイター」として受け入れ始める。ガスト=ゲスト、アルバイター=ワーカー。分かりやすく訳せば、助っ人外国人である。 彼らは安く雇用できる上に、本国に仕送りするためによく働いてくれるし、ドイツ人がやりたくない仕事もやってくれる。便利も便利、超便利である。 ガストアルバイターはあくまで「一定期間ドイツに出稼ぎに来ている人」だから、1960年代はまだ「ドイツは移民国家ではない」というのが共通認識だった。しかし、ドイツの予想を裏切り、ガストアルバイターの多くは家族を呼び寄せたり現地で結婚したりして、ドイツに定住することになる。 1973年に一度外国人労働者の受け入れを停止するが、その後再び人手不足に陥り、受け入れを再開。2000年、ドイツの総労働力人口における外国人の割合は8・8%で、人口の7・3%が外国人という状況だった。 21世紀になって少ししてから、ドイツはやっと「移民国家」としての舵を切る。ドイツ語教育やドイツの社会、歴史などを学ぶ市民教育を統合講習として受講を義務化し、移民の社会統合を目指し始めたのだ。2018年10月、ベルリンで記者会見するドイツのメルケル首相(ゲッティ=共同) しかし、時すでに遅し。すでにドイツ人と外国人(移民背景がある人たち)の収入格差や学歴格差、言語の壁や宗教問題など、課題は山積みになっていた。 15年に大量の難民を受け入れたことで、ドイツが混乱したのは事実だが、それはあくまできっかけにすぎない。移民とそうでない人との間にある火種は、15年に突然生まれたものではなく、それよりも前にくすぶっていたのだ。ドイツと同じ轍を踏む? しかし興味深いのは、これほど多くの外国人を受け入れたのに、ドイツは2018年10月、欧州連合(EU)域外から専門的資格とドイツ語能力を持つ人を呼ぶための新移民法を制定したことである。 スイスの国際ビジネス教育・研究機関IMDによる「World Talent Ranking 2017」で「高度外国人材にとっての魅力度」が世界16位であり(ちなみに日本は51位でアジア最下位)、これだけ多くの外国人を受け入れているのにもかかわらず、新たに法を制定しなくてはならないほど高度人材が足りていないのだ。 こういったドイツの事情を踏まえて、改めて日本について考えてみよう。 日本は現在、深刻な人手不足に陥っている。中小企業を中心にバブル期並みの人手不足となっており、45%もの企業で常用労働者が足りていない。だから「移民ではない」という建前で外国人労働者をどんどん受け入れているわけだが、このままでは「気づいたら移民が増えていたので対策します」というドイツの二の舞になってしまいそうだ。 ドイツと同じ轍を踏まないために、外国人労働者の受け入れは移民政策の一貫として、戦略的に行う必要性があるのではないだろうか。 「移民」という言葉に抵抗感がある人も多いだろうが、「移民国家」を認めたことで起こる反発より、それを認めずに実質移民国家となり「日本人vs外国人」と対立するほうが、私にはよっぽど恐ろしく思える。 そもそも、日本で働いている人の多くは既に「移民」と呼べるし、そうでなくとも定住する可能性のある移民予備軍なのだから、「移民」という言葉にだけ反対していても意味がない。 では、必要とされる移民政策とは、例えばどういうことをいうのか。ドイツ・ベルリンのアラブ人街を歩く男女=2018年6月(共同) まずは、外国人の経済的安定が不可欠である。ドイツ連邦雇用庁によると、16年の失業率は、ドイツ人が5・0%、外国人は14・6%。収入にも格差があり、15年のフルタイム労働者の収入は、ドイツ人とそうでない人で21・5%もの差があった。社会保障費を減らすという点でも、外国人が経済的に不利にならないよう予防することは必要である。 また、過労死がすでに多くの国で報じられている日本で、外国人搾取が続き、それが公になれば、国際的なイメージに影響することも理解しておかないといけないだろう。「事前対策」現場だけでは限界 次に教育だ。家庭内の第一言語がドイツ語でないためドイツ語を話せないという小学1年生が増加し、現在ドイツでは教育レベルの低下が懸念されている。言語的ハンデが低学歴につながり、学歴格差がさらに収入格差として現れるのも問題である。 日本は私立の高校、大学が多いため、経済的に不利な外国人家庭の子供が進学を断念したり、公立高校に殺到したりするかもしれない。そうならないためにどうするか。 他にも宗教の問題がある。日本は比較的宗教に寛容とはいえ、勤務中の礼拝をどう扱うか、学校の修学旅行が京都・清水寺でいいか、半袖の制服着用を義務化していいか、といったことも考えていかなくてはいけない。職場飲み会もNGになるかもしれないし、社食では牛や豚を使わないメニューを用意する必要があるかもしれない。宗教において「ここは日本だから合わせろ」は通用しない。 これらは、外国人を受け入れる以上、起こり得る想定内の課題である。それならば当然、事前対策を求められる。多くの国が移民問題に揺れているのだから、「移民国家じゃないので対策しません」というのは、あまりにお粗末だ。 それぞれの自治体や学校、職場で社会統合に向けての個別努力は行われているが、現場だけでは限界があるだろう。 もうさっさと移民を受け入れていると認めて、横断的に受け入れ政策を担当する省庁、ドイツでいう連邦移民難民庁(BAMF)のような公的機関を用意した方がいいのではないだろうか。移民を認めず社会統合のスタートでつまずいたドイツと、わざわざ同じ道をたどる必要はない。 「外国人労働者を受け入れるべきか否か」という議論も大事ではあるが、既に「移民」と向き合うべき段階になっているんじゃないかと思う。求められているのは、「移民かどうか」という言葉遊びではなく、受け入れた外国人と共存・共栄するための議論だろう。 そして最後に言いたい。人手不足解消のために、引きこもりの社会復帰促進や、闘病中・介護中・育児中の人の就職支援など、国内でできることはまだまだたくさんある。政府は高度外国人材を呼び込むために最短1年で永住権を認めることにしたが、日本にだって優秀な人はいるのだから、修士以上の高学歴者の優遇や研究費の支援なども検討すべきだ。 外から人を呼ぶのは一つの選択肢だが、国内の「自給自足」も忘れないでいてほしい。

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    256万人の「移民予備軍」に口ごもる自民党の矛盾

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師、作家) 日本経済新聞によると、2017年半ばまでの段階で、技能実習生の失踪は既に年間7千人を超えている。受け入れ企業側も実習させてやる程度の賃金で、ろくな実習もないままに単純労働をさせているケースもある。 今や実習生は情報端末を駆使しながら、日本各地で働く同国人や友人のネットワークで、待遇や賃金がより良い職場を求め脱走するが、在留資格が更新できずに不法滞在者となる。新たな職場の雇用側も人手不足のため、そこに働く外国人従業員のツテで受け入れる。 しかし、彼らも人間である。働いている時間以外にも休み、遊び、恋をして、子供をつくる。さらなる収入を得たいし、楽もしたいし、苦しくなれば犯罪に走ることもある。 外国人の「道徳格差」はインターネット上で明確に認識されている。だが、国際的規模に膨れたカネのうなる大企業を広告主とするオールドメディアは、スポンサーの海外でのイメージを守るため、問題の核を「文化の違い」と表現し、道徳レベルの差から発生する国内外国人問題の核心に迫ろうとしない。 こうした問題を放置し、改善することなく、さらなる労働力を呼び込むために、出入国管理法が改正されようとしている。自民党は、票や政治献金を生み出す企業や団体の要求を拒むことができないからだ。 改正の目玉は「特定技能1号・2号」という在留資格の追加だ。改正案は、1号に「相当程度の知識または経験」、2号に「熟練した技能」を要求し、外国人材を受け入れるとしているが、各号の求める具体的水準は不明だ。 その資格の詳細に関する説明は他に譲るが、改正案に対して、自民党法務部会では発言議員の9割が反対を表明したという。しかし、残る1割が賛成側に立ち、現実の倒産要因にまでなっている「人手不足解消」の大義名分を掲げて押しまくった。2018年10月、自民党法務部会であいさつする長谷川岳部会長(奥中央) 反対の議員も「具体的に何人が何年必要なのか」「要らなくなったら『帰れ』でいいのか?」と押し返すなど激しいせめぎ合いを展開した。各業界団体のヒアリングも交えた討議の結果、安易な枠の拡大や基準の引き下げで移民政策にならないよう、法務部会と厚生労働部会で具体的なハードルを設定した部会決議を法案に付した。国民も外国人も不幸にする しかし「与党グセ」がついている自民党は、いつまた野党に落ちて、このハードルが取り払われるかなど考えていない。まるで「玄関」は開放されたと言いつつも、上がり口を高さ2メートルにし、天井下30センチしかない隙間をくぐって入る客だけを歓迎するかのようだ。 でも「家」の中を見渡せば、窓にはスパイ防止法という「網戸」さえなく開けっ放しで、泥棒がよく入る上に、「家庭崩壊」寸前で「だからレベルの高い外国人メイドが必要」というオヤジをあなたは信用できるか。私たちはそんな国「家」の家族なのだ。 たとえ実習生が高度プロフェッショナル人材であっても、帯同する家族も歓迎すべき人材とは限らない。また、実習生本人も歓迎に値する人材で有り続けることを期待したり、矯正することはできない。 そして、本人が労働意欲を失ったり、何らかの理由で評価に値する技能を発揮することが不可能になっても、企業は面倒を見てくれない。収入に困った彼らによる犯罪やその被害回復の責任がどこに帰するのかも不明だ。まさに、国民も外国人も不幸にする改正法案である。 おまけ、国別の枠の割り当てもないため、隣国の中国や韓国の人材が多くなるのは必定だ。滞在中に母国崩壊が発生すれば、彼らは日本に居ながらにして難民になる。 実際に米国が進める「米中経済戦争」は政権転覆や社会の混乱、つまり国外脱出者が現れるレベルを目指し、締め上げにかかっている。そうして、難民発生の際には、国際社会が日本に対して国庫を傾けるほどの保護を求めてくるに違いない。 一方、単純労働者を求める労働市場では、難民を含む外国人材の雇用で、大企業の上層だけが潤い、収入格差は広がるばかりだ。彼らへの厚生や福祉で不可避となった消費増税がデフレを加速し、日本人は疲弊する。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 今でさえ円安路線を維持した日本は既に国際的デフレ国家であり、日本人の賃金は先進国内で驚くべき低レベルだ。外国人旅行客の目には、サービス最高の「おもてなし激安国家」と映るのだから、オーバーステイしたくなる気持ちも理解できる。 そもそも、問題は「労働力不足」である。ニートが高齢化しても、シングルマザーになっても生きていけるほどの社会制度が、きしみながらこれを支え、今やその福祉制度が外国人に食われるほど、生きる力と競争する意欲を失った日本人が問題なのだ。批判覚悟の「提案」 そこで、批判を覚悟の上で提案したい。海外展開を行っている大企業はアベノミクスの恩恵を受け、株価も上昇している。ところが、今の経営陣はバブル崩壊の経験者であるため、内部留保を積み上げ、賃上げによる支出を恐れ、さらなる安価な労働力を外国人に求める。そこで、労働基準法にでも「企業トップと末端の賃金格差は○倍まで」と定めれば、さっぱり進まない賃上げもトップから進めざるを得なくなり、社会問題である収入格差も緩和、労働意欲も上がるのではないか。 また、企業が大卒や新卒にこだわらず、独自の採用基準で若い人材を求めれば、就職のためのカタパルト(射出機)と化した意味無き大学は淘汰(とうた)され、大学全体のレベルも向上して洗練されるだろう。 こうして、企業が学歴偏重の採用基準を変えれば、親は借金してまで子供を大学に送る必要がなくなり、その資金を老後に回せる。子供は10代から社会に出ていれば、20代後半にはベテランの域に達するので、結婚資金も貯(た)まる。短期的には成婚率が、中期的には出産率と出産人口が、長期的には労働人口も上がるのではないか。 そのためには企業トップの意見を尊重する自民党の他に、勤労者のための、健全で主体性のある野党が必要だ。本来であれば、企業に君臨する「ブルジョア階級」の収入を規制し、「プロレタリア」の賃金を底上げする政策については、日本共産党あたりに期待したいところではある。また、「自民あっての反自民」を貫く立憲民主党は、今回の実質的移民政策にも反対するのだろうか。 安倍晋三内閣は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に「移民政策を採らない」としているが、自民党議員は移民の定義を知らないか、口にできない。国連人口部の定義によれば、移民とは「主権のある母国を1年以上離れて外国に暮らす人」を指す。そして、この移民の概念には、密入国者や不法滞在者、帰化した初代が含まれる。 既に日本には、留学生を始めとする移民と「移民予備軍」が256万人以上も存在するが、自民党議員がこれを口にすることは骨太方針の矛盾をさらけ出すことになる。だから「移民」という言葉に異を唱え、改善できる議員はいないのだ。 そもそも、議員の仕事は理想の発表や世論啓発ではなく、法の立案や審議である。法改正案に部会決議文で歯止めを盛り込んだ党内の反対議員も、議論に参加し論議を尽くした以上は、組織としての決定に文句をつけることはできない。それを期待するのが酷であることは、何らかの組織に属する社会人ならわかるはずだ。自民党本部=2018年9月(納冨康撮影) だが、読者諸兄は昨年の流行語をお忘れか。そう、ここに「忖度」が必要である。発言議員の9割ほどいた反対議員は心の中で、決議文を付けても力が及ばず手を離れたこの法改正案を誰かに潰してほしいのだ、と私は「忖度」した。 国民の政治参加は選挙のみにあらず。世論を大いに盛り上げ、燃え上がらせて法案を灰にするよう、ともに声を上げようではないか。

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    「高齢者時給500円」移民反対論をなくすにはこれしかない

    平野和之(経済評論家) 国会で出入国管理法改正案(いわゆる移民法案)をめぐり与野党の攻防が続いているが、ここで再度認識してほしいことがある。それは、いわゆる「移民」受け入れのメリットが、ほとんど国民に示されていないことだ。そこで、本稿では、批判が多い実質的な「移民解禁」について、やり方次第ではメリットが大きくなる方策について考察したい。 まず、日本が長年脱却できないデフレの原因は何だと思うだろうか。諸説あるが、一番イメージしやすいのが、少子高齢化である。ところが、経済学的には、先進国はどこも少子高齢化であり、日本だけがデフレの理由にはならないという視点が必要だ。これは、先進国で日本だけが移民を受け入れていないという点で説明がつく。 ついでに言えば、日本の少子化対策について、欧州の出生率が上がったから日本も女性が働きやすい環境整備をしろという声もあるが、欧州は婚外子を認めたからだ。また、アメリカは女性が働く環境整備がなくても、出生率が上がった。なぜなら、自国民の出生率は低いままだが、移民の出生率が全体を底上げしたのだ。 本来、出生率は、低所得者や難民、地方の生活者ほど高く、都市化とともに減少する。日本も少子化が問題視されているが、地方はさほど少子化は進んではいない。人口は減っているが、都市部に吸い取られているだけだ。同じことは、中国でも起きており、一人っ子政策を緩和しても都市部では2人目は作らない家庭が多く、増えていない。 そこで本題に戻るが、国内で根強い移民反対論にメスを入れるにはどうすればいいだろうか。 そもそも、企業側は労働力不足をカバーしたいので、賃金の安い外国人労働者を増やしたいのが本音だ。経営的側面が移民規制緩和論の根底にあり、主導しているのは経団連だ。だからこそ移民緩和論が台頭しているのだ。 では、企業側が望む時給とはいくらかご存じだろうか。筆者が全国の企業経営者らの講演会で毎回リサーチしているが、500~700円程度である(ちなみに東京都の最低賃金は985円)。しかし、今は労働力が不足し、最低賃金で募集してもどこも人が集まらない。だから、最低賃金で働いてくれる技能実習制度の外国人を受け入れたがるのだ。 こうした経済的側面、経営的側面で見ると外国人労働者の受け入れはメリットが大きいが、なぜ、これほど批判されるのか。それは昨今起きている、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ現象、世界の排他主義の台頭、すべては、移民がテロや犯罪の温床になり治安が悪化するとされているからだ。そして最も大きな理由は、移民労働者によって自国民の雇用が奪われ、自分たちの生活が苦しくなることへの懸念だろう。※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ) そこで、まず、最低賃金以下の労働力を確保したい企業の視点から考察する。高齢者3500万人について、国は段階的に年金支給開始年齢を70歳に引き上げたいのが本音で、理想は75歳である。 ところが、働かそうにも企業側の文化が高齢者に向いていない。これをまずは生かせるようにするため、年金受給者の最低賃金を短時間においてのみ限定的に解禁する。 例えば、高齢者を4時間限定の労働なら時給500円で雇用できるとしたらどうか。若者一人ではなく、高齢者2人のシフトを組めば、高齢者であることのハンデと天秤にかけてどちら選ぶだろうか。筆者が経営者らの講演会で挙手を求めるとほぼ、100%この案に賛成である。 つまり、高齢者の雇用促進を加速させる制度をとり、それでも足りない差分が判明したところで、初めて外国人労働者の受け入れと総量を議論すればいい。望むのは富裕層の「移民特区」 かつて、この論を提唱した際、「時給500円で働く人なんかいない」と炎上したが、仮に、500円で働き手がいなければ、自然と時給は上がるはずで、これができなければ、移民もやむなしという世論が形成され、晴れて反対論はほぼなくなる。 最低賃金とは、いわば、イデオロギーと票田稼ぎの思惑が強く、極論かもしれないが、筆者はそもそも、労働規制改革の本丸は最低賃金法の廃止だとも思っている。 また、外国人労働者をどのような方法で受け入れるかについても、最低でも経済連携協定(EPA)締結国に限定すべきだ。これだけでも、労働意欲が薄く、テロのリスクが高いとされる国からの移民にブレーキをかけることができる。 さらに、筆者が大々的に解禁してほしい移民の分野が二つある。一つは富裕層で、もう一つが、起業家である。 海外でもリタイアメントビザ(退職者向けのビザ)を取得できる制度はたくさんある。海外の退職後の富裕層が日本に移住すれば、不動産などの売買も活発になり、不動産価格も上がり、税収も増えるだろう。富裕層なら治安悪化の恐れも少なくて済む。富裕層が日本に永住しやすい環境を「移民特区」で提供すれば、地方の活性化にもつながる。 ただし、たびたび議論される外国人参政権による政治の浸食、住民投票権の外国人付与につながらないよう、細心の注意を払う必要はある。これらの規制を強化できず、富裕層の資金力であらゆるものが買収されては、移民の脅威の解決策ではなくなってしまうからだ。 もう一つが起業家だ。アメリカのシリコンバレーの半数は外国人である。そもそも、起業は勉学ができるだけでうまくいくものではない。ハングリー精神も必要であり、草食系が多いとされる日本の若者から優秀な経営者が多数生まれるとは思えない。 日本も「2025年経営者問題」があり、経済産業省は今ある法人がこのままだと経営者の高齢化や後継者難で、国内総生産(GDP)の22兆円分が失われると警鐘を鳴らしている。ゆえに新陳代謝を促す上でも若者の起業率を上げるより、外国人起業家を日本で展開しやすくする方が経済のすそ野を広げる上で重要だと考える。 最後に、なぜ移民反対派であろう安倍首相が移民法を推進し、移民受け入れ賛成派であるはずのリベラル、左系野党が反対するかについて説明しておく。衆院予算委員会で外国人受け入れ問題について答弁を行う安倍晋三首相=2018年11月、国会(春名中撮影) 安倍首相の入管法改正案は、最低賃金が上昇し続けていることを踏まえ、経団連のガス抜き的な意味合いが強い。現状のような骨抜きの方がかえって、実績を出さなくても文句も出ないし逃げ道を作っておくことができるからだ。様子見しながら方針転換ができるようにしているとしか思えない。 一方、野党を見ていると、安倍政権の「移民法案」に反対なだけで、本音は賛成なのに相も変わらずのパフォーマンスと責任逃れをしているだけだ。本来なら、野党は移民を促進し、外国人参政権を解禁し、夫婦別姓で婚外子の促進が狙いだが、今、欧米で起きていることを体現しようとするなら無責任としか言いようがない。

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    留学生受け入れは「親日」育てる目的なのに“嫌日”が急増中

     日本の専門学校や日本語学校に在籍する外国人留学生が急増している。独立行政法人「日本学生支援機構」によれば、専門学校に在籍する留学生の数は2017年度には5万8711人と、5年間で3万人以上も増えている。「日本語学校」にも、2017年度には8万人近い留学生が在籍し、5年間で専門学校を上回る5万人以上の急増ぶりだ。 本誌SAPIO7・8月号で触れたように、その大半は勉強よりも出稼ぎが目的の“偽装留学生”たちだ。留学生に認められる「週28時間以内」のアルバイトに目をつけ、留学を装い出稼ぎ目的で来日する若者が急増しているのである。本来、留学ビザは「母国から仕送りが見込め、アルバイトなしで留学生活を送れる外国人」に限り発給されるため、新興国からの留学生の多くが借金をしてブローカーに手数料などを払い、親の年収や預金残高などをでっち上げている。 その彼らが、今度は就職して事実上の「移民」となる。法務省によれば、2017年に日本で就職した外国人留学生は過去最高の2万2419人に達した。前年からは約3000人、2012年からは2倍の増加である。その数は将来、飛躍的に増える可能性がある。早ければ2019年春にも、留学生の就職条件が緩和されるからだ。 現状では、留学生は大学や専門学校で専攻した分野に近い仕事で、技術者を含めたホワイトカラーの職種にしか就職できない。それが大学卒の場合は専攻に関係なく就職でき、専門学校卒も「クールジャパン」に関連する仕事であれば就職できるようになる。「単純労働への就職」も可能に 就職条件の緩和に関し、法務省は「優秀な外国人材の国内定着の推進」が目的だとしている。だが、“偽装留学生”が大量に受け入れられた現状を見ても、大学や専門学校を卒業したというだけで「優秀な外国人材」と定義してよいのだろうか。※写真と本文は関係ありません(ゲッティイメージズ) この時期を狙い、政府が留学生の就職条件緩和に踏み切ったのには理由がある。2012年頃から急増し始めた留学生たちが、日本語学校から専門学校、大学を経て、これから続々と卒業、就職の時期を迎えるのだ。 大学を卒業した留学生の就職には、「年収300万円以上の仕事」という制限だけが残る。つまり、現状では認めていない「単純労働」への就職も可能となる。留学制度をめぐる「闇」 専門学校の卒業生には「クールジャパン」関連という条件こそあるが、具体的な職種までは定義されていない。「日本の弁当文化を学びたい」「牛丼を母国で広めたい」といった理由で、弁当工場や牛丼チェーンに就職できる可能性もある。そうなれば、留学生としてアルバイトで働いていた現場で、今度は社員となって仕事もできる。政府は「優秀な外国人材」という詭弁を使い、これまで通り“偽装留学生”を単純労働者として活用したいのかもしれない。そもそも外国人労働者を最も欲しているのはホワイトカラーの職種ではなく、単純労働の現場なのだ。 ひとたび留学生が就職すれば、ビザの更新は難しくはない。就職緩和策は“偽装留学生”の「移民化」にも通じる。だが、日本語が不自由な彼らにはキャリアアップも望めず、移民となっても社会の底辺に固定されかねない。人手不足が緩和されれば、最初に職を失うのも彼らだろう。治安にも影響しかねない。 その兆候はすでにある。外国人の不法残留は今年1月1日時点で6万6498人を数え、4年連続で増加した。うちベトナム人は前年から30%以上も増加して6760人、元留学生の不法残留者も4100人に及ぶ。外国人犯罪の検挙件数も2017年には1万7006件と、前年から約20%増加した。とりわけベトナム人は約3割の5140件に関わり、国籍別に中国を抜いてトップとなった。こうした不法残留や犯罪の増加には、明らかに“偽装留学生”の急増が影響している。 留学生の受け入れは、日本の言葉や文化に親しみ、“親日”となる外国人を育てるのが目的のはずだ。しかし、現状は逆に“嫌日”外国人を増やしている。事実、筆者は過去5年間の取材を通じ、日本に憧れ入国しながら、この国で暮らすうち、“嫌日”となった留学生たちと数多く出会ってきた。日本語学校や専門学校、大学、そしてアルバイト先となる企業に都合よく利用された末のことである。 “偽装留学生”の流入は止まる気配がない。受け入れ先となる学校、そして人手不足の産業界には好都合である。とはいえ、留学生を自国民の嫌がる仕事の担い手として受け入れ、しかも「移民」にまで仕立て上げようとする国など、世界を見回しても存在しない。政府は留学制度をめぐる「闇」をいつまで放置するつもりなのだろうか。取材・文/出井康博(ジャーナリスト)【PROFILE】いでい・やすひろ/1965年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。英字紙「ザ・ニッケイ・ウィークリー」記者、米シンクタンクの研究員等を経てフリーに。著書に、日本の外国人労働者の現実を取材した『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社刊)などがある。関連記事■ 「外国人留学生増加で授業の質低下、日本人さらに減る」現実■ 偽装留学生こそ学校にとって「金のなる木」 大学でも増加中■ 日本人女性との偽装結婚を検討した中国人不法就労者の告白■ ベトナム人留学生の犯罪が増加 なぜ彼らは犯罪に走るのか■ 検挙件数が中国人抜き1位、在日ベトナム人「犯罪SNS」潜入

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    日本人女性との偽装結婚を検討した中国人不法就労者の告白

     2018年6月現在、在日中国人の総数は74万人。うち不法滞在者は9500人ほどとされ、彼らの大部分が「黒工」(ヘイゴン)と呼ばれる不法就労者となっている。もっとも日中間の経済格差が縮小した昨今、当初から不法就労を目的に来日する中国人はほとんどいない。 黒工たちの多くは、劣悪な労働環境や低賃金が指摘されている外国人技能実習生が就業先から逃亡したパターンか、留学生がオーバーステイしたパターンである。日本人の目には決して見えてこない、在日中国人社会の最末端にうごめく人々の姿をルポライター・安田峰俊氏がお伝えする。* * * オーバーステイの元留学生が不法就労者になった例を紹介しよう。福建省福清市出身の王晨(仮名、23歳)は、高校卒業後の2014年に来日した。最初は神奈川県内の日本語学校、次に大学の日本語別科に籍を置き、事実上の偽装留学生としてバイトに明け暮れていたという。 王はその後、年度が変わり学籍がなくなってからも日本に残り、黒工として3か月間働いていた。「通常、留学生のバイトは週28時間以内と決まっているが、それに違反して長時間勤務をしても月収は20万円少し。学費は年間78万円かかるし、さらに生活費を差し引けば貯金はできない。学費の負担がない黒工のほうが稼げるのではないかと思った」 まだ在留資格が残っていた今年3月に都内の居酒屋の面接を受け、採用された。職場の日本人経営者は、採用後は在留資格をチェックしなかったので、彼が不法就労者とは最後まで気付かなかったという。「月収は増えたが、東京五輪を前に不法滞在者への取り締まりが厳しくなり、街を歩くたび不安だった。日本にいるために日本人女性との偽装結婚も検討したが、毎年70万~80万円をブローカーに支払うと聞き、(偽装)留学生と出費が変わらないので諦めた」 黒工はトラブルに巻き込まれて入管施設への収容や強制送還に遭うことを非常に恐れており、ケンカや交通違反は「絶対にできない」。他の在日中国人から詐欺に遭ったり、職場で危険な業務を強要されたりしても、告発は不可能だ。「僕自身、中国人の友人に貸した20万円を踏み倒されて泣き寝入りした。いくら日本で働けても、黒工のリスクは大きすぎる」 1か月ほど悩んだが、最終的に帰国を決めた。入管に出頭したところ、収容を受けることもなくあっさりと帰国できた。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)「日本は街が清潔で気に入っていた。地元の福清市で働けば、月収は2000~4000元程度(約3.2万~6.4万円)にすぎない。合法的に滞在できたなら、日本でもう少し働きたかったな」 懲りない男である。【PROFILE】安田峰俊●1982年滋賀県生まれ。ルポライター。立命館大学文学部卒業後、広島大学大学院文学研究科修了。最新刊に『さいはての中国』(小学館新書)がある。関連記事■ 中国人技能実習生が逃亡し不法就労者「黒工」になるまで■ 不動産会社社員 仕事のため4回偽装結婚、相手の一人は70歳■ 中国の結婚詐欺 14歳の娘に「三重婚」させる手口まで発覚■ 在日中国人向けフリーペーパー「1週間以内入籍可」の広告■ 運び屋に仕立てられる「ラブコネクション」 出会い系経由が増

