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    なぜ韓国は「ライダイハン」に無関心でいられるのか

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」。韓国で「自分に甘く、他人に厳しい」、つまり「身内びいき」や「ダブルスタンダード」を指して語られる言葉である。 「ライダイハン」とは、「韓国系のベトナム人」を意味する言葉である。もともとはベトナム語で「Lai Đại Hàn(𤳆大韓)」と表記するが、韓国でも一般に広く用いられている。 なぜ、韓国の隣国でもないベトナムに「韓国系ベトナム人」が存在するのだろうか。これは、韓国のベトナム戦争参戦が原因である。韓国は1964年からベトナムに派兵し、本格的にベトナム戦争に参戦した。ベトナムに赴いたのは韓国軍の軍人だけではない。軍人とともに数多くの労務者や韓国企業の労働者が特需を求めてベトナムに殺到した。大韓航空を傘下に収める「韓進」は軍需品の輸送で、「ヒュンダイ」の名で知られる「現代」は土木・建設分野で、今はなき「大宇」は繊維製品をはじめとする軍需品の生産で大きく飛躍した企業である。最盛期には、5万人の韓国軍がベトナムに駐留し、それに伴って韓国人労働者の数も2万人まで増加した。その過程で韓国人男性とベトナム人女性の間に数多くの「韓国系ベトナム人=ライダイハン」が誕生することになった。南ベトナムの大統領官邸に突入した北ベトナム軍戦車と兵士 =1975年4月(古森義久撮影) 1973年のパリ平和協定に伴って韓国軍がベトナムから撤退し、75年の南ベトナム(ベトナム共和国)の崩壊とともに韓国企業や韓国人労働者もベトナムから撤収することになった。統一されたベトナムで「ライダイハン」は「敵軍との間に生まれた子ども」としてさまざまな圧迫や差別に直面することになった。ちなみに「ライダイハン(𤳆大韓)」の「𤳆」は「ハーフ」をあらわす接頭辞であるが、そこには多分に軽蔑の意味が込められている。 現在、「ライダイハン」の正確な数は把握されていない。1500人から3万人までさまざまな数字が提示されているが、公式的な統計は現在も存在しない。その内幕については公にされていないが、強姦や売買春の他に、韓国人の「現地妻」が生んだ「ライダイハン」も相当数存在すると思われる。「ライダイハン」の居住地は韓国軍が駐屯していたホーチミン(サイゴン)、クィニョンなどであり、首都・ハノイにはほとんど居住していないという。ライダンハンが「美談」に 92年に韓国とベトナムは国交を回復したが、修好に際し韓国の盧泰愚大統領(当時)は「ライダイハン」に対して、謝罪どころか何の言及もしなかった。ただ、修好が契機となり、韓国国内で「ライダイハン」に対する関心が一時的に高まったことも事実である。修好直後には「『ライダイハン』が生みの父と再会した」などというニュースが「美談」として報じられもした。 94年2月には韓国南部の馬山の短大に留学していた「ライダイハン」が23年ぶりに韓国人の父親と再会し、韓国のマスコミは「韓国人の父親の国で技術を学びに来て、23年ぶりに生みの父に会う喜びをかみしめた『ライダイハン』」などと浪花節調に報じていた。ただし、そうした関心も一時的なもので、韓国政府が「ライダイハン」に対して積極的な対応策を取ることはなかった。韓国の民間団体やキリスト教宣教団体がベトナム現地で「ライダイハン」に対する支援事業を行うことはあったが、現在に至るまで、韓国政府が公式的に「ライダイハン」について何らかの支援処置を講じたことはない。また、大多数の韓国人も「ライダイハン」については無関心のままであった。英国で設立された民間団体「ライダイハンのための正義」の看板 =2017年9月、英ロンドン(岡部伸撮影) これは、ベトナムにおける韓国軍の蛮行が韓国国内ではまったく報じられてこなかったためでもある。韓国軍がベトナム戦争において民間人虐殺や婦女子強姦などの悪行を働いてきたことは周知の事実であるが、韓国では、90年代中盤になるまで完全に隠蔽(いんぺい)され、公の場で語られることはなかった。90年代の中盤から韓国の進歩系メディアによって、ベトナム戦争における韓国軍の蛮行が明らかにされ始めたが、そうした報道がなされる度に、ベトナム参戦兵の団体からの妨害や襲撃が繰り返されてきた。 「ライダイハン」に対して語ることは、韓国軍の強姦や買春、韓国人労働者の無責任な養育放棄に触れることにほかならず、「自由陣営の一員として民主主義を守るためにベトナムで戦った」韓国の国家的な威信を傷つけることにつながるからである。そうした韓国で「ライダイハン」に注意を払う韓国人が皆無だったとしても不思議ではない。 韓国のキリスト教系放送局であるCBSは、昨年11月14日、韓国軍の強姦によって生まれた「ライダイハン」が、ベトナムで「敵軍である韓国軍の子」として迫害を受け、就学や就職、就業などでさまざまな差別を受けている実態を放送している。この放送では、韓国の国防部(国防省)が「現在でも、韓国軍の強姦問題については事実関係が明らかではないため、当分の間、別途の調査計画がない」という立場を取っていることも報じられた。日本に対しては慰安婦問題などで「反省」や「謝罪」を要求してくる韓国人であるが、いざ自分のこととなると、「反省」や「謝罪」どころか、調査すらしないのである。「新ライダイハン」問題とは? ベトナムで差別され、韓国からも見放された孤立無援の「ライダイハン」の中には、韓国で訴訟を起こし、自らの父親が韓国人であることを立証して、韓国国籍を取得することができた者もいる。2000年代に入るとこうした父親との血縁関係確認訴訟が相次ぐようになった。ソウル中央地方裁判所 =韓国・ソウル(撮影・桐山弘太)  2002年7月26日、ソウル地方裁判所は産業研修生として韓国に入国した「ライダイハン」R氏が父親を相手に起こした訴訟で、「血縁関係が認められる」という判決を下している。注目されるのは、その「血縁関係」の内幕である。判決は、「父親の李○○氏はベトナムのホーチミン(旧サイゴン)で自動車修理工として勤務していた去る69年にベトナム人女性に出会い、原告が生まれた後、74年にベトナムの国内法に従って結婚したという事実が認められる」として、原告勝訴の判決を下している。要するに現地で結婚しておきながら、妻子を捨てて韓国に帰国していたわけである。李氏は控訴せず、R氏は李氏の戸籍に「子」として記載されることになり、遺産相続や韓国国籍取得も可能になった。ただし、これは父親が韓国人であるということが立証できた場合に限られている。 また、韓国国籍の取得と韓国国内での就職を目指すR氏のようなケースは、「ライダイハン」の中で少数派である。韓国とベトナムの経済関係が発展するにつれ、「ライダイハン」の境遇もある程度改善されたからである。2世、3世の「ライダイハン」の中には、その出自を生かしてベトナムに進出した韓国企業に就職し、一般のベトナム人よりはるかに高い給与と恩恵を享受している例も散見される。必ずしも「ライダイハン」のすべてが偏見と差別に苦しんでいるわけではないのである。 「ライダイハン」の境遇は改善されつつあるようだが、ここに来て新たに「新ライダイハン」の問題が台頭している。「新ライダイハン」とは、92年の修交後、ベトナムに進出した韓国人男性とベトナム人女性の間に生まれた子供のことである。なぜか、韓国人は事業で海外などに進出した場合、「現地妻」を囲う傾向があるようで、1999年7月14日付聯合ニュースは、ベトナムに事業目的で居住する韓国人の30%程度が「ベトナム人現地妻」を囲っていると報道している。問題は、こうした韓国人男性が「現地妻」と、「現地妻」に産ませた子供を放棄して帰国してしまう事例が後を絶たないということである。韓国では、いまだ「新ライダイハン」についてあまり公に語られていないが、遠からず問題となることは明らかである。なぜなら、フィリピンに事業目的で進出した韓国人とフィリピン人「現地妻」の間に生まれた子供による認知が、すでに大きな問題になっているからである。韓国人がやればロマンス? 韓国人とフィリピン人「現地妻」との間に生まれた子供を「コピーノ」と呼ぶ。「ライダイハン」同様、「コピーノ」の数は正確に把握されていないが、ECPAT(アジア観光における児童買春根絶国際キャンペーン)関連団体の集計によると3万人にも達するという。2014年には、「コピーノ」の兄弟が事業家である韓国人男性を相手取って起こした訴訟において、ソウル家庭裁判所が「嫡出子であることを認知する」という原告勝訴判決を言い渡している。 被告の韓国人男性は90年代末にフィリピンで現地女性と同居し、二人の息子をもうけたが、2004年に韓国に帰国し連絡を絶ったという。この当時、同様の訴訟が9件も進行中で、被告はいずれも事業や留学を目的としてフィリピンに赴いた韓国人男性だった。過去、日本人男性もフィリピンで現地女性との間に子供(「ジャピーノ」と呼ばれる)をもうけた後、養育を放棄する事例があり、大きな社会問題になったことがあるが、それと同様の問題が韓国でも起きているのである。ただし、日本は法改正を行い「ジャピーノ」の国籍取得の簡略化に努めている反面、韓国政府はまったく無関心である。そのため、子供の認知訴訟のために韓国に入国しようとしたフィリピン人女性が、経済事情を理由にビザの発給を受けられないという事態まで起こっている。画像は本文と関係ありません(画像:istock) 現在、「新ライダイハン」の数は1万人に達しているとされるが、「コピーノ」同様、韓国政府は何らの対策もとっていない。キリスト教系放送局であるCBS「ノーカットニュース」は2008年12月25日、「新ライダイハン」出生の事例と、現在の境遇について報じている。報じられた事例は、ホーチミンに住むベトナム人女性Aさん(32)とBさん(26)のケース。Aさんはベトナムに進出した韓国企業で出会った韓国人男性との間に息子1人をもうけたが、男性は2005年5月に帰国後、連絡を絶った。Aさんはシングルマザーとして息子を育てている。Bさんの夫である韓国人男性(56)は「病院治療に行く」という名目で韓国に帰国、消息不明となった。後にBさんの夫は営んでいた水産事業に失敗し、韓国に逃亡したことが判明。Bさんもシングルマザーとして6歳の息子を育てている。今後、「コピーノ」同様、こうした「新ライダイハン」による認知訴訟が起こされ、韓国の新たな社会問題になることは容易に想像がつく。 昨年、韓国では、ベトナム修好25周年を記念する映画『パパの川』の制作が発表された。この映画は韓国・ベトナムの共同制作で、「韓国人の父親とベトナム人の母親との間に生まれた主人公が韓国でオーディション番組に参加してスターとなり、父親に会うという内容」だという。昨年の8月30日には撮影地である南東部の都市、蔚山で制作発表会も開かれた。実は、韓国ではこれまでも「ライダイハン」を題材とした映画やドラマが製作されてきた。こうした作品の中には「ライダイハン」が置かれている境遇を真摯(しんし)に扱った作品もあるのだが、報道を見る限り『パパの川』がそうした内容だとは到底思えない。「ライダイハン」が生まれた経緯や実態把握には大した関心がないくせに、こうした興行活動にはやたらとご熱心な韓国人の姿勢には、正直、強い違和感を抱かざるを得ない。日本に対しては、事あるごとに「正しい歴史認識」と、「過去に対する謝罪」を求めている韓国人だから、なおさらなのである。 やはり、「他人がやれば不倫、自分がやればロマンス」ということか。

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    ベトナムが韓国の戦争犯罪を今も黙殺する理由

    が他の国をどのような名称で呼んでいるか、というところに国家同士の関係性が表れることがある。ベトナムが韓国に対して用いてきた国名の表記は、その典型的な例だろう。 ベトナムと朝鮮半島は、いずれも冷戦期に2つの陣営に分断され、北に共産主義(社会主義)政権、南に親米政権が成立し、同じ民族の間で悲惨な戦争が繰り広げられたという共通の歴史をもつ。ベトナムでは、1975年に北が南を武力制圧する形で戦争が終結し、ハノイを首都とする北ベトナムの共産党政府主導の下、現在のベトナム社会主義共和国が成立した。ベトナム共産党政府は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と1950年に国交を樹立しており、一貫して同国を朝鮮半島の正統な国家と認めてきた。したがって、ベトナムにとって「朝鮮」とは北朝鮮を意味し、「北」を付けて呼ぶことはない。一方、韓国を指すときの名称は、ベトナムの対外政策とともに変化してきた。 ベトナム戦争期の1963年から1973年までに、米国の同盟国である韓国からも30万人を超える兵士が南ベトナムに派遣された。韓国軍の戦死者は約5000人とされているが、韓国兵に虐殺されたベトナムの民間人は、5000人とも9000人とも伝えられている。韓国兵は「ダイハン(大韓)」と呼ばれ、米兵以上に勇猛で残虐なことで知られていた。 韓国兵とベトナム人女性との間に生まれた子供は「ライダイハン(大韓との混血児)」と呼ばれ、正確な数は不明だが、数千人に及ぶとされている。中には韓国兵による性的暴行の結果、生まれた子供もいるという。そのような背景からも、南北統一後にベトナム政府がかつての敵の呼称「大韓」を用いることはなく、韓国は「南朝鮮」と呼ばれていた。ベトナム共産党大会を前に党スローガンの横断幕が張られたハノイ市内の通り=2006年4月14日、(共同) 戦争終結後も米国や韓国を敵の陣営とみなしていたベトナムだが、南部の社会主義改造の失敗と難民の流出、カンボジアへの侵攻によって、未曾有(みぞう)の国際的孤立と経済困難に陥り、内外路線を大きく転換するに至った。それが1986年12月に採択されたドイモイ路線である。ドイモイの骨幹は市場経済化と対外開放で、全方位外交の一環として韓国との関係改善も図られた。その過程で、韓国を指す呼称は「南朝鮮」から一時「朝鮮共和国」に変更された。共和国というと北朝鮮のようだが、韓国も共和制であるため、このような字句が使用されたようだ。その後、1992年の国交樹立を前に「ハンクォック(韓国)」という呼称が用いられるようになり、現在に至っている。ベトナム共産党政府は過去を黙殺 その韓国は、今やベトナムにとって最大の友好国の1つである。政治・安全保障面では、韓越の関係は2009年に「戦略的協力パートナー」と認定された。両国間では、2012年から国防次官級対話が定期的に開催され、軍事・防衛協力が進められている。中国が南シナ海で軍事的行動を拡大している現在、ベトナム共産党政府にとって韓国は、日本と並ぶ重要な戦略パートナーである。経済面では、2015年12月に両国の自由貿易協定(VKFTA)が発行したことを契機に、貿易が著しく増加した。 2016年のベトナムから韓国への輸出は114億1900万ドルで、米国、中国、日本に次ぐ第4位、全体の6.5%を占める。輸出の伸び率は、中国へのそれに匹敵する27.8%に及んでいる。韓国からの輸入は320億3400万ドルで、中国に次いで第2位、全体の18.4%である。輸入品目の第1位である機械設備も、第2位のコンピューター・電子製品も、韓国からの輸入が20%を超える。同年のベトナムへの直接投資でも、韓国は1263件、68億9600万ドルで第1位(日本は第2位)で、投資件数全体の32.7%、金額全体の30.8%に及ぶ(JETRO世界貿易投資報告、最終アクセス2017年12月17日)。英国で設立された民間団体「ライダイハンのための正義」の看板=2017年9月12日、ロンドン(岡部伸撮影) このような韓越の関係は、両国の公的な歴史認識にも影響を及ぼしている。伊藤正子の研究によれば、1990年代末から、韓国のメディアや非政府組織(NGO)によって、韓国兵によるベトナム人に対する虐殺・暴行の事実が明らかにされ、両国の市民レベルで歴史を見直し、和解と平和をめざす活動が進められた。しかし、両国の政府は、過去の歴史が韓越関係の障害になることを避けるため、国内の報道や市民活動を規制する措置をとった(伊藤正子『戦争記憶の政治学─韓国軍によるベトナム人戦時虐殺問題と和解への道』平凡社、2013年より)。 2017年9月、イギリスの市民活動家ピーター・キャロル氏の呼びかけにより、ロンドンで市民団体「ライダイハンのための正義」が設立され、ライダイハンへの支援や事実関係の調査が行われることになった。韓国の国内、特に軍関係者の間では、ベトナム戦争への派兵は、共産主義に対して自由世界を守った正義の行為であり、「武勇伝」として語られている。ベトナム共産党政府も韓国との関係を重視し、それに影を落とすような過去の事実は黙殺する態度をとっている。ライダイハンの検証は「反国家宣伝」 韓国では、市民が国家の方針と異なる意見を発信したり、政府に批判的な活動をしたりすることは自由だが、ベトナムで共産党の指導に異を唱えることは難しい。党の公的な歴史認識から外れる言論や行動は、「敵の諸勢力」と結託した「反国家宣伝」「人民政権転覆の陰謀」として、刑法による処罰の対象となることもある。このような形での市民権の制限が欧米諸国から批判されると、ベトナム共産党政府は、社会主義体制の崩壊をもくろむ「和平演変」とみなして反発する。 現在のベトナムの公的史観は、「共産党の常に正しい指導」による社会主義革命と民族解放闘争の歴史に沿ったものであり、勝者の側から語られる物語である。一方、韓国軍に虐殺・暴行された人々は、共産党の敵であった南ベトナム地域の住民で、党の「輝かしい勝利」には貢献しなかった人々である。南北統一後、ベトナム共産党政府は南部の市民、宗教者、少数民族などによる、党から独立した活動を警戒し、厳しく統制してきた。韓国軍による虐殺・暴行についても、諸外国の働きかけで南部の人々が自発的に史実を検証し、その情報が国内と国際社会で共有されることは、ベトナム共産党政府にとって警戒すべきことなのである。ベトナム中部ダナンで会談し、握手する韓国の文在寅大統領(左)とベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席=2017年11月11日、(聯合=共同) 現在のベトナム共産党政府は、もはや過去の民族解放の実績だけでは支配の正当性を主張できない。経済発展の実績のみが共産党支配の正当性のよりどころであり、体制維持に不可欠の条件である。そのため、韓国を含む資本主義諸国との経済関係を拡大することが、自国民の意思よりも優先されるのである。「南朝鮮」を敵視する路線から、「韓国」と歩み寄る路線に転換した国家は、「ライダイハンのための正義」に対してどのような態度をとるのだろうか。

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    マニラ慰安婦像への「抗議」でわかった国益を損なうご都合主義

    の立場と相いれない』と抗議した」(読売新聞12月13日朝刊)と書かれていたことである。日本はこれまで韓国に対して、歴史に対する捉え方は立場によって違いうると説いてきたはずだ。だから、韓国が主張する「正しい歴史認識」を日本に押し付けるなという意味だ。それなのに、フィリピンには日本の立場を押し付けて当然だというのだろうか。 日韓関係の文脈で有名なのは、2013年2月の朴槿恵大統領就任式に日本政府代表として出席した麻生太郎副総理兼財務相のエピソードだ。就任式後に朴氏と会談した麻生氏は「米国内でも南北戦争に対する評価は北部と南部で違う」ということを例に出して、歴史認識とは相対的なものであると説いた。朴氏はこれに激怒した。お祝いの席でわざわざ相手を怒らせるのはほめられた話ではないが、歴史の見方は相対的なものだという点への異論は少なくとも日本国内では多くなかった。 それだけではない。そもそも、この記事でいう「日本政府の立場」が何かという大事な点が理解できないのである。釜山の少女像の場合には、2015年の日韓合意の「精神」に反していることは明らかだ。だから日本政府は大使召喚などという厳しい措置に踏み切ったわけだが、当然ながらフィリピン政府は日韓合意の当事者ではない。この場合に問題となる「日本政府の立場」というのは意味不明なのだ。 不思議だったので、「読売新聞に出ている日本政府の立場とは何を意味するのか」と外務省に問い合わせてみた。フィリピンでは暴力的拉致の慰安婦集めも 返ってきたのは「フィリピンとの間ではサンフランシスコ講和条約で法的責任に関する問題はすべて解決済みというのが日本政府の立場だ」という答えだった。それはそうなのだが、サンフランシスコ講和条約では日本も対米請求権を放棄し、法的責任の問題を解決させている。法的責任の問題が解決された後に慰霊碑を建てたらいけないという理屈だとすると、東京大空襲や原爆の犠牲者を慰霊する碑を建てることも米国政府から文句を言われかねないことになってしまう。 空襲や原爆の慰霊碑を建てるなと日本が米国に言われる筋合いはないはずだ。それが分かっているからなのか、菅義偉官房長官の記者会見での答えはそれほどストレートなものにはなっていない。フィリピンのドゥテルテ大統領との会談後、記者会見する野田総務相=2018年1月、マニラ(共同) マニラの慰安婦像建立について質問された菅氏は「諸外国における慰安婦像の設置は極めて残念」だという一般論を述べつつ、「フィリピン政府と相談して対応したい」と語った。記者からさらに「撤去を求めるという理解でいいか」と問われると、菅氏は「まず諸外国における慰安婦像設置はわが国政府の立場と相いれない極めて残念なことだ」という一般論ともいえる発言を再びしてから、「外務省からフィリピン政府に対してすでに申し入れを行った」と答えたのである。「わが国政府の立場」という言葉が出てくるものの、やはり明快なものではない。  外務省関係者に聞くと、「抗議と書いた新聞があるのは事実だが、政府として『抗議』という言葉を使っているわけではない。フィリピン政府に『残念だ』という思いを伝えたということだ」と話す。官邸周辺に「撤去させろ」と息巻いている人がいることは想像に難くないが、そんなに簡単な話ではないのである。 さらにフィリピン特有の問題がある。「南方の占領地域では、フィリピンの第十四軍は軍紀が乱れているとの定評があった」(秦郁彦『慰安婦と戦場の性』新潮選書)。他の占領地と比べても日本兵によるレイプが多発していたことが、当時の軍法会議の記録などから明らかになっている。慰安婦の募集にしても、フィリピンやインドネシアといった占領地では強制連行としかいえないケースがあった。日本の植民地として行政機構が整備され、業者に任せておけばよかった朝鮮とは全く事情が異なる。 「日本政府が撤去を求めたのは当然だろう」と論じた読売新聞社説(12月15日)も、「1942年から45年までの占領で、フィリピン各地に慰安所が設けられた。一般女性が一部の現地部隊によって暴力的に拉致されたケースも報告されている」と書いている。 事情を知る外務省幹部は「フィリピンでは日本軍は本当にひどいことをやった。現地にはその記憶がある。『悲劇を忘れないために慰霊碑を作ろう。おカネは私たちが出す』と言われたら、現地の人たちは『ぜひ』となる」と話す。「慰安婦」日韓合意の中身は何か 幸いなことに1990年代に設立されたアジア女性基金による元慰安婦への「償い」事業は、フィリピンでは順調に進められた。かつては反日感情が強かったが、近年の日比関係は極めて良好だ。そうした関係に慰安婦像が波紋を巻き起こすのは残念だが、それだけに日本側としては不幸な歴史に目配りをした慎重な対応をしなければならない。 慰安婦問題に関しては、韓国外務省が日韓合意の検証結果を年内にもまとめる。それを前に改めて考えておくべきなのは、合意の中身は何だったのかということだ。 東京の韓国大使館員からは「日韓合意は慰安婦問題を解決するためのものであって、なかったことにしようというのではない。今の日本では、慰安婦の『い』の字を口にするのも問題だという雰囲気を感じるが、それは行き過ぎではないのか」という愚痴を聞く。釜山の少女像に象徴される韓国側の無神経さがそうした空気を作った面はあるのだが、日本側で拡大解釈が目立つのも事実である。 日韓両国の外相が2015年12月28日にソウルの韓国外務省で発表した合意内容を振り返ってみよう。 すべての前提となる認識は、旧日本軍の「関与の下」で女性の名誉と尊厳を傷つけたことに「日本政府は責任を痛感している」というものだ。この認識に従って、安倍晋三首相が「日本国内閣総理大臣として心からおわびと反省の気持ちを表明する」とされた。ただし、これは安倍首相がカメラの前で自ら語ったわけではなく、岸田文雄外相(当時)が「安倍首相のおわびと反省」を読み上げる形だった。 さらに両国の約束として、▽韓国政府が元慰安婦を支援する財団を設立する▽日本政府が財団に10億円を拠出する▽国連など国際社会において相互非難をしない▽合意がきちんと履行されることを前提に、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する——ことが明示された。 岸田氏はこの際、財団について「日韓両政府が協力し、すべての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行う」と語った。一方で韓国の尹炳世外相(当時)は、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と表明している。尹外相の言葉は、日本が少女像を問題視していることを受け止め、移転へ向けて努力するという意味だ。 合意に従って、韓国は「和解・癒やし財団」を設立し、日本は政府予算から10億円を拠出した。財団は元慰安婦や遺族に現金を支給する事業を行い、合意時点での生存者47人のうち7割超となる36人が事業を受け入れた。一方で、日本大使館前の少女像問題に進展はないまま、釜山の日本総領事館前に新たな像が建てられた。合意の再交渉を選挙公約にしていた文在寅大統領は、当選後に「再交渉」を口にしなくなったものの、合意の検証を進めさせている。韓国大使館員がぼやく「日本の過剰反応」 本来は行われるべきであるのに、そうなっていないことの筆頭は少女像の問題だろう。大使館前の少女像を移転させる問題に進展が見られない中で、釜山の日本総領事館前の公道上に新たな少女像が設置されるのを韓国政府が黙認したことは明らかに問題だ。「釜山の日本総領事館前には少女像を作らせない」と明示されているわけではないものの、明らかに「合意の精神」に反している。 同時に、合意をまとめた朴槿恵政権が世論を説得する十分な努力を行わなかったことも指摘できる。少女像の問題がこじれたのも、この点に起因するといえる。ただし、日本側は10億円拠出で義務をすべて果たしたかというと、これもあやしい。岸田氏は「日韓両政府が協力して」財団の事業を進めていくと表明したが、韓国世論の反発を受けて苦労する財団を積極的に支援したとは言えないからだ。 一方で、政府間の合意が民間の活動を縛るわけではない。民間団体が私有地に像を建てる限り、政府ができることは限られている。政府の行為にしても、何もしてはならないと合意されたのではない。むしろ、元慰安婦の名誉と尊厳の回復を図る事業は財団設立のように進めていこうというのが「合意の精神」だろう。 では、韓国大使館員がぼやく「日本の過剰反応」とは何か。 代表的なのが、韓国政府が今年9月に国立墓地内への元慰安婦の慰霊碑建立計画を発表したことへの反応だろう。日本では「慰安婦問題を蒸し返すのか」と反発する声が出て、菅官房長官も記者会見で「日韓合意の趣旨、精神に反する」と述べた。 ただ、「すべての元慰安婦の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やし」が合意の目的であるのだとすれば、慰霊碑の建立自体がその趣旨から外れると言えるのだろうか。碑文に事実と明らかに違う文言が刻まれるのであれば、それは問題だ。それでも「そうなるに決まっている」と決め付けるよりは、問題のある内容にならないよう働きかけることの方が生産的ではないだろうか。2017年12月、フィリピンのマニラ湾に面した遊歩道に建った慰安婦像の台座下に埋められたプレート。英語で説明書きされている 慰安婦問題は、国際社会への「宣伝」合戦になってしまっている。本来は望ましいことではないが、日本として放置しておくこともできない。アジア女性基金や日韓合意を含めた日本のこれまでの取り組みや、そもそもの慰安婦制度をめぐる事実関係について日本の立場を国際社会に説明していく必要はある。事実と違う宣伝が、あたかも事実として流布されることは望ましくないからだ。逆効果になりかねないご都合主義の情報発信 ただし、重要なのは歴史的資料を真摯に扱う姿勢だ。既に見つかっている資料であるにもかかわらず、自らに都合が悪いからと無視したり、いかにも無理な解釈を付けたり、ということをしてはならない。そんなことをすれば、第三者からの信用を失うだけである。 現代史家の秦郁彦氏が著書『慰安婦問題の決算』(PHP研究所、2016年)の「あとがき」に書いているエピソードは、そうしたことを深く考えさせる。秦氏の著書『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999年)の英訳に関する話だ。「私観を避け史的経過を軸に、左右を問わず研究者、一般読者が参照しうるエンサイクロペディア(百科全書)にしたい」という狙いで執筆された同書は、専門家からも高い評価を得ている。 秦氏は「あとがき」で「国際世論の誤認、誤解を解くのに、説得工作やロビー活動は要らない」と指摘する。そして、「典拠を明示した第一次資料に依拠する実証的学術書の英訳版を1冊だけ送りだせば足りると私は判断している。事実は何よりも強いから、それに則した材料を提供すれば、対処策は英語世界の読者が決めてくれるはずだ。説得を焦るあまり押しつけがましくなるのは、むしろ逆効果を招きやすい」と説く。きわめて重要な視点だろう。 「あとがき」によると、秦氏の考えが伝わったのか、外務省の有識者会合が慰安婦問題に関する対外発信の一環として『慰安婦と戦場の性』の英訳を勧告し、2013年夏に内閣官房の事業として英訳出版されることが決まった。ところが、11月になって事業を担当する内閣広報官に突然呼び出され、英訳にあたって一部を削除したいと告げられたという。第二次大戦前後の英米独仏ソをテーマにした第五章「諸外国に見る戦場の性」について、「外国人の読者を刺激するおそれがある」という理由でまるまる削除するよう求められた。 秦氏が「他に削りたい箇所があるか」と聞くと、「上海の慰安所で検診していた麻生軍医の回想録から、日本人慰安婦に比べ朝鮮人は若く初心の者が多いと引用したくだりも落としてくれ。他にもいろいろあるが…」という答えが返ってきたそうだ。秦氏は拒絶したので、英訳の話自体がなかったことになってしまった。不当な削除要求によって、意義のあるプロジェクトがつぶされてしまったことは極めて残念である。さわだ・かつみ 毎日新聞記者、前ソウル支局長。1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

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    「慰安婦教」に群がる韓国フェミニストの理不尽なウソ

    著者 高木右昌(ゆうま) 評論家の室谷克実氏の言葉を借りれば、「慰安婦教」が韓国で猛威を振るっている。慰安婦に関する歴史的な事実関係は学術的論議の対象ではなく神聖不可侵たる信仰になった。韓国の右派の中にも、慰安婦問題は従北左派による分断政策の一環であることを見抜いている人は多い。著書『帝国の慰安婦』が名誉毀損(きそん)罪に問われた世宗大学の朴裕河(パク・ユハ)教授のような学者もいる。 しかし、真面目に史料をもって慰安婦の強制性について反論を繰り広げたり、細かい事実関係を基に捏造(ねつぞう)された部分を指摘したりしても手応えはない。現在韓国の世論を主導しているのは左派政権だからだ。その支持勢力の中でも主流と呼べる「韓国フェミニズム」の流れがその背景にある。 韓国には女性家族部という政府機関があってフェミニズムの制度的基盤となっている。その所轄に「性売買防止及び被害者支援に関する法律」というのがあるが、注目すべきは支援を受ける性売買被害者の範囲だ。 「性売買被害者」であれば、常識的には自分の意思に反して性売買を強制された人を指す。自ら進んで性を売る人を被害者とは言わない。では、現代の韓国で売春を強要された性売買被害者の基準は何か。性売買被害者支援法の支援対象を見れば明らかになる。【赤丸部分】支援対象:性売買被害者および性を売る行為をした者(韓国・女性家族部のホームページより) ということになっている。性を売ったすべての人が法律で定める性売買被害者支援を受けられるようになっているのだ。具体的にいうと、性売買被害者支援法では性売買被害者の定義を「性売買斡旋(あっせん)等の行為の処罰に関する法律」に委ねている。この法律上の性売買被害者の範囲は「偽計、威力、それに準ずる方法で性売買を強要された人」(法第2条1項4号)になっている。それが性売買被害者を支援する段階には「性を売る行為をした者」になっているのだ。 よくフェミニズム団体が主張する「自発的な売春はない」という認識がある。性を売る者すべては何らかの事情によってやむを得ず性を売っている、これは自発的ではなく強要されたのと同然なので被害者なのだという論理だ。キリスト教でいう「すべての者は罪人だ」というのと正反対の立場である。ここに、韓国で慰安婦の強制性に対する反論が支持を集めにくい背景が見えてくる。 2016年8月、「誣告(ぶこく)共和国」という表題のコラムが韓国のネットメディア、イーデイリーに載った。内容は、男性芸能人と性関係を持った女性が金目当てに性的暴行を受けたと虚偽告訴する事件が連続発生している世態を批判しているものだ。 こういった虚偽告訴事件は芸能人に限ったものではない。17年にはセクハラで女子生徒に告訴された中学教師が自殺に追い込まれた事件があった。後で無実であったことが明かされたが、教師を虚偽告訴した生徒は携帯のことで自分を叱った教師に腹がたっていたと陳述している。被害者のためなら捏造してもよい このほかにも、浮気したことが夫にバレて浮気相手の男性をいきなり強姦罪で告訴した女性や、一緒に寝た男の金を盗んだことがバレて男を強姦罪で訴えた女性、太ったといわれ腹が立ったため相手男性を虚偽告訴した女性、自分から先に殴った男に殴り返されるとセクハラで告訴した女性のケースもあった。新聞報道された事件だけを見てもコラムの表題を「誣告共和国」とつけた理由がわかる。 ここで注目すべきは世論を主導する市民団体の反応だ。韓国の女性団体は、性犯罪に対する誣告罪(虚偽告訴罪)の適用に反対している。性犯罪に虚偽告訴罪を適用すると性犯罪被害者にくつわを噛ませることになりかねない、虚偽告訴罪になるのを恐れて性犯罪の被害を隠すことになってはいけないと主張する。 だが、被害者保護のためにはささいな捏造(ねつぞう)はあってもよい。虚偽告訴された人が、人格を抹殺され職場では首になり、最悪の場合自殺に追い込まれても、だ。韓国にもこれに異議を唱える人はいる。しかし巨大フェミニズム勢力の前で壮絶な最期を迎えるだけだ。フェミニズム勢力と戦っていたある活動家は漢江(ハンガン)へ身を投げてしまった。 そんな中、ここ数年間、米サンフランシスコを含めてあちこちに慰安婦の像が設置されているが、これは偶然ではない。米国や欧州では「Me too」キャンペーンが広がっている。スウェーデンでは18年現在、明確な同意のない性関係は性的暴行と見なされ得る法案が推進されている。容疑者から相手の同意があったことを証明できない場合、強姦罪の構成要件である強制性を立証できなくても強姦罪に問われる可能性がある法案だ。明らかに立証責任の転倒であるが、性犯罪被害者保護のためには認められるということだ。2017年11月、軍慰安婦関連資料の「世界の記憶」登録を目指す団体の会議に臨む韓国の鄭鉉栢女性家族相。左は元慰安婦の李容洙さん(共同) 世界にはフェミニズムの風が吹いている。「反米」も「従北」も表に出せない韓国の左派にとって「慰安婦教」という分断政策は妙手だった。韓国では左派団体が日本にどんな非礼なことをしても宗教裁判を恐れて誰も文句がいえない。日本ではこの「憎悪の宗教」のせいで、「助けず、教えず、関わらず」の非韓三原則まで提唱されている。 これだけでも大成功だ。しかし「慰安婦教」は韓国にとどまらない。フェミニズムの風に乗って世界中に布教されるほどの勢いを見せている。

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    ベトナムの韓国大使館前に「ライダイハン母子像」建立計画

    最終的かつ不可逆的な解決」を謳った慰安婦問題の日韓合意を「国民の大多数が受け入れられない」と蒸し返す韓国の文在寅・大統領。その文氏を巨大な“ブーメラン”が襲った。 この9月12日、イギリスの市民活動家、ピーター・キャロル氏の呼びかけで、ロンドンで民間団体「ライダイハンのための正義」が設立されたのだ。ベトナム女性と子供たちのために制作された「ライダイハン像」と作者のレベッカ・ホーキンスさん=2017年9月、英ロンドン(岡部伸撮影)「ライ」はベトナム語で「混血」、「ダイハン」は「韓国」を意味する。韓国はベトナム戦争(1960~75年)当時、アメリカを支援して延べ34万人の兵士を送り込んだ。だが、彼らは現地で多くの強姦事件や民間人虐殺を繰り広げた。ライダイハンとは、韓国兵による強姦などによって生まれた子供たちのことであり、ベトナム戦争終結後、ほとんどが置き去りにされた。その数は推計で数千~3万人とも言われる。 韓国政府はこれまで、この問題に関する公式の謝罪や賠償は一切行なってこなかった。それどころか、これに触れること自体、韓国ではタブーとされてきた。それが今、支援団体の設立によって国際社会に晒されようとしているのだ。 ロンドン市内で開かれた同団体の設立イベントにはジャック・ストロー元外相も出席した。公式サイトには、設立趣旨としてこう書かれている。〈混血の子供たちはライダイハンとして知られ、今日でも日陰の生活を送っている。われわれは、このような形で食い物にされたすべてのベトナム人女性のため、ライダイハンの子供たちのため、そして、彼らが当然受けるべき存在の認知と尊重のために戦う〉 さらに、同団体のメンバーで英国人ジャーナリストのシャロン・ヘンドリー氏は、レイプ被害者やライダイハンの子供たちへの聞き取り調査を英インディペンデント紙(9月11日付)に寄稿した。そこでは韓国軍司令官の家で食事を作る手伝いをしていた10代の女性がレイプされた事例や、子供たちが学校で“犬の子”と呼ばれて差別を受けている実態をレポートしている。 ヘンドリー氏は、〈韓国政府は決して韓国兵が行なった行為を認めず、調査すらしない〉と、韓国政府の姿勢を批判している。 韓国の戦争犯罪を糾弾する市民団体が、まさかイギリスで誕生するなど、文大統領は夢にも思わなかったのではないか。韓国での報道は一切なし 韓国の国際的地位を揺るがしかねないこのニュースを、韓国メディアはどう報じたのか。新聞等の主要メディアを確認した限り、驚くことに取り扱ったメディアは1つもなかった。文大統領はじめ政府側も、一切コメントを出していない。それだけこの問題のタブー性は強いということだ。加害者の側面がバレた韓国 かつて韓国のリベラル系週刊誌「ハンギョレ21」が、ベトナム戦争でのレイプや虐殺の実態を告発するキャンペーンを行なったところ、退役軍人団体の「枯葉剤戦友会」が激怒し、2000年6月にメンバーらがソウルのハンギョレ本社を襲撃、印刷施設や自動車、パソコンを破壊するという事件が起き、韓国社会を震撼させた。 枯葉剤戦友会は、ベトナム戦争で米軍の撒いた枯葉剤の被害を受けたと称する退役軍人の組織で、全国に16支部、会員数約13万人を誇る韓国でも有数の圧力団体である。彼らにとってベトナム戦争での韓国軍はあくまで「被害を受けながら立派に戦った国家の英雄」でなければならず、蛮行の歴史などあってはならない。だからこそ、ライダイハンの問題には徹底した言論弾圧を行なう。 こうした団体が存在しているために、韓国メディアは、韓国軍によるベトナム民間人虐殺をタブーとして扱い、ほとんど報じてこなかった。しかし、今回の市民団体の設立は、その状況を変える可能性がある。韓国問題に詳しいジャーナリストの前川惠司氏はこう言う。1972年のベトナム戦争のクリスマス爆撃で撃墜された米空軍B52の残骸=ハノイ(iStock)「今まで慰安婦問題で日本を批判し続けてきたのに、実はベトナムで韓国軍は、韓国がいうところの慰安婦の強制連行に、中国がいうところの南京大虐殺を一緒にしたような残虐行為を繰り広げていたということが分かってしまった。しかも、日本の慰安婦問題には強制連行の証拠が見つからなかったのに対し、レイプ被害者と数千人から数万人のライダイハンという証拠が存在するので否定しようがなく、“いままで慰安婦で騒いでいたのは何だったのか”となりかねない。 韓国はこれまで、加害者としての側面を隠しながら被害者の側面だけを強調するという危ない橋を渡ってきたわけですが、国際社会に見つかったことによって、ついに足を踏み外しかけているという状況ではないか」 しかも韓国はこれまで、日韓の慰安婦問題を国連などに訴え、国際社会を巻き込もうとしてきた。いまも韓国政府は中国と連携して慰安婦関連の資料をユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録しようと働きかけ、アメリカでも在米韓国人を通じて、各地に慰安婦像を建立している。 だが、韓国が訴えようとした国際社会は今、韓国のライダイハンに目を向け始めた。これに対処しなければ、慰安婦を国際問題化してきたこれまでの姿勢と矛盾することになる。文大統領が慰安婦問題を蒸し返したことが、自らを窮地に追い込んでいるのだ。 イギリスの市民団体では、被害女性とその子供たちをモデルにした「ライダイハン像」を制作し、在ベトナム韓国大使館前などに設置することを検討しているという。韓国政府はどう対応し、韓国メディアはどう報じるか。関連記事■ ケント氏「韓国はベトナム女性に謝罪する像を建てるべき」■ 慰安婦像撤去拒否ならハノイ韓国大使館前にライダイハン像を■ 田中みな実アナの「肘ブラ」 過激すぎNGになったカット存在■ 20歳時に4、5人の韓国兵に暴行を受けたベトナム人女性の証言■ 「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人

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    慰安婦像撤去拒否ならハノイ韓国大使館前にライダイハン像を

