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    韓国に「本当の制裁」を行う覚悟はあるか

    一色正春(元海上保安官) 令和元年8月2日、わが国政府は韓国を輸出管理において優遇措置を受けることのできる優遇対象国(ホワイト国)から除外する閣議決定を行い、同月28日にその政令が施行されます。  これは同年7月4日に半導体の生産に必要なフッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス(フッ化水素)の3つの化学製品(以下、3品目)を原則3年間は個別に許可が要らない包括許可品目のリストから除外したことに続く韓国に対する輸出管理の見直し措置です。 ただし、この2つの措置の大元は同じものであり、時期がずれるのは根拠が通達であるか政令であるかの違いで(政令は通達に比べると手続きに時間がかかる)、巷(ちまた)で言われている制裁措置が一歩進んだという性質のものではありません。 これを受けて大半のマスコミは輸出規制という「禁輸」を連想させる単語を使って、さもわが国が韓国に対して輸出を行わないかのような報道を行い、それを受けて野党や現政権に批判的な方々は一様に今回の措置を非難しています。 一方で現政権に好意的な人たちは「よくやった」「戦後、初めて韓国に対して明確に国家の意思を示した」と好意的にとらえているようです。しかし、これはそんなに単純な話なのでしょうか。 詳細は後述することとして、まずは客観的な事実をまとめてみましょう。・韓国がホワイト国に指定されたのは2004年(小泉内閣)・日本がホワイト国に指定しているのは韓国を含む27カ国・そのうちアジアでは韓国のみ・EUは韓国をホワイト国に指定していない・本来、輸出は契約ごとに個別の許可が必要である・ホワイト国とは、これを簡略化し、一度許可を得れば3年間有効となる・ホワイト国指定を継続するには厳格な輸出管理が行われているか否かを確認するための協議が必要・西村康稔官房副長官は日本と韓国との間で「少なくとも3年以上の間、十分な意思疎通、意見交換が行われていない」と記者会見で述べた。・3品目は大量破壊兵器等に転用される恐れがある・韓国産業通商資源省は2015年から19年3月にかけて大量破壊兵器に転用可能な戦略物資の不正輸出を156件摘発したと発表 これらのことを普通に読めば、韓国がわが国に対して行っている「不当な輸出規制」という批判は当たらないことが分かります。そもそもの原因は3年間、韓国がわが国からの協議に応じてこなかったことにあり、しかも2004年以前の状態に戻しただけで、他のアジア諸国と同様の待遇です。これで世界貿易機関(WTO)に提訴可能であれば、わが国は他のアジア諸国からも訴えられかねません。もっと言えば韓国は日本だけではなく、EUも訴えるのでしょうか。日本政府が「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことを報じるソウル駅のテレビ=2019年8月2日(共同) そもそも外交問題という難しい話以前に、「優遇」ということの性質上、するかしないかは、するほうが勝手に決めていいものではないでしょうか。人間関係に置き換えてみれば、異性に対して「自分を好きになれ」と言っているようなもので、よく臆面(おくめん)もなく言えるものだと思います。 おまけに8月初旬、タイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議の場で、韓国の外相は、もともと日本から優遇措置を受けていないアジア諸国の代表に対して「日本が韓国に対して不当な経済報復措置を行っている」と訴えたようですが、それを言われた相手がどう思うのかということすら想像できないのでしょうか。大騒ぎする韓国シンパ 今回の件もそうですが、韓国はわが国との間に問題が起こる度に、自身を被害者、わが国を加害者と勝手に決めつけます。そもそも国と国との関係を単純に被害者と加害者に二分すること自体、良くないことなのですが、戦前はともかく戦後韓国がわが国に対して行ってきた以下のような行為を見ると、わが国が一方的な被害者であるとしか言いようがなく、このリストを見るだけで、なぜ2004年の時点で韓国をホワイト国に指定したのかという疑問がわいてきます。・終戦直後の日本人に対する乱暴狼藉・竹島不法占拠と、それに伴う日本人拉致および虐殺・その人質を使った卑怯な外交交渉・歴史捏造(ねつぞう)に基づく日本民族に対する民族差別・日本国内、しかも首都東京における主権侵害(金大中事件)・度重なる内政干渉・第三国における日本の評価を下げるためのプロパガンダ・国家ぐるみの仏像窃盗・わが国新聞記者に対する司法を用いた言論弾圧・ウイーン条約無視の日本大使館前での嫌がらせ・日韓基本条約を無視した差し押さえ・自衛隊航空機に対する火器管制レーダー照射・国家元首に対する侮辱発言・軍艦旗に対する侮辱・科学的根拠のない水産物禁輸・いわゆる慰安婦合意の一方的な破棄 このような事実があるにもかかわらず、われわれ日本国民は長らく公教育やマスコミ報道により、日本は韓国に対して一方的に酷いことばかりをしてきたという虚偽を繰り返し刷り込まれたため、それがさも真実であるかのように思い込むようになり、その結果として多くの日本人が韓国に対して漠然とした贖罪(しょくざい)意識を持つようになりました。 韓国は日韓が対立する場合、この日本人が持つ贖罪意識を最大限利用して高圧的な態度で無理難題を要求し、それを日本が受け入れるというパターンが戦後一貫として繰り返されてきました。それだけではなく一時期は、少しでも韓国側の非を指摘すると「差別だ」とマスコミに袋叩きされるため公の場で韓国を悪く言うことはタブーのようになっていました。なにしろ「日本は併合時代良いこともした」と、韓国の悪口ではなく、日本の善行に少し触れただけで首が飛んだ大臣がいたほどです。 ところが2002年の日韓ワールドカップにおける韓国の振る舞いを見て、若い人たちを中心に韓国に対する疑問や批判がネットを中心に語られるようになり、『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)など、正面から韓国を批判する動きが出始めました。それから約15年の今、わが国においては本件に関するパブリックコメントを見る限り、95%の人が日本の措置に賛成しており、ようやく多くの日本人が反日教育の呪縛から解き放たれつつあるという実感がわいてきました。 しかし、一方の韓国では、相変わらず「日本=悪」という固定観念から抜け出せていない人が大多数のようで、彼らは今回の措置が自称徴用工問題の報復であると勝手に決めつけ、根拠もなく日本批判を繰り返し、挙げ句の果てには自分たちが不利益をかぶるような対抗措置を行い、これからも行おうとしています。 わが国においても大多数の国民が今回の措置に賛意を表している一方で、マスコミ、自称知識人、野党の人たちなどは、今回の措置に反対し、現政権を批判しています。 彼らは「日本が政治問題の報復を不当な経済制裁という形で行ったため韓国は傷つき、日本も返り血を浴びるだろう」と韓国政府の主張をそのまま繰り返していますが、その大半は事実誤認です。 一例をあげるとマスコミは「ホワイト国除外で個別許可が1000品目以上に増え、韓国にダメージが…」などと、ことさら今回の措置で韓国が甚大な損害をかぶる被害者であるかのように報じ、日本が、さも過激な制裁を行うかのようなイメージ作りに躍起になっているようですが、それは事実に反します。 確かに韓国は国として個別許可の対象から外れましたが、輸出業者が一定の条件を満たせば包括許可の対象になるため、まともな業者であれば、今回の措置の影響を受けることはほとんどありません。ソウルの日本大使館前で開かれた安倍政権を糾弾する集会=2019年8月3日(共同) 実際、8月8日にわが国の経済産業省が半導体などの原材料について、一部の企業に優遇措置解除後初めて輸出許可を出す方針であることを発表しており、正規の輸出手続きをとれば従来通りの貿易は可能なのです。しかるに、韓国およびそのシンパは、なぜ大騒ぎするのでしょうか。やましい取引をしたいのか、単なる無知なのか、とにかく現政権を叩きたいだけなのか。それとも戦後一貫して敵対してこなかった日本が反抗したことに耐えられないのか、いずれにしてもまともな国の反応とは言えません。まるで「日韓離反工作」 そして彼らが今回のような異常な反応を示すのは相手が日本の場合だけであるということも理解しておかねばなりません。北朝鮮には朝鮮戦争で自国民を何百万人も殺され、拉致され、さらに国土の半分を不法占拠され、今も北朝鮮国内で同胞を迫害されているにも関わらず、日本に対する態度と比べると、何も言っていないのと同じです。 わが国より多い拉致被害者や離散家族の問題に関しても無為無策で、これは政権が北寄りだからという訳ではなく、比較的反北の李明博政権の時でも同じで、哨戒艦が撃沈されても島に砲撃を受け、死者が出ても実のある対抗措置は何も行いませんでした。 これは中共(中国共産党)に対しても同じで、韓国が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入を決めた途端、輸入規制、韓流禁止令、韓国への団体旅行禁止、韓国企業への営業妨害など、THAADが他国を攻撃する兵器ではないにもかかわらず露骨な制裁措置を行いましたが、それに対する韓国の反発は一部の中共製品に対してダンピング税を適用するなど極僅かでした。    これは彼らが日本人を蔑視しているからなのですが、実は彼らだけの問題ではなくわれわれ日本人にも責任があります。今回のように日本のマスコミが争点を作り出し、それを受けた韓国のマスコミが大騒ぎして韓国国内で世論が盛り上がり、韓国政府がそれを後ろ盾にわが国政府に無理難題を要求して来たことが過去に何度もありましたが、今までわが国は事なかれ主義に徹し、ただ問題を鎮静化させようとへりくだって相手の要求を一方的に聞いてきました。 しかし、そのようなわが国の姿勢が彼らを増長させ、いわゆる従軍慰安婦問題のように、かえって問題を複雑化させてきたのです。そもそも、いわゆる従軍慰安婦、自称徴用工、靖国神社に対する言いがかり等々、現在の日韓間の問題の大半は「MADE IN JAPAN」なのです。 今回の件も日本メディアの「か弱い韓国に対する日本の非情な仕打ち」というような紋切り型の報道や、自称知識人の「日本悪玉論」に基づく解説が韓国メディアに取り上げられ、河野談話のように「日本人も、こう言っているではないか」と彼らが日本を批判する根拠になっています。 それだけではなく、マスコミ、自称知識人、野党の人などがメディアで過剰に韓国を擁護することによって結果的に多くの日本人の反韓感情を煽(あお)り、本来の日韓友好の妨げになっています。 一方で最近、国連人権理事会で日韓問題における韓国の非を明らかにした落星台(ナクソンデ)経済研究所の李宇衍(イ・ウヨン)研究員のような人が韓国にいるという、多くの日本人が好意的に受け取りそうなニュースや、その発言のために彼が韓国国内で暴行を受けたという、韓国国内では様々な意見があるが、表では発言し辛いという韓国の一面を知らせるニュースなどは一切報じません。 その様を見ると、彼らは表向き韓国を擁護しているようですが、本人が自覚しているか否かは分かりませんが、実はどこかの国の意向に沿って日韓離反工作を行っているのではないかと疑りたくなります。われわれは韓国を叩く前に、こういった事実を認識し、日韓問題が悪化する根本的な原因を断ち切らなければなりません。韓国の文在寅大統領(右)と会談する安倍首相=2018年9月25日、ニューヨーク(共同) 逆に今回の措置をよくやったと手放しで褒める意見もあるようですが、私はこれに対しても懐疑的です。 戦後初めて韓国に対して意思表示をしたのは確かですが、巷で言われているように報復措置であるとすれば、前述したとおり実害はなく、公式発表通り安全保障上の理由であるならば、この3年間にいくらでもホワイト国除外のタイミングはあり、遅きに失した感があります。今回の措置は米国主導? むしろ、私は今回の措置は日本政府の自発的意思ではなく、米国に促されて行ったのではないかと疑っています。 米国がイランや北朝鮮などが禁輸措置を受けているにもかかわらず、大量破壊兵器の製造に必要な3品目をどこからか入手しているという情報をつかんで探っていったところ、日本韓国ルートが怪しいという結論に達したというのが、私の推測です。 その状況証拠として下記の事例を挙げることができます。・この3年間、日本から韓国への3品目の輸出量が急増し、同様に韓国の不正輸出も急増している。・韓国は北朝鮮に対して瀬取り(洋上で物資を移し替える行為)を行い、国連制裁に違反した疑いが濃厚である・韓国大統領の日ごろの言動から、北朝鮮に対して強いシンパシーを抱いていることは明白・韓国は国際法を守らない しかし、これだけでは具体的措置に踏み切るだけの根拠には成り得ません。おそらく決定的な証拠をつかんだのだと思いますが、それはわが国ではなく米国でしょう。 何しろわが国は海外で情報収集こそ行っていますが、対外諜報機関と呼べるような代物はなく、この手の情報は米国頼みだからです。 にもかかわらず、米国高官が今になって日韓がもめることは望ましくないというような趣旨の発言をしているのはフェイクニュースかもしれませんが、本当であればわが国は米国という仏様の手のひらの上で遊ばされている孫悟空(そんごくう)のようなものです。 情けない話ですが、わが国は独自の軍隊も諜報機関もなく、自衛隊の主力装備品のほとんどは米国製、対外情報も米国頼みなのですから、口でいくら対米自立を叫んでみてもむなしいだけで、このままの体制が続く限り米国の意向に逆らう外交などできるはずもありません。 わが国は、羅針盤もエンジンもないまま大海に乗り出した船のようなもので、米国という船に曳航(えいこう)されているため自分で行きたい方向を決めることができません。 今、何の備えもなしにいきなり曳航ロープを外せば漂流するだけでなく、大波が来れば転覆してしまいかねません。わが国が、自分の行きたい方向に進もうと思えば、まずは軍隊というエンジンと情報機関という羅針盤を備えなければなりません。 特に今回の措置で韓国が完全に敵に回り、在韓米軍が撤退するような事態になれば、味方の軍隊が60万人減り(本当に味方であったかどうかは疑わしいですが)敵方の軍隊が60万人増えるだけではなく、わが国の防衛ラインが対馬海峡になるという事実を重く受け止めなければなりません。 ただでさえ中共(中国共産党)がシナ海を侵略し続けながら類を見ないスピードで軍拡を続け、北朝鮮までが核兵器やミサイルを増強する中で、頼みの綱の米軍が徐々に撤退し、日米安保の見直しまで言及しているにもかかわらず、わが国は国権の最高機関において憲法改正論議をわずか2~3分しか行えないという有様です。わが国が直接攻撃されなくとも朝鮮半島において有事が発生した場合、大量の難民がわが国に流れ込んできますが、それすら現行法では十分に対処できないというのに、もどかしいかぎりです。海上自衛隊護衛艦「かが」を視察したトランプ米大統領と安倍晋三首相=2019年5月28日、神奈川県横須賀市(代表撮影) 現時点で今回の措置を日米どちらが主導で行ったのかはわかりませんが、いずれにしても、この日清日露戦争前夜とも重なる事態において、韓国との輸出問題で一矢報いたと溜飲を下げている場合ではないのです。これ以上、韓国の敵対行動が止まらないようであれば、冷静に本当の制裁を科して韓国にとどめを刺す一方で、わが国に迫りくる侵略の魔の手に備えるための防衛力を一刻も早く整備することが急務です。本当の敵は韓国ではないのですから。■なぜ韓国は北朝鮮と事を構えたがらないのか■韓国人にとって靖国神社とはいかなる存在なのか■なんでもありの「世論戦」韓国に日本が捧ぐべきメッセージ

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    日韓対立を煽るタチの悪い人々

    韓国のホワイト国(輸出優遇国)除外について、毅然な対応だと評価する声があるが、今回の措置により韓国側が大きな実害を受けるわけではない。ただ、もっとタチが悪いのはことさら今回の措置を騒ぎ立て、韓国がかわいそうだと煽る人たちだ。彼らこそが日韓関係を悪化させる火種にほかならない。(写真は聯合=共同)

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    対韓「輸出規制」で安倍政権によぎる中国の失敗

    (神戸大大学院国際協力研究科教授) さてさて、これはどう理解するべきなのか。 7月1日、経済産業省は韓国に関する「輸出管理の運用の見直し」を発表した。内容は大きく二つ。 一つは、外為法輸出貿易管理令別表第3の国(いわゆる「ホワイト国」)から韓国を削除するための、意見募集手続きを開始すること。この日から7月31日までの1カ月の間、意見が募集されることになる。見直しの効力が発生するのは、この意見募集の結果を受けて以降になる見通しのため、今後の方針についてあらかじめ、アナウンスをした形である。 二つ目は、特定品目の包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え。具体的には、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3品目が対象となっている。こちらは適用が7月4日からのため、効力が既に発生している。 問題はこれらの措置の影響をどう見るか、である。第一に考えなければならないのは、そもそもこの措置が該当産品の物流にどの程度の影響を与えるか、である。 ここでは二つのシナリオが考えられる。報道によれば、該当品目の輸出が包括許可から個別輸出に切り替えられた場合、手続きに3カ月程度かかるとされており、仮に該当企業が品目の在庫を持たない場合、生産の一部が停止する可能性がある。 とはいえ、仮にこれが単なる包括許可から個別輸出許可への切り替えにとどまるなら、個別輸出許可が認められてしまえば、物流は通常に復することになる。そもそも、これまで韓国に適用されていた包括輸出許可は、限られた特定の国に対する優遇措置に過ぎず、中国やインド、さらにはロシアといったほとんどの国への輸出は、個別輸出許可の下、行われている。ソウルで開かれた会合で話す韓国の成允模・産業通商資源相(中央)=2019年7月1日(AP=共同) すなわち、この措置だけでは韓国企業には、例えば中国企業に対するものと同等の条件が適応されるだけで、それだけでは致命的な影響は発生しない。そもそもが大きな変更ではなく、ゆえに大騒ぎするようなものではない。それが一部の専門家の意見であり、一つ目のシナリオである。 他方、同じ措置について、読売新聞は「日本政府は基本的に輸出を許可しない方針で、事実上の禁輸措置となる」と報じ、全く異なる見解を示している。だとすれば今回の措置は、経産省による公式の説明である、包括輸出許可から個別輸出許可への切り替え以上の内容を有することになる。 この場合、日本政府が中国などの他国とは異なる何らかの基準を、韓国のみに適用していることになる。そうなれば個々の企業への影響は長期化し、より大きくなることは明らかだが、自由貿易の原則を掲げる以上、日本政府は事態を説明する国際政治上の責任を新たに負うことになる。 そしてそれを万一、徴用工問題における日韓関係の悪化に求めるなら、それは日本政府が自ら、この措置が政治的報復であり、経産省が掲げる安全保障上の理由は「単なる建前」にすぎないと示したことになる。日本側がどのような論理を積み上げても、その論理に内実がなく、国際社会に信じられなければ、国際社会で敗北することになるのは、日本政府がこれまで福島沖水産物や捕鯨を巡る国際紛争で経験したことであり、事態は全く異なる展開を見せることになる。これが二つ目のシナリオである。 この二つのシナリオのどちらを採用するかで今回の措置は、政治的にも経済的にも全く異なる意味を持つことになるが、日本国内では矛盾した報道が続けられている。「制裁」の効果 第二に考えなければならないのは、これらの措置による個々の企業活動への影響があることと、それが韓国経済全体に与える影響、例えば国内総生産(GDP)に対する押し下げ効果がどの程度あるかは別の問題だ、ということである。 例えば、高高度防衛ミサイル(THAAD)配備問題に対して、中国政府が団体旅行客の渡航を制限した際には、観光産業をはじめとする特定の産業に明らかな影響は出たものの、韓国経済全体に与えた影響は限定的なものにとどまった。だからこそ韓国政府はこの問題で中国に譲歩せず、THAAD配備はそのまま続けられた。 そしてとりわけ、輸出管理の運用見直しに伴う物流に与える影響が、短期間にとどまる一つ目のシナリオの場合、韓国政府の当該産業に対する支援などにより、経済全体に与える影響は吸収されてしまう可能性が強い。韓国政府が事態の展開を座して見守るだけだ、ということは考えにくいからだ。 現段階において、外資が大きな割合を占める韓国の株式市場において、関連企業の株価はいまだ大きく下落しておらず、マーケットがその先行きに深刻な懸念を抱いている、とは言えない。個々の企業の経営に対するミクロの影響と、経済全体のマクロの状況は区別して考える必要があるのは経済学の基礎である。ミクロな現象の断片のみから韓国経済全体に与える状況を予測することは慎まねばならない。 とはいえ、それ以上に重要なのは、そもそもこの措置が何のために行われており、その目的は果たしてこの措置により実現に向かうのか、ということだ。これが今回の措置を考える第三のポイントである。セッション3開始前、韓国の文在寅大統領と握手を交わした後、厳しい表情を見せる安倍晋三首相=2019年6月29日、大阪市住之江区(代表撮影)   産経新聞は、今回の措置について「いわゆる徴用工問題で事態の進展が見通せないことから、事実上の対抗措置に踏み切った」と報じている。また朝日新聞は、7月2日の記者会見で菅義偉(よしひで)官房長官が今回の措置を徴用工問題などへの「対抗措置ではない」と述べる一方で、「両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上に20カ国・地域(G20)首脳会合までに満足する解決策が示されなかった」ことが今回の措置に至る背景の一つであることを明らかにした、と報じている。 既に紹介した読売新聞の記事の「事実上の禁輸措置」という表現をはじめとして、ほとんどの日本メディアの報道は、今回の措置の背後に、徴用工問題といった歴史認識問題により悪化する日韓関係があるという点で一致している。制裁は「十分条件」ではない それでは今回の措置を強めることで、日本はその目的を達成することができるのであろうか。考えなければならないのは、仮に今回の措置が経済制裁と言える内容を持つ場合、その制裁が政治的効果を持つには、最低限、次の二つの条件が必要だ、ということだ。すなわち、第一には制裁が実際にその国の経済に影響を与えることであり、第二はその経済の影響がその国をして相手国への譲歩を促すような効果を持つ、ということである。 既に明らかなように、事態が先に示した二つのシナリオのうちの一つ目、すなわち、今回の措置が短期的かつ限られた影響しか持たない場合には、韓国が日本への譲歩に「追い込まれる」ことは考えにくい。7月3日の時点で、韓国政府は関連業界に対する大型投資の支援を表明しており、その措置は主として国内企業の活動を支援するものになるだろう。 それでは事態が二つ目のシナリオ、つまり日本からの特定産品に関わる流通が長期的に阻害された場合にはどうなるだろう。 この場合にも先に述べたように、それが経済全体に与える影響が小さければ、やはり当該業界に対する支援で事足りてしまうから、韓国政府が積極的な外交的対応を行う理由にはなり得ない。この結果、韓国政府から支援を受ける韓国企業は自らの設備投資などを行うことにより、短期的には苦しんでも、中長期的には新たなサプライチェーン(部品の調達・供給網)を作り上げてしまうことになるだろう。それでは単に日本企業が自らの市場をみすみす失うだけの結果に終わることになる。 事実、東日本大震災による影響で日本からの部品供給が途絶えたことを受けて、韓国の一部業界ではサプライチェーンを切り替えている。今回、韓国企業は政府からの支援を受けることもあり、時間は必要になるものの、最終的には同じ展開になる可能性が強い。日本政府の韓国向け輸出規制強化を1面トップなどで伝える韓国紙=2日、ソウル(共同) だとすると、事態が一定の政治的な効果を持つには、日本からの特定産品に関わる物流が長期にわたり阻害され、かつそれが経済的にも大きな影響を与えた場合に限られることになる。しかしながら、問題はこの状態もまた、韓国政府が歴史認識問題などにおいて日本への譲歩に向かう「十分条件」にはなり得ないことだ。必要な戦略とは何か なぜなら、制裁の結果として生まれた人々の不満が、韓国政府をして日本への譲歩に追いやる方向へ働くとは限らないからである。例えば、先に述べたTHAAD問題に伴う中国の経済制裁は、むしろ朴槿恵(パク・クネ)政権初期には好意的であった韓国人の対中感情を大きく悪化させる方向へと機能した。 朴槿恵弾劾の結果として登場し、前政権を否定する政策を連発する文在寅(ムン・ジェイン)政権ですらTHAAD配備を継続した背景には、このような中国の制裁の「失敗」による韓国人の対中国感情の変化が存在する。世論の意向に反して政策を実行するのはいかなる政府にとっても大きな困難を伴うことになるからである。 そして今、韓国に渦巻くのは、日本による突然の「輸出管理の運用の見直し」に対する強い反発である。状況はTHAAD問題に伴い中国が制裁を開始したときと極めて類似しており、韓国世論は日本に対する強硬姿勢に傾きつつある。 7月4日にリアルメーターが発表した世論調査によれば、日本側の措置に対して「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は22%に過ぎず、約46%が世界貿易機関(WTO)への提訴を含む国際法的対応を、約24%は経済的報復措置による対処を求めている。 注意しなければならないのは、経済への影響を危惧して文在寅政権の「無策」を批判する野党に近い保守系の人々ですら、その結果として日本に譲歩することを求めているわけではないことだ。すなわち、保守的な志向を持つ人々の間でも「外交的交渉により解決すべき」と答えた人は38・5%のみであり、過半数は国際法的対応、または、経済的報復措置を求めている。さらに言えば、この「外交的交渉」の中身には、先に韓国政府が提案して日本政府に拒絶された「財団案」などによる解決も含まれているから、韓国側が外交的に折れて日本側の主張に従うことを求めている人は、実際には極めて少ない計算になる。 このような中、そもそも対日関係を軽視する文在寅政権が、世論の風向きに反して日本への譲歩に向かう可能性は極めて少ない。頭に入れておかなければならないのは、政治は、経済的合理性に基づいてではなく、政治的合理性に基づいて動く、ということである。仮に韓国経済が日本側の措置により大きなダメージを受けたとしても、それによりむしろ日本側への敵意が高まるなら、政治家にはそれに抗して動く必要は存在しない。与党である「共に民主党」支持者のうち「外交的交渉により解決すべき」と答えた人はわずか5・7%。これでは外交的交渉を始めることすら難しい。 だとすれば今回の措置により、われわれは本来の目的からますます遠ざかっていることになる。忘れてはならないのは、そもそも経済制裁、それもある1カ国のみによる経済制裁で他国が外交方針を変えることは容易に存在しない、ということだ。例えばそれはアメリカとイランの関係がそうであり、われわれは北朝鮮に対して周辺国と協調して経済制裁を行ったものの、目指す結果を何ら得ていない。だからこそ経済制裁とは他の手段と組み合わせて使うものであり、ただやみくもに用いても相手側の対応を硬化させる効果しか持っていない。韓国の康京和外相(右)と会談に臨む河野太郎外相=2019年5月23日、仏パリ(AP=共同) 外交、否、政治に対する評価は本来、何を目的として掲げ、そしてその目的をどう実現したかによってなされるものだ。ナショナリスティックな欲望を抑えて、自らの国益が何であり、それを実現するためにはどうすべきかを真摯(しんし)に考察する。「目的合理性」に基づいた、より冷徹な戦略が必要になってくるだろう。■日韓関係は最悪、北朝鮮問題で出番なくとも安倍外交は「78点」■慰安婦より根深い「徴用工問題」を蒸し返した韓国の裏事情■徴用工判決と日韓の正義、いつまで「歴史戦」を続けるのか

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    天皇陛下に上から目線の祝電を送った文在寅の「炎上外交」

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 令和の時代を迎えた祝賀気分に水を差す国として、韓国が只今のところトップを走っている。多くの国が日本の新時代に祝福の言葉を贈る中で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の祝電は、天皇陛下に対して「要請」を含めている点でも異例に思えた。 産経新聞の報道では、「上皇さまと同じように戦争の痛みを記憶しながら、平和へとしっかりした歩みをつないでいかれること」という、どう見ても「上から目線」的なものだった。外交儀礼上の表現としての妥当性は好事家に任せるとして、日本国民の多くには、この祝電はかなり失礼なものに思えただろう。 メディアによっては、韓国の「祝電」には「天皇」という表現があったことを挙げて、従来の韓国メディアが採用する「日王」ではないので、文政権に日韓関係改善の意思が見えるという解釈があるようだ。だが、もし本当にそうならば、「祝電」披露の瞬間に、日本国民の多くに傲慢(ごうまん)な姿勢と取られたことで、頓挫したといっていいのではないか。 これは文大統領だけの話だけではない。文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長の「祝電」には、「どの口で言うか」と単純に驚かされた。「祝電」で、文議長は天皇陛下への訪韓を要請したからである。 文議長が米メディアのインタビューで、慰安婦問題に関連して譲位前の上皇陛下に「謝罪」を要求し、日韓関係のさらなる悪化に貢献したことを知らない人はいない。天皇陛下の訪韓で何を求めるのか、と文議長に詰問したい気持ちは誰しもあるだろう。 「ダブル文」をはじめとして、このような「感情」を扇動する政治手法には毎度呆れてしまう。ただ、ダブル文による「感情」を揺さぶる外交手法は、両者がコラボしている可能性すら感じる。「令和」を迎えた皇居・二重橋付近で中継をする海外メディア=2019年5月1日午前 発足から間もなく2年を迎える文政権は、経済失政や北朝鮮に肩入れしすぎて国際的に孤立を深める「外交手腕」など、国内外で追い込まれているように思える。事実、支持率も韓国ギャラップによる4月の世論調査で過去最低を記録し、最新でも不支持率の方が上回っている。 ただ、調査を分析すると、北朝鮮に肩入れしすぎる外交姿勢も、韓国国内では依然として人気が高い。また、日本への「感情」を揺さぶる手法も、国内的には手堅い支持を集めているようだ。北「肩入れ」の落とし穴 前者は、最新の調査でかなり低下したとはいえ、45%の手堅い支持があった。また後者は、韓国国内の「日本嫌い」を反映して、人気の政治手法といえる。 韓国国内の「日本嫌い」の一端は、人気アイドルグループ、TWICEの日本人メンバーであるサナが、インスタグラムで「平成生まれとして、平成が終わるのはどことなくさみしいけど、平成お疲れ様でした!!!」と投稿して、炎上したことからもわかる。日本人としての素直な感想だろうが、ほとんど揚げ足取りに近い批判から過去の日韓併合批判まで持ち出す誹謗(ひぼう)中傷の類いもあった。 もちろん、日本の中でも「韓国嫌い」は根深く、「お互い様」の側面はあるだろう。ただ、韓国の国家的な慶事に関して、日本で活動する韓国の芸能人が会員制交流サイト(SNS)上で感想を述べたところで、多くの日本人は特に何とも思わないだろう。この炎上騒動一つ取っても、韓国の現政権による「日本は無限に謝罪すべき」とでもいうべき姿勢がもたらした側面もある。 しかし、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は「嫌日を国内政治の人気取りに利用している」という見方に反論している。日本の韓国通といわれる研究者による、「日本を特に重視していないから、『韓国が日本を煽っている』と批判するのはあたらない」という見解と似ている。 だが、重視していないから問題なのである。論点をずらすやり口は感心しない。 ところで、文政権の北朝鮮に対する外交的肩入れは、韓国左派の半島統一を願う気持ちが強いためだと考えられる。その姿勢を、多くの韓国国民も支持しているのだろう。板門店の韓国側で開かれた記念式典で上映された文在寅大統領の映像メッセージ=2019年4月27日(共同) だが、そこには重大な落とし穴がある。肝心の北朝鮮側が、文政権に代表される韓国左派の思いを受け入れる余地がないのだ。この点は、郵便学者の内藤陽介氏が、月刊誌『WiLL』6月号での筆者との対談で、次のように明快に解説している。 韓国の左派は、「朝鮮は一つであるべき」と考えていますが、北は「北朝鮮」という独立したアイデンティティを持っています。主張の強い両者が相容れることはない。「切手で読む金王朝 北は統一を望んでいない」田中秀臣・内藤陽介切手の「無言の意思」 実は、韓国も北朝鮮も、国家の「無言の意思」を切手発行という形で表現していることがある。韓国には文大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の首脳会談を記念した豪華な仕様の切手があるが、北朝鮮では、そのような豪華な切手は発行していない。 両国の温度差は切手からも明らかである。南北だけではなく、韓国は日本や米国との外交関係も遠のきつつある。特に、日韓はいわゆる自称「元徴用工」問題を契機に、緊張が高まっている。 筆者は、韓国最高裁の一連の判決や、また「元徴用工」原告側による裁判所への日本企業の資産売却申請などは、韓国政府の「元徴用工」側に対する補償政策の失敗が、そもそもの原因だと認識している。つまり、韓国国内の問題を、日本に付け替えているだけにすぎない。 康外相は、この点も「介入はしない」と言明していて、自国の政策の失敗を認めようとはしていない。日本政府がたび重ねて協議を求めていることについては、「今後の検討材料にする」というあいまいな姿勢でお茶を濁している。 だが、韓国政府のこのような態度は、日本政府にも責任がある。この連載でも繰り返し主張しているが、日韓の外交関係が長期的に安定するためには、相手がルール破り(日韓基本条約など)を犯したときには、「しっぺ返し戦略」を採用することが望ましいのである。 交渉の相手側は、自分がルールを破れば、相手はその都度、しっぺ返しをしてくることを予測して、ルール破りの自粛を選ぶ。このような「ゲーム理論」の基本をベースにして、日本政府は韓国政府に対して、報復措置を行う必要がある。北朝鮮で販売されている南北首脳会談を記念する切手シート=平壌(共同) その手段としては、既に多くの識者が具体的に提言している。関税、金融取引の制限、ビザ(査証)発行の厳格化などが挙げられている。ところが、日本の安易なリベラル系の人たちに多いが、この措置が「韓国嫌い」の感情に基づいたものや、日韓関係を損ねるものと映るようだ。 上述のように、「しっぺ返し戦略」は長期的な関係を破壊するのではなく、むしろ構築するためのものだ。しかも、対応としても合理的であり、好き嫌いのような感情とは無縁である。日本政府もいつまでも口で言うだけではなく、これらの対抗措置を実施すべきではないだろうか。■ 「戦犯企業ステッカー」韓国人も冷めた行き過ぎた民族主義■ 米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる

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    韓国にはホトホト疲れました

    韓国京畿道議会に先月提出された「日本の戦犯企業製品」にステッカー貼付を義務付ける条例案は、内外から批判が集まり、事実上の取り下げになった。慰安婦問題に徴用工、レーダー照射、天皇謝罪発言…。いやはや、日本に広がる「韓国疲れ」もここに極まれりである。(写真は聨合=共同)

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    「戦犯企業ステッカー」韓国人も冷めた行き過ぎた民族主義