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    外国人労働者受け入れにも応用できる「マルクスの経済学」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) カール・マルクス(1818-83)は、資本主義経済の本質と限界を明らかにした。マルクスの代表的な著作『資本論』(1867に第1部公刊、没後に2部・3部公刊)や、盟友のフリードリヒ・エンゲルスとの共著『共産党宣言』(1848)などは、世界中の人たちに今も多大な影響を与えている。 マルクスは2018年で生誕200年を迎えることもあり、世界各国でその業績を振り返るイベントなどが盛んに行われた。例えば、中国では習近平国家主席が、中国の経済・社会的な繁栄をマルクスの教えに基づくものとして、さらには習体制自体のマルクスからの正当性と成果を強調するために利用した。 もちろん、このような「政治的利用」については、各国の識者やメディアから厳しい批判もあった。マルクスは資本主義経済の問題点と限界を明らかにしたのであり、現在の中国は、一党独裁の政治体制の下で人々の自由な発言や暮らしを制限している一方、経済については営利追求を中心にした資本主義経済そのものではないか、という内容である。 マルクスによれば、資本主義経済は資本家階級と労働者階級との「階級闘争」の場であった。マルクスは、資本主義経済が発展しても、そこでは実際に経済そのものを発展させる原動力である労働者階級の生活は苦しく、資本家階級に酷使され、その経済的成果を「搾取」されている。しかも、資本主義経済というのは、この資本家階級による労働者階級からの「搾取」がなければ、そもそも成長しようがない。 このような不当な抑圧と対立は、やがて二つの階級闘争をエスカレートさせていき、やがては資本主義経済の行き詰まりとその体制の「革命」を必然的に伴うだろう、という見方である。労働者階級には圧倒的多数の人たちがおり、その自由を求める必然の活動を、マルクスは正しいかどうかは別にして、それなりの理屈で主張したのである。 このようなマルクスの考え方に影響を受けて、19世紀中期から現代に至るまで、さまざまな社会的な運動が生じた。その中から、ソ連や改革開放路線以前の中国、キューバなどの共産主義国家が生まれてきた。2018年5月、マルクス生誕200年の記念大会に臨む中国の習近平国家主席(左)と李克強首相=北京の人民大会堂(共同) だが実際には、多くの国では、マルクスが批判していた一部の特権者による政治的弾圧が広範囲に見られ、人々の自由は著しく制限された。資本家階級が単に政治的特権階級に入れ替わっただけであった。 生活水準は、確かに平等化が大きく進んだが、それは極めて低水準のものであることが大半であった。例えば、崩壊したソ連経済では、国民の消費が大きく抑圧される一方で、軍事の拡大やムダな投資が行われた。マルクスの予言も分析も間違い? ハンガリーの経済学者、ヤーノシュ・コルナイは、人々に必要な物資が行き渡らないのは、中央集権的な「指令経済」の責任であるとし、ソ連などの共産主義国家の経済の在り方を「不足型経済」と呼んだ。全く妥当な意見だろう。この「不足型経済」はやがて限界を迎えて、ソ連は崩壊し、中国も「改革開放」路線という形で資本主義経済に「復帰」した。 英オックスフォード大学のフェロー(教員)であり、また英BBC放送の筆頭経済記者だったリンダ・ユーは、近著『偉大な経済学者たち』(2018)で、現在の中国とマルクスの関係について解説している。ユーは、マルクスが市場経済を取り入れた今の中国共産党を批判するだろうとした。他方で、中国が市場経済を導入することで、貧困や経済格差を解消したのならば、マルクスはそのことを評価しただろうとも指摘している。 都市の中での富裕層と貧困層の経済格差、そして農村部と都市の経済格差は中国だけではなく、国際的にもしばしば問題視されてきた。ただしこの経済格差自体は、まだ数値としては大きいものの、近年では縮小するトレンドに入ったと指摘する専門家もいる。 他方で「絶対的貧困」とも呼べる人たちが農村部を中心に膨大に存在していたが、「改革開放路線」という中国的な資本主義化によって急速に減少した。おそらくこの農村部の貧困解消は、都市部への労働者の流入とその生活水準の向上によるものが大きいだろう。またリーマン・ショック以降に加速した内陸部への公共投資の拡大が地方経済の底上げに役立ったことからも、貧困と格差の縮小に貢献したのではないだろうか。 だが、これらはマルクスの指摘とは異なり、現在の資本主義経済を基本的に採用している国々の発展パターンと極めて似ている。 むしろ、マルクスの予言も分析も間違っていた可能性を示唆している。では、マルクスの分析は今日では全く意義がないものだろうか。必ずしもそうだとは言い切れない。特に、「搾取」とは異なるマルクスの分析にも注目すべきである。 マルクスの有名な著書『経済学批判要綱』(1857-58)に、「時間の経済、全ての経済は結局そこに解消される」という有名な言葉がある。この言葉については、経済学者の杉原四郎(1920-2009)による以下の解釈が参考になる。 「こうした主張は、人間生活にとって最も本源的な資源として時間があるということ、労働時間がその時間の基底的部分を構成するということ、そして生活時間から労働時間をさしひいたのこりの自由時間によって人間の能力の多面的な開発が可能になること、したがって労働時間の短縮が人間にとって最も重要な課題とならざるをえないこと、このような認識をまってはじめて成立することができる」(『経済原論Ⅰ』)。ロンドンにあるカール・マルクスの墓(ゲッティイメージズ) 人間の労働が、本来は自分の本質を実現する生命活動でもあるにもかかわらず、ワーカホリック(仕事中毒)や過重労働などで自分の生命さえも危機に陥ることが、今の日本でも大きな問題になっている。労働者は自分の時間を自由に使うことができず、社会から「疎外」されている。マルクスの分析はこの時間の経済論としては再考すべき現代的意義があるだろう。 ただし、マルクスの現代的意義をこの「自由」の観点から考察すると、実はマルクスの貢献がかなり相対化され、事実上無視しても差し支えなくなる。マルクスは、資本家と労働者の間できちんとした雇用契約がなければ、そもそも「市場」などは存在しないと考えていた。この観点は、マルクスだけではなく、何人かの経済学者たちが共有している観点でもある。例えば、辻村江太郎は以下のように書いている。見せかけの「需給一致」 「労働市場を放置すれば供給過剰になりやすいということは、マルクスと同時期に、すでにゴッセンが警告していたことである。労働の供給過剰は、一人当たりの労働時間の面と、家計の有業率(ミクロの労働率)との面に現れるか、ゴッセンは後者について、家が貧しいと子女が幼時から働きに出て、それが労働条件(悪化)の悪循環のもとになることを指摘していた」(『経済学名著の読み方』)。 ヘルマン・ハインリヒ・ゴッセンは19世紀前半のドイツの経済学者だ。彼の発言を図にすると以下のようになる。 経営者や資本家から自分の労働を厳しく買いたたかれて、もはやギリギリの生活水準まで落ち込んだ状態が、マルクスやゴッセンの考えた賃金状態=W0だとする。そのときに雇用されている人数(雇用量)は、L0だとしよう。これは、経済学の普通の労働需要と労働供給の一致を示しているようにも思える。 だが、マルクスとゴッセンは、この需要と供給の一致はあくまで見せかけであって、実際には労働者の雇用契約の自由が奪われてしまっている、と指摘した。労働者側は自分の生活水準ギリギリの賃金に落ち込んで、それでもこの「契約」を生きるために飲まざるをえないのだ。 日本の現状でいえば、あくまで一例だが、非正規雇用に多い年収100万円以下で働いて家計を支える人たちや、現在議論されている出入国管理法改正案で対象となっている外国人技能研修生の一部に見られるブラックな雇用環境をイメージしてほしい。 ところが、厳しい生活に直面している人たちが、家計の補助になるだろうと子供たちを働かせることにより、かえって貧困を加速してしまうと、ゴッセンは指摘している。上記の図でいえば、労働供給曲線が右下方にシフトする。これが、純粋に家計補助で駆り出される子供たちの労働の増加を示す。 だが、これは彼らの家庭をさらに貧困のどん底に突き落とすだろう。なぜなら、今までも生活ギリギリだった賃金水準が、それをさらに下回るW1のラインまで下落しているからだ。 この結果はどうなるだろうか。一つは、今まで食べていたものを、さらに安価で不健康で高いカロリーのみを追求するだけのものにするかもしれない。また子どもの貧困が加速するために、子どもたちは満足な食生活を維持できずに、また過酷な労働の結果、死にさえも直面するだろう。 ゴッセンが児童労働を強く批判した理由はこのためである。市場原理は、競争の結果、労働の売り手と買い手が最適になる、つまり経済学の意味でハッピーになると考えている。だが、このゴッセン=マルクスのケースでは全く市場原理は機能していない。むしろ、政府の介入による児童労働の禁止が強く要請されるだろう。実際に、このゴッセン的な観点での児童労働の禁止は、今も有効なのである。2014年にノーベル平和賞を受賞したインドの人権活動家、カイラシュ・サトヤルティ氏=2016年6月撮影 2014年のノーベル平和賞がインドの人権活動家、カイラシュ・サトヤルティに与えられた。児童労働への反対運動を評価されてのことだ。彼はインドだけでなく、世界各国で強制労働に直面していた児童8万人余りを解放した。児童労働(5歳から14歳まで子供たちの強制的労働)は、全世界で2億5千万もの人数に達するという。サトヤルティ自身は経済学者ではないが、その児童労働廃絶の根拠は、今説明したゴッセンやマルクスの考えと同じだろう。リベラル2.0の経済学 ところで、この考えは児童労働だけの問題ではない。国会で審議されている入管法改正の議論でも参照になるのだ。 この議論でも、W0が生活に追い立てられたために、やむなく条件を飲んでいる厳しい賃金水準だとしよう。そのときの国内の(未熟練)労働者の雇用量はL0になる。ここで、現状の入管法改正案のように、外国人労働者を増加させるとどうなるだろうか。 今までの国内の労働者たちと同じ質を持つ外国人労働者が増加することで、やはり労働供給曲線は右下方にシフトする。このとき図から自明なように、賃金は今までの水準よりもさらに低下する。さらに国内の労働者の雇用も減少してしまう。国内の労働者賃金は前よりも下がったW1になり、そのときの雇用量はL2になる。受け入れた外国人労働者もまた日本国内で過酷な待遇を甘受しなくてはいけない。どこにもいいことはないのである。 では、どうすればいいか。まず考えられるのは、ゴッセンが追求した道であり、外国人労働者の移入制限がこれにあたる。だが、制限だけでは、生活水準は相変わらずW0の位置で酷悪なままだ。加えて経営者側へのさまざまな規制、例えば労働時間の規制や労働者の交渉力の向上などが必要とされる。これが今までのリベラルな経済学の在り方だ。これを「リベラル1.0の経済学」としよう。その上で、市場を十分に機能させるための制度上の構築が必要なのだ。 次に必要なのが、マルクスらがまるで評価しなかった、現実の経済水準全体を拡大していく政策である。これを「リフレーション政策」と一応名付けよう。経済の現実的な成長率を年率3~5%程度で安定化させるために、積極的な金融政策と財政政策の組み合わせで臨んでいく政策スタンスをいう。 もちろん、政府による異常なムダが削減されるが、それによって経済全体を縮小するような緊縮スタンスには反対する。そういう姿勢だ。これを「リベラル2.0の経済学」とする。先ほどの図でいえば、①制度構築による市場原理の達成(需給一致が労使双方の満足を最大化する)②経済成長の安定化、その一つの在り方としての労働需要の増加、である。②の労働需要の増加を最初の図に書き加えよう。 リベラル2.0の政策によって労働需要曲線が右上方にシフトしている。と同時に、市場の制度的基盤が改善されていることで、生活ギリギリの賃金から労働者は解放されている。ただし、このケースでも外国人労働者が移入することは、国内の労働者の賃金と雇用を奪うことには変わりはない。ただし、最初のケースに比べれば、国内労働者からの「収奪」は相対的に少なくなるだろう。 外国人労働者のケースで付け加えることは、あくまで同じ質の労働者を前提にしていることだ。例えば、国内の労働者と補完的な関係の人たちや、高度な技能を有する人たちは国内の生活水準を改善することに寄与する。 少なくとも、国内の雇用環境を、ブラックな処遇の改善、そしてマクロ経済全体の改善という手順を踏んで、その上で外国人労働者をその雇用の質に配慮しながら受け入れることが望ましいだろう。(敬称略)

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    世界の常識を知らない日本人に「移民侵略」は防げない

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師、作家)(青林堂『日本版 民間防衛』より) 国連人口部は「出生あるいは主権を持っている母国を離れて1年以上外国に住む人」を「移民」と定義づけています。また海外では、帰化1世や難民、密入国者、オーバーステイも移民とするのが一般的です。 日本ではどうかというと、滞在資格が90日を超える中長期滞在者も事実上の移民として数えることができるでしょう。3カ月以上の在留資格を取る人のほとんどが、資格を更新しますので、事実上の移民予備軍となるわけです。 しかし日本政府では帰化1世の人口統計を取っておらず、密入国者に関する統計もあるわけがなく、移民の実態を正確に把握できているとは言い難い状態です。中長期滞在者だけでも、平成28(2016)年は237万880人でしたが、翌29(2017)年256万9026人と、約7・5%も増えています。 今まで日本人は、「国民か外国人か」という区別をしてきました。しかし移民が激増した今日では、これが問題を見えにくくしています。帰化した外国人も「国民」として扱うことになるからです。 日本には、帰化1世の議員が多数いますが、私たちは彼らが移民であることを意識することはあまりないと思います。しかし国籍は日本でも、帰化1世であれば「移民」です。世界ではそのように考え、移民の参政権には制限があるのです。 「帰化」とは「帰属化」であるところ、国旗の授与も国歌斉唱も国家忠誠の宣言もない日本の帰化は帰属化することのない単なる手続きであって、国家の象徴をないがしろにする真に日本の仲間とは認め難い議員もいるので、「日本国籍を持っているから仲間じゃないの?」というわけにはいかないのです。2018年11月13日、衆院本会議で出入国管理法改正案の答弁を行う安倍晋三首相(春名中撮影) そこで、国連の定義に従うなら、日本の議員の中には「国民議員」と「移民議員」の2種類がいるということになります。そう言われて初めてハッとする方もいるでしょう。 帰化1世の野党移民議員が現職、元職を含め存在することが確認されている上に、他国では辞職となる二重国籍でも大臣になれるし、現職のままで議席についていますが、果たして彼らは日本の国会議員といえるのか。日本のために働いているのかどうか疑わしい議員もいますがこれでいいのか? もちろん、国籍問題にけじめをつけた与党議員のように、日本のために帰化し、国会議員になった議員もいます。一概に移民議員はよくないとは言いませんが、移民も帰化さえすれば国会議員にもなることができるという現行制度は、そろそろ見直す必要があるのではないでしょうか。外国人犯罪統計の壁 国会の中に移民議員がいることと、その人数が明らかになれば、国民ももっと真剣に移民問題について考えるようになるはずです。はっきりと区分することで、外国の侵略を受けるなどの有事となったとき、誰が敵国側につくのかといった危機意識もはっきりしてくるのではないでしょうか。 日本人と外国人を見分けようとしても、多くの人はピンと来ないでしょう。しかも外国人のほとんどは中国大陸か朝鮮半島から来ているため、「あの人は外国人だよ」と言っても「半島の人でしょ」みたいな感じになってしまいます。これは民間人に限った話ではなく、警察自体も今ひとつピンと来ないため、「来日外国人犯罪の検挙情況を公表しろ」と言っても、「でも在日でしょ」となってしまうわけです。 「外国人犯罪の検挙情況」「来日外国人犯罪の検挙情況」は出ているわけですから、単純に引き算をすればいいというのが、一部左翼側の主張です。しかし来日外国人に関する資料ほどの詳細な分析は不可能で、一般人の引き算資料より公的機関の公表資料の方が信頼性があるのは明らか。本来警察がデータを取り、分析し、公表すべきものなのに、「非常に手間がかかる上、前例もきっかけもないから在日外国人の犯罪の検挙状況は出せない」というのが警察庁の回答です。 しかし、パソコンなどの性能が上がり、身分証の容易な偽造が可能になったり、海外などから多種多様な違法薬物が流入したり、ビットコインなど、現金以外の決済手段が発達したりするなど、いわゆる犯罪インフラの向上によって、外国人犯罪も今後さらに複雑化していくものと思われるため、中長期滞在者の犯罪傾向の把握なしに外国人問題を考えることはできません。 そういう状況にもかかわらず、警察庁のこの及び腰はどうかと思います。今後ますます複雑化、深刻化するかもしれない外国人犯罪に対処するためには、在日外国人の犯罪状況の正確な把握が不可欠なのは言うまでもないでしょう。 拙著『在日特権と犯罪』では、本邦初公開となった在日外国人犯罪に関する資料を一部引用しています。平成26(2014)年に検挙された「来日」「在日」外国人の国籍別と、日本人の総人口における検挙者の割合を「1」とした場合の外国人検挙割合の比較、さらに「来日」「在日」外国人別に、平成26年までに殺された日本人の数と殺した外国人の数に関するデータを、警察庁から個別に入手しましたので、詳細は拙著にてご覧ください。 なおこの資料は、衆議院議員の長尾敬先生を通じて、警察庁にリクエスト、統計化したもので、前例を覆していただいた貴重な資料です。 予備軍も含む移民が約256万人ということは、総人口約1億2500万人に対して、約50分の1は移民ということになります。ただし、外国人人口は地域較差も、大きくこの数字には難民、密入国者、オーバーステイは含まれていませんので、国連の基準に則(のっと)れば、もっと比率は上がるのではないでしょうか。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) すでに日本は移民社会になっているとみるべきでしょう。もちろん移民すべてが危険ということではありません。私たちが気をつけなければいけないのは、犯罪分子と反日分子ですが、これらには、ちょっとした違いがあります。犯罪分子は反社会的な、人に迷惑かけても別に構わない、自己中心的な人たちで、反日分子は、文字通り「反日」を目的として行動する人たちです。 犯罪分子は文字通り一般的な(という言い方もなんですが)犯罪者、反日分子は、例えば愛国心や忠誠心から、あるいは母国の機関からの報酬などを目的に、仕事として破壊活動をやる工作員というように分けることができます。どっちも日本人に対して害ですが、ここは区別が必要です。スパイ防止法のない日本 また、中国、韓国朝鮮系の2世、3世が多いエリアでも、彼らは日常から日本語を話しているため、外国人と認識しずらい状況にあります。そう考えると、50人に1人は移民という状況の中、危機管理はどうなるのか? という疑問や不安が湧いてくるのも当然。そこに反日分子が入り込んでいたとしたら…。考えただけで恐ろしくなりますね。 特に外国籍のまま、世襲で滞在資格を認められている特別永住者(内99%は韓国朝鮮人)らは、日本語を普通に話し、街中を歩いています。しかし日本にはスパイ防止法がありません。G7の中でもスパイ防止法がないのは日本だけです。「特定秘密保護法があるだろう」という人もいますが、スパイ防止法とはまったく違うものです。 「秘密」とする事項をどのように指定するのか、指定された秘密をどう管理するのか、また秘密を管理する人員の基準、秘密を管理するものが不法に情報を漏らした場合の処罰をどうするのかなどが定められているだけで、スパイを処罰する根拠はまったくありません。「日本国内の秘密に接してもいいよ」と許可された人が秘密を洩らした場合に処罰するための法律であって、外国から日本に来て情報を持ち出した人を処罰する法律ではないのです。 また通称「盗聴法」とも呼ばれる「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」は、文字通り犯罪捜査のために、通信を傍受できる、はずの法律なのですが、警察官が盗聴器をしかけたら、30日以内には証拠となる会話が録とれなくても通信を傍授していた事実を通知しなければいけない(延長可)。 こんなのまぬけもいいところです。「盗聴しました」なんて言われたら、誰だってその後は警戒するじゃないですか。人権派の一部は「国家に監視される」「私生活が盗聴される」と騒いでいましたが、警察はそんなに暇ではありません。 中国人が増殖する仕組みについて集合住宅を例に説明しましょう。まず彼らの誰か1人が開拓者となって部屋を借ります。そこが1人契約の部屋なのに2人、3人…と同居する。そのほうが1人あたりの家賃負担が安くなるからです。しかし日本語より甲高い声で会話する中国人は1人増えてもうるさく感じるのに、2人、3人と集まると余計うるさく感じるため、うんざりして退去する日本人が出ます。 そうして空き部屋ができると、中国人たちは知り合いにその部屋を紹介するようになります。面子を重んじる中国人は、誰かに頼られることを、ステイタスにするところがあるため、「どっか部屋空いてない?」という相手には、「俺のすごいところを見せてやる」とばかりに知人にツテを求め、知り合いの大家がいれば掛け合います。そして同じように1人契約の部屋に2、3人で住み着くのです。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) そうするとさらにうるさくなり、日本人が嫌になって退去して、また中国人が入居する。そういう連鎖が拡大していくのです。 これは中国人やそのコミュニティ増殖の原動力といってもいいかもしれません。日本人の人物評価のような「まじめな人」「やさしい人」かどうかよりも誰と、何人と、どんな人脈を持っているかが問われますので、中国人が集まり始めるとすぐに大きな集団になるわけです。「あいつすごいんだよ、知り合いにこんな人がいて」というのが中国人社会のステイタスで、それが商売にも結びついてくるからです。 「民泊」という言葉をここ4、5年ほど前から耳にするようになりました。今年(平成30〈2018〉年)6月から施行された「住宅宿泊事業法」を元に、民泊は届出制で開業できるようになりました。民泊の客が帰国しない その前は「ルームシェア」といわれていましたが、私が刑事を退職した15年ほど前には、まだその言葉さえありませんでした。しかし、私がまだ北京語通訳捜査官だった20世紀末ごろから、密航者の多い中国人や不法滞在者の多い韓国人により「ヤミ民泊」が行われていたのです。 東京オリンピックを控え、首都圏では建設労働者が不足し、海外から、もちろん中国からも多数の労働者がすでに国内に入っているでしょう。彼らもこうした民泊を利用していると思われます。しかし、建設関係に求人が集まるのはオリンピック開催前までで、開催中は観光案内や滞在のサポートといった語学力を伴うビジネススキルを備えた人材が必要とされるなど、オリンピックに関連する労働需要も変化します。 しかしオリンピック終了後、語学力を伴うビジネススキルを備えた人材も淘汰されていきます。彼らがそのまま帰国してくれればいいのですが、そう簡単にはいかないでしょう。一度日本で快適な生活を送れば、母国に帰りたくないという人が出てきてもおかしくありません。 そのときも民泊が彼らの拠点となる可能性があります。民泊仲介サイトのAirbnbでは、身分確認のための個人確認と登録を行っていますが、安い宿ではそれを必要としていない場合も多く、実態をつかめない部分も多いのです。 外国人自身が民泊のオーナーとなっているケースや、風俗マッサージ店が閉店後もベッドを利用して民泊化するケースもあります。東京オリンピック関連に限らず、無届けの民泊が中心になってオーバーステイの隠れ蓑になる可能性があるとみるべきでしょう。 さて、これまでは、中国人は同じ地方出身の者同士、例えば上海人なら上海人同士で仲良くなるというのが一般的で、上海人と福建人が仲良くなるようなことはあまり聞いたことはありませんでした。違う地方の出身者同士だと、喧嘩になってしまうからです。 しかし中国人全体の数が増えたこともあって、違う地方出身者が同じ職場などにいることも珍しくなくなり、出身地が違っても仲良くなるケースも出てきているようです。私の知る範囲でも、仲のいい上海人と福建人がいました。 こうした例は今後増えるかもしれません。警察もこれまでは異なる外国人同士は対立していることを前提に情報収集なども行ってきましたが、彼らが日本国内でまとまると日本人対外国人の図式になってしまいます。そうなるとこれまでのやり方が通用しなくなるだけでなく、日本人社会と中国人社会の間の溝が深まる恐れも出てくるでしょう。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 彼らの日常の中には偽造旅券や偽造在留カード等犯罪組織に関わる要素が普通に入り込んでいるため、困った事があるとこうした違法なサービスを簡単に受け入れてしまいます。例えば「オーバーステイになっちゃった、どうしようかな」と言えば、「知り合いに偽物の外国人登録書作ってくれるとこあるよ」となるわけです。 日本人だと、犯罪組織と結びつくことなどとんでもないことですが、彼らは日本人のような順法精神は持っておらず、特に旅券などの偽造や著作権を無視したコピーなどに見られるように、被害者が見えず利得があればそれを選びます。単に言葉が違うといったことだけでは説明がつかない違いがあるということを意識する必要があるのです。人口侵略の実態 偽物の外国人登録書を作る知り合いがいるようなことも、普通に会話できるどころか、ステイタスにさえなってしまうのです。「政治家から犯罪者まで、俺はいろんな人脈を持っている」ことは頼りがいがあるということなのです。 日本人なら、絶対に分別すべきところですが、中国は昔から、『水滸伝』の梁山泊(りょうざんぱく)のように、山賊が政治家にステップアップする社会です。スタートが山賊というのも何ですが、彼らは最初からきれいである必要はないと考えているようです。社会がそういう構造ですので、きれいなままでは出世しにくいのです。 現在、国際結婚の7割は日本人男性と外国人女性の組み合わせで、さらに外国人女性の4割が中国人です。後継者問題を抱える農村部でも、中国人配偶者が増え続けています。北海道を例に見てみると、北海道では住民登録する中国人の男女比が1:2。女性が男性の倍となっています。彼女たちの多くは、日本人独身男性の配偶者となり、その多くが10歳以上離れた年の差カップルです。 どう考えても旦那のほうが15年くらい先に死んでしまい、中国人の奥さんとハーフの子供が残されることになります。そうなるとその土地に馴染めなかった奥さんが、農地や家屋を全部処分して、子供を連れて帰国してしまうことも十分考えられます。 中国人のケースではないのですが、山形県の戸沢村では、村の男性の配偶者に多数の韓国人女性を迎え入れた結果、夫と死別したり、離婚したりして残された韓国人の奥さんたちが、キムチを地場産業にしようということになり、道の駅が丸ごと韓国風になってしまいました。 安易に外国人配偶者を求めると、結果的に村が乗っ取られたり、あるいは棄てられたりしてしまうこともあり得るということです。 しかし、北海道にしても山形県にしても、彼女たちが乗り込んできて村の独身男性の配偶者に収まったということではありません。結果的には人口侵略、文化侵略のような形になってしまいましたが、日本人が望んで呼び寄せた人たちです。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 農村に限らず、冒頭でお話しした都市部の集合住宅にしても、空き部屋を出したくない大家さんが、中国人に部屋を貸したのが始まりであって、ある日突然国際窃盗団のような連中が押しかけてきたわけではありません。コンビニや居酒屋のアルバイトもそうです。 また中国の進出が著しいとされている沖縄も、実は台湾人も多く入ってきていて、見分けがつかず、よけいに不安に思っている人もいるようです。中国が脅威であることは当然なのですが、恐怖心が増幅しイメージが一人歩きしている側面もあります。 やはりここでも情報を多角的に正確に、そして冷静に読み取って状況を判断する必要があるということになります。

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    「労働生産性はゼロ成長」人手不足、解決のヒントはここにある

    斎藤満(エコノミスト) 中小企業の中には人手不足のために経営が立ち行かなくなるところも増えていると言います。日銀の調査(「日銀短観」など)をみても、中小企業を中心に企業の人手不足感が高まり、バブル期のピークに迫っています。そして、建設現場や介護施設などでは外国人労働力への依存が高まり、政府も産業界の要請を受けて、外国人労働の受け入れに前向きとなり、法整備も進もうとしています。 この間、企業の利益は最高益を更新するほど好調で、厚生労働省の調査では、この夏のボーナスは前年比4・7%増と、27年ぶりの高い伸びとなりました。ところが、その割に労働者の賃金はあまり上がらず、春闘賃上げも、いわゆる定期昇給分を除くと0・3%から0・5%の低い伸びにとどまっています。このため、個人消費は低迷を続け、企業の値上げが通りにくく、インフレ率も1%以下の低い状況が続いています。 これだけ人手不足が言われ、企業収益が好調にもかかわらず、なぜ賃金が増えないのか。人手不足と低賃金の両方をもたらしている意外な原因が「低い労働生産性の伸び」にあると考えられます。  まずは数字を見ていただきましょう。「日本株式会社」の利益総体ともいえる名目国内総生産(GDP)ですが、昨年(2017)度1年間で548・6兆円産み出されました。その年度末にあたる18年3月の就業者数は6694万人でした。つまり、この会社では就業者1人当たり819・5万円を産み出していたことになります。 同様に、2016年度では6502万人の就業者で539・4兆円のGDPを産出し、1人当たりでは829・6万円を稼ぎ出していました。ちなみに、2010年度は6288万人で499・3兆円を、2005年度では6374万人で525・7兆円を、2000年度では6445万人で528・5兆円を産出していました。1人当たりではそれぞれ794万円、824万円、820万円となります。 これらの数字の中に、問題の答えが潜んでいます。中でも最も重要な数字は就業者1人当たりの生産額、つまり労働生産性が上がっていないことです。リーマン危機後の経済の大きな落ち込みを見た直後の2010年から比べても、1人当たりの生産額は7年間で3・2%、年率換算すると年平均0・4%の上昇にとどまっています。2000年からの17年間では生産性はゼロ成長です。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) 1人当たりの生産がどんどん増えれば、つまり労働生産性の上昇率が高ければ、売り上げや生産の増加計画の下でも人手を増やす必要はありません。しかし、労働生産性が上がらないとすれば、企業は売り上げや生産を増やそうと思うと、それだけ人を増やさねばならなくなり、生産年齢人口が減少する中でこれが続くと、人手不足をもたらします。 つまり、最近の人手不足をもたらした原因の一つが、労働生産性が上がらないという事実にあります。15歳から64歳の「生産年齢人口」が減っているので、人手不足はやむを得ない問題ととらえがちですが、人為的な面も少なくありません。そればかりか、労働生産性が上がらないことが、同時に賃金上昇を低く抑えざるを得ない原因にもなっています。賃上げはこうして可能になる 従業員の賃金上昇は、原則労働生産性上昇の範囲内で行われます。つまり、労働生産性が2%上昇すれば、2%の賃上げが可能になり、その賃上げは企業のコスト負担にはなりません。賃金上昇率から生産性上昇率を差し引いたものを「単位労働コスト」といい、これが上昇すると、その分を製品価格、サービス価格に転嫁するか、転嫁しなければ企業の収益が減ることになります。 政府の要請に応えて賃上げをしても、それが生産性上昇分を超えてしまうと、価格転嫁するか企業収益の悪化になるかどちらかとなります。昨今の日本の消費市場は低迷が続いていることもあって、値上げをした企業が苦戦を強いられるケースが少なくなく、むしろ流通業界の中にはあえて価格を引き下げて顧客を確保しようとするところも少なくありません。 かといって、賃上げをして企業収益が減れば、株式市場からしっぺ返しを受けます。企業としては、生産性が上がらなければ、賃金も引き上げられないことになり、その生産性がこの20年でほとんど上がっていないので、継続的な賃上げはできないことになります。従って、企業収益が大きく拡大したときには、ボーナスで一時的に労働者に還元するのがせいぜいとなります。 また、産業界は政府に働きかけて、必要な時に必要なだけの雇用を確保できる雇用体制を作り、低賃金でかつ社会保険料負担のない「非正規雇用」を使えるようにしました。2017年にはこの非正規雇用が全体の約4割を占めるに至りました。税務統計によると、2017年の正規雇用の年収493・7万円に対して、非正規雇用は175・1万円と、正規雇用の3分の1強にとどまっています。 社会保険料負担がないことを考えると、企業の人件費負担は、非正規雇用にシフトすると、3分の1以下に抑えられます。これらを活用することで企業は生産性が上がらない中で人件費を抑えることが可能となり、その分値上げをしなくても済み、インフレ率が1%以下の低い水準を維持するとともに、人件費の抑制も利いて企業収益の拡大が可能となっています。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) 人件費を抑えている分、労働者側から見れば所得が増えず、しかも一方で税や社会保険料負担が増えているので、実際に消費に回せる購買力(可処分所得)はさらに圧迫され、消費が低迷を続ける原因となっています。これらの原因が、いずれも労働生産性の伸び悩みからきていることになります。 数字でもう一つ注目したいのは、2000年から2010年にかけては、少子高齢化、生産年齢人口の減少に伴って就業者数も減っていたのですが、その後は少しずつですが就業者数は増えています。これは女性や高齢者が就業するようになり、彼らの「労働参加率」が高まったことと、外国人労働者が増えてきたことによると見られます。そしてこうした「限界労働力」の増加が人件費を抑えるとともに、また生産性上昇を抑制している面も否めません。外国人に頼るのは最後の最後 このようにみると、人手不足、低賃金を解消する有力な方法が労働生産性の引き上げで、それを実現するために必要なのは、民間企業の設備投資拡大であり、研究開発投資の拡大となります。産業ロボットや人工知能(AI)などを取り込んだ設備投資の拡大によって、省力化が進み、生産性が上がれば、従業員の給与引き上げも可能になり、人手不足と低賃金解決の「一石二鳥」です。 その点、ただ設備を増やすだけでは、いずれ設備過剰となってストック調整を余儀なくされることがあるので、新技術につながるような研究開発投資が重要です。日本は主要国に比べてこの分野での政府支援が遅れています。官民協力して研究開発を進め、日本のアップル、グーグル誕生のタネをまきたいものです。 このように、人手不足の原因として大きいのは、人口の減少というよりも企業の生産性努力が後退して効率が悪くなっていることが大きく、ここに対策を打つのが先決で、外国人労働力に頼るのは最後の最後で、限界的な対応策としてみる必要があります。 欧米では移民難民問題で国が割れるなど、これが大きな問題になり、ドイツなど、政権を揺るがす状態にある国もあります。米国でも中米からの難民キャラバンに対して、軍隊を用意してまで入国を阻止しようとするトランプ政権のやり方に賛否が分かれています。 日本は地理的な特性もあって、ここまでは移民難民の問題はほとんど経験がなく、難民受け入れも主要国の中では非常に遅れているとの批判もあります。それだけここまでは移民難民問題に慎重に対処してきた日本が、人手不足のために、こうした問題をスキップして外国人労働力の受け入れに急旋回しています。 それも、熟練技能労働者のみならず、上司の指示に従って仕事ができる程度の未熟練労働も受け入れる方向で、最終的にどれくらいの規模になるのか、当局も十分把握していないまま、拙速で話が進んでいます。人件費の安い非正規雇用の次は、やはり人件費の安い外国人の単純労働力を、という安易な動きとも言えなくもありません。その結果として、移民を受け入れる判断をしたのと変わらなくなります。 多民族同居に慣れていない国柄であるため、外国人は新大久保や群馬などに「外国人街」を作りがちで、必ずしも日本社会に十分溶け込んではいません。 そんな中で、労働力として大規模な外国人を受け入れると、それが3年であれ5年であれ、家族も含めると大規模な外国人が日本社会に突然暮らすようになりますが、その社会インフラは整っていません。5年過ぎたら追い返すのか、社会保障は日本人と同様に扱うのか、その負担はどうするのか。まずは日本人が移民難民の受け入れをどう考えているのかも把握する必要があります。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) その上で受け入れ態勢が整うまでは、外国人労働力の受け入れは十分慎重に、徐々に進める必要があります。受け入れ態勢が整わないまま外国人を大量に受け入れ、彼らに不自由、不便な思いをさせ、社会と軋轢(あつれき)を起こすようなら、国際社会から日本の姿勢が非難され、国際的な信用を失います。 人手不足問題に対しては、まず企業の研究開発、技術開発、設備投資による生産性向上努力に注力し、その間安心して子育て就労ができる体制を整え、結婚、出産しやすい環境を作るなど少子化に歯止めをかけるのが先で、その間に外国人労働力、移民受け入れ態勢を法体系も含めて整備する必要があります。それでも必要なら外国人労働に助けてもらう、というのが筋ではないでしょうか。