    婦像は一向に撤去される様子がない。むしろ朴槿恵大統領の失職で、今後、親北の度合いを強めることが確実な韓国は、慰安婦像の増設を加速させるだろう。日本が取るべき策は何か。評論家の呉善花氏は、ベトナム戦争が材料の一つになるだろうという。* * * 反日を強める韓国では、慰安婦像が撤去されないどころか、ますます増え、今年からは徴用工像も次々に設置されていくだろう。それらに日本が対抗するうえで大切なことは、第三者に向けた情報発信を増やすことだ。慰安婦問題に限らず、冷静な判断ができる材料を世界に提供する必要がある。 その際、材料の一つとなるのがベトナム戦争だ。評論家で拓殖大教授の呉善花氏 当時、米軍支援の名目でベトナムに出兵した韓国軍は現地の民間人を虐殺した。その数は推計1万人から3万人との報告がある。また、強姦事件も多発し、韓国兵と現地女性の間で生まれた子供(ライダイハン)が多数いる。 韓国政府はいまだに韓国軍による民間人虐殺を認めていない。穏健なベトナム人は韓国軍の蛮行について、黙して語らない傾向があったが、ここに来て風向きが変わりつつある。1966年に韓国軍が南ベトナムの農村で民間人430人を虐殺した事件を扱ったドキュメンタリー『最後の子守歌』が昨年末、ベトナム国営放送の放送大賞でドキュメンタリー部門奨励賞を受賞したのはその一例だ。 他方、一部の韓国人の間で、ベトナム戦争での民間人虐殺や強姦について謝罪して現地に慰霊碑を建てる動きがあるが、これには注意が必要だ。なぜならそれは、「我々韓国はここまで真摯にベトナムに対応したのだから、日本も慰安婦問題で韓国に謝罪して慰霊碑を建てろ」などと反日の攻撃材料として利用する狙いがあると考えられるからだ。 そもそも、戦時における民間人の虐殺・強姦と、民間の施設だった慰安所の問題は本質的に異なる。日本は韓国の“肉を切らせて骨を断つ”術中に嵌らないよう警戒すべきだ。 ちなみに、ベトナム戦争では、ベトナム女性を中心とした東南アジアの女性たちが、韓国兵に性的サービスを提供する“慰安所”があったと、私はベトナム戦争に参加したことのある軍人出身から直接聞いたことがある。また、朝鮮戦争では米軍相手の韓国人慰安婦が多数存在した。「善なる被害者」であることに酔いしれる大多数の韓国人はベトナムでの蛮行をタブー視する。自分たちの汚点を棚に上げ、「悪いのは日本人だけ」という単純なストーリーに固執するのだ。 そうした物語の定着を避けるためにも、日本はベトナム戦争における真実を徹底して学術調査し、その結果を英訳して諸外国に提供する努力が求められる。 同時にベトナムで何があったかを知らない韓国人の啓蒙も必要だ。しかし前述の通り、日本人が直接的に指摘すれば、彼らは感情的に猛反発するだけだろう。 だから、この問題の当事者であるベトナム人が動くほうが望ましい。彼らがベトナム戦争における「民間人虐殺の慰霊碑」や「ライダイハン像」などをハノイにある韓国大使館前に建設したら、さすがの韓国人も無視できないはずだ。韓国人は日本以外の外国の目をとても気にするからだ。 そうした状況を促すため、場合によっては日本側がベトナム人に慰霊碑の設置を働きかけてもいいだろう。 英語での発信を中心として、今後の日本には粘り強く情報戦を戦い抜く外交が求められる。親北政権で反日を強める韓国の情緒に対抗するには、事実を積み上げた論理で世界を味方につけるしかない。●呉善花(オ・ソンファ)/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。『「反日韓国」の苦悩』(PHP研究所刊)、『朴槿恵の真実』、『侮日論』(いずれも文春新書)など著書多数。関連記事■ 「慰安所で欲望ぎらつかせる韓国兵に恐怖感も」とベトナム人■ 20歳時に4、5人の韓国兵に暴行を受けたベトナム人女性の証言■ 渡辺謙の不倫報道 南果歩は悲観にくれ、娘・杏は冷たい視線■ フジ女子アナ採用 「役員の好みで…」と佐藤里佳部長疑義■ モデル・安部ニコル 上着を脱いで豊かな胸の膨らみをチラリ

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    慰安婦問題を解決したいなら、大阪に少女像を建立すればいい

    略的な地盤形成に努めながら、来るべき時機を待つべきである。ピンチをチャンスに変えよ 少女像となれば、韓国の二番煎じとなってしまうが、この際何でもよかろう。むろん、この像をあえて外国の総領事館の前に建てるようなことはすべきではない。また、外国の具体的な過去の問題について碑文に記述する必要もない。韓国に対抗するような意図は持たず、粛々とわが国の立場を国際社会に対して主張すればよい。 わが国と韓国の間には確かに数多くの問題があるが、たまにけんかはするにせよ、なんだかんだ「腐れ縁」の幼なじみの友人ではないか。特に大阪は歴史的に在日韓国人が多く居住し、コリアタウンもあり、在日韓国人の文化は大阪文化の一端を担っていると言っても過言ではない。そうした寛容の姿勢をアピールすれば、大阪の国際的な地位の向上にもつながるだろう。 安倍晋三内閣は、成長戦略の一環として「すべての女性が輝く社会づくり」の推進を掲げている。そこで、これをわが国そして世界中の女性のエンパワーメントを高めるための事業の一環として位置付けてはどうだろうか。ただ過去を悲観するのではなく、明るい未来のため、その決意を祝福するような意味合いを込め、未来志向の日本の意思を内外に示し、国際社会において今後わが国がリーダーシップを発揮することにもつながる。 ピンチをチャンスに変えなければならない。それには多少のリスクテイクも必要だ。いつまでも批判を恐れて避けているようでは、後手に回るだけである。もしこの「平和の少女像」を設置するならば、ふさわしい場所が大阪市内のどこかにあるかもしれない。2017年11月、米サンフランシスコ市の慰安婦像の問題について、滞在先のパリで取材に応じる大阪市の吉村洋文市長(右)と大阪府の松井一郎知事(中央) そもそもサンフランシスコ市議会の決議文には、「現在2090万人もの人身取引の被害者が世界中におり、そのうちの55%は女性と少女である。強制労働や人身取引は世界中で1500億ドルの犯罪産業となっている。サンフランシスコもこの問題から免れず、港、空港、産業の発展や移民の増加という背景のもと、人身取引の目的地と考えられている」という部分もある。国際社会とともに市自身が問題を抱えているのだということを自ら発信し、「これらの被害について学び、教えることはサンフランシスコを始め世界中の国々で起きている現代の人身取引の流行を止める」ための自身の役割であると位置付けている。 自ら進んで「身を切る」問題提起をしてこそ、説得力を勝ち取ることができ、国際社会においてまともに議論をすることができるのではないだろうか。それには相当な覚悟が求められるだろう。

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    迷走する文在寅

    う。「民族ファースト」を掲げて北朝鮮融和を模索したかと思えば、対日政策では強硬路線を貫く。迷走が続く韓国外交。文在寅大統領のスタンスはどこにあるのか。iRONNA韓国リポート第4弾は、文政権下で分断が進む韓国社会の今。

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    米中の「二兎」を追うなら、文在寅は日韓関係を改善するほかない

    木宮正史(東京大学大学院総合文化研究科教授) 韓国政治における「保守」派と「進歩(リベラル)」派の対立軸の1つが対北朝鮮政策をめぐるものであるのは周知の事実である。北朝鮮に対する厳格な相互主義を強調し、北朝鮮の妥協がない限り韓国の方から交渉の手を差し伸べる必要はないと考える保守派に対して、進歩派は北朝鮮に対する韓国の体制優位に基づいて、相対的に寛容な姿勢で北朝鮮を交渉の枠組みに引き込むことで、北朝鮮に対する韓国の影響力を増大させることが重要だと考える。 後者の政策が1998年から2008年までの金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権によって試みられたのに対して、前者の政策は2008年から2017年までの李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)政権によって試みられた。2000年の金大中政権と2007年の盧武鉉政権が金正日(キム・ジョンイル)国防委員長との間で2度の南北首脳会談を行ったが、北朝鮮は、韓国との関係を深めることによって自らの存在が脅かされることを恐れて、南北関係の緊密化に深入りすることはなかった。李明博、朴槿恵政権下では、それまでの政権が積み上げてきた金剛山(クムガンサン)観光、開城(ケソン)観光、開城工業団地などの成果が放棄され、その結果、北朝鮮に対する韓国の影響力はゼロに回帰した。 朴槿恵大統領の弾劾訴追と罷免を受けた2017年5月9日の大統領選挙のときは、ちょうど北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長によるミサイル発射などの軍事的挑発と、それに対する米国トランプ大統領の強硬発言の応酬によって軍事的緊張が高まっていた。そうした状況の中で北朝鮮に融和的な政権が登場してもよいのか、という危惧が国内外から提起されたのは事実である。 しかし、国政の混乱状況をもたらした朴槿恵政権、保守派に対する政治的審判を下すという選挙であったため、予想通り文在寅(ムン・ジェイン)大統領が誕生した。準備期間が全くなかったために、外交安保チームの編成など人事に関する混乱もあったが、外交安保政策をはじめとした文在寅政権の評価は依然8割を超える高い支持率を維持している、というのが現状である。大統領府に向かう車から、沿道の市民らに手を振る韓国の文在寅大統領=2017年5月10日、ソウル(聯合=共同) その理由として、文在寅政権の外交安保政策におけるリアリズムを指摘することができる。進歩派は当初、李明博、朴槿恵という保守政権9年でゼロに戻ってしまった南北関係を改善するとともに、核ミサイル開発を続ける金正恩政権に対してあくまで平和的な手段で抑制することを求めるための外交を文在寅政権に期待した。それに対して保守派は、文在寅政権が北朝鮮に融和的な姿勢を示す余り、対北朝鮮強硬策を志向する米国トランプ政権との乖離(かいり)が顕著になり、韓国の安全保障を危うくすることになると憂慮した。結果としてみると、そのどちらも裏切られる格好となった。米国にも中国にも「いい顔」せざるを得ない 文在寅政権は、北朝鮮との関係を強化することによって韓国の優位を生かすという進歩派の対北朝鮮外交を封印し、とりあえず北朝鮮を核放棄に追い込むために米国をはじめとした国際協調が重要であるという立場を維持した。11月1日の文在寅大統領の国会演説では、平和的な問題解決の必要性、問題解決に関する韓国の主導権の確保などを言及したが、基本的には北朝鮮核ミサイル危機に対する米韓協力の必要性が強調された。 また、11月7~8日のトランプ大統領訪韓に関しても、9月に文在寅政権が日米との事前協議もなく国連機関を通した人道的支援のために800万ドル相当を拠出することを表明したことなどに起因して、対北朝鮮政策をめぐる米韓の乖離が露呈するのではないかと当初は危惧されたが、そうした乖離は表面化することはなく、無難に終わった。 韓国国内では、文在寅大統領がトランプ大統領に在韓米軍基地を案内したり、中止されたが非武装地帯を一緒に見学しようと試みたことなどで、トランプ大統領に米韓関係の重要性を再認識させることができたという点では、米韓首脳会談は成功であったという見方が支配的である。ただ、単独の首脳会談は20分余りしか行われなかっただけに、果たしてどの程度中身の濃い議論が行われたのか疑問も残る。 さらに、文在寅政権にとってもう1つ重要な課題は、朴槿恵政権による高高度防衛ミサイル(THAAD)配備決定に起因した中国の実質的な対韓経済制裁によって一挙に冷え込んだ中韓関係を立て直すことであった。韓国では、安全保障では米韓同盟を基軸とするが、経済では貿易全体の約4分の1を対中貿易が占めるとともに、北朝鮮に対して圧力を行使してもらうためには対中関係も対米関係に劣らず重要であるという認識が支配的である。 ところが、2016年1月の北朝鮮の第4次核実験に直面して、それまで米国の要請にもかかわらず慎重な姿勢に終始していたTHAAD配備を進めることを朴槿恵前大統領は決断した。2015年9月の抗日戦勝記念70周年の軍事パレードにまで参列した朴槿恵大統領が急に心変わりをしたと中国は受け取り、在中韓国企業に対する実質的な制裁を科したり、韓国向け団体観光を中止したりするなど、韓国経済に打撃を与えることでTHAAD配備への報復を行った。歓迎式典に臨む韓国の文在寅大統領(右)と中国の習近平国家主席=2017年12月14日、北京の人民大会堂(共同) しかし、中韓関係が悪化したままであることは、中国にとっては対米対日外交における不利な要因になりかねず、韓国の一定の妥協を引き出せれば緊張を収束したいと考えていた。韓国にとっても、経済的な打撃のみならず対北朝鮮圧力行使への働きかけが不利になるので、対中関係の改善はぜひとも達成したいものであった。 このように、相互に関係改善への思惑が一致した結果、10月31日に「韓中関係改善関連両国間協議結果」が発表され、THAAD配備に起因した中韓の緊張はいったん収束されたように見える。そして、12月13日から16日まで文在寅大統領は中国に公式訪問するに至った。韓国の本当の狙い その代わり、韓国は「THAAD追加配備」「ミサイル防衛網の構築」「日米韓軍事協力の深化」などをしないという「三不政策」を中国に約束させられたのではないかとみられる。これについては、同盟国米国はもちろん、国内でも、中国に譲歩し過ぎて韓国の安保外交政策の選択の幅を制約し過ぎたと批判された。 さらに、文在寅大統領自身、11月3日のシンガポールのテレビ局とのインタビューで、米中間での「均衡外交」に言及したと批判的に伝えられ、米韓首脳会談後の記者会見ではあくまで米韓同盟が基軸であると言明し、対米関係と対中関係を両天秤にかけて均衡を保つという見方を打ち消すのに躍起になった。共同記者会見するトランプ米大統領(左)と韓国の文在寅大統領=2017年11月7日、ソウル(共同) 以上、就任後ほぼ6カ月を迎えた文在寅政権の外交を見ると、ともかく米中関係にどのように対応するのかということで手一杯だったのではなかったかと思われる。韓国なりに、北朝鮮の核ミサイル開発に対米同盟関係を堅固にして対北朝鮮圧力強化で対応するとともに、経済や対北朝鮮関係で重要な対中関係を修復したという成果を収めた。その代わり、韓国の「進歩」政権が本来指向すべき独自の対北朝鮮政策は依然、封印された格好である。 しかし、それは現状ではある程度やむを得ないのではないだろうか。現時点で、韓国独自の対北朝鮮政策を展開することは、ちょうど2007年11月に行われた盧武鉉大統領の北朝鮮訪問時のように、米国の支持もない孤立外交であるとみられ、肝心の北朝鮮からもまともに相手にされずに、その後につながるような可視的な成果もなく終わってしまったのと同じようになる可能性が高いからである。政権を支えた文在寅大統領としても、そのことは十二分に理解しているはずである。 文在寅政権の狙いは、まずは国家安保の基軸である米韓同盟の堅固化に努め、それによって北朝鮮に対する圧力を強めることで北朝鮮の軍事挑発を抑えるとともに、北朝鮮が交渉に出てくるのを「待つ」ということであろう。確実な保証はないが、こうした対北朝鮮圧力行使が功を奏して北朝鮮が対米交渉に出てくるときに、韓国としては、それに便乗するように南北関係の改善に取り組むことを狙っているのではないか。 本来であれば、韓国が米国を動かし、そうした方向に持っていくのが最善ではあるが、残念ながら韓国外交にはそうした力がない。つまり「待ちの姿勢」で臨むのがリアリズムということになる。日本ではとかく文在寅政権の外交に対して批判的、もしくは警戒的な見方が支配的である。しかし、その他の政党の候補が大統領になっていたとしても、外交安保政策に限っては、同様な政策を選択していたであろう。それだけ、韓国外交が採りうる選択の幅は狭いと言わざるを得ない。韓国は日本と協力するほかない ただし、1つ気になるのは、そうした対米、対中外交のはざまで、対日外交に関してほとんど本格的な成果もしくは取り組みがみられないということである。一方では、トランプ・安倍の日米関係が非常に緊密に展開されていることもあり、米国からは日米韓の連携強化を強く要請されている。韓国としても、米韓同盟を堅固にするためにも、ある程度は応えなければならない。 しかし、韓国にとって「日米韓」という枠組みは、韓国がその中で最も周辺的な存在として埋没しかねないという危惧を持つ。他方で、中国からは、韓国が日米韓の連携強化に前のめりにならないようにすることが中韓関係改善の条件であると、日韓関係に関するブレーキをかけるように要求されている。韓国としても中韓関係を良好なものに保つためにも、米韓同盟はともかく、日韓関係の軍事的側面を希釈化しておきたいと考える傾向にある。そうしたはざまで対日外交の可能性を実質的に「封印」してしまった感がある。 韓国には、19世紀末から20世紀初頭にかけて、大国間国際政治に翻弄された結果、日本によって植民地化されたという「苦い歴史的経験」がある。したがって日韓の安保軍事面での連携強化には強い拒否反応があることもよく理解できる。 しかし、北朝鮮の核ミサイル開発に起因して緊張が高まり、場合によっては韓国の生存自体が脅かされる状況の中、北朝鮮の核の脅威を共有し、しかも戦争ではなく平和的に問題解決を志向しなければならないという使命も共有する日本との間で、この問題に関する協力の可能性を自ら閉ざしてしまうのは妥当なのか、再考する必要があるのではないか。もちろん、それに対応する日本の対韓外交にも同様なことが言える。会談に臨む文在寅韓国大統領(左)と安倍首相=2017年9月21日、ニューヨーク(共同) 北朝鮮の核ミサイル危機には何よりも米中の協力が必要であることは言うまでもない。しかし、それに劣らず、そうした米中協力を支える日韓協力が何よりも必要とされているのではないか。北朝鮮の核ミサイル開発を抑制するための米中協力が、米中関係から必然的に帰結されることはないからだ。その軍事的脅威に最も直接的にさらされ、その解決のための軍事的オプションの行使には何よりも慎重にならなければならない日韓の意向が十分に反映されるべきである。 そして、そのためには日韓が協力するほかはないのである。その意味で、文在寅政権には、対米外交、対中外交の次に、対日外交を打開して、短期的には北朝鮮の核ミサイル危機の克服、中長期的には韓国主導の朝鮮半島統一に関して日本の協力をいかに獲得するのか、そうした外交が必要とされているのではないか。

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    「北朝鮮にしか関心がない」文在寅は不本意な圧力強化を貫けるか

    武藤正敏(元駐韓大使) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、9月3日の北朝鮮による水爆実験以降、北朝鮮に対する政策を明らかに変更した。文氏は8月17日、就任100日を迎えた日の記者会見で、「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させ、これに核弾頭を搭載して兵器とすること」がレッドライン(越えてはならない一線)であると述べていたが、ICBMをはじめとする一連のミサイル発射に加え、水爆実験の成功によってレッドラインを越えたと判断したのであろう。 文大統領は安倍晋三総理との電話会談で、「国際社会と連携して強力な報復措置を講じる考えであり、北朝鮮自らが対話のテーブルに出てくるまで、さらに強化していかなければならない」として圧力を軸に方向転換する考えを示した。 こうした方針は韓国の軍事訓練や国防力強化方針に反映されている。 韓国軍は9月4日、豊渓里(プンゲリ)核実験施設への攻撃を想定して陸軍の弾道ミサイル「玄武2A」(射程300キロ)と空軍の空対地ミサイルによる射撃訓練が行われた。また、15日のミサイル発射の際には地対地弾道ミサイルの訓練を行っている。2017年4月、米韓両軍の統合火力訓練を見学する大統領候補時代の文在寅氏(右)=韓国北部の京畿道抱川(聯合=共同) 9月4日、韓国政府は、在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)について追加配備を認めると決定し、7日、韓国軍の基地に発射台4基が搬入された。さらに国防相は国会において、12月1日に金正恩暗殺を担う斬首部隊の創設を表明し、予定通り発足した。 これまで韓国の融和策が、北朝鮮に対する国際社会の圧力強化を損ない、特に中露を国際社会の連携に引き入れるのに障害とならないか懸念する向きもあった。文大統領の期待とは裏腹に北朝鮮が常に韓国の呼びかけを無視し、挑発行動を繰り返すことで、従来の融和策を見直さざるを得なくなったということであり、日米韓の連携は取りあえず強化されたといえよう。 しかし、北朝鮮の核問題の出口は見当たらないのが現実である。そうした中、文氏は北朝鮮との対話の糸口も探っているかもしれない。何せ、文政権の中枢にいる人物は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で北朝鮮との交渉を担ってきた人々である。また、9月14日、統一部は北朝鮮の核実験後も国連児童基金(ユニセフ)や国連世界食糧計画(WFP)を通じ800万ドルの人道支援を検討していることを明らかにし、実施が決定された。菅義偉(よしひで)官房長官もこうした動きには懸念を示した。 今後は文在寅政権の本質を理解しながら、対話を強化することで、韓国の単独行動を抑制し、日米韓の連携を強めていくことが肝要である。北朝鮮にしか関心がない文氏 文氏は故盧武鉉大統領の首席秘書官を務めた側近であり、同じ弁護士事務所のパートナーである。盧元大統領の非業の死を受け、その意思を実現すべく大統領に立候補した人物である。通常、首席秘書官は個々の外交安保問題に深く関わらないが、盧元大統領の南北首脳会談を主導したのは文氏であった。私は大使時代、朴槿恵(パク・クネ)前大統領と争っていた文氏に1度だけ面談したことがあった。その時、私からは日韓関係の重要性、協力のメリットを力説したが、文氏は関心を示さず、日本は南北朝鮮の統一を支持するのか、日本の北朝鮮政策はどうなのか、という点だけを質問してきた。文氏は北朝鮮にしか関心がないのだと感じたものである。2017年11月、ソウルで開かれたトランプ米大統領訪韓に反対する集会(共同) こうした文氏の考えは選挙運動中の発言によく表れている。文氏は「米国よりも北朝鮮に先に行く」と述べた。さらに、「北朝鮮が核を凍結すれば、米韓合同演習を縮小できる」「朝鮮半島の軍事行動は断じて韓国の同意なしになされてはならない」と主張した。 ただ、文氏は現実主義者でもあると聞く。当選後はさすが軌道修正した。「安全保障上の危機を早期に解決するために、まず6月にワシントンに行き、米韓首脳会談を行う。北京、東京を訪れる用意がある。条件が整えば平壌にも行く」運びとなった。 文氏の北朝鮮に対する一貫した思いは、「制裁の目標は北朝鮮を交渉のテーブルに引き出すもの」ということである。北朝鮮の一連の挑発行動を受け、今は「制裁と圧力を強めるときだ」として日米などと協力する姿勢を示す一方で、「根本的な解決法を模索することが重要」であり、たとえ制裁しても「対話のメッセージを継続して伝えなければならない」というのが基本姿勢である。 文氏は6月15日、訪米に先立って、北朝鮮が「核・ミサイルの追加挑発を中断するならば対話に向かう」と述べた。米国は北朝鮮との対話の前提として北朝鮮の非核化を求めており、あえて米国との事前相談もなく、こうした発言を行ったのは、韓米首脳会談を前に韓国の主導で北核関連の突破口を開こうとの意思表示ともとれる。北朝鮮を交渉に引き出すためには、譲歩もするとの姿勢を示した。 しかし、実際の首脳会談では、米韓の対立は表に出さず、協調姿勢に終始した。そして、首脳会談後の共同声明では、米韓同盟を強化し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に最大限の圧力をかけて、朝鮮半島の非核化を目指す方針を確認する一方、両首脳は「『適切な環境』の下での北朝鮮との対話であれば受け入れる」、米国は「南北対話についても、人道問題など特定の分野であれば支持する」との言質を得、「当事者である韓国の主導的役割が認められた」として意気軒高であった。融和策の継続は困難 次いで20カ国・地域(G20)首脳会合出席のためにベルリンを訪問した。ベルリンでは朝鮮半島問題に関する演説を行った。そこで提示したのが、南北首脳会談から、米韓首脳会談、米朝首脳会談、南北プラス主要関係国との首脳会談を通じて核ミサイル問題の解決である。そして、関係国首脳と一連の会談を行った。しかし、文氏は帰国後、閣議において「朝鮮半島の問題を韓国に解決する力はない」と述べ、その力の限界を悟った。要するに各国とも自国の国益に従い行動しており、日米対中韓の溝を埋めて韓国が主導していくことが難しいとの思いを抱いたのであろう。2017年9月、会談に臨む(左から)トランプ米大統領、文在寅韓国大統領、安倍首相=ニューヨーク(共同) しかし、どの会談においても北朝鮮との対話の方針を強調し、それについて一定の理解が得られたとして、帰国後軍事当局者会談と赤十字会談を提唱した。文氏は北朝鮮のことは自分が一番よく理解しているとの思いであろう。ところが北朝鮮にとってみれば、盧武鉉政権で交渉したときと異なり、現在は核・ミサイル開発が完成に近づいている。これが完成すれば米国ともより有利な条件で交渉できる。まして今、韓国と交渉するメリットなど感じるはずはない。案の定、北朝鮮から拒否されてしまった。 こうした中で、北朝鮮は7月4日と28日にICBMをロフテッド軌道で打ち上げ、8月29日と9月15日には中距離弾道ミサイルを発射して日本の上空を通過、グアムをいつでも包囲射撃できる能力を見せつけている。さらに9月3日には水爆実験を行い、事前に核弾頭を公開している。 もはや、文大統領としてもこれまでの北朝鮮融和策を継続することは困難であろう。北朝鮮に対し、国連安保理の制裁が強化され、外交関係の見直しや、経済関係の縮小に向かう国が増えている。こうした国際社会の圧力の強化を当事国である韓国が軽視することはできない。国際社会は、国内でも融和策を続ける文政権を避けて通る「コリアパッシング」ではないかとの野党の批判が高まっている。そしてこれまで高止まりしていた支持率も下がり始めた。 北朝鮮の挑発行動は今後ともエスカレートしていくことが予想され、軍事的な緊張が高まっていくであろう。日本人がソウルに行くと韓国の人々に緊張感がないのに驚く。韓国の人々は、北朝鮮について自分たちを攻撃しては来ないであろう、そう信じたいとの思いがある。米軍主導により、軍事的緊張が高まってきたときには、韓国国民は再び対話による解決を強く求めるようになるかもしれない。その時、文政権が圧力重視を貫けるかどうか。文政権の政策は世論迎合的であり、北朝鮮に対する圧力重視も本意ではないであろう。 今後、北朝鮮の核問題を解決していくためには、中国、ロシアをいかに同調させるかが重要である。その時、韓国が対話重視に傾けば、足を引っ張りかねない。日米韓の連携を維持し韓国と協力していくことがますます重要になってこよう。

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    日本は「独島エビ」で鯛を釣れ、文在寅が食いつく「竹島のエサ」

    下條正男(拓殖大国際学部教授) 韓国の文在寅大統領は、訪韓したトランプ大統領の晩餐会で独島エビを供し、元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)氏を招いて、日本側の顰蹙(ひんしゅく)を買った。菅義偉官房長官が「外国が他国の要人をどう接遇するかについてコメントは控えるが、どうかとは思う」と不快感を示すと、外務大臣の河野太郎氏も、「北朝鮮危機の中、特に日米韓の連携が大事な時期に極めて遺憾だ」と発言したからだ。 これに対し、韓国外交部の林聖男第一次官は、「このようなメニューが話題になることは誰も予想していなかった」と釈明したが、日本側の反発は心外だったようである。この日韓の齟齬(そご)は、今日の日韓関係を象徴している。 韓国は歴史的に「東方禮義の邦」を自負してきたが、日韓の係争の地である竹島近くで獲れたエビを晩餐会の料理に出し、前政権との間で「最終的かつ不可逆的解決」を確認した慰安婦問題を蒸し返したのは、日本に対しては傍若無人の振る舞いも許されると錯覚しているからである。 今回の所作も、前政権を倒した際の民衆の民意におもねたのだろうが、それは慰安婦問題や竹島問題の歴史的事実についての理解が足りないからである。 慰安婦問題は、当初、日本軍を相手にしていたのは自尊心が許さないからだ。何とか無理やり売春をさせられたことにし、そのためには日本政府の関与があったことにしてほしい、ということから始まった。 それが「河野談話」を経て、戦前の酌婦は慰安婦から性奴隷になってしまった。慰安婦を日本の軍国主義による被害者とし、国際社会に吹聴したのは、文在寅大統領の盟友であった盧武鉉大統領である。バスに乗せられた慰安婦問題の少女像の手に触れる朴元淳ソウル市長=ソウル(同市提供・共同) 竹島問題もこれと似た状況にある。韓国の外交部によると、独島は「歴史的にも国際法上も、地理的にも韓国の固有領土」だそうだが、その歴史認識に基づいて日本に強く「謝罪」を求めたのは盧武鉉大統領である。 11月12日付の「朝鮮日報」(電子版)のコラム記事では、「日本は韓国はいつまで謝罪しなければならないのか」というが、彼らの心の中には『謝罪』などない」。(中略)「日本は韓国をそのような相手だとは思っていない。これが韓日関係の本質だ」と報じた。この現状認識は盧武鉉大統領と同じである。 だが今日、「謝罪」をしなければならない立場にあるのは韓国側である。韓国が不法占拠をしている竹島は、歴史的に韓国領であった事実がないからだ。それを韓国側では1954年以来、不法占拠を続け、日本側がその竹島の領有権を主張すると、過去を「反省」していないと反発してきたのである。これが事実に近い「日韓関係の本質」である。 それも韓国政府が竹島を侵奪したのは、「サンフランシスコ講和条約」の発効で敗戦国日本が国際社会に復帰する3カ月前の1952年1月18日。日本が最も弱体していた時を狙って、略取したのである。日本は独島エビで鯛を釣れ その後、日本政府は1954年9月、竹島を占拠した韓国政府に対して、国際司法裁判所への付託を提案するが、韓国側では竹島を「日本の朝鮮半島侵略の最初の犠牲物」として一蹴した。戦後の朝鮮半島と日本との関係は、竹島を略取した韓国側が歴史認識を外交カードとしたことで、歪んでしまったのである。 その竹島問題が再燃するのは、1994年に国連海洋法条約が発効し、新たに日韓の漁業協定を結ぶことになったからである。韓国の金泳三大統領は、1996年2月、竹島に接岸施設を建設して、竹島の不法占拠を正当化しようとしたのである。この金泳三大統領は、「歴史の立て直し」と称して、日本の統治時代に建てられた朝鮮総督府の建物を解体した人物で、歴史問題に関しては「日本をしつけし直す」と発言している。 この蛮勇は2012年8月、竹島に上陸した李明博大統領にも受け継がれた。竹島問題となると、つい強気になるのだろう。 これは盧武鉉大統領も例外ではなかった。2005年3月16日、島根県議会が「竹島の日」条例を制定することになると、その9日前に「歴史・独島問題を長期的総合的体系的に取り扱う専担機関の設置」を指示し、3月22日には「北東アジアの平和と繁栄のため、『バランサー』の役割を果たしていく」と宣言した。 以後、「バランサー役」を任ずる韓国が、国際社会を舞台に侮日戦略を展開すると、中国はそれに便乗して尖閣問題を浮上させ、ロシアは北方領土問題を第二次世界大戦の結果として、領土問題と一線を画した。 2006年4月25日、盧武鉉大統領は、竹島問題と関連した特別談話で、「韓国に対する特別な待遇を要求するのではなく、国際社会の普遍的な価値と基準に合う行動を要求するのです。歴史の真実と人類社会の良心の前に率直で謙虚になることを望むのです」と日本に注文をつけた。 その後、国策研究機関の「東北アジア歴史財団」を発足させ、国際社会を舞台に、慰安婦問題や日本海呼称問題、歴史認識問題などで日本批判を行なわせたのである。文在寅大統領は、その盧武鉉大統領の秘書室長を務めた人物である。 その文在寅大統領が、トランプ大統領歓迎の晩餐会で、独島エビと元慰安婦を政治的に利用したとしても不思議はない。トランプ米大統領(左)との会談を終え、記者会見する韓国の文在寅大統領=2017年11月、ソウル(共同) だが、歴代の韓国大統領が理解する竹島の歴史は、韓国側の歴史認識によるもので、歴史の事実とは無縁である。それは島根県竹島問題研究会の竹島研究で、実証済みである。 今、文在寅大統領がすべきことは、歴代大統領が歪めた日韓関係の修復である。そのためには竹島を速やかに返還して、過去の清算をすることである。 日本政府は、独島エビと李容洙氏の招待に異議を唱えたが、すべきことは他にあったはずである。韓国側が独島エビを出すなら、日本はそのエビで鯛を釣ればよいのである。 盧武鉉大統領が「竹島の日」条例に食いついたように、日本側が多少の工夫をすれば、文在寅大統領もエサに飛びついてくる。それは「竹島の日」条例以後、「日韓の間に領土問題は存在しない」としていた韓国政府の動きが、証明している。

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    「文在寅は嘘つきだ」山本みずきが見た韓国リベラルのメンタリティー

    山本みずき 今年の8月15日、私は韓国に滞在していた。日本でこの日は終戦の日だが、韓国では大日本帝国からの独立を祝う「光復節」という祝日である。日本と韓国では、歴史的に「8月15日」の持つ意味合いが大きく異なる。 2011年に、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されて日韓の歴史認識問題が改めて浮き彫りになり、今年になってからはそれに輪をかけるようにソウル市内に徴用工像が設置された。日本の報道を見ている限りでは、韓国のナショナリズムは年々高まりを見せており、これが光復節ともなれば、街は反日ムードで盛り上がり、韓国国旗を掲げたデモ隊がソウル市内を行進しているはずだ。そんなイメージだけが勝手に膨らんでゆく。韓国人はこの日をどのように過ごすのだろうか。疑問を胸に抱きながら、恐る恐るソウルの中心街へと繰り出した。 確かに市内はデモで盛り上がっていた。だが、少し様子がおかしい。ソウル市庁舎前の広場には200以上の団体が集い、雨が降り注ぐ中、群衆は雨合羽に身を包み、プラカードを掲げて何かを訴えていた。「No war, No THAAD」。意外なことにデモの目的は、反日運動ではなく、反政府運動だったのである。高高度防衛ミサイル(THAAD)配備に反対し、デモ行進する人たち=2017年7月、ソウル 彼らは文在寅大統領に向けて、米韓合同軍事演習の中止を訴え、北朝鮮との緊張状態をいたずらに悪化させないよう、米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の即時撤回を激しい怒号とともに要求していたのである。 デモの参加者に聞くと「大統領は嘘つきだ」と感情的に現政権への失望を語った。それもそのはず、彼らは皆、もともと進歩派である文在寅の支持者だったのである。デモ参加者は、自らの期待とは異なる政策を断行する文在寅政権に対して、デモを通じて激しい批判をぶつけていたのである。 韓国には、大まかに「保守派」と「進歩派」という2つの政治的潮流が存在する。ほかの民主主義諸国と比べても、この両者の亀裂は深く、対立は構造的であって、まるで二つの異なる民族がいがみ合う構図とも似ている。 対外政策について目を向ければ、保守派は北朝鮮の脅威に対して、米韓同盟を中心とする軍事的圧力に基づいた抑止力の強化を志向するが、進歩派は北朝鮮との民族的紐帯を重視して、融和的な対話路線を唱える。文在寅政権は、後者の進歩派を支持基盤としており、政権発足時は急進左派系の学生運動経験者が要職に就く様子も注目された。文在寅政権に不満を募らせる韓国 選挙活動中には朴槿恵前政権時に決定していたTHAAD導入に反対する姿勢を見せていたが、いざ政権の座に就くと、一転してTHAADの導入・配備を短期間のうちに実現した。進歩派であるはずの文在寅は、なぜ保守派が推進したTHAADの導入と配備を覆すことなく、その路線を継承したのか。 私はこのような疑問を抱えて、韓国を代表する国際政治の専門家の意見を聞くことにした。その際に、保守派と進歩派双方の主張に耳を傾け、その主張の対立する部分と重なる部分について、より深く知りたいと考えた。彼らはこの問題をどのように見ているのか、私なりに意見をぶつけてみた。 保守派であり、李明博政権や朴槿恵政権の対日政策に大きな影響力を及ぼし、また韓国を代表する日本専門家である世宗研究所所長、陳昌洙(チン・チャンス)氏によれば、当初は進歩派の文在寅政権が北朝鮮や中国に接近することを懸念していたという。だが、文在寅が大統領として現実の国際情勢に向き合ったことで、それまで唱えていた理念を軌道修正して現実的な手法を取るようになったと指摘した。 かつて、歴史家のE・H・カーは著書『危機の二十年』の中で、「左派の政党ないし政治家は政権を獲って現実とかかわるようになると『空論家的』ユートピアニズムを放棄して右派へと転じていく傾向がある」と喝破した。カーの議論をなぞるかのように、文在寅政権はまさに北朝鮮の脅威という現実に接したことで、それまでの安全保障政策を一部転換させたのだと言えよう。カーは続けて「しかも左派はしばしば左派のラベルをつけたままにしており、そのため政治用語の混乱に拍車をかけている」と述べている。 文在寅は大統領就任後、演説を通して左派的な発言を繰り返しており、国民から見れば進歩派の大統領なのであろう。それだけに、文在寅の支持基盤であり、彼と政治的理念を共有しているはずの進歩派の国民にとっては、矛盾を孕(はら)んだ文在寅政権への怒りが満ちていたに違いない。演説する文在寅大統領 あのソウルの暑い夏から、4カ月。その間に韓国外交はさらなる混迷を見た。文在寅は、核実験を強行して事態をエスカレートさせた北朝鮮に対して、約9億円の人道支援を決定した。国内の支持者を無視して現実の国際政治にだけ対処すれば、政権そのものの存立が危ういことは明白である。言うなれば、北朝鮮支援は文在寅の政治理念の実践であり、国民への配慮でもあったのだろう。 しかし、その結果、圧力強化で一致していた日米韓の足並みは乱れ、三首脳会談において蚊帳の外に置かれた文在寅は、まるで「現実政治(レアルポリティーク)」を逸脱したことへの代償を払わされているかのようであった。日米両国から孤立する韓国 次に私は、ソウル市内の西側に位置して、ソウル国立大学や高麗大学と並んで韓国の大学の頂点に位置する延世大学に向かった。進歩派を代表する国際政治学者であり、選挙活動中から文在寅の外交ブレーンとして政権を支えてきた金基正(キム・ギジョン)延世大学教授の話を聞くためだ。 金教授は、韓国人のメンタリティーには(保守派寄りの)「国家中心的な見方」と(進歩派寄りの)「民族中心的な見方」との二つが並存すると指摘した。国家中心的な見方に立てば、挑発的な態度を取り続ける北朝鮮は敵国であり、国家の存立をかけて対峙しなければならない存在だ。 一方で、民族中心的な見方に立てば、同胞からなる北朝鮮と対峙姿勢をとることは受け入れ難く、むしろ融和的な姿勢で接する必要がある。進歩派の文在寅政権の支持者たちの多くは、後者の「民族中心的な見方」をしている。つまり、同じ民族の北朝鮮に対しては、軍事的な威嚇ではなく、むしろ経済支援や人道的援助を行うべきだと考えているのだろう。 「国家中心的な見方」をすることは、端的に言えばリアリズムを選択することである。ただ、進歩派の政権にとっては、そのようなリアリズムを選択することは容易ではない。現在も北朝鮮に親族や友人のいる進歩派の人々にとって、北朝鮮を敵視することは道徳的に憚(はばか)られる。それゆえ、文在寅政権に人道支援や対話政策を期待しているのだ。 そして、米国や日本とともに推進する北朝鮮への圧力外交や、THAAD導入をはじめとする防衛力の強化はかえって南北の緊張を煽り、戦争を誘発するものに映るだろう。はたして、進歩派の政権がリアリズムの息吹を取り入れて、日本やアメリカと完全に共同歩調を取れるときは来るのだろうか。それとも、「民族中心的な見方」の磁力は強く、日米両国からますます離れていくことになるのだろうか。トランプ米大統領(左)との会談を終え、記者会見する韓国の文在寅大統領=2017年11月、ソウル(共同) 韓国人にとっても8月15日は特別な日である。祖国が南北に分断されている現状や、それを是とする米国や日本との軍事協力、そしてそれに甘んじている文在寅政権に対して声を上げなければならないーあえて光復節に合わせて実施された反政府デモには、そのようなメッセージが込められていたのかもしれない。韓国社会を分断する亀裂はあまりに深い。政権交代が起こるたびに、現実主義と理想主義の往来が繰り返されるこの国はどこへ向かうのか。一端を垣間見た一人として今後も注視したい。

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    韓国はなぜ、北朝鮮問題で米国の足ばかり引っ張るのか

