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    「何をしても許される」天皇謝罪発言、韓国政治の根底にあるもの

    李相哲(龍谷大教授) 韓国の大物政治家の発言が、悪化の一途をたどる日韓関係を出口の見えない迷宮へ陥れた。今月8日、韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長がアメリカメディアの取材に「戦争犯罪の主犯の息子がおばあさん(元慰安婦)の手を取り、心より申し訳ないと言えば(慰安婦)問題は解消されるだろう」と発言した。 さらに、「天皇謝罪」発言が問題になると、文議長は「日本の責任ある指導者が、慰安婦に対して、納得できるだけの誠意ある謝罪を行うことが優先されなければならない」という趣旨だったと釈明した。 決着をつけたはずの慰安婦問題を持ち出し、謝罪を求めるのかという批判に対しては、「日本側は数十回謝ったと言っているが、私が見るところ、そう(被害者に誠意を込めて謝った)いったようなことはない」と反論した。しかも今のところ発言を撤回し謝罪する意向はないという。 このような経緯から確認できるのは、文議長の発言は、歴史に対する謙虚な気持ちの欠如、日本の政治体制に対する無知、普段の日本軽視の態度がうっかり言葉になって発せられたもので本音だったということだろう。 韓国立法府を代表する文議長の発言が憂慮されるのは、このことによって日韓関係は修復不可能な状態になる恐れがあることだ。それでも発言を撤回せず、「謝る事案ではない」と突っぱねるのはなぜなのか。 まず挙げられるのは、韓国には過去の歴史問題について常に道徳的に日本の優位にいると錯覚する風潮が強い点だ。日本が今まで誠意のある謝罪をしてなかったからという、文議長の発言からもそのような認識がにじみ出ている。 ご存じの人も多いと思うが、文議長が言う「日本が慰安婦問題で誠意ある謝罪をしていない」という主張は事実ではない。日本は、長い時間を費やし、官民挙げての真剣な議論を経て総理大臣の名で謝罪談話を発表した。1993年の河野洋平官房長官による「河野談話」、95年の村山富市首相による「村山談話」が代表的だ。米ワシントンを訪れた韓国国会議長の文喜相氏=2019年2月 村山談話を発表した後、「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)が設立され、それに日本政府は「必要な協力を行う」ことを約束し、事業資金として48億円を拠出、「医療費」名目で一人あたり300万円を支払った。さらに同基金は、国民から6億円を募金し、元慰安婦に一人あたり200万円の「償い金」を支払い、村山首相はじめ歴代首相の直筆署名入りの反省と謝罪の手紙を渡した。 そして約50人の元慰安婦がこの「償い金」を受け取っている。それでもこの問題が収まる気配を見せなかったため、日韓両国の間で議論を重ねまとめたのが2015年の「慰安婦合意」だ。このように、日韓の間では決着のついた話を文議長がまたもや蒸し返し、今度は天皇の謝罪まで求めてきたのである。 次に指摘しておきたいのは、韓国の根底にある、日本に対しては何をしても許されるという意識だ。これは、戦後日本が、戦前の植民支配に対する償いの気持ちもあって、韓国に対しては寛容であったことが背景にある。政財界に韓国を助けようとする人々が多数いたのだ。中国には卑屈な韓国 60年代に入って、韓国経済が飛躍的な発展を遂げた理由もその恩恵に他ならない。例えば、経済発展を牽引した浦項総合製鉄(現在のポスコ)が今日、世界的な企業に成長したのは、八幡製鉄(現新日鉄住金)の社長、稲山嘉寛氏の献身的な資金協力と努力があったから可能だった。 ソウル市内を走る最初の地下鉄1号線や、韓国の大動脈といわれる釜山とソウルを結ぶ高速道路も日本の資金と技術協力があったからこそ建設された。 このような歴史を忘却している韓国人が多いことは残念でならない。一般国民ならともかく、少なくとも社会指導層や政治家はこのような日本の「過去」を忘れてはならないのではないだろうか。こうした事実を無視し、敵と味方を分別できない近年の韓国政治は、まさに国益を害する要因だ。 そもそも、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、日本には厳しい態度を見せながらも中国には卑屈に思えるほど低姿勢だ。実際、240万人以上の犠牲者と、1千万人以上の負傷者が出た朝鮮戦争を起こした北朝鮮、そしてその北朝鮮を支援した中国政府に対し、過去を含めて韓国の左派政権が謝罪と償いを要求したという話は聞かない。 レーダー照射問題で韓国は日本の哨戒機の低空飛行を非難するが、味方であるはずの日本の哨戒機が近くを飛行するのがなぜ脅威となるのか。アメリカを介して准同盟関係にあるはずの日本の哨戒機を敵としてみなさないならレーダー照射はしなかったはずだし、仮に不手際で照射したなら再発防止策を講じ、謝れば済む話だ。韓国国防部がユーチューブで公開した反論動画(ユーチューブから)  にもかかわらず、日本に謝罪を要求する態度は日本との関係を悪くするための愚挙としか思えない。 では、このような韓国とどう付き合えばよいだろうか。小野寺五典元防衛相は、韓国に対しては「丁寧な無視」が必要だと提言したが、日韓関係をこのまま放置し、どんどん悪くなるのを、そのまま見過ごすのは良策ではない。 ただ、啓蒙思想家である福沢諭吉の「脱亜論」ではないが、日本が隣国より欧米を重視したくなる気持ちがなんとなく分かるような気がする。過去においてもそうだったように現在においても将来においても韓国にとって、世界中で頼りになるのは本来、日本のはずであり、日本にとっても韓国は大事な隣国である。 反日を「善し」とする韓国の政治家や文政権は、場合によっては本気で日本から見放されるという現実にいち早く気づいてほしいものだ。■レーダー照射は支持率上昇の絶好機「嘘の上塗り」韓国の悪知恵■北朝鮮工作に加担した文在寅、韓国の逆ギレはこれで説明がつく■朝鮮半島の戦時労働が「人権問題に化ける」韓国のカラクリ

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    韓国軍「レーダー照射」最悪の日韓関係

    韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題をめぐり、防衛省が証拠となる映像を公開した。韓国側の「レーダー照射はしていない」という言い分を覆す決定的証拠だが、それでも非を認めようとしない。韓国の対応は敵対行為に等しいが、日韓関係はどこまで悪化するのか。

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    田母神俊雄手記「レーダー照射、韓国軍の実力では自衛隊と戦えない」

    田母神俊雄(元航空幕僚長) 韓国艦艇から海上自衛隊のP1哨戒機に対し、火器管制レーダーの電波照射が行われた件で日本政府が、極めて危険な行為だとして韓国政府に抗議している。 火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射のために行われるもので、危険極まりないということのようだ。しかし、火器管制レーダーの電波照射とミサイル発射は常に一連のものとしてつながっているわけではない。また、火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射のためだけに行われるわけではない。 ミサイルの実発射よりは、ミサイルを発射するための訓練として火器管制レーダーの電波照射が行われる。すなわちレーダー操作訓練の一環として火器管制レーダーの電波発射が行われているのである。 世界中の軍が日常的にレーダー操作訓練を実施しており、地対空ミサイル部隊や海に浮かぶ艦艇などでは火器管制レーダーの電波照射は日常的に行われている。そしてその電波は地対空ミサイル部隊や艦艇などの周辺にいる航空機などには届いてしまうことが多い。 しかし、その際ミサイルが発射されないように二重、三重の安全装置がかけられており、一人のミスでミサイルが不時発射されてしまうようなことはない。 戦争が行われている場合や情勢が緊迫している場合なら火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射の前兆であり、危険であるが、平時においては火器管制レーダーの電波照射が行われることが、直ちに危険であるということはない。元航空幕僚長の田母神俊雄氏 陸海空自の対空ミサイル部隊では日々の訓練で、自分の部隊の上空に接近する航空機は、万が一に備えその航空機が何者であるか識別するとともに、あらゆる航空機を疑似の射撃目標としてレーダー操作訓練を実施している。疑似目標には自衛隊機だけでなく米軍機も民間航空機も含まれている。 これは多くの国で同様な訓練を実施していると思われる。民間航空機を目標として危険な訓練を実施していると騒ぐ人たちがいるかもしれないが、ミサイルが飛んでいくことはないので全く安全である。 しかし、危険だから民間航空機を疑似目標として訓練することはやめろという指示が防衛省などから出てくる恐れがある。そうすると対空ミサイル部隊は訓練の機会を大幅に失うことになり部隊の弱体化につながっていく。そういうことにはならないようにしてもらいたい。決して危険な訓練ではないのだから。 自衛隊は民間航空機や米軍機を含めレーダー操作訓練をしているだけである。同じ火器管制レーダーの電波照射でも戦闘機の場合は多少状況が違っている。戦闘機が空対空戦闘訓練を行う場合は、定められた訓練空域の中で、戦闘機同士で行われることが多いので、火器管制レーダーの電波照射は、模擬戦を戦う仲間の戦闘機に対して行われる。韓国軍に敵意なし 日米共同訓練の時には当然米軍戦闘機などに対しても電波照射が行われる。だから戦闘機の火器管制レーダーの電波発射は民間航空機に向けられることはない。 もちろん対象国の航空機に対しても戦闘機が火器管制レーダーの電波を照射することはない。これに対し地上や海上の対空ミサイル部隊の場合は、常時目標が存在するわけではないので、部隊や艦艇の上空に接近するあらゆる航空機を疑似目標として訓練を行っている。  さて、射撃管制レーダーの電波を対象国の軍用機に向けて照射することは、対象国に電波情報を与えることを意味する。だから周辺に対象国の軍用機がいる場合は、対空ミサイル部隊も戦闘機なども電波照射を控えるのが普通である。 今回、韓国艦艇の電波照射を受けたP1哨戒機も電波情報を収集できる機材を搭載している。従って今回韓国艦艇は、上空に来た航空機がP1だと気づかずに電波を照射した可能性がある。上空に来た航空機を識別するために軽い気持ちで電波照射をしたのかもしれない。 今年は日韓関係が悪化した年であった。慰安婦の問題、戦時中の徴用工の問題、国際観艦式における旭日旗の問題など、日本国民にとっては韓国に嫌気がさしてしまうようなことが多かった。 韓国があまりに理不尽なことばかり言う。今回の射撃管制レーダーの電波照射の件で、今度はわが国政府が強硬に抗議していることで、留飲を下げている日本国民も多いことだろう。韓国軍のレーダー照射問題を受けて記者会見する岩屋毅防衛相(中央)=2018年12月、防衛省 しかし、射撃管制レーダーの電波照射自体は別に危険なことではない。世界中で日常的に行われていることであり、いま日本と韓国が戦争をしているのではないのだから、電波照射とミサイル発射は別物である。 韓国海軍が敵意むき出しで海上自衛隊に向ってきたと考える日本国民もいるかもしれないが、私はそうではないと思っている。韓国海軍の実力では海上自衛隊と戦えないことは、韓国海軍は十分承知している。 喧嘩(けんか)はこれ以上エスカレートさせることなく収めた方が両国のためである。韓国に警告を与えるためには、韓国に対して圧倒的に強い日本の経済力を利用するのが一番いいと思う。■ 【徹底比較】韓国と北朝鮮の陸海空戦力はこんなにも違った!■ 韓国軍不祥事、今も韓国を支配する法より大義の儒教モラル■ ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

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    レーダー照射、韓国に道理を説いても無駄である

    )工業団地近郊の駅で、鉄道と道路の連結に向けた着工式が実施された。同年9月の南北首脳会談で合意された韓国と北朝鮮をつなぐ鉄道と道路の連結である。式には、南北閣僚らに加え、中露の政府高官や国連の幹部らも出席した。アメリカが対北制裁を強化する中、国連や中露を巻き込み、南北の融和ムードを演出した格好である。 厳しく敵対すべき軍事独裁国家とは身をかがめて宥和(ゆうわ)を図る一方、自由主義陣営の平和友好国(日本)に対する韓国の姿勢はなぜか敵対的かつ高圧的だ。12月20日午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。翌日、防衛省が公表した。 この駆逐艦には「SEA SPARROW Mk48 VLS」という艦対空ミサイルを発射できる装置が16セルある。現場を撮影した写真で見る限り、駆逐艦の砲は海自機を向いていないが、このミサイルは垂直に発射できる。つまり、駆逐艦は艦長の決断一つで海自機を撃墜できた、その寸前だったということになる。 本来なら直ちに陳謝し、責任者を処罰すべきところ、なんと韓国国防省は同日「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するためにレーダーを運用した。日本の哨戒機を追尾する目的ではなかった」と言い訳した。だが、それは通らない。 なぜなら、防衛省が翌22日に公表した通り「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断」した結果だからである。 そもそも「火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位や距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当」(同前)である。 加えて言えば、両者は周波数帯も違う。良くも悪くも、自衛隊が約一日がかりで「慎重かつ詳細な分析」を加えた結果なのだ。間違うはずがない。2018年10月、韓国・済州島で開かれている観艦式で海上パレードする韓国海軍の艦隊(聯合=共同) 「火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為」であり、「韓国も採択しているCUES(海上衝突回避規範)において、火器管制レーダーの照射は、船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられて」いる(防衛省)。 事実その通りだが、まさに「べき」論でしかない。CUESはあくまで「紳士協定であり、それに拘束されるか否かは基本的に参加国の自発的な意思に拠る」(防衛省防衛研究所『中国安全保障レポート2013』)。「法的拘束力を有さず、国際民間航空条約の附属書や国際条約などに優越しない」(防衛白書)。しびれ切らした防衛省 それを、一部政府高官や与党の有力議員らが「国際法違反」と合唱するのはいただけない。日本政府もその自覚があるからか。「極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります」との表明にとどめている。 こうした抑制的な姿勢が呼び水となったのか。韓国国防省の副報道官が同月24日「人道的な救助のために通常のオペレーションを行ったに過ぎず、日本側が脅威と感じるいかなる措置もなかった」と会見で述べ、「海自哨戒機が低空で韓国軍の駆逐艦に異常接近してきたので、光学カメラで監視したが、射撃管制レーダーからは電波を放射していない」と事実関係そのものを改めて否定した。だが上記の通り、この説明は通らない。 さすがに防衛省も痺(しび)れを切らしたのか。翌25日「本件について、昨日、韓国国防部が見解を発表していますが、防衛省としては、事実関係の一部に誤認があると考えています」との見解を公表した。 その中で「海自P1は(中略)当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません」、「火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認」したと主張した。朝日新聞の報道によれば、照射は5分間も続いたという。ならば、なおさらのこと、韓国の主張は軍事技術的に成立しない。要するに、あり得ない。 防衛省は、海自機が計3つの周波数を用いて「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みた経緯も公表した。米国のマティス国防長官(中央)、韓国の鄭景斗国防相(右)と握手する岩屋防衛相=2018年10月、シンガポール(共同) その前日、韓国は「通信状態が悪く、ともに救助活動をしていた韓国海洋警察(コリア・コースト)への呼びかけだと判断した」とも釈明した。だが、海自は「NAVAL SHIP」と3回も呼びかけたのだ。しかも「HULL NUMBER 971」と艦番号を付して…。それらを「コースト」と聞き間違えるはずがない。 「通信状態が悪く」云々(うんぬん)とも言い訳したが、「当日の天候はそう悪くなかった」(防衛大臣会見)。加えて、もし韓国の主張どおり海自機が低空で異常接近していたのなら、近距離ということにもなる。思い出される中国のウソ なら、なおさらのこと、彼らの耳には「KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971」とハッキリ聞こえたに違いない。そもそも海自機が接近したというなら、なぜ海自がそうしたように、国際緊急周波数帯などで呼びかけなかったのか。海自機からの呼びかけを無視したあげく、通告も警告もなく、相手に火気管制レーダーを一定時間継続して複数回照射するなど、決して許されない。 以上と同様の経過をたどった事案を思い出す。2013年1月、中国海軍艦艇による海自護衛艦などに対する火器管制レーダー照射が起きた。このときも中国(国防部と外交部)が、レーダー使用そのものを完全否定した。 レーダー照射が危険行為に相当し、国際慣習上も問題があるとの判断を軍指導部が下したからであろう(拙著『日本人が知らない安全保障学』)。その後、日中の主張は平行線をたどった。おそらく今回も、さすがにマズいとの判断を韓国政府が下したから、事実関係を否定しているのであろう。きっと中国同様、韓国も白々しく嘘を突き通す。 当時も今回も、照射を浴びた海自は現場から退避した。威嚇も、警告射撃も、火器管制レーダーを浴びせることもなく、退避した。そうした抑制姿勢が呼び水になったのか。その後も「事実に反する主張を中国はたびたび行った」(防衛白書)。だが、日本政府はそう白書に書くだけ。それ以上の行為には及ばない。そればかりか、中国との「協調」姿勢を示す。 2016年には、中国軍機が自衛隊機に火器管制レーダーを浴びせ、自衛隊機がフレア(おとり装置)を発出して、空域から離脱する一触即発の事案も起きた(拙著『日本の政治報道はなぜ「嘘八百」なのか』)。 このとき日本政府から「国際社会に与える影響も極めて大きく、個人的には遺憾だと思っている」と指弾されたのは、中国ではなく、事実関係をネット上で明かした元空将だった。日本政府はいまだに事実関係を認めていない。第2次安倍内閣発足から26日で6年を迎えるにあたり、報道陣の質問に答える安倍首相=2018年12月25日夜、首相官邸 以上すべてが安倍政権下で起きた。もちろん今回のことは韓国軍が悪い。だが、こうした事態を招いた責任の一端は日本政府にもあるのではないだろうか。もし、これまで同様の対応に終始するなら、きっといずれ、同様の事件が起こる。 中国や韓国に対して、いくら道理を説いても虚(むな)しい。残念ながら「紳士協定」を守るような相手でない。結局のところ「力」だけが彼らを動かす。■ 【徹底比較】韓国と北朝鮮の陸海空戦力はこんなにも違った!■ 韓国軍不祥事、今も韓国を支配する法より大義の儒教モラル■ ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

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    「レーダー照射していない」韓国が嘘の上塗りを続ける理由

    重村智計(東京通信大教授) 韓国海軍艦艇が自衛隊哨戒機にレーダーを照射した事件で、韓国政府は大揺れだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は面子を失った。大統領の許可なしのレーダー照射は、すなわち最高司令官の権威と指揮命令権の否定であり、韓国では「クーデター行為」と受け止められる。韓国国防省は「レーダー照射はしていない」と言い続けるしかないから、嘘の上塗りが続く。 日本人には理解できないだろうが、今回のレーダー照射は大統領の軍に対する統治能力が否定された極めて衝撃的な事態を招いた。平時に、海軍艦艇の兵士や将校、艦長、もしくは海軍首脳が「照射命令」を出したのであれば、事実上の「クーデター行為」と受け止められる。 事件が起きたのは、12月20日午後3時ごろ。石川県・能登半島沖で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。防衛省が事件を発表したのは、丸1日経過した21日午後のことだった。 防衛省は、事件の重大さを考え、事実確認を何度も行った。発表された声明でも、韓国側に一定の配慮を見せた。韓国を追い詰めず、「謝罪」の機会を残したのである。 ところが、韓国側は防衛省発表まで、何もしなかった。自ら起こした事態を明らかにして謝罪すれば済んだ話を、自分で複雑にしたのである。その裏には、韓国軍の混乱と「士気の崩壊」がある。 韓国国防省は防衛省発表を受け、「正常な作戦活動中レーダーを運用したが、日本の哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と述べた。この発表で、国防省は明らかに「レーダーを運用した」と認めていたのに、同日の日本のテレビニュースは「韓国、レーダー照射を否定」と伝えた。明らかな誤報である。2018年12月、韓国海軍によるレーダー照射に関するに臨む岩屋毅防衛相(川口良介撮影) 歴代大統領は、軍のクーデターを最も警戒した。今や韓国社会が軍のクーデターを受け入れる時代ではないが、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が軍事クーデターで政権を奪取した記憶は、韓国民にとって忘れがたいものがある。 韓国軍の部隊はクーデター防止のため、ソウル方面への後方移動は禁止されている。また、師団以上の部隊移動には、隣接する全ての師団への通告が義務付けられている。各部隊には「保安担当」の政治将校が配置され、司令官と部隊将校らの動向に目を光らせている。辻褄合わぬ説明を続ける理由 韓国では、国防省や陸海空の軍参謀総長の要職に、有能で人望ある軍人は決して任命されない。有能でなくても、大統領に忠誠心があることが最大の抜擢条件になる。常に軍のクーデターを警戒しているからだ。 今回の事件を、韓国が「レーダー照射ではない」と嘘をつく理由がここにある。もし、照射を認めてしまえば、軍による事実上の「クーデター行為」を放置した事になるからだ。そうなれば、文大統領への忠誠心と指揮命令権が否定され、最高司令官としての責任が問われる。しかも、韓国軍の統制力のなさまで世界に知られてしまう。 日本の世論が、正直に認めて謝れば済む話と思っても、韓国の政治文化では認めるわけにはいかないのだ。軍最高司令官としての大統領の権威と面子は丸潰れで、誰も権力者を恐ろしいと思わなくなる。そうなれば、政権崩壊につながる。 だから、国防省がレーダー照射について「気象条件がよくなく、遭難した北朝鮮漁船を探すために全てのレーダーを稼働させた」と全く辻褄(つじつま)の合わない説明をすることになる。だが、この説明では誰も納得しないだろう。 だいたい、韓国海軍艦艇に北朝鮮の漁船救助の任務は与えられていない。北朝鮮からの公式の救助要請もないのに救助活動をしたら、海軍艦艇は事実上、北朝鮮軍の支配下にあることになってしまう。遭難漁船が何十人乗りの大型艇ならともかく、数人の小型漁船だ。ありえない。見え見えの嘘をついてはいけない。 日本でも韓国でも、漁船の救助は海上警備組織が行い、日本では海上保安庁、韓国は海洋警察庁の任務だ。当たり前だが、海軍艦艇の任務は防衛だ。北朝鮮艦船の侵入を防ぎ、工作船を摘発するのが仕事だ。11月1日に見つかった北海道寿都町の岩場に漂着した木造船。船体にはハングルの文字も書かれていた(小樽海上保安部提供) 北朝鮮政府が漁船の救助を韓国政府に要請していないのに、韓国海軍は自主的に北朝鮮漁船救助を任務にしているのだろうか。百歩譲って、北朝鮮の工作摘発や、北朝鮮タンカーによる石油の「瀬取り」取り締まりなら、まだ納得できる。だが、事件当時は「気象条件が良くなかった」(韓国国防省)というから、海上での瀬取りは不可能だ。 では、レーダー照射が艦長や艦隊司令官からの命令でないとすれば、いったい誰が命令したのか。一つの可能性として、文大統領側近による「親政クーデター意図」が浮上する。 文政権の支持率は50%を割り込んだ。政権支持率が40%台にまで落ちたら回復できないことは、韓国では常識だ。「1年後の2019年末にはさらに30%台まで落ち、文政権が崩壊する」との観測がソウルの政界でささやかれ始めている。韓国を逃げ切らせるな この支持率低下は、南北首脳会談と徴用工判決が政権浮揚に全くつながらなかった事実を教えている。国民は、文大統領と左派勢力の「反日・親北朝鮮政策」に、ソッポを向いているのだ。 この危機的な状況を回避するために、大統領周辺が日韓関係をさらに悪化させる「作戦」に出たのではないか。日本との軍事的な衝突を演出し、「不当な言いがかり」と反論した上で「日本の悪意」を宣伝すれば、世論が一致団結し、政権支持も回復すると考えたのだろうか。だとすれば、浅知恵としか言いようがない。 日本は、文政権を巡る韓国の政治状況を理解した上で対応すべきだ。事実確認と責任者の処罰を求める一方で、韓国民を刺激しない「政権と国民の分離戦略」を取るべきだ。つまり、事実確認と関係者の処罰、被害判定、再発防止を徹底して求めることが重要になる。 韓国が応じなければ、日米韓3カ国の軍による公平な共同調査を要求すべきだ。自衛隊のパイロットの命が危険にさらされたのだから、当然である。 韓国国防省は、マスコミを使い「P1哨戒機が韓国海軍艦艇に低空で異常接近した」と報道させ、「日本の対応は騒ぎすぎだ」と説明し、国民の「反日感情」を煽ろうとしている。自衛隊機は「異常接近していない」のだから、この説明も嘘だ。 日本としては、韓国に「あまり追いつめない」「適当にうやむやにしよう」との考えを抱かず、「遺憾の表明」で逃げ切らせてはならない。韓国語では、単に「残念だった」という意味にしかならないからだ。これでは、日本がまた甘く見られてしまう。「ごめんなさい」の意味になる「遺憾に思う」と表明させることが肝要だ。2018年12月、日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相(右)とソウルの大統領府で握手する韓国の文在寅大統領(共同) 前述の通り、レーダー照射は、韓国政権の威信を揺るがす大事件である。単なる兵士の「反乱」や「誤作動」ではなく、指揮命令権が否定されたのだ。韓国軍は政権が変わるたびに、保守派と左派が軍首脳や幹部の大幅入れ替えを行う「報復人事」が横行し、軍の士気も低下している。この韓国軍の崩壊現象が背景にはあるのだろうか。 金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の親北政権で、「北朝鮮は韓国軍の主敵ではない」との立場を明らかにしていたように、流れをくむ文政権でもこの政策を実行している。おかげで、今や韓国軍は「敵のいない軍隊」だ。このスタンスが米韓同盟を崩壊に向かわせている。共通の敵が存在しなければ、同盟は維持できない。米韓同盟と韓国軍の混迷は深い。■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 徴用工「衝撃の判決」に文在寅の意向はどこまで働いたか■ 米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

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    レーダー照射、韓国が日本に期待した「KY過ぎる甘え」

    ) 日韓両国の対立が新たな局面を見せている。目下の問題は、12月20日、能登半島沖の日本海で発生した韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊所属哨戒機に対するレーダー照射問題だ。 この文章を書いている12月27日夜の段階で、この問題の焦点は韓国海軍駆逐艦が自衛隊哨戒機に照射したのが、対空ミサイルの誘導と主砲の射撃管制を行う火器管制レーダー「STIR−180」だったのか、それとも空中、さらには水上のターゲットにも使用できる捕捉追尾用の三次元レーダー「MW-08」にすぎなかったのかになっている。 この問題を巡り、日韓両国が出している情報は明らかに相互に矛盾したものだ。その成否を判断するために必要な1次情報に触れ得る立場にない筆者にとって、現段階で日韓両国のどちらの主張が正しいのかを判断することは不可能であり、踏み込んで議論することは自重したい。しかしここで注目したいのは、この問題が日韓両国間に横たわる「海」を巡る、先立つ二つの事件の延長線上に存在することである。 そのうちの一つは、今年10月はじめに韓国の済州島で行われた国際観艦式における海上自衛隊旗、つまり、旭日旗の掲揚を巡る問題である。事件の経過は以下のようなものだった。 この韓国軍主催の国際観艦式は1998年、韓国海軍設立50周年を記念してはじめられたものであり、以後、10年ごとに行われてきたものだった。海上自衛隊はこの国際観艦式に1998年と2008年の過去2回全てに参加し、そこにおいては自衛隊旗である旭日旗の使用は問題にならなかった。 しかしながら、今年8月、一部の韓国メディアがこの国際観艦式に海上自衛隊艦艇が「旭日旗を掲揚して」参加することを報じた後、状況は急速に変わることとなる。背後には8月15日の日本植民地支配からの解放記念日である「光復節」を前にして、「旭日旗」を問題視しようとする動きがあり、結果、韓国ではこの「旭日旗を掲揚して」の海上自衛隊艦艇の参加を問題視する声が高まることとなる。韓国・済州島で開かれている観艦式の海上パレードに出席し、艦上で演説する韓国の文在寅大統領=2018年10月(聯合=共同) すると一転して、韓国海軍は自衛隊に対して「自国国旗と太極旗以外の使用」の「自粛」を要請することとなった。そして結局、海上自衛隊はこれを拒否、国際観艦式そのものへの参加を辞退することになる。 二つ目の事件は続く今年11月、現在焦点となっているレーダー照射問題と同じ日本海上で起こっている。すなわち11月20日、1998年の日韓新漁業協定で設定された「暫定水域」で操業中の日本漁船に対して、韓国海洋警察庁所属の警備艦が操業停止要求した事件である。 よく知られているようにこの「暫定水域」は、日韓両国の間に横たわる領土問題を巡る対立が両国漁業に与える影響を最小限にとどめるために、日韓両国の漁民が共に操業可能な水域として設定されたものである。当然、そこにおいて韓国の海上警察が一方的に日本漁船を排除できる権限は存在しない。「甘えん坊」韓国の思考 ましてや現在のように衛星利用測位システム(GPS)を用いて自らの所在位置を簡単に確認できる時代において、一国の海上警察がこのような「単純ミス」を犯すのはあまりにも異例である。 そしてここでも、問題はその後の経緯である。関係者によると、この事件の発生後、韓国側は「慣れない海域での警備のため、現場がルールを理解していなかった」として自らの誤りを認めると同時に、事件を公にしないことを日本側に求めたという。しかしながら、事件の内容を重大視する日本側はこれに応じず、日本政府は公式に韓国政府に抗議を行うことを選択した。 さて、それではこの日韓両国の間に横たわる「海」を巡る問題の展開に共通するのは何であろうか。それは各々の事件の「重さ」に対する考え方とその扱いにおいて、日韓両国で大きな開きが生じていることである。 すなわち、旭日旗掲揚問題においては、「日本が自粛に応じてくれる」と韓国が期待を寄せていたことは明らかであり、また、暫定水域での事件においても韓国は自らの一方的なミスであるにもかかわらず、日本の好意にすがる形でその非公開を要請した。 背景にあったのは、日韓関係を考慮して、日本が何らかの配慮を行ってくれるであろう、という韓国の一方的な期待であったが、それは日本によってあっさりと裏切られることになった。 そして同様の日本への一方的な期待は、今回のレーダー照射問題についても言うことができる。この事件の展開を通じて韓国から伝わってくるのは、「日本側はどうしてこのような『ささいな』事件を取り上げて、問題視するのか」という不満であり、また、「日本側がそのような行動をするのは、何かしら特別な政治的意図があるのではないか」という思いである。事実、韓国における報道や政府関係者の言葉には、このような観点から日本への不満をにじませるものが多くなっている。海上自衛隊のP1哨戒機 もちろん、このような韓国政府、あるいは日本に対する韓国の世論、さらには現在の日韓関係に対する「感覚」はわれわれからすれば異様に見える。なぜならとりわけ今年10月30日に韓国大法院が出した、いわゆる「徴用工問題」に関わる判決以降、日本における対韓国感情が悪化していることは明らかであり、それ故に、仮に韓国政府や世論が日本との関係に一定の意味を依然見いだしているなら、韓国はもっと日韓間の関係に対して慎重な配慮をすべきだからである。 だからこそ、われわれからすれば異様に見える、この韓国の対応の原因は明らかである。彼らは依然、日本が徴用工判決以降、どれほど日本国内における対韓国感情が悪化しているのかを、理屈ではともかく、実感として理解していないからである。 韓国の人々にわれわれの思いをいかにして伝え、現在の状況の深刻さを理解してもらうのか。まずはそこから始めるしかなさそうである。■漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか■米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

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    「トランプと文在寅はとんでもない大統領だ」と大前研一氏

     アメリカの中間選挙は、上院で共和党、下院で民主党が過半数を握る「ねじれ状態」になった。韓国では、国際常識では考えられない「元徴用工」への賠償を命じる判決が出されている。それら二つの国のドナルド・トランプ大統領と文在寅大統領について、経営コンサルタントの大前研一氏が、比較し解説する。* * * 9月下旬にニューヨークで開かれた北朝鮮に関する国連安全保障理事会閣僚級会合で、日本の河野太郎外相は、従来の議論を踏まえて、北朝鮮の核を含むすべての大量破壊兵器や弾道ミサイルの「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」の重要性を強く訴えた。 ところが、トランプ大統領はその直後の選挙集会で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との関係について「恋に落ちた」「非常に気が合う」などと述べ、関係者を呆れさせた。 さらに韓国の文在寅大統領にいたっては、同じく9月下旬の国連総会の演説で、金委員長が非核化に向けて積極的に取り組んでいると評価し、あろうことか「今度は国際社会が北朝鮮の新たな決断と努力に前向きに応える番だ」と国連の制裁決議に反する主張を展開した。これに対し、日本の主要マスコミは通り一遍の報道で、この文大統領の演説の異常さを指摘したところは少なかった。 文在寅は、トランプとは別の意味で、とんでもない大統領だ。ソウルに無数のミサイルやロケット砲が向けられたままなのに、南北軍事境界線上の地雷や銃火器、監視所を撤去したことを“非武装化”と称して、いきなり南北統一に向かおうとしている。昨年まで核実験や弾道ミサイル実験を強行していた金委員長を「誠実で、経済発展のために核兵器を放棄すると私は信じている」と無防備に信用する発言もしている。 しかも、金委員長の祖父・金日成主席が抗日パルチザンの根拠地とし、父・金正日総書記が生まれた場所とされる「(偽りの)革命の聖地」白頭山まで行って「南側(韓国)の国民も、白頭山を観光で訪れることができる時代が来ると私は信じている」と述べたという。これは捏造された“金王朝”による独裁体制の正当性を認めたようなものであり、呆れてものが言えない。 金委員長が考えを改めたとか過去の経緯を謝罪したわけでもないのに、一方的に受け入れている。これでは、いわば“できちゃった婚”状態ではないか。 韓国人はよく「南北が一緒になれば、日本を超える」「統一朝鮮ができたら、日本人は困るでしょう?」と言う。 一般の日本人には韓国と競争しているという意識があまりないので困るも何もないのだが、結局、南北が一緒になった場合の“仮想敵国”がどこかといえば、中国やロシアのはずはないから、日本しかない。北東アジアで日韓が日本海を挟んで敵対することになる、という想定なのだろうか。 さらに、日韓関係の悪化に追い打ちをかける「徴用工問題」が起きた。韓国大法院(最高裁)が、新日鐵住金に韓国人の「元徴用工」4人に対する損害賠償の支払いなどを命じる判決を確定させたわけだが、この問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」されている。同協定に反する大法院の判決は前代未聞であり、まぎれもない国際法違反なのだ。 一方、この4人に関して調べてみると、当時の日本での給与が朝鮮半島の2倍近くあったために「官斡旋」という形で募集されていた案件に自ら応募してきたという。これは日本政府によって強制的に「徴用」されたとは言い難い、かなり本質的な前提条件の確認が必要なケースと思われる。星条旗(左)と太極旗(ゲッティイメージズ) 今の韓国大法院の金命洙長官を指名したのは文大統領だから、今回の判決に日本を“敵視”する文大統領の意思が働いたことは間違いないが、韓国は「国際法や国際条約を蔑ろにする国」だと自ら白日の下にさらしたようなものである。 トランプ大統領と文大統領の独善的な外交によって、日米韓の結束はバラバラになりつつある。米中対立の余波で日中関係が改善に向かうと見る向きもあるが、まだまだ中国の立ち位置は信用できるほどには安定していない。ここで日本は、あらためて自国の地政学的な位置を見つめ直し、新たな太平洋・極東アジアの外交および安全保障政策を根本から練り直すべきだろう。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 徴用工問題、もはや文在寅氏退任まで韓国と対話は無理か■ 米中間選挙にみる トランプ大統領の「予言の自己成就」■ 大前研一氏 「トランプ大統領なら横田空域の返還求めよ」■ 仏新大統領は民主党同様に税金バラ撒き始めると大前研一氏

