「先住民族」アイヌの次は沖縄だ!
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「先住民族」アイヌの次は沖縄だ!

アイヌを「先住民族」と初めて明記した新法が先月施行された。閣議決定から3カ月、議論が深まらないまま成立した感があり、批判の声も根強い。国連は沖縄の人々も先住民族と認めるよう勧告しているが、沖縄では「独立論」もはびこる。それだけに、振興は重要とはいえ、安易な先住民認定は国家の分断を助長しかねない。

アイヌを「先住民族」と初めて明記した新法が先月施行された。閣議決定から3カ月、議論が深まらないまま成立した感があり、批判の声も根強い。国連は沖縄の人々も先住民族と認めるよう勧告しているが、沖縄では「独立論」もはびこる。それだけに、振興は重要とはいえ、安易な先住民認定は国家の分断を助長しかねない。

なぜ謝罪を拒むのか

確信させたあの言葉

危惧される国際社会の誤解

プーチンを侮るな

先住民の権利って何だ?

 「アットゥイ ソーカッター」。聞き慣れない言葉が耳に入ってきた。東京駅の八重洲口から5分ほど歩いた場所にあるアイヌ文化交流センター。声がする一室を覗いてみると、鉢巻をして着物を羽織った大人の女性と子供が歌っている。「これは何という歌ですか?」。私の質問に「アイヌの歌に名前なんてありませんよ」と教えてくれたのは、自身もアイヌ民族で、同財団の所長代理を務める木原仁美氏。儀式の後などに歌われる「座り歌(アイヌ語で「ウポポ」)」の一つで、冒頭の言葉は「海の上で」という意味だという。元々アイヌは文字を使っておらず、独自の文化は口承により、語り継がれてきた。
 内閣府の調査(平成28年)によると、アイヌの人々やアイヌの文化に触れたことのある人の割合は、24・7%に留まる。ただ、最近は変化もあるようだ。
 「アイヌが登場する漫画『ゴールデンカムイ』がヒットした影響で来場者が増えており、『アイヌの文化がかっこいい』と言ってくださる方もいます。私見ですが、アイヌに対する人々の意識は少しずつ変わってきていて、以前よりも自分がアイヌだということをオープンにしやすくなったと感じています」と木原氏。そんな中、今年4月にアイヌ新法が成立した。アイヌ民族を「先住民族」と初めて明記し、差別の禁止やアイヌ文化の維持・振興のための交付金制度創設が盛り込まれている。
 「一言で言うと、悔しい、悲しいですよ」。新法成立についての感想を求めた私の質問に、電話口でアイヌの清水裕二氏(コタンの会代表)は声を震わせながら答えた。「どこがアイヌのための法案になっているのか、逆に聞きたいです。交付金制度は自治体が喜ぶだけでしょう。国際的な流れに沿ってアイヌを先住民族として認めるらしいけど、それを保障するような土地権や自己決定権といった権利は書いていません。中身がない、絵に描いた餅ですよ」
 国連総会で「先住民族の権利に関する宣言」が採択されたのは平成19年。先住民族の自己決定権をはじめ、土地や資源、文化などの権利の保障が条文化されている。
参院本会議を傍聴するアイヌの人たち=2019年4月19日
参院本会議を傍聴するアイヌの人たち=2019年4月19日
 NGO「市民外交センター」の代表でアイヌの先住民認定に向けた国連での活動を支援した上村英明氏はこう語る。「自己決定権は自治体を越える権利で、極端に言うと独立の権利だったこともあります。しかし、現在の国際社会では乱用が制限されています」
 平成4年の国連総会でアイヌ代表として登壇した北海道ウタリ協会理事長(当時)の野村義一氏は下記のように述べている。
 「私たち先住民族が行おうとする『民族自決権』の要求は国家が懸念する『国民的統一』と『領土の保全』を脅かすものでは決してありません。私たちの要求する高度な自治は、私たちの伝統社会が培ってきた『自然との共存および話し合いによる平和』を基本原則とするものであります」
 一方、アイヌに続けと先住民の認定を目指し、国連への働きかけを続けているのが沖縄だ。上村氏は沖縄の国連活動の支援も行ってきた。「もともと沖縄は琉球で、沖縄県になった経緯を検証すると北海道と共通する部分が多いのです。沖縄の人たちは、戦前の教訓から民族主義を嫌っていましたが、10年ほど前から自己決定権という言葉が沖縄で広がっていきました。そして平成27年、翁長雄志沖縄県知事(当時)は国連で沖縄の自己決定権がないがしろにされていると国際社会に発信したのです」
 国連人種差別撤廃委員会は平成22年に沖縄への米軍基地の集中が「現代的な形の人種差別」と認定し、沖縄の代表者と協議するよう勧告。平成30年には沖縄の人々は先住民族だとして、その権利を保護するよう日本政府に勧告した。ただ、豊見城市議の宜保安孝氏らが「私たちは日本人であり先住民族としての自己認識はもっていない」と主張したように、沖縄の先住民族認定に反対する声もある。
 ともに不遇の歴史を辿ったアイヌと沖縄の人々が、先住民として自分たちのアイデンティティーや誇りを取り戻したいという思いに口を挟むことはできない。しかし、先住民が持つ権利の行使による国家の分断や安全保障上の懸念もやはり払拭できない。
 海外に目を向けると、仏領のニューカレドニアでは、人口の約4割を占める先住民族、カナク系の住民が独立を求めており、反独立派の移民系住民らとの対立が続いている。
 先住民認定の先に危惧される国家の分断は、北方領土問題、中国の海洋進出など、日本の領土保全を脅かしかねない大きな問題に直結している。先住民の権利が拡大する国際的な潮流のなかで、政府は厳しいかじ取りを迫られている。(iRONNA編集部・本江希望)

国連が紹介するアイヌ文化

社会の方向性が決まる

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