    酬となり、危機は最高潮に達す。しかし中国の制裁も強まったこともあって、北朝鮮はひとまず鳴りを潜めた。韓国の蠢動 あらためてミサイルを発射したのは、2ヵ月半経った11月29日未明である。ミサイルは技術を格段に向上させたものだった。物資の窮乏という苦境に遭いながらも、北朝鮮の強硬な姿勢は変わっていない。 危機は深刻化の一途である。そうしたなか、北朝鮮と米国・そして中国の姿勢は、およそはっきりして見えやすい。いずれも日本人に納得できるわけではないものの、それぞれの立場で、ひとまず一貫しているからである。 むしろ見えづらいのは、韓国である。韓国はアメリカの同盟国であり、米韓同盟の一翼を担っている。在韓米軍と韓国軍は協力して北朝鮮に対抗してきた。今後もそうするだろう。その意味では、アメリカとの安保条約を有する日本と立場はかわらない。しかし現実は、どうだろうか。 米韓合同軍事演習のおよそ一週間前、8月15日に文在寅韓国大統領は、「朝鮮半島での軍事活動は大韓民国だけが決めることができる」と表明した。これは米軍単独の行動、とりわけ北朝鮮に対する単独攻撃はさせない、という意味であって、事実上アメリカの動きを制約することにつながる。(iStock) 9月14日、文大統領はCNNとのインタビューで、「戦術核兵器再配備に賛成しない」と述べた。核実験を強行した北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議から、まもなくのことである。 在韓米軍は1991年12月の南北非核化共同宣言で、戦術核を撤収していた。北朝鮮の核の脅威に対抗すべく、その「再配備」を求める声が国内、とりわけ野党からあがっており、それを抑えるのが、文大統領のねらいである。しかしこれも、アメリカの軍事活動を制約する側面を有することはまちがいない。 さらに韓国は、9月19日のトランプ大統領の国連演説に強く反撥した北朝鮮に対し、その二日後の21日、9億円にのぼる人道支援を正式に表明した。同日、文大統領はあわせて自らわざわざ、北朝鮮に平昌冬季五輪の参加を呼びかけている。こうした言動には、日米両政府もさすがにいい顔をしなかったと伝えられた。 以上の事例だけでも、いかに韓国の動き方が怪しいかがわかる。日米の側につくのか離れるのか、迷走しているかに見えるし、もっと下世話な言い方をすれば、同盟国のアメリカの足を引っ張る挙動ばかりであった。 然り。謎は韓国にこそある。日米がこのような国と提携していけるのか、日米韓の連携など幻想ではないのか。そうも思えてくる。南北分断の歴史的意味 歴史からみると、そもそも韓国という国家の存在が、通例ではない。中国・大陸の勢力と隣接しない朝鮮半島の政権が存在するのは、実に史上、三国時代以来の事態である。とくに19世紀以降、近代になってからは初、ほとんど実験的な事態といってよい。 しかもそれは、すでに還暦を過ごした。近現代史において最長であって、あるいは最も安定した体制だといえなくもない。 その安定はもちろん、対峙する南北の政権、およびそれぞれを支持する大陸側と海洋側の勢力均衡によってきた。逆にいえば、最近の危機は、その均衡が揺らいだところに醸成されている。中国の大国化、換言すればアメリカの相対的な弱体化、およびそれに呼応するかのような北朝鮮の核・ミサイル開発が、その主因にほかならない。 こうした半島政権と大陸・海洋との関係を、あらためて歴史からみなおしてみよう。朝鮮王朝時代には、大陸側には「事大」、海洋側とは「交隣」という関係をとりむすんでいた。事大とは「大国に事(つか)える」こと、陸続きの中国への朝貢関係をいい、交隣は「隣国と交わる」こと、海を隔てた日本との交際をいう。 こう並べると、まったく別個の応対だったようにもみえるかもしれない。手続きは確かにそうである。しかし主体たる朝鮮王朝の意識・立場は、唯一無二だった。信奉する朱子学の華夷意識に裏づけられた「小中華」意識がそれである。 朝鮮王朝は軍事的には弱体であった。朱子学は文を尊び武を卑しむから、これもイデオロギーに合致した体制である。 また何より中華の尊重が優先したから、それを体現する中国王朝にも、恭順な態度を示さなくてはならない。大陸には軍事的にもかなわないので、適切な対処である。それと同時に、中華を尊び慕うあまり、自らも中華に近づこうとする自意識になり、「東方礼義の国」を自任した。 だとすれば、「隣国と交わる」交隣は、自らがミニ「中華」である以上、その交わり方がいかなるものであれ、相手を「夷」と蔑むものとならざるをえない。朝鮮王朝は日本や西洋など、海を隔てた国々と対等な交際をおこなった。けれどもその根柢には、濃厚な侮蔑が横たわっている。「小中華」意識のなせるわざであった。 同じことは、元来が「夷」だった満洲人の清朝に対してもいえる。清朝は中華王朝の明朝を後継し、しかも軍事力で優位にあったため、朝鮮王朝は「事大」の関係を続けた。しかし心底では、清朝を「中華」と認めていない。いわば面従腹背だったのである。 半島の政権はこのように同一の歴史的なメンタリティ・性格を有しながら、地政学的に大陸向けと海洋向けとの、相反する関係をもっていた。そうした相反性が近代の国際政治を通じて、南北の分断に至ったわけである。北朝鮮と韓国は「一卵性双生児」 つまり北朝鮮とは、大陸と関係の深い「事大」的な政権であり、朝鮮戦争で中国義勇軍によって支えられたのは、それを象徴する史実であった。他方、韓国は「交隣」の海洋側についた政権であり、米軍に支えられ、なおかつ大陸とは隔たって「事大」を払拭できる位置にある。いわば北朝鮮は「事大」を現代化した国家、韓国は「交隣」を現代化した国家なのである。 北朝鮮は現在、中国にしたがわず独自路線をつきすすんでいる。「事大」国家であるはずの政権が、その歴史に背を向け大陸に歯向かうので、「暴走」になってしまう。 韓国もその点は同じ。「交隣」国家であるはずの政権が、その歴史に背いて「反日」「反米」を隠そうとしないので、「迷走」に陥っている。 朝鮮半島の政権は、元来「小中華」だった。北の中国・大陸に対して面従腹背、南の日米・海洋に対しては対等蔑視という歴史を持っているから、「暴走」も「迷走」もかれらの立場からすれば、ごく自然なビヘイビアなのであろう。韓国と北朝鮮はこうしてみると、むしろ朝鮮王朝以来の「小中華」にもとづく世界観と行動様式を共有する一卵性双生児といえるかもしれない。(iStock) 半島を南北に分かった地政学的・国際的枠組みは、ともかく安定的に機能、推移してきた。にもかかわらず、「事大」政権の北朝鮮は、中国の意向を顧慮せず、アメリカとの対等交渉という「交隣」をめざし、「交隣」政権の韓国は、アメリカの意向に背いて、経済的に依存する中国に「事大」せざるをえなくなっている。こうしたパラドクスが、東アジアの不安定をもたらしているともいえようか。しかし同時に、そうした運動律も歴史に根ざしたものであるため、南北政権の動きがなかなか収束しないのであろう。 韓国の文政権はそんななか、北朝鮮との対話・融和につとめている。その動きは日米から疑われ、金正恩政権から相手にされず、いまのところ「迷走」にしかみえない。 しかしそもそもが一卵性双生児の南北である。かつて文大統領が記し、またおそらく今も望んでいるように、南北が一体となる可能性も皆無とはいえない。 南北政権はすでに、米中のいずれに対しても、一定の距離を取っている。両者が一体となれば、韓国でも取り沙汰される朝鮮半島の中立化が、現実のものになりかねない。しかも北が核を放棄するとは思えないから、韓国が事実上、北の「核の傘」に入ってしまう事態もありうる。 果たしてそうなったとき、一衣帯水・列島に住む日本人はいかに行動すればよいのか。そこまで考えなくてはならない時世になってきたようである。

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    朝鮮民族で団結し、統一国家を作る夢が韓国内で加速

     北朝鮮が事実上の核保有国となりつつある。不可解なのはそれでも韓国が“平時”のままだということだ。長年に亘る北の脅威に韓国人が麻痺しているということもあるが、それだけではない。背景には韓国世論の激変と、秘めた野望がある。拓殖大学教授の呉善花氏が警鐘を鳴らす。* * * いよいよ朝鮮半島情勢が危険水域に達しつつある。トランプ大統領は米韓合同軍事演習を大規模化させるなど、かつてない圧力をかけて北朝鮮に核開発・ミサイル開発を断念させようとしている。 しかし、その一方で韓国は、米韓合同軍事演習に参加しつつも、北朝鮮へ800万ドル(約8億9000万円)相当の食糧支援を表明するなど、対北圧力を高めようと共同歩調を取る日米を呆れさせた。圧力よりも融和路線が文在寅大統領の本音だ。気をつけなくてはならないのは、それが文大統領だけの考えではなく、多くの韓国人が共有する考えだという点だ。「北は平等で清貧」 まず、そもそもなぜ北朝鮮が核開発に固執するのかについて触れておきたい。北朝鮮の労働新聞が9月16日掲載した、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射訓練を視察し、笑顔を見せる金正恩朝鮮労働党委員長の写真(コリアメディア提供・共同) 金正恩が決して核開発を諦めない理由は朝鮮戦争の時点まで遡る。重要なことは、1950年に勃発した朝鮮戦争は、北朝鮮対韓国の戦争ではなく、中国・北朝鮮連合軍とアメリカを中心とする国連軍との戦争で、韓国は国連軍の一部に過ぎなかった、ということである。1953年に休戦となったが、休戦協定は上記両者間に結ばれたのであり、当然ながら韓国は協定の署名者ではない。核・ミサイル問題で、北朝鮮が韓国からの話し合い要請には決して応じようとはせず、アメリカとしか応じないと言い続けているのはそのためだ。 休戦協定では、新たな武器・核兵器・ミサイルの持ち込みが禁じられた。だがアメリカも北朝鮮も新たな武器を導入し、アメリカは核兵器・ミサイルをも持ち込んだ。両者とも休戦協定を侵したのである。こうした状況下で北朝鮮は、1994年以降たびたび「休戦協定に束縛されない」と表明し、2009年5月には、「もはや休戦協定に効力はないとみなす」と表明している。つまり、武力行使の再開はいつでも可能、ということになる。親北派が後退しない理由 アメリカは北朝鮮が核開発を止めれば、武力侵攻しないし現体制を認めると中国経由で伝えている。だが、金正恩はそんな言葉を信じはしない。核を持たなければ、これまで消された独裁者と同様にやられると思っている。したがって、北朝鮮はアメリカと平和条約を締結して朝鮮戦争終結が実現されるまでは絶対に核開発を止めない。 皮肉なことに、その北朝鮮とかつて干戈(かんか)を交えた韓国はいまや圧倒的に親北派が強くなり、圧力を強めようという意見は少数派だ。ターニングポイントは金大中政権(1998─2003年)だった。2000年の南北首脳会談以降、韓国では対北融和政策がとられて国民の北朝鮮イメージは一変し、国内に親北ムードが高まった。続く左派の盧武鉉政権下で、国民の親北傾向はいっそうのこと強くなっていった。 その後、保守政権の李明博、朴槿恵政権は一定の対北強硬姿勢に転じたが、北朝鮮はそれに対抗するかのように軍事挑発を多発させていった。そのため、国内では対北融和姿勢への再転換を是とする声が高まり、親北派勢力が後退することはなかった。文在寅政権に米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備撤回を求め、スローガンを叫ぶ反対派住民ら=韓国・星州 この背景には、若い世代の台頭により、朝鮮戦争で北から攻められた記憶が国全体として薄れていることがある。左派政権以降の教科書では北朝鮮史評価の傾向が強く、若者たちの大半は「同じ民族なのだから北朝鮮が韓国にミサイルを撃ち込むことはない」と信じるようになっている。さらには、北朝鮮に対していいイメージを抱いている者が少なくない。「ヘル朝鮮」と呼ばれるほど若者の失業率が高止まりし、財閥をはじめとする一部特権階級に富が集中する韓国に比べれば、むしろ北朝鮮は平等で清貧だという理解なのだ。 実際、最近の世論調査でも親北派の伸張は顕著だ。調査会社、韓国ギャラップの調査(9月5日~7日)によると、アメリカによる対北先制攻撃について、「反対」が59%、「賛成」が33%だった。一方、北朝鮮が韓国に戦争を仕掛ける可能性については、「ない」が58%、「ある」が37%だった。核を保有した統一朝鮮核を保有した統一朝鮮 トランプ大統領、安倍晋三首相は、文在寅大統領が対北800万ドル支援を表明した直後の3か国首脳会談で、「北朝鮮への圧力を損ないかねない行動は避ける必要がある」と苦言を呈した。だが、文大統領は意に介していない。なぜなら、彼が本当に気にしているのは韓国国内の世論だからだ。 いま、文在寅政権は韓国内で反発を受けている。大統領選のときに主張していた「対北融和」、「THAAD配備中止」は、最終的にアメリカからの要請を受け入れる形で変更を余儀なくされた。熱烈な文在寅支持派、つまり強固な親北派が期待していた開城工業団地の再稼働や金剛山観光の再開は思うように進まず、またTHAADも北朝鮮のミサイル発射が頻発して受け入れざるを得なくなった。 同盟国アメリカからの強い要請を文在寅氏は一応聞かざるを得ないが、これ以上、“譲歩”すれば支持者たちが離反する怖れがある。もちろん文大統領自身、本音は北朝鮮との融和にあるわけだから、北朝鮮にエールを送ることでその意志に変わりのないことを示そうとするのだ。この意志は、平昌オリンピックへの参加を北朝鮮に強く訴えかけたことにも滲み出ている。2017年7月、夏休みで韓国・平昌を訪れ、五輪関連施設を視察する文在寅大統領(右から2人目、大統領府提供・聯合=共同) 文大統領は、任期中に南北統一への道筋をつけたいと考えている。まずは、かつての左派政権時代のように文化的・経済的交流を拡大し、すでに南北で合意している第一段階としての「一国二制度による統一」を目指して南北共通市場を形成していくこれが文大統領の描くシナリオだ。「一国二制度による統一」は左派だけではなく、保守派も一致しての国家方針である。 韓国の考えは、南北共通市場の形成や外国資本の参入によって、北朝鮮がそれなりに豊かになり、少なくとも人民が貧困に喘ぐことがなくなれば、統一に向けての韓国の負担は大きく軽減される、というものだ。実際、現在の北朝鮮は国内の「資本主義化」をかなり推し進めており、経済特区への外国資本の参加を公募している。やっぱり核を持ちたい こうした道が開かれるかどうかは、アメリカが「核放棄」の主張から退き、核を保有する北朝鮮の現体制を容認するかどうかにかかっている。文大統領は「核放棄」ではなく「核凍結」を求めている。核開発を一時的にストップすればそれでよいという姿勢だ。しかしこれはポーズにすぎない。文大統領がそう考えているように、現在の韓国社会は「ここまで北の核開発が進んだのであれば、もはや認めるしかない」という方向性を強くしている。他の諸国にもそうした声があるし、アメリカ国内ですらそう発言する要人も少なくない。2017年11月、訪韓したトランプ米大統領(中央左)と韓国の文在寅大統領(共同) さらに踏み込んで言えば、韓国も核を持ちたいのだ。韓国ギャラップの調査では、核保有に「賛成」は60%で、「反対」は35%だった。  そもそも韓国の歴代政権は1972年以降、極秘裏に核開発を続けてきた。しかし2004年にIAEA(国際原子力機関)の調査で、2000年に金大中政権下でウラン濃縮を進めていたことが発覚し、中止せざるを得なくなったのである。韓国にとって核武装は悲願なのだ。南北統一がなれば、「北の核は自分たち朝鮮民族のものになる」のである。 韓米両国は「韓国が独自に戦時作戦統制権を行使できる条件が整えば、それを韓国に移譲すること」に合意している。朴槿恵政権下ではその時期を2020年としたが、文大統領は早期移譲を求めている。移譲となれば在韓米軍の撤退は時間の問題だ。アメリカでも在韓米軍撤退論者は少なくない。北朝鮮は米軍撤退を統一の第一条件としている。 リーマン・ショック以降、とくに現在、アメリカ、イギリスをはじめ、多くの諸国で国際主義から国家第一主義へ転換しようとする流れが加速度を増している。朝鮮民族で団結し、統一国家を作るという夢は、かつてないほど韓国内で共感を得やすくなっている。 韓国が描く統一朝鮮への道は、このままでは核保有朝鮮国への道となり、いっそう強固な反日大国出現への道となる。日本はそうした流れをはっきり見据え、北朝鮮問題に対処しなくてはならない。●オ・ソンファ/1956年韓国済州島生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。現在、拓殖大学国際学部教授。著書に『超・反日 北朝鮮化する韓国』(PHP研究所)、『赤い韓国 危機を招く半島の真実』(産経新聞出版、共著)などがある。関連記事■ 北朝鮮のミサイル発射兆候 信頼できるのは“Aアラート”?■ もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか■ 文在寅政権 慰安婦記念日まで制定、合意白紙宣言の可能性も■ 中国内「北朝鮮が核放棄見返りに毎年6兆円要求」報道の思惑■ 徴用工設置をはじめ、憎悪拡大再生産する韓国の動き

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    国防力増強に余念がない韓国、垣間見える焦り

    韓国の「読み方」伊藤弘太郎 (キヤノングローバル戦略研究所研究員) 文在寅政権は本年5月10日に発足してから半年を迎え、外交安全保障政策のスタンスが少しずつ見えてきた。「新政権の外交安全保障政策は日米韓の三カ国関係を基軸に、現実的でバランスのとれた外交を推進しながら、政権草創期を安全運転でこなしていくのでないか」というのが当初の筆者の見立てだった。政権発足後に北朝鮮の核・ミサイル開発が一層進展し、朝鮮半島情勢が緊張の度を増していることに加え、文在寅大統領が選挙戦を通じて、支持母体の進歩系だけでなく、保守、中道をも含めた幅広い層の支持を受け当選したからである。選挙前、「私のような人間が本当の保守だ(本年1月15日朝鮮日報によるインタビュー)」と発言するなど、文大統領は前回2012年の選挙において僅差で敗れたが故に、保守層の支持を盤石にするためのアピールに必死であった。就任演説において「国民すべての大統領を目指す」、「保守と進歩の葛藤は終わらなければならない」といった国民統合を重視する発言が散見された。 文大統領は「盧武鉉政権の大統領府秘書室長」という肩書きから「左派系」、「親北」だと見られがちだ。だからこそ同大統領は、こうした前評判とは一線を画し、まずは日米韓の連携を基調とする現実路線を選択すると予測したのだが、最近の韓国外交を見ると、こうした筆者の見通しは甘かったようだ。 今年9月15日の火星12号発射から11月29日の火星15号発射まで、北朝鮮による新たな挑発行動はなかった。その間、韓国外交はTHAAD配備問題による中国との関係悪化を改善させる大きな動きを見せた。10月30日、康京和外交部長官は国会での与党議員の質問に答える形で、(1)これ以上THAADを配備しない、(2)日米のミサイル防衛網に参加しない、(3)日本との安保協力は軍事同盟にならない、という「3つのNO」と呼ばれる立場を明らかにした。2017年10月、韓国国防省の行事に出席したマティス米国防長官。右は宋永武国防相=ソウル(共同) さらに、11月3日には、文在寅大統領がシンガポールメディアのCNAとのインタビューの中で、「日本との安保協力は軍事同盟とならない」と明言し、北朝鮮への対処を理由に「日本が軍事大国化することを懸念する」と発言している。その後、11月20日付の読売新聞が「日本版トマホーク開発」につき報じると、韓国メディアは敏感に反応し、これを批判的に報道した。最近では中央日報が5回に分け「浮上する自衛隊」と題した特集記事を組むなど、韓国メディアの論調は大統領発言に呼応するかのように日本の防衛力強化に対する警戒感を見せ始めた。 「米国に頼っている」、進歩派の不満 そもそも、文在寅政権の外交安全保障政策に関する考え方は、保守政治が選好する現実主義(リアリズム)の対立軸としての理想主義(リベラリズム)ではない。すでに多くの専門家が指摘しているように、現在の大統領側近は、周辺国からの力による干渉をはねのけて韓国の独立を守り、最終的には「韓国主導で南北統一を果たさなければならない」と本気で信じている民族主義者の集まりだ。彼らはその目的を達成するために「強力な軍事力を兼ね備えることが不可欠」と考える。 文在寅大統領は本年7月18日に軍高官を集めた昼食会の席上、「北との対話を追求しているが、圧倒的な国防力に基づかないと意味がない」として、現在GDP比2.4%水準の国防予算を任期中に2.9%に増額する考えを明らかにした。予算増額分を北の核・ミサイルへの対処能力向上に集中投資し、米国からの戦時作戦統制権の早期移管も目標としている。また、文大統領は8月28日に行われた国防部による業務報告の席上、「これまで莫大な国防費を投入したにもかかわらず、我々が北朝鮮の軍事力に対抗できず、ただ韓米連合防衛能力に頼っているようで残念だ」と軍を批判した。 韓国軍の歴史は、「北朝鮮の軍事力に単独の軍事力では対応できない」という前提の下、圧倒的な軍事力を持つ米国との同盟関係を基盤に、米国から最新装備品を導入しつつ、自国の防衛産業基盤を確立して自軍の戦力増強に努めてきた。この過程の中で、進歩陣営は「長年の軍事政権支配による軍の腐敗に端を発する装備品導入に絡む不正問題は旧態依然として存在し、米国の軍事力に依存してばかりか、高い装備品を買わされてばかりで国防費が無駄に使われている」と考え、米国と同盟重視の保守勢力に対する不満が常に存在している。 現在、韓国軍は北の核とミサイルを無力化する手段として、3軸体系と呼ばれる(1)キル・チェーン、(2)韓国型ミサイル防衛(KAMD)、(3)大量反撃報復(KMPR)戦略からなる軍事力構築を急ピッチで進めている。3軸体系の基本的な概念は、仮に北朝鮮が長距離射程砲や弾道ミサイルを韓国に対して発射する兆候があれば、速やかに発射地点を探知し打撃する。発射を防げなかった場合は、迎撃ミサイルで対応し、攻撃を受けたとしても被害を最小限に留め、北に対し大規模な報復を行う能力を保有する、というものだ。これら一連の軍事力を持つことによって、北朝鮮の攻撃を抑止することが韓国の最大目標なのである。2017年11月、歓迎式典に臨むトランプ米大統領(左)と韓国の文在寅大統領(共同) しかし、昨年の北朝鮮による一連の軍事挑発は、韓国軍にとって従来の戦略の根幹を揺るがす衝撃となったに違いない。北朝鮮は年初に核実験(4回目)と地球観測衛星を積んだロケットと称する飛翔体発射を実施した。3月以降は中距離弾道ミサイルを中心に、様々な種類のミサイルを発射させただけでなく、従来型の長射程砲や短距離ロケット砲などの大規模演習を行った。8月末には潜水艦からのSLBM発射にも成功し、9月には5回目となる核実験まで実行した。  我が国においては、日本列島のほぼすべてが射程に入る準中距離ミサイル・ノドンや改良型スカッドの発射に注目が集まった。しかし、韓国側から見れば、弾道ミサイルだけでなく、従来からの脅威であった長射程砲の射程が伸びたことも大きな意味を持つ。北朝鮮が「火の海にする」と何度も脅迫してきたソウルと首都圏地域だけでなく、陸・海・空軍の本部がある鶏龍市や在韓米軍基地のある平沢市や烏山市にも十分脅威を与えるようになったからだ。また、当初のキル・チェーン・システムは、北の攻撃が地上から行われることを想定していたが、今後はSLBMの登場により、これまで手薄だった対潜哨戒能力の向上も叫ばれるようになっている。こうした状況が、2016年の日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)締結に際し、韓国側が「対潜哨戒能力を持つ日本からの情報獲得は軍事的に有益だ」と判断するに至った要因の一つだとされている。防衛費を劇的に増加させることの難しさ 以上のような背景もあり、韓国軍の戦力増強については追い風が吹いているようだ。北のミサイル攻撃探知能力については、米国からすでに導入が決まっている無人偵察機「グローバルホーク」に加え、12月5日付の東亜日報は、韓国軍が情報収集機E-8Cジョイントスターズ4機を2022年までに導入する方針を固めたと報じた。現在は保有していない偵察衛星についても、2021年から23年の間に5機打ち上げる予定である。陸上装備では南北境界の最前線に配置されているとされる北の長距離砲を探知するための新しいレーダーを独自開発し、来年から実戦配備されるという。これまでに何度も自国領空への侵入を許してきた北朝鮮の小型無人機に対しては、探知・攻撃が可能な新型レーダーや対空砲などの開発に注力している。2017年12月、米韓両軍の共同訓練に参加し韓国西部の米軍群山空軍基地に着陸する米軍のF35ステルス戦闘機(聯合=共同) 北朝鮮に対する攻撃能力に関しては、韓国の弾道ミサイルの射程が2012年に最大800kmにまで延長することに米韓両国が合意しているが、更に、11月7日に行われた米韓首脳会談において、弾道ミサイルの弾頭重量制限を完全に解除することで合意した。これによりミサイルの破壊力が増し、KMTRの面でも能力を大幅に向上させることになる。将来的には、現在開発中のより精密な誘導攻撃が可能な「戦術地対地弾道ミサイル(KTSSM)」がバンカーバスターのような機能を果たすことが期待されている。また、航空戦力では、昨年10月に、約500キロ離れた上空から首都平壌の重要施設を攻撃可能な長距離空対地ミサイル「タウルス」90発の追加導入が決定している。さらに、敵の重要施設を攻撃するため自爆型無人機を導入する計画もあるという。 ミサイル防衛では、現在導入を進めているPAC-3と昨年から配備が始まった中距離地対空ミサイル(M-SAM)「天弓」に加え、長距離地対空ミサイル(L-SAM)を現在開発している。韓国国会では一部議員からSM-3(艦載弾道弾迎撃ミサイル)導入を求める声が上がっているが、韓国海軍はその導入には消極的な反応を示している。また、一時期、北の長射程砲から韓国軍の指揮機能とKAMD施設を防護するためイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」の導入に関心を示したこともあったが、軍事的効能の面から最終的には採用されず、代わりに韓国独自の「アイアン・ドーム」型防衛システムを開発中である。 以上のように、韓国軍が現在開発中や導入段階にある装備品の一部を紹介したが、北朝鮮の脅威に対処するために、陸海空それぞれの軍事力が増強されているという事実は明らかだ。こうした増強だけにとどまらず、北のSLBM搭載型潜水艦の脅威に対抗するため、原子力潜水艦の建造や対潜哨戒機部隊の大幅な拡充を求める声が与野党政治家や専門家の間で依然として存在する。しかし、これらの装備を導入するには莫大な国防予算を必要とする点が導入推進の動きを封じている状況だ。韓国も日本と同様に、少子高齢化社会を迎え、増大する社会保障費によって財政的に厳しい状況である。同じような境遇にある我が国が、限られた財源の中で防衛費を劇的に増加させることがいかに難しいか、韓国政府はよくわかっているはずである。根拠のない対日懸念の裏には、自らの軍事力を増強させるという並々ならぬ意欲と、北朝鮮への対処を理由に周辺国が軍事力を増強させることへの韓国の焦りが垣間見える。

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    韓国人がおかしなことを鵜呑みにするのは漢字廃止が影響か

    発言を繰り返すとともに、解決済みである徴用工の個人請求権まで容認してしまった。日本政府はこれに抗議、韓国で開催されるアジア中南米協力フォーラム外相会議に日本の河野太郎外相に招待状が届いていたが、欠席を決めた。なぜ、韓国は国と国との約束が守れず、韓国の人たちはおかしなことを鵜呑みにするのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、その背景を解説する。 * * * 日本と朝鮮半島は遥か古代から非常に難しい関係を続けてきました。穏やかな国、日本が対外的な争いに巻き込まれる時は、ほとんどの場合、朝鮮半島問題が原因となってきたのです。 古くは663年、すでに滅亡していた百済の復興を手助けするために唐と新羅の連合軍と戦い、敗北を喫しました(白村江の戦い)。13世紀に2度にわたってわが国が侵略された元寇は、元との戦いというより高麗との戦いでした。日清戦争は朝鮮半島に支配権を広げようとする清国を阻止することが目的であり、日露戦争もロシアが南下する危険性に備えた戦いでした。 そして今、日本に同じような危機が迫っています。北朝鮮が暴走すれば、否応なく日本にも飛び火します。本来であれば日米韓が連携して北朝鮮、そして背後にいる中国と対峙しなければなりませんが、韓国の文在寅大統領はまったく逆を向いています。 金正恩氏による大陸間弾道ミサイル実験や、そのことに対する国際社会の制裁強化の動きなど見れば、北朝鮮にすり寄り、「南北共同で強制動員被害の実態調査」をするなどと言っていられる状況ではないのは明らかです。しかし、文大統領は「反日」を親北政策に利用しようとしています。こんな状況では韓国が北朝鮮に事実上支配され、38度線が対馬海峡まで下りて来ることも、日本は覚悟しておかなければなりません。元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会」などがミニチュアの金色の慰安婦像500体を展示した =2017年8月14日、韓国(共同)◆韓国の「悪意」 文氏は国際ルールを完全に無視し、「ゴールポストを動かす」どころか、国家間の取り決めをすべてひっくり返そうとしています。 8月17日の韓国大統領府での記者会見で、文氏は日本統治時代に動員され働いていた元徴用工らの「個人請求権は消滅していない」と述べました。もちろん個人請求権が「ない」ことは、1965年の日韓国交正常化の際に結ばれた日韓請求権協定で明らかです。この問題はすべて解決済みです。韓国人に影響を与えた漢字廃止 左翼の盧武鉉大統領は2005年、日韓国交正常化交渉に関する全資料3万6000ページを公開させました。それを詳細に調査した結果、日本側が「韓国の被害者個人に対して補償する」ことを提案したのに対し、韓国側が「国として請求する」「個人に対しては国内で措置する」と主張し続けたことが明らかになったのです。そのため、さすがの盧氏も「すでに日本から受け取ったお金に個人補償分も含まれている」として、徴用工の個人請求権を諦めざるを得なかったのです。 ところが2012年、韓国の最高裁が「個人請求権は消滅していない」という驚くべき判断を下し、日本企業を相手どった訴訟で賠償命令が相次いで出されています。文氏の発言は韓国政府として初めて、個人請求権は消滅していないと正式に認めたものであり、今後、深刻な影響が生じてくるのは間違いありません。 慰安婦の「強制連行」も徴用工の「強制動員」もまったくの事実無根で、日本にとっては酷い「濡れ衣」です。しかし韓国は国家戦略として歴史を捏造し、それを世界に喧伝しています。儒教思想に基づく歪んだ優越意識から、韓国人にとって日本は「未開で野蛮な国」「蔑む対象」であり、今は「お金を取る国」なのです。相手を理解し、歩み寄ろうとするのは日本人の美徳ですが、その前に韓国が「悪意」を持って日本を貶めようとしていることに気づかなければなりません。 文氏は慰安婦や徴用工問題は、1965年の日韓請求権協定時には「わかっていなかった問題だ」とも述べました。しかし、もし彼らが主張するような酷いことが本当に行われていたなら、気づかないはずがありません。路線バスに乗せられたプラスチック製の慰安像に触れる乗客=2017年8月14日、韓国・ソウル(聯合=共同) 少し考えればおかしいとわかることを、なぜ韓国の人たちは鵜呑みにしてしまうのでしょうか。拓殖大学国際学部教授の呉善花氏は漢字の廃止が影響していると指摘します。 日韓併合当時、韓国では難しい漢字を使っており、庶民はほとんど読み書きができず、識字率は6%に過ぎませんでした。そのため日本は学校の数を59倍の5960校に増やし、庶民にハングルを教えました。ハングルは日本語でいえば平仮名やカタカナのようなもので、「漢字ハングル交じり文」を普及させたわけです。福澤諭吉らの尽力もあり、朝鮮人の識字率は1943年には22%にまで上がったそうです。 ところが1970年代に入ると韓国は漢字を廃止し、ハングルだけを使うようになりました。それによって韓国人の思考能力が著しく低下したと指摘する人は少なくありません。 しかも、最近では研究者でさえ漢字が読めなくなっているため、歴史的な資料を読むことができない。そのため韓国人は自国の「過去」の事実を知ることができず、自分たちに都合のいい「幻想」を歴史的事実だと思い込むようになったと呉氏は分析するのです。関連記事■ 在韓35年の教訓「韓国に関心を持っても、深入りはするな」■ 百田尚樹氏 「今こそ、韓国に謝ろう」の真意を語る■ 韓国政府がひた隠す「元慰安婦の9割が日韓合意に納得」■ アン・シネ、推定Gカップの美ボディを横から撮影■ ケント氏「韓国には嘘が恥ずかしいという概念がないのか」

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    物見遊山の交流ばかり 格好だけの姉妹都市はさっさと辞めよ

    、市内に設置されている慰安婦像と碑の寄贈を受け入れる決議が市議会で可決された。この像はもともと、在米韓国系団体と連携している在米中国系団体が私有地に建てたもので、この決議によって市の公有物とされた。ちなみにサンフランシスコ市長のエドウィン・M・リー氏は中国系アメリカ人で、韓国・ソウル市の名誉市民でもある。米カリフォルニア州サンフランシスコのセント・メリーズ公園展示スペースに設置された慰安婦像=2017年9月22日(中村将撮影) この碑には、「性奴隷」「(被害者が)何十万人」「捕らわれの身のまま死亡」などの表現がある。中韓が世界に喧伝する「慰安婦=性奴隷」を市が認めたのだ。これに怒った大阪市の吉村洋文市長(大阪維新の会)は「サンフランシスコ市が寄贈を受け入れることになれば、姉妹都市の関係を解消する」と断言した。 そもそも姉妹都市に法律上の定義はない。日本で初の締結は1955年の長崎市と米セントポール市だ。1989年に旧自治省は「地域国際交流推進大綱策定の指針」を定め関与を強めたが、今は総務省は手を引き、外務省も口を出さず、各自治体に任された格好だ。 自治体は姉妹都市関連の予算を組み、姉妹都市に市長らが出張した際の旅費や活動費を拠出している。 たとえば大阪市の場合、今年度の「姉妹都市ネットワークを活用した経済交流の推進」予算は1816万円にも上る。ちなみに同市の借金(市債残高)は4兆円超(2016年度末)だ。大阪市は8都市と姉妹都市関係を結ぶが、なかでも友好60周年の節目になるサンフランシスコ市関連の予算は726万円と突出している。その結果が慰安婦像の設置では、何のための友好だったのか。 この姉妹都市予算に関しては、かねてより「市長や市議の視察という名の旅費に消えている」との批判がある。舛添要一・前都知事は姉妹都市ソウルへの出張で1000万円超を費やし、しかもその場で韓国人学校を作ることをソウル側に約束し、後に猛批判を浴びた。元駐レバノン大使の天木直人氏は言う。 「そもそも外交は国家同士が行なうもの。都市外交と言えば聞こえはいいが、しょせん地方都市同士の交流に過ぎません。私がデトロイトの総領事をしている時も、首長をヘッドにした市議団のただの物見遊山という例がありました。格好だけの姉妹都市関係などやめたほうがいい」 姉妹は他人の始まり、ということで。関連記事■ 姉妹都市に慰安婦像… 小池都知事はソウルにどう対応?■ 慰安婦像承認の米SF市、中国系市長はソウル名誉市民■ SAPIO人気連載・業田良家4コママンガ【1/2】「橋下の影響力」■ 石原都知事 橋下市長と石原伸晃自民党幹事長の連携あり得る■ 橋下徹府知事が掲げる「大阪都構想」とは何か? 目的は?

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    「南北統一」が薄れゆく韓国の対北朝鮮最終シナリオ

    究所研究員)インタビュー聞き手 山本みずき 北朝鮮の脅威が高まるいま、「南北統一」や対北戦略について韓国ではどのような議論がなされているのか。韓国軍合同参謀本部に在籍した経歴を持つ、韓国を代表するシンクタンク「アサン研究所」の元研究員、池恩平(ジ・ウンピョン)氏にiRONNAの山本みずき特別編集長が聞いた。 山本 これまで韓国は、どの政権も「南北統一」を目標に据えてきたと思いますが、現在では具体的にどのようなシナリオが想定されているのでしょうか。また、統一が実現した場合、北朝鮮の脅威はなくなると考えているのでしょうか。 池 統一が実現すれば北朝鮮の脅威がなくなるというより、「どのようにして北朝鮮の脅威を取り除いて統一を図るか」が問いとして正しいでしょう。これについては、三つのシナリオが考えられています。一つ目は、西ドイツが東ドイツに対して行ったような、吸収併合による統一です。これは、韓国の若い世代が南北統一について思い描く代表的なシナリオでもある。一方で、これは北朝鮮にとって当然に拒否すべき選択肢となっている。北朝鮮の体制が崩壊しないかぎり、このような統一は実現しないからです。 二つ目は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が理念に掲げている「対話による統一」です。韓国と北朝鮮が相互に統一の条件について平和的に話し合い、段階的に通商を増やして合意に至るというもの。でも、これについても北朝鮮は難色を示しています。結果的に、北朝鮮の体制を崩壊させる可能性があるからです。南北交流を通じて韓国の物資が北朝鮮で流通すれば、生活様式に変化をきたし、人々はもはや金正恩の統治する体制を望まなくなるでしょう。そのため、「対話による統一」も平壌からは歓迎されない。 最後に考えられるのは、「武力による統一」です。最も過激な反面、手っ取り早い選択肢に思えますが、そもそもこれでは北朝鮮の脅威を取り除けるかどうかすら怪しい。というのも、軍事行動に伴う混乱に乗じて、北朝鮮の保有する大量破壊兵器が暴力的な非国家主体に流出する可能性があるからです。このように、シナリオは存在していても、現実にはどのように統一がなされるべきかについて、意見は統一されていないのです。池恩平氏(左)と山本みずき氏=2017年8月、韓国・ソウル市内 山本 仮に朝鮮半島が韓国主導で統一されれば、韓国にとって経済的な負担をもたらすのではないでしょうか。それでもなお、韓国人が南北統一を望む背景には、民族的紐帯の他に何らかの合理的な理由があるのでしょうか。 池 指摘してくれたとおり、南北統一は韓国にとって大きな経済的負荷となるでしょう。ドイツ再統一の場合もそうでした。旧東ドイツ地域は旧西ドイツ地域と比べて経済的に遅れていた。そして、今でも経済的に困窮している。ドイツ人は東西格差の是正のために多額の税金を払ってきたし、まして北朝鮮はかつての東ドイツより遥かに未発達です。 実際のところ、韓国の若い世代は南北統一に反対しています。彼らは北朝鮮の人々とのあいだに民族的紐帯を見出していないし、統一はドイツのように新税の創設を伴う。そして、これを負担するのは専ら若い世代です。ただし、韓国は日本と同様に高齢化社会であるため、南北統一は若年層の増加によってライフサイクルを引き延ばすというアドバンテージもあります。 すなわち、選択肢は「統一して税を負担し、高齢化を緩和する」か、「統一をせず、税も負担せず、高齢化の緩和を断念する」となります。いずれにしても、若い世代は南北統一に対して否定的です。ただ、私の祖父の世代になると、北朝鮮に家族や友人が住んでいる者もおり、未だに統一を望む考えが根強い。この世代がいなくなってしまうと、北朝鮮との間に民族的紐帯を見出す韓国人は減少し、南北統一の願望も薄れていくでしょう。北の核の脅威にどう対峙するか 山本 文在寅政権は、それまで9年間続いた対北強行姿勢の保守政権とはちがい、大統領選期間中から北朝鮮との対話路線を打ち出した親北的・進歩的政権と位置づけられています。文在寅大統領が対話の道を切り拓くことに熱心なのはなぜでしょうか。また、このような外交政策についてどのように分析していますか。 池 文在寅政権の考えでは、北朝鮮はアメリカに自らの存在を脅かされていると認識しています。だからこそ、文在寅政権は平壌に対し、韓国にそのような意志はないということを伝えようとしているのです。現に、文在寅大統領は「朝鮮半島を二度と戦場にしてはならない」という趣旨の発言を繰り返しています。 ですが、戦争をする意志がないことを韓国の大統領が強調することは、かえって北朝鮮の好戦的態度を招きかねない。韓国が北朝鮮に対して戦争をする意志がない旨を伝えることで、翻って北朝鮮が「こちらから先に攻撃しても構わないのではないか」と考える可能性があるからです。だから、「われわれは平和を欲しているが、同時に戦争にも備えている」ということこそが、文在寅大統領の伝えるべきメッセージではないでしょうか。武力による「統一」に懸念を示す池恩平氏=2017年8月、韓国・ソウル市内(本江希望撮影) 山本 では、韓国は北朝鮮の脅威に対してどのような軍事的態勢で臨んでいるのでしょうか。 池 軍事的態勢について語る際には、レベルを三つに分けて考える必要がある。「核の脅威」、「通常兵力の脅威」、「北朝鮮の体制崩壊」、これらに対して韓国がどのような態勢にあるかを、順を追って説明します。 まず、「核の脅威」に対する態勢は充分とは言えません。韓国が単独で核の脅威に対応することは難しいと考えられているからです。核の脅威に対してとるべき措置は、今のところ二つ挙げられます。一つ目は、(例えばイスラエルがイラクやシリアに対して行ったように)核施設を発見した時点で先制攻撃を行い、核開発能力を無力化することです。 ただし、これについては、韓国に自力で核施設を探索できるほどの衛星技術やインテリジェンス能力が備わっていないという問題点がある。二つ目はミサイル防衛ですが、残念ながら韓国のミサイル防衛態勢は発展途上にあります。例えば、イスラエルは高高度、中高度、低高度のいずれにおいてもミサイルの迎撃が可能ですが、韓国の場合、PAC-3のようなパトリオット・ミサイルは低高度での迎撃しかできない。だから、北朝鮮の『核の脅威』に対する韓国の対応能力は、目下のところ不完全だと言えます。 次に、「通常兵力の脅威」については、韓国はこれを防御する能力を有しています。過去7年間、韓国軍は北朝鮮の通常兵力による攻撃に備えるように訓練されてきました。そして、われわれは北朝鮮軍による攻撃を阻止するための作戦計画を複数用意しています。 最後の「北朝鮮の体制崩壊」についてですが、韓国は北朝鮮の体制を崩壊させるという状態までは展望できていないのです。なぜなら、韓国軍は基本的に朝鮮半島の南半分を防御することを主旨に創設された軍隊であって、38度線を北上して北朝鮮の領域を攻略するための軍隊ではないからです。「統一朝鮮」は日米と同盟を結ぶべき 山本 北朝鮮は中国やロシアと、アメリカの同盟諸国とのあいだの緩衝地帯(バッファーゾーン)だと考えられてきましたが、統一朝鮮が誕生してこの緩衝地帯が消失すると、中露から反発を買うのではないでしょうか。また、日米韓と中露のあいだに緩衝地帯が存在しない状況下でも、統一朝鮮とその周辺地域の情勢は安定すると思いますか。 池 だからこそ、統一朝鮮はアメリカや日本と同盟を結ぶべきだと考えています。統一朝鮮が誕生すれば、われわれは北朝鮮の脅威には晒されなくなりますが、遥かに大きな中露の脅威に直面することとなります。だから、勢力均衡を維持するためには、アメリカや日本との同盟関係を築かなければならない。このとき、在韓米軍の存在は必ず中露にとって悩ましい問題として顕現するはずです。ゆえに、統一朝鮮は中露に対して一層洗練された外交を展開しなければならなくなるでしょう。 山本 統一朝鮮において、在韓米軍が38度線を越えて駐留する可能性もあるのでしょうか。 池 まさしくそこが問題なのです。38度線を越えて在韓米軍が駐留すれば、中露はこれまで以上に警戒を強めるでしょう。韓国と北朝鮮の軍事境界線がある「板門店」を訪れた山本みずき氏=2017年8月(本江希望撮影) 山本 そうすると、統一朝鮮は大陸国家との協調を築くことが難しくなりそうですね。北朝鮮は中露から資源を輸入している地域ですが、通商の分野で問題は生じないのでしょうか。 池 韓国はシーレーンを活用した国であり、世界で5番目にエネルギーを消費する国です。石油、天然ガス、テクノロジーなどは全て海を通って韓国に送られてきます。陸上輸送は、海上輸送と比べて一度に運搬できる資源の量が圧倒的に少ない。ですから、海路の確保が重要となります。通商においても、統一朝鮮は大陸国家ではなく海洋国家との協力関係を構築するべきでしょう。 インタビューを終えて 歴史認識の観点から日韓関係をみると、両者の溝は深まるばかりだが、安全保障においては、好むと好まざるとにかかわらず、地理的な近隣性からも、両国の運命は不可分に結びついてきた。中国やロシアという軍事大国に囲まれ、また北朝鮮の危険な挑発の連続にさらされているという、日韓が置かれている地理的な条件は、これまで大きく変わることはなかった。 現時点では北朝鮮がつくりだす脅威は著しく緊張の度合いを高めており、韓国にとって日本との安全保障協力が必要だという認識はよりいっそう切実なものとなっている。また、日本の安全にとって、朝鮮半島の平和と安定が切り離すことができないという認識もこれまで繰り返し語られてきた。韓国では歴史問題をめぐって感情的な世論が日本との関係を悪化させているが、一方では今回のインタビューに見られるように、安全保障上の観点から日本との協力を求めるリアリズムもしばしば聞こえてくる。 韓国においてわが国との協力に可能性を見出す、池氏の提唱するリアリズムは日本にとっても比較的受け入れやすいのではないか。池氏が指摘するように、朝鮮半島は、勢力均衡を必要とする地域である。この地政学的に機敏な地域の一角を占めることとなった韓国において、はたしてリアリズムは確固たる位置を占めることができるのか。もしもそれが確かな存在となっていったならば、従来とは異なる日韓関係の新しい可能性が開けてくるかもしれない。(山本みずき) 池恩平(ジ・ウンピョン) 韓国を代表するシンクタンク「アサン研究所」元研究員。これまでに米ワシントンの有力シンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」でも研究に従事。韓国軍合同参謀本部に在籍中、統合作戦に関する企画立案や装備調達に関するイスラエル国防軍との調整業務に携わった。