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    高須院長 韓国民に同情「政府の不適切な教育の被害者だ」

    した。* * *──ここ最近は、徴用工問題をきっかけにまた日韓関係がかなり冷え込んでいます。さらに、韓国政府は慰安婦問題に関する日韓合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の解散を正式に決定しました。高須:本当にどうしようもない。韓国政府は、日本が相手であれば国際的なルールも破棄していいと当たり前のように思っているんだな。ここまで筋を通さない政府があるなんて信じられない。──日本政府もそろそろ強い姿勢に出るべきだという声も増えていますね。高須:そりゃそうだよ。こんなに舐めたことをされ続けているんだから、日本政府はむしろどんな対抗策に出てもいいと思う。何らかの制裁を与えてもいい。これが他の国だったら、すぐに大変なことになっている。やっぱり日本政府は弱気なんだよね。この点については、もっと批判されなくてはならないと思う。安倍政権を批判して、なんなら韓国の言い分を理解するかのようなスタンスの野党の人々もいるけど、それはまったくの見当違いだよ。野党が批判すべきは、日本政府が韓国に対して強い態度をとっていないこと。「このまま韓国を放っておいたら、国益が損なわれるぞ! ちゃんとしろ安倍政権!」っていう意見を持たなければならないのが野党だよ。──それにしても、どうして韓国政府は国際的なルールを守らないということができるのでしょうか?高須:韓国の政権はいかに国民を味方にするかという点に注力するから、国民感情に沿った形で日本に対する外交をするからね。それに、反日的な政策をとっていれば、ある程度の韓国民からの支持が得られるという現実もあるだろう。手っ取り早く支持率を上げるには反日をやっていればいいということなのかもね。 でも、いまの韓国民の反日感情というものは、間違った知識を根拠とする部分も少なくない。それこそ慰安婦問題がどこまで真実なのかということもそうだし、まるで日本が韓国を攻めていったかのように思っている韓国民も多いみたいだしね。日本と韓国は併合したのであって、侵略したわけではないというのに。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) つまりは、韓国政府が反日教育をやっているから、いまの韓国の反日感情が生まれたということ。韓国民はある意味被害者だよ。不適切な教育によって作られた悲劇の人々だ。 もしも、日本が国際的なルールを簡単に破るような国だったら、ぼくは恥ずかしくて日本人でいることが嫌になってしまうかもしれない。韓国政府は自国民にそれくらいの辱めを与えているんだよ。でも、韓国民たちは、何よりもまず“反日”を優先して、そういった恥ずかしさに気づかない。そんな国民にしてしまった韓国政府は本当に罪深いと思う。もはや洗脳──国民の影響力が大きいと思われている韓国ですが、実は政府が国民をかなりコントロールしている、と。高須:そう。もはや洗脳だよ。韓国の人々が、早く真実に気づいてほしい。そういえば、国連の人権理事会で日本の「報道の自由」が狭まっていると指摘されていたみたいだけど、まったくナンセンスだよ。日本ほど自由な報道が許されている国はない。政権批判だって当たり前だしね。それをいうなら、韓国のほうがよっぽど深刻だ。韓国では親日的な報道なんてできないんだもん。そこに自由はない。 それに韓国の有名人が親日発言をするとそれだけで批判されるというじゃないか。言論の自由すらないんじゃないかと思えてくる。日本文化も全面解禁になったといわれているけど、果たして韓国のテレビで日本の音楽が普通に流れているかというと、決してそういうわけではないらしいしね。全然自由が与えられていない韓国の人々が気の毒に思えてくるよ。──そんな韓国に対して日本はどうするべきなのでしょうか。高須:結局、厳しい態度をとるしかない。やっぱり日本は優しい国だから、なかなか韓国を切り捨てることができないでいるのは事実。無理やり切り捨てることはないけど、間違ったことに対してはちゃんと間違っていると言い続けることも必要だ。徴用工問題や慰安婦問題は解決済みであるという立場は崩さず、きっちりと対抗していくしかないだろうね。* * * 韓国における“国民の不自由”を指摘した高須院長。日本としては、韓国は特殊な国であることをしっかり認識したうえで、韓国のわがままに付き合わず、毅然とした態度で対峙することが重要なのかもしれない。【プロフィール】高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。昭和大学医学部客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。脂肪吸引やプチ整形など、日本に「美容整形」を広めた第一人者。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子氏との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)、『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)、『行ったり来たり 僕の札束』(小学館)、『ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて』(小学館)、『炎上上等』(扶桑社新書)、『かっちゃんねる Yes! 高須 降臨!』(悟空出版)など。最新刊は『大炎上』(扶桑社新書)。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 高須院長 金正恩評価する声に疑問「それこそ歴史修正主義」■ 韓国が封印する不都合な史実「自国青年1700人を強制労働」■ 高須院長がマスコミに注文「先に反日ですと宣言して」■ 高須院長「反安倍かどうか」で動くことがいちばん危険

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    崖っぷちの金正恩、万策尽きた文在寅「南北首脳の叫び」

    道が閉ざされる」との談話を出した。 これらの発言は、事態が好転しないことへの痛々しい悲鳴だ。一方で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率も40%台に突入し、なおも下降を続けている。 今、北朝鮮の指導部で何かかが起きている。ここ数カ月、日米韓の情報機関は2人の高官の動静を注目していた。1人は、統一戦線部長を兼ねる金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長。米朝交渉の責任者だが、2カ月以上姿を見せなかった。米国のポンペオ国務長官は交渉相手の「金英哲」と連絡がつかない、と更迭の可能性に言及していた。 もう1人は、朴光浩(パク・クァンホ)党副委員長だ。金委員長の妹の与正(ヨジョン)女史の側近とされ、大出世した。さらには、党の宣伝扇動部長を兼ね「実力者」と言われていた。それが、金総書記「七回忌」の写真に姿が見られなかった。 朝鮮中央通信は12月17日、幹部を従えた金委員長が父親の遺体が安置される錦繍山(クムスサン)太陽宮殿に参拝する写真を公開した。早速、各国の情報機関はこの写真を徹底して分析した。2018年12月17日、錦繡山太陽宮殿を訪れた金正恩朝鮮労働党委員長(奥の前列左から6人目)ら=平壌(朝鮮通信=共同) ところが、金副委員長の名前と顔は確認されたが、朴副委員長の名前と顔は発見できなかった。朴副委員長は12月10日に、北朝鮮の人権侵害や言論封殺に関与したとして、米国の制裁対象に指定されたばかりだった。核実験再開「脅し」のウラ この事実を踏まえ、金委員長の言葉や北朝鮮外務省研究所の声明を読み解くと、金委員長の苦境と「叫び」が理解できる。 金委員長は、金総書記「七回忌」に「党は7年間、将軍の思想と路線を固守し、遺訓を貫徹するために闘争してきた」と述べた。だが、この指摘は事実ではない。父親が掲げた「先軍政治」を「使命を果たし、勝利した」との理由で廃止したからだ。 その代わり、「核開発と経済建設」の「並進路線」を宣言した。軍部を納得させるために「核開発」のスローガンは降ろせなかったのである。ところが、昨年末には「核武力完成」を理由に並進路線をやめ、「経済優先」に変更した。確かに、北朝鮮が直面する「経済停滞」を打開するには正しい政策転換だが、軍部エリートの反発は強い。 その反発を意識して「金正日総書記の指示通り実行してきた」と強調し、自身の責任を回避しようとする意図がありありだ。つまり、経済開発がうまくいっていない現実を雄弁に物語っているのだ。 昨年11月末、北朝鮮は「核武力を完成させた」と宣言し、核とミサイルの実験中止を宣言した。これを受け、米国のトランプ大統領は米朝首脳会談に応じた。ところが、北朝鮮への制裁は全く緩和されず、経済も停滞したままだ。この状況に、軍エリートの間では「実験中止は早すぎた」との批判の声が聞かれるという。 そのような中で、北朝鮮外務省の米国研究所は12月16日に「制裁圧迫と人権騒動で核を放棄させられると計算したのなら、大きな間違いだ。非核化への道が永遠に閉ざされる」との声明で、核実験を再開すると「脅し」をかけた。この声明は「北朝鮮軍部の批判」を意識したもので、軍をなだめるためのものだ。2018年12月17日、北朝鮮の金正日総書記死去から7年を迎え、平壌の同氏の銅像(右)が立つ「万寿台の丘」を訪れた市民ら(共同) 北朝鮮が、米国を刺激しないように神経を使っている様子がよくわかる。もし、外務省が自ら声明を出せば、米国が反発する。それを避けるために「米国研究所政策研究室長」という低いクラスの肩書を使った。だいたい「米国研究所」が実在するかどうかも疑わしい。看板だけの存在だろう。 北朝鮮経済は、韓国の経済学者によると「17年の経済はマイナス5%成長で、18年もマイナス成長」という。経済は良くなっていない。米国の経済制裁が効果を上げているのである。金正恩「ソウル訪問」の実現度 それに加え、日米中露との外交関係も打開できていない。平壌では、金委員長が18年10月にロシアを訪問して朝露首脳会談を行い、中国の習近平主席の北朝鮮年内訪問で中朝首脳会談が実現し、その後に米朝首脳会談だとの見通しが語られていた。ところが、三つの首脳会談は全て実現しなかった。どの首脳も金委員長を相手にしてくれないのだ。 トランプ大統領は、既に北朝鮮への関心を無くしている。2019年、米国の関心は一気に次期大統領選挙へと向かう。非核化に応じない北朝鮮を相手にする余裕はない。 一方、韓国では年末に入って「金委員長の韓国訪問」の噂が意図的に流された。支持率低下が止まらない文陣営が、支持率アップを狙った「世論操作」だろう。韓国の歴代政権で、50%以下の支持率に低下した後に回復した例はない。1年後の2019年末には30%台まで落ち込むと、ソウルの政界ではもっぱらの噂だ。 文大統領は、金委員長の訪韓に期待をかけているようだが、来るわけがない。訪韓のためには、南北鉄道の開通や開城(ケソン)工業団地の再開など、国連の経済制裁解除や緩和が必要だが、米国は決して認めないだろう。 また、仮に訪韓が発表されても、韓国内で大反対運動が起こり、金委員長の写真や北朝鮮国旗が焼かれるのは避けられない。金日成(キム・イルソン)主席や金総書記の写真も踏みつけられるだろう。そうなれば、金委員長の訪韓は中止される。北朝鮮国内でも、側近が「訪韓すれば暗殺されます」と忠義顔をして反対する。 文大統領が期待する支持率回復の夢は幻でしかない。2019年からは与党や左翼勢力の中で、次期大統領候補を巡る政争がさらに激化するからだ。2018年9月、白頭山(ペクトゥサン)のカルデラ湖「天池」で、つないだ手を上げる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央左)と韓国の文在寅大統領(同右、平壌写真共同取材団) 既にソウルの政界では、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のスキャンダルの噂や逮捕の見通しが語られている。次の大統領を狙う任鍾晳(イム・ジョンソク)大統領秘書室長と朴市長の対立はソウルでは常識だ。 2019年の韓国では、左翼政権内の政争やスキャンダルが噴出し、文政権の支持率も低下、左翼政権への失望が高まるだろう。南北朝鮮ともに激動の年になるのは間違いない。■ 「同情するならカネをくれ」金正恩がプーチンを見限った理由■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 習近平先生の怒りを買った「悪ガキ」金正恩の大チョンボ

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    「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

    降、近時だけでも日韓慰安婦合意の「骨抜き」の動きや、新日鉄住金(旧新日本製鉄)の戦時労働者訴訟に係る韓国大法院判決に表れたように、日韓関係にはネガティブな材料だけが次々と積み重なっている。 ゆえに、今後、どのような悪しき材料が日韓関係に絡んで噴出したとしても、それは、もはや大仰に反応するに値しない。それは、現下に零下30度に達している日韓関係の「温度」を、零下40度や零下50度に下げるほどの意味しかないのであろう。近々、韓国大法院が三菱重工の戦時労働者訴訟に絡んで下す判決は、新日鉄住金訴訟と同じ類いのものになるとされているけれども、それもまた、厳寒期に入った日韓関係の「温度」低下を示す材料でしかない。 目下、米中両国を軸にした「第2次冷戦」が始まろうとしているという観測は、既に国際政治観察に際しての「共通認識」になっている。 10月上旬、米国のマイク・ペンス副大統領がワシントンのハドソン研究所で披露した対中政策包括演説の意義は、それが米国政治の「異形の存在」としてのドナルド・トランプ大統領ではなく、彼よりは米国政治の「主流」や「体制派」の立場に近いペンス氏の口から発せられたことにある。ペンス氏の「ハドソン」演説は、現下の米国における最大公約数的な対中認識を反映したものであるといえる。 そうであるならば、日韓関係もまた、米中「第2次冷戦」の相の下に語られなければならない。米中「第2次冷戦」の局面では、東南アジア・南シナ海と並んで朝鮮半島・東シナ海が、その「激突の場」になるというのは、あえて語るまでもない。2018年11月、APEC首脳会議に出席したペンス米副大統領(奥)と習近平・中国国家主席(ロイター=共同) 1980年代末期までの「第1次冷戦」局面では、韓国が日米両国にとって「こちら側」にあるのは、自明であったけれども、「第2次冷戦」局面ではどうなのか。「第1次冷戦」局面でも「第2次冷戦」局面でも、日本が対韓関係に寄せる国益の本質は、「韓国は、中露両国や北朝鮮のような大陸勢力に対する『防波堤』の役割に徹する気があるか」ということでしかない。 それは、米国の極東戦略の必要に合致するものでもある。 ちなみに、シンガポールのリー・シェンロン首相は、11月中旬、パプアニューギニア・ポートモレスビーで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に先立つ東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国会合閉幕直後、次のように語った。切迫性なき文氏の対外姿勢 「東南アジア諸国は、そういう事態にはすぐにならないことを望むけれども、米中確執が深まっていけば、米中のいずれかを選ばなければならなくなる」 シンガポール単独としてならばともかくとして、東南アジア諸国が総体として、米中両国のいずれかを選ぶようなことができるのかは、定かではない。ただし、そこには、米中確執の狭間に置かれかねないシンガポールや他の東南アジア諸国の現状を前にして、リー氏が抱いた切迫意識が浮かび上がる。 翻(ひるがえ)って、文氏の対外姿勢からは、リー氏が抱いているような切迫性を嗅ぎ取るのは難しい。そうした文氏における切迫意識の欠如こそが、彼の対日「尊大・軽視」姿勢にも反映されているのであろう。 日本経済新聞(電子版、11月22日配信)は、韓国大法院判決に対する米国の反応を報じた記事の中で、「米政府では最近、韓国による南北協力の傾斜に警戒感が高まっていた。韓国が米国と十分な相談もなく、南北境界線の上空を飛行禁止区域に設定したことには米が不満を伝えている。きしみつつあった米韓協調に新たな火種が加わった格好だ」と伝えている。 この記事は、対日関係を顧みない文氏の姿勢が米韓関係の軋(きし)みも増幅しているという認識が米国政府部内に広がっていることを示唆している。文氏は、そうした米国政府部内の懸念の意味を適宜、理解しているであろうか。前に触れた文氏における切迫意識の欠如は、そのことを指してのものである。 そもそも、1980年代末期以降、韓国が享受した「民主主義体制」「経済発展」「『安全保障は米国、経済は中国』を趣旨とする外交の自在性」の3点セットは、過去30年の「冷戦間期」の国際環境の所産であった。韓国の対日姿勢は、それがポジティブなものであれネガティブなものであれ、そうした3点セットを反映したものであった。2018年10月、韓国・済州島で行われた国際観艦式で掲揚された李舜臣将軍を象徴する旗。手前は韓国の文在寅大統領(聯合=共同) しかし、「冷戦間期」が終わり、この韓国繁栄の3点セットを支えた条件が揺らぎつつある今、韓国は近時には際立っている対日「尊大・軽視」姿勢を含めて、従来の対外姿勢を続けていられるのであろうか。文氏の対外姿勢には、「冷戦間期」の惰性が強く反映されているのではないか。 今後、日本の対韓姿勢を語るに際しては、こうした韓国の対外姿勢の観察や評価が全てに優先される。韓国の対日姿勢の一々に正面から反応するのは、当節、もはや大して意味のないことであろう。

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    漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク

    木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授) 韓国最高裁による徴用工判決や、慰安婦問題における「和解・癒やし財団」の解散など、相次いで韓国から報じられる動きに日韓関係は大きく揺らいでいるが、その背景には一体何があるのだろうか。 こうした韓国の動きについて、「文在寅(ムン・ジェイン)左派政権が日本への攻勢を強めているのだ」という議論がある。これは、韓国では大統領が裁判所に対しても強い影響力を有しているという理解に基づいており、文在寅政権による組織的な動きの結果だとされている。 とはいえ、このような見方はいささか単純に過ぎる。例えば、10月30日に出された元徴用工らに対する最高裁の判決は、6年以上も前の2012年5月、同じ最高裁が下級審の判決を差し戻し、再び上告されてきたものである。 どこの国においても、最高裁が自ら差し戻し、下級審がその最高裁の差し戻し判決の趣旨に従って出し直した判決を、最高裁がもう一度覆すことは考えにくい。事実、今回の判決の趣旨は基本的に2012年の差し戻し判決に沿ったもので、その論旨が新しいわけではない。 そもそも、この判決に対し、1965年の日韓請求権協定によって個人的請求権が消滅した、とする少数意見を出した2人の判事のうち1人は、文在寅が自らの大統領就任後最初に最高裁判事に任命した人物だ。逆に保守政権であった李明博(イ・ミョンバク)や朴槿恵(パク・クネ)が任命した判事は、1人を除いて、判決を支持している。 文在寅に近い左派が「反日判決」を支持し、これに対抗する右派がこれに反対する、というほど韓国の状況は単純なものではない。当然、文在寅政権が意図的に「反日政策」を仕掛けているなら、こんな状況になるはずがない。APEC首脳会議の関連会合に臨む安倍首相(左)と韓国の文在寅大統領=2018年11月17日、パプアニューギニア(代表撮影・共同) 重要なことは、徴用工判決から慰安婦関係の財団解散に至るまでの過程は、日本において考えられているほど韓国で注目されているわけではないということだ。 実際、韓国内の雰囲気は「どうして日本はこの判決でこんなに怒っているのだ」という声が多く聞かれる状況である。これはよく誤解されているが、今日の韓国では日本に対する政策のあり方で、大統領の支持率が上下することはほとんどない。韓国で何が起こっているのか 今年1月の慰安婦合意にかかわる見直しの発表時も、徴用工裁判の時も、また慰安婦関係の財団解散の際にも、文在寅の支持率はほとんど動いていない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権期や李明博政権期のように、領土問題などの対日政策のあり方で大統領の支持率が大きく上下する状況は、今の韓国には存在しない。 そしてそのことは、文在寅をはじめとする韓国の今日の政治家にとって、対日強硬政策を取り関係を悪化させることで得られる利益がほとんどないことを意味している。 文在寅政権の支持率の推移をみれば、徴用工判決のインパクトがほとんどないのに対して、税金引き下げの影響の方がはるかに大きいことが分かる。 要するに、文在寅政権が一連の事態を意図的に仕掛けているわけではないことは、彼ら自身の対応からも明らかだ。そもそも徴用工判決が出て1カ月近く経つが、文在寅自らこの問題について公の場で一切触れていない。 これは文在寅政権がこの事態への対処の方向を決めかねていることを示している。とはいえ、それはそれで不思議なことだ。なぜなら、先に述べたような事情から、徴用工裁判においては、いったん判決が出ればその内容が日韓関係に大きな打撃を与えるであろうことは容易に予想できたからである。徴用工裁判前後の文在寅支持率推移(出典:Realmeter) 慰安婦関連の財団の解散も同様だ。仮に徴用工判決への対処として何らかの政治的妥協を日本との間で模索するなら、先に締結した慰安婦合意を無にするかのような行動を行うのはマイナスにしかならない。 加えて11月5日には、韓国外交部はわざわざ「慰安婦合意には法的効力がない」という公式解釈まで示している。先に結んだ国際的合意の法的効力を一方的に否定する相手と、歴史認識にかかわる重要な合意を新たに結ぶことは難しい。これだけ見ると韓国政府はわざわざ日本との妥協の道を閉ざしているようにしか見えない。 結局、韓国では何が起こっているのか。その答えは彼らには確固たる対日政策がなく、政権内での十分な調整もされていない、ということである。韓国「日本は重要じゃない」 北朝鮮との協議に総力を注ぎ、そのためのワシントンの動きに一喜一憂する今の韓国政府にとって、日本はさして重要な存在には映っていない。だからこそ大統領も国務総理も、また外相も、今後の日韓関係をどうするのかについて具体的なアイデアを有していない。 そして、それは彼らが重視する北朝鮮問題との関連についてすらそうである。韓国政府は現在の北朝鮮を巡る動きにおいて、日本に特段の役割を求めておらず、だからこそ、いかなる具体的な提案をも伝えてこない。 彼らが日本に当面望んでいるのは、日本が彼らの北朝鮮政策の邪魔をしないことであり、それは日本が何もしてくれなければそれでよいことを意味している。 韓国側が自衛艦に旭日旗の掲揚自粛を求めた問題が勃発した直後、文在寅が年内の訪日を早々に断念して見せたように、今の韓国は日本をさほど重視しておらず、大統領もそのリスクを取ろうとはしない。だからこそ、事態は司法部や行政部の各部署がばらばらに動くことにより、ますます悪化する。 旭日旗問題にせよ、慰安婦問題にせよ、徴用工問題にせよ、例えば教科書の記述に見られるように、韓国では「国の建前として」、日本に対して批判的な意見が主流である。ゆえに、誰かが日韓関係を考慮して統制しなければ、悪化させる方向へとしか動かない。 そして、それは「政権が世論を配慮して行っている」というようなものですらない。誰もが何も考えずに状況に流された結果として、次から次へと新しい既成事実が作り上げられ、そのことに後から気づいた韓国政府は事後的な対処に追われることになる。韓国の文在寅大統領(右)と抱擁する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年4月27日、板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団撮影) しかしながら、そこにグランドデザイン(長期的な計画)はなく、現れる施策は弥縫(びほう)的なものになる。日本の重要性が低下した状況の中、動きは遅く、誰も事態の責任を取ろうとはしない。 このため、ますます文在寅の訪日は遅れ、日韓関係は悪化していくことになる。仮に事態が政権の統制により動いているなら、政権を動かしさえすれば関係は改善するだろう。しかし、問題は事態を誰も統制しておらず、統制するための真剣な努力もなされていないことである。しばらくは韓国の対日政策は漂流を続けることになりそうである。(敬称略)

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    元徴用工裁判、日韓「解釈の違い」をどう埋めるべきか

    はこんなひどい仕打ちができるのか」という嘆きでした。 2人は「大阪工場で2年間働けば技術が習得でき、韓国に戻って技術者として就職できる」という募集広告に応じて大阪に連れて来られました。ところが、大阪では鉄格子のはまった寮に収監され、自由も与えらない状況だったといいます。このとき初めて「だまされた」と思ったそうです。 「賃金を全額支給すれば浪費する」という理由で月2、3円程度の小遣いを支給されただけで残りは強制的に貯金させられました。そして十分な食事も与えられないまま技術習得とはほど遠い過酷な労働に従事させられました。警察官がしばしば立ち寄ることもあり、「逃げてもすぐに捕まえられる」と言って彼らを監視していたといいます。朝鮮半島でも徴兵制が実施されることになり、申千洙さんは徴兵検査を受け、その後徴兵が決まったために寮から逃げようとしたところ、舎監による凄まじいリンチを受けて後遺症が残ったといいます。 そして1944年、彼らは突然「君たちは徴用された」「お前たちの体はもはやお前たちのものではなく自由はない」と言われました。日鉄は軍需工場の指定を受けたので、そこで働く従業員は募集で来た朝鮮人労働者も含めて全員「現地徴用」されたのです。2018年10月30日、判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。前列中央は原告の李春植さん(著者撮影) 2人が求めた「代価」には、あまりの苦しさから逃げ出した時に受けたリンチの痛みや、「当時のお金で牛6頭が買えた。あのお金が貰えていれば私の人生は変わっていた」という言葉に込められた思いが詰まっています。日本での強制労働の記憶が、彼らの心の傷(トラウマ)となって人生を送ったことを私たちは忘れてはならないと思います。盧武鉉政権の政策 その後、2人以外に日鉄の八幡製鉄所や釜石製鉄所で強制労働させられた被害者が183人(うち生存者48人)いたことが判明し、彼ら全員の救済を求めて日鉄と交渉も続けましたが、2003年に日本の最高裁が請求を棄却したため、会社側との交渉も途絶えてしまいました。納得できない被害者側は、全員が一斉に提訴すると審理に膨大な時間がかかるため2005年に5人の被害者に絞ってソウルの裁判所に訴えを起こしました。 その間、2002年に誕生した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、日本の植民地支配や朝鮮戦争での民間人虐殺、独裁政権下での弾圧事件など過去の政権によって行われた不正をただし、損害を受けた人たちの人権回復の取り組みを進めることで、より良い韓国社会を目指そうという政策を推し進めていました。 そのような流れの中で日韓条約に関する公文書が公開され、日韓両政府が植民地支配責任の問題を曖昧にしたまま条約を締結したことが暴露されました。また、条約締結後の韓国政府の被害者への施策についても不十分であったことが明らかとなりました。これを機に韓国政府は日本に強制動員されて亡くなった被害者一人当たり2000万ウォンの支給や生存者への医療援助などの施策を実施しました。 日韓条約・請求権協定は締結まで14年もかかりました。日本が過去の植民地支配は合法であったと主張したのに対し、1910年以降の植民地支配は違法であったと主張する韓国と根本的な対立があったからです。最終的に「もはや」無効であるという文言でどちらにも解釈できるよう政治決着し、ようやく締結にこぎつけたのです。 このため「有償・無償5億ドル」についても、日本政府は「独立祝い金」=経済援助であり、植民地支配への賠償ではないと明言しています。そして、無償援助の3億ドルですが、実際は当時の韓国政府が日本に負っていた「借金」4573万ドル分を差し引いた金額が援助されています。また、有償援助と合わせた5億ドルも一括して渡されたのではありません。請求権協定の条文に書かれている通り、10年間の年賦で支払われました。 しかもこれは「現金」ではなく、日本製の工業製品や建設資材などの現物支給によるものでした。つまり、日本政府が日本企業から製品を買い上げたり「役務」を韓国に提供することによって、両国の経済発展に貢献したのです。それ以外にもさまざまな借款・供与がなされました。韓国はこれらの援助も活用して「漢江の奇跡」と呼ばれた経済発展を遂げ、日本企業も利益を得て「高度経済成長」を支えることにもなりました。2018年10月30日、日本企業に賠償を命じた判決が確定し、記者会見する原告の李春植さん(中央)と支援者ら(著者撮影) 現在、日韓の経済関係は貿易総額7・74兆円(2016年)、投資残高で言えば日本から韓国への投資3兆7695億円(2015年)、韓国から日本へは3843億円の残高があります。16年には韓国からの来日者数が500万人を突破するなど、インバウンド(訪日外国人)効果をみればおよそ3億ドル(現在のレートなら330億円余り)を韓国から返してもらった計算になります。もし、日本が韓国と「国交断絶」すれば、日本経済への打撃は計り知れないものがあります。どこにも国際法違反はない 2012年5月、韓国大法院は「1965年の日韓請求権協定は一般的な財産権処理の協定であり、植民地支配下の強制労働は韓国の憲法に違反し無効」「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や、植民地支配に直結した不法行為による損害賠償請求権が、請求権協定の適用対象に含まれたと見るのは難しい」として、同じく三菱重工を訴えた事件と合わせて審理を高裁に差し戻しました。 この時も日本政府は請求権協定ですべて解決済みであるとして、判決を非難しました。この判決に基づいて2013年7月の差し戻し審で被害者一人当たり1億ウォンの損害賠償が認められると、これを不服として新日鐵住金が上告したため、再び大法院で審理される運びとなり、今回の判決を迎えました。 個人請求権が条約などによって消滅するかについて、原爆訴訟やシベリア抑留訴訟で日本人被害者から訴えられた日本政府は「消滅したのは外交保護権で個人請求権は消滅していないので、アメリカやソ連を相手に訴えればよい」と主張したのです。その手前、日韓請求権協定によって韓国人の個人請求権が消滅したとは言えず、個人請求権の存在を認めています。 今回の判決は、日本政府も認めている個人請求権を韓国人が行使して日本企業を相手に韓国の民事訴訟で判決が確定したということです。どこにも国際法違反はありません。あるのは「請求権」の解釈の問題です。 日本政府は請求権協定の第2条3項で「いかなる主張もすることができないものとする」という条文を盾に「全て」の請求権が消滅したと主張していますが、請求権協定第3条には協定の解釈や実施に当たって紛争が生じた場合は、まず外交交渉で解決を目指し、それで解決しなければ仲裁委員会を設置するとあります。韓国の司法から請求権の解釈について「疑義」が提起されたのですから、行政府としての韓国政府は三権分立の原則から司法判断を尊重して日本政府と外交交渉を始めるべきです。 また、日本政府もICJ(国際司法裁判所)への提訴ではなく、まず外交交渉による解決を目指し、まとまらなければ協定に定められた仲裁委員会を設置して解決するのがまさに「国際法」に基づく解決方法ではないでしょうか。2018年11月、遺影を手に新日鉄住金本社を訪れる原告の弁護士ら(著者撮影) 日本で2人の元徴用工が裁判に訴えてから21年が経ってしまいました。差戻審直後の2013年12月に呂運澤さん、翌年2014年10月に申千洙さん、今回の大法院の判決直前に金圭洙(キム・ギュス)さんの3人が相次いで亡くなり、今回判決を迎えることができた原告は李春植(イ・チュンシク)さん一人でした。 6年前の大法院判決のときに、今回の判決は予測できたはずです。韓国政府はすでに2005年時点で被害者への追加の支援策を行いました。日本政府も遅くとも2012年の大法院判決のときにこれに応えて植民地支配に対する責任をきっちり果たすべきであったと思います。被害者に残された時間は少ない そもそも新日鐵住金は、被害者の要求には応じなかったものの、訴えられた当初は彼らが同社を訪問した際には社内に招いて話に耳を傾けていました。しかし、2003年の日本の最高裁による請求棄却の前後から、同社は高齢の被害者を社内にも入れず門前払いを続けました。会社の前で彼らを3時間も立たせる同社に対し「せめて座る椅子でもお願いできないか」という支援者のお願いさえも耳を貸しませんでした。その態度は、今回の韓国大法院の判決を受けても変わっていません。 判決直後の11月12日に原告代理人の弁護士が「損害賠償義務の履行方法」「賠償金の伝達式を含む被害者の権利回復のための後続措置」について話し合いたいと要請書を持参しました。 しかし、社員は一切顔を見せることなく面会を拒否し、要請書についても「預かる」とガードマンを通じて回答するだけで、要請書を受け取るのかどうかの意思すら確認することができず、仕方なく弁護士も引き上げざるを得ませんでした。新日鐵住金は「各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行います」という企業行動規範を掲げていますが、韓国の法律や判決には従わないということなのでしょうか。日本を代表するグローバル企業として恥ずかしいことだと思います。 今、私たちが忘れてはならないのは、彼らは日本の侵略戦争・植民地支配の犠牲者であるということです。何百万人もの日本人を兵士として戦争に借り出したことから、極端な労働力不足に陥った日本がその労働力を補うために「募集」にしろ「官斡旋」にしろ「徴用」にしろ、手段は別として意に反した「過酷な労働=強制労働」をさせたのです。 これは、最近の研究で明らかになった80万人とも推定される人たちを朝鮮半島から無理やり連れて来た、という動かし難い歴史的事実です。韓国は「ゴールポスト」を動かすので信用できないという人もいますが、歴史的事実は動かせません。2018年11月、新日鉄住金本社を訪れ、取材に応じる原告側の弁護士ら(著者撮影) 2000年に三菱重工の広島工場で被爆した元徴用工が釜山の裁判所に訴えた裁判の大法院判決が11月29日に出されます。この裁判の原告らはすでに全員が亡くなっています。もう被害者に残された時間はありません。 被害者の声に耳を傾けて納得できる解決を日本と韓国の両政府、そして強制連行・強制労働にかかわった企業が一緒になって図ることが、本当の意味で未来志向の日韓関係を築いていくことになるのではないでしょうか。53年前に結ばれた条約に不十分なところがあったのであれば、それを正すのが現在に生きる私たちの責任でもあるのです。