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 最近、韓国の地方議会に、「『日本の戦犯企業』が生産した製品に『戦犯ステッカー』の貼付を義務づける条例案」なるものが上程され、さまざまな論議を呼んだ。この条例案については日本でも大々的に報道され、ただでさえ険悪な日韓関係をさらに悪化させるという憂慮の声も強かった。条例案は、いったん取り下げられたものの、再び審議される可能性は残っている。この条例案に関する日本での報道は極めて断片的であり、その背景や反応については深く触れられてはいない。ここでは、こうした条例案が韓国の地方議会に発議された背景や一般の韓国人の反応について考察してみたい。 まず、この条例案が発議されたのは韓国の首都・ソウルを取り囲むように位置している京畿道(キョンギド)の議会。「道」は日本の「都道府県」に当たる。京畿道の人口は約1300万人。地方議会とはいえ、田舎の小都市の議会に発議された条例案ではないのである。 件(くだん)の条例案は3月26日から開かれた京畿道議会の臨時会で発議された。その内容は「学校で使うプロジェクターやカメラ、コピー機などの備品のうち、日本植民地時代の戦犯企業が生産した製品」に「戦犯企業の製品であるステッカーを貼付するように義務づける」というものだ。「戦犯企業」というのは、去る2012年、国務総理室が「植民地時代に収奪や徴用を行った」と発表した299社の日本企業のうち、現存する284社。東芝や日立、川崎、三菱、住友などが含まれている。 この条例案の「条例案発議趣旨」には「制定理由」として「一部日本企業らが『対日抗争期』当時、戦争物資提供などの目的実現のためにわが国民を強制的に動員して労働力を搾取した。長い歳月が流れた今も(日本が)公式的な謝罪や賠償どころか歴史を否定し、美化しているのは深刻な問題」「学生たちに正しい歴史認識を確立させ、教職員に警戒心を抱かせるため、戦犯企業が生産した製品であることを明確に表示しなければならない」という内容が記されていた。 「対日抗争期」とは耳慣れない言葉であるが、要するに日本の植民地期ということである。最近、韓国では歴史を美化し脚色するための「言い換え」が行われているが、この用語もその一つである。その一方で、「日本は反省も謝罪も補償も一切していない」という事実無根の定番フレーズが用いられている。 自分が愛国者であることをアピールするために、韓国人が日本製品の不買や排斥を呼びかけるのはよくあることで、特段珍しいことではない。現に、この京畿道の条例案に先立ってソウル市議会にも日本製品の排斥を行おうとする条例案が発議されそうになった前例がある(市議会に上程されず常任委員会で否決)。ただし今回の京畿道の条例案は日本製品の排斥を公式的に行おうとするもので、過去に例がなかったものである。2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に参加した市民(共同) 条例案の発議を主導した黄大虎(ファン・デホ)議員は「日本の『戦犯企業』は太平洋戦争当時、日本帝国主義のためにわが国民を強制徴用する反倫理的行為を犯し、またこれを通じて莫大(ばくだい)な利益創出と人類史に罪悪を及ぼしたにもかかわらず、何の反省も補償もなかった」「ドイツの戦犯企業は反省し、ナチスの犠牲者に対して補償を行ったので、戦犯企業だとしても例外」「日本の『戦犯企業』が過去を反省せず美化する行為をやめない以上、消費者は戦犯企業を記憶しなければならない」などと述べている(「日刊京畿」)。ここでも「ドイツは反省したが、日本は反省していない」というお決まりのフレーズが登場している。ドイツがアフリカの植民地支配に対して謝罪したことなどないのだが。自国民から非難殺到 京畿道議会の開会に先立ち、条例案のこうした内容が明らかになると、京畿道のみならず韓国政府関係者からも憂慮の声が上がった。3月20日、日本の教育委員会に当たる京畿道教育庁は「戦犯企業」に関する明確な定義がなく、混乱をもたらす恐れがあるなどとして「受け入れ難い」とする意見書を道議会に送った。また、京畿道教育庁の李在禎 (イ・ジェジョン)教育監も同日、「韓日外交に大きな影響を与えかねないため、まず政府側が立場を決めなければならない」と述べた。また、同月21日には康京和(カン・ギョンファ)外交部長官が「政府として具体的な評価をすることは適切ではない」「自治体議会の審議過程で慎重に検討される必要がある」と述べている。 そもそも、この条例案を発議した黄大虎議員とは何者なのか。公開されているプロフィールによると、1986年6月、京畿道水原(スウォン)市生まれ、当年32歳。明知(ミョンジ)大学校体育学科卒業後、成均館(ソンギュングァン)大学や崇実(スンシル)大学校の大学院を修了している。昨年6月の地方選挙で現政権と同じ「共に民主党」所属候補として出馬し、初当選。議会では「第2教育委員会」に所属している。1年生議員ゆえに現在まで特に注目すべき実績もない。今回の条例案にしても、特に緊急性や必要性を持つものではなく、強いて言えば、有権者の反日感情に訴える点数稼ぎに見えないこともない。 実は、こうした指摘や批判は韓国国内でも提起された。黄議員のフェイスブックには「(戦犯企業の)ステッカーをお作りになるついでに、朝鮮戦争の戦犯である中国製品と北朝鮮製品に貼るステッカーをお作りになれば公平ですね」とか「私も外国生活を10年してみたが、このような軽率な行動をすれば、その被害はすべて在外韓国人が受けます。本心から国民のために働く政治家になりたいなら、深く考えて慎重に行動してください」などという、かなり痛烈な批判も書き込まれていた。さらに京畿道議会のホームページの自由掲示板に書き込まれた意見も辛辣(しんらつ)なものばかり。そのうちのいくつかを紹介しよう。 「やい、京畿道議会の民主党議員の大馬鹿野郎ども。一体、お前らは幼稚園児なのか、何なのか。発想が幼稚すぎて話にならない。今、国を滅ぼそうとしているのか、何なのか。(中略)どうすればこんな発想ができるのか。いま、激変している国際情勢の中では、世界的なマインドを持たねばならない。もちろん、過去に日本が過ちを犯したのは言うまでもないが。昔の植民地時代の考え方にとどまっているお前らが哀れだ。(中略)もし、条例案が通過したらどうなるのか。韓国人であるわれわれも理解できない条例案なのに、外国ではどう見るか。(外国企業は)不安で韓国などと商取引などできないだろう」 「このような行き過ぎた民族主義は恥ずかしくて情けないです。子供たちの前で恥ずかしくないのですか。大人たちが率先して、このような振る舞いをすれば、それを見て育つはずです。このような条例案を発議する議員も議員ですが、賛成する人も人です。こんなくだらない条例案を作るよりも、国民に役立つことからやってください。(中略)『戦犯ステッカー』? 本当に幼稚で、恥ずかしさで顔が赤くなります。こんな発想は小学生でもやらないはずです。京畿道議員のレベルを表していると思います」 「過去は過去、歴史は流れて行くものだ。日本の植民地期にあったすべてのことを清算するというのはたやすいことではない。それならば、清平ダム(京畿道加坪郡所在、1944年完成※引用者注)も、京畿道にある数十カ所の貯水池も、京釜線の鉄道もすべて爆破しなればならないだろう。(中略)京畿道民の日本旅行も禁止すべきだ。まったく、道議員という方々の意識水準を疑うほかはない」 この他にも「教育を政治扇動に利用するな」とか、「(黄議員は)若いからちょっとましだと思っていたが失望した」とか「中国や北朝鮮には何も言えないくせに、国民の反日感情を煽りたてるのはやめろ」とか、条例案の内容を非難する内容がほとんどで、賛成する書き込みは皆無だ。「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品です」と書かれたステッカー(韓国・京畿道議会ホームページから・共同) 3月19日には「韓国大学生フォーラム」という保守系の学生団体が、この条例案を批判する論評を発表。論評では条例案の内容を「100年前と現在を区別できない安物民族主義」「グローバルな市民としての教育を受けて育った現代の世代に対するとんでもない民族主義注入」「こうした民族主義は、大和民族論、ナチの優生学、北朝鮮の太陽民族論などと同様のもので、その弊害は深刻」と激しく批判した上で、「教育委員会の場にふさわしくない非哲学的な思考しかできない黄大虎道議員は辞職せよ」とまで述べている。自爆した「反日扇動」 さらに、条例案の内容が日本でも報道され、国際問題にまで発展する様相を呈してくると、さすがに黄議員も危機感を覚えたらしい。自分のフェイスブックに弁明とも反論ともつかない長大な文章を掲載したのが、そこではまず、国内外の批判や反論を「愚かな反対」と一蹴。その上で条例案に対する自分の愛国的な心情を長々と吐露した。「学校現場で学生が直接戦犯業ステッカーの付着を行うのか、それとも他の方法で実現するのかを学生自治会で討論する最小限の制度を用意しようと思う」などと中途半端な妥協案を示した上で、「条例案に対する道民の皆さんのご意見を熟慮します」などと謙虚な姿勢を見せた。 ところが、条例案を報じる日本のマスコミ(「情報ライブ ミヤネ屋」)に触れると文体が一変。「だが、皆さん、これだけは必ず覚えていてください! あの日本の放送に出演している、歴史を否定する極右勢力と同じ認識を持っている勢力が、いまだ韓国の国会と社会指導層に存在するということです!!」と煽って文章を締めくくっている。 どう見ても、「ミヤネ屋」のレギュラー出演陣が「極右勢力」とは思えないのだが、韓国では自分が気に入らない意見を述べる日本人を「極右勢力」呼ばわりするのはよくあること。まさに「反日扇動」の典型である。これに感動して黄議員を熱烈に支持する書き込みを行っている韓国人(おそらく支持者)も多いのだが、ところどころに冷めた書き込みも散見されるのは前述の通りである。 さて、この条例案によって、地方議会の一年生議員にすぎなかった黄議員は一躍時の人になったのであるが、ちまたの耳目が集中したあまり、黄議員自身も「戦犯企業」の製品を使っているという非難を浴びることになった。 ことの発端は黄議員のフェイスブック。黄議員は昨年3月17日、フェイスブックに「地域商店街連合会の方々と対話の時間を持ちました」という書き込みとともに、ボールペンが差し込まれたシステム手帳の写真を公開した。このボールペンは三菱鉛筆の「ユニ・ジェットストリーム」。 黄議員はかねてから公の場で「新日鉄住金、三菱、ニコン、パナソニックなどは戦犯企業」などと発言しており、「自分も『戦犯企業』の製品を使っていながら、戦犯企業ステッカー条例案を推進している」という手厳しい非難を受けることになった。 黄議員もこれを明らかに意識したと見られ、問題となった書き込みと写真を削除している。ただし、問題となった「三菱鉛筆」はスリーダイヤのマークこそ同じであるが「戦犯企業」とされている「三菱」とはまったく関係がない企業である。黄議員が三菱鉛筆について正確な知識を持っていたならば、書き込みと写真を削除したりせずに、堂々と反論すれば済むだけのことだ。それをしなかったということは、おそらく黄議員自身も「戦犯企業」に対して明確な知識がないのだろう。「戦犯企業」に対する定義があやふやのまま、条例案を提出したのではないか、という疑いを持たせるのに十分である。2019年4月1日、本社受付に掲げた新社名の看板前で会見を行う日本製鉄の橋本英二社長 条例案の発議に加わった議員は「共に民主党」25人、自由韓国党1人、正義党1人。京畿道議会は142議席だから、発議に加わった議員は決して多い数ではない。ただし楽観は許されない。「共に民主党」は議会で135議席を占めており、圧倒的な勢力を保っている。さらに現京畿道知事の李在明氏は「共に民主党」所属で、「日本は仮想敵国」などという放言歴もある。条例案の行方は予断を許さない状況であった。 条例案の審議は3月29日に行われる予定だったが、なぜか審議が「留保」されてしまう。条例案を発議した黄議員自身が「検討過程が十分ではなかった」「公論化を通して社会的な合意を経た後で、条例の審議を準備する」と述べ、条例案の上程を取り下げたためである。予想外に韓国内で厳しい批判を浴びたのがこたえたと思われる。 今回の事例で見られたように、韓国では、日本をダシに使えば、手っ取り早く愛国者ぶることができ、巷間の注目を集め、手軽に名を売ることができる。こうした「愛国者コスプレ」に対しては表立った批判もしにくいため、その行為はどんどんエスカレートし、常軌を逸した奇行にまで行き着くことが多い。 今回は条例案の中身があまりに突拍子もなかったため、韓国国内からも批判の声が上がったが、今後も第二、第三の黄議員が現れることは容易に想像がつく。すでに「最悪の状態」にまで行き着いたとされる日韓関係であるが、こうした扇動者の軽挙妄動によって、さらなる関係悪化もありえるということは覚悟しておくべきだろう。■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 元徴用工裁判、日韓「解釈の違い」をどう埋めるべきか■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!

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    無意味な反日活動を蒸し返す韓国「共に民主党」の正体

    李相哲(龍谷大学教授) 韓国の京畿道(キョンギド)議会の議員が、道内の小中高校で使用する20万ウォン(約2万円)以上の日本製什器(じゅうき)に「本製品は日本の戦犯企業が生産した製品です」と書いたステッカーの貼付を義務づける条例案を提出した。国内外からの批判が相次ぎ、条例案は審議保留となり、事実上の取り下げになったが、そもそもなぜ、こうした条例案が提出されたのだろうか。 条例案を発議したのは京畿道議会の議席の95%を有する与党「共に民主党」の議員25人と野党議員2人だ。仮に、同条例が議会で承認されれば、京畿道の教育庁は、4700カ所の小中高校の日本製品保有状況を調査し、その結果を毎年公開するとともに、日本製品には「戦犯企業」のステッカーを貼らなければならないことになる。 文在寅(ムン・ジェイン)政権誕生後に実施された地方選挙で共に民主党は圧勝し、大半の議会で3分の2以上の議席を獲得した。京畿道議会の場合は142議席のうち、135議席を共に民主党が掌握、いかなる法案や条例案も可決できる環境にある。 条例案が京畿道議会常任委員会を通過すると、野党である「正しい未来党」からは「民主党は文在寅政府の無能を隠すため、反日を持ち出した」「今、高まっているのは反日ではなく反文(文在寅)である」、「ステッカーを貼るべきはこのように国民を愚弄する馬鹿げた条例を持ち出す民主党議員ではないか」と非難はしたものの、今のところ、野党は地方議会で法案や条例を阻止できる力を持っていない。 先に記した通り、条例案については批判の声が上がったため、事実上取り下げになったが、このような条例案が堂々と議会に出された背景には、韓国の政治が抱えている深い闇がある。 まず、韓国の「運動圏政治」の闇だ。運動圏政治とは、韓国では自身の主張である社会正義を貫く政治を意味する。そもそも、与党の共に民主党の国政議員、地方議員、地方自治体の首長のほとんどは、かつて民主化運動に身を投じた経歴を持つ。2018年10月4日に平壌で開かれた会合で、あいさつする韓国の与党「共に民主党」の李海瓚代表(韓国取材団・聯合=共同) 彼らは、選挙という「合法的な手続き」を経て選ばれているが、デモやストライキを主導し、各種市民団体に所属して政府にクレームをつける活動以外に生産性のある職業に就いた人は少ない。こうした政治家の多くは、激しい「反対運動」を唱えることで名を売り、政治に入門、チャンスをつかんで議員バッジをつけた人たちだ。 このような政治家の特徴は、組織を壊したり、騒ぎを起こしたりし、選挙に勝つことを唯一の目標とする。共に民主党で要職についている幹部の多くはこのような経歴の持ち主だ。「政治ショー」の失敗 そして共に民主党の政治家が有権者を引きつける材料にしてきたのが「南北宥和」や「平和」だったが、南北関係が上手くいかなくなると、その代わりに持ち出したのが「反日運動」である。 二つ目は、国益より支持率重視の風潮だ。南北関係の改善に命運をかけてきた文在寅政権だが、政権発足から2年近く経過しても、南北関係の先行きは不透明なままだ。その間、文大統領は、南北首脳会談や各種南北間の交流イベントを通じて、朝鮮半島に春がきたかのような「政治ショー」を展開したが、そのやり方に陰りが出始めた。 南北間の政治的なイベントを利用して高い支持率を維持してきた文大統領だったが、北朝鮮の度重なる約束違反で、韓国の一般国民も宥和政策に懐疑的になり、支持率低下が止まらなくなった。 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、昨年の時点で年内にソウルを訪問すると約束したが、それは守られていない。非核化においても何ら進展がなく、南北交流は実質を伴わないイベントばかりであることに韓国の一般国民も気づいたからだ。 そこで持ち出したのが「親日派」との戦争だ。文大統領は「三・一運動」記念日に行った演説で「アカ(共産主義者)という表現は清算しなければならない親日の残滓だ」と話した。2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に出席した韓国の文在寅大統領(共同) 韓国では左派の中でも、北朝鮮に同調し、金委員長を追随する勢力を「アカ」と呼ぶ場合もあるが、文大統領はこの表現は、親日勢力がつくった言葉のため「親日残滓(残された親日勢力)」と一緒になくすべきだと語ったのだ。 言い換えれば、左派の中の一部を「アカ」と呼ぶ保守勢力に対する警告でもあった。すなわち、左派政権に批判的な保守勢力は「親日勢力」と決めつけ、その主張に同調すべきでないと言ったのだ。同じ日に文大統領は、「親日残滓を清算する(残された親日勢力をなくすこと)は、後回しできない課題だ」として、唐突にも「親日清算」を当面に優先課題として提示した。 京畿道議会が日本製品に戦犯ステッカーを貼る条例を作ろうとしたのは、このような文政権の支持率低下を阻止し、反日をもって保守層を牽制し、支持者を結集するための政治的計算によるものだ。始まった文在寅批判 三つ目として指摘すべきことは、官主導の反日の闇だ。文政権誕生以来、日韓関係は最悪の状態に陥っている。日韓基本条約で解決したはずの「徴用工問題」、日韓両政府の間で決着をつけたはずの「慰安婦問題」を持ち出したのは韓国政府だ。 レーダー照射問題では、韓国政府が意図的に日韓関係を悪化させるつもりだったのではないか、との声すら聞こえる。その背景には文政権が進める北朝鮮との宥和政策、北朝鮮との連携を強めようとする国政運営の方針がある。 文政権が北朝鮮と共有できる価値観といえば「反日」だからだ。京畿道議会が政治主導で「日本の戦犯企業」ステッカー条例を作ろうとしたのは、このような文政権の「官主導反日」に倣(なら)ったものと言っていい。 このような反日活動で一部の政治家は得をするかもしれないが、一方でこのような時代錯誤的なことで国家のイメージは失墜し、経済に影響が出るのも必至だ。京畿道議会が戦犯企業に指名した日本企業にはパナソニックやニコンのような企業も含まれるが、韓国からこのような企業の製品をなくしたらどうなるだろうか。韓国のテレビ局、新聞社の人たちはこれから日本の放送機器やカメラを持って堂々と世界を歩くことができるだろうか。 文政権誕生以来、韓国では1894年までさかのぼり、日本の朝鮮進出のきっかけとなった東学党の乱の再調査が進められている。それだけでなく、1950年に勃発した朝鮮戦争をめぐって、金日成(キム・イルソン)国家主席の韓国占領を阻止すべく敢行された「仁川上陸作戦」によって被害を受けた民間人に賠償金を支払う条例案も話題になっている。 韓国では一連の反日活動に象徴されるように、こうした過去の無意味な蒸し返しが繰り返されており、このままでは韓国は国際社会から真に孤立しかねない。2019年4月3日夜、韓国の政権与党「共に民主党」と候補者を一本化し国会議員補欠選挙で辛勝した革新系野党「正義党」の候補者(中央左)ら(聯合=共同) ただ、ステッカーの条例案については、保守系学生団体の韓国大学生フォーラムは「過去と現在、感情と外交を区別できない共に民主党は扇動政治をやめるべきだ」との声明を発表している。 学生を中心とした若者は「反日活動」に扇動されやすいが、韓国メディアや学生の一部から非難の声が上がり始めており、これらは日韓関係の改善に向けた一縷(いちる)の望みかもしれない。■ 米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス■ 「何をしても許される」天皇謝罪発言、韓国政治の根底にあるもの■ 「日本を奴隷扱い」文在寅の外交ゲームを攻略するベスト戦術

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    韓国人の反日感情はこうして増幅されていく

    杉山崇(神奈川大人間科学部教授) 韓国における反日感情は長く日韓関係の懸念材料になっています。一般的に、心理学者は政治や外交の問題を語らないものです。ただ、時には反日姿勢の背景に心理学要因が垣間見えることもあります。 特に、韓国の地方議会で提出された、「日本の戦犯企業が生産した製品です」と明示したステッカーの添付を学校に義務付ける案には、心理学的な要因を強く感じてしまいます。本稿では、心理学者としてはちょっとした冒険をするつもりで、「戦犯企業ステッカー」問題を考えてみたいと思います。 最初に、何が起こったのか整理をしてみましょう。ことの舞台はソウル近郊の京畿道(キョンギド)議会で、道内の小中、高校に置かれている「メイド・イン・ジャパン」の備品に上記のステッカーを張り付けさせるという条例が議論されています。背景にある、いわゆる「徴用工問題」などについては今回割愛しますが、この条例案には韓国国内からも慎重論や批判の声が上がっています。 韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は慎重派です。韓国の主要紙の社説でも批判論調が目立っており、東亜日報は「時代錯誤的な発想と言わざるを得ない」との見解を発表しています。どうやら、韓国の識者も行き過ぎた姿勢だと感じたようです。 「思わぬ」反響のせいか、審議が保留となりましたが、同様の提案は他でもあり、ソウル市議会でも「日本製品不買条例」が発議されそうになりました。何が地方議会を行き過ぎた案に導いたのでしょうか。筆者には「コーシャスシフト」と「リスキーシフト」、そして人のある本能が影響しているように見えました。 まず、コーシャスシフトとリスキーシフトについてご紹介しましょう。どちらも会議で見られやすい現象で、両現象を合わせて「集団極性化」とも呼ばれています。 突然ですが、あなたは一人で考えるときとみんなで考えるときと、どちらがより良い案を見いだせると思いますか。ことわざでは「三人寄れば文殊の知恵」といわれています。 「みんなで考えると妙案が出てくる」と思う方も多いかもしれません。しかし、実際の会議では「どうしてこうなった?」と思ってしまうような奇想天外な案が出てきたこと、あなたの身の回りにもないでしょうか。2019年1月、河野外相(手前)と会談する韓国の康京和外相=スイス・ダボス(共同) 実は、会議とは集団の力学によって「行き過ぎた意見」に集約しやすい場なのです。会議には「社会的促進」と言われる効果があり、社会的刺激への感度がいい個人を高揚させて張り切らせることがあります。 政治家は公人であり、選挙という社会的競争で選ばれています。感度のベクトルや種類に個人差がありますが、社会に対する感度は相対的に高い方が多いことでしょう。議会は社会的促進が起こりやすい場であり、言い換えれば「インパクトのある意見を言わなければ」と個人を駆り立てやすい場だと言えるでしょう。通った意見に潜む人間の「本能」 しかし、斬新さでインパクトがある意見は周りのリアクションがわかりません。そこで、会議の冒頭ではもう一つのインパクトを狙った意見が出ることがあります。それは「みんなが共感する」というインパクトです。 「反日姿勢なら皆が共感する」と思っているかどうかわかりませんが、まずは徴用工問題を契機とした反日姿勢の意見から会議が始まったものと考えられます。誰かが多くのメンバーに共感される意見を出すと、それに被せた意見が多く続きます。 発言はしないまでも、うなずくなどで共感の意志を示すメンバーも多いことでしょう。他の意見が言えない雰囲気、つまり同調圧力が作られます。こうして、極端にこれまで通りの案に集約する現象がコーシャスシフト(用心深い体制変化)です。 ただ、コーシャスシフトで会議が終わるのも、物足りないことがあります。何も変わらないからです。 社会的促進で高揚しているメンバーが多いとなおさら物足りないことでしょう。こうなると大胆な案が提案されることになります。コーシャスな結論に沿っていれば共感される可能性が高いので、発想は次々と冒険的になります。 その中で「誰も考えたことがない案」が光り輝いて見えることがあります。高揚した雰囲気だと人は大胆になるので、物珍しいものに惹かれやすいのです。 こうして慎重さに欠ける案が採用されてしまうことがあります。これがリスキーシフト(冒険的な体制変化)です。この会議でも「反日姿勢の斬新なアクションを!」と展開したのかもしれません。 今回は韓国国内で徴用工問題による反日姿勢が強まっている中だったので、工業製品と絡ませれば広く共感されると考えたのでしょう。法案の発議を主導した京畿道議会の黄大虎(ファン・デホ)議員は「私は全国的に国民が共感する事案だと考える」とコメントしています。このコメントから察するに、議会は反日姿勢に共感する雰囲気の中で展開し、反日姿勢を象徴するステッカーの添付を義務付ける形になったものと思われます。 このように会議とは極端に中庸か、極端に大胆な案が出やすいものですが、最後に人が持つある一つの本能が関わっていた可能性を考えてみたいと思います。それは「仲良くしたい、でも優位に立ちたい」という本能です。ソウル市内に掲げられた独立運動家の安重根を題材としたミュージカルのポスター=2019年1月(共同) 本当に嫌いなら、その相手を徹底的に無視すればいいわけです。無視できずに「優位に立とう、優位に立とう」とあの手この手になるときは、気になって仕方がないから…ということが多いようです。無視できないのであれば仲良く協力し合えないものか…と思ってしまいます。 おっと、心理学者としてはちょっと踏み込んだことを書いてしまったかもしれません。私にも何らかのリスキーシフトが発生しているようですので、今回の論考はここまでにさせてもらいます。■ 米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ BTS「原爆Tシャツ」に通底する韓国社会のホンネ

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    日本は韓国より立場が弱くなったのか

    景には、冷戦終結の時期を前後して起きた両国関係の構造的変化がある。そうした認識からこれまで、主として韓国側の事情に焦点を当てたコラムを3本書いてきた。簡単に振り返ってみると、▽現在の韓国では「反日」は重要なイシューとなっていない(第1回 韓国国会議長による「天皇謝罪」発言の裏側)▽冷戦終結によって韓国は自由に行動できるようになったし、経済成長にも成功したので日本への依存度が低くなった(第2回 「日本は韓国にとって”特別な国“」は冷戦終結で終わった)▽1987年の民主化によって歴史上の不正義を正そうとする「過去の清算」という動きが表面化するようになった(第3回 韓国の民主化の「副作用」、日本への配慮を忘れていった社会)——ということである。「日韓関係の構造的変化を考える」と題したシリーズの最後となる今回は、日本側の事情について考えてみたい。 まずは政治について考えてみよう。日本は冷戦時代、共産主義勢力に対する盾として韓国を見ていた。韓国では1960年に李承晩が退陣に追い込まれた内政混乱の後、朴正煕がクーデターを起こした。この時に首相を退いて間もない岸信介は「釜山まで共産主義が浸透してきたときの日本の地位を考えるとき、ことに近接した中国地方の山口県などからみると、非常に治安上、重大な問題だと思う」と語った。そして、「革命を起こした朴正煕その他の連中がやっていることは、ある意味からいって《自由韓国》を守る“最後の切り札だ”」と、朴正煕政権を支える必要を力説して回った。(大岡越平「『自由韓国』を守る」、中央公論1962年1月号) 韓国が北朝鮮とにらみ合ってくれているおかげで、日本は軽武装の経済重視路線を突き進むことができた。クーデターの大義名分を経済再建に求めた朴正煕は日本の資金と技術を必要としたが、安定した韓国の政権を作ることは日本の国益にもかなっていたのだ。そして日韓を協力させることは、互いの同盟国である米国からの強い要求でもあった。 こうした考え方は、1969年の日米首脳会談での共同声明に「朝鮮半島に依然として緊張状態が存在することに注目。韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要」と盛り込まれた。これは「韓国条項」といわれ、その後の日米首脳会談や日韓首脳会談で踏襲された。 そして全斗煥政権は1981年、安全保障と経済協力を直接関連させて60億ドルの借款を日本に求めた。「韓国の立場から見て、冷戦の前哨で戦っている韓国に自らの安全保障の多くを依存している日本は、韓国が果たしている戦争抑止の努力に対して応分の支払いをしなければならないと考えられた」(南基正「戦後日韓関係の展開 —冷戦、ナショナリズム、リーダーシップの相互作用—」『GEMC Journal』No.7、2012年3月、69ページ)ということだ。日韓両国は1983年、40億ドルの借款を日本が韓国に提供することで合意した。 冷戦終結によって、この構図は激変した。韓国にとっては総じて前向きな変化だったと言えるだろうが、日本には違う光景が見える。北朝鮮が核・ミサイル開発を進めて日本にとって直接の脅威となったのは冷戦終結を受けてのことだし、中国も冷戦後のグローバリゼーションの中で急速に台頭して覇権主義的な行動を取るようになってきた。どちらも日本の安全保障にとってマイナスの動きである。 朝鮮半島情勢に詳しい日本の外交官は「冷戦時代の韓国にとって、日本は(1)経済協力の提供者(2)軍事政権にとっての米国への影響の経路(3)未だ国交を有していない中国への経路といった戦略的な位置付けを持っていた。一方で日本にとっての韓国は、北朝鮮及び北朝鮮を通じてのソ連の脅威への防波堤だった。ところが、冷戦構造の崩壊と韓国の民主化、日本のバブル崩壊などがあって、韓国にとっての日本の戦略的な位置付けは3つとも失われた。ところが、日本にとっての韓国の位置付けは『ソ連』を『中国』に置き換えれば、現在もそのまま変わらない」と話す。※画像はイメージです(ゲッティイメージズ) 問題はそれだけではない。日本にとっての直接的な脅威となった北朝鮮の問題に対処するためにも、韓国の協力を取り付けるかどうかは大きい。韓国の協力など不要だと切り捨てるなら、日本の負う政治・経済的コストは増大する。米中の対立激化という状況についても、韓国がどのような態度を取るかは日本に大きな影響を与える要素となった。在韓米軍の撤退などという事態になれば、日本の安保政策は根本的な見直しを迫られる。日本の財政がその負担に耐えられるかは疑問である。 基本的な要素として韓国の国力伸長も見逃せない。冷戦時代の韓国は弱小国だったから国際社会での影響力は極めて小さかった。ところが現在はG20(主要20カ国・地域)のメンバーであり、世界10位前後の経済力を持つ。国際政治というゲームの中で簡単に無視できる相手ではない。経済でも大きな変化 経済面でも大きな変化が起きた。財務省が公開している「貿易相手国上位10カ国の推移(輸出入総額、1995〜2017年)」を見ると、韓国の定位置は米中に次ぐ3位、シェアは6%前後で安定している。冷戦終結を前後して貿易相手国の多角化が一気に進み、日米のシェアが急落していった韓国とは様相が異なる。日本はそれ以前から経済大国として世界中の国々と貿易をしていたから、韓国ほど急激な変化がないのは当然だろう。 サムスン電子やLG、現代自動車といった韓国企業が世界市場で広く認知されるようになったのも冷戦終結後のことだ。米インターブランド社が2000年から算出している世界ブランド価値ランキングでは、2000年に上位75社に入ったのは43位のサムスンだけ。2005年に現代が84位、LGが97位と初めて上位100社の仲間入りをした。2018年のランキングで上位100社に入ったのはサムスン6位、現代36位、起亜71位だ。ちなみに同年の上位3社は、アップル、グーグル、アマゾンの順で、日本企業トップはトヨタの7位だった。 日経新聞は3月14日付朝刊で「韓国、日本の経済制裁警戒」という記事を国際面トップに載せたが、これは「韓国側が身構えている」というだけの内容ではない。サブ見出しにある「水平分業 双方に打撃」という点を無視しては語れないのが現在の状況だ。サムスン電子など韓国を代表する企業が日本の部品・素材に依存しているのは事実だが、逆もまた真なりであって、日本の部品・素材メーカーにとって韓国企業は大切な大口顧客になっている。近年は東レなどが先端工場を韓国に建設しているが、大きな理由のひとつは納入先企業との協業体制を築くことだ。 韓国の部品メーカーが力を付けてきている点も無視はできない。統計分類コードの種類によって若干のずれはあるが、日韓間の自動車部品貿易に関しては2014年ごろに収支が逆転した。ずっと日本の黒字だったのが、韓国の黒字に変わったのだ。東日本大震災の際に日本製部品の供給中断に見舞われた韓国の完成車メーカーが日本製部品への依存度を下げたことや、韓国製部品の性能向上を受けて日本の完成車メーカーが韓国からの部品輸入を増やしたことが背景にあるという(韓成一「日本の対韓国自動車部品貿易の赤字転換と九州自動車産業への影響」『東アジアへの視点』2015年12月号)。 韓国における日本の存在感は、政治(安全保障)と経済の両面で1980年代後半から一本調子で低くなってきた。これに対して日本にとっての韓国の存在感というのは、それほど単純ではない。冷戦時代に弱小国だった韓国が国力を付けたことによって、むしろ存在感は高まったといえる。中国の台頭という冷戦後の地域情勢は、韓国においては単純に日本の存在感低下を招いたが、日本の受け止め方は全く違う。そういった違いがあまりにも軽い韓国の対日外交を生むと同時に、日本側の対応を極めて難しいものにしている。そう考えると、日本の方がある意味で弱い立場に立たされていると言えそうだ。 最近の日韓関係に憤り、1993年に韓国でベストセラーになった本『日本はない』(田麗玉著)を引き合いに出して、「小欄も『韓国はない』と思うことにしようか。」と結ぶ新聞コラムがあった(「産経抄」『産経新聞』2019年3月2日)。 そう言いたくなる気分がわからないでもないが、この本を引き合いに出すのは注意すべきだ。この本は、さまざまな事例を挙げながら「日本なんてたいしたことない」「日本はひどい国で、手本にするようなことは何もない」と声高に主張するのだが、それは実は「そう思いたい」という韓国人の願望を代弁するものだったからだ。著者はこの本のあとがきで、日本式経営や社員教育などを追い求める当時の韓国の風潮を「しかたのない面もありますが、これはむりやり我々に日本式の方法を強要しているにすぎません」と強く主張した。この訴えは、バブル経済に浮かれて絶好調だった日本に押しつぶされるのではないかと恐れる韓国人の悲鳴のようだった。ソウル中心部にあるサムスンのオフィス(ゲッティイメージズ) 興味深いのは、この著者が10年後の2003年に再び日本をテーマに書いた本だ。著者はこの本の前書きで、日本での楽しい思い出がたくさんあるけれど、今まで書いたことはないと告白する。そして、こう続けたのだ。 私が暮らした1990年代初め——スーパーパワーになろうという野望を持ち、貪欲でギラギラすることをやめようとしなかった(あの時の)「日本はない」。今の日本は「かつての日本」ではない。だから、穏やかな気持ちで、日本について軽く書くことができた。(田麗玉『札幌でビールを飲む』、カッコ内は筆者注) 日本と韓国が互いを見つめる視線の変化は、こうした言葉によく表れているのだろう。さわだ・かつみ 毎日新聞記者、元ソウル支局長。1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

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    朝鮮半島における「礼儀・礼節」 日本とは意味が違う

    ものだ。似たような言葉で指している内容が、根本的に意味が異なることもある。評論家の呉智英氏が、隣国・韓国における「礼節・礼儀」の意味は、どのように日本と異なるのかについて、解説する。* * * 保守系の月刊オピニオン誌「WiLL」四月号の特集は「さすが『礼節』の国 韓国!!」。一読してみたが、どうも予想とちがう。朝鮮(南も北も)は昔から礼節・礼儀の国と呼ばれる。昨今の韓国の暴走ぶりを皮肉って逆説的に「さすが」としたらしい。 こういう皮肉表現はよくある。性犯罪で逮捕された宗教家を「さすが聖職者」とするように。しかし、この特集名は少し変なのだ。九人の執筆者の主張自体は特にまちがってはいない。とすると、この特集名は編集部がつけたものか。 そこで思い出したのが、二〇〇〇年五月三十日付朝日新聞の論説委員コラム「窓」欄である。少し古い記事だが、私は某大学の比較文化論の講義資料として十年以上使っていた。この日のタイトルは「礼節の国」、筆者は一字署名で〈黄〉となっている。 当時、森喜朗首相は「日本は天皇を中心とする神の国」と発言し、国内からも韓国からも批判を浴びた。しかし、五月二十九日に森首相と会談した金大中大統領はこれに触れなかった。それは「言いたい気持ちをじっと抑えて、静かに笑って」いる「『礼節の国』と言われる韓国の本来の姿」であり「そうした隣人の気持ちに思いを致」す配慮が森首相に欲しい、というのだ。 私は講義でこの「窓」欄のプリントを配り、学生に聞く。韓国に行ったことがある人はいるか。五、六人の手が挙がる。韓国の人たちって、言いたい気持ちを抑えて静かに笑っている「礼節」ある人たちだったか。学生たちはちょっと困ったように首を横に振る。 じゃあ、朝日の記事にこんなことが書いてあるのは何故だ。朝日は革新系だから韓国をほめるなんていう答えは駄目だぞ。 学生たちは考え込む。やがて、ピンと来た一人が答える。文化のちがいですか。礼節の意味がちがっているとか。 正解である。 我々が今「礼儀」という時、それは基本的に西洋由来のもので、交際術のことだ。その要点は、お互いに害意を持っていないことの確認である。礼儀を英語でマナーというのはマニュアル(手引き書)と同原である。交通ルールを交通マナーというのも同じで、車が相互に左側通行するのは、お互いに「被害」に遇わないためだ。 一方、朝鮮における「礼儀」は世界観の象徴化である。宗教儀礼に近い。礼を「のり(規範)」「あや(文化)」と読むのはそのためだ。お辞儀にも細かな意味づけがある。単なる交際術ではない。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 朝日新聞の論説委員も「WiLL」の編集者も、保革逆だが、ともに文化のちがいが分かっていない。「WiLL」特集で執筆者の一人大野敏明は、韓国滞在中、返事をしなかった警官を怒鳴った話を書いている。「韓国は儒教の国」なので「高齢者である私」に返事をしないのは失礼になる。怒鳴ったら「直立不動」で返事をしたという。これが朝鮮の礼節である。大野は産経新聞元記者で韓国文化に詳しい。この一節だけが特集名にふさわしい。●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。関連記事■もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった■韓国人はなぜ今「日本叩き」に躍起になっているのか■ソウル 日本製品不買条例案に日本好き韓国人「恥ずかしい」■100年前のロシヤ革命、革命と反革命どちらなのか論じるべき■福澤諭吉「天は人の上に…」と聖徳太子「和を以て…」への誤解

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    韓国人はなぜ今「日本叩き」に躍起になっているのか

     北朝鮮との融和ムードが高まる韓国だが、日本との関係は最悪だ。ほとんど言いがかりのような内容も含み、日韓関係を壊しかねない勢いで反日が盛り上がっている。これまでに200回以上韓国を訪れている経営コンサルタントの大前研一氏が、なぜ今、「日本叩き」がいつになく盛り上がっているのか、その背景を分析する。* * * 日韓関係は日増しに冷え込み、改善の兆しが全く見えない。韓国大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じた「元徴用工」訴訟問題や日韓合意に基づく元慰安婦のための財団の解散、海上自衛隊P-1哨戒機に対する韓国海軍駆逐艦の火器管制レーダー照射問題に加え、文喜相国会議長が元慰安婦への謝罪は「天皇が望ましい」「その方は戦争犯罪の主犯の息子」などと発言したことで、日本の対韓世論は悪化の一途をたどっている。 韓国の反日運動は今に始まったわけではないが、このところ立て続けに日本に難癖や言いがかりをつけているのは、歴史教科書問題や竹島問題のような日本側の動きに対する反発というよりも、「韓国発」の盛り上がりである。 たとえば、慶尚南道教育庁は庁舎前にあった日本の学名がついたヒノキ科の常緑針葉樹「カイヅカイブキ」を別の場所に移し、その跡地に韓国固有の松を植えた。「カイヅカイブキは日帝時代の残滓」と指摘する韓国メディアの報道が続いたからだという。 また、忠清南道教育庁は道内の小中学校・高校29校に掲示されていた日本人校長の写真や日章旗、刀を差した日本人教師の写真を撤去する、と報じられた。こちらも理由は「日帝残滓の清算」である。2019年3月1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の式典に出席した文在寅大統領夫妻(共同) なぜ、いま韓国でこれほど反日運動が激しくなっているのか? その背景には、北朝鮮との南北統一に向けた文大統領をはじめとする韓国人の高揚感がある。戦後一番の高揚感戦後一番の高揚感 文大統領は今回の米朝首脳会談を前にしたトランプ大統領との電話会談で、南北の鉄道・道路連結や経済協力事業の活用を申し出た、と報じられている。事実上の制裁緩和につながることを米朝首脳会談の議題にするよう提案したのである。 もし、文大統領の思惑通りに南北統一へと進んだら「ユナイテッド・コリア」として南北連合政府を作ることになるだろう。だが、今のところ、その統治機構がどのような形になるのか、という絵は全く描けない。北朝鮮でも民主的な選挙でユナイテッド・コリアのトップを選ぶことになり、南北の鉄道・道路が連結されて人や情報の交流が進めば、いずれ国民の本音が出てくるはずだ。となると“暴君”の金委員長が北の代表に選ばれることはないだろう。 金委員長もそれが分かっているから、アメリカに対して「体制の保障」を要求し、かつてのカンボジアのシアヌーク国王のような中国亡命の道を模索しているのではないかと思う。 そして、そうなれば、韓国に“核付き・金正恩抜きの労働植民地”が転がり込むことになる。言い換えれば、核武装した人口7700万人の南北統一国家が誕生するわけで、その高揚感が現在の「日本恐るるに足らず」という気運の高まりにつながっているのだ。 私はこれまで仕事や講演などで韓国を200回以上訪れているが、韓国の友人たちと酒を飲むと、酔っ払った彼らは必ず「南北統一が実現すれば、核戦力と安い労働力が自分たちのものになる」というシナリオを口にしていた。それが目の前に見えてきたから、いま韓国で急に反日運動が盛り上がっているのである。 私は以前、韓国で起きている問題については「放っておいても日本にとって実害はほとんどないし、日本に年間754万人も来てくれるありがたいお客さんなのだから、静観するのが最も賢明な選択だ」と述べた。この主張は、韓国の『中央日報』日本語版(2月11日配信)でも紹介された。 だが、それは現実を無視すればよいということではない。日本が過剰に反応して非難の応酬を繰り返したり、ビザなし渡航の制限や国交断絶などを叫んだりして火に油を注ぐべきではない、という意味だ。やはりこれも以前、指摘したように、韓国人は自分の国が大嫌いだ。そういう歪んだ劣等感を持つ彼らがこれからどう動くか、冷静に注視すべきなのである。 なぜなら、統一コリアにとっての“仮想敵”は日本だからだ。核保有国の中国やロシアと喧嘩するはずがないし、統一後に在韓米軍が撤退したら、反米感情も下火になるだろう。となれば、核ミサイルのターゲットは日本しかない。核保有国になることで日本の優位に立ち、いつでも寝首をかくことができるわけだ。その“妄想”があるから、韓国人は戦後70年で最も気分よく高揚しているのだ。 この現実に日本は危機感を持ち、アメリカはもとより台湾や東南アジア、オーストラリアなどと連携・結束して統一コリアの誕生に備えるべきである。関連記事■もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった■ソウル 日本製品不買条例案に日本好き韓国人「恥ずかしい」■「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人■ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■文在寅氏に大ブーメラン 徴用工被害者1386人が韓国政府訴えた