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    韓国人は今も「南北統一」を望んでいるのか

    力かで揺れる国際社会は解決の糸口すら見いだせず、米朝の緊張関係は長引くばかりである。では、この現状を韓国はどう受け止めているのか。iRONNAの韓国リポート第二弾は「南北統一」。韓国社会の底流を読む。

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    なぜ韓国は北朝鮮と事を構えたがらないのか

    朝鮮を援助しながら高みの見物を決め込む中国とロシア。緊張が高まる朝鮮半島において、一方の当事者である韓国は北朝鮮に対して何ら有効な対抗策をとっていません。 そればかりか、第三者である日本に対して、解決済みの慰安婦や徴用工問題を蒸し返し、虚偽の像を建てるだけではなく、その像を乗せたバスを走らせるなど病的な反日行為を繰り返しています。最近はアメリカの圧力などにより、さすがに危機意識を持つようになったのか、反日姿勢が若干トーンダウンした感はありますが、その基本的な姿勢は変わっていません。 韓国は昭和25年の朝鮮戦争のときと同じように、有事になれば日本の後方支援をあてにしなければならないのですが、自国が安全保障上かなり危機的な状況に陥っている現状においても、日本に対して連携を深めるどころか、あえて敵に回すような行動をとる様は我々日本人には理解し難いところです。しかし、これには彼らなりの理由があると思われるので、それについて考えてみることにします。南北の軍事境界線がある韓国・板門店を視察する宋永武国防相、 マティス米国防長官ら=2017年10月27日(共同) まず、大韓民国にとっての朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を一言でいえば敵です。大韓民国憲法第3条において「大韓民国の領土は、韓半島およびその附属島嶼(とうしょ)とする」とうたっている以上、韓半島の北半分に居住する住民もまた大韓民国国民であり、そこを統治している北朝鮮は韓国にとって憲法上、自国の領土を不法に占拠する反国家団体ということになります。 つまり、韓国政府には、北朝鮮の圧政よる人権弾圧や飢えなどに苦しむ自国民を救うために北朝鮮政府を打倒する義務が道義的だけではなく法的にもあるのです。  実際に朝鮮戦争を経験した軍人大統領が国を治めていたころは、多くの国民が「北朝鮮や共産主義は敵である」と認識していましたが、政権が軍事独裁から民主化されると人権擁護の名のもと、国家保安法の見直し運動が活発になるなど政府の強権的なスパイ取り締まりが批判されるようになりました。 金大中政権のときには対北強硬派の牙城であった国家安全企画部が国家情報院に改編縮小されたりするなど、韓国ではだんだんと対北朝鮮強硬路線が緩和されてきました。一方の北朝鮮は一貫して日米韓を敵性国家とみなし続け、韓国だけではなく日本に対しては拉致という卑劣な手段で攻撃を行い、アメリカに対抗するため核と弾道ミサイルの開発を着々と進め現在に至っています。 つまり指導者の代替わりがあっても一貫して自国主導での半島統一を目標に軍備増強に励んでいた北朝鮮に対して、韓国は金泳三、金大中、盧武鉉の3人の大統領が親北政策を続けた結果、いつの間にか北朝鮮は打ち倒すべき敵性国家から共存共栄する対象になってしまったのです。 韓国の国民も自国が一応の民主化を果たし、経済的には経済協力開発機構(OECD)に加盟して先進国を名乗るようになって現状に満足するようになったのか、北朝鮮の貧困が明らかになるにつれ、東西ドイツが統合したときの西ドイツのように、自らは経済的負担を負いたくないという心理から、口先では統一を唱えるも実際には統一そのものを忌避して現状維持を望む人が多くなりました。 それどころか、長年の北朝鮮の工作や親北教育が浸透した結果、朝鮮戦争で韓国が北朝鮮と戦ったことを知らない若者が増えるだけではなく、欧州における東西冷戦終結や中国の改革開放路線の影響を受け「共産主義の脅威は去った」と多くの韓国国民は油断してしまいました。そして反共思想が下火になる一方で、同一民族に対する同胞意識が事あるごとに強調され北朝鮮にシンパシーを感じる人が多くなり、北朝鮮と現在も戦争中(休戦中)であることを忘れたのか、北朝鮮を脅威と感じる人が少なくなりました。 その結果が、対北強硬姿勢を打ち出した朴槿恵大統領がクーデターのような形で罷免逮捕され、その後継に親北派の文在寅氏が大統領に選出されるという現象です。とはいえ、さすがにここまで北朝鮮が挑発してくると、対外的に韓国政府としても何らかの対応を取らねばならないような状況になってきたのですが、文大統領は、いまだに北朝鮮との対立姿勢を明確にしていません。反日は北の脅威を隠すため? 国内的にも、いくら親北派が増えたとはいえ、対話ありきでいつまでも北朝鮮に対して強硬的な態度をとろうとしない現政権に疑問を持つ国民は少なくなくありません。 政府に対する批判の声が上がりそうになってきたので、困ったときの日本頼みと「日韓合意の見直し」や「徴用工の個人請求権」に関して大統領自身が発言するなど「愛国反日運動」を政府主導で盛り上げて北朝鮮の脅威から国民の目をそらそうとしているのが、一連の反日運動の本質ではないでしょうか。 北朝鮮に対して抗議や示威的な行動をとれば、相手が反撃をしてくるので本格的な武力衝突が起こりかねませんが、日本には何をしても「遺憾の意」を表明するのが関の山ですからノーリスクであり、何よりも日本をたたくことに関しては全国民が一致するので、やらない理由が見つかりません。 つまり韓国は自己保身のため、本当に奪還しなければいけない朝鮮半島の北半分の領土と、そこに抑留され苦しんでいる同胞を放っておいて、現実から逃避するためにありもしなかったでっち上げた話をもとに日本にからんできているのです。 その証拠に韓国の政治家や芸能人の大半は何ら危険のない竹島に上陸しても、生命の危険がある38度線には行きません。戦争をしたことのない日本に対して根拠のない謝罪や賠償を求めても、突然侵略されて、あれほど多くの罪もない自国民が殺された朝鮮戦争に関しては何も言いません。 虚偽の映画を作ってありもしなかった強制連行を理由に日本を非難しても、日本以上に多い北朝鮮に強制的に拉致された被害者を取り戻そうとはしません。このように何をしても反撃してこない日本に対しては傍若無人に振る舞う韓国も、やられたらやり返してくる北朝鮮に対しては弱腰で何もできないのです。朝鮮戦争の激戦地跡を視察する金正日書記(左から2人目)=1997年4月  実際に戦争をしたことのない日本に対して根拠のない謝罪や賠償を求めても、突然侵略されて、あれほど多くの罪もない自国民が殺された朝鮮戦争に関しては何も言いません。虚偽の映画を作ってありもしなかった強制連行を理由に日本を非難しても、日本以上に多い北朝鮮に今なお抑留されている拉致被害者を取り戻そうとはしません。このように何をしても反撃してこない日本に対しては傍若無人に振る舞う韓国も、やられたらやり返してくる北朝鮮に対しては弱腰で何もできないのです。 韓国は北方限界線(NLL)付近で偶発的に起こったと思われる小規模な戦闘や、自国の領土に攻め入られたときは反撃していますが、「ラングーン事件」や「大韓航空機爆破事件」に代表される大規模テロに対しては、多くの国民を殺されても目に見える反撃をしていません。 記憶に新しいところでは2010年に、自国の海軍艦艇が北朝鮮に撃沈され何十名もの将兵が殺されたときも、自国が北朝鮮との武力衝突に巻き込まれることを嫌ったアメリカの圧力があったのかもしれませんが、何もしませんでした。 これらの事例を見れば、いかに韓国が北朝鮮と事を構えたくないと思っているかということがわかります。朝鮮戦争を忘れたのか? 日本も人のことを言えた義理ではありませんが、これだけ北朝鮮が核やミサイル実験を繰り返しているのですから、インドが核武装したときのパキスタンのように韓国も核武装してもおかしくないのです。マスコミや野党の一部、最近では政府内にもアメリカの核の再配備など自国の核武装を求める声が出ていますが、肝心の大統領府は全面的にそれを否定しています。 もし同じ民族に対して核を使うはずがないというような根拠のないナイーブな幻想を抱いているとしたら、大間抜けとしか言いようがありません。朝鮮戦争で何百万人の自国民が彼らに殺され、今なおどれだけの家族が引き裂かれたままになっているのか忘れてしまったのでしょうか。ソウルで韓国の母親と対面する北朝鮮の男性=2001年2月  結局、彼らは口先では「我が民族」「我が同胞」などと綺麗(きれい)ごとを言っていますが、自己の繁栄を維持したいがために、北で抑圧されている二千数百万人の同胞を見殺しにしているのです。本来、彼らが救わねばならないのは静かな余生を送っているはずの自称従軍慰安婦や元徴用工ではなく、今も北で抑圧されている「我が民族」「我が同胞」なのです。 その事実に直面したくない政府、マスコミが国民の目線を日本に向けて憎しみをあおり、保守派と呼ばれる勢力が一部の人を除いて北朝鮮との衝突を避けたいため、それに同調するだけでなく、保守派と敵対する親北勢力も日韓離反工作のために同調する訳ですから、国を挙げての反日運動となるのです。 一般国民の多くも、あえて危険な北朝鮮と敵対するより、援助はしても攻撃はしてこない日本を一方的に叩く方が楽で適度に愛国心を満たしてくれるので、大勢に従っているのが現状です。要するに日本は朝鮮民族同士の内紛の出汁(だし)に使われているのです。 こんな人たちに日本がいつまでも付き合う必要はないのですが、日本としては安全保障上、韓国が北朝鮮ひいては中共との防波堤であった方が都合が良いのもまた現実です。そのためには、日本が北朝鮮よりも怖いと思わせるとともに、真の敵が北朝鮮であることを分からせ、今までのような謝罪や援助を一切止めて韓国の自立心を育てなければなりません。 そして、韓国の「日本に対して何をしても、日本が我々を見捨てることはない」というような甘えた考えも改めてもらう必要があります。元寇に匹敵する脅威 韓国は日本が北朝鮮と手を組むことはあり得ないと高をくくっているようですが、日本には北朝鮮シンパが多いことや、最近の韓国の度を越した反日行為にうんざりしている国民がかなり増えてきていること、北朝鮮に対するアメリカの腰の引けた態度などを勘案すれば、拉致問題さえ解決すれば日朝間に国交が樹立され、朝鮮半島有事の際に日本が韓国側に立たないことも十分あり得ます。 そういうことも含めて、日本がいつまでも韓国に友好的な態度をとる保証はないことを、彼らに認識させることが外務省の役割であり、友好ありきの外交姿勢を改める必要があります。 さらに外交政策の転換に合わせて防衛政策も見直す必要があります。早急にやるべきは、在韓邦人の速やかな撤退作戦の立案訓練、対馬(つしま)海峡に38度線が下りてくることを想定した部隊配置などの朝鮮有事への備えです。いま日本は「白村江(はくすきのえ)の戦い」「元寇(げんこう)」「大東亜戦争」に匹敵する国土侵略の危機が迫っていることを自覚せねばなりません。 当然、北朝鮮だけではなく中共による侵略への備えも怠ってはならないことは言うまでもありません。中長期的にはアメリカ頼みの主体性のない国防姿勢を改め「自分の国は自分で守る」という、ごく当たり前のことを憲法改正を含めて実践する必要がありますが、70年以上さぼってきたツケは重く、かなりの困難が予想されます。しかし、それは我が国が今後も独立国として生き残っていくためには避けて通れない道です。あまり期待してはいけませんが、そうやって日本の本気度を見せれば韓国も事態の深刻さを理解して日本に対する態度を改めるかもしれません。会談前に韓国の文在寅大統領(右)と握手する安倍首相 =2017年9月7日、ウラジオストク(共同) 日韓が国交を結んでから韓国は日本に対してやりたい放題、日本がひたすらそれに耐えるという関係でしたが、近年、多くの日本国民は歴史の真実を知るとともに、それにうんざりしてきています。夫婦関係も長年我慢してきた妻が夫の定年を機に離婚を切り出す熟年離婚のように、我慢を重ねてきた方が切れてしまえば、あっけなく終わってしまいます。 日本と韓国との関係も、そうならないように正すべきところは、たとえ一時的に波風が立とうとも直言し、突き放すところはきちんと突き放すべきなのです。 いつまでも韓国が一方的に日本に対して好き放題やり、日本がそれに耐えるというような不適切な関係を続けていくことは日韓両国にとって良いことではありません。 わが国は明治以来、朝鮮半島を自国の防波堤にすべく、日清日露の大戦を戦って多くの血を流しました。日韓併合後は多額の資金を投入するなど大変な苦労を重ねましたが、その結果はどうなったでしょうか。これらのことを踏まえた上で、いま一度朝鮮半島との付き合い方を考え直す必要があるのではないでしょうか。

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    【徹底比較】韓国と北朝鮮の陸海空戦力はこんなにも違った!

    鍛冶俊樹(軍事ジャーナリスト) 少し前のことだが、インターネット上で日本の自衛隊と韓国軍の実力の比較が話題になったことがある。何事につけ日本をライバル視する韓国であるから、こうした比較は出るべくして出たとも言えよう。 韓国の本年度の国防費は約4兆円、日本の防衛費は約5兆円、総兵力は韓国約63万人に対し日本は約25万人、韓国は徴兵制で日本は志願兵制、韓国が陸軍重視で日本は海空重視という対比は地政学的に見て確かに興味深い。 しかしながら、日韓はともに米国の同盟国であり、米国の圧倒的な軍事力を背景にして東アジアの平和と安定に寄与しているという現実を踏まえれば、「日韓戦わば」などという想定はサッカーならともかく軍事的には意味をなさない。軍隊の実力は、仮想敵との対比で測られる。ならば韓国軍の仮想敵は北朝鮮軍なのであり、韓国の実力は北朝鮮軍との対比によって明らかになるはずである。 韓国軍と北朝鮮軍は南北軍事境界線、通称38度線を挟んで対峙(たいじ)している。北朝鮮の総兵力約119万人のうち陸軍が102万人、韓国の63万人のうち陸軍は約50万人を占めていることから明らかなように、両軍は陸上戦に最重点を置いている。 陸上戦において最も有効な兵器は戦車であり、北朝鮮は約3500両を有し、対する韓国は約2400両である。ちなみに日本の陸上自衛隊の兵力は約15万人、戦車約300両であるから、南北両国の陸上戦にかける意気込みが計られよう。 北朝鮮が兵力、戦車数ともに韓国を凌駕(りょうが)しているが、韓国側は兵器の質の高さによって量の劣勢を補っていると考えられる。もちろん韓国には米軍基地があり、有事となれば米軍が補充されるわけであるが、補充されるまでの間は韓国軍が持ちこたえなければならないのである。 このことは戦車の内訳からも裏付けられる。北朝鮮で主力をなしている戦車は1960年代に旧ソ連で開発されたT62であるが、韓国の主力戦車K1は、韓国の国産で1988年に配備が開始されている。つまり韓国の方が新型なのである。 だがここで、賢明な読者は疑問を抱くだろう。「確かに1960年代に開発されたT62は旧式という他ないが、1988年配備のK1も既に30年近くたっておりもはや新式とはいえないではないか? 2000年以降に新式を開発していないのはいかなる訳か?」 この疑問は実は問題の本質を突いている。日本は韓国がK1配備を開始した2年後の1990年に90式戦車を配備し始め、2010年には10式戦車を配備し始めた。定期的に新型を開発して国産技術の維持向上に努めているわけだ。訓練中のK2戦車(韓国陸軍ホームページより) 実は韓国も2011年にはK2戦車の配備を始める計画だった。ところが現在に至ってもK2戦車は完成していない。技術的な問題を克服するのにまだ時間を要すると思われる。そしてこの開発の遅れは韓国にとって致命的なのである。北朝鮮が手にする「切り札」 韓国のK1戦車の主砲の口径は105ミリである。北朝鮮のT62戦車の主砲の口径は115ミリである。主砲の射程と威力は口径に比例するから、口径の小さな戦車が勝てる公算は極めて低い。端的に言えば、K1は後発であるにもかかわらずT62にかなわないのである。 1980年代以降、世界的に主力戦車の主砲の口径は120ミリが主流となっており、日本の90式戦車の主砲の口径も120ミリであるが、韓国は当時、それだけの技術水準に達していなかったのである。 そこで1990年代に韓国はK1の車体はそのままにして、主砲だけ120ミリに置き換えたK1A1戦車を開発した。だが、主砲だけ大きくなってしまった結果、かえって使い勝手が悪くなり性能は全体として劣化した。 つまり1990年代において、韓国は北朝鮮に戦車戦で勝てる自信が持てなかったのである。もちろん戦争は戦車だけで勝敗が決まるものではない。特に現代戦においては航空戦力が決定的な役割を演じているのは周知の事実だ。 韓国は1980年代から米国製戦闘機F16を導入していた。北朝鮮空軍の主力は現在においても1960年代に旧ソ連で開発されたミグ21である。この戦闘機は旧ソ連の誇る傑作機ではあるが、1980年代においては完全に旧式である。 1970年代における旧ソ連の新式であるミグ23も導入されているが、F16の敵ではないことが1982年のレバノン紛争で立証されてしまっている。1980年代における旧ソ連の新式であるミグ29も導入されているが、機数が少なく主力をなすに至っていない。 1990年代において、韓国の航空戦力は北朝鮮の航空戦力を圧倒していると言ってよく、それは現在でも同様である。2010年代の現在、米国の第4世代型の最優秀機といわれたF15戦闘機の韓国版F15Kを配備しており、第5世代型のF35も導入の予定である。 したがって、仮に北朝鮮軍がT62戦車を先頭に韓国に侵入したとしても、韓国の航空戦力によって撃退が可能である。意外なことに陸軍重視であるはずの韓国陸軍は北朝鮮の陸軍にかなわず、空軍によって辛うじて守られているのである。 航空戦力における韓国の優位を強調したが、実は航空戦力の中には弾道ミサイルも含まれる。北朝鮮が弾道ミサイルの実験を繰り返して技術の向上は否定すべくもないが、韓国も優秀な弾道ミサイルを開発しており、北朝鮮のほぼ全域を射程に収めている。2017年9月4日早朝に実施された韓国軍の弾道ミサイル発射訓練(韓国国防省提供・共同) しかし、弾道ミサイルの威力は弾頭の種類によって決まり、通常弾頭と核弾頭では威力に圧倒的な差がある。北朝鮮が核ミサイルを完成しつつある現在において、韓国も核弾頭を必要としているのは間違いない。 韓国海軍は北朝鮮が保有していないイージス艦を保有している。イージス艦はミサイル防衛のために有効な艦種であるが、韓国海軍は技術の蓄積が未熟であり、有効に機能しているとは言い難い。今後の改良が待たれる。

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    「電磁波でガンになる」THAAD配備地で見た韓国反対運動の現実

    古谷経衡(文筆家) 韓国慶州北道星州(ソンジュ)郡―。ウリ畑が広がる韓国の典型的な田園地帯が、にわかに脚光を浴びるようになったのは、この地にTHAAD(高高度防衛ミサイル)の配備が決定され、住民を巻き込んだ熾烈な反対運動が展開されたことが契機であった。私は星州の山間部の土地にTHAAD一式が持ち込まれて数カ月後の2017年5月、いまだ頑強な反対運動に揺れる現地を訪れた。 この土地は元来ロッテ財閥の有するゴルフ場で、それがTHAAD配備へ提供されたものだから、一時期中国ではロッテ社製品の不買運動も起こったほどである。THAADはその索敵範囲が中国本土へ奥深く食い込むことから、星州への配備を警戒する中国民衆の怒りを買ったものだった。 星州は牧歌的な農村で、ソウルからKTX(韓国高速鉄道)で2時間半といったところにある。全住民は100世帯2、3百人といったところ。この集落の公民館は、事実上、韓国全土から駆け付けたTHAAD反対派の根城となって久しい。星州に入ると、いたるところに米軍ミサイル反対、平和、戦争反対の横断幕が翻っている。中心になっているのは韓国国内の労組や、左派系市民団体。多くがソウルやプサンなど地元以外の大都市からの「出張」である。韓国・星州のTHAAD配備地近くに掲げられた反対派の横断幕 すわ私の脳裏に、沖縄・高江におけるヘリパッド反対運動がデジャヴした。高江もその人口140人ほどの集落に、県内外から反対派が集まってヘリパッド反対、平和、戦争反対の横断幕が広がっている。が、伝統的に労組の組織動員に一糸乱れぬ組織力を発揮する星州の方が、その規模とスケールにおいて高江に3倍するものと見えた。 通訳を従えて反対派や移民の話を聞いた。反対派が口をそろえて曰く「THAADは中国との要らぬ摩擦をもたらす」「米軍の世界戦略の犠牲になっている」。一方、北の脅威に対しての抑止力としてのTHAADへの評価は「THAADは戦術的に無意味」「THAADではなく対話によって北(北韓)との問題を解決すべき」と判を押したように回答が返ってきた。 では、公民館を反対派に占拠された地元住民はどう考えているのか。結論から言えば、驚いたことにほとんどの地元住民がTHAAD配備に反対であった。 まず、地元住民曰く、「THAAD配備に際して国や自治体から何の説明もなく、また補償金や迷惑料などの支払いもない」。住民はTHAAD云々などよりも、地元への説明なしに配備を強行した朴政権(当時)に怒り心頭といったご様子。 また、こんな意見も住民から多く上がった。「THAADから発せられる電磁波が人体に悪い影響を与えると聞いてすごく心配」。おそらく、THAADに付属する高機能レーダーから発せられるある種の電波の類が、人体に悪影響を与えるという疑似科学の部類だろうが、地元住民の多くがTHAAD反対理由の大きな一つとして「電磁波による悪影響」を上げていた。なんでも「THAADが発する電波によってガンになる」と喧伝する学者が講演会に来た影響もあるとか。 THAADに付随するレーダーは、在日米軍により日本に配備されているXバンドレーダーと基本的には同じものだ。このXバンドレーダーがある青森県つがる市の車力(しゃりき)や京都府京丹後市の経ヶ岬(きょうがみさき)では「電磁波による健康被害」など、私は寡聞にして聞かないのであるが…。沖縄・高江と星州のちがい また、THAADが配備されている旧ゴルフ場に続く山道は韓国警察によって閉鎖されていたが、その眼前で尼僧2人が座り込みを続けているのが印象的であった。話を聞くと、なんでもこの山は韓国の仏教系新宗教「円仏教」(えんぶつきよう=圓佛教)の聖地だとか。「わが教団の聖地が、米軍のミサイルによって穢されているとはけしからん」という理屈で、宗教勢力からもTHAAD反対の助っ人が訪れている。山奥にあるロッテのゴルフ場にTHAADが配備されたことで、山全体が立ち入り禁止となり、円仏教の信者が聖地に入ることができなくなったことに、尼僧らは座り込みのハンガーストライキを継続しているらしい。 私が星州を訪れた全体的な印象は、沖縄・高江に似ていると書いたが、一つだけ大きな違いを記さねばならない。高江の場合、反対派は終始、外部からの質問や取材にのっけから警戒の色で反応する。中にはこちらのあいさつもけんもほろろに「あんた、どこの新聞」「はい、まずはお宅の名刺出して」「指定されたとこ以外勝手に撮らないで」などと友好的態度とは程遠い、えも言えぬギスギスした反応を露骨にされたものだ。韓国・星州の配備予定地に搬入されたTHAADのミサイル発射台(聯合=共同) それに比して星州のそれは極めて開放的で笑顔が絶えず、私が日本から取材できたことを告げると「ぜひ星州の実態を日本でも伝えてほしい」とウェルカムの融和的態度一辺倒で迎えられ、「日本ではTHAADの問題はどう報じられているのか」などの逆質問を浴びせられた点が印象的であった。 高江と星州。同じ米軍基地・施設への反対運動でも、こうも極端に閉鎖と開放のツートンが際立つものだろうか。高江の活動家はよほど、ネットでの中傷に敏感になっているのだろうか、つっけんどんで陰鬱な空気が支配する。 一方、星州は外部に開かれており、ちょうど私が集落の公民館(反対派拠点)を訪れた際も、欧米のフリーランス記者と思われる数人が訪問中であった。私が訪れたのは日曜日であったが、毎週末には炊き出しや演奏なども行われるという。 朴槿恵退陣を求める市民大集会も韓国左派が主導したが、そこでも反対派は一糸乱れぬ統率が目立ち、大統領官邸前には特設の野外ステージが開かれ、韓国内の著名歌手が舞台に立って謳う。老齢化し、「〇〇県教祖」とか「〇〇労組」の一揆にも似たむしろ旗ばかりが目立つ陳腐化した日本の左派集会とはスケールも、洗練性も数段違うのが韓国の左派運動である。 ただし、対北への姿勢を聞くと「対話で…」「話し合いで…」と判を押したように回答する反対派の弁には、やや釈然としない陳腐さを感じたのもまた事実である。

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    中国内に「韓国による朝鮮半島の統一」を求める声

    「北朝鮮は米国に次ぐ、第2の仮想敵だ」「韓国が朝鮮半島を統一した方が中国に有益」──。中国は激しい北朝鮮批判を続けている。もはや「血で塗り固められた友誼」は存在せず、国境をはさんで両軍が対峙。このままでは、米朝より先に、中朝戦争が勃発する可能性も指摘されている。ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。* * *「北朝鮮=仮想敵」論をいち早く発表してきたのが、上海の華東師範大学国際冷戦史研究センター主任の沈志華教授だ。沈教授はソ連邦崩壊でロシアが混乱していた1994年、個人資産を投じて、ロシア政府から朝鮮戦争時のスターリンや毛沢東、金日成主席が交わした公電やその後の中朝ソ3か国が取り交わした秘密文書などのコピー数万部を入手し、翻訳や解読を行った。 その研究成果の一部が同大のホームページ上で公開されている。それは今年3月、大連外国語大学で行った講演録で、約2万3000字に及ぶ長大な論文だ。そこには中朝関係の秘話が満載されている。 たとえば、朝鮮戦争後の1958年、中国の義勇軍が北朝鮮から撤退する際、毛沢東は金日成と会談し、「もし、再度戦争するようなことがあれば、中国の東北部を北朝鮮に譲っても良い」と発言した。毛の真意は「戦争で北朝鮮が窮地に陥った際、北朝鮮軍は東北地方を拠点にして戦ってもよい」ということだと教授は語る。(iStock) この言葉を言質として、2001年に訪中した金正日総書記が中国側に「東北部を『視察』したい」と申し出た。中国側は「外国首脳が(東北部に)行くなら、『訪問』であって、『視察』ではない」と異議を唱えたが、金総書記は「父親の金日成が生前『毛沢東主席は東北部を北朝鮮に譲った』と話していた」と反論した。 江沢民指導部はすぐに、中国共産党中央対外連絡部の朱良部長(当時)に調べさせた。「たしかに金親子が毛沢東発言について自分たちに都合の良い部分だけを取ったのだが、事実だったことは間違いない」と教授は明かした。「このような解釈を行う北朝鮮こそ、中国の潜在的な敵だ。北朝鮮は中国の広大な領土を求めるという野心を持ち続けているのだ」と教授は憤る。 また、北朝鮮が中国に敵対的な態度をとるようになったのは1992年8月、中国の最高実力者、トウ小平が金日成の反対を押し切って、中韓の外交関係を樹立してからで、この後、金日成は核兵器開発に着手し、金正日から、いまの金正恩指導部に引き継がれている。なぜ「北朝鮮=潜在敵」なのか「中国の核心的利益の一つは『東北アジア域内の平和的環境であり、中国の経済発展の持続』だが、北朝鮮は核開発に突き進み、域内の平和的環境を崩そうとしているのは明らかだ。もはや、この時点で北朝鮮は『潜在敵』であり、逆に韓国は『潜在的な友人』で、この結果、中朝友好協力相互援助条約は一片の紙屑でしかなくなった」と教授は指摘する。 さらに、教授は「朝鮮半島の統一は中国にとって脅威だろうか」との疑問を呈し、「一般的に中国は米韓による朝鮮半島の統一よりは、北朝鮮が存続し続け、南北朝鮮が対立している現状の維持を望んでいる」との説に反論。韓国は潜在的な友好国なのだから、「韓国が朝鮮半島を統一した方が、中国にとって有益だ」と力説する。「なぜならば、韓国による朝鮮半島の統一によって、韓国と国境を接することになる中国東北部に韓国資本が流入し、東北部の経済発展を促進することになるからだ」と分析している。 このような教授の「北朝鮮=潜在敵」論は、米国の朝鮮半島問題専門家で、ブッシュ政権当時の国家安全保障会議(NSC)アジア部長を務めたビクター・チャ米戦略国際問題研究所(CSIS)担当部長にも支持されている。チャ氏は今年4月25日、米上院アジア太平洋の政策と戦略に関する軍事問題公聴会で次のように証言した。「北朝鮮は1994年から2008年の間に16回のミサイル発射実験および1回の核実験を行った。09年1月からこれ(今年4月25日現在)まで71回のミサイル実験および4回の核実験を実施した」と語り、核開発は近年、急ピッチで進められていると強調。とくに09年以降、北朝鮮は中国などとの話し合いにも応じておらず、「核開発中止に関して話し合いをする気がないことを示している」と断定する。チャ氏は「13年には中国側の窓口役を務めた張成沢氏を処刑して、中国とのパイプを絶った。これは金正恩委員長が中国を敵視している証拠だ」と鋭く指摘している。(iStock) 沈教授も米紙「ニューヨーク・タイムズ」の取材に対して、「もし、北朝鮮が核開発を完了すれば、世界は北朝鮮の独裁者の足下にひれ伏さなければならなくなるだろう。膠着状態が続けば続くほど、北朝鮮に有利になる」と分析。そのうえで、教授は「もし、北京とワシントンの政治的な協力が失敗し、北朝鮮の核開発の野望を封じ込められなければ、米中両国政府は対北朝鮮軍事オプションを前提とした協力体制を敷くべきだ」と強調している。●そうま・まさる/1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館刊)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館刊)。関連記事■ 麻央さん娘・麗禾ちゃん 明るく振る舞う姿に周囲が心痛める■ 小泉孝太郎、気遣い上手な女性と交際 本人は直撃に認める■ 熱愛発覚の小泉孝太郎 本人直撃時の一問一答を全文掲載■ 旭日旗批判は韓国人にとって先祖の行いを批判・侮辱する行為■ 恋愛、結婚、そして就職も諦め 韓国「七放世代」の悲鳴

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    文政権の対北融和政策に韓国人「北を利するだけで利点なし」

     韓国政府から見捨てられた人々の怒りが、文在寅政権を誕生させた。そして今、彼らは国の行く末についてどのような思いを抱いているのか。膠着する日韓関係をどのように見ているのか。新聞やテレビでは報じられない肉声を現地で聞いた。 文在寅新大統領が誕生した直後の5月中旬、本誌・SAPIO取材班は韓国の首都・ソウルと近郊都市で10日間に亘る現地取材を敢行した。市井の人々、とりわけ現在の韓国社会の中で不満を抱えている人々の生の声を聞きたいと考えた。彼らの怒りが文在寅大統領の出現を後押ししたと考えられるからだ。 大統領選中は、保守勢力から「北朝鮮シンパ」と激しく糾弾され続けてきた文氏だが、蓋を開けてみれば大統領就任後の支持率は81.6%(5月15~19日、韓国リアルメーター調査)と歴代政権で最高を記録している。 本誌の街頭インタビューでも、「庶民派大統領の誕生を心から嬉しく思う」(60代女性)、「文大統領なら弱者のための政治をしてくれるだろう」(70代男性)、「クリーンなイメージのとおり、腐敗した政治勢力を一掃してくれるのではないか」(50代男性)と新政権に期待する声が多数を占めた。 ただし、少し深掘りして話を聞くと「文大統領を応援はするが、信用はしていない」(60代男性)、「文大統領の政治は韓国をより悪くするかもしれない」(30代女性)という本音が聞こえ始めた。中でも目立ったのが、北朝鮮を巡る安全保障と外交政策を不安視する声だ。 ソウル市鍾路区のパゴダ公園付近で炊き出しの列に並んでいた70代男性は、「文大統領には頑張ってもらいたい」とエールを送りつつ、対北宥和政策についてこう苦言を呈した。「韓国が北朝鮮に接近し米国と距離を置くのは極めて危険。文大統領は中国の顔色を窺いTHAAD配備の見直しを視野に入れているが、とんでもないことです」 本誌取材中も、北は2度に亘り弾道ミサイルを発射。朝鮮戦争を体験した世代は、差し迫る北の脅威に警戒感を隠せない様子だった。 一方で、対北宥和政策による韓国経済のさらなる疲弊を懸念する人々もいた。「私は文氏には投票しませんでした。韓国の経済状況を考えれば、北を支援する余裕などないはず」(60代女性・タクシードライバー) 文大統領の対北宥和政策が、かつて金大中・盧武鉉両大統領が行った“太陽政策”と同様に「北を利するだけでメリットがない」と考える韓国国民は少なくないようだった。関連記事■ SAPIO人気連載・業田良家4コマ「北にそっくり」■ SAPIO人気連載・業田良家4コマ漫画【1/2】「根拠のないデマ」■ 韓国人「私が日本人なら安倍首相を頼もしく感じるだろう」■ 伊勢志摩サミットを逃せば日韓関係に当面修復のチャンスなし■ SAPIO人気連載・業田良家4コマ漫画「鏡のない国のパク」

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    徴用工「残酷物語」は韓国ではなく日本が生んだイメージだった