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    朝鮮半島の戦時労働が「人権問題に化ける」韓国のカラクリ

    西岡力(麗澤大学客員教授、モラロジー研究所教授) 韓国裁判所で現在係争中の朝鮮人政治労働者に関する裁判は、10月末の新日鉄住金確定判決裁判を含めて15件あり、被告企業は合計71社以上、原告は合計945人だ。1人あたり1億ウォンとすると945億ウォン(約100億円)となる。15件のうち7割を占める11件は、3社を相手にしたもの。すなわち三菱重工5件、新日鉄住金3件、不二越3件だ。 3社は日本に支援組織があり、まず日本で裁判が起こされて敗訴し、その後日本の支援組織の援助を受け、韓国で裁判が起こされたという共通の特徴がある。新日鉄住金裁判支援組織は「日本製鉄元徴用工裁判を支援する会」だ。今回勝訴した原告らが日本の裁判で敗訴したとき、韓国で訴訟をするように励まし、支援したと伝えられている。 三菱重工裁判の支援組織は少なくとも2つある(長崎に三つ目があるという情報があるが未確認)。1つ目が元工員を支援する「三菱広島元徴用工被爆者裁判を支援する会」で1995年に広島地裁に提訴した時から支援を継続している。2つ目が元女子挺身隊を支援する「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会」で、やはり99年に名古屋地裁に提訴したときから支援している。 不二越裁判の支援組織は「第二次不二越強制連行・強制労働訴訟を支援する北陸連絡会」で、1992年に富山地裁に裁判を起こしたときから活動している。92年提訴の1次訴訟は、2000年7月に最高裁で和解が成立して、原告3人、元同僚5人、「太平洋戦争犠牲者遺族会」に合計3千数百万円の解決金が支払われている。その後、日本で2次訴訟を起こし、韓国でも訴訟を提起した。 これらの支援組織は左派系労組や学者、宗教人などが主体で現在に至るまで毎年、当該企業の株主総会に出席し、年に数回、企業を抗議訪問している。元徴用工訴訟の判決を言い渡すため韓国最高裁の法廷に入る裁判官ら= 2018年10月 30日 (ロイター)   この3社を相手にする裁判に先駆けて91年12月、日本政府を相手にした「アジア太平洋犠牲者訴訟」が東京地裁に提起される。高木健一弁護士らが支援し、元慰安婦も原告として参加したため大きく報じられた。2004年に最高裁で敗訴したが、こちらは日本政府が被告だった関係で韓国での裁判は提起されていない。韓国の「日本統治不法論」 3社を相手にする11件以外の4件のうち日立造船を1人の原告が訴えたもの以外の3件は、62人(当初は252人だったが62人以外は取り下げとみなされた)、667人、88人という多数の原告がそれぞれ3社、70社、18社をまとめて訴えているところに特徴がある。 2015年に最高裁が新日鉄住金の先行裁判に対して原告敗訴の高裁判決を棄却して高裁に差し戻す判決を下した後、勝訴の可能性を見た韓国内の弁護士や運動家の勧めで多数の原告が慌てて起こしたという印象がある。なお、三菱重工はこの3件全部でも被告とされ、新日鉄住金は2件で被告になっている。したがって、三菱重工は合計8件、新日鉄住金は合計5件の裁判で訴えられていることになる。 3社以外に提訴されているのは以下の67社だ。飛島建設、麻生セメント、安藤ハザマ、石原産業、岩田地崎建設、宇部興産、王子製紙、大林組、角一化成、鹿島、クボタ、熊谷組、小林工業、佐藤工業、三光汽船、山陽特殊製鋼、昭和電気鋳鋼、清水建設、品川リフラクトリーズ、住友化学、住友金属鉱山、住石ホールディングス、常磐興産、菅原建設、大成建設、ダイセル、ダイゾー、太平洋興発、デンカ、東邦亜鉛、東芝、新潟造船、西松建設、日産化学、日産自動車、ニッチツ、日鉄鉱業、日本通運、日本曹達、日本冶金工業、日本郵船、日油、野上、函館どつく、パナソニック、日立造船、広野組、フジタ、古河機械金属、北海道炭砿汽船、松本組、三井金属、三井松島産業、三井E&S造船、三菱ケミカル、三菱倉庫、三菱電機、三菱マテリアル、三宅組、森永製菓、山口合同ガス、ラサ工業、りんかい日産建設、DOWAホールディングス、IHI、JXTGエネルギー、TSUCHIYA なお、私たち歴史認識問題研究会の調査で、韓国政府が273社を強制動員を行った現存企業と認定していることが判明した。 この273社には上記3社と67社が含まれる。したがって、全体の構造は90年代から日本の組織の支援の下で訴えられていた3社、2012年の韓国最高裁差し戻し判決後、駆け込み的に訴えられた67社、今回の不当判決により今後訴えられる危険性が大きくなった203社ということになる。韓国人元徴用工訴訟 判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。新日鉄住金(旧新日本製鉄)の上告を棄却、賠償を命じる判決が決定した=2018年10月30日、ソウル(共同) 私は、現在の状況はそれほど有利ではないと見ている。なぜなら、最高裁判決は1965年の協定とその後の韓国内で2回にわたって行われた個別補償等について詳細に事実関係を記述した上で、「朝鮮半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為に対する慰謝料」という理屈を持ち出して論理を構成しているからだ。 その論理の土台には日本の統治が当初から不法だったという奇怪な観念がある(以下「日本統治不法論」と呼ぶ)。当時、朝鮮は大日本帝国領であり朝鮮人は日本国籍者だった。だから、彼らを日本国が戦争遂行のために軍需産業で賃労働させることは合法的な活動であり、それ自体が慰謝料を請求されるような不法活動ではない。ところが、「日本統治不法論」により、待遇も悪くなかった賃労働が「反人道的な不法行為」に化けてしまったのである。村山談話につながった運動 見逃せないのは、その論理も日本の学者運動家が提供していることだ。1984年の全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)訪日のときに日本の朝鮮統治を不法とする国会決議を求める運動が歴史学者の和田春樹氏や作家、大江健三郎氏らによって始まり、それが後の村山談話につながった。運動のピークは2010年の菅直人談話だった。そのとき、和田氏らは日韓知識人1000人が署名する声明を公表して、菅談話に統治不法論を盛り込ませようと画策した。 菅談話にはそれが入らなかったが、その2年後、韓国最高裁が下級審ではまったく触れられなかったその論理を突然持ち出して、日本企業勝訴の高裁判決を差し戻す逆転判決を下した。これが今回の不当判決に引き継がれた。 この論理にかかると、戦時労働者問題が「人権問題」に化けてしまう。そうなれば、国際社会で「日本はナチスの収容所での奴隷労働と同じような奴隷労働を多くの韓国人男女に強要しながら、被害者の意向を無視して韓国保守政権に幾ばくかのカネを支払って、責任逃れをしている」とする誹謗中傷が広がってしまう恐れがある。 外務省は世界に向けて判決の不当性を広報するという。しかし、その内容が1965年の日韓請求権協定など日韓の戦後処理に限定されるなら、広報は失敗する危険がある。なぜなら、裁判を企画、支援してきた日韓の反日運動家、学者、弁護士らは「日本が戦時に朝鮮人労働者を強制連行して奴隷労働させた」「ナチスの強制収容所と同種の人道に対する罪を犯した」という事実無根の誹謗中傷を繰り返してきたからだ。 公娼制度下で貧困の結果、兵士を相手する売春業に従事した女性たちを「性奴隷」だとして日本の名誉を傷つけた人たちが、総体的に好待遇の賃労働に就いていた朝鮮人労働者を「奴隷労働者」として宣伝しようとしているのである。すでに10月30日付のニューヨーク・タイムズが、韓国人の原告は「slave laborers(奴隷労働者)」だったと書いている。日韓首脳会談 会談前に握手を交わす盧武鉉・韓国大統領(右)と小泉純一郎首相 ※ともに当時= 2003年6月7日、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影) 韓国は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で対日歴史戦争を宣言し、巨額の資金を投じて財団を作り、統治時代の調査研究を蓄積している。今では国立博物館まで建設し、動員被害を内外に広報している。 日本は今こそ官民が協力して統治時代の真実を証明する史料と証言を集め、実証的な調査研究を行い、若手研究者を育て、国際広報を行う「歴史認識問題研究財団」(仮称)を早急に作るべきだ。新日鉄住金や三菱重工などもぜひ、資金と社内資料の提供で協力してほしい。それなしには事態は悪化する一方だと強く警告したい。

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    韓国が封印する不都合な史実「自国青年1700人を強制労働」

     韓国の元徴用工をめぐる賠償訴訟問題は、かつてないほど日韓関係を危機に追い込んでいる。新日鐵住金に賠償金支払いを命じる判決に続き、今月29日にも三菱重工業を相手取った訴訟で韓国最高裁の判決が言い渡される。その後も総額2兆円にも及ぶ賠償請求への判決が続々と下される。 この問題が1965年の国交正常化の際に結ばれた日韓請求権協定で解決済みなのは繰り返すまでもない。が、そもそも韓国政府は、日本に矛先を向ける前に自国の歴史に向き合うべきではないか。 自国の若者たちを強制動員して働かせるということを、韓国政府自身がやっていたのだ。しかも、その対価として支払うべきカネを外国から調達しながら、それは政府が使い込んでいた──。 1961年、朴正熙政権は、「国家再建と浮浪児の取り締まり」を理由に、「大韓青少年開拓団」を設立し、戦災孤児など1700人にも及ぶ青少年を忠清南道・瑞山の干拓事業に強制動員し、無賃金で働かせたという知られざる史実がある。 動員の対象は男性だけではない。「工場で働ける」と女性を誘って連れてきて、開拓団の男性と強制的に結婚させた。「255組 合同結婚式」は、当時、政府広報として韓国メディアで大々的に取り上げられた。 拉致同然に集められた若者たちは、「干拓した土地を1人3000坪ずつ分け与える」という政府の約束を信じ、管理者からの暴力や飢餓に耐えながら働いた。過酷な労働により、死者数は実に119人にのぼったとの記録が残る。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) しかし、干拓後に土地は国有地に編入され、土地を与える約束は反故にされたばかりか、逆に農地の使用料まで請求されたという。驚くべきことに、この問題は今年に入るまで、韓国国内でほとんど知られることがなかった。「漢江の奇跡」の犠牲者 今年5月、被害者たちの証言記録をまとめたドキュメンタリー映画『瑞山開拓団』が韓国で公開され、真相を知った観客に衝撃を与えた。監督を務めたイ・ジョフン氏(45)は、映画制作のきっかけをこう語る。 「5年ほど前に、大学の後輩でKBSテレビ(公共放送)のプロデューサーをしている友人から瑞山開拓団の話を聞き、大変驚きました。彼の故郷が瑞山で、父親が開拓団解散のあと、干拓地を開拓した農民の一人だったのです。最初は彼自身がKBSでドキュメンタリーにしようとした。が、当時は朴正煕の娘の朴槿恵政権下だったので“到底できない”と企画は却下され、独立系の映画を制作している私に託してきたのです」 “漢江の奇跡”と呼ばれる経済成長を成し遂げた朴正熙大統領の人気は娘が失脚した今も絶大で、それゆえに取材は難航したという。 「取材の過程で、米下院国際関係委員会が1978年に出した報告書から、朴正熙が干拓事業などのためにアメリカからもらった援助金を自分の政治資金に不正流用していたという事実を突き止めた。それを元開拓団のお年寄りたちに伝えると、初めて自らに降りかかった災難が、朴正煕政権の企みのせいだと気づいて証言に応じてくれました」(イ監督)それでも黙殺された なぜ昔の話をするのを拒んできたのかと問われた証言者たちは、「なぜかって?あまりにもみじめだから」 「この話をするとあまりにも悔しくて……」と漏らし、ある証言者は「朴正煕大統領は、国は生かしたかもしれないが、人間は限りなく殺した」と叫びながら慟哭した。その様子は映画の中で生々しく映し出されている。イ監督は言う。 「文在寅政権はこの事件を再調査し、適切な措置を取るべき。国の命令に基づいて干拓事業に携わり、若さと労働を捧げたのに、国家が信頼を裏切ったという点を認めて謝罪し、正当な補償をすべきです」それでも黙殺された この問題は、元慰安婦や元徴用工の賠償問題と構図がよく似ている。日本は韓国との間で結んだ日韓請求権協定で、韓国の国家予算の2倍以上に相当する無償3億ドル、有償2億ドルの援助金を供与するかわりに、慰安婦や徴用工に関する請求権の問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認し合った。 だが、朴正熙政権は援助金を個人への賠償には回さず、インフラ投資などに使ってしまい、賠償の原資がなくなってしまったのだ。韓国を取材するジャーナリストの前川惠司氏が言う。 「韓国政府がカネを使い込んでツケが回ってくるという構図は、慰安婦問題や徴用工問題と全く同じ。韓国は日本が支出した慰安婦財団を解散しましたが、金泳三政権の時には韓国政府が慰安婦にカネを出すと言っていたんです。今になって慰安婦や徴用工では日本の責任を追及するのに、開拓団の問題は放置するというのはダブルスタンダードが過ぎる。しかし、日本人がそう感じても、韓国では日本を攻撃する材料にならないこの手の問題は関心を持たれにくいんです」韓国の青瓦台(ゲッティイメージズ) 事実、映画公開で一時話題となったものの、世論は盛り上がらず政府も黙殺した。検証作業や補償の動きは全く見えない。在日韓国人ジャーナリストの河鐘基氏はこう見る。 「韓国政府が恐れるのは、戦前の日本に対するのと同じように、戦後の“漢江の奇跡”の犠牲にされたという告発が相次ぐことでしょう。そういう声を抑えるためにも、ますます日本の賠償問題に目を向けさせようとするのではないか」 自国の「不都合な史実」さえ日本批判の動機にされてはたまったものではない。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい■ 徴用工判決で日本企業から「韓国撤退」思わせる動きも発生■ 韓国 英文表記を削除し、国籍不明女性の写真を慰安婦と報道

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    敗訴の徴用工問題、「中国からの訴訟」への波及も警戒すべき

     いわゆる韓国での「徴用工判決」で日本企業への賠償問題が取り沙汰されているが、これは韓国に留まる話ではないという懸念が出てきている。 見逃せないのが、中国での元徴用工訴訟への波及だ。外交評論家の加瀬英明氏が警鐘を鳴らす。 「韓国の徴用工判決は、過去、お詫びを多用してきた日本政府の対応の結果です。その意味では中国も同じ。中国でも強制連行で企業への訴訟が相次いでいる。現時点では、米国との関係が悪化している中国政府は日本との関係改善に動いているから訴訟の進行を抑えているが、状況が変われば、間違いなく韓国同様の判決が出る。日本企業にとって中国への投資額や経済関係は韓国と比較にならないくらい大きいだけに、そうなるとインパクトは計り知れない」 日本企業は中国で痛い目に遭った過去がある。 日中戦争中に船を徴用された中国企業の経営者の親族が商船三井に「未払いの賃料を払え」と起こした訴訟で上海海事法院(裁判所)は29億円の支払いを命じる判決を出し、同裁判所は和解交渉中の2014年に商船三井の鉄鉱石運搬船を差し押さえた。慌てた同社は供託金40億円を払って差し押さえを解除するしかなかった。 本来、中国は1972年の日中共同声明で日本に対する戦争賠償請求権を放棄し、民間企業や個人の請求権はなくなった。しかし、中国側は「戦争賠償とは関係ない商取引をめぐる訴訟だ」と主張し、それが認められた。「友は無罪」の国だけに韓国同様、外交的決着などいかようにも覆せると思う姿勢なのだ。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 元外交官で作家の佐藤優氏は、こう指摘する。 「韓国がやっているのは、“国と国とで約束をしたけど、国内の情勢が変わったからそれは放棄する”ということです。こうした『国内法優位の一元論』で自国の主張を通そうとする国が出てくると、国際秩序は安定しない。要は無理筋な話をしているんです」 同様に、中国も「国内法一元論」で国際秩序を踏み潰すことを厭わない。両国が手を組んで資産差し押さえにかかってくれば、いよいよ日本企業から「撤退」の決断が相次ぐことは避けられない。日本企業は米国に多くの資産を持っているから、それが狙われると大きなダメージとなる」(同前)関連記事■ 韓国作成「徴用工企業299社リスト」に日本企業の担当者絶句■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 徴用工判決で日本企業から「韓国撤退」思わせる動きも発生■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい

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    【外国人に聞いた】BTS「原爆Tシャツ」どう思う?

    韓国の7人組アイドルグループ「防弾少年団(BTS)」の一人が、原爆のきのこ雲などがプリントされたTシャツを過去に着用していた今回の騒動。 韓国国内からは「日本の文化的低級さを端的に表している」など批判が広がったが、世界的にはどう受け止められているのだろうか。 アメリカ、ロシア、イギリス人に聞いてみた。■関連テーマ BTS「原爆Tシャツ」に通底するもの

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    BTS「原爆Tシャツ」に通底するもの

    韓国の7人組男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の原爆Tシャツ騒動が物議を醸した。紆余曲折を経て、所属事務所は謝罪したが、日本国内でも受け止め方は世代によってまちまちである。この問題を通して見えたものとは。(写真は共同)

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    BTS「原爆Tシャツ」に通底する韓国社会のホンネ

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の原爆Tシャツ着用が日本で大きな騒動になった。この問題について触れる前に、BTSをご存じない方々のために、このグループが何であるかを簡単に説明しておく。今回の騒動を通して、BTSを初めて知ったという方々も少なくないだろう。 防弾少年団は2013年にデビューした韓国の7人組グループである。韓国語では「パンタンソニョンダン」と読むため、「パンタン」という略称で呼ばれることも多く、グループ名のアルファベットを略した「BTS」という名称で主に活動している。 その国内外での人気ぶりについては、既に散々報じられているので言及しないが、このグループが今年5月に発売したアルバムは、アジア圏出身者としては初めて、米国の人気チャート、ビルボード200で1位を獲得している。 今回、「原爆Tシャツ」で物議を醸したジミン(JIMIN)は、このグループのメンバーで1995年生まれの23歳。ジミンが過去(2年前とされる)に着用していたTシャツに原爆のキノコ雲と韓国群衆が万歳をしている写真が印刷されていたことが問題視され、出演予定だったテレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』(Mステ)のツイッター公式アカウントに抗議が殺到。Mステ側はBTSの出演を撤回した。Mステに続き、他局の番組や他のメディアも次々とBTSの出演をキャンセルし、最有力視されていた大晦日のNHK紅白歌合戦への出場も叶わなかった。 さらに、グループのメンバーが過去に、ナチス親衛隊(SS)の記章がデザインされた帽子をかぶったり、コンサートでナチスを連想させる衣装を着て鍵十字に似た模様の旗を掲げるなどしていたことが判明。ユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」は直後に声明を出して非難し、これまで沈黙を貫いていたBTSの所属事務所もついに謝罪に追い込まれる事態に至ったのである。 所属事務所は「原爆被害者やナチスの被害者を傷つける意図はなかった」「今後は今回の問題を改善するために最善の努力を行う」と説明したが、要するに「悪意はなかったが、結果がよくなかった。今後はもっとうまくやる」という釈明に過ぎない。BTS(防弾少年団)(聯合=共同) ユダヤ人の人権団体ににらまれて、ファシスト(全体主義者)認定された日には米国はおろか、欧州での「商売」にも差し支えるため、謝罪はやむを得ない選択だったのだろう。韓国では「謝罪など必要ない」という世論が圧倒的だったのだから。 一連の騒動の顚末は以上のようなものだが、この種の問題が発生したのは今回が初めてではない。今回は、たまたまBTSが世界的に有名なグループだったため、これほどの騒ぎになっただけのことである。もっと言えば、韓国人が日本への原爆投下を痛快がるのは、何も今に始まったことではない。 このことに触れる前に、一般的な韓国人の原爆、ここでは「日本への原爆投下」に対する認識について述べておこう。むろん、日本人であれば「平和教育」という名の下に、幼いころから原爆の惨禍について繰り返したたき込まれている。韓国人の呆れた放言 小学生のころ、学校の図書室で被爆体験を描いた漫画『はだしのゲン』を読んだ方々も多いだろう。そうした教育を通して、われわれ日本人は原爆投下が残虐極まりない、非戦闘員に対する大量殺戮(さつりく)行為であり、しかもそれは単純な殺戮にとどまらず、孫子の代まで苦しみをもたらす非人道的な戦術であることを知っている。これは、原爆がどこに投下されようが変わらない、極めて普遍的な真理であろう。 ところが、韓国人は学校教育でこうした「真理」を一切学ばない。いや学ぶ機会もない。だから、原爆の惨禍についても多くが無知であり、その非人道性についても無関心。むしろ「憎たらしい日本人が原爆で死んだり、苦しんでいるのはいい気味だ」程度の認識なのである。 原爆で、多くの朝鮮人が犠牲になったことも、今も原爆症で苦しむ韓国、朝鮮人やその子孫がいることも、日本政府が韓国人被爆者に対しても「被爆者援護法」に基づき、さまざまな支援を行っていることなどについても全く知らない。 筆者は過去に長崎の原爆資料館を訪れた際、展示物を見学していた韓国人の団体観光客が「(原爆投下は)本当にいいことだった」と放言しているのを目撃して唖然(あぜん)としたことがある。要するに「原爆投下で日本が降伏して、朝鮮は独立できたのだからいいことだ」程度の認識しかないのである。 これは、例えて言えば「朝鮮戦争は朝鮮人同士が殺し合う戦争だったが、日本は特需で大もうけできたのだから、いい戦争だった」と言っているようなものだ。こうした認識が染みついているため、彼らの原爆に対する言動も下劣になりがちなのである。つまり、BTSの原爆Tシャツなど氷山の一角に過ぎないのである。 2004年1月、韓国で竹島(韓国名・独島)が印刷された記念切手が発行され、日本政府が公式に抗議したことがある。ネット上には「原爆投下記念切手」なるものが瞬く間に拡散したのをご存じだろうか。 これはネットユーザーが勝手に作ったもので、韓国で公式発行されたものではなかったが、本物そっくりに作られていた。絵柄は原爆のキノコ雲で、それに「日本原爆投下54周年記念」という文字が添えられてあった。ちなみに、これは1995年に米国で実際に計画された「原爆投下記念切手」を参考にしたものと思われるが、米国でも日本側の抗議により切手は発行されなかった。 2006年4月18日には、首都ソウルにあるインターコンチネンタルホテルである「事件」が起きた。このホテルで「世界の酒文化と韓国の爆弾酒」という講演会が開かれ、外交官を含む在韓外国人の前で、講師を務めた同ホテル社長、沈載赫(シム・ジェヒョク)が「爆弾酒」の作り方を実演したのである。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 爆弾酒というのは、ビールにウイスキーを混ぜて飲む韓国のお座敷遊びの一つ。わざわざ外国人を招いて、こんなくだらない宴会芸を講義すること自体にも驚きを禁じ得ない。それはともかく、この講演会には、当時の在韓日本大使、大島正太郎氏も招待されていた。その席上、沈社長は「爆弾酒」を手ずから調合しながら、次のような解説を加えた。 「ビールジョッキにビールを入れて、ウイスキーグラスをポチャンと落とせば『原子爆弾酒』。泡の飛ぶ模様が、まるで広島に原子爆弾を投下したときのきのこ雲みたいだと言って付けられた名前」 「反対に、ビールジョッキにウイスキーを注いで、ビールをショットグラスに入れて交ぜれば『水素爆弾酒』」 「ビールジョッキにウイスキーを入れて、そこにウイスキーを注げば『中性子爆弾酒』と言っている」被爆者への冒涜 彼らの原爆投下や核兵器に対する認識が露呈した実に下品な発言である。これだけでも十分に被爆者への冒瀆(ぼうとく)だろう。それどころか、沈社長は爆弾酒を調合しながら、大島大使の面前で次のような許しがたい暴言も吐いたのである。 「ビールの泡がぱっとはじける様子が、あたかも原爆を広島に投下してキノコ雲が湧き上がるようではありませんか?」 この発言と憮然(ぶぜん)とした大島大使の表情は、韓国の通信社系ケーブルテレビ、YTNを通じておもしろ半分に報じられた。この日の講演会は、韓国イメージコミュニケーション研究院(CICI)が「韓国を正しく理解して世界と通じよう」という趣旨で用意したものだったという。ある意味、実に「正しく」韓国を理解することができる講演会だったとも言えよう。 ちなみに、このバカげた講演会の模様は既に動画サイトで公開されている。日本語字幕入りなので、後学のためにぜひともご視聴願いたい。筆者が先日、同ホテルに電話で確認したところ、既に沈社長は退職したとのことだった。 ともあれ、原爆投下が韓国人にとっては「痛快な出来事」であるためなのか、韓国ではこれをネタにする芸能人まで現れた。2006年に発売された歌手のRain(ピ)の『I'm Coming』という曲のミュージックビデオには、ピが原爆ドームとみられる建物を背景に歌って踊るシーンが登場し、物議を醸した。 廃虚に羽根を生やしたピが降臨し、軍服姿のバックダンサーと踊り、焼けた建物の中から炎に包まれた人が飛び出てくる場面もある。日本国内で「反日的だ」という批判が起こると、所属事務所は「日本好きで知られるピが、日本のファンを侮辱するような意図はない」とコメントした。要するに「悪意がなかったから問題ない」ということである。このミュージックビデオについては、被爆者団体の幹部も朝日新聞の取材に対して不快感を表明した。 2013年5月には、韓国の大手紙、中央日報が「広島と長崎に原爆が投下されたのは神の懲罰」という趣旨のコラムを掲載した。「安倍、マルタの復讐(ふくしゅう)を忘れたのか」と題するコラムには、安倍晋三首相の歴史認識を批判しつつ、「神は人間の手を借りて悪行に懲罰を加えてきた。最も過酷な刑罰が大規模な空襲だ。第2次大戦末期、ドイツのドレスデンが焼かれ、広島と長崎に原子爆弾が落とされた」とし、これらを「神の懲罰であり人間の復讐」などと指摘する内容だった。2018年5月、日韓首脳会談に向かう安倍首相(右)と韓国の文在寅大統領=首相官邸 このコラムをめぐっては、在韓日本大使館が中央日報に抗議したほか、広島や長崎など日本国内でも批判が起き、このコラムを執筆した同紙論説委員は「(自分が本来伝えようとした)趣旨と異なり、日本の原爆犠牲者と遺族を含め、心に傷を負われた方々に遺憾の意を表します」と謝罪。安倍首相らの歴史認識を批判する以前に、自分自身のトンデモ歴史観を猛省すべき事案である。 2014年8月には韓国の女性グループ「Red Velvet」がデビュー曲を発表したが、そのミュージックビデオの一場面に広島への原爆投下の記事や「JAP」などという差別表現が用いられた英字新聞の記事画像が使われていたことが判明。後日、このシーンは別カットに差し替えられた。罪深きは擁護した日本人 所属事務所は「ミュージックビデオの監督に確認した結果、『単純にコラージュの技法を使っただけで、特定の意図はなかった』と聞いた」「誤解の余地をなくすため修正した」とコメント。重ねて言うまでもないが、釈明まで今回のBTS騒動とそっくりである。 以上、韓国での原爆に対する認識の表出事例をいくつか見渡した。彼らの原爆投下に対する認識の水準がいかなるものか、お分かりいただけたと思う。今回のBTSの原爆Tシャツの事例でも「深い意図はなかった」と擁護する向きもあるが、Tシャツを製作した業者にまで「深い意図はなかった」とは言えまい。 件(くだん)のTシャツをデザインしたのは、韓国の「LJカンパニー」という会社だが、この会社は過去にも竹島や日本の敗戦をモチーフにした商品を製作している。ともあれ、今回の騒動に関して同社のイ・グァンジェ代表は、韓国マスコミの取材に対し「反日感情と日本に対する報復などの意図があるわけではなかった」「反日感情を助長しようとする意図はなく、その点でもBTSに対して申し訳ない」とコメントした。 またしても「悪意はなかったが、結果が悪かった。だから申し訳ない」という釈明である。悪意はなかったとしても、原爆を自分の商売に利用している点で、より狡猾(こうかつ)だと言える。もっと言えば、BTSに対しては「申し訳ない」が、被爆者に対しては何も感じていないらしい。 ちなみに、原爆Tシャツは注文が殺到し、品切れ状態にあるという。こんな有り様だから、原爆投下絡みの騒動は今後いくらでも再発するだろう。 今回の騒動に関して、SWCは「長崎の原爆被害者をあざけるTシャツを着ていたことは、過去をあざけるこのグループの最新の事例にすぎない」「国連での講演に招かれたこのグループは、日本の人々とナチズムの犠牲者たちに謝罪する義務を負っていることは言うまでもない」と述べている。長崎市の原子爆弾落下中心地碑(ゲッティイメージズ) 本来ならば、これは日本政府、いや日本人が声を大にして言うべきことである。筆者が今回の騒動で最も嫌悪を感じたのは、原爆投下について無知なBTSのメンバーや原爆投下をあざける韓国人、そして原爆投下をネタにして金もうけをたくらむ韓国人についてではない。 原爆投下について確たる認識を持たず、「政治と文化を一緒にしてはいけないよね」「騒動に巻き込まれたBTSがかわいそう」などと擁護した一部の日本人についてである。彼らは、日本人のグループが他国を愚弄(ぐろう)する衣装をまとって海外公演を行ったとしても、本当に同じように擁護するのだろうか。 「歴史の真実」「国家の品格」、そして「普遍の真理」というものは、確固たる信念と断固たる覚悟がなければ守り抜けない。それは、趣味と商売にすぎない韓流(はんりゅう)アイドルのコンサートなどとは全く別次元のものである。前述のSWCの声明はそれを痛感させるものだ。果たして、日本人にそうした「信念」はあるのだろうか。今回の騒動は、改めて日本人にその「覚悟」の程を問いかける事象だったと思えてならない。

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    BTS「原爆Tシャツ」騒動から日本人が学ぶべきこと