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    米朝に「田舎芝居」を打つ文在寅の安倍コンプレックス

    重村智計(東京通信大教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率が41%に下落した。韓国の世論調査は政権に忖度(そんたく)するため、実質的には30%台といわれる。 国民の支持を失った文大統領が、11日に米ワシントンでトランプ大統領との首脳会談に臨む。10日、11日の訪米とはいえ、実質的にわずか1日の訪問で、米国の扱いは冷たい。 韓国で40%台に落ちた支持率を回復した大統領は一人もいない。これ以上の支持率下落を食い止めるため、文大統領が狙ったのが「安倍より先の訪米」だった。 背景には「米韓関係の悪化」「南北関係の悪化」「日韓関係の悪化」「中韓関係の悪化」「第3回米朝首脳会談への対応」「日朝首脳会談の動き」「良好な日米関係に対する牽制(けんせい)」「欧州と東南アジア外交の失敗」と数え上げればきりがない。日米中朝だけでなく、欧州や東南アジア諸国にも自らの失態で見放され、文大統領はまさに「六面楚歌」である。 米韓関係は、懸案だった在韓米軍の駐留経費増額問題で一応は合意したが、トランプ大統領はなお不満を募らせている。米国は、物別れに終わった第2回米朝首脳会談における文大統領の動きに不信感を強めている。首脳会談直前に、ハノイでの南北首脳会談を画策したが拒否され、米韓朝の3国首脳会談も打診したが、全く相手にされなかった。 さらに韓国は、洋上で積み荷を移し替え、石油精製品などを密輸入する北朝鮮の「瀬取り」を黙認した「証拠」を米国から突きつけられ、厳しい取り締まりを求められた。こうした問題に対する弁明の機会をつくることが、米韓首脳会談の理由だ。2018年5月、ホワイトハウスでトランプ米大統領(右)と話す韓国の文在寅大統領(ゲッティ=共同) 米国は、北朝鮮融和策を進める文大統領を「邪魔者」と考えている。それでも、同盟国として北朝鮮への圧力強化に必要なので我慢しているだけだ。米国のマスコミが文大統領を「北朝鮮の手先」と酷評した背景には、ホワイトハウスの意向がある。失敗続きの韓国外交 一方、北朝鮮も第2回米朝会談の決裂後に、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が文大統領を「米朝の仲介者ではない」と批判し、韓国に裏切られたとの感情を示した。文大統領は金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長に「開城(ケソン)工業団地が再開できる」「朝鮮戦争終戦宣言が出せる」「韓国の支援も可能になる」「資金も送る」「在韓米軍が撤退する」「瀬取りの密輸は黙認する」と、甘い見通しを並べ立てていたから、怒り心頭になるのも無理はない。 韓国の外交は失敗続きだ。日米中朝という北東アジアの関係4カ国に加え、昨秋のアジア欧州会議(ASEM)に伴う欧州訪問や3月の東南アジア歴訪も、文大統領自らの「外交的欠礼」で批判された。もはや各国の信頼を失っている。それでいて、安倍晋三首相が6月までトランプ大統領と3回も首脳会談を行うのは耐えられない。 安倍首相の動きに、文大統領は韓国民から「日本に後れを取った」と批判され、さらに支持率も下がることは確実だ。それを阻止するために考えたのが、安倍首相より先にトランプ大統領に会う「田舎芝居」だ。 これまで、文大統領は「米朝の仲介役」を公言してきた。それが第2回米朝会談の決裂により完全に崩壊した。米朝両国からも信頼されていない事実が明らかにされたのである。 面目を失った文大統領は米国の意向を探り、北朝鮮に伝えようとしている。探りたい問題は「スペインの北朝鮮大使館襲撃は『トランプの意図』なのか」「第3回米朝首脳会談はいつやるのか」だ。この二つの問題をトランプ大統領から聞き出し、金委員長に伝えることで失地を回復しようとしている。 北朝鮮の首都、平壌(ピョンヤン)は今、在スペイン大使館襲撃事件の衝撃に揺れている。盗まれたコンピューターには暗号解読の文書が入っていた。このため、海外公館や工作員に暗号文書を送れない状態にある。さらに、これまでの文書や指示が全て米国に解読されたと考えている。2018年4月、板門店宣言に署名後、共同発表に臨む韓国の文在寅大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(韓国共同写真記者団・共同) この襲撃事件は、単に反北朝鮮団体のハプニングか、米中央情報局(CIA)の仕業か、それともトランプ政権が北朝鮮崩壊を狙ったいわゆる「金正恩斬首作戦」の一環なのか。北朝鮮首脳部は判断に苦しんでいる。 もしトランプ政権による意図的な「作戦」なら、米朝首脳会談を中止して、核とミサイル実験を再開するしかない。だが、実験再開はより強硬な対北朝鮮制裁を招くと苦悩を深めている。文在寅、最大の「心配の種」 平壌の混乱を知らされた文大統領は、「米朝仲介役」である自分の出番と誤解し、トランプ大統領に「スペイン大使館襲撃」の真実を聞き出し、金委員長にその回答を伝えることで、恩義を売ろうとしているわけだ。でも、トランプ大統領は「知らない」と答えるだろう。 また、文大統領は、米朝両国がひそかに第3回の首脳会談の準備や接触をして、「韓国外し」を行っているのではないかと憂慮している。そのために米朝の動きを聞き出そうとしている。 文大統領がもう一つ心配しているのは、日朝首脳会談の動きだ。拉致問題を担当する菅義偉(よしひで)官房長官の5月訪米に、韓国が強い関心を寄せている。 韓国に、日本の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関係者から「自分たちが日朝首脳会談の準備をしている。菅と接触している」との連絡も来たが、たぶん偽情報だと思われる。平壌からは、高官の間で「米朝がダメなら、日朝首脳会談がある」との意見もある、との動きも入った。「内閣官房参与が近く訪朝する」との情報も東京の韓国大使館から届いた。 韓国は、南北関係より先に日朝関係が前進するのを常に妨害してきた。韓国の大統領が訪朝できないのに、日本の首相に訪朝されてはメンツを失う。このように、「文在寅訪米」の背後では多くの情報工作が展開されているのである。 公安関係者によると、北朝鮮の工作機関につながる組織が平壌に「安倍はいつでも動かせる。われわれの思うままだ。安倍が膝をかがめ、日朝首脳会談をわれわれにお願いしてきた」と連絡している、という。2018年5月、日中韓サミットを前に記念撮影に臨む安倍晋三首相と韓国の文在寅大統領(代表撮影) 平壌では、金委員長が朝鮮総連の情報を信用せず、「総連幹部は、金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記にウソの報告ばかりしてきた」と述べている事実が知られている。北朝鮮問題では「百鬼夜行」の工作が展開される。官邸の内外に、北朝鮮工作機関の手先がいるのではないかと、危惧する声も出ている。■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「日本を奴隷扱い」文在寅の外交ゲームを攻略するベスト戦術

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    韓国経済を襲う「三つの衝撃波」はアベノミクスにも飛び火する

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 現在の日本経済を考える場合、参考になる三つの国がある。韓国、ベネズエラ、米国である。いずれの国の経済を考えるときも、キーとなるのは、財政政策と金融政策の「協調」である。 実際の経済政策の運用に100点満点はない。いずれも、その国の置かれた海外との関係や国内の政治状況、政策当事者たちの個性が影響し、理想的な経済政策が実現できるのはそう簡単ではない。 その中で、米国の経済政策は合格点をかなり上回る。トランプ大統領には、主に政治的な立場の違いやマスコミの取り上げ方により、日本でもリベラル層を中心に拒否反応が強い。そのため、大統領就任前後からトランプ政権の経済政策にも厳しい批判が多かった。 だが、現在の米国経済は直近の雇用動向に多少の不安(農業部門以外の就業者数増加の低迷)があるものの、半世紀ぶりとなる低失業率を維持している。これはトランプ政権の財政政策のスタンスが拡大基調にあることに加え、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策においてイエレン前議長時代の「成功の遺産」があったからだといえる。 そして、パウエル議長の機械的ともいえる利上げ路線を、トランプ大統領が事実上「政治介入」して押しとどめたことも大きな注目点だ。FRBは、現段階では機械的利上げから様子見に転換している。これは、国際的経済環境の悪化の前では、正しい財政と金融の協調といえる方向性だ。 日本では、消費増税路線を放棄していない安倍政権の財政政策のスタンスと、日本銀行による、「取りあえずなんとか合格点」の金融緩和政策の組み合わせで、上手く協調できていない。前者を40点とすれば、後者は60点だ。 平均すると50点で不合格というのが、「現時点」の筆者の判定である。その意味で、より点数の高い米国の経済政策は参考になる。トランプ米大統領(左)とパウエルFRB議長=2017年11月、ホワイトハウス(ロイター=共同) ベネズエラについては最近、この連載でも詳細に書いたので触れない。簡単にいえば、政府による極端な市場介入は経済を殺してしまう、ということをベネズエラ経済は示している。 さて、韓国経済はどうだろうか。実は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の経済政策の失敗の影響で、深刻な状況にある。マンデル・フレミングの罠 その失敗とは、一つは、最低賃金引き上げによる失業率の悪化である。もう一つは、今後予想される貿易の急減による雇用のさらなる悪化予想である。 これらの背景にも、文政権の財政政策と金融政策の協調の失敗がある。その協調失敗のレベルは、日本よりも深刻である。 文政権では、金融政策について事実上緊縮スタンスを採っている。過度な自国通貨安と、それによる海外への資本流出を恐れるあまり、雇用悪化に対して積極的な金融緩和政策を採ることができないでいる。韓国の中央銀行がインフレ目標を引き下げて以来、雇用の悪化が続いているのは何よりの証拠である。 景気を刺激する両輪のうち、金融緩和を放棄する一方で、財政政策を拡大しても、景気刺激効果が限定的なのは、常識的にも分かるだろう。さらに経済学的にいえば、海外との取引がある中で、金融緩和をしないまま財政政策を行ってもその効果が著しく損なわれることは、いわゆる「マンデル・フレミング効果」として知られている。 韓国の経済失政の大きな要因は、この「マンデル・フレミングの罠」にはまっていることにある。 日本でも韓国と同様に、事実上一つの刺激策しか採用していない。しかし、日本の雇用状況は、今のところ大きく改善している。日韓経済の相違は、マンデル・フレミング効果から導き出されたもう一つの結論である。 海外との取引があるときに、財政政策「だけ」では効果がない。他方で金融緩和政策は景気刺激に効果がある。日本は、現状の財政政策に関して何もしていないに等しいが、他方で金融緩和を採用しているので、雇用改善が維持されている。 なぜなら、マンデル・フレミング効果が働いていて、金融緩和は雇用改善に効果が大きいからだ。これが韓国と日本の現状での決定的な違いだ。2019年2月、ソウルの韓国大統領府で開かれた会議で米朝首脳再会談の成功に期待感を示す文在寅大統領(聯合=共同) 文政権は2017年大統領選の際に、最低賃金の引き上げを「公約」に掲げて成立した。だが、公約通りに実施したその引き上げ幅はあまりにも過度であった。2018年には約16%も引き上げ、続く19年でも約11%引き上げる予定だ。 韓国の最低賃金は一律だ。日本は主に地域ごとに最低賃金が違うが、第2次安倍政権発足後は、だいたい平均すると毎年約2~3%引き上げている。韓国がかぶる「衝撃波」 日本の最低賃金引き上げは、生活保護との「逆転現象」を解消し、非正規雇用の人たちの所得安定にも必要な政策だ。と同時に、この3%程度の引き上げであれば、経済全体が拡大する中では無理なく吸収できるレベルでもある。 ところが、韓国ではそうなっていない。雇用統計を見れば、若年から中年までの労働者の雇用や非正規雇用で採用が減少し、悪影響を与えている。また、韓国の社会不安の根源ともいえる若年失業率は相変わらず2ケタ近くで高止まりしたままだ。 最低賃金の引き上げは、労働市場で「弱者」といえる若者や非正規雇用者に悪影響を及ぼす。韓国の失業率が4%台と、急速に悪化した背景には、明らかに文政権による最低賃金引き上げがある。 それでも、韓国経済の悪化はまだ始まったばかりだ。先ほどのマクロ経済政策の失敗や、最低賃金引き上げの失敗を、文政権が正すことをしていないことにある。 そして、今後顕在化するリスクもある。いわゆる「米中貿易戦争」による貿易悪化の影響が、まだ雇用に及んでいないと考えられるからだ。つまり、韓国の雇用情勢はさらに悪化する可能性がある。 韓国経済が、「輸出依存」体質なのは周知の事実である。その寄与度は、18年の経済成長率のほぼ半分にも該当する。 直近の貿易統計を見ると、主力である半導体などを中心に大きく落ち込み、対前年同月比で約6%減少した。この輸出減少は昨年末から継続している。 原因は、先述の米中貿易戦争や、英国をはじめとする欧州経済圏の不振、そしてロシア経済の景気減速など世界経済の取引規模縮小にある。そして、この輸出の落ち込みは、韓国の雇用状況にまだ反映されていないというのが大方の見方だ。韓国の首都ソウルの繁華街、明洞(ミョンドン)=2015年3月(三尾郁恵撮影) 要するに、海外発の雇用落ち込みが顕在化するのはこれからなのである。輸出の落ち込みは、韓国の国内企業の設備投資減少をもたらし、そして雇用減少に至る。 今後、韓国は「三つの衝撃波」をかぶることになる。「マクロ経済政策の失敗」「最低賃金引き上げの失敗」「輸出依存経済のリスク」である。韓国よりも深刻な輸入悪化 もちろん日本も、輸出の悪化は韓国と同じかそれ以上に深刻だ。世界経済の不安定性は日本経済にも確実に及んでいるのである。 例えば、財務省と内閣府が発表した2019年1~3月期の法人企業景気予測調査によると、2019年度の大企業の設備投資計画は前年度比1・1%増と、8・9%増であった1年前を大幅に下回っている。設備投資意欲の急速な減少は、雇用にも影響を与える。 アベノミクスがさまざまな問題を抱えながらも、「おおむね合格点」であると評価されてきたのは、雇用の改善が続いているからだ。最新のBSI(景況判断指数)を見ても大企業・中堅企業、中小企業ともに「人手不足感」は継続している。ただし、従業員数判断BSIの先行きを見てみると、急速に「人手不足感」が解消されていくのがわかる。  もし、この企業の見込み通りになれば、それは雇用停滞どころか、悪化にまで陥ってしまうだろう。その水準を分析すると、大企業では2015年度と同レベルにまで低下する。 2015年といえば、14年の消費増税の影響と世界経済不況が同時に生じたときである。14年の後半から16年にかけて雇用の改善スピードは落ち、失業率も3%台中盤で低迷した。最悪、この状況が現段階でも生じる恐れがある。 しかも、注意すべきは、あくまでも現段階の判断であることだ。今後、世界経済がより新たなリスクに直面する可能性もある。 例えば、英国の欧州連合(EU)離脱の先行きが一段と不透明になることで市場が混乱する可能性がある。米中貿易戦争の行方も不透明だ。2018年12月、経済財政諮問会議で消費税増税への対応を指示する安倍首相=首相官邸 雇用の先行きが急速に悪化していく中で、安倍政権は今のところ、10月に消費税率の10%引き上げを実施する予定を変えていない。それは、経済状況が大幅に改善していた2014年当初の状況とはまるで違う環境で、増税することを意味する。消費増税を行うことは、理性的な判断だとは全く思えない。 文政権の経済政策は「悲惨」としか言いようがない。だが、日本の経済政策にも同様の危うさがあることを、われわれは強く自覚する必要がある。■ 米朝決裂もアベガー 「日本軽視」韓国より重視すべき隣人■ 韓国よりも生ぬるい「ギャンブル依存症」対策で大丈夫か?■ 「#韓国人になりたい」インスタ女子はなぜ急増したのか

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    レーダー照射事件、元海自パイロットが韓国を完全論破する

    小原凡司(笹川平和財団上席研究員)  昨年12月20日に、韓国海軍駆逐艦「広開土大王(クァンゲト・デワン) 」が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダー(FCレーダー)を照射した事案は、その後、日本と韓国の間に横たわる大きな相違を見せつけるに至った。 その相違は、両国が公表した動画に、象徴的に見て取ることができる。日本は真実を明らかにしようとし、韓国は自国が正しいというイメージを拡散しようとしたのである。 厳密に言えば、水上艦艇のFCレーダー照射は戦闘機のロックオンとは異なるが、攻撃直前の過程であり、「攻撃される」という緊張を相手に強いる危険な行為である。 一般的に、水上艦艇は、対空および対水上捜索用レーダーなどを用いて捜索し、目標を探知したら敵味方識別を行う。その結果、攻撃の対象であると判断されれば、命令によって武器システムに目標が移管される。その時点で、より精密に目標を追尾できるFCレーダーが目標を捕捉・追跡するのだ。FCレーダーは、捜索用レーダーのように広い範囲を見るのではなく、指示された目標だけを追尾するので、発射される電波の幅が狭い。そのため、照射されている以外のビークル(艦艇、航空機、車両等)がこの電波を探知することは考えにくい。 韓国側は、海上自衛隊の哨戒機が低空で近い距離を威嚇飛行したと主張しているが、防衛省が公開した動画を見る限り、P1が行ったのは通常の情報収集活動だ。哨戒機が外国海軍艦艇等に対する情報収集は日常的に実施される。もちろん、韓国海軍に対してだけ行うものではない。海軍艦艇だけでなく、民間船舶であっても、必要であれば情報収集を行う。今回、韓国海軍艦艇は「捜索活動」を実施中で、通常航行していたわけではなく、どのような活動が行われているのか哨戒機が確認するのは当然のことである。 動画内の機内交話の様子は、この時の飛行が、通常の情報収集活動であることを裏付けている。機内交話には、目標の方位距離や、「1500フィートまで上昇する」といった機体の運動、次に行う情報収集の内容などが含まれている。種々の情報を声に出してパイロットとクルーたちの間でやり取りするのは、マルチ・クルー機の特徴である。 パイロットとクルーは、次にどのような行動をとるのか、機体がどのように動くのか、センサーでどのような探知があったのか等の情報を共有し、各搭乗員が次に自分がなすべきことを的確に行えるようにするのだ。また、情報共有しておけば、その行動に対して、複数の目でチェックが入る。 こうしたマルチ・クルー機の特徴が、韓国海軍艦艇に対してどのような情報収集を行おうとしたのか、どのような電波を探知したのか、どのような回避運動をしようとしたのかを明確に記録することになったということだ。P1哨戒機が撮影した映像の一部。韓国側は「北朝鮮の遭難船を見つけるため」レーダーを作動させたとしていたが、韓国艦(右上)と、下方にある遭難船とみられる小型船とは目視可能な距離だった=2018年12月20日、能登半島沖(防衛省提供) また、海上自衛隊の哨戒機が低空を飛行していたとしても、それが「威嚇」だということにはならない。韓国海軍は、もちろん自らも哨戒も情報収集を行っている。哨戒機の飛行パターンを理解しているはずなのだ。 動画からは、P1哨戒機が、韓国海軍艦艇が危険を感じていないか注意している様子がうかがえる。「韓国海軍艦艇から呼びかけがないか」とP1哨戒機の機長が確認したのは、もし危険を感じたのであれば、海上自衛隊機の意図を確認するために韓国艦艇が通信してくると考えていたからだ。韓国軍の非常識 たとえ、百歩譲って、韓国艦艇が危険を感じたのだとしても、突然、FCレーダーを照射するのは、友好国の海軍としては非常識な行為と言わざるを得ない。国際社会に構造的変化が起きようとし、アジア太平洋地域の安全保障環境が変化しようとしている現在、日本と韓国は本来、米国の同盟国として協力しなければならないにもかかわらず、あたかも日本が友好国ではなく敵対国であるかのように振る舞った韓国海軍の行為は、日本政府としては受け入れられないだろう。 韓国海軍は、海上自衛隊哨戒機の飛行も、韓国艦艇の行為の意味も理解しているはずだ。韓国メディアは、とにかく韓国が日本に屈することが許せないかのような論調を展開するが、日本は、韓国に謝罪を求めた訳ではなく、問題を拡大したい訳でもない。それでも、客観的な事実に基づいて再発防止を図らなければ、相互の信頼を取り戻すことは難しい。 防衛省が公開した動画も、韓国海軍艦艇からFCレーダーを照射されたことを完全に証明するものではないが、一方の韓国が公開した映像は、韓国側の主張を裏付ける証拠にはなっていないばかりでなく、奇異な印象すら受ける。韓国自身も、「韓国の正当性を訴える映像」と言っており、証拠を示すとは言っていない。 韓国側が提示した情報は最初の十数秒であり、韓国側が撮影したこの画像を見ても、海上自衛隊機が、150メートルよりも高い高度で、遠方を飛行しているように見える。残りの部分は、P1哨戒機が撮影した映像を用いている。そして、映画の予告さながらに、BGMを流し、日本の主張に対する疑問を文字で画面上に強調する。こうした表現から、韓国の目的は、見る人に韓国の主張が正しいという「印象を与える」ことなのだと理解できる。 動画において、韓国は何ら証拠を示さなかったばかりでなく、画面に示した疑問の内容にも問題がある。韓国は「日本の哨戒機はなぜ人道主義的救助作戦現場で低空威嚇飛行をしたのか?」としているが、まず、P1哨戒機の飛行を「威嚇飛行」と断定していることが問題である。さらに、万が一、韓国艦艇が危険を感じたのであれば、通信を設定して海上自衛隊機の目的を確認するべきである。問題は、通信も設定せずに、いきなりFCレーダーを照射するという暴挙に出たことなのだ。 韓国は、この根本的な問題の解決に寄与する情報を示していない。一方で韓国は、あたかも軍用機には、国際民間航空機関(ICAO)の「航空機が維持すべき高度および距離のクリアランスに係る基準」よりも厳しい基準が適用されるかのような表現を用いているが、本来、攻撃行動を含む運動を行う軍用機には、こうした基準は適用されない。海上自衛隊の哨戒機も、対潜戦を実施する際などは、より低い高度で飛行し、日常的に訓練されている。しかし、こうしたことを知らず、P1哨戒機が150メートル以下の高度で飛行したという韓国政府の主張を信じてしまったら、日本の哨戒機が危険な行為に及んだと印象付けられてしまう。※写真はイメージです(GettyImages) 2019年1月15日に行われたこの問題に関する日韓防衛当局間の協議について、韓国国防省は当日の記者会見で、「日本が、自ら保有するレーダー情報の一部の開示と引き換えに、駆逐艦のレーダー情報全体の開示を要求してきた」として、「日本は無礼だ」と述べた。「一部」と「全部」を引き換えにすることが不公平だと主張しているが、日本が提示するものと韓国が提示するものは内容が異なると考えられるので、単純比較できるものではない。韓国のイメージ戦略 日本の提案は、日本が探知した電波情報を提示し、韓国側がFCレーダーを照射したとされる駆逐艦のレーダー電波の諸元等を提示して、二つを照合するものだと考えられる。異なる内容のものを並べて不公平だと主張することも、韓国のイメージ戦略と言えるだろう。 この時、韓国側が、レーダー情報の照合を拒否したばかりでなく、音を聞くことすら拒否したことは、韓国政府には真実を明らかにすることより優先することがあることを示している。また、韓国側の実務者レベルは、文在寅政権の政治姿勢によって、自分たちで判断することを避けざるを得ない状況に置かれているかもしれない。 このような政治的状況下で、韓国海軍を含む韓国軍が口を封じられている可能性もある。海上自衛隊と韓国海軍は、1995年から交流を開始し、協力関係を築いてきた。韓国海軍を含む韓国軍は信頼に足る優秀な軍隊である。全く過ちを犯さない組織や個人などあり得ない。問題は、そうした際に、どのように信頼を回復するかである。その方法を理解している良識ある韓国軍人が政治的に抑え込まれているのだとしたら、彼らに対して同情を禁じ得ない。韓国軍は民主主義国家の軍隊であることの意味を理解しているがゆえに、組織として文在寅政権の命令に背くことはないだろう。 日韓防衛当局者間の協議において韓国側に情報照合を拒否された防衛省は、2019年1月21日、韓国海軍艦艇から火器管制レーダーを照射されたことを示すさらなる根拠として、音声データを公開した。これは、P1哨戒機が収集したFCレーダー波を音声に変換したものである。防衛省は、秘密に関わる情報が表出しないよう、音声に変更を加えている。防衛省外観=2018年12月25日、東京都新宿区(川口良介撮影) これに対して韓国は、この音声は根拠にならないとして、これに対抗するように、P1哨戒機の写真、赤外線探査装置(FLIR)の探知画像およびレーダー探知画面を静止画で公表した。これら静止画を並べて見れば、これらが同一の目標に関する探知情報であるというイメージを与えることができる。 しかし、これらも、2018年12月20日当日に、韓国海軍艦艇がP1哨戒機を探知したことを完全に証明するものにはならない。写真やFLIR画像は、P1哨戒機を撮ったことを示すだけである。また、レーダー画面は、時刻、目標の方位、距離、高度を示す信号がその装置に入力されたことを示すにすぎない。そもそも、探知目標の探知時刻や位置を完全に証明すること自体が極めて難しいのだ。問題の本質 その後、韓国政府は、FCレーダー照射の有無に関する問題では分が悪いと思ったのか、本来の問題であるFCレーダー照射という危険行為を取り上げなくなり、代わって、海上自衛隊哨戒機の威嚇飛行を問題にしている。問題のすり替えである。 しかし、問題の本質は、韓国側が危険だと感じたか感じなかったかということではない。もし、韓国海軍艦艇が、日本の哨戒機の飛行を危険だと感じたとしても、いきなりFCレーダーを照射するという危険な行為に及んだことが問題なのである。 その理由は簡単だ。現在は、日本と韓国の間は戦争状態になく、それどころか日本と韓国はともに米国の同盟国であり友好国である。危険を感じる程に接近し過ぎていると感じたのであれば、まず、通信設定して、哨戒機の意図を確認する、あるいは、高度を上げるように要求するのが常識だろう。 根源的な問題は韓国政府の認識だろう。航空機が近寄ったとしても、ただ飛行するだけでは具体的な攻撃の動作にならない。P1哨戒機は対艦攻撃能力を有するが、その手段である対艦ミサイルはパイロン(航空機の胴体や主翼から物を吊り下げるために使われる、前後に細長い板状の支柱)にしか搭載できない。「近かった」というのであれば、その航空機のパイロンにミサイルが搭載されていないことを目視で確認できたはずだ。韓国海軍は、もちろん、P1哨戒機の性能要目を理解している。友好国である日本の、しかも攻撃能力のない航空機が近傍を飛行したことに対して、「威嚇飛行」と主張する韓国政府の認識に大いに違和感を覚える。 日本と韓国は、それぞれに求めているものが違うのかもしれない。日本政府は、このような行為が再発するかもしれない状況で信頼を回復することは難しいと考え、再発防止を求めている。韓国政府は、何よりも「日本に屈服したと見られないこと」を優先しているように見える。それでは、日本と韓国の主張がかみ合うはずもない。政府が相手国政府を非難する状況は、国民の感情を煽る結果を生んでいる。日韓外相会談を前に握手する、河野太郎外相(左)と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相=2019年2月15日、ドイツ・ミュンヘン市内のホテル(力武崇樹撮影) 最大の問題は、米国の同盟国である日本と韓国が、地域の安定と平和の維持に向けて協力するための信頼を回復できないでいることである。日本は、再発防止策が議論されないどころか事実さえ明らかにならない状況は地域の安全保障環境を損なうものであることを理解し、現実的な対応を考えていかなければならないだろう。■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    韓国レーダー照射、もう白黒つけよう

    米朝首脳会談や先の天皇謝罪発言、徴用工をめぐる賠償問題などが重なり、韓国軍によるレーダー照射事件はすっかり尻すぼみになった感がある。とはいえ、これもいまだ解決のめどは立っていない。「真実を語る方が強い」とは安倍首相の言葉だが、もういい加減、この事件も白黒つけようではないか。

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    レーダー照射「論点ずらし」は韓国の反転攻勢だ

    森本敏(拓殖大学総長、元防衛大臣) 昨年12月に発生した韓国駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機に対する火器管制レーダー照射事案について、防衛省は今年1月21日に最終見解を公表した。照射されたレーダー波等を解析した結果、P-1が韓国駆逐艦の火器管制レーダーからレーダー波を一定時間継続して、複数回照射されたことを確認しており、この点については、公表されているP-1の動画および探知時の音からも明らかである。 韓国では、駆逐艦の火器管制レーダーと、同艦艇の近くにいた韓国海上警察巡視船舶のレーダーがよく似た周波数なので誤作動してP-1に届いたという報道もあるが、周波数特性は専門家が分析すれば分かることであり、このような説は全く信用できない。 いずれにしても、韓国側はレーダー照射を行っていないという主張を今まで繰り返してきたが、日本側が示す客観的根拠を覆すような、説得力のある具体的な証拠や論拠を示していない。 このような火器管制レーダーの照射は不測の事態を招きかねない極めて危険な行為であり、CUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準で、日韓ともこれに合意している)において控えるべき動作として規定されており、韓国側は自らがとった不適切な行動を認めて、日本側に謝罪してしかるべきである。 日本側が公表した根拠について、韓国側がレーダー照射の事実を否定する発言を繰り返してきた理由は必ずしも明確でない。韓国側はその主張の根拠となるデータは機密なので公表できないとしているが、データを公表すると日本側の示す根拠の方が正しいということになり、不利になる恐れがあると考えている可能性はある。 いずれにせよ、レーダー照射について日韓間でここまで問題が大きくなった背景にはどのような理由があったかは定かでないが、韓国海軍側に何らかのミスマネジメントがあった一方で、韓国首脳部は国防部あるいは合同参謀本部から報告を受けて、一貫して韓国側に瑕疵(かし)はないという立場に立って対応し続けてきたことにあると思われる。海上自衛隊のP1哨戒機(ゲッティイメージズ) しかし、その根拠を内外に示しえない状況下でレーダー照射の議論を続けることは不利と判断したものと考えられ、1月14日のシンガポールでの日韓協議以降、韓国側はレーダー照射問題をあまり取り上げなくなっている。 一方、日本側としては、韓国側が根拠を示さずに事実を否定するだけの態度を続けている限り、これ以上の協議を続けても意味がないので、最終見解を示すとともに協議を打ち切ることにした。この措置はそれまでの協議経過を評価すれば適切であったと考える。韓国の論点「切り替え」 韓国側は、韓国駆逐艦の近くで活動していた韓国海上警察巡視船舶が北朝鮮船舶から3人の遭難者を海難救助し(他の1名は遺体であったと報じられている)、その後、板門店経由で北朝鮮側に送り返したと説明している。 日本側に、この遭難者について工作員、スパイあるいは、瀬取りとみられる行為(何らかの金品の授受)があった可能性について言及する専門家がいるが、①その根拠は不明確であること②韓国はこれを米軍、国連にも届け出て、遭難者として北朝鮮に送り返したところを見ると、彼らが何らかの不法行為に関わったとは考えにくいこと③仮に、いかなる背景事情があるにせよ、韓国駆逐艦によるレーダー照射や低空脅威飛行なるものがあったか、なかったかという議論を説明する論拠にはなりにくい等の理由から、本件問題はレーダー照射、低空脅威飛行事案と直接の関係があったとは考えにくい。 韓国は、結果としてレーダー照射の問題について日本側に反論することより、論点をP-1の低空脅威飛行に切り替えて、攻勢に出ようとしたものと考えられる。ただ、この低空脅威飛行についても韓国側が示した写真、例えば、P-1の飛行の様子を艦艇から撮影した写真は、それ自体、P-1の飛行高度を客観的に示す証拠となっておらず、十分説得力のあるものになっていない。 韓国側は日本のP-1が韓国駆逐艦に対する低空脅威飛行を行ったと指摘しているが、当該P-1はルールに基づき十分な高度と距離を確保して飛行しており、韓国駆逐艦の活動を妨害するような飛行を全く行っていない。P-1の飛行が韓国側から見て不法な行動であると認識したのであれば、韓国駆逐艦から速やかに、同機に対して無線によって指摘し、やめるよう求めるべきであったのに、韓国側は全くそのような措置をとっていない。 しかし、後日になって低空脅威飛行と言い始めたのは、韓国の国内世論を意識して、火器管制レーダー照射に関する重要な論点を希薄化させるため、あるいは、論点のすり替えを行いつつ、反転攻勢に出るための主張なのではないかと考えざるを得ない。 いずれにしても、本件事案についての韓国側の主張には明確な根拠がなく、日本側としては、韓国側が本件事案の事実関係を適正かつ冷静に受け止め、再発防止を徹底するよう期待する旨を強調してきた。日本側は当然のこととして、日韓および日米韓の防衛協力関係は東アジアの平和と安定にとって極めて重要な役割を果たしているものと認識しており、今後とも日韓および日米韓の防衛協力に努めていくこととしている。記者会見する韓国軍幹部=2019年1月、ソウル(聯合=共同) しかし、防衛当局間の相互不信は末端部隊の構成員にまで影響を与える可能性があり、日韓双方の部隊活動が海空域で相互に接近する場合、いつ不測の事態や予期せぬ偶発事故が発生するかもしれないという恐れがある。かかる不測の事態を防ぐために、まず日韓双方の意思疎通を図る努力を行うことが求められる。 さらには、こうした観点に立って、日韓双方とも両国関係の将来を展望し、冷静に議論を進めることに努め、日韓関係の現状をできるだけ早く良好なものにするよう率直な対話を行うプロセスの中で、再発防止のための枠組みについて協議していくべきものと考える。■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    韓国レーダー照射、軍事的「忍耐」で戦争の火種を消し去れ