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    人手不足「移民に頼らない」妙案がある

    世の中、どこも人手が足りないらしい。少子高齢化と人口減少が進むわが国にとって、深刻な事態である。その解決策の一手として外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正の議論も始まった。とはいえ、昨今の人手不足感、どこまで本当なのか。すべてを疑って、一から考えてみよう。

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    人手不足、埋もれた社員の「企業間トレード」も特効薬になる

    田岡春幸(労働問題コンサルタント、元厚生労働官僚) 厚生労働省によると、2018年9月の有効求人倍率は1・64倍となった。1974年1月(1・64倍)以来の高水準で、人手不足感が強い状況が続いている。一方、今まで働いていなかった人の就労も進み、総務省が同日発表した9月の完全失業率は改善し2・3%だった。要は就職しやすい売り手市場になっているのだ。 ただ、これに伴い、企業側もしっかり調べず安易に人材を採用し、かえって採用基準が下がる恐れもある。いわゆる「ブラック社員」のことだが、最近はこうした問題社員を採用するケースが増えている。言うまでもなく、これは企業にとって大きなリスクであり、人手不足になっても安易な採用は控えるべきである。 採用できる企業はまだいいが、近年、人手不足に伴う倒産も増加している。人手不足は残業増加を生み、企業そのものも「ブラック企業」化する。実際、現状のブラック企業は、人手不足が一因になっていることもある。これも企業評価にかかわり、日本経済停滞の一因になり得る。 こうした現状の解決策として、今臨時国会で議論されているのが、外国人労働者の受け入れ拡大である。外国人労働者数は、2017年10月時点の厚労省の調査によると、127万人である。 「出入国管理及び難民認定法」(入管法)改正と「技能実習法」改正による人手不足が深刻な建設や農業、介護など14業種での受け入れが検討されている。これらの業界の特徴は、劣悪な労働条件の企業が多いとされる。 ここで改正案を確認しておこう。改正案は、就労目的の在留資格「特定技能」を2段階で設ける。一定の技能が必要な「特定技能1号」は、最長5年の技能実習を終了するか、技能試験と日本語試験の合格を条件とする。在留期間は通算5年で家族の帯同は認めない。※画像はイメージ(ゲッティ・イメージズ) さらに高度な試験に合格し、熟練の技術を持つ外国人は「特定技能2号」の資格を得られる。配偶者と子供の帯同を認め、更新時の審査など条件を満たせば永住への道も開ける。両資格とも同じ分野であれば転職も可能となる。 受け入れは、日本人と同等以上の報酬を支払うなど雇用契約で一定の基準を満たすことを条件とする。直接雇用が原則だが、分野によっては派遣も認めるため、派遣法で禁止されている分野との整合性を図る必要が出てくる。 そもそも、技能実習制度の目的・趣旨は、わが国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域などへの移転を図り、当該開発途上地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与することである。 だが、実質的には日本の人手不足を補う低賃金の労働者拡充が目的になる可能性が高く、こうした現状でよいはずがない。本来ならば、高度な人材が日本に来て働き、税金を納めてくれるような制度設計にすべきである。そのためには、まず入り口でどのような外国人労働者が日本にとって必要か明確にしておくべきだ。 技能実習法では「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(第3条第2項)と定めている。だが、政府は人手不足の状況に応じて外国人の受け入れ人数を調節するとしており、原則外国人を雇用の調整弁にすることは法の趣旨にそぐわない。 一方、外国人労働者の雇用拡大をめぐっては、「雇用が不安定になった場合に治安が悪化しないか」「国内の労働者の給与低下や待遇悪化につながりかねない」との懸念もある。欧州の教訓を生かせ 外国人労働者の拡大は、90年代後半から2000年代初頭の欧州がとってきた政策である。この結果、欧州はどうなったか。自国の若者の失業率が増え、治安が悪化し、ここ1、2年の間、欧州はそれを見直そうとする動きが出てきている。この例を見ると明らかに、治安の悪化と日本人の雇用への影響は避けられないだろう。 そもそも、外国人労働者を多数受け入れるとしても、社会保障などの整備といった問題が山積である。本来、社会保障は当該国家との相互制度が基本だが、日本は厚労省の通達があるにもかかわらず、外国人にも生活保護が認められるケースがある。 低賃金の外国人の流入はこの生活保護の問題と密接なかかわりを持ってくるだけに、早急な対応が求められる。困窮した外国人が在留期限を過ぎても居座り、生活保護を受けるということは大いに考えられる。また、不法滞在になった者が日本人と結婚して在留資格を得てしまうこともある。 さらに、健康保険制度との密接なかかわりもある。日本人には皆保険制度を維持し、外国人には審査の上、保険を適用することも考える必要がある。子弟の就学や医療などを含め、生活支援策も必要になる。これを日本の納税者が賄うのは考えものだ。 また、外国人労働者によって、日本の技術流出が起こることも十分考えられる。そして、一人でも加入できるユニオンなどの労働組合とともに、不当な要求などが相次げば、企業存続の根幹を揺るがしかねない。実際、建設現場で働いている外国人労働者を勧誘しているユニオンが既に存在しており、こうしたリスクを回避すべく体制を担保してから慎重に進めるべきであろう。 では、外国人活用以外の策はないのだろうか。まず、企業の残業ありきの人員資本政策を見直す必要がある。どこもギリギリで人員を考えているので、いざという時に対応できない。ゆえに、人手不足は企業単位でなく、業界全体で取り組むべきだ。 人手不足の業界は、労働条件が悪いことが根底にあるだけに、業界全体で労働条件の向上や働きやすい職場作りを進めていく必要がある。業界全体で慣行や構造の転換を図り、業界内で横のつながりを持ち、場合によっては「人材の貸し借り」という経営判断があっても良いのではないか。 また、雇用の流動化の観点から、一つの職場に縛り付けておくのではなく、企業から見れば解雇しやすい、労働者から見れば転職しやすい制度を構築すべきである。要は、過去の労働判例から確立された4つの要件である「整理解雇4要件」(①人員整理の必要性 ②解雇回避努力義務の履行 ③被解雇者選定の合理性 ④解雇手続の妥当性)の見直しを急ぐべきだ。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) これにより、ある企業では埋もれた人材が、他企業に転職した場合、活躍する事例(プロ野球のトライアウトやトレードによる選手の入れ替え)も増えていくのではないだろうか。そのためには「解雇」=「悪」=「クビ切り」=「無能」といったレッテルを変えていくことが重要であり、企業間同士の人材交流を積極的に行っていくべきである。 人手不足は、日本の根幹を揺るがす喫緊の課題であることに間違いない。それだけに官民の力を合わせての対策が求められる。ただ単に外国人労働者の受け入れ拡大ではなく、様々な政策パッケージを行ってほしい。外国人雇用政策はあくまでも、人手不足の特効薬であるとの認識を持つべきである。

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    日本が真実知られずなし崩し的に「移民国家」に変わる現状

     都心のコンビニでは、外国人店員から流暢な日本語で接客されるのが日常の光景。工事現場でヘルメットをかぶった外国人労働者を見かけることも多い。 日本社会が変わりゆくなか、政府が示した入管難民法の改正案に野党が猛反発している。「事実上の移民政策」「2国会、3国会にまたがって議論すべき重要な問題」「拙速だ」──。 改正案では、これまで高度な専門人材に限られていた外国人の就労目的の在留資格を大幅に緩和し、単純労働に従事する外国人にも門戸を開放する。熟練の外国人労働者には家族の帯同も認め、さらに在留期間の更新の上限を設けていないため、「永住」が可能になる。 安倍首相はこれまで「移民政策を取ることは断じてない」と繰り返してきたが、事実上の方針の大転換である。背景には介護や農業、建設などの分野で人手不足が深刻になり、経済界から切実な要請があったことがある。 だが、早くから移民を受け入れてきた欧州では、移民の社会保障コストが大きな負担となり、彼らによって職を奪われた人々が反発して移民排斥運動が起き、ネオナチをはじめとする極右勢力が台頭している。彼ら差別主義者に与しない国民も、雇用の安定や社会保障の問題の解決策を見いだせずにいる。2018年11月、衆院予算委で国民民主党・奥野総一郎氏(左)の質問に答弁を行う山下貴司法務相(春名中撮影) このように「移民」は副作用が大きく、国のあり方を変えてしまうため、熟議を重ねなくてはならない問題のはずだ。しかし、日本では真実が知らされぬまま議論も尽くされず、なし崩し的に「移民国家」に変わろうとしている。関連記事■ 外国人に「健康保険」「扶養控除制度」が食い物にされている■ 「外国人比率が75%の街」が東京に出現していた■ ベトナム人留学生の犯罪が増加 なぜ彼らは犯罪に走るのか■ コンビニ店員20人に1人が外国人 大手3社だけで4万人超■ 移民推進派が主張する「人口減で労働力不足」は本当なのか

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    外国人労働者の「我が子の学歴」問題

    吉田典史(ジャーナリスト・記者・ライター) 今回は、外国人労働者の実態に精通しているAPFS労組(東京都新宿区)の委員長・山口智之氏に取材を試みた。外国人労働者は貴重な戦力として雇われることもあるが、日本人の社員よりは安易に使い捨てられることが多い。それでも最近は好景気や人手不足の影響もあり、外国人労働者が増えつつある。 厚生労働省は2018年1月に、外国人雇用についての届出状況を公表した。2017年10月末時点での外国人労働者は前年同期比18%増加し、約128万人となり、5年連続で過去最高を更新した。国籍別では、中国が最も多く、37万2263人、次いでベトナムの24万0259人、フィリピンの14万6798人と続く。 この労働者の中には、母国に住む家族を日本に呼び寄せるケースもある。 今回は、この労働者たちの子どもの教育をクローズアップしたい。山口智之氏に「多くの組合員が、わが子の教育に悩んでいる」と語る。近年、相談内容として増えているのが、わが子の教育問題なのだという。 日本企業は、外国人労働者を「使い捨て」にする傾向が依然としてあるが、その向こうにある「家族の問題」にまで視野を広げて考える時期になっている。組合員とスマホで連絡をとる山口氏 APFS労組の母体は、外国人支援団体の特定非営利活動法人「ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY(略称:APFS)」。1987年に設立された団体で、外国人からの相談や人権擁護の提言、それに関する啓蒙活動を続ける。労働相談をしていたスタッフである山口氏らが2007年に独立し、APFS労組を結成した。 組合員は現在、約60人。約9割は外国人で、平均年齢は30代前半。国籍はミャンマーが最も多く、7割ほど。それに、パキスタンやインド、エチオピアなどが続く。同労組は、個人でも加盟することができる。2007年の結成以来、日本労働組合総連合会(連合)、全国労働組合総連合(全労連)、全国労働組合連絡協議会(全労協)といったいわゆる3大労組には参加していない。外国人労働者の支援に特化し、労組としては独自路線を歩んでいる。「子どもの学歴にかける思いは強烈」 ここ数年で組合員になった外国人労働者の場合、観光目的の「短期滞在」や「技能実習」の資格で入国し、在留中に難民申請するケースが多い。大半は、都内や神奈川や千葉、埼玉の飲食店、焼き肉店、居酒屋などで働く。男性は厨房での料理補助や食器洗い。女性は、ホールで接客をすることが多い。1日10時間ほど働き、休日は週に1日で、給与は額面で月20万円前後。50人以下の中小企業で働く人がほとんどだ。 山口氏はこう語る。 「組合員が最も多いミャンマー人は、学歴に強い思いをもつ人が多い。祖国のミャンマーではヤンゴン大学などの名門大学に在籍していて、1980年代から90年代前半に民主化を求める学生運動を行い、軍事政権からの迫害を避けるため日本に亡命してきたからです」 組合員のリーダー的な存在は、40~50代のミャンマー人だ。多くは、来日後にミャンマー人の女性と結婚している。現在、夫婦共働きで生活を維持する。生まれてきた子どもの国籍はミャンマーのままにしてあるが、日本の公立の学校に通っている。 中には、日本の大学を受験する者もいる。親である彼らは、わが子が学習塾や予備校に通う学費を稼ぐために、必死で働いている。山口氏は「彼らは祖国でエリートであっただけに、子どもの学歴にかける思いは強烈」とみる。 「日本では、彼らのことを高学歴とは認めません。多くはこの20数年間、飲食店の厨房で働いたり、建設現場で肉体労働をしたりして収入を得るしかなかった。私と2人だけになったときに、こう打ち明ける人がいます。『自分はどうしてこんな肉体労働をしているのだろう。子どもには、私が味わっている無念な思いをさせたくない。日本で学歴を身につけさせ、日本か、母国で医師にさせたい』と」 山口氏にはその姿は30~40年前、「受験戦争」と言われたころの日本人の親たちと重なって映るという。しかし、現実は厳しい。日本人の生徒の成績と比べると、彼らの子どもの成績は低い場合がある。山口氏は組合員たちとの懇親会などでミャンマー人の子どもと接するが、ほとんどが日本語の壁に苦しんでいるように見えるようだ。 「日本語を話すことができたとしても、書いたり、読んだりすることが十分にはできない。日本語の初級から学び直すことをせざるを得えない子どももいる」「辞めることができない」 外国人労働者の子どもの教育をめぐる問題は今後、広がる可能性がある。山口氏はその大きな理由の1つに、1993年に創設された「外国人技能実習制度」を挙げる。厚生労働省によると、2017年10月末時点で、技能実習生は全国に25万7788人だった。前年度に比べて22.1%増である。 この制度は、日本の企業などが発展途上国の人を最長3年まで技能実習生として受け入れ、OJT(On-the-Job Training)を通じ、職業上の技能や技術などを修得させるものだ。3年を終えると、通常は帰国し、その国の経済発展を担うことになる。2017年11月から施行される「外国人技能実習制度」の適正化法により、今後は最長5年になる。 この制度には日本が「職業などの技術の移転」を通じて国際協力するという側面があり、理念としては尊い。しかし、ある面では形骸化し、すでに問題になっている。 4年ほど前から、APFS労組には外国人技能実習制度で来日し、機械や繊維の工場などで働くミャンマー人が労働相談に来ている。これまでのべ30人ほどになる。多くが10~30代の女性だ。最近は、岐阜、大阪、宮崎の繊維工場で洋服をつくる仕事をしていた女性たちが「工場でひどい扱いを受けている」と助けを求めてきた。ミャンマー人同士の口コミで、APFS労組のことを知ったのだという。相談は、次のようなものだった。 「毎日午前7時30分から午後10時まで働かされる」「月額10万円以上もらえると聞いて来日した。実際は、手取り7~8万円だった」「月に6~7万円しか支給されないから、生きていけない」「パスポートを社長に取り上げられているから、辞めることができない」……。 本来、入国直後の講習期間(原則2カ月間)以外は、企業などで雇用関係の下、労働基準法をはじめとした労働関係法令などが適用される。山口氏は「労働法規が守られていないのではないか」とみる。組合員のみなさん APFS労組の組合員である外国人のほぼ全員が、日本での在留を希望しているという。外国人労働者の子どもの教育問題はさらに広がっていくのではないだろうか。よしだ・のりふみ ジャーナリスト・記者・ライター。ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、『震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

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    外国人に「健康保険」「扶養控除制度」が食い物にされている

     外国人労働者が増加するなか、懸念されるのが社会保障制度のグレーな利用だ。現行制度はあまりに外国人に有利にできている。フリーライターの清水典之氏がレポートする。* * * 昨年の本誌・SAPIO11・12月号で、3か月超の在留資格(ビザ)を持つ外国人ならば日本の健康保険に加入でき、日本人よりも外国人のほうがその制度を最大限に“有効活用”しているのではないかという医療現場の疑問の声を取り上げた。 例えば42万円もの出産育児一時金は海外で出産しても受給可能なため、現地の病院が発行した出生証明書さえあれば支給される。だが、それが本物かどうか行政は確認していないのが実情だった。 また、何百万円もかかる高額医療も「高額療養費制度」が適用されれば8000円から最大でも30万円程度で受けられる。そのため日本で高額医療を受ける目的で外国人が「留学ビザ」を取得すれば、渡航費、学費を払っても自腹で医療を受けるより安くつくケースが多々あると指摘した。 こうした外国人による日本の健康保険「タダ乗り」の問題を提起したところ、他メディアへの波及も含めて、大きな反響があった。 なぜこのような問題が起きているかというと、2012年に外国人登録制度を廃止し、行政が外国人を原則、日本人と同じ扱いにするようになったからだ。形式上は同じ扱いだが、外国人には脱法的な利用が可能なため、外国人を優遇する制度になってしまっている。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 実は、こうした在日外国人に対する過剰優遇は健康保険だけに限らない。所得税の扶養控除も、在日外国人の不正が蔓延している疑いがもたれているのだ。68.8%が所得税ゼロ 2014年に会計検査院は、「日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について」という調査報告を公表した。 日本の税制における扶養親族とは、自分の6親等内の血族と3親等内の姻族(配偶者の親族)で、収入がない、あるいは少ないため、自分が家計の面倒をみている親族を指す。16歳以上が対象で、基本的に扶養親族一人当たり38万円が所得から控除されるが、19歳以上23歳未満なら63万円、70歳以上で同居していれば58万円、同居していなければ48万円が控除される。本当に不正はなくなったのか この会計検査院の調査は、2012年の所得税の確定申告で、扶養控除の合計申告額が300万円以上で、国外在住の扶養親族を申告している1296人をサンプル調査したもの。このうち、確定申告書に添付された在留カード等により、納税者が外国人であることを確認できた者は542人いた。 報告書によると、国外の扶養親族の人数の平均は10.2人で、なかには26人以上も申告しているケースがあったという。納税者全体の扶養親族の平均人数は1.34人(2012年)なので、異常に多いと言える。 さらに、申告された国外扶養親族を年齢別で見ると、23歳から60歳未満の成人の占める割合が半数に上り、本当に収入がないのかという疑問も湧いてくる。 報告書では、「国外扶養者については、国内扶養者と異なり多数の親族を扶養控除の対象としているのに適用要件を満たしているか十分な確認ができていないまま扶養控除が適用されているなどの状況となっていた」と指摘している。 多数の扶養親族を申告すれば、所得税は大幅に減額される。実に調査対象者の68.8%が所得税ゼロ、つまり非課税になっていた。なかには所得が900万円以上あるのに、非課税の者が17人いたという。 所得税が非課税になると、健康保険料や介護保険料の他、子供の保育料(公立保育園の場合)や市営住宅の家賃なども最低額になる。税収が減るばかりか、各種の行政サービスをフリーライドされてしまうのだ。 会計検査院の指摘を受け、政府は2016年の税制改正で、扶養控除の申告に規制をかけた。具体的には、申告時に、戸籍等やパスポートの写しなど、親族であることを証明する「親族関係書類」と、親族へ送金した証拠となる金融機関の記録など「送金関係書類」の添付を義務づけた。 しかし、この対策によって、本当に不正はなくなったのか。 会計検査院に問い合わせたところ、「調査は継続していますが、現時点で内容についてはお答えできない」(渉外広報室)と回答。 国税庁も「国外の扶養親族、扶養控除だけで集計はしていない。日本の申告納税制度は、納税者が自ら適正に申告するという立て付けで、明らかな誤りがあれば税務調査で対応します」(個人課税課)と答えた。 両機関とも効果の有無は確認できていないという。海外の書類を精査できない海外の書類を精査できない 会計検査院の調査前から国外扶養親族の問題を指摘し続けてきた福岡県行橋市の小坪しんや市議は、「改善を得られたのは事実だが、満足のいく結果ではない」という。どこが問題なのか。「書類さえ出せば、以前と同じです。提出書類の真贋を見極めるには、世界中の家族関係を証明する書類に精通している必要があり、地方の税務署職員には非常に難しい。 仮に本当に親族だったとしても、現状ではその人が無職なのか、億万長者なのかわからない。日本人はマイナンバーと住基ネットで照会すれば丸裸ですが、国外居住者は調べる術がない。外国人を公平に扱っているというより、日本人に不公平かつ不誠実な制度と言えます」 やろうと思えばいくらでも不正が可能なのだ。元国税調査官の税理士で、『押せば意外に 税務署なんて怖くない』(かんき出版)著者、松嶋洋氏は税務署の実務の実態についてこう話す。「確定申告の処理で、税務署員は控除関係の添付書類なんてまず見ません。処理する量が膨大で、とてもそこまで見ていられない。扶養親族が5人も6 人も書かれていたら注意はしますが、基本的にはザルですね」 自営業者などの確定申告では扶養親族は税務署が確認するが、給与所得者が年末調整で申告した場合は、会社に扶養親族の確認義務があり、ここがザルだと素通りになるうえ、会社が責任を負わされるというから、たまったものではない。 日本の扶養控除の規定は、主要先進国に比べて非常に緩く、たとえば、欧州では控除対象は直系尊属(自身の父母、祖父母)と実子のみに限定するといった規定が一般的で、米国では実子でも半年以上同居していなければ控除対象にならない。 もちろん、諸外国がそうだからといって日本もそうしなければならないという理由はないが、ただ、日本人と外国人で区別しても問題ないのではないか。「日本では『相互主義』という言葉が勘違いされている。外国人もまったく同じように扱うということではなく、相互で確認して了解を得るということです。だから、外国人の場合は1親等までに限るとか、海外の扶養家族は認めないとか、月10万円以上の送金でないと認めないとか、制約を設けても構わないと考えます」(前出・小坪市議)※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 日本人が納税意欲を失うような制度はやめていただきたいものである。【PROFILE】清水典之(しみず・みちゆき) 1966年愛知県生まれ。大阪大学工学部卒業。1991年よりフリーランス。著書に『「脱・石油社会」日本は逆襲する』(光文社刊)がある。関連記事■ 性善説に基づく出産一時金42万円等 健康保険を外国人が乱用■ 扶養控除 年齢制限ないためフリーターやニートの子供も適用■ 米大統領選 ロムニー氏の公約は“健康保険制度廃止”だった■ TPP加盟で健康保険制度が崩壊する危険性を孫崎亨氏が指摘■ 「意識低い彫り師」が未成年まで食い物に 健康トラブルも

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    「日本の中に別の国」安倍政権はローマの失敗を直視せよ

    三橋貴明(経世論研究所所長) ローマ帝国は元々、一都市国家であったが、領域国家として勢力範囲を拡大していった。そして最盛期には地中海沿岸の全域に加え、ガリア(現フランス)、ブリタニア、ダキア(現ルーマニア)、アルメニア、メソポタミアにまたがる大帝国を築き上げた。ローマ帝国が繁栄したのは、軍事力やインフラ整備(道路や水道など)に関する突出した技術力に加え、「ローマ市民権」を慎重に、同時に着実に拡大していったためである。市民権は、支配下に置いた部族や民族はもちろん、解放奴隷にまで与えられた。 ローマに征服された属州民であっても、補助兵に志願し、ローマ「国家」のために尽くすことで、世襲のローマ市民権を手に入れることができた。当然ながら、ローマ軍には各属州からも優秀な人材が集まり、軍事力が強化されていく。ちなみに、五賢帝の一人として名高く、ダキアを征服したトラヤヌス帝はスペイン属州の出身である。 ローマ帝国は、支配する領域を拡大し、被支配地の人々をすら「ローマ国家の一員」として育成することで繁栄した。ローマ軍に屈した地域では、族長の子弟がローマに留学し(人質という意味合いもあったのだろうが)、完全にローマ化された上で故郷へ戻された。いわゆるソフトパワーをも活用し、帝国の「統合」が推進されたのである。 そういう意味で、ローマ帝国は最近までのアメリカに似ている。アメリカは「移民国家」ではあるものの、アメリカ国籍を取得したい移民は、アメリカ合衆国憲法への「忠誠の誓い」を果たさなければならない。あるいは、法律が定めた場合に「兵役」に従事することも求められる。さらには、「言語」についてもアメリカ英語が強制された(現在は、かなり緩んでしまっているが)。 ローマ帝国の場合、支配領域が拡大したがゆえに「外国人」を「ローマに忠誠を誓う」ローマ市民に育成する必要があった。アメリカは、膨大な外国人が移民として流入するがゆえに、国籍取得に際し「アメリカ国家への忠誠」を求めたわけである。 ローマ帝国にせよ、アメリカ合衆国にせよ「ナショナリズム(国民意識)」を重視し、国家として繁栄した、あるいは繁栄しているわけである。 世界最古の自然国家「日本国」の国民である我々にはピンとこないかもしれないが、外国人を自国に受け入れる場合、ナショナリズムを重視した同化政策が必須なのである。ローマの場合、ゲルマン系民族を受け入れる際など、複数の小規模なグループに分け、帝国各地に分散して住まわせるなどの工夫もなされた。「帝国の中に別の国」が出現し、ナショナリズムが壊れることを、可能な限り回避しようとしたのだ。画像:Getty Images さて、西暦375年、ユーラシア・ステップの遊牧民フン族の脅威を受けたゲルマン系の西ゴート族約20万人が、ドナウ川の対岸からローマ帝国への亡命を求めてきた。当時のヴァレンス帝は、西ゴート族が好みの場所にまとまって居住することを許可してしまった。ローマ帝国の中に「別の国」ができてしまったわけである。 さらに、当時のローマ帝国はドナウ川を越えてきた難民たちを杜撰(ずさん)に扱い、食料すら十分に供給されなかった。結果、ゴート族の難民が蜂起し、同族を次々にドナウ川の向こうから呼び寄せ、ゴート系のローマ軍の兵士たちまでが呼応し、大反乱に至ってしまった。 鎮圧に向かったヴァレンス帝は、378年にアドリアノープルにおけるゴート反乱軍との決戦で戦死してしまう。その後、ゴート族はローマ帝国内部における「自治権」を確立。ローマ市民ではない人々の「別の国」を認めた結果、ローマ帝国(厳密には西ローマ帝国)は滅亡への道を歩んでいくことになる。安倍政権は「亡国政権」 さて、2018年。日本は少子高齢化に端を発する生産年齢人口対総人口比率の低下を受け、人手不足が深刻化していっている。何しろ、人口の瘤(こぶ)の世代が続々と現役を退いている反対側で、彼らを埋めるだけの若者は労働市場に入ってこない。現在の日本の人手不足は必然であり、しかも長期に継続する。 日本の人手不足を受け、経済界を中心に、「人手不足を外国人労働者で埋めよう」という、国民国家、あるいは資本主義国として明らかに間違った声があふれ、安倍政権が続々と日本の労働市場を外国人に「開放」していっている。2017年時点で日本における外国人雇用者数は130万人に迫った。外国人雇用者数(左軸)と増加率(右軸)の推移 出典:厚生労働省 驚かれる読者が多いだろうが、データがそろっている2015年時点で、我が国はドイツ、アメリカ、イギリスに次ぐ、世界第4位の移民受入大国なのである。216年以降、ブレグジットの影響で、イギリスへの移民流入が減少している。2016年、あるいは2017年には、我が国が世界第3位の移民受け入れ大国になっている可能性が高い。 人手不足ならば、生産性を高める。具体的には、設備や技術に投資し、「今いる従業員」一人当たりの生産量を高め、人手不足を解消しなければならない。生産性向上で経済を成長させるモデルこそが、資本主義なのだ。 すなわち、現在の日本の人手不足は、まさに経済成長の絶好のチャンスなのである。逆に、人手不足を「外国人労働者」で埋めてしまうと、生産性向上の必要性がなくなってしまう。安倍政権の移民受入政策は、日本の経済成長の芽を潰す。 その上、安倍政権は2025年までに外国人労働者50万人増を目指す方針を示しているわけだから、あきれ返るしかない。 経済成長に対するネガティブなインパクトに加え、安倍政権の移民受入政策は、日本国民の「ナショナリズム」を破壊することになる。例えば、日本で暮らす外国人が、我々と同じように「皇統」に対する畏敬の念を持ち得るだろうか。ありえない。 日本国は、世界屈指の自然災害大国である。自然災害が発生した際には、国民同士で助け合うという意味におけるナショナリズムが必須だ。被災者を助けてくれるのは、別の地域に暮らす日本国民だ。 「困ったときはお互い様」という「ナショナリズム」なしでは、人間は日本列島で生きていくことはできない。2011年3月、東日本大震災が発生し、福島第一原発の事故が起きた際、東京のコンビニから外国人店員が消えた。多くの外国人が、原発事故を受けて帰国したようだ。筆者にしても、例えば韓国で働いていたとして、原発事故が起きたならば即刻、帰国するだろう。筆者の心の中に「韓国と心中する」などという気持ちは皆無だ。 日本にいる、あるいは「移民」として来日する外国人たちも同じなのである。我々は外国人と「日本国のナショナリズム」を共有することはできない。ローマ帝国は「国の中の別の国」を認め、「市民権」というナショナリズムが崩れたと同時に、亡国に向かい始めた。 そして現代、安倍政権は移民受入により、「安く働く労働者」と引き換えに、日本の経済成長を妨害し、かつ自然災害大国である日本には不可欠なナショナリズムを壊そうとしている。移民受入を推進する以上、安倍政権は「亡国の政権」以外のなにものでもないのだ。