    山岡鉄秀(AJCN代表) 朝鮮半島出身の「出稼ぎ労働者」に対する韓国大法院(最高裁)判決には、さしもの日本政府も激怒したようだ。「国民情緒が憲法より上位にある国に謝罪して金を払って丸く収めようとする」ことが、いかにバカげたことか、理解してくれただろうか。 そこへきて、今度は韓国の7人組男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の騒ぎである。もちろん私も心底あきれたが、日本人にとってはこの機会に十分学べるか否かが「運命の分かれ道」となる。この厄介な隣国は、今後も必ず日本に厄災をもたらすからだ。しかも今回、原爆Tシャツ騒動が「ナチス帽」に移るに至って、なんと傍観していた私まで巻き込まれてしまった。 BTSメンバーの一人が、ナチス帽をかぶってポーズを取ったことに、米ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」から非難声明が出された。だが、こともあろうにツイッター上では、日本を罵倒する韓国人のツイートであふれた。「韓国人に戦争犯罪を押し付けたい日本人がフォトショップで鍵十字(ハーケンクロイツ)に見えるように細工した」などと主張したのである。 さらに「鍵十字が張り付いた帽子はウェブ上にしか存在しない、だからそれ自体がフェイク」という言説まで飛び出した。とにかく、全て「日本人が悪い」の大合唱だ。そこで、私は韓国に詳しい友人に依頼して調査した。 すぐに、問題の画像が2014年に発行された『CeCi(セッシ)』という雑誌の20周年記念号に収録されていることが分かり、1冊取り寄せることにした。インターネットオークションでは、すでに6千円以上のプレミアム価格がついているものもあった。 また、韓国人ファンが雑誌をめくっている写真がネットにアップされていたので、確認してみると、問題の帽子には確かに鍵十字とドクロが付いている。スタイリストの所蔵であることも書いてある。 こんなことは今時、1時間もあれば分かることだ。それをすごい剣幕(けんまく)で、SWCに「日本人のねつ造だ」と告げ口し、「日本人が戦争犯罪をBTSに擦(なす)り付けようとする謀略」だの、「旭日旗こそがハーケンクロイツだ」だの、彼らは次から次へと嘘をついたのである。2018年9月、米ニューヨークの国連本部のイベントで話す韓国の男性音楽グループ「BTS」のメンバー(聯合=共同) しかし、SWCの声明を読み解くと、彼らが問題にしているのはむしろ、鍵十字の下にあるドクロであることが分かる。このドクロは、まさにユダヤ人殲滅(せんめつ)を任務としたナチス親衛隊(SS)のシンボルであり、ユダヤ人には当然忌み嫌われている。 そのことに気が付かない韓国人たちは、鍵十字はフォトショップで細工されたものだと説得しようと文字通り必死になっていた。墓穴を掘っているようなものだ。「戦争犯罪国の分際で…」 とはいえ、筆者が仕方なくそれらの事実をツイートすると、案の定反発する韓国人から反応があった。 「これはフォトショップで加工されている!」「戦争犯罪国の分際で、なぜ堂々と意見しているのか! 反省しろ!」 さらには、もっともらしく「シンボルの不適切な使用は世界中で見られるものだ。それをヘイトに転換すべきではない」などと英語でツイートしてくる人までいた。要するに、その場で出任せの嘘をついて、通じないと分かると論点のすり替えを始める。それでも通用しないと分かると、急にハングルで書いてきたりする。わざわざ訳して読むとでも思っているのか。 そうこうしているうちに、BTSの所属事務所が原爆Tシャツもナチス帽も不適切だったと認めて、謝罪を表明してしまった。すべて嘘だと決着したので反発も収まり、静かになった。しかし、目の前で噂に聞く「火病(ファビョン)」を見せつけられた。本当に恥も外聞もない。なるほど、慰安婦問題の狂乱もこれと同じなのだ。事実など関係ない。ひたすら憤怒を吐き出し、まことしやかにどんな嘘でもつく。 ここで、日本人が学ぶべき大事なことが二つある。このような韓国人への対処法と、現代韓国人のメンタリティーの理解だ。 別の機会に詳述するが、日本は世界でも稀有な、道徳と性善説を基盤とする国なので、このような相手に出くわすと大概面食らって「相手にしても無駄だから放っておけ」という対応を取りがちだが、それは間違いだ。殴り返してこないと分かると、どこまでもエスカレートしてしまう。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) そもそも、モラルや論理ではなく、感情を最優先して行動している。もっと言えば、積年の民族的鬱憤(うっぷん)を晴らす機会を常に求めている人たちだから、大人の対応は逆効果になる。まず、普段は極力かかわらないようにし、それでもちょっかいを出してきたら、何倍にもなって返ってくると分からせてあげなければならない。 そして、韓国がいかに理不尽で不誠実であるかを繰り返し世界にアピールする。それでようやく正常な関係が築けるだろう。すぐに激高する相手だから冷静な対処が必要だという人もいるが、今回のように思い通りにならなければ、いずれにしても「火病」を発症するのだから、たとえ目の前で半狂乱になられても、動ぜずに間違いを追及し続ける冷徹さこそが必要だ。 何度でも繰り返すが、「日本人の常識」は国際社会では何の役にも立たない。まず「人間関係ありき」ではないのである。一般の人間関係と外交は全くの別物であることを、いい加減に学ばなくてはならない。 次に、この「壊れてしまったような」韓国人の性格は、今後もますます酷くなることはあっても、良くなることはないということを理解しておく必要がある。なぜならば、これこそ長年の教育(洗脳)の成果だからだ。この隣人とのベストな付き合い方 韓国では、若い世代ほどゆがめられた歴史を教え込まれている。朴槿恵(パク・クネ)前大統領はそれを是正しようとしたが、文在寅(ムン・ジェイン)政権になってからは再び左傾化した。 原爆Tシャツには「Liberation(解放)」と書かれている。つまり、韓国は健全で美しく文化的な独立国だったが、悪辣(あくらつ)な日本帝国に自由を奪われて抑圧され、原子爆弾による日本の敗戦で解放された、という作り話を信じ込まされている。 その背景の下、彼らはこのような教育を受けている。男は奴隷にされて軍艦島のようなところで搾取され、女は慰安婦という名の性奴隷にされた。朝鮮民族は「光復軍」を組織してよく戦い、ついに日本を追い出したが、親日派から親米派に寝返った売国朝鮮人による支配は続いた。 その点、早くから日帝も米帝もソ連も追い出し、朝鮮民族によって「主体思想」を貫く北朝鮮はより高潔で正当性を持った国家だ。「できるだけ早く一緒になって、核兵器を共有してアジアの強国となり、日本を屈服させて積年の鬱憤を晴らすべきだ」と。しかも、若い世代ほどそう信じ込んでいるのである。 韓国人の古老が教えてくれた。彼らは、勝手に歴史を歪曲(わいきょく)し、自らを復讐(ふくしゅう)の権利を持った被害者に仕立て上げ、恨みつらみを糧にして生きている。もとより、他人の不幸を喜ぶことに恥を感じない。私は、その民族的幻想を「恨(ハン)タジー」と名付けた。 このやっかいな隣人とは「ヒット&ステイアウェー」、すなわち「おとなしくさせたら、可能な限り距離を置く」のがベストである。ところが、まずいことに「極左活動家」文大統領の下で、韓国は自らを北の独裁者に捧げようとしている。 在日米軍が、韓国人の基地への立ち入りを一時厳格化したと報じられた。今後、半島有事の作戦統制権が米軍から韓国軍に移行すれば、米国は韓国を見捨てる可能性がある。朝鮮戦争以来、再び大勢の韓国人が命を落とし、日本へ難民として押し寄せる事態が現実味を帯びてきた。「歴史を忘れた民族に未来はない」はまさに韓国人のための言葉であり、それゆえに自滅の途上にあるのだが、巻き添えを食らって日本が甚大な被害をこうむる可能性がある。 「出稼ぎ労働者判決」の非道に際し、日韓議連が苦心しているとの報道もあった。「平和ボケ」もここに極まれり、だ。いったい何を苦心する必要があるというのか。2018年10月30日、韓国「徴用工訴訟」で日本企業に賠償を命じた判決が確定し、記者会見する原告の李春植さん(中央)と支援者ら(共同) 出稼ぎ労働者判決も、原爆Tシャツも、ナチス帽も、通底する問題は同じだ。韓国とは距離を置き、かつ来るべきカタストロフィー(大災難)に備える。そのリアリズムを持てずに、偽りの「日韓友好」を夢想すれば、滅びるのは日本の方なのである。

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    「バンタン見れなくてショック」BTSを擁護する韓流女子の生態

    は、BTS(防弾少年団)の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演予定の日だった。 BTSは韓国の人気アイドルグループだ。2013年に韓国で、2014年に日本でデビュー。2017年には人気チャート「ビルボード」トップアーティスト10位にランクイン、iTunes(アイチューンズ)のアルバムチャートでも全世界73カ国で1位を獲得するなど、輝かしい活躍を見せている。 現在、グローバルツアーの真最中で、国内では11月の東京ドームを皮切りに、四つのドームでコンサートを行う。所属事務所によると、東京ドーム公演では計10万人の観客を集めたという。 そのBTSのメンバーの1人が、過去に「原爆Tシャツ」を着ていた写真がネットを駆けめぐっている。Tシャツにはキノコ雲と韓国国民が万歳している様子がデザインされていた。 事態を重くみたテレ朝は、ミュージックステーションへのBTS出演を取りやめた。さらに、複数のメディア出演がキャンセルとなり、楽しみにしていたBTSファンが悲しみの声を会員制交流サイト(SNS)に寄せたというわけだ。 その後、BTSが過去にナチスのシンボルであるハーケンクロイツ(鍵十字)が入った帽子を着用していた画像や、イベントのパフォーマンスでナチスをイメージさせる旗を振って公演を行った画像がインターネットで話題になり、内定とまでうわさされていた『紅白歌合戦』の出演も果たせなかった。NHKは選考にあたって、「総合的に判断した」とし、個別の選考基準については答えていない。 一方、その紅白歌合戦に2年連続で出場を決めたK-POPアーティストがいる。TWICEだ。TWICEは韓国で結成された9人組の女性グループで、メンバーには韓国人のほかに日本人と中国人が含まれている。 NHKによると、TWICEは今年リリースされた作品がすべてチャートで1位を取っていることなどが依頼の決め手だったという。しかし、メンバーの全てが韓国人であるBTSとは異なり、韓国色が薄いためではないかという推測の声もある。 現在の韓国人気は「第3次韓流(はんりゅう)ブーム」と言われている。女子中高生向けのマーケティング支援などを手がける調査会社AMFが発表した「2018年上半期のJC・JK流行語大賞」では、「ヒト部門」の2位にBTS、4位に4人組ガールズグループのBLACKPINKと、2組の韓国アーティストがランクインした。東京・新大久保の韓国料理店=2018年6月 そして「モノ部門」の1位に選ばれたのが、「チーズドッグ」というチーズがたっぷり入った韓国発のホットドッグだ。チーズが伸びる様子が「インスタ映え」すると大人気になり、新大久保の店舗には行列が絶えない。 コリアンタウンと呼ばれる東京・新大久保には韓国のファッションやグルメ、コスメが全てそろっており、休日ともなれば、若い女性を中心に道路も店も大混雑を見せている。同社が2017年12月に発表したランキングにもTWICE、チーズタッカルビ(鶏のカルビ焼き)、ウユクリーム(コスメ)など韓国発のキーワードが並んでおり、韓国人気は依然衰えていないことがうかがえる。英語よりもハングル お気づきだろうか。日本の大人が抱く韓国へのイメージとは全く異なる感覚で、10代は韓国カルチャーを楽しんでいるのだ。 筆者が取材で知り合う中高生たちは、全員がK-POP好きというわけではない。テーラー・スウィフトやワン・ダイレクションといった米英のアーティスト、そしてもちろん国内のアーティストが好きな人たちもいる。 しかし、大人が青春時代に感じていた洋楽や欧米の生活への憧れは、ほとんど感じられない。英語をマスターするよりも、韓国語を学んだり、ハングルが書けたりすることが「イマ風」なのだ。 中高生のLINEを見ると、プロフィルなどに表示される「ステータスメッセージ」にハングルで思いをつづっている人たちがいる。ツイッターやインスタグラムのプロフィルにもハングルをよく目にする。当然、彼女たちとつながっている友人全員が理解できるものではない。その「わかる人にはわかる」暗号のような加減もいいのだろう。 また、「いいねジュセヨ(いいねください)」と韓国語を一部組み合わせて使う人や、「センイルチュッカヘヨ(誕生日おめでとう)」と韓国語でLINEのバースデーカードに記す人も珍しくない。昭和のころなら、少し気取りたいときに英語やフランス語などで書く人がいたが、今どきの若い子は韓国語を使うのだ。 そんな世代が今回の騒動をどう見ているのか。修学旅行で広島の原爆ドームを見てきた女子中学生に話を聞くことができた。 彼女はBTSのファンではないが、TWICEはかわいい、とSNSでチェックする程度のK-POPファンだ。修学旅行でガイドや被爆者から話を聞き、原爆の恐ろしさを知ったという彼女はこう言っていた。 「もしバンタン(BTSの愛称)が原爆のことをバカにしていたら頭にくるけど、きっとそれほど考えていないんだと思う。バンタンが好きな友人は、とにかくMステ(ミュージックステーション)でバンタンが見られないことにショックで、それ以上のことは考えていなかった。今は来日してるから、握手会やら何やらで忙しくて忘れてる」 さらに、BTSファンの友人が紅白歌合戦の選考に漏れたことについて何か言っているかを尋ねたところ、そもそも紅白を重視していないので問題ではないらしい。2018年11月、韓国・仁川で公演する韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」のメンバーら(聯合=共同) BTSは最近の呼び名で、元々は「防弾少年団」という名前だ。防弾チョッキが軍をイメージさせるからか、BTSファンは「ARMY(アーミー)」と呼ばれる。とすると、政治的思想から今回のような行動を起こしていた印象も受けるが、防弾少年団の由来は「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守り抜く」であることから、関連はないのだろう。BTSの所属事務所は11月13日に「被害に遭われた方を傷つける意図は一切ない」と謝罪の言葉を発表した。 今回の件は日本の韓流ブームにそれほど影響していないように感じるが、軽率な行動により日韓の若者の心に澱(おり)がたまっていく可能性もある。影響力の大きいアーティストとして、今後の活動に期待したい。

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    弱小事務所からブレークの防弾少年団「コネではなく実力」

     今、韓国の中高生に好きなアイドルを聞くと、東方神起でもBIGBANGでもなく、ほとんどが防弾少年団の名前を挙げるという。メンバーはRAP MONSTER(23)、SUGA(24)、JIN(24)、J-HOPE(23)、JIMIN(22)、V(21)、JUNGKOOK(20)の5人だ。「この1年、ゴールデンディスクアワードやソウル歌謡大賞など、韓国を代表する音楽賞を軒並み受賞し、テレビに出れば視聴率は跳ね上がる。間違いなく彼らが韓国芸能界の中心にいます」(韓国のスポーツ紙記者) 9月に発売した新アルバム『LOVE YOURSELF 承‘Her’』はアメリカのビルボードチャートで6週連続ランクインし、日本でもオリコン初登場1位を記録。 デビュー4年目を迎え、世界のミュージックシーンを席巻している防弾少年団だが、一体何がそんなにスゴいのか。「ひと言でいえば、圧倒的なダンスパフォーマンスと歌唱力、そしてラップ技術です。韓国アイドル全般にいえるのですが、彼らはデビュー前に超過酷な練習生時代を経験しています。1日10時間の練習は当たり前。歌、ダンス、そして語学まで徹底的に叩き込まれてデビューを迎えている」(韓国の芸能関係者) そこまでならば、他の韓国アイドルと同じ。特筆すべきは、彼らの所属する「事務所」にあるという。「ハッキリ言って、無名の弱小事務所です。韓国の音楽界は、東方神起やSUPER JUNIORを擁するSMエンターテインメント、BIGBANGやiKONの所属するYGエンターテインメントといった大手芸能プロダクションがメディアに対して、強い影響力を持っている。小さな事務所で活躍するのは至難です。韓国の芸能事務所ではSMエンターテインメントが強い影響力を持つ。イラストはSMに所属する男性グループEXO(ゲッティイメージズ) だからこそ、防弾少年団は人一倍努力した。海外に武者修行に行き、メンバー全員が作詞作曲できるようになるまで、貪欲に音楽を学んだ。『コネクションではなく実力で勝つんだ』という意識が極めて強いグループなんです」(前出・韓国の芸能関係者) 実際、メンバーは「いかにクオリティーの高いステージを届けるか、という一点だけを考えている」と常々公言しており、その言葉通り、彼らのステージは圧巻のひと言。長い下積み時代を経て下剋上を果たした7人は、そのキャラクターも実に魅力的。秀才のリーダーから不思議系イケメン、怪力の末っ子まで、7色の輝きを放っている。関連記事■ 東方神起の2人、子供や女の子からおじさん扱いされた■ 小栗旬モノマネでブレークの土佐兄弟「バイト辞めたい」■ 松田聖子 個人事務所を退社、元恋人と設立した新事務所移籍■ 聖子 個人事務所辞め元恋人と新事務所設立も沙也加移籍せず■ 石原さとみ 事務所から結婚許可下り嬉しそうだったとの情報

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    韓国の歴史改竄 日本統治で搾取……本当はハングルを広めた

     韓国の歴史は嘘で塗り固められている。『韓国と日本がわかる最強の韓国史』を上梓した八幡和郎氏が隣人の「歴史修正」を暴く。* * * 百済からの帰化人のなかに武寧王(在位501~523年)の子孫で奈良時代の朝廷で下級官吏になっていた和乙継という者がいた。この娘の高野新笠が天智天皇の孫・白壁王の側室となり、山部王を産んだ。後の桓武天皇である。 2002年のサッカーワールドカップ日韓共催にあたり、天皇陛下は『続日本紀』に高野新笠が百済王族の遠縁と記されていることに触れられた。ところが、それをきっかけに一部の韓国人学者は「日王(天皇家)は百済王室の末」などという乱暴な解説をするようになった。曲解であり、陛下の日韓友好のお言葉を悪用するなど言語道断である。「日本の統治で搾取された」はウソ 日本による朝鮮半島統治は欧米諸国の植民地支配のように一方的に収奪するものではなかった。 道路、鉄道、河川、ダムなど整備されたインフラは内地よりも立派だった。1911年には鴨緑江横断鉄橋が完成し、満洲につながった。鴨緑江に建設された水豊ダムは、当時世界最大級の水力発電所だった。 日本統治でもっとも評価されるべきものは教育だ。日韓併合以降、教育機関は急速に整えられ、終戦時には国民学校への就学率が男子76%、女子33%に達した。そして小学校では韓国語で教育が行われたため、ハングルの普及が一気に進んだ。漢字ハングル混じり文も、井上角五郎が立ち上げた「漢城周報」ではじめて本格的に使用した。日本は韓国語を与えたのであって、奪ったと批判されるのはおかしい。たしかに日本統治には負の面もあったが、功罪を冷静に見れば、明らかに功が大きい。搾取とはかけ離れている。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) ここでは一部の例しか紹介できないのが残念だが、あらゆる時代に同様の改竄が行われている。 しかし、問題は韓国側だけでなく、日本側にもある。我々自身が歴史認識を整理できていないのだ。たとえば任那が日本領であったことをどの程度、理論武装しているだろうか。中国は高句麗をかつて中国東北部の少数民族が作った国家だとし、継承国家は中国であると理論武装をしきりにやっている。 また、百済の位置づけをどうするのか。百済からの文化流入に対する公式見解がない。長年、韓国の世話になったなどとは誰も考えてこなかったのだが、それが忘れられている。 我々の見解、立ち位置が明確になっていないから、隣人の嘘がまかり通り、時にそれに引きずられるのだ。【PROFILE】八幡和郎●1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。北西アジア課長(南北朝鮮も担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。現在、徳島文理大学教授。近著に『消えた江戸300藩の謎』がある。関連記事■ 韓国の歴史改竄 韓国人が日本に文化を伝えた……本当は漢族■ 軍艦島朝鮮人強制労働の写真、まったく別の場所の写真だった■ 朝鮮半島での中国人虐殺を関東大震災朝鮮人虐殺に改ざん過去■ 韓国の歴史改竄 建国は4000年前、日本領・任那はなかった等■ 韓国公共放送 旭日旗と竹島を合成し「日本軍侵攻」を捏造

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    徴用工判決に広がる波紋

    「戦後の国際秩序に対する深刻な挑戦だ」。韓国の最高裁判所が先の大戦の徴用をめぐり日本企業に賠償を命じた判決について、政府は国際社会に正しく事実を伝える必要があるとして、英語版の資料を作成した。日韓関係に再び亀裂を生んだ徴用工判決。広がる波紋の内幕を読む。(写真は共同)

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    徴用工判決と日韓の正義、いつまで「歴史戦」を続けるのか

    木宮正史(東京大学教授) 韓国大法院(最高裁)大法廷は10月30日、日本の支配下で徴用され労働させられたことに対する賃金未払いなどに対する慰謝料などの支払いを新日鉄住金に求めた原判決に対する上告を棄却し、新日鉄住金に対して損害賠償を命じる判決を確定した。一方で、この判決それ自体は、6年前の2012年5月の大法院小法廷の破棄差し戻し判決によって、方向性が既に定められた予想通りのものであり、特段の驚きはなかった。 他方で、この判決は1965年6月の日韓国交正常化の基礎となった日韓請求権協定を実質的に無効とするものであることは間違いなく、日韓関係に少なからぬ影響を及ぼすことが予想された。筆者は今後、日韓関係がどこへ向かうのか、特に韓国は日韓関係をどのような方向に持って行くつもりなのか、という不安を抱かずにはいられない。 筆者は、この判決には同意できなかったし、こうした判決が出ることが日韓関係にもたらす悪影響を憂慮していた。しかし、他方で、こうした判決が全く間違った判決だとも思わない。むろん、判決の前提を受け入れることはできないが、ある前提を受け入れさえすれば、こうした判決が出てくることは十分理解し得たからだ。 ただ、判決内容の是非を論じる前に、まず明確にしておかなければならないのは、これは司法の判断であって、韓国政府の最終判断ではないということである。一部には、韓国政府がこの判決を積極的に支持していることを前提にした報道がなされているが、これは事実とは異なる。韓国政府は、この司法判断を受けてどう対応したらいいのか、依然として悩んでいるというのが正直なところではないか。この判決に対する日本の「過剰反応」を批判しながらも、この判決を尊重すると言うだけでそれ以外沈黙を守っているのは、その証左である。 現時点での韓国政府の立場は、徴用工に関する補償問題は1965年の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決」しているというものであり、司法の判断とは異なる。もちろん、今後、韓国政府が既存の立場を変えることで、この司法判断がそのまま韓国政府の立場になってしまう可能性を排除することはできない。特に、日韓両政府が現在のように非難合戦をエスカレートしていくと、「売り言葉に買い言葉」で、そうなってしまう危険性は高まる。 翻って考えると、今回の判決は、既に2012年5月にある意味では決まっていたと考えられる。韓国政府が1965年の日韓請求権協定の範囲外に置いた慰安婦問題をめぐって、その範囲内とみなす日本政府との解釈の違いにもかかわらず、それを放置して日本との交渉に乗り出さないのは憲法違反だとした、2011年8月の韓国憲法裁判所の判断があった。その司法判断とある意味では競争するかのように出てきたのが、2012年5月の韓国大法院の小法廷判決であった。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) この小法廷判決は、徴用工である原告の請求を棄却して賠償を認めないとした下級審判決を破棄差し戻ししたものである。この判決は当時の韓国の学界においても、従来の通説を覆す「画期的判決」と受け止められた。換言すれば、当時の韓国社会でも、この判決は「意外」なものであった。この判決の政治的責任を第一次的に負うべきなのは、韓国政府の過去の外交政策を否定することで、その選択を極度に制約してしまうような、こうした判決を「許容」した、当時の李明博(イ・ミョンバク)政権にあったと見るべきだろう。それだけ、当時の李明博政権は極度のレームダック状態にあった。 筆者がこの小法廷判決に驚いたのは、その結論というよりも、その論理であった。それは、今回の大法廷判決においてもその多数意見がそれに従うように、ある意味では「韓国社会ウケ」するものであり、韓国社会の中でそれに抗することが難しい論理を展開したからであった。約束より上位にある「正義」 本来であれば、日韓両政府が1965年に合意し、さらに、2005年盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時にも韓国政府が今一度確認したように、徴用工問題は日韓請求権協定の範囲内の問題であり、それによって文字通り「完全かつ最終的に解決」されたはずのものであった。しかし、小法廷判決は、それを覆す論理を日韓の歴史観の乖離(かいり)に求めたのである。 1910年の韓国併合条約は合法であり、それが45年の日本の敗戦によって無効になったと解釈する日本政府に対して、韓国政府はこの条約はそもそも強制された違法なものであり、したがって植民地支配自体は「不法占拠(強占)」に過ぎなかったという立場であった。そうした歴史観の違いを乗り越えて、日韓両政府は日韓請求権協定に妥協し国交を正常化したのである。 しかし、小法廷判決は、こうした妥協がそもそも日本の植民地支配自体を不法と見るべき韓国の「正しい歴史観」からは受け入れ難いものであり、したがって、そうした前提に立つ政府間の妥協は、韓国国民の個人の請求権を消滅させるものではないという論理を展開した。つまり、小法廷は徴用工の個人請求権が消滅していないことの理由を「韓国の正しい歴史観と日本の間違った歴史観」に求めたわけである。 1987年の民主化以降、韓国の憲法裁判所を含めた司法は、政治的に微妙な問題に対しても積極的に関与した。首都移転に違憲判決を出して白紙撤回させたように、政府や国会の決定を真っ向から否定してしまう司法積極主義の立場を採用してきた。しかし、そうした歴史観の違い、特に韓国だけではなく対日外交が関わる問題を、司法が一刀両断に正義、不正義で論じるべきことではないように思う。 司法消極主義に立脚する日本の最高裁であれば、それは「政府の統治行為に属する問題であり、司法判断は控える」という「統治行為論」を持ち出していたと考えるが、この小法廷判決は、司法判断に国家間の歴史観の違いを持ち出し、しかもその正義、不正義までも判断したのである。その点で、司法積極主義を飛び越えた、外交に対する司法の介入とさえ言えるだろう。 ところが、日本との間で存在する歴史問題に関して、常に被害者としての正義という価値観に基づいて考えることが共有される韓国社会から見ると、こうした前提は受け入れやすい。いや、むしろ受け入れなければならない論理である。日本企業に賠償を命じるとした韓国徴用工訴訟判決を受け、支援者らから拍手を送られる原告の李春植さん(手前中央)=2018年10月30日、ソウルの韓国最高裁前(共同) 過去の日本との「約束」は基本的に守らなければならないかもしれないが、そうした「約束」よりももっと上位の「正義」という価値があり、日本の植民地支配を不法とする韓国の「正義」に基づけば、政府間の協定によって個人請求権を消滅させるという「約束」よりも、韓国の「正義」に基づいて個人請求権を認めなければならないという理屈である。 しかし、この徴用工問題は、こうした歴史観の違いにまでさかのぼって判決を下すべき問題だったのか。しかも、徴用工の人権救済の担い手は、日本企業ではなく韓国政府であるべきではないのか。おそらく、こうした認識は韓国社会でも相当程度共有されていると考える。にもかかわらず、小法廷判決がこうした日韓の歴史観の違いという問題を判決理由に持ち込んだために、大法廷判決もその前提となった「韓国の歴史観」という「正義」を否定することはできず、小法廷判決とは異なる判決を下すことは困難であったと見るべきであろう。韓国の対日強硬力学 今回の大法廷判決に対して、韓国では与党=進歩(リベラル)、野党=保守という政治的立場を超えて歓迎したように、対日政策、特に対日歴史問題に関しては与野党の違いはない。一方で、歴史観の違いは保守と進歩の重要な対立軸の一つである。 1948年の大韓民国の成立以後の歴史を誇らしいものとして肯定的に評価する保守勢力に対して、進歩勢力は1987年以前の独裁時代を批判し、それ以後の民主化時代だけを肯定的に評価する。このように、相当に乖離した歴史観を持つ。しかし、この両者の間には、対日歴史問題に関しては相互に強硬な立場を競争するような政治力学が働くのである。 その背後には、保守勢力の歴史的ルーツが「親日」(日本の植民地支配の時代に植民地権力と協力したという意味)であると進歩勢力が批判的に見るのに対して、保守勢力は、そうした批判を免れるためにも、対日歴史問題に関してはより一層強硬な姿勢を示さなければならないと考えるからである。そうした「悪循環」が、韓国政治、さらには韓国社会における対日歴史問題をめぐる強硬化力学として作用する。 しかも、日本との関係は、1980年代までのような、非対称(日本と韓国とは国力や価値観が異なる)で相互に補完的な関係(日韓が相互に自らのために相手との協力が不可欠である意味)から、1990年代以後、対称で相互に競争的な関係へと大きく変容している。それが、韓国の対日強硬化力学を弱めるどころか、却(かえ)って強める帰結を後押ししている。 韓国から見ると、1965年の日韓国交正常化は日本に対して韓国が弱小国であった時代の産物であり、韓国が日本と対等に近い関係になった今こそ、それを是正するべきだという主張である。それに対して、日本社会の側は、以前は反共のための協力という名分に起因した韓国に対する「寛大」さがあったが、日韓の差が縮まってくると、いつまでも韓国に譲歩してばかりはいられないと、韓国の対日強硬姿勢に反発する感受性をますます高める状況にある。韓国政府主催の慰安婦記念日の式典に出席し、元慰安婦の女性にあいさつする文在寅大統領(中央)=2018年8月14日、韓国・天安(聯合=共同) このように考えると、特に歴史問題をめぐる日韓関係は時間の経過によって希釈されるようなものではなく、時間の経過とともに日韓双方から拡大再生産されていくという意味で、出口が見えないと、悲観論に傾斜することになる。こうした日韓の歴史に根ざした韓国社会の力学を、日本の政策によって一朝一夕に変えるということはほとんど不可能に近い。さらに、日韓は隣国として「引っ越し」ができない関係であり、朝鮮半島が日本の安全保障にとって重要であるという地政学的関係はかなりコンスタント(常に一定した)な条件である。 したがって、こうした社会力学を持つ韓国社会を与件として、そうした韓国といかに付き合うことで、日本にとって有利な安全保障環境を確保するのかを日本としては考えなければならない。韓国が日本にとって重要でも何でもなく、付き合わなくてもよいという関係であれば、そうすればいいだけだが、そういうわけにはいかないのである。これは、韓国にも同じことが言えるだろう。日韓関係に与える影響 韓国にとって望ましい日本、過去の歴史を心底反省して懺悔(ざんげ)する日本を期待するのかもしれないが、韓国の期待水準ほど日本が変わることは難しいだろう。しかし、韓国にとって日本は1948年以降の歴史が証明してきたように、依然として重要な存在である。したがって、そうした日本を前提としつつも、韓国にとって日本が重要な点で協力してくれるように、いかに付き合うのかを考えるしかないだろう。 この判決が日韓関係に及ぼす影響は、非常に重大なものである。韓国の司法も、また政府も、それを意識していなかったということではない。にもかかわらず、前述したような国内の力学のために、それを回避することが難しかったわけである。 本判決の論理を貫徹させると、植民地支配自体が不法なので、それに起因するあらゆる行為が不法行為として損害賠償の対象にもなりかねない。その時代を経験した生存者が減りつつあるとはいえ、その数は計り知れない。矢継ぎ早にこのような訴訟が提起され続けると相当に混乱した状況になってしまう。おそらく、そうした混乱は、韓国社会が「正義の貫徹」を主張することによって得られる「利益」以上の重大な損害を韓国社会にもたらすことになってしまうだろう。 さらに、これは日朝関係にも甚大な影響を及ぼすことが予想される。2002年の日朝平壌宣言によって、北朝鮮は日本の植民地支配に起因する補償の問題を、1965年の日韓国交正常化と同じような経済協力方式で行うことを確認している。しかし、その当事者である韓国の姿勢がそれとは異なるということになると、北朝鮮の対応や日朝関係にも影響を及ぼさざるを得ない。 文在寅(ムン・ジェイン)政権は朝鮮半島の平和体制の一環として、日朝国交正常化を日本政府に対して求めている。核問題や拉致問題の解決が条件となることは言うまでもないが、それがたとえ順調に行ったとしても、経済協力方式であれば日朝間の妥協は相対的に容易であったと考えられるが、本判決が主張するような植民地支配の不法行為に基づく損害賠償を個人にも広く認めるということになると、日朝国交正常化交渉も相当な困難が予想される。 日本政府としても、もちろん「売られた喧嘩(けんか)は買う」という姿勢で対応することもあり得るだろう。取りあえずは、請求権協定の仲裁制度の利用や、国際司法裁判所への提訴という可能性も取り沙汰されている。それは、以前も何度も繰り返されてきた、歴史問題をめぐる日韓「消耗戦」の様相を呈することになるだろう。日本にとっても韓国にとっても、それほど成果のある「戦い」になるのかは疑問である。韓国最高裁の判決について報じる10月31日付の韓国主要各紙=2018年10月31日(共同) 日本政府の強硬姿勢が韓国では連日のように報道されるたびに、本判決を危惧していた一部の韓国マスコミも、これを日韓の「歴史戦」「外交戦」として位置付けるようになっている。そうなると、マスコミや世論も韓国政府に対して、日本との間で安易に妥協することへの批判が高まる。これは、慰安婦問題をめぐる日韓関係で既に実証済みのことである。韓国政府に、本判決を尊重しつつ対日関係を悪化させないための、どのような知恵や妙案があるのか不透明感が残ることは確かだ。 韓国政府が主導して徴用工問題を解決するための財団を創設し、そこに日本政府や企業の協力を呼びかけるという「慰安婦方式」程度のアイデアしか出てこないようにも思う。しかし、「慰安婦方式」は慰安婦問題の解決に失敗したと韓国政府も自認するところである。勝ち負けの論理を超えて もちろん、その失敗原因は当事者に何の事前の相談もなく行ったからであり、今回はそれを十分に行うということは考えられる。しかし、それが解決策になり得るのかどうか、韓国国内においても、また日韓関係においても不透明である。にもかかわらず、現在は本判決に対する韓国政府の姿勢を粘り強く待つべき時であると考える。それへの対応は、その結果が出てからでも遅くはない。 にもかかわらず、日本でも強硬論が出てくること、特に政府与党において強硬論が突出することは、ただでさえ選択の幅が狭い韓国政府の対応をより一層狭くしてしまうことになると考えられる。しかも、その選択は、日本政府が期待するような日韓関係を重視する方の選択ではなく、本判決の貫徹を支持する韓国の一部強硬的な世論を重視する方の選択である。これは、日本にとっても賢明な選択ではないだろう。 日韓関係を「歴史戦」「外交戦」という勝ち負けの論理ではなく、この危機に伴うリスクをいかに管理するのかという「共同リスク管理」という発想で対応するべきではないか。そう主張するべき理由は明確である。日韓が置かれた現状は、短期的に見ても中長期的に見てもこうした「戦い」に没頭する余裕などないからである。 短期的な課題とは北朝鮮の非核化プロジェクトである。これは米中が協力しない限りは実現できないが、米中をそのように動かせられるのかは、北朝鮮の選択がもちろん重要だが、それ以外には日韓の協力が必須である。さらに中長期的には、中国の大国化に伴う米中関係の変容の中で、その一員である日韓がどのように発言力を確保し存在感を維持できるのかという問題である。 この課題を日韓は共有しているが、課題への取り組み方が現状では一致しているとは言い難い。果たして、そのままで日韓ともにこの死活的な課題にうまく取り組むことができるのか。何よりも、こうした課題は日韓の間に存在する歴史問題をめぐる対立よりも、生存に関わるという点で重要である。この点は、日韓ともに共有してもらわないと困る。会談前に文在寅大統領と握手する安倍首相=2018年9月25日、ニューヨーク(共同) 歴史問題に起因する相互の不信感に便乗して、お互いに信頼して協力などできないと放棄するのか、それともそうした現実を受け入れて、それでも相互の共通点を探りながら協力し得ることは協力して行くのか、そうした選択の岐路に立たされている。

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    徴用工「衝撃の判決」に文在寅の意向はどこまで働いたか