    ) 2018年12月20日、海上自衛隊P1哨戒機が、能登半島沖、日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍駆逐艦の火器管制レーダー(Fire Control System、以下FCレーダー)の照射を受け、日本政府は外交ルートを通じて抗議した。 韓国の通信社、聯合ニュース(18年12月23日付)によると、「韓国海軍艦艇は東海上で遭難した北朝鮮漁船を捜索していた。現場では、威嚇的接近飛行を行っていた海自P1哨戒機に対し、追尾レーダーと一体で作動する映像撮影用の光学カメラを使用した。この際、ビーム照射はしていなかった。海自P1哨戒機からの通信は、韓国海洋警察を呼び出す交信だったと認識していた」と伝えている。 また、韓国国防部は「日本側に脅威を感じさせるいかなる措置もとらなかった」と照射を否定、さらに、ソウルで開催された日韓外務省の局長級協議において俎上に載った「照射の有無」は、対立をあらわにしただけであった。加えて、韓国国防部は、2019年1月17日、在ソウル日本大使館防衛駐在官を呼び出し、日本に対し厳重抗議を行っている。 果たしてこの事件は、善玉悪玉をあぶり出したところで解決するものだろうか。むしろ、「秀吉の侵略」「併合・植民地化」「慰安婦・徴用工」などの火種に油を注ぎ、韓国の対日感情を昂(たかぶ)らせ、日韓関係を一層悩ましく深刻な状況に陥れるだけだろう。そこで、事件の整理が解決の示唆となると考え、いくつかの視点を示したい。 まず、軍事上の視点である。そもそもFCレーダーは、その多くの性能や仕組みが外部に知られたくない、知らせたくない、秘匿されるべき装備である。例えば、自衛隊の使用電波の周波数、波長を敵が知れば、敵が電波特性に合わせてピンポイントの電子妨害を行って、自衛隊の探知能力や、ミサイルなど火器の命中率を低下させる。 逆に、自衛隊が敵の諸元を知り、敵の照準波を妨害すれば被害を局限できる。日韓に限らず、電子妨害は「秘中の秘」であり、相手装備の性能諸元を知る「手の内を公開する」こと自体、軍事的には「愚かな行為」である。 2013年には、中国海軍が海自艦艇、および搭載ヘリに向けてFCレーダーを照射した事件があった。これによって、中国海軍が使用するFCレーダーの電波諸元を知ることができ、ミサイルなど自衛隊に対する火器の照準を妨害しやすくなった。このように、「脅威の諸元」が取得できると考えれば、今回の事件は、黙して歓迎すべき類(たぐ)いの事象かもしれないのだ。防衛省 それでは、日本政府がどのような経緯で韓国に抗議することになったのか。発端は明らかだが、「抗議に至った経緯」は見えない。当然、事件は現場から指揮系統を通して官邸まで報告されたのであろう。 「陸自の『日誌報告』が防衛省トップに上げられていなかった問題」で処分が行われて以来、対外的事案の報告は、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」現状が想像される。そして、「韓国をギャフンと言わせたい」空気に満ちているタイミングで「抗議」に移り、現に軍事上、「昨日の友を今日の敵」にしてしまう重大事に発展させつつある。文民統制の難しさ また、現場の秘匿事項が「シビリアンコントロール(文民統制)の俎上で暴露されてしまった」ことは悩ましい限りである。言動が法的に正当であっても、それは一般論で言う合理性であって、自衛官には「殺戮・破壊を勝利のための手段とする一般社会と乖離(かいり)した合理性」があり、当然「戦いを有利に導くさまざまな保全」が求められる。他方、シビリアンコントロールの難しさは、「軍事」と「社会性」を区別することだ。 次に、「海上救難活動の任務」は、主として日本や米国の場合、「海上保安庁」や「沿岸警備隊」が担う。韓国では、いわゆる「Coast Guard」 組織が、14年のセウォル号沈没の不手際以降、組織改革が一転二転し、現在は「韓国海洋警察」が任務に就いている。 しかし、今回のケースでは「韓国海軍」が出動していた。それでは海軍が出動した理由は何か。遭難船舶近傍を航行中という偶然が考えられるが、そうであれば、日本のEEZでの事象であることから、海自が「韓国海軍艦艇」の動態情報を得て事情を把握できるはずであり、問題発生を機に、「友軍」間で諸情報を共有できる「衝突防止拡大協定」に向けた協議が生まれてもいいはずだ。 これまでの韓国側の声明は、日本へのクレームに偏っており、歯切れが悪い印象を受ける。その原因としては、保全を優先した装備や行動にかかわる「軍事上の秘匿」があったからではないだろうか。本来、保全上触れるべきでない、忖度(そんたく)があってしかるべき事態に対する日本の振舞いに、自衛隊との友好を重ねてきた韓国軍人であっても首を傾(かし)げたのだろう。従って、日本は、忖度なき「突っ込み」を控えるべきだった。 そして2019年に入り、海自P1哨戒機の韓国艦艇への「異常接近」にクレームがつけられた。韓国の「事の状況によってしかるべき対応をとる」という公的メッセージである「威嚇飛行に必要な措置」には、戦争との距離を縮める空気を感じさせた。それほどまでに韓国が頑(かたく)なになる事情について、密かに忖度し合える機会が作れなかったのだろうか。 今回の事件が「軍事的緊張度を高め、敵対意識の発生を助長する」ことになるという深謀遠慮がなく、「証拠を突きつける」行為に走った「日本外交」はうなずけない。韓国側のキーワードは、「韓国海軍艦艇」「北朝鮮船舶」「FCレーダー照射」「頑なな反発」「異常接近と危険飛行への警告」であった。 これらから、「韓国海軍艦艇の行動は秘匿性が高い」「対北朝鮮政策の潜在」「制裁決議に抵触」をうかがわせる状況、そして想定外の「日本の妨害」が組み合わせられた。しかも、軍事上、電子機器にかかわる秘匿事項を公にした日本の行為に対し、韓国、別けても軍が激怒したとも考えられる。記者会見で映像公表の意向を表明する岩屋毅防衛相=2018年12月、防衛省(宮川浩和撮影) そもそも、軍事上の緊張は質(たち)が悪い。友好関係にあった国家間に、相互が「不愉快」に受け止める特異な衝突が発生すると、「入ったひび」の修復に時間がかかるだけではなく、衝突が重なると、より重大な事件に発展しかねない。米国も見せた「忍耐」 いったん生じた「いがみ合い」の治療には、「忍耐と慎重と認識の共有」が良薬である。日韓両国間においてはこれまで、「半世紀にわたる交流」(2018年『防衛白書』)が行われてきた。・防衛駐在官の派遣(陸自・海自・空自各1人)(1954年以降継続)・防衛首脳日韓ハイレベル交流21回(2015年5月~18年6月)・留学生交流15人(2017年度)・当局者定期協議(日韓安保対話11回、防衛実務者対話20回)・部隊間交流10回(15年10月~18年3月)・日米韓3カ国協力21回(15年4月~18年6月)・その他―研究交流/安全保障対話/各種共同訓練(日米韓・日米韓豪加・西太平洋潜水艦救難・多国間海賊対処)・セミナー/各種協定協議 これらは、自衛隊と韓国軍の間に、意思疎通が容易で良好な関係を構築、維持し、信頼を醸成している証左でもある。 今回の事件は、この友好関係を背景に「初動」で「自衛隊・韓国軍の事実認識と誤解の鎮静」が行われるべきであった。今からでも遅くない、シビリアンコントロール下において、「自衛隊と韓国軍の良好な関係に基づく話し合いに託する」ことを一考してほしい。 これは、武力の対峙、行使の危惧を排除して軍事組織間の友好関係を活用する「間接的衝突抑止」である。今日、この作戦は「ハイブリッド戦略・戦術」の一つでもある。それには「忍耐と寛容」という精神要素が不可欠であることを付言しておきたい。 振り返れば、その前例がないわけではない。軍事的「忍耐」について、筆者の体験から次の事例を紹介する。 日本の対領空侵犯措置の任務が在日米空軍から空自に移管された1960年代の過渡期、ソ連機の領空侵入に緊急発進した米要撃戦闘機のレーダー・スコープ上の輝点が、ソ連機輝点と交差し、米軍機のレーダー反射が消え、ソ連機の輝点が母基地へ向かうという事件があった。明らかに米軍機は撃墜されたのだが、大戦へのエスカレーションを回避するため米国は忍耐して看過した。 冷戦時代、日米哨戒機のオホーツク海域流氷調査、電波情報収集飛行に対して、ソ連の地対空誘導弾部隊からFCレーダーの照射を受けている。もう一方で、ベトナム・カムラン湾と沿海州基地間往復便のソ連機も日本周辺海域を飛行し、電波情報を収集していた。 しかし、空自高射部隊が追尾レーダーを照射してレーダー諸元を知られる愚は犯していない。また、空自スクランブル機は、領空侵犯の恐れがあるソ連機の行動監視のため肉眼で見える距離に接近した。その際、「TU-16」(ソ連の戦略爆撃機)などの機銃銃口が向けられることは珍しくなかった。防衛省が公開した韓国駆逐艦によるレーダー照射の映像。能登半島沖(日本EEZ内)で海上自衛隊P1哨戒機により撮影された=2018年12月(防衛省提供) これらを総ずると、いかにシビリアンコントロールに安全保障の機微、安定がかかっているかが見えてくる。今回の事件の教訓は、安全保障にかかわる事象については一層の慎重さ、冷静さ、そして忍耐が求められていくと考える。■ 「武士の情は通用しない」韓国との情報戦はこう戦え!■ 「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる■ 「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    もし日韓戦わば… 軍事力の差は歴然だった

     韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射問題は解決の糸口が見えない。「交戦の一歩手前」といえる状況が発生したにもかかわらず、無理筋の主張を続ける韓国を見ていると、“同盟国”のはずの日本と本気で事を構える気でもあるのか──という疑念さえ浮かんでくる。実際のところ、そんな事態になって困るのは韓国軍のはずなのだが……。 韓国軍・政府の動きは、理解不能だ。海上自衛隊の哨戒機に“ロックオン”し、言い分を二転三転させた挙げ句、具体的な証拠を示さずに「悪いのは日本」という主張を繰り返している。背景に、韓国軍の“変質”があるとみるのは軍事ジャーナリストの井上和彦氏だ。「徴兵制を敷く韓国では、国民の意識の変化が軍に大きく影響する。文在寅政権の誕生や昨年の平昌五輪などで南北融和ムードが広がって、『北朝鮮は敵国』という意識が薄れてしまった。これに影響されて軍の緊張感が薄れる一方、文在寅政権下の韓国はもはや日本を唯一の敵とみなしている感がある」 近年、“韓国軍の反日アピール”は、激しくなる一方だ。軍艦の名称にしても、イージス艦「世宗大王」(2007年進水)は15世紀に対馬を侵略した王の名前。伊藤博文を暗殺した「安重根」の名を冠した潜水艦(2008年進水)もある。昨年は韓国海軍主催の国際観艦式で、海自艦艇に自衛艦旗(旭日旗)の掲揚自粛を求めてきた。 ただ、幼稚な挑発を繰り返す隣国の軍の“実力”はというと──。軍艦が漂流 単純に「量」だけを比較すれば、韓国軍は日本の自衛隊を圧倒する。人口が日本の半分以下でありながら、韓国軍の総兵力は63万人。23万人の自衛隊をはるかに上回り、予備役に至っては310万人を数える(自衛隊では3万人)。また、日本の防衛費はGDPのおよそ1%だが、韓国はそれを大きく上回り、2%超となっている。 では、韓国軍の実力が自衛隊を凌駕しているかといえば、そうではない。前出・井上氏がいう。2019年2月、海上自衛隊幹部学校で開かれた国際セミナー。韓国海軍の中佐(左奥から2人目)も参加した「戦闘機をはじめとした作戦機体数でも韓国軍は自衛隊を上回る。その性能を見ても、たとえば韓国の主力戦闘機F15Kは、航空自衛隊のF15Jと比べて“上”と言えるでしょう。ただ、練度や運用に疑問符がつきます。過去には地上走行中のF15Kの車輪がマンホールにはまって傾き、機体を損傷したこともあります」 米軍や日本の自衛隊が志願制なのに対し、「韓国軍は徴兵制で兵士の士気にバラつきもあり、最新鋭の武器を揃えていても部隊運用に問題が出てくる可能性がある」(同前)わけだ。韓国軍のレベルダウン 2016年2月に北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際は、日米韓のイージス艦がそれぞれ弾道を追ったが、韓国の「世宗大王」だけがミサイルを見失い、日米に問い合わせる事態となった。「日本も韓国も、イージス艦には米国直輸入の最新鋭レーダーシステム『SPY-1』を搭載していたが、韓国軍だけ追尾する能力が足りなかった」(同前) 2013年には、これまた日本への嫌がらせのような名前の強襲揚陸艦「独島(不法占拠中の島根県・竹島の韓国名)」が、“平時の海”で航行不能となり、漂流した。原因は艦内の火災。搭載した2つの発電機のうち1つから出火し、消火中に海水が流れ込んできてもう1つの発電機も停止したという。「2010年の延坪島砲撃事件では、北朝鮮の撃った砲弾がターゲットである韓国軍のK9自走砲に命中した一方、韓国側の反撃弾のほとんどが北朝鮮陣地後方の畑に落ちた。しかも韓国軍が配していた自走砲6門のうち実際に動いたのは3門だけ。整備、運用の不備を露呈してしまった。これは、高い稼働率を誇る日本の自衛隊ではとても考えられないレベルです」(井上氏) 韓国軍の兵士の“レベルダウン”も進んでいる。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏の指摘。「今の若い兵士は消費社会の空気の中で育っています。彼らの待遇改善の要望に応えるかたちで軍施設にはカラオケルームや健康設備がつくられ、兵舎のロッカーを開けると化粧品でいっぱいだといいます。一人っ子家庭が増える中、男子を送り出す母親も神経質で、軍当局は訓練で兵士が怪我したらいちいちその経過を報告する。家族のケアに翻弄されている実情がある」北と核ミサイルを共同開発!? 1993年に韓国で発売された小説『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(金辰明・著)は、日本が“独島”を急襲し、軍事占領したことで日韓開戦となるストーリーだ。当初、押されていた韓国側が、北朝鮮と共同で開発した核ミサイルを東京湾に打ち込み戦況が一変、日本が白旗を揚げる──という結末だが、こうした作品が大人気となるのが韓国だ。黒田氏はこうため息をつく。「同書は100万部を超える大ベストセラーになり、映画化もされました。同様の設定は韓国の大衆小説の定番。しかも、話は日本による“侵略”から始まるものばかりです。『独島防衛』が、韓国人の戦意を最も刺激する“元気の素”ということなのでしょう」 当然ながら、日米韓は連携して「北朝鮮の脅威」と向き合わなくてはならない。実力もないのに“戦意”ばかり旺盛な“同盟国”では、有事の際の不安は募るばかりだ。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい■ 韓国作成「徴用工企業299社リスト」に日本企業の担当者絶句■ これまでタブー視されてきた「日本核武装論」米国で噴出

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    高須院長「日本はそろそろ韓国を切り捨てる決断を」

    院長が世の中の様々な話題に、思いのままに提言をしていくシリーズ企画「かっちゃんに訊け!!」。今回は、韓国の文喜相国会議長による「謝罪要求発言」などについて話をうかがいました * * *──相変わらず冷めきっている日韓関係ですが、韓国の文喜相国会議長が、「慰安婦問題の解決には天皇の謝罪が必要」と発言し、波紋を呼びました。高須:本当に無礼な発言だよ。しかも、日本側が反発の姿勢を見せると、「謝罪する側が謝罪しろとは何事だ。盗っ人猛々しい」と言ったらしいじゃないか。本当に恐ろしい。一体どういうつもりで、そんなわけのわからないことを口走ることができるのか。文議長が発した言葉をそのまま返すしかないよ。──また、日本側が反発していることについて文議長は「安倍政権が今回の問題を争点化している」などともコメントしているようです。高須:いやいや、それこそこっちの台詞だよね(笑い)。慰安婦問題にしろ、竹島問題にしろ、国内の支持率稼ぎのために散々争点化してきたのが、歴代の韓国政権じゃないか。文議長は、何を言っているんだ? もしかして、日本を批判するフリをして、自国に対する皮肉を言っているのかな? つじつまが合わなすぎて、なんだかこっちも混乱してしまうよ(笑い)。──たしかに矛盾だらけの発言を繰り返していますよね。レーダー照射問題にしても、何一つ証拠となるようなものは出さずに、ただただ「日本が悪い」と駄々をこねているかのような弁明が続きました。高須院長が韓国との決別を提言高須:結局、日韓関係は何一つ進んでいないどころか、韓国が言いがかりをつけてくるせいでどんどん後退している状態だ。まあ、今の日本にしてみれば、韓国との関係が悪化しても大して困らないから、これでもいいのかもしれないけどね。韓国もそう思っているんだろう。当分は今みたいな状態が続くんだろうな。 でも、僕としてはこの状況に納得いっているわけではない。あまりにも無礼な態度を続ける韓国政府は許せないよ。それに、韓国のナメた態度を許し続けると、他の国まで「日本はナメても大丈夫」って思い始めてしまうかもしれない。日本としては、韓国よりも重視すべき国はいくらでもあるわけで、そういった国との関係に悪影響が出る可能性もあるということだ。そういう意味では、日本が韓国を切り捨てる決断をしなくてはならない時に近づいているんだよ。まるで自爆テロ 韓国政府の反日的な態度というものは、韓国民に対するガス抜きだからね。とにかく日本を貶めることで国民を喜ばせて、政権の支持率をあげたいというだけのもの。つまり、それは単なる手段であって、目的ではないんだよ。結局、確固たる思想があったうえでの反日ではないから、口からでまかせみたいな矛盾だらけの悪口が次々と出てくる。それこそ、諸外国から「韓国は何をおかしなことを言い続けているのだ?」と思われてもまったく構わないと思っているのだろう。自分たちが馬鹿に見えても、日本を貶めたい──というのが韓国なんだよ。言葉は悪いけど、ある意味自爆テロにも近いものを感じる。そんなものに、真正面から付き合っていては、こちらが潰されてしまうだけ。本当に強い態度で突き放していくべきだね。──しかし、海上自衛隊のセミナーに韓国軍が参加すると発表されるなど、防衛交流は継続しています。高須:韓国は日本が動かないと思っているから、言いたい放題やったうえで、いけしゃあしゃあとやってくるんだよ。日韓の連携は平和のために重要なことだ、なんてきれいごとを言うのだろうけど、日本に喧嘩をふっかけて平和を壊そうとしているのは韓国の方だからね。もう許してあげる必要もないと思う。そろそろ堪忍袋の緒が切れるころだよ。 * * * さすがに、やりたい放題の韓国に対する不満が爆発寸前といった雰囲気の高須院長。韓国以外の国との関係を守るという意味でも、韓国への態度をあやふやにはしておけない時期にきているのかもしれない。【プロフィール】高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。昭和大学医学部客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。脂肪吸引やプチ整形など、日本に「美容整形」を広めた第一人者。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子氏との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)、『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)、『行ったり来たり 僕の札束』(小学館)、『ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて』(小学館)、『炎上上等』(扶桑社新書)、『かっちゃんねる Yes! 高須 降臨!』(悟空出版)など。最新刊は『大炎上』(扶桑社新書)。関連記事■ 高須院長 レーダー照射問題に憤怒「韓国はフェイク国家」■ 高須院長 ウーマン村本と「いつかは会って話してみたい」■ 高須院長 前澤社長の1億円お年玉に「金の使い方を知ってる」■ 高須院長 イスラム国を分析「わらしべ長者みたいなもの」■ 児玉清氏 死の直前に「僕はそろそろだから、会いに来て」

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    「天皇は謝罪せよ」日本にいる外国人は何を思う?

    韓国の文喜相(ムンヒサン)国会議長が慰安婦問題をめぐり、天皇陛下に謝罪を求める発言をした問題について、日本にいる韓国人と外国人はどう思っているのか、取材しました。

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    「親日清算」も政治ショー? 文在寅はいずれ「歴史の罪人」となる

    李相哲(龍谷大教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、100周年を迎える3月1日の「三・一独立運動」記念日を前に開いた閣議で「親日を清算し独立運動にしっかり礼を尽くすことが、民族の精気を正しく立て直し正義のある国に進む始まりだ」と語った。 「清算」とはきれいになくすという意味で、実は文大統領が好んで使う言葉の一つだ。大統領就任後、文政権は「積弊(長年積もりに積もった悪しき慣行や弊害)清算」を国政運営の中心に据え、保守政権時代に権力の中枢にいた多くの実力者を拘束し、裁判にかけた。 この「積弊清算」はいまだに続いているが、今年の「三・一独立運動」100周年に際しては「親日勢力」もきれいになくすつもりでいるようだ。 そもそも、文大統領は2017年の大統領選挙遊説中、こう話していた。「親日清算は100年を超えてはならない」と。すなわち、2019年までには、親日清算にけりをつけるという意味だ。 閣議で文大統領は「親日」とは、どのような勢力で、どのような部類の人を指すのかについては説明しなかったが、これまでの発言を丹念に調べてみると次のようになる。 「(1945年に終戦を迎えたとき)清算できなかった親日勢力が独裁勢力に変身し、民主化に寄生する勢力として残った」 すなわち、韓国が植民地統治から解放されたとき、それまで日本の植民地統治に協力した勢力で、その後権力を握った人々を指すものとみられる。ここに名指しはしていないものの、日本の統治時代に満州国陸軍軍官学校に通い、後に日本の陸軍士官学校で学んだ元大統領の朴正熙(パク・チョンヒ)氏のような人を指しているのだろう。ソウルの韓国大統領府で年頭記者会見する文在寅大統領=2019年1月(共同) そして、このような人々が戦後の日本と経済的なつながりを持ち、権力や富の欲しさに日本の過去を不問にし、過去を清算しなかったと言いたいのだ。1965年の日韓基本条約が「不完全」だとして、徴用工問題や慰安婦問題を蒸し返すのもそのような認識が背景にある。だから今年こそ、「親日」の名残をきれいになくし、決着をつけるという意味だろう。 しかし、文大統領のこのような認識は時代錯誤的であり、日韓関係はさることながら韓国の国益にもならないのは言うまでもない。分断を助長するだけ そもそも、1945年に第二次世界大戦が終結した当時、政府部門や財界に残っていた世代はすでにいない。しかも、その世代の多くは韓国を代表する民族紙『東亜日報』を創刊し、民族系企業を多く起こした金性洙(キム・ソンス)氏のような「愛国者」で、彼らは「自民族の実力向上」を目指して日本に学ぶべきものは学びながら、韓国の近代化に貢献した人たちだ。 一方、文大統領の政治の師匠と言われる盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏は、大統領在任中に「親日反民族行為の真相糾明に関する特別法」を制定(2004年施行)したが、今なお清算されずにいるという「親日」とは、この世代の次の世代だ。 一時期、これらの世代の「親日」派から財産を没収する動きもあったが、このように国民を分裂させる「親日清算」が韓国にとって利になるはずがない。 また、文大統領は著書でも度々「親日」について言及している。文大統領によれば、戦前の日本帝国主義の植民地統治に協力した勢力が終戦後反共を建前に「反共勢力」に変身、後の産業独裁勢力に変わり、ひいては金や権力を持つ既得権益者となり、今の韓国の保守勢力の中核をなす。大ざっぱに言えば、「親日勢力=保守勢力」という図式になる。 これらの勢力を「きれいになくす」という発想は、階級闘争論を理想とする社会主義国家にありそうな典型だ。北朝鮮のような社会主義を標榜する国家では、人民を戦前に携わってきた職業、家柄によって敵対階級、団結すべき階級、優遇すべき階級に分け、敵対階級を清算したが、国民を敵と味方に選別しようとする発想は、自由な民主主義国家ではあってはならないことだ。 これまで、戦後の日本と韓国は、民主主義と市場経済という共通の価値観に寄り添って有効を育んできた。日韓両国民は、世界中のどの国の国民同士より互いを理解し、親しんできたはずだ。 そのような良好な関係が歴史問題で不協和音が生じた場合、それをなだめ、未来志向的な見地に立って、国民をリードするのが政府の役目のはずだ。しかし、「三・一独立運動」100周年を迎え、文大統領から発せられるメッセージは、逆だった。国民をみだりに煽(あお)る行為と受け止められても仕方のないものだ。独立運動家、金九の記念館で開かれた閣議で発言する韓国の文在寅大統領(中央)=2019年2月、ソウル(韓国大統領府提供・共同) 戦後日本が韓国の経済繁栄に手を貸した事実は誰も否定できない。さらに日本は、冷戦体制下で韓国とともに、北朝鮮や共産主義勢力と闘った仲でもある。このような最近の記憶は忘却し、100年前の記憶を呼び起こそうとする発想は先にも記したが、時代錯誤的としか言いようがない。 文大統領が「三・一独立運動」記念日を大事することについて、批判するつもりはない。しかし、日本の過去を責める手段として、「親日」の保守系勢力つぶしだけでなく、北朝鮮との連携強化や左派勢力を結集するための政治ショーとして利用するつもりであれば、文大統領は「歴史の罪人」として刻まれることになるだろう。■「昭和天皇は慰安婦戦犯」韓国の理屈に加勢した朝日とあの政治家■天皇陛下を「おじさん」 韓国議長、もう一つの侮辱発言■「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

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    百年の恨み、文在寅「親日清算」の罪

    日本統治下の1919年3月1日、植民地支配に抵抗して起きた「三・一独立運動」から100年を迎え、韓国では記念行事が目白押しだ。これに先立ち、文在寅大統領は「親日を清算し正義の国に進む」と発言、迷走する日韓関係にさらなる波紋が広がった。文氏はなぜ過去にしがみ続けるのか。(写真は共同)

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    北朝鮮非核化の主導権を虎視眈々と狙う文在寅「逆転シナリオ」

    核の廃棄をも含められるのかどうかの試金石になるだろう。 興味深いのは、首脳会談の直前25日になって、韓国発で興味深い発言が二つ出てきたことである。 一つは、大統領府の首席補佐官会議で、米朝首脳会談への期待を表明する中で文在寅(ムン・ジェイン)大統領自身が「歴史の周辺ではない中心に立ち、戦争と対立から平和・共存に、陣営とイデオロギーから経済と繁栄に向かう新韓半島体制」を主導的に準備しなければならないという立場を表明したことである。2019年1月、ソウルの韓国大統領府での年頭記者会見で、報道陣の質問に応じる文在寅大統領(共同) もう一つは、大統領府のスポークスマンによる「米朝2国間の終戦宣言」に対する肯定的発言である。北朝鮮の非核化の具体的な措置に関する米国の提示する見返りが何であるのかについて注目されていたが、「米朝2国間の終戦宣言」が急に注目されてきた。本来であれば、韓国もこれに加わるべきであったのだが、韓国は既に2018年9月の平壌宣言で実質的な終戦宣言、不戦宣言、不可侵宣言を行っているということで、北朝鮮の非核化が進むという条件付きではあるが、韓国は歓迎の意思をあらかじめ示している。「悲観論」渦巻く日本 また、これは従来から言われてきたことではあるが、米国にとっての最大の問題は核兵器それ自体ではなく、米本土を射程に入れる核弾頭搭載可能なミサイル、大陸間弾道ミサイル(ICBM)であり、たとえ同盟国である日韓などが短距離および中距離ミサイルも削減、もしくは廃棄対象に含めるべきだと主張しても「米国第一主義」の立場からは、まずはICBMの削減・廃棄の方を優先させる可能性が高いと言える。 一方で、これが短距離・中距離ミサイルの削減や廃棄と切り離されてしまい、短距離・中距離ミサイルの削減・廃棄につながらないと日本の利益は無視されたことになり非常に困った結果になってしまう。したがって、米国に対して日本の利益も重視するように働きかけることは重要だろう。しかし、長距離ミサイルの削減・廃棄が短距離・中距離ミサイルの削減・廃棄につながるのであれば、それをむしろ支援することが有効だろう。 ただし、米国政府内部でも北朝鮮が「核兵器を完全に放棄する可能性は低い」(コーツ国家情報長官)、北朝鮮は「米国に直接的な脅威を及ぼす長距離核弾頭ミサイルの開発に注力している」(ハスペル中央情報局=CIA=長官)という慎重な見方も依然として根強い。従って、北朝鮮の非核化に対する見返りとして、今回の首脳会談で「制裁緩和」という言葉を米国が明示的に約束することはないだろう。 北朝鮮としては、もちろん寧辺の核施設の廃棄の見返りとして上記の三つ、すなわち人道支援の拡大、終戦宣言、米朝連絡事務所の開所は最低限確保しておきたいと考えるだろう。そして、可能であれば、ある意味では制裁緩和の突破口として、韓国との南北経済協力に関する米国の姿勢の緩和を求めるということも考えているのではないか。 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の2019年の新年辞でも、開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光という南北の二大経済協力事業の再開に明示的に言及したことにも現れる。北朝鮮にとって、とりあえず経済発展のためには南北の経済協力事業を再開させることが最も近道ではあるのだが、それが国際制裁によって行き詰まっており、韓国だけの判断では再開が難しいということになると、それを突破するためには、米国の了解が必要になるということだろう。 元来、北朝鮮が非核化を実施することによって米国から制裁緩和による経済発展と体制保証を求めるというプロジェクトは、ある意味では南北の共同プロジェクトとでも言うべき性格を持っているので、米国さえ、それを許諾すれば可能になるという暗黙の合意が南北にも存在する。 日本では、ともかく北朝鮮の非核化に対する懐疑論、悲観論が依然として根強い。もちろん、せっかく開発したものを容易に手放すはずはないということは理解し得る。他国を欺いて核ミサイルを保有することが北朝鮮の目的であるとすれば、それは実現されたと言える。2019年2月26日、米朝首脳会談のためベトナム・ドンダン駅に到着し、出迎えの人に手を振る北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(共同) しかし、それが北朝鮮の現在から将来にわたる安全を保証することにならなかったことも北朝鮮は十分に自覚している。だからこそ、2018年に入って、それまで蓄積してきた核ミサイル能力を使って、自体制の安全保障を最大の脅威である米国から獲得しようとしてきた。米朝間の不信という条件の下で、そうした自体制の安全保障を獲得するという確信がないために、可視的な非核化に踏み切るのは容易ではないのかもしれない。 しかし、いったん指導者自ら下した決断の意味は過小評価されるべきではない。そうした決断をどの程度持続することができるのか、できないのか、それは一義的には北朝鮮の指導者自身の選択にかかっているが、それ以外、特に米国をはじめとする国際社会の対応が、そうした決断を活かして持続させるのか、それとも、そうした決断自体不確かなものであり、信頼に値しないと考えるのか、さらに北朝鮮をより一層追い込むことによって、北朝鮮の非核化以上、例えば、北朝鮮の体制転覆のようなものまで獲得しようとするのか、という選択にかかっている。「前のめり」になる韓国 ただ、米国は「制裁緩和」という見返りは、もっと可視的な非核化が進まない限りは提供しない意志が固いだけに、「制裁緩和」ではない南北経済協力の再開をどのように論理づけるのか、もしこの問題が議論の俎上(そじょう)に上がるのであれば注目されることになる。 韓国としては、過去においても、北朝鮮の核ミサイル開発が行われていた時も開城工業団地や金剛山観光という経済協力事業は行っていたという実績がある。したがって、文在寅政権としては、この事業を再開することによって、北朝鮮に対する韓国の影響力の回復を狙いたいと考える。前述した「新韓半島体制」における「韓国の主導権」云々は、そうしたコンテクストの中で理解される。 しかし、北朝鮮の核ミサイル開発に対する対抗措置として、この経済協力事業を中断したという経緯があるため、やはり相応の可視的な非核化の進展がないと、そして何よりもそれに対する見返りとして米国がそれを寛大に見るということがないと、韓国独自の判断で再開するということは難しく、予定されている金正恩のソウル訪問も難しい、ということになる。 実際に、文在寅大統領は若干奇妙な論理ではあるが、北朝鮮の非核化に対する米国の見返りに関して韓国がその費用の一部を南北経済協力という形で負担する用意があるという論理を提示する。米国トランプ政権さえ許容すれば、南北経済協力を復活させる意欲は強いように思う。 また、今回の米朝首脳会談で、開城工業団地はともかく金剛山観光事業程度は復活する条件が準備できるのではという期待が大きいように思う。 確かに、北朝鮮の非核化が不確かな状況で韓国が「前のめり」になっているという印象を拭えないことは確かであるが、それを「韓国は北朝鮮にだまされているだけだ」「トランプ大統領もそれに乗せられているだけだ」と悲観的に見る必要もない。韓国としては南北関係を改善することが北朝鮮に対する韓国の影響力を復活させて、それが主導権の掌握につながると考えていることは確かであるからだ。 最後に、日本の取るべき対応については以下のように考えられる。北朝鮮の非核化はあり得ないことであると頭から決めつけるのではなく、むしろ、北朝鮮を非核化に追い込むために外堀を埋めていく作業に日本も積極的に関与するという基本姿勢が必要ではないかと考える。2019年1月、北朝鮮の金英哲朝鮮労働党副委員長(右)から金正恩党委員長の親書を手渡されるトランプ米大統領(ホワイトハウスのダン・スカビーノ氏のツイッターから・共同) もちろん、その確実な保証があるわけではなく、北朝鮮はまた核実験やミサイル発射をすることで、約束を裏切るのかもしれない。しかし、その時はまた従来の制裁局面に戻るようになるし、それを主導すればいいだけの話である。米韓も、そうなればいつまでも融和局面にしがみつくということにはならないはずだ。 現状では、一方で北朝鮮の非核化を既成事実にするように慎重にかつ着実に見返りを提供することに関与する、その点での日米韓の協力を行っていくという姿勢が必要ではないか。しかし他方で、北朝鮮の非核化の不透明さが高まる時にも備えて、いつでも制裁局面に戻ることができるような態勢を準備しておくことが必要だし、そのための日米韓さらには中露を含めた協力を準備しておくことが必要だ。そうした二面作戦を採用するべきであって、今の時点から、どちらか一方に決め打ちをするというリスクを冒す必要はない。■ 金正恩が「完全な非核化」に初めて言及した意味■ 「反トランプ」のうねりはなぜ起こらなかったのか■ 崖っぷちの金正恩、万策尽きた文在寅「南北首脳の叫び」

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    「何をしても許される」天皇謝罪発言、韓国政治の根底にあるもの

    李相哲(龍谷大教授) 韓国の大物政治家の発言が、悪化の一途をたどる日韓関係を出口の見えない迷宮へ陥れた。今月8日、韓国国会の文喜相(ムン・ヒサン)議長がアメリカメディアの取材に「戦争犯罪の主犯の息子がおばあさん(元慰安婦)の手を取り、心より申し訳ないと言えば(慰安婦)問題は解消されるだろう」と発言した。 さらに、「天皇謝罪」発言が問題になると、文議長は「日本の責任ある指導者が、慰安婦に対して、納得できるだけの誠意ある謝罪を行うことが優先されなければならない」という趣旨だったと釈明した。 決着をつけたはずの慰安婦問題を持ち出し、謝罪を求めるのかという批判に対しては、「日本側は数十回謝ったと言っているが、私が見るところ、そう(被害者に誠意を込めて謝った)いったようなことはない」と反論した。しかも今のところ発言を撤回し謝罪する意向はないという。 このような経緯から確認できるのは、文議長の発言は、歴史に対する謙虚な気持ちの欠如、日本の政治体制に対する無知、普段の日本軽視の態度がうっかり言葉になって発せられたもので本音だったということだろう。 韓国立法府を代表する文議長の発言が憂慮されるのは、このことによって日韓関係は修復不可能な状態になる恐れがあることだ。それでも発言を撤回せず、「謝る事案ではない」と突っぱねるのはなぜなのか。 まず挙げられるのは、韓国には過去の歴史問題について常に道徳的に日本の優位にいると錯覚する風潮が強い点だ。日本が今まで誠意のある謝罪をしてなかったからという、文議長の発言からもそのような認識がにじみ出ている。 ご存じの人も多いと思うが、文議長が言う「日本が慰安婦問題で誠意ある謝罪をしていない」という主張は事実ではない。日本は、長い時間を費やし、官民挙げての真剣な議論を経て総理大臣の名で謝罪談話を発表した。1993年の河野洋平官房長官による「河野談話」、95年の村山富市首相による「村山談話」が代表的だ。米ワシントンを訪れた韓国国会議長の文喜相氏=2019年2月 村山談話を発表した後、「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)が設立され、それに日本政府は「必要な協力を行う」ことを約束し、事業資金として48億円を拠出、「医療費」名目で一人あたり300万円を支払った。さらに同基金は、国民から6億円を募金し、元慰安婦に一人あたり200万円の「償い金」を支払い、村山首相はじめ歴代首相の直筆署名入りの反省と謝罪の手紙を渡した。 そして約50人の元慰安婦がこの「償い金」を受け取っている。それでもこの問題が収まる気配を見せなかったため、日韓両国の間で議論を重ねまとめたのが2015年の「慰安婦合意」だ。このように、日韓の間では決着のついた話を文議長がまたもや蒸し返し、今度は天皇の謝罪まで求めてきたのである。 次に指摘しておきたいのは、韓国の根底にある、日本に対しては何をしても許されるという意識だ。これは、戦後日本が、戦前の植民支配に対する償いの気持ちもあって、韓国に対しては寛容であったことが背景にある。政財界に韓国を助けようとする人々が多数いたのだ。中国には卑屈な韓国 60年代に入って、韓国経済が飛躍的な発展を遂げた理由もその恩恵に他ならない。例えば、経済発展を牽引した浦項総合製鉄(現在のポスコ)が今日、世界的な企業に成長したのは、八幡製鉄(現新日鉄住金)の社長、稲山嘉寛氏の献身的な資金協力と努力があったから可能だった。 ソウル市内を走る最初の地下鉄1号線や、韓国の大動脈といわれる釜山とソウルを結ぶ高速道路も日本の資金と技術協力があったからこそ建設された。 このような歴史を忘却している韓国人が多いことは残念でならない。一般国民ならともかく、少なくとも社会指導層や政治家はこのような日本の「過去」を忘れてはならないのではないだろうか。こうした事実を無視し、敵と味方を分別できない近年の韓国政治は、まさに国益を害する要因だ。 そもそも、現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、日本には厳しい態度を見せながらも中国には卑屈に思えるほど低姿勢だ。実際、240万人以上の犠牲者と、1千万人以上の負傷者が出た朝鮮戦争を起こした北朝鮮、そしてその北朝鮮を支援した中国政府に対し、過去を含めて韓国の左派政権が謝罪と償いを要求したという話は聞かない。 レーダー照射問題で韓国は日本の哨戒機の低空飛行を非難するが、味方であるはずの日本の哨戒機が近くを飛行するのがなぜ脅威となるのか。アメリカを介して准同盟関係にあるはずの日本の哨戒機を敵としてみなさないならレーダー照射はしなかったはずだし、仮に不手際で照射したなら再発防止策を講じ、謝れば済む話だ。韓国国防部がユーチューブで公開した反論動画(ユーチューブから)  にもかかわらず、日本に謝罪を要求する態度は日本との関係を悪くするための愚挙としか思えない。 では、このような韓国とどう付き合えばよいだろうか。小野寺五典元防衛相は、韓国に対しては「丁寧な無視」が必要だと提言したが、日韓関係をこのまま放置し、どんどん悪くなるのを、そのまま見過ごすのは良策ではない。 ただ、啓蒙思想家である福沢諭吉の「脱亜論」ではないが、日本が隣国より欧米を重視したくなる気持ちがなんとなく分かるような気がする。過去においてもそうだったように現在においても将来においても韓国にとって、世界中で頼りになるのは本来、日本のはずであり、日本にとっても韓国は大事な隣国である。 反日を「善し」とする韓国の政治家や文政権は、場合によっては本気で日本から見放されるという現実にいち早く気づいてほしいものだ。■レーダー照射は支持率上昇の絶好機「嘘の上塗り」韓国の悪知恵■北朝鮮工作に加担した文在寅、韓国の逆ギレはこれで説明がつく■朝鮮半島の戦時労働が「人権問題に化ける」韓国のカラクリ

