中国「ゲノム編集」ベビーは許されるか
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中国「ゲノム編集」ベビーは許されるか

中国広東省の南方科技大の賀建奎・元副教授がゲノム編集で遺伝子を改変した受精卵を使い、世界で初めて双子の女児を誕生させた。倫理面や安全性への懸念が広がる中、研究者の功名心や利益目的との報道も出て、まさに批判一辺倒である。負の側面ばかりが注目されるゲノム研究。本当に議論の余地もないのか。

中国広東省の南方科技大の賀建奎・元副教授がゲノム編集で遺伝子を改変した受精卵を使い、世界で初めて双子の女児を誕生させた。倫理面や安全性への懸念が広がる中、研究者の功名心や利益目的との報道も出て、まさに批判一辺倒である。負の側面ばかりが注目されるゲノム研究。本当に議論の余地もないのか。

過熱報道にだまされるな

まさに「四面楚歌」だが…

がん撲滅も夢じゃない

ゲノム編集に「倫理」の歯止めを

 現在の生命科学は、発生分化というダイナミックな過程の解明に向かっており、当然、ゲノム編集もこの局面で活用される。ゲノム配列が分かっていさえすれば、ヒトを含むあらゆる生物で、特定の遺伝子を簡単にかつ効率よく停止させたり、操作したりすることができるのだから、研究者の期待はふくらむばかりである。
 われわれが直面する問題は、この技術を73年に考え出された「遺伝子組み換え技術」と比べてみるとはっきりする。遺伝子組み換え技術の場合は、どこにDNAが組み込まれるかは不明であり、成功率も低く、未知の危険があると考えられて、今から見ると不必要な規制が行われてきた。ところがゲノム編集は、分かっているDNA配列の箇所だけを切断するのだから、技術そのものの不正確さからくる副作用を除けば、未知の危険性はまずない。
 つまり、今はまだ基礎研究の段階だが、この技術を、どのように、どこまで使ってよいのか、という問題なのだ。これに答えを出すために社会は、自然や生命や人体に関する価値観を明確にする必要がでてきている。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 熱い議論が始まっているのが遺伝病研究などの医学的応用であり、なかでもヒトの受精卵や生殖細胞にこの技術を用いることの是非である。この問題を議論するとどうしても、人間をDNAレベルで設計する「デザイナー・ベビー」にまで話が飛んでしまいがちである。
 一方、すでに2年前に中国でヒトの受精卵を用いた実験が行われ、生命倫理の論争に火がついた。実際に行われたのは、1つの卵子に2つの精子が入って正常には発生しないヒトの受精卵を用いて、ある遺伝子を修正するためにゲノム編集技術を使用する実験であった。結果は、効果は確認されたが効率が悪く副作用もあった。
 問題の一つは、この論文が国際的な専門誌である『ネイチャー』と『サイエンス』に倫理的理由で掲載を拒否され、北京で発行されている専門誌に発表されたことである。ヒトの受精卵の扱いに関する価値判断で、国家間に違いがあることが鮮明になったのである。
 この問題に対する日本社会の反応は恐ろしく鈍い。だが重要問題であり、この機会に正攻法を取るべきであろう。ゲノム編集技術が、技術・倫理・法律・価値観などの面でどのような形の問題であるのか、バランスのとれた全体像を描いて社会に対して提供する、テクノロジー・アセスメント(技術評価)の作業を行うべきだ。
 価値に関わる問題なのだから立法府の下に予算を確保し、信頼に足る研究者の集団に報告書作成を委ねるのである。92年に答申をまとめた脳死臨調(臨時脳死及び臓器移植調査会)の総経費は2年で1億6千万円であった。空転する国会の1日の経費に比べれば、安いものである。(東京大学客員教授・米本昌平、産経新聞「正論」 2017.04.27)

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