    李相哲(龍谷大学教授) 旧朝鮮半島出身労働者(以下「徴用工」)による訴訟で韓国大法院(日本の最高裁判所に相当)は新日鉄住金に一人当たり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じた。これに対し、安倍晋三総理は「ありえない判断だ」と切り捨て、河野太郎外相は11月6日の記者会見で「暴挙だ」「国際法に基づく国際秩序への挑戦だ」と批判した。 一方の韓国政府は、日本政府の反応について李洛淵(イ・ナギョン)首相が「妥当でなく賢明ではない」と応酬、日本が問題を外交的な紛争に追い込もうとするとして「遺憾」の意を表明した。 ただ、不思議なことに日韓関係の根幹を揺るがしかねない今回の事態について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は一言も触れていない。 そもそも、この問題に一番熱心だったのは文在寅氏だ。文氏は、法務法人「釜山」に弁護士として在籍していた2000年頃から徴用工問題にかかわった。三菱重工業広島機械製作所の労働者として強制的に徴用されたとする6人の代理人の一人として訴状、準備書面、証拠資料を集め裁判所に提出した。 この裁判は、1審、2審とも原告側の請求は棄却されたが、2012年5月、韓国大法院は「損害賠償請求権は消滅されていない」として原審判決を破棄、釜山高等裁判所に再審理を命じた。その後、釜山高等裁判所が三菱重工業に損害賠償を命じる判決を出したのは2013年7月、三菱重工業はこれを不服として上告し現在大法院に係留中だ。 大統領就任100日記者会見で文氏は、徴用工問題について次のように述べている。「両国間で合意(65年の日韓請求権協定を指すものとみられる)があったとしても強制徴用者個人が三菱をはじめとする日本の会社に対して有する民事的な権利(請求権)はそのまま残っているというのが韓国法院の判断だ。政府はそのような立場で過去史問題に臨んでいる」(2017年8月17日の記者会見)。 文氏は大統領就任前に、徴用工問題の訴訟を起こした張本人なのだ。大統領就任後もこの問題を追及し続け、司法判断にガイドラインを提示したといってもよかろう。 文政権発足後、韓国では政府の各部署に積弊清算(それまでに蓄積されてきた様々な弊害を一掃する)を目的とする作業部会がつくられ、過去の政府の「過ち」をあぶり出している。 市民団体から選ばれた活動家や左寄りの性向を鮮明にする文氏を支持する知識人らが主軸となる作業部会は、政府各部署に対する調査に当たっている。機密文書までひっくり返し「ミス」を発見しては責任者を断罪する調査はいまだに続く。司法部も例外ではない。 大法院で徴用工判決が出る直前に韓国検察は当該裁判を遅延させるため「裁判取引」を企てたとして朴槿恵(パク・クネ)政権時代の法院行政処や大法院などに対する捜査を行ったのもその一環だった。ソウル中央地裁に連行された韓国の朴槿恵前大統領(左)=2017年10月(聯合=共同) 朴槿恵政権下に裁判所は外交摩擦を懸念し、徴用工裁判を故意に遅延させ、その「代価」として、外交部に裁判官の海外派遣枠を増やしてもらおうとしたとして、検察が法院行政処長の逮捕に踏み切ったのは10月27日。韓国大法院が新日鉄住金に対し元徴用工への損害賠償を命じる判決を出したのは30日だ。 今回の裁判を担当したのは文政権発足後の2017年9月に大法院院長に任命された金命洙(キム・ミョンス)氏だ。金氏は、進歩左派傾向の強い判事の集まりとして知られる「ウリ(わが)法研究会」の会長を歴任し、文氏と同じ人権問題に取り組んできた法曹人として知られ、文氏が抜擢(ばってき)した人物だ。韓国にとってもマイナス 徴用工判決が下されるまでの一連の過程を見ると裁判に文氏が直接介入はしていないとしても、司法部が大統領の考えに影響されなかったとは言い難い。韓国の司法部が三権分立の原則を守れるほどの勇気があったかは疑問だ。 判決は、二つ深刻な問題をはらんでいる。まず、韓国大法院が日本の企業に賠償金支払いを命じたのは、韓国人労働者を強制に動員したことは植民地統治時代の「不法行為」に当たり、ゆえに個人の請求権は消滅していないという論理だ。 言い換えれば、植民地時代に不法行為に相当するものと判断されれば訴訟を起こし、勝訴する可能性が高いということだ。これから、徴用工に限らず、日本語の使用を強制されたのは不法行為だとして損害賠償を起こすことさえ可能かもしれない。 次に、日本植民地統治時代の「不法行為」に対する裁判は、韓国司法管轄の問題であると「確認」されてしまったことだ。例えるなら、フランス植民地統治を受けたアフリカの某国が、植民地時代のフランスの植民地統治時代の不法行為を裁くことが可能になったのと同じだ。 つまり、韓国大法院の判決はパンドラの箱を開けたといってもよい。法律を専門とするソウル大教授によると「今回の判決は、日帝強占時代(日本植民地時代)に行われたすべての不法行為に対し損害賠償請求訴訟を始められるという宣言だ」。 このような動きに対し日本政府は「韓国において国際法違反の状態が生じている」(11月7日、菅義偉官房長官)と懸念を表明、判決を断固受け入れるつもりはないという姿勢だが、今の文政権は、日本が納得できるだけの答えを出さないのではないか。 理由は主に二つある。まず、判決は、一部市民団体の情緒や左派寄りの政治理念を優先した判断だったとみるべきであり、文氏の政治性向、従来の日本植民地時代の歴史認識にも合致するものだからだ。 もう一つは、文政権の外交政策に通じる判断でもあるからだ。北朝鮮問題にすべてを賭ける文政権は、日本と連携を組んでいるとの印象を北朝鮮に与えたくない。政権発足後、韓国外相は中国に対し「3つをしない約束」(中国政府の主張)をしたとされる。 それは「日米韓関係を軍事同盟にはしない。アメリカのミサイル防衛システムには加入しない。高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を追加配置しない」というものだ。北朝鮮に配慮しての措置といえる。昼食会で韓国の文在寅大統領(左)から贈り物を受け取り笑顔を見せる金正恩委員長=2018年9月(平壌写真共同取材団) 今回の徴用工判決で日韓関係がギクシャクし、この問題が原因で日韓が協力しなくなれば、喜ぶのは北朝鮮だ。このような判断は決して韓国の国益にはならない。 最近、日本のソフトバンクや日産などグローバル企業112社は、韓国の釜山とソウルで「日本就職博覧会」を開催し日本で働きたいと思う韓国の若者の募集に力を入れている。将来、このような日本企業の決断が裏目に出ないことを祈りたい。

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    徴用工判決は文在寅「歴史見直し」3点セットの一環だ

    重村智計(東京通信大教授) 「元徴用工に賠償判決」。10月末、日本のメディアが一斉に報じた。韓国最高裁(大法院)の判決は「徴用工ではない」と言っているのに、「徴用工」と勝手に断定し、そのうえ「賠償」と誤報したのである。 筆者は30年の新聞記者生活を経て、大学教授を16年務めた。学生には、80%以上が同じ見解のニュースと世論は「危険だ、裏がある」と疑問を持って、違う記事を書く記者を探せ、と教えてきた。記者時代の先輩には、他紙と同じ記事を書くな、と教えられた。そうして、日本国中が「北朝鮮が戦争する」と騒いだ1995年に「北朝鮮は石油がなく、戦争できない」と『中央公論』に執筆し、世論を変えることができた。 大法院は10月30日、韓国人元工員に1人当たり1億ウォン(約1千万円)の支払いを新日鉄住金(旧新日本製鉄)に命じた。判決では、原告を「強制動員の被害者」と述べ、「徴用工」とは認定しなかった。また、「原告は未払い賃金や補償金を求めていない」と述べて「賠償」を否定し、「慰謝料請求権」を認めた。 原告側は「未払い賃金」と「補償金」賠償では勝てないと考えて、「慰謝料」を請求した。大法院は、これを認めたわけである。 巧妙な訴訟戦術だ。司法関係者や政府、団体関係者が知恵を絞ったのだろう。賃金の支払いや賠償金と違い、精神的苦痛などの慰謝料なら、労働の実態などの事実関係は争点にならない。判決では、根拠を示さず「強制連行の被害者」と認定した。これにより、植民地時代の強制連行被害者なら誰でも請求できる、との判例が生まれた。 「朝鮮人強制連行はなかった」。韓国を代表する経済史学者、ソウル大の李栄薫(イ・ヨンフン)名誉教授はこの事実を明らかにしている(拙著『日韓友好の罪びとたち』を参照)。日本の代表的な研究者も今では「強制連行」の言葉を使わない。ソウルにある韓国最高裁(共同) 戦前の朝鮮半島は、労働者の自由な渡日が制限されていた。民間企業は当局の許可を得て、「募集広告」を出した。「募集」は自発的な応募であって、強制連行ではない。 1942年からは「官斡旋(あっせん)」が実施された。村などの地方の行政単位に人数が割り当てられ、職員が住民を説得した。「徴用」は、1944年8月の「徴用令」では日本人が対象だったが、労働者不足により45年から朝鮮人にも拡大された。「徴用」は朝鮮人だけが対象ではなかったのである。なぜ無理な判決を下したのか 判決は、原告が「募集」に応じた労働者であると知っていたので、「強制労働の被害者」と認定した。なぜこのような無理な判決を下したのか。 第一の理由は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持率アップだ。文政権は、南北首脳会談が実現したのに、支持率低下を止められない苦境に直面している。経済状況が悪いからだ。もし「強制連行犠牲者」を敗訴にしたら、国民の怒りを買って、支持率はさらに下がるだけだ。 判決の背後には、文大統領をはじめとする左派勢力の思いと戦略があった。判決が日韓関係に衝撃を与えることは当初から予想していたはずで、大統領府や政府、そして司法部は日本への対応を練ったはずだ。そうでなければ、韓国の官僚は無能としか言いようがない。 判決は何を狙ったのか。「大統領支持率アップ」に加え、「日韓併合無効の確定」「日朝正常化の遅延」「日韓基本条約再交渉」「文大統領再選」―と見ていいだろう。一言で言うと、65年日韓基本条約の「ちゃぶ台返し」と、文大統領再選という二つの悪巧みだ。韓国大統領は、現憲法下では再選できないが、憲法改正すれば可能になる。 それを裏付けるのが、李洛淵(イ・ナギョン)首相の発言と、韓国外務省の「日韓両国が知恵を出し合う」との、おためごかしのコメントだ。李首相は「司法府の判断を尊重する」と述べただけで、「司法の独立」とは言わなかった。 韓国語で「司法の独立」と言うと、多くの韓国人がシラけ、鼻で笑われる経験を何度もした。司法が独立しているとは、韓国民は決して思っていないのだ。筆者もソウル特派員時代に、大統領府に判決内容を相談に来た裁判所長を目撃した。 韓国民は、昔から「司法は権力の僕(しもべ)」と語ってきた。それでも今回の判決に、多数の国民が「スカッとした」思いを感じたのは間違いない。国民は「強制労働」「不法な植民地支配」「反人道的な不法行為」の言葉に満足する。大統領の意向が判決に反映されたと一般庶民は思うだろう。2018年10月30日、韓国徴用工訴訟で新日鉄住金の上告を棄却した韓国最高裁大法廷(共同) 司法が独立していないと断じる根拠は大法院長官の経歴にある。金命洙(キム・ミョンス)長官の前職は、春川地方裁判所長であった。地裁の一所長が最高裁のトップに抜擢されたわけで、本来ありえない人事だ。金長官は、以前から「徴用工個人の請求権は消滅していない」との立場で知られていた。文大統領が同じ考えの裁判官を抜擢した、と考えるのが常識だろう。加えて、最高裁判事13人のうち7人が文大統領に任命されている。 判決は「植民地支配の不法性」を強調した。日韓併合を「国際法違反で無効」とする主張を、最高裁が公式に認めたのである。日韓併合「違法」主張のワケ 日韓併合はなぜ違法だというのか。韓国の主張は、1905年の第2次日韓協約を違法とし、それを前提にした1910年の日韓併合条約も違法としている。「日本軍の脅迫で成立したから無効である」との主張だ。判決は、この主張を確定した効果がある。 文政権は、この判決が日本と北朝鮮の国交正常化交渉に大きな影響を与えるとわかっていた。日朝国交正常化交渉で、「違法な植民地支配」「徴用工への慰謝料請求」を北朝鮮に要求させる計算だ。日朝交渉が紛糾するのは確実だ。韓国は日本の北朝鮮進出を望まないからだ。また、日本が「不法な植民地支配」と「慰謝料請求」を受け入れれば、日韓基本条約の再交渉を要求できる。 ところが、北朝鮮は韓国の「悪巧み」に気がついたのか、判決に沈黙を続けた。「歓迎」の立場を直ちに表明しなかったのは、韓国の「悪意」を見極めるのに時間がかかったからである。北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)主席が日本帝国主義に勝利した歴史を「正統性」の根拠にしており、韓国のように「歴史の立て直し」を必要としていない。 一方、韓国は日本と戦争し、勝利したわけではないので、「国家の正統性」にコンプレックスを抱いている。この心理克服のために「歴史立て直し」や「日本への勝利」を必要とする。だから、文在寅政権の「歴史見直し」戦略は今後も続く。「慰安婦財団解散」や自衛隊艦船の旭日旗掲揚拒否は、左派勢力が目指した「歴史立て直し」の3点セットであり、「対日勝利」のシンボルだ。 日本政府や企業も記録や資料を隠すのに懸命で、戦う意欲がなかった。日本的な対応は韓国文化に通用しない。植民地支配への反省から、日韓友好のために経済協力や韓国支援を進めた日本の好意は無駄だったわけである。2018年11月、シンガポールでASEAN加盟国の首脳と会談する韓国の文在寅大統領(聯合=共同) 韓国政府は日本と元工員に和解を呼びかけるだろう。和解文書に「判決を尊重する」との文章を入れさせ、「日韓併合違法」を日本が受け入れた、と主張する「悪巧み」を考えているだろう。 隣国との関係悪化は望ましくない。歴史を振り返ると、およそ1300年前の白村江の戦い以来、日本は朝鮮半島に関与しては敗北の連続だった。ようやく朝鮮戦争になって、関与しないことで「経済特需」を得たことが、歴史の教訓となった。 それまでは、中国が必ず介入する「半島の国際政治」を知らずに軍事介入し、儒教文化も無視してきた。だが、お節介と日本人の善意は押し付けでしかない。韓国大法院の判決は「歴史の教訓に学べ」と改めて日本人に教えている。朝鮮半島に深く関わると敗北し、裏切られることを忘れてはならない。

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    徴用工判決「国交断絶」は韓国に言わせるのが筋である

    宇山卓栄(著作家) 10月30日、韓国の大法院(最高裁判所)は元徴用工4人に対する賠償金を支払うよう判決を下した。大法院は新日鉄住金に対し、元徴用工1人当たり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じている。 これに対し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は様子見をしている。しかし大統領秘書室長の任鍾晳(イム・ジョンソク)氏は6日の韓国国会で、安倍首相や河野外相の発言を念頭に「最近、一連の日本の政治的な行動は非常に不適切で遺憾」と答弁した。 さらに韓国外交省は「節度ない過剰な反応」とのコメントを出した。李洛淵(イ・ナギョン)首相は「日本当局者たちは外交摩擦を引き起こしている」と会見で発言している。 これらが韓国政府の「正式な見解」である。さらに、任大統領秘書室長は「今後、日韓関係をそのまま維持すべきかどうか、検討している」と答弁している。「維持」などしてもらう必要はない。「検討」の上、日韓関係を破棄して、断交するなり断絶するなりしてもらいたいものだ。 日本から断交・断絶せよという声も国内にあるが、日本のような法治国家が韓国の稚拙な言動に対し、断交・断絶で報いるというのは国際社会に対し恥ずかしい。むしろ、韓国側にそれを言わせるべきだ。 韓国は1965年の日韓基本条約の国交正常化交渉が間違った不当な交渉だったと主張している。そうであるならば、韓国は正式に「日韓基本条約を破棄する」と言えばよい。それで、かつての国交正常化は白紙撤回となり、晴れて国交断絶となる。われわれの側から言うべき筋合いのものではない。 文在寅政権は革命政権である。今回の徴用工裁判判決をはじめ、彼らのやっていることは韓国版「文化大革命」である。合法的に当選し、政権を運営しているところは、1930年代のヒトラー政権にも似ている。韓国の文在寅大統領=2018年11月、済州島(聯合=共同) 例えば、文大統領支持者がセウォル号のマーク(2014年のセウォル号沈没事故犠牲者をしのぶマーク)を保守派勢力の家や店に貼る事件があった。朴槿恵(パク・クネ)前政権はセウォル号沈没の対応に失敗し、国民の支持を失った。そのため、セウォル号のマークは保守派を攻撃するために使われる。セウォル号のマークを貼る行為は、ナチスの突撃隊がユダヤ人の家や店に「ダヴィデの星」のマークを付けて襲撃した「水晶の夜」をほうふつとさせる。 また、朴前大統領の秘書室長であった金淇春(キム・ギチュン)氏が8月6日に仮釈放されたときには、左派団体のデモ隊が彼に一斉に、「恥を知れ!」などと罵声を浴びせた。金淇春氏は車に乗り込んだが、左派団体は車を取り囲み、興奮した者が車を蹴り上げ、モノを投げつけ、ついにフロントガラスを割った。 周囲に100人を超える警察官がいたが、警察官は左派団体の暴力・暴行を遠巻きに眺めるだけで、取り締まらなかった。今や文大統領を支持する左派勢力は文政権の「紅衛兵」みたいなものだ。もし、警察が彼らに手出しをして傷付けようものならば、警察も無事ではいられない。見てみぬフリをするしかない。文在寅の恐怖政治 文政権ににらまれているのは、政界関係者だけではない。崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件で、汚職疑惑を追求されている財閥企業重役たちがいる。彼らは李明博(イ・ミョンバク)政権・朴槿恵政権の2代に渡り、保守政権を支えてきた。たたけばいくらでもホコリは出る。彼らを生かすも殺すも、現在の当局次第だ。 10月5日には、収賄罪などで李明博元大統領に懲役15年の実刑判決が出た。これは財界に対する脅しである。財閥企業はこぞって、文政権にスリ寄っている。そして、財閥をスポンサーとしているテレビ局もまた、財閥を忖度(そんたく)して文政権を持ち上げる一方で、保守派をおとしめる情報操作に余念がない。 このように、文大統領のあの温和な顔からはなかなか想像できないが、彼は恐怖政治によって徹底的に反対勢力を締め上げて、従北・左派の革命政権の基盤を築き上げようとしている。今回の徴用工裁判判決も、革命へ邁進(まいしん)する文政権にとっては「当然の使命」の一つなのだ。 文大統領は今までとまったく違う新しい革命政権を打ち出すために、過去を完全否定する。朴正熙政権が残した1965年の日韓基本条約のような「負のレガシー」は、真っ先に否定すべきものなのだ。国際法を順守しようとするわれわれの常識は彼らに通用しない。 徴用工裁判の判決が出る3日前の10月27日、韓国大法院(最高裁)付属機関、法院行政庁の林鍾憲(イム・ジョンホン)前次長が逮捕された。朴前政権の意向を受けて、徴用工裁判の判決を先送りした容疑を掛けられている。朴政権は判決が出ることで、日韓関係が悪化することを懸念していたのだ。 そして、11月6日、このことを裏付ける当時の対外秘文書「将来シナリオ縮約」が公開された。この文書は前述の金淇春大統領秘書室長(当時)が、裁判を遅延させ、消滅時効(3年)を過ぎさせるよう、司法に圧力をかけたという内容のものである。 今回、この文書の公開は決定打として利用された。元徴用工に対する日本の賠償責任を「認める者は善」、「認めない者は悪」という図式が見事に作り出され、韓国国民もこの図式にまんまと乗せられて、まともな判断ができなくなっている。文政権が用意周到に、徴用工裁判の判決を打ち出す計画を練っていたことがよくわかる。韓国・釜山の日本総領事館付近で、徴用工像をめぐり警官隊ともみ合う労働団体メンバーら=2018年5月(共同) 現在、検察は当時の大法院長(最高裁長官)らの関与についても捜査を進めており、新たな逮捕者が出る可能性もある。 文政権は「積弊」という言葉を使っている。これは「保守政権時代に積み重なった弊害」を意味している。「積弊」を清算するという大義名分の下、保守派や反対勢力を葬り去ろうという革命が進行中なのだ。今回の徴用工裁判判決は革命という歴史の大転換において現れた「現象の一コマ」にすぎない。 この左派革命の流れは最終的に、北朝鮮主導の赤化統一へと行き着く。それは、われわれにとって「荒唐無稽」なことであるが、彼らにとっては「遠大で偉大な目標」なのである。実際に、それへと向かう布石が今、一つ一つ着実に打たれている。

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    韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい

    、事実上の“国交断絶”を突きつけたに等しい」 朝日新聞元ソウル特派員でジャーナリストの前川惠司氏は、韓国の大法院(最高裁)が10月30日に下した判決について、そう呆れた。 韓国人の元徴用工4人が、日本による朝鮮半島統治時代に「強制労働させられた」として、新日鉄住金に損害賠償を求めていた裁判の差し戻し上告審で、大法院は被告側の上告を棄却し、原告の元徴用工に対して1人あたり1億ウォン(約1000万円)の賠償を命じた。「徴用工」とは、戦時中に日本政府が軍需工場などに動員した労働者のことで、日本統治下の朝鮮半島でも動員がかけられた。まず、はっきりさせておかなければならないのは、元徴用工に対する補償については、すでに日韓両政府の合意のもと解決済みであるということだ。 日韓国交正常化が実現した1965年に、「日韓請求権協定」が結ばれた。協定によって、日本政府は韓国に対して「3億ドルの無償経済支援」を行ない、その代わりに韓国は「個人・法人の請求権を放棄」すると決まった。協定には請求権に関する問題が「完全かつ最終的に解決された」と明記されているのだ。日韓問題に詳しい麗澤大学客員教授の西岡力氏が解説する。「日韓国交正常化交渉の際に、日本政府は韓国人の元徴用工に対して、個人に直接支払うかたちでの補償を提案していました。しかし、韓国側はそれを拒否。政府に一括して支払うことを求めたため、日本がそれに応じた経緯がある」 つまり、元徴用工に補償しなければいけないのは、日本政府でも新日鉄住金などの日本企業でもなく、補償金を“預かっている”韓国政府なのだ。ソウル市街。手前を流れるのは漢江(ゲッティイメージズ) だが、韓国政府は日本からの経済支援金を元徴用工たちに渡さなかった。1965年当時の韓国の国家予算は約3億5000万ドルであり、それに匹敵する額の日本からの経済支援は、インフラ整備などに充てられた。その結果として、韓国は「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げたわけである。 そうした経緯を踏まえれば、「日本企業が元徴用工に補償しろ」という判決が、国際法はもちろん、物事の筋を大きく違えたものであることがよくわかる。関連記事■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ 慰安婦像、徴用工像を作り世界に拡散させるキム夫妻を直撃■ 韓国人がおかしなことを鵜呑みにするのは漢字廃止が影響か■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 韓国の若者たちはなぜ国を出て働こうとするのか

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    日韓基本条約 公開資料から読み取れる日本の真摯な交渉

     約束を守らない、法律より感情を優先する、歴史を捏造する──そんな韓国のやり方に日本は振り回されてきた。厄介極まりない隣人に我々はどう接すべきか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が提言する。* * * 今年1月、慰安婦日韓合意を再検証した文在寅大統領は、「日本が真摯に謝罪すれば元慰安婦のお婆さんたちの納得が得られる」と語り、事実上、日本側に重ねての謝罪を要求しました。 2月に平昌五輪開会式に出席するため韓国入りした安倍晋三首相は文大統領と会談し、合意の履行をあらためて求めましたが、文氏は「合意は破棄しない」と述べる一方で、朴槿恵政権の手続きに問題があったと主張するなど、日本側の疑念は払われていません。 慰安婦合意は米国が仲介して岸田文雄外相と尹炳世外交部長官が記者会見で「最終的かつ不可逆的に解決」したことを公式に宣言したものであり、約束を違えているのは韓国です。 そもそも戦後補償問題は1965年の日韓基本条約と同時に締結された日韓請求権協定で完全に解決しています。 反日色が強かった盧武鉉大統領は2005年、日韓基本条約締結にいたる交渉の議事録を公開させました。交渉の不備を指摘したうえで、補償問題は未解決だと主張して日本に元徴用工への賠償金を支払わせる意図があったのは明らかです。 韓国が公開した議事録は3万5000ページ超。当初、日本政府は公開を控えていましたが、韓国の動きに合わせて6万ページを超える資料を公開しました。それらから読み取れたのは、日本がいかに真摯に交渉していたかでした。 日本側は元徴用工への謝罪の意を表明し、被害者へ直接補償する意向を伝えましたが、韓国側は元徴用工への補償を含む賠償金をまとめて政府に払ってほしいとの要望を繰り返しています。韓国政府が賠償金を受け取った後に元徴用工たちに個別支給するという方式です。 その主張を受け入れた日本政府は韓国に5億ドルを供与しました。まだ日本は貧しかったため、その額は外貨準備高の3分の1近くに達し、10年年賦で支払いました。その資金で韓国はインフラを整備して、「漢江の奇跡」を成し遂げたのです。日本側の誠意が巧まずして交渉の議事録から明らかになった結果、あの反日の盧武鉉大統領でさえ、賠償金請求を諦めざるを得ませんでした。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) しかし、そもそも慰安婦の「強制連行」も徴用工の「強制動員」も事実ではありません。実際、朝鮮総督府で官吏を務めた西川清氏の証言が収録された『朝鮮総督府官吏 最後の証言』や、ビルマやシンガポールで慰安所の帳場人をしていた朝鮮人の日記を読めば、韓国側の主張がいかに荒唐無稽かわかります。●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。関連記事■ 朴前大統領の弾劾訴追を見れば韓国立法・司法の歪み分かる■ ホッケー南北合同チームに文在寅氏支持派若者からも批判の声■ 韓国が公開した慰安婦虐殺映像を朝日も産経もスルーした理由■ ケント氏「議論すら許さない日本のリベラル派は全体主義者」■ 金正恩と中国共産党に味方する文在寅政権は自由民主体制の敵

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    徴用工「デタラメ判決」と韓国のポピュリズム

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国での徴用工に関する大法院(最高裁)の判決が日本国内で大きな話題になっている。この判決を聞いたとき、筆者はまず「とてもデタラメな判決だな」と思った。 と同時に、韓国の国家としての脆弱(ぜいじゃく)性、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権のポピュリズム(大衆迎合)的な性格の弱さにも思いが至った。要するに、その韓国の脆弱性のツケが日本に回ってきたように思えたのである。 それでは、文政権のポピュリズム的な政策とは何だろうか。ポピュリズムは大衆扇動的といわれるが、政権を奪取して維持するためには、大衆からの支持はいわば必要条件である。 その意味では、ポピュリズムに特別な意味はない。だが、ポピュリズムにはもう一つの特徴的な側面を伴うことが多い。 いわば「敵」-「味方」の論理を利用することである。「敵」を特定し、その「敵」が「味方」の利害を侵しているとして徹底的に批判することで、「味方」の士気を高めることである。 これも程度問題ではある。さまざまな社会的問題の根源で、既得権益にぶら下がっている人たちがいる。この勢力を批判することが、あたかも「敵」-「味方」のロジックに乗った話に見えがちだ。特に経済学では、構造的問題(経済を非効率的にしてしまい国民の福利の向上を阻害する問題)について、この既得権者たちを問題視することが多い。2018年10月、ソウルの最高裁前で、徴用工訴訟での原告勝訴を訴える支援者ら(共同) 例えば、経済評論家の上念司氏の新刊『日本を亡ぼす岩盤規制 既得権者の正体を暴く』では日本に巣くうさまざまな既得権者や組織を容赦なく批判している。その指摘には筆者も学ぶことが多い。 上念氏も筆者もそうだが、経済学での既得権益者はその既得権にこだわる限り、批判されてしかるべきだ、という意見を持つ。だが、経済的な意味で彼らは「敵」ではない。なぜなら、経済政策の基本は、既得権による経済的な非効率性を次から次へと解決していけば、やがてそれは社会全体の福利厚生の向上につながるからである。なぜ「反成長主義」なのか つまり、既得権益者はその既得権を奪われることで不利益を被るが、やがて同様の効率化政策が各所で行われることで、社会全体の福祉が向上し、元既得権益者もそこで利益を受けるというのが、経済学の基本的な考え方だ。この考え方を「ヒックスの楽観主義」といい、偉大な米国の経済学者、ハロルド・ホテリングが指摘したことでもある。 要するに、「社会全体のパイはやがて拡大していく」という成長主義的な観点がここにある。日本や世界の歴史を見ても、おそらくこの「楽観主義」やホテリングの予測は正しいだろう。 だが、文政権のポピュリズムは、このような経済政策の基本から外れている。何より特徴的なのは、その「反成長主義」的なマクロ経済政策の運営手法だ。 韓国のマクロ経済政策が「反成長主義」というのは意外に思われる人もいるだろう。なぜなら、文政権の財政政策だけ見れば、予算規模をリーマンショック時点並みの2桁拡大をしようとしているからだ。 しかし、ここでは、マクロ経済学の教科書的な常識で、韓国のマクロ経済政策を評価する必要がある。それは「マンデルの三角形」というものだ。これは「為替レートの安定」、「資本移動の自由」、そして「金融政策の自律性」の三つのうち、基本的に二つしか採用することができないという見方である。 韓国の経済運営は、変動為替レート制であるものの、過去のアジア経済危機での経験を恐れて、過度にウォン安回避的な運用がされている。つまり、政府と中央銀行である韓国銀行が、その政策運営に為替レートの安定を政策変数として考慮しているのはほぼ明白である。韓国の5万ウォン札(ゲッティイメージズ) また、資本移動の自由化が行われている。「マンデルの三角形」の議論でいえば、韓国は金融政策の自律性がないことになる。これは自国の経済の景気や雇用の状況に対応して、金融政策を割り当てることが難しいことを示している。さらに、教科書的にいえば、海外との取引がある韓国のような「小国」経済では、財政政策の効果が限定されてしまうことになる。 要するに、雇用状況が悪くても、金融政策が拘束されている下では、財政政策を拡大しても効果が著しく減少するということだ。これは、1990年代に積極的な財政政策を行いながら、金融政策が事実上の円高志向、つまり緊縮志向だったために長期停滞に陥った日本の経験を思い出させる。しかも、金融政策においても、韓国の雇用状況の悪化と並行するように、インフレ目標の数値を引き下げるなど、緊縮傾向をむしろ自ら強めている。文政権、本当の「味方」 文政権は若年失業率の高止まりを財政政策で対応しようとしている。しかし、自国為替レートの自国通貨の減価(ウォン安)を極端に避ける政策を採用している限り、なかなかこの雇用の低迷から脱出できないのは自明である。これが文政権の経済政策が「反成長主義」的である、という意味だ。 簡単にいえば、経済全体をパイになぞらえれば、パイの大きさはほぼ一定のままである。しかも、文政権はこの一定の大きさのまま、自分の支持を集められるようにパイを切り分ける必要がある。これが、彼の手法が「敵」と「味方」に分けるポピュリズム的である理由ともなる。 既に企業社会の中にいる人たち、特に大企業の労働者や組合に、文政権は切り込む姿勢を見せていない。つまり、先の「ヒックスの楽観主義」的な効率化政策に踏み込めないままだ、ということになる。 これは、文政権の「味方」が大企業などの労働組合だということを示している。実際、大幅な賃上げを掲げた文政権の政策にその特徴が表れていた。 賃上げは、既に企業社会の一員である人たちには恩恵(既得権)となるが、これから働こうという人たち、特に若者たちに対しては障害になる。なぜなら、経済の大きさが一定のままで、ある人のパイの取り分を増やすことは、他の人の取り分を減らすことになるからだ。 前者は大企業の労働者、典型的な後者が若者である。実際に文政権の雇用政策は、既得権者である大企業の雇用を守りながら、若年失業率を累増させている。2017年8月、韓国・仁川市内で公開された徴用工像(川畑希望撮影) でも、文氏は若者を「敵」だとは決して言わないだろう。それどころか、全く思ってもいないかもしれない。だが、その経済政策は、ポピュリズムの「敵」―「味方」に分けた政策の典型になっている。文政権の支持率は低下傾向にあるが、それは文政権のポピュリズムが持つ弱さにある。 さらに、この「敵」-「味方」は徴用工問題でも顕著である。もちろん、この場合の「味方」は自国民であり、「敵」は日本国民である。事実上の「二枚舌外交」 ここで「日本政府」とは書かない。あくまでも日本国民である。なぜなら、今回の訴訟は、韓国国家が日本の民間企業に対して下した判決である。 韓国国民が日本統治時代の出来事に対して、賠償などについて個別請求権を持っているのは認識すべき点だろう。ただし、1965年に国交を正常化した際に結んだ日韓請求権協定により、韓国国民の請求先は日本政府や日本企業ではなく、あくまでも韓国政府に対するものであった。これが今回、ちゃぶ台を大きくひっくり返されたことになる。一種の「無法行為」である。 だが、この無法行為、その背景にある「敵」-「味方」の論理を、文氏は大統領になる前から肯定していた。文氏が無法の人でなければ、彼は政治的な宣言として、賠償請求先は韓国政府だと表明すべきだったろう。 そして、韓国政府による今までの国民への賠償政策が不十分であったことを、歴史の反省に立って率直に見直すべきである。ところが、文氏はそんなことをしない。大きな理由は、徴用工の賠償を求める政治的勢力が強いからだ。これは先の経済政策における大企業の労組の位置づけと同じである。 だが同時に、今回の判決を受けて、文政権は日本に対して、外交の場で「今回の判決を認めよ」と積極的に主張するだろうか。おそらくその確率は高くないだろう。ここにも文政権のポピュリズムの脆弱性が明らかである。 国内的には、暗黙のうちに今回の判決が出される政治的な流れを作っておき、他方で、対外的には日本に対しての積極的な働きかけを行わないはずだ。要するに、日本に強く出るほどの政治的パワーがないのである。事実上の「二枚舌外交」である。このやり方は、慰安婦問題についての文政権のやり方にも似ている。2018年10月、日本企業に賠償を命じるとした韓国徴用工訴訟判決を受け、韓国の李洙勲駐日大使(右端)に抗議する河野外相(左端) そもそも、日韓請求権協定を文政権自身が外交的に覆せば、おそらく日本とは決定的な対立を生み出すだろう。実際、日本側として見れば、決定的な対立が避けられないという意見は今でもあり、感情的なリアクションとはいえない側面も持つ。戦略的には、政治的断交は、全面的な韓国との交流停止とはいえない。台湾と日本の関係を想起すればわかるはずだ。政治的断交は一つの選択肢として有効だ。 ただし、今も書いたように、文政権は、ポピュリズムの持つ脆弱性から見れば、経済的にも政治的にも既得権を侵さない政策を維持し続けるだろう。従って、国内経済を拡大し、日韓関係を改善する政治的にも経済的にも成長を許さない政策を採るしかない。文政権がいくら弱くてもいいのだが、その弱さを繕うために日本国民が利用されるのは許されることではない。