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    韓国軍「レーダー照射」最悪の日韓関係

    韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題をめぐり、防衛省が証拠となる映像を公開した。韓国側の「レーダー照射はしていない」という言い分を覆す決定的証拠だが、それでも非を認めようとしない。韓国の対応は敵対行為に等しいが、日韓関係はどこまで悪化するのか。

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    田母神俊雄手記「レーダー照射、韓国軍の実力では自衛隊と戦えない」

    田母神俊雄(元航空幕僚長) 韓国艦艇から海上自衛隊のP1哨戒機に対し、火器管制レーダーの電波照射が行われた件で日本政府が、極めて危険な行為だとして韓国政府に抗議している。 火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射のために行われるもので、危険極まりないということのようだ。しかし、火器管制レーダーの電波照射とミサイル発射は常に一連のものとしてつながっているわけではない。また、火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射のためだけに行われるわけではない。 ミサイルの実発射よりは、ミサイルを発射するための訓練として火器管制レーダーの電波照射が行われる。すなわちレーダー操作訓練の一環として火器管制レーダーの電波発射が行われているのである。 世界中の軍が日常的にレーダー操作訓練を実施しており、地対空ミサイル部隊や海に浮かぶ艦艇などでは火器管制レーダーの電波照射は日常的に行われている。そしてその電波は地対空ミサイル部隊や艦艇などの周辺にいる航空機などには届いてしまうことが多い。 しかし、その際ミサイルが発射されないように二重、三重の安全装置がかけられており、一人のミスでミサイルが不時発射されてしまうようなことはない。 戦争が行われている場合や情勢が緊迫している場合なら火器管制レーダーの電波照射はミサイル発射の前兆であり、危険であるが、平時においては火器管制レーダーの電波照射が行われることが、直ちに危険であるということはない。元航空幕僚長の田母神俊雄氏 陸海空自の対空ミサイル部隊では日々の訓練で、自分の部隊の上空に接近する航空機は、万が一に備えその航空機が何者であるか識別するとともに、あらゆる航空機を疑似の射撃目標としてレーダー操作訓練を実施している。疑似目標には自衛隊機だけでなく米軍機も民間航空機も含まれている。 これは多くの国で同様な訓練を実施していると思われる。民間航空機を目標として危険な訓練を実施していると騒ぐ人たちがいるかもしれないが、ミサイルが飛んでいくことはないので全く安全である。 しかし、危険だから民間航空機を疑似目標として訓練することはやめろという指示が防衛省などから出てくる恐れがある。そうすると対空ミサイル部隊は訓練の機会を大幅に失うことになり部隊の弱体化につながっていく。そういうことにはならないようにしてもらいたい。決して危険な訓練ではないのだから。 自衛隊は民間航空機や米軍機を含めレーダー操作訓練をしているだけである。同じ火器管制レーダーの電波照射でも戦闘機の場合は多少状況が違っている。戦闘機が空対空戦闘訓練を行う場合は、定められた訓練空域の中で、戦闘機同士で行われることが多いので、火器管制レーダーの電波照射は、模擬戦を戦う仲間の戦闘機に対して行われる。韓国軍に敵意なし 日米共同訓練の時には当然米軍戦闘機などに対しても電波照射が行われる。だから戦闘機の火器管制レーダーの電波発射は民間航空機に向けられることはない。 もちろん対象国の航空機に対しても戦闘機が火器管制レーダーの電波を照射することはない。これに対し地上や海上の対空ミサイル部隊の場合は、常時目標が存在するわけではないので、部隊や艦艇の上空に接近するあらゆる航空機を疑似目標として訓練を行っている。  さて、射撃管制レーダーの電波を対象国の軍用機に向けて照射することは、対象国に電波情報を与えることを意味する。だから周辺に対象国の軍用機がいる場合は、対空ミサイル部隊も戦闘機なども電波照射を控えるのが普通である。 今回、韓国艦艇の電波照射を受けたP1哨戒機も電波情報を収集できる機材を搭載している。従って今回韓国艦艇は、上空に来た航空機がP1だと気づかずに電波を照射した可能性がある。上空に来た航空機を識別するために軽い気持ちで電波照射をしたのかもしれない。 今年は日韓関係が悪化した年であった。慰安婦の問題、戦時中の徴用工の問題、国際観艦式における旭日旗の問題など、日本国民にとっては韓国に嫌気がさしてしまうようなことが多かった。 韓国があまりに理不尽なことばかり言う。今回の射撃管制レーダーの電波照射の件で、今度はわが国政府が強硬に抗議していることで、留飲を下げている日本国民も多いことだろう。韓国軍のレーダー照射問題を受けて記者会見する岩屋毅防衛相(中央)=2018年12月、防衛省 しかし、射撃管制レーダーの電波照射自体は別に危険なことではない。世界中で日常的に行われていることであり、いま日本と韓国が戦争をしているのではないのだから、電波照射とミサイル発射は別物である。 韓国海軍が敵意むき出しで海上自衛隊に向ってきたと考える日本国民もいるかもしれないが、私はそうではないと思っている。韓国海軍の実力では海上自衛隊と戦えないことは、韓国海軍は十分承知している。 喧嘩(けんか)はこれ以上エスカレートさせることなく収めた方が両国のためである。韓国に警告を与えるためには、韓国に対して圧倒的に強い日本の経済力を利用するのが一番いいと思う。■ 【徹底比較】韓国と北朝鮮の陸海空戦力はこんなにも違った!■ 韓国軍不祥事、今も韓国を支配する法より大義の儒教モラル■ ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

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    レーダー照射、韓国に道理を説いても無駄である

    )工業団地近郊の駅で、鉄道と道路の連結に向けた着工式が実施された。同年9月の南北首脳会談で合意された韓国と北朝鮮をつなぐ鉄道と道路の連結である。式には、南北閣僚らに加え、中露の政府高官や国連の幹部らも出席した。アメリカが対北制裁を強化する中、国連や中露を巻き込み、南北の融和ムードを演出した格好である。 厳しく敵対すべき軍事独裁国家とは身をかがめて宥和(ゆうわ)を図る一方、自由主義陣営の平和友好国(日本)に対する韓国の姿勢はなぜか敵対的かつ高圧的だ。12月20日午後3時頃、能登半島沖において、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。翌日、防衛省が公表した。 この駆逐艦には「SEA SPARROW Mk48 VLS」という艦対空ミサイルを発射できる装置が16セルある。現場を撮影した写真で見る限り、駆逐艦の砲は海自機を向いていないが、このミサイルは垂直に発射できる。つまり、駆逐艦は艦長の決断一つで海自機を撃墜できた、その寸前だったということになる。 本来なら直ちに陳謝し、責任者を処罰すべきところ、なんと韓国国防省は同日「遭難した北朝鮮の船舶を捜索するためにレーダーを運用した。日本の哨戒機を追尾する目的ではなかった」と言い訳した。だが、それは通らない。 なぜなら、防衛省が翌22日に公表した通り「海自哨戒機の機材が収集したデータについて、慎重かつ詳細な分析を行い、当該照射が火器管制レーダーによるものと判断」した結果だからである。 そもそも「火器管制レーダーは、攻撃実施前に攻撃目標の精密な方位や距離を測定するために使用するものであり、広範囲の捜索に適するものではなく、遭難船舶を捜索するためには、水上捜索レーダーを使用することが適当」(同前)である。 加えて言えば、両者は周波数帯も違う。良くも悪くも、自衛隊が約一日がかりで「慎重かつ詳細な分析」を加えた結果なのだ。間違うはずがない。2018年10月、韓国・済州島で開かれている観艦式で海上パレードする韓国海軍の艦隊(聯合=共同) 「火器管制レーダーの照射は、不測の事態を招きかねない危険な行為」であり、「韓国も採択しているCUES(海上衝突回避規範)において、火器管制レーダーの照射は、船舶又は航空機に遭遇した場合には控えるべき動作として挙げられて」いる(防衛省)。 事実その通りだが、まさに「べき」論でしかない。CUESはあくまで「紳士協定であり、それに拘束されるか否かは基本的に参加国の自発的な意思に拠る」(防衛省防衛研究所『中国安全保障レポート2013』)。「法的拘束力を有さず、国際民間航空条約の附属書や国際条約などに優越しない」(防衛白書)。しびれ切らした防衛省 それを、一部政府高官や与党の有力議員らが「国際法違反」と合唱するのはいただけない。日本政府もその自覚があるからか。「極めて遺憾であり、韓国側に再発防止を強く求めてまいります」との表明にとどめている。 こうした抑制的な姿勢が呼び水となったのか。韓国国防省の副報道官が同月24日「人道的な救助のために通常のオペレーションを行ったに過ぎず、日本側が脅威と感じるいかなる措置もなかった」と会見で述べ、「海自哨戒機が低空で韓国軍の駆逐艦に異常接近してきたので、光学カメラで監視したが、射撃管制レーダーからは電波を放射していない」と事実関係そのものを改めて否定した。だが上記の通り、この説明は通らない。 さすがに防衛省も痺(しび)れを切らしたのか。翌25日「本件について、昨日、韓国国防部が見解を発表していますが、防衛省としては、事実関係の一部に誤認があると考えています」との見解を公表した。 その中で「海自P1は(中略)当該駆逐艦から一定の高度と距離をとって飛行しており、当該駆逐艦の上空を低空で飛行した事実はありません」、「火器管制レーダー特有の電波を、一定時間継続して複数回照射されたことを確認」したと主張した。朝日新聞の報道によれば、照射は5分間も続いたという。ならば、なおさらのこと、韓国の主張は軍事技術的に成立しない。要するに、あり得ない。 防衛省は、海自機が計3つの周波数を用いて「韓国海軍艦艇、艦番号971(KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971)」と英語で計3回呼びかけ、レーダー照射の意図の確認を試みた経緯も公表した。米国のマティス国防長官(中央)、韓国の鄭景斗国防相(右)と握手する岩屋防衛相=2018年10月、シンガポール(共同) その前日、韓国は「通信状態が悪く、ともに救助活動をしていた韓国海洋警察(コリア・コースト)への呼びかけだと判断した」とも釈明した。だが、海自は「NAVAL SHIP」と3回も呼びかけたのだ。しかも「HULL NUMBER 971」と艦番号を付して…。それらを「コースト」と聞き間違えるはずがない。 「通信状態が悪く」云々(うんぬん)とも言い訳したが、「当日の天候はそう悪くなかった」(防衛大臣会見)。加えて、もし韓国の主張どおり海自機が低空で異常接近していたのなら、近距離ということにもなる。思い出される中国のウソ なら、なおさらのこと、彼らの耳には「KOREA SOUTH NAVAL SHIP, HULL NUMBER 971」とハッキリ聞こえたに違いない。そもそも海自機が接近したというなら、なぜ海自がそうしたように、国際緊急周波数帯などで呼びかけなかったのか。海自機からの呼びかけを無視したあげく、通告も警告もなく、相手に火気管制レーダーを一定時間継続して複数回照射するなど、決して許されない。 以上と同様の経過をたどった事案を思い出す。2013年1月、中国海軍艦艇による海自護衛艦などに対する火器管制レーダー照射が起きた。このときも中国(国防部と外交部)が、レーダー使用そのものを完全否定した。 レーダー照射が危険行為に相当し、国際慣習上も問題があるとの判断を軍指導部が下したからであろう(拙著『日本人が知らない安全保障学』)。その後、日中の主張は平行線をたどった。おそらく今回も、さすがにマズいとの判断を韓国政府が下したから、事実関係を否定しているのであろう。きっと中国同様、韓国も白々しく嘘を突き通す。 当時も今回も、照射を浴びた海自は現場から退避した。威嚇も、警告射撃も、火器管制レーダーを浴びせることもなく、退避した。そうした抑制姿勢が呼び水になったのか。その後も「事実に反する主張を中国はたびたび行った」(防衛白書)。だが、日本政府はそう白書に書くだけ。それ以上の行為には及ばない。そればかりか、中国との「協調」姿勢を示す。 2016年には、中国軍機が自衛隊機に火器管制レーダーを浴びせ、自衛隊機がフレア(おとり装置)を発出して、空域から離脱する一触即発の事案も起きた(拙著『日本の政治報道はなぜ「嘘八百」なのか』)。 このとき日本政府から「国際社会に与える影響も極めて大きく、個人的には遺憾だと思っている」と指弾されたのは、中国ではなく、事実関係をネット上で明かした元空将だった。日本政府はいまだに事実関係を認めていない。第2次安倍内閣発足から26日で6年を迎えるにあたり、報道陣の質問に答える安倍首相=2018年12月25日夜、首相官邸 以上すべてが安倍政権下で起きた。もちろん今回のことは韓国軍が悪い。だが、こうした事態を招いた責任の一端は日本政府にもあるのではないだろうか。もし、これまで同様の対応に終始するなら、きっといずれ、同様の事件が起こる。 中国や韓国に対して、いくら道理を説いても虚(むな)しい。残念ながら「紳士協定」を守るような相手でない。結局のところ「力」だけが彼らを動かす。■ 【徹底比較】韓国と北朝鮮の陸海空戦力はこんなにも違った!■ 韓国軍不祥事、今も韓国を支配する法より大義の儒教モラル■ ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

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    「レーダー照射していない」韓国が嘘の上塗りを続ける理由

    重村智計(東京通信大教授) 韓国海軍艦艇が自衛隊哨戒機にレーダーを照射した事件で、韓国政府は大揺れだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は面子を失った。大統領の許可なしのレーダー照射は、すなわち最高司令官の権威と指揮命令権の否定であり、韓国では「クーデター行為」と受け止められる。韓国国防省は「レーダー照射はしていない」と言い続けるしかないから、嘘の上塗りが続く。 日本人には理解できないだろうが、今回のレーダー照射は大統領の軍に対する統治能力が否定された極めて衝撃的な事態を招いた。平時に、海軍艦艇の兵士や将校、艦長、もしくは海軍首脳が「照射命令」を出したのであれば、事実上の「クーデター行為」と受け止められる。 事件が起きたのは、12月20日午後3時ごろ。石川県・能登半島沖で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した。防衛省が事件を発表したのは、丸1日経過した21日午後のことだった。 防衛省は、事件の重大さを考え、事実確認を何度も行った。発表された声明でも、韓国側に一定の配慮を見せた。韓国を追い詰めず、「謝罪」の機会を残したのである。 ところが、韓国側は防衛省発表まで、何もしなかった。自ら起こした事態を明らかにして謝罪すれば済んだ話を、自分で複雑にしたのである。その裏には、韓国軍の混乱と「士気の崩壊」がある。 韓国国防省は防衛省発表を受け、「正常な作戦活動中レーダーを運用したが、日本の哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と述べた。この発表で、国防省は明らかに「レーダーを運用した」と認めていたのに、同日の日本のテレビニュースは「韓国、レーダー照射を否定」と伝えた。明らかな誤報である。2018年12月、韓国海軍によるレーダー照射に関するに臨む岩屋毅防衛相(川口良介撮影) 歴代大統領は、軍のクーデターを最も警戒した。今や韓国社会が軍のクーデターを受け入れる時代ではないが、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が軍事クーデターで政権を奪取した記憶は、韓国民にとって忘れがたいものがある。 韓国軍の部隊はクーデター防止のため、ソウル方面への後方移動は禁止されている。また、師団以上の部隊移動には、隣接する全ての師団への通告が義務付けられている。各部隊には「保安担当」の政治将校が配置され、司令官と部隊将校らの動向に目を光らせている。辻褄合わぬ説明を続ける理由 韓国では、国防省や陸海空の軍参謀総長の要職に、有能で人望ある軍人は決して任命されない。有能でなくても、大統領に忠誠心があることが最大の抜擢条件になる。常に軍のクーデターを警戒しているからだ。 今回の事件を、韓国が「レーダー照射ではない」と嘘をつく理由がここにある。もし、照射を認めてしまえば、軍による事実上の「クーデター行為」を放置した事になるからだ。そうなれば、文大統領への忠誠心と指揮命令権が否定され、最高司令官としての責任が問われる。しかも、韓国軍の統制力のなさまで世界に知られてしまう。 日本の世論が、正直に認めて謝れば済む話と思っても、韓国の政治文化では認めるわけにはいかないのだ。軍最高司令官としての大統領の権威と面子は丸潰れで、誰も権力者を恐ろしいと思わなくなる。そうなれば、政権崩壊につながる。 だから、国防省がレーダー照射について「気象条件がよくなく、遭難した北朝鮮漁船を探すために全てのレーダーを稼働させた」と全く辻褄(つじつま)の合わない説明をすることになる。だが、この説明では誰も納得しないだろう。 だいたい、韓国海軍艦艇に北朝鮮の漁船救助の任務は与えられていない。北朝鮮からの公式の救助要請もないのに救助活動をしたら、海軍艦艇は事実上、北朝鮮軍の支配下にあることになってしまう。遭難漁船が何十人乗りの大型艇ならともかく、数人の小型漁船だ。ありえない。見え見えの嘘をついてはいけない。 日本でも韓国でも、漁船の救助は海上警備組織が行い、日本では海上保安庁、韓国は海洋警察庁の任務だ。当たり前だが、海軍艦艇の任務は防衛だ。北朝鮮艦船の侵入を防ぎ、工作船を摘発するのが仕事だ。11月1日に見つかった北海道寿都町の岩場に漂着した木造船。船体にはハングルの文字も書かれていた(小樽海上保安部提供) 北朝鮮政府が漁船の救助を韓国政府に要請していないのに、韓国海軍は自主的に北朝鮮漁船救助を任務にしているのだろうか。百歩譲って、北朝鮮の工作摘発や、北朝鮮タンカーによる石油の「瀬取り」取り締まりなら、まだ納得できる。だが、事件当時は「気象条件が良くなかった」(韓国国防省)というから、海上での瀬取りは不可能だ。 では、レーダー照射が艦長や艦隊司令官からの命令でないとすれば、いったい誰が命令したのか。一つの可能性として、文大統領側近による「親政クーデター意図」が浮上する。 文政権の支持率は50%を割り込んだ。政権支持率が40%台にまで落ちたら回復できないことは、韓国では常識だ。「1年後の2019年末にはさらに30%台まで落ち、文政権が崩壊する」との観測がソウルの政界でささやかれ始めている。韓国を逃げ切らせるな この支持率低下は、南北首脳会談と徴用工判決が政権浮揚に全くつながらなかった事実を教えている。国民は、文大統領と左派勢力の「反日・親北朝鮮政策」に、ソッポを向いているのだ。 この危機的な状況を回避するために、大統領周辺が日韓関係をさらに悪化させる「作戦」に出たのではないか。日本との軍事的な衝突を演出し、「不当な言いがかり」と反論した上で「日本の悪意」を宣伝すれば、世論が一致団結し、政権支持も回復すると考えたのだろうか。だとすれば、浅知恵としか言いようがない。 日本は、文政権を巡る韓国の政治状況を理解した上で対応すべきだ。事実確認と責任者の処罰を求める一方で、韓国民を刺激しない「政権と国民の分離戦略」を取るべきだ。つまり、事実確認と関係者の処罰、被害判定、再発防止を徹底して求めることが重要になる。 韓国が応じなければ、日米韓3カ国の軍による公平な共同調査を要求すべきだ。自衛隊のパイロットの命が危険にさらされたのだから、当然である。 韓国国防省は、マスコミを使い「P1哨戒機が韓国海軍艦艇に低空で異常接近した」と報道させ、「日本の対応は騒ぎすぎだ」と説明し、国民の「反日感情」を煽ろうとしている。自衛隊機は「異常接近していない」のだから、この説明も嘘だ。 日本としては、韓国に「あまり追いつめない」「適当にうやむやにしよう」との考えを抱かず、「遺憾の表明」で逃げ切らせてはならない。韓国語では、単に「残念だった」という意味にしかならないからだ。これでは、日本がまた甘く見られてしまう。「ごめんなさい」の意味になる「遺憾に思う」と表明させることが肝要だ。2018年12月、日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相(右)とソウルの大統領府で握手する韓国の文在寅大統領(共同) 前述の通り、レーダー照射は、韓国政権の威信を揺るがす大事件である。単なる兵士の「反乱」や「誤作動」ではなく、指揮命令権が否定されたのだ。韓国軍は政権が変わるたびに、保守派と左派が軍首脳や幹部の大幅入れ替えを行う「報復人事」が横行し、軍の士気も低下している。この韓国軍の崩壊現象が背景にはあるのだろうか。 金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の親北政権で、「北朝鮮は韓国軍の主敵ではない」との立場を明らかにしていたように、流れをくむ文政権でもこの政策を実行している。おかげで、今や韓国軍は「敵のいない軍隊」だ。このスタンスが米韓同盟を崩壊に向かわせている。共通の敵が存在しなければ、同盟は維持できない。米韓同盟と韓国軍の混迷は深い。■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 徴用工「衝撃の判決」に文在寅の意向はどこまで働いたか■ 米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

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    レーダー照射、韓国が日本に期待した「KY過ぎる甘え」

    ) 日韓両国の対立が新たな局面を見せている。目下の問題は、12月20日、能登半島沖の日本海で発生した韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊所属哨戒機に対するレーダー照射問題だ。 この文章を書いている12月27日夜の段階で、この問題の焦点は韓国海軍駆逐艦が自衛隊哨戒機に照射したのが、対空ミサイルの誘導と主砲の射撃管制を行う火器管制レーダー「STIR−180」だったのか、それとも空中、さらには水上のターゲットにも使用できる捕捉追尾用の三次元レーダー「MW-08」にすぎなかったのかになっている。 この問題を巡り、日韓両国が出している情報は明らかに相互に矛盾したものだ。その成否を判断するために必要な1次情報に触れ得る立場にない筆者にとって、現段階で日韓両国のどちらの主張が正しいのかを判断することは不可能であり、踏み込んで議論することは自重したい。しかしここで注目したいのは、この問題が日韓両国間に横たわる「海」を巡る、先立つ二つの事件の延長線上に存在することである。 そのうちの一つは、今年10月はじめに韓国の済州島で行われた国際観艦式における海上自衛隊旗、つまり、旭日旗の掲揚を巡る問題である。事件の経過は以下のようなものだった。 この韓国軍主催の国際観艦式は1998年、韓国海軍設立50周年を記念してはじめられたものであり、以後、10年ごとに行われてきたものだった。海上自衛隊はこの国際観艦式に1998年と2008年の過去2回全てに参加し、そこにおいては自衛隊旗である旭日旗の使用は問題にならなかった。 しかしながら、今年8月、一部の韓国メディアがこの国際観艦式に海上自衛隊艦艇が「旭日旗を掲揚して」参加することを報じた後、状況は急速に変わることとなる。背後には8月15日の日本植民地支配からの解放記念日である「光復節」を前にして、「旭日旗」を問題視しようとする動きがあり、結果、韓国ではこの「旭日旗を掲揚して」の海上自衛隊艦艇の参加を問題視する声が高まることとなる。韓国・済州島で開かれている観艦式の海上パレードに出席し、艦上で演説する韓国の文在寅大統領=2018年10月(聯合=共同) すると一転して、韓国海軍は自衛隊に対して「自国国旗と太極旗以外の使用」の「自粛」を要請することとなった。そして結局、海上自衛隊はこれを拒否、国際観艦式そのものへの参加を辞退することになる。 二つ目の事件は続く今年11月、現在焦点となっているレーダー照射問題と同じ日本海上で起こっている。すなわち11月20日、1998年の日韓新漁業協定で設定された「暫定水域」で操業中の日本漁船に対して、韓国海洋警察庁所属の警備艦が操業停止要求した事件である。 よく知られているようにこの「暫定水域」は、日韓両国の間に横たわる領土問題を巡る対立が両国漁業に与える影響を最小限にとどめるために、日韓両国の漁民が共に操業可能な水域として設定されたものである。当然、そこにおいて韓国の海上警察が一方的に日本漁船を排除できる権限は存在しない。「甘えん坊」韓国の思考 ましてや現在のように衛星利用測位システム(GPS)を用いて自らの所在位置を簡単に確認できる時代において、一国の海上警察がこのような「単純ミス」を犯すのはあまりにも異例である。 そしてここでも、問題はその後の経緯である。関係者によると、この事件の発生後、韓国側は「慣れない海域での警備のため、現場がルールを理解していなかった」として自らの誤りを認めると同時に、事件を公にしないことを日本側に求めたという。しかしながら、事件の内容を重大視する日本側はこれに応じず、日本政府は公式に韓国政府に抗議を行うことを選択した。 さて、それではこの日韓両国の間に横たわる「海」を巡る問題の展開に共通するのは何であろうか。それは各々の事件の「重さ」に対する考え方とその扱いにおいて、日韓両国で大きな開きが生じていることである。 すなわち、旭日旗掲揚問題においては、「日本が自粛に応じてくれる」と韓国が期待を寄せていたことは明らかであり、また、暫定水域での事件においても韓国は自らの一方的なミスであるにもかかわらず、日本の好意にすがる形でその非公開を要請した。 背景にあったのは、日韓関係を考慮して、日本が何らかの配慮を行ってくれるであろう、という韓国の一方的な期待であったが、それは日本によってあっさりと裏切られることになった。 そして同様の日本への一方的な期待は、今回のレーダー照射問題についても言うことができる。この事件の展開を通じて韓国から伝わってくるのは、「日本側はどうしてこのような『ささいな』事件を取り上げて、問題視するのか」という不満であり、また、「日本側がそのような行動をするのは、何かしら特別な政治的意図があるのではないか」という思いである。事実、韓国における報道や政府関係者の言葉には、このような観点から日本への不満をにじませるものが多くなっている。海上自衛隊のP1哨戒機 もちろん、このような韓国政府、あるいは日本に対する韓国の世論、さらには現在の日韓関係に対する「感覚」はわれわれからすれば異様に見える。なぜならとりわけ今年10月30日に韓国大法院が出した、いわゆる「徴用工問題」に関わる判決以降、日本における対韓国感情が悪化していることは明らかであり、それ故に、仮に韓国政府や世論が日本との関係に一定の意味を依然見いだしているなら、韓国はもっと日韓間の関係に対して慎重な配慮をすべきだからである。 だからこそ、われわれからすれば異様に見える、この韓国の対応の原因は明らかである。彼らは依然、日本が徴用工判決以降、どれほど日本国内における対韓国感情が悪化しているのかを、理屈ではともかく、実感として理解していないからである。 韓国の人々にわれわれの思いをいかにして伝え、現在の状況の深刻さを理解してもらうのか。まずはそこから始めるしかなさそうである。■漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか■米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

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    「トランプと文在寅はとんでもない大統領だ」と大前研一氏

     アメリカの中間選挙は、上院で共和党、下院で民主党が過半数を握る「ねじれ状態」になった。韓国では、国際常識では考えられない「元徴用工」への賠償を命じる判決が出されている。それら二つの国のドナルド・トランプ大統領と文在寅大統領について、経営コンサルタントの大前研一氏が、比較し解説する。* * * 9月下旬にニューヨークで開かれた北朝鮮に関する国連安全保障理事会閣僚級会合で、日本の河野太郎外相は、従来の議論を踏まえて、北朝鮮の核を含むすべての大量破壊兵器や弾道ミサイルの「完全で検証可能かつ不可逆的な廃棄(CVID)」の重要性を強く訴えた。 ところが、トランプ大統領はその直後の選挙集会で、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との関係について「恋に落ちた」「非常に気が合う」などと述べ、関係者を呆れさせた。 さらに韓国の文在寅大統領にいたっては、同じく9月下旬の国連総会の演説で、金委員長が非核化に向けて積極的に取り組んでいると評価し、あろうことか「今度は国際社会が北朝鮮の新たな決断と努力に前向きに応える番だ」と国連の制裁決議に反する主張を展開した。これに対し、日本の主要マスコミは通り一遍の報道で、この文大統領の演説の異常さを指摘したところは少なかった。 文在寅は、トランプとは別の意味で、とんでもない大統領だ。ソウルに無数のミサイルやロケット砲が向けられたままなのに、南北軍事境界線上の地雷や銃火器、監視所を撤去したことを“非武装化”と称して、いきなり南北統一に向かおうとしている。昨年まで核実験や弾道ミサイル実験を強行していた金委員長を「誠実で、経済発展のために核兵器を放棄すると私は信じている」と無防備に信用する発言もしている。 しかも、金委員長の祖父・金日成主席が抗日パルチザンの根拠地とし、父・金正日総書記が生まれた場所とされる「(偽りの)革命の聖地」白頭山まで行って「南側(韓国)の国民も、白頭山を観光で訪れることができる時代が来ると私は信じている」と述べたという。これは捏造された“金王朝”による独裁体制の正当性を認めたようなものであり、呆れてものが言えない。 金委員長が考えを改めたとか過去の経緯を謝罪したわけでもないのに、一方的に受け入れている。これでは、いわば“できちゃった婚”状態ではないか。 韓国人はよく「南北が一緒になれば、日本を超える」「統一朝鮮ができたら、日本人は困るでしょう?」と言う。 一般の日本人には韓国と競争しているという意識があまりないので困るも何もないのだが、結局、南北が一緒になった場合の“仮想敵国”がどこかといえば、中国やロシアのはずはないから、日本しかない。北東アジアで日韓が日本海を挟んで敵対することになる、という想定なのだろうか。 さらに、日韓関係の悪化に追い打ちをかける「徴用工問題」が起きた。韓国大法院(最高裁)が、新日鐵住金に韓国人の「元徴用工」4人に対する損害賠償の支払いなどを命じる判決を確定させたわけだが、この問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」されている。同協定に反する大法院の判決は前代未聞であり、まぎれもない国際法違反なのだ。 一方、この4人に関して調べてみると、当時の日本での給与が朝鮮半島の2倍近くあったために「官斡旋」という形で募集されていた案件に自ら応募してきたという。これは日本政府によって強制的に「徴用」されたとは言い難い、かなり本質的な前提条件の確認が必要なケースと思われる。星条旗(左)と太極旗(ゲッティイメージズ) 今の韓国大法院の金命洙長官を指名したのは文大統領だから、今回の判決に日本を“敵視”する文大統領の意思が働いたことは間違いないが、韓国は「国際法や国際条約を蔑ろにする国」だと自ら白日の下にさらしたようなものである。 トランプ大統領と文大統領の独善的な外交によって、日米韓の結束はバラバラになりつつある。米中対立の余波で日中関係が改善に向かうと見る向きもあるが、まだまだ中国の立ち位置は信用できるほどには安定していない。ここで日本は、あらためて自国の地政学的な位置を見つめ直し、新たな太平洋・極東アジアの外交および安全保障政策を根本から練り直すべきだろう。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 徴用工問題、もはや文在寅氏退任まで韓国と対話は無理か■ 米中間選挙にみる トランプ大統領の「予言の自己成就」■ 大前研一氏 「トランプ大統領なら横田空域の返還求めよ」■ 仏新大統領は民主党同様に税金バラ撒き始めると大前研一氏

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    高須院長 韓国民に同情「政府の不適切な教育の被害者だ」

    した。* * *──ここ最近は、徴用工問題をきっかけにまた日韓関係がかなり冷え込んでいます。さらに、韓国政府は慰安婦問題に関する日韓合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」の解散を正式に決定しました。高須:本当にどうしようもない。韓国政府は、日本が相手であれば国際的なルールも破棄していいと当たり前のように思っているんだな。ここまで筋を通さない政府があるなんて信じられない。──日本政府もそろそろ強い姿勢に出るべきだという声も増えていますね。高須:そりゃそうだよ。こんなに舐めたことをされ続けているんだから、日本政府はむしろどんな対抗策に出てもいいと思う。何らかの制裁を与えてもいい。これが他の国だったら、すぐに大変なことになっている。やっぱり日本政府は弱気なんだよね。この点については、もっと批判されなくてはならないと思う。安倍政権を批判して、なんなら韓国の言い分を理解するかのようなスタンスの野党の人々もいるけど、それはまったくの見当違いだよ。野党が批判すべきは、日本政府が韓国に対して強い態度をとっていないこと。「このまま韓国を放っておいたら、国益が損なわれるぞ! ちゃんとしろ安倍政権!」っていう意見を持たなければならないのが野党だよ。──それにしても、どうして韓国政府は国際的なルールを守らないということができるのでしょうか?高須:韓国の政権はいかに国民を味方にするかという点に注力するから、国民感情に沿った形で日本に対する外交をするからね。それに、反日的な政策をとっていれば、ある程度の韓国民からの支持が得られるという現実もあるだろう。手っ取り早く支持率を上げるには反日をやっていればいいということなのかもね。 でも、いまの韓国民の反日感情というものは、間違った知識を根拠とする部分も少なくない。それこそ慰安婦問題がどこまで真実なのかということもそうだし、まるで日本が韓国を攻めていったかのように思っている韓国民も多いみたいだしね。日本と韓国は併合したのであって、侵略したわけではないというのに。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) つまりは、韓国政府が反日教育をやっているから、いまの韓国の反日感情が生まれたということ。韓国民はある意味被害者だよ。不適切な教育によって作られた悲劇の人々だ。 もしも、日本が国際的なルールを簡単に破るような国だったら、ぼくは恥ずかしくて日本人でいることが嫌になってしまうかもしれない。韓国政府は自国民にそれくらいの辱めを与えているんだよ。でも、韓国民たちは、何よりもまず“反日”を優先して、そういった恥ずかしさに気づかない。そんな国民にしてしまった韓国政府は本当に罪深いと思う。もはや洗脳──国民の影響力が大きいと思われている韓国ですが、実は政府が国民をかなりコントロールしている、と。高須:そう。もはや洗脳だよ。韓国の人々が、早く真実に気づいてほしい。そういえば、国連の人権理事会で日本の「報道の自由」が狭まっていると指摘されていたみたいだけど、まったくナンセンスだよ。日本ほど自由な報道が許されている国はない。政権批判だって当たり前だしね。それをいうなら、韓国のほうがよっぽど深刻だ。韓国では親日的な報道なんてできないんだもん。そこに自由はない。 それに韓国の有名人が親日発言をするとそれだけで批判されるというじゃないか。言論の自由すらないんじゃないかと思えてくる。日本文化も全面解禁になったといわれているけど、果たして韓国のテレビで日本の音楽が普通に流れているかというと、決してそういうわけではないらしいしね。全然自由が与えられていない韓国の人々が気の毒に思えてくるよ。──そんな韓国に対して日本はどうするべきなのでしょうか。高須:結局、厳しい態度をとるしかない。やっぱり日本は優しい国だから、なかなか韓国を切り捨てることができないでいるのは事実。無理やり切り捨てることはないけど、間違ったことに対してはちゃんと間違っていると言い続けることも必要だ。徴用工問題や慰安婦問題は解決済みであるという立場は崩さず、きっちりと対抗していくしかないだろうね。* * * 韓国における“国民の不自由”を指摘した高須院長。日本としては、韓国は特殊な国であることをしっかり認識したうえで、韓国のわがままに付き合わず、毅然とした態度で対峙することが重要なのかもしれない。【プロフィール】高須克弥(たかすかつや):1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。脂肪吸引手術をはじめ、世界の最新美容外科技術を日本に数多く紹介。昭和大学医学部客員教授。医療法人社団福祉会高須病院理事長。高須クリニック院長。脂肪吸引やプチ整形など、日本に「美容整形」を広めた第一人者。人脈は芸能界、財界、政界と多岐にわたり幅広。金色有功章、紺綬褒章を受章。著書に『ブスの壁』(新潮社、西原理恵子氏との共著)、『その健康法では「早死に」する!』(扶桑社)、『筋と義理を通せば人生はうまくいく』(宝島社)、『行ったり来たり 僕の札束』(小学館)、『ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて』(小学館)、『炎上上等』(扶桑社新書)、『かっちゃんねる Yes! 高須 降臨!』(悟空出版)など。最新刊は『大炎上』(扶桑社新書)。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 高須院長 金正恩評価する声に疑問「それこそ歴史修正主義」■ 韓国が封印する不都合な史実「自国青年1700人を強制労働」■ 高須院長がマスコミに注文「先に反日ですと宣言して」■ 高須院長「反安倍かどうか」で動くことがいちばん危険

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    崖っぷちの金正恩、万策尽きた文在寅「南北首脳の叫び」