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    ローマ帝国はなぜ移民で滅んだのか

    政府が外国人労働者の受け入れ拡大を検討する関係閣僚会議を発足させた。これに伴い、法務省所管の入国管理局の庁格上げの議論も始まった。この流れは、どう考えても移民政策への布石だが、労働力不足という大義名分だけで安易に進めて大丈夫なのか。いま一度、ローマの歴史をひもとき、この議論を冷静に考えてみたい。

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    ローマ帝国の滅亡は「難民キャンプ」から始まった

    山真司(地政学者、戦略学者) 現在はいわゆる「グローバル化」の時代であるが、それに大きく関係してくる移民・難民の受け入れ問題について書かせていただきたい。 まず、先に結論だけいえば、移民や難民の受け入れが成功するかどうかは、歴史的に見ても「価値観や生活レベル、それに文化の違う人々をどこまで社会に溶け込ませることができるか」という点にかかっているということだ。 「グローバル化」とは、国境を越えた「ヒト・モノ・カネ」の動きの活発化であるといわれている。「モノ」と「カネ」の動きは、自由貿易の促進という形で比較的受け入れやすいものと考えられているが、最も厄介なものが、「ヒト」の移動に関する移民や難民の問題である。 本稿では、古代ローマ帝国と、その末裔(まつえい)である現代のドイツが直面している深刻な問題を振り返ることで、この厄介な移民・難民問題の核心を考えるための、いくつかのヒントを提供していきたい。 古代ローマ帝国の崩壊というのは英国の歴史家、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』をはじめとして、近代の欧州では実にさまざまな知識人たちが論じてきたテーマの一つである。その最大の要因の一つとして、次々に侵入してきた難民の処理を誤ったことにあるのは間違いない。 もちろんローマ帝国自体は、当時から世界最大の多民族・多文化社会である。無数の移民を同化したり、他民族のいる場所を占領したりすることによって数世紀にわたって発展してきた国であった。端的にいえば、当時のローマは現在の欧米のように、移民や難民に寛大だったのである。画像:Getty Images だが、今から1700年ほど前の西暦300年ごろから、状況がおかしくなる。ユーラシア大陸の内部、中央アジアから移動してきたフン族の侵入により、東欧を支配していたゴート族をはじめとする部族たちが追い出され、「難民」としてローマ帝国との国境沿いに大量に集結したからである。その数は、当時としても驚異的な20万人にのぼるといわれている。 それまでのローマ帝国であれば、異文化の「野蛮人たち」を同化させるために、その部族をまとまらせず、小集団に分割して抵抗してこないようにしてきた。いわゆる「分断統治」である。誕生した「難民キャンプ」 ところが、当時のローマ帝国皇帝のフラウィウス・ユリウス・ウァレンス(在位364-378年)に、このゴート族の一部であるテルヴィンギ族を分断するだけの兵力がなかった。しかも、皇帝ウァレンスには労働力や兵隊としてすぐにでも活用したいという意図があったことから、分断せずにまとまって住むことを許可したのである。ここで誕生したのが、いわゆる「難民キャンプ」である。 しかし、ローマ帝国は、難民状態の「野蛮人」であるテルヴィンギ族に対し、食料の中抜きのような腐敗や汚職のせいで、保護が十分に行き渡らず、難民キャンプで暴動が発生する。この暴動を契機として、テルヴィンギ族は本格的な反乱を起こし、国境の外にいた西ゴート族たちと呼応しながら、ローマ帝国の内部で自治権を確立させることに成功した。 そしてゴート族たちは、ついにローマ軍と現在のトルコ領内で行われた「ハドリアノポリスの戦い」(378年)に勝って、皇帝ウァレンスを殺害した。さらに、410年には「ローマ略奪」により、ローマはゴート族の手に落ちた。その後も東欧からやってくる部族たちの侵入が続き、ついに、ローマ帝国は決定的な崩壊を迎えることになる。 この歴史から得られる教訓は、流入し続ける難民の扱いを間違えて同化に失敗すれば、それが確実に国家の生存に直結するような大きな政治問題へと発展する、ということである。 もちろん、スケールの大きさは違えども、現代のローマ帝国の末裔であるドイツ連邦が、同じような形で移民・難民問題に悩まされ始めていることは、実に興味深い。例えば、最近のドイツで注目されているのは、移民・難民による女性暴行事件である。画像:Getty Images 特に象徴的だったのが、6月6日に南西部のヴィースバーデンという都市で14歳の少女が暴行された上、殺害された事件である。難民申請中だったイラク人の容疑者は、事件2日後に高飛びしていた先の同国のクルド自治区で身柄を拘束された。 その他にも、ここ1、2年で亡命希望者(asylum seekers)による性的犯罪が目立つ。実際のドイツ国内の犯罪率は全体的に減少しているのにもかかわらず、増加しているのである。とりわけ、このような難民や亡命希望者の男性による性的犯罪は、ドイツ国内で「中東系の男性に襲われるドイツの白人女性」というバイアス(偏り)の構図に拍車をかけ、実に悩ましい問題となっている。 また、宗教的にも「イスラム教徒がキリスト教徒を襲う」という構図があるだけではない。欧州のリベラルな人々に対しても、「寛大な多元主義」を守るか、それとも「女性の人権」を守るかを迫っているという点で、強烈なジレンマを突きつけているともいえる。 この問題に関しては、ドイツ与党でメルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)の幹部、クレックナー食糧・農業相も、政府に対して、移民・難民の受け入れについて慎重にすべきだというトーンに変わってきている。メルケル氏の後継者の一人といわれるクレックナー氏ですら、有権者たちが直面する異文化との摩擦を目の当たりにして、政策転換を視野に入れ始めているのである。生かすべきはドイツの教訓 彼女が最近出版した本の中では、実際問題として、娘を遠足に行かせなかった移民や難民の両親や、女性教師と握手しなかった男親の存在などを挙げている。 また、全体的に犯罪率は減っているとはいえ、バイエルン州では、2017年前期だけで性犯罪が50%上昇した。しかも、そのうち18%が移民や難民によるものという統計結果も出ている。ドイツは、全体的には「安全」になっているのかもしれないが、それがドイツ国民全体の「安心」にはつながっていないことがうかがえる。 ここで、今ドイツで迫られている移民・難民に関する論点を整理すると、大きく二つの議論に分かれる。一つが「移民は国力になるし、難民受け入れは義務である」というものである。ドイツをはじめとする欧米の先進国による議論のエッセンスは、まさにこの言葉に集約されている。つまり、「経済」と「倫理・道徳」というリベラル的な観点から積極的に受け入れるべきだというものである。 もう一つが「国境を開放してしまえば、ますます社会問題が深刻になる」という反対意見である。要するに「すでに生活している国民の安全を優先せよ」ということだ。だが、この主張をする人々は、とりわけ倫理・道徳面での話を無視していると感じられ、あまりいいイメージを持たれにくい。 確かに、移民や難民問題において、日本とドイツ、さらにはローマ帝国までも比較することは無理な話である。だが、それでも、冒頭で記したように「価値観や生活レベル、それに文化の違う人々を、どこまで社会に溶け込ませることができるか」を真剣に考えなければならないのである。独総選挙で躍進した反移民政党「ドイツのための選択肢」(AfD)に抗議する人々=2017年9月、独ベルリン 果たして、われわれはゴート族が侵入してくるまでのローマ帝国のように、外国から来る人々を上手に同化させることができるのだろうか。それとも、ドイツのように、移民や難民が増えて悩むことになるのだろうか。 移民や難民の適応や同化を間違えれば、いったいどうなるのか。グローバル化している現代だからこそ、われわれも真剣に考えざるを得ないのかもしれない。

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    ローマ帝国は「武装難民」に自由を与え、そして自壊した

    井上文則(早稲田大文学学術院教授) 今から1500年前、陽光輝く北アフリカの地にゲルマン民族の一派、ヴァンダル人の王国があった。この王国の歴史は一見、歴史ロマン以外のなにものでもない。 ゲルマニア地方の薄暗い森の中から出てきた金髪碧眼(へきがん)のヴァンダル人が長い流浪の末、「英雄王」ガイセリックに率いられてイベリア半島から北アフリカへ渡り、自らの王国を建設した。この王の下でヴァンダル人は強勢を誇り、地中海沿岸各地を海賊のように荒らし回り、455年には「永遠の都」ローマを攻略する。 だが、その後、王国は100年ほどの命脈を保つが、最後はビザンツ皇帝ユスティニアヌスの送り込んだ遠征軍によってあっけなく滅ぼされ、地上から跡形もなく消え去ったのである。しかし、この興亡が歴史ロマンに感じられるのは、われわれがあくまでもヴァンダル人の側に立っているからである。 ヴァンダル人が王国を建てた土地は、ローマ帝国の領土の一部であったのであり、ローマ帝国の住人にとっては、彼らは侵入者であり、征服者であった。ローマ帝国は、なぜ彼らの北アフリカ征服を許してしまったのだろうか。 ヴァンダル人がライン川を渡って、ローマ帝国領に侵入したのは、406年の大みそかの日であった。アラン人とスエビ人もヴァンダル人と行動をともにした。彼らは、女子供を伴っており、何らかの事情で元の居住地を追われた人たちであったのであり、今日の言葉で言えば「武装難民」であった。 ヴァンダル人たちは3年間、ガリア(現フランス)の地を荒らしまわった後、409年にはピレネー山脈を越えて、イベリア半島に入り、その地にいったん住み着いた。ヴァンダル人はハスディングとシリングという二つの部族から成っていた。 ハスディング系ヴァンダル人はガラエキア(スペイン北西部)を、シリング系ヴァンダル人はバエティカ(スペイン南西部)を、アラン人はルシタニア(ポルトガル)とカルタギニエンシス(スペイン中南部)を、スエビ人はガラエキアの北西部を、それぞれ分捕った。 このようなヴァンダル人らの動きに対して、ローマ帝国政府は即座に反応することができなかった。当時、本国のイタリア自体が、バルカン半島のゴート人によって脅かされていたからである。イタリア半島に侵入した、ガイセリックに率いられたヴァンダル人たち(ゲッティイメージズ) そもそも、ヴァンダル人たちがライン川の国境を突破できたのも、イタリア防衛のためにライン川の国境からローマ軍が大幅に引き上げられていたからであった。イタリアのためにガリアは犠牲になったのである。この処置を取ったのは、当時、政府の実権を握っていた将軍のスティリコであったが、スティリコの父親はヴァンダル人であった。 ガリアに入ったヴァンダル人たちにさらに幸いしたのは、407年にブリテン島でコンスタンティヌス(3世)なる軍人が反乱を起こし、皇帝を称して、ガリアに乗り込んできたことであった。このためスティリコは、ヴァンダル人たちよりも、まずは簒奪(さんだつ)帝コンスタンティヌス3世を相手にしなければならない状況になったからである。裏目に出るローマの「温存政策」 結局、ローマ帝国の内乱は、彼らに大きく利することになったのである。結局、ヴァンダル人追討は遅れに遅れて、ローマ帝国政府が動き出すのは、416年になってからであった。 スティリコに代わる実力者として411年に姿を現したコンスタンティウスは、簒奪者のコンスタンティヌス3世を倒すと、続いて先にガリアに入っていたゴート人に命じて、イベリア半島のヴァンダル人らを攻撃させたのである。ゴート人は、瞬く間にシリング系ヴァンダル人とアラン人に壊滅的打撃を与えた。ローマは、「夷を以て夷を制す」ことに成功した。 しかし、ハスディング系のヴァンダル人は見逃された。コンスタンティウスは、ゴート人が圧勝することで彼らが過度に強大化するのを恐れていたのであろう。また同時に、ヴァンダル人に利用価値を見いだしていたのかもしれない。 もともとローマ帝国は、帝国領内の異民族を兵力の供給源とみなし、その力を利用する政策を長年取ってきていたのである。しかし、この政策は裏目に出ることが多く、今回もヴァンダル人の勢力を温存させたことは、帝国にとって大きな災いの種となった。 案の定、生き残ったハスディング系のヴァンダル人が、やがて南下を開始し、その王ガイセリックに率いられて、429年にジブラルタル海峡を渡ることになったからである。北アフリカに渡ったヴァンダル人の総数は8万人であったと伝えられる。 ヴァンダル人が北アフリカに渡ることができたのも、ローマ帝国が内紛を起こしていたからであった。当時、北アフリカの支配権を握っていたのは将軍のボニファティウスであったが、ボニファティウスは、中央政府で実権を握る将軍アエティウスと対立していた。一説によれば、このボニファティウス自身が自らの勢力強化のためにヴァンダル人を呼び寄せたとされているのである。 真相は定かではないが、いずれにしても、上陸したヴァンダル人は、アフリカの都カルタゴを目指して東進を開始した。ボニファティウスも遅まきながら攻撃を試みるが、敗退してイタリアに逃げ戻り、やがて439年にはカルタゴがヴァンダル人の手に落ちたのである。 彼らが占拠した北アフリカは、ローマ帝国で最も豊かな地方であったのであり、この地方を奪われたことはローマ帝国にとって致命的な打撃となった。そして、ローマ帝国はその後40年もたたずに滅ぶことになる。古代のカルタゴ(ゲッティイメージズ) ローマ帝国の滅亡の原因については、さまざまな説が出されているが、以上の事実から明らかなように、それにはローマ帝国の内紛が深く関わっていたのである。ガリアに入ったヴァンダル人が直ちに殲滅(せんめつ)されなかったのは、同じ時期にスティリコとコンスタンティヌス3世との対立があったからである。 また、ヴァンダル人の北アフリカ渡航を許したのも、ボニファティウスとアエティウスの政争の故であった。結局、肝心なところで、ヴァンダル人に行動の自由を与えたのは、ローマ帝国自身であったのであり、この意味ではローマ帝国は自壊したといえるのである。

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    メルケルの「難民政策」がドイツの分断を生み出した

    う排外主義的な人は少なく、例えば、経済難民は受け入れない、犯罪を犯した難民は送還する、といった厳格な移民・難民政策を求める人が多いのではないかと思います。―4期目を迎えたメルケルですが、5期目、6期目への意欲を示しているのでしょうか?三好:ドイツは日本と違い、首相に解散権がなく、基本的には4年間の任期を全うするので、よほどのことがない限りこのまま4期目は続くのではないでしょうか。テレビ番組のインタビューでメルケルは5期目に関しては明言を避けましたが、4期目で終わるという見方が有力です。実際に後継者に関しても、女性政治家のクランプ・カレンバウアーをCDUの幹事長の座に就かせ、次期首相として育てようとしているようですから。ドイツ国旗(左)とキリスト教民主同盟(CDU)の党旗(ゲッティイメージズ)―ドイツ政治は複雑ですね。最後に、ドイツ政治やドイツ人についてわかるお薦めの本や映画はありますか?三好:映画では、今年公開された『はじめてのおもてなし』。難民を受け入れた家族が、そのことでドイツ人が普段思っている本音が明らかになるコメディで、ドイツ人の考え方がよくわかります。『帰ってきたヒトラー』は、随所にドイツ人へのインタビューが挿入されていて、ドイツ人の難民への考えがよくわかる映画ですね。  本で言えばメルケルに興味があるならば元時事通信の佐藤伸行さんの『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)は新書で読みやすいと思います。そして私の本も手にとっていただけると幸いです。ほんだ・かつひろ ライター。1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。

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    K・ギルバート氏「今の外国人政策では誰も幸せになれぬ」

     安倍政権が推進する「移民受け入れ」政策は、はたして日本の国益に繋がるのか。40年近く日本で暮らす弁護士でタレントのケント・ギルバート氏(64)が、「在日外国人」の立場からあえて移民問題に斬り込む。* * * そもそも日本は江戸時代に260年もの間、外国人の受け入れを積極的に認めておらず、伝統的に外国人の扱いに慣れていない。かつて日本の飲食店で働く東南アジア女性が「人身売買」と国際的に批判され、先の「技能実習」制度も外国人を使い捨ての労働力にする制度と叩かれている。 私は1971年の初来日以来、「外国人」として日本と関わるが、アパートの貸し借りから労務問題まで、日本社会は必ずしも外国人に優しくない。これは差別感情というよりは、経験不足によるコミュニケーションの不和が原因と考えられる。 そうした背景を持つ日本がこの先、安易な移民政策を進めても成功は難しい。まずは配偶者控除の廃止などで女性の社会進出を進め、不足する労働力を自国で補う努力を求めたい。 その上でどうしても外国人労働者を入れるならば、1910年に韓国を併合した時のように、日本に迎え入れる人々の教育・生活・道徳レベルを上げようという気概と、受け入れ態勢の充実が必要になる。 移民政策が成功している国は世界に数多い。本気で移民を推進するなら、総理大臣が移民担当大臣を任命して予算をつけ、明治開国期の岩倉使節団のような視察団を各国に送って研究を重ねてから実行すべきだ。公開討論「テレビ報道と放送法~何が争点なのか~」に出席した米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏=2016年6月、東京都千代田区(寺河内美奈撮影) そこまでしないと、今の日本の未成熟な外国人政策では、移民も日本人もハッピーになれない。内外の活動家が「不幸」な移民や外国人労働者を支援し、国連の人権委員会などで日本の人権侵害を訴えて、国内秩序を乱す材料を与えるだけとなる怖れすらある。 外国人参政権の問題と同様に、移民を反日勢力の攻撃材料にしてはならない。【PROFILE】ケント・ギルバート●1952年、米国アイダホ州生まれ。ブリガム・ヤング大学在学中に19歳で初来日。1980年、大学院を修了し、法学博士号と経営学修士号、カリフォルニア州弁護士資格を取得。東京の弁護士事務所に就職し、法律コンサルタント、マルチタレントとして活躍。『日本覚醒』(宝島社刊)、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社刊)、『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱へ捨てろ!』(祥伝社刊)など著書多数。関連記事■ ケント・ギルバート氏「歴史観が変わった契機は朝日誤報」■ ケント・ギルバート氏 文在寅氏の質素な引っ越しに出くわす■ 著書回収報じられたK・ギルバート氏が朝日新聞に反論■ K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」■ ケント・ギルバート/百田尚樹対談 「儒教に呪われた韓国」

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    不法滞在者の合法的逃げ道か 外国人の難民申請が急増中

     日本に“出稼ぎ”に来る技能実習生(*)の失踪が年々増えている。その大半を占める中国人失踪者はこの5年で1万人を超えた。彼らはどこへ消えたのか。日本に滞在する中国人の動向に詳しい元警視庁北京語通訳捜査官の坂東忠信氏が解説する。【*日本国内で一定期間働き、産業上の技能等の習得を目指す「外国人技能実習制度」を利用して日本を訪れた外国人労働者をこう呼ぶ。これまで最長3年だった期間が、2016年の法改正で2年延長できるようになった。】 毎年、約8万人の技能実習生(以下、実習生)が中国や東南アジアから日本にやってくる。ところが、実習期間の途中で行方不明となるケースが年々増え続けており、2015年には5803人が失踪。過去最多を記録した。その多くを占めるのが中国人だ(3116人)。 実習生が失踪する背景として、技能習得を掲げながら低賃金の単純労働を担わせる受け入れ側の実態や、そもそも出稼ぎ目的で来日する実習生側の問題などが指摘されている。どんな理由があるにせよ、実習現場から失踪すると、その後には在留資格を喪失して強制帰国となるか、不法滞在者となるしか道はない。 そんな彼らの“合法的”逃げ道の一つと考えられるのが「難民申請」である。 近年、難民認定を申請する外国人が急増している。2012年に2545人だったものが、2014年5000人、2015年7586人、2016年1万901人と、実習生の失踪者数増加に呼応するように激増しているのだ。 難民と聞くとオンボロ船ではるばる海を越えてやってくる姿をイメージしがちだが、そのように命からがら日本にたどり着く難民は16年中で152人。わずか1.4%に過ぎない。残りの98.6%は日本にいながら難民申請する。その多くは、実習生のほか、旅行などの短期滞在、留学といった正規の在留資格で入国した後、難民申請を行っているのだ。もちろん、入国後に母国が政情不安になったりして帰国すると命に危険が及ぶため難民申請を行う「真正難民」もいるが、日本での就労を目的とした“偽装難民”も多い。(ゲッティイメージズ) 難民認定は申請しさえすれば、たとえ認められなくてもずっと合法的に働くことができる制度だ。 実習生や留学生などとして滞在中、来日後6か月以内に申請すれば、「特定活動」という滞在資格を得ることができ、申請6か月後から就労可能。以前は生活困窮者に限られていた「特定活動」だったが、2010年に制度が簡略化され、一律に認められるようになった。 実習生には3~5年という期限があり、留学生には週28時間労働という縛りがあるが、「特定活動」にはそうした制約はない。しかも申請回数には制限がないから、却下されても申請し続ければこの「特定活動」資格を維持できる。極論すれば、何らかの在留資格で日本に入国し6か月以内に難民申請さえすれば、永遠に日本で働くことができる仕組みとなっているのだ。 これが就労目的の偽装難民に利用される所以だが、彼らの申請を助け仕事を斡旋する“難民ビジネス”に手を染める仲介者が跋扈するようになり、口コミでこうした情報が広まったため、難民申請が激増していると思われる。 2016年の難民申請者数1万901人のうち中国人は156人と少ないが、今後の動向を注視する必要があろう。【PROFILE】坂東忠信●1967年生まれ。1986年、警視庁入庁。機動隊員、刑事などとして勤務。警視庁本部では主に北京語通訳捜査官を務め、中国人犯罪の捜査活動に多く従事。『寄生難民』『在日特権と犯罪』(いずれも青林堂刊)ほか著書多数。関連記事■ K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」■ ベトナム人男性逃走事件が必要以上に大きく報じられた理由■ 中国バブル崩壊 経済難民発生で日本に中国人自治地区誕生も■ K・ギルバート氏「今の外国人政策では誰も幸せになれぬ」■ 飲食店の従業員が全員外国人でも問題ないか? 弁護士の見解

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    介護施設で働く外国人ってどうなの?

    2017年11月、外国人技能実習制度に介護職が追加され、深刻な人手不足に悩む介護業界は大きな期待を寄せる。一方で、コミュニケーションが中心で高齢者の健康に深くかかわる介護職を、外国人に任せられるのか、不安視する声があるのも事実だ。そこで、約10年前から積極的に外国人スタッフを受け入れている山梨県の介護施設を取材した。■動画のテーマはこちら

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    「介護移民」受け入れを甘くみるな

    日本で働きながら技術を学ぶ外国人技能実習制度の対象職種に「介護」が新たに加わった。深刻な人手不足が続く介護の現場では期待も大きいが、一方でわが国の移民政策に直結する重大な問題でもある。移民の受け入れを拒否し、労働力だけ確保するという「ご都合主義」の政策で本当に大丈夫か?

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    大移民時代に突入した「亡国のニッポン」を憂う

    三橋貴明(経世論研究所所長) 現在の日本は、財務省主権国家であり、政商主権国家でもある。とにもかくにも、財務省の緊縮財政路線が強要され、国民が貧困化し、同時に人手不足が深刻化し、政商たちが「外国人労働者」の受け入れビジネスで利益を稼ぐスキームが成立してしまっているのだ。 政府の目的とは、ビジネスでも利益でもない。経世済民である。国民が豊かに、安全に暮らせる国を作る。これが、経世済民の精神だ。 それに対し、自らのビジネスにおける利益最大化のみを目的に、政治を動かそうとする政商と呼ばれる連中がいる。代表が、竹中平蔵氏が代表取締役会長を務めるパソナ・グループだ。さらには、自らの出世のこと以外には眼中になく、ひたすら緊縮財政路線を推し進める「亡国の省庁」たる財務省。 日本は財務省と政商たちに都合が良い政策「のみ」が推進され、国民が貧困化すると同時に、移民国家への道をひた走っているのだ。 筆者は10月31日に小学館から刊行した「財務省が日本を滅ぼす」に、「2018年度は、診療報酬と介護報酬が同時に改定される、6年に一度の年となる。財務省は、もちろん診療・介護報酬の『同時引き下げ』を目論(もくろ)んでいる」 と、書いたのだが、予想通り来た。 10月25日の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)において、財務省は医療および介護サービスの公定価格を見直す報酬改定について、いずれも減額を要求してきたのである。すなわち、診療報酬と介護報酬の同時引き下げだ。 ちなみに、介護報酬引き下げの理由は、財務省に言わせると、「15年度の改定時に、基本報酬4・48パーセント削減という大幅なマイナス改訂をしたが、さらに削減が必要。介護サービス全体の利益率は、中小企業の平均よりも高く、おおむね良好な経営状況である」というものだった。生活習慣やルールの違いなどについて説明を聞く外国人職員ら =2017年5月31日、島根県出雲市 財務省の緊縮財政により、日本の総需要の不足は続き、デフレからの脱却が果たせないでいる。需要が拡大しないデフレ下では、中小企業の利益率は落ちていき、赤字企業が増えていかざるを得ない。介護産業は、15年度の介護報酬減額で利益が一気に減ったとはいえ、まだ「プラス」である。だから、さらなる減額、と財務省は言ってきたわけである。 財務省の緊縮財政路線でデフレが深刻化し、中小企業の利益が減った。結果、介護の利益率が中小企業平均を上回る状況になったため、デフレ化政策たる介護報酬引き下げが強行される。これが、現在の日本の姿だ。 現在、介護職の有効求人倍率は3倍を超え、産業としては医療や運送、土木・建設を上回り、日本で最も人手不足が深刻化している。理由は、単純に給料が安すぎるためだ。悲惨な介護職の平均給与 介護職の平均給与は、産業平均と比較し、女性が月額▲3万円、男性が月額▲10万円と、悲惨な状況に置かれている。その状況で、財務省は「利益率が高い」などと言いがかりをつけ、介護報酬を削ろうとしているのだ。 2016年度の介護関連企業の利益率にあたる収支差率は、全介護サービスで3・3パーセント。介護報酬減額(15年)前の2014年度の7・8パーセントから、大きく落ち込んだ。 この状況で、さらなる介護報酬削減に踏み切ると、どうなるか。高齢化で需要が増え続ける中、介護報酬が削減され、今度こそ介護は「赤字が常態化」する業界になる。そうなると、事業を継続する意味がなくなるため、日本は介護の供給能力が激減し、高齢者が介護サービスを受けられなくなる形の「介護亡国」に至る。(当然、日本のデフレ化も進む) あるいは、介護事業者がさらに給料を引き下げ、人材の流出(というか「逃亡」)が加速することになる。図 日本の介護福祉士登録者(左軸、人)と介護福祉士の従事率(右軸) 出典:厚生労働省 現在、介護福祉士として登録している「日本人」は140万人を超す。それにも関わらず、従事率は55%前後の横ばいで推移したままだ。 さらに不吉なことに、2017年から介護福祉士の国家試験への受験申込者数が急減している。社会福祉振興・試験センターによると16年度は16万919人だった受験者が、17年度は7万9113人と、半減してしまったとのことである。政府の介護報酬削減(2015年)で介護が儲からない産業と化し、就職すると「貧困化する」という現実を、介護産業への就職志望者たちが知ってしまったのではないか。 本来、介護産業における人手不足は、介護福祉士の資格を持っていながら、業界で働いていない「日本人」を呼び戻すことで埋めるべきだ。とはいえ、そのためには介護報酬を引き上げなければならない。すると、財務省の緊縮財政路線とぶつかる。「財務省主権国家」では、介護報酬の引き上げはできない。むしろ、介護報酬は引き下げられ続ける。すなわち、介護サービスの給料はさらに低下し、日本人が逃げる。「ならば、外国人を雇えばいいではないか」 ということで、17年11月に外国人技能実習生制度の、介護分野への適用につながるのだ。介護分野が技能実習生制度に解放されたことを受け、デイサービス大手のツクイが、ベトナムから年内に約150人を、学研ココファンも、2020年までにミャンマーや中国などから120人程度を受け入れる予定とのことである。もう後戻りできない そもそも「技能実習生」は外国人労働者ではない。先進国である日本が、アジア諸国から「実習生」を受け入れ、現場で働くことで技能を身に着けてもらう。通常3年、最長5年間の「実習」の終了後は帰国させ、祖国に貢献してもらう。これが技能実習生の考え方だ。 とはいえ、今回の外国人技能実習制度の介護への適用は、明らかに「人手不足を補うための外国人労働者受け入れ」である。何しろ、介護の有効求人倍率は3倍を超えるのだ。しかも、対人サービスとしては初めての技能実習生受け入れとなる。 介護分野における人手不足の原因は、政府が介護報酬削減を続けるため、十分な給与を支払えないことだ。解決策は、介護報酬拡大(および人件費に関する規制強化)であるにも関わらず、そこからは目をそらし、国民的な議論なしで対人サービス分野において「移民」の大々的な受け入れが始まる。わが国は、恐るべき国である。 ちなみに、「移民と外国人労働者は違う」といった詭弁(きべん)は通用しない。国連は、出生地あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人を「移民」と定義している。経済協力開発機構(OECD)の定義では「国内に1年以上滞在する外国人」が移民だ。1年以上、わが国に滞在する外国人は、全てが「移民」なのである。もちろん、介護分野に流入する技能実習生も、れっきとした移民になる。介護施設で利用者を介助する外国人スタッフ=2009年9月25日  現在の安倍政権は、恐るべき熱心さで日本の「移民国家化」を推進していっている。安倍総理は、保守派の政治家と思われている。普通、国民や国家を重要視する「保守派」の政治家は、移民受け入れに反対するはずなのだが、とんでもない。日本の憲政史上、安倍内閣ほど移民を受け入れた政権は存在しない。2012年には68万2千人だった日本の外国人雇用者数は、2016年に108万4千人に達した。4年間で、およそ1・6倍にまで増えたのだ。 特に、今後も人手不足が深刻化することが確実な介護分野において「移民」受け入れを決めてしまったことは、将来に重大な禍根を残す可能性が高い。 現在は、介護サービス業が試験的に技能実習生を受け入れているだけだが、今後も「外国人労働者」の需要が拡大すると、なし崩し的に規制緩和が進み、やがては「ヒトの売り買い」で儲けるパソナをはじめとする大手派遣業者ら「政商」が市場に参入してくることになる。政商たちの手により、世界中のあらゆる地域から、「安く働く外国人労働者」を日本の介護分野に大量供給されていく。 やがて、わが国の国民に、「介護? ああ、外国人が働く業界ね」といった認識が広まり、日本の介護サービスは移民無しでは成り立たない状況に至る。 そこまで行くと、もはやポイントオブノーリターン(後戻りできない地点)である。われわれは日本国の二千年を超す歴史上初めて「移民国家、日本」を将来世代に引き継ぐことになってしまうのだ。 将来の日本の教科書には、2017年11月1日の技能実習制度の介護分野への適用こそが、日本の本格的な移民国家化の始まりだったと書かれることになる。 本当に、それでいいのだろうか?