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    文在寅外交は「金正恩のパシリ」と批判されても仕方ない

    統領の施政に干渉する権利は、日本人にはない。それが国際政治の原則である。ところが、在日の評論家を含む韓国人は、安倍晋三首相や日本の内政、憲法問題に激しく干渉する。何か不公平だ。 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党書記長との南北首脳会談後に「ローマ法王の訪朝要請」「対北制裁緩和を欧州各国に提案」など、北朝鮮「パシリ」外交に懸命だ。この背景には、金委員長のソウル訪問実現でノーベル平和賞を目指し、大統領再選を狙う野心がある。 現行の韓国憲法で、大統領の任期は1期5年。つまり、文大統領は2022年までの任期となる。文政権は今年3月に、大統領任期を4年とする代わりに、2期まで再選可能な憲法改正案を発表した。ただし、文大統領には適用されないという。 だが、この改憲案には反対も多く、関連法案が成立しないため、国民投票にかかっていない。なお、成立した場合、文大統領にも再選の可能性は残されている。文大統領がノーベル平和賞を受賞すれば、「再選可能にすべき」の声が世論から上がる、と期待しているからだ。 文大統領は、そのためにも「ローマ法王訪朝」を実現したいと考えた。9月の南北首脳会談で、文大統領はローマ法王の平壌訪問を提案し、金委員長も同意した。これは、対北経済制裁の緩和のための環境作りで、そうなれば、金委員長のソウル訪問も可能になると期待している。 文大統領は10月18日にバチカンでローマ法王フランシスコと会見し、金委員長の「訪朝招請」を伝えた。韓国の報道機関は「法王 訪朝に前向き」と一斉に報じた。しかし、ローマ法王庁の公式声明は必ずしも「前向き」ではなかったのである。 日本のメディアも韓国の報道をそのまま引用し、「ローマ法王 訪朝に前向き」(毎日新聞)と報じた。だが、この取材と報道姿勢には、首をかしげざるを得ない。韓国の報道機関は、大統領府や政府の意向を受けた記事を報じがちだ。それに乗せられてはいけない。 日本のメディアは、ローマ法王庁に取材するか、法王庁の公式見解とイタリアでの受け止め方を報道すべきだった。明らかな取材不足だ。それでも、産経新聞だけが「北朝鮮 宗教弾圧続く」と報じた。報道の背景には、日本の特派員が北朝鮮の宗教事情を知らなかった事実がある。2018年10月、バチカンでローマ法王フランシスコ(左)と会談する韓国の文在寅大統領(聯合=共同) 北朝鮮は、憲法で「宗教的信念の自由」を明記しているが、「宗教活動の自由」は認めていない。平壌には、カトリック系の長忠大聖堂とプロテスタント系のチルゴル教会、ボンス教会がある。長忠大聖堂には、司祭はいないという。プロテスタント系の教会には「自称」牧師が存在するが、本格的な神学校を卒業したわけではない。 北朝鮮のキリスト教会幹部と信者は、ほとんどが工作機関の統一戦線部の職員である。1988年ごろ、統一工作のために、西欧と日韓のキリスト教界への浸透を目的に設立された。こうして、日本や韓国の教会は、工作員を韓国や日本に侵入させるルートとして利用されていった。文在寅が気づかない教訓 9月の南北首脳会談には、韓国カトリック教会の金喜中(キム・ヒジュン)大主教が同行し、「ローマ法王庁に南北和解と平和を伝える」と金委員長に述べた。だが、カトリック教会の大幹部なら、北朝鮮に人権弾圧と政治犯収容所の解放を求めるべきだろう。宗教活動の自由も要求してほしかった。北朝鮮では、聖書の所持は逮捕され、布教も禁止されているからだ。 北朝鮮では、多くのキリスト教指導者と信徒が処刑された。また、朝鮮戦争の際には、韓国のキリスト教指導者が北朝鮮軍に虐殺された。その責任追及と被害者への関心を、韓国のキリスト教会は忘れている。なぜか。 ところが、北朝鮮に同情する韓国のカトリック神父が少なくない。かつて当局に追われた左翼の学生や活動家の多くが「隠れみの」としてカトリック教会に入信し神父になった。 文大統領は、10月下旬にベルギーで行われたアジア欧州会議(ASEM)の席上、英仏首脳に「対北経済制裁の緩和」を呼びかけた。これはイギリスとフランスが国連安全保障委員会の常任理事国で、「国連制裁」緩和の権限を握っているからだ。北朝鮮は23日に中国とロシアを通じて、「対北朝鮮制裁緩和」の動議を安保理に提出したが、文大統領はこの動きを知り、協力したわけである。 こうした一連の動きは、文大統領が北朝鮮と連携している事実を確認させることになり、日米は不信感を深めた。これでは、文在寅外交が「金正恩のパシリ」と批判されてもしかたがない。 文大統領の「努力」にもかかわらず、ASEM議長声明では北朝鮮に「完全非核化」を求めた。また、英仏独の首脳は文大統領の要請に応じず、安倍首相の求めに応じ「対北国連制裁維持強化」を表明したのだった。この事態に、韓国の新聞も「文在寅外交失敗」と報じた。2018年9月、平壌での南北首脳会談を前にソウル中心部に展示された、4月の会談で抱き合う韓国の文在寅大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の写真(共同) 文大統領は、なぜ「北朝鮮の代理人」にこだわるのか。支持率が低下し、大統領の求心力を失っているからだ。 憲法改正が実現しなければ、大統領任期は2022年で終わる。次の大統領を狙う与党の政治家たちにとって、文大統領再選への道を完全に断つには、現憲法の規定に従い、任期を終える方がいい。たとえ憲法改正しても、万が一にも再選の可能性を残したくない。それには次期大統領選直前に憲法改正し、文大統領には適用されない方が安全だ。 権力者は、自分が退任する時期を明らかにすると、死に体になる。この教訓を文大統領は実感していなかったようだ。 与党内では、すでに次期大統領候補を巡る思惑と駆け引きが展開されている。ローマ法王訪朝と国連制裁緩和により「金正恩ソウル訪問」を実現し、憲法改正が実現すれば「統一が近いから、大統領を変えるべきでない」と世論を操作でき、大統領再選も可能になる。文大統領の野望と「パシリ」が、北朝鮮の非核化と経済制裁の足並みを乱しているのである。

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    韓国に思いを寄せる左派により韓国が窮地に陥る皮肉

    本にも大きなメリットがあるということですね。井上:もし日本から米軍基地がなくなると、一番困るのは実は韓国でしょう。現在の在日米軍と在韓米軍の戦力を比較すると、在日米軍は、世界最強の第7艦隊を筆頭に陸海空合わせて5万人規模ですが、在韓米軍は、陸軍部隊を中心に空軍部隊がいるだけで、海兵隊および海軍部隊はわずか。規模も在日米軍の半数程度です。つまり、朝鮮半島有事の際には、在日米軍が主力になる。ケント:日本の左派の人たちは「軍事基地があるから戦争になる」と本気で信じていて、日本が武装解除すれば戦争にならないというんですね。それこそが戦争を誘発するということがわかっていない。在日米軍基地がなくなれば、北朝鮮が韓国に攻め込む可能性も高まる。米軍普天間飛行場・辺野古移設問題米軍普天間飛行場移設に向けた護岸工事が進む沖縄県名護市の辺野古沿岸部=2018年1月27日午後(共同通信社機から)井上:左派のなかには韓国に異常なまでに思いを寄せる人が多いんですが、彼らの主張が韓国を窮地に陥れかねないのだから皮肉な話です。ケント:しかし、マッカーサーも自分たちの占領政策が原因とはいえ、70年後の日本がこんな状況になるとは思っていなかったでしょうね。占領統治が終わったら、憲法くらいは改正するだろうと思っていたら、まったく変えないので、びっくりしたんじゃないですか。 終戦から約5年半後の1951年にジョン・フォスター・ダレス国務省顧問は、吉田茂首相と会談して「憲法を改正してはどうか」と提案しましたが、吉田首相は断わった。経済復興に専念することを選んだわけです。井上:いま安倍政権下で憲法改正の議論が始まっていますが、日本人はGHQの洗脳によって植え付けられた東京裁判史観を見直すことが、議論の第一歩だと思います。ケント:まず日本人は、その東京裁判史観を反日戦略に利用し続けてきたのが、中国と韓国であることを認識するべきでしょう。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 慰安婦問題 繰り返される手のひら返しと河野談話への流れ■ 文在寅大統領就任で青瓦台は「反米親北勢力」に乗っ取られた■ 韓国による「慰安婦」世界記憶遺産登録を完全阻止の秘策あり■ ケント氏「議論すら許さない日本のリベラル派は全体主義者」

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    雇用よりも財閥、文在寅の失政で現実味を増す「韓国消滅論」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が急落した。韓国の世論調査会社「リアルメーター」の発表によれば、6月には70%台だった支持率が、7月では約56%に大きく減少した。韓国メディアは、この支持率の大きな落ち込みが、文大統領の経済政策への評価と、側近の関係する政治スキャンダルが作用していると報じている。 文政権の経済政策は、日本でいえば民主党政権や、その流れをくむ立憲民主党の政策に類似している。その特徴は、経済全体の拡大よりも再分配政策を重視するスタンスだ。簡単に言うと、ケーキの大きさは変わらないものとみなし、ケーキをどんな人たちに分けるかに関心を向ける政策である。 文政権は雇用重視を唱えて、最低賃金の引き上げや残業時間の短縮などの政策を打ち出していた。つまり、働く場で弱い立場にある人たちにより多くの恩恵を与える政策を主軸にしていた。この政策の裏は、朴槿恵(パク・クネ)前政権が倒れた背景に、若年層を中心にした不安定な経済状況を抱えた人たちを核とした社会的不満があることを、意識してのものだったろう。 だが、文政権の雇用政策は破綻したのではないか、という点について、韓国でも激しい議論が生じているようだ。批判する側の論理は簡単で、最低賃金の引き上げや残業時間の短縮によって、経営側の実質的なコストが膨大なものになってしまった。そのため新たに人を雇うことを抑制してしまう。 このときに最も割を食うのが、韓国の若年層である。若年層の失業率は、前年同月比で9・3%と高止まりしたままだ。なお全体の失業率は3・7%で、前年同月比では0・3%悪化した。失業率は先々月、4%に上昇した後に減少したように思えるが、それは悪い「減少」である。 韓国での就業者(実際に働く場所を得た人)の状況は、あのリーマンショック並みに悪化している。つまり、失業率の見かけの「減少」は、単に景気が悪くなり、働き場所が見つからないために働くことを断念した人たちが増えたために生じているのである。実際労働力人口(労働する意思と能力をもつ人)は前月より減少し、同時に就業者数も減っている。2018年8月、休暇先で読書する韓国の文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同) もちろん文政権の雇用政策が失敗している可能性があるが、核心は今の韓国国内で続く経済政策論争から見落とされている部分にある。最低賃金の引き上げなどは副次的な意味でしかない。真因は文政権のマクロ経済政策の失敗にある。特に、金融政策に失敗したことである。 韓国の中央銀行はインフレ目標を採用しているが、消費者物価上昇率の目標値は2%である。現状は前年同月比で1・5%だが、確かに朴政権時代の実質的なデフレ状態に比べれば、かなり改善しているのは事実であると言えよう。文政権は「実質デフレ」 だが、それでも金融政策の緩和基調は極めて抑制されており、それが経済全体の拡大も抑えている。実際に、韓国銀行の政策金利は据え置かれたままである。 韓国は朴政権から今の文政権にかけて、それ以前まで採用していた高めのインフレ目標をやめている。その背景には、韓国の資産・負債の構造がある。 対外債務残高が前政権時代から現在にかけて増加基調にあり、現時点では約4千億ドルに膨らんでいる。この対外債務の実質額が拡大することを、政府と中央銀行が恐れているために、より一層の緩和といった経済刺激策が採れないというのが、もっともらしい言い訳のようである。 だが、実際には類似した資産・負債構造であっても、朴政権以前は、リーマンショック以後と比べて、今より高いインフレ率と失業率の低下傾向(就業者の増加傾向)が「同居」していた。ちなみに、2012年まではインフレ目標の中央値は3%であり、上限は4%(下限は2%)だった。 13年以降の2%への引き下げによって急激に低インフレ化し、むしろ実質デフレ経済に陥っているのである。見方を変えれば、物価抑制という目標に絞れば、金融政策は「成功」しているのかもしれない。 つまり、政府と中央銀行は、韓国の大企業の対外債実質増を警戒しすぎて、それによって雇用を犠牲にしているのである。その大きなしわ寄せの象徴が、若年雇用の悲惨な実態というわけだ。 どの国の中央銀行の金融政策も、インフレ目標はあくまでも中間的なものでしかない。日本ももちろんそうである。あくまで、インフレ目標の実現を通じて、雇用全体の改善や経済の安定化を目指すことが、各国中央銀行の政策目標なのである。2018年7月、インド・ニューデリー近郊のサムスン電子の新工場竣工式に出席した韓国の文在寅大統領(右端)、同社の李在鎔副会長(左端)ら(聯合=共同) その意味では、韓国政府と韓国銀行は金融政策の目的を、銀行や大企業に対してあまりにも「忖度(そんたく)」しすぎて、その半面、肝心要の雇用を犠牲にしていることになる。経済・雇用の全体的な状況が改善しないままに、最低賃金の引き上げなどが行われれば、どうなるだろうか。 冒頭の例に戻ろう。韓国の金融政策が緩和基調ではないために、むしろ雇用を全体として縮小させてしまっている。つまり、ケーキの大きさが前よりも小さくなっているわけだ。そのとき、ケーキの切り分けを変えることをしたらどうなるか。きっと最も力の強い人たちに、より多くのケーキが配られるだろう。韓国経済の「不幸」 つまり、小さくなったケーキでも、すでに働いている正社員たちに、より多くの配分が与えられるのである。他方で、非正規社員や新卒の人たちは割を食う。最低賃金の引き上げはこの状況をさらに悪化させているのである。 日本では、アベノミクスの採用以降、雇用が増加し、最低賃金も6年連続で引き上げられた。これはケーキの拡大の中で、最低賃金の引き上げが若年層などの雇用を悪化することなく行われたことを意味している。つまり、ケーキの配分の変更をスムーズにするには、ケーキの拡大が必要だということだ。これを誤ると、若年雇用だけが悪化してしまう。 わが国でも過去の民主党政権や現在の立憲民主党は、ケーキの拡大に極めて消極的であると同時に、ケーキの配分には積極的である。その帰結がどうなるか、民主党政権での経験が端的に表現している。だが、まだこれだけの雇用改善を前にしても「アベノミクスは失敗で、民主党政権の方がよかった」というトンデモ意見が絶えないのである。その人たちには現在の韓国の状況を理解することはできないだろう。 ところで、韓国の経済政策論争を見てみると、最低賃金引き上げや残業時間規制などの是非ばかりに目が行っていて、日本的なアベノミクス、つまり金融政策による雇用最大化を主張する意見は皆無である。米エール大の浜田宏一名誉教授が韓国銀行でスピーチしたとき、出席者すべてが金融緩和政策による雇用創出、つまりリフレ政策に否定的だったという。 私の経験でも、韓国の三大ネットワークのテレビ番組に出演したときに、リフレ政策(アベノミクスによる金融緩和政策)を主張したのだが、同じ主張をする韓国側の出演者は皆無だった。韓国には日本でいうリフレ政策を唱える人がいないとしか思えない。政策のアイデアを助言する人が韓国にいなければ、そもそもその政策が採用される可能性も低い。そこに韓国経済の不幸を見いだすことができる。 しかも、事はさらに深刻である。韓国の若年失業率の高止まりが続くことで、すでに若年から中年に移行した人たちの経済状況が低迷している。非正規雇用の割合も極めて高く、その人たちの所得水準は不安定である。観光客の若者が多く訪れる青瓦台=2017年5月、韓国・ソウル(川口良介撮影) この韓国の30代の未婚率は日本をかなり上回る。この事態を放っておけば、未婚率が経済的な要因でさらに上昇していくだろう。韓国でも未婚率と合計特殊出生率はかなり強い関係にある。つまり、金融政策の失敗が、将来的な韓国の大幅な人口減と高齢者の割合の急増をもたらす可能性がある。 しかも、そのスピードは日本よりも早い。韓国が「消滅」するかどうか、その方が巷(ちまた)でよく目にする「韓国崩壊」論よりもよほど深刻な事態である。

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    韓国現地リポート】韓国キリスト教と政治の裏歴史

    韓国のキリスト教徒は国民の3割に上り、「国民的宗教」として浸透している。大衆化した宗教は政治や社会とも密接に関係するだけに、歴代大統領の政策にも多大な影響を与えているようだ。韓国宗教文化研究所所長の李進龜(イ・ジンク)氏が、その歴史と現状をひも解く。■関連テーマはこちら

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    大衆化した韓国キリスト教の正体

    韓国のキリスト教徒は国民のおよそ3割に上る。わが国では1%にも満たないが、隣国では「国家的宗教」として浸透する。むろん、大衆化した宗教は政治や社会とも密接に関係する。なぜ韓国はキリスト教国になったのか。iRONNA韓国リポートの新テーマ「宗教編」をシリーズでお届けする。

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    韓国のキリスト教はいかにして「反日感情」と結びついたか

    洛雲海(日本基督教団韓国派遣宣教師) 1945年に太平洋戦争が終わり、朝鮮半島が北と南に分かれ、大韓民国という国家が新しく生まれました。国家をつくる上で要になるのは、憲法です。1948年、韓国の憲法を定める最初の会議(制憲国会開会会議)が開かれましたが、そこで驚くべきことが起こります。 国会開会を宣言する議長が発した第一声が、なんと神への感謝の祈りを議場に促す言葉だったのです。それは「大韓民国独立民主国第一次会議をここに開催するに至りましたことを、私たちは神に感謝しなければなりません」というものでした。 日本では考えられないでしょうが、韓国という国はそのようにして始まったのです。その時の議長がだれかといえば、のちに初代大統領になった李承晩(イ・スンマン)でした。これは速記録にもきちんと残っています。このエピソード一つ踏まえるだけでも、韓国の政治とキリスト教がいかに密接に関係しているかがわかると思います。 キリスト教といってもいろいろな教派や立場があります。保守系キリスト教、進歩系キリスト教、つまり、キリスト教にも右派、左派があるんですね。 キリスト教右派、左派というのは、カトリックかプロテスタントかで分かれているのではありません。カトリックもプロテスタントも、大部分は保守でしょう。ただ、一部に進歩的な人たち、北朝鮮とも仲良くしていこうという人たちがいて、その人たちを左派と呼ぶわけです。そしてその代表がカトリックや「聖公会」の一部、また「長老教会」や「メソジスト教会」などのプロテスタントの一部の人たちです。 そして政治的保守層のキリスト者たちは保守系キリスト教と結びつく傾向があり、政治的進歩層のキリスト者たちは進歩系キリスト教と結びつく傾向があります。歴代大統領の宗教をみれば、それは明らかです。セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 例えば李明博(イ・ミョンバク)大統領はプロテスタント「長老教会」の長老でした。彼は長老教会の中でも「統合」と呼ばれる中道派に属し、保守から進歩までを含む一番幅が広い教派です。 その後の朴槿恵(パク・クネ)大統領は非常に保守的な政治家でした。父親の朴正煕(パク・チョンヒ)を支持していたキリスト者たちは主として保守的キリスト者たちでしたから、同じような人々が支持していたとみてよいでしょう。 そして進歩派で知られる現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、カトリック信徒です。ご存じの通り、廬武鉉(ノ・ムヒョン)と文在寅は親密な同志ですが、彼らを支えているのは同じキリスト教グループです。韓国政府のブレーンは神父 政治的進歩を支えているキリスト者たちは、軍事独裁政権と呼ばれた時代に、民主化闘争のために命を張って戦った人々である、という共通点があります。彼らは多くの保守系キリスト教が体制側に立っているのに対して、弱きものの立場に立ってキリスト教の精神を具現化していくんだと、独裁政治に対抗したのです。中でもカトリックで構成された「正義具現司祭団」というグループが中心的な役割を果たしました。 そして民主化運動が成功し政権交代が果たされた後、金大中(キム・デジュン)、廬武鉉大統領の時には、民主化運動をした神父や牧師たちが政権のブレーンになっていきました。その牧師や神父は政府の中枢部に入って行きブレーンとなっていきました。特に南北関係の核心的なポストに、神父や神学者が入っていったわけです。 韓国政界は、表向きにはあまりキリスト教の存在はわからないでしょうが、国家の決定的なところにキリスト教徒たちが多数入っているのが現実です。 日本のキリスト教徒の人口比率は、1%に満たないと言われています。一方、韓国のキリスト教徒はカトリックやプロテスタントを併せて俗に30%ほどと推測されます。最近は韓国でもキリスト者人口は減ってきていますが、それでも日本とは大きく違いますよね。 すぐお隣の国にも関わらず、なぜ韓国でキリスト教徒が多く、日本では少ないのか。それは、韓国において、本来結びつくはずのないナショナリズムとキリスト教が結びついたことが大きな要因の一つだと、私は見ています。 ナショナリズムとキリスト教の結びつきを象徴する出来事として、「3・1独立運動」をみてみましょう。日本の植民地支配に抵抗して独立を願う人たちが立ち上がり、宣言書が読まれ、デモ行進が行われました。この宣言に民族代表33人が名を連ねたのですが、全員が宗教的指導者でした。日本統治下の時代のキリスト教の会議記録とセムナン教会のメンバーリスト=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) その宗教の内訳をみると、キリスト教指導者が半分以上を占めている。これは注目に値すると思います。日本でキリスト教といえば、むしろ日本を超えた「世界」のことについて訴えているイメージが強いのではないでしょうか。日本のナショナリズムを鼓舞する人の中に、キリスト教徒たちはほとんど目につかないですよね。 韓国では、政治的保守・右翼とキリスト教が結びつくことが多く、それが韓国でキリスト教徒の多い要因ではないかとする見方があります。でも、私の牧師としての立場からすれば、本来ナショナリズムとキリスト教の教えは結びつかないものですし、むしろキリスト教はナショナリズムを克服していくべきものです。 なぜなら、キリスト教では、神の前ではみな平等であると教えるからです。それが基本的人権の思想につながっていくわけですが、理由はそれだけではありません。キリスト教が世界に広がる過程も関係しています。 キリスト教国家が他の発展途上の地域、あるいは非文明的な地域を植民地化しようと入っていくときに、宗教も一緒に入って広められていった歴史があります。入ってこられた側としては、もちろん好意的に受け入れる人たちもいたことでしょうが、当然反発する人たちもいるわけですね。宣教師が反日に動いた理由 侵略を受ける側は、侵略をしてくる側をよく思うはずがないですよね。搾取されていくわけですから、反発が起こります。もちろん、文明の力を取り入れて自らに利しようとする人たちはいるでしょうし、実際いました。織田信長が鉄砲を取り入れて日本を統一していったように、先進技術や文明の力を取り入れて手を組もうとする人たちもいますが、多くは反発します。 そして、侵略者たちが信じている、核心になっているものに対しても反発が起こるのが普通でしょう。例えばキリスト教を信じているという侵略者たちが、口では愛とかなんとか言っておきながら、ものすごい勢いで搾取をして現地の人々を隷属化していく。そういうことが起こってきたときに、志のある人たちは反発しますよね。その反発は、侵略者たちが信じている宗教に対する反発にもなるわけです。 でも、侵略者たちの力があまりにも大きいがゆえに、やがて取り込まれて、そして教化されるようなことが起こります。植民地化された国にキリスト教会が入っていき、現地が搾取され教化されるという形は、世界中のいろいろな国で見ることができるでしょう。 南米でもカトリックの信徒がほとんどで、フィリピンでも同じです。それは、どのような宗教を信奉する国が現地を侵略し、また植民地化するのか、まさにそのことが影響するわけです。 そこで韓国を考えてみましょう。韓国を植民地化した国はどこかといえば、日本です。ところで、日本はキリスト教国家と言えるでしょうか。その当時の帝国日本という国家の基軸となるような宗教があったとすれば、それは「国家神道」です。 植民地化されると感じれば、朝鮮民族としての自負心を強く持っている民族主義者たちは抵抗するでしょうし、実際に抵抗しました。彼らは、自らを搾取し植民化しようとするものたちの背後にあるものにも一緒に反発します。宗教にだって反発するでしょう。そこで神社参拝の問題が特に出てくるわけです。 もしも、日本の背後にある宗教がキリスト教であったなら、彼らはキリスト教に対する反発を持ったのではないでしょうか。しかし朝鮮半島ではそうではなかったわけです。それは「国家神道」でした。 そしてもうひとつ、彼らの民族的な精神、あるいは民族独立の運動を支持する人たちがいました。それがキリスト教の宣教師たちだったわけです。宣教師が韓国の信者に洗礼を施す様子=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 朝鮮の人々から見れば、日本に無茶苦茶なやり方で入って来られたという思いが強い中で、宣教師たちはそんな彼らをかわいそうに思い、愛をもって助けようと、朝鮮側の立場になったことでしょう。 宣教師たちからすれば、日本は朝鮮の人々の自由を奪っていく、そのような行為はキリスト教の愛の精神に反するわけですから、朝鮮の民族独立運動家と共に反日に動きました。それでナショナリズムとキリスト教が結びついていった、という側面があったのではないでしょうか。靖国参拝は異常な行動に見える ある神学者が唱えた理論で、「帝国日本触媒論」という考え方があります。触媒というのは、Aという物質とBという物質が一緒にいるだけではなんの反応もしないのに、そこに関係のない触媒が介入してくると、触媒自体は変わらないのに、AとBは激しく反応して新しいものを生み出すような役割を果たすものです。 その触媒こそが日本だとする理論です。これは私もなるほどと思います。キリスト教と韓国のナショナリズムというものは本来結びつきようがないものなのに、そこに帝国日本というものが触媒のように入ってきたがゆえに二つは激しく反応して結びつくことになりました。「3・1独立運動」主導者の過半数がキリスト教の指導者たちだったという例は、この結びつきが顕著に表れた例と言えるわけです。 そして日本が負けたおかげで(韓国の民族独立主義者たちの側からみると「おかげ」ですよね)、ついに独立が可能になりました。そこで、これまで韓国で民族のために命を張って抵抗してきた人たちは、その後、国家においてどのような位置を占めると思いますか。当然、国家の指導層に出てくるわけです。 基本的にキリスト教の教えは、愛による和解を願う赦(ゆる)しの宗教です。つまり現代における、「反日」的なメッセージとキリスト教の教えは必ずしも一致しません。しかし、朝鮮半島には、事実日本から痛い目にあったという過去があり、そのために複雑な思いを持った人々がキリスト教徒たちの中にもいます。日本からのさらなる謝罪が必要だと思っている人々も多いことでしょう。 例えば、靖国神社に参拝する日本の政治家がいます。日本のある人々からすれば、参拝は英霊に対する当然の礼儀だと思うかもしれませんが、外国から見れば、それは宗教行為に他ならないでしょう。ある閣僚が、キリスト教信仰を持つ信徒でありながら靖国に参拝するというのは、本来ならありえません。セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 少なからぬ日本人からすれば、政治家の靖国参拝は許容範囲というか、礼儀として受け止められるかもしれませんが、外から見ればそれは異常な行為に見えることでしょう。どっちの神を信じているんだと。帝国日本の時代に、宗教行為ではないからと強要された神社参拝に反発して、虐殺までされたキリスト教徒たちがいますから、「政治家の神社参拝」とそれらの出来事が重なって見えることでしょう。 韓国とキリスト教の関係は奥が深いものです。これを理解すれば、韓国という国家を見る視点が変わり、現代に残る強い反日感情の根源などについても、真に理解することにつながるのではないでしょうか。(聞き手 iRONNA編集部、中田真弥)洛雲海(ナク・ウンヘ) 昭和39年東京生まれ。日本人。韓国政府招請奨学生として長老会神学大学校大学院に留学、博士課程修了(神学博士)。現在、長老会神学大学校助教授(組織神学)、韓国・セムナン教会協力牧師、聖学院大学総合研究所客員教授。

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    なぜ韓国でキリスト教が爆発的に浸透したのか

    島田裕巳(宗教学者) 戦後の韓国社会では、キリスト教の伸びが著しい。米調査機関、ピュー・リサーチ・センターによれば、2010年における韓国のキリスト教徒の割合は29パーセントに達し、仏教を凌駕している。仏教は23パーセントである。 キリスト教徒の割合は、1950年の時点では、まだ8パーセントだった。それが、1970年には18パーセント、85年には21パーセントに増えた。95年で26パーセント、2005年で28パーセントだから、伸びこそ鈍化している。 だが、日本のキリスト教徒の割合が1パーセント程度なのに比べると、韓国でのキリスト教の浸透はすさまじい。実際韓国に行ってみると、親は仏教徒だが、自分はキリスト教徒だという人によく出会う。 そこには、戦後の韓国における経済発展と、急激な都市化がかかわっている。都市化は首都ソウルへの一極集中と言ってもいい。 日本でも、高度経済成長の時代には、産業構造の転換に基いて経済が大きく発展し、それに伴って都市化が著しく進行した。それまで伝統的な村社会に生きていた人々は、都市に信仰を携えてはこなかった。しかも、彼らは家や地域社会のというネットワークから切り離された。そうした人間たちを掬い取ったのが、創価学会をはじめとする新宗教だった。 韓国では、日本の新宗教の代わりをキリスト教が果たした。韓国のキリスト教は、日本のキリスト教とは大きく異なるのである。日本では、キリスト教は、主に富裕層や知識人層に広がった。逆に大衆化は進まなかった。 ところが、韓国では、キリスト教は庶民層に広がった。したがって、日本のキリスト教とは異なり、むしろ日本の新宗教に近い、現世利益や病気治療を中心とするものが受容された。その際には、韓国に伝統的なシャーマニズムがそこに取り込まれ、かなり怪しげなものとなった。なにしろ、説教師が神懸りしたりするのである。韓国のソウルにある汝矣島(ヨイド)純福音教会 必然、韓国のキリスト教徒の中でも、知識人層はそうした土着化したキリスト教を評価せず、「あれはキリスト教ではない」と否定的にとらえている。安延苑(アン・ジョンウォン)青学大准教授と浅見雅一慶大教授との共著に『韓国とキリスト教』(中公新書)という本があるが、そこでは、大衆化したキリスト教についてはほとんど触れられていない。触れたくないというのが、著者たちの本音なのである。 日本では、土着の神道と外来の仏教が融合し、それが新宗教の基盤にもなった。ところが、韓国には神道にあたるものがないし、仏教は、儒教による圧迫も受けてきた。そのことが、キリスト教の受容に結び付いたのである。もう一つの「特徴」 ただ、「漢江の奇跡」と称された経済発展が曲がり角に達し、韓国も低成長の時代に入ると、キリスト教の伸びは前述したように鈍化した。それは、新宗教に近いキリスト教から活力を奪うことにもなった。最近の韓国では、プロテスタントからカトリックに改宗する人間が増えているといわれるが、現世利益や病気治療ではない、社会的にも認知された宗教が求められるようになってきたのであろう。 もう一つ、韓国の宗教の特徴は、経済界と結びつきやすいということがあげられる。韓国は依然として財閥社会で、「10大財閥」が力を持っていると言われるが、財閥が強いということは、経済構造が十分には近代化されていないことを意味する。だからこそ、財閥をめぐってさまざまな事件が起こるのである。 セウォル号事件の際には、この船の実質的なオーナーは、兪炳彦(ユ・ビョンオン)という造船業や海運、遊覧船を経営するセモグループの前会長だとされたが、この人物は、同時に救援派(クウォンパ)という宗教団体の開祖であった。この団体の正式な名称はキリスト教福音浸礼会である。 救援派はキリスト教の異端とも言われるが、プロテスタントの場合、バチカンのような世界的な組織があるわけではなく、正統と異端を区別する仕組みが存在しない。救援派のような新宗教に近いキリスト教の宗派は、韓国にいくらでも存在するのである。 経済活動を実践しつつ、宗教活動も行う組織としては、世界基督教統一神霊協会がよく知られている。いわゆる「統一教会」のことだ。この組織は、世界平和統一家庭連合に名称が変更されている。 日本の統一教会と言えば、勝共連合との結びつきもあり、政治的な宗教団体のイメージが強い。だからこそ、日本共産党やそのシンパと対立してきたわけだ。 しかし、韓国では、むしろ財閥グループとしての性格が強い。経済活動は、宗教活動を支えるための資金集めの範囲には収まらず、むしろそちらの活動の方が中心であるようにも見える。少なくとも、日本の統一教会と韓国の統一教会は、かなり性格が違う組織なのだ。2017年11月、旅客船セウォル号の船体の前で、記者会見する行方不明者の家族ら(聯合=共同) 韓国のキリスト教は、「富者は神の祝福を受けている」と主張することによって、資本主義のイデオロギーを支持する役割を果たしたともいわれる。宗教には、信仰によって人々を結び付ける働きがあり、韓国の財閥や経済グループの中には、その点で宗教を利用してきた勢力もあったことになる。 韓国では、キリスト教が庶民層をも引きつける生きた宗教であるがゆえに、経済や政治と結びついていきやすい。弾劾された朴槿恵元大統領も、キリスト教の影響も受けた新宗教の教祖とその娘と深い結びつきを持ったことが疑惑の一つの焦点になった。 以上のように、韓国社会を見ていく上で、宗教とのかかわりということは、現在でも極めて重要な側面なのである。