    道が閉ざされる」との談話を出した。 これらの発言は、事態が好転しないことへの痛々しい悲鳴だ。一方で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の支持率も40%台に突入し、なおも下降を続けている。 今、北朝鮮の指導部で何かかが起きている。ここ数カ月、日米韓の情報機関は2人の高官の動静を注目していた。1人は、統一戦線部長を兼ねる金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長。米朝交渉の責任者だが、2カ月以上姿を見せなかった。米国のポンペオ国務長官は交渉相手の「金英哲」と連絡がつかない、と更迭の可能性に言及していた。 もう1人は、朴光浩(パク・クァンホ)党副委員長だ。金委員長の妹の与正(ヨジョン)女史の側近とされ、大出世した。さらには、党の宣伝扇動部長を兼ね「実力者」と言われていた。それが、金総書記「七回忌」の写真に姿が見られなかった。 朝鮮中央通信は12月17日、幹部を従えた金委員長が父親の遺体が安置される錦繍山(クムスサン)太陽宮殿に参拝する写真を公開した。早速、各国の情報機関はこの写真を徹底して分析した。2018年12月17日、錦繡山太陽宮殿を訪れた金正恩朝鮮労働党委員長(奥の前列左から6人目)ら=平壌(朝鮮通信=共同) ところが、金副委員長の名前と顔は確認されたが、朴副委員長の名前と顔は発見できなかった。朴副委員長は12月10日に、北朝鮮の人権侵害や言論封殺に関与したとして、米国の制裁対象に指定されたばかりだった。核実験再開「脅し」のウラ この事実を踏まえ、金委員長の言葉や北朝鮮外務省研究所の声明を読み解くと、金委員長の苦境と「叫び」が理解できる。 金委員長は、金総書記「七回忌」に「党は7年間、将軍の思想と路線を固守し、遺訓を貫徹するために闘争してきた」と述べた。だが、この指摘は事実ではない。父親が掲げた「先軍政治」を「使命を果たし、勝利した」との理由で廃止したからだ。 その代わり、「核開発と経済建設」の「並進路線」を宣言した。軍部を納得させるために「核開発」のスローガンは降ろせなかったのである。ところが、昨年末には「核武力完成」を理由に並進路線をやめ、「経済優先」に変更した。確かに、北朝鮮が直面する「経済停滞」を打開するには正しい政策転換だが、軍部エリートの反発は強い。 その反発を意識して「金正日総書記の指示通り実行してきた」と強調し、自身の責任を回避しようとする意図がありありだ。つまり、経済開発がうまくいっていない現実を雄弁に物語っているのだ。 昨年11月末、北朝鮮は「核武力を完成させた」と宣言し、核とミサイルの実験中止を宣言した。これを受け、米国のトランプ大統領は米朝首脳会談に応じた。ところが、北朝鮮への制裁は全く緩和されず、経済も停滞したままだ。この状況に、軍エリートの間では「実験中止は早すぎた」との批判の声が聞かれるという。 そのような中で、北朝鮮外務省の米国研究所は12月16日に「制裁圧迫と人権騒動で核を放棄させられると計算したのなら、大きな間違いだ。非核化への道が永遠に閉ざされる」との声明で、核実験を再開すると「脅し」をかけた。この声明は「北朝鮮軍部の批判」を意識したもので、軍をなだめるためのものだ。2018年12月17日、北朝鮮の金正日総書記死去から7年を迎え、平壌の同氏の銅像(右)が立つ「万寿台の丘」を訪れた市民ら(共同) 北朝鮮が、米国を刺激しないように神経を使っている様子がよくわかる。もし、外務省が自ら声明を出せば、米国が反発する。それを避けるために「米国研究所政策研究室長」という低いクラスの肩書を使った。だいたい「米国研究所」が実在するかどうかも疑わしい。看板だけの存在だろう。 北朝鮮経済は、韓国の経済学者によると「17年の経済はマイナス5%成長で、18年もマイナス成長」という。経済は良くなっていない。米国の経済制裁が効果を上げているのである。金正恩「ソウル訪問」の実現度 それに加え、日米中露との外交関係も打開できていない。平壌では、金委員長が18年10月にロシアを訪問して朝露首脳会談を行い、中国の習近平主席の北朝鮮年内訪問で中朝首脳会談が実現し、その後に米朝首脳会談だとの見通しが語られていた。ところが、三つの首脳会談は全て実現しなかった。どの首脳も金委員長を相手にしてくれないのだ。 トランプ大統領は、既に北朝鮮への関心を無くしている。2019年、米国の関心は一気に次期大統領選挙へと向かう。非核化に応じない北朝鮮を相手にする余裕はない。 一方、韓国では年末に入って「金委員長の韓国訪問」の噂が意図的に流された。支持率低下が止まらない文陣営が、支持率アップを狙った「世論操作」だろう。韓国の歴代政権で、50%以下の支持率に低下した後に回復した例はない。1年後の2019年末には30%台まで落ち込むと、ソウルの政界ではもっぱらの噂だ。 文大統領は、金委員長の訪韓に期待をかけているようだが、来るわけがない。訪韓のためには、南北鉄道の開通や開城(ケソン)工業団地の再開など、国連の経済制裁解除や緩和が必要だが、米国は決して認めないだろう。 また、仮に訪韓が発表されても、韓国内で大反対運動が起こり、金委員長の写真や北朝鮮国旗が焼かれるのは避けられない。金日成(キム・イルソン)主席や金総書記の写真も踏みつけられるだろう。そうなれば、金委員長の訪韓は中止される。北朝鮮国内でも、側近が「訪韓すれば暗殺されます」と忠義顔をして反対する。 文大統領が期待する支持率回復の夢は幻でしかない。2019年からは与党や左翼勢力の中で、次期大統領候補を巡る政争がさらに激化するからだ。2018年9月、白頭山(ペクトゥサン)のカルデラ湖「天池」で、つないだ手を上げる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(中央左)と韓国の文在寅大統領(同右、平壌写真共同取材団) 既にソウルの政界では、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長のスキャンダルの噂や逮捕の見通しが語られている。次の大統領を狙う任鍾晳(イム・ジョンソク)大統領秘書室長と朴市長の対立はソウルでは常識だ。 2019年の韓国では、左翼政権内の政争やスキャンダルが噴出し、文政権の支持率も低下、左翼政権への失望が高まるだろう。南北朝鮮ともに激動の年になるのは間違いない。■ 「同情するならカネをくれ」金正恩がプーチンを見限った理由■ 漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク■ 習近平先生の怒りを買った「悪ガキ」金正恩の大チョンボ

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    「マイナス30度」に達した日韓関係はどこまで冷え込むか

    降、近時だけでも日韓慰安婦合意の「骨抜き」の動きや、新日鉄住金(旧新日本製鉄)の戦時労働者訴訟に係る韓国大法院判決に表れたように、日韓関係にはネガティブな材料だけが次々と積み重なっている。 ゆえに、今後、どのような悪しき材料が日韓関係に絡んで噴出したとしても、それは、もはや大仰に反応するに値しない。それは、現下に零下30度に達している日韓関係の「温度」を、零下40度や零下50度に下げるほどの意味しかないのであろう。近々、韓国大法院が三菱重工の戦時労働者訴訟に絡んで下す判決は、新日鉄住金訴訟と同じ類いのものになるとされているけれども、それもまた、厳寒期に入った日韓関係の「温度」低下を示す材料でしかない。 目下、米中両国を軸にした「第2次冷戦」が始まろうとしているという観測は、既に国際政治観察に際しての「共通認識」になっている。 10月上旬、米国のマイク・ペンス副大統領がワシントンのハドソン研究所で披露した対中政策包括演説の意義は、それが米国政治の「異形の存在」としてのドナルド・トランプ大統領ではなく、彼よりは米国政治の「主流」や「体制派」の立場に近いペンス氏の口から発せられたことにある。ペンス氏の「ハドソン」演説は、現下の米国における最大公約数的な対中認識を反映したものであるといえる。 そうであるならば、日韓関係もまた、米中「第2次冷戦」の相の下に語られなければならない。米中「第2次冷戦」の局面では、東南アジア・南シナ海と並んで朝鮮半島・東シナ海が、その「激突の場」になるというのは、あえて語るまでもない。2018年11月、APEC首脳会議に出席したペンス米副大統領(奥)と習近平・中国国家主席(ロイター=共同) 1980年代末期までの「第1次冷戦」局面では、韓国が日米両国にとって「こちら側」にあるのは、自明であったけれども、「第2次冷戦」局面ではどうなのか。「第1次冷戦」局面でも「第2次冷戦」局面でも、日本が対韓関係に寄せる国益の本質は、「韓国は、中露両国や北朝鮮のような大陸勢力に対する『防波堤』の役割に徹する気があるか」ということでしかない。 それは、米国の極東戦略の必要に合致するものでもある。 ちなみに、シンガポールのリー・シェンロン首相は、11月中旬、パプアニューギニア・ポートモレスビーで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に先立つ東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国会合閉幕直後、次のように語った。切迫性なき文氏の対外姿勢 「東南アジア諸国は、そういう事態にはすぐにならないことを望むけれども、米中確執が深まっていけば、米中のいずれかを選ばなければならなくなる」 シンガポール単独としてならばともかくとして、東南アジア諸国が総体として、米中両国のいずれかを選ぶようなことができるのかは、定かではない。ただし、そこには、米中確執の狭間に置かれかねないシンガポールや他の東南アジア諸国の現状を前にして、リー氏が抱いた切迫意識が浮かび上がる。 翻(ひるがえ)って、文氏の対外姿勢からは、リー氏が抱いているような切迫性を嗅ぎ取るのは難しい。そうした文氏における切迫意識の欠如こそが、彼の対日「尊大・軽視」姿勢にも反映されているのであろう。 日本経済新聞(電子版、11月22日配信)は、韓国大法院判決に対する米国の反応を報じた記事の中で、「米政府では最近、韓国による南北協力の傾斜に警戒感が高まっていた。韓国が米国と十分な相談もなく、南北境界線の上空を飛行禁止区域に設定したことには米が不満を伝えている。きしみつつあった米韓協調に新たな火種が加わった格好だ」と伝えている。 この記事は、対日関係を顧みない文氏の姿勢が米韓関係の軋(きし)みも増幅しているという認識が米国政府部内に広がっていることを示唆している。文氏は、そうした米国政府部内の懸念の意味を適宜、理解しているであろうか。前に触れた文氏における切迫意識の欠如は、そのことを指してのものである。 そもそも、1980年代末期以降、韓国が享受した「民主主義体制」「経済発展」「『安全保障は米国、経済は中国』を趣旨とする外交の自在性」の3点セットは、過去30年の「冷戦間期」の国際環境の所産であった。韓国の対日姿勢は、それがポジティブなものであれネガティブなものであれ、そうした3点セットを反映したものであった。2018年10月、韓国・済州島で行われた国際観艦式で掲揚された李舜臣将軍を象徴する旗。手前は韓国の文在寅大統領(聯合=共同) しかし、「冷戦間期」が終わり、この韓国繁栄の3点セットを支えた条件が揺らぎつつある今、韓国は近時には際立っている対日「尊大・軽視」姿勢を含めて、従来の対外姿勢を続けていられるのであろうか。文氏の対外姿勢には、「冷戦間期」の惰性が強く反映されているのではないか。 今後、日本の対韓姿勢を語るに際しては、こうした韓国の対外姿勢の観察や評価が全てに優先される。韓国の対日姿勢の一々に正面から反応するのは、当節、もはや大して意味のないことであろう。

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    漂流する日韓関係 「ニッポン軽視」文在寅が抱えた政治リスク

    木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授) 韓国最高裁による徴用工判決や、慰安婦問題における「和解・癒やし財団」の解散など、相次いで韓国から報じられる動きに日韓関係は大きく揺らいでいるが、その背景には一体何があるのだろうか。 こうした韓国の動きについて、「文在寅(ムン・ジェイン)左派政権が日本への攻勢を強めているのだ」という議論がある。これは、韓国では大統領が裁判所に対しても強い影響力を有しているという理解に基づいており、文在寅政権による組織的な動きの結果だとされている。 とはいえ、このような見方はいささか単純に過ぎる。例えば、10月30日に出された元徴用工らに対する最高裁の判決は、6年以上も前の2012年5月、同じ最高裁が下級審の判決を差し戻し、再び上告されてきたものである。 どこの国においても、最高裁が自ら差し戻し、下級審がその最高裁の差し戻し判決の趣旨に従って出し直した判決を、最高裁がもう一度覆すことは考えにくい。事実、今回の判決の趣旨は基本的に2012年の差し戻し判決に沿ったもので、その論旨が新しいわけではない。 そもそも、この判決に対し、1965年の日韓請求権協定によって個人的請求権が消滅した、とする少数意見を出した2人の判事のうち1人は、文在寅が自らの大統領就任後最初に最高裁判事に任命した人物だ。逆に保守政権であった李明博(イ・ミョンバク)や朴槿恵(パク・クネ)が任命した判事は、1人を除いて、判決を支持している。 文在寅に近い左派が「反日判決」を支持し、これに対抗する右派がこれに反対する、というほど韓国の状況は単純なものではない。当然、文在寅政権が意図的に「反日政策」を仕掛けているなら、こんな状況になるはずがない。APEC首脳会議の関連会合に臨む安倍首相(左)と韓国の文在寅大統領=2018年11月17日、パプアニューギニア(代表撮影・共同) 重要なことは、徴用工判決から慰安婦関係の財団解散に至るまでの過程は、日本において考えられているほど韓国で注目されているわけではないということだ。 実際、韓国内の雰囲気は「どうして日本はこの判決でこんなに怒っているのだ」という声が多く聞かれる状況である。これはよく誤解されているが、今日の韓国では日本に対する政策のあり方で、大統領の支持率が上下することはほとんどない。韓国で何が起こっているのか 今年1月の慰安婦合意にかかわる見直しの発表時も、徴用工裁判の時も、また慰安婦関係の財団解散の際にも、文在寅の支持率はほとんど動いていない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権期や李明博政権期のように、領土問題などの対日政策のあり方で大統領の支持率が大きく上下する状況は、今の韓国には存在しない。 そしてそのことは、文在寅をはじめとする韓国の今日の政治家にとって、対日強硬政策を取り関係を悪化させることで得られる利益がほとんどないことを意味している。 文在寅政権の支持率の推移をみれば、徴用工判決のインパクトがほとんどないのに対して、税金引き下げの影響の方がはるかに大きいことが分かる。 要するに、文在寅政権が一連の事態を意図的に仕掛けているわけではないことは、彼ら自身の対応からも明らかだ。そもそも徴用工判決が出て1カ月近く経つが、文在寅自らこの問題について公の場で一切触れていない。 これは文在寅政権がこの事態への対処の方向を決めかねていることを示している。とはいえ、それはそれで不思議なことだ。なぜなら、先に述べたような事情から、徴用工裁判においては、いったん判決が出ればその内容が日韓関係に大きな打撃を与えるであろうことは容易に予想できたからである。徴用工裁判前後の文在寅支持率推移(出典:Realmeter) 慰安婦関連の財団の解散も同様だ。仮に徴用工判決への対処として何らかの政治的妥協を日本との間で模索するなら、先に締結した慰安婦合意を無にするかのような行動を行うのはマイナスにしかならない。 加えて11月5日には、韓国外交部はわざわざ「慰安婦合意には法的効力がない」という公式解釈まで示している。先に結んだ国際的合意の法的効力を一方的に否定する相手と、歴史認識にかかわる重要な合意を新たに結ぶことは難しい。これだけ見ると韓国政府はわざわざ日本との妥協の道を閉ざしているようにしか見えない。 結局、韓国では何が起こっているのか。その答えは彼らには確固たる対日政策がなく、政権内での十分な調整もされていない、ということである。韓国「日本は重要じゃない」 北朝鮮との協議に総力を注ぎ、そのためのワシントンの動きに一喜一憂する今の韓国政府にとって、日本はさして重要な存在には映っていない。だからこそ大統領も国務総理も、また外相も、今後の日韓関係をどうするのかについて具体的なアイデアを有していない。 そして、それは彼らが重視する北朝鮮問題との関連についてすらそうである。韓国政府は現在の北朝鮮を巡る動きにおいて、日本に特段の役割を求めておらず、だからこそ、いかなる具体的な提案をも伝えてこない。 彼らが日本に当面望んでいるのは、日本が彼らの北朝鮮政策の邪魔をしないことであり、それは日本が何もしてくれなければそれでよいことを意味している。 韓国側が自衛艦に旭日旗の掲揚自粛を求めた問題が勃発した直後、文在寅が年内の訪日を早々に断念して見せたように、今の韓国は日本をさほど重視しておらず、大統領もそのリスクを取ろうとはしない。だからこそ、事態は司法部や行政部の各部署がばらばらに動くことにより、ますます悪化する。 旭日旗問題にせよ、慰安婦問題にせよ、徴用工問題にせよ、例えば教科書の記述に見られるように、韓国では「国の建前として」、日本に対して批判的な意見が主流である。ゆえに、誰かが日韓関係を考慮して統制しなければ、悪化させる方向へとしか動かない。 そして、それは「政権が世論を配慮して行っている」というようなものですらない。誰もが何も考えずに状況に流された結果として、次から次へと新しい既成事実が作り上げられ、そのことに後から気づいた韓国政府は事後的な対処に追われることになる。韓国の文在寅大統領(右)と抱擁する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2018年4月27日、板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団撮影) しかしながら、そこにグランドデザイン(長期的な計画)はなく、現れる施策は弥縫(びほう)的なものになる。日本の重要性が低下した状況の中、動きは遅く、誰も事態の責任を取ろうとはしない。 このため、ますます文在寅の訪日は遅れ、日韓関係は悪化していくことになる。仮に事態が政権の統制により動いているなら、政権を動かしさえすれば関係は改善するだろう。しかし、問題は事態を誰も統制しておらず、統制するための真剣な努力もなされていないことである。しばらくは韓国の対日政策は漂流を続けることになりそうである。(敬称略)

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    元徴用工裁判、日韓「解釈の違い」をどう埋めるべきか

    はこんなひどい仕打ちができるのか」という嘆きでした。 2人は「大阪工場で2年間働けば技術が習得でき、韓国に戻って技術者として就職できる」という募集広告に応じて大阪に連れて来られました。ところが、大阪では鉄格子のはまった寮に収監され、自由も与えらない状況だったといいます。このとき初めて「だまされた」と思ったそうです。 「賃金を全額支給すれば浪費する」という理由で月2、3円程度の小遣いを支給されただけで残りは強制的に貯金させられました。そして十分な食事も与えられないまま技術習得とはほど遠い過酷な労働に従事させられました。警察官がしばしば立ち寄ることもあり、「逃げてもすぐに捕まえられる」と言って彼らを監視していたといいます。朝鮮半島でも徴兵制が実施されることになり、申千洙さんは徴兵検査を受け、その後徴兵が決まったために寮から逃げようとしたところ、舎監による凄まじいリンチを受けて後遺症が残ったといいます。 そして1944年、彼らは突然「君たちは徴用された」「お前たちの体はもはやお前たちのものではなく自由はない」と言われました。日鉄は軍需工場の指定を受けたので、そこで働く従業員は募集で来た朝鮮人労働者も含めて全員「現地徴用」されたのです。2018年10月30日、判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。前列中央は原告の李春植さん(著者撮影) 2人が求めた「代価」には、あまりの苦しさから逃げ出した時に受けたリンチの痛みや、「当時のお金で牛6頭が買えた。あのお金が貰えていれば私の人生は変わっていた」という言葉に込められた思いが詰まっています。日本での強制労働の記憶が、彼らの心の傷(トラウマ)となって人生を送ったことを私たちは忘れてはならないと思います。盧武鉉政権の政策 その後、2人以外に日鉄の八幡製鉄所や釜石製鉄所で強制労働させられた被害者が183人(うち生存者48人)いたことが判明し、彼ら全員の救済を求めて日鉄と交渉も続けましたが、2003年に日本の最高裁が請求を棄却したため、会社側との交渉も途絶えてしまいました。納得できない被害者側は、全員が一斉に提訴すると審理に膨大な時間がかかるため2005年に5人の被害者に絞ってソウルの裁判所に訴えを起こしました。 その間、2002年に誕生した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、日本の植民地支配や朝鮮戦争での民間人虐殺、独裁政権下での弾圧事件など過去の政権によって行われた不正をただし、損害を受けた人たちの人権回復の取り組みを進めることで、より良い韓国社会を目指そうという政策を推し進めていました。 そのような流れの中で日韓条約に関する公文書が公開され、日韓両政府が植民地支配責任の問題を曖昧にしたまま条約を締結したことが暴露されました。また、条約締結後の韓国政府の被害者への施策についても不十分であったことが明らかとなりました。これを機に韓国政府は日本に強制動員されて亡くなった被害者一人当たり2000万ウォンの支給や生存者への医療援助などの施策を実施しました。 日韓条約・請求権協定は締結まで14年もかかりました。日本が過去の植民地支配は合法であったと主張したのに対し、1910年以降の植民地支配は違法であったと主張する韓国と根本的な対立があったからです。最終的に「もはや」無効であるという文言でどちらにも解釈できるよう政治決着し、ようやく締結にこぎつけたのです。 このため「有償・無償5億ドル」についても、日本政府は「独立祝い金」=経済援助であり、植民地支配への賠償ではないと明言しています。そして、無償援助の3億ドルですが、実際は当時の韓国政府が日本に負っていた「借金」4573万ドル分を差し引いた金額が援助されています。また、有償援助と合わせた5億ドルも一括して渡されたのではありません。請求権協定の条文に書かれている通り、10年間の年賦で支払われました。 しかもこれは「現金」ではなく、日本製の工業製品や建設資材などの現物支給によるものでした。つまり、日本政府が日本企業から製品を買い上げたり「役務」を韓国に提供することによって、両国の経済発展に貢献したのです。それ以外にもさまざまな借款・供与がなされました。韓国はこれらの援助も活用して「漢江の奇跡」と呼ばれた経済発展を遂げ、日本企業も利益を得て「高度経済成長」を支えることにもなりました。2018年10月30日、日本企業に賠償を命じた判決が確定し、記者会見する原告の李春植さん(中央)と支援者ら(著者撮影) 現在、日韓の経済関係は貿易総額7・74兆円(2016年)、投資残高で言えば日本から韓国への投資3兆7695億円(2015年)、韓国から日本へは3843億円の残高があります。16年には韓国からの来日者数が500万人を突破するなど、インバウンド(訪日外国人)効果をみればおよそ3億ドル(現在のレートなら330億円余り)を韓国から返してもらった計算になります。もし、日本が韓国と「国交断絶」すれば、日本経済への打撃は計り知れないものがあります。どこにも国際法違反はない 2012年5月、韓国大法院は「1965年の日韓請求権協定は一般的な財産権処理の協定であり、植民地支配下の強制労働は韓国の憲法に違反し無効」「日本の国家権力が関与した反人道的不法行為や、植民地支配に直結した不法行為による損害賠償請求権が、請求権協定の適用対象に含まれたと見るのは難しい」として、同じく三菱重工を訴えた事件と合わせて審理を高裁に差し戻しました。 この時も日本政府は請求権協定ですべて解決済みであるとして、判決を非難しました。この判決に基づいて2013年7月の差し戻し審で被害者一人当たり1億ウォンの損害賠償が認められると、これを不服として新日鐵住金が上告したため、再び大法院で審理される運びとなり、今回の判決を迎えました。 個人請求権が条約などによって消滅するかについて、原爆訴訟やシベリア抑留訴訟で日本人被害者から訴えられた日本政府は「消滅したのは外交保護権で個人請求権は消滅していないので、アメリカやソ連を相手に訴えればよい」と主張したのです。その手前、日韓請求権協定によって韓国人の個人請求権が消滅したとは言えず、個人請求権の存在を認めています。 今回の判決は、日本政府も認めている個人請求権を韓国人が行使して日本企業を相手に韓国の民事訴訟で判決が確定したということです。どこにも国際法違反はありません。あるのは「請求権」の解釈の問題です。 日本政府は請求権協定の第2条3項で「いかなる主張もすることができないものとする」という条文を盾に「全て」の請求権が消滅したと主張していますが、請求権協定第3条には協定の解釈や実施に当たって紛争が生じた場合は、まず外交交渉で解決を目指し、それで解決しなければ仲裁委員会を設置するとあります。韓国の司法から請求権の解釈について「疑義」が提起されたのですから、行政府としての韓国政府は三権分立の原則から司法判断を尊重して日本政府と外交交渉を始めるべきです。 また、日本政府もICJ(国際司法裁判所)への提訴ではなく、まず外交交渉による解決を目指し、まとまらなければ協定に定められた仲裁委員会を設置して解決するのがまさに「国際法」に基づく解決方法ではないでしょうか。2018年11月、遺影を手に新日鉄住金本社を訪れる原告の弁護士ら(著者撮影) 日本で2人の元徴用工が裁判に訴えてから21年が経ってしまいました。差戻審直後の2013年12月に呂運澤さん、翌年2014年10月に申千洙さん、今回の大法院の判決直前に金圭洙(キム・ギュス)さんの3人が相次いで亡くなり、今回判決を迎えることができた原告は李春植(イ・チュンシク)さん一人でした。 6年前の大法院判決のときに、今回の判決は予測できたはずです。韓国政府はすでに2005年時点で被害者への追加の支援策を行いました。日本政府も遅くとも2012年の大法院判決のときにこれに応えて植民地支配に対する責任をきっちり果たすべきであったと思います。被害者に残された時間は少ない そもそも新日鐵住金は、被害者の要求には応じなかったものの、訴えられた当初は彼らが同社を訪問した際には社内に招いて話に耳を傾けていました。しかし、2003年の日本の最高裁による請求棄却の前後から、同社は高齢の被害者を社内にも入れず門前払いを続けました。会社の前で彼らを3時間も立たせる同社に対し「せめて座る椅子でもお願いできないか」という支援者のお願いさえも耳を貸しませんでした。その態度は、今回の韓国大法院の判決を受けても変わっていません。 判決直後の11月12日に原告代理人の弁護士が「損害賠償義務の履行方法」「賠償金の伝達式を含む被害者の権利回復のための後続措置」について話し合いたいと要請書を持参しました。 しかし、社員は一切顔を見せることなく面会を拒否し、要請書についても「預かる」とガードマンを通じて回答するだけで、要請書を受け取るのかどうかの意思すら確認することができず、仕方なく弁護士も引き上げざるを得ませんでした。新日鐵住金は「各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行います」という企業行動規範を掲げていますが、韓国の法律や判決には従わないということなのでしょうか。日本を代表するグローバル企業として恥ずかしいことだと思います。 今、私たちが忘れてはならないのは、彼らは日本の侵略戦争・植民地支配の犠牲者であるということです。何百万人もの日本人を兵士として戦争に借り出したことから、極端な労働力不足に陥った日本がその労働力を補うために「募集」にしろ「官斡旋」にしろ「徴用」にしろ、手段は別として意に反した「過酷な労働=強制労働」をさせたのです。 これは、最近の研究で明らかになった80万人とも推定される人たちを朝鮮半島から無理やり連れて来た、という動かし難い歴史的事実です。韓国は「ゴールポスト」を動かすので信用できないという人もいますが、歴史的事実は動かせません。2018年11月、新日鉄住金本社を訪れ、取材に応じる原告側の弁護士ら(著者撮影) 2000年に三菱重工の広島工場で被爆した元徴用工が釜山の裁判所に訴えた裁判の大法院判決が11月29日に出されます。この裁判の原告らはすでに全員が亡くなっています。もう被害者に残された時間はありません。 被害者の声に耳を傾けて納得できる解決を日本と韓国の両政府、そして強制連行・強制労働にかかわった企業が一緒になって図ることが、本当の意味で未来志向の日韓関係を築いていくことになるのではないでしょうか。53年前に結ばれた条約に不十分なところがあったのであれば、それを正すのが現在に生きる私たちの責任でもあるのです。

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    朝鮮半島の戦時労働が「人権問題に化ける」韓国のカラクリ

    西岡力(麗澤大学客員教授、モラロジー研究所教授) 韓国裁判所で現在係争中の朝鮮人政治労働者に関する裁判は、10月末の新日鉄住金確定判決裁判を含めて15件あり、被告企業は合計71社以上、原告は合計945人だ。1人あたり1億ウォンとすると945億ウォン(約100億円)となる。15件のうち7割を占める11件は、3社を相手にしたもの。すなわち三菱重工5件、新日鉄住金3件、不二越3件だ。 3社は日本に支援組織があり、まず日本で裁判が起こされて敗訴し、その後日本の支援組織の援助を受け、韓国で裁判が起こされたという共通の特徴がある。新日鉄住金裁判支援組織は「日本製鉄元徴用工裁判を支援する会」だ。今回勝訴した原告らが日本の裁判で敗訴したとき、韓国で訴訟をするように励まし、支援したと伝えられている。 三菱重工裁判の支援組織は少なくとも2つある(長崎に三つ目があるという情報があるが未確認)。1つ目が元工員を支援する「三菱広島元徴用工被爆者裁判を支援する会」で1995年に広島地裁に提訴した時から支援を継続している。2つ目が元女子挺身隊を支援する「名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会」で、やはり99年に名古屋地裁に提訴したときから支援している。 不二越裁判の支援組織は「第二次不二越強制連行・強制労働訴訟を支援する北陸連絡会」で、1992年に富山地裁に裁判を起こしたときから活動している。92年提訴の1次訴訟は、2000年7月に最高裁で和解が成立して、原告3人、元同僚5人、「太平洋戦争犠牲者遺族会」に合計3千数百万円の解決金が支払われている。その後、日本で2次訴訟を起こし、韓国でも訴訟を提起した。 これらの支援組織は左派系労組や学者、宗教人などが主体で現在に至るまで毎年、当該企業の株主総会に出席し、年に数回、企業を抗議訪問している。元徴用工訴訟の判決を言い渡すため韓国最高裁の法廷に入る裁判官ら= 2018年10月 30日 (ロイター)   この3社を相手にする裁判に先駆けて91年12月、日本政府を相手にした「アジア太平洋犠牲者訴訟」が東京地裁に提起される。高木健一弁護士らが支援し、元慰安婦も原告として参加したため大きく報じられた。2004年に最高裁で敗訴したが、こちらは日本政府が被告だった関係で韓国での裁判は提起されていない。韓国の「日本統治不法論」 3社を相手にする11件以外の4件のうち日立造船を1人の原告が訴えたもの以外の3件は、62人(当初は252人だったが62人以外は取り下げとみなされた)、667人、88人という多数の原告がそれぞれ3社、70社、18社をまとめて訴えているところに特徴がある。 2015年に最高裁が新日鉄住金の先行裁判に対して原告敗訴の高裁判決を棄却して高裁に差し戻す判決を下した後、勝訴の可能性を見た韓国内の弁護士や運動家の勧めで多数の原告が慌てて起こしたという印象がある。なお、三菱重工はこの3件全部でも被告とされ、新日鉄住金は2件で被告になっている。したがって、三菱重工は合計8件、新日鉄住金は合計5件の裁判で訴えられていることになる。 3社以外に提訴されているのは以下の67社だ。飛島建設、麻生セメント、安藤ハザマ、石原産業、岩田地崎建設、宇部興産、王子製紙、大林組、角一化成、鹿島、クボタ、熊谷組、小林工業、佐藤工業、三光汽船、山陽特殊製鋼、昭和電気鋳鋼、清水建設、品川リフラクトリーズ、住友化学、住友金属鉱山、住石ホールディングス、常磐興産、菅原建設、大成建設、ダイセル、ダイゾー、太平洋興発、デンカ、東邦亜鉛、東芝、新潟造船、西松建設、日産化学、日産自動車、ニッチツ、日鉄鉱業、日本通運、日本曹達、日本冶金工業、日本郵船、日油、野上、函館どつく、パナソニック、日立造船、広野組、フジタ、古河機械金属、北海道炭砿汽船、松本組、三井金属、三井松島産業、三井E&S造船、三菱ケミカル、三菱倉庫、三菱電機、三菱マテリアル、三宅組、森永製菓、山口合同ガス、ラサ工業、りんかい日産建設、DOWAホールディングス、IHI、JXTGエネルギー、TSUCHIYA なお、私たち歴史認識問題研究会の調査で、韓国政府が273社を強制動員を行った現存企業と認定していることが判明した。 この273社には上記3社と67社が含まれる。したがって、全体の構造は90年代から日本の組織の支援の下で訴えられていた3社、2012年の韓国最高裁差し戻し判決後、駆け込み的に訴えられた67社、今回の不当判決により今後訴えられる危険性が大きくなった203社ということになる。韓国人元徴用工訴訟 判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。新日鉄住金(旧新日本製鉄)の上告を棄却、賠償を命じる判決が決定した=2018年10月30日、ソウル(共同) 私は、現在の状況はそれほど有利ではないと見ている。なぜなら、最高裁判決は1965年の協定とその後の韓国内で2回にわたって行われた個別補償等について詳細に事実関係を記述した上で、「朝鮮半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為に対する慰謝料」という理屈を持ち出して論理を構成しているからだ。 その論理の土台には日本の統治が当初から不法だったという奇怪な観念がある(以下「日本統治不法論」と呼ぶ)。当時、朝鮮は大日本帝国領であり朝鮮人は日本国籍者だった。だから、彼らを日本国が戦争遂行のために軍需産業で賃労働させることは合法的な活動であり、それ自体が慰謝料を請求されるような不法活動ではない。ところが、「日本統治不法論」により、待遇も悪くなかった賃労働が「反人道的な不法行為」に化けてしまったのである。村山談話につながった運動 見逃せないのは、その論理も日本の学者運動家が提供していることだ。1984年の全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)訪日のときに日本の朝鮮統治を不法とする国会決議を求める運動が歴史学者の和田春樹氏や作家、大江健三郎氏らによって始まり、それが後の村山談話につながった。運動のピークは2010年の菅直人談話だった。そのとき、和田氏らは日韓知識人1000人が署名する声明を公表して、菅談話に統治不法論を盛り込ませようと画策した。 菅談話にはそれが入らなかったが、その2年後、韓国最高裁が下級審ではまったく触れられなかったその論理を突然持ち出して、日本企業勝訴の高裁判決を差し戻す逆転判決を下した。これが今回の不当判決に引き継がれた。 この論理にかかると、戦時労働者問題が「人権問題」に化けてしまう。そうなれば、国際社会で「日本はナチスの収容所での奴隷労働と同じような奴隷労働を多くの韓国人男女に強要しながら、被害者の意向を無視して韓国保守政権に幾ばくかのカネを支払って、責任逃れをしている」とする誹謗中傷が広がってしまう恐れがある。 外務省は世界に向けて判決の不当性を広報するという。しかし、その内容が1965年の日韓請求権協定など日韓の戦後処理に限定されるなら、広報は失敗する危険がある。なぜなら、裁判を企画、支援してきた日韓の反日運動家、学者、弁護士らは「日本が戦時に朝鮮人労働者を強制連行して奴隷労働させた」「ナチスの強制収容所と同種の人道に対する罪を犯した」という事実無根の誹謗中傷を繰り返してきたからだ。 公娼制度下で貧困の結果、兵士を相手する売春業に従事した女性たちを「性奴隷」だとして日本の名誉を傷つけた人たちが、総体的に好待遇の賃労働に就いていた朝鮮人労働者を「奴隷労働者」として宣伝しようとしているのである。すでに10月30日付のニューヨーク・タイムズが、韓国人の原告は「slave laborers(奴隷労働者)」だったと書いている。日韓首脳会談 会談前に握手を交わす盧武鉉・韓国大統領(右)と小泉純一郎首相 ※ともに当時= 2003年6月7日、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影) 韓国は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で対日歴史戦争を宣言し、巨額の資金を投じて財団を作り、統治時代の調査研究を蓄積している。今では国立博物館まで建設し、動員被害を内外に広報している。 日本は今こそ官民が協力して統治時代の真実を証明する史料と証言を集め、実証的な調査研究を行い、若手研究者を育て、国際広報を行う「歴史認識問題研究財団」(仮称)を早急に作るべきだ。新日鉄住金や三菱重工などもぜひ、資金と社内資料の提供で協力してほしい。それなしには事態は悪化する一方だと強く警告したい。

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    韓国が封印する不都合な史実「自国青年1700人を強制労働」

     韓国の元徴用工をめぐる賠償訴訟問題は、かつてないほど日韓関係を危機に追い込んでいる。新日鐵住金に賠償金支払いを命じる判決に続き、今月29日にも三菱重工業を相手取った訴訟で韓国最高裁の判決が言い渡される。その後も総額2兆円にも及ぶ賠償請求への判決が続々と下される。 この問題が1965年の国交正常化の際に結ばれた日韓請求権協定で解決済みなのは繰り返すまでもない。が、そもそも韓国政府は、日本に矛先を向ける前に自国の歴史に向き合うべきではないか。 自国の若者たちを強制動員して働かせるということを、韓国政府自身がやっていたのだ。しかも、その対価として支払うべきカネを外国から調達しながら、それは政府が使い込んでいた──。 1961年、朴正熙政権は、「国家再建と浮浪児の取り締まり」を理由に、「大韓青少年開拓団」を設立し、戦災孤児など1700人にも及ぶ青少年を忠清南道・瑞山の干拓事業に強制動員し、無賃金で働かせたという知られざる史実がある。 動員の対象は男性だけではない。「工場で働ける」と女性を誘って連れてきて、開拓団の男性と強制的に結婚させた。「255組 合同結婚式」は、当時、政府広報として韓国メディアで大々的に取り上げられた。 拉致同然に集められた若者たちは、「干拓した土地を1人3000坪ずつ分け与える」という政府の約束を信じ、管理者からの暴力や飢餓に耐えながら働いた。過酷な労働により、死者数は実に119人にのぼったとの記録が残る。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) しかし、干拓後に土地は国有地に編入され、土地を与える約束は反故にされたばかりか、逆に農地の使用料まで請求されたという。驚くべきことに、この問題は今年に入るまで、韓国国内でほとんど知られることがなかった。「漢江の奇跡」の犠牲者 今年5月、被害者たちの証言記録をまとめたドキュメンタリー映画『瑞山開拓団』が韓国で公開され、真相を知った観客に衝撃を与えた。監督を務めたイ・ジョフン氏(45)は、映画制作のきっかけをこう語る。 「5年ほど前に、大学の後輩でKBSテレビ(公共放送)のプロデューサーをしている友人から瑞山開拓団の話を聞き、大変驚きました。彼の故郷が瑞山で、父親が開拓団解散のあと、干拓地を開拓した農民の一人だったのです。最初は彼自身がKBSでドキュメンタリーにしようとした。が、当時は朴正煕の娘の朴槿恵政権下だったので“到底できない”と企画は却下され、独立系の映画を制作している私に託してきたのです」 “漢江の奇跡”と呼ばれる経済成長を成し遂げた朴正熙大統領の人気は娘が失脚した今も絶大で、それゆえに取材は難航したという。 「取材の過程で、米下院国際関係委員会が1978年に出した報告書から、朴正熙が干拓事業などのためにアメリカからもらった援助金を自分の政治資金に不正流用していたという事実を突き止めた。それを元開拓団のお年寄りたちに伝えると、初めて自らに降りかかった災難が、朴正煕政権の企みのせいだと気づいて証言に応じてくれました」(イ監督)それでも黙殺された なぜ昔の話をするのを拒んできたのかと問われた証言者たちは、「なぜかって?あまりにもみじめだから」 「この話をするとあまりにも悔しくて……」と漏らし、ある証言者は「朴正煕大統領は、国は生かしたかもしれないが、人間は限りなく殺した」と叫びながら慟哭した。その様子は映画の中で生々しく映し出されている。イ監督は言う。 「文在寅政権はこの事件を再調査し、適切な措置を取るべき。国の命令に基づいて干拓事業に携わり、若さと労働を捧げたのに、国家が信頼を裏切ったという点を認めて謝罪し、正当な補償をすべきです」それでも黙殺された この問題は、元慰安婦や元徴用工の賠償問題と構図がよく似ている。日本は韓国との間で結んだ日韓請求権協定で、韓国の国家予算の2倍以上に相当する無償3億ドル、有償2億ドルの援助金を供与するかわりに、慰安婦や徴用工に関する請求権の問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認し合った。 だが、朴正熙政権は援助金を個人への賠償には回さず、インフラ投資などに使ってしまい、賠償の原資がなくなってしまったのだ。韓国を取材するジャーナリストの前川惠司氏が言う。 「韓国政府がカネを使い込んでツケが回ってくるという構図は、慰安婦問題や徴用工問題と全く同じ。韓国は日本が支出した慰安婦財団を解散しましたが、金泳三政権の時には韓国政府が慰安婦にカネを出すと言っていたんです。今になって慰安婦や徴用工では日本の責任を追及するのに、開拓団の問題は放置するというのはダブルスタンダードが過ぎる。しかし、日本人がそう感じても、韓国では日本を攻撃する材料にならないこの手の問題は関心を持たれにくいんです」韓国の青瓦台(ゲッティイメージズ) 事実、映画公開で一時話題となったものの、世論は盛り上がらず政府も黙殺した。検証作業や補償の動きは全く見えない。在日韓国人ジャーナリストの河鐘基氏はこう見る。 「韓国政府が恐れるのは、戦前の日本に対するのと同じように、戦後の“漢江の奇跡”の犠牲にされたという告発が相次ぐことでしょう。そういう声を抑えるためにも、ますます日本の賠償問題に目を向けさせようとするのではないか」 自国の「不都合な史実」さえ日本批判の動機にされてはたまったものではない。関連記事■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい■ 徴用工判決で日本企業から「韓国撤退」思わせる動きも発生■ 韓国 英文表記を削除し、国籍不明女性の写真を慰安婦と報道

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    敗訴の徴用工問題、「中国からの訴訟」への波及も警戒すべき

     いわゆる韓国での「徴用工判決」で日本企業への賠償問題が取り沙汰されているが、これは韓国に留まる話ではないという懸念が出てきている。 見逃せないのが、中国での元徴用工訴訟への波及だ。外交評論家の加瀬英明氏が警鐘を鳴らす。 「韓国の徴用工判決は、過去、お詫びを多用してきた日本政府の対応の結果です。その意味では中国も同じ。中国でも強制連行で企業への訴訟が相次いでいる。現時点では、米国との関係が悪化している中国政府は日本との関係改善に動いているから訴訟の進行を抑えているが、状況が変われば、間違いなく韓国同様の判決が出る。日本企業にとって中国への投資額や経済関係は韓国と比較にならないくらい大きいだけに、そうなるとインパクトは計り知れない」 日本企業は中国で痛い目に遭った過去がある。 日中戦争中に船を徴用された中国企業の経営者の親族が商船三井に「未払いの賃料を払え」と起こした訴訟で上海海事法院(裁判所)は29億円の支払いを命じる判決を出し、同裁判所は和解交渉中の2014年に商船三井の鉄鉱石運搬船を差し押さえた。慌てた同社は供託金40億円を払って差し押さえを解除するしかなかった。 本来、中国は1972年の日中共同声明で日本に対する戦争賠償請求権を放棄し、民間企業や個人の請求権はなくなった。しかし、中国側は「戦争賠償とは関係ない商取引をめぐる訴訟だ」と主張し、それが認められた。「友は無罪」の国だけに韓国同様、外交的決着などいかようにも覆せると思う姿勢なのだ。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 元外交官で作家の佐藤優氏は、こう指摘する。 「韓国がやっているのは、“国と国とで約束をしたけど、国内の情勢が変わったからそれは放棄する”ということです。こうした『国内法優位の一元論』で自国の主張を通そうとする国が出てくると、国際秩序は安定しない。要は無理筋な話をしているんです」 同様に、中国も「国内法一元論」で国際秩序を踏み潰すことを厭わない。両国が手を組んで資産差し押さえにかかってくれば、いよいよ日本企業から「撤退」の決断が相次ぐことは避けられない。日本企業は米国に多くの資産を持っているから、それが狙われると大きなダメージとなる」(同前)関連記事■ 韓国作成「徴用工企業299社リスト」に日本企業の担当者絶句■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」■ 徴用工判決で日本企業から「韓国撤退」思わせる動きも発生■ 韓国徴用工判決 事実上の国交断絶を突きつけたに等しい

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    【外国人に聞いた】BTS「原爆Tシャツ」どう思う?

