日本国総理大臣、安倍晋三
11712

日本国総理大臣、安倍晋三

安倍首相の総裁任期をめぐり異例の発言が飛び出した。自民党の二階俊博幹事長が4選の可能性ついて「今の活躍なら有り得る」と述べたのである。首相在任期間はかの吉田茂を超え、憲政史上最長も射程に入った安倍氏だが、なぜ長期政権を維持できるのか。その解に迫りたい。

安倍首相の総裁任期をめぐり異例の発言が飛び出した。自民党の二階俊博幹事長が4選の可能性ついて「今の活躍なら有り得る」と述べたのである。首相在任期間はかの吉田茂を超え、憲政史上最長も射程に入った安倍氏だが、なぜ長期政権を維持できるのか。その解に迫りたい。

「55年体制のカムバック」

「一億総軽蔑」に耐えた根性

メルケル首相との違い

解は2つの「政治力学」

 2月21日、安倍晋三首相の連続首相在任日数が吉田茂を抜き、歴代2位となった。「安倍一強」とも揶揄(やゆ)されるが、その反面、国家の指導者が長期政権を担うことは外交上の安定をもたらすという見方もある。他国をみれば、ドイツのメルケル首相は安倍首相をしのぎ、在任期間はすでに13年を超えた。
 メルケル首相は、ベルリンの壁が崩壊する1989年までの35年間を東ドイツという社会主義的な世界で過ごした。それが今や、ドイツ最大の保守政党CDU(ドイツキリスト教民主同盟)史上初の女性党首、ひいてはドイツの首相に上り詰めたことは興味深い。EUの中で最も影響力を持つ指導者としての地位も固めたのである。
 そのメルケル首相が2月初めに訪日した。過去に彼女が中国を訪れた回数は11回、対して日本は5回と少なく、毎度訪中と重ねて日本に立ち寄るのが通例だった。それゆえ、経済成長の著しい中国を国際政治の重要なパートナーとして捉え、その関係構築に精を出す彼女を「親中派」と決めつける報道も散見される。ところが今回、初めて訪問先を日本だけに絞り、自由貿易推進や安全保障分野の情報保護協定の締結に向け大筋合意したことで、ドイツが「対日関係重視」にかじを切ったのではないかと注目を集めた。
 短い滞在期間の中で、彼女は日本の学生との討議を希望し、筆者が在籍する慶応大学を訪れた。欧州は過去10年の間に、ユーロ危機、ウクライナ危機、難民流入、テロの勃発、イギリスのEU離脱など、次々と試練が降りかかる。その中枢でかじを取るメルケル首相だが、そもそも政治的に左右両極が台頭している昨今の民主主義国家において、長期政権を維持することは決して容易ではない。にもかかわらず、13年もの長きにわたり首相を務める彼女は、一体どのような人物なのか。
 当日の討議時間は1時間。冒頭、マイクを渡されたメルケル首相は政治家らしい挨拶をはさむのかと思いきや、「質問は準備してきましたね?  時間が限られているのでさっそく始めます」が第一声だった。限られた時間をすべて学生の質問に応答するために使い、笑いやユーモアを交えることもなかった。ロイヤルブルーのジャケットを羽織り、黒のパンツ姿のメルケル首相に化粧っ気はない。聴衆に媚を売らず、慎重に言葉を選ぶ人柄は「鉄の女」の異名にふさわしい。「攻め」よりも「守り」。長期政権の極意の一端を感じさせる濃密なひと時だった。
 政治学者の待鳥聡史氏は著書『<代表>と<統治>のアメリカ政治』の中で、「代表の論理」と「統治の論理」という2つの政治力学を指摘している。いわく、民に選ばれた代表としてのイデオロギー「代表の論理」と、政府運営者としての行動原理「統治の論理」という相矛盾する2つの論理が、政治を動かしているのだという。
 自国第一主義がはびこる昨今、メルケル首相と安倍首相は、国際政治的にはリベラルな立場とも言えるが、かたや国内では保守派を支持基盤とし、両者ともに長期政権を維持している。二人の政治家は共通して、この2つの論理を巧みに使い分けているのではないか。仮に「代表の論理」に従って、2人が支持基盤である保守思想を前面に押し出してしまえば、現実の政治に対処できないリスクも内包する。だが、この2人は自らの政治信条を抑制し、「統治の論理」というプラグマティズム(実用主義)を織り交ぜることに誰よりも長けているように思える。
 「代表の論理」と「統治の論理」を巧みに融合させることで、安倍首相とメルケル首相は長期政権を実現した。これこそが憲政史上まれにみる宰相、安倍晋三の真価なのかもしれない。(山本みずき)

日本は「努力」が足りない?

「亥年決戦」の先頭に

政権の行方

日本国総理大臣、安倍晋三

みんなの投票

安倍首相の自民党総裁任期のさらなる延長(4選)についてどう思いますか?

  • 賛成

    11540

  • 反対

    139

  • どちらとも言えない

    33