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    韓国に思いを寄せる左派により韓国が窮地に陥る皮肉

    本にも大きなメリットがあるということですね。井上:もし日本から米軍基地がなくなると、一番困るのは実は韓国でしょう。現在の在日米軍と在韓米軍の戦力を比較すると、在日米軍は、世界最強の第7艦隊を筆頭に陸海空合わせて5万人規模ですが、在韓米軍は、陸軍部隊を中心に空軍部隊がいるだけで、海兵隊および海軍部隊はわずか。規模も在日米軍の半数程度です。つまり、朝鮮半島有事の際には、在日米軍が主力になる。ケント:日本の左派の人たちは「軍事基地があるから戦争になる」と本気で信じていて、日本が武装解除すれば戦争にならないというんですね。それこそが戦争を誘発するということがわかっていない。在日米軍基地がなくなれば、北朝鮮が韓国に攻め込む可能性も高まる。米軍普天間飛行場・辺野古移設問題米軍普天間飛行場移設に向けた護岸工事が進む沖縄県名護市の辺野古沿岸部=2018年1月27日午後(共同通信社機から)井上:左派のなかには韓国に異常なまでに思いを寄せる人が多いんですが、彼らの主張が韓国を窮地に陥れかねないのだから皮肉な話です。ケント:しかし、マッカーサーも自分たちの占領政策が原因とはいえ、70年後の日本がこんな状況になるとは思っていなかったでしょうね。占領統治が終わったら、憲法くらいは改正するだろうと思っていたら、まったく変えないので、びっくりしたんじゃないですか。 終戦から約5年半後の1951年にジョン・フォスター・ダレス国務省顧問は、吉田茂首相と会談して「憲法を改正してはどうか」と提案しましたが、吉田首相は断わった。経済復興に専念することを選んだわけです。井上:いま安倍政権下で憲法改正の議論が始まっていますが、日本人はGHQの洗脳によって植え付けられた東京裁判史観を見直すことが、議論の第一歩だと思います。ケント:まず日本人は、その東京裁判史観を反日戦略に利用し続けてきたのが、中国と韓国であることを認識するべきでしょう。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 慰安婦問題 繰り返される手のひら返しと河野談話への流れ■ 文在寅大統領就任で青瓦台は「反米親北勢力」に乗っ取られた■ 韓国による「慰安婦」世界記憶遺産登録を完全阻止の秘策あり■ ケント氏「議論すら許さない日本のリベラル派は全体主義者」

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    雇用よりも財閥、文在寅の失政で現実味を増す「韓国消滅論」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が急落した。韓国の世論調査会社「リアルメーター」の発表によれば、6月には70%台だった支持率が、7月では約56%に大きく減少した。韓国メディアは、この支持率の大きな落ち込みが、文大統領の経済政策への評価と、側近の関係する政治スキャンダルが作用していると報じている。 文政権の経済政策は、日本でいえば民主党政権や、その流れをくむ立憲民主党の政策に類似している。その特徴は、経済全体の拡大よりも再分配政策を重視するスタンスだ。簡単に言うと、ケーキの大きさは変わらないものとみなし、ケーキをどんな人たちに分けるかに関心を向ける政策である。 文政権は雇用重視を唱えて、最低賃金の引き上げや残業時間の短縮などの政策を打ち出していた。つまり、働く場で弱い立場にある人たちにより多くの恩恵を与える政策を主軸にしていた。この政策の裏は、朴槿恵(パク・クネ)前政権が倒れた背景に、若年層を中心にした不安定な経済状況を抱えた人たちを核とした社会的不満があることを、意識してのものだったろう。 だが、文政権の雇用政策は破綻したのではないか、という点について、韓国でも激しい議論が生じているようだ。批判する側の論理は簡単で、最低賃金の引き上げや残業時間の短縮によって、経営側の実質的なコストが膨大なものになってしまった。そのため新たに人を雇うことを抑制してしまう。 このときに最も割を食うのが、韓国の若年層である。若年層の失業率は、前年同月比で9・3%と高止まりしたままだ。なお全体の失業率は3・7%で、前年同月比では0・3%悪化した。失業率は先々月、4%に上昇した後に減少したように思えるが、それは悪い「減少」である。 韓国での就業者(実際に働く場所を得た人)の状況は、あのリーマンショック並みに悪化している。つまり、失業率の見かけの「減少」は、単に景気が悪くなり、働き場所が見つからないために働くことを断念した人たちが増えたために生じているのである。実際労働力人口(労働する意思と能力をもつ人)は前月より減少し、同時に就業者数も減っている。2018年8月、休暇先で読書する韓国の文在寅大統領(韓国大統領府提供・共同) もちろん文政権の雇用政策が失敗している可能性があるが、核心は今の韓国国内で続く経済政策論争から見落とされている部分にある。最低賃金の引き上げなどは副次的な意味でしかない。真因は文政権のマクロ経済政策の失敗にある。特に、金融政策に失敗したことである。 韓国の中央銀行はインフレ目標を採用しているが、消費者物価上昇率の目標値は2%である。現状は前年同月比で1・5%だが、確かに朴政権時代の実質的なデフレ状態に比べれば、かなり改善しているのは事実であると言えよう。文政権は「実質デフレ」 だが、それでも金融政策の緩和基調は極めて抑制されており、それが経済全体の拡大も抑えている。実際に、韓国銀行の政策金利は据え置かれたままである。 韓国は朴政権から今の文政権にかけて、それ以前まで採用していた高めのインフレ目標をやめている。その背景には、韓国の資産・負債の構造がある。 対外債務残高が前政権時代から現在にかけて増加基調にあり、現時点では約4千億ドルに膨らんでいる。この対外債務の実質額が拡大することを、政府と中央銀行が恐れているために、より一層の緩和といった経済刺激策が採れないというのが、もっともらしい言い訳のようである。 だが、実際には類似した資産・負債構造であっても、朴政権以前は、リーマンショック以後と比べて、今より高いインフレ率と失業率の低下傾向(就業者の増加傾向)が「同居」していた。ちなみに、2012年まではインフレ目標の中央値は3%であり、上限は4%(下限は2%)だった。 13年以降の2%への引き下げによって急激に低インフレ化し、むしろ実質デフレ経済に陥っているのである。見方を変えれば、物価抑制という目標に絞れば、金融政策は「成功」しているのかもしれない。 つまり、政府と中央銀行は、韓国の大企業の対外債実質増を警戒しすぎて、それによって雇用を犠牲にしているのである。その大きなしわ寄せの象徴が、若年雇用の悲惨な実態というわけだ。 どの国の中央銀行の金融政策も、インフレ目標はあくまでも中間的なものでしかない。日本ももちろんそうである。あくまで、インフレ目標の実現を通じて、雇用全体の改善や経済の安定化を目指すことが、各国中央銀行の政策目標なのである。2018年7月、インド・ニューデリー近郊のサムスン電子の新工場竣工式に出席した韓国の文在寅大統領(右端)、同社の李在鎔副会長(左端)ら(聯合=共同) その意味では、韓国政府と韓国銀行は金融政策の目的を、銀行や大企業に対してあまりにも「忖度(そんたく)」しすぎて、その半面、肝心要の雇用を犠牲にしていることになる。経済・雇用の全体的な状況が改善しないままに、最低賃金の引き上げなどが行われれば、どうなるだろうか。 冒頭の例に戻ろう。韓国の金融政策が緩和基調ではないために、むしろ雇用を全体として縮小させてしまっている。つまり、ケーキの大きさが前よりも小さくなっているわけだ。そのとき、ケーキの切り分けを変えることをしたらどうなるか。きっと最も力の強い人たちに、より多くのケーキが配られるだろう。韓国経済の「不幸」 つまり、小さくなったケーキでも、すでに働いている正社員たちに、より多くの配分が与えられるのである。他方で、非正規社員や新卒の人たちは割を食う。最低賃金の引き上げはこの状況をさらに悪化させているのである。 日本では、アベノミクスの採用以降、雇用が増加し、最低賃金も6年連続で引き上げられた。これはケーキの拡大の中で、最低賃金の引き上げが若年層などの雇用を悪化することなく行われたことを意味している。つまり、ケーキの配分の変更をスムーズにするには、ケーキの拡大が必要だということだ。これを誤ると、若年雇用だけが悪化してしまう。 わが国でも過去の民主党政権や現在の立憲民主党は、ケーキの拡大に極めて消極的であると同時に、ケーキの配分には積極的である。その帰結がどうなるか、民主党政権での経験が端的に表現している。だが、まだこれだけの雇用改善を前にしても「アベノミクスは失敗で、民主党政権の方がよかった」というトンデモ意見が絶えないのである。その人たちには現在の韓国の状況を理解することはできないだろう。 ところで、韓国の経済政策論争を見てみると、最低賃金引き上げや残業時間規制などの是非ばかりに目が行っていて、日本的なアベノミクス、つまり金融政策による雇用最大化を主張する意見は皆無である。米エール大の浜田宏一名誉教授が韓国銀行でスピーチしたとき、出席者すべてが金融緩和政策による雇用創出、つまりリフレ政策に否定的だったという。 私の経験でも、韓国の三大ネットワークのテレビ番組に出演したときに、リフレ政策(アベノミクスによる金融緩和政策)を主張したのだが、同じ主張をする韓国側の出演者は皆無だった。韓国には日本でいうリフレ政策を唱える人がいないとしか思えない。政策のアイデアを助言する人が韓国にいなければ、そもそもその政策が採用される可能性も低い。そこに韓国経済の不幸を見いだすことができる。 しかも、事はさらに深刻である。韓国の若年失業率の高止まりが続くことで、すでに若年から中年に移行した人たちの経済状況が低迷している。非正規雇用の割合も極めて高く、その人たちの所得水準は不安定である。観光客の若者が多く訪れる青瓦台=2017年5月、韓国・ソウル(川口良介撮影) この韓国の30代の未婚率は日本をかなり上回る。この事態を放っておけば、未婚率が経済的な要因でさらに上昇していくだろう。韓国でも未婚率と合計特殊出生率はかなり強い関係にある。つまり、金融政策の失敗が、将来的な韓国の大幅な人口減と高齢者の割合の急増をもたらす可能性がある。 しかも、そのスピードは日本よりも早い。韓国が「消滅」するかどうか、その方が巷(ちまた)でよく目にする「韓国崩壊」論よりもよほど深刻な事態である。

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    韓国現地リポート】韓国キリスト教と政治の裏歴史

    韓国のキリスト教徒は国民の3割に上り、「国民的宗教」として浸透している。大衆化した宗教は政治や社会とも密接に関係するだけに、歴代大統領の政策にも多大な影響を与えているようだ。韓国宗教文化研究所所長の李進龜(イ・ジンク)氏が、その歴史と現状をひも解く。■関連テーマはこちら

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    大衆化した韓国キリスト教の正体

    韓国のキリスト教徒は国民のおよそ3割に上る。わが国では1%にも満たないが、隣国では「国家的宗教」として浸透する。むろん、大衆化した宗教は政治や社会とも密接に関係する。なぜ韓国はキリスト教国になったのか。iRONNA韓国リポートの新テーマ「宗教編」をシリーズでお届けする。

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    韓国のキリスト教はいかにして「反日感情」と結びついたか

    洛雲海(日本基督教団韓国派遣宣教師) 1945年に太平洋戦争が終わり、朝鮮半島が北と南に分かれ、大韓民国という国家が新しく生まれました。国家をつくる上で要になるのは、憲法です。1948年、韓国の憲法を定める最初の会議(制憲国会開会会議)が開かれましたが、そこで驚くべきことが起こります。 国会開会を宣言する議長が発した第一声が、なんと神への感謝の祈りを議場に促す言葉だったのです。それは「大韓民国独立民主国第一次会議をここに開催するに至りましたことを、私たちは神に感謝しなければなりません」というものでした。 日本では考えられないでしょうが、韓国という国はそのようにして始まったのです。その時の議長がだれかといえば、のちに初代大統領になった李承晩(イ・スンマン)でした。これは速記録にもきちんと残っています。このエピソード一つ踏まえるだけでも、韓国の政治とキリスト教がいかに密接に関係しているかがわかると思います。 キリスト教といってもいろいろな教派や立場があります。保守系キリスト教、進歩系キリスト教、つまり、キリスト教にも右派、左派があるんですね。 キリスト教右派、左派というのは、カトリックかプロテスタントかで分かれているのではありません。カトリックもプロテスタントも、大部分は保守でしょう。ただ、一部に進歩的な人たち、北朝鮮とも仲良くしていこうという人たちがいて、その人たちを左派と呼ぶわけです。そしてその代表がカトリックや「聖公会」の一部、また「長老教会」や「メソジスト教会」などのプロテスタントの一部の人たちです。 そして政治的保守層のキリスト者たちは保守系キリスト教と結びつく傾向があり、政治的進歩層のキリスト者たちは進歩系キリスト教と結びつく傾向があります。歴代大統領の宗教をみれば、それは明らかです。セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 例えば李明博(イ・ミョンバク)大統領はプロテスタント「長老教会」の長老でした。彼は長老教会の中でも「統合」と呼ばれる中道派に属し、保守から進歩までを含む一番幅が広い教派です。 その後の朴槿恵(パク・クネ)大統領は非常に保守的な政治家でした。父親の朴正煕(パク・チョンヒ)を支持していたキリスト者たちは主として保守的キリスト者たちでしたから、同じような人々が支持していたとみてよいでしょう。 そして進歩派で知られる現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、カトリック信徒です。ご存じの通り、廬武鉉(ノ・ムヒョン)と文在寅は親密な同志ですが、彼らを支えているのは同じキリスト教グループです。韓国政府のブレーンは神父 政治的進歩を支えているキリスト者たちは、軍事独裁政権と呼ばれた時代に、民主化闘争のために命を張って戦った人々である、という共通点があります。彼らは多くの保守系キリスト教が体制側に立っているのに対して、弱きものの立場に立ってキリスト教の精神を具現化していくんだと、独裁政治に対抗したのです。中でもカトリックで構成された「正義具現司祭団」というグループが中心的な役割を果たしました。 そして民主化運動が成功し政権交代が果たされた後、金大中(キム・デジュン)、廬武鉉大統領の時には、民主化運動をした神父や牧師たちが政権のブレーンになっていきました。その牧師や神父は政府の中枢部に入って行きブレーンとなっていきました。特に南北関係の核心的なポストに、神父や神学者が入っていったわけです。 韓国政界は、表向きにはあまりキリスト教の存在はわからないでしょうが、国家の決定的なところにキリスト教徒たちが多数入っているのが現実です。 日本のキリスト教徒の人口比率は、1%に満たないと言われています。一方、韓国のキリスト教徒はカトリックやプロテスタントを併せて俗に30%ほどと推測されます。最近は韓国でもキリスト者人口は減ってきていますが、それでも日本とは大きく違いますよね。 すぐお隣の国にも関わらず、なぜ韓国でキリスト教徒が多く、日本では少ないのか。それは、韓国において、本来結びつくはずのないナショナリズムとキリスト教が結びついたことが大きな要因の一つだと、私は見ています。 ナショナリズムとキリスト教の結びつきを象徴する出来事として、「3・1独立運動」をみてみましょう。日本の植民地支配に抵抗して独立を願う人たちが立ち上がり、宣言書が読まれ、デモ行進が行われました。この宣言に民族代表33人が名を連ねたのですが、全員が宗教的指導者でした。日本統治下の時代のキリスト教の会議記録とセムナン教会のメンバーリスト=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) その宗教の内訳をみると、キリスト教指導者が半分以上を占めている。これは注目に値すると思います。日本でキリスト教といえば、むしろ日本を超えた「世界」のことについて訴えているイメージが強いのではないでしょうか。日本のナショナリズムを鼓舞する人の中に、キリスト教徒たちはほとんど目につかないですよね。 韓国では、政治的保守・右翼とキリスト教が結びつくことが多く、それが韓国でキリスト教徒の多い要因ではないかとする見方があります。でも、私の牧師としての立場からすれば、本来ナショナリズムとキリスト教の教えは結びつかないものですし、むしろキリスト教はナショナリズムを克服していくべきものです。 なぜなら、キリスト教では、神の前ではみな平等であると教えるからです。それが基本的人権の思想につながっていくわけですが、理由はそれだけではありません。キリスト教が世界に広がる過程も関係しています。 キリスト教国家が他の発展途上の地域、あるいは非文明的な地域を植民地化しようと入っていくときに、宗教も一緒に入って広められていった歴史があります。入ってこられた側としては、もちろん好意的に受け入れる人たちもいたことでしょうが、当然反発する人たちもいるわけですね。宣教師が反日に動いた理由 侵略を受ける側は、侵略をしてくる側をよく思うはずがないですよね。搾取されていくわけですから、反発が起こります。もちろん、文明の力を取り入れて自らに利しようとする人たちはいるでしょうし、実際いました。織田信長が鉄砲を取り入れて日本を統一していったように、先進技術や文明の力を取り入れて手を組もうとする人たちもいますが、多くは反発します。 そして、侵略者たちが信じている、核心になっているものに対しても反発が起こるのが普通でしょう。例えばキリスト教を信じているという侵略者たちが、口では愛とかなんとか言っておきながら、ものすごい勢いで搾取をして現地の人々を隷属化していく。そういうことが起こってきたときに、志のある人たちは反発しますよね。その反発は、侵略者たちが信じている宗教に対する反発にもなるわけです。 でも、侵略者たちの力があまりにも大きいがゆえに、やがて取り込まれて、そして教化されるようなことが起こります。植民地化された国にキリスト教会が入っていき、現地が搾取され教化されるという形は、世界中のいろいろな国で見ることができるでしょう。 南米でもカトリックの信徒がほとんどで、フィリピンでも同じです。それは、どのような宗教を信奉する国が現地を侵略し、また植民地化するのか、まさにそのことが影響するわけです。 そこで韓国を考えてみましょう。韓国を植民地化した国はどこかといえば、日本です。ところで、日本はキリスト教国家と言えるでしょうか。その当時の帝国日本という国家の基軸となるような宗教があったとすれば、それは「国家神道」です。 植民地化されると感じれば、朝鮮民族としての自負心を強く持っている民族主義者たちは抵抗するでしょうし、実際に抵抗しました。彼らは、自らを搾取し植民化しようとするものたちの背後にあるものにも一緒に反発します。宗教にだって反発するでしょう。そこで神社参拝の問題が特に出てくるわけです。 もしも、日本の背後にある宗教がキリスト教であったなら、彼らはキリスト教に対する反発を持ったのではないでしょうか。しかし朝鮮半島ではそうではなかったわけです。それは「国家神道」でした。 そしてもうひとつ、彼らの民族的な精神、あるいは民族独立の運動を支持する人たちがいました。それがキリスト教の宣教師たちだったわけです。宣教師が韓国の信者に洗礼を施す様子=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 朝鮮の人々から見れば、日本に無茶苦茶なやり方で入って来られたという思いが強い中で、宣教師たちはそんな彼らをかわいそうに思い、愛をもって助けようと、朝鮮側の立場になったことでしょう。 宣教師たちからすれば、日本は朝鮮の人々の自由を奪っていく、そのような行為はキリスト教の愛の精神に反するわけですから、朝鮮の民族独立運動家と共に反日に動きました。それでナショナリズムとキリスト教が結びついていった、という側面があったのではないでしょうか。靖国参拝は異常な行動に見える ある神学者が唱えた理論で、「帝国日本触媒論」という考え方があります。触媒というのは、Aという物質とBという物質が一緒にいるだけではなんの反応もしないのに、そこに関係のない触媒が介入してくると、触媒自体は変わらないのに、AとBは激しく反応して新しいものを生み出すような役割を果たすものです。 その触媒こそが日本だとする理論です。これは私もなるほどと思います。キリスト教と韓国のナショナリズムというものは本来結びつきようがないものなのに、そこに帝国日本というものが触媒のように入ってきたがゆえに二つは激しく反応して結びつくことになりました。「3・1独立運動」主導者の過半数がキリスト教の指導者たちだったという例は、この結びつきが顕著に表れた例と言えるわけです。 そして日本が負けたおかげで(韓国の民族独立主義者たちの側からみると「おかげ」ですよね)、ついに独立が可能になりました。そこで、これまで韓国で民族のために命を張って抵抗してきた人たちは、その後、国家においてどのような位置を占めると思いますか。当然、国家の指導層に出てくるわけです。 基本的にキリスト教の教えは、愛による和解を願う赦(ゆる)しの宗教です。つまり現代における、「反日」的なメッセージとキリスト教の教えは必ずしも一致しません。しかし、朝鮮半島には、事実日本から痛い目にあったという過去があり、そのために複雑な思いを持った人々がキリスト教徒たちの中にもいます。日本からのさらなる謝罪が必要だと思っている人々も多いことでしょう。 例えば、靖国神社に参拝する日本の政治家がいます。日本のある人々からすれば、参拝は英霊に対する当然の礼儀だと思うかもしれませんが、外国から見れば、それは宗教行為に他ならないでしょう。ある閣僚が、キリスト教信仰を持つ信徒でありながら靖国に参拝するというのは、本来ならありえません。セムナン教会でインタビューに応える洛雲海(ナク・ウンヘ)牧師=2018年4月5日、韓国・ソウル(中田真弥撮影) 少なからぬ日本人からすれば、政治家の靖国参拝は許容範囲というか、礼儀として受け止められるかもしれませんが、外から見ればそれは異常な行為に見えることでしょう。どっちの神を信じているんだと。帝国日本の時代に、宗教行為ではないからと強要された神社参拝に反発して、虐殺までされたキリスト教徒たちがいますから、「政治家の神社参拝」とそれらの出来事が重なって見えることでしょう。 韓国とキリスト教の関係は奥が深いものです。これを理解すれば、韓国という国家を見る視点が変わり、現代に残る強い反日感情の根源などについても、真に理解することにつながるのではないでしょうか。(聞き手 iRONNA編集部、中田真弥)洛雲海(ナク・ウンヘ) 昭和39年東京生まれ。日本人。韓国政府招請奨学生として長老会神学大学校大学院に留学、博士課程修了(神学博士)。現在、長老会神学大学校助教授(組織神学)、韓国・セムナン教会協力牧師、聖学院大学総合研究所客員教授。

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    なぜ韓国でキリスト教が爆発的に浸透したのか

    島田裕巳(宗教学者) 戦後の韓国社会では、キリスト教の伸びが著しい。米調査機関、ピュー・リサーチ・センターによれば、2010年における韓国のキリスト教徒の割合は29パーセントに達し、仏教を凌駕している。仏教は23パーセントである。 キリスト教徒の割合は、1950年の時点では、まだ8パーセントだった。それが、1970年には18パーセント、85年には21パーセントに増えた。95年で26パーセント、2005年で28パーセントだから、伸びこそ鈍化している。 だが、日本のキリスト教徒の割合が1パーセント程度なのに比べると、韓国でのキリスト教の浸透はすさまじい。実際韓国に行ってみると、親は仏教徒だが、自分はキリスト教徒だという人によく出会う。 そこには、戦後の韓国における経済発展と、急激な都市化がかかわっている。都市化は首都ソウルへの一極集中と言ってもいい。 日本でも、高度経済成長の時代には、産業構造の転換に基いて経済が大きく発展し、それに伴って都市化が著しく進行した。それまで伝統的な村社会に生きていた人々は、都市に信仰を携えてはこなかった。しかも、彼らは家や地域社会のというネットワークから切り離された。そうした人間たちを掬い取ったのが、創価学会をはじめとする新宗教だった。 韓国では、日本の新宗教の代わりをキリスト教が果たした。韓国のキリスト教は、日本のキリスト教とは大きく異なるのである。日本では、キリスト教は、主に富裕層や知識人層に広がった。逆に大衆化は進まなかった。 ところが、韓国では、キリスト教は庶民層に広がった。したがって、日本のキリスト教とは異なり、むしろ日本の新宗教に近い、現世利益や病気治療を中心とするものが受容された。その際には、韓国に伝統的なシャーマニズムがそこに取り込まれ、かなり怪しげなものとなった。なにしろ、説教師が神懸りしたりするのである。韓国のソウルにある汝矣島(ヨイド)純福音教会 必然、韓国のキリスト教徒の中でも、知識人層はそうした土着化したキリスト教を評価せず、「あれはキリスト教ではない」と否定的にとらえている。安延苑(アン・ジョンウォン)青学大准教授と浅見雅一慶大教授との共著に『韓国とキリスト教』(中公新書)という本があるが、そこでは、大衆化したキリスト教についてはほとんど触れられていない。触れたくないというのが、著者たちの本音なのである。 日本では、土着の神道と外来の仏教が融合し、それが新宗教の基盤にもなった。ところが、韓国には神道にあたるものがないし、仏教は、儒教による圧迫も受けてきた。そのことが、キリスト教の受容に結び付いたのである。もう一つの「特徴」 ただ、「漢江の奇跡」と称された経済発展が曲がり角に達し、韓国も低成長の時代に入ると、キリスト教の伸びは前述したように鈍化した。それは、新宗教に近いキリスト教から活力を奪うことにもなった。最近の韓国では、プロテスタントからカトリックに改宗する人間が増えているといわれるが、現世利益や病気治療ではない、社会的にも認知された宗教が求められるようになってきたのであろう。 もう一つ、韓国の宗教の特徴は、経済界と結びつきやすいということがあげられる。韓国は依然として財閥社会で、「10大財閥」が力を持っていると言われるが、財閥が強いということは、経済構造が十分には近代化されていないことを意味する。だからこそ、財閥をめぐってさまざまな事件が起こるのである。 セウォル号事件の際には、この船の実質的なオーナーは、兪炳彦(ユ・ビョンオン)という造船業や海運、遊覧船を経営するセモグループの前会長だとされたが、この人物は、同時に救援派(クウォンパ)という宗教団体の開祖であった。この団体の正式な名称はキリスト教福音浸礼会である。 救援派はキリスト教の異端とも言われるが、プロテスタントの場合、バチカンのような世界的な組織があるわけではなく、正統と異端を区別する仕組みが存在しない。救援派のような新宗教に近いキリスト教の宗派は、韓国にいくらでも存在するのである。 経済活動を実践しつつ、宗教活動も行う組織としては、世界基督教統一神霊協会がよく知られている。いわゆる「統一教会」のことだ。この組織は、世界平和統一家庭連合に名称が変更されている。 日本の統一教会と言えば、勝共連合との結びつきもあり、政治的な宗教団体のイメージが強い。だからこそ、日本共産党やそのシンパと対立してきたわけだ。 しかし、韓国では、むしろ財閥グループとしての性格が強い。経済活動は、宗教活動を支えるための資金集めの範囲には収まらず、むしろそちらの活動の方が中心であるようにも見える。少なくとも、日本の統一教会と韓国の統一教会は、かなり性格が違う組織なのだ。2017年11月、旅客船セウォル号の船体の前で、記者会見する行方不明者の家族ら(聯合=共同) 韓国のキリスト教は、「富者は神の祝福を受けている」と主張することによって、資本主義のイデオロギーを支持する役割を果たしたともいわれる。宗教には、信仰によって人々を結び付ける働きがあり、韓国の財閥や経済グループの中には、その点で宗教を利用してきた勢力もあったことになる。 韓国では、キリスト教が庶民層をも引きつける生きた宗教であるがゆえに、経済や政治と結びついていきやすい。弾劾された朴槿恵元大統領も、キリスト教の影響も受けた新宗教の教祖とその娘と深い結びつきを持ったことが疑惑の一つの焦点になった。 以上のように、韓国社会を見ていく上で、宗教とのかかわりということは、現在でも極めて重要な側面なのである。

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    韓国大統領も逆らえない「天主教司祭団」知られざる実力

    領が失脚することになった最大の原因は、このような「怪しい一家」との関係が取り沙汰され、操られていたと韓国国民が信じたからだ。朴神父と安議員のやりとりがあったその日から約3年後の2016年12月、朴槿恵大統領(当時)は国会で弾劾され、翌年3月に罷免される。安議員によれば、朴神父は朴槿恵降ろしに決定的な役割を果たしたという。実刑判決を受け、ソウル中央地裁を出る崔順実被告(中央)=2018年2月 では、朴神父とは何者なのか。1996年から北朝鮮助け運動を始め、2000年1月に平壌に足を踏み入れて以来、今まで十数回も北朝鮮を往来している。03年にNGO(非政府組織)団体「平和3000」を立ち上げ、自ら運営委員長に就任し北朝鮮を物心両面で支援してきた人物だ。 「平和3000」とは、1人が1日100ウォンを節約し、月3000ウォンずつ献金して北朝鮮を助けよという活動を意味している。朴神父は集めたお金を北朝鮮のスポーツ施設の再建事業に使ったり、北朝鮮のスポーツ選手にユニフォームを送ったりし、金正恩朝鮮労働党委員長肝いりの政策として推し進めた芝生づくり事業を支援した。 朴神父は「平和運動家」として北朝鮮支援活動を行う一方、韓国国内では「天主教(カトリック)正義具現全国司祭団(以下「司祭団」)」統一委員会委員長を務める。朴神父が統一委員長を務める司祭団は、1974年9月に結成した組織。当初から政治色が強い宗教系社会運動団体としてスタートした。 創立集会ではロウソクを手に持つ神父らが、朴正熙(パク・チョンヒ)政権(1963~79年)の独裁政治を糾弾する「時局宣言」を発表して注目浴びたが、これが韓国現代史上初めてのロウソクデモだったといわれる。朴槿恵前大統領を弾劾に追い込んだ2016年暮れのロウソクデモの伝統をつくったのは「司祭団」だったのだ。北朝鮮擁護の司祭団 そもそも、1987年6月、全斗煥(チョン・ドファン)軍事政権(1980~88年)に対抗して韓国全国で広がりを見せた民主化運動の「6月抗争」の起爆剤となったのは、司祭団がソウル大学の学生の拷問致死事件を暴露したからだとされる。しかし、「朝鮮日報」(2013年11月26日付)によると、「1986年以降、親北(朝鮮)・左派的な傾向を見せるようになった」という。 朝鮮日報はその主な事例として、1989年8月には司祭団所属の神父が秘密裏に平壌入りして「世界青年学生祝典」に参加し、北朝鮮を擁護する姿勢を鮮明にしたことや、2002年11月、米軍装甲車に女子中学生がひかれ死亡する事故が起きた際、「反米時局祈祷会」を開いたことなどを挙げる。 廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003~08年)時代の03年11月、司祭団は北朝鮮の犯行としてすでに結論が出ている「大韓航空機爆破事件(北朝鮮工作機関所属の金賢姫が実行犯という捜査記録がある)」は、当時の韓国政府がデッチあげたものだと主張して再調査を要求した。 また、アメリカ産牛肉輸入再交渉要求して08年4月から数カ月続いたロウソクデモ、済州島の海軍基地建設反対運動など反米・反政府運動、北朝鮮の立場を擁護する活動を展開してきた宗教団体としても名を馳せている。 韓国のカトリック教司祭は4578人いるとされるが、そのうち司祭団に所属する神父は500人程度と推定される。これら司祭たちは信者を結集して韓国の敏感な社会問題につけこみ、時の政局のど真ん中に飛び込むことで政党(とくに左派系の政党)と深い関係をつくる。 朴槿恵政権誕生後、文在寅氏が所属する民主党(当時)主導の下で発足した「国家機関選挙介入真相究明民主憲政秩序回復のための各界連席会議」にも司祭団代表神父が名を連ねていた。 文在寅氏は大統領になる前から司祭団とある種の関係を持っていた。13年9月23日夜、司祭団はソウル市庁広場で「国家情報院解体のための時局祈祷会」を主催するが、この集会に「国情院解体、民主主義回復」の看板を手に持つ文在寅氏(当時議員)の姿が写真に撮られインターネットで話題を呼んだ。朴槿恵政権打倒という政治目標を共有していたからだとみられる。大統領選の街頭演説に臨む「共に民主党」の文在寅氏(当時)=2017年5月、韓国・ソウル(川口良介撮影) それから2カ月後の11月22日、司祭団は全州教区において「朴槿恵大統領退陣を促すミサ」を行うが、その場で司祭の一部は、北朝鮮が韓国領の延坪島(ヨンピョンド)を砲撃したことを擁護する発言をしたとして物議を醸した。 「NL(南北の海の境界線)において韓米が軍事訓練を継続すれば北韓(北朝鮮)としてはどうすべきだろうか? 撃つしかしかないでしょう。それが延坪島砲撃です」と、北朝鮮の砲撃は米韓軍事訓練のせいであり、当たり前かのような発言をした。政党と連携する宗教団体 北朝鮮が延坪島に突然砲撃を浴びせ、犠牲者を出したのは2010年11月23日。米韓軍がNLの南側海域で実施する射撃訓練はいつもある通常の軍事訓練であったが、それを口実に北朝鮮は砲撃し、軍人2人に加え、民間人も死亡した。事件から3周年を迎える日に行われたミサでの発言だった。 韓国国防部は「これは明白な侵略行為であり反人倫的な行為」と断じたが、司祭団のミサでは北朝鮮を擁護したのである。 このような司祭団と同じく、事あるたびに集会を開き、デモを主導、政府に要求を突き付けるための「時局宣言」を行うなど、存在感を誇示する方法で政治勢力化を図り、政党と連携する宗教団体は韓国には多い。 国民の大半が特定宗教を持つ韓国では、国政選挙と大統領選挙に宗教団体の支持は勝負を分ける場合もある。韓国統計庁が実施した調査によれば、韓国人の宗教分布は、おおよそ仏教が22%、プロテスタントが18%、カトリックが11%(年度によって異なる)となっている。 朴槿恵氏が大統領に当選した2012年の選挙を前に、韓国紙「ヘラルド経済」が19歳以上の男女を対象に行った質問調査では、「仏教は朴槿恵候補、基督教(改新教、プロテスタント)は朴槿恵支持者がやや多く、カトリック、無宗教は野党候補(当時は民主党の文在寅氏)を支持する傾向がみられた」としている。ソウルで行われた、朴槿恵大統領退陣を求めるデモ=2017年12月 韓国の専門家は「このような性向から仏教は保守派、プロテスタントは中途・保守、カトリックおよび無宗教層は進歩・左派に分類することができる」と分析する。 ちなみに、文在寅大統領はカトリック信者だ。小学校3年の時から聖堂に通い、洗礼を受けたという。2017年5月に実施された大統領選挙ではカトリック信者の46・6%、プロテスタントの39・3%が文在寅氏に投票したとされる。

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    韓国大統領はなぜ霊媒師や風水師の言いなりになるのか

     現職大統領による国家機密漏えい事件で大きく揺らぐ韓国社会。朴槿恵大統領はなぜ、怪しげな宗教者の言いなりとなったのか。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が、韓国社会に浸透する「信仰心」の罠に斬り込む。* * *「朴槿恵─崔順実スキャンダル」は、ネットを中心に“ムーダン疑惑”として嘲笑の対象になっている。ムーダンとは、韓国の伝統的な霊媒・占い師のこと。「朴と崔」の関係は、崔の父・崔太敏が“牧師”と称し、霊媒師紛いの言辞で朴槿恵の心を掴み、その後、一家をあげて彼女に食い込んだことから始まった。 ちなみに韓国でのムーダン文化の一端を紹介すると、筆者の知人の祖母がムーダンの病気治療や人生相談に凝っていて、ある時、ムーダンの言いなりになって300万ウォン(約30万円)を献金したという。「日ごろ子供たちからもらっている小遣いを貯めていて、それをみんなはたいてしまった。ったくもう……」と知人は大いに嘆いていた。 先年、不正経営で逮捕された某大財閥の首脳が、企業投資の展望を専属のムーダンに頼っていたとして話題になっている。それを笑ったところ、別の知人は「日本でも会社や家庭に鳥居や神棚があって拝んでいるそうじゃないですか」と逆襲(?)してきたが。 ところで、「魏志倭人伝」に登場する有名な邪馬台国の女王・卑弥呼は「鬼道に事え、能く衆を惑わす」とある。「鬼道」とは霊媒・占いのこと。大昔、原始集団において王の支配権を支えたのは、そうした呪術的超能力だった。卑弥呼も朝鮮半島系だったか?2018年8月、車いすに乗ってソウル市内の病院を出る韓国前大統領の朴槿恵被告(聯合=共同) ただ、現在の韓国は正統派のキリスト教が社会的、政治的に大きな影響力をもっている。ムーダンなどの“伝統宗教”は邪教的として表向きは非難、排斥されがちで、現実政治に入り込む余地はない。 現実政治への影響では、日本流に言えば陰陽道である「風水」信仰の方だ。山や川などの自然環境から人や国家の運勢を占うものだが、大統領選をはじめ韓国の政治や社会を左右してきた地域対立には、この風水説があると言われてきた。 地域対立とは簡単に言うと、韓国南西部の全羅道に対する差別意識のことである。全羅道は金大中政権(1998-2003年)誕生で1000年ぶりに権力を握りはしたが、今なお野党勢力の牙城であり、社会的に他地域における差別意識は消えていない。 その差別の背景には高麗朝(10-14世紀)の始祖・王建が残した遺言があるというのだ。「全羅道は人に背く地勢だから権力に近付けてはならない」という、まさに風水説である。今も韓国社会に残る全羅道差別意識の根源は「信用できない、いつかは裏切る」だ。外国人にはなかなか実感できないけれど。関連記事■ 稀勢の里 名医、整体師、霊媒師を紹介されるも効果は微妙■ 韓国大統領選 朴氏勝利でも親日姿勢取りにくいと韓国事情通■ 韓国陸軍元大佐「反日で中国に擦り寄る朴槿恵大統領は愚か」■ 韓国民「朴大統領はMERS対応失敗し妹の管理もできず」と批判■ 「男版・福島みずほ」が韓国大統領になり日本に凄まじい厄災

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    ケント・ギルバート/百田尚樹対談 「儒教に呪われた韓国