    韓国の7人組アイドルグループ「防弾少年団(BTS)」の一人が、原爆のきのこ雲などがプリントされたTシャツを過去に着用していた今回の騒動。 韓国国内からは「日本の文化的低級さを端的に表している」など批判が広がったが、世界的にはどう受け止められているのだろうか。 アメリカ、ロシア、イギリス人に聞いてみた。■関連テーマ BTS「原爆Tシャツ」に通底するもの

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    BTS「原爆Tシャツ」に通底するもの

    韓国の7人組男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の原爆Tシャツ騒動が物議を醸した。紆余曲折を経て、所属事務所は謝罪したが、日本国内でも受け止め方は世代によってまちまちである。この問題を通して見えたものとは。(写真は共同)

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    BTS「原爆Tシャツ」に通底する韓国社会のホンネ

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の原爆Tシャツ着用が日本で大きな騒動になった。この問題について触れる前に、BTSをご存じない方々のために、このグループが何であるかを簡単に説明しておく。今回の騒動を通して、BTSを初めて知ったという方々も少なくないだろう。 防弾少年団は2013年にデビューした韓国の7人組グループである。韓国語では「パンタンソニョンダン」と読むため、「パンタン」という略称で呼ばれることも多く、グループ名のアルファベットを略した「BTS」という名称で主に活動している。 その国内外での人気ぶりについては、既に散々報じられているので言及しないが、このグループが今年5月に発売したアルバムは、アジア圏出身者としては初めて、米国の人気チャート、ビルボード200で1位を獲得している。 今回、「原爆Tシャツ」で物議を醸したジミン(JIMIN)は、このグループのメンバーで1995年生まれの23歳。ジミンが過去(2年前とされる)に着用していたTシャツに原爆のキノコ雲と韓国群衆が万歳をしている写真が印刷されていたことが問題視され、出演予定だったテレビ朝日系の音楽番組『ミュージックステーション』(Mステ)のツイッター公式アカウントに抗議が殺到。Mステ側はBTSの出演を撤回した。Mステに続き、他局の番組や他のメディアも次々とBTSの出演をキャンセルし、最有力視されていた大晦日のNHK紅白歌合戦への出場も叶わなかった。 さらに、グループのメンバーが過去に、ナチス親衛隊(SS)の記章がデザインされた帽子をかぶったり、コンサートでナチスを連想させる衣装を着て鍵十字に似た模様の旗を掲げるなどしていたことが判明。ユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」は直後に声明を出して非難し、これまで沈黙を貫いていたBTSの所属事務所もついに謝罪に追い込まれる事態に至ったのである。 所属事務所は「原爆被害者やナチスの被害者を傷つける意図はなかった」「今後は今回の問題を改善するために最善の努力を行う」と説明したが、要するに「悪意はなかったが、結果がよくなかった。今後はもっとうまくやる」という釈明に過ぎない。BTS(防弾少年団)(聯合=共同) ユダヤ人の人権団体ににらまれて、ファシスト(全体主義者)認定された日には米国はおろか、欧州での「商売」にも差し支えるため、謝罪はやむを得ない選択だったのだろう。韓国では「謝罪など必要ない」という世論が圧倒的だったのだから。 一連の騒動の顚末は以上のようなものだが、この種の問題が発生したのは今回が初めてではない。今回は、たまたまBTSが世界的に有名なグループだったため、これほどの騒ぎになっただけのことである。もっと言えば、韓国人が日本への原爆投下を痛快がるのは、何も今に始まったことではない。 このことに触れる前に、一般的な韓国人の原爆、ここでは「日本への原爆投下」に対する認識について述べておこう。むろん、日本人であれば「平和教育」という名の下に、幼いころから原爆の惨禍について繰り返したたき込まれている。韓国人の呆れた放言 小学生のころ、学校の図書室で被爆体験を描いた漫画『はだしのゲン』を読んだ方々も多いだろう。そうした教育を通して、われわれ日本人は原爆投下が残虐極まりない、非戦闘員に対する大量殺戮(さつりく)行為であり、しかもそれは単純な殺戮にとどまらず、孫子の代まで苦しみをもたらす非人道的な戦術であることを知っている。これは、原爆がどこに投下されようが変わらない、極めて普遍的な真理であろう。 ところが、韓国人は学校教育でこうした「真理」を一切学ばない。いや学ぶ機会もない。だから、原爆の惨禍についても多くが無知であり、その非人道性についても無関心。むしろ「憎たらしい日本人が原爆で死んだり、苦しんでいるのはいい気味だ」程度の認識なのである。 原爆で、多くの朝鮮人が犠牲になったことも、今も原爆症で苦しむ韓国、朝鮮人やその子孫がいることも、日本政府が韓国人被爆者に対しても「被爆者援護法」に基づき、さまざまな支援を行っていることなどについても全く知らない。 筆者は過去に長崎の原爆資料館を訪れた際、展示物を見学していた韓国人の団体観光客が「(原爆投下は)本当にいいことだった」と放言しているのを目撃して唖然(あぜん)としたことがある。要するに「原爆投下で日本が降伏して、朝鮮は独立できたのだからいいことだ」程度の認識しかないのである。 これは、例えて言えば「朝鮮戦争は朝鮮人同士が殺し合う戦争だったが、日本は特需で大もうけできたのだから、いい戦争だった」と言っているようなものだ。こうした認識が染みついているため、彼らの原爆に対する言動も下劣になりがちなのである。つまり、BTSの原爆Tシャツなど氷山の一角に過ぎないのである。 2004年1月、韓国で竹島(韓国名・独島)が印刷された記念切手が発行され、日本政府が公式に抗議したことがある。ネット上には「原爆投下記念切手」なるものが瞬く間に拡散したのをご存じだろうか。 これはネットユーザーが勝手に作ったもので、韓国で公式発行されたものではなかったが、本物そっくりに作られていた。絵柄は原爆のキノコ雲で、それに「日本原爆投下54周年記念」という文字が添えられてあった。ちなみに、これは1995年に米国で実際に計画された「原爆投下記念切手」を参考にしたものと思われるが、米国でも日本側の抗議により切手は発行されなかった。 2006年4月18日には、首都ソウルにあるインターコンチネンタルホテルである「事件」が起きた。このホテルで「世界の酒文化と韓国の爆弾酒」という講演会が開かれ、外交官を含む在韓外国人の前で、講師を務めた同ホテル社長、沈載赫(シム・ジェヒョク)が「爆弾酒」の作り方を実演したのである。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) 爆弾酒というのは、ビールにウイスキーを混ぜて飲む韓国のお座敷遊びの一つ。わざわざ外国人を招いて、こんなくだらない宴会芸を講義すること自体にも驚きを禁じ得ない。それはともかく、この講演会には、当時の在韓日本大使、大島正太郎氏も招待されていた。その席上、沈社長は「爆弾酒」を手ずから調合しながら、次のような解説を加えた。 「ビールジョッキにビールを入れて、ウイスキーグラスをポチャンと落とせば『原子爆弾酒』。泡の飛ぶ模様が、まるで広島に原子爆弾を投下したときのきのこ雲みたいだと言って付けられた名前」 「反対に、ビールジョッキにウイスキーを注いで、ビールをショットグラスに入れて交ぜれば『水素爆弾酒』」 「ビールジョッキにウイスキーを入れて、そこにウイスキーを注げば『中性子爆弾酒』と言っている」被爆者への冒涜 彼らの原爆投下や核兵器に対する認識が露呈した実に下品な発言である。これだけでも十分に被爆者への冒瀆(ぼうとく)だろう。それどころか、沈社長は爆弾酒を調合しながら、大島大使の面前で次のような許しがたい暴言も吐いたのである。 「ビールの泡がぱっとはじける様子が、あたかも原爆を広島に投下してキノコ雲が湧き上がるようではありませんか?」 この発言と憮然(ぶぜん)とした大島大使の表情は、韓国の通信社系ケーブルテレビ、YTNを通じておもしろ半分に報じられた。この日の講演会は、韓国イメージコミュニケーション研究院(CICI)が「韓国を正しく理解して世界と通じよう」という趣旨で用意したものだったという。ある意味、実に「正しく」韓国を理解することができる講演会だったとも言えよう。 ちなみに、このバカげた講演会の模様は既に動画サイトで公開されている。日本語字幕入りなので、後学のためにぜひともご視聴願いたい。筆者が先日、同ホテルに電話で確認したところ、既に沈社長は退職したとのことだった。 ともあれ、原爆投下が韓国人にとっては「痛快な出来事」であるためなのか、韓国ではこれをネタにする芸能人まで現れた。2006年に発売された歌手のRain(ピ)の『I'm Coming』という曲のミュージックビデオには、ピが原爆ドームとみられる建物を背景に歌って踊るシーンが登場し、物議を醸した。 廃虚に羽根を生やしたピが降臨し、軍服姿のバックダンサーと踊り、焼けた建物の中から炎に包まれた人が飛び出てくる場面もある。日本国内で「反日的だ」という批判が起こると、所属事務所は「日本好きで知られるピが、日本のファンを侮辱するような意図はない」とコメントした。要するに「悪意がなかったから問題ない」ということである。このミュージックビデオについては、被爆者団体の幹部も朝日新聞の取材に対して不快感を表明した。 2013年5月には、韓国の大手紙、中央日報が「広島と長崎に原爆が投下されたのは神の懲罰」という趣旨のコラムを掲載した。「安倍、マルタの復讐(ふくしゅう)を忘れたのか」と題するコラムには、安倍晋三首相の歴史認識を批判しつつ、「神は人間の手を借りて悪行に懲罰を加えてきた。最も過酷な刑罰が大規模な空襲だ。第2次大戦末期、ドイツのドレスデンが焼かれ、広島と長崎に原子爆弾が落とされた」とし、これらを「神の懲罰であり人間の復讐」などと指摘する内容だった。2018年5月、日韓首脳会談に向かう安倍首相(右)と韓国の文在寅大統領=首相官邸 このコラムをめぐっては、在韓日本大使館が中央日報に抗議したほか、広島や長崎など日本国内でも批判が起き、このコラムを執筆した同紙論説委員は「(自分が本来伝えようとした)趣旨と異なり、日本の原爆犠牲者と遺族を含め、心に傷を負われた方々に遺憾の意を表します」と謝罪。安倍首相らの歴史認識を批判する以前に、自分自身のトンデモ歴史観を猛省すべき事案である。 2014年8月には韓国の女性グループ「Red Velvet」がデビュー曲を発表したが、そのミュージックビデオの一場面に広島への原爆投下の記事や「JAP」などという差別表現が用いられた英字新聞の記事画像が使われていたことが判明。後日、このシーンは別カットに差し替えられた。罪深きは擁護した日本人 所属事務所は「ミュージックビデオの監督に確認した結果、『単純にコラージュの技法を使っただけで、特定の意図はなかった』と聞いた」「誤解の余地をなくすため修正した」とコメント。重ねて言うまでもないが、釈明まで今回のBTS騒動とそっくりである。 以上、韓国での原爆に対する認識の表出事例をいくつか見渡した。彼らの原爆投下に対する認識の水準がいかなるものか、お分かりいただけたと思う。今回のBTSの原爆Tシャツの事例でも「深い意図はなかった」と擁護する向きもあるが、Tシャツを製作した業者にまで「深い意図はなかった」とは言えまい。 件(くだん)のTシャツをデザインしたのは、韓国の「LJカンパニー」という会社だが、この会社は過去にも竹島や日本の敗戦をモチーフにした商品を製作している。ともあれ、今回の騒動に関して同社のイ・グァンジェ代表は、韓国マスコミの取材に対し「反日感情と日本に対する報復などの意図があるわけではなかった」「反日感情を助長しようとする意図はなく、その点でもBTSに対して申し訳ない」とコメントした。 またしても「悪意はなかったが、結果が悪かった。だから申し訳ない」という釈明である。悪意はなかったとしても、原爆を自分の商売に利用している点で、より狡猾(こうかつ)だと言える。もっと言えば、BTSに対しては「申し訳ない」が、被爆者に対しては何も感じていないらしい。 ちなみに、原爆Tシャツは注文が殺到し、品切れ状態にあるという。こんな有り様だから、原爆投下絡みの騒動は今後いくらでも再発するだろう。 今回の騒動に関して、SWCは「長崎の原爆被害者をあざけるTシャツを着ていたことは、過去をあざけるこのグループの最新の事例にすぎない」「国連での講演に招かれたこのグループは、日本の人々とナチズムの犠牲者たちに謝罪する義務を負っていることは言うまでもない」と述べている。長崎市の原子爆弾落下中心地碑(ゲッティイメージズ) 本来ならば、これは日本政府、いや日本人が声を大にして言うべきことである。筆者が今回の騒動で最も嫌悪を感じたのは、原爆投下について無知なBTSのメンバーや原爆投下をあざける韓国人、そして原爆投下をネタにして金もうけをたくらむ韓国人についてではない。 原爆投下について確たる認識を持たず、「政治と文化を一緒にしてはいけないよね」「騒動に巻き込まれたBTSがかわいそう」などと擁護した一部の日本人についてである。彼らは、日本人のグループが他国を愚弄(ぐろう)する衣装をまとって海外公演を行ったとしても、本当に同じように擁護するのだろうか。 「歴史の真実」「国家の品格」、そして「普遍の真理」というものは、確固たる信念と断固たる覚悟がなければ守り抜けない。それは、趣味と商売にすぎない韓流(はんりゅう)アイドルのコンサートなどとは全く別次元のものである。前述のSWCの声明はそれを痛感させるものだ。果たして、日本人にそうした「信念」はあるのだろうか。今回の騒動は、改めて日本人にその「覚悟」の程を問いかける事象だったと思えてならない。

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    BTS「原爆Tシャツ」騒動から日本人が学ぶべきこと

    山岡鉄秀(AJCN代表) 朝鮮半島出身の「出稼ぎ労働者」に対する韓国大法院(最高裁)判決には、さしもの日本政府も激怒したようだ。「国民情緒が憲法より上位にある国に謝罪して金を払って丸く収めようとする」ことが、いかにバカげたことか、理解してくれただろうか。 そこへきて、今度は韓国の7人組男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の騒ぎである。もちろん私も心底あきれたが、日本人にとってはこの機会に十分学べるか否かが「運命の分かれ道」となる。この厄介な隣国は、今後も必ず日本に厄災をもたらすからだ。しかも今回、原爆Tシャツ騒動が「ナチス帽」に移るに至って、なんと傍観していた私まで巻き込まれてしまった。 BTSメンバーの一人が、ナチス帽をかぶってポーズを取ったことに、米ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)」から非難声明が出された。だが、こともあろうにツイッター上では、日本を罵倒する韓国人のツイートであふれた。「韓国人に戦争犯罪を押し付けたい日本人がフォトショップで鍵十字(ハーケンクロイツ)に見えるように細工した」などと主張したのである。 さらに「鍵十字が張り付いた帽子はウェブ上にしか存在しない、だからそれ自体がフェイク」という言説まで飛び出した。とにかく、全て「日本人が悪い」の大合唱だ。そこで、私は韓国に詳しい友人に依頼して調査した。 すぐに、問題の画像が2014年に発行された『CeCi(セッシ)』という雑誌の20周年記念号に収録されていることが分かり、1冊取り寄せることにした。インターネットオークションでは、すでに6千円以上のプレミアム価格がついているものもあった。 また、韓国人ファンが雑誌をめくっている写真がネットにアップされていたので、確認してみると、問題の帽子には確かに鍵十字とドクロが付いている。スタイリストの所蔵であることも書いてある。 こんなことは今時、1時間もあれば分かることだ。それをすごい剣幕(けんまく)で、SWCに「日本人のねつ造だ」と告げ口し、「日本人が戦争犯罪をBTSに擦(なす)り付けようとする謀略」だの、「旭日旗こそがハーケンクロイツだ」だの、彼らは次から次へと嘘をついたのである。2018年9月、米ニューヨークの国連本部のイベントで話す韓国の男性音楽グループ「BTS」のメンバー(聯合=共同) しかし、SWCの声明を読み解くと、彼らが問題にしているのはむしろ、鍵十字の下にあるドクロであることが分かる。このドクロは、まさにユダヤ人殲滅(せんめつ)を任務としたナチス親衛隊(SS)のシンボルであり、ユダヤ人には当然忌み嫌われている。 そのことに気が付かない韓国人たちは、鍵十字はフォトショップで細工されたものだと説得しようと文字通り必死になっていた。墓穴を掘っているようなものだ。「戦争犯罪国の分際で…」 とはいえ、筆者が仕方なくそれらの事実をツイートすると、案の定反発する韓国人から反応があった。 「これはフォトショップで加工されている!」「戦争犯罪国の分際で、なぜ堂々と意見しているのか! 反省しろ!」 さらには、もっともらしく「シンボルの不適切な使用は世界中で見られるものだ。それをヘイトに転換すべきではない」などと英語でツイートしてくる人までいた。要するに、その場で出任せの嘘をついて、通じないと分かると論点のすり替えを始める。それでも通用しないと分かると、急にハングルで書いてきたりする。わざわざ訳して読むとでも思っているのか。 そうこうしているうちに、BTSの所属事務所が原爆Tシャツもナチス帽も不適切だったと認めて、謝罪を表明してしまった。すべて嘘だと決着したので反発も収まり、静かになった。しかし、目の前で噂に聞く「火病(ファビョン)」を見せつけられた。本当に恥も外聞もない。なるほど、慰安婦問題の狂乱もこれと同じなのだ。事実など関係ない。ひたすら憤怒を吐き出し、まことしやかにどんな嘘でもつく。 ここで、日本人が学ぶべき大事なことが二つある。このような韓国人への対処法と、現代韓国人のメンタリティーの理解だ。 別の機会に詳述するが、日本は世界でも稀有な、道徳と性善説を基盤とする国なので、このような相手に出くわすと大概面食らって「相手にしても無駄だから放っておけ」という対応を取りがちだが、それは間違いだ。殴り返してこないと分かると、どこまでもエスカレートしてしまう。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) そもそも、モラルや論理ではなく、感情を最優先して行動している。もっと言えば、積年の民族的鬱憤(うっぷん)を晴らす機会を常に求めている人たちだから、大人の対応は逆効果になる。まず、普段は極力かかわらないようにし、それでもちょっかいを出してきたら、何倍にもなって返ってくると分からせてあげなければならない。 そして、韓国がいかに理不尽で不誠実であるかを繰り返し世界にアピールする。それでようやく正常な関係が築けるだろう。すぐに激高する相手だから冷静な対処が必要だという人もいるが、今回のように思い通りにならなければ、いずれにしても「火病」を発症するのだから、たとえ目の前で半狂乱になられても、動ぜずに間違いを追及し続ける冷徹さこそが必要だ。 何度でも繰り返すが、「日本人の常識」は国際社会では何の役にも立たない。まず「人間関係ありき」ではないのである。一般の人間関係と外交は全くの別物であることを、いい加減に学ばなくてはならない。 次に、この「壊れてしまったような」韓国人の性格は、今後もますます酷くなることはあっても、良くなることはないということを理解しておく必要がある。なぜならば、これこそ長年の教育(洗脳)の成果だからだ。この隣人とのベストな付き合い方 韓国では、若い世代ほどゆがめられた歴史を教え込まれている。朴槿恵(パク・クネ)前大統領はそれを是正しようとしたが、文在寅(ムン・ジェイン)政権になってからは再び左傾化した。 原爆Tシャツには「Liberation(解放)」と書かれている。つまり、韓国は健全で美しく文化的な独立国だったが、悪辣(あくらつ)な日本帝国に自由を奪われて抑圧され、原子爆弾による日本の敗戦で解放された、という作り話を信じ込まされている。 その背景の下、彼らはこのような教育を受けている。男は奴隷にされて軍艦島のようなところで搾取され、女は慰安婦という名の性奴隷にされた。朝鮮民族は「光復軍」を組織してよく戦い、ついに日本を追い出したが、親日派から親米派に寝返った売国朝鮮人による支配は続いた。 その点、早くから日帝も米帝もソ連も追い出し、朝鮮民族によって「主体思想」を貫く北朝鮮はより高潔で正当性を持った国家だ。「できるだけ早く一緒になって、核兵器を共有してアジアの強国となり、日本を屈服させて積年の鬱憤を晴らすべきだ」と。しかも、若い世代ほどそう信じ込んでいるのである。 韓国人の古老が教えてくれた。彼らは、勝手に歴史を歪曲(わいきょく)し、自らを復讐(ふくしゅう)の権利を持った被害者に仕立て上げ、恨みつらみを糧にして生きている。もとより、他人の不幸を喜ぶことに恥を感じない。私は、その民族的幻想を「恨(ハン)タジー」と名付けた。 このやっかいな隣人とは「ヒット&ステイアウェー」、すなわち「おとなしくさせたら、可能な限り距離を置く」のがベストである。ところが、まずいことに「極左活動家」文大統領の下で、韓国は自らを北の独裁者に捧げようとしている。 在日米軍が、韓国人の基地への立ち入りを一時厳格化したと報じられた。今後、半島有事の作戦統制権が米軍から韓国軍に移行すれば、米国は韓国を見捨てる可能性がある。朝鮮戦争以来、再び大勢の韓国人が命を落とし、日本へ難民として押し寄せる事態が現実味を帯びてきた。「歴史を忘れた民族に未来はない」はまさに韓国人のための言葉であり、それゆえに自滅の途上にあるのだが、巻き添えを食らって日本が甚大な被害をこうむる可能性がある。 「出稼ぎ労働者判決」の非道に際し、日韓議連が苦心しているとの報道もあった。「平和ボケ」もここに極まれり、だ。いったい何を苦心する必要があるというのか。2018年10月30日、韓国「徴用工訴訟」で日本企業に賠償を命じた判決が確定し、記者会見する原告の李春植さん(中央)と支援者ら(共同) 出稼ぎ労働者判決も、原爆Tシャツも、ナチス帽も、通底する問題は同じだ。韓国とは距離を置き、かつ来るべきカタストロフィー(大災難)に備える。そのリアリズムを持てずに、偽りの「日韓友好」を夢想すれば、滅びるのは日本の方なのである。

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    「バンタン見れなくてショック」BTSを擁護する韓流女子の生態

    は、BTS(防弾少年団)の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)出演予定の日だった。 BTSは韓国の人気アイドルグループだ。2013年に韓国で、2014年に日本でデビュー。2017年には人気チャート「ビルボード」トップアーティスト10位にランクイン、iTunes(アイチューンズ)のアルバムチャートでも全世界73カ国で1位を獲得するなど、輝かしい活躍を見せている。 現在、グローバルツアーの真最中で、国内では11月の東京ドームを皮切りに、四つのドームでコンサートを行う。所属事務所によると、東京ドーム公演では計10万人の観客を集めたという。 そのBTSのメンバーの1人が、過去に「原爆Tシャツ」を着ていた写真がネットを駆けめぐっている。Tシャツにはキノコ雲と韓国国民が万歳している様子がデザインされていた。 事態を重くみたテレ朝は、ミュージックステーションへのBTS出演を取りやめた。さらに、複数のメディア出演がキャンセルとなり、楽しみにしていたBTSファンが悲しみの声を会員制交流サイト(SNS)に寄せたというわけだ。 その後、BTSが過去にナチスのシンボルであるハーケンクロイツ(鍵十字)が入った帽子を着用していた画像や、イベントのパフォーマンスでナチスをイメージさせる旗を振って公演を行った画像がインターネットで話題になり、内定とまでうわさされていた『紅白歌合戦』の出演も果たせなかった。NHKは選考にあたって、「総合的に判断した」とし、個別の選考基準については答えていない。 一方、その紅白歌合戦に2年連続で出場を決めたK-POPアーティストがいる。TWICEだ。TWICEは韓国で結成された9人組の女性グループで、メンバーには韓国人のほかに日本人と中国人が含まれている。 NHKによると、TWICEは今年リリースされた作品がすべてチャートで1位を取っていることなどが依頼の決め手だったという。しかし、メンバーの全てが韓国人であるBTSとは異なり、韓国色が薄いためではないかという推測の声もある。 現在の韓国人気は「第3次韓流(はんりゅう)ブーム」と言われている。女子中高生向けのマーケティング支援などを手がける調査会社AMFが発表した「2018年上半期のJC・JK流行語大賞」では、「ヒト部門」の2位にBTS、4位に4人組ガールズグループのBLACKPINKと、2組の韓国アーティストがランクインした。東京・新大久保の韓国料理店=2018年6月 そして「モノ部門」の1位に選ばれたのが、「チーズドッグ」というチーズがたっぷり入った韓国発のホットドッグだ。チーズが伸びる様子が「インスタ映え」すると大人気になり、新大久保の店舗には行列が絶えない。 コリアンタウンと呼ばれる東京・新大久保には韓国のファッションやグルメ、コスメが全てそろっており、休日ともなれば、若い女性を中心に道路も店も大混雑を見せている。同社が2017年12月に発表したランキングにもTWICE、チーズタッカルビ(鶏のカルビ焼き)、ウユクリーム(コスメ)など韓国発のキーワードが並んでおり、韓国人気は依然衰えていないことがうかがえる。英語よりもハングル お気づきだろうか。日本の大人が抱く韓国へのイメージとは全く異なる感覚で、10代は韓国カルチャーを楽しんでいるのだ。 筆者が取材で知り合う中高生たちは、全員がK-POP好きというわけではない。テーラー・スウィフトやワン・ダイレクションといった米英のアーティスト、そしてもちろん国内のアーティストが好きな人たちもいる。 しかし、大人が青春時代に感じていた洋楽や欧米の生活への憧れは、ほとんど感じられない。英語をマスターするよりも、韓国語を学んだり、ハングルが書けたりすることが「イマ風」なのだ。 中高生のLINEを見ると、プロフィルなどに表示される「ステータスメッセージ」にハングルで思いをつづっている人たちがいる。ツイッターやインスタグラムのプロフィルにもハングルをよく目にする。当然、彼女たちとつながっている友人全員が理解できるものではない。その「わかる人にはわかる」暗号のような加減もいいのだろう。 また、「いいねジュセヨ(いいねください)」と韓国語を一部組み合わせて使う人や、「センイルチュッカヘヨ(誕生日おめでとう)」と韓国語でLINEのバースデーカードに記す人も珍しくない。昭和のころなら、少し気取りたいときに英語やフランス語などで書く人がいたが、今どきの若い子は韓国語を使うのだ。 そんな世代が今回の騒動をどう見ているのか。修学旅行で広島の原爆ドームを見てきた女子中学生に話を聞くことができた。 彼女はBTSのファンではないが、TWICEはかわいい、とSNSでチェックする程度のK-POPファンだ。修学旅行でガイドや被爆者から話を聞き、原爆の恐ろしさを知ったという彼女はこう言っていた。 「もしバンタン(BTSの愛称)が原爆のことをバカにしていたら頭にくるけど、きっとそれほど考えていないんだと思う。バンタンが好きな友人は、とにかくMステ(ミュージックステーション)でバンタンが見られないことにショックで、それ以上のことは考えていなかった。今は来日してるから、握手会やら何やらで忙しくて忘れてる」 さらに、BTSファンの友人が紅白歌合戦の選考に漏れたことについて何か言っているかを尋ねたところ、そもそも紅白を重視していないので問題ではないらしい。2018年11月、韓国・仁川で公演する韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」のメンバーら(聯合=共同) BTSは最近の呼び名で、元々は「防弾少年団」という名前だ。防弾チョッキが軍をイメージさせるからか、BTSファンは「ARMY(アーミー)」と呼ばれる。とすると、政治的思想から今回のような行動を起こしていた印象も受けるが、防弾少年団の由来は「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守り抜く」であることから、関連はないのだろう。BTSの所属事務所は11月13日に「被害に遭われた方を傷つける意図は一切ない」と謝罪の言葉を発表した。 今回の件は日本の韓流ブームにそれほど影響していないように感じるが、軽率な行動により日韓の若者の心に澱(おり)がたまっていく可能性もある。影響力の大きいアーティストとして、今後の活動に期待したい。

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    弱小事務所からブレークの防弾少年団「コネではなく実力」

     今、韓国の中高生に好きなアイドルを聞くと、東方神起でもBIGBANGでもなく、ほとんどが防弾少年団の名前を挙げるという。メンバーはRAP MONSTER(23)、SUGA(24)、JIN(24)、J-HOPE(23)、JIMIN(22)、V(21)、JUNGKOOK(20)の5人だ。「この1年、ゴールデンディスクアワードやソウル歌謡大賞など、韓国を代表する音楽賞を軒並み受賞し、テレビに出れば視聴率は跳ね上がる。間違いなく彼らが韓国芸能界の中心にいます」(韓国のスポーツ紙記者) 9月に発売した新アルバム『LOVE YOURSELF 承‘Her’』はアメリカのビルボードチャートで6週連続ランクインし、日本でもオリコン初登場1位を記録。 デビュー4年目を迎え、世界のミュージックシーンを席巻している防弾少年団だが、一体何がそんなにスゴいのか。「ひと言でいえば、圧倒的なダンスパフォーマンスと歌唱力、そしてラップ技術です。韓国アイドル全般にいえるのですが、彼らはデビュー前に超過酷な練習生時代を経験しています。1日10時間の練習は当たり前。歌、ダンス、そして語学まで徹底的に叩き込まれてデビューを迎えている」(韓国の芸能関係者) そこまでならば、他の韓国アイドルと同じ。特筆すべきは、彼らの所属する「事務所」にあるという。「ハッキリ言って、無名の弱小事務所です。韓国の音楽界は、東方神起やSUPER JUNIORを擁するSMエンターテインメント、BIGBANGやiKONの所属するYGエンターテインメントといった大手芸能プロダクションがメディアに対して、強い影響力を持っている。小さな事務所で活躍するのは至難です。韓国の芸能事務所ではSMエンターテインメントが強い影響力を持つ。イラストはSMに所属する男性グループEXO(ゲッティイメージズ) だからこそ、防弾少年団は人一倍努力した。海外に武者修行に行き、メンバー全員が作詞作曲できるようになるまで、貪欲に音楽を学んだ。『コネクションではなく実力で勝つんだ』という意識が極めて強いグループなんです」(前出・韓国の芸能関係者) 実際、メンバーは「いかにクオリティーの高いステージを届けるか、という一点だけを考えている」と常々公言しており、その言葉通り、彼らのステージは圧巻のひと言。長い下積み時代を経て下剋上を果たした7人は、そのキャラクターも実に魅力的。秀才のリーダーから不思議系イケメン、怪力の末っ子まで、7色の輝きを放っている。関連記事■ 東方神起の2人、子供や女の子からおじさん扱いされた■ 小栗旬モノマネでブレークの土佐兄弟「バイト辞めたい」■ 松田聖子 個人事務所を退社、元恋人と設立した新事務所移籍■ 聖子 個人事務所辞め元恋人と新事務所設立も沙也加移籍せず■ 石原さとみ 事務所から結婚許可下り嬉しそうだったとの情報

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    韓国の歴史改竄 日本統治で搾取……本当はハングルを広めた

     韓国の歴史は嘘で塗り固められている。『韓国と日本がわかる最強の韓国史』を上梓した八幡和郎氏が隣人の「歴史修正」を暴く。* * * 百済からの帰化人のなかに武寧王(在位501~523年)の子孫で奈良時代の朝廷で下級官吏になっていた和乙継という者がいた。この娘の高野新笠が天智天皇の孫・白壁王の側室となり、山部王を産んだ。後の桓武天皇である。 2002年のサッカーワールドカップ日韓共催にあたり、天皇陛下は『続日本紀』に高野新笠が百済王族の遠縁と記されていることに触れられた。ところが、それをきっかけに一部の韓国人学者は「日王(天皇家)は百済王室の末」などという乱暴な解説をするようになった。曲解であり、陛下の日韓友好のお言葉を悪用するなど言語道断である。「日本の統治で搾取された」はウソ 日本による朝鮮半島統治は欧米諸国の植民地支配のように一方的に収奪するものではなかった。 道路、鉄道、河川、ダムなど整備されたインフラは内地よりも立派だった。1911年には鴨緑江横断鉄橋が完成し、満洲につながった。鴨緑江に建設された水豊ダムは、当時世界最大級の水力発電所だった。 日本統治でもっとも評価されるべきものは教育だ。日韓併合以降、教育機関は急速に整えられ、終戦時には国民学校への就学率が男子76%、女子33%に達した。そして小学校では韓国語で教育が行われたため、ハングルの普及が一気に進んだ。漢字ハングル混じり文も、井上角五郎が立ち上げた「漢城周報」ではじめて本格的に使用した。日本は韓国語を与えたのであって、奪ったと批判されるのはおかしい。たしかに日本統治には負の面もあったが、功罪を冷静に見れば、明らかに功が大きい。搾取とはかけ離れている。※写真はイメージです(ゲッティイメージズ) ここでは一部の例しか紹介できないのが残念だが、あらゆる時代に同様の改竄が行われている。 しかし、問題は韓国側だけでなく、日本側にもある。我々自身が歴史認識を整理できていないのだ。たとえば任那が日本領であったことをどの程度、理論武装しているだろうか。中国は高句麗をかつて中国東北部の少数民族が作った国家だとし、継承国家は中国であると理論武装をしきりにやっている。 また、百済の位置づけをどうするのか。百済からの文化流入に対する公式見解がない。長年、韓国の世話になったなどとは誰も考えてこなかったのだが、それが忘れられている。 我々の見解、立ち位置が明確になっていないから、隣人の嘘がまかり通り、時にそれに引きずられるのだ。【PROFILE】八幡和郎●1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。北西アジア課長(南北朝鮮も担当)、大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任。現在、徳島文理大学教授。近著に『消えた江戸300藩の謎』がある。関連記事■ 韓国の歴史改竄 韓国人が日本に文化を伝えた……本当は漢族■ 軍艦島朝鮮人強制労働の写真、まったく別の場所の写真だった■ 朝鮮半島での中国人虐殺を関東大震災朝鮮人虐殺に改ざん過去■ 韓国の歴史改竄 建国は4000年前、日本領・任那はなかった等■ 韓国公共放送 旭日旗と竹島を合成し「日本軍侵攻」を捏造