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    韓国大統領も逆らえない「天主教司祭団」知られざる実力

    領が失脚することになった最大の原因は、このような「怪しい一家」との関係が取り沙汰され、操られていたと韓国国民が信じたからだ。朴神父と安議員のやりとりがあったその日から約3年後の2016年12月、朴槿恵大統領(当時)は国会で弾劾され、翌年3月に罷免される。安議員によれば、朴神父は朴槿恵降ろしに決定的な役割を果たしたという。実刑判決を受け、ソウル中央地裁を出る崔順実被告(中央)=2018年2月 では、朴神父とは何者なのか。1996年から北朝鮮助け運動を始め、2000年1月に平壌に足を踏み入れて以来、今まで十数回も北朝鮮を往来している。03年にNGO(非政府組織)団体「平和3000」を立ち上げ、自ら運営委員長に就任し北朝鮮を物心両面で支援してきた人物だ。 「平和3000」とは、1人が1日100ウォンを節約し、月3000ウォンずつ献金して北朝鮮を助けよという活動を意味している。朴神父は集めたお金を北朝鮮のスポーツ施設の再建事業に使ったり、北朝鮮のスポーツ選手にユニフォームを送ったりし、金正恩朝鮮労働党委員長肝いりの政策として推し進めた芝生づくり事業を支援した。 朴神父は「平和運動家」として北朝鮮支援活動を行う一方、韓国国内では「天主教(カトリック)正義具現全国司祭団(以下「司祭団」)」統一委員会委員長を務める。朴神父が統一委員長を務める司祭団は、1974年9月に結成した組織。当初から政治色が強い宗教系社会運動団体としてスタートした。 創立集会ではロウソクを手に持つ神父らが、朴正熙(パク・チョンヒ)政権(1963~79年)の独裁政治を糾弾する「時局宣言」を発表して注目浴びたが、これが韓国現代史上初めてのロウソクデモだったといわれる。朴槿恵前大統領を弾劾に追い込んだ2016年暮れのロウソクデモの伝統をつくったのは「司祭団」だったのだ。北朝鮮擁護の司祭団 そもそも、1987年6月、全斗煥(チョン・ドファン)軍事政権(1980~88年)に対抗して韓国全国で広がりを見せた民主化運動の「6月抗争」の起爆剤となったのは、司祭団がソウル大学の学生の拷問致死事件を暴露したからだとされる。しかし、「朝鮮日報」(2013年11月26日付)によると、「1986年以降、親北(朝鮮)・左派的な傾向を見せるようになった」という。 朝鮮日報はその主な事例として、1989年8月には司祭団所属の神父が秘密裏に平壌入りして「世界青年学生祝典」に参加し、北朝鮮を擁護する姿勢を鮮明にしたことや、2002年11月、米軍装甲車に女子中学生がひかれ死亡する事故が起きた際、「反米時局祈祷会」を開いたことなどを挙げる。 廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003~08年)時代の03年11月、司祭団は北朝鮮の犯行としてすでに結論が出ている「大韓航空機爆破事件(北朝鮮工作機関所属の金賢姫が実行犯という捜査記録がある)」は、当時の韓国政府がデッチあげたものだと主張して再調査を要求した。 また、アメリカ産牛肉輸入再交渉要求して08年4月から数カ月続いたロウソクデモ、済州島の海軍基地建設反対運動など反米・反政府運動、北朝鮮の立場を擁護する活動を展開してきた宗教団体としても名を馳せている。 韓国のカトリック教司祭は4578人いるとされるが、そのうち司祭団に所属する神父は500人程度と推定される。これら司祭たちは信者を結集して韓国の敏感な社会問題につけこみ、時の政局のど真ん中に飛び込むことで政党(とくに左派系の政党)と深い関係をつくる。 朴槿恵政権誕生後、文在寅氏が所属する民主党(当時)主導の下で発足した「国家機関選挙介入真相究明民主憲政秩序回復のための各界連席会議」にも司祭団代表神父が名を連ねていた。 文在寅氏は大統領になる前から司祭団とある種の関係を持っていた。13年9月23日夜、司祭団はソウル市庁広場で「国家情報院解体のための時局祈祷会」を主催するが、この集会に「国情院解体、民主主義回復」の看板を手に持つ文在寅氏(当時議員)の姿が写真に撮られインターネットで話題を呼んだ。朴槿恵政権打倒という政治目標を共有していたからだとみられる。大統領選の街頭演説に臨む「共に民主党」の文在寅氏(当時)=2017年5月、韓国・ソウル(川口良介撮影) それから2カ月後の11月22日、司祭団は全州教区において「朴槿恵大統領退陣を促すミサ」を行うが、その場で司祭の一部は、北朝鮮が韓国領の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃したことを擁護する発言をしたとして物議を醸した。 「NL(南北の海の境界線)において韓米が軍事訓練を継続すれば北韓(北朝鮮)としてはどうすべきだろうか? 撃つしかしかないでしょう。それが延坪島砲撃です」と、北朝鮮の砲撃は米韓軍事訓練のせいであり、当たり前かのような発言をした。政党と連携する宗教団体 北朝鮮が延坪島に突然砲撃を浴びせ、犠牲者を出したのは2010年11月23日。米韓軍がNLの南側海域で実施する射撃訓練はいつもある通常の軍事訓練であったが、それを口実に北朝鮮は砲撃し、軍人2人に加え、民間人も死亡した。事件から3周年を迎える日に行われたミサでの発言だった。 韓国国防部は「これは明白な侵略行為であり反人倫的な行為」と断じたが、司祭団のミサでは北朝鮮を擁護したのである。 このような司祭団と同じく、事あるたびに集会を開き、デモを主導、政府に要求を突き付けるための「時局宣言」を行うなど、存在感を誇示する方法で政治勢力化を図り、政党と連携する宗教団体は韓国には多い。 国民の大半が特定宗教を持つ韓国では、国政選挙と大統領選挙に宗教団体の支持は勝負を分ける場合もある。韓国統計庁が実施した調査によれば、韓国人の宗教分布は、おおよそ仏教が22%、プロテスタントが18%、カトリックが11%(年度によって異なる)となっている。 朴槿恵氏が大統領に当選した2012年の選挙を前に、韓国紙「ヘラルド経済」が19歳以上の男女を対象に行った質問調査では、「仏教は朴槿恵候補、基督教(改新教、プロテスタント)は朴槿恵支持者がやや多く、カトリック、無宗教は野党候補(当時は民主党の文在寅氏)を支持する傾向がみられた」としている。ソウルで行われた、朴槿恵大統領退陣を求めるデモ=2017年12月 韓国の専門家は「このような性向から仏教は保守派、プロテスタントは中途・保守、カトリックおよび無宗教層は進歩・左派に分類することができる」と分析する。 ちなみに、文在寅大統領はカトリック信者だ。小学校3年の時から聖堂に通い、洗礼を受けたという。2017年5月に実施された大統領選挙ではカトリック信者の46・6%、プロテスタントの39・3%が文在寅氏に投票したとされる。

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    韓国大統領はなぜ霊媒師や風水師の言いなりになるのか

     現職大統領による国家機密漏えい事件で大きく揺らぐ韓国社会。朴槿恵大統領はなぜ、怪しげな宗教者の言いなりとなったのか。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が、韓国社会に浸透する「信仰心」の罠に斬り込む。* * *「朴槿恵─崔順実スキャンダル」は、ネットを中心に“ムーダン疑惑”として嘲笑の対象になっている。ムーダンとは、韓国の伝統的な霊媒・占い師のこと。「朴と崔」の関係は、崔の父・崔太敏が“牧師”と称し、霊媒師紛いの言辞で朴槿恵の心を掴み、その後、一家をあげて彼女に食い込んだことから始まった。 ちなみに韓国でのムーダン文化の一端を紹介すると、筆者の知人の祖母がムーダンの病気治療や人生相談に凝っていて、ある時、ムーダンの言いなりになって300万ウォン(約30万円)を献金したという。「日ごろ子供たちからもらっている小遣いを貯めていて、それをみんなはたいてしまった。ったくもう……」と知人は大いに嘆いていた。 先年、不正経営で逮捕された某大財閥の首脳が、企業投資の展望を専属のムーダンに頼っていたとして話題になっている。それを笑ったところ、別の知人は「日本でも会社や家庭に鳥居や神棚があって拝んでいるそうじゃないですか」と逆襲(?)してきたが。 ところで、「魏志倭人伝」に登場する有名な邪馬台国の女王・卑弥呼は「鬼道に事え、能く衆を惑わす」とある。「鬼道」とは霊媒・占いのこと。大昔、原始集団において王の支配権を支えたのは、そうした呪術的超能力だった。卑弥呼も朝鮮半島系だったか?2018年8月、車いすに乗ってソウル市内の病院を出る韓国前大統領の朴槿恵被告(聯合=共同) ただ、現在の韓国は正統派のキリスト教が社会的、政治的に大きな影響力をもっている。ムーダンなどの“伝統宗教”は邪教的として表向きは非難、排斥されがちで、現実政治に入り込む余地はない。 現実政治への影響では、日本流に言えば陰陽道である「風水」信仰の方だ。山や川などの自然環境から人や国家の運勢を占うものだが、大統領選をはじめ韓国の政治や社会を左右してきた地域対立には、この風水説があると言われてきた。 地域対立とは簡単に言うと、韓国南西部の全羅道に対する差別意識のことである。全羅道は金大中政権(1998-2003年)誕生で1000年ぶりに権力を握りはしたが、今なお野党勢力の牙城であり、社会的に他地域における差別意識は消えていない。 その差別の背景には高麗朝(10-14世紀)の始祖・王建が残した遺言があるというのだ。「全羅道は人に背く地勢だから権力に近付けてはならない」という、まさに風水説である。今も韓国社会に残る全羅道差別意識の根源は「信用できない、いつかは裏切る」だ。外国人にはなかなか実感できないけれど。関連記事■ 稀勢の里 名医、整体師、霊媒師を紹介されるも効果は微妙■ 韓国大統領選 朴氏勝利でも親日姿勢取りにくいと韓国事情通■ 韓国陸軍元大佐「反日で中国に擦り寄る朴槿恵大統領は愚か」■ 韓国民「朴大統領はMERS対応失敗し妹の管理もできず」と批判■ 「男版・福島みずほ」が韓国大統領になり日本に凄まじい厄災

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    ケント・ギルバート/百田尚樹対談 「儒教に呪われた韓国

     なぜ韓国は、ここまで反日的になるのか。そこには「儒教の呪い」があるという。著書『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』が話題のケント・ギルバート氏と作家の百田尚樹氏が、韓国の本質を語り合った。* * *百田:韓国というのは、面倒な国ですね。いつでも日本に攻撃的じゃないと国としてまとまれない。日本人はお人好しだから、韓国で新政権ができたら「とりあえず仲良くせなあかん」という雰囲気になるでしょうけど、不用意に握手しないほうがいいと思います。何をやってくるかわからないと、警戒感を持つべきでしょう。ケント:そうですね。中国から儒教や中華思想を全面的に受け入れた韓国から見れば、日本は朝鮮半島よりも世界の中心である中国から遠い。だから日本は「野蛮な国」で、自分たちより「下」でなければいけない。しかも恨の思想があるから、常に日本を軽蔑していないと気が済まないんです。「日本が韓国より発展しているなんておかしい」「韓国が発展できないのは日本が占領したからだ」という根拠のない嫉妬や恨みはずっと続くのです。百田:慰安婦問題にしても、日本人は謝れば水に流してくれると思っている人も多いけれど、どんなに謝罪しようが援助しようが、彼らが日本を「許す」ことは永久にありえません。ケント:儒教では一度謝ったら“罪人”扱いになり、永久に隷属することになる。だから、どんな手段を使ってでも相手に謝らせようとする。それにしても、韓国はよく中国に吸収されませんでしたね。作家の百田直樹(左)と弁護士のケント・ギルバート氏=2017年9月撮影百田:中国からすれば、支配してもいいことがないから、“属国”にしておけばいいということだったのでしょう。かつて韓国では中国の使節が来ると三跪九叩頭の礼で出迎えましたが、その時の捧げ物の中には「女性」がありました。目立った特産品もないので、女性を献上していた。ケント:韓国は、大国に媚びて生き残る事大主義だから、属国であることに自分でも納得しています。清に従っていて、ロシアが強くなってきてロシアにつこうとしたら、日露戦争で日本が勝ったので日本にすり寄って、戦後はアメリカに従った。最近また中国が強くなってきたから中国に従おうとしたら、アメリカがそれを認めないから、韓国は右往左往している。破壊された儒教百田:奇妙なのは、属国なのにどこかで「自分たちは中国人だ」と思っている節があることです。李朝の特権的な支配階級である“両班”は漢文、つまり中国の言語を使っていましたが、一般庶民は字が読めない。それで4代国王の世宗が15世紀にハングルを作ろうとしました。すると両班は「中華の土地では方言を文字にしてはいけない」と猛反対した。つまり自分たちは中華の一員と思っているのです。モンゴル、チベット、西夏、日本などが独自の文字を持っているのは、野蛮な国で中国語が理解できないからだという理屈でした。 困った世宗は、ハングルは「訓民正音」、つまり“正しい音”ということで、単なる発音記号であるということで、なんとか認めさせた。それでも一般人に対する教育機関はなかったから、日本が韓国を併合した時は、一般の民衆の識字率はとても低かった。ケント:そう。日本が、韓国でハングルを教育して広めましたからね。日本が併合したことで、識字率は高まり、インフラも整った。併合すべきだったかどうかはわかりませんが、それが日本のやり方で、欧米諸国の植民地政策とは根本的に違います。百田:併合に関しては、韓国側が望んだものです。国際社会も認めました。ケント:そうですね。だけど悔しくてその事実は絶対に認めたくないから、「日本に併合されたせいで発展が遅れた」と被害者意識を増大させてしまっている。 儒教というと、日本人は「仁・義・礼・智・信」という言葉に代表されるように、いいもののように受け取ります。でも中国や韓国では儒教のそうした優れた部分は破壊されてしまった上に、“上下関係をきちんとする”という考え方がねじれて「日本は格下で野蛮」という意識だけが残った。その結果、自己中心的で傲岸不遜、嘘をつくのも当たり前で、道徳心も倫理観も失ってしまった。これを僕は「儒教の呪い」と呼んでいます。●ケント・ギルバート/1952年、アイダホ州生まれ。1971年、初来日。カリフォルニア州弁護士。1983年、テレビ番組「世界まるごとHOWマッチ」にレギュラー出演し、人気に。近著に『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱へ捨てろ! 』がある。●ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。関連記事■ 百田尚樹×ケント・ギルバート 半島有事や日本の呑気さ語る■ ケント・ギルバート氏「歴史観が変わった契機は朝日誤報」■ ケント・ギルバート氏 文在寅氏の質素な引っ越しに出くわす■ 著書回収報じられたK・ギルバート氏が朝日新聞に反論■ K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」

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    韓国アイドル「BTS」が映すヘル朝鮮の現実

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 「BTS(防弾少年団)」という世界的に人気な韓国の男性アイドルグループがいる。彼らは2013年にデビューしてから、韓国国内の人気だけでなく、最近では米国のヒットチャートでも1位を獲得している。 彼らの作品は本心(現実)と偽り(虚構)とのギリギリの緊張関係を描くものが多い。その作風は最近ではますます陰影を深めて、複雑さを増している。例えば、全米1位を獲得した最新アルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』の代表曲「FAKE LOVE」には、「かなうことのない夢の中で咲くことのない花を育てた」というフレーズが繰り返される。 この歌は、偽りの愛と本当の愛の葛藤を歌ったものだろう。だが、BTSの歌にはそれだけではない意味合いを見いだすこともできる。彼らがデビューした2013年、この年は韓国経済にとって重要な意味を持っているからだ。 簡単にいえば、2013年は韓国の若者たちの雇用がさらに「地獄」へ突入した年にあたる。そしてその「地獄」は、今も勢いを失うことなく続いている。 若者たちの夢の多くは咲くこともなく、現実の雇用状況の前で踏みにじられているのである。BTSの歌の多くは、この若者たちが直面する「地獄」とそこからの脱出への願いを象徴しているのではないだろうか。 韓国の失業率は、全体こそ3%台で推移している。しかし、15歳から29歳までの若年失業率に絞ると、2017年には9・9%にのぼる。これは韓国の研究者たちが指摘するように、「体感失業率」でいえば22%台に到達している。2018年5月、韓国・ソウルで最新アルバム発売の記者会見に出席した「BTS(防弾少年団)」のメンバー(聯合=共同) しかも、この状況が既に数年も継続しているのである。まさに若者たちの雇用は「ヘル朝鮮」、まさに「地獄の韓国」といっていい。日本でいえば、過去のリーマンショック時点での雇用悪化を上回る。また量的な面での悪化にはとどまっていないのである。 韓国ではリーマンショック以降から、非正規雇用労働者の比率が激増している。だが、2013年からは、特に男性の若年労働者で急上昇を見せている。韓国の非正規雇用は日本と同様に、企業の業績悪化を防ぐための衝撃緩衝に利用されているのである。世界でも突出した韓国の自殺者数 待遇は劣悪であり、不安定の度合いも深刻だ。非正規雇用の若者たちの報酬が、最低賃金に達していない割合は、なんと30%を優に越している。日本でも深刻な不況のときは、ブラックな処遇をする企業の話題に事欠かなかったが、韓国ではさらにその境遇が悪い。 日本では「失われた20年」の間、多くの人命が経済無策の前に損なわれてしまった。実際、今も日本の自殺者数は多い。 だが、経済協力開発機構(OECD)によれば、韓国での自殺者数は人口比でみると最悪の数値で、世界でも突出している。しかも、若者の自殺者が非常に多く、自殺未遂者を含めると年間数万人から最大10数万人の若者たちが自死を選んだという推計も成り立つのである。 日本でも韓国でも、自殺と経済の悪化は強い因果関係にある。韓国で特に指摘されるのは、学校や企業などの「競争の場」から排除・疎外されることによる精神的な衝撃である。韓国社会で自分の価値や「自分がなんであるか」を失いがちになる傾向が、雇用状況の悪化とともに加速してしまうのである。 最近の研究では、自殺と緊縮的な経済政策との関連が指摘されている。実は、韓国でも2013年以降、極めて緊縮的なスタンスが採用されていることを見逃してはいけない。そのカギは金融政策のスタンスにある。 韓国の中央銀行である韓国銀行は、インフレ目標を採用しているが、2013年以降はそれ以前にくらべてインフレ抑制的な目標に推移している。2012年まではインフレ目標の中央値は3%であり、上限は4%(下限は2%)だった。 ところが、現状の目標では2%である。それに合わせるように、韓国では急激に低インフレ経済に移行し、場合によればデフレ転落の可能性も懸念されるようになった。2018年4月、屋外に設置された大型スクリーンで南北首脳会談を見ながら統一旗を振る若者たち=韓国・坡州(共同) この低インフレ、実質的なデフレ経済は、インフレ抑制の長所をはるかに超える負担を、若年層の雇用に押し付けたとみることが可能だ。つまり、金融政策がデフレ型に移行したことによる「人災」という側面が、韓国の若年雇用の悪化に求めることができる。 ただ、韓国の労働市場には固有の問題がある。大企業と中小企業の「二重構造」だ。多くの若者が大企業への就職を求めて殺到するが、採用される人はわずかであり、不採用の多くは非正規雇用のプールに陥ってしまう。求職自体を諦めて事実上の長期失業の状態に陥る人も少なくない。就職難は政策転換で変わる 韓国国内では、財閥系中心の硬直した雇用市場が招いた構造的な要因という指摘も多い。また大企業の強力な労働組合が、既存の労働者の立場を確保するために、新しい外部労働者である若者たちの新規参入を拒んでいる面も強い。 だが、韓国には、日本の最近の経済政策による効果と若年雇用との関係を想起してほしいものだ。日本では、「アベノミクス」の核心政策である金融緩和が積極的に行われた結果、新卒採用が大幅に改善した。いわゆる「人出不足」の状況が現出したのである。 大企業だけでなく、中小企業も今までの構造的に思えた厳しい採用方針を転換して、新卒採用に努力を重ねている。それは待遇の改善にもつながる動きが本格化している。非正規雇用も減少に転じて、正規雇用が増加する傾向が定着しつつある。 また、最低賃金が上昇し、反映される形でバイトやパートの時給も顕著に上昇している。これらの日本の雇用状況は、日本人の物忘れの激しさもあり指摘されることは少ないが、つい数年前までは日本の「構造問題」が邪魔してなかなか実現できない、と指摘されていたものばかりである。 つまり、韓国でもインフレ目標の目標値を引き上げるなど積極的な金融緩和政策を採用すれば、若者たちの状況も大きく変わる可能性があるのである。 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権による若者の雇用対策は、どうも明後日の方向を向いているようだ。最近では、国内の就職状況を自ら解決することではなく、日本のような若者の雇用状況がいい国への就職を推進する政策を採ろうとしているのである。 労働問題を担当する文大統領直属の雇用委員会は、「海外地域専門家養成方策」という計画を発表し、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国へ1万8千人の就業を促進することを打ち出した。もちろん韓国に限らず、日本でも有能な人材が国際的な労働市場に参画することは、個人の夢の実現にもつながる。2018年1月、ソウル市内で韓国の文在寅大統領の年頭記者会見のテレビ映像を見る市民(AP=共同) だが、そもそも韓国の日本など海外への就職推進政策は、自らが生み出した深刻な若年雇用の悪化という「負の遺産」を、海外に責任転嫁する政策だといっていいだろう。はっきり言えば、文政権の「責任逃れ」でしかない。文政権はまず雇用改善の前提条件ともいえる金融政策の転換を実施する必要がある。 BTSには『血、汗、涙』という代表曲がある。韓国の若者たちの血、汗、涙がどのような原因で生まれるのか、韓国政府は他国に責任を押し付けることなく、自らその解消に真摯(しんし)に取り組むべきである。

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    韓国現地リポート】「北朝鮮は変わらない」南北融和、脱北者のホンネ

     10年半ぶりとなった「南北首脳会談」。開催を前に韓国を訪れ、脱北者で漫画 家のチェ・ソングク氏(38)にインタビューした。南北融和ムードが広がる 今、脱北者が語るホンネとは。■動画のテーマはこちら

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    世界を欺く「政治ショー」南北首脳会談

    韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長が、軍事境界線にある板門店で会談した。最大の焦点は「朝鮮半島の非核化」だが、具体的な方向性を打ち出せるかは不透明だ。南北融和を演出する「政治ショー」に終わる可能性もある。10年半ぶり3回目の南北会談、世界の思惑を読む。

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    南北会談に成果なし、世界を欺く「政治ショー」の真意を読む

    BM)発射実験を中止し、平壌北部にある豊渓里(プンゲリ)核実験場を廃棄すると発表した。 これに対し、韓国政府は「決定を歓迎する。全世界が念願する韓半島非核のための意味のある進展だ」と評価した。さらに、青瓦台関係者は「北韓がこれほど早く、しかも果敢な措置を取るとは思わなかった」と、北朝鮮の決定に応えるかたちで、2日後の23日、南北境界線沿いに設置していた対北朝鮮放送を電撃的に中止した。  これらは南北首脳会談を意識し、「朝鮮半島平和体制構築」に向けて双方が行動を示したともいえるが、素直に喜べるものではない。なぜなら、南北首脳会談は北朝鮮の非核化を促すためではなく、世界を欺(あざむ)くための政治ショーで終わる可能性が高いからだ。  まず、何のための首脳会談かを考えれば、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の目的は二つある。アメリカの圧力をやわらげ、軍事的な攻撃を回避することと、いち早く制裁を緩和させることである。 韓国との融和ムードを演出し、平和的なイベントを続けていけば、アメリカの圧力をやわらげ、軍事衝突へ発展することを阻止できる。また、韓国をテコに国際制裁の包囲網を突破することも可能だ。韓国との経済交流、人道的支援の門戸を開くことにもつながるだろう。 そして、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、保守政権の対北朝鮮政策を転換した結果、緊張状態は解消され、朝鮮半島に平和をもたらした「成果」をアピールできる。南北首脳会談というイベントをなるべく派手に、大々的に見せるのは双方にとってプラスなのだ。 ただ、南北首脳会談が本当に実のあるものになるかは疑問だ。そもそも、会談は何かを解決するとか、結論を出すものではないからだ。南北とも非核化については突っ込んだ話をするつもりもなく、結論も出せないだろう。 具体的に「北朝鮮の非核化」について話すのではなく、「朝鮮半島の非核化」について意見交換するに過ぎない。「平和体制構築」に向けて努力するという曖昧(あいまい)な「原則」には合意しても、いつまでにどのような方法で非核化を実現するかについては将来の課題にし、アメリカに委ねることになるだろう。 また、北朝鮮は核開発をやめ、経済重視に転換したのではないかと思われているが、実際はそうではない。 北朝鮮の労働党中央委員会で採択した「ICBM発射実験の中止、北部の核実験場の廃棄および核実験の中止」は、対内的には併進路線(核武装と経済建設を平行して進める)は勝利を収め、核保有国になったので、これから経済に注力するという宣言にほかならない。韓国芸術団の公演を観覧に訪れた金正恩委員長(左)と韓国の都鍾煥文化体育観光相 ただ、対外的には、もはや使いものにならない実験場を「廃棄」する姿勢をみせ、「非核化」に向けて行動したかのような印象を与えるだけなのだ。 これまで6回の核実験を行った結果、プンゲリ核実験場の山は崩落が発生し、すでに9回も余震が起きている。昨年はこの場所で作業していた200人が死亡する事故もあった。そもそも閉鎖せざるを得ない状況にあることは言うまでもない。すべては「米朝会談」次第 また、ICBM発射実験中止は、アメリカにとってはグッドニュースで、トランプ大統領は評価しているようだが、北朝鮮は実験を中止すると言っただけで「開発」を中止するとも言ってないし、廃棄するとも言っていない。あくまで凍結なのだ。凍結とは、あるものをいったん倉庫にしまっておくという意味なので、いつでも持ちだすことは可能だ。 北朝鮮の真意を考えれば、これまでに開発した核を保有したまま、今後核を作らないことを条件に(裏では密かに核の完成を目指しながら)、アメリカと折り合いをつけ、経済活性化に邁進するつもりだろう。このまま2年ぐらい持ちこたえれば、北朝鮮の核能力は完全なものになるからだ。そうすればアメリカも認めざるを得ないと考えているのだろう。 そして焦点になるのは、こうした北朝鮮の思惑をアメリカが容認するかどうかだ。アメリカは絶対妥協しないだろう。トランプ大統領は、北朝鮮がアメリカに届くICBM発射実験と核実験をやめれば、妥協するのではないかという観測もあるが、それはないと考えていい。 トランプ大統領の発言が二転三転しているとはいえ、北朝鮮の非核化は「完全かつ検証可能で不可逆」な形でないとダメだという点では一度もブレていない。それには理由がある。 北朝鮮が核を持てば、イランがさらに核保有の意思を強めるからだ。そしてイランが持てばサウジラビアやアラブ首長国連邦も持つだろう。そうなれば、日本と韓国も安全保障政策を見直さなければならなくなり、「核の世界」が現実になりかねない。 これを阻止するためには、やはり北朝鮮の核保有を完全に潰さなければならない。北朝鮮核問題を曖昧にすれば、トランプ大統領の指導力に疑問符が付き、同盟国の信用失墜は免れないだろう。トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談が実現する方向に動いたことを伝えた街頭テレビ=2018年3月(寺河内美奈撮影) 今回の南北首脳会談が過去の首脳会談と異なるのは、北朝鮮が立場上優位に立っていることだ。核を事実上保有する金正恩委員長とそれに対応できるカードを持たない文在寅大統領という構図は変わらない。 そもそも、首脳会談で韓国政府が実現しようとする目標は「朝鮮半島の平和体制」構築という曖昧な原則合意を取り付けることでしかない。南北が終戦を宣言し、「平和協定」を結ぶ平和体制構築のために、南北間で交流を拡大することに合意はするだろう。 これを大きな成果に見せかけることは可能だが、平和体制構築のための前提条件である「終戦宣言」や平和協定の締結も、結局はアメリカの同意がなければ無意味だ。ゆえに、今回の首脳会談は一過性の政治ショーで終わる可能性は高く、真に評価するためには、米朝首脳会談の結果を待つしかないのだ。

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    「38度線が対馬まで下りる」南北会談後に起き得る地政学リスク