     なぜ韓国は、ここまで反日的になるのか。そこには「儒教の呪い」があるという。著書『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』が話題のケント・ギルバート氏と作家の百田尚樹氏が、韓国の本質を語り合った。* * *百田:韓国というのは、面倒な国ですね。いつでも日本に攻撃的じゃないと国としてまとまれない。日本人はお人好しだから、韓国で新政権ができたら「とりあえず仲良くせなあかん」という雰囲気になるでしょうけど、不用意に握手しないほうがいいと思います。何をやってくるかわからないと、警戒感を持つべきでしょう。ケント:そうですね。中国から儒教や中華思想を全面的に受け入れた韓国から見れば、日本は朝鮮半島よりも世界の中心である中国から遠い。だから日本は「野蛮な国」で、自分たちより「下」でなければいけない。しかも恨の思想があるから、常に日本を軽蔑していないと気が済まないんです。「日本が韓国より発展しているなんておかしい」「韓国が発展できないのは日本が占領したからだ」という根拠のない嫉妬や恨みはずっと続くのです。百田:慰安婦問題にしても、日本人は謝れば水に流してくれると思っている人も多いけれど、どんなに謝罪しようが援助しようが、彼らが日本を「許す」ことは永久にありえません。ケント:儒教では一度謝ったら“罪人”扱いになり、永久に隷属することになる。だから、どんな手段を使ってでも相手に謝らせようとする。それにしても、韓国はよく中国に吸収されませんでしたね。作家の百田直樹(左)と弁護士のケント・ギルバート氏=2017年9月撮影百田:中国からすれば、支配してもいいことがないから、“属国”にしておけばいいということだったのでしょう。かつて韓国では中国の使節が来ると三跪九叩頭の礼で出迎えましたが、その時の捧げ物の中には「女性」がありました。目立った特産品もないので、女性を献上していた。ケント:韓国は、大国に媚びて生き残る事大主義だから、属国であることに自分でも納得しています。清に従っていて、ロシアが強くなってきてロシアにつこうとしたら、日露戦争で日本が勝ったので日本にすり寄って、戦後はアメリカに従った。最近また中国が強くなってきたから中国に従おうとしたら、アメリカがそれを認めないから、韓国は右往左往している。破壊された儒教百田:奇妙なのは、属国なのにどこかで「自分たちは中国人だ」と思っている節があることです。李朝の特権的な支配階級である“両班”は漢文、つまり中国の言語を使っていましたが、一般庶民は字が読めない。それで4代国王の世宗が15世紀にハングルを作ろうとしました。すると両班は「中華の土地では方言を文字にしてはいけない」と猛反対した。つまり自分たちは中華の一員と思っているのです。モンゴル、チベット、西夏、日本などが独自の文字を持っているのは、野蛮な国で中国語が理解できないからだという理屈でした。 困った世宗は、ハングルは「訓民正音」、つまり“正しい音”ということで、単なる発音記号であるということで、なんとか認めさせた。それでも一般人に対する教育機関はなかったから、日本が韓国を併合した時は、一般の民衆の識字率はとても低かった。ケント:そう。日本が、韓国でハングルを教育して広めましたからね。日本が併合したことで、識字率は高まり、インフラも整った。併合すべきだったかどうかはわかりませんが、それが日本のやり方で、欧米諸国の植民地政策とは根本的に違います。百田:併合に関しては、韓国側が望んだものです。国際社会も認めました。ケント:そうですね。だけど悔しくてその事実は絶対に認めたくないから、「日本に併合されたせいで発展が遅れた」と被害者意識を増大させてしまっている。 儒教というと、日本人は「仁・義・礼・智・信」という言葉に代表されるように、いいもののように受け取ります。でも中国や韓国では儒教のそうした優れた部分は破壊されてしまった上に、“上下関係をきちんとする”という考え方がねじれて「日本は格下で野蛮」という意識だけが残った。その結果、自己中心的で傲岸不遜、嘘をつくのも当たり前で、道徳心も倫理観も失ってしまった。これを僕は「儒教の呪い」と呼んでいます。●ケント・ギルバート/1952年、アイダホ州生まれ。1971年、初来日。カリフォルニア州弁護士。1983年、テレビ番組「世界まるごとHOWマッチ」にレギュラー出演し、人気に。近著に『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』『日本人は「国際感覚」なんてゴミ箱へ捨てろ! 』がある。●ひゃくた・なおき/1956年、大阪市生まれ。同志社大学中退。放送作家として「探偵!ナイトスクープ」などの番組構成を手がける。2006年、『永遠の0』で作家デビュー。近著に『カエルの楽園』『幻庵』などがある。関連記事■ 百田尚樹×ケント・ギルバート 半島有事や日本の呑気さ語る■ ケント・ギルバート氏「歴史観が変わった契機は朝日誤報」■ ケント・ギルバート氏 文在寅氏の質素な引っ越しに出くわす■ 著書回収報じられたK・ギルバート氏が朝日新聞に反論■ K・ギルバート氏「参政権付与は忠誠誓った帰化人に限定せよ」

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    韓国アイドル「BTS」が映すヘル朝鮮の現実

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 「BTS(防弾少年団)」という世界的に人気な韓国の男性アイドルグループがいる。彼らは2013年にデビューしてから、韓国国内の人気だけでなく、最近では米国のヒットチャートでも1位を獲得している。 彼らの作品は本心(現実)と偽り(虚構)とのギリギリの緊張関係を描くものが多い。その作風は最近ではますます陰影を深めて、複雑さを増している。例えば、全米1位を獲得した最新アルバム『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』の代表曲「FAKE LOVE」には、「かなうことのない夢の中で咲くことのない花を育てた」というフレーズが繰り返される。 この歌は、偽りの愛と本当の愛の葛藤を歌ったものだろう。だが、BTSの歌にはそれだけではない意味合いを見いだすこともできる。彼らがデビューした2013年、この年は韓国経済にとって重要な意味を持っているからだ。 簡単にいえば、2013年は韓国の若者たちの雇用がさらに「地獄」へ突入した年にあたる。そしてその「地獄」は、今も勢いを失うことなく続いている。 若者たちの夢の多くは咲くこともなく、現実の雇用状況の前で踏みにじられているのである。BTSの歌の多くは、この若者たちが直面する「地獄」とそこからの脱出への願いを象徴しているのではないだろうか。 韓国の失業率は、全体こそ3%台で推移している。しかし、15歳から29歳までの若年失業率に絞ると、2017年には9・9%にのぼる。これは韓国の研究者たちが指摘するように、「体感失業率」でいえば22%台に到達している。2018年5月、韓国・ソウルで最新アルバム発売の記者会見に出席した「BTS(防弾少年団)」のメンバー(聯合=共同) しかも、この状況が既に数年も継続しているのである。まさに若者たちの雇用は「ヘル朝鮮」、まさに「地獄の韓国」といっていい。日本でいえば、過去のリーマンショック時点での雇用悪化を上回る。また量的な面での悪化にはとどまっていないのである。 韓国ではリーマンショック以降から、非正規雇用労働者の比率が激増している。だが、2013年からは、特に男性の若年労働者で急上昇を見せている。韓国の非正規雇用は日本と同様に、企業の業績悪化を防ぐための衝撃緩衝に利用されているのである。世界でも突出した韓国の自殺者数 待遇は劣悪であり、不安定の度合いも深刻だ。非正規雇用の若者たちの報酬が、最低賃金に達していない割合は、なんと30%を優に越している。日本でも深刻な不況のときは、ブラックな処遇をする企業の話題に事欠かなかったが、韓国ではさらにその境遇が悪い。 日本では「失われた20年」の間、多くの人命が経済無策の前に損なわれてしまった。実際、今も日本の自殺者数は多い。 だが、経済協力開発機構(OECD)によれば、韓国での自殺者数は人口比でみると最悪の数値で、世界でも突出している。しかも、若者の自殺者が非常に多く、自殺未遂者を含めると年間数万人から最大10数万人の若者たちが自死を選んだという推計も成り立つのである。 日本でも韓国でも、自殺と経済の悪化は強い因果関係にある。韓国で特に指摘されるのは、学校や企業などの「競争の場」から排除・疎外されることによる精神的な衝撃である。韓国社会で自分の価値や「自分がなんであるか」を失いがちになる傾向が、雇用状況の悪化とともに加速してしまうのである。 最近の研究では、自殺と緊縮的な経済政策との関連が指摘されている。実は、韓国でも2013年以降、極めて緊縮的なスタンスが採用されていることを見逃してはいけない。そのカギは金融政策のスタンスにある。 韓国の中央銀行である韓国銀行は、インフレ目標を採用しているが、2013年以降はそれ以前にくらべてインフレ抑制的な目標に推移している。2012年まではインフレ目標の中央値は3%であり、上限は4%(下限は2%)だった。 ところが、現状の目標では2%である。それに合わせるように、韓国では急激に低インフレ経済に移行し、場合によればデフレ転落の可能性も懸念されるようになった。2018年4月、屋外に設置された大型スクリーンで南北首脳会談を見ながら統一旗を振る若者たち=韓国・坡州(共同) この低インフレ、実質的なデフレ経済は、インフレ抑制の長所をはるかに超える負担を、若年層の雇用に押し付けたとみることが可能だ。つまり、金融政策がデフレ型に移行したことによる「人災」という側面が、韓国の若年雇用の悪化に求めることができる。 ただ、韓国の労働市場には固有の問題がある。大企業と中小企業の「二重構造」だ。多くの若者が大企業への就職を求めて殺到するが、採用される人はわずかであり、不採用の多くは非正規雇用のプールに陥ってしまう。求職自体を諦めて事実上の長期失業の状態に陥る人も少なくない。就職難は政策転換で変わる 韓国国内では、財閥系中心の硬直した雇用市場が招いた構造的な要因という指摘も多い。また大企業の強力な労働組合が、既存の労働者の立場を確保するために、新しい外部労働者である若者たちの新規参入を拒んでいる面も強い。 だが、韓国には、日本の最近の経済政策による効果と若年雇用との関係を想起してほしいものだ。日本では、「アベノミクス」の核心政策である金融緩和が積極的に行われた結果、新卒採用が大幅に改善した。いわゆる「人出不足」の状況が現出したのである。 大企業だけでなく、中小企業も今までの構造的に思えた厳しい採用方針を転換して、新卒採用に努力を重ねている。それは待遇の改善にもつながる動きが本格化している。非正規雇用も減少に転じて、正規雇用が増加する傾向が定着しつつある。 また、最低賃金が上昇し、反映される形でバイトやパートの時給も顕著に上昇している。これらの日本の雇用状況は、日本人の物忘れの激しさもあり指摘されることは少ないが、つい数年前までは日本の「構造問題」が邪魔してなかなか実現できない、と指摘されていたものばかりである。 つまり、韓国でもインフレ目標の目標値を引き上げるなど積極的な金融緩和政策を採用すれば、若者たちの状況も大きく変わる可能性があるのである。 しかし、文在寅(ムン・ジェイン)政権による若者の雇用対策は、どうも明後日の方向を向いているようだ。最近では、国内の就職状況を自ら解決することではなく、日本のような若者の雇用状況がいい国への就職を推進する政策を採ろうとしているのである。 労働問題を担当する文大統領直属の雇用委員会は、「海外地域専門家養成方策」という計画を発表し、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国へ1万8千人の就業を促進することを打ち出した。もちろん韓国に限らず、日本でも有能な人材が国際的な労働市場に参画することは、個人の夢の実現にもつながる。2018年1月、ソウル市内で韓国の文在寅大統領の年頭記者会見のテレビ映像を見る市民(AP=共同) だが、そもそも韓国の日本など海外への就職推進政策は、自らが生み出した深刻な若年雇用の悪化という「負の遺産」を、海外に責任転嫁する政策だといっていいだろう。はっきり言えば、文政権の「責任逃れ」でしかない。文政権はまず雇用改善の前提条件ともいえる金融政策の転換を実施する必要がある。 BTSには『血、汗、涙』という代表曲がある。韓国の若者たちの血、汗、涙がどのような原因で生まれるのか、韓国政府は他国に責任を押し付けることなく、自らその解消に真摯(しんし)に取り組むべきである。

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    韓国現地リポート】「北朝鮮は変わらない」南北融和、脱北者のホンネ

     10年半ぶりとなった「南北首脳会談」。開催を前に韓国を訪れ、脱北者で漫画 家のチェ・ソングク氏(38)にインタビューした。南北融和ムードが広がる 今、脱北者が語るホンネとは。■動画のテーマはこちら

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    世界を欺く「政治ショー」南北首脳会談

    韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長が、軍事境界線にある板門店で会談した。最大の焦点は「朝鮮半島の非核化」だが、具体的な方向性を打ち出せるかは不透明だ。南北融和を演出する「政治ショー」に終わる可能性もある。10年半ぶり3回目の南北会談、世界の思惑を読む。

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    南北会談に成果なし、世界を欺く「政治ショー」の真意を読む

    BM)発射実験を中止し、平壌北部にある豊渓里(プンゲリ)核実験場を廃棄すると発表した。 これに対し、韓国政府は「決定を歓迎する。全世界が念願する韓半島非核のための意味のある進展だ」と評価した。さらに、青瓦台関係者は「北韓がこれほど早く、しかも果敢な措置を取るとは思わなかった」と、北朝鮮の決定に応えるかたちで、2日後の23日、南北境界線沿いに設置していた対北朝鮮放送を電撃的に中止した。  これらは南北首脳会談を意識し、「朝鮮半島平和体制構築」に向けて双方が行動を示したともいえるが、素直に喜べるものではない。なぜなら、南北首脳会談は北朝鮮の非核化を促すためではなく、世界を欺(あざむ)くための政治ショーで終わる可能性が高いからだ。  まず、何のための首脳会談かを考えれば、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の目的は二つある。アメリカの圧力をやわらげ、軍事的な攻撃を回避することと、いち早く制裁を緩和させることである。 韓国との融和ムードを演出し、平和的なイベントを続けていけば、アメリカの圧力をやわらげ、軍事衝突へ発展することを阻止できる。また、韓国をテコに国際制裁の包囲網を突破することも可能だ。韓国との経済交流、人道的支援の門戸を開くことにもつながるだろう。 そして、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、保守政権の対北朝鮮政策を転換した結果、緊張状態は解消され、朝鮮半島に平和をもたらした「成果」をアピールできる。南北首脳会談というイベントをなるべく派手に、大々的に見せるのは双方にとってプラスなのだ。 ただ、南北首脳会談が本当に実のあるものになるかは疑問だ。そもそも、会談は何かを解決するとか、結論を出すものではないからだ。南北とも非核化については突っ込んだ話をするつもりもなく、結論も出せないだろう。 具体的に「北朝鮮の非核化」について話すのではなく、「朝鮮半島の非核化」について意見交換するに過ぎない。「平和体制構築」に向けて努力するという曖昧(あいまい)な「原則」には合意しても、いつまでにどのような方法で非核化を実現するかについては将来の課題にし、アメリカに委ねることになるだろう。 また、北朝鮮は核開発をやめ、経済重視に転換したのではないかと思われているが、実際はそうではない。 北朝鮮の労働党中央委員会で採択した「ICBM発射実験の中止、北部の核実験場の廃棄および核実験の中止」は、対内的には併進路線(核武装と経済建設を平行して進める)は勝利を収め、核保有国になったので、これから経済に注力するという宣言にほかならない。韓国芸術団の公演を観覧に訪れた金正恩委員長(左)と韓国の都鍾煥文化体育観光相 ただ、対外的には、もはや使いものにならない実験場を「廃棄」する姿勢をみせ、「非核化」に向けて行動したかのような印象を与えるだけなのだ。 これまで6回の核実験を行った結果、プンゲリ核実験場の山は崩落が発生し、すでに9回も余震が起きている。昨年はこの場所で作業していた200人が死亡する事故もあった。そもそも閉鎖せざるを得ない状況にあることは言うまでもない。すべては「米朝会談」次第 また、ICBM発射実験中止は、アメリカにとってはグッドニュースで、トランプ大統領は評価しているようだが、北朝鮮は実験を中止すると言っただけで「開発」を中止するとも言ってないし、廃棄するとも言っていない。あくまで凍結なのだ。凍結とは、あるものをいったん倉庫にしまっておくという意味なので、いつでも持ちだすことは可能だ。 北朝鮮の真意を考えれば、これまでに開発した核を保有したまま、今後核を作らないことを条件に(裏では密かに核の完成を目指しながら)、アメリカと折り合いをつけ、経済活性化に邁進するつもりだろう。このまま2年ぐらい持ちこたえれば、北朝鮮の核能力は完全なものになるからだ。そうすればアメリカも認めざるを得ないと考えているのだろう。 そして焦点になるのは、こうした北朝鮮の思惑をアメリカが容認するかどうかだ。アメリカは絶対妥協しないだろう。トランプ大統領は、北朝鮮がアメリカに届くICBM発射実験と核実験をやめれば、妥協するのではないかという観測もあるが、それはないと考えていい。 トランプ大統領の発言が二転三転しているとはいえ、北朝鮮の非核化は「完全かつ検証可能で不可逆」な形でないとダメだという点では一度もブレていない。それには理由がある。 北朝鮮が核を持てば、イランがさらに核保有の意思を強めるからだ。そしてイランが持てばサウジラビアやアラブ首長国連邦も持つだろう。そうなれば、日本と韓国も安全保障政策を見直さなければならなくなり、「核の世界」が現実になりかねない。 これを阻止するためには、やはり北朝鮮の核保有を完全に潰さなければならない。北朝鮮核問題を曖昧にすれば、トランプ大統領の指導力に疑問符が付き、同盟国の信用失墜は免れないだろう。トランプ大統領と金正恩委員長との首脳会談が実現する方向に動いたことを伝えた街頭テレビ=2018年3月(寺河内美奈撮影) 今回の南北首脳会談が過去の首脳会談と異なるのは、北朝鮮が立場上優位に立っていることだ。核を事実上保有する金正恩委員長とそれに対応できるカードを持たない文在寅大統領という構図は変わらない。 そもそも、首脳会談で韓国政府が実現しようとする目標は「朝鮮半島の平和体制」構築という曖昧な原則合意を取り付けることでしかない。南北が終戦を宣言し、「平和協定」を結ぶ平和体制構築のために、南北間で交流を拡大することに合意はするだろう。 これを大きな成果に見せかけることは可能だが、平和体制構築のための前提条件である「終戦宣言」や平和協定の締結も、結局はアメリカの同意がなければ無意味だ。ゆえに、今回の首脳会談は一過性の政治ショーで終わる可能性は高く、真に評価するためには、米朝首脳会談の結果を待つしかないのだ。

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    「38度線が対馬まで下りる」南北会談後に起き得る地政学リスク

    言だった。そして、文在寅氏の対北政策の核心に何があるかを示すという意味でも重大な発言だった。しかし、韓国と日本のマスコミはこの発言を取り上げなかった。  多くの日本人読者のために、まず、この発言の背景を説明する必要があるだろう。2000年6月15日に平壌で持たれた金正日、金大中の南北首脳会談で発表された南北共同宣言には統一の方法について以下のように記載された。1.南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした。2.南と北は国の統一のため、南の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。 金大中大統領はソウルに戻った直後、この第2項の「南の連合制案」について、自身が1995年から唱えている3段階統一案(第1段階「国家連合」、第2段階「連邦制」、第3段階「統一」)の第1段階だと説明した。 しかし、それに対して批判が出るや、金大中大統領は前言を翻して、第2項は盧泰愚(ノ・テウ)政権が1989年9月に公式に決定した「韓民族共同体統一案」(第1段階「南北協力」(交流・協力と平和定着段階)、第2段階「南北連合」(統一のための準備作業を行う段階)、第3段階「統一」)の第2段階だと説明した。 韓国の現行憲法では「第3条大韓民国の領土は韓半島とその付随島嶼(とうしょ)とする。第4条大韓民国は統一を指向し、自由民主的な基本秩序に即した平和的統一政策を樹立してこれを推進する」とされ、全半島を自由民主主義の下で統一することを規定している。南北首脳会談を終えた金正日総書記(左)と金大中大統領は平壌国際空港で向かい合い、別れのあいさつを交わした=2000年6月(韓国取材団=共同) 北朝鮮は国と認められておらず、国家保安法により「反国家団体」とされ、そこに加担すると最高死刑とされている。ちなみに、国家保安法では朝鮮総連も反国家団体とされている。そのため、金大中大統領も南北共同宣言では「国家連合」という用語を使わず「連合制」と記したのだ。 ところが、文在寅新大統領は、前述の通り、選挙戦での討論で「低い段階の連邦制とわれわれが主張する国家連合はほとんど違わない」と語った。金大中氏さえ使えなかった「国家連合」という用語を使ったという点で憲法違反の素地(そじ)がある発言だった。なお、盧武鉉大統領も大統領在職時、「国家連合」という用語を使っているから、文在寅氏の発言はそれに倣ったものと言えるのかもしれない。金正恩はカダフィになれるか 文在寅発言のもう一つの問題は「低い段階の統一案」を韓国の統一案と「ほとんど違わない」として肯定的に評価したことだ。  ここで、北朝鮮の統一案を概観しておく。北朝鮮は1960年に初めて連邦制統一案を提唱し、1980年には「高麗連邦共和国統一案」として国号まで提唱した。 韓国の盧泰愚政権が前述の通り1989年に連邦制を否定する「韓民族共同体統一案」を提唱すると、韓国に揺さぶりをかける意図を持って1992年に連邦制を二つのプロセスに分け、まず「低い段階の連邦制」を実現しようと提唱した。そこでは「1民族、1国家、2制度、2政府体制で、二つの政府は政治、軍事、外交権をはじめとする言現在の機能と権限をそのまま維持し、その上に民族統一機構を置く」とした。 また、高麗連邦共和国統一案では先決条件として駐韓米軍撤収、国家保安法廃止、共産主義活動合法化などが求められていたが、低い段階の連邦制ではそれはない。 しかし、いくら低い段階と言っても一つの国家になれば、当然、北朝鮮を反国家団体と定める国家保安法は効力を失うし、北朝鮮を仮想敵とする韓米同盟は変質し、在韓米軍は撤収するはずだ。亡命した黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記によると、金日成(キム・イルソン)は90年代半ば、低い段階の連邦制の狙いについて「民族統一機構で統一問題を議論するとき、南北同数で会議をすれば、北代表は100%われわれの側だが、南代表のうち半分は左派が占めるから、結局3対1でわれわれが主導権を握れる」と語ったという。 文在寅大統領は国会に提出した憲法全面改正大統領案で、第1条3項に「大韓民国は地方分権国家を志向する」という規定を新設したが、これは連邦制による布石だと多くの保守派リーダーが批判している。 今回の文在寅大統領と金正恩(キム・ジョンウン)の会談では、「低い段階の連邦制」と「国家連合」の方向で南北を統一しようと合意する可能性が高い。それをすれば韓国の自由民主主義勢力は太極旗を持って街頭に出て体を張った抵抗をするだろう。既に4月20日、元首相や元国会議長らが「大韓民国守護非常国民会議」を立ち上げ、連邦制統一に反対すると宣言した。左派もろうそくデモで対抗するはずだ。流血の事態さえ予想されるし、国軍がその状況をただ見てばかりいるのか、という問いも出てくる。  一方、トランプ大統領は韓国が独走すれば、北朝鮮と取引をした韓国企業への制裁を発動することになろう。南北会談はあくまでも前座であり、やはり米朝会談がすべてを決める。勝負の分かれ目は、金正恩がリビア型の核放棄を飲むかどうかにかかっている。ランプ米大統領(左)とボルトン大統領補佐官 =2018年4月9日、ワシントン(ロイター) トランプ大統領は米朝首脳会談が決まってから、ボルトン氏を大統領補佐官に入れた。したがって中途半端な解決はしないのではないか。そうした可能性は下がったとみている。北朝鮮がリビア型の核廃棄ができるかどうか、それは金正恩の恐怖心がどの程度なのかにかかっている。私は米国から殺されてしまうという恐怖心がかなり強いと見ている。 北朝鮮が反撃して、道連れとなって死ぬ者が出てきても、その場合は金正恩自身も死んでしまう。リビアのカダフィ大佐は米国の攻撃直前に妥協して交渉を妥結させた。一方、イラクのフセイン大統領は実際には大量破壊兵器を保持していなかったのに、米国に妥協しなかったので殺されてしまった。さて、金正恩はどちらを選択するのか。どこまで自分の身を守ろうとするのか。日本が直面する日露戦争と同じ危機 トランプ大統領は核ミサイル問題だけでなく、拉致問題も交渉のディールに使おうとしている。単に北朝鮮側が調査すると言うだけではダメで、「(拉致被害者を)連れ戻すように」と明言している。 交渉が順調に進めば、米朝間では国交正常化へと話が進んでいく。平和条約を結ぶことになろう。日朝間でも拉致被害者が帰ってくれば、国交正常化の話になっていこう。 米国は非核化のところまでで、それ以上はやらない。そうなると、韓国と北朝鮮が緩い連邦制を取り入れ、「赤い朝鮮半島」になってしまうかもしれない。今は38度線で対峙(たいじ)しているが、それが対馬まで下りてきてしまう。中国の影響力が強まらざるを得ない。もっとも韓国内部にも、自由統一を指向する保守勢力があるので、そうした状況になるのを許さないかもしれないが、予断を許さない。 また、米朝首脳会談が不調に終われば(そもそも開催されない可能性もある)トランプ政権は軍事攻撃を検討するだろう。ただし、攻撃をして核ミサイルを取り上げた後、すぐ軍を引く限定攻撃だ。北朝鮮地域の平定と軍政を米軍が担う意思はない。文在寅政権の韓国がそれを担うならば、中国は半島全体が自由化することに強く反対して軍を出し、北朝鮮地域が分割占領されるかもしれない。   または、文在寅政権が米国との共同作戦参加を拒否し、米韓同盟が破綻して、米軍は北朝鮮地域だけでなく韓国からも撤収し、北朝鮮地域の平定と軍政は中国軍が担うかもしれない。文在寅政権は中国の傀儡(かいらい)となった次期北朝鮮政権と連邦制で統一するか、あるいは韓国単独で中国と軍事同盟を結ぶこともあり得る。韓国内の反共自由民主主義勢力が韓米同盟を守るため、文在寅政権を倒す可能性も残っている。 さまざまなシナリオを考えても、アジアの覇権を狙う中国が半島全体を事実上支配し、38度線が対馬まで下りてくることになる。これが、金正恩の核危機の後ろにあるわが国の「地政学的危機」だ。 もはや米国は同盟国を守るため、あるいは自由という理念を世界に広げるため、陸上部隊を投入しない。これからの米軍は、空軍と海軍だけを使った、米国軍人の命を犠牲にしない「安全な戦争」しかしない。 中国の習近平政権は米国に並ぶ軍事大国を目指し、東アジアでの覇権を握ろうとしている。彼らは「力の空白」があればすぐに軍を出す。北京の人民大会堂で歓迎式典に向かう北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と中国の習近平国家主席=2018年3月29日(朝鮮中央通信撮影・共同) 日本は自分の国の軍隊で中国軍と対峙しなければ誰も代わりに戦ってはくれない。朝鮮半島でこれから起きることと同じことが、尖閣でも台湾でも、そして沖縄でさえ起きるかもしれない。 日本の独立が脅かされる日露戦争直前と同じ危機が、すぐ近くに来ている。大多数の国民がそれに気がついていないことが、実は重層危機の深層にある一番恐ろしい危機だ。

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    南北会談の次は日朝対話、金正恩が最後に使う「シンゾウカード」

    重村智計(東京通信大教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は27日、南北を分断する板門店の韓国側施設で初めて会談する。2人は「朝鮮半島の非核化」に合意することで、日米を煙に巻こうとしている。 何より、文大統領は「北の非核化」を求めそうにない。それどころか、中朝の求めに呼応し、経済協力と制裁措置の緩和を推し進めようとしている。さらに、南北不可侵協定、南北鉄道の開通など長年の懸案に合意し、米朝平和協定の締結も呼びかけるだろう。 そもそも、朝鮮半島緊張の原因は何か。どの識者も指摘していないが、北朝鮮が取り続けた二つの「政策」が最大の原因だ。第一に、北朝鮮は韓国を国家として認めていない。朝鮮半島における唯一合法政権は朝鮮民主主義人民共和国だけである、との立場を変えていない。だから、北朝鮮は「平和共存」政策に移行できないのである。 第二に、北朝鮮は韓国を統一する方針を「国是」としている。しかも、公式上は「平和的統一」をうたうが、巨大な工作機関を事実上維持しており、軍事的統一の可能性を変えていない。ところが奇妙なことに、韓国はこの二つの政策の放棄を北朝鮮に求めていないのである。 文大統領と金委員長の会談目的は、北朝鮮支援の推進と、韓国左派政権の長期政権化である。2人で制裁緩和を米国に認めさせる「芝居」を打とうとしている。このため、会談は「朝鮮半島の非核化」「南北平和協定」「南北鉄道の開通」「人道支援の拡大」「北の経済集中政策への支持」「制裁の緩和」「南北離散家族の交流」「朝鮮戦争平和協定の締結」-に合意し、朝鮮半島の緊張緩和を実現した、と世界にアピールする。 だが、疑問点もいくつか残されている。例えば、会談の焦点となる「朝鮮半島の非核化」は「北の非核化」を意味しない。米国による韓国への「核の傘」の放棄も含まれ、履行が不可能になるからである。 また北朝鮮は、2010年3月に起きた韓国哨戒艦「天安(チョナン)」撃沈事件の再調査を求めている。李明博(イ・ミョンバク)政権下で行われた調査では、撃沈の原因を「北の攻撃」と断定していた。これに対し、北朝鮮は事件を「米軍による誤射であり、でっち上げである」と主張し、関与を否定し続けてきた。韓国の左派勢力は北の主張を支持しており、彼らを基盤とする文大統領が再調査に合意する可能性がある。2010年5月、韓国の哨戒艦沈没事件を北朝鮮の犯行と主張する韓国と日米を非難するため、平壌の金日成広場で行われた集会(朝鮮中央通信=朝鮮通信) 韓国は、北朝鮮への独自制裁の理由として「天安」撃沈事件を挙げており、事件への謝罪か解決なしには制裁解除は難しいという事情がある。そこで、再調査を理由に制裁解除につなげる意図もある。北朝鮮「核実験中止」宣言の裏事情 さらに、北朝鮮はこれまで一貫して、在韓米軍の撤退を求めていた。会談でこの主張に触れないとなると、まるで「在韓米軍は駐留してもいい」と暗に認めるに等しい。在韓米軍が撤退すると、むしろ米軍による軍事攻撃が可能になってしまうと北朝鮮が心配しているという。 文在寅政権は、北朝鮮に強いシンパシーを抱く左派政権だ。このため、何としても北朝鮮を支援したいと考えている。一方で、文大統領は憲法を改正し、大統領任期を現在の1期5年から2期8年に延長しようとしている。このためにも南北会談の成功は欠かせない。 会談に先立って、金委員長は核爆弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「実験中止」を表明した。だが、あくまで実験の中止であって、「核放棄」ではない。ここにごまかしがある、と日米政府や韓国の専門家らは警戒している。それでも、文大統領は、北朝鮮の「政策転換」を歴史的成果と強調する。 中国は北朝鮮の「核実験中止」宣言を受けて、各国の独自制裁と国連制裁の緩和を求めている。トランプ米大統領と安倍晋三首相は「核放棄」実現まで「最大限の圧力」を継続することで合意している。 だが、文大統領はその後の日韓電話首脳会談でも圧力継続で合意したが、むしろ立場は中国に近い。韓国世論と米国を制裁緩和に動かすために、首脳会談の成果を高らかにうたいあげる必要があるのである。 一方、歴史的な南北首脳会談の背後で、少数の専門家が金委員長と朝鮮人民軍の「緊張関係」を指摘している。金委員長の軍への姿勢が、あまりに冷たいのだ。 実際、4月20日に開催された党中央委員会総会で、政治局常務委員に軍人や軍代表者がいなくなったのがその表れだ。異例である。しかも、軍への配慮や軍を称賛する言葉が全くなかった。異常である。このため、金委員長に不満を持つ軍人による暗殺やクーデターの危険がささやかれ始めている。2018年4月20日、朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会で報告を行う金正恩委員長=平壌(朝鮮中央通信=朝鮮通信) その上、金委員長はこれまでの「軍優先」政策を放棄し、「経済優先」への転換を明言した。本当であれば「革命的」といっていい。北朝鮮は歴史的に軍の地位を高め、体制を維持してきたからである。 例えば、父親の金正日(キム・ジョンイル)総書記は軍事優先の「先軍政治」を数十年も続けてきた。それにより、軍部が朝鮮労働党よりも力を持ち、軍人が利権を手にしてきたのである。ところが、「経済優先」を宣言することは、すなわち軍と軍人優位の体制を放棄することである。だから、金委員長は反対する軍幹部を処刑したのである。金正恩が対話を決めた「周辺の国々」 また、金委員長は総会で、自身が推進した「核と経済の並進路線」の「勝利」と「完結」を強調した。その上で「経済集中」政策への転換を宣言している。まだ核とミサイルは完成したわけではないにもかかわらず、完成したと「みなした」のだ。これが北朝鮮得意の「みなしの論理」である。 金委員長の「完結宣言」は、制裁が効果を上げたためである。文大統領の側近でさえ「国連と各国の制裁が続けば、北は2年で崩壊の危機に直面する」と語っている。反対に、制裁は効果がないとの主張があるのも確かだ。 だが、常識で考えてほしい。北朝鮮は「世界最低の石油保有国」である。国連の発表では、2016年の石油輸入量はわずか120万トンしかなかった。島根県や山形県の石油消費量よりも少ないのである。それが今年は、軍用の石油が40万トンに激減する。核実験をすればさらに減るだろう。これでは軍が崩壊する。軍が崩壊すれば、国家も崩壊に向かう。 金委員長は、党中央委総会で「周辺の国々と国際社会との緊密な連携や対話を積極化していく」との方針を決定した。この「周辺の国々」が日本を指すのは明らかだ。本来であれば、「周辺の国々」とは日本と中韓露の4カ国である。東南アジア諸国との関係は、2016年の金正男暗殺の影響で悪化しており、「周辺」には含まれない。 北朝鮮は日本を除く中韓露3カ国とはすでに連携し、対話もしている。とすれば、この表現は日朝対話を行う方針を事実上表明したものだ。金委員長は、日朝首脳会談を受け入れる準備を進めているという。 中朝の外交関係者によると、実は、平壌は北京の北朝鮮大使館に日朝対話のための情報収集を命じている。安倍首相の要請を受けたトランプ大統領が、米朝首脳会談で「日本人拉致問題」を取り上げると金委員長に通告したからだ。2018年2月9日、平昌冬季五輪の開会式で、北朝鮮の金与正氏(中央右)と金永南最高人民会議常任委員長(同左)の近くに座るペンス米副大統領(左手前)。右端は安倍首相(聯合=共同)   それを受けて、北朝鮮政府はどう対応するかの検討に入ったという。拉致被害者「全員死亡」では、トランプ大統領は納得しないだろう。そうなれば、トランプ大統領は「それならシンゾウと話し合え」と要求する。 金委員長は、米朝首脳会談が成功すれば、日朝首脳会談に応じざるを得ない状況にある。また、失敗したら当然制裁は解除されず、経済支援を獲得するには日本との首脳会談を受け入れるしかないのである。

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    映画「チャーチル」と北の核開発、首脳会談「宥和主義」に落ち込むな