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    徴用工判決に広がる波紋

    「戦後の国際秩序に対する深刻な挑戦だ」。韓国の最高裁判所が先の大戦の徴用をめぐり日本企業に賠償を命じた判決について、政府は国際社会に正しく事実を伝える必要があるとして、英語版の資料を作成した。日韓関係に再び亀裂を生んだ徴用工判決。広がる波紋の内幕を読む。(写真は共同)

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    徴用工判決と日韓の正義、いつまで「歴史戦」を続けるのか

    木宮正史(東京大学教授) 韓国大法院(最高裁)大法廷は10月30日、日本の支配下で徴用され労働させられたことに対する賃金未払いなどに対する慰謝料などの支払いを新日鉄住金に求めた原判決に対する上告を棄却し、新日鉄住金に対して損害賠償を命じる判決を確定した。一方で、この判決それ自体は、6年前の2012年5月の大法院小法廷の破棄差し戻し判決によって、方向性が既に定められた予想通りのものであり、特段の驚きはなかった。 他方で、この判決は1965年6月の日韓国交正常化の基礎となった日韓請求権協定を実質的に無効とするものであることは間違いなく、日韓関係に少なからぬ影響を及ぼすことが予想された。筆者は今後、日韓関係がどこへ向かうのか、特に韓国は日韓関係をどのような方向に持って行くつもりなのか、という不安を抱かずにはいられない。 筆者は、この判決には同意できなかったし、こうした判決が出ることが日韓関係にもたらす悪影響を憂慮していた。しかし、他方で、こうした判決が全く間違った判決だとも思わない。むろん、判決の前提を受け入れることはできないが、ある前提を受け入れさえすれば、こうした判決が出てくることは十分理解し得たからだ。 ただ、判決内容の是非を論じる前に、まず明確にしておかなければならないのは、これは司法の判断であって、韓国政府の最終判断ではないということである。一部には、韓国政府がこの判決を積極的に支持していることを前提にした報道がなされているが、これは事実とは異なる。韓国政府は、この司法判断を受けてどう対応したらいいのか、依然として悩んでいるというのが正直なところではないか。この判決に対する日本の「過剰反応」を批判しながらも、この判決を尊重すると言うだけでそれ以外沈黙を守っているのは、その証左である。 現時点での韓国政府の立場は、徴用工に関する補償問題は1965年の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決」しているというものであり、司法の判断とは異なる。もちろん、今後、韓国政府が既存の立場を変えることで、この司法判断がそのまま韓国政府の立場になってしまう可能性を排除することはできない。特に、日韓両政府が現在のように非難合戦をエスカレートしていくと、「売り言葉に買い言葉」で、そうなってしまう危険性は高まる。 翻って考えると、今回の判決は、既に2012年5月にある意味では決まっていたと考えられる。韓国政府が1965年の日韓請求権協定の範囲外に置いた慰安婦問題をめぐって、その範囲内とみなす日本政府との解釈の違いにもかかわらず、それを放置して日本との交渉に乗り出さないのは憲法違反だとした、2011年8月の韓国憲法裁判所の判断があった。その司法判断とある意味では競争するかのように出てきたのが、2012年5月の韓国大法院の小法廷判決であった。※画像は本文と関係ありません(GettyImages) この小法廷判決は、徴用工である原告の請求を棄却して賠償を認めないとした下級審判決を破棄差し戻ししたものである。この判決は当時の韓国の学界においても、従来の通説を覆す「画期的判決」と受け止められた。換言すれば、当時の韓国社会でも、この判決は「意外」なものであった。この判決の政治的責任を第一次的に負うべきなのは、韓国政府の過去の外交政策を否定することで、その選択を極度に制約してしまうような、こうした判決を「許容」した、当時の李明博(イ・ミョンバク)政権にあったと見るべきだろう。それだけ、当時の李明博政権は極度のレームダック状態にあった。 筆者がこの小法廷判決に驚いたのは、その結論というよりも、その論理であった。それは、今回の大法廷判決においてもその多数意見がそれに従うように、ある意味では「韓国社会ウケ」するものであり、韓国社会の中でそれに抗することが難しい論理を展開したからであった。約束より上位にある「正義」 本来であれば、日韓両政府が1965年に合意し、さらに、2005年盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時にも韓国政府が今一度確認したように、徴用工問題は日韓請求権協定の範囲内の問題であり、それによって文字通り「完全かつ最終的に解決」されたはずのものであった。しかし、小法廷判決は、それを覆す論理を日韓の歴史観の乖離(かいり)に求めたのである。 1910年の韓国併合条約は合法であり、それが45年の日本の敗戦によって無効になったと解釈する日本政府に対して、韓国政府はこの条約はそもそも強制された違法なものであり、したがって植民地支配自体は「不法占拠(強占)」に過ぎなかったという立場であった。そうした歴史観の違いを乗り越えて、日韓両政府は日韓請求権協定に妥協し国交を正常化したのである。 しかし、小法廷判決は、こうした妥協がそもそも日本の植民地支配自体を不法と見るべき韓国の「正しい歴史観」からは受け入れ難いものであり、したがって、そうした前提に立つ政府間の妥協は、韓国国民の個人の請求権を消滅させるものではないという論理を展開した。つまり、小法廷は徴用工の個人請求権が消滅していないことの理由を「韓国の正しい歴史観と日本の間違った歴史観」に求めたわけである。 1987年の民主化以降、韓国の憲法裁判所を含めた司法は、政治的に微妙な問題に対しても積極的に関与した。首都移転に違憲判決を出して白紙撤回させたように、政府や国会の決定を真っ向から否定してしまう司法積極主義の立場を採用してきた。しかし、そうした歴史観の違い、特に韓国だけではなく対日外交が関わる問題を、司法が一刀両断に正義、不正義で論じるべきことではないように思う。 司法消極主義に立脚する日本の最高裁であれば、それは「政府の統治行為に属する問題であり、司法判断は控える」という「統治行為論」を持ち出していたと考えるが、この小法廷判決は、司法判断に国家間の歴史観の違いを持ち出し、しかもその正義、不正義までも判断したのである。その点で、司法積極主義を飛び越えた、外交に対する司法の介入とさえ言えるだろう。 ところが、日本との間で存在する歴史問題に関して、常に被害者としての正義という価値観に基づいて考えることが共有される韓国社会から見ると、こうした前提は受け入れやすい。いや、むしろ受け入れなければならない論理である。日本企業に賠償を命じるとした韓国徴用工訴訟判決を受け、支援者らから拍手を送られる原告の李春植さん(手前中央)=2018年10月30日、ソウルの韓国最高裁前(共同) 過去の日本との「約束」は基本的に守らなければならないかもしれないが、そうした「約束」よりももっと上位の「正義」という価値があり、日本の植民地支配を不法とする韓国の「正義」に基づけば、政府間の協定によって個人請求権を消滅させるという「約束」よりも、韓国の「正義」に基づいて個人請求権を認めなければならないという理屈である。 しかし、この徴用工問題は、こうした歴史観の違いにまでさかのぼって判決を下すべき問題だったのか。しかも、徴用工の人権救済の担い手は、日本企業ではなく韓国政府であるべきではないのか。おそらく、こうした認識は韓国社会でも相当程度共有されていると考える。にもかかわらず、小法廷判決がこうした日韓の歴史観の違いという問題を判決理由に持ち込んだために、大法廷判決もその前提となった「韓国の歴史観」という「正義」を否定することはできず、小法廷判決とは異なる判決を下すことは困難であったと見るべきであろう。韓国の対日強硬力学 今回の大法廷判決に対して、韓国では与党=進歩(リベラル)、野党=保守という政治的立場を超えて歓迎したように、対日政策、特に対日歴史問題に関しては与野党の違いはない。一方で、歴史観の違いは保守と進歩の重要な対立軸の一つである。 1948年の大韓民国の成立以後の歴史を誇らしいものとして肯定的に評価する保守勢力に対して、進歩勢力は1987年以前の独裁時代を批判し、それ以後の民主化時代だけを肯定的に評価する。このように、相当に乖離した歴史観を持つ。しかし、この両者の間には、対日歴史問題に関しては相互に強硬な立場を競争するような政治力学が働くのである。 その背後には、保守勢力の歴史的ルーツが「親日」(日本の植民地支配の時代に植民地権力と協力したという意味)であると進歩勢力が批判的に見るのに対して、保守勢力は、そうした批判を免れるためにも、対日歴史問題に関してはより一層強硬な姿勢を示さなければならないと考えるからである。そうした「悪循環」が、韓国政治、さらには韓国社会における対日歴史問題をめぐる強硬化力学として作用する。 しかも、日本との関係は、1980年代までのような、非対称(日本と韓国とは国力や価値観が異なる)で相互に補完的な関係(日韓が相互に自らのために相手との協力が不可欠である意味)から、1990年代以後、対称で相互に競争的な関係へと大きく変容している。それが、韓国の対日強硬化力学を弱めるどころか、却(かえ)って強める帰結を後押ししている。 韓国から見ると、1965年の日韓国交正常化は日本に対して韓国が弱小国であった時代の産物であり、韓国が日本と対等に近い関係になった今こそ、それを是正するべきだという主張である。それに対して、日本社会の側は、以前は反共のための協力という名分に起因した韓国に対する「寛大」さがあったが、日韓の差が縮まってくると、いつまでも韓国に譲歩してばかりはいられないと、韓国の対日強硬姿勢に反発する感受性をますます高める状況にある。韓国政府主催の慰安婦記念日の式典に出席し、元慰安婦の女性にあいさつする文在寅大統領(中央)=2018年8月14日、韓国・天安(聯合=共同) このように考えると、特に歴史問題をめぐる日韓関係は時間の経過によって希釈されるようなものではなく、時間の経過とともに日韓双方から拡大再生産されていくという意味で、出口が見えないと、悲観論に傾斜することになる。こうした日韓の歴史に根ざした韓国社会の力学を、日本の政策によって一朝一夕に変えるということはほとんど不可能に近い。さらに、日韓は隣国として「引っ越し」ができない関係であり、朝鮮半島が日本の安全保障にとって重要であるという地政学的関係はかなりコンスタント(常に一定した)な条件である。 したがって、こうした社会力学を持つ韓国社会を与件として、そうした韓国といかに付き合うことで、日本にとって有利な安全保障環境を確保するのかを日本としては考えなければならない。韓国が日本にとって重要でも何でもなく、付き合わなくてもよいという関係であれば、そうすればいいだけだが、そういうわけにはいかないのである。これは、韓国にも同じことが言えるだろう。日韓関係に与える影響 韓国にとって望ましい日本、過去の歴史を心底反省して懺悔(ざんげ)する日本を期待するのかもしれないが、韓国の期待水準ほど日本が変わることは難しいだろう。しかし、韓国にとって日本は1948年以降の歴史が証明してきたように、依然として重要な存在である。したがって、そうした日本を前提としつつも、韓国にとって日本が重要な点で協力してくれるように、いかに付き合うのかを考えるしかないだろう。 この判決が日韓関係に及ぼす影響は、非常に重大なものである。韓国の司法も、また政府も、それを意識していなかったということではない。にもかかわらず、前述したような国内の力学のために、それを回避することが難しかったわけである。 本判決の論理を貫徹させると、植民地支配自体が不法なので、それに起因するあらゆる行為が不法行為として損害賠償の対象にもなりかねない。その時代を経験した生存者が減りつつあるとはいえ、その数は計り知れない。矢継ぎ早にこのような訴訟が提起され続けると相当に混乱した状況になってしまう。おそらく、そうした混乱は、韓国社会が「正義の貫徹」を主張することによって得られる「利益」以上の重大な損害を韓国社会にもたらすことになってしまうだろう。 さらに、これは日朝関係にも甚大な影響を及ぼすことが予想される。2002年の日朝平壌宣言によって、北朝鮮は日本の植民地支配に起因する補償の問題を、1965年の日韓国交正常化と同じような経済協力方式で行うことを確認している。しかし、その当事者である韓国の姿勢がそれとは異なるということになると、北朝鮮の対応や日朝関係にも影響を及ぼさざるを得ない。 文在寅(ムン・ジェイン)政権は朝鮮半島の平和体制の一環として、日朝国交正常化を日本政府に対して求めている。核問題や拉致問題の解決が条件となることは言うまでもないが、それがたとえ順調に行ったとしても、経済協力方式であれば日朝間の妥協は相対的に容易であったと考えられるが、本判決が主張するような植民地支配の不法行為に基づく損害賠償を個人にも広く認めるということになると、日朝国交正常化交渉も相当な困難が予想される。 日本政府としても、もちろん「売られた喧嘩(けんか)は買う」という姿勢で対応することもあり得るだろう。取りあえずは、請求権協定の仲裁制度の利用や、国際司法裁判所への提訴という可能性も取り沙汰されている。それは、以前も何度も繰り返されてきた、歴史問題をめぐる日韓「消耗戦」の様相を呈することになるだろう。日本にとっても韓国にとっても、それほど成果のある「戦い」になるのかは疑問である。韓国最高裁の判決について報じる10月31日付の韓国主要各紙=2018年10月31日(共同) 日本政府の強硬姿勢が韓国では連日のように報道されるたびに、本判決を危惧していた一部の韓国マスコミも、これを日韓の「歴史戦」「外交戦」として位置付けるようになっている。そうなると、マスコミや世論も韓国政府に対して、日本との間で安易に妥協することへの批判が高まる。これは、慰安婦問題をめぐる日韓関係で既に実証済みのことである。韓国政府に、本判決を尊重しつつ対日関係を悪化させないための、どのような知恵や妙案があるのか不透明感が残ることは確かだ。 韓国政府が主導して徴用工問題を解決するための財団を創設し、そこに日本政府や企業の協力を呼びかけるという「慰安婦方式」程度のアイデアしか出てこないようにも思う。しかし、「慰安婦方式」は慰安婦問題の解決に失敗したと韓国政府も自認するところである。勝ち負けの論理を超えて もちろん、その失敗原因は当事者に何の事前の相談もなく行ったからであり、今回はそれを十分に行うということは考えられる。しかし、それが解決策になり得るのかどうか、韓国国内においても、また日韓関係においても不透明である。にもかかわらず、現在は本判決に対する韓国政府の姿勢を粘り強く待つべき時であると考える。それへの対応は、その結果が出てからでも遅くはない。 にもかかわらず、日本でも強硬論が出てくること、特に政府与党において強硬論が突出することは、ただでさえ選択の幅が狭い韓国政府の対応をより一層狭くしてしまうことになると考えられる。しかも、その選択は、日本政府が期待するような日韓関係を重視する方の選択ではなく、本判決の貫徹を支持する韓国の一部強硬的な世論を重視する方の選択である。これは、日本にとっても賢明な選択ではないだろう。 日韓関係を「歴史戦」「外交戦」という勝ち負けの論理ではなく、この危機に伴うリスクをいかに管理するのかという「共同リスク管理」という発想で対応するべきではないか。そう主張するべき理由は明確である。日韓が置かれた現状は、短期的に見ても中長期的に見てもこうした「戦い」に没頭する余裕などないからである。 短期的な課題とは北朝鮮の非核化プロジェクトである。これは米中が協力しない限りは実現できないが、米中をそのように動かせられるのかは、北朝鮮の選択がもちろん重要だが、それ以外には日韓の協力が必須である。さらに中長期的には、中国の大国化に伴う米中関係の変容の中で、その一員である日韓がどのように発言力を確保し存在感を維持できるのかという問題である。 この課題を日韓は共有しているが、課題への取り組み方が現状では一致しているとは言い難い。果たして、そのままで日韓ともにこの死活的な課題にうまく取り組むことができるのか。何よりも、こうした課題は日韓の間に存在する歴史問題をめぐる対立よりも、生存に関わるという点で重要である。この点は、日韓ともに共有してもらわないと困る。会談前に文在寅大統領と握手する安倍首相=2018年9月25日、ニューヨーク(共同) 歴史問題に起因する相互の不信感に便乗して、お互いに信頼して協力などできないと放棄するのか、それともそうした現実を受け入れて、それでも相互の共通点を探りながら協力し得ることは協力して行くのか、そうした選択の岐路に立たされている。

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    徴用工「衝撃の判決」に文在寅の意向はどこまで働いたか

    李相哲(龍谷大学教授) 旧朝鮮半島出身労働者(以下「徴用工」)による訴訟で韓国大法院(日本の最高裁判所に相当)は新日鉄住金に一人当たり1億ウォン(約1000万円)の損害賠償を命じた。これに対し、安倍晋三総理は「ありえない判断だ」と切り捨て、河野太郎外相は11月6日の記者会見で「暴挙だ」「国際法に基づく国際秩序への挑戦だ」と批判した。 一方の韓国政府は、日本政府の反応について李洛淵(イ・ナギョン)首相が「妥当でなく賢明ではない」と応酬、日本が問題を外交的な紛争に追い込もうとするとして「遺憾」の意を表明した。 ただ、不思議なことに日韓関係の根幹を揺るがしかねない今回の事態について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は一言も触れていない。 そもそも、この問題に一番熱心だったのは文在寅氏だ。文氏は、法務法人「釜山」に弁護士として在籍していた2000年頃から徴用工問題にかかわった。三菱重工業広島機械製作所の労働者として強制的に徴用されたとする6人の代理人の一人として訴状、準備書面、証拠資料を集め裁判所に提出した。 この裁判は、1審、2審とも原告側の請求は棄却されたが、2012年5月、韓国大法院は「損害賠償請求権は消滅されていない」として原審判決を破棄、釜山高等裁判所に再審理を命じた。その後、釜山高等裁判所が三菱重工業に損害賠償を命じる判決を出したのは2013年7月、三菱重工業はこれを不服として上告し現在大法院に係留中だ。 大統領就任100日記者会見で文氏は、徴用工問題について次のように述べている。「両国間で合意(65年の日韓請求権協定を指すものとみられる)があったとしても強制徴用者個人が三菱をはじめとする日本の会社に対して有する民事的な権利(請求権)はそのまま残っているというのが韓国法院の判断だ。政府はそのような立場で過去史問題に臨んでいる」(2017年8月17日の記者会見)。 文氏は大統領就任前に、徴用工問題の訴訟を起こした張本人なのだ。大統領就任後もこの問題を追及し続け、司法判断にガイドラインを提示したといってもよかろう。 文政権発足後、韓国では政府の各部署に積弊清算(それまでに蓄積されてきた様々な弊害を一掃する)を目的とする作業部会がつくられ、過去の政府の「過ち」をあぶり出している。 市民団体から選ばれた活動家や左寄りの性向を鮮明にする文氏を支持する知識人らが主軸となる作業部会は、政府各部署に対する調査に当たっている。機密文書までひっくり返し「ミス」を発見しては責任者を断罪する調査はいまだに続く。司法部も例外ではない。 大法院で徴用工判決が出る直前に韓国検察は当該裁判を遅延させるため「裁判取引」を企てたとして朴槿恵(パク・クネ)政権時代の法院行政処や大法院などに対する捜査を行ったのもその一環だった。ソウル中央地裁に連行された韓国の朴槿恵前大統領(左)=2017年10月(聯合=共同) 朴槿恵政権下に裁判所は外交摩擦を懸念し、徴用工裁判を故意に遅延させ、その「代価」として、外交部に裁判官の海外派遣枠を増やしてもらおうとしたとして、検察が法院行政処長の逮捕に踏み切ったのは10月27日。韓国大法院が新日鉄住金に対し元徴用工への損害賠償を命じる判決を出したのは30日だ。 今回の裁判を担当したのは文政権発足後の2017年9月に大法院院長に任命された金命洙(キム・ミョンス)氏だ。金氏は、進歩左派傾向の強い判事の集まりとして知られる「ウリ(わが)法研究会」の会長を歴任し、文氏と同じ人権問題に取り組んできた法曹人として知られ、文氏が抜擢(ばってき)した人物だ。韓国にとってもマイナス 徴用工判決が下されるまでの一連の過程を見ると裁判に文氏が直接介入はしていないとしても、司法部が大統領の考えに影響されなかったとは言い難い。韓国の司法部が三権分立の原則を守れるほどの勇気があったかは疑問だ。 判決は、二つ深刻な問題をはらんでいる。まず、韓国大法院が日本の企業に賠償金支払いを命じたのは、韓国人労働者を強制に動員したことは植民地統治時代の「不法行為」に当たり、ゆえに個人の請求権は消滅していないという論理だ。 言い換えれば、植民地時代に不法行為に相当するものと判断されれば訴訟を起こし、勝訴する可能性が高いということだ。これから、徴用工に限らず、日本語の使用を強制されたのは不法行為だとして損害賠償を起こすことさえ可能かもしれない。 次に、日本植民地統治時代の「不法行為」に対する裁判は、韓国司法管轄の問題であると「確認」されてしまったことだ。例えるなら、フランス植民地統治を受けたアフリカの某国が、植民地時代のフランスの植民地統治時代の不法行為を裁くことが可能になったのと同じだ。 つまり、韓国大法院の判決はパンドラの箱を開けたといってもよい。法律を専門とするソウル大教授によると「今回の判決は、日帝強占時代(日本植民地時代)に行われたすべての不法行為に対し損害賠償請求訴訟を始められるという宣言だ」。 このような動きに対し日本政府は「韓国において国際法違反の状態が生じている」(11月7日、菅義偉官房長官)と懸念を表明、判決を断固受け入れるつもりはないという姿勢だが、今の文政権は、日本が納得できるだけの答えを出さないのではないか。 理由は主に二つある。まず、判決は、一部市民団体の情緒や左派寄りの政治理念を優先した判断だったとみるべきであり、文氏の政治性向、従来の日本植民地時代の歴史認識にも合致するものだからだ。 もう一つは、文政権の外交政策に通じる判断でもあるからだ。北朝鮮問題にすべてを賭ける文政権は、日本と連携を組んでいるとの印象を北朝鮮に与えたくない。政権発足後、韓国外相は中国に対し「3つをしない約束」(中国政府の主張)をしたとされる。 それは「日米韓関係を軍事同盟にはしない。アメリカのミサイル防衛システムには加入しない。高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を追加配置しない」というものだ。北朝鮮に配慮しての措置といえる。昼食会で韓国の文在寅大統領(左)から贈り物を受け取り笑顔を見せる金正恩委員長=2018年9月(平壌写真共同取材団) 今回の徴用工判決で日韓関係がギクシャクし、この問題が原因で日韓が協力しなくなれば、喜ぶのは北朝鮮だ。このような判断は決して韓国の国益にはならない。 最近、日本のソフトバンクや日産などグローバル企業112社は、韓国の釜山とソウルで「日本就職博覧会」を開催し日本で働きたいと思う韓国の若者の募集に力を入れている。将来、このような日本企業の決断が裏目に出ないことを祈りたい。

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    徴用工判決は文在寅「歴史見直し」3点セットの一環だ

    重村智計(東京通信大教授) 「元徴用工に賠償判決」。10月末、日本のメディアが一斉に報じた。韓国最高裁(大法院)の判決は「徴用工ではない」と言っているのに、「徴用工」と勝手に断定し、そのうえ「賠償」と誤報したのである。 筆者は30年の新聞記者生活を経て、大学教授を16年務めた。学生には、80%以上が同じ見解のニュースと世論は「危険だ、裏がある」と疑問を持って、違う記事を書く記者を探せ、と教えてきた。記者時代の先輩には、他紙と同じ記事を書くな、と教えられた。そうして、日本国中が「北朝鮮が戦争する」と騒いだ1995年に「北朝鮮は石油がなく、戦争できない」と『中央公論』に執筆し、世論を変えることができた。 大法院は10月30日、韓国人元工員に1人当たり1億ウォン(約1千万円)の支払いを新日鉄住金(旧新日本製鉄)に命じた。判決では、原告を「強制動員の被害者」と述べ、「徴用工」とは認定しなかった。また、「原告は未払い賃金や補償金を求めていない」と述べて「賠償」を否定し、「慰謝料請求権」を認めた。 原告側は「未払い賃金」と「補償金」賠償では勝てないと考えて、「慰謝料」を請求した。大法院は、これを認めたわけである。 巧妙な訴訟戦術だ。司法関係者や政府、団体関係者が知恵を絞ったのだろう。賃金の支払いや賠償金と違い、精神的苦痛などの慰謝料なら、労働の実態などの事実関係は争点にならない。判決では、根拠を示さず「強制連行の被害者」と認定した。これにより、植民地時代の強制連行被害者なら誰でも請求できる、との判例が生まれた。 「朝鮮人強制連行はなかった」。韓国を代表する経済史学者、ソウル大の李栄薫(イ・ヨンフン)名誉教授はこの事実を明らかにしている(拙著『日韓友好の罪びとたち』を参照)。日本の代表的な研究者も今では「強制連行」の言葉を使わない。ソウルにある韓国最高裁(共同) 戦前の朝鮮半島は、労働者の自由な渡日が制限されていた。民間企業は当局の許可を得て、「募集広告」を出した。「募集」は自発的な応募であって、強制連行ではない。 1942年からは「官斡旋(あっせん)」が実施された。村などの地方の行政単位に人数が割り当てられ、職員が住民を説得した。「徴用」は、1944年8月の「徴用令」では日本人が対象だったが、労働者不足により45年から朝鮮人にも拡大された。「徴用」は朝鮮人だけが対象ではなかったのである。なぜ無理な判決を下したのか 判決は、原告が「募集」に応じた労働者であると知っていたので、「強制労働の被害者」と認定した。なぜこのような無理な判決を下したのか。 第一の理由は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の支持率アップだ。文政権は、南北首脳会談が実現したのに、支持率低下を止められない苦境に直面している。経済状況が悪いからだ。もし「強制連行犠牲者」を敗訴にしたら、国民の怒りを買って、支持率はさらに下がるだけだ。 判決の背後には、文大統領をはじめとする左派勢力の思いと戦略があった。判決が日韓関係に衝撃を与えることは当初から予想していたはずで、大統領府や政府、そして司法部は日本への対応を練ったはずだ。そうでなければ、韓国の官僚は無能としか言いようがない。 判決は何を狙ったのか。「大統領支持率アップ」に加え、「日韓併合無効の確定」「日朝正常化の遅延」「日韓基本条約再交渉」「文大統領再選」―と見ていいだろう。一言で言うと、65年日韓基本条約の「ちゃぶ台返し」と、文大統領再選という二つの悪巧みだ。韓国大統領は、現憲法下では再選できないが、憲法改正すれば可能になる。 それを裏付けるのが、李洛淵(イ・ナギョン)首相の発言と、韓国外務省の「日韓両国が知恵を出し合う」との、おためごかしのコメントだ。李首相は「司法府の判断を尊重する」と述べただけで、「司法の独立」とは言わなかった。 韓国語で「司法の独立」と言うと、多くの韓国人がシラけ、鼻で笑われる経験を何度もした。司法が独立しているとは、韓国民は決して思っていないのだ。筆者もソウル特派員時代に、大統領府に判決内容を相談に来た裁判所長を目撃した。 韓国民は、昔から「司法は権力の僕(しもべ)」と語ってきた。それでも今回の判決に、多数の国民が「スカッとした」思いを感じたのは間違いない。国民は「強制労働」「不法な植民地支配」「反人道的な不法行為」の言葉に満足する。大統領の意向が判決に反映されたと一般庶民は思うだろう。2018年10月30日、韓国徴用工訴訟で新日鉄住金の上告を棄却した韓国最高裁大法廷(共同) 司法が独立していないと断じる根拠は大法院長官の経歴にある。金命洙(キム・ミョンス)長官の前職は、春川地方裁判所長であった。地裁の一所長が最高裁のトップに抜擢されたわけで、本来ありえない人事だ。金長官は、以前から「徴用工個人の請求権は消滅していない」との立場で知られていた。文大統領が同じ考えの裁判官を抜擢した、と考えるのが常識だろう。加えて、最高裁判事13人のうち7人が文大統領に任命されている。 判決は「植民地支配の不法性」を強調した。日韓併合を「国際法違反で無効」とする主張を、最高裁が公式に認めたのである。日韓併合「違法」主張のワケ 日韓併合はなぜ違法だというのか。韓国の主張は、1905年の第2次日韓協約を違法とし、それを前提にした1910年の日韓併合条約も違法としている。「日本軍の脅迫で成立したから無効である」との主張だ。判決は、この主張を確定した効果がある。 文政権は、この判決が日本と北朝鮮の国交正常化交渉に大きな影響を与えるとわかっていた。日朝国交正常化交渉で、「違法な植民地支配」「徴用工への慰謝料請求」を北朝鮮に要求させる計算だ。日朝交渉が紛糾するのは確実だ。韓国は日本の北朝鮮進出を望まないからだ。また、日本が「不法な植民地支配」と「慰謝料請求」を受け入れれば、日韓基本条約の再交渉を要求できる。 ところが、北朝鮮は韓国の「悪巧み」に気がついたのか、判決に沈黙を続けた。「歓迎」の立場を直ちに表明しなかったのは、韓国の「悪意」を見極めるのに時間がかかったからである。北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)主席が日本帝国主義に勝利した歴史を「正統性」の根拠にしており、韓国のように「歴史の立て直し」を必要としていない。 一方、韓国は日本と戦争し、勝利したわけではないので、「国家の正統性」にコンプレックスを抱いている。この心理克服のために「歴史立て直し」や「日本への勝利」を必要とする。だから、文在寅政権の「歴史見直し」戦略は今後も続く。「慰安婦財団解散」や自衛隊艦船の旭日旗掲揚拒否は、左派勢力が目指した「歴史立て直し」の3点セットであり、「対日勝利」のシンボルだ。 日本政府や企業も記録や資料を隠すのに懸命で、戦う意欲がなかった。日本的な対応は韓国文化に通用しない。植民地支配への反省から、日韓友好のために経済協力や韓国支援を進めた日本の好意は無駄だったわけである。2018年11月、シンガポールでASEAN加盟国の首脳と会談する韓国の文在寅大統領(聯合=共同) 韓国政府は日本と元工員に和解を呼びかけるだろう。和解文書に「判決を尊重する」との文章を入れさせ、「日韓併合違法」を日本が受け入れた、と主張する「悪巧み」を考えているだろう。 隣国との関係悪化は望ましくない。歴史を振り返ると、およそ1300年前の白村江の戦い以来、日本は朝鮮半島に関与しては敗北の連続だった。ようやく朝鮮戦争になって、関与しないことで「経済特需」を得たことが、歴史の教訓となった。 それまでは、中国が必ず介入する「半島の国際政治」を知らずに軍事介入し、儒教文化も無視してきた。だが、お節介と日本人の善意は押し付けでしかない。韓国大法院の判決は「歴史の教訓に学べ」と改めて日本人に教えている。朝鮮半島に深く関わると敗北し、裏切られることを忘れてはならない。

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    徴用工判決「国交断絶」は韓国に言わせるのが筋である

    宇山卓栄(著作家) 10月30日、韓国の大法院(最高裁判所)は元徴用工4人に対する賠償金を支払うよう判決を下した。大法院は新日鉄住金に対し、元徴用工1人当たり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じている。 これに対し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は様子見をしている。しかし大統領秘書室長の任鍾晳(イム・ジョンソク)氏は6日の韓国国会で、安倍首相や河野外相の発言を念頭に「最近、一連の日本の政治的な行動は非常に不適切で遺憾」と答弁した。 さらに韓国外交省は「節度ない過剰な反応」とのコメントを出した。李洛淵(イ・ナギョン)首相は「日本当局者たちは外交摩擦を引き起こしている」と会見で発言している。 これらが韓国政府の「正式な見解」である。さらに、任大統領秘書室長は「今後、日韓関係をそのまま維持すべきかどうか、検討している」と答弁している。「維持」などしてもらう必要はない。「検討」の上、日韓関係を破棄して、断交するなり断絶するなりしてもらいたいものだ。 日本から断交・断絶せよという声も国内にあるが、日本のような法治国家が韓国の稚拙な言動に対し、断交・断絶で報いるというのは国際社会に対し恥ずかしい。むしろ、韓国側にそれを言わせるべきだ。 韓国は1965年の日韓基本条約の国交正常化交渉が間違った不当な交渉だったと主張している。そうであるならば、韓国は正式に「日韓基本条約を破棄する」と言えばよい。それで、かつての国交正常化は白紙撤回となり、晴れて国交断絶となる。われわれの側から言うべき筋合いのものではない。 文在寅政権は革命政権である。今回の徴用工裁判判決をはじめ、彼らのやっていることは韓国版「文化大革命」である。合法的に当選し、政権を運営しているところは、1930年代のヒトラー政権にも似ている。韓国の文在寅大統領=2018年11月、済州島(聯合=共同) 例えば、文大統領支持者がセウォル号のマーク(2014年のセウォル号沈没事故犠牲者をしのぶマーク)を保守派勢力の家や店に貼る事件があった。朴槿恵(パク・クネ)前政権はセウォル号沈没の対応に失敗し、国民の支持を失った。そのため、セウォル号のマークは保守派を攻撃するために使われる。セウォル号のマークを貼る行為は、ナチスの突撃隊がユダヤ人の家や店に「ダヴィデの星」のマークを付けて襲撃した「水晶の夜」をほうふつとさせる。 また、朴前大統領の秘書室長であった金淇春(キム・ギチュン)氏が8月6日に仮釈放されたときには、左派団体のデモ隊が彼に一斉に、「恥を知れ!」などと罵声を浴びせた。金淇春氏は車に乗り込んだが、左派団体は車を取り囲み、興奮した者が車を蹴り上げ、モノを投げつけ、ついにフロントガラスを割った。 周囲に100人を超える警察官がいたが、警察官は左派団体の暴力・暴行を遠巻きに眺めるだけで、取り締まらなかった。今や文大統領を支持する左派勢力は文政権の「紅衛兵」みたいなものだ。もし、警察が彼らに手出しをして傷付けようものならば、警察も無事ではいられない。見てみぬフリをするしかない。文在寅の恐怖政治 文政権ににらまれているのは、政界関係者だけではない。崔順実(チェ・スンシル)ゲート事件で、汚職疑惑を追求されている財閥企業重役たちがいる。彼らは李明博(イ・ミョンバク)政権・朴槿恵政権の2代に渡り、保守政権を支えてきた。たたけばいくらでもホコリは出る。彼らを生かすも殺すも、現在の当局次第だ。 10月5日には、収賄罪などで李明博元大統領に懲役15年の実刑判決が出た。これは財界に対する脅しである。財閥企業はこぞって、文政権にスリ寄っている。そして、財閥をスポンサーとしているテレビ局もまた、財閥を忖度(そんたく)して文政権を持ち上げる一方で、保守派をおとしめる情報操作に余念がない。 このように、文大統領のあの温和な顔からはなかなか想像できないが、彼は恐怖政治によって徹底的に反対勢力を締め上げて、従北・左派の革命政権の基盤を築き上げようとしている。今回の徴用工裁判判決も、革命へ邁進(まいしん)する文政権にとっては「当然の使命」の一つなのだ。 文大統領は今までとまったく違う新しい革命政権を打ち出すために、過去を完全否定する。朴正熙政権が残した1965年の日韓基本条約のような「負のレガシー」は、真っ先に否定すべきものなのだ。国際法を順守しようとするわれわれの常識は彼らに通用しない。 徴用工裁判の判決が出る3日前の10月27日、韓国大法院(最高裁)付属機関、法院行政庁の林鍾憲(イム・ジョンホン)前次長が逮捕された。朴前政権の意向を受けて、徴用工裁判の判決を先送りした容疑を掛けられている。朴政権は判決が出ることで、日韓関係が悪化することを懸念していたのだ。 そして、11月6日、このことを裏付ける当時の対外秘文書「将来シナリオ縮約」が公開された。この文書は前述の金淇春大統領秘書室長(当時)が、裁判を遅延させ、消滅時効(3年)を過ぎさせるよう、司法に圧力をかけたという内容のものである。 今回、この文書の公開は決定打として利用された。元徴用工に対する日本の賠償責任を「認める者は善」、「認めない者は悪」という図式が見事に作り出され、韓国国民もこの図式にまんまと乗せられて、まともな判断ができなくなっている。文政権が用意周到に、徴用工裁判の判決を打ち出す計画を練っていたことがよくわかる。韓国・釜山の日本総領事館付近で、徴用工像をめぐり警官隊ともみ合う労働団体メンバーら=2018年5月(共同) 現在、検察は当時の大法院長(最高裁長官)らの関与についても捜査を進めており、新たな逮捕者が出る可能性もある。 文政権は「積弊」という言葉を使っている。これは「保守政権時代に積み重なった弊害」を意味している。「積弊」を清算するという大義名分の下、保守派や反対勢力を葬り去ろうという革命が進行中なのだ。今回の徴用工裁判判決は革命という歴史の大転換において現れた「現象の一コマ」にすぎない。 この左派革命の流れは最終的に、北朝鮮主導の赤化統一へと行き着く。それは、われわれにとって「荒唐無稽」なことであるが、彼らにとっては「遠大で偉大な目標」なのである。実際に、それへと向かう布石が今、一つ一つ着実に打たれている。