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    弱小ニッポン農業、TPP契機に欧米列強を迎え撃て!

    著者 谷重彦(三重県) 農業に限ったことではないが、競争力を高めるためにするべきことは、消費者ニーズに合った高品質なものを安く、かつ早く提供し、そのことを継続していくことである。そのためには市場調査を行い、消費者ニーズに合った物を生産・流通の合理化によって低価格・高品質で販売し、市場を拡大していくことが必要になる。ただ、これらは一定のビジョンを持ち、戦略的に行われることが最も重要だ。 日本の農業について考えてみると、このビジョンと戦略を持つことが国の農業政策と言えるであろう。だが、今のわが国の農業政策は競争力を高めるものと言えるのだろうか?   私はそうは思わない。建前はともかくとして、現状は国民全体ではなく一部の農業関係者の利益を目的に、あらゆる規制、保護によって閉塞状態となっていて、国際化どころではない。例えば「損・得」で言うと、すべての政策はそれによって損をする人と得をする人を生む。一部の人が損をするからといって、例え多くの人が得をしてもその政策を採用しないとすれば、全体を向上させることはできない。ここで言う一部の人とは農業協同組合職員30万人、農協組合員500万人、そして農政に関係する官僚、政治家であり、全体とは日本国民全てである。これから日本農業が国際競争力を高めるためには日本国民全体の将来を第一に考えた政策が必要である。  そこでまず、日本農業の現状の中から以下6つの事実を押さえておく。 (1)「全農家に占める第二種兼業農家は6割」  第二種兼業農家とは役所・農協・民間企業などに勤務しており、農業からの収入を期待するよりは、将来の転用益を期待するなどの理由で土地を持ち続けるために農業をしているサラリーマンたちである。(2)「兼業農家はサラリーマン世帯よりも高所得」  2002年のデータとして兼業農家の平均所得が792万円、サラリーマン世帯は646万円である。(3)「兼業農家はコメ作に集中」  生産額シェアとして兼業農家が占める割合は野菜18%、牛乳5%に対してコメは62%。コメはサラリーマンが片手間に農業しても生産できるということである。(4)「狭い耕地面積、低いコメの単位土地面積当たりの収穫量」  一戸当たり農地面積の国際比較として、日本1.8ha、アメリカ181ha、EU16ha、オーストラリア3407ha(平成20年度「食料・農業・農村白書」)。又、コメの単収についていうと、コメ農家の占める農地面積は農家全体のおおよそ6割あるのに、農業生産額では2割しかない。これはコメ作が兼業農家によって非効率に行われている結果である。(5)「GDPに占める農業の割合は1%、農林水産業で1.1%であるが、政府予算に占める農水省予算の割合は4.7%」(平成22年度一般歳出予算)(6)「2008年、日本の農業総生産額8.4兆円のうち、コメが1.9兆円、野菜2.1兆円、畜産2.6兆円」補助金漬けになっているコメよりも野菜や畜産の方が生産額が多い。改革による一定の痛手は覚悟を これら6つの事実からわかることは、日本の農業は零細で非効率的であり、その大半を占めるのが主にコメを作る比較的裕福な兼業農家である。そして国内生産額が少ない割に多くの国の予算が付けられているということである。 さて、このような非効率的、非合理的な状況になっている原因は何であろうか。それは農協・自民党・農水省によって「小規模兼業農家戸数」の維持が図られてきたためである。 具体的に例を挙げると、(1)米価維持(高関税と生産調整)、(2)農地法(一般企業の参入制限、農地利用・流通の制限)、(3)農協の優遇(銀行等の農協金融への参入制限、金融・経済の兼業が認められている) 私は日本農業が国際競争力を高めるためには、まず農協改革、具体的には農協団体の持つ優遇面の大幅な撤廃により金融・経済両活動の分社化を行い、それぞれ税制や監査制度を一般企業・銀行等と同じ基準に合わせるべきであると考える。もちろん銀行等の市場参入を促すために貸付時の信用保証も付けられる仕組みにする。次に農地法改正により株式会社をはじめ一般営利企業の市場参入の自由化。農地転用や農地売買の条件緩和を行い、農地の集約化、大規模化をはかり生産性向上など、生産や流通のコスト低減を実現する。そして状況に合わせて関税、生産調整の見直しを行うことであると考える。 もちろん、これらの改革によって一部の人といえども大きな痛手を伴う点は覚悟しなくてはならない。そこで、最終的なソフトランディング策として、戸別の所得補償制度や転職に際してさまざまな特別優遇措置を講ずる必要があるだろう。 私は幕末のペリー来航から始まった日本の開国と今の日本の農業が重なって見えて仕方がない。ペリー来航の後、日本の開国は多くの日本人が正しかったと認識していると思うが、相当な困難が伴ったのも事実だ。今回のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)をきっかけにした農業の国際化でも、関係する人々が一定の大きな痛手を負うことになるだろう。  だが、競争力が高まることで、それ以上に日本の国益に叶うものであると信じている。 今、農協改革は始まったばかりである。一部の人が損害を被ることもあるだろうが、国民全体が得をする政策を実現するためにも、日本農業の発展に向けた支援をしていくことが求められている。※参考文献 『日本の農林水産業』日本経済新聞社、八田達夫・高田眞(2010年11月22日発行)