    には南北首脳会談、来月以降には初の米朝首脳会談が予定されている。こうした重要な機会に、当事者の米国や韓国、日本はじめ国際社会が、宥和主義の〝陥穽〟に落ち込んでしまう恐れはないのか。すでに「条件」などが取りざたされていること自体、不必要な譲歩がなされるのではないかとの憶測を生む。 大胆な妥協、譲歩をしても、戦争を避け平和的手段で問題を解決しようというのが宥和主義だ。言葉が穏当な響きを持つから大衆受けしやすい。しかしながら、誰もが平和的な解決を望むとはいえ、警戒しなければならないのは、相手を恐れるあまりの妥協が結果的に膨脹主義者、独裁主義者の跳梁を許してしまうことだ。ウィンストン・チャーチル(英国の政治家・元首相) 典型的なケースは、映画「チャーチル」の中でも触れられているミュンヘン会談だ。第2次世界大戦前夜の1938年9月、英仏独伊4カ国の首脳が出席したこの会談で、ヒトラーによるチェコスロバキアのスデーテン地方割譲の要求が協議された。 当時、世界のリーダーだった英国のチェンバレン首相はヒトラーの威嚇に屈し、これを受け入れた。以後領土的要求を捨てると約束したにもかかわらず、ドイツの異常な指導者は、チェコを保護領に置くなど背信行為を続け、1939年9月にポーランドに侵入、第2次世界大戦を引き起こした。 「ミュンヘンの宥和」と呼ばれるこの妥協は、独裁者、膨脹主義者を勢いづけ、戦争の惨禍をもたらした悪しき例として、しばしば国際政治を論じる時に言及される。あろうことか、この合意は、チャーチルら反宥和主義者たちの猛反発をよそに、当時、英国やフランスの国民からは、熱狂的に歓迎された。北朝鮮の悪しき妥協を懸念 当時、米ハーバード大学の学生だった故ジョン・F・ケネディ元米大統領は、その卒業論文でこれを取り上げ、分析している。戦争だけは避けたいと願望する国民から、宥和主義が強い支持を受けたため、その政策を掲げるチェンバレンが必要な軍備の増強に手をつけようとせず、結局、ドイツに対抗する力を失ってしまったーと。ちなみにこの卒業論文は後に「英国はなぜ眠ったか」というタイトルで日本でも出版された。 映画に話を戻すと、ダンケルクでの英仏軍の孤立など苦しい戦局の中で登場したチャーチルは戦時内閣を組織したが、ハリファックス外相らがヒトラーとの和平を強く主張、激しい論争が展開される。宥和主義者の一方の雄、ハリファックスの主張は強硬、理路整然としており、チャーチルは、ほとんど和平協議やむなしに傾く。そこに意外な援軍が現れる…。 これ以上、映画のストーリーに踏み込むのは避けるが、最終的に戦争継続を決意したチャーチルの断固とした姿勢は、議会、国民から圧倒的な支持を受け、〝バトル・オブ・ブリテン〟の勝利への途を開く。 銀幕を離れて現実の世界に立ち返る。 米朝首脳会談が実際に開催されれば、さまざまな議題が話し合われることになろう。 不調に終わった場合、また会談自体が見送られたなら、武力行使がいよいよ現実性を帯びてくる。各国がもっとも恐れる事態であり、それだけに宥和主義が入り込んでくる余地があると言うべきだろう。ミュンヘン会談で英国がヒトラーに対したように、大きな譲歩を与えても最悪の事態を回避しようという主張が勢いを増しかねない。 首脳会談の展開については、すでに内外のメディアで論じられているので、予測は避ける。 しかし、核問題をとってみても、ICBM(大陸間弾道弾)の発射実験中止、核実験場の廃棄など、4月20日の金正恩朝鮮労働党委員長の決定について、トランプ大統領が、自らへの脅威は取り除かれたと判断、これまで保有した核兵器、中短距離ミサイルは黙認すれば、根本解決にはほど遠い結果となってしまう。 北朝鮮が全面的な核放棄を約束したとしても、明確な実行期限が設けられなければ、2006年9月の6カ国協議での北朝鮮による核廃棄表明と同様に反故にされてしまうだろう。米ホワイトハウスで首脳会談後に共同記者会見を行うエマニュエル・マクロン仏大統領(左)とドナルド・トランプ米大統領=2018年4月24日(ロイター=共同) トランプ大統領は4月24日のマクロン仏大統領との共同記者会見で、「これまでも、われわれは譲歩をしたことがなかった」と述べ、米朝首脳会談でも、しないことを強調したが、それでもなお、悪しき妥協を懸念せざるをえない〝状況証拠〟がある。3つの「状況証拠」 第1は、先に述べた20日の北朝鮮の新たな方針だ。これは、米国が首脳会談開催の前提条件として北朝鮮に要求したものではないかとささやかれている。そうだとすれば、前提条件が満たされたことになるため、不完全であるにもかかわらず、米国が受諾を拒否する理由がなくなってしまう。 北京の人民大会堂で開かれた夕食会で、芸術団に拍手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年3月26日(朝鮮中央通信撮影・共同) 第2は、これに関連するが、北朝鮮の決定に対して、トランプ大統領がすかさず反応し、「北朝鮮と世界にとって、非常にいい知らせ、大きな前進だ」と歓迎、「(首脳会談を)楽しみにしている」と、異常なはしゃぎぶりをみせたことだ。 金正恩は「核戦力兵器化の完結が検証された。もはやいかなる核実験や(ミサイル)試射も必要なくなり実験場は使命を終えた」と述べている。核廃棄どころか「核兵器、ミサイルの完成宣言」に等しい。 米国から突きつけられた条件を呑むために「路線変更を正当化するための苦肉の策」(4月22日付産経新聞)という見方もあるが、そうであるにせよ、保有核兵器の完全廃棄について言及していないことに大統領が何ら触れていないのは不可解というほかはない。妥協ありきというのが、トランプ大統領の腹つもりではないかと思われても仕方がないだろう。 第3は、最近使われるCVIDという言葉の定義だ。この言葉はブッシュ政権(子)時に使用されはじめ、その後はあまり聞かれなくなったが、最近再びメディアを賑わしている。当初は、complete, verifiable and irreversible dismantlement」、「完全かつ検証可能、不可逆的な廃棄」と訳されていた。しかし、最近ではdismantlementに代わって、denuclearization(非核化)という表現が用いられている。 筆者はこのことを、うかつにも、4月16日の日本記者クラブでの浅羽祐樹・新潟県立大教授の会見をきくまで知らなかった。 調べてみると、ことし2月25日の朝鮮半島非核化に関するホワイトハウス報道官声明では、はっきりと「denuclearization」の表現が使われていた。4月18日に行われたトランプ大統領と安倍首相の会談についてのホワイトハウスの声明でも同様な表現がみられ、dismantlementという言葉はなかった。 ニュアンスの問題だが、廃棄や分解を意味するdismantlementに比べ、denuclearizationからは、単なる非核化という軽い響き、意味合いしか感じられない。使用不能にさえすれば、廃棄は必要ないと解釈できないこともない。安易な妥協は危険 こうした状況証拠とは別に、側近の進言やアドバイスに耳を傾けることなく、自ら独裁的に決定を下すといわれるトランプ大統領が、交渉の場の独特な雰囲気の中で、高揚感から不用意な譲歩に走ることは考えられるだろう。大統領が、ホワイトハウスを訪れた韓国特使団から金正恩との首脳会談の話を持ち出された時、その場で即断したことを考えれば、根拠のない懸念とは言えない。 北朝鮮が首脳会談に応じてきたことについて安倍首相らは、各国が圧力をかけ続けてきたため、金正恩がそれに耐えられなくなったと分析している。おそらく正しい見方だろう。 そうであれば、極端な話、首脳会談など行わなくとも、北朝鮮に圧力をかけ続けさえすれば、先方は〝白旗〟を掲げてくるだろう。〝熟柿作戦〟ともいえようが、妥協、譲歩を引き出されるリスクを伴う首脳会談より、時間はかかっても効果的、得策ではないか。 思い出してほしいのはリビアのケースだ。リビアは、北朝鮮と同様に大量破壊兵器を開発しながら米英の圧力で完全放棄したが、米英との間で、首脳会談や交渉などは一切なかった。両国の情報機関が圧力をかけ続けた結果、当時の最高指導者、カダフィ大佐が2003年12月、突然、廃棄の意向を伝えてきた。 その直前、イラクのフセイン大統領が米軍に身柄を拘束されたことに衝撃を受けたのかもしれない。それはともかく、米国は廃棄をリビアに任せることなく、核兵器、関連機器をすべて米国本土に運んで自らの手で廃棄した。 リビアのケースは、圧力をかけて追い詰めれば、武力によらなくとも、北朝鮮に核を廃棄させることが可能であることを示した。 「金正恩の野望」を描いた4月22日放映のNHKスペシャルで、韓国に亡命した北朝鮮のテ・ヨンホ元駐英公使が語っていた。「北朝鮮は昨年まで、核実験、ミサイル実験を繰り返してきた。今年になって対話路線に転換した。世界は〝ああ、よかった〟と思うだろう」―。この安堵感が危ない。カダフィ体制の打倒を叫ぶデモ参加者ら=2006年1月29日(黒沢潤撮影) アフガニスタン、イラクにおける戦争で、米国民の間には〝厭戦気分〟が少なくない。平和解決こそ最も重要なことではあるが、心理的なスキが不必要な妥協を生むことがあってはなるまい。 安易な妥協で合意が成立した場合、宥和主義によるものか、トランプ政権の判断ミスによるかはともかくとして、もたらされる深刻さは同じレベルだろう。 断っておくが、筆者は映画に感化されて、首脳会談より戦争による解決をーなどといっているのではない。不必要な譲歩は有害、危険であるか、ということを強調したいだけだ。 安易な妥協によってヒトラーの跳梁を許してしまったチェンバレンは、罵声を浴びながらの退陣を余儀なくされた。 トランプ大統領は、「チャーチル ヒトラーから世界を救った男」を鑑賞しただろうか。まだなら、首脳会談前にぜひ見てほしい。

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    北朝鮮収容所経験者「金王朝は死ぬなら国民も道連れにする」

     いま、韓国と北朝鮮の融和ムードが高まっている。しかし、金正恩は恐怖政治をやめる気配すらない。長年、北朝鮮について取材してきた落合信彦氏が、かつてインタビューした北朝鮮収容所経験者の証言を紹介する。 * * * かつて北朝鮮の収容所で10年間過ごし、中国経由で韓国に亡命した姜哲煥氏を1993年にインタビューしたことがある。彼の祖父は日本の京都の朝鮮総連系商工会の幹部をしていたが、ある日、訪れた平壌で行方不明になってしまった。姜氏によると、平壌の政治犯収容所に入れられたのではないかという。その直後、一家は平壌の北、咸鏡南道にある収容所に送られた。姜氏は当時9歳だった。「年齢は関係ありません。北朝鮮では誰かが“犯罪”を犯すと、必ず連帯処罰として家族全体を罰するので赤ん坊でも逃れられないのです。本人だけ捕らえると、あとでその子供が大きくなったとき復讐を考えるかもしれないという心配があるわけです」 収容所生活で辛かったのは寒さと餓えだったという。だが、それ以上に辛かったのは処刑場面を見ることだった。毎年15人ずつ処刑されたという。「餓えが限界にきて、食糧欲しさに反乱を起こしたり、逃走を謀ったりした人々です。絞首刑のときなど、われわれは死体に向かって石を投げるよう命令されました」 1987年に収容所を出た姜氏は、後に賄賂を使いながら鴨緑江を渡り中国経由で韓国に亡命した。金王朝で地獄を見た姜氏の金正日評は傾聴に値する。彼は次のように語った。「彼(金正日)は民族のことを一番に考えるような立派な指導者ではありません。念頭にあるのは政権維持だけです。少なくともこれまでの彼を見る限りそう言い切れます。平壌で行われた軍事パレードで演説する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。=2018年2月8日、北朝鮮・平壌(コリアメディア提供・共同) どこの国に毎晩キーセン・パーティーにうつつを抜かし、数多くの女をはべらせ、ポルノ映画ばかり見ている指導者がいますか。彼にとっては政権を失うということは死を意味します。だからどうせ自分が死ぬのなら国家と国民も道連れにしていこうと当然考えるでしょう」 その独善的思考はそのまま息子の金正恩に受け継がれている。そして今や彼は核を手にした。にもかかわらず、いまだに話し合いでこの男をなだめられるという思考がいかに危険かがわかるはずだ。関連記事■ 北朝鮮で強制収容所の囚人1万5000人が消えたとの情報■ 北の漂着船 元軍人の漁師を強制送還すると1人83万円かかる■ トランプ×金正恩 いざ会ってみたら意気投合する可能性あり■ 統一コリアvs日本の国力比較 貿易額、経済規模、兵力など■ 北朝鮮と韓国との全面戦争はあるか? 専門家はないと説明

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    韓国の歴史教科書から反北的記述が次々削除されている

    綱である。それを放棄するはずはない。にもかかわらず、なぜ北朝鮮の術中に、文在寅政権は自ら嵌まるのか。韓国人ジャーナリスト・朴承ミン氏が深層を読む。三池淵管弦楽団の公演後、金与正・朝鮮労働党第1副部長(左)の手を取る韓国の文在寅大統領=2018年2月11日、韓国・ソウル(聯合=共同) * * * 親北政策に突き進む背景として最初に挙げなければいけないのは、青瓦台(大統領府)の秘書官(参謀陣)の面々である。文在寅大統領の秘書官のうち半数近くを占めるのが「586グループ」だ。 現在50代で、1980年代に大学時代を送って、1960年代に生まれた世代を指す。彼らは80年代に盛んだった民主化運動、つまり反政府学生運動に参加していた人間だ。学生運動時代に金日成主体思想に傾倒していた者もいる。 与党、共に民主党(民主党)でも586グループが重要なポストの約8割を掌握している。文大統領自体も大学時代に学生運動に勤しんでおり、586グループの先輩格にあたる。“後輩”の意見を反映させることを当然のように思っているかもしれない。 もちろん、文大統領自身の野心もそこにはある。歴代大統領は、南北首脳会談に強い関心を示してきた。文大統領が系譜を継ぐ左派政権、2000年の金大中政権、2007年の盧武鉉政権もそれを実現した。文大統領も業績を上げる機会として狙っているのだろう。 それにしても、現政権が北朝鮮に気を使う様は度を超している。その象徴が、歴史教科書改定だ。 政府は新しい歴史教科書の執筆基準の試案で、「北朝鮮政権の全面的南侵で勃発した6・25(韓国)戦争」という表現を「6・25(韓国)戦争」に変えている。この指針通りになるなら、学生たちは戦争を誰が起こしたのかわからない。また、「北朝鮮体制の世襲」「北朝鮮市民の人権」という表現も抜いた。北朝鮮の首脳部が気に入らないと思うようなことは歴史教科書に入れないということだ。 若者の歴史教育は、国家のアイデンティティー形成に大きく影響するだけに、慎重な舵取りを求めたい。【PROFILE】朴承ミン/時事通信の元ソウル支局記者。長年、北朝鮮問題と韓国政治を取材。その間に平壌と開城工業団地、金剛山など北朝鮮の現地を5回ほど訪問取材。現在、韓国と日本のメディアに寄稿している。関連記事■ 韓国・北朝鮮が描く「統一コリア」へのロードマップ■ 統一コリアvs日本の国力比較 貿易額、経済規模、兵力など■ ホッケー南北合同チームに文在寅氏支持派若者からも批判の声■ 親北を掲げる文在寅政権の先は「赤化統一」と暗黒の生活■ 人類滅亡――マヤ暦の予言とは異なる「2012年問題」の正体

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    「#韓国人になりたい」インスタ女子はなぜ急増したのか

    鈴木朋子(ITジャーナリスト) 「#韓国人になりたい」――若い女性に人気のSNS「インスタグラム」で、こんなキーワードが流行していることをご存じだろうか。「#○○」という風に、「#(半角シャープ)」に続いてキーワードを付ける「ハッシュタグ」は、SNSでキーワード検索をする際に使用できる機能なのだが、執筆時点で「#韓国人になりたい」を付けた投稿は9951件にも上る。一方で、「#アメリカ人になりたい」は256件、「#フランス人になりたい」は158件だ。 この違いは何なのか。彼女たちは本当に韓国人になりたいのか。 政治的な側面から見れば、慰安婦問題や竹島問題などを抱える日韓関係は冷え込んだままだ。その韓国に国籍を移したいのか、あるいは韓国に移住したいのかと疑問を感じる人もいるだろう。 しかし、彼女たちがイメージする韓国は、大人のそれとはまったく異なるのだ。 振り返れば、大ヒットした韓国ドラマ『冬のソナタ』に代表される第1次韓流ブーム、少女時代や東方神起などK-POPアイドルによる第2次韓流ブームがあった。ドラマ、ミュージックと韓流ブームには中心となるカルチャーがあるのだが、現在は韓国のファッションを基点とした韓流ブームが巻き起こっている。韓国女性9人組、少女時代=2012年11月13日、東京・代々木第一体育館( 栗原智恵子撮影) 10代を中心とした若い女性たちにはやっているのは、「オルチャンメイク」だ。「オルグル(=顔)」に「チャン(=最高)」を組み合わせた「オルチャン」がしているメークという意味で、数年前から高い支持を得ている。オルチャンメイクの特徴は、平行した太めの眉、垂れ目風に仕上げたアイライン、涙袋の強調、赤い口紅、陶器のように真っ白な肌だ。さらにシースルーバングと呼ばれる、おでこが少し見える薄めの前髪で、韓国語で「タンバルモリ」というショートヘアやおかっぱ頭との組み合わせが多い。 オルチャンメイクの方法を指南したYouTube(ユーチューブ)動画は多数アップロードされており、ある女子高生は毎日チェックしているという。韓国コスメも「安くて質がいい」と人気が高い。 服装に関しても同様で、自身のファッションコーディネートを投稿する「WEAR」というアプリ内では、「韓国ファッション」をキーワードにしたコーディネートが3万件以上存在する。韓国ファッションはK-POPのアイドルがしていそうな、体の線が出るミニスカートやパンツスタイルが多く、若い男性の投稿も多い。 さらに、先ほど「K-POPは第2次韓流ブーム」と書いたが、現在もK-POPアイドルの人気は高まっている。昨年、NHK紅白歌合戦に出演した「TWICE」をご存じだろうか。韓国で結成された9人組の女性グループで、メンバーには韓国人のほかに日本人と中国人が含まれている。彼女たちは小学生女子や中学生男子にも人気があり、彼らのSNSにはTWICEのポーズである「TTポーズ(手をアルファベットのTにして泣き顔にする)」や指を重ねる小さなハートポーズを撮った自撮りが並ぶ。女子高生が韓国に熱狂するワケ 先日取材した女子高生は、「防弾少年団(ぼうだんしょうねんだん)」という、韓国のヒップホップアイドルグループが好きだと言っていた。他には、「exo(エクソ)」という男性アイドルグループや、女性グループ「BLACKPINK」が人気だという。韓国語でファンのことを「ペン」というので、防弾少年団(韓国語でバンタンソニョンダン)のファンは「バンタンペン」となる。10代の利用率が高いTwitter(ツイッター)で「バンタンペン」を検索すると、ハングルで自分の名前を表記している若い女性のアカウントが多数ヒットする。 彼女たちはハングルをネットで勉強するそうだ。韓流好きの女子高生に聞いたところ、ハングルは○などが入っていて「かわいい」と感じるようだ。「推し(好きなアイドル)が同じ」人とはTwitterで知り合い、韓国関連のショップが多い新大久保で待ち合わせて、ショッピングやおしゃべりを楽しんでいる。 韓国へ友人同士で旅行に行く女子高生もいる。韓国はアルバイト代をためればすぐに行ける国だからだ。ネットの動画で韓国語を学んでいるため、現地でも苦労することはない。韓国グルメを味わい、コスメや服を購入して帰路につく。 これほどまでに若い女性たちが韓国に熱狂する理由のひとつは、「センスが近しい」からだろう。「オルチャンメイク」は、日本で爆発的に人気になった「SNOW」や「BeautyPlus」といった自撮りアプリの加工後の顔と似たような、幼いかわいらしさを強調しており、日本人の「カワイイ文化」にも共通する。昨年12月2日、香港で、音楽授賞式「2016 Mnet Asian Music Awards」に参加し、ポーズをとるK-POPグループ「Twice」(AP) インスタグラム人気も相乗効果を上げている。「インスタ映え」が流行語大賞を取った日本では、若い女性のインスタグラムユーザーが急増している。インスタグラムには使っているコスメを並べて写真を撮る文化があるのだが、韓国のコスメはプリンセス感があふれる外装で、インスタ映えするのだ。また、韓国の街にはインスタグラム向けのスポットも多いそうで、インスタ女子の人気を集めている。ファッションに関心が高いユーザーが集まるインスタグラムでの韓流ブームが、彼女たちをさらに盛り上げているのだ。 外国という神秘感と、それでもまねしやすいカルチャーが、若い世代の心をつかんでいるのだろう。国家間の思惑と別の潮流が、日韓の間を進行している。

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    韓国現地リポート】「第2の慰安婦問題」を追う!

    新たな日韓関係の火種になるのではと危惧されている「徴用工問題」。その「徴用工像」除幕式が韓国・仁川で行われると聞き、現地を直撃取材した。■動画のテーマはこちら

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    南北首脳会談、なぜこのタイミングだったのか

    重村智計(早稲田大名誉教授) 韓国と北朝鮮は6日、4月末に板門店で3回目の南北首脳会談に合意した。合意は、会談場所と米韓合同軍事演習の「是認」、南北首脳のホットライン以外は目新しいものはない。北朝鮮は核放棄への明確な言及を避けた。資金獲得と制裁緩和を狙ういつもの「目くらまし戦略」だ。トランプ米大統領は首脳会談を歓迎しながらも「希望は裏切られるかもしれない」と慎重だ。 韓国と北朝鮮は、首脳会談を4月末とすることで軍事演習の短縮を目指している。まさか首脳会談中に演習はあるまいと期待している。そうすると、北朝鮮は5月の田植えの時期に兵士を動員できる。建国当初から兵士の動員なしに田植えは困難だからだ。 日米両政府は最近、北朝鮮の海上での「瀬取り」による密輸を摘発し、シリアへの化学兵器の闇ビジネスを報道させ、南北首脳会談をけん制してきた。米国は米韓合同軍事演習を4月から行うと首脳会談の「妨害」に動いた。 それに挑戦するように、韓国と北朝鮮は特使を派遣し合い、首脳会談に合意した。首脳会談をめぐり、「南北対日米の戦争」が展開された。米国は平昌五輪の開会式にペンス副大統領を派遣し、金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹の与正(ヨジョン)氏との会談との北朝鮮提案を受け入れたが、直前に北が拒否した。これは、明らかに「北の外交敗北」であった。 それでも南北は首脳会談実現に突っ走った。北朝鮮は、平昌五輪の閉会式に金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長を派遣し、秘密会談を行った。ここで特使派遣と首脳会談の条件が話し合われた。最大の懸案は米韓合同演習の継続問題であった。韓国側は、パラリンピック後の軍事演習開始を伝えた。 金委員長は、それでも特使派遣を受け入れ、米韓合同軍事演習を「理解する」と述べた。これは、「軍事演習」を理解すると言ったのではなく、軍事演習中止に努力した「韓国側の立場」を理解すると述べたのだろう。この発言を、韓国側は米国の気を引いて米朝対話につなげるために、意図的にミスリードしたのではないか。会談し握手を交わす韓国大統領府の鄭義溶国家安保室長(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。金委員長が抱えているのは文在寅大統領からの親書=2018年3月5日、平壌(韓国大統領府提供・共同) なぜ首脳会談を急いだのか。北朝鮮は米国の軍事攻撃を最も恐れており、それを阻止したい。そのためには南北首脳会談が一番だ。北朝鮮への制裁が相当な効果をあげている事実がある。石油制裁が北朝鮮軍を追い詰めている。日本での論議は、北朝鮮の深刻な石油不足を理解していない。 国連によると、一昨年までの北朝鮮の石油輸入量は原油50万トン、石油製品約70万トンで合わせて120万トンであった。密輸を合わせても最大150万トンだろう。日本の石油輸入量は2億トンだ。北朝鮮軍は「世界で最も石油の乏しい軍隊」である。それなのに、今年は原油と製品合わせて70万トンに減らされる。海上での密輸も発見された。 これでは軍は戦闘能力を失い、崩壊の危機に直面する。現在の体制を維持しているのは、軍と秘密警察だから事態は深刻だ。北朝鮮の譲歩は、国連や日米の経済制裁が効果をあげた結果である。特に石油製品の輸入禁止は、体制の崩壊につながりかねないとの危機感がある。「同盟より民族を選んだ」文在寅 この危機を回避するために、北朝鮮は「韓国からの経済支援」「開城工業団地の再開での外貨収入回復」「石油制裁緩和」を狙っている。外交敗北とみられるほどの譲歩の背景には、北朝鮮国内の苦境がある。 北朝鮮は、公式には韓国の存在を認めていない。今回も「大韓民国」の表現を使わず、「南側の文在寅大統領」との表現に終始した。北朝鮮の指導者が韓国側に足を踏み入れれば、初めてのことになる。北朝鮮が主張する「朝鮮半島における唯一正統性ある国家」との「正統性」で譲歩したことになる。 それ以外は新しいものはない。核実験の中止は以前もあったが、反故(ほご)にされてきた。「体制の安全が保証されれば、核保有の理由はない」との表現も目新しいものではない。金日成(キム・イルソン)主席も金正日(キム・ジョンイル)総書記も「朝鮮半島の非核化」について公言していたからだ。 北朝鮮の報道機関は、韓国政府の発表内容をいまだに報じていない。「満足いく合意」「首脳会談合意」を伝えたにすぎない。ただ、金委員長の「米韓合同軍事演習を理解する」との発言は、軍を完全に掌握した事実を物語る。軍は、米韓合同軍事演習の中止を強く求めてきた。「理解する」との発言は、軍を掌握した金委員長の自信を示している。北朝鮮の核放棄には軍が絶対に応じない。少なくとも軍を押さえないと核放棄はできないからだ。 金委員長は、人民軍記念日を2月8日に変更し、軍事パレードを行っていた。これは、軍を党の指導下に置いた事実を誇示する行事だった。金委員長はパレードの演説で「軍は党に従え」と強調した。 文在寅(ムン・ジェイン)政権の「北朝鮮支援」方針は「同盟より民族を選んだ」と説明される。米韓同盟が崩壊に向かい、北朝鮮に取り込まれると国内の保守派から憂慮の声が上がる。韓国政府は金委員長にどのような提案を行ったのか明らかにしていない。韓国のメディアは取材記者を同行させなかった事実を批判している。韓国内では前2回の首脳会談のように、多額の外貨資金を運んだのではないか、という疑惑も生まれている。2018年3月6日、ソウルの韓国大統領府で、特使としての訪朝を終えた鄭義溶国家安保室長(手前左)と握手する文在寅大統領。左奥は徐薫国家情報院長(大統領府提供・聯合=共同) 韓国は、米韓軍事演習の延期や縮小を求めていたが、米国は断固として拒否した。韓国側が米韓軍事演習への了解を求めたため、金委員長は「理解する」と述べた。韓国は、支援の再開と韓国企業が操業する開城工業団地の再開、外貨送金の問題も提示したのだろう。韓国側からの何らかの提案なしに、金委員長が「リップサービス」をするわけがない。韓国側の提案を明らかにすべきだ。 北朝鮮が南北首脳会談を急ぐのは、体制動揺の危機に直面したからだ。一方、文在寅大統領も、平昌五輪後の支持率低下に悩んでいる。支持率を回復し、憲法改正に踏み切るためには、首脳会談での支持率上昇が必要だ。現在の憲法で規定されている大統領任期を、1期5年から2期8年に改正し、長期政権を目指す文大統領の野心もまた見え見えである。

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    寂しすぎる平昌五輪の経済効果、文政権は「宴の後」に苦しむ

    ムも一段落し、経済が減速しないかが話題の焦点になる。 では、平昌五輪の経済効果はどのくらいだろうか。韓国経済全体に与える影響をみると、過去の五輪開催国の「平均像」に比べてかなりパフォーマンスが悪いことがはっきりしている。この点について、日本銀行が公表した「2020年の東京オリンピックの経済効果」という展望論文が参考になる。過去の五輪開催国では、開催前の5~2年にかけて実質国内総生産(GDP)成長率が有意に上昇し、また開催年までに実質GDPの水準も累積で10%ほど上昇するという実証研究が紹介されている。 開催5~2年前というのは、2013年から16年の4年間である。この間の韓国実質成長率の平均は約2・9%である。リーマン・ショックの影響を受けた09年、そしてその反動増ともいえる10年を除いて、21世紀の韓国の実質成長率の平均は4・2%程度なので、この数値と比較するとそれほど高くはない。 また細かくみると、2014年に3・3%をピークにして低下している。このときから失業率も悪化傾向にあり、特に若年失業率は2桁前後に留まったままである。朴槿恵(パク・クネ)前大統領が失脚した背景には、この雇用不安や不満があったと思われる。ちなみに実質GDPの累積増は、従来の五輪開催国の中ではかなり高い。もちろん、この累積増も五輪開催以前の実質成長率の平均値が高いので、五輪の経済効果が目覚ましいとするには寂しすぎるのである。平昌五輪の経済効果が「寂しい」理由 五輪経済効果の「寂しさ」の原因の一つは、韓国の輸出が2014、15年と大きく減少したことにあるだろう。韓国は経済規模の半分ほどの輸出額がある、いわば「輸出依存国家」だ。だが、肝心の輸出が15年に前年比7・9%減、16年も同5・9%減と落ち込んだ。2017年に入ると輸出は堅調で、また実質成長率も3・1%に回復している。だが、回復を主導したのは投資であった。五輪効果が直近でようやく出てきたというよりも、韓国銀行の金利引き下げなどの緩和政策が効果を発揮している可能性がある。実際に輸出の堅調は、ここ数年では最もウォン安が進んだことに原因がある。ただし、雇用情勢の方は相変わらずで、17年も失業率・若年失業率ともに悪化したままである。 韓国にとって平昌五輪の経済効果、それ自体は「寂しい」。さらに五輪開催の最大のメリットともいえる、海外からの観光客数も17年から減少傾向にある。今年の数値はまだ分からないが、17年は約2割の大幅減だった。その主因は「THAADショック」による中国からの観光客の減少である。 韓国政府は米軍の最新鋭迎撃システム、高高度防衛ミサイル(THAAD)を北朝鮮の脅威への備えとして配備することを決定した。中国がその報復として、団体旅行客の訪韓を禁止したからだ。その後、昨年末の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の北京訪問、そして習近平国家主席(総書記)との首脳会談によって「雪解けムード」が生まれた。韓国も平昌五輪開催に併せた中国観光客のビザなし来韓を可能にした。だが、いくつかの報道をみる限り、中国人観光客が大幅に増加しているという感じではなさそうだ。2017年3月、韓国・ソウルの繁華街、明洞。中国語表示の看板が目立つものの、中国人団体観光客は姿を消していた(桜井紀雄撮影) このように平昌五輪における韓国経済への「事前効果」は目立つものではない。では、「宴の後」はどうだろうか。もともと五輪の経済効果に目ぼしいものがないのだ。しかも、17年の実質経済成長率が3%台に上昇したのは、むしろ金融緩和政策が限定的に効果を発揮したからだろう。 ところで、いま「限定的」としたのは理由がある。韓国の金融緩和政策は経済全体を好転させるには、かなり不足した状況にあるからだ。特に雇用状況の改善には一段どころか二段ぐらいの緩和措置が必要だ。だが、韓国銀行は昨年末に11年以来の金利引き上げを行った。事実上の緩和政策の転換であろう。現状の韓国のインフレ目標である2%を達成していて、その意味では金融政策は「合格点」とみなす向きもある。だが、このインフレ目標水準は、韓国の雇用改善には低すぎるのである。韓国経済の命運を握っているのは?2017年4月、韓国・釜山で開かれた就職説明会に参加した若者ら(聯合=共同) 韓国では2桁前後の高い若年失業率を構造的問題に求めるのが「通説」だ。一般的には、大卒の若者たちが大企業に就職希望を集中させる「雇用のミスマッチ」や、定年の延長効果によって新規採用が手控えられたことが指摘されている。だが、ここ数年の若年失業者の9~10%台への上昇は、経済成長の減速、そしてそれに伴う物価水準のデフレ傾向と歩みを同じくしていた。例えば、インフレ目標の中央値が3%であり、なおかつそれを上回るインフレ率であった当時の若年失業率は、高いとはいっても平均して7~8%台だったのだ。つまり、今でもインフレ目標を3%に高めれば、若年失業率を押し下げる余地がある。その意味で一段の緩和が韓国経済にとって効果的だろう。 ただ、筆者は、さらに「一段」緩和が不可欠だと考える。文政権は公的雇用の増加や最低賃金引き上げに伴う企業への補助の大規模な財源が必要とされている。この財源調達においても、積極的な金融緩和政策が力になるはずだ。それが難しいのは、韓国政府が金融緩和政策をより進めると、自国の抱える対外債務がウォン安で膨らむことを懸念しているからだ、というのが「通説」である。だが、この種の懸念は賢明ではない。実際にインフレ目標が3%だったとき、韓国では対外経済危機が生じただろうか。むしろ韓国経済は輸出に大きく牽引(けんいん)されて好調だったのである。 一方、貿易構造が似ていた日本の輸出企業は韓国のライバル企業に苦戦していた。なぜなら、当時の日本は事実上デフレ政策を採り、円高スタンスだったからだ。だから、今の韓国銀行が低いインフレ目標を採用し、金利引き上げスタンスを維持するならば、日本の競争企業にとっては幸運だろう。言い換えれば、韓国の輸出企業にとっては苦難を意味するのである。 要するに、韓国にとって平昌五輪の経済効果はほとんど大したことはない。むしろ金融政策のあり方が、今までも、そしてこれからも韓国経済の命運の多くを握っていることになる。 文政権は五輪期間中、「ほほ笑み外交」をはじめ、北朝鮮寄りの人気取り政策へあからさまに傾斜した。その政治的な成果は国際的には否定的だろう。それどころか、70%を超えていた大統領支持率が一時50%台に急落した世論調査でも明らかなように、韓国国内でも同様である。文政権の行方は、むしろ不十分な金融政策と、北朝鮮への過度な「融和」的姿勢の行方にかかっている。

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    日韓ガチンコ勝負、竹島問題「へそ曲がり」のススメ

    舛添要一(前東京都知事) 北方領土、尖閣諸島と並んで、竹島をめぐる韓国との係争はわが国の「領土問題」である。韓国では「独島(トクト)」と呼称し、日本との間で領有権が争われているが、現在は韓国が占拠し実効支配を続けている。 問題の解決は容易ではない。少し「へそ曲がり」の考え方かもしれないが、幾つかの視点を提示してみたい。今の日本では「竹島は日本固有の領土である」と主張して「徹底的に韓国と戦うべきだ」と言わない限り、今の政府方針と違えるし、世論からも袋だたきに遭うことは必定である。 一方、韓国ではこの主張の「竹島」を「独島」に、「日本」を「韓国」に言い換えて、『独島はわが地』という歌を歌いながら激しく主張する。そうしなければ非国民扱いである。2018年2月、韓国・江陵で行われた北朝鮮の「三池淵管弦楽団」の公演で歌唱する団員。公演では、玄松月楽団長が「独島もわが祖国」と北朝鮮歌謡の替え歌を披露した(共同) このように両国とも自らの主張を譲らない「ガチンコ勝負」となっており、解決の見通しは全く立たない状況である。問題なのは、両国政府とも竹島(独島)が自らの領土であることを主張するのに都合の良い資料を持ち出したり、牽強(けんきょう)付会とも言える恣意(しい)的な資料解釈を行ったりして、不利になる資料には一切触れないという態度を取っていることである。 そこで第一に必要なのは、日韓双方が最新の歴史学に依拠した正確な事実認識からスタートすることである。一般の国民はもちろん、有識者といわれる人々も、竹島の歴史についてあまりにも無知なことが多い。意図的な資料解釈もまかり通っている。 そのような中で、新書で簡単に入手して読める名古屋大の池内敏教授の『竹島-もうひとつの日韓関係史』(中公新書)を勧めたい。この本は文献に基づき、また多角的な資料分析を行って、日本政府と韓国政府の公式見解の問題点を摘出している。 例えば、江戸時代から竹島は日本領だったのか。池内氏の著書によると、徳川幕府は「竹島(現在の鬱陵島)」と「松島(現在の竹島)」は一体のものとして認識しており、二島とも朝鮮のものだと考えていたとある。ちなみに、日本が先占の事実により竹島を自国の領土に編入したのは、日露戦争中の1905(明治38)年1月のことである。むろん、この手続きは国際法にのっとった正当なものである。関心だけなら強い韓国人 次に、韓国の公式見解であるが、韓国政府は1696(元禄9)年に鳥取藩に渡来した安龍福(アン・ヨンボク)らが「鬱陵島と竹島は朝鮮の領土だ」と言ったというが、池内氏はその主張を肯定していない。 以上は一例だが、このような史実が池内氏のような研究者によって積み重ねられており、多くの両国の国民が知る必要がある。ところが、両国民とも最新の歴史学の成果について学ぼうとしない。しかも、その度合いは、韓国人よりも日本人の方が弱いかもしれない。知識は韓国政府の公式見解をそのまま踏襲しているとはいえ、『独島はわが地』を合唱する韓国人の方が、まだ関心だけなら強いのである。 第二に、領土を持つということがどんな意味を持つかを真剣に考えるべきである。まずは、国民が生産し、生活する場所を持つということである。2016年春から使われた中学校教科書の検定結果を受け、尖閣諸島など領土をめぐる問題について多く記載されている各社の教科書(大西正純撮影) つまり、シベリアやサハラ砂漠のように、いかに広くても生産や生活に適さない所がある。そのような領土を持つことは経済合理性を欠く。ただし、そこに石油などの天然資源が埋蔵されていれば、富を得ることになるので、話は別である。尖閣諸島の周辺に石油などの鉱物資源が眠っているという報道がなされると、中国がにわかにこの島々の領有権を主張し始めたことはその代表例だ。 さらに、海の場合は排他的経済水域(EEZ)にも関わり、漁業資源の獲得という経済的プラスもある。また、領土問題はナショナリズムを高揚させる道具として使うことができる。 また、重厚長大から軽薄短小へと産業構造が変化している今日、経済活動のために広大な土地は必要ない。だからこそ、領土が生み出す富と領土を管理するコストを冷静に比較する必要がある。 具体的な歴史的経験を振り返ってみよう。第二次世界大戦で日独伊は負け、米英仏は勝った。しかし、負けた方も繁栄している。敗戦によって広大な領土を失ったおかげである。 もし、大日本帝国が存在していたら、海外領土の維持管理に莫大(ばくだい)なコストがかかっていたはずである。私は東京大学ではなく、ソウル、台北などの帝国大学で教鞭(きょうべん)をとっていたかもしれないし、警察官は東南アジアのどこかの交番で勤務していたかもしれない。むろん強大な軍事力も維持し続けねばならなかったであろう。相手の土俵に乗る必要などない 一方、戦勝国のフランスは戦後、アルジェリアなどで植民地独立戦争に悩まされ、多くの犠牲を払った。英国もコモンウェルス(旧英連邦)との関係で同じような経験をした。第二次大戦後の米国は「世界の警察官」として、平和維持のために巨額の予算を使っている。 いわば「住居」と同じであり、広大な邸宅の維持管理コストは大きい。こぢんまりとした家の方が掃除の手間もかからないというわけだ。 日独伊は敗戦のおかげで、領土維持や軍備のためのカネとエネルギーを経済活動に注ぐことができたのであり、それが戦後の繁栄を生んだといえよう。まさに「敗戦のススメ」であり、「戦争は負ける方がよい」「広い領土は持たない方がよい」と言えることもあるのである。 第三に、第二次世界大戦の戦後処理についてみると、1951年9月8日に調印されたサンフランシスコ平和条約では、竹島が日本の放棄する領土とはなっていない。これは当時、ディーン・ラスク米国務次官補も韓国政府に対して明言していることだ。 したがって、1905年以降は国際法上、竹島は日本の領土である。それを近代以前、例えば20世紀以前から「日本固有の領土だ」などと言わない方がよい。江戸時代の資料から主張に反する解釈があることが分かっているからであり、相手の土俵に乗る必要はあるまい。 結局、日韓両国とも自分に都合の良い主張ばかりを繰り返し、問題解決の糸口すら見いだせないので、竹島問題は「棚上げ状態」に陥っている。 江戸時代の1695(元禄8)年12月25日、老中阿部豊後守正武は鬱陵島や竹島について、対馬藩家老の平田直右衛門に「鮑(あわび)取りに行くだけの無益な島のごときで、日本と朝鮮の両国関係がもつれてしまい、ねじれた関係が解けずに凝り固まって、これまで継続してきた友好関係が断絶するのもよくなかろう」と喝破している。 1962年10月、韓国の金鍾泌(キム・ジョンピル)中央情報部長は、池田勇人首相や大平正芳外相との会談の席で「カモメが糞(ふん)をしているだけの竹島など爆破してなくしてしまおう」と提案したという。ともに領土問題をめぐる係争のデメリットを正確に認識した発言といえよう。1998年11月、鹿児島市内での会談前に小渕恵三首相(右)と握手する韓国の金鍾泌首相「…『緊急情報です』というラジオのニュース。アナウンサーが震える声で、『北朝鮮が発射したミサイル数発が標的を誤り、竹島に命中、島は岩一つ残らず海中に沈んでしまいました』と繰り返した」。金正恩の独裁体制を分析する論文を書きながらうたた寝したら、思わずそんな夢を見てしまった。