    西岡力(麗澤大学客員教授、「救う会」全国協議会会長)ソウルの韓国大統領府で記者会見する 文在寅大統領=2017年8月(共同) 文在寅韓国大統領が8月17日の記者会見で、日本統治時代に徴用されて働いた徴用工問題で、個人の賠償請求を認めた韓国裁判所の立場を支持する考えを示した。文氏は「(徴用工問題を解決した政府間の)両国合意は個人の権利を侵害できない。政府はその立場から歴史認識問題に臨んでいる」と語った。 その後、安倍首相との電話会談で国家対国家の請求権処理は終わっているという立場を表明したというが、文在寅大統領発言は1965年に作られた日韓国交正常化の枠組みを根底から覆しかねない危険性を含んでいる。 わが国政府は、徴用による労働動員は当時、日本国民だった朝鮮人に合法的に課されたものであって、不法なものではなかったと繰り返し主張している。しかし、それだけでは国際広報として全く不十分だ。 韓国では映画『軍艦島』や新たに立てられた徴用工像などを使い、あたかも徴用工がナチスドイツのユダヤ人収容所のようなところで奴隷労働を強いられたかのような宣伝を活発に展開している。このままほっておくと、徴用工問題は第二の慰安婦問題となって虚偽宣伝でわが国の名誉がひどく傷つけられることになりかねない。官民が協力して当時の実態を事実に即して広報して、韓国側の虚偽宣伝に反論しなければならない。 国家総動員法にもとづき朝鮮半島から内地(樺太など含む)への労働動員が始まったのは1939年である。同年9月~41年までは、指定された地域で業者が希望者を集めた「募集」形式、42年12月~44年8月まではその募集が朝鮮総督府の「斡旋(あっせん)」により行われ、44年9月に国民徴用令が適用された。なお、45年3月末には関釜連絡船がほとんど途絶えたので、6カ月あまりの適用に終わった。 1960年代以降、日本国内の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)や日本人左派学者がこれら全体を「強制連行」と呼び始め、彼らの立場からの調査が続けられてきた。韓国でもまず学界がその影響を受け、次第にマスコミが強制連行を報じるようになった。 政府も盧武鉉政権時代の2004年に日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会を設立した。ここで言われている「強制動員被害」とは、「満州事変から太平洋戦争に至る時期に日帝によって強制動員された軍人・軍属・労務者・慰安婦等の生活を強要された者がかぶった生命・身体・財産等の被害をいう」(日帝強占下強制動員被害真相糾明等に関する特別法)。同委員会は2010年に対日抗争期強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支援委員会となり、20万を超える被害申請について調査を実施した。徴用工問題は「日本発」だった まず、日本において問題提起がなされ、それが韓国の当事者を刺激し、運動が始まり、韓国マスコミが大きく取り上げ、韓国政府が動き始めるという慰安婦問題とほぼ同じパターンで事態が悪化している。日本の反日運動家と左派学者らは2005年、「強制動員真相究明ネットワーク」(共同代表飛田雄一、上杉聡、内海愛子)を結成して、韓国政府の調査を助けている。 共同代表の一人である内海愛子は、2000年の「女性国際戦犯法廷」で、東京裁判を「天皇の免責、植民地の欠落、性暴力の不処罰」を理由に批判した、代表的反日学者だ。彼らは、日本の朝鮮統治が国際法上、非合法であったという立場を日本政府に認めさせ、国家補償を実施することを目的とした大規模な反日運動を続けている。彼らはこう主張している。「強制連行がなかった」とする主張の根元には、植民地支配は正当なものであるという認識があります。日本による植民地支配は正当な支配であり、動員は合法的なものであるという考え方です。しかし、韓国では「韓国併合」を不法・不当ととらえており、日本に強制的に占領された時期としています。 まず、植民地として支配したことを反省することが大切でしょう。(略)強制的な動員は人道に反する不法行為でした。 強制連行は虚構や捏造(ねつぞう)ではありません。強制連行がなかったという宣伝じたいがプロパガンダであり、虚構や捏造です。 歴史学研究では、戦時に植民地・占領地から民衆の強制的動員がなされたことは歴史的事実として認知されています。歴史教科書にもそのような認識が反映され、植民地・占領地からの強制的な動員がなされたことが記されています。朝鮮人の強制連行はそのひとつなのです。 そして、2012年5月に韓国の大法院(最高裁判所)が「個人請求権は消えていない」と判定し、三菱重工業や新日本製鉄(現新日鉄住金)など日本企業は、徴用者に対する賠償責任があるとして原告敗訴判決の原審を破棄し、原告勝訴の趣旨で事件をそれぞれ釜山高裁とソウル高裁に差し戻すという、日韓基本条約秩序を根底から覆す判決を下したが、同ネットワークはその判決を強く支持して次のように主張する。 そこ(大法院判決・引用者補)では日本占領を不法な強制占領とし、そのような不法な支配下での動員法は大韓民国の憲法に相反するものとしています。そして、強制動員を不法なものとして、原告の個人の請求権は日韓請求権協定では消滅していないとしました。(略)つまり、強制動員は不法であり、個人の損害賠償請求権がある、会社には支払う義務がある、という判決を出したわけです。(略)韓国政府はもとより、日本企業もこの判決への対応が問われているのです。この判決に従っての問題解決が求められているわけです〉(同ネットワーク「朝鮮人強制連行Q&A」) 1965年の日韓基本条約体制を根元から覆そうとしている彼らこそ、本当の嫌韓・反韓派だ。したがって、国際広報の観点からすると、39~45年にかけての朝鮮人労働者の戦時動員全体像を正しく認識する必要がある。もっと言うと、日本の統治時代に朝鮮でどのような社会変化が起きたのかについても、事実を正しく研究し、日本の国益と日韓基本条約体制を守る立場から、しっかりした国際広報が必要なのだ。朝鮮人の戦時動員 韓国政府が対日歴史戦を公式に宣言したのが2005年、今から12年前だった。盧武鉉政府が同年3月「新韓日ドクトリン」を発表し、「最近の日本の一隅で起きている独島(竹島)や歴史についての一連の動きを、過去の植民地侵略を正当化しようとする意識が内在した重い問題と見て、断固として対処する」「我々の大義と正当性を国際社会に堂々と示すためあらゆる努力を払い、その過程で日本の態度変化を促す」と歴史認識と領土問題で日本を糾弾する外交を行うことを宣言した。 さらに大統領談話で「侵略と支配の歴史を正当化し、再び覇権主義を貫こうとする(日本)の意図をこれ以上放置できない」「外交戦争も辞さない」「この戦いは一日二日で終わる戦いではありません。持久戦です。どんな 困難であっても甘受するという悲壮な覚悟で臨み、しかし、体力消耗は最大限減らす知恵と余裕をもって、粘り強くやり抜かねばなりません」などと述べて、多額の国費を投じて東北アジア歴史財団を作る一方、全世界で日本非難の外交戦争を展開し、それが現在まで続いている。 日本は同年に戦後60年小泉談話を出して「侵略と植民地支配」に謝罪したが、日本の国益の立場から戦前の歴史的事実を研究し国際広報する体制を作るという問題意識を持たなかった。その上、日本国内では上記したように反日運動家らが韓国政府の反日歴史外交に全面的に協力する研究と広報体制を作り上げていた。平成17年8月、衆院を解散し、記者会見する小泉純一郎首相(当時) 私は同じ2005年、強い危機意識をもって『日韓「歴史問題」の真実 「朝鮮人強制連行」「慰安婦問題」を捏造したのは誰か』(PHP研究所)という本を書いた。しかし、ほとんど世の関心を集めることはなく同書は絶版となっている。 ここでその結論部分を紹介して、事実に基づく国際広報の一助としたい。 同書で私は、朝鮮人の戦時動員について大略こう書いた。 1939年の国家総動員法にもとづき「朝鮮人内地移送計画」が作られた。それに基づき、約63万人の朝鮮人労働者が朝鮮から日本内地(樺太と南洋を含む)に移送された。 ただし、そのうち契約が終了して帰還したり、契約途中で他の職場に移った者が多く、終戦時に動員現場にいたのは32万人だった。 それに加えて終戦時に軍人・軍属として約11万人が内地にいた。これらが朝鮮人の戦時動員だ。5年で108万人が渡航出願 動員が始まる前年1938年にすでに80万人の朝鮮人が内地にいた。動員が終わった45年には200万人が内地にいた。つまり、国家総動員法が施行された39~45年の間に内地の朝鮮人は120万人増加した。しかし、そのうち同法に基づく戦時動員労働者は32万人、軍人・軍属を加えても43万人だけだった。 つまり動員された者は動員期間増加分の3分の1にしか過ぎなかった。その約2倍、80万人近くは戦時動員期間中も続いた出稼ぎ移住だった。 終戦時内地にいた朝鮮人200万人のうち80%、160万人は自分の意志により内地で暮らす者らだった。 ちなみに、併合前の1909年末の内地の朝鮮人人口は790人程度だったから、日本統治時代35年間の結果、戦時動員された40万人の4倍にあたる160万人が自分の意志により内地で暮らしていた。朝鮮から内地へ巨大な人の流れがあった。この大部分は出稼ぎ移住だった。 当時の内地に多数の出稼ぎ移住を受け入れる労働力需要があったことだ。1935年末で5万人以上の人口を持つ都市は内地に87あったが、朝鮮にはわずか6しかなかった。その上、戦時動員期間には日本人男性が徴兵で払底していたことから、内地の肉体労働の賃金が高騰していた。内地の都市、工場、鉱山には働き口があり、旅費だけを準備すれば食べていけた。内地と朝鮮を頻繁に往復することができ、昭和に入ると毎年10万人を超える朝鮮人が往復した。まず、単身で渡航し、生活の基盤を築いて家族を呼び寄せる者も多かった。仁川市内で公開された徴用工像 日本語が未熟で低学歴の朝鮮農民が多数日本に渡航したことにより、日本社会と摩擦を起こした。また、不景気になると日本人労働者の職を奪ったり、低賃金を固定化するという弊害もあった。そのため、朝鮮から内地への渡航は総督府によって厳しく制限されていた。渡航証明書なしでは内地にわたれなかった。不正渡航者も多数いた。 総督府の統計によると、1933~37年の5年間、108万7500人から渡航出願が出され(再出願含む)、その60%にあたる65万人が不許可とされた。許可率は半分以下の40%だった。 不正渡航者も多かった。内地では不正渡航者を取り締まり、朝鮮に送還する措置を取っていた。これこそが強制連行だ。1930~42年まで13年間に内地で発見され朝鮮に送還された不正渡航者は合計3万3000人にのぼる。特に注目したいのは、戦時動員の始まった39~42年までの4年間で送還者が1万9000人、全体の57%だったことだ。むしろ動員期間に入り不正渡航者の送還が急増した。驚くべきことに、戦時動員開始後、動員対象者になりすまして「不正渡航」する者がかなりいた。朝鮮人の自由労働者たち 戦時動員は大きく二つの時期に分けられる。 1938年に国家総動員法が公布され、内地では39年から国民徴用令による動員が始まったが、朝鮮では徴用令は発動されず、39年9月~42年1月までは「募集」形式で動員が行われた。 戦争遂行に必要な石炭、鉱山などの事業主が厚生労働省の認可と朝鮮総督府の許可を得て、総督府の指定する地域で労働者を募集した。募集された労働者は、雇用主またはその代理者に引率されて集団的に渡航就労した。それによって、労働者は個別に渡航証明を取ることや、出発港で個別に渡航証明の検査を受けることがなくなり、個別渡航の困難さが大幅に解消した。一種の集団就職だった。 この募集の期間である1939~41年までに内地の朝鮮人人口は67万人増加した。そのうち、自然増(出生数マイナス死亡数)は8万人だから、朝鮮からの移住による増加分(移住数マイナス帰国数)は59万人だ。そのうち、募集による移住数は15万人(厚生省統計)だから、残り44万人が動員計画の外で個別に内地に渡航したことになる。つまり、39~41年の前期には、動員計画はほぼ失敗した。巨大な朝鮮から内地への出稼ぎの流れを戦争遂行のために統制するという動員計画の目的は達成できず、無秩序な内地への渡航が常態化した。動員数の3倍の労働者が職を求めて個別に内地に渡航したからだ。そのうちには正規の渡航証明を持たない不正渡航者も多数含まれていた。 動員の後期にあたる1942年から終戦までは、動員計画の外での個別渡航はほぼ姿を消した。前期の失敗をふまえて、戦時動員以外の職場に巨大な労働力が流れ込む状況を変えようと42年2月から、総督府の行政機関が前面に出る「官斡旋」方式の動員が開始されたからだ。 炭鉱や鉱山に加えて土建業、軍需工場などの事業主が総督府に必要な人員を申請し、総督府が道(日本の都道府県に相当)に、道はその下の行政単位である郡、面に割り当てを決めて動員を行った。一部ではかなり乱暴なやり方もあったようだが、その乱暴さとは、基本的には渡航したくない者を無理に連れてくるというケースよりは、個別渡航などで自分の行きたい職場を目指そうとしていた出稼ぎ労働者を、本人が行きたくなかった炭鉱などに送り込んだというケースが多かったのではないかと推測される。ソウルの韓国国会で開かれた集会で、自身の若いときの写真を掲げ被害を訴える元徴用工の男性(左) その結果、1942~45年の終戦までを見ると、動員達成率は80%まで上がった。また、同時期の内地朝鮮人人口の増加は53万7000人だったが、戦時動員数(厚生省統計)はその98%におよぶ52万人だった。この間の自然増の統計は不明だが、これまでの実績からすると年間3万人以上にはなっていたはずで、その分、戦時動員以外の渡航者が戦火を避けて朝鮮に帰ったのだと考えられる。 この期間は動員における統制がかなり厳しく機能していたように見える。しかし、実は計画通りには進んでいなかった。官斡旋で就労した者の多くが契約期間中に逃走していたからだ。1945年3月基準で動員労働者のうち逃亡者が37%、22万人にものぼっている。 この事実をもって、左派反日学者らは、労働現場が余りにも過酷だったからだと説明してきた。しかし、当時の史料を読み込むと、逃亡した労働者は朝鮮には帰らず、朝鮮人の親方の下で工事現場等の日雇い労働者になっていた。それを「自由労働者」と呼んでいた。また、2年間の契約が終了した労働者の多くも、帰国せずかつ動員現場での再契約を拒否して「自由労働者」となっていた。失敗だった戦時動員 官斡旋では逃亡を防ぐため、集められた労働者を50人から200人の隊に編制し、隊長その他の幹部を労働者の中から選び、団体で内地に渡航した。隊編制は炭鉱などに就労してからも維持され、各種の訓練も行われた。 しかし、実情は、動員先の炭鉱で働く意志のない者、すなわち渡航の手段として官斡旋を利用して、内地に着いたら隙を見て逃亡しようと考えている者が60%もいたという調査結果さえ残っている(『炭鉱における半島人の労務者』労働科学研究所1943年)。 1944年9月、戦局が悪化し空襲の危険がある内地への渡航希望者が減る中、朝鮮では軍属に限り1941年から適用されていた徴用令が全面的に発令された。また、すでに内地に渡航し動員現場にいた労働者らにもその場で徴用令がかけられ、逃亡を防ごうとした。しかし、先述の通り、終戦の際、動員現場にいた者は動員数の約半分以下の32万人(厚生省統計)だった。法的強制力を持つ徴用令もそれほど効果を上げられなかった。設置されたばかりの徴用工像=2017年8月、韓国・仁川市 つまり、官斡旋と徴用によるかなり強い強制力のある動員が実施されたこの時期でさえ、渡航後4割が逃亡したため、巨大な出稼ぎ労働者の流れを炭鉱などに送り込もうとした動員計画はうまく進まなかった。 国家総動員法に基づき立てられた「朝鮮人内地移送計画」は、放っておいても巨大な人の流れが朝鮮から内地に向かうという状況の中、戦争遂行に必要な産業に朝鮮の労働力を効率よく移送しようとする政策だった。しかし、その前期1939~41年までの募集の時期は、動員計画外で動員者の約3倍の個別渡航者が出現して計画は失敗し、後期42~45年までの官斡旋と徴用の時期は、個別渡航者はほとんどなくなったが、約4割が動員現場から逃亡して自由労働者になって、動員計画の外の職場で働いていたので、やはり計画は順調には進まなかった。全体として戦時動員は失敗だった。 一方、平和な農村からいやがる青年を無理やり連れて行って、奴隷のように酷使したという「強制連行」のイメージは1970年代以降、まず日本で作られ、それが韓国にも広がったもので、以上のような実態とは大きくかけ離れていた。

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    慰安婦より根深い「徴用工問題」を蒸し返した韓国の裏事情

    木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授) 「韓国で新たな大統領になった文在寅(ムン・ジェイン)は左派の政治家だ。韓国の左派は中国にも近い反日勢力であり、反日政策を意図的に進めている。増え続ける慰安婦像や新たな徴用工像の設置はその表れであり、文在寅政権は各種社会勢力と結託して日本へ挑戦状をたたきつけようとしているのだ」 今日の韓国の状況を説明するのによく使われる「通俗的な」説明だ。そこでは、韓国の政治社会状況を左派と右派、韓国で使われる言葉を使えば「進歩」と「保守」に両分し、左派を「反日反米親北親中」勢力、逆に右派を相対的に「親日親米反北反中」勢力と断定した上で、「わかりやすく」韓国の状況が説明される。 このような論者は、歴史認識問題もまたその中に位置づける。つまり、歴史認識問題が激化するのは、中国や北朝鮮と結びついた左派の、組織的な策動の産物だと言うのである。 とはいえ、少し考えればわかるように、このような説明は明らかな破綻を抱えている。そもそも韓国の右派が単純に「親日親米反北反中」だといえないことを、われわれは朴槿惠(パク・クネ)政権から学んだはずである。当初、慰安婦問題で日本に強硬な姿勢を突きつけ首脳会談さえ長らく拒否した朴槿惠政権は、積極的に中国への接近も行った。結果、これを不快とする米国の反発に直面し、日韓慰安婦合意と高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を押し付けられた。THAAD配備に向けた約束は中国の反発を呼び、中韓関係も悪化した。大統領府から退去し、自宅に到着した朴槿恵前大統領(中央)=2017年3月、韓国(共同) また、韓国の状況は、政権と各種市民団体が連携して「反日」政策を遂行する、というほど単純なものでもない。朴槿惠政権の反日政策が、例えば慰安婦像設置などを進める左派の市民団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」との密接な協力のもと行われたか、といえばそんな事実は存在しない。歴史認識問題に関心を持つ左派の諸団体は、2015年末の慰安婦合意に反対していたように、徹頭徹尾、朴槿惠政権への対決姿勢を貫いたからだ。挺対協は、同じ右派政権であった李明博(イ・ミョンバク)政権下で、日本にある朝鮮学校との関係を疑われ、幹部のメールに対する警察の捜査まで受けている。より複雑な第2の反日シンボル 右派の朴槿惠から代わって成立した文在寅政権下においても、状況が複雑にねじれているのは同様だ。とりわけ複雑なのが現在再び議論の的となっている徴用工をめぐる動きである。例えば慰安婦問題について言えば、左派の文在寅政権は同じく左派色の強い挺対協の理事の1人を大統領官邸に迎えるなど、良好な関係を築いているように見える。しかし、徴用工問題については同じことが言えない。なぜなら、そこには慰安婦問題よりもはるかに複雑で錯綜(さくそう)した状況が存在するからだ。韓国仁川市の公園に設置された徴用工の像=2017年8月(共同) 第一に重要なことは、この徴用工問題には左派、右派が入り乱れて参与する状況が存在することである。例えば先日、ソウル市内に徴用工像を設置した主体は、全国民主労働組合総連盟(民主労総)である。韓国のナショナルセンターに当たる労働組合組織は、この民主労総と韓国労働組合総連盟(韓国労総)の2つが存在する。民主労総はより闘争的な組織として知られているから、これについては左派的な組織の動きだと言って間違いではない。 しかしながら、この民主労総が文在寅政権が密接といえる関係を有しているかといえばそれは微妙である。例えば、北朝鮮による立て続けの核とミサイル実験を理由に、文在寅政権はTHAAD配備をなし崩しに進めている。しかし、この問題について民主労総は強い反発を見せている。そもそも韓国では、労働組合の主要政党への影響力は限定的であり、その関係も必ずしも円滑なものとは言えない。労組は彼らにとって重要だが、一つの基盤にしか過ぎないのである。徴用工像設立をめぐる動きの中で、むしろ歴史認識問題を利用して自らの存在を誇示しようという民主労組の思惑を読み取るべきであろう。 第二に重要なのは、徴用工問題では、「当事者」の力が大きいことである。この問題は第2次世界大戦時に労働者として動員された人々とその遺族が、失われた経済的補償を求めていることがその基盤となっており、当然、韓国各地で進められている裁判や徴用工像設置にはこれらの人々が深く関与している。とりわけ裁判は当事者なしには不可能であり、当然彼らの存在は重要になってくる。 ただそれだけなら徴用工問題と慰安婦問題は同じように見える。なぜなら、慰安婦問題においても元慰安婦であった当事者が存在するからである。しかしながら、慰安婦問題と徴用工問題の間にはいくつかの大きな違いが存在する。最も大きな違いは当事者の力 最も大きな違いは、慰安婦問題の運動の主導権を、挺対協をはじめとする「運動団体」が掌握していることである。誤解されがちであるが、挺対協は元慰安婦ら自身により構成される団体ではなく、あくまでその活動などを支援する「支援団体」にすぎない。言い換えるなら、元慰安婦らではなく、その支援を行う「運動団体」が主導権を握っており、この「運動団体」があたかも元慰安婦らの意見をそのまま代表するかのような状況が生まれている。 実際には、元慰安婦やその遺族の中にも多様な意見が存在し、その中には「運動団体」と距離を置いている人も多く存在する。にもかかわらず、これらの人々の意見が採り上げられないのは、元慰安婦やその遺族らが政治的に組織化されていないからである。 これに対して、徴用工問題における当事者たちの力は大きい。最大の理由は彼らの長い運動の経験と、一定の組織を有することである。日本ではあまり知られていないが、韓国では1970年代以降、一貫して元日本軍軍人・軍属や労務者など、第2次世界大戦時に動員された人々やその遺族による補償を求める運動が存在し、彼らは今日も自身の組織を有している。すでに生存者数が30人余りとなった元慰安婦らと異なり、軍人・軍属や労務者はそもそもの被動員数が多く、当事者の数も比較にならないほど多い。 徴用工問題において当事者たちが力を有しているもう一つの理由は、その運動や組織が、動員された当事者たちよりもその遺族、とりわけ子女によって担われていることである。第2次世界大戦終焉(しゅうえん)から70年以上を経た今日、元慰安婦や徴用工などの平均年齢は90歳を超えようとしており、当然彼ら自身による活発で組織的な活動は不可能である。これに対してそれよりも一世代若い彼らの遺族たちは未だ70代前後であり、活発な運動を展開し続けている。 元慰安婦は、その特性上、子女を持たない人が多く、また子女が存在する場合においてさえ、依然として慰安婦に対する社会的偏見が存在する現状では、慰安婦の遺族が自ら積極的にカミングアウトして活動するハードルも高い。ソウルの日本大使館前に置かれた慰安婦像の横で開かれた抗議集会=2017年7月(共同) これに対して、元軍人・軍属や徴用工らの遺族にはカミングアウトをはばからねばならない理由は存在せず、彼らは長年活発な活動を続けてきた。当然のことながら、イデオロギー的に編成されがちな運動団体とは異なり、遺族たちが作る団体にはさまざまな人々が含まれる。ゆえにそのイデオロギー的色彩は曖昧になる。なぜ慰安婦ばかりが優遇されるんだ! そしてもう一つ重要なことは、このような徴用工問題に関わる当事者たちは、これまで韓国政府や左派系の運動団体により主導されてきた慰安婦問題と距離を置いてきた人が多いことである。その論理は簡単だ。同じ第2次世界大戦時において、日本による戦争遂行のために動員された人々でありながら、慰安婦には大きな注目が集まり、手厚い保護がなされている。これに対して、元軍人・軍属や徴用工に対する政府の姿勢はそうではない。 1965年に右派の朴正熙(パク・チョンヒ)政権下で結ばれた日韓基本条約とその付属協定により韓国政府が得た資金は、元軍人・軍属や徴用工などの個人的な請求権を一つの根拠として積み上げられたものであった。にもかかわらず、韓国政府からなされた彼らへの補償は極めて限られたものだった。韓国陸軍士官学校の卒業式に出席した朴正熙大統領(当時、左)と長女の朴槿恵氏=1977年3月(UPI=共同) それは左派の政権も同じだった。歴史認識問題を重視した盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等支援委員会(支援委員会)」を通じて補償を行ったが、その審査は時に冷徹なものだった。右派勢力との対決状況の下、盧武鉉政権は歴史認識問題において日本への対決姿勢を強めると同時に、国内における親日派問題にも取り組んだからである。 カギとなるのは、徴用工やその遺族らの運動が、「遺族会」というくくりの下、元軍人・軍属の遺族とともに行われてきたことだった。軍人・軍属の一部は、将校や志願兵を中心として、自ら進んで日本統治に協力した者として親日派に分類されがちであり、彼らは時に補償を受ける権利をも否定された。「補償を受けられると聞いて申請した結果、返ってきたのは『お前の父親は親日派だ』という認定だった」。このように憤る遺族たちは1人や2人ではない。 「結局、今回もわれわれは切り捨てられるのだ」「どうして慰安婦とその運動を支える団体ばかりが優遇されるのだ」。遺族会ではそのような根強い不満がうごめいている。彼らにとって、韓国の右派は朴正熙政権の下、日韓基本条約とその付属協定により得た資金をかすめ取った人々であり、また左派は彼らを「親日派」の疑いを持って見続ける人々である。「弱い韓国政府」こそが核心 「信用できないのは日本政府も韓国政府も同じだ」。徴用工問題を巡る複雑な状況には、元軍人・軍属や徴用工などによって構成された「遺族会」の長い苦悩の歴史がある。 そしてこのような中、8月17日の記者会見で、徴用工問題について「私的請求権は残っている」としてこれを取り上げる姿勢を見せた文在寅は、わずか約1週間後の25日、安倍総理との電話首脳会談にて、今度は一転して徴用工問題は日韓基本条約にて解決済みという判断を確認した。揺れ動く韓国政府の背後に見え隠れするのは、この問題をめぐる一貫しない姿勢であり、遺族たちはそこに韓国政府の不誠実な姿勢を読み取ることになる。 そもそも彼らが韓国政府を本当に信頼し、協調関係が確立しているなら、彼らは黙ってこれを見守ればいいだけのはずである。にもかかわらず、彼らが自ら立ち上がり、時にイデオロギー的に距離がある左派労働組合とさえ手を組もうとするのは、彼らがこの問題に「韓国国内で」十分な関心が集まっていないと考えているからである。 日本大使館前に慰安婦像を立てる動きが本格化したのは、挺対協が右派李明博政権と対立を深めるさなかのことであり、そこには日本政府と並んで李明博政府への非難の意が込められていた。日本の植民地支配からの解放を記念する式典で元徴用工の男性と握手する韓国の文在寅大統領(右)=2017年8月15日、ソウル(聯合=共同) そして今、各地に徴用工像が立とうとしている。そこには労働組合や遺族らの複雑な思惑が存在し、その中で左派の文在寅政権は明確な姿勢を決められずにいる。韓国では高齢者に保守層が多いため、高齢者が多数を占める遺族らの中にも、左派政権に強い拒否感を持つ人々も数多く存在する。 こうしてみるなら、徴用工像が日本の過去清算に対する異議表明であると同時に、元軍人・軍属や徴用工など、「慰安婦以外の問題」に真摯(しんし)に取り組まない韓国政府や運動団体への不満表明であることがわかる。韓国政府は、各種運動団体などを統制して日本へ挑戦状をたたきつけるという状態にはなく、むしろこの反発を抑え込み、落としどころをどこに見出すかに苦労している。 問題は彼らが政府を中心にまとまっていることではなく、むしろ、韓国政府がこの問題における当事者能力を喪失していることにある。左右のさまざまな団体の活動や、裁判所の判決に一喜一憂せざるをえない「弱い韓国政府」の存在こそが問題の核心なのかもしれない。

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    悲しくも滑稽な映画『軍艦島』にみた韓国人の心の奥

    に聞くと、隣のクイーンズ地区まで行かなくてはならないという。クイーンズといえば「フラッシング」という韓国人街がある。そこでも午後と夕方の2回しか上映していない。映画『軍艦島』のパンフレット 要するに、封切り後3週間未満でニューヨークの中心部から消えて、韓国人が多い郊外で細々と上映されている、ということだ。興業的には失敗したことがはっきりわかる。約220億ウォン(約22億円)という巨額の製作費をかけ、韓流スターを動員したトンデモ映画『軍艦島』は、本国での封切り初日こそ97万人を超える史上最多の動員を記録したが、翌週からまさかの失速をし、いまや損益分岐点に届くかも怪しいという。何が韓国人をしらけさせたのだろうか。タクシーに30分も乗ってまで見る価値があるかという思いを振り払って、これも調査と自分に言い聞かせてクイーンズ地区へ向かった。 本稿の目的は、この映画がいかに荒唐無稽かを詳述することではなく、日本人としてこの映画から何を読み取るべきかを解説することである。『軍艦島』は徴用工がテーマであるが、慰安婦も登場し、慰安婦問題を含む全ての歴史問題に通底する韓国人の被害者ファンタジーである「恨(ハン)タジー」と、悲しいまでの自己肯定願望があふれている。その現代韓国人のメンタリティこそ日本人がしっかりと理解しなくてはならない要諦であり、それを理解せずに彼の国と外交を行えば必ず失敗する。この映画はそういう観点からこそ見るべきものである。 それにしても、ここまで荒唐無稽になるとほとんどギャグの世界だが、史実を極端に歪曲(わいきょく)すると、エンターテインメント映画にならざるを得なかったのだろう。映画評論家のジャスティン・チャンは、米紙ロサンゼルス・タイムズの映画批評欄で「この手の歴史修正主義は映画の世界では珍しくない。歴史をばかげた復讐(ふくしゅう)ファンタジーに仕立てあげる特権はクエンティン・タランティーノだけに許されるべきではない」(筆者訳)と書いている。つまり、歴史を知らない人間の目にさえ、「歴史捏造(ねつぞう)復讐ファンタジー」であることが明らかな出来栄えだということだ。 映画館に入る前、チケット売りが「この映画にはコメディーの要素もあるんだ」と前の客に言っていたのが聞こえたが、人気俳優のファン・ジョンミンとキム・スアンが親子役で登場してその意味がわかった。娘を愛するジャズ楽団団長の父親と、楽団の歌手で小学生の娘がコミカルな人情劇を演じる。ふたりが連絡船で端島(軍艦島)に着くなり、軍人らが乗り込んできて、警棒で乗客を殴りつけて連行していく。ファン演じるイ・カンオクは「やめてください、やめてください」と日本語で懇願する。ばかげたシーンである。労働者を痛めつけてどうするのか。要は、端島の炭鉱で働く朝鮮人は全員が強制連行の被害者だったという印象操作がなされているわけだ。朝鮮人の敵は朝鮮人 実際には、国家総動員法に基づく国民徴用令が朝鮮半島で適用されたのが1944年9月だが、制海権を失ったことから、45年3月までの7カ月間しか朝鮮人を移送できなかった。それ以前は一般公募による出稼ぎと官斡旋(あっせん)だった。戦争で日本国内は極度の労働力不足に陥っていたので、朝鮮半島で支度金を払って、家族単位での出稼ぎが募集された。だから端島には女性も子供もいた。かつて三菱の私有地だった長崎市の端島炭坑(通称・軍艦島)。建物の劣化が進む 映画のクライマックスでは、敗戦が近いことを悟った日本人経営者が、奴隷労働の証拠隠滅のために、朝鮮人全員を坑道に閉じ込めて殺害することを画策。察知した朝鮮人が武装蜂起し、激しい銃撃戦の果てに船を強奪して逃亡する。船上で、被弾して負傷したイ・カンオクが、武装蜂起をリードした工作員のパク・ムヨン(ソン・ジュンギ)に「俺の娘に好物のそばを食べさせてくれ」と頼んで息を引き取る。お涙頂戴のシーンだが、実際には終戦後、炭鉱を所有していた三菱が船を用意してみんな平和に帰国したのである。 さすがにここまでの捏造は、いくら韓国人でも見ていて恥ずかしいだろう。しかし、もうひとつ韓国人がエンタメと割り切れない要素がこの映画にはある。悪役の朝鮮人がたくさん登場するのである。朝鮮人の悪人とは、日本人に協力する裏切り者で「親日派」と呼ばれる。日本人経営者にへつらって朝鮮人を弾圧する朝鮮人労務係が登場し、朝鮮人慰安婦を虐待する朝鮮人の女衒(ぜげん)が言及され、そして極め付きは、端島の朝鮮人に「先生」と崇拝される独立運動家のイ・ハクチュンの裏切りだ。尹は朝鮮人を代表して会社と交渉するふりをしながら、ひそかに会社側と通じており、朝鮮人労働者の給与や死亡補償金をピンハネしていた。揚げ句の果てには、朝鮮人全員を証拠隠滅のために坑道に生き埋めにして抹殺する会社の計画に加担し、朝鮮人を坑道に誘導しようとする。それを見破った工作員の朴に朝鮮人群衆の面前でのどをかっ切られて絶命する。 なんという後味の悪さであろうか。朝鮮人の敵は朝鮮人だったのだ。これでは韓国人が単純にエンタメと割り切れないのも無理はない。日本人だけを悪役にしないのは、韓国人の自己反省の表れであろうか。いや、そうではない。韓国人の強引な自己肯定のためには、悪役は日本人だけでは足りないのだ。実はこれは、文在寅(ムン・ジェイン)大統領をはじめとする現在の韓国人が信奉する歴史観の表れなのだ。それはこういうことだ。・韓国は平和で健全な独立国だった・それを、大日本帝国が強引に合併し、独立を奪った・親日派の裏切り者朝鮮人が虎の威を借る狐のように同胞を搾取した・日本による併合がなければ、韓国は自力で近代化を成し遂げ、もっと発展していた・親日派は戦後、親米派となって搾取を続けた売国奴だ・だから韓国が真っ先にすべきことは親日派の排除だ・韓国は無実の被害者であり、日本の悪事を世界に知らしめて、民族の栄光を取り戻す必要がある・韓国の独立は、自ら日本を追い出して勝ち取った どうしてもこのように信じたいのである。そのためには、史実を歪曲せざるを得ない。事実とかけ離れているからだ。映画の中のたったひとつの真実 周知のとおり、朝鮮半島は極めて長きにわたって中国歴代王朝の属国だったが、日清戦争に勝利した日本が下関条約により朝鮮を独立させた。しかし、財政的に自立できず、結局日本に併合された。日本国内では併合反対論も強かった。日本は朝鮮半島を内地化し、膨大な投資をして近代化した。非常に多くの朝鮮人男性が大日本帝国陸軍に志願した。日本が敗戦しても、朝鮮総督府は機能を続けて米軍に引き継がれた。独立運動は存在し、上海に「大韓民国臨時政府」なるものが設立され、「光復軍」なる軍事組織も作られたが、内紛が絶えず、いかなる国からも承認されなかった。 したがって、韓国人は自らの手で独立を勝ち取ったことは一度もない。独立させてもらったが、自力で維持すらできなかったのが現実だ。彼らが「親日派」「親米派」として敵視する世代の人々は、その時代の官僚や軍人など、社会を支えた功労者である。彼らを憎んだところで意味がない。これは韓国人の知人の言葉だが、採用試験に受かったら売国奴で、落ちたら愛国者だとでもいうのだろうか。それとは別に、朝鮮人の女衒たちが朝鮮人婦女子を売り飛ばして稼いでいた。それは今も同じだ。その現実を直視することなく、前述のように強引に自己肯定しようと国を挙げて必死にもがいている。 その「恨タジー・歴史修正主義」の象徴が「慰安婦」であり、「徴用工」であり、そのメンタリティの結晶がプロパガンダ映画『軍艦島』なのだ。韓国人の妄想を凝縮した『軍艦島』は大ヒットするはずだったが、図らずもそのいびつさゆえに失速した。『軍艦島』とはそのように悲しくも滑稽な映画なのである。「本当にあのように戦えたらどんなによかっただろう!」と多くの韓国人が心の奥で思っているのだ。 もっとも、このトンデモプロパガンダ映画にも、たったひとつ真実が含まれていることを追記しておくべきだろう。朝鮮人は実際のところ、いざとなったら映画のラストシーンのように、死を賭して戦う覚悟はあった。 終戦間際の1945年4月、捕虜になった朝鮮人のうち、信頼に足るとみなされた3人が米軍によって尋問された。尋問内容は慰安婦に関してだった。(Composite report on three Korean navy civilians, List no.78)「朝鮮人は一般的に、日本軍による朝鮮人女性の売春業への採用を知っていたか? 平均的な朝鮮人のこの制度に対する態度はどのようなものであったか? この制度を原因とする混乱や摩擦を知っているか?」(筆者訳)という質問に対し、朝鮮人捕虜は以下のように答えた。「太平洋地域で会った朝鮮人娼婦は、みんな自発的な売春婦か、両親に売られて売春婦になっていた。これは朝鮮の考え方ではまともなことだった。もし、日本人が女たちを直接徴用したら、老いも若きも絶対に許容しなかっただろう。男たちは怒りに燃え、いかなる報復を受けようとも日本人を殺していただろう」(筆者訳)2017年8月16日、ソウルの日本大使館前で慰安婦像を囲みながら開かれた抗議集会 このことからわかるように、徴用工であれ、慰安婦であれ、日本人によって強引で悪辣(あくらつ)なことがなされれば、朝鮮人は『軍艦島』のラストシーンのように戦う意思があったのだろう。それだけは真実といってもよいのだろう。そして、そのような暴動は起きなかった。その必要がなかったからである。炭鉱労働は日本人にとっても朝鮮人にとっても過酷であった。しかし、朝鮮人は平和裏に故郷へ帰り、戦後補償問題は政府間で解決された。 韓国人はいい加減に「恨タジー」に逃げ込むのをやめて、歴史を直視しなくてはならない。さもなければ、痩せこけた徴用工像も、幼年慰安婦像も、欺瞞(ぎまん)の象徴であり続けることになるだろう。映画『軍艦島』の失敗がそのことを示唆している。

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    日韓関係の新たな火種「徴用工」の真実

    この夏、iRONNAは韓国を総力取材した。親北派で知られる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対日強硬路線を貫き、北朝鮮危機の真っただ中にもかかわらず、日韓関係は冷え込んだままだ。なぜ韓国とはいつもこうなるのか。現地リポート第一弾は、第二の慰安婦問題と化した「徴用工問題」。

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    徴用工設置をはじめ、憎悪拡大再生産する韓国の動き

    。慰安婦像だけでなく、徴用工像の中心的な制作者であるキム夫妻に直撃したジャーナリスト・竹中明洋氏が、韓国国内で急速に広がる徴用工の設置の様子を追った。* * * 龍山駅前に徴用工像が設置された同じ8月12日、ソウルに近い仁川市内の公園にも徴用工像が設置された。地元の労働組合や市民団体が寄付を集めて実現に至ったという。 仁川にも取材に向かった。像の制作者こそキム夫妻ではなかったが、こちらも場所はすでに設置されている慰安婦像の隣り。やはり日本の植民地支配の象徴として徴用工を慰安婦と並んで記憶させたいようだ。 文在寅大統領は、8月15日の光復節の記念式典で演説し、徴用工問題を慰安婦問題と並んで解決すべき日本の歴史問題とした上で、「強制動員の苦痛は続いている。被害規模の全てが明らかにされていない」「まだ十分でない部分は政府と民間が協力し、解決せねばならない。今後、南北関係が改善すれば、南北共同で強制動員被害の実態調査を検討する」と述べた。韓国の文在寅大統領の記者会見に集まった報道陣=8月17日、ソウル(共同) 徴用工への賠償問題は、1965年の日韓国交正常化にともなう請求権協定で解決されたはずである。ところが、文大統領は8月17日の会見では、個人の請求権はまだ残っていると発言した。 8月に入り光州地裁は、韓国人女性らが戦時中に名古屋の軍需工場での労働に強制徴用されたとして損害賠償を求めた裁判で、三菱重工に支払いを命じる判決を相次いで出した。今後は文政権の意向を汲み、同様の判決が相次ぐことも予想される。そうなれば、日本企業の韓国での活動に重大な影響を及ぼしかねない。 折しも韓国では、長崎県の端島(軍艦島)炭鉱に徴用された韓国人労働者らの脱出劇を描いた映画『軍艦島』が7月末に公開され、観客動員数が600万人を超える大ヒットとなっている。 光復節の前日には、慰安婦像のレプリカを乗せたバスがソウル中心部を走り始めた。日本大使館に近い地区にバスが差しかかると、慰安婦問題の歴史を説明する放送が車内で流れ、少女が村から連れ出される様子を再現した悲痛な叫び声に思わず耳を塞ぎたくなる。 過去の歴史に真摯に向き合うことの大切さは我々も決して忘れてはならない。だが、徴用工像の設置をはじめ憎悪を拡大再生産するかのような動きが急速に韓国で広がることを懸念せざるを得ない。 これが文大統領の強調する「未来志向の日韓関係」につながるはずがない。●たけなか・あきひろ/1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、「週刊文春」記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。関連記事■ 慰安婦像、徴用工像を作り世界に拡散させるキム夫妻を直撃■ 韓国人がおかしなことを鵜呑みにするのは漢字廃止が影響か■ 韓国人も冷ややかに見る映画『軍艦島』、史実として世界拡散■ 在韓35年の教訓「韓国に関心を持っても、深入りはするな」■ アン・シネ、推定Gカップの美ボディを横から撮影

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    協定を真っ向否定!「徴用工トンデモ判決」の裏にある韓国の伝統意識