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    「移民拒否」の日本が介護危機から脱出する方法はこれしかない

    山脇康嗣(弁護士) 介護分野への外国人労働者の受け入れが拡大している。これまでは、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定(EPA)に基づく特例的な枠組みの中で、EPA介護福祉士しか受け入れてこなかった。しかし、今年からは、一定の要件を満たす外国人が、在留資格「介護」や在留資格「技能実習」で介護職に従事できることとなり、間口が一気に広がった。介護老人保健施設「ウェルケア悠」でアルバイトとして働いているインドネシア人留学生スリスティヨリニ・ノフイさん=2017年1月、奈良県大和郡山市 それぞれの制度の内容は、複雑でわかりにくいが、大きな視点でみると、「介護分野の人手不足対応」と「アジア健康構想の推進」という趣旨で統一的に理解できる。 EPA介護福祉士の枠組みは、一定の要件を満たすインドネシア、フィリピン、ベトナム国籍者が対象となる。在留資格「特定活動」により、最長で5年間、まずは日本の介護施設等で介護福祉士候補者として就労しながら、日本の介護福祉士の国家資格を取得するための研修を受ける。その後、介護福祉士の資格を取得できた場合には、引き続き日本で就労できるというものである。本来的には2国間の経済連携の強化を目的とし、各国300人という年度ごとの人数枠がある。 さらに、2016年入管法改正(今年9月施行)により、新たな在留資格「介護」が設けられた。これにより、日本に留学して介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士の資格を取得した外国人が、介護の業務に従事することが可能となった。介護分野における外国人留学生の活躍支援を直接の目的としている。この法改正を受け、介護福祉士志望の外国人留学生が、5年で30倍と急増している。  さらに、今年11月には、在留資格「技能実習」に介護職種が追加された。これにより、最長で5年間、技能実習生として、介護施設等においてOJTで介護に必要な技能を学ぶ。同一の作業の反復のみによって在留資格が習得できるものではないが、単純就労的な側面は否定できない。 現在、介護保険法によって、入居者3人に対して、1人の介護職員もしくは看護職員を配備しなければならないとされているが、実習開始後6カ月経過した時点から、実習生もこの職員配置基準にカウントできる。また、離職率が高い介護業界にあって、実習生は、制度上、少なくとも3年間は自己都合による転職がない。本来的には、技能実習制度は、人材育成を通じて開発途上地域等へ技能を移転し、国際協力を推進することを目的としているものの、これらの理由から介護事業者が実習生の受け入れに強い関心を寄せている。人手不足解消だけではない 在留資格「特定活動」(EPA介護福祉士)、在留資格「介護」および在留資格「技能実習」は、細かくみれば、それぞれ趣旨や目的が異なるようにも見えるが、大きな視点でみれば、「介護分野の人手不足対応」と、「アジア健康構想の推進」が目的であるということで共通している。以下、この視点で説明する。(iStock) まず、日本の高齢化社会の実情から考えると、2015年には、1947年~1949年生まれの団塊世代の全員が、前期高齢者(65~74歳)となった。2025年には、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類が経験したことのない超高齢社会に突入するといわれている。いわゆる2025年問題であり、医療・社会保障財政が破綻の危機を迎えるほか、厚生労働省の推計によれば、38万人の介護職員が不足し、このままだと多数の介護難民が発生すると見込まれている。現状でも、介護分野での人手不足は深刻であり、離職率も依然として高い(昨年度16・7%)。 前述した3つの枠組みでの外国人登用は、この人手不足への対応という側面がある。もちろん、日本人介護従事者の待遇改善による人材確保が優先であるが、それだけではとても間に合わず、外国人を受け入れざるを得ない状況なのだ。 また、アジア健康構想とは、日本が先行する介護の技術やシステム(地域包括ケアシステム、自立支援介護サービス)をアジアの諸地域に輸出するという政府が強く推進している官民連携のプロジェクトである。アジアにおいて、急速に進む高齢化に対応した健康長寿社会の実現を目指した取り組みであり、アジア地域全体の持続可能な経済成長を支援する目的がある。さらに、日本の介護事業者のアジア地域進出を後押しする目的がある。 アジア地域では急速に高齢化が進み、2035年には、アジア地域の高齢者率は約20%に達し、高齢者向け市場は約500兆円になると見込まれている。高齢者向け市場とは、医療・医薬産業、介護産業および生活産業を指す。 日本では、今後も高齢化率は上昇するものの、2025年以降は65歳以上の高齢者数の増加は頭打ちとなり、その後、高齢者数は横ばいとなり、2042年以降は減少に転じると推計されている。そのため、日本国内の高齢者向け市場も、ある時点以降は縮小傾向となり、アジア地域への事業進出による新たな市場開拓を検討せざるを得なくなる。また、日本の介護保険財政が逼迫(ひっぱく)しているため、事業者は、介護保険制度による介護報酬の増加を見込めない状況にある。よって、事業者は介護保険外での収入の確保(収益源の多角化)を図る必要があり、そのため、官民一体となって、日本の優れた介護システムをアジアに輸出し、アジア地域に介護産業等を興すことを狙いとしている。大きな問題は起きないのか? 日本の介護事業者がアジア地域に進出するためには、当然、日本式の介護システムを習得した現地人材の育成や、その人材の環流が必要不可欠である。こういった観点から、政府は、介護職への外国人受け入れの間口を広げている最中である。つまり、介護分野において、アジアから日本への留学生や技能実習生を増やし、母国帰国後に、現地施設での即戦力となってもらったり、経営に参画してもらったりすることを可能にするための法改正を行っているのである。介護福祉士の国家試験に向けた講習で、休憩中に記念写真を撮る外国人の候補生=2017年5月、大阪市 しかし、このように外国人人材の介護職への受け入れを推進していくことで問題は起きないのだろうか。 まず、EPA介護福祉士については、公益社団法人国際厚生事業団が唯一の受入調整機関として、厚生労働省等と連携しながら運営しており、人権侵害や事故発生等の大きな問題は起きていない。そのため、今年から、介護福祉士資格取得後は、施設内介護のみならず訪問介護に従事することも解禁された。介護福祉士候補者の介護福祉士国家試験の合格率も、基本的に上昇傾向にある(最新で49・8%)。 次に、在留資格「介護」は、介護に必要な知識を体系的に学ぶ養成施設を卒業し、介護福祉士国家試験に合格した者のみが対象となっており、一定程度以上の専門性が制度的に担保されている。さらに、日本の専門学校等に通学している間に、アルバイト活動を行えるため、それにより、言語化されない日本社会のルールや「空気」を読む力など日本独特の文化に触れる機会を得ることもできる。したがって、チーム作業である介護業務に従事しても、大きな問題は起きないのではないかと考えられる。 懸念が残るのは、技能実習制度による受け入れだが、2016年に新しく成立し、今年11月から施行された技能実習法が規定どおりに厳格に適用されるのであれば、大きな問題が起きる可能性は高くない。確かに、技能実習の3年目までは、自己都合による転職が基本的に認められておらず、その意味で完全な労使対等が実現しないから、人権侵害等の問題を引き起こす要因となりうる。 しかし、技能実習法は、そのような3年目までは完全な労使対等が実現しないことを前提としつつ、それでも問題が起きないようにするために、刑罰規定を含め、極めて厳格な規制を行っている。さらに、介護職種については、コミュニケーション能力が重要な対人サービスであり、また、事故が起きたときの被害が深刻であることから、他の職種に比べて、かなり厳しい上乗せ要件が規定されている。現実的な解決手段 具体的には、実習生に一定の日本語能力が求められているほか、実習生の受け入れを認められる機関もかなり限定されている。そのため、法律の規定どおりに制度が適用されるのであれば、これまでより問題は減少すると考えられる。介護現場で働く外国人の国家資格取得に向けた講座が開講し、講師の説明を受ける受講生=2017年4月、仙台市宮城野区 日本では、単純就労的(現業業務的)な分野での外国人労働者については、期間限定のローテーション型の受け入れしかありえないであろう。単純就労に従事する外国人を、広く一般に、定住を前提として受け入れるための制度的基盤は整っていない。それになにより、全面的な移民を解禁することに対して国民の合意も形成されていない。したがって、少なくとも現時点においては、単純就労に従事する外国人の定住を前提とした全面的な受け入れは無理である。技能実習制度を批判するのは簡単だが、他に方法がないのが現状だ。 技能実習法が規定する技能移転による国際協力を目的とすることと、適正な技能実習実施の結果として国内産業の人手不足の解消にもつながることは、必ずしも矛盾しない。日本の外国人政策として、単純就労従事者は原則として受け入れず、生産年齢人口の減少については、基本的には生産性の向上や女性・高齢者の活用での解決を目指す。しかし、それを前提としつつも、著しい少子高齢化の中で、国内産業の空洞化を防ぎ、国の経済力を全体として継続的に維持するためには、適正化を図った上での技能実習制度が現実として必要不可欠だ。ICT技術やロボットの活用を図るとしても、直ちに人手不足を解消するほどに生産性が向上するわけではないし、そもそも、それが適さない分野もある。技能実習制度を廃止することは、単純就労者を全面的に受け入れることにつながるが、そのような国民的コンセンサスはできていないし、今後も無理であろう。 これまで述べたとおり、介護分野における喫緊の人手不足に対応する必要がある。また、一定時点を越えると日本国内の介護市場が縮小してしまうことも懸念される。さらに、事業者が介護保険報酬だけに頼らず、収益源を多角化するために、官民連携してアジア健康構想を推進する必要がある。それを実現するためには、介護分野の現地人材育成と環流の促進が不可欠である。外国人にとっても、自国で介護産業に就くことが可能になり、日本での学習、技能実習および就労が、キャリア形成の柱となる。さらに、アジア地域において関連医療や生活産業が興ることで、高齢化対応の経済・産業構造になり、国際貢献にも資する。 したがって、日本は、入管法や技能実習法を厳格に適用しつつ、問題が起きないか細心の注意を払いながら、介護分野への外国人労働者の受け入れを、慎重かつ確実に進めていくほかないといえる。

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    K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」

     安倍政権が推進する「移民受け入れ」政策は、はたして日本の国益に繋がるのか。40年近く日本で暮らす弁護士でタレントのケント・ギルバート氏(64)が、「在日外国人」の立場からあえて移民問題に斬り込む。* * * 私は移民の受け入れを頭ごなしに否定するつもりはない。むしろ、受け入れ態勢の拡充や、法整備を前提とした議論は大いにすべきだと考えている。ちなみに私は人生の半分以上を日本で過ごしてきたが、帰化はしていない。在留資格は「定住者」で、日本で働くために5年に1度、就労ビザを更新している。 だが、日本が現状のまま無条件に移民を受け入れることには反対だ。なぜなら、受け入れ側も、日本に来る外国人も共に不幸になることが目に見えているからだ。(iStock) 安倍政権は少子高齢化による労働力不足を補うため、介護や建設などを受け持つ「単純外国人労働者」や、高い技術や知識を持った「高度外国人人材」の受け入れを進める方針とされる。 しかし、安直な外国人労働者の受け入れは日本社会を大混乱に陥れかねない。 まず懸念されるのは治安の悪化だ。例えば第二次大戦後、トルコ系を中心に多数の外国人労働者を受け入れたドイツでは、経済成長が止まっても労働者が帰国せず、二世、三世として住み着いた。技術を持たない彼らの暮らしは貧しく、貧困が犯罪の温床となり、治安が急激に悪化した。 日本には開発途上国の外国人が農業や建設業などで働きながら技術を学ぶ「技能実習」制度があるが、これを利用して来日した外国人の失踪者は2015年に5800人を超え、過去最多を記録した。国別では中国が3116人で最も多く、2011年からの5年間で失踪した中国人実習生は累計で1万580人に達した。 失踪者の多くが不法滞在となり、犯罪予備軍になるとの指摘もある。外国人労働者の受け入れが増加すれば、こうしたリスクが増す。 治安面だけでない。安価な労働力の増加は自国民の労働賃金を押し下げ、暮らしの悪化や景気低迷を招く。ゆえに現在、移民の多い米国や欧州で「反移民」「反外国人労働者」が声高に叫ばれているのだ。 一方で、政府は高度外国人人材が永住許可を得るため必要な在留期間を現行の5年から大幅に短縮する「日本版高度外国人材グリーンカード」構想を掲げる。だが永住権を取得して日本に住み続ける外国人が増えれば、彼らの社会的影響力が増し、やがて参政権の付与を求める声が出てくるのは間違いない。これは極めて危険な兆候だ。子ども手当554人分申請子ども手当554人分申請 歴史的に民族間の争いや宗教対立と、ほぼ無縁だった日本では、「性善説」を前提に法律や制度を制定し、権利の乱用や悪用に注意を払わない傾向がある。一例をあげると、2010年に当時の民主党政権が子ども手当を導入した際は収入制限や人数制限がなく、海外に子供がいる在日外国人も申請できた。 すると兵庫県尼崎市に住む韓国人男性が、「妻の母国であるタイに養子縁組した子供がいるから」と、554人分の子ども手当を申請しようとした。さすがに却下されたが、これが子供5人分程度なら問題なく受理されたはずだ。 また、日本の難民認定制度は2010年3月に運用が変わり、難民申請から半年経てば国内で就労できるようになった。認定まで申請から半年~1年ほどかかるが、不認定となれば再申請でき、その間はずっと働き続けることができる。 このため就労目的の偽装申請が急増し、制度が改正された2010年に1202人だった申請数は右肩上がりで増え続けた。2016年は統計開始から初めて1万人の大台を超えたという。 このように合法であれば堂々と権利を行使するのが世界の常識であり、“みんな善い行いをするはずだ”との性善説は通用しない。 特定の地域に言葉や常識の通じない異民族が集まってコミュニティを作ると、密入国者や不法滞在者が群れを成し、地元の警察官すら近寄れない無法地帯となる。そんな地域に住む外国人に参政権を与えたら、日本国内に外国人自治区を設けるようなものだ。 こんな愚策に賛成するのはよほどの愚か者か、日本を壊したい勢力の回し者であり、参政権の付与は日本に忠誠を誓って帰化した人間に限定すべきである。異民族との交流が苦手な日本では文化や宗教面での衝突も避けがたい。 例えばイスラム教徒は一日に複数回の礼拝のほか、豚肉や飲酒の禁止など生活習慣上の厳しい戒律が多い。彼らが、「受け入れ側の受忍は当然の義務」だと主張すれば、日本社会に溶け込むのは容易でない。(iStock) もちろん、そうした点は相互理解で補えるし、イスラム教自体は平和な宗教だが、日本に住むイスラム教徒がシャリーア(※注)と呼ばれる厳格な法律を貫けば、日本人や他の在日外国人との間に深刻な溝を生み出すことが懸念される。(※注/イスラム教徒の実生活を宗教的に規制する法。「イスラーム法」とも呼ばれる。礼拝や断食を定めるほか、軽犯罪には鞭打ち、窃盗には手首切断の身体刑を科すなど、厳格な刑罰があることでも知られる。) 移民を認める前提条件は、彼らがその国の法律や習慣を尊重し遵守することだ。これは移民を考える上で非常に大きなポイントである。【PROFILE】ケント・ギルバート●1952年、米国アイダホ州生まれ。ブリガム・ヤング大学在学中に19歳で初来日。1980年、大学院を修了し、法学博士号と経営学修士号、カリフォルニア州弁護士資格を取得。東京の弁護士事務所に就職し、法律コンサルタント、マルチタレントとして活躍。『日本覚醒』(宝島社刊)、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社刊)、『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱へ捨てろ!』(祥伝社刊)など著書多数。関連記事■ 中国人がスペインで飲食店や風俗店買収し始め地元民に警戒心■ 外国人参政権 基地抱える等安全保障が絡む自治体は議論必要■ 在日朝鮮人・韓国人へのヘイトスピーチについて石原氏の見解■ 外国人労働者と労働者不足に悩む国同士はWin-Winの関係■ 移民受け入れなら東京五輪後失職外国人を税金で面倒見る必要

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    自由が人・モノ・カネをもたらす象徴的都市・バンクーバー

     経営コンサルタントの大前研一氏が主宰する企業経営者向けの勉強会「向研会」では、毎年秋に1週間ほど海外への研修旅行を行っている。今年は、成長著しいアメリカ西海岸北部のシアトルとカナダ・バンクーバーを訪れた。大前氏が、バンクーバーの強みについて解説する。それは、米・トランプ大統領の方針により、アメリカ人の雇用を増やすため、専門技能を持つ外国人向け就労ビザ「H-1B」の審査が厳格化され、海外の人材がアメリカで働けない事態になっている件とかかわっている。* * * もともと私がバンクーバーを視察先に選んだのは、日本の経営者たちに自然が豊かなカナダの魅力を知ってもらいたいと思ったからだが、今はこの国の人材の豊かさが、トランプ政権の移民対策と人手不足に悩むIT企業にとって大きなメリットになっているのだ。 バンクーバーでは、いわば無限に人が採用できる。そのため、マイクロソフトは3000人の人材プールをバンクーバーに作ると発表しているし、(シアトルに本拠を構える)アマゾンが最大5万人を雇用するとされる第二本社の候補地としても取り沙汰されている。カナダ・バンクーバー(iStock) カナダのトルドー首相は、ツイッターで「迫害、戦争、テロから避難してきた人々へ。信仰にかかわらず、カナダはあなた方を歓迎します。多様性は我が国の強みなのです」というメッセージを投稿し、難民・移民を歓迎する姿勢を打ち出した。「カナダは違いがあって“も”ではなく、違いがある“からこそ”強くあることを学びました」とも述べている。実際、カナダは毎年25万人以上の移民を受け入れ、国内の多様性を生かしたイノベーションによってグローバル化を推し進めている。 その象徴的な都市がバンクーバーである。ここは、シアトルと同じく、住環境が非常に良い。ダウンタウンから海と山が見え、鮭をはじめとする魚介類は旨いし、夏はウォータースポーツやトレッキング、冬はスキーが楽しめる。英誌『エコノミスト』の調査部門が発表した「世界で最も住みやすい都市ランキング2017」では、オーストラリアのメルボルンとオーストリアのウィーンに次ぎ、僅差で3位に選ばれている。 地元の広報担当者に同じ移民国家であるアメリカとの違いを聞くと、こんな答えが返ってきた。「アメリカに来た人たちは、みんな一刻も早く“アメリカ人になろう”とする。社会がアメリカ人であることを要求するからだ。しかし、カナダは“カナダ人になる”必要がない。それぞれの国の人のままでかまわない。だから精神的にものすごく楽で、居心地が良い」 これは一面で真実であり、カナダの素晴らしさである。実際、バンクーバー都市圏の人口約270万人のうち、中国人が約50万人、インド人が約20万人もいる。 考えてみれば、世界には個人にカネがあっても自由のない国がたくさんある。中国の金持ちは1兆円持っていても自由に使えない。ロシアはプーチン大統領自身が海外資産を凍結されている。中東の富豪も国内に自由はない。 そんな中でカナダには自由があり、広大な土地があり、チャンスがある。専門的なスキルを持っていたり、カナダで熟練を要する職業の経験が1年以上あって公用語(英語かフランス語)の十分な能力を有していたりすれば、永住権(国籍)も取得できる。だから世界中から優秀な人材と富が集まるのだ。つまり「自由」が人・モノ・カネをもたらすのである。これが21世紀の繁栄の方程式だ。 ところが、日本の政府はそうした世界の現実から目をそむけ、移民を認めないなど(実際には2016年末現在の在留外国人数は238万人余りに達し、過去最高になっている)制度が閉鎖的で、海外から人・モノ・カネが集まらない。「教育無償化」や「人づくり革命」などという日本人のみを対象とした内向きで無意味な政策ばかり打ち出している。それこそ「国難」にほかならない、と痛感した視察旅行だった。関連記事■ 米・シアトルが繁栄する理由を大前研一氏が解説■ クラウド活用で間接部門のコストは億単位で即座に削減できる■ 電子マネー先進国中国のモバイル決済革命が世界を席巻する日■ 中国人のカナダ移民で仲介業者が虚偽 800人が資格取消か■ セミ アメリカでは最も嫌われる虫の一つで「ただの騒音源」

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    理想だけでは語れない難民問題、日本はなぜ慎重であるべきなのか

    の混乱を招いている。内容、手法共にトランプ政権を象徴するものである。 ただ、問題含みの措置とはいえ、移民・難民の流入を懸念するアメリカ人も存在する。テロへの懸念はいまでも根強い。ロイター/イプソスがアメリカで行なった世論調査では49%が大統領令を支持すると答えた。調査によって差はあるが、無視できない世論の動向である。 理想主義と現実主義、グローバリズムとナショナリズム。相反するこれらの要素が複雑に絡み合うのが難民・移民をめぐる問題である。いまや国内、国際政治を揺るがすテーマでもある。 世界的な規模で展開している難民問題だが、先進国圏ではEUの苦難が際立っている。欧州に活路を見出そうと中東やアフリカから難民・移民が地中海を船で渡っている。難民を含めた多様な背景の移動者が流れ込む「混在移動」の典型である。 概して密航船の衛生状況は悪く、船の転覆は後を絶たない。密航者の苦境に胸を痛めない者はいないだろう。 EUでの難民申請者は15年だけで128万人に上った。EUの人口は約5億人だから、比率でいえば1%にも満たない。だが、流入してくるのは文化的、宗教的背景の異なる人たちである。お金を落として帰ってくれる旅行者とは異なり、難民は社会の負担となりかねない。やはり重たい数である。 15年9月、事態は大きく展開する。トルコの海岸に横たわるシリア人の幼児の溺死遺体に欧州は動かされた。16万人の難民申請者をEU加盟国間で分担することも決まった。道徳感の強いドイツ、そして欧州委員会が牽引力となった。 そうしたなか、同年11月、フランスのパリで自爆と銃の乱射によるテロ事件が発生する。犠牲者は130人。犯人のうち少なくとも2人は密航ルートを使ってギリシャに入り、パリまでやって来た。欧州で人びとの善意が高まっていたそのとき、テロの計画は進んでいた。 幼児の溺死事件を機にEUは迅速に対応したが、苦悩を背負うことになる。16万人の分担策はEU加盟国を分断させた。反難民・反移民感情が高まり、反EU勢力と化して既存の政治秩序を揺るがしている。「難民に厳しい国」を演出する国々 EU域内では難民受け入れの厳格化が進んでいる。オーストリアは難民申請の受付数に制限を設けた。難民に開放的だったスウェーデンでも難民認定者の権利や恩恵(家族の呼び寄せなど)を縮小している。どの国も「難民に厳しい国」を演出しようとしているのである。 16年3月、EUはトルコと密航者の送還について協定を結んだ。これによってトルコ経由でEUに流入する者の数は減少した。他方で、バルカン半島のルートが閉鎖されているため、数万人の難民申請者がギリシャで滞留している。 すでに285万人ものシリア難民を抱えるトルコは、EUから見れば、難民を手前で堰き止める重要な役割を担う国である。EUが求めた送還協定はその延長線上にある。しかし、汚れ仕事をトルコに任せ、残務処理をギリシャに押し付けた感は否めない。 トルコからの人口流入は抑えられたものの、リビアからイタリアに流入する密航者は後を絶たない。トルコ・イズミルを歩くシリア人とみられる女性と子ども(共同) EUの対応は苦悩に満ちている。難民問題を解決しようと積極的な姿勢を見せたものの、それを上回る勢いで密航者が到達し続ける。理想を裏切る形でさまざまな事件が発生する。人びとの善意は限界を迎えてしまう。 EUに比べれば規模は小さいが、日本も難民問題とは無関係ではない。 日本での難民申請者数は16年、1万901人に上った(17年2月10日付、法務省発表資料)。難民申請者は2000年には216人だったのが、10年には1202人、13年には3260人、14年には5000人、15年は7586人に増えている。 難民申請者が増加する一方で、日本の難民行政は「閉鎖的」といわれる。数だけを見ればそう指摘されても仕方がない。16年は1万901人の申請者のうち難民と認定されたのは28人。認定率にすれば0・26%である。実際にはこれに人道配慮の97人が加わるので、合計125人が保護を認められている。ただ、人道配慮を合わせても申請者全体の1・15%にすぎない。 その一方で、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対する日本の貢献は小さくない。15年の拠出額は1・73億ドル(1ドル=120円の換算で208億円)に上り、アメリカ、イギリス、EUに次いで4位にある。 難民や国内避難民を抱えた国々に対する日本の支援も手厚い。日本人人質事件の際に注目されたが、たとえば15年1月、安倍晋三首相は中東の人道支援に25億ドルの拠出(その9割近くは円借款)を表明している。 対外的には難民・避難民支援に積極的に貢献しているものの、日本国内での難民受け入れは消極的と映ってしまう。ただし、この点は冷静に考察する必要がある。 日本国内では法務省入国管理局が難民認定業務を所管する。「出入国管理及び難民認定法」に基づいて法務省が難民認定の申請を受け、「難民の地位に関する条約」の定義に照らし合わせて申請者を審査し、認定の是非を判定する。 不認定となった場合、申請者は異議を申し立てることが可能である。この場合、難民審査参与員が中立的な立場で異議を審査する。参与員は法務大臣に意見書を提出するが、意見書に拘束力はなく、最終的には法務省が決定を下す。 筆者は13年4月から15年3月までの2年間、難民審査参与員を務めた。かつては日本の難民行政の在り方を批判的に見ていたこともある。しかし、参与員としての体験や、欧州で起きた一連の出来事は、この問題を冷静に見詰める契機となった。イスラム教徒を受け入れるか否か 現在の難民認定制度は事実上の移民制度となっている。申請をすれば在留資格(名目は「特定活動」)と就労資格(申請の6カ月後)が得られる仕組みである。異議審査では1次審査で漏れた難民性の低い、あるいは低いと見なされた申請者が審査を求めてくる。申請者の多くが異議申し立てを日本での在留延長の手段と捉えているようだった。現に制度上、それが可能なのである。 面談した限りでは、申請者は概してサバイバル能力が高かった。「移民」としての資質は申し分ない。彼らも生き残りを懸けている。参与員には保秘義務があるので多くは語れないが、支障のない範囲で言及するなら、アフリカの某国からの申請者に多く見られたのは、「伝統的なチーフを継承することになったが辞退した。毒殺される危険があるので保護してほしい」という主張だった。興味深いことに、この物語にはいくつかのバリエーションが存在した。 難民性の低い申請者が多く押し寄せるのだから、最終的な難民認定率が低くなるのは当然の結果である。偽装難民の問題を直視せずに、認定率の数値だけで難民行政の現状を議論してもあまり意味がない。 認定条件の厳しさを指摘する意見もある。たしかに諸外国に比べれば厳格に映る部分はある。しかし、それゆえに「難民に厳しい国」を世界に示せるならば、日本で難民申請をする動機を抑制することにもつながる。結果的に難民申請者の流入圧力や、流入がもたらす諸々の問題を抑止していると見ることもできる。 日本社会の安寧を考えれば、慎重な難民行政はむしろ望ましいのではなかろうか。葛藤は付きまとうが、この問題に真剣に向き合えば向き合うほど、そう考えざるをえないのである。 難民問題は世界規模の現象である。15年の時点で世界には6000万人に上る難民・国内避難民が存在する。1548万人の難民と500万人のパレスチナ難民、さらには4080万人の国内避難民を合わせた数である。12年以降、世界の難民の数は増加傾向にある。「アラブの春」後のイスラム圏の混乱と軌を一にする動きである。 事実、難民の発生国の多くがイスラム圏に集中している。いまの時代、難民問題はイスラム教徒を受け入れるか否かという問題と重なり合う。 全体を俯瞰すれば、イスラム圏の難民に限らず、世界は大移動時代にある。むろん有史以来、人類は移動によって歴史をつくってきたわけだから、現代に限った現象ではない。ただ、グローバル化とともに人の移動が増幅し、異文化の流入を人びとが肌で感じるようになった現在、さまざまな軋轢が生じている。シリアとの国境に近いトルコ南部、スルチにある難民キャンプでテントの前に座るシリア・クルド人の親子=1月27日 難民現象は縦横無尽に展開する人口移動の一部である。人の移動は継続的な現象であり、流入圧力を抑制することは容易ではない。難民問題を解決しようと受け入れを強化したり、その制度を整備したりすることは、新たな難民を引き寄せる要因となってしまう。根本原因の解決が叫ばれるものの、難民の押し出し要因となる紛争や貧困を根絶することは難しい。 解決が難しく、一面的な正義が通用しないのが難民問題である。安易に唱えられることが多いが、難民の受け入れは付随する種々の問題を招き入れることでもある。いくつか挙げてみたい。 まずは治安の悪化である。繰り返すが、「難民=テロリスト」ではない。社会に危険を及ぼす人物が難民のなかに混入してしまうことが問題なのである。 EUでは密航者や難民申請者のなかに「イスラム国」と接点をもつ者や戦争犯罪者が紛れ込んでいた事例がある(筆者自身、アフリカの難民定住地で元戦闘員の難民に遭遇したことがある)。また、難民キャンプの軍事化や「難民戦士」の問題は古くから指摘されてきた。テロリストや戦闘員のレベルでなくとも、一般犯罪が一定の割合で発生するのも事実である。状況によっては暴徒も生まれる。理念的な美しさの弊害 難民問題は「非伝統的安全保障」の課題ともいわれるが、弾道ミサイルに対処するのとは異なり、武力行使は許されない。人間が対象となるだけに、対応はきわめて複雑なものとなる。 国民の税負担や行政(とくに自治体)の業務負担も考えなくてはならない。先進国では難民を劣悪な状況に留めおくことは非倫理的と認識される。しかし、自国民と同等の生活条件を与えるとなると、住居の供給、言語習得と教育機会の提供、雇用の創出、医療へのアクセスを含めた社会保障など、さまざまな支援や保障が必要となる。先進国となれば外からの援助は期待できない。 貧困にあえぐ自国民の傍らで、難民が手厚い支援を受けるという逆転現象もときどき起きる。難民のなかでも社会関係資本をもつ者の場合、受け入れ側の国民よりもより良い生活条件を手にすることがある。 難民が労働力になることを期待する向きもある。これについては、経済が好調なドイツでも15年以降に来た難民の雇用率は13%に留まるという統計がある(16年11月16日付ロイター)。無理もない結果だろう。ドイツ語の習得は簡単ではない。そもそも同じアジアの人間でも、アフガニスタンの下層の少年とインドの工科大学を卒業した者では資質が異なる。移民ならば相応のルートで適切な人材を調達すべきだった。 人口減少を埋め合わせるために難民の受け入れを唱える論者もいる。ただ、少なくとも日本にとっては、社会制度や技術のイノベーションを通じた内側からの対応が最適解と考えられる。 さらに、難民や移民との関係で問題となるのが社会の景色が変わることである。多文化主義は美しい理念として時に無邪気に語られる。だが、多文化主義は自国の文化と社会が変容を強いられることを意味しかねない。つまりは「庇を貸して母屋を取られる」のである。 中長期的には貧困層が生まれたり、「並立(パラレル)社会」が現れたりすることもある。テロを含めた治安悪化は、移民・難民の2世たちが不満分子となった場合にも起こりうる。ベルギーの首都ブリュッセルにあるモレンベーク地区が有名だが、ひとたび並立社会ができてしまうと解体することは難しく、社会問題の温床となってしまう。人の移動の影響は長いスパンで見なければならない。 ちなみに、2070年以降、世界の宗教別の人口ではイスラム教徒がキリスト教徒を追い抜くとの予測がある(ピュー研究所の予測)。アメリカ国勢調査局によると、2044年にはアメリカの非白人人口(ヒスパニックを含む)は白人人口を超えると見られる。ベルリンの首相府前に到着した難民を乗せたバスを取り囲む、報道陣と受け入れ反対派のデモ隊ら=1月14日、(ロイター) 欧米諸国で見られる反難民・反移民の動きの根底には、肌で感じる治安悪化のみならず、変わりゆく社会に対する不安があるのだと思われる。事実、イギリス王立国際問題研究所が欧州10カ国で行なった調査(17年2月7日発表)でも、イスラム諸国からのすべてのさらなる移民の停止に55%が賛意を示した。慎重な世論が読み取れる。 ナショナリズムは悪として非難されがちだが、21世紀のナショナリズムには、行きすぎたグローバリズムとグローバル化から既存の社会秩序を守ろうとする力学がある。善悪はともかく、越境者に対する人びとの否定的な感情もその文脈で捉えられる。 難民保護の理念は美しい。迫害を受け、母国を逃れた人を別の国家がかくまい、保護を与える。シンプルで力強い理念である。だが、理念的な美しさは、宗教にも似て教条主義を生みやすい。 難民問題は夢想的に論じられがちである。支援者が夢を語るのは構わない。ただ、国家として現実を見据えた方策がなければ、国民を軋轢や危険にさらしてしまう。難民受け入れよりも効果的な支援 国家が入国管理という機能を果たしているからこそ、難民保護の運動論は成立する。EUの事例が示すように、国境管理が崩れ、無尽蔵に人が流入したとき、綺麗な論理は破綻してしまう。 とはいえ、難民のための多国間協調も必要とされている。私たちは難民問題とどう向き合えばよいのか。 日本政府は二国間の援助に加えて、UNHCRに多額の資金を拠出している。国内で難民を受け入れるよりも効果的な支援だろう。日本の財政状況は厳しい。そのなかでの貴重な貢献である。 また、難民認定制度とは別に年間20人程度、第三国定住難民の受け入れを実施している。シリア難民についても国費留学生制度や技術協力の枠内での受け入れが予定されている(16年5月に表明された5年間で150人に加え、17年2月3日付『朝日新聞』によれば、5年間で300人規模の留学生と家族を受け入れるとのこと)。 日本の状況や立ち位置に鑑みれば、十分すぎる支援といえないだろうか。 安易な人道主義は禁物である。難民問題に甘い夢を持ち込めないことはEU諸国が示している。他国の経験を他山の石とすべきである。【補記】この論考から「イスラム嫌い」を疑われかねないが、筆者はむしろイスラム圏の文化に深い愛着を抱く者である。ただし、異なる文化への愛着は、自身が属する文化圏の溶解を認めるものではない。はかた・けい 成蹊大学教授。1970年、富山県生まれ。フランス国立ナンシー第二大学より公法学博士(国際公法専攻)の学位取得。外務省勤務を経て、2005年より成蹊大学文学部国際文化学科にて教鞭を執る。13年から15年まで法務省難民審査参与員。著書に『難民問題―イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題』(中央公論新社)、『国内避難民の国際的保護―越境する人道行動の可能性と限界』(勁草書房)など。関連記事■ なぜ、イスラム系のテロ組織が多いのか―テロにまつわる4つの疑問■ 難民・テロ・甦る国境……ヨーロッパから民主主義が消える?■ 福田充 X国のテロから首相を守るには