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    「タコ一味から独島を守るアシカ」韓国、幼児洗脳アニメの正体

    ナリスト) 「アシカが『独島守備隊』になって『独島』を守る」。昨年、こんな内容の幼児向け国策アニメが韓国で製作され、全国の幼稚園・小学校などに配布された。当時、日本でも一部の好事家(韓国ウォッチャー)の間で話題になったが、実際に鑑賞する機会がなかったためか、今では韓国でこうしたアニメが製作されたこと自体、忘れられている。最近、筆者は実際にこのアニメを全編鑑賞する貴重な機会を得た。以下、この「幼児洗脳」を目的とした反日アニメの内容と、その製作の背景について述べてみたい。 タイトルは『独島守備隊・カンチ』。「カンチ」とはアシカのことである。このアニメは3Dで製作され、10分余りの5つのチャプターがつながった1時間ほどの短編アニメである。対象である幼児を退屈させないための配慮もあるのだろう。あらすじは次の通りである。 厳然たる大韓民国の領土、独島。この島を守るのはカモメの「独島守備隊」。しかし、独島は侵略の危機に瀕(ひん)していた。独島周辺の「燃える氷(メタン・ハイドレード)」を狙って、タコの化け物が襲撃を繰り返していたからである。島の守り神・古木の聖霊が「独島を守るために、神秘の石を持っているアシカを見つけろ!」と述べたことから、カモメたちは神秘の石を持つアシカを探すために旅立つ。カモメたちは場末のサーカス一座で芸をするアシカが、実は母譲りの神秘の石を持っていることを知り、アシカを独島に連れてゆく。自らの使命に目覚めたアシカは、独島を守る覚悟を決めて、友人たちとともにタコ一味と対決する。タコ一味の卑劣な策謀によって一時は危機に陥るものの、島の中心部に埋蔵されていた巨大な神秘の石の魔力によって、敵を撃退。独島を侵略から守ったアシカと友人たちはそのまま島にとどまり、独島の守備警護に当たるのだった…。 このアニメは、慶尚北道文化コンテンツ振興院という自治体の機関とピクセル・プレイネットという企業が共同製作したもの。企画は政府機関である海洋水産部(日本の農林水産省に当たる)と慶尚北道が共同で行っており、事実上の「国策プロパガンダ映画」と見ていいだろう。報道によれば、「2015年から2年間、各分野の専門家が丹精し、徹底した企画とストーリー構成を行った」とあり、確かに随所で高度な映像技術が用いられている。 ただ、いかんせんアニメの内容が、ジブリ映画『天空の城ラピュタ』にそっくりなのである。主人公がそれと知らずに「神秘の石」を持っていたり、神秘の石が光を発して独島のある方角を指し示したり、ストーリーの最後で島の内部に埋蔵された巨大な石の力によって奇跡が起こったりするシーンは『ラピュタ』そのままである。韓国内の反応がいまひとつなワケ 作中では明示されていないが「悪役のタコ一味」はもちろん日本人である。当然、分かりやすく醜悪で卑劣なキャラクターとして描写されている。たとえ、悪役が日本人だと明示されていなくても、独島やアシカ(これについては後述)がモチーフになっている以上、韓国人なら悪役のタコが日本人を意味することくらい、瞬時に判断できるだろう。何しろ、韓国人は幼稚園・保育園の年頃から「独島は韓国の領土である」という、いわば「絶対不滅の真理」を耳にタコができるほど聞かされ、育っているからである。「日本人が海洋資源や地下資源を狙い、虎視眈々(たんたん)と独島の侵略をたくらんでいる」というのも、韓国ならではのお約束。そう思っていない韓国人は「親日派」、つまり「売国奴」である。 それでも、企画・製作サイドはこのアニメが反日感情を煽るためではなく、あくまで教育的な目的で製作されたものだと主張する。チュ・ガンホ監督はメディアの取材に対し「子供たちが今回のアニメーションを通して独島を知る契機になってくれたらと思う」「独島の自然環境と海の中の環境表現に心血を傾け、アシカを通して独島広報の役に立ってくれたらと思う」などと無邪気に語っている。アニメ『独島守備隊・カンチ』のポスター 言うまでもないが、幼稚園の園児や小学校の児童に、複雑極まりない竹島をめぐる領土紛争の経緯や、日韓両国の主張の正当性を吟味する判断能力があるとは思えない。そうした思慮分別のない園児や児童に、国策をもってこうした一方的な内容を教え込み、自国の主張を絶対的に正当化し、日本や日本人に対する敵愾心(てきがいしん)を煽り立てている。そら恐ろしい限りである。しかも、かわいらしいアニメのキャラクターを使ってである。 このアニメは昨年4月に試写会で公開され、一部の映画館でも上映され、テレビの地上波やケーブルテレビでも放映された。ただし、当初からこのアニメは劇場公開よりも幼児に対する「洗脳教育」に重点が置かれていたようである。後に慶尚北道はこのアニメのDVD1万5000枚を韓国全土の幼稚園や小学校に配布している。 ただし、昨年は話題の反日映画『軍艦島』が公開されたこともあってか、『独島守備隊・カンチ』はほとんど話題にすらならなかった。内容が説教じみている上に、ストーリーがテレビの幼児番組並みに単純でつまらなかったせいであろう。韓国のマスコミは「独島守備隊カンチ・韓国全土を強打!」といった扇情的な煽り文句で、あたかもこのアニメが全国の幼児から大好評を得ているかのような記事を掲載したが、これは事実に反すると言わざるを得ない。その後、このアニメは昨年11月に開かれた「ホーチミン・慶州世界文化エキスポ」なるイベントでも上映され、初の海外進出を果たしたそうである。主人公がアシカである理由 さて、このアニメの主人公はなぜアシカだったのか。これには、意外と深い来歴がある。実は、日本ではまったく知られていないが、韓国では「独島周辺のアシカを絶滅させたのは日本だ」という都市伝説が語り継がれており、日本糾弾のネタとして、しばしば使われている。韓国での報道を総合すると、「19世紀末まで、鬱陵島や独島周辺にはアシカが生息していたが、1904年から1911年まで日本が独島周辺で1万5000匹ものアシカを乱獲した。乱獲は1950年代まで続き、その結果アシカは絶滅した」というのである。 また、ごく少数残っていたアシカも1950年7月に独島がアメリカ軍の砲撃演習の目標となったため絶滅した、ということになっている。韓国はなぜそこまでアシカにこだわるのか。それは、日本が竹島(独島)に対する領有権を主張する根拠の一つが「日本人による竹島を拠点としたアシカ漁」だったからである。つまり、1905年に竹島(独島)が島根県に編入される以前から、日本人がこの島を根拠地としてアシカ漁を行っていたことは、既にさまざまな資料によって立証されている。これに対して韓国は説得力のある反論ができないでいる。そこで、日本の主張を逆手にとって「日本が独島のアシカを乱獲し絶滅させた!」と主張し、日本を糾弾するネタとして利用しているのである。 こうした火種があったところに、2014年12月、日本の内閣官房領土・主権対策企画調整室が、隠岐の漁師と竹島のアシカとの関わりを描いた絵本「メチのいた島」(「メチ」とは現地の方言でアシカのこと)の読み聞かせ動画を公開し、これが韓国を刺激した。韓国はこれに対抗して竹島にアシカの像を置こうとしたが実現せず、2015年8月になって竹島の船着場近くにアシカのレリーフを設置している。竹島と日本人と関わりを描いた絵本「メチのいた島」を出版した杉原由美子氏 また、韓国の海洋水産部は2014年9月、「滅亡したアシカの生息を復元する」という事業計画を公表している。もちろん、これは単なる自然保護が目的ではなく、「韓国政府が自国の領土である独島の生態系復元に努力している」ということを国際社会にアピールし、領土紛争で有利な地歩を確保しようとする下心からである。「独島守備隊・カンチ」の企画が立案され、製作が開始されたのは、まさにこの時期だったのである。日本人がアシカを絶滅させた説 さて、アニメが公開されて2カ月ほどたった6月中旬、韓国の地方紙が「日本人が独島のアシカを絶滅させた」という説がまったくのデタラメであったことを報じた。2016年6月13日、韓国の慶尚毎日新聞(ネット版)は「1950年代半ば、独島に駐在していた独島義勇守備隊の複数の隊員から『当時、アシカは最小限700頭余りが生きていた』という証言が得られた」「1960年代に独島に駐在していた海洋警察隊員と漁民が『数百頭のアシカが棲息(せいそく)していた』と証言している」「1970年代初頭に工事のため独島に渡った韓国・欝陵島の住民が『当時、アシカ数百頭が生きていた』と証言している」と報じたのである。島根県の竹島で捕獲されたニホンアシカの幼獣を撮影した最も古い写真とみられる絵はがき(島根県竹島問題研究会提供) 同紙は、アシカ絶滅の背景について「アシカからは漢方薬として重用されていた海狗腎(かいくじん、アシカの生殖器)と肉を得られた」「独島を警備していた隊員が(アシカを狙って)機関砲を撃ち、射撃訓練をしていた」「隊員の中には『海狗腎を政府の高官や軍の上層部に上納していた』と証言する者もいた」「独島周辺では韓国によるイカ漁などの漁業が盛んになり、集魚灯近くにアシカが出現すると魚が逃げるため、漁師らが追い払った」とも報じている。つまり、1970年代まで独島にアシカは生息しており、その後韓国側の乱獲や漁労行為によって絶滅したことを意味するのである。もっとも、この報道は「独島守備隊・カンチ」ほどの関心さえ呼び起こさなかった。韓国人は自らに都合の悪い、かつ日本を利する恐れのある「不都合な真実」に対しては、徹底して目をつぶる傾向が強いのである(現在、この記事は削除されてしまって読むことはできないが、記事の概要を記した新たな記事もアップされており、その概略だけは把握することができる)。 以上、反日国策アニメ『独島守備隊・カンチ』の内容と背景を見渡した。日本には、竹島にも、アシカにも、もちろん「竹島の日」にも、まったく関心がない、という人が多いことは筆者も承知している。ただし、日本人がそう思っているからといって、韓国人も同様などと考えることは大きな誤りである。 韓国には、幼少時からこうした国策反日アニメで洗脳され、事実に反する誤った歴史認識を注入され、日本に対する敵愾心を燃え立たせている国民が数多くいることを認識しておかなければならない。『独島守備隊・カンチ』は、韓国人の本性を理解するための、ある意味で良き教材でもある。領土問題に関する限り、日本人も韓国に対する甘い想念を捨て、覚悟を決める時が来ているようである。

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    南北統一旗が逆に世界に知らしめた「日本の竹島」

    てオリンピックを利用したのだろうか。「三池淵管弦楽団」と「美女応援団」を派遣し、独島(トクト、竹島の韓国名)を描いた統一旗で応援させたのは、南北の融和を図るための対南工作ともいえるからだ。 事実、2月11日、ソウルで開催された公演で、南北統一を謳(うた)う『白頭と漢拏は我が祖国』を歌唱した玄松月(ヒョン・ソンウォル)団長は、歌詞の「済州島漢拏山も我が祖国」を「漢拏山も独島も我が祖国」と替え、韓国側の歓心を買った。北朝鮮にとっても独島は、「神聖な我国の領土」だからである。 その独島が描かれた「統一旗」が登場したのは2月4日、女子アイスホッケーの強化試合で、韓国と北朝鮮の合同チームがスウェーデンと戦った会場である。この独島が描かれた「統一旗」については、国際オリンピック委員会でも「政治的に使うことは不適切」との理由で、使用を認めていなかった。それを北朝鮮の「美女応援団」は、独島が描かれた「統一旗」を使ったのである。アイスホッケーの試合で統一旗を掲げる金正恩朝鮮労働党委員長のそっくりさん=2018年2月 そこで菅義偉官房長官は翌日、「旗は竹島の領有権に関するわが国の立場に照らして受け入れることができず、遺憾だ」とした。これに対して北朝鮮の「労働新聞」は、「日本が手段と方法を選ばず、国際オリンピック委員会が、北と南が、独島が表記されていない統一旗を使用する決定を採択するための陰湿な陰謀」と報じたとして、15日付の韓国の『中央日報』(電子版)が伝えている。 だが、今回の北朝鮮による「統一旗」騒動は、「策士、策に溺れる」結果となった。英国の日刊紙『タイムズ』が「統一旗」と関連し、「独島は日本の所有」と報じたことに韓国側が抗議したことから、2月12日付の同紙の訂正記事では、竹島を「係争中の島、独島」として竹島問題が日韓の懸案である事実を明らかにしたからだ。 ただ、今回の「統一旗」騒動で明確になったことは、韓国と北朝鮮では竹島問題に対して共通認識を持っているという事実で、それは将来的に竹島問題が、南北の外交カードの一つになるということである。これまでも南北では民族の同一性を強調し、神話に登場する檀君(だんくん)の遺骨が北朝鮮で発見されたとした際も、韓国側が呼応した。平昌オリンピックとパラリンピックのマスコットの虎と熊は、その檀君神話にも登場する。現在、韓国の歴史教科書では、檀君を古朝鮮の建国者として教え、中国とはその古朝鮮の疆域を巡って争っている。そのため南北の接近は、今後も続く可能性がある。形式的な抗議で済まない竹島問題 江原道の崔文洵(チェ・ムンスン)知事は17日、2021年の第9回冬季アジア大会の南北共同開催を提案したが、平昌オリンピック施設の活用と、スポーツを通じ南北交流と和合を継続するための案だという。 しかし、北朝鮮と韓国とでは、社会体制が全く違う。今の北朝鮮は、朝鮮時代とほぼ同じ社会状況にある。宮中(金正恩氏の財布)と府中(北朝鮮政府)が分離しておらず、近代的な国家とは距離がある。その南北が接近すれば、竹島問題をはじめ歴史問題は共通の対日外交カードとなる。これは日本にとっては、願ってもないことだ。竹島は歴史的に朝鮮領であった事実はなく、北朝鮮の竹島研究も韓国側とは大同小異である。 それに今後のスポーツ大会などで独島を描いた「統一旗」を使えば、それは政治利用となる。実際の独島を「統一旗」に描くと、縮尺の関係で竹島は確認ができないほどの大きさにしかならない。それを大きく象徴的に描けば、それは政治的目的と判断され、「統一旗」を排除する理由になる。平昌五輪の開会式で統一旗を先頭に合同で入場行進する韓国と北朝鮮の「コリア」選手団=2018年2月9日 独島を描いた統一旗は、これからも登場する。韓国では、歴史の事実よりも政治的判断が優先される傾向があるからだ。数年前、「東北アジア歴史財団」では政府事業として、歴史地図の編纂をすることになった。だが縮尺の関係で独島が描かれないと、それを理由にその事業は頓挫(とんざ)してしまった。それは民間も同じで、李氏朝鮮時代の地理学者、金正浩(キム・ジョンホ)の『大東輿地図』を刊行することになったが、そこには原典にはない竹島が描き込まれていた。これは改竄(かいざん)である。 韓国と北朝鮮が接近すれば、必ず日本に歴史問題で攻勢をかけてくる。日本にその備えはあるのだろうか。近年、日本では『学習指導要領』に竹島を載せ、「領土・主権展示館」を開館したが、その内容は2007年に島根県が開設した「竹島資料館」の展示内容にも及ばない。 外務省では島根県の竹島研究の最終報告書を受け、2008年に『竹島問題を理解する10のポイント』を刊行し、今も使っている。だが韓国側ではすでに反論し、2011年には独島教材『独島を正しく知る』を開発して、小・中・高での独島教育に使用されている。 「統一旗」に竹島が描かれ、それを形式的な抗議で済ませるようでは、竹島問題の解決はおぼつかない。韓国側の竹島研究の不備を衝(つ)き、戦略的に対処できるくらいの見識がなぜ、日本にはないのだろうか。2月22日は「竹島の日」である。

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    韓国「独島研究者」の主張を私が論破する

    主権展示館」を東京の日比谷公園内に開館した。この展示館の開館については、竹島問題で日本と対立している韓国側も当然強い関心を持ったようだ。韓国のハンギョレ新聞(インターネット日本語版)は開館当日に展示内容を取材し、その日に記事を掲載した。その記事の中には、韓国側の領土問題理解のレベルを示す面白い一文がある。次の文章だ。 展示には、1877年明治時代に日本の最高行政機関だった太政官(だじょうかん)が江戸幕府と朝鮮政府間の交渉(鬱陵島爭界)の結果「竹島外一島(一嶋・独島)は、日本と関係ないということを肝に銘じること」を内務省に指示する「太政官指令」など日本側に決定的に不利な史料は展示していない。 この「太政官指令」というのは、明治10(1877)年3月に明治政府の最高国権機関である太政官を代表する右大臣岩倉具視が、内務省からの問いに対して「伺之趣竹島外一島之儀本邦関係無之儀ト可相心得事」(伺いの趣旨の竹島ほか一島の件は本邦とは関係の無いものと心得るべし)と指示した指令文のことである。この指令が出されたのは、明治9(1876)年10月、島根県が「日本海内竹島外一島地籍編纂方伺」と題する文書で、隠岐の彼方にある「竹島外一島」(「竹島」あるいは「磯竹島」と「松島」)を島根県の地籍に入れたいと内務省にお伺いを立てたのが契機だ。2018年1月、「領土・主権展示館」の開館式で、展示の説明を受ける江崎領土問題相(左端) このとき、島根県が提出した文書に添えられた補足説明書や絵図面(磯竹島略図)を見れば、「竹島あるいは磯竹島」は朝鮮の鬱陵島であり、「松島」が今日の日韓間で領土紛争が継続している竹島であることをわれわれは容易に知ることができる。だから、太政官指令について調べた大抵の人は、太政官が鬱陵島と今の竹島を本邦とは関係無いと判断したと思ってしまう。ハンギョレ新聞の記事も、また韓国の「独島(トクト、竹島の韓国呼称)」に関する多くの研究論文も、そういう理解の上に立って書かれている。 その結果、太政官指令の意味は「日本によって独島に対する韓国の領有権が認められていた」と考えられている。さらに、1905年2月に日本が竹島を無主地として島根県に編入したことについても、「無主地という主張が偽りだということは、何よりも太政官指令により立証される」という結論に結び付けられている。 ある韓国の大学教授はこんな主張までしている。「今まで日本政府が製作したどんな広報資料にも太政官指令に関する内容はありません。独島は日本の固有領土という彼らの主張を正面から否定しているからでしょう。まさにこの点を強調すれば日本政府の主張を無力化できます」。日本政府を論破できる超強力な証拠? 要するに、太政官指令の存在によって、日本政府の主張は虚偽であることが明らかになっていると韓国側はみているのである。竹島問題で日本政府を論破できる超強力な証拠を掴んだという思い込みが、韓国政府や韓国の「独島」研究者、マスコミ、さらにはそれらの影響を受けた韓国国民に広がっているのだろう。  ところが、「事実は小説よりも奇なり」ということわざがあるが、この問題、実は太政官が今の竹島を本邦とは関係の無いものと判断したことを全く証明できない。それどころか、太政官が「松島」と捉えていた島が、実際は鬱陵島だったことが明らかなのである。 今、多くの人が「言っていることが矛盾している」と感じられたかもしれない。この結論について、筆者が過去にiRONNAへ寄稿した「太政官指令「竹島外一島」の解釈手順」「太政官指令「竹島外一島」が示していたもの」という二つの文章で詳説したことがあるので、ここでは繰り返さない。要するに、明治10年太政官指令は、今の竹島を対象として発されたものではないし、何の判断も下していないのだ。 韓国側の論者たちの史料分析ではそういうことには全く思考が及ばないのだが、ここではひとまず置いておく。筆者が本稿で述べたいのは、仮に韓国側の言うように、明治10年太政官指令が今の竹島のことを「本邦とは関係の無いものと心得るべし」との指示だった場合、現在の竹島領有権論争にどのような影響を及ぼすかということだ。 現代の領土紛争を判定するとき、国際法がその基準となる。領土紛争に関する判決を多数下している国際司法裁判所は、領土紛争は、その土地は紛争発生の時点でいずれの国の領土だったかということが判断の軸になると示している。つまり、その土地をどちらの国が正式・公式に、また適法に領土として実効支配していたかどうかが鍵になる。 そういう国際法的な基準から考えた場合、本来、日本側が言うべきことはそんなに多いわけではない。既に政府(外務省)の『竹島問題10のポイント』などに簡潔にまとめられていることだが、ごく簡単に言えば、竹島は江戸時代(江戸時代には松島と呼ばれていたが)に朝鮮国から何の異議も受けることなく日本人が利用していた時期がある。そのときから日本の領土と言える状態にあったが、さらに明治38(1905)年に閣議決定と島根県告示によって竹島を公式に島根県の区域として日本領土に編入して、その後、領土としての実効支配を継続的に行って来ており、これらのことはいずれも明確な史料があって裏付けられている。そういう史料が「領土・主権展示館」にも展示されているのだろう。鬱陵島のすぐ東に韓国が竹島と主張する「于山」が描かれた地図 その間、韓国側には、日本政府が「韓国側からは、日本が竹島を実効的に支配し、領有権を再確認した1905年より前に、韓国が同島を実効的に支配していたことを示す明確な根拠は提示されていません」と説明するように、竹島を実効支配していたことを示す証拠は全くない。「于山島」とか「勅令41号の石島」などが韓国の「独島領有権」の根拠として主張されるが、これらはいずれも虚偽であり朝鮮または韓国が竹島を実効支配していたという史実は全く証明されない。竹島論争における太政官指令の意味 その後、竹島の日本領土としての地位の変化について注意を要するのが、サンフランシスコ講和条約である。日本の戦後処理を定めたこの条約で、戦後の日本の新しい領土範囲も決定された。日本は朝鮮や台湾など大日本帝国時代の領土のかなりの部分を放棄したものの、竹島は日本が放棄すべき領土の範囲に指定されず(条約第2条a項)、日本の領土であるという地位は変わらなかったのである。ところが、条約発効を待つばかりだった昭和27(1952)年1月、韓国政府がいわゆる「李承晩ライン」を設定してその中に竹島を取り込む事件が発生した。これに日本政府が抗議したのが竹島紛争の発生と目される。 以上、日本の「竹島領有史」を踏まえて、もし韓国側の言うように明治10年の政府が今の竹島について「本邦とは関係の無いものと心得るべし」と指示していたとして、どういう影響を及ぼすかというと、何の影響もないのである。 そう言える理由は、明治10年太政官指令が、内務省からの質問に対して太政官が回答したという「日本政府内部のやり取り」だからである。これが、紛争相手である外国に対して回答したのであれば、禁反言の原則によって、後になってから「いや、あれはやっぱり日本のものです」などと言い出すことは通用しない。しかし、太政官指令は、質問の出どころである島根県を含めても、あくまで日本国の内部の話なのだ。だから、後になって「これは日本のものだ」と言っても外国との関係では別に問題は生じない。 また、明治10年太政官指令は、仮に韓国側の間違い解釈によるとしても、今の竹島を日本の領土ではないと太政官が「思った」から、それを下級機関に指示したに過ぎない。太政官が何かを「思った」からといって、それだけで竹島の客観的な史実に何かの変化が生じるわけではないのである。 例えば、前項で「日本によって独島に対する韓国の領有権が認められていた」という韓国側の主張を紹介したが、日本の太政官が「その島は日本の領土ではない」と考えたからといって、自動的にその島が現実に外国の領土になるわけではないのは当然だ。重要なことは、客観的な史実として見た場合に竹島がどういう位置づけを経て来たのかという実体的な問題の方であって、それが領有権論争において考慮されるべきことなのだ。 現実は、竹島は朝鮮・韓国の領土であった史実はないし、日本もそれまで竹島を公式に領土扱いしていたわけではなかったので、1905年に日本政府が竹島を領土編入する前に調査して「無主地」と判断したのは正しかった。したがって、無主地を前提とした日本による竹島の領土編入は、明治10年の太政官が何を思っていたにせよ、有効であることに変わりはない。 さらに、太政官指令の存在と、現代の日本政府の「竹島は日本固有の領土」という言い方は矛盾するという韓国側からの指摘がある。だが、明治10年の太政官が今の竹島について「日本の領土ではない」と考えたとしても、先述したように竹島の歴史を通覧すれば、江戸時代の日本人による竹島(松島)の利用実績という史実が変化することはあり得ないし、太政官指令後の日本領土への編入やそれに引き続く実効支配に何の傷をつけることもない。太政官指令は領有権論争とは無関係 その間に竹島が現実に韓国の領土であったという史実が何一つ証明されない以上、「竹島は日本固有の領土」という事実は何も変化しない。岩倉具視の主観が客観的な史実を変えることなどないのだ。明治10年の太政官が仮に今の竹島について「日本の領土ではない」と判断したとしても、竹島の客観的な歴史においてそれはほとんど何の意味もないということをご理解いただけるだろうか。以上を要すれば、まず「明治10年太政官指令は今の竹島を日本とは無関係と指示した」という韓国側の理解自体が誤りであって、そもそも彼らの主張は成り立たない。 ということで、明治10年太政官指令は、そもそも日本の竹島領有権を否定も肯定もしない領有権論争に関係のない史料なのだ。だから、日本政府がそういう領有権に関係のない史料を展示しないのは当然だと筆者は考える。 太政官指令が「日本側に決定的に不利な史料」だというのは、表面に見える磯竹島略図だけに気をとられて領有権に影響しないことをさも重大事件であるかのように主張しているに過ぎない。しかも、韓国の政府や研究者、マスコミは史料の分析の方法も分からず、国際法上の領有権確定の理屈も分からないという二重の間違いを犯している。日本政府がそんなものを相手にする必要はさらさらないのだ。韓国・鬱陵島の独島(竹島)博物館からケーブルカーで行ける独島(竹島)展望台。韓国側は、ここから87.4キロ先に竹島が見えると主張する。眼下に見えるのは道洞(トドン)港 もっとも、もし将来、竹島問題が国際司法裁判所で審理される事態が生じ、その中で韓国政府が明治10年太政官指令を持ち出すなら(間違いなく持ち出すだろうが)、そのときには日本政府としても何らかの応答をするのだろう。だが、韓国政府が問題解決に向けた何の動きも示さない現状で、日本政府がバカな議論に付き合って領有権に関係のないことまでわざわざ説明したり資料を展示したりするなら、それは先走り過ぎということになるのではないだろうか。 韓国側の論者たちが「日本政府は自分に決定的に不利な太政官指令については知らないふりをしている」などと批判するときには、日本側としては「あなたたちの言うことが嘘でも本当でも、日本の領有権には別に影響しませんからね」とでも言って涼しい顔をしていればいいのだろう。参考として紹介しておきたいが、「仮に今日の竹島が明治10年の太政官指令の対象であり日本政府がこの時点で領有意思を有していなかったことが知られるとしても、後年、領有意思を持ち、国際法上の領土取得方法に則して当該島を領有することが妨げられることはない」という基本的な指摘が、国際法に詳しい日本の研究者から既に今から5年近く前に説明されている(『島嶼研究ジャーナル』第2巻2号(2013年4月30日)掲載論文「元禄竹島一件をめぐって―付、明治十年太政官指令」)。 だが、韓国の研究者たちはこういう指摘について検討することはない。筆者は太政官指令に言及した韓国の「独島研究者」たちの論文にかなり目を通して来たつもりだが、上の指摘に対する反論は見たことがない。そして、5年近くたっても冒頭に紹介したような記事を書くのが彼らの問題認識の現実だ。 竹島の領有権論争は「実効支配」の実績がいずれの国にあるかを軸として、いずれの国家がその土地をいかに具体的に領土として取り扱って来たのかということをめぐって議論されるべきだ。日本政府のそういう主張はいずれも史料の裏付けがあることなので、韓国側は否定しようがない。具体的な領土取り扱いと無関係な史実は、本来、竹島領有権論争で取り上げられるべきではないのだが、現状の日韓の論争ではこの太政官指令問題を含めて領有権に関係のない歴史的事件が実に多く議論されている。しかし、それは韓国側の研究者たちが裏付けのある日本政府の主張を否定することができないために、ごまかしで何でもかんでも「独島領有権」にこじつけて主張して来るという自転車操業をやめないだけだ。日本側としても、いちいちそれが間違いであることを説明することが必要になって反論しているだけで、本当に必要とされる領有権論争はとっくに決着はついているのである。 竹島を一日も早く日本に取り戻したいと思う日本側の人たちが、韓国の研究者・マスコミなどが自信満々のふうに述べるこれら本来無意味な言説に惑わされることなく、竹島奪還への歩みが着実に進んで行くことを望みたい。

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    竹島紛争で日本が「敵国」? 韓国海軍、驚愕の空母導入計画

    も」の空母への改修が決まれば、海上自衛隊の悲願である“空母保有”が現実のものとなる。 このような中、韓国の保守系有力オピニオン誌『月刊朝鮮』1月号が、「英『クイーン・エリザベス』が目標とする空母のモデル」と題する、韓国海軍の空母建造計画をすっぱ抜いた。 同誌によれば、韓国海軍は朴槿恵政権であった2015年4月、北朝鮮の脅威と日中の空母保有に対応するため、韓国の大手造船会社「大宇」などに、空母建造に関する検討を依頼した。同誌は大宇などが作成した597ページに及ぶ報告書を入手したという。韓国の空母導入計画 周知のとおり韓国は、日本と同じく米国と軍事同盟を結んでおり、また、日本とも「日韓秘密軍事情報保護協定」(日韓GSOMIA)を締結している。日韓はいわば、準同盟国ともいえる関係だが、韓国海軍に提出された報告書には、空母の必要性の一つとして日本との戦闘が挙げられているのだ。 報告書には、「日本と領有権紛争が生じた際には、編隊級(2〜4機)以上の戦闘機を出撃させて、敵の攻撃編隊群の形成を妨害する任務を遂行する。この任務を遂行するためには、空母に30機以上の艦載戦闘機を搭載しなければならない」と、対日戦を想定した任務と要望性能が記載されている。 日本との領有権紛争とは、竹島を巡る争いを指す。竹島は現在、韓国が不法占拠しており、「独島警備隊」という対空砲まで装備した武装警察が警備し、韓国軍は年に2回、陸海空軍海兵隊と海洋警察まで動員する大規模な「独島防衛訓練」まで行っている。 日本が、中国の海洋進出と北朝鮮の核・ミサイルに対処しなければならない情勢の中で、準同盟国と位置付けられる韓国に紛争を仕掛けると本気で考えているのだろうか。もし、そうであれば、現状認識が根本的に間違っているといわざるを得ない。 報告書に記載された空母保有の必要性は、対日戦だけではない。第一の理由として、朝鮮半島有事に際して、黄海と日本海に進出し、北朝鮮の指導部や主要施設を攻撃する「戦略的麻痺戦」の実行を挙げ、次に、朝鮮半島有事に中国軍が介入してきた場合の航空阻止作戦を挙げている。 そして、これら任務を遂行するためには、イギリス海軍が2017年2月から実戦配備した空母「クイーン・エリザベス」を目標とする空母を建造・保有する必要があると説いている。日米英が保有する最新の“空母”と韓国が導入を検討する空母のモデルを比較したものが下表だ。※ 「いずも」の諸元は就役時のもの、搭載戦闘機数は改修後の予想(著者作成) 韓国海軍が、日米英という第2次世界大戦当時からの海軍大国を凌駕する、あるいは一挙に肩を並べる空母の保有を検討していることが分かるだろう。だが、果たして皮算用通りに事が運ぶのだろうか。 韓国の空母導入計画が明るみ出たのは、今回で3回目。最初は1996年に竹島を巡り日本との対立が深刻化すると、金泳三大統領が計画を承認した。次は2013年に軍人最高位の合同参謀本部議長が、空母保有の検討計画を発表したが、いずれも予算面の問題で頓挫している。海軍力の土台がない だが筆者は、仮に予算の問題をクリアして建造にたどり着いていたとしても、韓国海軍が空母を作戦配備することはできないのではないかと考える。 韓国海軍は、海上自衛隊に刺激されたためなのかは定かではないが、次々に新型艦艇を導入するなど近代化に躍起になってきた。しかし、日韓間での政治的摩擦にまで発展した強襲揚陸艦「独島」は、レーダーや武器管制システムに欠陥があるまま就役し、2015年の韓国独立70周年を記念する竹島への派遣には、スクリューの故障で参加できないという失態を犯した。また、韓国初の国産潜水艦の「孫元一」型は燃料電池の不具合で数日間しか潜行できず、基準値よりも大きな水中雑音を発するため、まともに作戦行動がとれないとも伝えられている。 韓国が空母保有を検討しているという報道を受けて、前出の関係者に連絡してみたところ、彼は「絵に描いた餅」と一笑に付した。 「海軍力の整備は、国家の技術力と国民の海洋への関心、海軍の練度を土台として、100年単位で培っていくもの。経済力をつけた韓国は、“先進国クラブ”への仲間入りの象徴として空母を持ちたいのだろうが、日米英と比肩する土台にそもそもない。海上自衛隊観艦式に参加した韓国海軍の艦船=2015年10月18日午後、神奈川県沖の相模湾(酒巻俊介撮影) そして、空母は1隻建造したところで、無用の長物でしかない。護衛艦や潜水艦と『空母打撃群』(CGS)を編成してはじめて、空母の持つ攻撃力を投射できる。だが、海上自衛隊であってもCGSを維持することは予算的・人的に困難。韓国海軍が仮に空母を持ったところで、“岸壁の守り神”よろしく巨大な広報施設になるだけだろう」(前出の関係者) 報告書では、韓国海軍が空母を保有した時の期待効果として、「国威宣揚」を挙げている。艦載戦闘機を含めて1兆円近い予算を投じなければならない韓国空母は、建造されれば国民のプライドを満足させる効果はあるだろう。 しかしながら、米軍のTHAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備を受け入れただけで、中国から経済的に干される仕打ちを受けた韓国が、朝鮮半島有事に際して、北朝鮮を空爆し、中国軍戦闘機の接近を阻止するための空母を黄海に投入できるのであろうか。この一点だけを取り上げても、韓国海軍の空母保有計画が前提から破綻していることがうかがえる。  韓国誌が暴露した韓国海軍の空母保有計画が教えてくれたことは、韓国の反日姿勢が「従軍慰安婦」などの歴史的・政治的問題のみならず、軍事的にも同様であるという警告だ。