    支局長)  釜山の少女像より、ずっと説明の難しい難題だ。対馬の寺から盗まれた仏像に関する1月26日の韓国・大田地裁判決である。どうしてこんな判決が出てくるのかと聞かれても、具体的かつ説得力のありそうな説明はなかなか思い浮かばない。だから本稿では、一般論として韓国司法を取り巻く状況を考えてみたい。この判決に対しては、さすがに韓国内の専門家からも批判が強いという。控訴審で常識的な判断が出ることを期待したい。観音寺から盗まれた「観世音菩薩坐像」=2013年1月、韓国・大田(聯合=共同) それでも、まずは今回の件を簡単におさらいしておこう。問題となっている仏像は、2012年に対馬市の観音寺から盗まれた長崎県指定文化財「観世音菩薩坐像」だ。韓国に持ち込んだ窃盗団が摘発され、韓国当局に押収された。像の内部にあった「結縁文」の記述から1330年に韓国中部・浮石寺へ奉安されたものであることが判明。浮石寺が所有権を主張して韓国政府に引き渡しを求める訴訟を起こした。敗訴した韓国政府は即日控訴した。日本政府は訴訟とは関係なく、速やかな返還を外交ルートで求めてきた。窃盗団は刑事裁判で有罪となっており、一緒に盗まれたもう1体は既に日本に返還されている。これが全体の構図である。 判決は、仏像の「戸籍謄本」といえる結縁文に譲渡の記録がないことや、浮石寺の周辺地域が倭寇に荒らされた記録があることなどを根拠に「原告(浮石寺)の所有だと十分に推定できる」と結論づけた。判決は表書きと判事の署名まで入れてもA4で6ページ。無理な結論に結びつけるために長大な理屈をこねくりまわしたというより、証拠認定からストレートに結論へとつなげている。非常にシンプルな印象だが、それだけに論理の粗さが目立つ。 盗まれた後に国境を越えた文化財の扱いに関しては、1972年に発効したユネスコ条約と呼ばれる国際取り決めがある。日本は2002年、韓国は1983年に批准した。条約は、加盟国で条約の効力が発生した後に盗まれた文化財が別の加盟国に持ち出された場合には返還するよう定めている。 韓国政府は訴訟を受けて2014年に専門家による調査を行い、「倭寇によって略奪された可能性は高いが、断定は難しい」という結論を出した。判決に認定された事実を素直に読んでも、この程度の認識になるのではないか。そもそもユネスコ条約加盟後の窃盗という事実が明白なので、倭寇の略奪かどうかは法律的に問題ではないが、それとは別に仏像の来歴を考えてみると「その可能性もあるかな」とは思える。ともかく、700年前の略奪を具体的に記した文書があるならともかく、そうしたものを示すこともなく法廷の場で事実として認定するのは無理がある。日韓関係の懸念材料になった「韓国司法」 判決について報じた韓国紙・朝鮮日報は、韓国の多くの専門家の意見として「たとえ略奪された文化財だとしても適法な手続きを通じて返してもらわないといけない」と書いている。浮石寺が所有権を主張するにしても、いったん観音寺に戻してから行うべしということだ。当然の見解だろう。この判決には韓国内でも異論が多いのである。 「韓国の司法」は、2010年代に入ってから日韓関係に大きなマイナス影響を与える要因として浮上してきた。 憲法裁判所は2011年に韓国政府が慰安婦問題解決へ向けた外交努力を尽くしていないことを「違憲」だと判断し、外交懸案としては極めて低い優先順位しか与えられなくなって久しかった慰安婦問題を最大の懸案に押し上げた。 さらに大法院(最高裁)は2012年、戦前に日本企業で働かされた元徴用工が未払い賃金の支給などを三菱重工と新日鉄住金に求めた訴訟で、1965年の日韓請求権協定の効力を否定する判断を示した。協定によって元徴用工の請求権問題は解決されたという、日韓両政府の共通した解釈を正面から否定するものだ。この判断が判例として確定した場合には、日韓の経済関係に極めて大きな打撃を与えることは確実だ。ソウルの竜山駅前に設置された「徴用工の像」に触れる元徴用工の男性=8月12日(共同) この時の判断は原告敗訴だった高裁判決の破棄差し戻しで、やり直しの高裁判決は当然のことながら原告の逆転勝訴。日本企業側は上告し、大法院の最終的な判決はまだ出ていない。そのまま確定させると大変なことになるけれど、ここでまた判断を変えると法的安定性の面で問題が大きいというジレンマに直面した大法院が塩漬けにしていると見られている。 背景にあるのは、日本とは違う法律に対する感覚であろう。条文に書かれた文面を重視する日本に対し、韓国は「何が正しいのか」を問題にする。条約などの国際取り決めに対しても同じようなアプローチが目立つ。道徳的に正しくないのであれば、事後的にでも正すことが正義であり、正義を追求しなければならないという考え方だ。 「正しさ」を追求するのは儒教の伝統に依拠するものだ。軍部が力で国を統治した時代には押さえつけられていた伝統意識が民主化によって息を吹き返し、韓国社会では「正しくない過去は正されねばならない」という意識が強まった。1993年に就任した金泳三大統領が、全斗煥、盧泰愚という軍人出身の前任者2人を「成功したクーデター」を理由に断罪したことや、「歴史立て直し」を掲げて日本の植民地時代から残る社会的遺産の清算を進めたことが、その典型だろう。韓国司法の特殊事情とは? ここに1987年の民主化まで「権力の言いなり」だったという韓国司法の特殊な事情が加わる。権威主義時代と呼ばれる朴正煕、全斗煥政権の時代は政治犯罪のでっち上げは日常茶飯事で、裁判所も権力の意向に沿った判決を量産していた。 2008年に大法院で開かれた式典で、当時の大法院長はこうした暗い過去について「判事が正しい姿勢を守ることができず、憲法の基本的価値や手続き的な正義に合わない判決が宣告されたこともある」と認めた。そして、「司法府が国民の信頼を取り戻して新たな出発をしようとするなら、まず過去の過ちをあるがままに認めて反省する勇気と自己刷新の努力が必要だ」と述べている。 こうした司法の側の意識が、「正しさ」重視を強める社会の雰囲気を気にする判決を生む素地になっているようだ。 2012年に退官した元判事は私の取材に、民主化以前の時代について「判事だって国民の一人だから社会全体の流れから抜け出すのは難しかった」と釈明した。それは、社会全体が「正しさ」重視路線に回帰する中で抵抗することの難しさを語っているようでもあった。 だが、この元判事は民主化の影響について別のことも口にした。「いきなり裁判の独立と言われて判事たちは戸惑った」というのだ。初めて経験する事態に直面した判事の中には自らの所信を強く前面に押し出せばいいと解釈した人たちがおり、「判事によって判断が極端に割れるという事態が珍しくなくなってしまった」と話した。 「正しさ」重視とは言っても、法理を重視する世界だから限界はある。それでも元判事の述懐のように「裁判の独立」が拡大解釈され、判事によって判断が極端に割れる状況になったから、「正しさ」重視の司法判断も気軽に出せるようになったのではなかろうか。ソウルの日本大使館前で、徴用工を象徴する労働者像の設置予定地にくぎを打ち込みアピールする人た=8月15日(共同) 前述した大法院による元徴用工訴訟の判断は好例だろう。日韓請求権協定の効力を否定する2012年の新判断は、日本の最高裁小法廷に当たる「部」によるものだった。建て前としては判事4人の合議だが、実際には主審判事に大きな裁量が与えられており、他の判事は追認するだけということが多い。 これほど重大な問題は大法廷に当たる「全員審理」に回付しなければならなかったと後に批判されたのだが、全員審理ではこれほど「画期的」な判断を出せないと判断した主審判事が自分で処理してしまった可能性が高い。韓国メディアによると、この主審判事は周囲に「建国する心情で判決文を書いた」と語っていたという。これでは、英雄気取りで「正しさ」に酔ったと言われても仕方ないだろう。韓国側に伝わらない「日本の抱く違和感」の強さ 大田地裁の判決は、浮石寺の所有権を認めただけでなく、判決確定前に仏像を引き渡す仮執行も認めた。浮石寺に仏像が渡ってしまった場合、上級審で判決が覆っても日本への返還が難しくなる恐れが強い。被告の韓国政府は即日控訴すると同時に、仮執行にストップをかけるための「強制執行停止」を申し立てた。この申し立ては大田地裁の別の裁判官によって審理され、政府側の主張が認められた。とりあえず仏像が浮石寺に移される事態は回避されたということだ。韓国の司法といっても一枚岩ではないことは明白である。仏像の所有権に関する判断も、高裁でひっくり返る可能性が十分にあるだろう。1月26日、浮石寺の請求を認めた判決を受けて取材に応じる住職(右から2人目)=韓国・大田地裁(共同) トランプ米大統領を見ていると、国家間の合意を覆すハードルは低くなっているような思いにとらわれる。しかし、それでは相手はたまらない。しかも、道徳的な正しさをふりかざす考え方は独善に陥りやすいので、さらに対応が難しいのである。 問題の仏像が1330年に浮石寺に奉安されたことと、1526年頃以降は観音寺にまつられていたことは争いの余地がない。これを機に二つの寺が交流を始め、仏像も日本への返還前に故郷の寺で特別展示でもしましょう、ということにでもなっていれば「ちょっといい話」で終わっていたはずだ。 だが実際には、浮石寺は「倭寇によって略奪された」と所有権を主張して提訴した。日本側は、長い交流の中で多くの仏教文物が朝鮮半島から渡ってきたうちの一つという位置づけをしている。過ぎ去った年月を考えれば当然だが、どちらも具体的な証拠があるわけではない。  仏像訴訟の判決に対しては韓国内でも批判が出ている。それでも日本では「やはり韓国司法はおかしい」という反応を生み、韓国そのものに対する違和感を強めているように感じられる。さらに問題なのは、日本側での違和感の拡大という「不都合な真実」が韓国社会にきちんと伝わっているようには見えないことだ。私もなんとかきちんと伝えたいと思うのだが、いつも力不足を嘆くことになってしまうのである。 (「正しさ」重視への回帰や司法への影響は、2年前に上梓した拙著『韓国「反日」の真相』(文春新書)の内容をベースにしている。関心をお持ちの場合には同書を手に取っていただければと思う。)

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    慰安婦像、徴用工像を作り世界に拡散させるキム夫妻を直撃

    寅大統領のかけ声のもと、徴用工問題が、日韓の新たな火種になりつつある。慰安婦像同様、徴用工像の設置が韓国全土で進んでいる。両モニュメントの中心的な制作者である韓国人夫婦の存在をジャーナリスト・竹中明洋氏は早くから指摘してきた。とうとう、ソウルでその姿をとらえた。* * * 日本の植民地支配から解放された日(光復節)にあたる8月15日、韓国ソウルにある日本大使館前で土砂降りの大雨のなか集まった人たちが次々とシュプレヒコールを挙げていた。「アベは手のひらで空を覆うことを止めて真実に目を向けろ!」「日本は戦犯国家として過去の過ちを悔い謝罪せよ!」「戦犯企業は労働者への未払い賃金を直ちに支払え!」 集まったのは「日帝強占期被害者全国連合会(以下、連合会)」。植民地時代に強制徴用され日本企業で働かされたとする労働者ら、つまり日本側でいうところの徴用工やその遺族からなる団体だ。 この日、連合会は徴用工の像を設置するとして記念集会を催した。ソウルの韓国国会で開かれた集会で、自身の若いときの写真を掲げ被害を訴える元徴用工の男性(左)=5月30日(共同) 像そのものはまだ出来上がっていないが、設置を目指す場所は6年前に慰安婦の支援団体である挺身隊問題対策協議会(挺対協)が設置した慰安婦像の真横にあたる。 外国公館の安寧と威厳の保持を定めたウィーン条約に違反するとして日本政府が撤去を求めているにも拘わらず、韓国政府が放置したままにしているあの像と並べて設置するというのだ。「我々がこの場所に労働者の像を設置する理由は、たった一人であらゆる侮辱に耐えながらぽつねんと佇んでいる少女像を守るためだけでなく、日本を代表する外交官らが少女像と労働者像を目の当たりにすることによって自分たちの過ちを常に記憶し、反面教師としてもらうためだ」 そう声明文を読み上げてみせた連合会の張徳煥(チャンドクファン)事務総長らは、集まった多くの日韓のメディアの前で、設置予定場所だとする大使館前の歩道にハンマーで釘を打ち込むパフォーマンスまでしてみせた。地元自治体のソウル市鐘路区から設置の許可を得たのか。張氏に尋ねてみた。「まだ得ていませんが、すでに鐘路区とはやりとりを始めています。許可が出るものと確信しています」 なぜわざわざ大使館前に設置するのか。「ひとつは少女像を守るため。もうひとつはここに設置するのが、韓日の社会的な関心を集めるには最も効果的だからです」 そう話す様子からは、ウィーン条約に抵触することは問題ではないかのようで、違和感を覚えざるを得ない。早ければ9月にも設置するという。完成イメージ図を張氏から入手した。高さ3mもある石柱に徴用工をイメージしたと思われる痩せた男性が彫られ、手が突き出している。強制徴用の歴史を物語るレリーフも彫り込まれるそうだ。式典に現れた!『SAPIO』で繰り返し報じたとおり、この像の制作者は、韓国各地で設置された慰安婦像の制作者と同じ彫刻家のキム・ウンソン氏とキム・ソギョン氏夫妻である。大使館前での徴用工像設置では、準備委員長という立場に就いているという。 この日も、来場予定だったが、最後まで姿を現さなかった。悪天候のためか、それとも日本メディアの直撃を憂慮したためか。実は、これに先立つ3日前、筆者は夫妻に接触していた。式典に現れた! 8月12日、ソウルのターミナル駅のひとつ龍山駅前の広場には、水色のお揃いのTシャツを着た韓国の二大労働組合である民主労総と韓国労総のメンバーらが大勢集まっていた。ここで徴用工像の設置を記念する式典が開かれたのだ。これは15日に日本大使館前で集会を開いた連合会とは別の動きで、労組を中心としたもの。連合会より一足早く設置まで漕ぎ着けていた。 とはいえ、広場を管理する国土交通部は設置の許可を出しておらず、見切り発車的にテープカットが行われた。土地の管理者の許可を得ずに設置を強行するのは、昨年末の釜山の日本総領事館前での設置と同じだ。式典では挺対協のハン・クギョン共同代表が壇上で挨拶したほか、文在寅政権の与党である「共に民主党」の禹元植(ウウォンシク)院内代表も発言した。「この像を設置するのは実に意味があることです。全世界にこのような像を建て続け、世界中の人々が日帝占領期に強制徴用された労働者の姿を記憶すべきです」 与党ナンバー2の発言である。徴用工像を慰安婦像同様に今後、世界各地で設置すると宣言したも同然だ。 広場に設置された像は、昨年8月に民主労総などが京都市内のマンガン鉱山跡に設置したものと同じデザインだった(『SAPIO』5月号参照)。肋骨が浮き出るほど痩せた上半身裸の男性が右手に鶴嘴(つるはし)を持ち、左手を顔の高さまで上げている。 この像を取り囲むように建てられた4本の石柱には、徴用工の出発駅となったかつての龍山駅や徴用先での労働を写したレリーフが貼り付けられていた。制作者は言うまでもない。あのキム夫妻だ。 日韓関係に刺さったトゲとなった慰安婦問題を拡大再生産させる慰安婦像を次々と制作するばかりか、徴用工像まで手がけて新たな火種を作ろうとするのはなぜか。そのキム夫妻がこの日の式典に現れたのである。「日本メディアは歪曲する」「日本メディアは歪曲する」 夫のキム・ウンソン氏が壇上にあがって、制作意図を説明する。「日本による強制徴用で北海道から沖縄まで各地で多くの同胞が労働に就かされ帰って来なかったのです。過酷な労働により亡くなった人は森の中で打ち捨てられ、目印として白いペイントをつけた木の棒が墓標代わりに建てられただけだったといいます。時間が経つと棒が朽ちてしまい、あらためて遺骨を探そうにもどこにあるのかも分からなくなりました。この像はその棒をイメージしたものです。ここに労働者たちがいるのですよ、と伝えるためです」 痩せこけた上半身はわずかな食料だけで働かされた過酷な労働の実態を、振り上げた手は真っ暗闇の炭坑から地上に出たまぶしさと喜びを、肩に乗った小鳥は抑圧からの解放を、それぞれ表現したのだと解説してみせると、会場から喝采があがる。 会場で夫婦をつかまえた。だが、夫のキム・ウンソン氏から返ってきたのはこんな反応だった。「取材には応じません」──なぜ?「日本のメディアは歪曲した報道ばかりするからです。私が言ったとおりに書かないでしょう」──慰安婦像や徴用工の設置をめぐり日韓関係が深刻な問題になっている。これについてどう思うのか。「コメントしません」 夫婦は穏やかな笑みを浮かべるが、一切、具体的な言葉を発さない。対照的に、韓国メディアのインタビューには快く応じてみせている。日韓関係の障壁を作っている、その当事者の態度として、納得できるものではなかった。●たけなか・あきひろ/1973年山口県生まれ。北海道大学卒業、東京大学大学院修士課程中退、ロシア・サンクトペテルブルク大学留学。在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者、衆議院議員秘書、「週刊文春」記者などを経てフリーランスに。近著に『沖縄を売った男』。関連記事■ 慰安婦像制作費は1体300万円 土産用ミニチュアも販売中■ 慰安婦像の制作者夫婦が沖縄の“反戦彫刻家”を訪れていた■ 京都の山奥に慰安婦像製作者による「徴用工像」が存在■ 徴用工像は「第二の慰安婦像問題」か 日韓の火種化懸念■ 徴用工像 釜山の日本総領事館前の慰安婦像横に設置も

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    ゾンビ映画『新感染』で分かった「ジコチュー」韓国人のリアル

    中宮崇(サヨクウォッチャー) いやー、たまげた。びっくりした。大傑作でしたよ!  韓国初のゾンビ映画『新感染  ファイナル・エクスプレス』ですよ。原題は『釜山行』だそうで、「新幹線」に掛けてみたけど滑っちゃった、みたいな邦題に改悪されていますが、内容はピカイチ。  これ、ゾンビ物という皮をかぶった朝鮮戦争モノ映画でもあったんですね。軍オタおじさんとしてはそこもハートを射抜かれました。『嫌韓流の真実』なんてムックに執筆させてもらったこともある私は正直何も期待していませんでした。どうせ韓国人お得意のパクリにまみれた駄作だろうって高をくくっていました。良い意味で完全に裏切られましたね!© 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved. ゾンビ映画なんて見たことない韓流好きな人も当然楽しめます。そればかりか韓国嫌いの人でもめちゃめちゃ楽しめます。ゾンビ映画としてはもちろんのこと、いろんな意味で名作でした。ゾンビ物が好きな人もそれ以外の人も、全ての日本人にとって極めて楽しめる、そして示唆に満ちた映画です。  今旬のゾンビ物といえば何と言っても『ウォーキング・デッド』ですね。アメリカで2010年から放送が開始され、既に7年にわたり制作され続けている人気ドラマです。『新感染』がどれぐらいすごい傑作であるかと言うと、なんとあのホラーの巨匠スティーブン・キングまで、この映画を「『ウォーキング・デッド』を超える」と大絶賛するぐらい飛び抜けたゾンビ映画なんですよ。 傑作ゾンビ映画というものは、ただのホラーにとどまるものではありません。多くの場合、極めて強い「社会性」を反映しています。 よく言われることですが、そもそもゾンビ物というジャンルの作品は、他のホラー以上に「社会性」を反映せざるを得ません。その理由の1つは、襲ってくるのが「同胞」だからです。昨日まで、いやつい数秒前までの「親兄弟」や「恋人」「友人」などが、一変して襲い掛かってくる。その恐怖は他のホラー物における「異質な存在」への恐怖心とはそれこそ異質なものでしょう。  しかもゾンビ物の場合、「真の敵」はゾンビではなかったりします。ゾンビを生み出したのは銭ゲバの製薬会社だったり、軍だったりするわけですね。ゾンビはただの「被害者」とさえ考えることもできる。 また、「真に恐ろしい存在」もゾンビ自体ではなかったりします。『新感染』においても、ゾンビから生き延びようとする韓国人同士が平気で同胞を裏切り盗み殺していく姿を見た少女が「感染者たちに襲われるより、もっと怖い」と、ゾンビより韓国人の方を恐れます。 こうしたゾンビ映画の特性をかんがみると、『新感染』はただのホラー映画ではなく、韓国社会の歪(いびつ)さを告発した社会派映画でもあるということができます。韓国人の本性を見せつけられた 物語の舞台は、ソウル発釜山行きの「新幹線」車内にほぼ限定されています。それ以外の韓国全土の様子は、断片的に入ってくる不正確なテレビ報道やインターネット経由でしかわかりません。その辺りも恐怖心をあおる要素になっていますね。 主人公のファンドマネジャーであるソグは、平気で他人を利用してのし上がってきた嫌なやつです。奥さんにまで愛想を尽かされ出ていかれてしまっています。奥さんから強引に奪い取ってまで手元に残した、9歳の娘スアンからも疎まれている孤独な仕事人間です。そんな娘のスアンは誕生日にわがままを言って、ソグを強引に韓国が誇る高速鉄道KTXに乗せ、母親のいる釜山を目指します。ところが、彼ら親子と一緒に1人の「感染者」がソウル駅から乗り込んでしまいます。© 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved. 感染者はたちまちゾンビ化し、KTX車内の客を襲い始めます。襲われた客たちも次々と感染し、ゾンビ化して他の客を襲い始めるというまさに地獄絵図。時を同じくして車内のニュース映像に流れるのは、首都ソウルばかりか韓国全土で大暴れするゾンビの群れ。果たして親子は無事釜山にたどり着くことができるのか?  いや、そもそも母は、釜山は無事なのか? こんな感じのあらすじですが、他のゾンビ物と異なり、韓国映画ならではの要素がてんこ盛りです。ざっくり言っちゃえば、韓国社会や韓国人の本性というものをまざまざと見せつけられる映画です。 トランプ大統領が韓国を「物乞い」と言った、との報道が最近ありましたが、戦後70年以上にわたって日本は韓国の「物乞い」に悩まされ、煮え湯を飲まされてきました。なんでもパクって「剣道、柔道、ドラえもんも韓国起源」とおとなしい日本相手に言うだけにしとけばよいものの、最近はつけあがって「孔子は韓国人」とか、「端午の節句は韓国起源だから世界遺産登録するニダ!」とかやらかしちゃって、怖い宗主国の中国まで怒らす有り様です。 約束を平気で破る国民性ゆえ、条約まで反故(ほご)にする無法ぶりは慰安婦問題や戦後補償問題で日本人にはおなじみですが、近年の北朝鮮ミサイル問題に絡んで、アメリカも韓国人のそうした約束破りの国民性にようやく気付いてトサカに来たご様子。オリンピックやサッカーワールドカップなどでは毎度毎度「疑惑の判定」と買収がうわさされ「買収民族」とまで各国メディアから批判される始末。 そんな国民性を反映してか、『新感染』はこれまでの他国のゾンビ映画と比べることさえおこがましいほど、登場人物たちがジコチューで卑劣、邪悪極まりない。平気で他人をだまし、盗み、約束を破り、果ては殺します。ほぼ全員が自分のことしか考えない。ためらいなく他人を犠牲にする。歴史が物語る絶望的な韓国社会 韓国人以外がこの映画を見たら「非現実的」「誇張している」と感じかねません。しかし、韓国人にとってはこれは極めてリアルな映画なんですね。 つまり韓国人は、日本人をはじめとする外国人だけをパクり、だまし、嘘をつき、約束を破っているわけではないんです。「同胞」であろうが外国人に対するときと同じように、平気でだまし、盗み、約束を破っているわけです。そのことが如実に表れたのが、2014年に韓国で発生したフェリー転覆事故「セウォル号事故」です。この事故で、韓国政府の稚拙な事故対応が国民の反発を招いたばかりか、国民に対しさまざまな嘘をつき、自分のことしか考えぬ会社、乗務員や乗客、遺族同士もさまざまなだまし合いや不正などがあったことが暴露され、いまだに韓国社会に深刻なトラウマを遺(のこ)しています。 これは1950年に北朝鮮による侵略で始まった朝鮮戦争でもそうでした。5年前まで「同胞」であったはずの人々が敵となり押し寄せ、あっという間にソウルは火の海と化します。しかも侵略者「北朝鮮軍」は、その名とは異なり、北朝鮮の人々だけで構成されていたわけではありませんでした。占領されたソウルの市民が「徴兵」されたり、自ら「志願」したりして「北朝鮮軍」に加わり、昨日までのよき隣人、親類縁者である「韓国人」を追い、襲い、盗み、殺し始めたのです。 ソウルの人々は、襲ってくる昨日までの「同胞」から必死で逃げ回ります。目指すは南端の釜山。今でならKTXでたった2時間しかかかりません。あっという間に北朝鮮軍が押し寄せてきかねない距離です。© 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved. しかも逃避行は悲惨極まりないものでした。北朝鮮兵に襲われるだけでなく、政府は国民を見捨てさっさと逃げ出し、自分たちだけが助かるために、まだ市民が渡っている途中のソウルの橋を爆破してたたき落としたのです。さらに北朝鮮シンパの「韓国市民」に襲われ、やっと逃げ延びた先では「北朝鮮スパイ」と疑われ殺され、それどころか敗残兵の韓国兵にまで略奪、虐殺されるという、まさにこの世の地獄。『新感染』で描かれる世界そのものといえる絶望が朝鮮半島全体を襲ったのです。信用できるものは何もありません。親兄弟友人知人さえ敵かもしれない。その記憶はセウォル号事故とも重なり、韓国人全体にいまだ暗い影を落としています。 この朝鮮戦争のトラウマが、『新感染』を見た韓国人にフラッシュバックを起こし、本作に特別な感情をもたらす効果を与えています。例えば、日本で『新感染』同様に、東京発の新幹線の中で博多までゾンビから逃れる映画なんてものを制作しても、『新感染』のような劇的な作品には成り得ないでしょう。本作は極めて韓国的な作品なのです。韓国人は韓国社会を絶望的に見ている 朝鮮戦争やセウォル号事故同様、『新感染』で描かれるKTX車内、いや韓国全土が、同胞同士が平気でだまし合い、盗み、約束を破り、果ては殺し合うこの世の地獄です。政府の発表は嘘ばかりですし、軍隊まで敵です。乗り合わせた客たちは、この期に及んでコネを悪用し、他人を買収し、自分だけ生き残ろうとします。その結果、感染が広がって韓国全体が危機に陥ろうと知ったことじゃありません。舞台となるKTX以外の鉄道車両も、自分たちだけが生き残ろうとして信号や管制を無視して、われ先にと逃げ出そうとして衝突事故を起こし、結局全滅するという全く救いようがない結果に終わります。 繰り返しますが、これは誇張でも何でもなく韓国人のリアルなのです。実際ヨン・サンホ監督はインタビューで、登場人物が「実在しそうな人物」になるよう心がけたと答えています。あれが韓国人にとっての「実在しそうな人物」なんです。韓国人は韓国社会をなんと絶望的に見ているのでしょう。 われわれ日本人のイメージに反し、韓国人の韓国嫌いは昔から有名です。最近も韓国の就職ポータル「ジョブコリア」によるアンケートの結果、実に70・8%が「機会があれば外国に移住したいと考えている」と回答しています。移住を希望する理由としては、「激しい競争社会から離れ、余裕のある生活を送りたい」という回答が51・2%で圧倒的に高く、「不正、腐敗があふれる政府に見込みがないから」(24・8%)、「外国の福祉制度に関心があるから」(18・1%)、「子供の教育のため」(15・0%)と続いたとのことです。韓国を最も嫌うのは日本人ではありません。韓国人自身なのです。彼らは自分たちの社会に絶望しきっているのです。 韓国人のそうした絶望感そのままに、『新感染』も絶望に満ちた作品です。もはや現役世代には何の希望もありません。自分のことしか考えず、他人を平気で裏切り、結局はお互いつぶし合って自滅していきます。韓国そのものを食いつぶし滅ぼしてしまいます。© 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved. そんな中で、はかないながらも唯一の希望は子供たちだけです。ゾンビだらけの車両から命からがら逃げることができたジコチューの主人公ソグは、疲れ果てた老女に席を譲った9歳の娘スアンをなんと「あんなことしなくていいんだよ」と叱り、ジコチュー韓国人の再教育再生産をしようとします。しかし、スアンはめげません。それに反発します。 一方、席を譲られた老女は極めて利他的で献身的です。妹のために自身を犠牲にして朝鮮戦争を生き延びてきたこの老女インギルは、ゾンビに満ちた車内においても、他の客たちを救うために犠牲となります。ジコチューな現役世代が共食いしあって自滅する一方で、そうした醜悪な連中を救うために動いた人も、結局は一緒に滅びて行きます。「良心的な韓国人」は、「悪貨は良貨を駆逐する」ということわざ通り、どんどん犠牲になって消えていきます。韓国の唯一にして最後の希望 ネタバレになるのではっきりと書くわけにはいきませんが、ジコチューゆえにこのゾンビパニックを引き起こし、娘を危険にさらした主人公ソグは、結局は金や自己保身などよりも娘への愛が全てに勝ることに気付きます。そして自らを犠牲にして娘を救い和解を果たし、これまで1度も経験したことがないような心地よい満足感に包まれます。政府も信用できず、友人知人もほとんど全て敵。そうして自滅していく韓国人にとって、唯一にして最後の希望は、伝統文化に汚されぬまっさらな心と未来を持った次の世代だけなのかもしれません。© 2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved. 最後の最後で9歳のスアンは、ある歌を歌うことによって救われます。従来の韓国人であれば、その「歌」はご自慢のアリラン辺りであったでしょう。しかしスアンが歌うのは、ある外国の歌でした。閉鎖的かつ外国人差別で有名な韓国の未来を辛うじて救ったのは、海外文化との交流・接触だったのです。この結末も、韓国人の未来に対する監督の思いを大いに反映した告発、警告のように思えてなりません。 本作は、決してヨン・サンホ監督の独善的な韓国批判、告発映画ではありません。韓国では2016年興行ナンバーワンを記録していることからも分かるように、韓国人が広く共感し、同じ問題意識、同じ希望を抱いている極めて韓国的な映画であるといえます。韓国人の5人に1人が見たとさえ言われるこの作品は、韓国人がホラー好きやゾンビマニアというだけでなく、親子そろって、いや祖父母まで含めた一家そろって映画館に押しかけ涙した感動巨編なのです。 では老若男女多くの韓国人の心を揺さぶったこの一大傑作は、われわれ日本人が見ても楽しめるものなのでしょうか? 「残念ながら」楽しめます。なぜ残念なのか。 恐らく、30年ほど昔の日本社会に生きた当時の日本人にとっては、『新感染』はそれほど楽しめる映画ではなかったでしょう。なぜならその頃までの日本は韓国と違い、平気で他人をだまし、盗み、約束を破るような社会ではなかったからです。『新感染』は極めて現実離れした作品と取られていたことでしょう。 しかし、ここ最近の日本は違います。格差社会はとどまるところを知らず、若者・現役世代と高齢者の世代間断絶はますます進むばかり。資本家・経営者や親の世代を信じられぬばかりか敵にさえなりかねない。かといって、政府や企業などの組織はそれ以上に信用できない。まさに日本社会の「韓国化」とでも言うべき状態です。ゆえに今のわれわれは韓国人同様に、『新感染』を老若男女一族そろって見に行っても感動できてしまうのです。実際、私が映画館に足を運んだ際も、上映後若いカップルやご老人夫婦などがみんな号泣していて、しばらく立てずにいる観客もかなりいました。 『新感染』は未来を作り、和解をもたらすゾンビ映画です。現在、韓国社会がどのような問題を抱え、何に悩み、何を欲しているのかが一目瞭然の優れた名作です。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と言いますが、韓国好きはもちろん、韓国嫌いの人こそ見ていただきたい映画です。忌み嫌ってきた「敵」の中にも、われわれと同様に人間としての悩みがあると見て取ることができれば、そこから何か新しい未来、希望、和解が生まれてくるのかもしれません。

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    慰安婦像の制作者夫婦が沖縄を訪問してやっていたこと

    1)だ。ソウルの日本大使館前や釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦像をはじめ、夫婦の手による像は、韓国全土に広がっている。いまや慰安婦問題の伝道者と言わんばかりだ。この夫婦が1月24日から27日にかけて沖縄を訪れていた。 次は沖縄か。新たな懸念が生まれるなか、ジャーナリスト・織田重明氏が訪沖の真意を探る。* * * 今回の訪問にあたって、引率役を担った人物がいる。現在は、関西の某大学で教鞭を執るA氏である。 韓国に留学中の70年代、北朝鮮の指示を受けて工作活動をしていたとして、KCIA・韓国中央情報部に国家保安法違反で逮捕された過去を持つ。今回、先導役を務めた理由についてA氏に取材を試みたが、返答はなかった。 夫婦訪沖の意図は判然としない。そこで夫婦が辿った道をトレースしてみた。彼らが訪問したのは、沖縄で“反戦彫刻家”として知られる金城実氏(78)の工房の他に、夫婦は沖縄戦の追悼施設である糸満市摩文仁の平和祈念公園へ。普天間飛行場を望むことができる宜野湾市嘉数の高台、そして名護市辺野古が面する大浦湾を訪れた。大浦湾では、海中が見えるグラスボートに乗り、珊瑚礁やカヌーによる反対派の抗議活動の様子を見学したという。米軍普天間飛行場の移設に向け沖縄県名護市辺野古で始まった護岸工事で、波打ち際に置かれた石材の入った袋(下)=4月25日午後(小型無人機から) いずれも戦争や米軍に関連する場所ばかり。今回、夫婦が取材に応じた数少ないメディアである沖縄タイムスの記事によると、夫婦は、〈韓国民として芸術家として(慰安婦の)被害の実相を明らかにしようと少女像を造り、さらに視野を広げるため初めて沖縄に足を運んだ。沖縄戦の激戦地やガマ、米軍基地の現状を見て回り、(妻の)ソギョンさんは「非常につらいことを経験した人の魂を感じた」〉という。その上でソギョン氏はこう述べている。「朝鮮半島も沖縄も戦争が続いている。芸術家として、平和の懸け橋になるための活動をしていきたい」韓国人が沖縄に特別な関心を払う理由 南北の睨み合いが続く朝鮮半島はともかく、沖縄でも「戦争が続いている」とは、米軍基地があることを指しているようだ。韓国と沖縄は同じ状況にあるというのが夫婦の認識。だからこそ、「連帯」が可能だという考えは、実は二人に限ったものではない。 筆者が前号(2017年3月号)で述べたとおり、元慰安婦の支援団体である挺身隊問題対策協議会(挺対協)は、傘下の学生団体である平和ナビのメンバーらを一昨年に沖縄に派遣し、反基地運動に参加させている。 済州島では2016年、軍事基地が完成した。表向きは韓国・海軍が利用しているが、実態は米軍の東アジアの拠点として利用される。住民は建設に反対したが政府が強行。沖縄と済州島をリンクさせる日韓の市民活動家も多く、学生たちにも浸透しやすい。例えば、カヌーを使った海上抗議活動のやり方を伝授するため済州島に出向く沖縄の活動家もいる。 さらに、韓国人が沖縄に特別な関心を払う理由がもうひとつ存在する。 沖縄において慰安婦問題は、本土とは異なる深刻さを伴う。太平洋戦争で、唯一の地上戦の舞台となった沖縄では、全島にわたって慰安所が設置されていた。その数、百数十箇所。朝鮮人慰安婦の存在も明らかになっている。 2008年には、挺対協の初代代表である尹貞玉氏らの運動によって宮古島の上野原地区に慰安婦の祈念碑が建てられた。2013年にも尹氏らが参加して建立5周年の集まりが開かれている。碑が建てられた場所は、慰安所の慰安婦らが洗濯から帰る途中に休憩した場所だった。 米軍基地に慰安婦問題。韓国と沖縄が共鳴する余地は大きい。「反戦運動」というフレームからみた日韓交流に、筆者は異議を申し立てたいわけではない。だが、挺対協は慰安婦問題では、常に過激な手法をもって日韓交渉を妨げてきた。日韓合意では元慰安婦46人中、34人が交付金を受け取っているにもかかわらず、「しっかりとした謝罪も賠償も後続措置もない。日本政府は責任逃れしている」という理由で、合意破棄を主張する。彼らが設置した慰安婦像は、「反日」思想を育むモニュメントとなっている。 また同団体は、北朝鮮とも交流する“親北団体”として韓国当局から監視されている。彼らの思想が沖縄に伝播することを警戒する日本の公安関係者は多い。 夫婦が言った「平和の懸け橋としての活動」が何をさすのか。今後も注視したい。関連記事■ 慰安婦像の制作者夫婦が沖縄の“反戦彫刻家”を訪れていた■ 朝鮮日報「韓国はみんな狂っている」の警告は韓国民に届くか■ 小川彩佳アナから櫻井翔へのバレンタインの贈り物は?■ 18kg減の愛子さま 宮内庁は報道陣に「アップ写真使うな」■ 「喜び組」の定年は25才 口にするのも…な酷い罰ゲームも

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    韓国人にとって靖国神社とはいかなる存在なのか

    極少数の人たちだけです。夕方以降も多くの参拝客でにぎわう靖国神社(財満朝則撮影) それに比べて、現代韓国人の多くは靖国神社そのものの存在に対して不快感をあらわにし、日本国の首相をはじめとする政治家が靖国神社に参拝することに対して抗議するだけではなく、参拝中止を求めるという重大な内政干渉を平気で行い、中には実際に靖国神社まで出向いて爆発物を仕掛ける人間までいるくらいです。 彼らの言い分は「朝鮮民族を無理やり戦わせた人間が祀られている」「植民地支配を行った日本軍国主義の象徴だ」「戦争犯罪人が祀られている」というものですが、いずれも明らかな事実誤認で、日本の立場としては言いがかりをつけられているとしか言いようがありません。 まず「朝鮮民族を無理やり戦わせた人間が祀られている」という理屈は、前回の「もし、今も朝鮮統治が続いていれば、日本はどうなっていたか」をお読みいただければわかるように、無理やり徴兵されて実際に戦地に行った朝鮮系日本人がいないのですから、完全な誤解です。 次に「植民地支配を行った日本軍国主義の象徴だ」という理屈で、あたかも日本が武力により平和で豊かな朝鮮半島を侵略して搾取したかのような印象を与えようとしていますが、日本の朝鮮統治は西欧型の植民地支配ではなく主権国家双方が合意のもとに締結した日韓併合条約という国際条約に基づく併合であり、同条約により大日本帝国と大韓帝国は武力を用いずに一つの国になったのです。日清戦争勝利で独立できた韓国 そもそも19世紀末、朝鮮という国は清国の属国で完全なる独立国ではありませんでした。それを日本が日清戦争に勝利したことにより大韓帝国という独立国となったのです。それは日清講和条約(下関条約)の第一条「清国は朝鮮国が完全無欠なる独立自主の国であることを確認し、独立自主を損害するような朝鮮国から清国に対する貢・献上・典礼などは永遠に廃止する」を見れば明らかです。伊藤博文、李鴻章が会談した春帆楼2階大広間を再現した日清講和記念館 日清戦争後、日本は清の冊封体制を脱し独立国となった朝鮮に対して自立を促しましたが、彼らはこともあろうか当時の日本にとって最大の脅威であるロシアの支配下に自ら進んで入ろうと、王宮ごとロシア公館に逃げ込むありさまで、その結果ロシアは朝鮮半島におけるさまざまな利権を手に入れ、次第に日本とロシアは朝鮮半島の主導権をめぐって対立するようになっていきました。 満州だけではなく朝鮮半島がロシアの支配下に入れば「力のある白人国家が力のない有色人種国家を支配する」という当時の国際情勢に鑑みて、次に超大国ロシアに侵略されるのは弱小日本の番であることは火を見るより明らかですから、日本としては何とかそれを阻止しようと外交努力を重ねました。しかし当時、世界一の陸軍国といわれたロシアが弱小国日本に譲歩するはずもなく、日本は座して死を待つか、勝てる見込みは少なくとも打って出て戦うかという選択を迫られることになったのです。 戦うことを選んだ日本は、局外中立を宣言していた大韓帝国の防衛および領域内での軍事行動を可能にするため日韓議定書を締結し、それに応えた進歩会などの大韓帝国改革派は鉄道施設などの工事に数万人を動員するなど日本に協力的でしたが、皇帝を中心とする守旧派の腰が定まらないため、外交案件に日本政府の意向が反映されるよう、さらに第一次日韓協約を結びました。 ところが大韓帝国皇帝は、これに違反してロシアだけではなくフランス、アメリカ、イギリスに密使を送ったので、辛くもロシアに勝利した日本は後顧(こうこ)の憂いを絶つため「日本が大韓帝国の外交権を完全に掌握する」とする第二次日韓協約を締結しました。 しかし、その後も大韓帝国皇帝はオランダのハーグで開催されていた第2回万国平和会議に密使を送るなど迷走を止めず、日本の国家安全保障に重大な脅威を与え続けました。(密使は、会議参加国から「大韓帝国の外交権が日本にある」ことなどを理由に門前払いにされています) 日本は、この状態を放置して大韓帝国が植民地拡張政策を続ける欧米諸国の支配下に入れば再び日本は重大な危機に陥ると危機感を抱き、外交だけではなく内政も掌握するため、やむなく併合に踏み切ったのです。日韓併合と靖国神社は無関係 日本としては自主的に独立した大韓帝国と同盟を組んで西欧諸国に対抗することを望んでいたのですが、肝心の大韓帝国にその能力や意思がなく、朝鮮時代からの事大主義を改めることなく大国に擦り寄る政策を続ける姿勢を見て、今の大韓帝国には自主独立する力がないと判断し、他国の保護下になるくらいであれば日本の保護下に置く方が自国のためになると考えたのです。 このように、日本が大韓帝国を併合した最大の理由は自国の安全保障のためで、西欧諸国の搾取を目的とした植民地支配とは異なり、朝鮮半島には搾取するものはなく、併合後は搾取どころか内地から資金や物資を半島につぎ込んだため、内地に住む日本人の生活が苦しくなるほどでした。 しかも併合前は、そうなることを予見した人たちが併合に反対していたため、当時の日本の世論は併合賛成派と反対派が拮抗しており、日本人全員が朝鮮を併合しようと思っていたわけではありません。同様に大韓帝国内も併合賛成派と反対派に意見が分かれており、現在の韓国のようにほぼ100%反対ではありませんでした。 ちなみにアメリカとイギリスは併合に賛成、その他の主要国である清国、ロシア、イタリア、フランス、ドイツなどからの反対もありませんでした。つまり日韓併合は両国の国内に反対派がいたとしても両国政府が話し合いで合意し、かつ当時の国際法上何ら問題のないことで、今の韓国人が反対しているのは後付けの理屈でしかなく、百歩譲って日本の統治を非難するのであれば、その象徴である統監や総督を非難するべきなのですが、下表を見ればわかるように歴代10人の統監と総督のうち靖国神社に祀られているのは、朝鮮統治とは無関係の罪状で服役中に病死した小磯國昭ただ1人でした。 そもそも日韓併合に際して戦争は行われておりませんので戦死して靖国神社に祀られた将兵はいません。したがって日韓併合と靖国神社は無関係なのです。次回は靖国神社に「戦争犯罪人が祀られている」という韓国人の理屈がいかにおかしいかということについて説明をいたします。

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    デフレ崖っぷちの韓国、文在寅がハマる「財閥改革」の罠