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    中国はきっとほくそ笑む! 日本は移民国家「豪州の失敗」に学べ

    山岡鉄秀(AJCN代表) 経済大国の日本だが、国民一人あたり名目GDPでみると、IMF(米ドルベース、2015年)の統計によれば、世界26位($32,478.90)で、決して効率は良くない。一方、AJCNの拠点である豪州は10位($51,180.95)で、日本よりも2万ドル近く高い。この差は大きい。 この豪州の豊かさは、間違いなく移民に支えられている。今や人口の28%が海外生まれとされ、4人に1人以上が海外からの移民ということになる。 文化らしい文化がなかった豪州だが、移民が持ち込んださまざまな文化が融合して、格段に厚みが出てきた。もともとイギリス系で、料理らしい料理もなかったが、ここ10年ほどで豪州の食材を日本料理やフレンチのフュージョンで仕上げる「モダン・オーストラリアン」というカテゴリーが登場した。マスターシェフという料理番組がヒットするなど、まさに隔世の感がある。 移民国家の豪州が、同じく移民国家の米国ほど荒れないのは、豪州が巨大な島国で、米国にとってのメキシコのように「国境を接する国」がないことと、移民を基本的に技能ベースで入れてきたからだ。ボートで難民が押し寄せても、南太平洋の島々に収容し、本土への上陸を阻止している。 国力増強に貢献した移民政策だが、もちろんマイナス面もある。日本人はそこから早急に学ばなくてはならない。 まず肝に銘ずるべきは、特定の民族の移民数が一定数(臨界点)を越えた時、まるで自国にいるような傍若無人な態度に出ることがある、ということだ。 その典型的な例が、我々AJCNが最終的に阻止した、ストラスフィールド市における中韓反日団体による慰安婦像設置活動だ。ここでのポイントは、市議会は本来、そのような申請はポリシー違反を理由に即刻却下できたはずなのに、逡巡としていたずらに時間を浪費し、最終的に却下するのに1年半近くを要したことである。 いったいなぜか。それは市議たちが、合わせて住民の30%に達する中韓系住民の不評を買い、次の選挙で落選の憂き目に遭うことを恐れたからだ。市長を含めて7人の市議たち(市長は市議たちの持ち回り)のうち、常識に照らして慰安婦像に反対したのは3人だけだった。市長を含む後の4人は、明らかに中韓住民の顔色を窺っていた。我々の戦いは、いかに「良識の輪」を広げていくかだった。最後は住民の意識調査まで行われた。中国人経営者に懇願した商店街の会長 このように、慰安婦像設置が市の記念碑ポリシーに反し、豪州の多文化主義に反していても「有権者の横暴」の前にあっさり折れてしまったのである。我々が「住民の意思」として反対活動を展開しなければ、いとも簡単に建ってしまっていただろう。我々が学んだ最大の教訓は、民主主義社会とは決して自動的に良識に添った判断が享受される社会ではなく、正義を実現するために戦う手段が用意されているに過ぎない、ということだ。戦わずして正義は守れない。力なくして正義は実現できない。いま、日本人にその覚悟はあるか。 私がよく行く東京・下町の歴史ある商店街でも、歩いているとやたらと中国語が耳に飛び込んでくるようになった。廃業する商店が後を絶たず、家主が中国人に貸し出してしまうからだ。(写真はイメージです) これはその商店街の床屋で聞いた話だが、ある日、商店街会の会長が、中国人が経営する店に「会費を払って会員になって欲しい」と頼みにいった。しかし、応じた中国人は「我々は中華系住民のために商売をしているのだから、日本人の会に入る必要はない」と突っぱねてきたという。その後、この会長はどういう対応をしただろうか。なんと、「では会費を安くするから入ってくれませんか?」と頼みにいったという。もちろん、これも蹴られた。会長さんは困って区役所に相談に行ったが、「税金ではないので、強制的に徴収できません」と言われるだけだったらしい。この逸話はまさに、日本人が移民をコントロールする能力が完全に欠如した証左と言っても過言ではないだろう。 私は床屋の主に言った。「会長さんに伝えてください。懇願したら逆効果です。媚びる弱者と見下されるだけです。中国人の代表を訪ねてこう言うのです。この会費には街灯代が含まれている。払わないなら、君たちの店の前にある街灯からは電球を外すが、それでもいいかと」。もちろん、本当に外すつもりで臨まなければならない。また、区議会も「商店街で店舗を賃貸に出すときは、商店街会費も家賃とともに徴収し、納入しなくてはならない」という条例を作ってしまえばよい。 すぐに頭を下げてしまう日本人は、数で劣勢になった途端に簡単に凌駕されてしまうだろう。外国人に地方参政権など与えようものならどうなるだろうか。移民国家の豪州でさえ、帰化しなければ選挙権も被選挙権も与えられないのに、長く住んでいるという理由だけで参政権を与える愚かな国は、世界を見渡しても日本ぐらいである。豪州を震撼させた中国亡命外交官の「告白」 東京都江戸川区にインド人が多く住むことは有名だが、トラブルが起きた話は聞いていない。なぜだろうか。ひとつは、住民の多くがIT技術者などの高度人材(高額所得者)であることだが、基本的に「親日的で融和的」だからだ。 たとえ、高度人材が有用であっても「親日的で融和的」という条件を絶対に外してはならない。「反日を国是とする国」からの移民には永住権を出さないことにしても、人種差別にはならない。のっぴきならない安全保障上の問題だからである。 そのことを痛切に教えてくれたのが、2005年に豪州に政治亡命した元中国外交官の陳用林だ。 父親を無実の罪により中国共産党の拷問で亡くした陳は、天安門広場の虐殺を目の前で目撃して衝撃を受けたそうだが、それでもいつしか外交官として中共政府の「先兵」となっていた。命ぜられるままに、法輪功信者の弾圧、反政府勢力の監視、中共にとっての危険人物の拉致などに携わっていた陳は、ついに良心の呵責に耐えかねて豪州政府に政治亡命を申請した。 その際、陳の「告白」は豪州を震撼させた。陳によれば、その時点で豪州に1千人の中共スパイが潜伏し、軍事、科学、経済分野などのあらゆる情報を盗んでいるとのことだった。 スパイには2種類ある。現地にダミー会社を作り、そこにビジネスマンとして工作員を送り込んだり、研究機関に研究者として送り込むケース。そして、もうひとつは現地に住んでいる中国人や留学生を勧誘して「エージェント」に仕立て上げるケースだ。エージェントの勧誘には金とハニートラップが使用され、中央政府を含むあらゆる個所にスパイ網が張り巡らされている。その他にも、現地に住む中国人が自由主義に目覚め、中共に批判的にならないように、ありとあらゆる洗脳工作がなされるという。 陳は最近もテレビのインタビューに応じ、「この10年間でスパイの数は相当増加しているはずだ」と述べている。 最重要標的の米国や、その同盟国の日本にははるかに多くのスパイが入り込んでいると陳は言う。中華系団体(留学生を含む)の代表は、ほぼ間違いなく中共政府に繋がっている。政府やマスコミなど、あらゆる主要機関にすでにスパイ網が張り巡らされていると考えて間違いない。米国のフランクリン・ルーズベルト政権に、驚くほど多くのソ連のスパイが入り込んで日米開戦を工作していた事実が思い起こされる。反日工作員に城門を開ける愚 私が最も衝撃を受けたのは、陳の政治亡命申請に対し、豪州政府が当初取った冷淡な態度だった。わざわざ中国総領事館に陳の個人情報を照会し、実質的に陳の亡命をリークする有様だった。なぜそんなことをしたのか。答えは「経済」である。2000年のシドニーオリンピック後、豪州は資源を爆買いする中国への依存を高める一方だった。政治的な問題で、お得意様の中国の機嫌を損ねたくなかったのである。 日ごろは高邁な理想を掲げていても、現実には経済最優先で、お得意様がどんなに酷い人権侵害を繰り広げていたとしても、結局は二の次、三の次なのである。昨年は北の要衝ダーウィン港を人民解放軍と密接に繋がる中国企業に99年間リースするという大失態までやらかした。もちろん、州政府に対する工作がなされていたことは疑う余地がない。「極めて愚かだ」と陳は嘆く。 去る1月17日、法務省が外国人の永住許可について、高度な能力を持つ人材に限って許可申請に必要な在留期間を最短で「1年」に短縮する方針を発表した。これも、経済界からの要請によるものだろう。 私はグローバル企業勤務が長いので、国際的観点から、いかに日本で人材が枯渇しているかよく知っている。そして前述したように、私は移民の効果、特に高度人材の有効性をよく認識している。しかし、「親日的で融和的」という大前提を忘れれば、わざわざ反日工作員に城門を開ける愚を犯すことになる。すでに相当浸食されていると思われる日本にとどめを刺す「ダメ押し」となるだろう。戦わずして占領できる可能性がにわかに高まり、ほくそ笑んでいるのは間違いない。そして、日本の滅亡は、皮肉なことに長期安定保守政権である第二次安倍内閣が決定づけたと歴史に記憶されることになるだろう。 陳用林は今もシドニーで中共の監視下に置かれながら生きている。彼の生命を賭したメッセージを受け取れるかどうかに、日本の命運がかかっていると言っても過言ではない。

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    矛盾だらけの外国人労働者受け入れで浮かぶ「日本沈没」シナリオ

    加谷珪一(経済評論家) 日本の世論は、外国人労働者の受け入れに消極的といわれる。日本は外国人労働者を受けれていない国だと思っている人も多いが、それは幻想である。現実には、多数の外国人労働者がすでに国内で働いている。  厚生労働省が1月に発表した2016年末の外国人労働者数は前年同月比19.4%増の108万3769人となり、4年連続で過去最高を記録した。成田空港に到着した日本で介護福祉士と看護師の資格取得を目指す外国人 受け入れに積極的だったドイツや英国では、定義にもよるが300万人以上の外国人労働者が働いている(国籍を取得した移民は含まない)。人口比を考えれば、日本における外国人労働者の数は少ないともいえるが、欧州は陸続きで、主要国はたくさんの旧植民地を抱えている。こうした環境の違いを考えた場合、日本における外国人労働者の数は決して少ないとはいえない。 背景にあるのは、国内の深刻な人手不足である。日本は人口減少と高齢化が進んでおり、過去15年間で34歳以下の若年層人口は約22%減少し、60歳以上の人口は逆に43%も増加した。若年層の労働人口減少が顕著であることから、企業は常に人員確保に頭を悩ませている。 政府は建前上、就労目的での在留資格については専門的な職種に限っているが、現実には企業からの要請を受け「外国人技能実習制度」など、事実上の単純労働者受け入れ政策を行ってきた。この状況に拍車をかけているのが東京オリンピックによる建設特需である。建設業に従事する労働者の数はピーク時と比較すると約25%、数にして170万人ほど減っており、建設現場では慢性的な人手不足が続いている。政府は外国人建設労働者の受け入れ枠をさらに拡大したい意向だ。 建前上、外国人労働者を制限していながら、なし崩し的に受け入れを増やしているわけだが、こうした、ちぐはぐな対応はリスクが大きい。 外国人技能実習制度については、米国務省から人権侵害の疑いがあると指摘されており、現実に、賃金の未払いや、劣悪な環境での住み込み強要といった事例が発生している。諸外国でも外国人労働者が不当に安い賃金で雇用されるケースは少なくないが、この制度がやっかいなのは、れっきとした日本政府の事業であるという点だ。 政府がこうした事業に直接関与し、劣悪な労働環境を放置しているということになると、場合によっては国際政治の駆け引きにおいて格好の餌食となる可能性がある。日本はこれまで、似たようなケースで国益を何度も損なっていることを忘れてはならないだろう。 一方、日本の人手不足は極めて深刻な状況であり、のんびり構えている余裕はない。 国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、2040年の総人口は1億728万人と現在より15%ほど減少する見込みである。 特に、企業の労働力の中核となっている35歳から59歳までの人口は26%も減少してしまう。これまでは若年労働者の不足だけで済んでいたが、次の20年間は中核労働力の減少という大きな問題に直面することになる。 持続的な経済成長を実現するためには、資本投入、労働投入、イノベーションのいずれかを増やす必要があるが、人口が減少する以上、労働投入の低下は避けて通れない。需要が変わらない状態で、労働力不足から供給に制限がかかるようになると、企業は生産を抑制せざるを得なくなる。すでに供給制限による成長抑制の兆しが出ており、事態はかなり深刻である。労働力不足が招く日本の国力低下 この状況を改善するためには、①外国人労働者を受け入れるか、②女性や高齢者の就業を増やして労働力不足を補うか、あるいは、③イノベーションを活用して生産性を向上させるのか、という選択になる。日本は無意識的に①を選択してきたわけだが、労働をめぐる環境はこのところ大きく変化している。 近年、AI(人工知能)に関する技術が驚異的に進歩しており、人の仕事の一部あるいは全部をAIで置き換えることはそれほど難しいことではなくなってきた。経済産業省の試算によると、AIの普及によって2030年までに約735万人分の仕事がロボットなどに置き換わる可能性があるという。 ロボットの導入で余剰となった人材を、人手が足りない分野にシフトさせることができれば、供給制限で経済が停滞するという事態を回避できる。というよりも、全世界的にAIの普及が進む以上、これを積極的に活用していかなければ、相対的に高い成長を目指すことが難しくなっているのだ。日本も労働力不足という問題に対して、外国人労働者の受け入れではなく、積極的なAI化で対応するのが望ましいだろう。 だが社会のAI化を実現するためには超えなければならない大きな壁がある。それは人材の流動化である。 企業の現場にAIが普及すると、当然のことながら仕事の範囲が変わり、組織の人材を再配置する必要が出てくる。こうした動きは社内だけでは完結しないので、最終的には転職市場を通じた人材の流動化が必須となる。日本人はこうした人材の流動化に対する抵抗感が極めて大きく、これがAI化の進展を遅らせてしまう可能性があるのだ。受付役のロボットに症状などの情報を入力する患者役の自治医大担当者=2016年3月、東京都千代田区 実はこの問題は女性の就労拡大とも密接に関係している。女性の就労拡大が進まないのは、意識面での影響が大きいとされているが、それだけが原因ではない。女性の就労者が増加すれば、企業内部での人材の再配置は避けられず、結果的に流動化を促進してしまう。これに対する潜在的な拒否感が女性の就労拡大を遅らせている面があることは否定できない。 労働力不足は、日本の国力低下に直結する、まさに「国益」に関するテーマといえる。こうした重要な問題に対して、場当たり的な対応を続けることはもはや許容されないだろう。変化を頑なに拒んだ結果、AI化や女性の就労が進まず、外国人労働者の数だけが増えるという事態になってはまさに本末転倒である。

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    外国人労働者はどこまで受け入れるべきか

    日本で働く外国人労働者の数が初めて100万人を突破した。政府は労働力不足を理由に、高度人材の受け入れに積極姿勢をみせるが、現実には技能実習制度や留学生を通じて単純労働者の流入が急増している。場当たり的な対応では、いずれ「移民問題」に直面する。日本は外国人労働者をどこまで受け入れるべきか。

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    日本人はどこまでお気楽なのか? 「在日特権と犯罪」の現実を知れ

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師) 国連人口部の定義によれば、移民とは「主権のある母国を1年以上離れて外国に暮らす人」を指しています。そしてこの移民の概念には正規滞在者はもちろん、密入国者や不法滞在者、難民申請中の人、さらに帰化した初代も含まれます。 逆に言うと、本国人とは「本国生まれ本国育ちで本国の国籍を持つ者」であり、それ以外は「移民」として区別され、移民には初代帰化人を含め参政権が制限されるなど、明確な区別が存在するのです。 しかし日本人はこうした移民の定義など政治家でさえ知りませんし、それでいて移民政策をぶちあげたり、なぜか黒人や白人などの人種の違う外国人による集団的定着をイメージしたりしているため、実際に日本が移民国家であることに全く気がついていません。 実は日本は「先進的移民政策失敗大国」なのです。 日本には戦後、「国籍離脱者とその子孫」による「特別永住者」という滞在資格保有者が定着しています。国際結婚などにより50を超える国籍にまで及び、外国籍のまま子々孫々に至るまでその血筋によって外国に滞在できるというシステムは他国に類例がありません。 しかも、一般外国人のような犯罪検挙による強制送還もないため、「在日」外国人枠内での犯罪検挙件数・検挙人口ともに朝鮮半島系がぶっちぎり状態です。警察庁が気遣って公表しなかったため、逆に暴露拡散されて(暴露したのは私ですが…)、日韓外交に関する世論にまで大きな影を落としているのです。詳細は昨年出版された拙著「在日特権と犯罪」にて資料を元に詳しく説明しておりますが、この件一つを見ただけでも、日本はすでに移民国家であり、移民政策に失敗していることがおわかりでしょう。 総務省の在留外国人統計(2016年6月現在)での「国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人」や同年7月1日現在の「国籍・地域別 男女別 不法在留者数の推移」によると、現在、日本には、230万7388人(中長期滞在者+特別永住者:平成28年6月時点)+6万3492人(不法在留:平成28年7月1日現在)=237万0880人の「実質的移民」が存在します。外国人メイドを使用する文化が日本にはない ただし、この中には「3月」以下の在留期間が決定された中長期滞在者と、1年以上の滞在を許可されながらまだ滞在期間が1年に満たない移民予備群が含まれ、逆に日本人としてカウントされている初代帰化人や、カウントしようのない密入国者の人口を含めた「移民」の数は含まれていません。「移民」の概念を持たない日本は移民のカウントすらできず、これに伴い発生している外国人による生活保護不正受給では、国籍別不正受給世帯数さえ把握していないのに、やれ国際化だ、移民政策だ、などと浮かれる政治家もいまだ多く存在しています。 日本に定着している移民には、他国にない特徴があります。現在、日本の「在留外国人」、つまり移民から帰化初代と不法滞在者を除いた「移民」のうち、29・4%が中国人、19・8%が韓国人、1・4%が北朝鮮出身者で、これを合わせると、なんと50%を超えているのです。不法滞在者数(6万3492人)を加えても、半数以上が反日を国是とする国から来日、定着しているのです。それが日本の「移民」の現状であり、これを国民がまったく自覚していないところが大きな特徴でもあります。 これを受け入れる日本人自身も、他国に類例を見ない「お人好し」であることが、この問題に輪をかけています。たとえば、国家戦略特区として「外国人メイド」を試験的に導入しようという地域がありますが、メイドを雇い使用する文化のある国の多くは、奴隷制度の歴史や王侯貴族文化に根ざした、厳然たる身分の違いというイメージが存在します。 しかし、日本人はどうでしょうか。たとえば、メイドを脇に立たせ給仕させて平然と落ち着いてディナーが楽しめるでしょうか。むしろ落ち着かず「あなたも隣りに座って食べなさい」と促せば、超高齢社会が進むわが国においては、食卓をともにする「話し相手」にしてしまうのではないでしょうか。 逆に経団連をはじめ、2020年に東京オリンピックを控えた大企業では、最初から低賃金で「技能実習生」を実質労働者にするため、国会に働きかけ、本来3年の滞在期間に「2年」の延長を法整備させる移民政策を後押ししています。ところが、大企業の幹部は外国人労働者の顔が見えず、加えて日本人自身が諸外国の労働者に比べて非人道的労働に慣れているため、普通に扱ったとしても世界レベルでは奴隷労働レベル、加えて現場は組織力が働き、情け無用の過酷な作業になりがちです。矢玉の戦争なしに国が乗っ取られる これら日本人のお気楽な優しさや、日本的組織社会の圧力に接して揉まれた一部は「人権商売」のお得意様になります。すでに人権、労働問題のNPO団体の多数が弁護士を擁して活動しており、間もなくその活動資金には年間1千億円ほど発生するという「休眠口座」が当てられることが国会で可決しましたが、NPO制度はすでに中核派など左翼や極左の資金源として悪用され、検挙者が出ているのにもかかわらず、ほとんどが放置されている状態です。その上、外国人を呼び込めば、今度は外国人団体がかつての民団や総連のように「集団の力」を活かした圧力団体を作り、各国出身の外国人が自国民のための労組を結成しかねません。そうなれば、将来的には経済的奴隷酷使国家とのそしりを免れませんし、現実には既に酷使している企業だって存在しています。 さらに、これらは外国勢力の都合によって、やがて「慰安婦問題」のように華飾され、新たな「強制連行」「奴隷労働」のファンタジー的反日プロパガンダを生み出す可能性があることも考えるべきでしょう。また、わが国には中国人女性に日本人男性を斡旋して結婚させて「日本人配偶者」の身分を取得させたり、永住資格取得後は離婚させて就職を斡旋し定住の手助けをする「事務所」なんかも存在します。そこには、革新政党の元国会議員らも絡んでいるとされ、これが明確に中国共産党の工作につながっていることを他の中国人民主活動家が私に訴えてくることもあります。そうした組織が、「反日」を国是とする母国の支援を得て勢力伸長を画策すれば、矢玉の戦争なしに国はいずれ乗っ取られるでしょう。 こうした過程の中で、大企業は一時期潤うかもしれませんが、やがて訴訟の嵐に飲み込まれるでしょう。そして、労働移民政策によってお金が回らなくなった日本人は、何の恩恵も受けないどころか地域の治安が悪化して、本来あり得なかった外国人同士の宗教抗争や民族抗争に巻き込まれる可能性もあります。オリンピック前の2019年には、労働移民の需要が現場の肉体労働者から「おもてなし要員」に移行し、肉体労働者の多くが不法滞在するであろうことも見込まれますが、そのころ中国や半島では、不法滞在者を強制送還することが人道的に許される状況になっているでしょうか。 彼らは不法滞在者である以上、身分確認不要の商売でしか生きてはいけません。その最たるものは、違法な物品売買や違法行為による経済活動ですが、ICチップリーダーを携帯していない警察官には、彼らが職務質問を受けて提示する偽造在留カードを見抜くことはできず、安上がりの「民泊」を拠点として身柄拘束を免れようとする彼らの実態すら把握することができません。 私が「通訳捜査官」をしていたころには、新宿のマンションが中国人によって既に「カプセルホテル化」していて、3人部屋に15人が1泊2千円で寝泊まりしていたのですが、最近は高級住宅街の戸建てを購入し、部屋ごとにベッドを置いて民泊ビジネスを始めており、毎回違う顔ぶれの「中国人家族」の出現に付近の住民も不安を隠せません。ついに移民政策の誤りを認めたドイツ 移民政策など実施しなくても、このまま事が進んだ場合、言葉さえろくに通じない外国人を起因とする犯罪や各種問題の予防や検挙のため、日本の国庫は大きく圧迫されます。東京オリンピック開催前後になれば、犯人の直近に座って命がけで通訳をする警視庁部外委託通訳人は、一人あたり8時間の取り調べを一つの署で平均3つは抱える事態になるかもしれません。通訳人の時給は約1万円と高額ですから、都内に102署を抱える東京都の予算が膨大になるのは、容易に想像がつくのではないでしょうか。 もし、来日した外国人労働者が犯罪を引き起こしても、彼らを受け入れた企業はこうした犯罪被害への補償には、きっと知らんぷりを決め込むのも明らかでしょう。彼らが国外逃亡したとしても、相手国が被害補償をするはずもなく、日本人は「やられ損」になる可能性だってあります。他にも、外国人労働者用に設定された低賃金労働が広がり、日本人は貧富の差を拡大させながら、増加した税負担に喘ぎつつ、真面目な経済奴隷になるか、外国人と組んで一発ヤマを狙ったヤバい仕事に加担するか…なんて事態も起こり得るかもしれません。 1月27日付ロイター通信によると、ドイツの人口が過去最高の8280万人を記録しましたが、その理由はドイツの好調な経済や、比較的リベラルな難民政策、手厚い福祉に群がった難民の急増だったそうです。確かに、少子化や人口減は回避できたでしょう。しかし、ドイツのメルケル首相は、集団レイプや暴動が頻発する国内の現状を知り、「時計の針を元に戻したい」と嘆いています。1月30日にはドイツのショイブレ財務相も、90万人を招き入れた移民政策の誤りを認めました。 一方、法務省の「平成28年における外国人入国者数及び日本人出国者数等について(速報値)」によると、外国人入国者数は約2322万人で、前年比約353万人の増加で過去最高を記録しています。 国民の安全と優良な外国人材の確保のためにも、今後は無制限に受け入れたり、移民政策を推進するのではなく、むしろ入国を規制すべきだと考えます。いま、わが国が足元を固めなければ、大企業と無関心層が目先の利益に踊り出し、私たちの子孫が本来活躍するはずの「舞台」が土台から崩れる、そんな未来が見えるような気がしてなりません。

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    移民拡大論に植民地主義反対派の左翼が同調する不思議