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    北朝鮮乗っ取り「平壌五輪」金正恩の真意

    平昌冬季オリンピックが平壌に乗っ取られるのではないかという懸念が現実味を帯びてきている。1月22日、韓国の国会議員会館で開かれた韓国の「党政協議会」で与党「共に民主党」政策議長の金太年(キム・テニョン)は「地球村の祝祭である冬季オリンピックが来月、平壌で開かれる」と発言し、周りが慌てる珍風景がテレビを通して伝えられた。国会議員すら平昌五輪を「平壌五輪」と勘違いするほど平和の祭典であるはずの五輪は南北の政治ショーの場に変わりつつある。 そもそも北朝鮮で五輪参加の資格を取得したのは2人。フィギュアスケート男女ペアのみだ。北朝鮮が2人のために140人の芸術団に229人の応援団、各種名目の支援チームなど500人にのぼる人員を送るわけがない。他の目的があるからだ。 時間稼ぎと国際世論の分断、韓国国内の攪乱(かくらん)、北朝鮮のイメージ改善などさまざまな目的もあるが、何より重要なのは国際社会の包囲網を崩すことだ。国際社会の制裁に苦しむ金正恩(キム・ジョンウン)政権は、平昌五輪を利用して制裁の包囲網崩しに取り掛かっているが、まずは一番もろい韓国にターゲットを絞ったとみられる。 その思惑は五輪が始まる前に既にはっきりと表れている。平昌五輪の前夜祭に芸術団を派遣すると表明した北朝鮮は1月21日、玄松月(ヒョン・ソンウォル)を団長とする実務者代表団を韓国に送り込んだ。韓国のホテルに到着した北朝鮮応援団とテコンドー演武団の一行=2018年2月(共同) 一時、金正恩委員長の「愛人」との報道がながれ、韓国でその名が知られるようになった玄の訪韓は、世界中の注目を浴びた。北朝鮮の存在感を遺憾なく世界中に知らしめた玄の訪韓は、韓国に「南南葛藤(韓国国内の世論を分断し、韓国人同士で喧嘩をさせること)」を誘発、反発を買う場面もあったが、なにより「5・24措置」(2010年、北朝鮮が韓国の軍艦を爆沈させ、40人の兵士が水死、6人が失踪した事件を受け、韓国政府が科した制裁措置)を無力化するという目的の一部は達成した。 現在南北をつなぐ陸路は主に三つ。南北軍事境界線沿いに設けられた南北共同警備区域の板門店を通るルート、金大中(キム・デジュン)大統領時代に着工、2004年に稼働をはじめた「開城工業団地」を経由して韓国の坂州市に至る京義線ルート、そして朝鮮半島東海岸沿いの金剛山観光のために開いたルートだ。 玄が韓国にやってきたのは開城工業団地ルートだったが、直後の1月23日、金剛山で行われる予定の文化行事(後にキャンセル)のための施設点検名目で北朝鮮を訪れる韓国代表団は金剛山ルートをつかった。これで制裁を課した三つのルートのうち二つが事実上、「開放」されたことになる。 北朝鮮は、当初、芸術団員140人は板門店ルートを通って韓国を訪問したいと持ちかけたが、土壇場(どたんば)になってルートを変えた。五輪開幕まで4日しかない2月4日夜、北朝鮮は唐突にも北朝鮮の芸術団「三池淵管弦楽団」を万景峰号にのせて海路を使って韓国に行くと通報してきた。 目的は韓国独自制裁を無力化するためだ。2010年5月以降、韓国は北朝鮮の船舶の韓国港へは接岸を禁止している。朴槿恵(パク・クネ)政権時代の2016年3月以降、韓国政府は北朝鮮に寄港したことのある船舶は180日間韓国の港に寄港できない措置を取った。そのような制裁措置を取り崩すために、いま南北が共に躍起になっている。南北の不透明な関係 三池淵管弦楽団一行が平壌を出発したのは2月5日、韓国政府の韓国政府が海路を使っての入国を許可するかしないかで「慎重に検討」している最中だった。文在寅(ムン・ジェイン)政権は「例外措置」として万景峰号の入港を認めると発表したが、事前合意があったとしか思えない。海路の利用は合意文書にはなかったが、水面下で南北は、北朝鮮代表団の訪韓につき、原則的に如何(いか)なるルートを通じてやって来ようが許容することにしたのではないか。警官隊と入港に反対する人たちが衝突する中、韓国東部・東海市の港に入港する北朝鮮の貨客船「万景峰92」=2018年2月(共同) 空のルートもそうだ。1月31日、韓国はチャーター便を借りてスキー選手を含む45人の代表団を北朝鮮に送った。韓国政府は、アジア最大規模を誇る馬息嶺スキー場で北朝鮮選手らと合同訓練を行うために選手団を送ると説明したが、目的は他にあったようだ。北朝鮮に送り込んだ選手らは平昌五輪の出場権を持っていない選手のみ。しかも訓練はたったの3時間ほどだった。 国連制裁決議「2270号」は、国連加盟国は、北朝鮮に航空機、乗務サービスを提供してはならないことになっている。しかもアメリカは北朝鮮に乗り入れした飛行機のアメリカへの入国を禁止する措置を取っているが、文政権は「例外措置」として北朝鮮へ航空機を飛ばし、閉ざされた空路を開けてあげたのだ。 平昌五輪が開幕する9日にソウルを訪問すると発表した北朝鮮の金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議議長(名目上北朝鮮を代表する役職)は、世界中のほとんどの国が乗り入れを拒否する高麗航空を利用するとの情報もある。これも文政権は例外措置として認めるとみられる。 韓国の有力日刊紙「朝鮮日報」は7日付社説で「文政権は例外を乱発して対北朝鮮制裁の原則を取り崩し、効果が表れ始めた制裁を前面にたって揺さぶっている」と批判した。平昌五輪の開幕式に出席するため代表団を率いて訪韓するアメリカのペンス副大統領は「五輪メッセージが北朝鮮にハイジャック(拉致)されようとしている」「韓国と北朝鮮がオリンピックで如何(いか)なる協力をしようとも国際社会で孤立させなければならない北朝鮮という国家の本質を隠すことはできない」(2月5日、アラスカにて)と南北の不透明な関係に懸念を示す。 ところが、韓国の与党、共に民主党議員の一人はペンス副大統領の訪韓を「めでたい家に、哭(こく)しにくるんだ」とアメリカを批判、安倍総理の五輪出席を「他人の宴に出て勝手に踊る(『グッ』と呼ばれる韓国シャーマニズム儀式をする)つもりだ」と批判する。 文大統領の対北朝鮮政策の助言役で左派陣営の重鎮である統一部元長官の丁世鉉(チョン・セヨン)は、「北朝鮮が憲法上の国家首脳である金永南を平昌五輪に送るのには対話へのメッセージが盛り込まれている」と語り、南北首脳会談の話を持ち込むだろうと歓迎する姿勢だ。北朝鮮も韓国も勘違いしているとしか思えない。平昌五輪は南北の祭りではなく、地球人の祭りのはずだ。(文中、一部敬称略)

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    南北統一五輪で文在寅が狙う韓国保守派「根絶やし計画」

    重村智計(早稲田大名誉教授) 韓国人は「統一」の言葉に憧れ、心躍らせる。金大中(キム・デジュン)元大統領や盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領は、この感情を利用し支持率を上げた。北朝鮮も韓国から資金を獲得するために、「夢見る統一」の言葉で韓国人の心をつかんだ。だが、さすがの韓国人も南北指導者の「三文芝居」にようやく気が付いたようだ。女子アイスホッケーの南北合同チーム結成に50%が反対し、賛成は40%にとどまった。南北指導者の陰謀はかつての力を失っている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率も急落した。 南北の陰謀は「同床同夢」に近い。何より北朝鮮を延命させる「制裁破り」で協力している。韓国では、左翼政権が長期独裁化を目指し、政権内の極左グループは北朝鮮による南北統一に憧れる。「統一旗」の入場は、童話の「裸の王様」の再現だ。「統一」は現実的ではないのに「統一五輪」とはやし立てている。 北朝鮮は開会式前日の8日に、平壌で人民軍創建70周年の軍事パレードを見せ、平和の祭典に「凍風」を送った。また一方で、金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長を送り込む「微笑作戦」を見せた。制裁対象の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」が芸術団「三池淵(サムジヨン)管弦楽団」団員を載せて韓国に入港した。 万景峰号は、石油製品を満タンに入れて帰国するとの指摘がある。まさに南北協力の制裁破りだ。金永南氏に権限はほとんどない。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は妹の金与正(キム・ヨジョン)氏を9日、ソウルに派遣した。金委員長が信頼する唯一の人物である。開幕式の翌日に文大統領との昼食会が設定されたが、南北首脳会談について話し合うとの観測がしきりだ。2018年2月9日、韓国・仁川国際空港に到着した金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏(中央、聯合=共同) 軍事パレードではひな壇の顔ぶれが注目された。なぜ平昌五輪前日に軍事パレードを行うのか。金委員長による軍の完全掌握と「党優位」の誇示に必要だった。 社会主義国家では「共産党が軍に命令する」。父親の金正日総書記は「先軍政治」により、「軍が党に優越」する体制を築いた。金委員長は「党が軍に指示する体制」復活に政策転換したが、軍幹部の抵抗が激しく、多くの幹部が処刑、追放された。 人民軍創建記念日は、昨年までの4月25日から2月8日に変更された。朝鮮労働党の創建記念日は1945年10月10日である。現在の朝鮮人民軍が創設された1948年2月8日を記念日とすることで、「党優位」の論理につながるからだ。4月25日は1932年に満州で創設された「朝鮮人民革命軍」(抗日遊撃隊)の記念日で、「軍優位」の理屈が残ってしまう。つまり、8日の軍事パレードは軍の抵抗勢力への「勝利宣言」で、どうしても来年まで延期するわけにはいかなかったのである。韓国は密かに巨額資金を送った? 米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席は開会式に出席しない。韓国の置かれた状況を物語る。安倍晋三首相が辛うじて文大統領のメンツを救った。安倍首相の参加には批判もあるが、日本がはっきりものを言うためには正しい外交選択だ。韓国の文化は、はっきりものを言い合うのに慣れている。それなのに日本の政治家は遠慮しすぎた。 けんかの必要はないが、日本の立場は明確に伝えるべきだ。信頼関係を築くには、隣の大国としての品位が大切だ。慰安婦問題で攻撃される朴裕河(パク・ユハ)教授や李栄勲(イ・ヨンフン)教授らに、安倍首相との面会の機会を与えてほしい。 北朝鮮は「大韓民国」を認めない。「存在しない」とのフィクションを維持しているからだ。日本では理解できないだろうが、「正統性」のためだ。正当性は儒教文化最大の政治的基準である。北朝鮮は、金日成主席が日本帝国主義と戦争し「勝利した」事実を「国家の正当性」にする。韓国には、日本帝国主義軍と戦争した指導者はいないから「正当性はない」として、「大韓民国は存在せず、南は米帝国主義の傀儡(かいらい)政権」とのフィクションにしがみついている。 平昌五輪を「平壌五輪」と批判する人たちがいる。ソウルでは「北朝鮮参加のために巨額の資金を送った」との声がささやかれる。金大中元大統領は南北首脳会談のために、「5億ドル(約500億円)」の現金を送っていた。北朝鮮との交渉には「数億ドルの現金が必要」というのが常識だ。車両で現金が運ばれたとの観測も出ている。北朝鮮スキー場での南北合同練習にも、使用料が支払われたのか。韓国北東部、麟蹄のホテルで開かれた韓国側主催の夕食会に参加した北朝鮮応援団の女性ら=2018年2月7日(韓国統一省提供・共同) 文大統領の支持率は70%から50%台に落ちてしまった。なぜ北朝鮮の五輪参加を求めたのか。文大統領の学生時代は、北朝鮮に国家の正当性があると主張する『解放前後史の認識』という著作シリーズが、学生の間で大人気だった。文大統領と任鐘晢(イム・ジョンソク)大統領秘書室長らは、この著作に影響を受けた世代だ。 文政権の狙いは、五輪後の南北首脳会談と北朝鮮への制裁緩和だ。その次は憲法改正を行う。韓国大統領の任期は1期5年だ。それを2期8年が可能になるように変更し、文大統領も再選出馬できれば、およそ10年間政権を握れる。その間に韓国の保守派を根絶やしにする戦略だ。 だが、文政権には、北朝鮮が「南朝鮮革命と軍事統一」の戦略を捨てていないとの現実認識はない。米中央情報局(CIA)のポンペオ長官は1月23日に「北の核開発の目的は朝鮮半島再統一だ」と韓国に警告した。これまでは、米国の攻撃を抑止するためとの判断が一般的だった。「再統一戦略の一環」という認識を打ち出したことで、北朝鮮の統一戦略に関する文書や証拠を手に入れた事実をうかがわせた。米国は、韓国への軍事侵攻と同時に米国への核ミサイル発射の危険があると受け止めている。 宴の後には、北の核とミサイルの実験が待っている。韓国世論は分裂し、文在寅大統領の支持率は下落するだろう。北朝鮮への制裁はさらに強化され、北では軍と党の摩擦が強まる恐れがある。朝鮮半島をめぐる緊張は高まる一方だ。

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    「スポーツの上に政治がある」平昌五輪、統一コリア実現の舞台裏

    も、北朝鮮オリンピック委員会は正式手続きを行っておらず、「五輪不参加」というのが大方の見方であった。韓国専門家の中には「100%参加は有り得ない」と断言する人もいたほどだ。2018年の「新年の辞」を発表する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信撮影・共同) しかし、締め切りを過ぎても、国際オリンピック委員会(IOC)は諦めなかった。本来なら、この時点でエントリーがなければ参加できない。しかし、トーマス・バッハ会長は「最終エントリーである大会1カ月前の個人エントリーまでに手続きをすればOKだ」と表明したのである。 五輪参加で最も重要とされるのはエントリーの有無だ。公平性を保つための伝統的なルールであり、ミスをすれば国内オリンピック委員会(NOC)の委員のクビが飛んでしまった例もある。だからこそ、バッハ会長の表明は異例中の異例、いやこれはもう「特例」と言っていい。五輪の伝統を崩してでも、北朝鮮の参加を最後まで待とうとしたのである。この時点で、筆者はIOCが平昌五輪組織委員会、南北両国のNOCに水面下で働きかけているのではないかと思っていた。 なぜなら、北朝鮮には1996年からIOC委員として活動する張雄(チャン・ウン)氏がいるからだ。IOC委員はオリンピック理念を実現するために貢献する使命がある。今年一杯で退任する張委員が「最後の奉仕」として南北友好の五輪実現に努力しないはずがない。五輪運動に携わり、彼自身を見てきた筆者にはそう見て取れた。 ただ、政治が絡む問題は非常に繊細な対応が必要なのは言うまでもない。昨年6月、張委員は「スポーツの上に政治がある」とメディアに語り、統一コリアチームの実現が簡単ではないことを示唆していた。一方で「(北朝鮮と韓国の)2カ国が決めることではなく、IOC委員が話し合う問題」と断言もしていたのである。いち早く「統一コリア」を実現した日本人 実際に、金委員長の「新年の辞」を皮切りに急展開した「統一コリア」の動きは、1月20日にIOC本部で行われた平昌組織委、両国NOCとの四者会談で結実する。バッハ会長は平昌五輪に北朝鮮選手22人の参加や南北合同行進を認めたことを発表したのである。そして、五輪初の南北合同チームが女子アイスホッケーで実現することになった。 しかし、新年の辞から南北会談、四者会談という、わずか半月の流れは外交常識に照らし合わせても、あまりに早すぎ、出来過ぎの感は否めない。この急展開を冷静に読み解けば、「北朝鮮のエントリーを待つ」と事実上認めたバッハ会長の発言がサインになる。新年の辞はあくまでのろしであり、バッハ発言のあった昨年12月以降にこのシナリオが大きく動き出したとみるのが合理的だろう。2017年6月、世界テコンドー選手権が行われた韓国・茂朱で、板割りを披露するIOCのバッハ会長(共同) それは昨年6月、バッハ会長が世界テコンドー選手権の閉会式に出席するために韓国入りしたところから始まる。文在寅大統領が示した南北合同チームの結成案について、バッハ会長は文大統領の表明に感謝した上で「五輪は相互理解や対話、平和の精神に基づいている」と述べている。しかも、北朝鮮政府との交渉のキーパーソンとなる張委員は、元世界テコンドー連盟会長でもあった。名誉総裁として世界テコンドー選手権に来韓した張委員とともに、IOCは北朝鮮へのアプローチに本腰を入れたはずだ。 実際、IOCは文大統領との会談後、北朝鮮選手が平昌五輪に参加できるように支援することを確約している。この支援を決めた理事会から、IOCによる統一コリア実現への具体的アクションが始まったのだろう。 実は過去にも「統一コリア」を実現した人物が日本にいた。1991年、千葉県で開催された世界卓球選手権を成功に導いた当時の国際卓球連盟(ITTF)会長、荻村伊智朗氏である。荻村氏は実現のために、自ら北朝鮮に何度も出向いて、選手強化に励んだ。世界一を競う場で実力が違いすぎれば、チームとしてまとまらないからだ。荻村氏の努力の結果、南北の実力差は解消され、参加が実現した。南北の卓球選手はともに戦う空気が生まれ、統一旗の下で素晴らしいパフォーマンスを披露し、女子団体では強豪中国を破って優勝したのである。 この時の北朝鮮側の交渉相手が張雄委員であり、彼の統一コリアへの情熱もこの結果に結びついている。また、今回の統一コリア実現に慎重だったのも、あの世界卓球の経験があったからだ。だが、並大抵なことではないからこそ、女子アイスホッケーの合同チームも使命のために団結し、想像以上の力を発揮できる可能性がある。もし、このチームが決勝ラウンドに進むことになれば、その反響は想像を絶するだろう。スポーツが政治を利用する だが、女子アイスホッケーをはじめ、統一コリアに対して「スポーツの政治利用」「文政権の行き過ぎた北朝鮮融和策」などと批判的な意見が韓国国内でも多く聞かれる。確かに、五輪では過去にも「スポーツの政治利用」に対する批判の声が挙がったことはある。その代表的な大会が1936年のベルリン五輪だ。ナチス指導者、アドルフ・ヒトラーが国威発揚の機会として利用し、「ナチズムにオリンピックが利用された」と言われる。しかし、ヒトラーが国を挙げて作り上げたベルリン五輪の遺産が今も受け継がれていることも事実である。聖火リレー、開会式の入場行進、放鳩、これらはすべて「平和のシンボル」として継承されている。 それだけに、今回の統一コリア実現を「スポーツの政治利用」という一方的な視座で捉えるべきではない。五輪の原点とは「スポーツによる世界平和構築」である。1894年6月23日にIOCが創設されたのは、帝国主義が蔓延する欧州で世界戦争の危機を感じたからだ。古代オリンピックを復活させ、世界の若人が同じルールの下に競技することで、互いの尊敬と友情を育むことを知る機会を創出したかったのである。 また、五輪はたとえ国家間の紛争状態があっても、この祭典の期間は中断して参加しなければならないという「休戦」の思想がある。これは古代オリンピックから受け継ぐ尊い精神だ。実際、1992年のボスニア紛争で、当時のサマランチ会長は世界で初めて「五輪休戦」を訴えた。それ以降、開催のたびに国連総会でこの思想への支援決議が採択されている。 金正恩政権は長距離弾道ミサイル「火星15」発射実験を強行するなど、今も「先軍政治」を優先し、核ミサイル開発に注力する姿勢を崩していない。一方、米国も北朝鮮に対する圧力を強め、朝鮮半島の緊張は続いている。その風穴をスポーツが開けたとみることはできないだろうか。現状では、少なくとも五輪期間の「休戦状態」は確保できそうである。軍事でも外交でも解決が難しい状況の中で、五輪は政治を利用して、平和を生み出そうと努力している。韓国と北朝鮮のアイスホッケー合同チームが着るコートに付けられたワッペン(左)。朝鮮半島の右側に竹島(右端)が刺しゅうされている=2018年2月5日(聯合=共同) 統一コリアは、多くの識者が指摘するような、韓国と北朝鮮両政府が五輪を利用するために実現したのではないと信じたい。むしろ、IOCがスポーツを利用して、朝鮮半島の融和の実現に動いて結実したとみるべきである。互いに息切れしつつある文大統領と金正恩政権に「スポーツ王国の元首」が救いの手を差し伸べたというのは、言い過ぎだろうか。 平昌五輪は本当の意味で成功するのか。閉会式の最後、IOC会長は必ず「この大会は史上最高の大会であった」と高らかに宣言する。恐らく平昌五輪もそう祝うのだろう。しかし、混迷を深める現代世界では、五輪が逆に政治を利用して、平和や対話、そして和解を図る道具にしていかなければならない。統一コリアがその証になったとき、平昌五輪は歴史的成功を収めたと胸を張れるだろう。

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    「五輪停戦」で金正恩の勝利、文大統領の危険な「前のめり外交」

    、金正恩との融和よりは米軍の展開こそが平和の確かな保証だ、と述べている。要旨は次の通りです。北朝鮮が韓国で「三池淵管弦楽団」の公演を行うとの南北合意に基づき韓国を訪問した同楽団のヒョン・ソンウォル団長=1月22日(韓国取材団・共同) 1月9日の南北会談は金正恩のプロパンガンダ勝利となった。南北は北朝鮮の平昌オリンピック参加に合意した。南北会談と「五輪停戦」は金正恩を平和の人と印象付けることになった。 これはひどく苛立たしいことだ。しかし金正恩の深謀は韓国と米国の間に楔を打ち込むことだ。今や文在寅(大統領)には米韓分断にならないことを明確にする責任がある。 戦略問題は米国としか話をしないとの、これまでの北の一貫した政策からすれば、新年の金正恩の南北会談提案は驚きであった。北の宣伝によれば韓国は米国の傀儡政権だ。最大の例外は金大中が南北首脳会談開催と引き換えに数百万ドルを北に支払った2000年だった。2000年の首脳会談により南北は「太陽政策」と呼ばれる短い融和の時期に入ったが、この間多額の対北援助が行われた。 文在寅は開城工業団地(北にとり毎年1億ドルの外貨収入源)を含む太陽政策を復活したいと考えている。先ず核、ミサイル開発を縮小すべきとの米国の政策に相反して、文在寅は5月の大統領就任時から対北直接対話を呼びかけてきた。北はこれを相手にせずミサイルの完遂を進めてきたが、今は南北会談により政治的利益を得ることができると考えている。 恐らくトランプ政権は五輪のために韓国の考えに従うことにしたのであろう。韓国は五輪の期間定例の軍事演習の延期を求め米国はこれを黙認した。 北はオリンピックの後も会談を継続し、それにより韓国を米から離反させることを狙っているかもしれない。国連制裁が効果を発揮し、燃料の流れは段々と減り、輸出による外貨収入も難しくなっている。そのような状況なので韓国との関係改善は非常に魅力的になってきた。しかし文在寅には大きな制約が掛かっている。国連制裁のため資金援助は困難であり、また北の急速な核兵器開発の結果半島の緊張が高まり韓国の対米軍事依存は高まらざるを得なくなっている。 米国はオリンピックの間も韓国沿岸にカール・ビンソン空母軍を展開すると明らかにしている。このような米軍の展開こそが、戦争を脅かしながら平和を求めるような金正恩との融和よりは一層信用できる平和の保証になる。出典:‘North Korea’s Peace Games’(Wall Street Journal, January 9, 2017) この社説は全くの正論です。北は五輪終了後も対話を継続させ米韓離反を狙っているかもしれないとの指摘は的確です。韓国主要紙の反応も総じて文在寅の対応に諸手で賛同ということではありません。文在寅は優先順位を理解していない 10時間を超える会談の後、3項目の共同合意文書が発表されました。合意の第一は北の平昌五輪への参加です。第二は、「軍事的緊張状態の緩和」について、南北の偶発的な衝突を防ぐため軍の当局者の会談を開催すること、第三は、「南北関係の改善」につき問題の解決は韓国と北朝鮮の「当事者同士で行う」ことです。 五輪に参加する北側高官代表団、選手団、応援団の派遣と北側関係者の滞在の便宜を南側が保障するという内容も共同文書に入っているといいます。これに対し、この滞在支援は国連制裁に反するのではないかとの指摘が出ています。制裁のためか、北は高麗航空の使用ではなく陸路で入るということです。韓国政府は制裁との関係につき米国や国連と協議すると述べています。 今後、開城工業団地、金剛山観光開発の再開を北が求めてくる可能性も排除できません。制裁の厳格な実施が最重要であることを韓国に念押しすべきです。 北の五輪参加は良いことですが、最重要問題の非核化は議論されませんでした。会談で韓国側が非核化に言及したところ、北は峻拒したといいます。南北会談の限界とリスクを表しています。今後南北で軍当局者会談が開催されるでしょうが、過去の例も考えると、大きな成果は期待できません。北は米軍の展開や合同演習の中止を強く求めるでしょう。 南北関係に関する南北の文言には齟齬が出ています。韓国の発表では「われわれ民族が韓半島(朝鮮半島)問題の当事者として対話と交渉を通じて解決していくことにした」(9日夜韓国政府発表)であるのに対し、北側の発表は「われわれ民族同士の原則で、対話と交渉を通じて解決していくことにした」(10日未明朝鮮中央通信報道)となっています。南北間の言葉使いとして北側の文言には特別の意味が込められており、米韓同盟に楔を打つ考えが一層明確になっていると言われます。 文在寅の、危なっかしいともいえる前のめりの外交には、一層の注意が必要です。文在寅は今の優先順位を十分に理解していないのではないかと思われます。更に文在寅は従来から北朝鮮問題では韓国が運転席にいるべきだとか、韓国がリードすべきだと述べています。過去の失敗も余り理解していないようです。南北対話が持続的に成功した例はないのではないでしょうか。南北融和を図る度に核問題がうやむやにされ、その間に北は核、ミサイルの開発に邁進し、今日の事態に至っています。核問題は今が最後のチャンスです。1月10日、ソウルの韓国大統領府で年頭記者会見を行う文在寅大統領(共同) 1月10日に文在寅はトランプと電話で会談、南北会談の結果を伝えた。韓国側の説明によれば、両首脳は米韓間の協力を強化することで合意し、南北協議が「米朝間の対話」につながる可能性もあるとの見通しを示したといいます。しかし最近も米韓間の対外説明に齟齬があった事例が指摘されており、懸念が残ります。 今後、北の五輪参加準備がうまく進めば、ともかく3月中旬までは今の状態で推移するでしょう(オリンピック2月9~25日、パラリンピック3月9~18日)。しかし、五輪の後は元のギアに戻し、対北圧力を強めていかねばなりません。その間も対北制裁は効いてきます。

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    南北会談 印象に残った北朝鮮の余裕と韓国の弱腰ぶり

    ップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、南北会談での韓国・北朝鮮両国代表の心理戦を読み解く。 * * * 2018年元日の朝、薄いグレーのスーツを着た金正恩朝鮮労働党委員長が、「新年の辞」で平昌五輪への参加を表明した途端、南北閣僚級会談が2年5か月ぶりに開かれた。和やかな雰囲気で始まり、北朝鮮側の代表団は融和ムードを演出していたというが、その心中はどうだったのだろう。 会談が開かれたのは、軍事境界線にある板門店の「平和の家」。韓国側にあるこの施設に、北朝鮮の代表団は軍事境界線を徒歩で渡ってきた。軍事境界線は幅数センチで段差のあるコンクリートの帯。簡単にまたぐことができるその段差を、彼らはまたぐことなくわざわざ踏みつけ、その上に一度上がってから韓国側にやってきたという。わずかではあるが高い位置から、韓国側に足を下ろしたことになる。 それを、分断の壁をなくそうというアピールという見方もあるが、隠された意図はそれだけではないだろう。というのも、高さは力を意味するのだ。人は高い所にいる者は力が強く、低い所にいる者は力が弱いと感じる。軍事境界線をまたげば、高さは変わらず北朝鮮と韓国は対等となるが、段差に上がれば、北朝鮮側は韓国よりも高い位置から会談に向かうことになる。 つまり、自分たちが韓国よりも上、南北問題に対する主導権も自分たちにある、ということを示す意図があったのではないだろうか。そう思って会談を見ると、終始、北朝鮮側がリードしていたのも腑に落ちる。 北朝鮮の李善権祖国平和統一委員会委員長と、韓国の趙明均統一相は並んで姿を見せたが、会場に入る瞬間、李委員長の肩が趙統一相より前に出て、李委員長が先に入った。またどちらの代表団も全員が書類を脇に抱えているのに、李委員長だけ手ぶら。内容が頭に入っているのだろうが、一人だけ手ぶらというのは、それだけ自分の権力や優位性を誇示している。 強面でいかつい印象の李委員長は笑みを浮かべ、韓国側の施設なのに両手を広げて着席を促し、始めから主導権を握る。緊張した面持ちの韓国側の代表団は、背筋を正して椅子に座ったが、北朝鮮側は皆、肩を張って、ややふんぞり返った格好だ。これは、相撲協会の理事会で貴乃花親方が見せていた、あの対決姿勢と同じ。この姿勢を見ると、彼らの融和ムードがあくまで演出にすぎないことがわかる。 また融和ムード演出はこんな所にも出ていた。以前なら、握手する手を指し出すのは韓国側。だが李委員長は今回、微笑みながら自分から手を差し出した。映像に納まる二人の姿を見ると、その意図が“融和”だけでないことがわかる。悠然と立って握手する李委員長と、テーブルを挟んで前のめりになって手を伸ばす趙統一相。この会談でどちらが優位に立っているのかを、象徴するような写真となっていたからだ。南北会談で握手する韓国の趙明均統一相(右)と北朝鮮の祖国平和統一委員会の李善権委員長=2018年1月9日、板門店(韓国取材団・共同) 今回、北朝鮮側は全員がスーツ。新年の辞で金委員長がスーツだったことを考えれば、それに倣ったともいえるが、スーツ姿の方が親しみやすく感じるのは確かだ。人は自分と似ている者に好感を持ちやすいという性質がある。 そんな諸々を考えると、融和というより、韓国を懐柔しているように見えてくる北朝鮮。果たして平昌五輪では、どんなパフォーマンスを見せるのだろうか。関連記事■ 韓国メディアの「良心的日本人」 竹島、慰安婦等問題の見解■ 高梨沙羅 「オルチャンメイク」に似ていると韓国で大人気■ 高須院長 韓国の慰安婦問題再交渉は「無視すればいい」■ 親北を掲げる文在寅政権の先は「赤化統一」と暗黒の生活■ 平昌五輪後に米の先制攻撃で米朝軍事衝突勃発も

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    北朝鮮は平昌五輪で破壊工作に乗り出すか

    の工作員”は、北朝鮮の国家テロの“生き証人”として生かされてきた。当時25歳だった彼女も今や55歳。韓国生活の方が長くなったにもかかわらず、言葉のはしばしに今なお北朝鮮ナマリが残っているのが印象的だった。 彼女が30年前、乗員乗客115人を乗せた国際線KAL機を空中爆破させたのは、翌1988年に迫ったソウル・オリンピックを阻止するためだった。彼女は工作機関の朝鮮労働党対外情報調査部の部長からこう命令されたという。「南朝鮮の飛行機を落とす理由は、1988年オリンピックを前にして南朝鮮の傀儡どもが二つの朝鮮を策動しているのでこれを防ぎ、敵に大きな打撃を与えることにある」「二つの朝鮮を策動」とは、北朝鮮とだけ国交のあったソ連や中国など共産圏が、ソウル五輪参加を機に韓国を認める動きを見せていたことを意味する。そのためKAL機爆破テロで「危ない韓国」「不安な朝鮮半島情勢」を国際社会に印象付け、ソウルで五輪開催ができないようにしようとしたのだ。1987年12月、大韓航空機爆破テロ事件で逮捕され、ソウルの金浦空港に移送された金賢姫元工作員(共同) 北朝鮮のこの懸念は歴史的に見れば的中している。ソ連・中国など共産諸国はその後、韓国との国交樹立に向かい、ひいては「ベルリンの壁」崩壊という東西冷戦終結につながった。共産圏の支持・支援を失った北朝鮮は国際的に孤立し、100万単位の餓死者を出す「苦難の行軍」を余儀なくされ、さらに核開発に走ることになる。 あれから30年。「朝鮮半島危機」のなか韓国ではまたオリンピック開催が迫っている。冬季五輪開催地の「ピョンチャン(平昌)」は国際的には「ピョンヤン(平壌)」とよく間違われるが、韓国北端で北朝鮮と分断された江原道に位置する。北朝鮮としては指をくわえたままでいるわけにはいかないだろう。30年前を教訓にするために 金正恩はピョンチャン五輪にどう出るか? かねてからの「朝鮮半島核戦争の危機」を国際社会に印象付けるため、1988年方式で五輪妨害・破壊工作に乗り出すかもしれない。あるいは「30年前の失敗」を教訓に、和平あるいは平和を演出し、軍事圧力をかける米韓や制裁強化の国際社会を反転させようとするのか。 国際社会としては30年前の「まさか」を教訓に心構えと備えは欠かせないが。 東アジアでは今後、オリンピック開催が相次ぐ。ピョンチャン冬季五輪の後は2年後の2020年に東京五輪、その2年後の2022年には北京冬季五輪が予定されている。 オリンピックはしばしばきわめて政治的である。思い出せばソウル五輪の前には、1980年モスクワ五輪はソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する米国、日本など西側諸国がボイコットし、1984年のロス五輪はソ連、東ドイツなど共産圏が対米報復でボイコットしている。そのため東西両陣営が久しぶりに勢ぞろいした1988年ソウル五輪は「壁を越えて」が合言葉になった。平昌五輪の開会式出席についての記者団の質問に答える安倍晋三首相=2018年1月24日午前、首相官邸(斎藤良雄撮影) 今回のピョンチャン五輪は「北朝鮮の影」を意識せざるをえない。日本の安倍首相も中国の習近平主席も国内で基盤を固め、自分たちのオリンピックも控えているだけに開会式出席は必至である。国際的に影が薄かった(?)韓国の文在寅大統領にとっては存在誇示の絶好のチャンスだ。少し格落ちだが、小池東京都知事はどのタイミングでピョンチャンに出かけるのだろう。新年の東アジアは北朝鮮情勢を念頭に“オリンピック外交”が見ものである。【PROFILE】くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『隣国への足跡』(KADOKAWA)など多数。関連記事■ 平昌五輪後に米の先制攻撃で米朝軍事衝突勃発も■ 文在寅政権中枢は親北派だらけ 北朝鮮の理解者を内外にPR■ 北朝鮮ミサイル発射 早朝でも安倍首相の血色がよかった理由■ 北の漂着船 元軍人の漁師を強制送還すると1人83万円かかる■ 中国尖閣攻勢は米にとって「日本の国難」との深刻な懸念

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    韓国がベトナムで犯した罪

    「ライダイハン」。ベトナム戦争に派遣された韓国軍兵士が現地女性を性的暴行し、生まれた混血児を意味する蔑称である。ベトナム社会の片隅で生きる彼らは今も差別に苦しみ、その数は3万人にも上るとされる。韓国がベトナムで犯した罪。慰安婦問題でことさら日本だけを非難する資格などあるのか。

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    「ベトナム大虐殺」現地取材で見た韓国の過ちと憎悪の念