    田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授) 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は対外・対内的に厳しい環境の中での船出を強いられている。対外政策的には、さっそく大統領就任への「祝砲」ともいえる北朝鮮の弾道ミサイルの発射が待っていた。核開発・弾道ミサイル問題で緊張する北朝鮮情勢をめぐっての、近隣諸国との調整がほぼ待ったなしで待ち構えている。今回の「新型」弾道ミサイルの発射をめぐっての対応を含めて、内外で文政権の姿勢を問う声は大きくなっていくだろう。ソウルの大統領府で開いた国家安全保障会議で発言する韓国の文在寅大統領=5月14日(大統領府提供・聯合=共同) 日本とはさっそく安倍晋三首相との電話会談を行い、そこで日本と韓国の慰安婦問題をめぐる認識の違いが早くも明らかになっている。「慰安婦問題」と書いたが、現状で「問題」化させているのは韓国側であることは言を俟(ま)たない。 経済政策的には、朴槿恵(パク・クネ)前政権が倒れた要因の一つともいえる、若年層を中心にした雇用の悪化をどうするのか、という課題がある。さらに雇用悪化が長期的に継続したことにより、社会の階層化・分断化が拡大している事実も忘れてはいけない。 韓国の若年失業率(15歳から29歳までの失業率)は11%を超えていて、最近は悪化が続く。全体の失業率は直近では4・2%であり、韓国の完全失業率が2%台後半と考えられるので、高め推移の状態であることはかわらない。韓国経済のインフレ目標は消費者物価指数で前年比2%であるが、インフレ率は前年同月比では1・9%(総合)と、目標を若干下回るだけで一見すると良好に思える。だが、この点がくせ者であることはあとで再び考える。 文政権の経済政策は、基本的に雇用の改善を大きく力点を置くものになっている。もちろん、政権発足まもないのでその実体は不明だ。だが、新しい雇用を公共部門で81万人、民間部門では50万人を生み出す、さらに最低賃金も引き上げるという文政権の公約は、主に財政政策拡大と規制緩和を中心にしたものになりそうだ。 公共部門で従事している非正規雇用の人たちを正規雇用に転換していくことで、雇用創出と同時に正規と非正規の経済格差の解消も狙っているという。これはもちろん賃金など待遇面での政府支出が増加することになるので、文政権の公約では、前年比7%増の政府支出を計画しているという。 韓国経済は完全雇用ではないので、このような財政支出は効果があるだろう。ただし完全雇用が達成された後で、膨れ上がった政府部門をどのように修正していくかは大きな問題になるだろう。だが、その心配はまずは現状の雇用悪化への対処がすんでからの話ではある。韓国「インフレ目標」のカラクリ 増税の選択肢は限られたものになるだろう。政府の資金調達は国債発行を中心にしたものになる。政府債務と国内総生産(GDP)比の累増を懸念する声もあるが、完全雇用に到達していない経済の前では、そのような懸念は事態をさらに悪化させるだけでしかない。不況のときには、財政政策の拡大は必要である。ただし文政権の財政政策、というよりも経済政策の枠組みには大きな問題がある。 それは簡単にいうと、「韓国版アベノミクス」の不在、要するにリフレ政策の不在だ。リフレ政策というのは、現在日本が採用しているデフレから脱却して、低インフレ状態を維持することで経済を安定化させる政策の総称である。第2次安倍政権が発足したときの公約として、2013年春に日本銀行が採用したインフレ目標2%と、それに伴う超金融緩和政策が該当する。 韓国でもインフレ目標が採用されている。対前年比で消費者物価指数が2%というのが目標値であることは先に述べた。この目標値は、15年の終わりに、従来の2・5%から3・5%の目標域から引き下げて設定されたもので、現状では18年度末までこのままである。韓国の金融政策は、政策金利の操作によって行われている。具体的には、政策金利である7日物レポ金利を過去最低の1・25%に引き下げていて、それを昨年6月から継続している。その意味では金融緩和政策のスタンスが続く。 だが、韓国の経済状況をみると、最近こそ上向きになったという観測はあるものの、依然完全雇用には遠い。さらに財政政策を支えるために、より緩和基調の金融政策が必要だろう。だが、その面で文政権関係者の発言を聴くことはない。どの国でも金融政策と財政政策の協調が必要であろう。特に韓国のように、最近ではやや持ち直している物価水準でも、実体では高い失業と極めて低い物価水準が同居する「デフレ経済」には、金融政策の大胆な転換が必要条件である。3月29日、米ニューヨークで新型スマートフォンを発表するサムスン電子幹部(聯合=共同) 日本でも長期停滞を、現在の文政権と同様に財政政策を中心にして解消しようという動きが10数年続いた。だが、その結果は深刻な危機の回避(1997年の金融危機など)には一定の成功をみせたものの、デフレ経済のままであり、むしろ非正規雇用の増加など雇用状況は一貫して停滞した。雇用の回復の本格化がみられたのは、日本がリフレ政策を採用しだした13年以降から現在までである。もちろんさらに一段の回復をする余地はあるが、金融政策の大きな転換がなければこのような雇用回復は実現できなかったろう。「スワップ協定がないと韓国経済破綻」という誤解 文政権の財政政策主導で、なおかつ現状の微温的な金融政策では、本格的な雇用回復とその安定化は難しいだろう。具体的には、韓国銀行はインフレ目標を3-4%の目標域に引き上げ、同時にマネタリーベース拡大を中心にした超金融緩和政策に転換すべきだろう。そのとき政府の財政政策の拡大は、より効率的なものになる。 つまり毎年いたずらに政府支出の拡大を目標化することなく、その雇用増加の恩恵をうけることができるはずだ。リフレ政策のようなインフレによる高圧経済が持続すれば、非正規雇用の減少が民間部門中心にやがて起こるだろうし、また現在の安倍政権がそうであるように最低賃金引き上げもスムーズに転換できるだろう。 だが、実際には金融政策の大きな転換の意識は、文政権にはない。むしろ民間部門を刺激する政策として、財閥改革などの構造改革を主眼に考えているようだ。だが、この連載でもたびたび指摘しているが、そのような構造改革はデフレ経済の解決には結びつかない。 韓国の歴代政権が、超金融緩和政策に慎重な理由として、ウォン安による海外への資金流出を懸念する声がしばしばきかれる。しかし超金融緩和政策は、実体経済の改善を目指すものだ。さらに無制限ではなく、目標値を設定しての緩和である。日本でもしばしば聞かれる「超金融緩和するとハイパーインフレになる」というトンデモ経済論とあまりかわらない。 私見では、リフレ政策採用による韓国の急激な資金流出の可能性は低いと思うが、もし「保険」をさらに積み重ねたいのならば、日本など外貨資金が潤沢な国々との通貨スワップ協定も重要な選択肢だろう。ただし、日本とは現状では慰安婦問題によりこの協議は中止している。通貨スワップ協定は、いわば「事故」が起きたときの保険のようなものなので、事故が起きない限り必要にはならないものだ。この点の理解があまりないため、「日韓通貨スワップ協定がないと韓国経済が破綻する」という論を主張する人たちがいるが、それは単なる誤解である。2016年8月、第7回日韓財務対話を終え、笑顔で言葉を交わす麻生太郎副総理兼財務相(左)と韓国の柳一鎬経済副首相兼企画財政相=韓国・ソウル(共同) ただし保険はあるにこしたことがない。特にリフレ政策を新たに採用するときには、市場の不安を軽減させるためには、日韓通貨スワップ協定は相対的に重要性を増すだろう。その意味では、慰安婦問題を再燃させる政策を文政権がとるのは愚かなだけであろう。もっともこの点は、日本側からすれば相手の出方を待っていればいいだけである。 ただし、そもそも文政権がリフレ政策を採用する可能性はいまのところないに等しい。その意味では、韓国経済の長期停滞、特に雇用問題が本格的に解消する可能性は低い。

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    「文在寅の韓国」に日本が迫る踏み絵はたった一枚しかない

    櫻田淳(東洋学園大学教授) 「朴槿恵(パク・クネ)後」の韓国がようやく動き出す。2016年12月、韓国国会での大統領弾劾案可決によって朴槿恵前大統領の大統領権限が停止されて以降、韓国の国際政治上の位置は、「幽霊」のようなものであった。そのことは、ドナルド・J・トランプ米国大統領が政権を発足させた後の100日の間、韓国がトランプ大統領と紡ぐべき「縁」を紡げなかったことを意味する。 そもそも、トランプ大統領は、大統領就任以前からの言動から推察する限り、アジア・太平洋地域の事情に格別な関心を抱いていたわけではない。トランプ大統領が北朝鮮の脅威を切迫したものとして意識するようになったのは、トランプ大統領が安倍晋三首相をフロリダに迎えた2月の日米首脳会談以降、北朝鮮が相次いで「挑発」に走ったことに因る。 こうした国際政治局面の中で、トランプ大統領麾下の米国政府は、日本とは頻繁に連絡を取り、中国に対朝圧力の面での期待を表明したけれども、韓国には実質上「蚊帳の外」に置く対応をした。3月中旬、レックス・ティラーソン国務長官は、日本を「米国の最も重要な同盟国(our most important ally)」と呼ぶ一方で、韓国を「重要なパートナー(important partner)」と位置付けた。この発言は、「大統領の不在」状況下の韓国に与えられた国際政治上の位置付けを象徴的に表していたといえるであろう。THAADの搬入に反対し、警官隊と対峙する住民ら(手前)=4月26日、韓国南部の慶尚北道星州郡(聯合=共同) 確かに、トランプ大統領の対韓姿勢は、傍目から見ても冷淡な印象が強い。トランプ大統領が対韓関係の文脈で打ち出している政策対応は、米韓自由貿易協定(FTA)の「再交渉、あるいは破棄」の示唆にせよ、「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備に係る費用の追加負担要求にせよ、韓国の癇(かん)に障るものであろう。 もっとも、トランプ大統領の論理からすれば、米韓FTAの「再交渉、あるいは破棄」の示唆は、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)見直しと同様の趣旨の政策展開であろうし、THAAD配備費用の負担要求は、日本や北大西洋条約機構(NATO)に対するものと同様に安全保障上の「応分の負担」を求める対応であろう。THAAD配備の表向きの大義は、「韓国防衛」にあるのだから、そういう評価になる。 しかしながら、韓国政府にとっては、THAAD配備費用に絡む追加負担は、にわかに受け容れられまい。THAAD配備それ自体は、国内の紛糾を乗り越えてようやく決めた揚げ句、対中関係の悪化という代償を払ったのに、その上で費用まで拠出せよというのでは、理不尽な印象は確かに拭えない。トランプが韓国の「頭痛の種」をまいてきた思惑 ところで、「朴槿恵後」の韓国を統治することになったのは、文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党前代表である。文在寅新大統領は政権発足早々、対米関係の文脈では米韓FTAとTHAAD配備の扱いに取り組まなければならない。文在寅新大統領は、従来の彼の言動から推察する限りは、THAAD配備費用負担要求を突っ跳ねるであろうし、事の次第によってはTHAAD配備同意それ自体の撤回に走るかもしれない。仮に、文在寅新大統領がそのような挙に出れば、米韓同盟の先行きはいよいよ怪しくなる。韓国大統領選の投票締め切り後、支持者の前に現れ声援に応える「共に民主党」の文在寅氏=5月9日夜、ソウル(共同) そうであるならば、米韓FTAとTHAAD配備の扱いに関して、トランプ大統領麾下の米国政府が、韓国にとっての「頭痛の種」をまいてきた思惑が浮かび上がる。一つの解釈は、韓国にとって癇(かん)に障る要求を突き付けることで、「文在寅の韓国」に「本当に『こちら側』に与(くみ)する気があるか」と「踏み絵」を迫ったというものである。 そうでなければ、もう一つの解釈としては、「文在寅の韓国」の「親北朝鮮・離米」傾向を見越した上で、北朝鮮情勢対応でささやかれる米中両国の「談合」の一環として、「西側同盟ネットワーク」からの韓国の「切り離し」を考え始めているというものである。米国にとってアジア・太平洋地域において絶対に維持されるべき「権益」が朝鮮半島ではなく日本であり、中国が朝鮮半島全域を自らの影響圏内にあるものだと認識しているのであれば、そうした解釈によるシナリオも決して荒唐無稽だとはいえまい。 「文在寅の韓国」は、果たして米国を含む「西側同盟ネットワーク」に忠誠を尽くすのか、それとも米中両国の「談合」に乗じて南北融和の夢を追うのか。韓国には、そうした旗幟(きし)を明確にすべき刻限が来ている。 日本政府が「文在寅の韓国」に対して示すべき政策方針は畢竟(ひっきょう)、一つしかない。それは、韓国が米国を主軸とする「西側同盟ネットワーク」の一翼を担うということの証しを立てさせることである。朴槿恵政権末期の永き「大統領の不在」状況に加え、文在寅新大統領が「親北朝鮮・離米」傾向をもって語られてきた政治家であればこそ、そうした証しの意義は重いものになる。 その証しには、具体的にはTHAAD配備の円滑な実行は無論、日韓慰安婦合意の確実な履行も含まれる。日韓慰安婦合意がバラク・H・オバマ米国前大統領麾下の米国政府の「仲介」によって成り、往時の米国政府の「歓迎」を得た文書であるならば、それは、「西側同盟ネットワーク」の結束を担保する文書でもある。この際、日本政府としては、日韓慰安婦合意を「歓迎する」としたオバマ前政権の評価をトランプ政権が踏襲していることの確認を求めるのが宜しかろう。 日本にとって対韓関係は、対外政策上の「独立変数」ではない。それは、「西側同盟ネットワーク」を円滑に機能させるための政策展開における一つの「従属変数」でしかない。そうした割り切った姿勢は、「文在寅の韓国」を迎える上では大事である。

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    盧武鉉の「生き写し」韓国新大統領、文在寅の末路が目に浮かぶ

    竹嶋渉(元在韓ジャーナリスト) 大方の予想通り、文在寅氏が第19代韓国大統領に決まった。日本では「反日」「従北」「反米」と評価される文氏が、大統領就任後にどのような国政運営を行うのか、また慰安婦合意や竹島問題、北朝鮮有事の協力など新政権誕生後の日韓関係はどうなるのか予測してみたいと思う。 ここで、大いに参考になるのが、第16代・盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の行跡と治績(ちせき)である。盧氏と文氏の経歴や政治姿勢は瓜二つであり、大統領を取り巻く政治状況や国際情勢も酷似しているからだ。 盧氏は1946年、慶尚南道金海の貧農に生まれた。高卒ながらも司法試験に合格し、判事を経て弁護士となり、法律事務所を開業。80年代には学生運動にかかわりを持ち、「人権弁護士」として80年代中盤の民主化運動にもかかわることになる。 88年4月の国会議員選挙で当選し、国会で全斗煥(チョン・ドゥファン)時代の不正を厳しく追及したことで有名となった。その後、数回の落選を経て98年の補欠選挙で再び国会議員に復帰するも、2000年の選挙では再び落選。金大中政権下では海洋水産部長官に任命された。2002年の大統領選挙に立候補し、同年に発生した在韓米軍における女子中学生轢殺(れきさつ)事件に対する反米感情が追い風(「盧風」と呼ばれた)になり、接戦を制して大統領に当選している。2007年5月、盧武鉉大統領(当時、右)と 秘書室長時代の文在寅氏 一方、文氏は1953年に盧氏の出身地に近い慶尚南道巨済の貧家に生まれた。釜山の高校を卒業後、慶煕大学校法学部に入学。75年、朴正煕政権に反対する民主化運動にかかわった容疑で逮捕された。 大学を卒業後、82年に弁護士となり、盧氏が当時運営していた法律事務所に入所、80年代中盤の民主化運動に取り組んだ。2002年の大統領選挙では釜山地域の選挙対策本部長を務め、盧氏が当選した後には青瓦台(大統領府)入りし、2007年には大統領秘書室長となっている。2012年の国会議員選挙で初当選、2012年の大統領選挙に立候補するも朴槿恵前大統領に僅差で敗れた。その後、朴氏が弾劾辞職した後、朴氏糾弾の世論の追い風を受け、今般大統領に当選した。 これだけ見ても盧氏と文氏の経歴が瓜二つであることが分かるだろう。二人とも韓国南西部の慶尚道出身。貧しい境遇から身を起こし、ともに司法試験に合格、法曹界を経て政界入りしている。保守色の強い地域の出身でありながら、二人とも民主化運動に参加し、「人権弁護士」として知られ、後に進歩系政党から大統領に立候補して当選している。ここまで似通った経歴を持った二人であるから、当然、新大統領の今後の行跡を予測するうえで、盧氏の行跡は大いに参考になるのである。文氏にとって盧氏は法律事務所の共同運営者であり、民主化運動の同志でもあり、側近として国政を補佐したわけでもあるから、政治的信条においても大きな影響を受けていることは容易に想像できる。文氏は盧武鉉を模倣する では、新大統領はいかなる政策を遂行するのか。ここでは文氏が核実験とミサイル発射を繰り返す北朝鮮にどのように対応し、また日韓関係はどのように変化するのか、この2点に絞って考えたい。 これらを予測するにあたっては、盧氏の行跡が参考になる。盧氏が金大中の「太陽政策」を継承し、ズブズブの親北朝鮮路線をとっていたことはよく知られている。あろうことか在任中に北朝鮮の核兵器開発やミサイル発射を容認する発言を行い、北朝鮮に手厚い経済援助を与えただけでなく、支持率が急落した政権末期には突然平壌を訪問して金正日総書記と何らの必要性もない会談を行っている。 文氏も米軍による戦術核の韓国再配置に否定的であり、THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備にも及び腰である。その一方で、北朝鮮の開城工業団地を再開すると公約している。ちなみに今回の大統領選に出馬した有力5候補の中で開城工業団地の再開を公約していたのは文氏だけだった。 文氏は北朝鮮の核問題について「韓米同盟強化と周辺国家との協力を通じた根本的解決」を公約として掲げているが、いったい北朝鮮への融和的姿勢と「韓米同盟強化」をどうやって両立させるつもりなのだろうか。THAAD配備に及び腰なのは恐らく中国の顔色をうかがっているからだろうが、この辺り「東アジアのバランサー」という空虚な言辞を弄びながら、何の目算もなく親北朝鮮・反米反日的な発言を繰り返した末に、北朝鮮に核実験を強行された盧氏の外交姿勢を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。街頭演説に臨む「共に民主党」の文在寅候補 =5月8日、韓国・ソウル(川口良介撮影) 恐らく、在任中には対北朝鮮政策をめぐって日米と何の得にもならない摩擦を起こし、「民族和合」という美名の下に北朝鮮をあれこれ援助し、結局は金正恩のいいように手玉に取られるのではないだろうか。 むろん、日韓関係については「絶望的である」と言わざるを得ない。これまでもそうであったように、これからもろくなことが起こらないだろう。日本では朴前大統領が史上最悪の「反日大統領」だと思われているが、文氏はその比ではない。 なにしろ、日本政府との慰安婦合意を反故(ほご)にする、ということを堂々と選挙公約に掲げているのである。このような反日姿勢も、あらゆる機会を捉えて日本非難に熱を上げていた盧氏に通じるものがある。ちなみに今回の大統領選有力5候補はすべて「日本政府との慰安婦合意は無効」と主張していた。そう主張しないと落選することは火を見るより明らかであり、有権者の大多数が「反日」という韓国の内情をよく表している。このような有権者によって選ばれた大統領が反日であるのは当然の帰結であろう。 おまけに昨年には竹島(韓国名・独島)にも上陸しているし、「親日(派)清算をしたい」となどと公言し、「真実と和解委員会」なるものを設置して過去の歴史を総括する、とも述べている。これは盧政権下で結成された「親日反民族行為真相糾明委員会」が「親日派名簿」を作成し、一部の「親日派」の子孫の財産を没収したことの模倣と思われる。文氏の末期を予言する もちろん日本大使館の慰安婦像撤去にも反対で、おまけに釜山の日本領事館前の慰安婦像設置にも大賛成である。こんな人物が大統領に当選したわけであるから、日韓関係がますます悪化するだろうということは三尺の童子でも容易に理解できる。近いうちに済州にある日本領事館前にも慰安婦像が設置され、大使館や領事館前に設置されている慰安婦像の周囲にもさまざまな日本糾弾用の銅像が増殖するだろう、ということも付言しておく。 最後に新大統領の国政運営について予測してみたい。クリーンで民主的だが、実務経験に乏しく、国際感覚が欠如しており、民族至上主義で親北朝鮮である、という文氏の姿は盧氏の「生き写し」である。 恐らく文氏は公約にあるように旧政権の不正追及や財閥への規制、厳しい対日姿勢、融和的な対北朝鮮政策、過去史清算などでしばらくは点数を稼ぐだろう。過去に盧氏がそうだったように。来年2月の平昌五輪が終わる辺りまでは、そうした手法が人気を博するに違いない。ソウルの国会議員会館会見場に入り、支持者らと握手を交わす文在寅氏(川口良介撮影 問題はその後である。良好な対米関係を維持できず、北朝鮮の挑発を抑えきれなければ保守派の激しい反発を招くだろうし、雇用や福祉、格差解消に失敗すれば進歩派の支持も失うだろう。中韓関係の改善が望めなければ、中国依存度の高い韓国経済には負担とならざるを得ないし、北朝鮮に対して圧力を加えてもらうこともできない。こうした懸案に対して新政権が有効な手を打てるか、と問われれば甚だ心もとないと言わざるを得ない。「クリーンで民主的」というだけでは解決できない問題ばかりだからである。 数年のうちに内政、外交、経済、福祉で目立った成果がなければ、たちまちのうちに進歩派の「ロウソクデモ」や保守派の「太極旗デモ」が発生し、政権を窮地に追い込むということは、過去の政権において立証済みである。 最後に大胆な予言をしてみたい。数年の後に韓国人は文政権に失望し、「すべては文大統領のせいだ!」と叫び出すだろう。かつての盧政権末期がそうであったように。

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    「従北派」大統領再び、絶望の日韓関係

    盧武鉉元大統領の「生き写し」―。韓国新大統領に決まった文在寅氏の人物像をこう例えたのは、iRONNAに緊急寄稿した元在韓ジャーナリストの竹嶋渉氏である。親北反日政策で知られた盧氏と瓜二つというのであれば、文氏の対日政策も自ずと見えてくる。左派政権誕生は「絶望の日韓関係」への序章なのか。

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    文在寅政権になっても「財閥の呪縛」が続く韓国経済の悲哀

    加谷珪一(経済評論家) 韓国大統領選は事前の予想通り、「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選した。文氏は盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の側近だった人物であり、盧氏と同じく人権派弁護士出身である。文氏の経歴などを考えると、文氏の政権運営は、盧武鉉時代の再来となる可能性が高い。本稿では主に経済面に焦点を当て、文政権の政策と日本への影響について考えてみたい。 今回の大統領選は、文氏と野党第二党である「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏による事実上の一騎打ちとなった。実はこの2人は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が当選した前回(2012年)の大統領選でも熾烈な争いを演じている。両氏は野党候補として立候補を表名したが、候補者一本化のため、安氏が出馬を断念した。 安氏はIT起業家として成功した人物で、政治不信が著しいといわれる若年層からの支持が厚いとされてきた。出馬を表明してから支持率が急上昇したものの、結局は息切れし、文氏にリードを許す結果となった。現代の若者の意識を体現しているであろう安氏が2度にわたって勝利できなかったという事実は、韓国社会を理解する上での重要なポイントとなる。 よく知られているように韓国経済は財閥とその関連企業に大きく依存している。中でも携帯電話など電子機器で圧倒的なシェアを持つサムスン電子の存在感は極めて大きい。サムスン電子の2016年12月期の売上高は約202兆ウォンであり、同社が生み出した付加価値は約82兆ウォンに達する。同じ年の韓国におけるGDPは1637兆ウォンなので、サムスン1社で全GDPの5%を生み出している計算になる。これに加えて財閥の関係会社や下請け企業が重層的な産業構造を形成しているので、韓国経済に対する財閥の影響力はさらに大きい。 極論すると現時点では、サムスンの経営が好調であれば韓国経済も成長し、サムスンがダメになれば韓国経済も下降するという図式になっている。リーマンショック後、世界経済の不振が続いたにもかかわらず、韓国が何とか成長を維持できたのはサムスンの競争力のおかげである。ソウル市ではためく韓国の国旗とサムスングループの旗 だが、経済運営が財閥に依存しているということは、国内のマネー循環も財閥中心になるということを意味している。経済が好調で財閥やその関係会社が潤っても、その恩恵はなかなか全国民にまでは回らない。韓国では格差が常に社会問題となっており、これが時に激しい感情となって政治を左右する。現代的でソフトなイメージを持つ安氏よりも人権派弁護士である文氏が勝つのは、弱者のための政策を国民が強く望んだ結果である。 では、文氏は反財閥的で左翼的な政権運営に邁進するのかというと、おそらくそうはならないだろう。先ほど筆者は、韓国は格差社会であると書いたが、日本でイメージされているほど韓国の格差は激しくない。 2016年における韓国の1人あたりのGDP(国内総生産)は約2万8000ドルと、徐々に日本に近づいている(日本は3万9000ドル)。11年における韓国の相対的貧困率(OECD調べ)は14.6%となっており、16.0%である日本よりもむしろ良好だ。 また、社会の格差を示す指標である「ジニ係数」を見ても、韓国は0.307、日本は0.336とほぼ同レベルとなっている。高額所得者による富の独占についても同様で、所得の上位10%が全体に占める割合は、韓国は21.9%、日本は24.4%とあまり変わっていない。 韓国は欧州各国と比較すれば、かなりの格差社会ということになるが、日本と比較した場合、それほど大きな差ではないというのが実情である。確かに韓国では格差問題は重要な政治テーマだが、それは財閥という一種の特権階級に対する反発というメンタルな部分が大きい。結局は韓国経済は政治より財閥 日本において格差解消や弱者救済が具体的な政策になりにくいのと同様、韓国でも急進的な格差是正策がスローガンとして掲げられることはあっても、現実的な施策にまでは至らないことが多い。 これは盧武鉉政権が格差是正という急進的スローガンを掲げながらも、財閥という韓国経済の基本構造に手をつけなかった(あるいは手をつけられなかった)という事実からもうかがい知ることができる。 一般的に盧武鉉政権は経済運営で失策が続き、これが企業出身である李明博大統領の誕生につながったと言われているが、必ずしもそうとは言い切れない。盧武鉉時代の後半はウォン高が進み、輸出に依存する財閥の経営が苦しくなったが、李明博政権では為替はウォン安に転じ、これが経済を下支えした。 続く朴槿恵政権も同様である。李明博政権以後、韓国の輸出は急激なペースで伸びており、2016年の輸出額は約66兆円と日本(約70兆円)に迫る勢いとなっている。これはサムスンなど財閥企業の業績が好調であることに加え、ウォン安がかなりの追い風となっている。韓国経済は結局のところ、政治的イデオロギーよりも財閥の経営状態と為替に左右される部分が大きいわけだ。大雨の中、支持を訴える「共に民主党」の文在寅候補=韓国・釜山(共同) 文在寅政権は、盧武鉉政権と同様、格差是正や反財閥を掲げながらも、経済的には従来と同じ路線を継続する可能性が高い。北朝鮮政策がどうなるのかという政治的側面を除外すれば、今後の韓国経済を左右する要素は、為替と米国経済ということになる。  日本と韓国を比較した場合、日本企業の方が高付加価値の製品を作っている割合は高いものの、基本的なビジネスモデルは類似している。日本や韓国は基幹部品を製造・輸出し、アジアや中国で製品として組み立て、最終的には米国市場で販売する。 トランプ政権の経済政策が効果を発揮し、米国の好景気が続けば、韓国経済もそれなりの水準で推移することになる。トランプ氏が掲げる減税とインフラ投資が実現すれば、理屈上、ドル高が進むので、これは韓国経済にとって追い風となる。リスク要因としては、やはり日本と同じく金利上昇ということになるだろう。 日本の場合、金利上昇の影響を受けるのは政府債務だが、韓国の場合には家計債務である。韓国は、政府の財政状況は良好だが、家計債務の比率が極めて高いという特徴がある。 ここで金利上昇が進むと家計の収支が苦しくなり、これが内需の低迷をもたらす可能性がある。低所得層のローン返済が滞れば、金融危機が発生するリスクもゼロではない。結局のところ、日本も韓国も、トランプ政権に左右されてしまうという点では似たような状況にある。

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    韓国大統領選の先に、日韓関係「史上最悪の5年」が待つ

     朝鮮半島情勢が緊迫するなかでの選挙戦を経て、韓国に新大統領が誕生する。候補者は「共に民主党」の文在寅氏(64)と、「国民の党」の安哲秀氏(55)だ。冷え切った日韓関係は、新政権の下で明るい未来を描けるのか。 現在、韓国はTHAAD配備など、米中の間で右往左往し、反日アピールまで手が回らない状況。だが左派新大統領が船出して早々の窮地に“現実”を直視して日韓関係改善に動く可能性はあるのだろうか。 産経新聞ソウル駐在客員論説委員・黒田勝弘氏は、初の左派大統領の登場となった盧武鉉政権(2003~2008年)の例を挙げて比較する。「盧武鉉は『反米だからどうだというのだ』と愛国主義を打ち出して強い支持を受けた。だが経済運営に行き詰まると、政権の後半には米韓FTA締結交渉をスタートさせ、親米路線に舵を切りました。当初、左派の支持母体は強く反発したが、盧氏がもともと左派のカリスマ的指導者だったので、批判を抑え説得ができた。同じことを保守系の大統領がやっていれば、反発はもっと広がっていたでしょう」 安倍首相が「心からのお詫びと反省」を表明した2015年末の日韓合意に対して、「日本国内で“謝る必要などない”という右派の批判がそこまで高まらなかったのは、保守層の厚い支持がある安倍政権がやったことだから」(政治部記者)という構図と似ている。「問題は韓国の左派新大統領に支持基盤の批判を抑えるカリスマ性が備わっているかどうか。文氏は人当たりこそ良いが、批判を顧みずに国益を優先した決断ができるかは疑問」(黒田氏) カリスマなき左派大統領であれば、現実的な方針転換はむしろ「変節」と指弾される。かつて人気取りで口にした慰安婦合意の破棄といった「反日公約」に縛られることになる。 注目すべきは、文、安両氏の出身地である釜山の日本総領事館前に、すでに違法に設置された慰安婦像に加え、日本の朝鮮半島統治時代の徴用工の像を設置する動きがあることだ。「韓国の左派ロビーは元慰安婦への国家賠償にこだわっていますが、その先には遺族も含めて100万人規模となる元徴用工への賠償請求につなげる狙いがある。それが今回の新しい像設置からも透けて見えます。新大統領が左派の反日要求を抑えられなければ、慰安婦問題が蒸し返されるだけでなく、新たに膨大な額の賠償を求められる可能性がある」(在韓ジャーナリスト) もちろん、1965年の日韓請求権協定で賠償問題が解決済みである以上、日本政府はいかなる賠償にも応じられない。日韓合意を受けて拠出した10億円も、あくまで元慰安婦を支援する基金への拠出である。そこに徴用工問題まで持ち出されれば、歩み寄りの余地は完全になくなってしまう。 小粒候補による争いとなった大統領選の先に待っているのは、日韓関係「史上最悪の5年間」である。関連記事■ 日本は北朝鮮の特殊部隊やテロリストの上陸を阻止できるのか■ 浜崎あゆみが売りに出した「南青山の大豪邸」、その売却額■ 稲村亜美が写真集で大胆ビキニ、魚ブラにも挑戦■ もはや韓国の世論は北朝鮮の核の前に屈してしまった■ 石原慎太郎氏 「尖閣購入時にオバマがCIAに私の暗殺命令」

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    韓国大統領選で先頭走る文在寅氏とは何者か

    澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長) 9日の韓国大統領選は、進歩派(革新)である最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が優勢のまま最終盤を迎えた。3月末から4月上旬に支持率を急速に上げた中道系「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)氏はテレビ討論の失敗で失速し、代わりに、文氏を北朝鮮に融和的だと攻撃する保守「自由韓国党(旧セヌリ党)」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏が急速に追い上げる。「文在寅に勝てる候補」を求めて安氏に流れた保守派が、安氏を見限って保守候補に回帰しているのだ。 一方で最左派「正義党」の沈相奵(シム・サンジョン)氏も支持を伸ばしており、10%台の得票をうかがうのではないかという見方が強まっている。こちらは、「勝てる候補」として文氏に集まっていた左派票が「どうせ文氏の勝ちだ」と考えて沈氏に戻った模様だ。文氏陣営は「高い得票率で当選してこそ国政運営をきちんとできる」と防戦に努めている。 結局、文氏の優勢は変わらないものの、安氏が沈み、左右両極の候補がそれぞれ支持を伸ばすというのが選挙戦最終盤の構図だ。今回は、優勢を保ったまま最終盤にきた文氏の人物像を紹介したい。 メディアに付けられたニックネームの中で文在寅氏自身がもっとも気に入っているのは「盧武鉉の影法師」だそうだ。盧武鉉元大統領が政権の座にあった間、最側近として常に脇を固めていたとして付けられたニックネームだ。 文氏が政界入りする直前だった2012年1月に当時人気のあったバラエティ番組に出演して、そう語っている。各界で注目される人物を呼んで硬軟取り混ぜた対談で人物像を描く番組で、前週の出演者は与党の大統領候補になることが有力視されていた朴槿恵氏だった。野党で朴氏に対抗しうる人物として登場したのだが、文氏はまだ国会議員にもなっていなかった。文氏が初めて議員バッジを付けたのは同年4月の総選挙で初当選してからである。文在寅氏が描かれた韓国国旗を持つ同氏の支持者=5月9日夜、ソウル(ロイター) 1年後に控えた大統領選へ向けて政界が動き始めた時期だ。文氏急浮上の背景には、盧元大統領の側近グループが復権を果たしたことがあった。盧政権は内政・外交ともにつまずきが目立ち、特に景気低迷の影響で支持率低迷にあえいだまま退陣した。その後は側近たちもなりをひそめていたのだが、盧氏が09年に自殺したことで雰囲気が変わった。追悼ムードの中で進んだ盧氏再評価を追い風に息を吹き返し、野党内の主流派に戻ったのだ。 文氏は番組で「盧大統領が亡くなっていなければ、政治の道に入ることはなかっただろう」と語った。文氏のそれまでの経歴を考えれば本音だろうし、盧氏の死がなければ側近たちが復権を果たすにはさらに時間が必要だったかもしれない。 当時の取材メモを見ると、康元澤ソウル大教授(韓国政治)は「保守派の李明博政権下で格差拡大が社会問題になっている。弱者を助けようとしたイメージのある盧氏に対する再評価が、盧氏側近グループへの期待が高まる背景にあるのだろう」と話していた。両親は朝鮮戦争で北から逃げた避難民 文在寅氏と朴槿恵氏は同い年だが、独裁者の娘として育った朴氏と朝鮮戦争の戦火を逃れて北から南に渡ってきた家庭に生まれた文氏の人生はあまりにも違う。朴氏の人生も平凡とは言えないが、文氏もまた波乱万丈の日々を送ってきた人物である。朴槿恵(パク・クネ)前大統領が収容されているソウル拘置所。拘置所前には前大統領の写真が掲げられている=5月7日、韓国京畿道義王市(川口良介撮影) 文氏の両親は開戦半年後の1950年末、北朝鮮北東部・咸興(ハムフン)市の興南(フンナム)地区から米軍艦艇に乗って脱出した。10万人近い民間人が米軍輸送船に鈴なりになって脱出した「興南撤収」と呼ばれる有名な出来事だ。釜山に近い巨済島に避難民キャンプが作られ、文氏は53年に巨済島で生まれている。 生活の基盤がまったくない異郷での生活が楽なわけはない。学校に弁当を持っていくこともできなかったという。韓国の学校では当時、弁当を持ってこられない学生たちには牛乳やトウモロコシがゆの給食が出たのだが、食器は用意されていなかった。弁当を持ってきた級友からフタを借り、そこに給食を盛ってもらって食べたという。 番組が放送された時、韓国では給食無償化の是非が話題となっていた。生活に余裕のない児童生徒に限った無償化という主張もあったが、それでは各家庭の経済状況を子供たちにわざわざ意識させることになるから全面無償化でなければならないという主張もあった。文氏は番組で「(どちらにしても)給食を食べる子供たちの自尊心を傷つけないよう細心の注意が必要だ」と語った。文氏にとって給食は、胸の痛む記憶なのだろう。 釜山の名門である慶南高校を卒業してソウルの慶煕大法学部に進学。高校時代から社会の不条理に対する怒りを抱くようになっていたといい、朴正煕政権に反対するデモの先頭に立った大学3年の時に逮捕された。そして、韓国人男性の義務である兵役。軍隊生活にはうまく適応できたといい、陸軍特殊戦司令部の空挺部隊で爆破任務を担う優秀隊員として司令官表彰を受けた。 除隊後に復学し、司法試験に挑戦した。1次試験に合格し、2次試験を受けたのが80年春。朴正煕殺害後の政治的混乱の中、民主化運動の弾圧で200人以上の死者を出した光州事件の直前だった。光州での鎮圧作戦が始まる前日に戒厳令が全国に拡大された際、文氏は「危険人物」として再び収監されてしまった。司法試験の合格通知を受け取ったのは、ソウル市内の警察署の留置場でだった。 面白いのは、合格の報を受けて留置場での扱いが一変したことだ。署長から「令監(ヨンガム)」という敬称を付けて呼ばれるようになり、お祝いに来た知人と留置場の中での酒盛りまで認められたそうだ。軍事独裁とはいえ社会におおらかな面があったことともに、科挙の伝統を持ち、知識人が支配勢力となってきた伝統を持つ韓国ならではの光景だと言えそうだ。盧武鉉弁護士とともに民主化運動 次席という優秀な成績で司法修習を終えると、ソウルの大手事務所からの誘いを断って釜山に戻った。そこで人権派弁護士だった盧武鉉氏に出会った。82年のことだ。故盧武鉉元大統領の肖像写真を掲げる文在寅氏の支持者=5月4日、韓国・高陽(ロイター) 文在寅氏は番組で「それまでに会った法曹界の先輩たちは、権威主義というかエリート意識を感じさせる人ばかりだった。盧弁護士にはそういった雰囲気がまったくなく、私と同じ部類の人間だと感じた」と語った。その場で意気投合して盧氏の事務所に加わり、民主化運動にも一緒に身を投じた。 盧氏は87年の民主化後、後に大統領となる金泳三氏に見出されて国会議員となったが、文氏は釜山で人権派弁護士としての活動を続けた。 2002年大統領選で盧氏が当選すると、盧氏に強く請われて青瓦台(大統領府)に入った。常に盧氏に寄り添う姿から「影法師」と呼ばれるようになり、政権後半には実質的なナンバー2である大統領秘書室長を務めた。04年に盧氏に対する弾劾訴追案が国会で可決された時には、盧氏の代理人弁護士として「弾劾棄却」を勝ち取ってもいる。 盧氏退陣後は釜山での弁護士活動に戻っていたが、09年に盧氏が自殺したことで状況が変わる。盧氏逝去を受けて設立された盧武鉉財団の理事となり、その後理事長に。そして、2年後には盧氏の遺志を継ぐ存在として大統領選に担ぎ出されることになった。 朴氏に惜敗した後は「5年後」をにらんで本格的な政治活動を展開。16年秋に朴氏を巡る一連のスキャンダルが発覚した際には辞任要求の先頭に立ち、最大で100万人以上を集めたとされる「ロウソク集会」も積極的に後押しした。 文氏と同じ「共に民主党」に所属する重鎮の政治家は私に「文氏はロウソク集会に大きな借りがあると感じている」と話した。ロウソク集会に代表される世論の高まりが朴氏罷免という事態を招き、大幅に前倒しされた大統領選で文氏が有利になったからだろう。今後は、その思いとともに盧政権での教訓をいかに活かしていくかが問われることになる。

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    もはや韓国の世論は北朝鮮の核の前に屈してしまった

     朝鮮半島の「赤化統一」を目論む金正恩にとって、最重要課題は韓国に従北政権を樹立させることだ。ジャーナリストの李策氏が、北朝鮮が長年続けてきた、韓国に対する心理戦について報告する。* * * 大統領選の候補者登録(告示)が締め切られる前日の4月15日、韓国のテレビには北朝鮮のニュースがあふれた。故・金日成主席の生誕105周年を祝って行われた軍事パレードを、北朝鮮メディアが中継。新型と見られる大陸間弾道ミサイル(ICBM)など戦略兵器が続々登場し、核武装が既成事実化した現実をまざまざと見せつけたのだ。 だが、それを見守る韓国の人々の表情は淡々としている。韓国紙記者が言う。「日本人だって、今や福島第一原発の放射能漏れや汚染水流出を誰も気にしないらしいじゃないですか。それと同じです。北朝鮮のやることをいちいち気にしたって仕方ないのです」 たしかに、韓国国民の生活が北朝鮮にかき乱されるようであってはならない。安定した日常は、強い社会の証明だ。しかし忘れてはならないのは、北朝鮮の行動には「意図」が隠されているということだ。韓国の公安捜査員が話す。「北朝鮮はわが国民に対し、絶え間なく心理戦をしかけている。その方法は巧みで、一般の人がそれと認識することはなかなかできない」 北朝鮮による心理戦の事例で有名なのが「火の海」発言だ。朝鮮半島が第一次核危機の最中にあった1994年3月、板門店での南北協議で北側の朴英洙(パクヨンス)・首席代表が、韓国側の宋栄大・首席代表にこう言い放ったのだ。「ソウルはここからそれほど遠くはない。もし戦争が勃発すればソウルは火の海になるだろう。宋さん、あなたはまず生き残れないだろう」 もちろん、協議は決裂。この様子を収めたビデオは当時の金泳三大統領の指示でテレビ放映され、北朝鮮の「危険さ」を全世界に認識させた。 だが、朴氏の「火の海」発言は、実は失言ではなく、意図的なものだったと言われている。実際、戦争になればソウルは北朝鮮の長距離砲部隊によって甚大な打撃を受ける。それを知っている韓国国民は、動揺せずにはいられないからだ。 それでもかつての韓国は、こうした北からの心理戦に対してかなりの耐性を持っていた。軍事政権下で徹底した反共教育が行われていたこともあって、北朝鮮による脅しに世論が強く反発し、国内保守派の発言力を強める構図があったからだ。北朝鮮シンパが暗躍北朝鮮シンパが暗躍 ところが近年の選挙では、これとはまったく逆の構図が現れるようになっている。端的なのが、2010年6月に行われた統一地方選挙だ。このときは地方選ながら、対北政策が最大の争点になった。同年3月26日、海軍の哨戒艦「天安」が突如爆沈して乗員46名が死亡。これが北朝鮮の魚雷攻撃によるものと判明し、北とどのように向き合うかがテーマとなったのだ。 このとき、保守派の李明博政権は、「北朝鮮をつけあがらせたのは、金大中、盧武鉉の10年間にわたる左派政権である」として、対北強硬策を次々に打ち出した。しかし、地方選で圧勝すると思われた与党は、まさかの惨敗を喫したのである。 理由については様々な分析があるが、早い話、韓国国民は現在の繁栄を賭けてまで北朝鮮と対決することを望まなくなったということだ。韓国国内の厭戦ムードは、時とともに顕著になりつつある。ソウル在住のジャーナリストが話す。「今回、保守派の自由韓国党から大統領選に出た洪準杓(ホンジュンピョ)候補が4月15日に釜山で行われた集会で、『有事の際には軍を北進させ、金正恩ら指導部を除去して国土を制圧する』とぶち上げたのですが、ネット上で『頭がおかしいんじゃないか』『ぜったいに投票しない』と叩かれまくっています。発言しているのは主に、息子を兵役に送っている親の世代。北朝鮮は核兵器を持って待ち構えているわけで、そんなところに息子を送るなどとんでもないと。この点は保守派も左派も差がなくなっているように見受けられます」 ということはもはや、韓国の世論は北朝鮮の核の前に屈してしまったとも言える。金正恩朝鮮労働党委員長は核兵器を使わずして、その心理的効果により、すでに大きな果実を手にしているわけだ。 一方、韓国社会が北朝鮮の心理戦につけ込まれてしまうのは、「左派のせいばかりではなく、保守派の責任も大きい」との指摘もある。人権NGOの専従活動家が言う。「韓国では軍事政権以来、政治と財閥が癒着し、労組運動にも権力が介入してきた。過激な労使闘争が長らく続き、労働者階級の権力への不信は根強い。そこに、北朝鮮シンパが活動の場を広げる余地ができてしまっている。シンパの中には北朝鮮の工作機関と接触を持ち、平壌からの指令を受けて動いている者もいる」●り・ちぇく/1972年生まれ。朝鮮大学校卒。日本の裏経済、ヤクザ社会に精通。現在は、北朝鮮専門サイト「デイリーNKジャパン」などを足場に、朝鮮半島関連の取材を精力的に行っている。関連記事■ 北朝鮮情勢 米国が先制攻撃できない理由■ 雑誌モデルからAVに転身して「救われた」女優の告白■ グラビア女王・吉木りさ 純白ビキニからのぞく谷間にドキッ■ 婚活中のカナ34歳 同棲までした商社マンはクーポン男だった■ 北朝鮮の特殊部隊 日本にとっては弾道ミサイルよりも脅威