     人口問題は常に日本にとって悩みの種だ。40年前の新聞に掲載されていたコラムから、評論家の呉智英氏が、日本の人口問題解決として現在、有力になっている移民拡大論について問題点を指摘する。 * * * スクラップ帖に、ちょうど40年前、1977年1月の興味深い記事を見つけた。朝日新聞経済欄に今も続く「経済気象台」というコラムだ。経済学者、財界人、ジャーナリストの匿名リレー連載である。この回は「復平」名義になっている。論題は「過剰人口の悩み」。 コラムはこう始まる。「いま世の中が不況であるのは日本に人間が多すぎるからである」。そして、こう続く。日本の国土に適正な人口は「先進国水準ではせいぜい5千万人」なのだから、いくら生産性が上がっても不況になるのは当然だ。しかるに、日本は人口抑制策を立てていない。人口問題研究所では50年後(つまり2027年)には1億4千万人にもなると報告しているし、国土庁は21世紀(つまり2001年以降)には1億5千万人にもなると推計している。どうなるんだ、日本……。 いやはや。専門家の分析が全く当てにならない。このコラムへの批判が出た形跡はないから、世論全般もこれに納得していたのだろう。この御高見と世論に従って人口抑制策が立てられていたら、罵倒されなくても、日本、死ぬ。 人口抑制論から40年の今、識者も世論も人口増加促進論一色である。人口増加自体は一応目指していいだろう。問題はその方策だ。最有力のものが移民(外国人労働者)拡大論である。だが、これは愚策中の愚策だ。ヨーロッパで移民政策のツケが今深刻な問題になっているではないか。初期アメリカの移民とはちがって、ヨーロッパの移民は要するに後進国の安価な労働力を買う経済政策であった。やがて反乱が起きるのは当然だろう。これは国内に植民地を作るようなものだからである。 不思議なのは、植民地主義反対のはずの左翼やリベラル派の多数がこれの同調者であることだ。グローバリズムだの国際化だのの雰囲気に眩惑されているのである。私は本義の労働研修生や留学生の受け入れに反対しているのではない。日本もかつて先進国へ同じように若者を送り出した。また、政治的亡命者についても受け容れるべきである。孫文も康有為も、金玉均も、ビハーリー・ボースも、スタルヒンも、全部日本は受け容れた。 ところが、今、サルマン・ラシュディが亡命を求めてきたら、日本はこれを受け容れるだろうか。『悪魔の詩』の作者ラシュディは、イスラム指導者から死刑宣告を受け、何度も身の危険を感じながら転居を繰り返している。その『悪魔の詩』の邦訳者、筑波大学助教授五十嵐一(いがらし・ひとし)は、1991年同大構内で何者かに殺害された。喉首(のどくび)を鋭利な刃物で掻き切られて。日本では前例のない残虐な手口だ。犯人は不明なまま時効となった。 ラシュディは厳重な警備に護られて事実上の亡命中だ。日本がラシュディを受け容れたら、半年もしないうちに殺害され、犯人は時効のまま国外逃亡するだろう。 出入国管理がゆるい日本は明治時代よりも逆に亡命不適切国となっている。●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。※週刊ポスト2017年1月27日号■ 総人口の移民割合 ルクセンブルク42.1%、米13.0%、日1.1%■ 「東京オリンピック後日本の地価が3分の1になる」と説く本■ 移民受け入れに肯定的な米国でも1150万人の不法移民問題あり■ 宝くじ当たりやすい県は熊本、沖縄、石川との調査結果出る■ 1984年以降世代は保険料4585万円支払い超過の財政的幼児虐待

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    差別を拡大するトランプ、差別を嫌悪したケネディ

     歴史を知る側から見ると、現在の世界の状況は極めて深刻に映るようである。作家の落合信彦氏は米国の先行きについて警戒感を隠さない。 * * * アメリカの大統領は、世界の未来を見据え、自由や民主主義の精神を守る覚悟が必要だ。それがアメリカのリーダーの「器」というものである。「雇用を守る」とばかり繰り返すトランプは、アフリカのどこかの独裁国家の大統領くらいの器しかない。 その小さな器では、アメリカ国内をもまとめることができない。トランプは、アメリカを真っ二つにしてしまった。「富裕層vs貧困層」「白人vsヒスパニック・黒人」……。とくに差別を煽ったことは罪深い。「メキシコ移民はレイプ犯」発言に代表される人種差別。さらに女性たちや、障害を持つ人々への差別。 この偏狭な男の発言は、アメリカ全体の空気も偏狭にしてしまった。日本ではあまり報じられていないが、トランプが大統領選に勝利してから、アメリカ各地で差別的な行動が激化しているのだ。ボストン郊外の大学では、「TRUMP」と書かれた旗を掲げたピックアップトラックに乗った2人の男が侵入して、黒人学生が住んでいる寮に向かって罵声を飛ばし、さらに唾を吐きかけた。 ユタ州では、ヒスパニック系の高校生が白人生徒から「不法入国者!」「メキシコに帰れ!」「メキシコにタダで帰れるから喜べ!」などと嫌がらせを受けた。さらに、アメリカのあちこちのトイレでは、「Whites Only(白人専用)」などという落書きが増えた。トランプ米大統領(左)とオバマ前大統領=1月、ワシントン トランプの存在が、アメリカ社会を分断したのだ。 実は、ジョン・F・ケネディが大統領に就任した当時も、アメリカは2つに割れていた。「I Have a Dream.」で有名なキング牧師のリンカーン記念館演説の3年前にあたる1960年。黒人差別は酷い状況であり、アメリカ社会は「白人vs黒人」で一触即発の状態だった。そんな中、キング牧師が座り込んで解放運動をしていたことを機に逮捕される。選挙中でニクソンと戦っていたケネディは、二者択一を迫られた。 良心に従い、キング牧師の逮捕を不当だとして介入し白人票を失うリスクを負うか。それとも何もせずに票を固めるか。 ニクソンはこの問題についてノー・コメントを貫いたが、ケネディは迷わなかった。まず遊説先のシカゴからキング牧師の妻コレッタ・キングに電話し、できる限りのことをすると約束した。そして翌日、弟のロバート(ボビー)・ケネディに、キング牧師を有罪にした判事に電話させ、すぐ釈放するよう説得したのだ。キング牧師は、即日釈放された。このことは、黒人たちの心を大いに動かした。 ボビーもまた、黒人差別をなくそうと強く主張した。1968年の大統領予備選の間、ボビーが各地を回ると、多くの黒人支持者が彼と握手しようと殺到した。ケネディ兄弟は、白人はもちろん、黒人たちから愛され、慕われていた。 ケネディ兄弟は、アメリカを1つにしようとしたのだ。彼らは、それまでアメリカを暗く覆っていた「差別」という厚い雲を、吹き飛ばしつつあった。 しかし、1963年と1968年の2つの悲劇的な暗殺事件が、彼らの理想を道半ばで終わらせてしまったのだ。 翻ってトランプは、差別をなくすどころか再生産し、アメリカ社会の亀裂をどんどん広げようとしている。2017年は「この年から、憎しみと差別の歴史が再び始まった」と記憶されることになるかもしれない。 ※SAPIO2017年3月号■ ジョン・F・ケネディ 核戦争危機から世界救った水面下交渉■ 暗殺から50年 ケネディ大統領の関連本が続々と新刊ラッシュ■ 落合信彦氏「JFK暗殺なければ弟ロバートは今も生きていた」■ 米の低レベル高校生、殺人事件が日常の街等をリポートした本■ 落合信彦氏 米大統領選で最高の名勝負はケネディvsニクソン

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    「人類の試練」救いなき難民危機

    難民受け入れの旗振り役であるドイツのメルケル首相が、難民政策の「失敗」を認めた。今も中東などの紛争地域から押し寄せる難民の波。欧州各国は喫緊の対応を迫られ、混乱が広がる。「人道主義」が招いた出口なき難民問題。いま欧州で何が起こっているのか。

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    「春香クリスティーンがゆく」 欧州難民ルート2千キロルポ

     春香クリスティーンがゆく(1)(COURRiER Japon 2016年3月9日) 難民が大量にヨーロッパに押し寄せている。そのために、さまざまな問題が発生している。最初は受け入れに寛容だったEUの国々も、あまりにも数が増えて、さすがにもう無理だって悲鳴を上げ始めている。スウェーデンは国境審査を再開したし、デンマークは難民の財産没収法案を可決した。その気持ちも、すごくわかる。だからこそ気になったんです。実態はどうなっているんだろうって──。  2015年の年末から年明けにかけて、「バルカンルート」と呼ばれる難民の移動経路をたどりました。ギリシャ、マケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニア、オーストリア、そしてドイツ。およそ2000㎞の道のりです。時間の制約があるので飛行機を利用することもあったけれど、おもに陸路での移動です。同行スタッフは、ビデオカメラマンとスチールカメラマンのみ。現地でアラビア語やギリシャ語の通訳の方を伴うことはありましたが、取材は私自身が行いました。 最初に訪れたのは、中東からヨーロッパを目指す難民の玄関口といわれる、ギリシャのレスボス島です。首都アテネからは飛行機で約1時間。エーゲ海屈指のリゾートで、ヨーロッパ中からバカンス客が訪れる場所です。そんな絵に描いたような観光地にいま、1日3000~8000人の難民が、命がけで渡ってきている。その現実と目の前の美しい風景とのギャップに、なんともいえない違和感を覚えました。 私が島に渡った日はたまたま天気が良く、穏やかで、波もほとんど立っていませんでした。おそらく、通常に比べたら格段に渡りやすいコンディションだったと思いますが、実際に難民たちがゴムボートで密航してくる光景を目の当たりにして、本当に驚きました。水平線の彼方に目を凝らしていると、暗闇の中にかすかに「点」が見えてくる。それが密航船でした。小さな黒い点にしか見えなかったものは、じつは大海原に漂う命の塊だったのです。ゴムボートはすし詰め状態(撮影・菱田雄介) 近づいてきた密航船を見て、言葉を失いました。ボートの縁に何重にも人が鈴なりになっていて、内側には女性や子供が積み上げられるように座っている。定員10人程度のボートに、50~60人が折り重なって乗っているのです。そんな状態でかろうじてバランスをとりながら、1時間あまりかけて海を渡ってくる。 しかも、操縦しているのはプロではなく、舵取りもにわか仕込みの難民です。ボートの操作方法もわからなければ、どこにたどり着けばいいのかもわからない。当然ながら港がどこにあるかもわからないので、とにかく向こう岸を目指し、陸が見えたらそこを目的地と定めて突き進んでくるのです。そこに岩礁が潜んでいたりしたら、ボートはたちまち転覆して冬の海に沈んでしまいます。  一瞬一瞬が命取り。そんな航海を終えた安心感からか、港が近づいてくると自撮り棒を取り出し、ボートの上で記念撮影をする難民も。これにはちょっとビックリしました。救出作業はもはやルーティンワーク トルコ沿岸からレスボス島までの距離は、10~15㎞ほど。2015年だけで55万人以上の難民がこの島に流れ着きました。その多くはシリアやイラクからトルコ国境まで逃れてきて、いよいよヨーロッパへ渡ろうとしている人たちです。レスボス島は、いわば“夢の国”への玄関口。とにかく最初の国ギリシャに行きたい、その一心なんだと思います。 密航船の相場は、一隻あたり9万ドル(約1000万円)。船に乗るには、1人あたり1500ドル(約18万円)をブローカーに支払わなければならないそうです。それでも、払うよりほかに手段がない。 レスボス島からはトルコ側の対岸を望むことができるので、実際の距離もさほどではないように思えます。10㎞なんて、たしかにそう遠くはないかもしれない。でも、だからといって簡単に渡れる距離ではありません。順調に進めば1時間ほどで到着しますが、悪天候だと命を落とす危険もある。実際、密航船が転覆してエーゲ海で亡くなった人は、今年1月だけで300人近くにのぼるといいます。救出作業はもはやルーティンワーク リゾートとはいえ、島全体がなだらかで安全というわけではありません。観光客が目にするのは整備された港だったり美しいビーチだったりするけれど、島には切り立った崖もあれば急勾配の坂もある。そんなところ、普通は誰も足を踏み入れないのだけど、いまは島のボランティアの人たちが目を張り巡らせています。夜中や明け方など、密航船がよく到着する時間帯に見張りに立ち、彼らを救出しようと待ち構えているんです。 地元のボランティアだけでなく、NGOの人もいますし、赤十字やUNHCRの人もいます。所属も立場もバラバラで、誰か統率する人がいるわけでもないのに、救出作業は妙に秩序立っている。表現は悪いかもしれないけど、一連の流れ作業になっているんです。密航船に初めて遭遇した私にとってはショッキングな光景でも、毎日毎日、何隻ものボートが流れ着いているレスボス島では、これが日常。いちいち「ボートが来たー!」と騒ぐことでもないんですね。 海岸に密航船が到着すると、まずは子供が助け出されます。ライフベスト(救命胴衣)を脱がせ、冷え切った身体を保温シートでくるみ、子供にはチュッパチャップスをくわえさせ、大人には水や食料を与える。具合が悪い人やパニックを起こしている人は、すぐに診療を受けられる体制も整っています。無邪気に見える子供たちも、みな過酷な体験をしている(撮影・菱田雄介) 港のそばにはボランティア団体が建てた一時待機施設があり、無料でお茶を出したりしています。溜まった疲労とストレスをここで少しでも癒してもらおうと、ボランティアの人たちがかいがいしく世話をしていました。濡れた靴を乾かしたり、歯ブラシを提供したり。歯を磨くことで、一時的ではあるけれど、日常を取り戻すことができる。こういうことって大事なんですね。 でも、おそらく一番大変なのは、レスボス島到着以前の行程ではないかと思います。戦闘が激化するなか、シリアの人々はすべてを捨てて祖国を脱出し、隣国トルコへ渡る。そこからヨーロッパを目指すのだけれど、密航資金が足りないために海を渡れず、トルコ国境で何年間も足止めされていたという人もいました。家財道具を売り払ったり、トルコでしばらく仕事したり。 ようやくギリシャに渡ることになっても、密航船が警察に捕まってトルコに送還されるというケースも少なくありません。捕まっては振りだしに戻る、というパターンを何度も繰り返している人もいました。そうやってトルコに滞留している難民が、すでに250万人いるといわれています。 ここで疑問が沸きました。レスボス島の海岸線には、難民たちが使ったライフベストが山のように打ち捨てられています。こんなに大量に残されていて、しかもまだ充分使える状態なんだから、次に渡ってくる人のためにトルコ側に戻せばいいんじゃないの? ボートも同様で、解体して終わり。ボートもライフベストも、決して使い捨ての仕様ではないんですよ。 でも、送り返すことはできない。そうしたら、難民の渡航を認めることになってしまうからです。彼らはパスポートを携え、入国手続きをして国境を越えたわけではない。ただ、流れ着いた以上は受け入れるしかない。それは、生きた命は救わなければという人道的な理由で、どうしようもないからです。正直なところ、すごくグレーだなと思いました。 トルコ警察が徹底的に取り締まればいいのでしょうが、トルコ側だって手いっぱいでしょう。EU側はトルコに多額の難民支援金を拠出しているけれど、トルコだけの問題ではないからこれだけでは解決できない。監視の目が届かなければ、難民の流入は止まらない。どんどん来てしまうけれど、もう入れませんから海で溺れてください、というわけにはいかない…。 そういえば先月、ライフベストを“再利用”したアートがベルリンで披露され、話題になりました。中国の現代アーティスト艾未未(アイ・ウェイウェイ)が、大量のライフベストを使って制作したインスタレーション作品とのことですが、このライフベストはレスボス島から提供されたものだそうです。あのライフベスト、大半がヤマハ製なんです。こんなかたちで日本ブランドを目にするなんて、ちょっと複雑な気持ちです。春香クリスティーンがゆく(2)バルカンルートへ春香クリスティーンがゆく(2)(COURRiER Japon 2016年3月24日) 2015年の年末、ギリシャからドイツに至る難民の道を、春香クリスティーンさんが取材しました。現地レポート第二弾では、マケドニア、セルビア、クロアチア、スロベニアの4ヵ国を跨ぐバルカンルートをたどります。24歳の目で捉えた「難民」の実態とは──。 私の出身地、ヨーロッパを大きく揺るがせている難民問題。この「難民」という言葉の響きが、彼らのイメージに誤解を与えてしまっている気がします。第1回の連載で、密航船で「自撮り」する難民たちの姿をお伝えしたところ、読者の皆さんからさまざまなコメントが寄せられました。難民なのにスマホなんて贅沢だ、命がけと言いながら自撮りなんてのん気なものだ、と。私も実際、ボートが救助される瞬間に自撮り棒を取り出して記念撮影している難民を見て、とても驚きました。 ただ、彼らは別に、貧しい人たちとは限らない。私が出会った難民のなかにも、シリアで学校の先生をやっていたという人もいたし、ジムを経営していたという筋肉ムキムキの人もいた。戦火にさらされる前は、私たちと同じように、自分の思いどおりの生活を営んでいた人たちなんです。 だけど内戦が激化して、その状況ではとても生きていけないから、仕方なく祖国を出てきたのだと思います。普通の市民だから、当たり前にiPhoneを持っているし、自撮りだってする。シリアにいたときから普通に使っていただけなんです。とはいえ、あの緊迫した状況でなぜ、あれほど自撮りをするのか?セルビア国境を徒歩で渡る難民たち(撮影・菱田雄介) おそらく、祖国に残してきた、あるいはすでに目的地にたどり着いている家族に、自分たちの無事を報告するためでしょう。でも、彼らを観察していると、どうやらそれだけではない。バルカンルートの道中、行く先々で何度も写真を見ては、自分たちの旅路を振り返っているんです。彼らにとって、こんな命がけの旅は生涯、二度と経験することはない。だからその一瞬一瞬を刻んでおきたい──そんな思いもあるのではないでしょうか。 難民の人たちは皆さん、フェイスブックなどのSNSをやっています。家族や知人の安否を確認するのもSNSだし、シリア国内の情勢やヨーロッパの難民受け入れ状況を知るのもSNS経由。スマートフォンは、難民たちが生きていくうえで、なくてはならない物なんですね。いまは、そういう時代なんだなって感じました。もちろん、自分がどこに行くのかもよくわからないまま、ひたすらルートに従って進むだけの人もいっぱいいましたけれど。 多くの難民が目指すのは、手厚い保護が待っている(とされていた)安住の地、ドイツです。トルコから海を渡ってレスボス島へたどり着いた難民は、ギリシャ本土へ船で移送されます。首都アテネまでは11時間。そこからバスを乗り継いで、マケドニア共和国との国境にあるイドメニ村に向かいます。イドメニは、バルカン半島を経由してドイツに至る「バルカンルート」の始点とされています。 しかし最近、情勢に大きな変化がありました。とどまることのない難民の流入に、ついにEUが政策転換したのです。バルカンルートの閉鎖が協議され、3月20日以降にギリシャに渡ってくる密航者を全員トルコに送り返すことでトルコと正式合意。事実上の国境封鎖です。難民は地元住民との接触も禁止? 現地でお世話になった人に確認したところ、現在マケドニア以降のルートはほぼ断絶状態で、3月上旬から難民の流れがストップしているそうです。イドメニまで来て行き場を失った難民がいまも1万人以上、国境地帯に滞留しているとのことです。先日、業を煮やした難民700人以上が越境を強行したというニュースを耳にしました。川を渡ろうとして溺れ死んだ人もいたといいます。 その状況を思うと、いたたまれない気持ちになります。イドメニは何もない、寂しい村でした。しかも取材時は真冬で、ものすごく寒かった。前夜のレスボス島は気温20℃くらいあったのに、マケドニアの国境まで北上すると一気に氷点下まで冷え込みます。そこに建てられた仮設テントで、足止めされた難民たちは先行きの見えないまま、時間をやり過ごしているのかもしれない…。難民は地元住民との接触も禁止!? 私が訪れた昨年末、国境地帯では、まるで流れ作業のように難民たちが移送されていました。ギリシャからバスでそのままマケドニアに向かうのかと思ったら、検問所の前で難民たちは一端、車から降ろされます。国境は、徒歩で越えなければならないんです。 バスが到着するのは夜。寒空の下、500mほどの距離ですが、小さな子供たちも皆、歩いて渡ります。バス1台分ずつ、順にマケドニアに送るシステムになっていました。検問所に警察官が一人いて、マケドニア政府からの合図を待っているんです。バスから降ろしていいよ、と許可が出たら、難民たちをバスから降ろし、歩かせる。国境を越えると、その先にはまた次の移動手段が待ち受けていて、バスや鉄道を乗り継いでマケドニアからセルビアへと抜ける。 不思議だなと思ったのは、バルカン半島の国々を移動するあいだ、難民たちにほとんど自由がないことです。場所によっては、その国の滞在時間が何十時間と決められていたりする。各政府が連携してこうした集団移送体制を構築したとのことですが、まるで「うちの国には留まらせたくないから早く次の国へ行ってくれ」と言わんばかり。セルビアのアダシェバツという街に、難民用の一時待機施設がありました。高速道路のガソリンスタンドの隣にあって、昔はモーテルだったんじゃないかというような場所です。人数がまとまるまで待機して、そこから鉄道に乗り換えるのです。(撮影・菱田雄介) ここは比較的、さまざまな設備が充実していました。「国境なき医師団」のお医者さんが常駐する診療所や子供の遊び場があり、Wi-Fiが完備されていて、携帯電話の充電ができる。防寒具や靴の配給もありました。でも、そこから動いちゃいけない。難民は、周辺を自由に歩き回ることもできないんです。 次の国境へ移動する際に、難民移送バスに一人でも戻って来なかったら、その責任はバスの運転手が負わされると聞きました。運転手も、なかなかつらい仕事ですよね。難民移送にはきっちりとした管理体制が敷かれていて、そのルートから外れることは許されません。国境で難民登録書を見せ、手続きが済んだら移送列車に乗る。乗り込む際は一列に並ばされ、扉が開くやいなや中へと押し込まれる。警察が大きな声で、早く早くと追い立てる。その様子は、まるで捕虜か囚人を扱うように見えなくもない。 でも、だからといって難民たちの顔に虚ろな感じはありませんでした。むしろ、明るい未来のある国に行ける期待感から「イェーイ!」と歓声すら上げている。笑顔、Vサイン。やっと次に行けるぞ、と嬉しくて仕方ない表情でした。人口の400倍の難民が押し寄せてきたら… セルビアから列車に乗った難民たちは、クロアチアを横断し、スロベニアへと向かいます。その間、地元住民との接触はほとんどありません。なぜこんなに管理が厳しくなったのでしょうか?以前は、クロアチア国境の町ハルミツァに到着した難民たちは、川を渡って国境を越えていました。でも、いまは国境沿いに鉄条網が張り巡らせてあり、向こう側へ行くことはできなくなっています。 スロベニア国境にあるリゴンツェ村もやはり、鉄条網で厳重に警備されています。リゴンツェは人口わずか176人の小さな小さな村。そこに昨秋、7万人もの難民が押し寄せたのです。村人たちが恐怖を感じたのも無理はありません。 国境地帯に一時滞在所を設けたのは、地元住民の目に極力触れないようにとの意図からだったんですね。その一時滞在所にいる難民も、300人単位です。彼らが一斉に外に出たら、小さな町なら大騒ぎになるでしょう。日常が変わってしまうことに不安を覚える人もいるかもしれません。難民にも「モラル」を求めるべき? 一方で、難民たちを一ヵ所に囲い込むことによって、衛生面での問題が浮上しています。一人が風邪をひけばあっという間に伝染する環境です。スロベニアのシェンティルという町にある一時待機施設では、咳き込んでる人を多く見かけました。そのなかに、子供たちもたくさんいる。亡くなった人もいると聞きました。そこに長居するわけではないし、宿泊するわけでもないけれど、医療や衛生管理は最優先で改善してほしいと思いました。 気がついたのは、車イスの人が結構な数いるということ。バス4台中、2人は見ました。割合として、日頃目にする機会よりもはるかに多い気がしました。それも高齢者ではなく、比較的若い人が乗っている。聞いてみると、長距離移動は体力的に難しいというので、お父さんお母さんは祖国に残してきたという人が少なくない。でも、難民移送の列車はバリアフリーなんかじゃないし、急な階段を昇らされることもある。それでも、2000㎞の道のりを移動しようというのです。持病で車イス生活になったのか、それともシリアの内戦で何かあったのか、私には聞くことができませんでした。難民にも「モラル」を求めるべき? もう一つ、現実を目の当たりにして、考えさせられたことがあります。それは、難民のマナーとモラル。一時待機施設ではボランティア体制が整っていて、食べ物や着る物の配給が充実していました。難民の人たちにとってありがたい状況だと思うのですが、これが現場のボランティアの人たちを困らせていた。とにかく、食べかたが汚いというのです。 食べ残しがそこらじゅうに散乱している。ゴミ箱があるのにゴミを捨てない。配給で洋服も支給されるのですが、ボランティアから新しい服を受け取ると、それまで着ていた服をその場で捨ててしまう。床に脱ぎ散らかしたまま放置するので、悪臭の原因となる。全員ではないけれど、そういう行為が目立つのです。(撮影・菱田雄介) バルカン諸国にたどり着く難民は、シリア出身の人ばかりではありません。中東の他の国々や、アフリカからも来ています。さまざまな文化を持つ人たちが、一ヵ所で同じ生活をすることは難しい。もしかしたら祖国では、ゴミを捨てるという習慣がないのかもしれない。たんなる生活習慣の違いなのか、ルールを理解していないのかはわかりません。 そんな状況だから、難民たちの滞在所はカオスでした。ボランティアの人たちは、衛生的に保つのに懸命になっていましたね。 もちろん、ちゃんと片づける難民もいるし、彼らにルールを教え込もうという努力もしていると思います。とはいえ、いろんな民族がいて、それぞれに異なる生活習慣がある。パッと見ただけではすべてを見分けることはできません。 テーブルに得体のしれない食べこぼしが広がっている。ボランティアの人からもらった服が、その辺にポイッと飛ばされる。私も正直、「えー!?」って思いました。おいおい、感謝の気持ちはどこに? と。でも、これは私たちの社会でのルールですから、難しい問題です。彼らにしてみれば、より温かい服に着替えて長旅に備えただけで、悪気はないのかもしれない。けれど、難民支援のために集められたみんなの善意を、そんなに簡単にポイ捨てされるなんてショックです。 じゃあ支援は不要かといえば、そういうことではない。難民がこの先ヨーロッパで生きていくためには、ただ物を与えるだけではなく、彼らを自立させることを考えなければいけない。そういうことも、難民を受け入れる側の課題の一つだと思います。春香クリスティーンがゆく(最終回)西ヨーロッパへ春香クリスティーンがゆく(最終回) (COURRiER Japon 2016年4月2日) ギリシャのレスボス島からヨーロッパ本土に渡り、バルカン半島を北上する難民の道をたどってきた春香クリスティーンさん。最終回ではいよいよ旅の終着地、西ヨーロッパへ。英語、フランス語、ドイツ語を駆使する春香さんが、難民とEU市民、双方の本音に迫ります。 前回、ヨーロッパに来た難民の「モラル」について、私なりに考えたことをお伝えしましたが、スロベニアの次に向かったオーストリアで、さらにショッキングなものを見つけてしまいました。オーストリアのザルツブルクは、モーツァルトの故郷として知られる音楽の都。世界的な観光地ですが、クロアチアやスロベニアと同様にここでも、街なかで難民の姿を見かけることはありませんでした。 昨年夏、大量の難民が押し寄せて問題になったため、難民を一時的に収容する施設が作られたのです。ザルツブルクにたどり着いた難民たちは皆ここに集められ、ドイツに行くまでの数日間、このテントの中で過ごすことになったのです。それまでは、列車で国境を越えてきた難民たちが駅に溢れかえり、通常の列車が運行できなくなるほど混乱をきたしていたそうです。駅構内で寝泊まりする難民も多かったといいます。ザルツブルクの難民一時滞在施設(撮影・菱田雄介) 私が訪れたとき、もう駅に難民はいませんでした。ただ、仮設トイレが残っていたんです。おそらくそれは、難民の人たち専用のトイレだったと思います。なぜかというと、トイレの「正しい使いかた」を説明した紙が貼られていたから。日本でそういう注意書きを目にすることもあるけれど、もっと丁寧に、まるで幼児に教えるように、アラビア語の説明書きとともに図解されているんです。 女性トイレの貼り紙はこんな具合です。「使用中のトイレを覗いてはいけません」。 「便座にはこんなふうに腰掛けましょう」。「トイレットペーパーで拭きましょう」。「最後に手を洗いましょう」…、ちょっと馬鹿にしている感じが、しなくもない。 ザルツブルク中央駅は数年前に改修工事を終えたばかりで、とてもきれい。その駅舎の脇に、難民専用の仮設トイレが設置してあるのです。駅のなかには最新式のトイレがあるのに、です。誰でも利用できるはずの駅のトイレを、難民たちには使わせたくない、使ってくれるな、ということですよねこの気持ち、わからないわけではないんです。じつをいうと私も、バルカンルート沿いの施設で難民が使うトイレの惨状を見て、思わず目を背けたことがありました。でも、どうしてこんなふうになっちゃうんだろう……そう考えたとき、これはマナーの問題ではなく、文化の違いだって気づいたんです。 イスラム圏では、用を足したあと、男女とも紙を使わずに水で浄めると聞いたことがあります。一方、施設のトイレはいわゆる洋式トイレ。異なる文化圏から来た難民たちはどう使っていいかわからず、結局、汚してしまうのかもしれません。文化が違えば、トイレ事情だって違って当然。ザルツブルクの仮設トイレに、異文化理解の難しさと大切さを思い知らされたようでした。 ふつう、こういう問題に直面したら、世論は難民受け入れに否定的になるものだと思っていました。ところが、次に移動したドイツは違ったんです。少なくとも私が現地を訪れた年明けの時点では──。家賃タダ、月々のお小遣い付きの「厚遇」家賃タダ、月々のお小遣い付きの“厚遇” 多くの難民たちが目を輝かせて語っていた夢の国、ドイツ。難民たちはドイツに入るとまず、国境で難民として仮申請を行います。政府が各都市の収容能力に応じて振り分けを行っており、難民たちはどの都市に行くか選ぶことはできません。ひとまずこうした施設に落ち着き、難民として認められるのを待ちながら、ドイツ語の勉強や職探しを行います。 言葉も生活習慣も異なる国での再出発。アフガニスタンから来たという男性に、不安はないのかと尋ねたら、こんな答えが返ってきました。「不可能なものなんてない。何事も為せば成る。まずはドイツ語を覚えて、それから大学へ通いたいんだ」 彼が希望を抱くのも無理はありません。ドイツで難民に認定されれば、生活は当面、保障されるのです。ドイツ第三の都市ミュンヘンで、難民認定を受けた一家を取材しました。 一家の長女タムキン・ナシリさんは、20歳の女の子。3年前にアフガニスタンを脱出し、歩いてドイツまでやって来たそうです。いまでは、とても上手なドイツ語を話します。 「この国の人間は同じ自由を持っていて、同じように生活できる。ここではやりたいことができるの。仕事でも学業でもね」3年前にミュンヘンにやってきたタムキン・ナシリさん(撮影・菱田雄介) ナシリさん一家は、両親と4人の弟とともにミュンヘン市内に暮らしています。アパートの家賃は、なんと無料。タムキンさんと両親には月々310ユーロ(約4万円)が支給され、さらに未成年者の弟たちにも補助金が与えられています。手厚い補助は難民たちが自立できるまで続きます。ドイツに流入した難民は、昨年1年間で100万人以上。昨年9月に彼らを受け入れる決断をしたメルケル首相の「寛大な政策」は、市民に熱狂的に歓迎されました。ミュンヘンの人たちも、それは変わらなかった。 新年を祝う繁華街で市民に話を聞いたのですが、出てくるのは驚くほど肯定的な意見ばかり。 「難民が来てくれて嬉しい。祖国が大変で苦労の連続だったでしょうから、ここに来られて良かった」  「家の向かいに難民一家が引っ越してくるから、ウェルカムパーティーを開くの」  「難民が来たからテロの脅威が高まるなんて考えは馬鹿げている。難民に責任を押し付けているだけに過ぎないよ」 私、結構いろんな人を取材しましたよ。でも、いくら聞いても否定的な意見が出てこない。反対意見、来いや!と構えていたのに、来ない来ない。こちらから「難民排斥運動をしている人たちをどう思いますか?」と問うと、ほとんど「ありえない!」という反応が返ってくるんです。あいつらと一緒にしないで、と。 もちろん、そのときのタイミングもあるでしょうし、同じドイツでも地域によって差があると思います。ネットを見れば、非人道的な意見も飛び交っています。ただ、ドイツは昔からトルコ移民を受け入れてきて、こうした問題はまったく初めて経験するものでもないんですね。 ドイツは第二次大戦後、急速に移民の受け入れを行った国です。1950〜1970年代にトルコから流入した移民は200万人を超えます。冷戦終結後は、旧ユーゴスラビアなど東欧からの難民を大量に受け入れてきた。その自負があるのでしょう。「あのときも我々は乗り越えられた、だから今回もうまくやっていけるよ」なんて声もありました。テロ予告にも、おおらかな反応テロ予告にも、おおらかな反応 私がミュンヘン入りしたのは、2016年の1月1日。じつはその前日の大晦日、イスラム過激派のテロが警告され、ミュンヘン中央駅が封鎖される事態となっていました。ISによる自爆攻撃が実行される危険が高まったというのです。 そんな緊張状態の直後だったので、ミュンヘンでは当然、批判的な声が出ると思っていたんです。封鎖は翌朝解除されたものの、私はその駅の中のホテルに滞在することになっていたので、とても怖かった。街もパニック状態になっているんじゃないかと心配しました。 だからホテルに着いたとき、受付の人に尋ねたんです。あんなことが起きて、大変だったでしょうって。そうしたら「うん、まぁ別に何てことはなかったよ」という反応なんです。テロ警告は以前からあったからね、と。拍子抜けしてしまいました。 でも、そのときはまだ、あの「集団暴行事件」が明るみに出ていなかったのです。西部の都市ケルンで、大晦日の夜、300件以上の性的暴行事件が発生しました。若い男たちがケルン中央駅周辺にいた女性たちを取り囲み、窃盗や性的暴行を働いたのです。容疑者の多数が難民申請者だったことから、難民たちに一気に厳しい目が注がれるようになりました。極右団体による大規模デモが起き、ドイツ人同士が難民をめぐり、衝突するようになってしまった。ミュンヘンの駅で警戒にあたる警察官(撮影・菱田雄介) この事件が、空気を一変させたと思います。あれほど難民受け入れに寛容な人が多かったのに、歓迎ムードは消え去り、メルケル首相は政策転換を迫られました。私の母国スイスの報道を見ていても、そのショックがものすごく大きかったことが伝わってきました。 このとき欧米メディアでは、事件は難民たちの「性差別主義」が原因だとする論調が盛んになりました。中東や北アフリカでは女性の権利が奪われているとか、イスラム教では妻は夫に従わなければいけないとか、そういった女性蔑視の文化がある。ヨーロッパの女性だからといって、人権を尊重しようとはしない。今回の事件は、そういう問題が浮き彫りになった結果だと。これがあの理想に燃えたEUの姿だなんて ヨーロッパの感覚からすれば、たしかにそのとおりでしょう。人権を無視した行為は許されないし、女性に暴行を働けば犯罪になります。でも、そこには文化の隔たり、価値観の相違があるわけです。だから彼らには、郷に入らば郷に従えで、ヨーロッパの道徳観をちゃんと教えてあげなければいけない。 ただ、これまた複雑です。「教えてあげる」って言うこと自体、上から目線なんじゃないかなと。異文化理解の難しさを、ここでも実感しました。これがあの理想に燃えたEUの姿だなんて EU(欧州連合)が発足したのは、私がスイスで生まれた翌年の1993年です。私は子供の頃、ヨーロッパが一つになろうという盛り上がり、高揚感を肌で感じていました。スイスはEU加盟国ではありませんが、さまざまな協力協定を結んでいて、EUとの関係は緊密です。人の行き来も自由。人々がオープンになっていく感じを、ごく自然なこととして受け止めていました。EUに対する批判は常にありましたが、それでも、移動が便利になり、人々の交流も盛んになり、一体感が感じられるようになったことを、ポジティブにとらえていました。(撮影・菱田雄介) そうやって築いてきたものが、いま、壊れようとしている。テロの脅威、止まらない難民流入。こうなるともう、国境を閉じろ閉じろという空気になり、いままでのオープンな感じと正反対の、閉鎖的な方向へ向かおうとしている。これが一つになることを目指していた、あのEUと同じところだなんて……。 いまヨーロッパでは、移民や難民に反対する運動が沸き起こっています。それに対し、イスラム教徒であっても同じ人間なんだから、人間として受け入れるべきだと主張する人たちがいます。この問題をめぐり、ドイツ人同士が互いを罵り合っている。冷静に議論を重ねるのではなく、ただ感情をぶつけ合っている。そんな姿を見ると、国が崩壊しているような感じがしてならないんです。すごく心が痛みます。殴り合いに近いようなかたちで、同じ国の国民がバトルすることに、言いようもない違和感を覚えます。 新しいものを外から受け入れると、ドイツがドイツらしく、スイスがスイスらしくなくなってしまうというのでしょうか?人を受け入れるということは、人間の根幹、国家の根幹、そしてEUの存在意義にも関わってくる問題です。それが、話し合いではなく罵り合いで論じられていては、いつまでも平行線です。ヨーロッパが一つになるという理想を掲げてここまで歩んできたEU。難民という存在を受け入れることができずに、このままメルトダウンしてしまうのでしょうか。