    た。社会主義を掲げた北ベトナムには中・ソ・北朝鮮が側面支援を主に行い、南ベトナムにはアメリカを筆頭に韓国、台湾、スペイン、東南アジア条約機構(SEATO)の国々が支援した。 1964年8月、ベトナム北部のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇が米軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる「トンキン湾事件」が起きる。これを機に、アメリカは本格的な軍事介入を始め、翌65年2月に北爆を開始。同時期に韓国軍の派兵も始まった。 朝鮮戦争で壊滅的な被害を受けた韓国。休戦の53年にはアジア最貧国グループの一つとなった。当時の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領は、日本が朝鮮戦争で高度経済成長のきっかけをつかんだことをよく知っていた。韓国を豊かな国に変えるべく、ベトナム戦争を経済発展の絶好の機会ととらえ、韓国軍戦闘部隊のベトナム派兵を決定する。1976年、崔太敏氏(右)が主導する団体を訪問し、会話を交わす朴正煕大統領(当時・左)と朴槿恵氏(共同) 韓国の派兵は64年9月に医療班やテコンドー教官などの非戦闘先遣部隊が送り込まれ、翌65年2月、工兵部隊を中心に2000人を派遣。戦況が悪化していくにつれ、同年10月には1万8500人あまりの戦闘部隊を本格的に投入した。その数や、韓国軍が撤退する73年3月までに延べ32万5517人にのぼり、アメリカに次ぐ大量派兵となった。 韓国軍のベトナム参戦について、ノンフィクション作家の野村進氏が『コリアン世界の旅』(講談社、1997年)の中で、韓国軍元上等兵の発言を次のように書き綴っている。 「韓国がベトナム戦争に参戦したのは、世界の自由主義を守るためだとか言ってましたけど、本当はカネのためなんですよ。カネ目当てなんだから、早い話がアメリカの“傭兵”ということですよね」 「カネ」のためにベトナム戦争に参戦した韓国軍。彼らはベトナムの地で歴史上ぬぐい去ることのできない多くの恥辱を残すこととなる。韓国軍戦闘部隊の多くは、ベトナム中部のニントゥアン省からダナン市にかけての海岸沿いを走る国道1号線の主要都市に駐屯し、至るところで罪もない民間人の虐殺を繰り返した。差別に苦しむライダイハン 1990年代後半に、ホーチミン大大学院でベトナム現代史を勉強していたク・スジョン氏。彼女がベトナム政府局の資料を入手し、韓国の左派紙「ハンギョレ」に提供した情報によると、「韓国兵はきれいに殺して、きれいに燃やし、きれいに破壊するというスローガンのもと、掃討作戦を繰り広げて、民間人を次々と無差別殺戮していった」(『ハンギョレ21』1999年5月 第256号)。 また、韓国軍の虐殺地が点在しているベトナム中部のフーイエン省で『フーイエン省の歴史書』(2013年12月発行)の作成のために聞き取り調査を行い、編纂(へんさん)したフーイエン新聞社のファン・タン・ビン編集長(54歳=09年9月当時)は次のように話す。 「韓国兵は村のすべてを焼き払い、無抵抗の子供や妊婦も容赦なく殺害し、年ごろの娘においては輪姦したあとに女性器を銃剣でかき回し、射殺するという暴挙もあった」。そしてついには、「韓国兵に出あうことは死ぬことだ」と、ベトナム人に言わしめたという。「ライダイハンというだけでよくいじめられた」と話す、ヴォー・スアン・ヴィンさん=2015年6月、ビンディン省(村山康文氏撮影) 韓国軍のベトナム戦争参戦によって起きた問題は、「民間人虐殺行為」だけではなく、「ライダイハン」問題がある。ライダイハンとは、「ライ」がベトナム語で混血を表し、「ダイハン(大韓)」は韓国を意味する蔑称である。ベトナム戦争時にできたライダイハンの数は、最少1500人(朝日新聞1995年5月2日付)から最大3万人(釜山日報2004年9月18日)と推計されている。 ベトナム戦争時、中部ビンディン省にできた韓国軍施設でウエートレスをしていたヴォー・ティ・マイ・ディンさん(59歳=09年9月当時)は、19歳のころに施設内の食堂で輪姦され、誰の子だかわからないライダイハンの息子、ヴォー・スアン・ヴィンさん(39歳=同)を身ごもった。 ヴィンさんは母を前にして寂しそうに話す。 「戦後、アメラジアン(アメリカ人とアジア人のハーフ)同様、『敵国』との間の子だと差別され、辛かったことを覚えています。小学校のころには、『この学校に敵がいると規律が乱れる』と罵られ、帰り道、同級生に石を投げられたこともありました」 ヴィンさんは戦後40年以上経った今でもライダイハンというだけで差別を受けて定職に就くことができず、日雇いでトラックの積み荷を降ろす仕事をしている(2015年6月当時)。韓国の戦後補償 では、ベトナムの地で数々の過ちを犯した韓国は、戦後、どのような補償をしているのだろうか。 2000年代に入り、ようやく韓国の市民団体らが、韓国軍による民間人虐殺やライダイハンに対する謝罪の意味合いを込めて、韓国軍が駐屯地を中心に「ベトナム平和医療連帯」が無料診療を行い始め、虐殺があったとされる場所の「憎悪碑」や「慰霊碑」などの訪問を始めた。 また、03年1月には韓国左派紙のハンギョレ新聞社が資金を募り、フーイエン省ドンホア県に8000平方メートルの土地を買い、10万米ドル(およそ1100万円)をかけて、韓越平和公園を造景した。しかし現在、公園は利用者もなく放置され、ゴミが散らばり、廃園となっている。 韓越平和公園の近くに住み、カフェを営む50代の女性は、「公園はボロボロで汚いし、使い物にならない。手入れされていない木が生い茂っているので、たまに若いカップルが木陰で話しているくらいです。韓国軍が虐殺事件を起こした地域に公園を造るなら話もわかりますが、なぜこの場所にあんな大きな公園を造ったのかが理解できません」と話す。廃園になっている韓越平和公園=2016年9月、フーイエン省(村山康文氏撮影) 韓越平和公園造景後、同地域に韓越友好病院(05年9月)を設立。15年3月には韓国軍の虐殺が行われたフーイエン省タイホア県内に、韓国の民間支援で小学校を創立した。 さらに16年春、「平和の少女像(慰安婦像)」を作成した彫刻家のキム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻が、ベトナム戦争での韓国軍による民間人虐殺を謝罪する意味で「ベトナム・ピエタ像」を制作。16年中に韓国の済州(チェジュ)江汀(カンジョン)村とベトナムのクアンガイ省ビンソン県に建立される予定だった。ベトナム戦争終結から42年目の17年4月30日、韓国の済州江汀村でお披露目されたが、ベトナムでは未だ世に出ていない。 また、16年10月11日に韓越平和財団が、ダナン市にある中部最大のダナン博物館に「ベトナム・ピエタ像」を贈呈。さらに同年12月3日、クアンガイ省ビンソン県での韓国軍による民間人虐殺の生き残り、ドアン・ギアさん(50歳=16年9月当時)の自宅訪問の際、「ピエタ像」を持参した。謝罪しない文在寅 しかし、「ピエタ像」は、ダナン博物館では日が当たることもなく地下倉庫に眠り、ギアさんはクアンガイ省庁から受け取ることを拒否するように言われているため、受け取ることができなかった。 「韓越の関係は今、良くなっています。私らがピエタ像を受け取るということは、今さら過去を掘り返してまで、時代に逆行することはないということでしょう」(ギアさん)ジャーナリストのチャン・クアン・ティ氏=2016年9月、ホーチミン市(村山康文氏撮影) 韓越問題に詳しいベトナムのジャーナリスト、チャン・クアン・ティさん(39歳=同)。フーイエン省で生まれ、祖父母から韓国軍による民間人虐殺の話を聞いて育った。 「右肩上がりの今のベトナム経済にとって、韓国は切っても切り離せないでしょう。しかし、だからと言って過去の韓国軍による民間人虐殺やライダイハン問題に蓋をして、なかったことにするというのは筋違いです。ベトナム政府も目先の『カネ』ばかりを追うのではなく、じっくりと韓国政府と向き合い解決の糸口を見つけるべきです」 韓国の政府レベルでは、98年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が訪越した際に「不本意ながら、過去の一時期、ベトナム国民に苦痛を与えたことを遺憾に思う」と謝罪するも、保守派ハンナラ党(現セリヌ党)副総裁だった朴正煕の娘、朴槿恵(パク・クネ)氏が、金大中の発言に対し、「大統領の歴史認識に不安を抱く。軽はずみな発言は参戦者会の名誉を著しく傷つけた」と強く非難した。 13年2月、朴槿恵氏が大統領に就任する。9月に初訪越し、ベトナムのチュオン・タン・サン国家主席と会談したが、ベトナムに向けた謝罪の言葉は一切なかった。また17年11月に文在寅(ムン・ジェイン)大統領も初訪越し、チャン・ダイ・クアン国家主席と会談。しかし、そこでも謝罪の言葉はなく、革新派としての姿勢を後退させた。 「平和の少女像(慰安婦像)」は、ソウル特別市の在大韓民国日本国大使館前(2011年12月設置)を始め、釜山市の在釜山日本国総領事館前(16年12月設置)、加えて海外のカナダ・トロント市(15年11月設置)やアメリカ・サンフランシスコ市(17年9月設置)などに次々と建立している。 「思わずブロンズ像建立が趣味なのですか?」と問いただしたくなるほど自己主張する韓国の行動。ベトナム戦争時、被害に遭遇したが奇跡的に生き延びた人らは、少なくとも押し付けがましい「ハコモノ設置」や「ブロンズ像建立」よりも、韓国国家の「正しい判断」を求めている。

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    なぜ韓国は「ライダイハン」に無関心でいられるのか

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」。韓国で「自分に甘く、他人に厳しい」、つまり「身内びいき」や「ダブルスタンダード」を指して語られる言葉である。 「ライダイハン」とは、「韓国系のベトナム人」を意味する言葉である。もともとはベトナム語で「Lai Đại Hàn(𤳆大韓)」と表記するが、韓国でも一般に広く用いられている。 なぜ、韓国の隣国でもないベトナムに「韓国系ベトナム人」が存在するのだろうか。これは、韓国のベトナム戦争参戦が原因である。韓国は1964年からベトナムに派兵し、本格的にベトナム戦争に参戦した。ベトナムに赴いたのは韓国軍の軍人だけではない。軍人とともに数多くの労務者や韓国企業の労働者が特需を求めてベトナムに殺到した。大韓航空を傘下に収める「韓進」は軍需品の輸送で、「ヒュンダイ」の名で知られる「現代」は土木・建設分野で、今はなき「大宇」は繊維製品をはじめとする軍需品の生産で大きく飛躍した企業である。最盛期には、5万人の韓国軍がベトナムに駐留し、それに伴って韓国人労働者の数も2万人まで増加した。その過程で韓国人男性とベトナム人女性の間に数多くの「韓国系ベトナム人=ライダイハン」が誕生することになった。南ベトナムの大統領官邸に突入した北ベトナム軍戦車と兵士 =1975年4月(古森義久撮影) 1973年のパリ平和協定に伴って韓国軍がベトナムから撤退し、75年の南ベトナム(ベトナム共和国)の崩壊とともに韓国企業や韓国人労働者もベトナムから撤収することになった。統一されたベトナムで「ライダイハン」は「敵軍との間に生まれた子ども」としてさまざまな圧迫や差別に直面することになった。ちなみに「ライダイハン(𤳆大韓)」の「𤳆」は「ハーフ」をあらわす接頭辞であるが、そこには多分に軽蔑の意味が込められている。 現在、「ライダイハン」の正確な数は把握されていない。1500人から3万人までさまざまな数字が提示されているが、公式的な統計は現在も存在しない。その内幕については公にされていないが、強姦や売買春の他に、韓国人の「現地妻」が生んだ「ライダイハン」も相当数存在すると思われる。「ライダイハン」の居住地は韓国軍が駐屯していたホーチミン(サイゴン)、クィニョンなどであり、首都・ハノイにはほとんど居住していないという。ライダンハンが「美談」に 92年に韓国とベトナムは国交を回復したが、修好に際し韓国の盧泰愚大統領(当時)は「ライダイハン」に対して、謝罪どころか何の言及もしなかった。ただ、修好が契機となり、韓国国内で「ライダイハン」に対する関心が一時的に高まったことも事実である。修好直後には「『ライダイハン』が生みの父と再会した」などというニュースが「美談」として報じられもした。 94年2月には韓国南部の馬山の短大に留学していた「ライダイハン」が23年ぶりに韓国人の父親と再会し、韓国のマスコミは「韓国人の父親の国で技術を学びに来て、23年ぶりに生みの父に会う喜びをかみしめた『ライダイハン』」などと浪花節調に報じていた。ただし、そうした関心も一時的なもので、韓国政府が「ライダイハン」に対して積極的な対応策を取ることはなかった。韓国の民間団体やキリスト教宣教団体がベトナム現地で「ライダイハン」に対する支援事業を行うことはあったが、現在に至るまで、韓国政府が公式的に「ライダイハン」について何らかの支援処置を講じたことはない。また、大多数の韓国人も「ライダイハン」については無関心のままであった。英国で設立された民間団体「ライダイハンのための正義」の看板 =2017年9月、英ロンドン(岡部伸撮影) これは、ベトナムにおける韓国軍の蛮行が韓国国内ではまったく報じられてこなかったためでもある。韓国軍がベトナム戦争において民間人虐殺や婦女子強姦などの悪行を働いてきたことは周知の事実であるが、韓国では、90年代中盤になるまで完全に隠蔽(いんぺい)され、公の場で語られることはなかった。90年代の中盤から韓国の進歩系メディアによって、ベトナム戦争における韓国軍の蛮行が明らかにされ始めたが、そうした報道がなされる度に、ベトナム参戦兵の団体からの妨害や襲撃が繰り返されてきた。 「ライダイハン」に対して語ることは、韓国軍の強姦や買春、韓国人労働者の無責任な養育放棄に触れることにほかならず、「自由陣営の一員として民主主義を守るためにベトナムで戦った」韓国の国家的な威信を傷つけることにつながるからである。そうした韓国で「ライダイハン」に注意を払う韓国人が皆無だったとしても不思議ではない。 韓国のキリスト教系放送局であるCBSは、昨年11月14日、韓国軍の強姦によって生まれた「ライダイハン」が、ベトナムで「敵軍である韓国軍の子」として迫害を受け、就学や就職、就業などでさまざまな差別を受けている実態を放送している。この放送では、韓国の国防部(国防省)が「現在でも、韓国軍の強姦問題については事実関係が明らかではないため、当分の間、別途の調査計画がない」という立場を取っていることも報じられた。日本に対しては慰安婦問題などで「反省」や「謝罪」を要求してくる韓国人であるが、いざ自分のこととなると、「反省」や「謝罪」どころか、調査すらしないのである。「新ライダイハン」問題とは? ベトナムで差別され、韓国からも見放された孤立無援の「ライダイハン」の中には、韓国で訴訟を起こし、自らの父親が韓国人であることを立証して、韓国国籍を取得することができた者もいる。2000年代に入るとこうした父親との血縁関係確認訴訟が相次ぐようになった。ソウル中央地方裁判所 =韓国・ソウル(撮影・桐山弘太)  2002年7月26日、ソウル地方裁判所は産業研修生として韓国に入国した「ライダイハン」R氏が父親を相手に起こした訴訟で、「血縁関係が認められる」という判決を下している。注目されるのは、その「血縁関係」の内幕である。判決は、「父親の李○○氏はベトナムのホーチミン(旧サイゴン)で自動車修理工として勤務していた去る69年にベトナム人女性に出会い、原告が生まれた後、74年にベトナムの国内法に従って結婚したという事実が認められる」として、原告勝訴の判決を下している。要するに現地で結婚しておきながら、妻子を捨てて韓国に帰国していたわけである。李氏は控訴せず、R氏は李氏の戸籍に「子」として記載されることになり、遺産相続や韓国国籍取得も可能になった。ただし、これは父親が韓国人であるということが立証できた場合に限られている。 また、韓国国籍の取得と韓国国内での就職を目指すR氏のようなケースは、「ライダイハン」の中で少数派である。韓国とベトナムの経済関係が発展するにつれ、「ライダイハン」の境遇もある程度改善されたからである。2世、3世の「ライダイハン」の中には、その出自を生かしてベトナムに進出した韓国企業に就職し、一般のベトナム人よりはるかに高い給与と恩恵を享受している例も散見される。必ずしも「ライダイハン」のすべてが偏見と差別に苦しんでいるわけではないのである。 「ライダイハン」の境遇は改善されつつあるようだが、ここに来て新たに「新ライダイハン」の問題が台頭している。「新ライダイハン」とは、92年の修交後、ベトナムに進出した韓国人男性とベトナム人女性の間に生まれた子供のことである。なぜか、韓国人は事業で海外などに進出した場合、「現地妻」を囲う傾向があるようで、1999年7月14日付聯合ニュースは、ベトナムに事業目的で居住する韓国人の30%程度が「ベトナム人現地妻」を囲っていると報道している。問題は、こうした韓国人男性が「現地妻」と、「現地妻」に産ませた子供を放棄して帰国してしまう事例が後を絶たないということである。韓国では、いまだ「新ライダイハン」についてあまり公に語られていないが、遠からず問題となることは明らかである。なぜなら、フィリピンに事業目的で進出した韓国人とフィリピン人「現地妻」の間に生まれた子供による認知が、すでに大きな問題になっているからである。韓国人がやればロマンス? 韓国人とフィリピン人「現地妻」との間に生まれた子供を「コピーノ」と呼ぶ。「ライダイハン」同様、「コピーノ」の数は正確に把握されていないが、ECPAT(アジア観光における児童買春根絶国際キャンペーン)関連団体の集計によると3万人にも達するという。2014年には、「コピーノ」の兄弟が事業家である韓国人男性を相手取って起こした訴訟において、ソウル家庭裁判所が「嫡出子であることを認知する」という原告勝訴判決を言い渡している。 被告の韓国人男性は90年代末にフィリピンで現地女性と同居し、二人の息子をもうけたが、2004年に韓国に帰国し連絡を絶ったという。この当時、同様の訴訟が9件も進行中で、被告はいずれも事業や留学を目的としてフィリピンに赴いた韓国人男性だった。過去、日本人男性もフィリピンで現地女性との間に子供(「ジャピーノ」と呼ばれる)をもうけた後、養育を放棄する事例があり、大きな社会問題になったことがあるが、それと同様の問題が韓国でも起きているのである。ただし、日本は法改正を行い「ジャピーノ」の国籍取得の簡略化に努めている反面、韓国政府はまったく無関心である。そのため、子供の認知訴訟のために韓国に入国しようとしたフィリピン人女性が、経済事情を理由にビザの発給を受けられないという事態まで起こっている。画像は本文と関係ありません(画像:istock) 現在、「新ライダイハン」の数は1万人に達しているとされるが、「コピーノ」同様、韓国政府は何らの対策もとっていない。キリスト教系放送局であるCBS「ノーカットニュース」は2008年12月25日、「新ライダイハン」出生の事例と、現在の境遇について報じている。報じられた事例は、ホーチミンに住むベトナム人女性Aさん(32)とBさん(26)のケース。Aさんはベトナムに進出した韓国企業で出会った韓国人男性との間に息子1人をもうけたが、男性は2005年5月に帰国後、連絡を絶った。Aさんはシングルマザーとして息子を育てている。Bさんの夫である韓国人男性(56)は「病院治療に行く」という名目で韓国に帰国、消息不明となった。後にBさんの夫は営んでいた水産事業に失敗し、韓国に逃亡したことが判明。Bさんもシングルマザーとして6歳の息子を育てている。今後、「コピーノ」同様、こうした「新ライダイハン」による認知訴訟が起こされ、韓国の新たな社会問題になることは容易に想像がつく。 昨年、韓国では、ベトナム修好25周年を記念する映画『パパの川』の制作が発表された。この映画は韓国・ベトナムの共同制作で、「韓国人の父親とベトナム人の母親との間に生まれた主人公が韓国でオーディション番組に参加してスターとなり、父親に会うという内容」だという。昨年の8月30日には撮影地である南東部の都市、蔚山で制作発表会も開かれた。実は、韓国ではこれまでも「ライダイハン」を題材とした映画やドラマが製作されてきた。こうした作品の中には「ライダイハン」が置かれている境遇を真摯(しんし)に扱った作品もあるのだが、報道を見る限り『パパの川』がそうした内容だとは到底思えない。「ライダイハン」が生まれた経緯や実態把握には大した関心がないくせに、こうした興行活動にはやたらとご熱心な韓国人の姿勢には、正直、強い違和感を抱かざるを得ない。日本に対しては、事あるごとに「正しい歴史認識」と、「過去に対する謝罪」を求めている韓国人だから、なおさらなのである。 やはり、「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」ということか。

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    ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

    が他の国をどのような名称で呼んでいるか、というところに国家同士の関係性が表れることがある。ベトナムが韓国に対して用いてきた国名の表記は、その典型的な例だろう。 ベトナムと朝鮮半島は、いずれも冷戦期に2つの陣営に分断され、北に共産主義(社会主義)政権、南に親米政権が成立し、同じ民族の間で悲惨な戦争が繰り広げられたという共通の歴史をもつ。ベトナムでは、1975年に北が南を武力制圧する形で戦争が終結し、ハノイを首都とする北ベトナムの共産党政府主導の下、現在のベトナム社会主義共和国が成立した。ベトナム共産党政府は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と1950年に国交を樹立しており、一貫して同国を朝鮮半島の正統な国家と認めてきた。したがって、ベトナムにとって「朝鮮」とは北朝鮮を意味し、「北」を付けて呼ぶことはない。一方、韓国を指すときの名称は、ベトナムの対外政策とともに変化してきた。 ベトナム戦争期の1963年から1973年までに、米国の同盟国である韓国からも30万人を超える兵士が南ベトナムに派遣された。韓国軍の戦死者は約5000人とされているが、韓国兵に虐殺されたベトナムの民間人は、5000人とも9000人とも伝えられている。韓国兵は「ダイハン(大韓)」と呼ばれ、米兵以上に勇猛で残虐なことで知られていた。 韓国兵とベトナム人女性との間に生まれた子供は「ライダイハン(大韓との混血児)」と呼ばれ、正確な数は不明だが、数千人に及ぶとされている。中には韓国兵による性的暴行の結果、生まれた子供もいるという。そのような背景からも、南北統一後にベトナム政府がかつての敵の呼称「大韓」を用いることはなく、韓国は「南朝鮮」と呼ばれていた。ベトナム共産党大会を前に党スローガンの横断幕が張られたハノイ市内の通り=2006年4月14日、(共同) 戦争終結後も米国や韓国を敵の陣営とみなしていたベトナムだが、南部の社会主義改造の失敗と難民の流出、カンボジアへの侵攻によって、未曾有(みぞう)の国際的孤立と経済困難に陥り、内外路線を大きく転換するに至った。それが1986年12月に採択されたドイモイ路線である。ドイモイの骨幹は市場経済化と対外開放で、全方位外交の一環として韓国との関係改善も図られた。その過程で、韓国を指す呼称は「南朝鮮」から一時「朝鮮共和国」に変更された。共和国というと北朝鮮のようだが、韓国も共和制であるため、このような字句が使用されたようだ。その後、1992年の国交樹立を前に「ハンクォック(韓国)」という呼称が用いられるようになり、現在に至っている。ベトナム共産党政府は過去を黙殺 その韓国は、今やベトナムにとって最大の友好国の1つである。政治・安全保障面では、韓越の関係は2009年に「戦略的協力パートナー」と認定された。両国間では、2012年から国防次官級対話が定期的に開催され、軍事・防衛協力が進められている。中国が南シナ海で軍事的行動を拡大している現在、ベトナム共産党政府にとって韓国は、日本と並ぶ重要な戦略パートナーである。経済面では、2015年12月に両国の自由貿易協定(VKFTA)が発行したことを契機に、貿易が著しく増加した。 2016年のベトナムから韓国への輸出は114億1900万ドルで、米国、中国、日本に次ぐ第4位、全体の6.5%を占める。輸出の伸び率は、中国へのそれに匹敵する27.8%に及んでいる。韓国からの輸入は320億3400万ドルで、中国に次いで第2位、全体の18.4%である。輸入品目の第1位である機械設備も、第2位のコンピューター・電子製品も、韓国からの輸入が20%を超える。同年のベトナムへの直接投資でも、韓国は1263件、68億9600万ドルで第1位(日本は第2位)で、投資件数全体の32.7%、金額全体の30.8%に及ぶ(JETRO世界貿易投資報告、最終アクセス2017年12月17日)。英国で設立された民間団体「ライダイハンのための正義」の看板=2017年9月12日、ロンドン(岡部伸撮影) このような韓越の関係は、両国の公的な歴史認識にも影響を及ぼしている。伊藤正子の研究によれば、1990年代末から、韓国のメディアや非政府組織(NGO)によって、韓国兵によるベトナム人に対する虐殺・暴行の事実が明らかにされ、両国の市民レベルで歴史を見直し、和解と平和をめざす活動が進められた。しかし、両国の政府は、過去の歴史が韓越関係の障害になることを避けるため、国内の報道や市民活動を規制する措置をとった(伊藤正子『戦争記憶の政治学─韓国軍によるベトナム人戦時虐殺問題と和解への道』平凡社、2013年より)。 2017年9月、イギリスの市民活動家ピーター・キャロル氏の呼びかけにより、ロンドンで市民団体「ライダイハンのための正義」が設立され、ライダイハンへの支援や事実関係の調査が行われることになった。韓国の国内、特に軍関係者の間では、ベトナム戦争への派兵は、共産主義に対して自由世界を守った正義の行為であり、「武勇伝」として語られている。ベトナム共産党政府も韓国との関係を重視し、それに影を落とすような過去の事実は黙殺する態度をとっている。ライダイハンの検証は「反国家宣伝」 韓国では、市民が国家の方針と異なる意見を発信したり、政府に批判的な活動をしたりすることは自由だが、ベトナムで共産党の指導に異を唱えることは難しい。党の公的な歴史認識から外れる言論や行動は、「敵の諸勢力」と結託した「反国家宣伝」「人民政権転覆の陰謀」として、刑法による処罰の対象となることもある。このような形での市民権の制限が欧米諸国から批判されると、ベトナム共産党政府は、社会主義体制の崩壊をもくろむ「和平演変」とみなして反発する。 現在のベトナムの公的史観は、「共産党の常に正しい指導」による社会主義革命と民族解放闘争の歴史に沿ったものであり、勝者の側から語られる物語である。一方、韓国軍に虐殺・暴行された人々は、共産党の敵であった南ベトナム地域の住民で、党の「輝かしい勝利」には貢献しなかった人々である。南北統一後、ベトナム共産党政府は南部の市民、宗教者、少数民族などによる、党から独立した活動を警戒し、厳しく統制してきた。韓国軍による虐殺・暴行についても、諸外国の働きかけで南部の人々が自発的に史実を検証し、その情報が国内と国際社会で共有されることは、ベトナム共産党政府にとって警戒すべきことなのである。ベトナム中部ダナンで会談し、握手する韓国の文在寅大統領(左)とベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席=2017年11月11日、(聯合=共同) 現在のベトナム共産党政府は、もはや過去の民族解放の実績だけでは支配の正当性を主張できない。経済発展の実績のみが共産党支配の正当性のよりどころであり、体制維持に不可欠の条件である。そのため、韓国を含む資本主義諸国との経済関係を拡大することが、自国民の意思よりも優先されるのである。「南朝鮮」を敵視する路線から、「韓国」と歩み寄る路線に転換した国家は、「ライダイハンのための正義」に対してどのような態度をとるのだろうか。

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    マニラ慰安婦像への「抗議」でわかった国益を損なうご都合主義

    の立場と相いれない』と抗議した」(読売新聞12月13日朝刊)と書かれていたことである。日本はこれまで韓国に対して、歴史に対する捉え方は立場によって違いうると説いてきたはずだ。だから、韓国が主張する「正しい歴史認識」を日本に押し付けるなという意味だ。それなのに、フィリピンには日本の立場を押し付けて当然だというのだろうか。 日韓関係の文脈で有名なのは、2013年2月の朴槿恵大統領就任式に日本政府代表として出席した麻生太郎副総理兼財務相のエピソードだ。就任式後に朴氏と会談した麻生氏は「米国内でも南北戦争に対する評価は北部と南部で違う」ということを例に出して、歴史認識とは相対的なものであると説いた。朴氏はこれに激怒した。お祝いの席でわざわざ相手を怒らせるのはほめられた話ではないが、歴史の見方は相対的なものだという点への異論は少なくとも日本国内では多くなかった。 それだけではない。そもそも、この記事でいう「日本政府の立場」が何かという大事な点が理解できないのである。釜山の少女像の場合には、2015年の日韓合意の「精神」に反していることは明らかだ。だから日本政府は大使召喚などという厳しい措置に踏み切ったわけだが、当然ながらフィリピン政府は日韓合意の当事者ではない。この場合に問題となる「日本政府の立場」というのは意味不明なのだ。 不思議だったので、「読売新聞に出ている日本政府の立場とは何を意味するのか」と外務省に問い合わせてみた。フィリピンでは暴力的拉致の慰安婦集めも 返ってきたのは「フィリピンとの間ではサンフランシスコ講和条約で法的責任に関する問題はすべて解決済みというのが日本政府の立場だ」という答えだった。それはそうなのだが、サンフランシスコ講和条約では日本も対米請求権を放棄し、法的責任の問題を解決させている。法的責任の問題が解決された後に慰霊碑を建てたらいけないという理屈だとすると、東京大空襲や原爆の犠牲者を慰霊する碑を建てることも米国政府から文句を言われかねないことになってしまう。 空襲や原爆の慰霊碑を建てるなと日本が米国に言われる筋合いはないはずだ。それが分かっているからなのか、菅義偉官房長官の記者会見での答えはそれほどストレートなものにはなっていない。フィリピンのドゥテルテ大統領との会談後、記者会見する野田総務相=2018年1月、マニラ(共同) マニラの慰安婦像建立について質問された菅氏は「諸外国における慰安婦像の設置は極めて残念」だという一般論を述べつつ、「フィリピン政府と相談して対応したい」と語った。記者からさらに「撤去を求めるという理解でいいか」と問われると、菅氏は「まず諸外国における慰安婦像設置はわが国政府の立場と相いれない極めて残念なことだ」という一般論ともいえる発言を再びしてから、「外務省からフィリピン政府に対してすでに申し入れを行った」と答えたのである。「わが国政府の立場」という言葉が出てくるものの、やはり明快なものではない。  外務省関係者に聞くと、「抗議と書いた新聞があるのは事実だが、政府として『抗議』という言葉を使っているわけではない。フィリピン政府に『残念だ』という思いを伝えたということだ」と話す。官邸周辺に「撤去させろ」と息巻いている人がいることは想像に難くないが、そんなに簡単な話ではないのである。 さらにフィリピン特有の問題がある。「南方の占領地域では、フィリピンの第十四軍は軍紀が乱れているとの定評があった」(秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮選書)。他の占領地と比べても日本兵によるレイプが多発していたことが、当時の軍法会議の記録などから明らかになっている。慰安婦の募集にしても、フィリピンやインドネシアといった占領地では強制連行としかいえないケースがあった。日本の植民地として行政機構が整備され、業者に任せておけばよかった朝鮮とは全く事情が異なる。 「日本政府が撤去を求めたのは当然だろう」と論じた読売新聞社説(12月15日)も、「1942年から45年までの占領で、フィリピン各地に慰安所が設けられた。一般女性が一部の現地部隊によって暴力的に拉致されたケースも報告されている」と書いている。 事情を知る外務省幹部は「フィリピンでは日本軍は本当にひどいことをやった。現地にはその記憶がある。『悲劇を忘れないために慰霊碑を作ろう。おカネは私たちが出す』と言われたら、現地の人たちは『ぜひ』となる」と話す。「慰安婦」日韓合意の中身は何か 幸いなことに1990年代に設立されたアジア女性基金による元慰安婦への「償い」事業は、フィリピンでは順調に進められた。かつては反日感情が強かったが、近年の日比関係は極めて良好だ。そうした関係に慰安婦像が波紋を巻き起こすのは残念だが、それだけに日本側としては不幸な歴史に目配りをした慎重な対応をしなければならない。 慰安婦問題に関しては、韓国外務省が日韓合意の検証結果を年内にもまとめる。それを前に改めて考えておくべきなのは、合意の中身は何だったのかということだ。 東京の韓国大使館員からは「日韓合意は慰安婦問題を解決するためのものであって、なかったことにしようというのではない。今の日本では、慰安婦の『い』の字を口にするのも問題だという雰囲気を感じるが、それは行き過ぎではないのか」という愚痴を聞く。釜山の少女像に象徴される韓国側の無神経さがそうした空気を作った面はあるのだが、日本側で拡大解釈が目立つのも事実である。 日韓両国の外相が2015年12月28日にソウルの韓国外務省で発表した合意内容を振り返ってみよう。 すべての前提となる認識は、旧日本軍の「関与の下」で女性の名誉と尊厳を傷つけたことに「日本政府は責任を痛感している」というものだ。この認識に従って、安倍晋三首相が「日本国内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明する」とされた。ただし、これは安倍首相がカメラの前で自ら語ったわけではなく、岸田文雄外相(当時)が「安倍首相のおわびと反省」を読み上げる形だった。 さらに両国の約束として、▽韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立する▽日本政府が財団に10億円を拠出する▽国連など国際社会において相互非難をしない▽合意がきちんと履行されることを前提に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する——ことが明示された。 岸田氏はこの際、財団について「日韓両政府が協力し、すべての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行う」と語った。一方で韓国の尹炳世外相(当時)は、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と表明している。尹外相の言葉は、日本が少女像を問題視していることを受け止め、移転へ向けて努力するという意味だ。 合意に従って、韓国は「和解・癒やし財団」を設立し、日本は政府予算から10億円を拠出した。財団は元慰安婦や遺族に現金を支給する事業を行い、合意時点での生存者47人のうち7割超となる36人が事業を受け入れた。一方で、日本大使館前の少女像問題に進展はないまま、釜山の日本総領事館前に新たな像が建てられた。合意の再交渉を選挙公約にしていた文在寅大統領は、当選後に「再交渉」を口にしなくなったものの、合意の検証を進めさせている。韓国大使館員がぼやく「日本の過剰反応」 本来は行われるべきであるのに、そうなっていないことの筆頭は少女像の問題だろう。大使館前の少女像を移転させる問題に進展が見られない中で、釜山の日本総領事館前の公道上に新たな少女像が設置されるのを韓国政府が黙認したことは明らかに問題だ。「釜山の日本総領事館前には少女像を作らせない」と明示されているわけではないものの、明らかに「合意の精神」に反している。 同時に、合意をまとめた朴槿恵政権が世論を説得する十分な努力を行わなかったことも指摘できる。少女像の問題がこじれたのも、この点に起因するといえる。ただし、日本側は10億円拠出で義務をすべて果たしたかというと、これもあやしい。岸田氏は「日韓両政府が協力して」財団の事業を進めていくと表明したが、韓国世論の反発を受けて苦労する財団を積極的に支援したとは言えないからだ。 一方で、政府間の合意が民間の活動を縛るわけではない。民間団体が私有地に像を建てる限り、政府ができることは限られている。政府の行為にしても、何もしてはならないと合意されたのではない。むしろ、元慰安婦の名誉と尊厳の回復を図る事業は財団設立のように進めていこうというのが「合意の精神」だろう。 では、韓国大使館員がぼやく「日本の過剰反応」とは何か。 代表的なのが、韓国政府が今年9月に国立墓地内への元慰安婦の慰霊碑建立計画を発表したことへの反応だろう。日本では「慰安婦問題を蒸し返すのか」と反発する声が出て、菅官房長官も記者会見で「日韓合意の趣旨、精神に反する」と述べた。 ただ、「すべての元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」が合意の目的であるのだとすれば、慰霊碑の建立自体がその趣旨から外れると言えるのだろうか。碑文に事実と明らかに違う文言が刻まれるのであれば、それは問題だ。それでも「そうなるに決まっている」と決め付けるよりは、問題のある内容にならないよう働きかけることの方が生産的ではないだろうか。2017年12月、フィリピンのマニラ湾に面した遊歩道に建った慰安婦像の台座下に埋められたプレート。英語で説明書きされている 慰安婦問題は、国際社会への「宣伝」合戦になってしまっている。本来は望ましいことではないが、日本として放置しておくこともできない。アジア女性基金や日韓合意を含めた日本のこれまでの取り組みや、そもそもの慰安婦制度をめぐる事実関係について日本の立場を国際社会に説明していく必要はある。事実と違う宣伝が、あたかも事実として流布されることは望ましくないからだ。逆効果になりかねないご都合主義の情報発信 ただし、重要なのは歴史的資料を真摯に扱う姿勢だ。既に見つかっている資料であるにもかかわらず、自らに都合が悪いからと無視したり、いかにも無理な解釈を付けたり、ということをしてはならない。そんなことをすれば、第三者からの信用を失うだけである。 現代史家の秦郁彦氏が著書『慰安婦問題の決算』(PHP研究所、2016年)の「あとがき」に書いているエピソードは、そうしたことを深く考えさせる。秦氏の著書『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999年)の英訳に関する話だ。「私観を避け史的経過を軸に、左右を問わず研究者、一般読者が参照しうるエンサイクロペディア(百科全書)にしたい」という狙いで執筆された同書は、専門家からも高い評価を得ている。 秦氏は「あとがき」で「国際世論の誤認、誤解を解くのに、説得工作やロビー活動は要らない」と指摘する。そして、「典拠を明示した第一次資料に依拠する実証的学術書の英訳版を1冊だけ送りだせば足りると私は判断している。事実は何よりも強いから、それに則した材料を提供すれば、対処策は英語世界の読者が決めてくれるはずだ。説得を焦るあまり押しつけがましくなるのは、むしろ逆効果を招きやすい」と説く。きわめて重要な視点だろう。 「あとがき」によると、秦氏の考えが伝わったのか、外務省の有識者会合が慰安婦問題に関する対外発信の一環として『慰安婦と戦場の性』の英訳を勧告し、2013年夏に内閣官房の事業として英訳出版されることが決まった。ところが、11月になって事業を担当する内閣広報官に突然呼び出され、英訳にあたって一部を削除したいと告げられたという。第二次大戦前後の英米独仏ソをテーマにした第五章「諸外国に見る戦場の性」について、「外国人の読者を刺激するおそれがある」という理由でまるまる削除するよう求められた。 秦氏が「他に削りたい箇所があるか」と聞くと、「上海の慰安所で検診していた麻生軍医の回想録から、日本人慰安婦に比べ朝鮮人は若く初心の者が多いと引用したくだりも落としてくれ。他にもいろいろあるが…」という答えが返ってきたそうだ。秦氏は拒絶したので、英訳の話自体がなかったことになってしまった。不当な削除要求によって、意義のあるプロジェクトがつぶされてしまったことは極めて残念である。さわだ・かつみ 毎日新聞記者、前ソウル支局長。1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

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    「慰安婦教」に群がる韓国フェミニストの理不尽なウソ

    著者 高木右昌(ゆうま) 評論家の室谷克実氏の言葉を借りれば、「慰安婦教」が韓国で猛威を振るっている。慰安婦に関する歴史的な事実関係は学術的論議の対象ではなく神聖不可侵たる信仰になった。韓国の右派の中にも、慰安婦問題は従北左派による分断政策の一環であることを見抜いている人は多い。著書『帝国の慰安婦』が名誉毀損(きそん)罪に問われた世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)教授のような学者もいる。 しかし、真面目に史料をもって慰安婦の強制性について反論を繰り広げたり、細かい事実関係を基に捏造(ねつぞう)された部分を指摘したりしても手応えはない。現在韓国の世論を主導しているのは左派政権だからだ。その支持勢力の中でも主流と呼べる「韓国フェミニズム」の流れがその背景にある。 韓国には女性家族部という政府機関があってフェミニズムの制度的基盤となっている。その所轄に「性売買防止及び被害者支援に関する法律」というのがあるが、注目すべきは支援を受ける性売買被害者の範囲だ。 「性売買被害者」であれば、常識的には自分の意思に反して性売買を強制された人を指す。自ら進んで性を売る人を被害者とは言わない。では、現代の韓国で売春を強要された性売買被害者の基準は何か。性売買被害者支援法の支援対象を見れば明らかになる。【赤丸部分】支援対象:性売買被害者および性を売る行為をした者(韓国・女性家族部のホームページより) ということになっている。性を売ったすべての人が法律で定める性売買被害者支援を受けられるようになっているのだ。具体的にいうと、性売買被害者支援法では性売買被害者の定義を「性売買斡旋(あっせん)等の行為の処罰に関する法律」に委ねている。この法律上の性売買被害者の範囲は「偽計、威力、それに準ずる方法で性売買を強要された人」(法第2条1項4号)になっている。それが性売買被害者を支援する段階には「性を売る行為をした者」になっているのだ。 よくフェミニズム団体が主張する「自発的な売春はない」という認識がある。性を売る者すべては何らかの事情によってやむを得ず性を売っている、これは自発的ではなく強要されたのと同然なので被害者なのだという論理だ。キリスト教でいう「すべての者は罪人だ」というのと正反対の立場である。ここに、韓国で慰安婦の強制性に対する反論が支持を集めにくい背景が見えてくる。 2016年8月、「誣告(ぶこく)共和国」という表題のコラムが韓国のネットメディア、イーデイリーに載った。内容は、男性芸能人と性関係を持った女性が金目当てに性的暴行を受けたと虚偽告訴する事件が連続発生している世態を批判しているものだ。 こういった虚偽告訴事件は芸能人に限ったものではない。17年にはセクハラで女子生徒に告訴された中学教師が自殺に追い込まれた事件があった。後で無実であったことが明かされたが、教師を虚偽告訴した生徒は携帯のことで自分を叱った教師に腹がたっていたと陳述している。被害者のためなら捏造してもよい このほかにも、浮気したことが夫にバレて浮気相手の男性をいきなり強姦罪で告訴した女性や、一緒に寝た男の金を盗んだことがバレて男を強姦罪で訴えた女性、太ったといわれ腹が立ったため相手男性を虚偽告訴した女性、自分から先に殴った男に殴り返されるとセクハラで告訴した女性のケースもあった。新聞報道された事件だけを見てもコラムの表題を「誣告共和国」とつけた理由がわかる。 ここで注目すべきは世論を主導する市民団体の反応だ。韓国の女性団体は、性犯罪に対する誣告罪(虚偽告訴罪)の適用に反対している。性犯罪に虚偽告訴罪を適用すると性犯罪被害者にくつわを噛ませることになりかねない、虚偽告訴罪になるのを恐れて性犯罪の被害を隠すことになってはいけないと主張する。 だが、被害者保護のためにはささいな捏造(ねつぞう)はあってもよい。虚偽告訴された人が、人格を抹殺され職場では首になり、最悪の場合自殺に追い込まれても、だ。韓国にもこれに異議を唱える人はいる。しかし巨大フェミニズム勢力の前で壮絶な最期を迎えるだけだ。フェミニズム勢力と戦っていたある活動家は漢江(ハンガン)へ身を投げてしまった。 そんな中、ここ数年間、米サンフランシスコを含めてあちこちに慰安婦の像が設置されているが、これは偶然ではない。米国や欧州では「Me too」キャンペーンが広がっている。スウェーデンでは18年現在、明確な同意のない性関係は性的暴行と見なされ得る法案が推進されている。容疑者から相手の同意があったことを証明できない場合、強姦罪の構成要件である強制性を立証できなくても強姦罪に問われる可能性がある法案だ。明らかに立証責任の転倒であるが、性犯罪被害者保護のためには認められるということだ。2017年11月、軍慰安婦関連資料の「世界の記憶」登録を目指す団体の会議に臨む韓国の鄭鉉栢女性家族相。左は元慰安婦の李容洙さん(共同) 世界にはフェミニズムの風が吹いている。「反米」も「従北」も表に出せない韓国の左派にとって「慰安婦教」という分断政策は妙手だった。韓国では左派団体が日本にどんな非礼なことをしても宗教裁判を恐れて誰も文句がいえない。日本ではこの「憎悪の宗教」のせいで、「助けず、教えず、関わらず」の非韓三原則まで提唱されている。 これだけでも大成功だ。しかし「慰安婦教」は韓国にとどまらない。フェミニズムの風に乗って世界中に布教されるほどの勢いを見せている。