    言だった。そして、文在寅氏の対北政策の核心に何があるかを示すという意味でも重大な発言だった。しかし、韓国と日本のマスコミはこの発言を取り上げなかった。  多くの日本人読者のために、まず、この発言の背景を説明する必要があるだろう。2000年6月15日に平壌で持たれた金正日、金大中の南北首脳会談で発表された南北共同宣言には統一の方法について以下のように記載された。1.南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした。2.南と北は国の統一のため、南の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。 金大中大統領はソウルに戻った直後、この第2項の「南の連合制案」について、自身が1995年から唱えている3段階統一案(第1段階「国家連合」、第2段階「連邦制」、第3段階「統一」)の第1段階だと説明した。 しかし、それに対して批判が出るや、金大中大統領は前言を翻して、第2項は盧泰愚(ノ・テウ)政権が1989年9月に公式に決定した「韓民族共同体統一案」(第1段階「南北協力」(交流・協力と平和定着段階)、第2段階「南北連合」(統一のための準備作業を行う段階)、第3段階「統一」)の第2段階だと説明した。 韓国の現行憲法では「第3条大韓民国の領土は韓半島とその付随島嶼(とうしょ)とする。第4条大韓民国は統一を指向し、自由民主的な基本秩序に即した平和的統一政策を樹立してこれを推進する」とされ、全半島を自由民主主義の下で統一することを規定している。南北首脳会談を終えた金正日総書記(左)と金大中大統領は平壌国際空港で向かい合い、別れのあいさつを交わした=2000年6月(韓国取材団=共同) 北朝鮮は国と認められておらず、国家保安法により「反国家団体」とされ、そこに加担すると最高死刑とされている。ちなみに、国家保安法では朝鮮総連も反国家団体とされている。そのため、金大中大統領も南北共同宣言では「国家連合」という用語を使わず「連合制」と記したのだ。 ところが、文在寅新大統領は、前述の通り、選挙戦での討論で「低い段階の連邦制とわれわれが主張する国家連合はほとんど違わない」と語った。金大中氏さえ使えなかった「国家連合」という用語を使ったという点で憲法違反の素地(そじ)がある発言だった。なお、盧武鉉大統領も大統領在職時、「国家連合」という用語を使っているから、文在寅氏の発言はそれに倣ったものと言えるのかもしれない。金正恩はカダフィになれるか 文在寅発言のもう一つの問題は「低い段階の統一案」を韓国の統一案と「ほとんど違わない」として肯定的に評価したことだ。  ここで、北朝鮮の統一案を概観しておく。北朝鮮は1960年に初めて連邦制統一案を提唱し、1980年には「高麗連邦共和国統一案」として国号まで提唱した。 韓国の盧泰愚政権が前述の通り1989年に連邦制を否定する「韓民族共同体統一案」を提唱すると、韓国に揺さぶりをかける意図を持って1992年に連邦制を二つのプロセスに分け、まず「低い段階の連邦制」を実現しようと提唱した。そこでは「1民族、1国家、2制度、2政府体制で、二つの政府は政治、軍事、外交権をはじめとする言現在の機能と権限をそのまま維持し、その上に民族統一機構を置く」とした。 また、高麗連邦共和国統一案では先決条件として駐韓米軍撤収、国家保安法廃止、共産主義活動合法化などが求められていたが、低い段階の連邦制ではそれはない。 しかし、いくら低い段階と言っても一つの国家になれば、当然、北朝鮮を反国家団体と定める国家保安法は効力を失うし、北朝鮮を仮想敵とする韓米同盟は変質し、在韓米軍は撤収するはずだ。亡命した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記によると、金日成(キム・イルソン)は90年代半ば、低い段階の連邦制の狙いについて「民族統一機構で統一問題を議論するとき、南北同数で会議をすれば、北代表は100%われわれの側だが、南代表のうち半分は左派が占めるから、結局3対1でわれわれが主導権を握れる」と語ったという。 文在寅大統領は国会に提出した憲法全面改正大統領案で、第1条3項に「大韓民国は地方分権国家を志向する」という規定を新設したが、これは連邦制による布石だと多くの保守派リーダーが批判している。 今回の文在寅大統領と金正恩(キム・ジョンウン)の会談では、「低い段階の連邦制」と「国家連合」の方向で南北を統一しようと合意する可能性が高い。それをすれば韓国の自由民主主義勢力は太極旗を持って街頭に出て体を張った抵抗をするだろう。既に4月20日、元首相や元国会議長らが「大韓民国守護非常国民会議」を立ち上げ、連邦制統一に反対すると宣言した。左派もろうそくデモで対抗するはずだ。流血の事態さえ予想されるし、国軍がその状況をただ見てばかりいるのか、という問いも出てくる。  一方、トランプ大統領は韓国が独走すれば、北朝鮮と取引をした韓国企業への制裁を発動することになろう。南北会談はあくまでも前座であり、やはり米朝会談がすべてを決める。勝負の分かれ目は、金正恩がリビア型の核放棄を飲むかどうかにかかっている。ランプ米大統領(左)とボルトン大統領補佐官 =2018年4月9日、ワシントン(ロイター) トランプ大統領は米朝首脳会談が決まってから、ボルトン氏を大統領補佐官に入れた。したがって中途半端な解決はしないのではないか。そうした可能性は下がったとみている。北朝鮮がリビア型の核廃棄ができるかどうか、それは金正恩の恐怖心がどの程度なのかにかかっている。私は米国から殺されてしまうという恐怖心がかなり強いと見ている。 北朝鮮が反撃して、道連れとなって死ぬ者が出てきても、その場合は金正恩自身も死んでしまう。リビアのカダフィ大佐は米国の攻撃直前に妥協して交渉を妥結させた。一方、イラクのフセイン大統領は実際には大量破壊兵器を保持していなかったのに、米国に妥協しなかったので殺されてしまった。さて、金正恩はどちらを選択するのか。どこまで自分の身を守ろうとするのか。日本が直面する日露戦争と同じ危機 トランプ大統領は核ミサイル問題だけでなく、拉致問題も交渉のディールに使おうとしている。単に北朝鮮側が調査すると言うだけではダメで、「(拉致被害者を)連れ戻すように」と明言している。 交渉が順調に進めば、米朝間では国交正常化へと話が進んでいく。平和条約を結ぶことになろう。日朝間でも拉致被害者が帰ってくれば、国交正常化の話になっていこう。 米国は非核化のところまでで、それ以上はやらない。そうなると、韓国と北朝鮮が緩い連邦制を取り入れ、「赤い朝鮮半島」になってしまうかもしれない。今は38度線で対峙(たいじ)しているが、それが対馬まで下りてきてしまう。中国の影響力が強まらざるを得ない。もっとも韓国内部にも、自由統一を指向する保守勢力があるので、そうした状況になるのを許さないかもしれないが、予断を許さない。 また、米朝首脳会談が不調に終われば(そもそも開催されない可能性もある)トランプ政権は軍事攻撃を検討するだろう。ただし、攻撃をして核ミサイルを取り上げた後、すぐ軍を引く限定攻撃だ。北朝鮮地域の平定と軍政を米軍が担う意思はない。文在寅政権の韓国がそれを担うならば、中国は半島全体が自由化することに強く反対して軍を出し、北朝鮮地域が分割占領されるかもしれない。   または、文在寅政権が米国との共同作戦参加を拒否し、米韓同盟が破綻して、米軍は北朝鮮地域だけでなく韓国からも撤収し、北朝鮮地域の平定と軍政は中国軍が担うかもしれない。文在寅政権は中国の傀儡(かいらい)となった次期北朝鮮政権と連邦制で統一するか、あるいは韓国単独で中国と軍事同盟を結ぶこともあり得る。韓国内の反共自由民主主義勢力が韓米同盟を守るため、文在寅政権を倒す可能性も残っている。 さまざまなシナリオを考えても、アジアの覇権を狙う中国が半島全体を事実上支配し、38度線が対馬まで下りてくることになる。これが、金正恩の核危機の後ろにあるわが国の「地政学的危機」だ。 もはや米国は同盟国を守るため、あるいは自由という理念を世界に広げるため、陸上部隊を投入しない。これからの米軍は、空軍と海軍だけを使った、米国軍人の命を犠牲にしない「安全な戦争」しかしない。 中国の習近平政権は米国に並ぶ軍事大国を目指し、東アジアでの覇権を握ろうとしている。彼らは「力の空白」があればすぐに軍を出す。北京の人民大会堂で歓迎式典に向かう北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と中国の習近平国家主席=2018年3月29日(朝鮮中央通信撮影・共同) 日本は自分の国の軍隊で中国軍と対峙しなければ誰も代わりに戦ってはくれない。朝鮮半島でこれから起きることと同じことが、尖閣でも台湾でも、そして沖縄でさえ起きるかもしれない。 日本の独立が脅かされる日露戦争直前と同じ危機が、すぐ近くに来ている。大多数の国民がそれに気がついていないことが、実は重層危機の深層にある一番恐ろしい危機だ。

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    南北会談の次は日朝対話、金正恩が最後に使う「シンゾウカード」

    重村智計(東京通信大教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、南北を分断する板門店の韓国側施設で初めて会談する。2人は「朝鮮半島の非核化」に合意することで、日米を煙に巻こうとしている。 何より、文大統領は「北の非核化」を求めそうにない。それどころか、中朝の求めに呼応し、経済協力と制裁措置の緩和を推し進めようとしている。さらに、南北不可侵協定、南北鉄道の開通など長年の懸案に合意し、米朝平和協定の締結も呼びかけるだろう。 そもそも、朝鮮半島緊張の原因は何か。どの識者も指摘していないが、北朝鮮が取り続けた二つの「政策」が最大の原因だ。第一に、北朝鮮は韓国を国家として認めていない。朝鮮半島における唯一合法政権は朝鮮民主主義人民共和国だけである、との立場を変えていない。だから、北朝鮮は「平和共存」政策に移行できないのである。 第二に、北朝鮮は韓国を統一する方針を「国是」としている。しかも、公式上は「平和的統一」をうたうが、巨大な工作機関を事実上維持しており、軍事的統一の可能性を変えていない。ところが奇妙なことに、韓国はこの二つの政策の放棄を北朝鮮に求めていないのである。 文大統領と金委員長の会談目的は、北朝鮮支援の推進と、韓国左派政権の長期政権化である。2人で制裁緩和を米国に認めさせる「芝居」を打とうとしている。このため、会談は「朝鮮半島の非核化」「南北平和協定」「南北鉄道の開通」「人道支援の拡大」「北の経済集中政策への支持」「制裁の緩和」「南北離散家族の交流」「朝鮮戦争平和協定の締結」-に合意し、朝鮮半島の緊張緩和を実現した、と世界にアピールする。 だが、疑問点もいくつか残されている。例えば、会談の焦点となる「朝鮮半島の非核化」は「北の非核化」を意味しない。米国による韓国への「核の傘」の放棄も含まれ、履行が不可能になるからである。 また北朝鮮は、2010年3月に起きた韓国哨戒艦「天安(チョナン)」撃沈事件の再調査を求めている。李明博(イ・ミョンバク)政権下で行われた調査では、撃沈の原因を「北の攻撃」と断定していた。これに対し、北朝鮮は事件を「米軍による誤射であり、でっち上げである」と主張し、関与を否定し続けてきた。韓国の左派勢力は北の主張を支持しており、彼らを基盤とする文大統領が再調査に合意する可能性がある。2010年5月、韓国の哨戒艦沈没事件を北朝鮮の犯行と主張する韓国と日米を非難するため、平壌の金日成広場で行われた集会(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 韓国は、北朝鮮への独自制裁の理由として「天安」撃沈事件を挙げており、事件への謝罪か解決なしには制裁解除は難しいという事情がある。そこで、再調査を理由に制裁解除につなげる意図もある。北朝鮮「核実験中止」宣言の裏事情 さらに、北朝鮮はこれまで一貫して、在韓米軍の撤退を求めていた。会談でこの主張に触れないとなると、まるで「在韓米軍は駐留してもいい」と暗に認めるに等しい。在韓米軍が撤退すると、むしろ米軍による軍事攻撃が可能になってしまうと北朝鮮が心配しているという。 文在寅政権は、北朝鮮に強いシンパシーを抱く左派政権だ。このため、何としても北朝鮮を支援したいと考えている。一方で、文大統領は憲法を改正し、大統領任期を現在の1期5年から2期8年に延長しようとしている。このためにも南北会談の成功は欠かせない。 会談に先立って、金委員長は核爆弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「実験中止」を表明した。だが、あくまで実験の中止であって、「核放棄」ではない。ここにごまかしがある、と日米政府や韓国の専門家らは警戒している。それでも、文大統領は、北朝鮮の「政策転換」を歴史的成果と強調する。 中国は北朝鮮の「核実験中止」宣言を受けて、各国の独自制裁と国連制裁の緩和を求めている。トランプ米大統領と安倍晋三首相は「核放棄」実現まで「最大限の圧力」を継続することで合意している。 だが、文大統領はその後の日韓電話首脳会談でも圧力継続で合意したが、むしろ立場は中国に近い。韓国世論と米国を制裁緩和に動かすために、首脳会談の成果を高らかにうたいあげる必要があるのである。 一方、歴史的な南北首脳会談の背後で、少数の専門家が金委員長と朝鮮人民軍の「緊張関係」を指摘している。金委員長の軍への姿勢が、あまりに冷たいのだ。 実際、4月20日に開催された党中央委員会総会で、政治局常務委員に軍人や軍代表者がいなくなったのがその表れだ。異例である。しかも、軍への配慮や軍を称賛する言葉が全くなかった。異常である。このため、金委員長に不満を持つ軍人による暗殺やクーデターの危険がささやかれ始めている。2018年4月20日、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で報告を行う金正恩委員長=平壌(朝鮮中央通信=朝鮮通信) その上、金委員長はこれまでの「軍優先」政策を放棄し、「経済優先」への転換を明言した。本当であれば「革命的」といっていい。北朝鮮は歴史的に軍の地位を高め、体制を維持してきたからである。 例えば、父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記は軍事優先の「先軍政治」を数十年も続けてきた。それにより、軍部が朝鮮労働党よりも力を持ち、軍人が利権を手にしてきたのである。ところが、「経済優先」を宣言することは、すなわち軍と軍人優位の体制を放棄することである。だから、金委員長は反対する軍幹部を処刑したのである。金正恩が対話を決めた「周辺の国々」 また、金委員長は総会で、自身が推進した「核と経済の並進路線」の「勝利」と「完結」を強調した。その上で「経済集中」政策への転換を宣言している。まだ核とミサイルは完成したわけではないにもかかわらず、完成したと「みなした」のだ。これが北朝鮮得意の「みなしの論理」である。 金委員長の「完結宣言」は、制裁が効果を上げたためである。文大統領の側近でさえ「国連と各国の制裁が続けば、北は2年で崩壊の危機に直面する」と語っている。反対に、制裁は効果がないとの主張があるのも確かだ。 だが、常識で考えてほしい。北朝鮮は「世界最低の石油保有国」である。国連の発表では、2016年の石油輸入量はわずか120万トンしかなかった。島根県や山形県の石油消費量よりも少ないのである。それが今年は、軍用の石油が40万トンに激減する。核実験をすればさらに減るだろう。これでは軍が崩壊する。軍が崩壊すれば、国家も崩壊に向かう。 金委員長は、党中央委総会で「周辺の国々と国際社会との緊密な連携や対話を積極化していく」との方針を決定した。この「周辺の国々」が日本を指すのは明らかだ。本来であれば、「周辺の国々」とは日本と中韓露の4カ国である。東南アジア諸国との関係は、2016年の金正男暗殺の影響で悪化しており、「周辺」には含まれない。 北朝鮮は日本を除く中韓露3カ国とはすでに連携し、対話もしている。とすれば、この表現は日朝対話を行う方針を事実上表明したものだ。金委員長は、日朝首脳会談を受け入れる準備を進めているという。 中朝の外交関係者によると、実は、平壌は北京の北朝鮮大使館に日朝対話のための情報収集を命じている。安倍首相の要請を受けたトランプ大統領が、米朝首脳会談で「日本人拉致問題」を取り上げると金委員長に通告したからだ。2018年2月9日、平昌冬季五輪の開会式で、北朝鮮の金与正氏(中央右)と金永南最高人民会議常任委員長(同左)の近くに座るペンス米副大統領(左手前)。右端は安倍首相(聯合=共同)   それを受けて、北朝鮮政府はどう対応するかの検討に入ったという。拉致被害者「全員死亡」では、トランプ大統領は納得しないだろう。そうなれば、トランプ大統領は「それならシンゾウと話し合え」と要求する。 金委員長は、米朝首脳会談が成功すれば、日朝首脳会談に応じざるを得ない状況にある。また、失敗したら当然制裁は解除されず、経済支援を獲得するには日本との首脳会談を受け入れるしかないのである。

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    映画「チャーチル」と北の核開発、首脳会談「宥和主義」に落ち込むな

    には南北首脳会談、来月以降には初の米朝首脳会談が予定されている。こうした重要な機会に、当事者の米国や韓国、日本はじめ国際社会が、宥和主義の〝陥穽〟に落ち込んでしまう恐れはないのか。すでに「条件」などが取りざたされていること自体、不必要な譲歩がなされるのではないかとの憶測を生む。 大胆な妥協、譲歩をしても、戦争を避け平和的手段で問題を解決しようというのが宥和主義だ。言葉が穏当な響きを持つから大衆受けしやすい。しかしながら、誰もが平和的な解決を望むとはいえ、警戒しなければならないのは、相手を恐れるあまりの妥協が結果的に膨脹主義者、独裁主義者の跳梁を許してしまうことだ。ウィンストン・チャーチル(英国の政治家・元首相) 典型的なケースは、映画「チャーチル」の中でも触れられているミュンヘン会談だ。第2次世界大戦前夜の1938年9月、英仏独伊4カ国の首脳が出席したこの会談で、ヒトラーによるチェコスロバキアのスデーテン地方割譲の要求が協議された。 当時、世界のリーダーだった英国のチェンバレン首相はヒトラーの威嚇に屈し、これを受け入れた。以後領土的要求を捨てると約束したにもかかわらず、ドイツの異常な指導者は、チェコを保護領に置くなど背信行為を続け、1939年9月にポーランドに侵入、第2次世界大戦を引き起こした。 「ミュンヘンの宥和」と呼ばれるこの妥協は、独裁者、膨脹主義者を勢いづけ、戦争の惨禍をもたらした悪しき例として、しばしば国際政治を論じる時に言及される。あろうことか、この合意は、チャーチルら反宥和主義者たちの猛反発をよそに、当時、英国やフランスの国民からは、熱狂的に歓迎された。北朝鮮の悪しき妥協を懸念 当時、米ハーバード大学の学生だった故ジョン・F・ケネディ元米大統領は、その卒業論文でこれを取り上げ、分析している。戦争だけは避けたいと願望する国民から、宥和主義が強い支持を受けたため、その政策を掲げるチェンバレンが必要な軍備の増強に手をつけようとせず、結局、ドイツに対抗する力を失ってしまったーと。ちなみにこの卒業論文は後に「英国はなぜ眠ったか」というタイトルで日本でも出版された。 映画に話を戻すと、ダンケルクでの英仏軍の孤立など苦しい戦局の中で登場したチャーチルは戦時内閣を組織したが、ハリファックス外相らがヒトラーとの和平を強く主張、激しい論争が展開される。宥和主義者の一方の雄、ハリファックスの主張は強硬、理路整然としており、チャーチルは、ほとんど和平協議やむなしに傾く。そこに意外な援軍が現れる…。 これ以上、映画のストーリーに踏み込むのは避けるが、最終的に戦争継続を決意したチャーチルの断固とした姿勢は、議会、国民から圧倒的な支持を受け、〝バトル・オブ・ブリテン〟の勝利への途を開く。 銀幕を離れて現実の世界に立ち返る。 米朝首脳会談が実際に開催されれば、さまざまな議題が話し合われることになろう。 不調に終わった場合、また会談自体が見送られたなら、武力行使がいよいよ現実性を帯びてくる。各国がもっとも恐れる事態であり、それだけに宥和主義が入り込んでくる余地があると言うべきだろう。ミュンヘン会談で英国がヒトラーに対したように、大きな譲歩を与えても最悪の事態を回避しようという主張が勢いを増しかねない。 首脳会談の展開については、すでに内外のメディアで論じられているので、予測は避ける。 しかし、核問題をとってみても、ICBM(大陸間弾道弾)の発射実験中止、核実験場の廃棄など、4月20日の金正恩朝鮮労働党委員長の決定について、トランプ大統領が、自らへの脅威は取り除かれたと判断、これまで保有した核兵器、中短距離ミサイルは黙認すれば、根本解決にはほど遠い結果となってしまう。 北朝鮮が全面的な核放棄を約束したとしても、明確な実行期限が設けられなければ、2006年9月の6カ国協議での北朝鮮による核廃棄表明と同様に反故にされてしまうだろう。米ホワイトハウスで首脳会談後に共同記者会見を行うエマニュエル・マクロン仏大統領(左)とドナルド・トランプ米大統領=2018年4月24日(ロイター=共同) トランプ大統領は4月24日のマクロン仏大統領との共同記者会見で、「これまでも、われわれは譲歩をしたことがなかった」と述べ、米朝首脳会談でも、しないことを強調したが、それでもなお、悪しき妥協を懸念せざるをえない〝状況証拠〟がある。3つの「状況証拠」 第1は、先に述べた20日の北朝鮮の新たな方針だ。これは、米国が首脳会談開催の前提条件として北朝鮮に要求したものではないかとささやかれている。そうだとすれば、前提条件が満たされたことになるため、不完全であるにもかかわらず、米国が受諾を拒否する理由がなくなってしまう。 北京の人民大会堂で開かれた夕食会で、芸術団に拍手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年3月26日(朝鮮中央通信撮影・共同) 第2は、これに関連するが、北朝鮮の決定に対して、トランプ大統領がすかさず反応し、「北朝鮮と世界にとって、非常にいい知らせ、大きな前進だ」と歓迎、「(首脳会談を)楽しみにしている」と、異常なはしゃぎぶりをみせたことだ。 金正恩は「核戦力兵器化の完結が検証された。もはやいかなる核実験や(ミサイル)試射も必要なくなり実験場は使命を終えた」と述べている。核廃棄どころか「核兵器、ミサイルの完成宣言」に等しい。 米国から突きつけられた条件を呑むために「路線変更を正当化するための苦肉の策」(4月22日付産経新聞)という見方もあるが、そうであるにせよ、保有核兵器の完全廃棄について言及していないことに大統領が何ら触れていないのは不可解というほかはない。妥協ありきというのが、トランプ大統領の腹つもりではないかと思われても仕方がないだろう。 第3は、最近使われるCVIDという言葉の定義だ。この言葉はブッシュ政権(子)時に使用されはじめ、その後はあまり聞かれなくなったが、最近再びメディアを賑わしている。当初は、complete, verifiable and irreversible dismantlement」、「完全かつ検証可能、不可逆的な廃棄」と訳されていた。しかし、最近ではdismantlementに代わって、denuclearization(非核化)という表現が用いられている。 筆者はこのことを、うかつにも、4月16日の日本記者クラブでの浅羽祐樹・新潟県立大教授の会見をきくまで知らなかった。 調べてみると、ことし2月25日の朝鮮半島非核化に関するホワイトハウス報道官声明では、はっきりと「denuclearization」の表現が使われていた。4月18日に行われたトランプ大統領と安倍首相の会談についてのホワイトハウスの声明でも同様な表現がみられ、dismantlementという言葉はなかった。 ニュアンスの問題だが、廃棄や分解を意味するdismantlementに比べ、denuclearizationからは、単なる非核化という軽い響き、意味合いしか感じられない。使用不能にさえすれば、廃棄は必要ないと解釈できないこともない。安易な妥協は危険 こうした状況証拠とは別に、側近の進言やアドバイスに耳を傾けることなく、自ら独裁的に決定を下すといわれるトランプ大統領が、交渉の場の独特な雰囲気の中で、高揚感から不用意な譲歩に走ることは考えられるだろう。大統領が、ホワイトハウスを訪れた韓国特使団から金正恩との首脳会談の話を持ち出された時、その場で即断したことを考えれば、根拠のない懸念とは言えない。 北朝鮮が首脳会談に応じてきたことについて安倍首相らは、各国が圧力をかけ続けてきたため、金正恩がそれに耐えられなくなったと分析している。おそらく正しい見方だろう。 そうであれば、極端な話、首脳会談など行わなくとも、北朝鮮に圧力をかけ続けさえすれば、先方は〝白旗〟を掲げてくるだろう。〝熟柿作戦〟ともいえようが、妥協、譲歩を引き出されるリスクを伴う首脳会談より、時間はかかっても効果的、得策ではないか。 思い出してほしいのはリビアのケースだ。リビアは、北朝鮮と同様に大量破壊兵器を開発しながら米英の圧力で完全放棄したが、米英との間で、首脳会談や交渉などは一切なかった。両国の情報機関が圧力をかけ続けた結果、当時の最高指導者、カダフィ大佐が2003年12月、突然、廃棄の意向を伝えてきた。 その直前、イラクのフセイン大統領が米軍に身柄を拘束されたことに衝撃を受けたのかもしれない。それはともかく、米国は廃棄をリビアに任せることなく、核兵器、関連機器をすべて米国本土に運んで自らの手で廃棄した。 リビアのケースは、圧力をかけて追い詰めれば、武力によらなくとも、北朝鮮に核を廃棄させることが可能であることを示した。 「金正恩の野望」を描いた4月22日放映のNHKスペシャルで、韓国に亡命した北朝鮮のテ・ヨンホ元駐英公使が語っていた。「北朝鮮は昨年まで、核実験、ミサイル実験を繰り返してきた。今年になって対話路線に転換した。世界は〝ああ、よかった〟と思うだろう」―。この安堵感が危ない。カダフィ体制の打倒を叫ぶデモ参加者ら=2006年1月29日(黒沢潤撮影) アフガニスタン、イラクにおける戦争で、米国民の間には〝厭戦気分〟が少なくない。平和解決こそ最も重要なことではあるが、心理的なスキが不必要な妥協を生むことがあってはなるまい。 安易な妥協で合意が成立した場合、宥和主義によるものか、トランプ政権の判断ミスによるかはともかくとして、もたらされる深刻さは同じレベルだろう。 断っておくが、筆者は映画に感化されて、首脳会談より戦争による解決をーなどといっているのではない。不必要な譲歩は有害、危険であるか、ということを強調したいだけだ。 安易な妥協によってヒトラーの跳梁を許してしまったチェンバレンは、罵声を浴びながらの退陣を余儀なくされた。 トランプ大統領は、「チャーチル ヒトラーから世界を救った男」を鑑賞しただろうか。まだなら、首脳会談前にぜひ見てほしい。

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    北朝鮮収容所経験者「金王朝は死ぬなら国民も道連れにする」

     いま、韓国と北朝鮮の融和ムードが高まっている。しかし、金正恩は恐怖政治をやめる気配すらない。長年、北朝鮮について取材してきた落合信彦氏が、かつてインタビューした北朝鮮収容所経験者の証言を紹介する。 * * * かつて北朝鮮の収容所で10年間過ごし、中国経由で韓国に亡命した姜哲煥氏を1993年にインタビューしたことがある。彼の祖父は日本の京都の朝鮮総連系商工会の幹部をしていたが、ある日、訪れた平壌で行方不明になってしまった。姜氏によると、平壌の政治犯収容所に入れられたのではないかという。その直後、一家は平壌の北、咸鏡南道にある収容所に送られた。姜氏は当時9歳だった。「年齢は関係ありません。北朝鮮では誰かが“犯罪”を犯すと、必ず連帯処罰として家族全体を罰するので赤ん坊でも逃れられないのです。本人だけ捕らえると、あとでその子供が大きくなったとき復讐を考えるかもしれないという心配があるわけです」 収容所生活で辛かったのは寒さと餓えだったという。だが、それ以上に辛かったのは処刑場面を見ることだった。毎年15人ずつ処刑されたという。「餓えが限界にきて、食糧欲しさに反乱を起こしたり、逃走を謀ったりした人々です。絞首刑のときなど、われわれは死体に向かって石を投げるよう命令されました」 1987年に収容所を出た姜氏は、後に賄賂を使いながら鴨緑江を渡り中国経由で韓国に亡命した。金王朝で地獄を見た姜氏の金正日評は傾聴に値する。彼は次のように語った。「彼(金正日)は民族のことを一番に考えるような立派な指導者ではありません。念頭にあるのは政権維持だけです。少なくともこれまでの彼を見る限りそう言い切れます。平壌で行われた軍事パレードで演説する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。=2018年2月8日、北朝鮮・平壌(コリアメディア提供・共同) どこの国に毎晩キーセン・パーティーにうつつを抜かし、数多くの女をはべらせ、ポルノ映画ばかり見ている指導者がいますか。彼にとっては政権を失うということは死を意味します。だからどうせ自分が死ぬのなら国家と国民も道連れにしていこうと当然考えるでしょう」 その独善的思考はそのまま息子の金正恩に受け継がれている。そして今や彼は核を手にした。にもかかわらず、いまだに話し合いでこの男をなだめられるという思考がいかに危険かがわかるはずだ。関連記事■ 北朝鮮で強制収容所の囚人1万5000人が消えたとの情報■ 北の漂着船 元軍人の漁師を強制送還すると1人83万円かかる■ トランプ×金正恩 いざ会ってみたら意気投合する可能性あり■ 統一コリアvs日本の国力比較 貿易額、経済規模、兵力など■ 北朝鮮と韓国との全面戦争はあるか? 専門家はないと説明

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    韓国の歴史教科書から反北的記述が次々削除されている

    綱である。それを放棄するはずはない。にもかかわらず、なぜ北朝鮮の術中に、文在寅政権は自ら嵌まるのか。韓国人ジャーナリスト・朴承ミン氏が深層を読む。三池淵管弦楽団の公演後、金与正・朝鮮労働党第1副部長(左)の手を取る韓国の文在寅大統領=2018年2月11日、韓国・ソウル(聯合=共同) * * * 親北政策に突き進む背景として最初に挙げなければいけないのは、青瓦台(大統領府)の秘書官(参謀陣)の面々である。文在寅大統領の秘書官のうち半数近くを占めるのが「586グループ」だ。 現在50代で、1980年代に大学時代を送って、1960年代に生まれた世代を指す。彼らは80年代に盛んだった民主化運動、つまり反政府学生運動に参加していた人間だ。学生運動時代に金日成主体思想に傾倒していた者もいる。 与党、共に民主党(民主党)でも586グループが重要なポストの約8割を掌握している。文大統領自体も大学時代に学生運動に勤しんでおり、586グループの先輩格にあたる。“後輩”の意見を反映させることを当然のように思っているかもしれない。 もちろん、文大統領自身の野心もそこにはある。歴代大統領は、南北首脳会談に強い関心を示してきた。文大統領が系譜を継ぐ左派政権、2000年の金大中政権、2007年の盧武鉉政権もそれを実現した。文大統領も業績を上げる機会として狙っているのだろう。 それにしても、現政権が北朝鮮に気を使う様は度を超している。その象徴が、歴史教科書改定だ。 政府は新しい歴史教科書の執筆基準の試案で、「北朝鮮政権の全面的南侵で勃発した6・25(韓国)戦争」という表現を「6・25(韓国)戦争」に変えている。この指針通りになるなら、学生たちは戦争を誰が起こしたのかわからない。また、「北朝鮮体制の世襲」「北朝鮮市民の人権」という表現も抜いた。北朝鮮の首脳部が気に入らないと思うようなことは歴史教科書に入れないということだ。 若者の歴史教育は、国家のアイデンティティー形成に大きく影響するだけに、慎重な舵取りを求めたい。【PROFILE】朴承ミン/時事通信の元ソウル支局記者。長年、北朝鮮問題と韓国政治を取材。その間に平壌と開城工業団地、金剛山など北朝鮮の現地を5回ほど訪問取材。現在、韓国と日本のメディアに寄稿している。関連記事■ 韓国・北朝鮮が描く「統一コリア」へのロードマップ■ 統一コリアvs日本の国力比較 貿易額、経済規模、兵力など■ ホッケー南北合同チームに文在寅氏支持派若者からも批判の声■ 親北を掲げる文在寅政権の先は「赤化統一」と暗黒の生活■ 人類滅亡――マヤ暦の予言とは異なる「2012年問題」の正体

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    「#韓国人になりたい」インスタ女子はなぜ急増したのか

    鈴木朋子(ITジャーナリスト) 「#韓国人になりたい」――若い女性に人気のSNS「インスタグラム」で、こんなキーワードが流行していることをご存じだろうか。「#○○」という風に、「#(半角シャープ)」に続いてキーワードを付ける「ハッシュタグ」は、SNSでキーワード検索をする際に使用できる機能なのだが、執筆時点で「#韓国人になりたい」を付けた投稿は9951件にも上る。一方で、「#アメリカ人になりたい」は256件、「#フランス人になりたい」は158件だ。 この違いは何なのか。彼女たちは本当に韓国人になりたいのか。 政治的な側面から見れば、慰安婦問題や竹島問題などを抱える日韓関係は冷え込んだままだ。その韓国に国籍を移したいのか、あるいは韓国に移住したいのかと疑問を感じる人もいるだろう。 しかし、彼女たちがイメージする韓国は、大人のそれとはまったく異なるのだ。 振り返れば、大ヒットした韓国ドラマ『冬のソナタ』に代表される第1次韓流ブーム、少女時代や東方神起などK-POPアイドルによる第2次韓流ブームがあった。ドラマ、ミュージックと韓流ブームには中心となるカルチャーがあるのだが、現在は韓国のファッションを基点とした韓流ブームが巻き起こっている。韓国女性9人組、少女時代=2012年11月13日、東京・代々木第一体育館( 栗原智恵子撮影) 10代を中心とした若い女性たちにはやっているのは、「オルチャンメイク」だ。「オルグル(=顔)」に「チャン(=最高)」を組み合わせた「オルチャン」がしているメークという意味で、数年前から高い支持を得ている。オルチャンメイクの特徴は、平行した太めの眉、垂れ目風に仕上げたアイライン、涙袋の強調、赤い口紅、陶器のように真っ白な肌だ。さらにシースルーバングと呼ばれる、おでこが少し見える薄めの前髪で、韓国語で「タンバルモリ」というショートヘアやおかっぱ頭との組み合わせが多い。 オルチャンメイクの方法を指南したYouTube(ユーチューブ)動画は多数アップロードされており、ある女子高生は毎日チェックしているという。韓国コスメも「安くて質がいい」と人気が高い。 服装に関しても同様で、自身のファッションコーディネートを投稿する「WEAR」というアプリ内では、「韓国ファッション」をキーワードにしたコーディネートが3万件以上存在する。韓国ファッションはK-POPのアイドルがしていそうな、体の線が出るミニスカートやパンツスタイルが多く、若い男性の投稿も多い。 さらに、先ほど「K-POPは第2次韓流ブーム」と書いたが、現在もK-POPアイドルの人気は高まっている。昨年、NHK紅白歌合戦に出演した「TWICE」をご存じだろうか。韓国で結成された9人組の女性グループで、メンバーには韓国人のほかに日本人と中国人が含まれている。彼女たちは小学生女子や中学生男子にも人気があり、彼らのSNSにはTWICEのポーズである「TTポーズ(手をアルファベットのTにして泣き顔にする)」や指を重ねる小さなハートポーズを撮った自撮りが並ぶ。女子高生が韓国に熱狂するワケ 先日取材した女子高生は、「防弾少年団(ぼうだんしょうねんだん)」という、韓国のヒップホップアイドルグループが好きだと言っていた。他には、「exo(エクソ)」という男性アイドルグループや、女性グループ「BLACKPINK」が人気だという。韓国語でファンのことを「ペン」というので、防弾少年団(韓国語でバンタンソニョンダン)のファンは「バンタンペン」となる。10代の利用率が高いTwitter(ツイッター)で「バンタンペン」を検索すると、ハングルで自分の名前を表記している若い女性のアカウントが多数ヒットする。 彼女たちはハングルをネットで勉強するそうだ。韓流好きの女子高生に聞いたところ、ハングルは○などが入っていて「かわいい」と感じるようだ。「推し(好きなアイドル)が同じ」人とはTwitterで知り合い、韓国関連のショップが多い新大久保で待ち合わせて、ショッピングやおしゃべりを楽しんでいる。 韓国へ友人同士で旅行に行く女子高生もいる。韓国はアルバイト代をためればすぐに行ける国だからだ。ネットの動画で韓国語を学んでいるため、現地でも苦労することはない。韓国グルメを味わい、コスメや服を購入して帰路につく。 これほどまでに若い女性たちが韓国に熱狂する理由のひとつは、「センスが近しい」からだろう。「オルチャンメイク」は、日本で爆発的に人気になった「SNOW」や「BeautyPlus」といった自撮りアプリの加工後の顔と似たような、幼いかわいらしさを強調しており、日本人の「カワイイ文化」にも共通する。昨年12月2日、香港で、音楽授賞式「2016 Mnet Asian Music Awards」に参加し、ポーズをとるK-POPグループ「Twice」(AP) インスタグラム人気も相乗効果を上げている。「インスタ映え」が流行語大賞を取った日本では、若い女性のインスタグラムユーザーが急増している。インスタグラムには使っているコスメを並べて写真を撮る文化があるのだが、韓国のコスメはプリンセス感があふれる外装で、インスタ映えするのだ。また、韓国の街にはインスタグラム向けのスポットも多いそうで、インスタ女子の人気を集めている。ファッションに関心が高いユーザーが集まるインスタグラムでの韓流ブームが、彼女たちをさらに盛り上げているのだ。 外国という神秘感と、それでもまねしやすいカルチャーが、若い世代の心をつかんでいるのだろう。国家間の思惑と別の潮流が、日韓の間を進行している。