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    行き場を失う難民の悲劇 「人道主義」の限界がもたらす負の連鎖

    掲げる極右政党から選挙で攻勢をかけられて、厳しい状況に置かれている。ニューヨークの国連本部で開幕した移民・難民対策を討議する国連サミット=9月19日「難民受け入れ」に背を向ける日本の対応 日本の対応は、国連サミットでテーマとなった「難民受け入れ」に全く背を向けるものだ。サミットに出席した安倍晋三首相は「日本は主導的役割を果たす」と演説しながらも、難民受け入れには触れず、今後3年間で28億ドル(約2800億円)規模の人道支援を行う考えを表明しただけだった。 欧米の各国政府にとっても、難民受け入れには、国内で根強い反対がある。それでも難民受け入れを増やさねば、現在の難民危機は新たな紛争やテロ、犯罪など危機へと増幅しかねないという認識はある。だからこそ、難民受け入れの割り当てをしたり、受け入れ数の確認をしたりと問題に対応しようと苦心している。 今回、国連サミットで問われた「責任の公平な分担」は、誰もが嫌がる難民受け入れへの対応だった。その中で、日本政府が金だけを出しても、国際社会と問題を共有していないことが明らかになっただけで、出した金額に見合う評価を受けることは難しいと考えるしかない。

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    実は世界に冠たる移民国家だった! 日本を必ず襲う「難民クライシス」

    坂東忠信(外国人犯罪対策講師) 日本を単一民族であるとしてその純血を誇る人がいます。しかし残念ながら日本はすでに世界に冠たる移民国家であり、しかも移民政策に失敗しながら傷みを自覚せず、現在も失敗し続けていると言ったら、何人の方がこれを信じるでしょうか。 まず私達は「移民」というと、どうしても白人や黒人などのわかりやすい異人種の流入と定着を想像しますが、この段階ですでに失敗の痛みを自覚しない「情報麻酔」がかなり効いています。私達は地理的情況や歴史的経緯から、東アジア、特に朝鮮半島からの流入定着があったことを移民として意識できないどころか、彼らが現在も帰化せず「特別永住者」という世界に類例のない外国人世襲制滞在資格を得て定着していることに異常を感じませんし、反日姿勢をアイデンティティとする北朝鮮の「総連」や韓国の「民団」が、母国と在日民族を直接・間接的につなげて社会に影響を及ぼしても危機意識を持てません。さらに彼らが左翼・反政府運動にも影響を及ぼす現状に触れると、人として当然発生するはずの「憎悪表現」が否定抑圧され、「ヘイト」という呪文と情報麻酔で抑え込まれているのです。不法滞在の外国人を収容する東日本入国管理センターの居室=茨城県牛久市 そもそも「移民」とはどんな人達であるかという疑問さえ、麻酔が効いているので意識できません。国連人口部の定義する移民とは「出生あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人」を指しています。具体的には、世襲滞在の特別永住者はもちろんのこと、留学生や技能実習生などを含めた中長期滞在者、不法滞在者や密入国者などの不法移民が移民に該当し、世界一般では合法的に帰化していても、帰化した当代は移民の部類に入ります。 この世界標準さえ知らない幸せ太りの中年ボクサーは、知識のパンツも履かずフルチン状態で国際化社会のリングに上り肉体を誇示し、ハングリーな挑戦者と抱き合おうとしているのです。 大体にして「移民」と聞いて「肌の色が違う外国人と共生できて街が活性化する話」などと、漠然として的外れなイメージをしていますので、国民の主権どころか、生活をともにする大切な人の安全さえ守ることはできません。 さらに、ここ数年申請が激増している「難民」も、移民の一部なのです。日本の難民システムは、申請があればほとんど審査し、審査待ちの期間でも政府はその居住地を制限せず、初回申請の平均審査期間である9カ月ほどは合法滞在となります。さらに認定されなかった場合でも再申請が可能で、平均審査待ちは28カ月ほどになるそうです。当然これは移民に分類されるべきで、しかも再申請の回数には制限がなく、違う理由での申請を繰り返してさえいれば実質的合法滞在が可能。この「裏ワザ」はすでに口コミとなっている模様で、これを応用した滞在資格ビジネスや、脱法的滞在事例が発生しています。来日後、滞在資格条件をみたすことができないことから、不法滞在化を避けるために、あるいは不法滞在した後に難民申請を出したり、さらには技能実習生として来日した直後に職場を脱走し、制限のない就労を目的に難民申請するなどの確信犯的「偽装難民」が確認されるなど、あまりのゆるさに日本ではなんと国内から外国人が難民となる始末なのです。2018年までに必要な移民対策方針の確立2018年までに必要な移民対策方針の確立 昨年中の難民認定数はわずか19人。この人数をもって「日本は間口が狭い」「国際化していない」などという人がいます。しかし実際には昨年は前年比52%増の7586人の申請者と、23%増の再申請者3120人、合わせて1万人を超える難民申請者が合法的かつ長期的に日本滞在を許可されているのです。 法務省が許可した滞在合計年数に関する統計は存在しないため正確にはわかりませんが、短期滞在者を除く中期滞在者を含めた更新可能な資格での滞在人口と、この難民予備軍を含めると、日本には212万人ほどの移民と移民予備軍がすでに存在しています。世界標準的には移民とされる帰化一世の人口を含めれば、移民の存在実態はさらに大きいのです。 他国では難民申請者の居住エリアを指定の島やエリア内に限定したり、国によっては帰化後も被選挙権を得るまでには5年を要する(タイ王国)と法に定めるなど、来日外国人と移民と本国人を厳格に区別し、国民の主権を守っているのですが、これだけ多くの外国人が政治活動や社会運動まで黙認されて自由に暮らせる我が国ほど、間口が広く人権が保障されている国は珍しいくらいです。 それでも日本には、移民を労働力として必要とする企業組織や、実質移民国家となっていることを知られると都合が悪い人たち、移民の滞在資格を利用して金のなる木にしようとする人たち、さらに移民を使って日本の国政に影響を与えようとする国々が、「日本は国際化に立ち遅れた国である」という認識の流布を必要としているため、マスコミもこれを報じません。 これら国際化に取り残された法の不備や認識不足が、他国にアイデンティティを持つことを公言する二重国籍者を政党党首とし公的発言を許すなど、完全に国民主権を脅かしながら国家の暗黒史を更新中。国民主権を守ろうとすれば、国家の枠を取り外したい、政治家や市民団体など様々な階層や民族で構成された革新派が反対し対策を打つこともできないうちに、「人権」に守られた犯罪だけが国際化しています。平成27年の政府発表数値から外国人人口の割合を算出すると1.67%ですが、日本国内検挙人口における外国人割合は3.44%、殺人事件検挙人口では4.76%、刑務所被収容者割合は6.52%。ちなみに外国人比率全国一位の東京都は2.95%。つまり日本で一番国際化しているのは首都東京ではなく、刑務所内なのです。この問題、2018年までに解決しないと、大変なことになるでしょう。外国人はロボットではない外国人はロボットではない リオ五輪も終了し、東京は次の開催地として世界の注目を集め始めていますが、話は競技場の建設や「おもてなし」など、どうしても形に見えるものや表面的なイメージに終止しています。しかし、そのような中で国民は苦役と捉えてしまうほどの低賃金で働き、1077万世帯いる夫婦共働きでも苦しいと感じる人が多く、賃金格差は開くばかりです。そんなご時世でも企業は役員報酬を下げるどころか、外国人労働者を安価な給料で雇用しているのですが、日本は外国人に労働ビザを発給していないため、実質的な労働者を技能実習生として呼び込んでいます。曖昧な定義で、本来禁止されている実習生の単純労働を常態化させながら、人を人として思いやることのできない経営者は「本国より遥かに高い賃金を払っている」などと言いますが、彼らは日本で生活しているのです。さらに、政府は国家戦略特区として外国人メイドの受け入れや今後必要とされる建築労働者を確保しようとしていますが、これでは後世に私達の子孫が「当時の世情を利用し半強制労働させられた」との恨みを買うでしょう。 確かに東京五輪に向けて、建設業界を中心により多くの働き手が必要であることは確実です。しかし、言語も違えば物事の概念も生活習慣も異なる、意思疎通や理解が難しい外国人を呼ぶより先に、日本に潜在する体力が充実した「ニート」(15歳から34歳まで)56万人に目を向けるべきでは? 世間に貢献する企業なら、高齢化社会において「ニート」の定義に該当しない35歳以上の非労働人口を含む200万人以上の労働可能な働き手に、最低限の生活ができる程度の賃金を払って雇用すべきですが、これに加えて外圧に負けない政府の国民雇用と外国人対策、経済政策の覚悟が大前提となります。 人を人と思わず、働くロボットのような感覚で外国人を安価に使い、自国民の消費だけを狙う企業が経済的横暴を内外に続ければ、日本国民は国際化どころか手痛いしっぺ返しを食らうでしょう。 外国人労働者はロボットではありません。来日して働くならまず言葉の問題をクリアしなければならず、真に日本の国際化を目指して雇用するなら、日本語学校などでの言語習得が必須。でも企業がそこまで彼らをフォローするのでしょうか。それとも派遣社員と同じく使い捨てするつもりでしょうか。 また彼ら外国人労働者だって恋もすれば結婚したいし、子供だって生まれます。生まれた子供には親も日常使う自国の言葉を習得させたいし、母国の文化習慣は大切にしてもらいたい。「郷に入っては郷に従え」などと自分に課すのは日本人だけで、それができないからこそ世界に民族紛争が耐えず、これを鎮圧するために警察が出動し、鎮圧された国民の国は自国民への虐待虐殺を防ぐために軍を派遣する、これが戦争のきっかけになっている事を学ぶべきでしょう。 「人権」の呪文に金縛りに遭いやすい日本人は、「外国人人権拡張」のビジネスを多少やり過ぎて儲けていても、同情心と同調圧力からこれを許容することを国際化と勘違いしています。そして国民性を利用する外国勢力の思う壺に、もうはまっているのです。 池袋の街角に積まれた新聞のような中国人向けフリーペーパーには、「旅券のない方・ビザの切れた方・他人の旅券で来日した方と日本人の結婚」をうたった広告や、中絶堕胎を請け負うモグリの医者の広告などが堂々と掲載されていますが、彼らが楽に生きることを求める人間であることに思いが至らず、道徳格差のタブーを怖れて向き合わずに「国際化」とは先が思いやられます。画像は広告の一例 しかも、国策として移民を受け入れるなら、そのインフラを整える責任を国民が税負担で負うことになり、外国人への人道的応対の陰に日本人への非人道的経済負担が強まることは確実。本来、国家と国家の間には交流だけでなく距離も必要です。閉鎖的なのは制度ではなく日本人の脳回路であり、偽善的な笑顔で人権の同調圧力をかけるようなら、日本は自滅するでしょう。求める外国人労働の質が変わる求める外国人労働の質が変わる 今外国人労働者を必要とする理由の一つは、2020年の東京五輪に向けた労働力確保ですが、中でも最も必要とされるのが、建設労働の働き手です。私も刑事時代に多数の外国人労働者(不法滞在や密航による不法就労者)を実際に扱いましたが、最も多いのがこの分野の日雇い労働者でした。中国人の「工頭」(手配師)が集める働き手は特段の労働スキルを求められることなく、その日限りの日当払いですから身分確認は徹底されず、裏をめくれば工頭のピンハネや不法就労などの違法性がこびりついていました。 問題はさらに発展します。五輪建設ラッシュが終わる2018年末ごろから労働需要が変化し、おもてなし要員としての外国人労働者(通訳、接客)の技能や知識が必要とされるからです。そうなると外国人の肉体労働者階級は日本で失職しますが、無制限に笑顔で人道的要求に答えてくれる日本から帰国するでしょうか。それとも企業は彼らを正規社員として終身雇用し、十分な賃金でその生活を保護するでしょうか。職を失えば、必然的に滞在資格を失い不法滞在化しますので、身分確認の必要もない職業に流れるか、生きるために犯罪に手を染めたりすることは、密航費用の返済で生活に貧した来日中国人犯罪の取り調べに当たった経験から、私には手に取るように想像できます。そしてたとえ彼らの犯罪で日本人が被害を受けたとしても、彼らを呼び込んで解雇し解雇した企業は、もうその責任を取ることはないはずです。 彼らはどんどん街に溢れ、逮捕を免れる目的で難民申請をするでしょう。しかし政府がその見直しを検討し結果を出す目安は2020年とのこと。完全に手遅れです。 特に問題なのは、肉体労働者の大多数を占めるであろう来日中国人です。 来日外国人中、検挙人口で例年ダントツ1位を独占、その犯罪傾向はすでに社会問題化している上、本国の覇権主義とあいまって日本国民から当然の「反中意識」を招いていますが、この中国自体が、2020年を前に帰国に適さない国になっている可能性があります。 特に環境汚染は現時点でも致命的で、「がん村」を多数生み出す水質汚染は地下水にまで及び、PM2.5は衛星写真が海岸線を捉える事ができないほど濃度を上げて中国沿岸部を覆い尽くし、がん死亡率は15年前の550%増、2012年、新たにがんと診断された人は65万人にのぼります。中国の環境問題は、中国への進出や製造に関わる日本企業が、現地の反発や製品のイメージダウンを恐れているため、テレビや新聞でもその報道は抑えられがちです。8年ほど前に見てきた上海でさえ、私はゴミや排ガス、混沌騒然とした危険な交通秩序など、天地人に渡る汚れっぷりに驚いたものですが、現在の実態はより深刻です。現在来日中の技能実習生が実習を終え帰国するのは、解決の糸口さえ見えないほど環境汚染が進んだ2019年になりますが、果たして帰国するでしょうか。それどころか「環境難民」がやってきて、密航者や不法滞在者を逮捕しても強制送還先がないという困った事態に見舞われている可能性もあるのです。 さらに政界では、習近平より年上で国家副主席の李源潮でさえ家族の身柄が拘束されるほどの粛清の嵐が吹き荒れています。その粛清は、人脈とメンツを「人生の宝」とする中国人社会に強い影響を与え、便宜を図ってくれた政治家との繋がりから、私財没収を恐れて国外逃亡する企業家が増加の一途をたどっています。 中国では環境の悪化や政治不信、さらには経済破綻が引き金となり、5大戦区に再編成されて混乱する7つの軍区の人脈衝突や少数民族の蜂起でいつ内乱が発生するかわからない状態なのです。強制送還されたらがんになるか、貧困化するか、内乱に巻き込まれるかわからない。そんな未来の中国に、用済みとされ不法滞在化した中国人肉体労働者を強制送還できますか。誰にそれをやらせるのですか。やらせて良心が痛みませんか。それとも家族に傷みを負担させますか?内から外から難民が群がる日本内から外から難民が群がる日本 そうなれば、日本国内で滞在期限が切れた滞在希望者は、現在すでに口コミとなっている難民申請制度に活路を見出します。その結果1 本来お呼びでない外国人がどんどん増え、2 これに人権団体が食いついて人道的解決と要求を政府に突きつけ、福祉対策まで要求し日本国民の税負担が増加。3 人権ビジネスが発生し、さらに左翼労組も手を付けられない外国人労組団体が発生4 政界に食い込むことを目的とする外国人地域有力者などがすでに供給過剰となっているであろう大企業での外国人正規採用枠確保を訴え社会運動を開始、5 外国人票を確保したい革新勢力と外国人団体が結託して人権を楯に外国人参政権を訴え6 これに抵抗し警察の非力に立ち上がる自警団体や保守団体との民族摩擦を背景に、各国国民の権利主張を代表する領事館や民間「市民」団体の発言力が強まり、7 日本人との対立や各民族間の対立に警察が対処できず、暴力や略奪が横行…という一連の流れが、今すでに見えていませんか。私にはすでにこれらの小さなモデルケースが、「在日特権」を巡る嫌韓やいわゆるヘイト問題にすでに見えているのですが、気のせいでしょうか。 さらにその頃になれば、当然ながら中国から呼ばなくても多数の難民が来ます。 着の身着のまま中国沿岸から漁船に乗れば、黒潮に乗って沖縄〜九州〜四国〜本州へと流れ着き、一部は沖縄に流れ着いて、現在中国が主張し画策している「琉球独立」、さらにすでに準備委員会が発足している「琉球自治区」のきっかけを作るでしょう。これら難民の中には当然ながら、その身を守るための「武装難民」や、これを機に国外脱出して一旗揚げようとする「偽装難民」が混在し、しかも偽装難民には工作員が紛れ込んで、同情すべき存在として来日します。もし、浅はかな同情と表面的偽善の同調圧力で彼らを受け入れるなら、日本は確実に危機に陥ります。 現在のヨーロッパはその失敗の先駆者として混迷を深め、人道的難民受け入れが政治家の偽善的票集めであったことに気づくも手遅れとなっています。ドイツのメルケル首相も「時計の針を巻き戻したい」と嘆いて、国民も自国最優先主義を目指し始めましたが、時すでに遅し。気の優しい本国人の子供たちがハングリー精神旺盛な移民の子供にいじめられ、外国語併記により表示を小さくした母国語の文字に目を細めるお年寄りまで暴行を受ける中、体力的に弱い家族を守るために聞き取れない外国語に疑心暗鬼になる大人たちが、双方緊張感あふれる国際化社会を勝ち抜こうとしています。 国際化社会において本当に必要なのは、移民の受け入れによる混濁した社会ではなく、日本が日本としての魅力を保持しつつ外国人が憧れる「日本色」を発し、世界に喜ばれる国であり続けることです。人間、心は精神的向上を求め、肉体が快楽を求めるように、人間社会の国策においても理想と現実は相反することを知る、国民のための国会議員を選出して、世界に貢献すべき道を探るべきでしょう。それが日本の国際化であると私は思います。

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    寛容か排斥か、人類史上最も冷徹で複雑な「方程式」を私ならこう解く

    茂木健一郎(脳科学者) 移民・難民問題が、世界を揺るがせている。アメリカ大統領選でヒラリー・クリントン氏と接戦のドナルド・トランプ氏は、メキシコとの国境に壁を作るという主張を変えていない。イギリスのEUからの離脱の背後には、移民規制の問題があった。そして、ドイツのメルケル首相は難民問題における寛容な姿勢が国内で批判を浴び、「時計の針を戻したい」と発言した。 戦乱などで荒廃した地域からより安全な生活を求めて人々が移動することは、仕方がない。そのような人を前にして、人道的な配慮をするのも、現代の人権感覚から見れば当然のことだろう。 一方、人間には、異質な他者に対する警戒心もある。さまざまな国で、移民・難民問題をきっかけに、排外主義や、ヘイトクライムなどの事象が見られるのも、人間性の否定し難い一部だということになるだろう。レバノン北部トリポリ近郊の難民キャンプで医師の診察を待つパレスチナ難民=2016年3月(国連提供) 人道主義に基づく「寛容」か。それとも、「排外主義」か。識者の論も、メディアの報じ方も、二つの極の間で揺れ動きがちだが、現実は、もちろん、もっと複雑な「方程式」の中にある。 今、移民・難民問題を、現実に即して考えてみよう。人道主義から受け入れるにしても、無制限に流入させるのは、実際的でも、持続可能でもない。社会の物理的、経済的、人的キャパシティを超えて受け入れると、結果として、軋轢が生じるし、さまざまな事件も起こる。 その一方で、「ゼロ回答」も、人道的に無理がある。戦乱で罪のない子どもたちが生活の基盤を失い、寒さや飢えで震えている時に、手を差し伸ばしたくないという人はいないだろう。 課題は、移民・難民受け入れのプログラムの定量的な把握にある。単に、「かわいそう」か、「拒否」かの二元論で行くのではなく、具体的に、どれくらいの人々を、どのような時期に受け入れられるのか、という定量的なモデルが必要なのだ。 移民・難民の受け入れは、複雑な社会・経済的マトリックスの中で起こる。移動、食料、住居などのロジスティックスは、物理的な次元である。さらに、滞在が長期になれば、社会的、経済的な受容のコストがあり、制度設計の問題がある。 一番課題になることの一つは、「言語」だろう。どの国でも、その社会の一部として受け入れる上では、どれくらいその国の言語を理解し、話し、書くことができるかということが重要なパラメータとなる。 しかし、言語の習得は、一筋縄ではいかない。かなり良いプログラムを組んだとしても、習得には時間がかかる。さらに、習慣やマインドセットなど、社会の中で適応するためのさまざまな「ソフトウェア」を身につけるためには、それなりの努力が必要である。移民・難民受け入れの現実的な議論自体がパンドラの箱? 移民・難民問題を現実的な政策の中で定着させるためには、人道主義や、異質な他者との共生といった理想を掲げつつ、以上のような受け入れ、同化のプロセスについての定量的な評価が必要になるだろう。逆に言えば、そのような定量的なプログラムなしに、受け入れについての社会的合意を得るのは、難しくなってくるのかもしれない。 日本は、移民や難民の受け入れに消極的である。地理的な条件や、歴史的な背景があるとしても、今後もこのような政策を続けられるとは限らない。人道的な視点からの、諸外国からの批判も避けられないだろう。オバマ米大統領主宰の難民サミットで演説する安倍首相 =9月20日、ニューヨーク 一方、日本人の中に、外国からの移民・難民の受け入れについて、根強い抵抗感があることも事実である。そのような感情を無視して積極的な政策を進めても、人道主義においては先進的とみられていたドイツの事例を見てもわかるように、どこかで揺れ戻しが起こることは避けられないだろう。 日本においても、移民・難民を受け入れるとして、どれくらいの数を、どの時期に受け入れられるのか、その際の社会的コストは何か、逆にどのような効用があるのか、といった議論を、冷静に、定量的に始める時期が来ている。そのような定量的モデルがあって初めて、受け入れについての合意形成もできるだろう。 ところで、このような、移民・難民受け入れの定量的モデルに基づく議論は、必要であるが、同時に、「パンドラの箱」を開くことになるのかもしれない。 災害現場で手当てなどの優先順位を全体の最適を考えて決める「トリアージ」の概念は、広く行き渡っている。 移民・難民の問題も、それを定量的に論じると、結局は「トリアージ」と同じように、どのような政策が「最適」なのか、という議論につながる。「誰にとっての」最適かという議論を抜きにしても、これは、現代社会において、潜在的に非常に困難な問題につながる道筋である。システムにとっての「最適」を考えることが、個々の人間にとっては、厳しい結論を導く可能性があるのである。 似たような課題は、至るところにある。たとえば、生活習慣と病気との関連を論じたり、医療費の使い方の効率化を考える「公衆衛生」の分野は、一見、「やさしさ」に満ちているようでいて、実は背後には冷徹な「全体最適化」の論理がある。極論すれば、社会の効率化のために、事実上ある種の患者さんの健康悪化、寿命の短縮には「目を瞑る」という側面を、どうしても含む。「移民・難民」を「自分自身の問題」として考える 自動運転における優先順位も、同じことである。目の前に子どもが飛び出して来た時、後ろから来ているバイクの青年の命を危険にさらしても急ブレーキをかけるべきかどうか。そもそも、自動運転においては、常にその車に乗る者の命を救うことを最優先すべきなのか(それによって、周囲に事故が起こってしまったとしても?)英ロンドンでトルコから海を隔てたギリシャをボートなどで目指した難民や移民が着用していた救命胴衣約2500着を並べ、国際社会に難民対策強化を訴えるイベント=9月19日、ロンドンの英国会議事堂前 今まで曖昧に済ませてきたことを、定量的に議論し、全体の最適化を考える。それ自体は結構なことのように思えるが、個々の事例を見ると、「厳しい」選択を迫られる。そのような、私たちの人間性を脅かす「パンドラの箱」が、至るところで開こうとしている。移民・難民問題は、その一例に過ぎない。 移民・難民、公衆衛生、そして自動運転。これらの分野について全体最適を考える定量的なプログラムを考えることは、つまりは「システム」の問題である。そして、現代は、「システム」の前に、個人の尊厳が脅かされつつある時代なのかもしれない。しかも、その「システム」の計算を、人工知能が担おうとしている。 移民・難民をかわいそうだと思ったり、逆に排斥しようとしたりする時、私たちは、ともすれば、自分自身は「安全圏」に置いている。しかし、実際には、公衆衛生における医療費の配分や、自動運転における命の優先順位など、かけがえのない自分の尊厳を脅かす事態が、足元に迫っている。「人工知能によって計算される、システムの最適化」の時代が、もうすぐそこに迫ってきているのだ。 システムと個人の関係は、みんなの問題である。そう考えれば、移民・難民の問題も、身近に感じられてくるだろう。全面的な受け入れでもなく、徹底的な排除でもない、曰く言い難い中間の解決法を必死になって考えようとするだろう。「公衆衛生」や「自動運転」と同じ問題群として考えることで、「移民・難民」を「自分自身の問題」として、より深く考えようという気持ちを持つことができるのではないかと思う。