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    ベトナムの韓国大使館前に「ライダイハン母子像」建立計画

    最終的かつ不可逆的な解決」を謳った慰安婦問題の日韓合意を「国民の大多数が受け入れられない」と蒸し返す韓国の文在寅・大統領。その文氏を巨大な“ブーメラン”が襲った。 この9月12日、イギリスの市民活動家、ピーター・キャロル氏の呼びかけで、ロンドンで民間団体「ライダイハンのための正義」が設立されたのだ。ベトナム女性と子供たちのために制作された「ライダイハン像」と作者のレベッカ・ホーキンスさん=2017年9月、英ロンドン(岡部伸撮影)「ライ」はベトナム語で「混血」、「ダイハン」は「韓国」を意味する。韓国はベトナム戦争(1960~75年)当時、アメリカを支援して延べ34万人の兵士を送り込んだ。だが、彼らは現地で多くの強姦事件や民間人虐殺を繰り広げた。ライダイハンとは、韓国兵による強姦などによって生まれた子供たちのことであり、ベトナム戦争終結後、ほとんどが置き去りにされた。その数は推計で数千~3万人とも言われる。 韓国政府はこれまで、この問題に関する公式の謝罪や賠償は一切行なってこなかった。それどころか、これに触れること自体、韓国ではタブーとされてきた。それが今、支援団体の設立によって国際社会に晒されようとしているのだ。 ロンドン市内で開かれた同団体の設立イベントにはジャック・ストロー元外相も出席した。公式サイトには、設立趣旨としてこう書かれている。〈混血の子供たちはライダイハンとして知られ、今日でも日陰の生活を送っている。われわれは、このような形で食い物にされたすべてのベトナム人女性のため、ライダイハンの子供たちのため、そして、彼らが当然受けるべき存在の認知と尊重のために戦う〉 さらに、同団体のメンバーで英国人ジャーナリストのシャロン・ヘンドリー氏は、レイプ被害者やライダイハンの子供たちへの聞き取り調査を英インディペンデント紙(9月11日付)に寄稿した。そこでは韓国軍司令官の家で食事を作る手伝いをしていた10代の女性がレイプされた事例や、子供たちが学校で“犬の子”と呼ばれて差別を受けている実態をレポートしている。 ヘンドリー氏は、〈韓国政府は決して韓国兵が行なった行為を認めず、調査すらしない〉と、韓国政府の姿勢を批判している。 韓国の戦争犯罪を糾弾する市民団体が、まさかイギリスで誕生するなど、文大統領は夢にも思わなかったのではないか。韓国での報道は一切なし 韓国の国際的地位を揺るがしかねないこのニュースを、韓国メディアはどう報じたのか。新聞等の主要メディアを確認した限り、驚くことに取り扱ったメディアは1つもなかった。文大統領はじめ政府側も、一切コメントを出していない。それだけこの問題のタブー性は強いということだ。加害者の側面がバレた韓国 かつて韓国のリベラル系週刊誌「ハンギョレ21」が、ベトナム戦争でのレイプや虐殺の実態を告発するキャンペーンを行なったところ、退役軍人団体の「枯葉剤戦友会」が激怒し、2000年6月にメンバーらがソウルのハンギョレ本社を襲撃、印刷施設や自動車、パソコンを破壊するという事件が起き、韓国社会を震撼させた。 枯葉剤戦友会は、ベトナム戦争で米軍の撒いた枯葉剤の被害を受けたと称する退役軍人の組織で、全国に16支部、会員数約13万人を誇る韓国でも有数の圧力団体である。彼らにとってベトナム戦争での韓国軍はあくまで「被害を受けながら立派に戦った国家の英雄」でなければならず、蛮行の歴史などあってはならない。だからこそ、ライダイハンの問題には徹底した言論弾圧を行なう。 こうした団体が存在しているために、韓国メディアは、韓国軍によるベトナム民間人虐殺をタブーとして扱い、ほとんど報じてこなかった。しかし、今回の市民団体の設立は、その状況を変える可能性がある。韓国問題に詳しいジャーナリストの前川惠司氏はこう言う。1972年のベトナム戦争のクリスマス爆撃で撃墜された米空軍B52の残骸=ハノイ(iStock)「今まで慰安婦問題で日本を批判し続けてきたのに、実はベトナムで韓国軍は、韓国がいうところの慰安婦の強制連行に、中国がいうところの南京大虐殺を一緒にしたような残虐行為を繰り広げていたということが分かってしまった。しかも、日本の慰安婦問題には強制連行の証拠が見つからなかったのに対し、レイプ被害者と数千人から数万人のライダイハンという証拠が存在するので否定しようがなく、“いままで慰安婦で騒いでいたのは何だったのか”となりかねない。 韓国はこれまで、加害者としての側面を隠しながら被害者の側面だけを強調するという危ない橋を渡ってきたわけですが、国際社会に見つかったことによって、ついに足を踏み外しかけているという状況ではないか」 しかも韓国はこれまで、日韓の慰安婦問題を国連などに訴え、国際社会を巻き込もうとしてきた。いまも韓国政府は中国と連携して慰安婦関連の資料をユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録しようと働きかけ、アメリカでも在米韓国人を通じて、各地に慰安婦像を建立している。 だが、韓国が訴えようとした国際社会は今、韓国のライダイハンに目を向け始めた。これに対処しなければ、慰安婦を国際問題化してきたこれまでの姿勢と矛盾することになる。文大統領が慰安婦問題を蒸し返したことが、自らを窮地に追い込んでいるのだ。 イギリスの市民団体では、被害女性とその子供たちをモデルにした「ライダイハン像」を制作し、在ベトナム韓国大使館前などに設置することを検討しているという。韓国政府はどう対応し、韓国メディアはどう報じるか。関連記事■ ケント氏「韓国はベトナム女性に謝罪する像を建てるべき」■ 慰安婦像撤去拒否ならハノイ韓国大使館前にライダイハン像を■ 田中みな実アナの「肘ブラ」 過激すぎNGになったカット存在■ 20歳時に4、5人の韓国兵に暴行を受けたベトナム人女性の証言■ 「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人

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    慰安婦像撤去拒否ならハノイ韓国大使館前にライダイハン像を

    婦像は一向に撤去される様子がない。むしろ朴槿恵大統領の失職で、今後、親北の度合いを強めることが確実な韓国は、慰安婦像の増設を加速させるだろう。日本が取るべき策は何か。評論家の呉善花氏は、ベトナム戦争が材料の一つになるだろうという。* * * 反日を強める韓国では、慰安婦像が撤去されないどころか、ますます増え、今年からは徴用工像も次々に設置されていくだろう。それらに日本が対抗するうえで大切なことは、第三者に向けた情報発信を増やすことだ。慰安婦問題に限らず、冷静な判断ができる材料を世界に提供する必要がある。 その際、材料の一つとなるのがベトナム戦争だ。評論家で拓殖大教授の呉善花氏 当時、米軍支援の名目でベトナムに出兵した韓国軍は現地の民間人を虐殺した。その数は推計1万人から3万人との報告がある。また、強姦事件も多発し、韓国兵と現地女性の間で生まれた子供(ライダイハン)が多数いる。 韓国政府はいまだに韓国軍による民間人虐殺を認めていない。穏健なベトナム人は韓国軍の蛮行について、黙して語らない傾向があったが、ここに来て風向きが変わりつつある。1966年に韓国軍が南ベトナムの農村で民間人430人を虐殺した事件を扱ったドキュメンタリー『最後の子守歌』が昨年末、ベトナム国営放送の放送大賞でドキュメンタリー部門奨励賞を受賞したのはその一例だ。 他方、一部の韓国人の間で、ベトナム戦争での民間人虐殺や強姦について謝罪して現地に慰霊碑を建てる動きがあるが、これには注意が必要だ。なぜならそれは、「我々韓国はここまで真摯にベトナムに対応したのだから、日本も慰安婦問題で韓国に謝罪して慰霊碑を建てろ」などと反日の攻撃材料として利用する狙いがあると考えられるからだ。 そもそも、戦時における民間人の虐殺・強姦と、民間の施設だった慰安所の問題は本質的に異なる。日本は韓国の“肉を切らせて骨を断つ”術中に嵌らないよう警戒すべきだ。 ちなみに、ベトナム戦争では、ベトナム女性を中心とした東南アジアの女性たちが、韓国兵に性的サービスを提供する“慰安所”があったと、私はベトナム戦争に参加したことのある軍人出身から直接聞いたことがある。また、朝鮮戦争では米軍相手の韓国人慰安婦が多数存在した。「善なる被害者」であることに酔いしれる大多数の韓国人はベトナムでの蛮行をタブー視する。自分たちの汚点を棚に上げ、「悪いのは日本人だけ」という単純なストーリーに固執するのだ。 そうした物語の定着を避けるためにも、日本はベトナム戦争における真実を徹底して学術調査し、その結果を英訳して諸外国に提供する努力が求められる。 同時にベトナムで何があったかを知らない韓国人の啓蒙も必要だ。しかし前述の通り、日本人が直接的に指摘すれば、彼らは感情的に猛反発するだけだろう。 だから、この問題の当事者であるベトナム人が動くほうが望ましい。彼らがベトナム戦争における「民間人虐殺の慰霊碑」や「ライダイハン像」などをハノイにある韓国大使館前に建設したら、さすがの韓国人も無視できないはずだ。韓国人は日本以外の外国の目をとても気にするからだ。 そうした状況を促すため、場合によっては日本側がベトナム人に慰霊碑の設置を働きかけてもいいだろう。 英語での発信を中心として、今後の日本には粘り強く情報戦を戦い抜く外交が求められる。親北政権で反日を強める韓国の情緒に対抗するには、事実を積み上げた論理で世界を味方につけるしかない。●呉善花(オ・ソンファ)/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所刊)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。関連記事■ 「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人■ 20歳時に4、5人の韓国兵に暴行を受けたベトナム人女性の証言■ 渡辺謙の不倫報道 南果歩は悲観にくれ、娘・杏は冷たい視線■ フジ女子アナ採用 「役員の好みで…」と佐藤里佳部長疑義■ モデル・安部ニコル 上着を脱いで豊かな胸の膨らみをチラリ

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    慰安婦問題を解決したいなら、大阪に少女像を建立すればいい

    略的な地盤形成に努めながら、来るべき時機を待つべきである。ピンチをチャンスに変えよ 少女像となれば、韓国の二番煎じとなってしまうが、この際何でもよかろう。むろん、この像をあえて外国の総領事館の前に建てるようなことはすべきではない。また、外国の具体的な過去の問題について碑文に記述する必要もない。韓国に対抗するような意図は持たず、粛々とわが国の立場を国際社会に対して主張すればよい。 わが国と韓国の間には確かに数多くの問題があるが、たまにけんかはするにせよ、なんだかんだ「腐れ縁」の幼なじみの友人ではないか。特に大阪は歴史的に在日韓国人が多く居住し、コリアタウンもあり、在日韓国人の文化は大阪文化の一端を担っていると言っても過言ではない。そうした寛容の姿勢をアピールすれば、大阪の国際的な地位の向上にもつながるだろう。 安倍晋三内閣は、成長戦略の一環として「すべての女性が輝く社会づくり」の推進を掲げている。そこで、これをわが国そして世界中の女性のエンパワーメントを高めるための事業の一環として位置付けてはどうだろうか。ただ過去を悲観するのではなく、明るい未来のため、その決意を祝福するような意味合いを込め、未来志向の日本の意思を内外に示し、国際社会において今後わが国がリーダーシップを発揮することにもつながる。 ピンチをチャンスに変えなければならない。それには多少のリスクテイクも必要だ。いつまでも批判を恐れて避けているようでは、後手に回るだけである。もしこの「平和の少女像」を設置するならば、ふさわしい場所が大阪市内のどこかにあるかもしれない。2017年11月、米サンフランシスコ市の慰安婦像の問題について、滞在先のパリで取材に応じる大阪市の吉村洋文市長(右)と大阪府の松井一郎知事(中央) そもそもサンフランシスコ市議会の決議文には、「現在2090万人もの人身取引の被害者が世界中におり、そのうちの55%は女性と少女である。強制労働や人身取引は世界中で1500億ドルの犯罪産業となっている。サンフランシスコもこの問題から免れず、港、空港、産業の発展や移民の増加という背景のもと、人身取引の目的地と考えられている」という部分もある。国際社会とともに市自身が問題を抱えているのだということを自ら発信し、「これらの被害について学び、教えることはサンフランシスコを始め世界中の国々で起きている現代の人身取引の流行を止める」ための自身の役割であると位置付けている。 自ら進んで「身を切る」問題提起をしてこそ、説得力を勝ち取ることができ、国際社会においてまともに議論をすることができるのではないだろうか。それには相当な覚悟が求められるだろう。

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    米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

    木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授) 韓国政治における「保守」派と「進歩(リベラル)」派の対立軸の1つが対北朝鮮政策をめぐるものであるのは周知の事実である。北朝鮮に対する厳格な相互主義を強調し、北朝鮮の妥協がない限り韓国の方から交渉の手を差し伸べる必要はないと考える保守派に対して、進歩派は北朝鮮に対する韓国の体制優位に基づいて、相対的に寛容な姿勢で北朝鮮を交渉の枠組みに引き込むことで、北朝鮮に対する韓国の影響力を増大させることが重要だと考える。 後者の政策が1998年から2008年までの金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権によって試みられたのに対して、前者の政策は2008年から2017年までの李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権によって試みられた。2000年の金大中政権と2007年の盧武鉉政権が金正日(キム・ジョンイル)国防委員長との間で2度の南北首脳会談を行ったが、北朝鮮は、韓国との関係を深めることによって自らの存在が脅かされることを恐れて、南北関係の緊密化に深入りすることはなかった。李明博、朴槿恵政権下では、それまでの政権が積み上げてきた金剛山(クムガンサン)観光、開城(ケソン)観光、開城工業団地などの成果が放棄され、その結果、北朝鮮に対する韓国の影響力はゼロに回帰した。 朴槿恵大統領の弾劾訴追と罷免を受けた2017年5月9日の大統領選挙のときは、ちょうど北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長によるミサイル発射などの軍事的挑発と、それに対する米国トランプ大統領の強硬発言の応酬によって軍事的緊張が高まっていた。そうした状況の中で北朝鮮に融和的な政権が登場してもよいのか、という危惧が国内外から提起されたのは事実である。 しかし、国政の混乱状況をもたらした朴槿恵政権、保守派に対する政治的審判を下すという選挙であったため、予想通り文在寅(ムン・ジェイン)大統領が誕生した。準備期間が全くなかったために、外交安保チームの編成など人事に関する混乱もあったが、外交安保政策をはじめとした文在寅政権の評価は依然8割を超える高い支持率を維持している、というのが現状である。大統領府に向かう車から、沿道の市民らに手を振る韓国の文在寅大統領=2017年5月10日、ソウル(聯合=共同) その理由として、文在寅政権の外交安保政策におけるリアリズムを指摘することができる。進歩派は当初、李明博、朴槿恵という保守政権9年でゼロに戻ってしまった南北関係を改善するとともに、核ミサイル開発を続ける金正恩政権に対してあくまで平和的な手段で抑制することを求めるための外交を文在寅政権に期待した。それに対して保守派は、文在寅政権が北朝鮮に融和的な姿勢を示す余り、対北朝鮮強硬策を志向する米国トランプ政権との乖離(かいり)が顕著になり、韓国の安全保障を危うくすることになると憂慮した。結果としてみると、そのどちらも裏切られる格好となった。米国にも中国にも「いい顔」せざるを得ない 文在寅政権は、北朝鮮との関係を強化することによって韓国の優位を生かすという進歩派の対北朝鮮外交を封印し、とりあえず北朝鮮を核放棄に追い込むために米国をはじめとした国際協調が重要であるという立場を維持した。11月1日の文在寅大統領の国会演説では、平和的な問題解決の必要性、問題解決に関する韓国の主導権の確保などを言及したが、基本的には北朝鮮核ミサイル危機に対する米韓協力の必要性が強調された。 また、11月7~8日のトランプ大統領訪韓に関しても、9月に文在寅政権が日米との事前協議もなく国連機関を通した人道的支援のために800万ドル相当を拠出することを表明したことなどに起因して、対北朝鮮政策をめぐる米韓の乖離が露呈するのではないかと当初は危惧されたが、そうした乖離は表面化することはなく、無難に終わった。 韓国国内では、文在寅大統領がトランプ大統領に在韓米軍基地を案内したり、中止されたが非武装地帯を一緒に見学しようと試みたことなどで、トランプ大統領に米韓関係の重要性を再認識させることができたという点では、米韓首脳会談は成功であったという見方が支配的である。ただ、単独の首脳会談は20分余りしか行われなかっただけに、果たしてどの程度中身の濃い議論が行われたのか疑問も残る。 さらに、文在寅政権にとってもう1つ重要な課題は、朴槿恵政権による高高度防衛ミサイル(THAAD)配備決定に起因した中国の実質的な対韓経済制裁によって一挙に冷え込んだ中韓関係を立て直すことであった。韓国では、安全保障では米韓同盟を基軸とするが、経済では貿易全体の約4分の1を対中貿易が占めるとともに、北朝鮮に対して圧力を行使してもらうためには対中関係も対米関係に劣らず重要であるという認識が支配的である。 ところが、2016年1月の北朝鮮の第4次核実験に直面して、それまで米国の要請にもかかわらず慎重な姿勢に終始していたTHAAD配備を進めることを朴槿恵前大統領は決断した。2015年9月の抗日戦勝記念70周年の軍事パレードにまで参列した朴槿恵大統領が急に心変わりをしたと中国は受け取り、在中韓国企業に対する実質的な制裁を科したり、韓国向け団体観光を中止したりするなど、韓国経済に打撃を与えることでTHAAD配備への報復を行った。歓迎式典に臨む韓国の文在寅大統領(右)と中国の習近平国家主席=2017年12月14日、北京の人民大会堂(共同) しかし、中韓関係が悪化したままであることは、中国にとっては対米対日外交における不利な要因になりかねず、韓国の一定の妥協を引き出せれば緊張を収束したいと考えていた。韓国にとっても、経済的な打撃のみならず対北朝鮮圧力行使への働きかけが不利になるので、対中関係の改善はぜひとも達成したいものであった。 このように、相互に関係改善への思惑が一致した結果、10月31日に「韓中関係改善関連両国間協議結果」が発表され、THAAD配備に起因した中韓の緊張はいったん収束されたように見える。そして、12月13日から16日まで文在寅大統領は中国に公式訪問するに至った。韓国の本当の狙い その代わり、韓国は「THAAD追加配備」「ミサイル防衛網の構築」「日米韓軍事協力の深化」などをしないという「三不政策」を中国に約束させられたのではないかとみられる。これについては、同盟国米国はもちろん、国内でも、中国に譲歩し過ぎて韓国の安保外交政策の選択の幅を制約し過ぎたと批判された。 さらに、文在寅大統領自身、11月3日のシンガポールのテレビ局とのインタビューで、米中間での「均衡外交」に言及したと批判的に伝えられ、米韓首脳会談後の記者会見ではあくまで米韓同盟が基軸であると言明し、対米関係と対中関係を両天秤にかけて均衡を保つという見方を打ち消すのに躍起になった。共同記者会見するトランプ米大統領(左)と韓国の文在寅大統領=2017年11月7日、ソウル(共同) 以上、就任後ほぼ6カ月を迎えた文在寅政権の外交を見ると、ともかく米中関係にどのように対応するのかということで手一杯だったのではなかったかと思われる。韓国なりに、北朝鮮の核ミサイル開発に対米同盟関係を堅固にして対北朝鮮圧力強化で対応するとともに、経済や対北朝鮮関係で重要な対中関係を修復したという成果を収めた。その代わり、韓国の「進歩」政権が本来指向すべき独自の対北朝鮮政策は依然、封印された格好である。 しかし、それは現状ではある程度やむを得ないのではないだろうか。現時点で、韓国独自の対北朝鮮政策を展開することは、ちょうど2007年11月に行われた盧武鉉大統領の北朝鮮訪問時のように、米国の支持もない孤立外交であるとみられ、肝心の北朝鮮からもまともに相手にされずに、その後につながるような可視的な成果もなく終わってしまったのと同じようになる可能性が高いからである。政権を支えた文在寅大統領としても、そのことは十二分に理解しているはずである。 文在寅政権の狙いは、まずは国家安保の基軸である米韓同盟の堅固化に努め、それによって北朝鮮に対する圧力を強めることで北朝鮮の軍事挑発を抑えるとともに、北朝鮮が交渉に出てくるのを「待つ」ということであろう。確実な保証はないが、こうした対北朝鮮圧力行使が功を奏して北朝鮮が対米交渉に出てくるときに、韓国としては、それに便乗するように南北関係の改善に取り組むことを狙っているのではないか。 本来であれば、韓国が米国を動かし、そうした方向に持っていくのが最善ではあるが、残念ながら韓国外交にはそうした力がない。つまり「待ちの姿勢」で臨むのがリアリズムということになる。日本ではとかく文在寅政権の外交に対して批判的、もしくは警戒的な見方が支配的である。しかし、その他の政党の候補が大統領になっていたとしても、外交安保政策に限っては、同様な政策を選択していたであろう。それだけ、韓国外交が採りうる選択の幅は狭いと言わざるを得ない。韓国は日本と協力するほかない ただし、1つ気になるのは、そうした対米、対中外交のはざまで、対日外交に関してほとんど本格的な成果もしくは取り組みがみられないということである。一方では、トランプ・安倍の日米関係が非常に緊密に展開されていることもあり、米国からは日米韓の連携強化を強く要請されている。韓国としても、米韓同盟を堅固にするためにも、ある程度は応えなければならない。 しかし、韓国にとって「日米韓」という枠組みは、韓国がその中で最も周辺的な存在として埋没しかねないという危惧を持つ。他方で、中国からは、韓国が日米韓の連携強化に前のめりにならないようにすることが中韓関係改善の条件であると、日韓関係に関するブレーキをかけるように要求されている。韓国としても中韓関係を良好なものに保つためにも、米韓同盟はともかく、日韓関係の軍事的側面を希釈化しておきたいと考える傾向にある。そうしたはざまで対日外交の可能性を実質的に「封印」してしまった感がある。 韓国には、19世紀末から20世紀初頭にかけて、大国間国際政治に翻弄された結果、日本によって植民地化されたという「苦い歴史的経験」がある。したがって日韓の安保軍事面での連携強化には強い拒否反応があることもよく理解できる。 しかし、北朝鮮の核ミサイル開発に起因して緊張が高まり、場合によっては韓国の生存自体が脅かされる状況の中、北朝鮮の核の脅威を共有し、しかも戦争ではなく平和的に問題解決を志向しなければならないという使命も共有する日本との間で、この問題に関する協力の可能性を自ら閉ざしてしまうのは妥当なのか、再考する必要があるのではないか。もちろん、それに対応する日本の対韓外交にも同様なことが言える。会談に臨む文在寅韓国大統領(左)と安倍首相=2017年9月21日、ニューヨーク(共同) 北朝鮮の核ミサイル危機には何よりも米中の協力が必要であることは言うまでもない。しかし、それに劣らず、そうした米中協力を支える日韓協力が何よりも必要とされているのではないか。北朝鮮の核ミサイル開発を抑制するための米中協力が、米中関係から必然的に帰結されることはないからだ。その軍事的脅威に最も直接的にさらされ、その解決のための軍事的オプションの行使には何よりも慎重にならなければならない日韓の意向が十分に反映されるべきである。 そして、そのためには日韓が協力するほかはないのである。その意味で、文在寅政権には、対米外交、対中外交の次に、対日外交を打開して、短期的には北朝鮮の核ミサイル危機の克服、中長期的には韓国主導の朝鮮半島統一に関して日本の協力をいかに獲得するのか、そうした外交が必要とされているのではないか。

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    迷走する文在寅

    う。「民族ファースト」を掲げて北朝鮮融和を模索したかと思えば、対日政策では強硬路線を貫く。迷走が続く韓国外交。文在寅大統領のスタンスはどこにあるのか。iRONNA韓国リポート第4弾は、文政権下で分断が進む韓国社会の今。

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    「北朝鮮にしか関心がない」文在寅は不本意な圧力強化を貫けるか

    武藤正敏(元駐韓大使) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、9月3日の北朝鮮による水爆実験以降、北朝鮮に対する政策を明らかに変更した。文氏は8月17日、就任100日を迎えた日の記者会見で、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させ、これに核弾頭を搭載して兵器とすること」がレッドライン(越えてはならない一線)であると述べていたが、ICBMをはじめとする一連のミサイル発射に加え、水爆実験の成功によってレッドラインを越えたと判断したのであろう。 文大統領は安倍晋三総理との電話会談で、「国際社会と連携して強力な報復措置を講じる考えであり、北朝鮮自らが対話のテーブルに出てくるまで、さらに強化していかなければならない」として圧力を軸に方向転換する考えを示した。 こうした方針は韓国の軍事訓練や国防力強化方針に反映されている。 韓国軍は9月4日、豊渓里(プンゲリ)核実験施設への攻撃を想定して陸軍の弾道ミサイル「玄武2A」(射程300キロ)と空軍の空対地ミサイルによる射撃訓練が行われた。また、15日のミサイル発射の際には地対地弾道ミサイルの訓練を行っている。2017年4月、米韓両軍の統合火力訓練を見学する大統領候補時代の文在寅氏(右)=韓国北部の京畿道抱川(聯合=共同) 9月4日、韓国政府は、在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)について追加配備を認めると決定し、7日、韓国軍の基地に発射台4基が搬入された。さらに国防相は国会において、12月1日に金正恩暗殺を担う斬首部隊の創設を表明し、予定通り発足した。 これまで韓国の融和策が、北朝鮮に対する国際社会の圧力強化を損ない、特に中露を国際社会の連携に引き入れるのに障害とならないか懸念する向きもあった。文大統領の期待とは裏腹に北朝鮮が常に韓国の呼びかけを無視し、挑発行動を繰り返すことで、従来の融和策を見直さざるを得なくなったということであり、日米韓の連携は取りあえず強化されたといえよう。 しかし、北朝鮮の核問題の出口は見当たらないのが現実である。そうした中、文氏は北朝鮮との対話の糸口も探っているかもしれない。何せ、文政権の中枢にいる人物は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で北朝鮮との交渉を担ってきた人々である。また、9月14日、統一部は北朝鮮の核実験後も国連児童基金(ユニセフ)や国連世界食糧計画(WFP)を通じ800万ドルの人道支援を検討していることを明らかにし、実施が決定された。菅義偉(よしひで)官房長官もこうした動きには懸念を示した。 今後は文在寅政権の本質を理解しながら、対話を強化することで、韓国の単独行動を抑制し、日米韓の連携を強めていくことが肝要である。北朝鮮にしか関心がない文氏 文氏は故盧武鉉大統領の首席秘書官を務めた側近であり、同じ弁護士事務所のパートナーである。盧元大統領の非業の死を受け、その意思を実現すべく大統領に立候補した人物である。通常、首席秘書官は個々の外交安保問題に深く関わらないが、盧元大統領の南北首脳会談を主導したのは文氏であった。私は大使時代、朴槿恵(パク・クネ)前大統領と争っていた文氏に1度だけ面談したことがあった。その時、私からは日韓関係の重要性、協力のメリットを力説したが、文氏は関心を示さず、日本は南北朝鮮の統一を支持するのか、日本の北朝鮮政策はどうなのか、という点だけを質問してきた。文氏は北朝鮮にしか関心がないのだと感じたものである。2017年11月、ソウルで開かれたトランプ米大統領訪韓に反対する集会(共同) こうした文氏の考えは選挙運動中の発言によく表れている。文氏は「米国よりも北朝鮮に先に行く」と述べた。さらに、「北朝鮮が核を凍結すれば、米韓合同演習を縮小できる」「朝鮮半島の軍事行動は断じて韓国の同意なしになされてはならない」と主張した。 ただ、文氏は現実主義者でもあると聞く。当選後はさすが軌道修正した。「安全保障上の危機を早期に解決するために、まず6月にワシントンに行き、米韓首脳会談を行う。北京、東京を訪れる用意がある。条件が整えば平壌にも行く」運びとなった。 文氏の北朝鮮に対する一貫した思いは、「制裁の目標は北朝鮮を交渉のテーブルに引き出すもの」ということである。北朝鮮の一連の挑発行動を受け、今は「制裁と圧力を強めるときだ」として日米などと協力する姿勢を示す一方で、「根本的な解決法を模索することが重要」であり、たとえ制裁しても「対話のメッセージを継続して伝えなければならない」というのが基本姿勢である。 文氏は6月15日、訪米に先立って、北朝鮮が「核・ミサイルの追加挑発を中断するならば対話に向かう」と述べた。米国は北朝鮮との対話の前提として北朝鮮の非核化を求めており、あえて米国との事前相談もなく、こうした発言を行ったのは、韓米首脳会談を前に韓国の主導で北核関連の突破口を開こうとの意思表示ともとれる。北朝鮮を交渉に引き出すためには、譲歩もするとの姿勢を示した。 しかし、実際の首脳会談では、米韓の対立は表に出さず、協調姿勢に終始した。そして、首脳会談後の共同声明では、米韓同盟を強化し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に最大限の圧力をかけて、朝鮮半島の非核化を目指す方針を確認する一方、両首脳は「『適切な環境』の下での北朝鮮との対話であれば受け入れる」、米国は「南北対話についても、人道問題など特定の分野であれば支持する」との言質を得、「当事者である韓国の主導的役割が認められた」として意気軒高であった。融和策の継続は困難 次いで20カ国・地域(G20)首脳会合出席のためにベルリンを訪問した。ベルリンでは朝鮮半島問題に関する演説を行った。そこで提示したのが、南北首脳会談から、米韓首脳会談、米朝首脳会談、南北プラス主要関係国との首脳会談を通じて核ミサイル問題の解決である。そして、関係国首脳と一連の会談を行った。しかし、文氏は帰国後、閣議において「朝鮮半島の問題を韓国に解決する力はない」と述べ、その力の限界を悟った。要するに各国とも自国の国益に従い行動しており、日米対中韓の溝を埋めて韓国が主導していくことが難しいとの思いを抱いたのであろう。2017年9月、会談に臨む(左から)トランプ米大統領、文在寅韓国大統領、安倍首相=ニューヨーク(共同) しかし、どの会談においても北朝鮮との対話の方針を強調し、それについて一定の理解が得られたとして、帰国後軍事当局者会談と赤十字会談を提唱した。文氏は北朝鮮のことは自分が一番よく理解しているとの思いであろう。ところが北朝鮮にとってみれば、盧武鉉政権で交渉したときと異なり、現在は核・ミサイル開発が完成に近づいている。これが完成すれば米国ともより有利な条件で交渉できる。まして今、韓国と交渉するメリットなど感じるはずはない。案の定、北朝鮮から拒否されてしまった。 こうした中で、北朝鮮は7月4日と28日にICBMをロフテッド軌道で打ち上げ、8月29日と9月15日には中距離弾道ミサイルを発射して日本の上空を通過、グアムをいつでも包囲射撃できる能力を見せつけている。さらに9月3日には水爆実験を行い、事前に核弾頭を公開している。 もはや、文大統領としてもこれまでの北朝鮮融和策を継続することは困難であろう。北朝鮮に対し、国連安保理の制裁が強化され、外交関係の見直しや、経済関係の縮小に向かう国が増えている。こうした国際社会の圧力の強化を当事国である韓国が軽視することはできない。国際社会は、国内でも融和策を続ける文政権を避けて通る「コリアパッシング」ではないかとの野党の批判が高まっている。そしてこれまで高止まりしていた支持率も下がり始めた。 北朝鮮の挑発行動は今後ともエスカレートしていくことが予想され、軍事的な緊張が高まっていくであろう。日本人がソウルに行くと韓国の人々に緊張感がないのに驚く。韓国の人々は、北朝鮮について自分たちを攻撃しては来ないであろう、そう信じたいとの思いがある。米軍主導により、軍事的緊張が高まってきたときには、韓国国民は再び対話による解決を強く求めるようになるかもしれない。その時、文政権が圧力重視を貫けるかどうか。文政権の政策は世論迎合的であり、北朝鮮に対する圧力重視も本意ではないであろう。 今後、北朝鮮の核問題を解決していくためには、中国、ロシアをいかに同調させるかが重要である。その時、韓国が対話重視に傾けば、足を引っ張りかねない。日米韓の連携を維持し韓国と協力していくことがますます重要になってこよう。

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    日本は「独島エビ」で鯛を釣れ、文在寅が食いつく「竹島のエサ」

    下條正男(拓殖大国際学部教授) 韓国の文在寅大統領は、訪韓したトランプ大統領の晩餐会で独島エビを供し、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏を招いて、日本側の顰蹙(ひんしゅく)を買った。菅義偉官房長官が「外国が他国の要人をどう接遇するかについてコメントは控えるが、どうかとは思う」と不快感を示すと、外務大臣の河野太郎氏も、「北朝鮮危機の中、特に日米韓の連携が大事な時期に極めて遺憾だ」と発言したからだ。 これに対し、韓国外交部の林聖男第一次官は、「このようなメニューが話題になることは誰も予想していなかった」と釈明したが、日本側の反発は心外だったようである。この日韓の齟齬(そご)は、今日の日韓関係を象徴している。 韓国は歴史的に「東方禮義の邦」を自負してきたが、日韓の係争の地である竹島近くで獲れたエビを晩餐会の料理に出し、前政権との間で「最終的かつ不可逆的解決」を確認した慰安婦問題を蒸し返したのは、日本に対しては傍若無人の振る舞いも許されると錯覚しているからである。 今回の所作も、前政権を倒した際の民衆の民意におもねたのだろうが、それは慰安婦問題や竹島問題の歴史的事実についての理解が足りないからである。 慰安婦問題は、当初、日本軍を相手にしていたのは自尊心が許さないからだ。何とか無理やり売春をさせられたことにし、そのためには日本政府の関与があったことにしてほしい、ということから始まった。 それが「河野談話」を経て、戦前の酌婦は慰安婦から性奴隷になってしまった。慰安婦を日本の軍国主義による被害者とし、国際社会に吹聴したのは、文在寅大統領の盟友であった盧武鉉大統領である。バスに乗せられた慰安婦問題の少女像の手に触れる朴元淳ソウル市長=ソウル(同市提供・共同) 竹島問題もこれと似た状況にある。韓国の外交部によると、独島は「歴史的にも国際法上も、地理的にも韓国の固有領土」だそうだが、その歴史認識に基づいて日本に強く「謝罪」を求めたのは盧武鉉大統領である。 11月12日付の「朝鮮日報」(電子版)のコラム記事では、「日本は韓国はいつまで謝罪しなければならないのか」というが、彼らの心の中には『謝罪』などない」。(中略)「日本は韓国をそのような相手だとは思っていない。これが韓日関係の本質だ」と報じた。この現状認識は盧武鉉大統領と同じである。 だが今日、「謝罪」をしなければならない立場にあるのは韓国側である。韓国が不法占拠をしている竹島は、歴史的に韓国領であった事実がないからだ。それを韓国側では1954年以来、不法占拠を続け、日本側がその竹島の領有権を主張すると、過去を「反省」していないと反発してきたのである。これが事実に近い「日韓関係の本質」である。 それも韓国政府が竹島を侵奪したのは、「サンフランシスコ講和条約」の発効で敗戦国日本が国際社会に復帰する3カ月前の1952年1月18日。日本が最も弱体していた時を狙って、略取したのである。日本は独島エビで鯛を釣れ その後、日本政府は1954年9月、竹島を占拠した韓国政府に対して、国際司法裁判所への付託を提案するが、韓国側では竹島を「日本の朝鮮半島侵略の最初の犠牲物」として一蹴した。戦後の朝鮮半島と日本との関係は、竹島を略取した韓国側が歴史認識を外交カードとしたことで、歪んでしまったのである。 その竹島問題が再燃するのは、1994年に国連海洋法条約が発効し、新たに日韓の漁業協定を結ぶことになったからである。韓国の金泳三大統領は、1996年2月、竹島に接岸施設を建設して、竹島の不法占拠を正当化しようとしたのである。この金泳三大統領は、「歴史の立て直し」と称して、日本の統治時代に建てられた朝鮮総督府の建物を解体した人物で、歴史問題に関しては「日本をしつけし直す」と発言している。 この蛮勇は2012年8月、竹島に上陸した李明博大統領にも受け継がれた。竹島問題となると、つい強気になるのだろう。 これは盧武鉉大統領も例外ではなかった。2005年3月16日、島根県議会が「竹島の日」条例を制定することになると、その9日前に「歴史・独島問題を長期的総合的体系的に取り扱う専担機関の設置」を指示し、3月22日には「北東アジアの平和と繁栄のため、『バランサー』の役割を果たしていく」と宣言した。 以後、「バランサー役」を任ずる韓国が、国際社会を舞台に侮日戦略を展開すると、中国はそれに便乗して尖閣問題を浮上させ、ロシアは北方領土問題を第二次世界大戦の結果として、領土問題と一線を画した。 2006年4月25日、盧武鉉大統領は、竹島問題と関連した特別談話で、「韓国に対する特別な待遇を要求するのではなく、国際社会の普遍的な価値と基準に合う行動を要求するのです。歴史の真実と人類社会の良心の前に率直で謙虚になることを望むのです」と日本に注文をつけた。 その後、国策研究機関の「東北アジア歴史財団」を発足させ、国際社会を舞台に、慰安婦問題や日本海呼称問題、歴史認識問題などで日本批判を行なわせたのである。文在寅大統領は、その盧武鉉大統領の秘書室長を務めた人物である。 その文在寅大統領が、トランプ大統領歓迎の晩餐会で、独島エビと元慰安婦を政治的に利用したとしても不思議はない。トランプ米大統領(左)との会談を終え、記者会見する韓国の文在寅大統領=2017年11月、ソウル(共同) だが、歴代の韓国大統領が理解する竹島の歴史は、韓国側の歴史認識によるもので、歴史の事実とは無縁である。それは島根県竹島問題研究会の竹島研究で、実証済みである。 今、文在寅大統領がすべきことは、歴代大統領が歪めた日韓関係の修復である。そのためには竹島を速やかに返還して、過去の清算をすることである。 日本政府は、独島エビと李容洙氏の招待に異議を唱えたが、すべきことは他にあったはずである。韓国側が独島エビを出すなら、日本はそのエビで鯛を釣ればよいのである。 盧武鉉大統領が「竹島の日」条例に食いついたように、日本側が多少の工夫をすれば、文在寅大統領もエサに飛びついてくる。それは「竹島の日」条例以後、「日韓の間に領土問題は存在しない」としていた韓国政府の動きが、証明している。