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    北朝鮮の信念「38度線の南にあるソウルや釜山は領土の一部」

     昨年12月、朝鮮人民軍の特殊作戦大隊が韓国大統領府「青瓦台」を標的とする大規模襲撃訓練を行った。訓練を報じた北朝鮮メディアは「青瓦台を火の海にし、南朝鮮傀儡どもを殲滅する」と気炎を上げたが、朝鮮半島情勢に精通する拓殖大学大学院特任教授・武貞秀士氏が、北朝鮮が抱く半島統一の野望について解説する。* * *南北軍事境界線がある板門店 北朝鮮が核を手放す可能性は皆無に近い。北にとって「38度線の南にあるソウルや釜山は共和国(北朝鮮)の領土の一部」であり、そこを「侵略主義者の米国とソウルの傀儡政権が不法に占拠している」というのが彼らの信念なのである。 そして、北朝鮮は在韓米軍の縮小・撤退の動向を窺いながら時間稼ぎをして核放棄の圧力を凌ぎ、ミサイルの射程延長、弾頭の小型化、軽量化を進めてきた。 この時、北朝鮮の追い風となるのが、韓国内で勢力を拡大する対北融和派だ。朴槿恵大統領を弾劾に追い込んだ韓国国民は、既得権益を独占する保守層に強い怒りを抱いている。また、現在の韓国では2代続いた保守政権の反動で「次は北朝鮮と話し合いたい」と考える融和的な国民が増えている。 加えて、北朝鮮の影響が強い労働組合と教職員組合の懐柔策が効を奏し、韓国内では北朝鮮への対決姿勢が薄まっている。言わば、「精神的な武装解除」が進んでいるのだ。 しかも、次期大統領の有力候補である最大野党「共に民主党」前代表の文在寅氏や城南市長の李在明氏はいずれも対北融和派であり、同じ民族同士の話し合いによる平和統一が可能と考える。前国連事務総長の潘基文氏でさえ対話優先論をとっている。 対北融和派は、「米韓が軍事力をチラつかせるから北朝鮮はやむを得ず軍事力で対抗する」という発想のため、まず韓国側から脅威を与える軍事力を取り下げるべきだと主張するだろう。精神面に加えて現実的にも在韓米軍の高高度防衛ミサイル配備反対運動が勢いを増しており、北朝鮮の対南攻勢が勢いを増す結果となっている。●たけさだ・ひでし/1949年兵庫県生まれ。慶應義塾大学大学院修了後、防衛省防衛研究所(旧・防衛庁防衛研修所)に教官として36年間勤務。その間、韓国延世大学に語学留学。米・スタンフォード大学、ジョージワシントン大学客員研究員、韓国中央大学国際関係学部客員教授を歴任。2011年、防衛研究所統括研究官を最後に防衛省を退職。その後、韓国延世大学国際学部教授等を経て現職。主著に『東アジア動乱』(角川学芸出版刊)、『韓国はどれほど日本が嫌いか』(PHP研究所刊)、『なぜ韓国外交は日本に敗れたのか』(PHP研究所刊)などがある。関連記事■ 北朝鮮の悲願 朝鮮半島統一が叶う日■ 北朝鮮と韓国との全面戦争はあるか? 専門家はないと説明■ 韓国軍 安全第一と兵士気配り優先による平和ボケで弱体化■ 延坪島砲撃事件 北朝鮮難民の日本への不法流入を専門家懸念■ 拉致命じられ日本に潜入した韓国秘密工作隊の悲劇を描いた本

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    韓国はどうして壊れたのか

    韓国の朴槿恵大統領の罷免が決まった。「大統領の違法行為は国民の信任の裏切りにあたる」。韓国憲法裁判所は、憲政史上初となる弾劾認定の理由をこう述べた。国内のみならず、外交や安全保障でも懸案を抱える韓国。政情混迷が一層深まるのは必至だが、どうしてこんなにも壊れてしまったのか。

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    日本に災厄をもたらす次期大統領最有力「文在寅」の正体

    西岡力(東京基督教大学教授) 朴槿恵が弾劾訴追されたのは、朝鮮日報、東亜日報、中央日報という韓国の保守系新聞が誤報を繰り返しながらも、左派と同じトーンで朴槿恵叩きをやったことが一番の原因じゃないでしょうか。 今回、北朝鮮が朴槿恵の罷免決定から1日もたたないうちに北朝鮮が速報を流しました。昨年10月以降、韓国のマスコミが大々的に「崔順実スキャンダル」を報道し始めてから北朝鮮のメディアは継続して朴槿恵を弾劾すべきだ、逮捕すべきだと発信し、韓国のマスコミはよくやっていると書いていたんです。朴槿恵元大統領 朴槿恵退陣のデモを主催した団体の主体は親北の左派です。その中心勢力は民労総(全国民主労働組合総連盟)という極左の労働組合。国家保安法の反対やTHAAD配置の反対、北朝鮮と連邦制で統一すべきだと掲げ、デモをやってきた組織です。 一昨年には火炎瓶を投げたり、鉄パイプを振り回したり、過激なデモをやっていて、国民の支持はあまり得られなかったけど、今回は10月に保守系の新聞が大規模なキャンペーンをやったために、朴槿恵弾劾というスローガンに変え、暴力的な行動を謹んだ。 でも毎週土曜日に大集会をやって、その大集会の主催者もこの労働組合だったんですが、過激な主張を隠して「ろうそくデモ」をやったので、一般国民もマスコミの報道を信じてどんどん集まった。それに国会は与野党ともにろうそくデモの大衆動員を恐れて、拙速に弾劾訴追をやってしまったということです。 今回のデモの主催者がつくった主題歌は「これが国か」というタイトルですが、崔順実みたいなおかしなおばさんが国政を篭絡するなんて、これが国なのかという歌で、その歌を作詞作曲したのがユン・ミンソクというシンガーソングライターだった。 ユンは国家保安法違反で複数回逮捕されており、その理由のひとつに「金日成主席は人類の太陽だ」という歌を作ったという事実がある。この主題歌をつくったのはこんな人だということを一切報道せず、純粋な政府に対する反対運動なんだと書いた。 他にも「Kスポーツ」という財団をつくって、その財団を支配していた理事長が崔順実が通っていたマッサージ屋のおやじさんを使っていたと言っていたが、実はその理事長は、ソウル大学で博士号をとった体育学の専門家で、マッサージなんかしたことがない。いまだにその誤報を訂正していなくて、そういう印象操作をたくさんやって国民を怒らせた。ただ、国民の多くが弾劾に賛成しているのは、こうした誤報を信じていたこともあります。大統領有力候補、文在寅が危険なワケ 今、次期大統領の最有力候補とされている文在寅は日本にとって脅威になりかねません。前回選挙に出たとき、統合進歩党という極左政党と政策協定を結んで選挙協力し、統合進歩党は大統領候補を出したが、途中でおろして、文在寅を支持すると言って政策協定を結んだ。 統合進歩党は朴槿恵政権時代に、国会議員の自分の地下サークルをつくってそこで秘密演説をして、戦争になったら我々は武装蜂起すると言っていた。武器や爆薬を準備し、秘密サークルのメンバーに演説していて、そこに入った国情院のスパイが録音したテープを証拠として、国会議員を逮捕したんですね。そのような極左政党と連立政権を組もうとしていたのが文在寅なんです。文在寅氏と朴槿恵元大統領 文在寅が直接北朝鮮とつながっているという証拠はないが、かなり危険であることに間違いないんです。なぜなら、大統領に当選したら、ワシントンではなくて平壌に行くと言っているぐらい。さらに、日韓慰安婦合意は見直すべきで、THAAD配備についても延期すべきだと言っている。 盧武鉉政権時代の外務大臣が出した回顧録の本には、こんなエピソードもあるんです。盧武鉉政権が国連の北朝鮮人権決議に賛成か棄権するか揉めたとき、当時秘書室長だった文在寅が北朝鮮に意向を聞いて棄権したということが書いている。北朝鮮に政策を聞くのかとスキャンダルになったが、朴槿恵スキャンダルで消えてしまったんです。 文在寅は当選したら、最初に平壌で金正恩に会い、そして2000年の南北共同宣言で金大中と金正日の間で連邦制による統一をするという合意ができているので、その連邦制による統一を進める実務協議を始めるつもりのようです。連邦制による統一ができたら韓米同盟はいらない。米軍は撤退ということになり、これは大変危険なことなんです。 米軍が駐屯しているのは北朝鮮という仮想敵があるためで、統一ができたらもう必要ない。日本にとっては、朝鮮が赤化したら大変だが、アメリカにとってはそれほどでもない。中国は朝鮮戦争で北が勝ったのと同じことなのでもちろん歓迎するでしょう。 朝鮮半島全体が反日勢力に陥るのは、日本にとって地政学的に最悪の危機になる。白村江の戦いで負けたとき、モンゴルが高麗を滅ぼして朝鮮半島全体を散らしたときも日本が侵略の危機にさらされた。さらに日清、日露戦争も半島全体が敵対勢力の手に落ちないために戦った。在韓米軍が撤退したら 特に日露戦争は半島がロシアにとられたら日本は植民地になってしまうと思い、国力の差をわかったうえで戦ったんです。朝鮮戦争のときも日本を統治していたマッカーサーは、半島が全部とられたら日本を守れないと思っていた。マッカーサーは解任されたあと、米議会で、日本の大東亜戦争を侵略とは思えないと言ったのは、日本は朝鮮半島を守らなければならなかったからで、そのためには満州が必要だというのは理解できたんですね。 日本を守るという観点では、在韓米軍がいることで、日本は安全だった。でも、米軍が撤退し、半島全体が核を持つ反日勢力の手に落ちると、日本は危機にさらされる。白村江の戦いや日露戦争の負けたときと同じような状態になるんです。憲法裁判所近くで、朴槿恵大統領の罷免決定言い渡し後に機動隊と衝突する朴氏の支持者ら=3月10日、ソウル 韓国では今月、弾劾反対の30万人のデモがソウルで行われ、今日も判決が憲法違反だというデモが起きて死者も出ています。激しい保守派の抵抗もあって、大統領選で文在寅が勝つかどうかはまだ分からない。ただ文在寅が当選しても、保守派は体を張って阻止しようとするだろうから、流血の事態になるでしょう。そのときに国軍はどう動くかで、連邦が反対だと内戦状態になる可能性もあります。 北朝鮮も暴走が続いています。朴槿恵政権が当初は北との対話を目指したが、昨年2回の核実験を実施しました。発射後、韓国が核開発を止めないなら体制を倒すという政策を決めて、北朝鮮との心理戦をどんどんやったら、北朝鮮幹部が相次いで亡命していった。公開されていないが、高官が次々と飛んできて、朴槿恵政権が積極的に助けてきたんです。この状況に北朝鮮は朴槿恵を倒さなければ自分たちが倒されるという危機感を募らせているはずです。結局、韓国も北朝鮮も危機に瀕しており、どっちが先に倒されるかが注目されるところでしょう。(聞き手・iRONNA編集部、本江希望)にしおか・つとむ 東京基督教大学教授、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)会長。昭和31年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業、筑波大学大学院地域研究研究科修了。韓国・延世大学校国際学科留学。在韓日本大使館専門調査員、「現代コリア」編集長などを歴任。産経新聞「正論」執筆メンバー。主な著作に「よくわかる慰安婦問題」「日韓『歴史問題』の真実」「韓国分裂-親北左派vs韓米日同盟派の戦い」「日韓誤解の深淵」「拉致家族との6年戦争-敵は日本にもいた!」「北朝鮮の『核』『拉致』は解決できる」「朝日新聞『日本人への大罪』」などがある。

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    「朴大統領は妖怪だ」憲政史上最も長い日に韓国人は何を思ったか

    水野俊平(北海商科大学教授) 韓国の憲法裁判所が、韓国の国会で弾劾訴追され職務停止中の朴槿恵大統領について、憲法裁判官8人(欠員1)の全員一致で罷免を認めるとの審判結果を下した。韓国憲政史上初となる現職大統領の罷免という厳しい審判が下された理由は、朴大統領が部外者であるはずの知人女性を国政介入させたことに加え、国務遂行における収賄や職権乱用などの疑いが認められたからである。この決定により、朴槿恵大統領は罷免されて即時失職し、5月9日までに大統領選挙が実施される運びとなった。国会が弾劾訴追した朴槿恵大統領の罷免を言い渡した韓国憲法裁判所の法廷 =3月10日、ソウル 韓国全土では連日連夜、弾劾賛成派と反対派による集会やデモが相次ぎ、双方が互いに刺激を与え合いつつ論争が過熱した。昨年12月9日に韓国国会で弾劾訴追が可決されてから憲法裁判所の決定が出るまで、国論を二分する対立が続いてきた。とはいえ、形勢は賛成派が圧倒的多数だった。憲法裁判所の審理と並行して、特別検察官による朴大統領への一連の疑惑の捜査も進んでおり、その過程で明らかになった数々の不正と腐敗に国民は呆れ果てている。 一方の反対派も、朴大統領の指導力欠如や無能ぶりは半ば認めており、弾劾手続きに対する問題提起や弾劾賛成を主導してきたリベラル派に対する反発のみならず、賛成派のデモによる国家秩序の混乱に対する反感や、この間隙に乗じて北朝鮮が何か仕掛けてくるかもしれないという不安感が高まっている。言うなれば、決して朴政権に満足しているわけではないのである。 弾劾に賛成か、反対かの論争が渦巻く中で下された現職大統領の罷免決定。この日はいわば「韓国憲政史上、最も長くて重い日」となったわけだが、一連の経緯について、韓国人はどう受け止めているのか。私の周辺の韓国人の生の声を拾ってみると、興味深い答えが次々と返ってきたので、ぜひ紹介したい。「韓国の司法制度がまだ生きていたことを実感」 「当然、正さなければならないことが、正されただけです。今回の弾劾は始まりにすぎません。これからがもっと重要ではないかと思います。同じことが繰り返されないように、目をあけ、耳を開いて祈らなければならないと思います」 「朴大統領は一言でいうと妖怪だと思います。『孟子の四端』をご存じでしょうか? 惻隠(憐れみ)、羞悪(羞恥)、辞譲(へりくだる心)、是非(正しい判断)です。彼女はこの4つを全然持っていないと思います。私は伝統的な与党の支持者ですが、今回の弾劾は正しいという確信を持っています」デモに参加する男性=3月10日、ソウル 「大統領の義務は憲法と国民と国家の安寧を守ることです。これを守れなかった大統領が弾劾を受けるのはあまりに当然のことです。また、朴大統領は疑惑に対する捜査にもまったく非協力的でした。これでは国民が法を守らなければならないという意識を持つはずがありません。国家の法秩序を揺るがすことになってしまいます」 「私は弾劾賛成です。昨日の世論調査を見ると、賛成が70%、反対が20%でした。ろうそく集会が成し遂げた成果だと思います。我が国の歴史上、初めての大統領罷免という恥ずかしい結果から抜け出し、これを契機として、正義と民衆の意志が韓国を本当の民主主義国家に成長させる契機になることを祈っています」 「左派、右派という政治思想を離れて、私は小さな希望を見出しました。今までの積もり積もった澱を清算し、韓国の司法制度がまだ生きているということを実感した一日でした。しかし、ろうそく集会(弾劾賛成)と太極旗集会(弾劾反対)に象徴される国論対立は本当に心配です」 「私は好ましい結末ではなかったと思います。憲法裁判所が示した審判の基準(大統領の憲法の守護意志欠如、国民の信頼喪失など)が曖昧模糊としている、というのがその理由です」 「野党4党が改憲を通して憲法裁判所を廃止すると圧力をかけ、マスコミが一方的に大統領の下野を要求するなかで、憲法裁判所が『憲法守護』よりも『憲法裁判所の守護』を選んだ結果だと思います。大統領が本当に罷免されなければならないならば、裁判過程で十分な審理を行わなければならないのに、憲法裁判所があらかじめ結論を出し、裁判官が退任する前に急いで押し付けた判決だと思います」 「私は賛成です。当然の流れとして生じた結果が、国家を動かし、今回の弾劾となりました。私たち公務員は意見を明らかにはできる立場ではありませんが、みんな怒っていますよ」 「私は弾劾に賛成です。法によってこのような弾劾が認められたことは民主主義の発展の表れだと思います。しかし賛成、反対をめぐって世代が分裂したことは残念なことです。特に弾劾反対派の過激な行動は是正されなければなりません」「国民の勝利」 「憲法裁判所が大統領弁護団に十分な弁論の機会を与えず、180日以内に行えばよい審判を90~100日以内で下したということは理解しがたいことです。韓国の大統領は内乱陰謀・外患誘発の容疑でなければ弾劾されないという憲法上の規定があるのにもかかわらず、財閥に圧力をかけたり、知人の国政介入を許したりすることが弾劾の理由になるのかどうか、疑問だと思います。今回の審判結果は、マスコミと、国会、憲法裁判所が作り出した『演劇』であると思います」 朴槿恵氏の大統領罷免決定を喜び、デモ行進する人たち =3月10日、ソウル 「弾劾の認容にまずは安堵しています。朴大統領が憲政史上、初めて罷免される大統領となったことは国民の勝利です。弾劾に反対していた保守層は徹底して反省しなければならないでしょう。次期大統領の選挙では十分に熟慮して投票をしなければならないと思います」 「今日の弾劾は韓国人にとって非常に大きな教訓をもたらしました。李明博・朴槿恵両政権のもとで起こった民主化に対する逆コースという現象は、民主化を熱望する勢力にとっては大きな挫折でした。さらに大統領の知人・崔順実の国政介入と不正腐敗は、単純な汚職ではなく、韓国の保守支配勢力の腐敗を象徴するものと考えます。今回の弾劾はこうした挫折を克服し、正しく新しい歴史を作る方向へと向かう道標だと思います」 さまざまな意見が寄せられたが、弾劾には「賛成」という意見が多数を占めた。しかし、同時に弾劾の経緯や一方的なマスコミ報道、審判過程に対する疑問、国論分裂や世代対立に対する憂慮の声も聞かれた。 今後、韓国の政局は朴政権に対する一層の不正追及、5月の大統領選挙に向けて、さらなる激動の時期を迎えることは必至だ。今回の弾劾罷免の過程で経験した対立や葛藤を克服し、国民の大多数が支持できる「クリーンで非権威的な政権」を作り出していくことが、これからの韓国が直面する最大の課題であろう。

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    民主主義を守れなかった韓国、朴大統領の「罷免」が意味するもの

    重村智計(早稲田大学名誉教授) 韓国の憲法裁判所が、朴槿恵大統領の弾劾を妥当とする認定を言い渡した。裁判官8人全員の合意である。革新左派勢力と保守勢力は、憲法裁判所の法律判断に圧力をかけようと、それぞれ大規模な集会やデモを連日実施した。弾劾認定を受け入れないデモや集会は今も続く。韓国の民主主義は危機に瀕している。韓国憲法裁判所で開かれた朴槿恵大統領の弾劾訴追について、決定を言い渡す李貞美裁判官=3月10日、ソウル(共同) 弾劾認定は隣国裁判所の判断であり、日本人が内政干渉して、あれこれ言うべきではないだろう。ただ、決定の結果予想される今後の日韓関係について、日本が関心を示すのは許される。 また、韓国憲政史上初の罷免という重大な案件で、少数意見を示す裁判官が全くいなかった事実は、日本の法律家からもかなりの関心を呼ぶことになるだろう。今回の決定は、韓国の裁判官が世論の圧力に「弱い」との印象を残した、と言っても過言ではない。というのは、日本では政府と世論の圧力に屈せず、「司法の独立」を維持した裁判官が明治時代に既に存在したからだ。そう、児島惟謙である。韓国政治を揺るがした一連の経緯を振り返ってみると、韓国には児島はいなかったのだろうか、と改めて思う。 児島惟謙は、朝鮮王朝末期であった120年以上前の、明治政府の大審院長(今の最高裁長官)である。明治24(1891)年5月 11日、来日したロシア皇太子ニコライ・アレクサンドロビッチが、滋賀県大津で巡査の津田三蔵に斬られ負傷した事件が起きた。いわゆる大津事件である。当時、政府も世論もロシアの報復を恐れ、津田三蔵の死刑判決を求めたが、児島は「司法の独立」を主張し、最後まで求めに応じなかった。判決は無期懲役。児島の行動に批判的な主張もあるが、今では評価する声の方が高い。 こうした視点から、アジアにおける司法の独立と民主主義、法治主義と人権問題の視点から、韓国における民主主義と憲法裁判所の決定を考えるのは、許されるだろう。 憲法裁判所の李貞美裁判長は「主文、大統領朴槿恵を罷免する」と言い渡した。1987年の民主化によって設置された憲法裁判所は、国会が可決した「弾劾決議」が妥当かどうかを審議する機関で、なぜ「罷免する」と言い渡せたのか。三権分立の権限分担はどうなっているのか、やや違和感を覚えたのは私一人だけだろうか。 憲法と法律は、何のためにあるのか。アメリカの大学では「民主主義のため」と教える。日本の法学部では、必ずしも「民主主義のため」とは教えなかった。「権力者への牽制、權力濫用防止」や「国民の権利擁護」とは教えた。その一方で、統治の手段や秩序の維持との主張もあった。韓国では、どう教えるのだろうか。 憲法裁判所の公判と決定過程を分析すると、「世論尊重」「韓国的民主主義」と思えないこともない。韓国では、かつて朴正煕時代に「独裁」を批判され「韓国的民主主義」を主張した。国際的に高い評価を受けたシンガポールのリー・クアンユー首相も「アジア的文化」に触れ、民主主義を抑圧した。国民を思う指導層がいない悲劇 「民主主義とは何か」との説明と論議は、各国で異なるかもしれないが、民主主義の柱は「自由選挙」と「言論、報道の自由」である。米国の民主主義はこの原則を厳しく守り、自由選挙で選ばれた大統領と議会に多くの権限を与える。だから、法案の提出権は連邦議員にある。選挙で選ばれない官僚には、権限が法律で規制される。選挙で選ばれない閣僚も議会の徹底した審査を受ける。 この原則からすれば、選挙で選ばれた大統領の弾劾と罷免の要件は、米国では厳しい。憲法裁判所の裁判官は、自由選挙で選ばれたわけではない。それだけに、弾劾成立の構成要件の審理は、慎重かつ厳格におこなわれるべきだろう。 法律的な見地からすれば、憲法裁判所の認定は「大統領の犯罪」についての厳格な構成要件を欠いている、と思わざるを得ない。また、証拠も提示されなかったのは「罪刑法定主義」に反する。裁判官の客観的でない「判断」が示されただけだと、法律的には批判されかねない。サムスン財閥をめぐる「贈収賄疑惑」は、自白も証拠も提示されていない。「心証」が示されただけだ。 一方、朴槿恵大統領にも韓国の民主主義を守るとの意識は弱かった。憲法裁判所に出廷し、自らの立場を表明しなかった。「真相究明に協力する」と言いながら、記者会見も拒否し、法廷での発言もしないのでは、民主主義の手続きを大統領自ら壊したと批判される。そもそも産経新聞の加藤ソウル支局長を起訴し、民主主義の基幹である報道の自由を否定した。1月1日、韓国大統領府で記者団と会った朴槿恵大統領(ロイター) また、朴槿恵大統領や与党の政治家には、国民と国家のために自分を犠牲にする覚悟はなかったと批判されても仕方がない。その代表は、大統領選出馬を表明した潘基文前国連事務総長だ。韓国のある大物政治家に「国家と国民のために、自分の人生を犠牲にする覚悟なしに出馬してはいけない」と指摘されたことがあった。それなのに、国民と国家を投げ捨てて途中で逃げ出してしまった。「国家と国民を思う政治家が韓国にはいない」と嘆く国民は少なくない。 一連の問題は、大統領が知人女性に演説文を相談した事実が明らかにされ、一大スキャンダルに発展した。事件の背景にあるのは、独立以来韓国を二分してきた保守勢力と、革新左派の激しい対立である。韓国の左派勢力は、保守が主導権を握る「大韓民国」の正統性を否定してきた。半面、日本帝国主義に勝利したとする北朝鮮の正統性に魅力を感じてきた人々である。 今回の事件の背後に横たわり、次の大統領選挙の隠れた最大の争点は「大韓民国の正統性」である。支持率ナンバーワンの大統領候補、文在寅氏と革新左派勢力は、朴槿恵大統領を象徴とする独立以来の「大韓民国」の正統性を否定し、自由も人権もない北朝鮮に優しい「大韓民国」に変えようとしている。だからこそ、日韓慰安婦合意の破棄を堂々と主張する。 隣国の政治状況は、韓国民衆運動のシンボル的存在だった思想家、咸錫憲が「国民を思う指導層がいない」と嘆いた朝鮮王朝の悲劇を回想させる事態とも言えよう。

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    朝鮮日報「韓国はみんな狂っている」の警告は韓国民に届くか

    韓国はみんな狂っている、まともではない」。ネット掲示板かと見紛うタイトルのついたコラムが、1月27日、韓国最大の日刊紙・朝鮮日報に掲載された。執筆者は日本特派員の経験もある朴正薫論説委員。〈国家が理性を失いつつある〉とまで自国を評した内容は、大きな反響を呼んだ。ソウル在住ジャーナリスト・徐台教氏がレポートする。* * * 朴正薫氏のコラムを読んで冷静さを取り戻した読者は、こう思ったに違いない。我が国は今、どうなっているのか。韓国で「朴槿恵─崔順実ゲート」と呼ばれる一大スキャンダルの追及が本格化したのは昨年10月のことだ。以降、5か月近い政治危機が続いている。2月4日、ソウルで開かれた朴槿恵大統領支持派の集会に出席した与党セヌリ党の議員(手前)ら(聯合=共同) 朴氏のコラムは冒頭から〈大統領の『ヌード風刺』は芸術などではなく、政治の現実を表すスキャンダルだ。政治はまともでない〉と激しく切り捨てる。これは1月20日から韓国の国会内で開かれた展示会で野党・「共に民主党」議員によって掲げられた、マネの名画「オランピア」をパロディーした作品をめぐるドタバタを指す。 娼婦とされるベッドに横たわった全裸の女性の顔が朴大統領に差し替えられ、使用人の黒人女性は崔順実氏の顔をしている。使用人が持つお盆の上には美容注射を好んだとする朴大統領への風刺で、注射器が載せられている。 ちなみに筆者もこの作品を見たが、完全に“アウト”であった。当時、与党のセヌリ党が分裂し、共に民主党が第一党に躍り出たこともあり、同党の驕りを示す一例と言える。「政治家は扇動し、大衆は集団で狂気を発散する」 朴氏はさらに〈大衆の暴走が攻撃性を帯び暴力化する〉との危うさも指摘する。 1月19日に韓国ナンバーワン企業サムスン電子のトップ・李在鎔副会長に対する逮捕令状が棄却された時のことだ。逮捕必至と見られた李氏の令状棄却は、財閥の横暴に怒る人々を動かした。彼らは棄却判決を下した判事に対し、ネット上で流言飛語を展開し、電話で猛抗議するなどした。 韓国のネット世論は左派系に偏る。「崔順実ゲート」に関わり利益を得たと見られる人々は徹底的に攻撃されている。SNSはもちろん、携帯電話のショートメッセージを使った「大量メール攻撃」もお手のものだ。全国会議員の個人携帯電話番号もすべて流出している。 朴氏は次いで、「見切り発車」状態の大統領選挙についてもたたみこむ。〈大統領になろうとする指導者たちは権力欲に目がくらんでいる。政治家は扇動し、大衆は集団で狂気を発散する〉 押さえておきたいのが、憲法裁判所の判決によって今後が左右される点だ。弾劾「認容」判決の場合は朴大統領は罷免となり60日以内に次期大統領選挙が行われる。現状では3月10日頃に「認容」判決が出るとの見方が支配的だ。となると、5月10日頃が投票日となるため、選挙戦期間は約2か月しかない。このため「待ってられない」とばかりに選挙戦が年明けから本格化しているのだ。 ただ、その有り様がやや短絡的だ。〈刺激的で煽情的であるほど、大衆の人気は上がっていく。政治家は迎合する〉 左右の政治家ともに憲法裁判所に公然と圧力をかけ、三権分立を揺るがしている。その上、野党候補たちは市民の集まりであるはずの「ろうそくデモ」に便乗することで票を集めようとする一方、与党候補は朴槿恵大統領を支持する団体が主催する「太極旗デモ」の壇上に直接立ち、激しい言葉で参加者を煽る。 筆者も数度取材したが、まさに熱狂の現場である。【PROFILE】1978年生まれ、群馬県出身の在日コリアン三世。日韓で北朝鮮報道に携わったのち、現在はソウル在住。ニュースサイト「韓国大統領選2017」(http://kankoku2017.jp)の編集長を務める。関連記事■ 長期大統領不在、混乱拡大の選挙戦 韓国は「すべて非正常」■ 「喜び組」の定年は25才 口にするのも…な酷い罰ゲームも■ 18kg減の愛子さま 宮内庁は報道陣に「アップ写真使うな」■ 小川彩佳アナの巨大指輪 櫻井でなく後輩からの贈り物■ 「仏像返そう」韓国メディアが突然まともになるも慣れぬ文章

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    韓国を揺るがしたルサンチマン 不気味な「恨」が世界にもうずまく

    西尾幹二(評論家) 朴槿恵大統領の職務剥奪を求めた韓国の一大政変には目を見張らせるものがあり、一連の内部告発から分かったことはこの国が近代社会にまだなっていないことだった。5年で入れ替わる「皇帝」を10大派閥のオーナーとかいう「封建貴族」が支配し、一般民衆とは画然と差をつけている「前近代社会」に見える。一般社会人の身分保障、人格権、法の下での平等はどうやら認められていない。12月10日、韓国・ソウルの大統領府近くで開かれた、朴槿恵大統領の退陣を要求する集会(共同) ただし李王朝と同じかというとそうではない。「近代社会」への入り口にさしかかり、日本や欧米を見てそうなりたいと身悶(もだ)えしている。騒然たるデモに荒れ狂った情念は韓国特有の「恨(ハン)」に国民の各人が虜(とりこ)になっている姿にも見える。「恨」とは「ルサンチマン」のことである。完全な封建社会では民衆は君主と自分とを比較したりしない。ルサンチマンが生まれる余地はない。 近代社会になりかかって平等社会が目指され、平等の権利が認められながら実際には平等ではない。血縁、財、教育などで強い不平等が社会内に宿っている。こういうときルサンチマンが生じ、社会や政治を動かす。 恨みのような内心の悪を克服するのが本来、道徳であるはずなのに、韓国人はなぜかそこを誤解し脱却しない。いつまでもルサンチマンの内部にとぐろを巻いて居座り続ける。反日といいながら日本なしでは生きていけない。日本を憎まなければ倒れてしまうのだとしたら、倒れない自分を発見し、確立するのが先だと本来の道徳は教えている。しかし、恨みが屈折して、国際社会に劣情を持ち出すことに恥がない。吹き荒れる「ホワイト・ギルト」 ところが、困った事態が世界史的に起こりだしたようだ。ある韓国人学者に教えられたのだが、恨に類する情念を土台にしたようなモラルが欧米にも台頭し、1980年代以後、韓国人留学生が欧米の大学で正当評価(ジャスティファイ)されるようになってきた。 世界が韓国的ルサンチマンに一種の普遍性を与える局面が生じている、というのである。こういうことが明らかになってきたのも、今回の米大統領選挙絡みである。 白人であることが罪である、という「ホワイト・ギルト」という概念がアメリカに吹き荒れている、と教えてくれたのは評論家の江崎道朗氏だった。インディアン虐殺や黒人差別の米国の長い歴史が白人に自己否定心理を生んできたのは分かるが、「ホワイト・ギルト」がオバマ政権を生み出した心理的大本(おおもと)にあるとの説明を受け、私は多少とも驚いた。トランプ氏は歪みを正せるか この流れに抵抗すると差別主義者のレッテルを貼られ、社会の表舞台から引きずり下ろされる。米社会のルサンチマンの病もそこまで来ている。「ポリティカル・コレクトネス」が物差しとして使われる。一言でも正しさを裏切るようなことを言ってはならない。“天にましますわれらの父よ”とお祈りしてはいけない。なぜか。男性だと決めつけているから、というのだ。 あっ、そうだったのか、これならルサンチマンまみれの一方的な韓国の感情論をアメリカ社会が受け入れる素地はあるのだと分かった。両国ともに病理学的である。 20世紀前半まで、人種差別は公然の政治タームだった。白人キリスト教文明の世界に後ろめたさの感情が出てくるのはアウシュビッツ発覚以後である。それでも戦後、アジア人やアフリカ人への差別に気を配る風はなかった。80年代以後になって、ローマ法王が非キリスト教徒の虐待に謝罪したり、クリントン大統領がハワイ武力弾圧を謝ったり、イギリス政府がケニア人に謝罪したり、戦勝国の謝罪があちこちで見られるようになった。トランプ氏は歪みを正せるか これが私には何とも薄気味悪い現象に見える。植民地支配や原爆投下は決して謝罪しないので、これ自体が欧米世界の新型の「共同謀議」のようにも見える。日本政府に、にわかに強いられ出した侵略謝罪や慰安婦謝罪もおおよそ世界的なこの新しい流れに沿ったものと思われるが、現代の、まだよく見えない政治現象である。 各大陸の混血の歴史が示すように、白人は性の犯罪を犯してきた。旧日本軍の慰安婦制度は犯罪を避けるためのものであったが、白人文明は自分たちが占領地でやってきた犯罪を旧日本軍もしていないはずはないという固い思い込みに囚(とら)われている。 韓国がこのルサンチマンに取り入り、反日運動に利用した。少女像が増えこそすれ、なくならないのは、「世界の韓国化」が前提になっているからである。それは人間の卑小化、他への責任転嫁、自己弁解、他者を恨み、自己を問責しない甘えのことである。2月28日、米上下両院合同会議で就任後初の施政方針演説に臨むトランプ大統領=ワシントン(AP=共同) トランプ氏の登場は、多少ともアメリカ国内のルサンチマンの精神的歪(ゆが)みを減らし、アメリカ人を正常化することに役立つだろう。オバマ大統領が許した「アメリカの韓国化」がどう克服されていくか、期待をこめて見守りたい。 

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    なぜ韓国は大統領の「汚職」が繰り返されるのか

    下條正男(拓殖大教授) 韓国の憲法裁判所が「罷免」の結論を出したことはやはり、世論に押されたと言うことでしょう。これまでに廬武鉉も大統領だった際に弾劾訴追を受けましたが、その時の世論はマスコミも含めて罷免への反対が多かった。 でも、朴槿恵の場合はその逆だったために罷免になったとみるのが妥当です。要は多くの人がなんとなく感じていると思いますが、韓国の司法そのものが本来の機能を有していない。そうした未成熟な国であることの認識が日本人はまだ薄いだけに、韓国で起きる一連の事象に驚くわけです。 そもそもアメリカや日本といった国は民主主義というものをきちんと経験していていますが、中国や韓国といった国々は本当の民主主義を知らないんです。それでいて中央集権的な政治なので、支配する側と支配される側の構造しかないから常に双方が反発する。朴槿恵大統領の罷免を憲法裁判所に求める集会の参加者=2017年2月、ソウル中心部(共同) 結局、今回も国民が反発して朴槿恵政権を潰したわけですが、教訓を生かして次のステップに上げる体制を作れるかというと、できないでしょうね。なぜなら壊すことはできても作ることはできないからです。それが韓国や中国の傾向で、だから絶対的な権限を持つ大統領を利用して、近親者が不正に手を染め政権を危機に陥らせることを繰り返してしまうんです。 アメリカの場合であれば、大統領の任期ごとに軌道修正をすることができる。それは市民権や民主主義というものを知っている人たちがいるからです。でも韓国や中国などは社会が本当の民主主義を経験したことがないんです。韓国は急に独立してしまって、プロセスを経て国を作ったことがないので、どうやればいいかわからない。 だからいったん混乱状態になると抑える人がいない。そこを我々は理解しておかないといけないのに、日本の評論家の多くはあの韓国での「ろうそく集会」を民主主義の典型だと言う。それは全く違いますよ。韓国はまだ壊すばかりで作ることができないんです。民主主義が浅いために何をどうしていいのかわからず、今までは反発勢力を押さえつけるだけだったわけです。 では、なぜこうした状況になっているかを考えると、明治維新以降、朝鮮や中国、ベトナムなども明治維新をモデルにしたけど、全部失敗したんです。準備ができていないのに、急に中央集権を地方分権に変えようとしても無理があった。 これをどうかしないといけないと動いたのは伊藤博文だった。朝鮮半島を近代化しようと政策を実行し、一定のレベルまでいったが、協力する人たちが戦後に「親日家」の烙印をおされてしまった。そんな状況が続く中で、日本が先の大戦について一方的に謝罪する「村山談話」が出てきたために、韓国のブレーキが効かなくなり、元に戻ってしまったんです。 日本側の対応のまずさを象徴的するのは、慰安婦問題です。日本側が10億円を拠出して、せっかく合意に至ったかと思いましたが、結局、釜山に慰安婦像を設置する事態になった。日本の駐韓大使と釜山の総領事が帰国しましたけど、2カ月間も経過してしまい、タイミングを完全に逸してしまった。新政権で強まる「反日」 これは韓国に問題があるのは言うまでもないですが、やはり日本側の対応にも大いに責任があるんです。安倍政権の支持率は高いでしょうが、やはり韓国という国の現状をきちんと理解して対処できているとは言えません。もちろん野党も同じで、民進党にもできない。 現時点で適切な対処ができる政治家は日本にどれだけいるでしょうか。なぜかと言えば、日本は中央集権と地方分権を両方経験してきたけど、地方分権的な思考が強いだけに対処法を知らないから、それをできるリーダーが育たない。国会を見ていると、田舎の議会みたいな議論ばかりしているじゃないですか。結局、政治というものを分かっていないんです。 安倍首相を「猛獣使い」だと評価する人もいますが、重要な政治判断で小回りはきくけど、大局ではできない。ゆえに日本はトランプのような人物が大統領になったアメリカにどう対応すればいいか分かっていない。ロシアも含めて振り回されるだけになっている。 安倍首相以外に適任者がいないから目立っているだけ。巷間で奥さんとの不協和音が流れて来る人が、トランプやプーチン、習近平らとうまくやれるはずがないじゃないですか。 本来、慰安婦問題で日本が大使らを帰国させたのなら、同様な両国の認識で対立する別のカードを切らなきゃいけない。それが竹島なんですよ。そういうことが分かっている政治家は少ないのではないでしょうか。安倍首相には人選を厳しくしてほしいものです。ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像の横で抗議する若者ら ドイツにも慰安婦像設置だとか言ってますが、日本がこんな対応しかできないならヨーロッパ中に設置されて、そのつど日本がアタフタするだけ。慰安婦問題でドイツと対立するのは賢明ではありません。 近く韓国は大統領選をすることになりますが、有力なのは左派の文在寅です。朴槿恵が罷免にならなければ、有力候補に変化もあったかもしれませんが、すでに保守派は分裂しているし、こういう結果になった以上、左派で親北朝鮮の野党が躍進していくでしょう。 金正男暗殺などで北朝鮮への危機感は募ると考えがちですが、もともと韓国に北朝鮮シンパも多いわけですから、文在寅が有力であることは変わらない。もはや韓国国民が北朝鮮情勢を考慮して大統領を選ぶことはない。 そして、新政権は当然、朴槿恵政権をすべて否定してきますから、日本との関係改善をすべて反故にして、「反日」的な傾向は強くなっていくと思います。だからこそ、日本は韓国の新政権に対処できるよう、韓国がどういう国なのかを冷静に認識する必要があるのです。(聞き手・iRONNA編集部、津田大資) しもじょう・まさお 拓殖大教授。昭和25年、長野県生まれ。國學院大大学院博士課程修了。58年に韓国に渡り、三星綜合研修院主任講師。平成10年まで三星電子マーケティング室諮問委員を務めた。専攻は日本史。18年から「島根県竹島問題研究会」座長。著書に『日韓・歴史克服への道』(展転社)、『「竹島」その歴史と領土問題』(竹島・北方領土返還要求島根県民会議)など。