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    「文在寅は嘘つきだ」山本みずきが見た韓国リベラルのメンタリティー

    山本みずき 今年の8月15日、私は韓国に滞在していた。日本でこの日は終戦の日だが、韓国では大日本帝国からの独立を祝う「光復節」という祝日である。日本と韓国では、歴史的に「8月15日」の持つ意味合いが大きく異なる。 2011年に、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されて日韓の歴史認識問題が改めて浮き彫りになり、今年になってからはそれに輪をかけるようにソウル市内に徴用工像が設置された。日本の報道を見ている限りでは、韓国のナショナリズムは年々高まりを見せており、これが光復節ともなれば、街は反日ムードで盛り上がり、韓国国旗を掲げたデモ隊がソウル市内を行進しているはずだ。そんなイメージだけが勝手に膨らんでゆく。韓国人はこの日をどのように過ごすのだろうか。疑問を胸に抱きながら、恐る恐るソウルの中心街へと繰り出した。 確かに市内はデモで盛り上がっていた。だが、少し様子がおかしい。ソウル市庁舎前の広場には200以上の団体が集い、雨が降り注ぐ中、群衆は雨合羽に身を包み、プラカードを掲げて何かを訴えていた。「No war, No THAAD」。意外なことにデモの目的は、反日運動ではなく、反政府運動だったのである。高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対し、デモ行進する人たち=2017年7月、ソウル 彼らは文在寅大統領に向けて、米韓合同軍事演習の中止を訴え、北朝鮮との緊張状態をいたずらに悪化させないよう、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の即時撤回を激しい怒号とともに要求していたのである。 デモの参加者に聞くと「大統領は嘘つきだ」と感情的に現政権への失望を語った。それもそのはず、彼らは皆、もともと進歩派である文在寅の支持者だったのである。デモ参加者は、自らの期待とは異なる政策を断行する文在寅政権に対して、デモを通じて激しい批判をぶつけていたのである。 韓国には、大まかに「保守派」と「進歩派」という2つの政治的潮流が存在する。ほかの民主主義諸国と比べても、この両者の亀裂は深く、対立は構造的であって、まるで二つの異なる民族がいがみ合う構図とも似ている。 対外政策について目を向ければ、保守派は北朝鮮の脅威に対して、米韓同盟を中心とする軍事的圧力に基づいた抑止力の強化を志向するが、進歩派は北朝鮮との民族的紐帯を重視して、融和的な対話路線を唱える。文在寅政権は、後者の進歩派を支持基盤としており、政権発足時は急進左派系の学生運動経験者が要職に就く様子も注目された。文在寅政権に不満を募らせる韓国 選挙活動中には朴槿恵前政権時に決定していたTHAAD導入に反対する姿勢を見せていたが、いざ政権の座に就くと、一転してTHAADの導入・配備を短期間のうちに実現した。進歩派であるはずの文在寅は、なぜ保守派が推進したTHAADの導入と配備を覆すことなく、その路線を継承したのか。 私はこのような疑問を抱えて、韓国を代表する国際政治の専門家の意見を聞くことにした。その際に、保守派と進歩派双方の主張に耳を傾け、その主張の対立する部分と重なる部分について、より深く知りたいと考えた。彼らはこの問題をどのように見ているのか、私なりに意見をぶつけてみた。 保守派であり、李明博政権や朴槿恵政権の対日政策に大きな影響力を及ぼし、また韓国を代表する日本専門家である世宗研究所所長、陳昌洙(チン・チャンス)氏によれば、当初は進歩派の文在寅政権が北朝鮮や中国に接近することを懸念していたという。だが、文在寅が大統領として現実の国際情勢に向き合ったことで、それまで唱えていた理念を軌道修正して現実的な手法を取るようになったと指摘した。 かつて、歴史家のE・H・カーは著書『危機の二十年』の中で、「左派の政党ないし政治家は政権を獲って現実とかかわるようになると『空論家的』ユートピアニズムを放棄して右派へと転じていく傾向がある」と喝破した。カーの議論をなぞるかのように、文在寅政権はまさに北朝鮮の脅威という現実に接したことで、それまでの安全保障政策を一部転換させたのだと言えよう。カーは続けて「しかも左派はしばしば左派のラベルをつけたままにしており、そのため政治用語の混乱に拍車をかけている」と述べている。 文在寅は大統領就任後、演説を通して左派的な発言を繰り返しており、国民から見れば進歩派の大統領なのであろう。それだけに、文在寅の支持基盤であり、彼と政治的理念を共有しているはずの進歩派の国民にとっては、矛盾を孕(はら)んだ文在寅政権への怒りが満ちていたに違いない。演説する文在寅大統領 あのソウルの暑い夏から、4カ月。その間に韓国外交はさらなる混迷を見た。文在寅は、核実験を強行して事態をエスカレートさせた北朝鮮に対して、約9億円の人道支援を決定した。国内の支持者を無視して現実の国際政治にだけ対処すれば、政権そのものの存立が危ういことは明白である。言うなれば、北朝鮮支援は文在寅の政治理念の実践であり、国民への配慮でもあったのだろう。 しかし、その結果、圧力強化で一致していた日米韓の足並みは乱れ、三首脳会談において蚊帳の外に置かれた文在寅は、まるで「現実政治(レアルポリティーク)」を逸脱したことへの代償を払わされているかのようであった。日米両国から孤立する韓国 次に私は、ソウル市内の西側に位置して、ソウル国立大学や高麗大学と並んで韓国の大学の頂点に位置する延世大学に向かった。進歩派を代表する国際政治学者であり、選挙活動中から文在寅の外交ブレーンとして政権を支えてきた金基正(キム・ギジョン)延世大学教授の話を聞くためだ。 金教授は、韓国人のメンタリティーには(保守派寄りの)「国家中心的な見方」と(進歩派寄りの)「民族中心的な見方」との二つが並存すると指摘した。国家中心的な見方に立てば、挑発的な態度を取り続ける北朝鮮は敵国であり、国家の存立をかけて対峙しなければならない存在だ。 一方で、民族中心的な見方に立てば、同胞からなる北朝鮮と対峙姿勢をとることは受け入れ難く、むしろ融和的な姿勢で接する必要がある。進歩派の文在寅政権の支持者たちの多くは、後者の「民族中心的な見方」をしている。つまり、同じ民族の北朝鮮に対しては、軍事的な威嚇ではなく、むしろ経済支援や人道的援助を行うべきだと考えているのだろう。 「国家中心的な見方」をすることは、端的に言えばリアリズムを選択することである。ただ、進歩派の政権にとっては、そのようなリアリズムを選択することは容易ではない。現在も北朝鮮に親族や友人のいる進歩派の人々にとって、北朝鮮を敵視することは道徳的に憚(はばか)られる。それゆえ、文在寅政権に人道支援や対話政策を期待しているのだ。 そして、米国や日本とともに推進する北朝鮮への圧力外交や、THAAD導入をはじめとする防衛力の強化はかえって南北の緊張を煽り、戦争を誘発するものに映るだろう。はたして、進歩派の政権がリアリズムの息吹を取り入れて、日本やアメリカと完全に共同歩調を取れるときは来るのだろうか。それとも、「民族中心的な見方」の磁力は強く、日米両国からますます離れていくことになるのだろうか。トランプ米大統領(左)との会談を終え、記者会見する韓国の文在寅大統領=2017年11月、ソウル(共同) 韓国人にとっても8月15日は特別な日である。祖国が南北に分断されている現状や、それを是とする米国や日本との軍事協力、そしてそれに甘んじている文在寅政権に対して声を上げなければならないーあえて光復節に合わせて実施された反政府デモには、そのようなメッセージが込められていたのかもしれない。韓国社会を分断する亀裂はあまりに深い。政権交代が起こるたびに、現実主義と理想主義の往来が繰り返されるこの国はどこへ向かうのか。一端を垣間見た一人として今後も注視したい。

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    朝鮮民族で団結し、統一国家を作る夢が韓国内で加速

     北朝鮮が事実上の核保有国となりつつある。不可解なのはそれでも韓国が“平時”のままだということだ。長年に亘る北の脅威に韓国人が麻痺しているということもあるが、それだけではない。背景には韓国世論の激変と、秘めた野望がある。拓殖大学教授の呉善花氏が警鐘を鳴らす。* * * いよいよ朝鮮半島情勢が危険水域に達しつつある。トランプ大統領は米韓合同軍事演習を大規模化させるなど、かつてない圧力をかけて北朝鮮に核開発・ミサイル開発を断念させようとしている。 しかし、その一方で韓国は、米韓合同軍事演習に参加しつつも、北朝鮮へ800万ドル(約8億9000万円)相当の食糧支援を表明するなど、対北圧力を高めようと共同歩調を取る日米を呆れさせた。圧力よりも融和路線が文在寅大統領の本音だ。気をつけなくてはならないのは、それが文大統領だけの考えではなく、多くの韓国人が共有する考えだという点だ。「北は平等で清貧」 まず、そもそもなぜ北朝鮮が核開発に固執するのかについて触れておきたい。北朝鮮の労働新聞が9月16日掲載した、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察し、笑顔を見せる金正恩朝鮮労働党委員長の写真(コリアメディア提供・共同) 金正恩が決して核開発を諦めない理由は朝鮮戦争の時点まで遡る。重要なことは、1950年に勃発した朝鮮戦争は、北朝鮮対韓国の戦争ではなく、中国・北朝鮮連合軍とアメリカを中心とする国連軍との戦争で、韓国は国連軍の一部に過ぎなかった、ということである。1953年に休戦となったが、休戦協定は上記両者間に結ばれたのであり、当然ながら韓国は協定の署名者ではない。核・ミサイル問題で、北朝鮮が韓国からの話し合い要請には決して応じようとはせず、アメリカとしか応じないと言い続けているのはそのためだ。 休戦協定では、新たな武器・核兵器・ミサイルの持ち込みが禁じられた。だがアメリカも北朝鮮も新たな武器を導入し、アメリカは核兵器・ミサイルをも持ち込んだ。両者とも休戦協定を侵したのである。こうした状況下で北朝鮮は、1994年以降たびたび「休戦協定に束縛されない」と表明し、2009年5月には、「もはや休戦協定に効力はないとみなす」と表明している。つまり、武力行使の再開はいつでも可能、ということになる。親北派が後退しない理由 アメリカは北朝鮮が核開発を止めれば、武力侵攻しないし現体制を認めると中国経由で伝えている。だが、金正恩はそんな言葉を信じはしない。核を持たなければ、これまで消された独裁者と同様にやられると思っている。したがって、北朝鮮はアメリカと平和条約を締結して朝鮮戦争終結が実現されるまでは絶対に核開発を止めない。 皮肉なことに、その北朝鮮とかつて干戈(かんか)を交えた韓国はいまや圧倒的に親北派が強くなり、圧力を強めようという意見は少数派だ。ターニングポイントは金大中政権(1998─2003年)だった。2000年の南北首脳会談以降、韓国では対北融和政策がとられて国民の北朝鮮イメージは一変し、国内に親北ムードが高まった。続く左派の盧武鉉政権下で、国民の親北傾向はいっそうのこと強くなっていった。 その後、保守政権の李明博、朴槿恵政権は一定の対北強硬姿勢に転じたが、北朝鮮はそれに対抗するかのように軍事挑発を多発させていった。そのため、国内では対北融和姿勢への再転換を是とする声が高まり、親北派勢力が後退することはなかった。文在寅政権に米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備撤回を求め、スローガンを叫ぶ反対派住民ら=韓国・星州 この背景には、若い世代の台頭により、朝鮮戦争で北から攻められた記憶が国全体として薄れていることがある。左派政権以降の教科書では北朝鮮史評価の傾向が強く、若者たちの大半は「同じ民族なのだから北朝鮮が韓国にミサイルを撃ち込むことはない」と信じるようになっている。さらには、北朝鮮に対していいイメージを抱いている者が少なくない。「ヘル朝鮮」と呼ばれるほど若者の失業率が高止まりし、財閥をはじめとする一部特権階級に富が集中する韓国に比べれば、むしろ北朝鮮は平等で清貧だという理解なのだ。 実際、最近の世論調査でも親北派の伸張は顕著だ。調査会社、韓国ギャラップの調査(9月5日~7日)によると、アメリカによる対北先制攻撃について、「反対」が59%、「賛成」が33%だった。一方、北朝鮮が韓国に戦争を仕掛ける可能性については、「ない」が58%、「ある」が37%だった。核を保有した統一朝鮮核を保有した統一朝鮮 トランプ大統領、安倍晋三首相は、文在寅大統領が対北800万ドル支援を表明した直後の3か国首脳会談で、「北朝鮮への圧力を損ないかねない行動は避ける必要がある」と苦言を呈した。だが、文大統領は意に介していない。なぜなら、彼が本当に気にしているのは韓国国内の世論だからだ。 いま、文在寅政権は韓国内で反発を受けている。大統領選のときに主張していた「対北融和」、「THAAD配備中止」は、最終的にアメリカからの要請を受け入れる形で変更を余儀なくされた。熱烈な文在寅支持派、つまり強固な親北派が期待していた開城工業団地の再稼働や金剛山観光の再開は思うように進まず、またTHAADも北朝鮮のミサイル発射が頻発して受け入れざるを得なくなった。 同盟国アメリカからの強い要請を文在寅氏は一応聞かざるを得ないが、これ以上、“譲歩”すれば支持者たちが離反する怖れがある。もちろん文大統領自身、本音は北朝鮮との融和にあるわけだから、北朝鮮にエールを送ることでその意志に変わりのないことを示そうとするのだ。この意志は、平昌オリンピックへの参加を北朝鮮に強く訴えかけたことにも滲み出ている。2017年7月、夏休みで韓国・平昌を訪れ、五輪関連施設を視察する文在寅大統領(右から2人目、大統領府提供・聯合=共同) 文大統領は、任期中に南北統一への道筋をつけたいと考えている。まずは、かつての左派政権時代のように文化的・経済的交流を拡大し、すでに南北で合意している第一段階としての「一国二制度による統一」を目指して南北共通市場を形成していくこれが文大統領の描くシナリオだ。「一国二制度による統一」は左派だけではなく、保守派も一致しての国家方針である。 韓国の考えは、南北共通市場の形成や外国資本の参入によって、北朝鮮がそれなりに豊かになり、少なくとも人民が貧困に喘ぐことがなくなれば、統一に向けての韓国の負担は大きく軽減される、というものだ。実際、現在の北朝鮮は国内の「資本主義化」をかなり推し進めており、経済特区への外国資本の参加を公募している。やっぱり核を持ちたい こうした道が開かれるかどうかは、アメリカが「核放棄」の主張から退き、核を保有する北朝鮮の現体制を容認するかどうかにかかっている。文大統領は「核放棄」ではなく「核凍結」を求めている。核開発を一時的にストップすればそれでよいという姿勢だ。しかしこれはポーズにすぎない。文大統領がそう考えているように、現在の韓国社会は「ここまで北の核開発が進んだのであれば、もはや認めるしかない」という方向性を強くしている。他の諸国にもそうした声があるし、アメリカ国内ですらそう発言する要人も少なくない。2017年11月、訪韓したトランプ米大統領(中央左)と韓国の文在寅大統領(共同) さらに踏み込んで言えば、韓国も核を持ちたいのだ。韓国ギャラップの調査では、核保有に「賛成」は60%で、「反対」は35%だった。  そもそも韓国の歴代政権は1972年以降、極秘裏に核開発を続けてきた。しかし2004年にIAEA(国際原子力機関)の調査で、2000年に金大中政権下でウラン濃縮を進めていたことが発覚し、中止せざるを得なくなったのである。韓国にとって核武装は悲願なのだ。南北統一がなれば、「北の核は自分たち朝鮮民族のものになる」のである。 韓米両国は「韓国が独自に戦時作戦統制権を行使できる条件が整えば、それを韓国に移譲すること」に合意している。朴槿恵政権下ではその時期を2020年としたが、文大統領は早期移譲を求めている。移譲となれば在韓米軍の撤退は時間の問題だ。アメリカでも在韓米軍撤退論者は少なくない。北朝鮮は米軍撤退を統一の第一条件としている。 リーマン・ショック以降、とくに現在、アメリカ、イギリスをはじめ、多くの諸国で国際主義から国家第一主義へ転換しようとする流れが加速度を増している。朝鮮民族で団結し、統一国家を作るという夢は、かつてないほど韓国内で共感を得やすくなっている。 韓国が描く統一朝鮮への道は、このままでは核保有朝鮮国への道となり、いっそう強固な反日大国出現への道となる。日本はそうした流れをはっきり見据え、北朝鮮問題に対処しなくてはならない。●オ・ソンファ/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。著書に『超・反日 北朝鮮化する韓国』(PHP研究所)、『赤い韓国 危機を招く半島の真実』(産経新聞出版、共著)などがある。関連記事■ 北朝鮮のミサイル発射兆候 信頼できるのは“Aアラート”?■ もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか■ 文在寅政権 慰安婦記念日まで制定、合意白紙宣言の可能性も■ 中国内「北朝鮮が核放棄見返りに毎年6兆円要求」報道の思惑■ 徴用工設置をはじめ、憎悪拡大再生産する韓国の動き

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    国防力増強に余念がない韓国、垣間見える焦り

    韓国の「読み方」伊藤弘太郎 (キヤノングローバル戦略研究所研究員) 文在寅政権は本年5月10日に発足してから半年を迎え、外交安全保障政策のスタンスが少しずつ見えてきた。「新政権の外交安全保障政策は日米韓の三カ国関係を基軸に、現実的でバランスのとれた外交を推進しながら、政権草創期を安全運転でこなしていくのでないか」というのが当初の筆者の見立てだった。政権発足後に北朝鮮の核・ミサイル開発が一層進展し、朝鮮半島情勢が緊張の度を増していることに加え、文在寅大統領が選挙戦を通じて、支持母体の進歩系だけでなく、保守、中道をも含めた幅広い層の支持を受け当選したからである。選挙前、「私のような人間が本当の保守だ(本年1月15日朝鮮日報によるインタビュー)」と発言するなど、文大統領は前回2012年の選挙において僅差で敗れたが故に、保守層の支持を盤石にするためのアピールに必死であった。就任演説において「国民すべての大統領を目指す」、「保守と進歩の葛藤は終わらなければならない」といった国民統合を重視する発言が散見された。 文大統領は「盧武鉉政権の大統領府秘書室長」という肩書きから「左派系」、「親北」だと見られがちだ。だからこそ同大統領は、こうした前評判とは一線を画し、まずは日米韓の連携を基調とする現実路線を選択すると予測したのだが、最近の韓国外交を見ると、こうした筆者の見通しは甘かったようだ。 今年9月15日の火星12号発射から11月29日の火星15号発射まで、北朝鮮による新たな挑発行動はなかった。その間、韓国外交はTHAAD配備問題による中国との関係悪化を改善させる大きな動きを見せた。10月30日、康京和外交部長官は国会での与党議員の質問に答える形で、(1)これ以上THAADを配備しない、(2)日米のミサイル防衛網に参加しない、(3)日本との安保協力は軍事同盟にならない、という「3つのNO」と呼ばれる立場を明らかにした。2017年10月、韓国国防省の行事に出席したマティス米国防長官。右は宋永武国防相=ソウル(共同) さらに、11月3日には、文在寅大統領がシンガポールメディアのCNAとのインタビューの中で、「日本との安保協力は軍事同盟とならない」と明言し、北朝鮮への対処を理由に「日本が軍事大国化することを懸念する」と発言している。その後、11月20日付の読売新聞が「日本版トマホーク開発」につき報じると、韓国メディアは敏感に反応し、これを批判的に報道した。最近では中央日報が5回に分け「浮上する自衛隊」と題した特集記事を組むなど、韓国メディアの論調は大統領発言に呼応するかのように日本の防衛力強化に対する警戒感を見せ始めた。 「米国に頼っている」、進歩派の不満 そもそも、文在寅政権の外交安全保障政策に関する考え方は、保守政治が選好する現実主義(リアリズム)の対立軸としての理想主義(リベラリズム)ではない。すでに多くの専門家が指摘しているように、現在の大統領側近は、周辺国からの力による干渉をはねのけて韓国の独立を守り、最終的には「韓国主導で南北統一を果たさなければならない」と本気で信じている民族主義者の集まりだ。彼らはその目的を達成するために「強力な軍事力を兼ね備えることが不可欠」と考える。 文在寅大統領は本年7月18日に軍高官を集めた昼食会の席上、「北との対話を追求しているが、圧倒的な国防力に基づかないと意味がない」として、現在GDP比2.4%水準の国防予算を任期中に2.9%に増額する考えを明らかにした。予算増額分を北の核・ミサイルへの対処能力向上に集中投資し、米国からの戦時作戦統制権の早期移管も目標としている。また、文大統領は8月28日に行われた国防部による業務報告の席上、「これまで莫大な国防費を投入したにもかかわらず、我々が北朝鮮の軍事力に対抗できず、ただ韓米連合防衛能力に頼っているようで残念だ」と軍を批判した。 韓国軍の歴史は、「北朝鮮の軍事力に単独の軍事力では対応できない」という前提の下、圧倒的な軍事力を持つ米国との同盟関係を基盤に、米国から最新装備品を導入しつつ、自国の防衛産業基盤を確立して自軍の戦力増強に努めてきた。この過程の中で、進歩陣営は「長年の軍事政権支配による軍の腐敗に端を発する装備品導入に絡む不正問題は旧態依然として存在し、米国の軍事力に依存してばかりか、高い装備品を買わされてばかりで国防費が無駄に使われている」と考え、米国と同盟重視の保守勢力に対する不満が常に存在している。 現在、韓国軍は北の核とミサイルを無力化する手段として、3軸体系と呼ばれる(1)キル・チェーン、(2)韓国型ミサイル防衛(KAMD)、(3)大量反撃報復(KMPR)戦略からなる軍事力構築を急ピッチで進めている。3軸体系の基本的な概念は、仮に北朝鮮が長距離射程砲や弾道ミサイルを韓国に対して発射する兆候があれば、速やかに発射地点を探知し打撃する。発射を防げなかった場合は、迎撃ミサイルで対応し、攻撃を受けたとしても被害を最小限に留め、北に対し大規模な報復を行う能力を保有する、というものだ。これら一連の軍事力を持つことによって、北朝鮮の攻撃を抑止することが韓国の最大目標なのである。2017年11月、歓迎式典に臨むトランプ米大統領(左)と韓国の文在寅大統領(共同) しかし、昨年の北朝鮮による一連の軍事挑発は、韓国軍にとって従来の戦略の根幹を揺るがす衝撃となったに違いない。北朝鮮は年初に核実験(4回目)と地球観測衛星を積んだロケットと称する飛翔体発射を実施した。3月以降は中距離弾道ミサイルを中心に、様々な種類のミサイルを発射させただけでなく、従来型の長射程砲や短距離ロケット砲などの大規模演習を行った。8月末には潜水艦からのSLBM発射にも成功し、9月には5回目となる核実験まで実行した。  我が国においては、日本列島のほぼすべてが射程に入る準中距離ミサイル・ノドンや改良型スカッドの発射に注目が集まった。しかし、韓国側から見れば、弾道ミサイルだけでなく、従来からの脅威であった長射程砲の射程が伸びたことも大きな意味を持つ。北朝鮮が「火の海にする」と何度も脅迫してきたソウルと首都圏地域だけでなく、陸・海・空軍の本部がある鶏龍市や在韓米軍基地のある平沢市や烏山市にも十分脅威を与えるようになったからだ。また、当初のキル・チェーン・システムは、北の攻撃が地上から行われることを想定していたが、今後はSLBMの登場により、これまで手薄だった対潜哨戒能力の向上も叫ばれるようになっている。こうした状況が、2016年の日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)締結に際し、韓国側が「対潜哨戒能力を持つ日本からの情報獲得は軍事的に有益だ」と判断するに至った要因の一つだとされている。防衛費を劇的に増加させることの難しさ 以上のような背景もあり、韓国軍の戦力増強については追い風が吹いているようだ。北のミサイル攻撃探知能力については、米国からすでに導入が決まっている無人偵察機「グローバルホーク」に加え、12月5日付の東亜日報は、韓国軍が情報収集機E-8Cジョイントスターズ4機を2022年までに導入する方針を固めたと報じた。現在は保有していない偵察衛星についても、2021年から23年の間に5機打ち上げる予定である。陸上装備では南北境界の最前線に配置されているとされる北の長距離砲を探知するための新しいレーダーを独自開発し、来年から実戦配備されるという。これまでに何度も自国領空への侵入を許してきた北朝鮮の小型無人機に対しては、探知・攻撃が可能な新型レーダーや対空砲などの開発に注力している。2017年12月、米韓両軍の共同訓練に参加し韓国西部の米軍群山空軍基地に着陸する米軍のF35ステルス戦闘機(聯合=共同) 北朝鮮に対する攻撃能力に関しては、韓国の弾道ミサイルの射程が2012年に最大800kmにまで延長することに米韓両国が合意しているが、更に、11月7日に行われた米韓首脳会談において、弾道ミサイルの弾頭重量制限を完全に解除することで合意した。これによりミサイルの破壊力が増し、KMTRの面でも能力を大幅に向上させることになる。将来的には、現在開発中のより精密な誘導攻撃が可能な「戦術地対地弾道ミサイル(KTSSM)」がバンカーバスターのような機能を果たすことが期待されている。また、航空戦力では、昨年10月に、約500キロ離れた上空から首都平壌の重要施設を攻撃可能な長距離空対地ミサイル「タウルス」90発の追加導入が決定している。さらに、敵の重要施設を攻撃するため自爆型無人機を導入する計画もあるという。 ミサイル防衛では、現在導入を進めているPAC-3と昨年から配備が始まった中距離地対空ミサイル(M-SAM)「天弓」に加え、長距離地対空ミサイル(L-SAM)を現在開発している。韓国国会では一部議員からSM-3(艦載弾道弾迎撃ミサイル)導入を求める声が上がっているが、韓国海軍はその導入には消極的な反応を示している。また、一時期、北の長射程砲から韓国軍の指揮機能とKAMD施設を防護するためイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」の導入に関心を示したこともあったが、軍事的効能の面から最終的には採用されず、代わりに韓国独自の「アイアン・ドーム」型防衛システムを開発中である。 以上のように、韓国軍が現在開発中や導入段階にある装備品の一部を紹介したが、北朝鮮の脅威に対処するために、陸海空それぞれの軍事力が増強されているという事実は明らかだ。こうした増強だけにとどまらず、北のSLBM搭載型潜水艦の脅威に対抗するため、原子力潜水艦の建造や対潜哨戒機部隊の大幅な拡充を求める声が与野党政治家や専門家の間で依然として存在する。しかし、これらの装備を導入するには莫大な国防予算を必要とする点が導入推進の動きを封じている状況だ。韓国も日本と同様に、少子高齢化社会を迎え、増大する社会保障費によって財政的に厳しい状況である。同じような境遇にある我が国が、限られた財源の中で防衛費を劇的に増加させることがいかに難しいか、韓国政府はよくわかっているはずである。根拠のない対日懸念の裏には、自らの軍事力を増強させるという並々ならぬ意欲と、北朝鮮への対処を理由に周辺国が軍事力を増強させることへの韓国の焦りが垣間見える。

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    韓国はなぜ、北朝鮮問題で米国の足ばかり引っ張るのか

    酬となり、危機は最高潮に達す。しかし中国の制裁も強まったこともあって、北朝鮮はひとまず鳴りを潜めた。韓国の蠢動 あらためてミサイルを発射したのは、2ヵ月半経った11月29日未明である。ミサイルは技術を格段に向上させたものだった。物資の窮乏という苦境に遭いながらも、北朝鮮の強硬な姿勢は変わっていない。 危機は深刻化の一途である。そうしたなか、北朝鮮と米国・そして中国の姿勢は、およそはっきりして見えやすい。いずれも日本人に納得できるわけではないものの、それぞれの立場で、ひとまず一貫しているからである。 むしろ見えづらいのは、韓国である。韓国はアメリカの同盟国であり、米韓同盟の一翼を担っている。在韓米軍と韓国軍は協力して北朝鮮に対抗してきた。今後もそうするだろう。その意味では、アメリカとの安保条約を有する日本と立場はかわらない。しかし現実は、どうだろうか。 米韓合同軍事演習のおよそ一週間前、8月15日に文在寅韓国大統領は、「朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができる」と表明した。これは米軍単独の行動、とりわけ北朝鮮に対する単独攻撃はさせない、という意味であって、事実上アメリカの動きを制約することにつながる。(iStock) 9月14日、文大統領はCNNとのインタビューで、「戦術核兵器再配備に賛成しない」と述べた。核実験を強行した北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議から、まもなくのことである。 在韓米軍は1991年12月の南北非核化共同宣言で、戦術核を撤収していた。北朝鮮の核の脅威に対抗すべく、その「再配備」を求める声が国内、とりわけ野党からあがっており、それを抑えるのが、文大統領のねらいである。しかしこれも、アメリカの軍事活動を制約する側面を有することはまちがいない。 さらに韓国は、9月19日のトランプ大統領の国連演説に強く反撥した北朝鮮に対し、その二日後の21日、9億円にのぼる人道支援を正式に表明した。同日、文大統領はあわせて自らわざわざ、北朝鮮に平昌冬季五輪の参加を呼びかけている。こうした言動には、日米両政府もさすがにいい顔をしなかったと伝えられた。 以上の事例だけでも、いかに韓国の動き方が怪しいかがわかる。日米の側につくのか離れるのか、迷走しているかに見えるし、もっと下世話な言い方をすれば、同盟国のアメリカの足を引っ張る挙動ばかりであった。 然り。謎は韓国にこそある。日米がこのような国と提携していけるのか、日米韓の連携など幻想ではないのか。そうも思えてくる。南北分断の歴史的意味 歴史からみると、そもそも韓国という国家の存在が、通例ではない。中国・大陸の勢力と隣接しない朝鮮半島の政権が存在するのは、実に史上、三国時代以来の事態である。とくに19世紀以降、近代になってからは初、ほとんど実験的な事態といってよい。 しかもそれは、すでに還暦を過ごした。近現代史において最長であって、あるいは最も安定した体制だといえなくもない。 その安定はもちろん、対峙する南北の政権、およびそれぞれを支持する大陸側と海洋側の勢力均衡によってきた。逆にいえば、最近の危機は、その均衡が揺らいだところに醸成されている。中国の大国化、換言すればアメリカの相対的な弱体化、およびそれに呼応するかのような北朝鮮の核・ミサイル開発が、その主因にほかならない。 こうした半島政権と大陸・海洋との関係を、あらためて歴史からみなおしてみよう。朝鮮王朝時代には、大陸側には「事大」、海洋側とは「交隣」という関係をとりむすんでいた。事大とは「大国に事(つか)える」こと、陸続きの中国への朝貢関係をいい、交隣は「隣国と交わる」こと、海を隔てた日本との交際をいう。 こう並べると、まったく別個の応対だったようにもみえるかもしれない。手続きは確かにそうである。しかし主体たる朝鮮王朝の意識・立場は、唯一無二だった。信奉する朱子学の華夷意識に裏づけられた「小中華」意識がそれである。 朝鮮王朝は軍事的には弱体であった。朱子学は文を尊び武を卑しむから、これもイデオロギーに合致した体制である。 また何より中華の尊重が優先したから、それを体現する中国王朝にも、恭順な態度を示さなくてはならない。大陸には軍事的にもかなわないので、適切な対処である。それと同時に、中華を尊び慕うあまり、自らも中華に近づこうとする自意識になり、「東方礼義の国」を自任した。 だとすれば、「隣国と交わる」交隣は、自らがミニ「中華」である以上、その交わり方がいかなるものであれ、相手を「夷」と蔑むものとならざるをえない。朝鮮王朝は日本や西洋など、海を隔てた国々と対等な交際をおこなった。けれどもその根柢には、濃厚な侮蔑が横たわっている。「小中華」意識のなせるわざであった。 同じことは、元来が「夷」だった満洲人の清朝に対してもいえる。清朝は中華王朝の明朝を後継し、しかも軍事力で優位にあったため、朝鮮王朝は「事大」の関係を続けた。しかし心底では、清朝を「中華」と認めていない。いわば面従腹背だったのである。 半島の政権はこのように同一の歴史的なメンタリティ・性格を有しながら、地政学的に大陸向けと海洋向けとの、相反する関係をもっていた。そうした相反性が近代の国際政治を通じて、南北の分断に至ったわけである。北朝鮮と韓国は「一卵性双生児」 つまり北朝鮮とは、大陸と関係の深い「事大」的な政権であり、朝鮮戦争で中国義勇軍によって支えられたのは、それを象徴する史実であった。他方、韓国は「交隣」の海洋側についた政権であり、米軍に支えられ、なおかつ大陸とは隔たって「事大」を払拭できる位置にある。いわば北朝鮮は「事大」を現代化した国家、韓国は「交隣」を現代化した国家なのである。 北朝鮮は現在、中国にしたがわず独自路線をつきすすんでいる。「事大」国家であるはずの政権が、その歴史に背を向け大陸に歯向かうので、「暴走」になってしまう。 韓国もその点は同じ。「交隣」国家であるはずの政権が、その歴史に背いて「反日」「反米」を隠そうとしないので、「迷走」に陥っている。 朝鮮半島の政権は、元来「小中華」だった。北の中国・大陸に対して面従腹背、南の日米・海洋に対しては対等蔑視という歴史を持っているから、「暴走」も「迷走」もかれらの立場からすれば、ごく自然なビヘイビアなのであろう。韓国と北朝鮮はこうしてみると、むしろ朝鮮王朝以来の「小中華」にもとづく世界観と行動様式を共有する一卵性双生児といえるかもしれない。(iStock) 半島を南北に分かった地政学的・国際的枠組みは、ともかく安定的に機能、推移してきた。にもかかわらず、「事大」政権の北朝鮮は、中国の意向を顧慮せず、アメリカとの対等交渉という「交隣」をめざし、「交隣」政権の韓国は、アメリカの意向に背いて、経済的に依存する中国に「事大」せざるをえなくなっている。こうしたパラドクスが、東アジアの不安定をもたらしているともいえようか。しかし同時に、そうした運動律も歴史に根ざしたものであるため、南北政権の動きがなかなか収束しないのであろう。 韓国の文政権はそんななか、北朝鮮との対話・融和につとめている。その動きは日米から疑われ、金正恩政権から相手にされず、いまのところ「迷走」にしかみえない。 しかしそもそもが一卵性双生児の南北である。かつて文大統領が記し、またおそらく今も望んでいるように、南北が一体となる可能性も皆無とはいえない。 南北政権はすでに、米中のいずれに対しても、一定の距離を取っている。両者が一体となれば、韓国でも取り沙汰される朝鮮半島の中立化が、現実のものになりかねない。しかも北が核を放棄するとは思えないから、韓国が事実上、北の「核の傘」に入ってしまう事態もありうる。 果たしてそうなったとき、一衣帯水・列島に住む日本人はいかに行動すればよいのか。そこまで考えなくてはならない時世になってきたようである。