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東京福祉大「消えた留学生」の波紋
東京福祉大で発覚した留学生大量失踪の波紋が広がっている。学生数減による苦境に対し、定員のない非正規留学生の大量受け入れが発端だった今回の問題。運営側の特異性も要因だが、留学生に関する法整備や少子化時代の私大のあり方といった課題が改めて浮き彫りになった。深刻さを増す「消えた留学生」問題の真相に迫る。
東京福祉大で発覚した留学生大量失踪の波紋が広がっている。学生数減による苦境に対し、定員のない非正規留学生の大量受け入れが発端だった今回の問題。運営側の特異性も要因だが、留学生に関する法整備や少子化時代の私大のあり方といった課題が改めて浮き彫りになった。深刻さを増す「消えた留学生」問題の真相に迫る。
留学生を育てるということ
梅雨の晴れ間が広がった6月19日。休日は人でごった返す東京・池袋も、平日ともなると人もまばらで違った表情を見せる。駅から数分歩くと、ビルの切れ間から一際目を引く看板が見えてきた。「東京福祉大学」。過去3年間でベトナム人やネパール人などの留学生計1610人が所在不明であることが明らかになり、にわかに注目を集めた大学だ。大学本部の玄関前では職員とみられる男性が四方八方を警戒しており、近づけそうもない。同校は池袋に別館を含め10以上のキャンパスが点在しているため、他をまわってみることにした。
東池袋駅近くのキャンパス前でようやく学生を見つけ、声をかけた。ベトナム人の男子学生は、これからアルバイトがあるらしく、近くにいた同じ東京福祉大の学生たちを紹介してくれた。なかでも日本語が得意だという中国人のユウキさん(21)は、経営福祉を専攻する1年生。「消えた留学生」問題で大学が批判を受けていることについては、表情を曇らせたが、「私たちのクラスは出席しなければ単位をもらえないので、授業を休む人はほとんどいません。先生はやさしいですし、不満はありません」と笑顔を見せた。
文部科学省と出入国在留管理庁の調査によると、東京福祉大の行方不明者1610人のうち1113人は正規過程の準備段階となる学部研究生であり、学部研究生は、授業の開講当初から94人が欠席し、うち66人が所在不明という。同省はこうした留学生に対する不十分な在籍管理や不適切な入学者選考を問題視し、研究生の新規受け入れの停止処分を下した。
もちろん、就学ではなく、就労を目的とした学生を受け入れていたのは東京福祉大に限ったことではない。過去には、日本語学校が留学生に不法就労をあっせんしていた例など、留学生をめぐる教育機関の不祥事は繰り返されている。また、「日本に行けば稼げる」と甘い言葉で学生を誘い、借金を背負わせる留学あっせんブローカーの存在も指摘されてきた。近年、ベトナムからの留学生数は中国に次ぐ2番目になり、それと同時に「出稼ぎ」目的の学生が増えた。その背景として、ブローカーや送り出し機関、日本語学校などが連携する「留学生ビジネス」の存在も大きい。
ただ、就労目的で入学し、学校に来ない学生がいる一方で、真面目に勉学に励む学生やそれを支える教師、支援者がいることも忘れてはならない。
ものつくり大学(埼玉県行田市)に通うベトナム人男子学生、ズンさん(22)はベトナムで1年間、日本語学校で学び、朝日新聞の奨学生制度を利用して来日。その後1年半、日本語学校に通いながら新聞配達を続けた。大学合格後は、出入国管理法(入管法)で定められた留学生が働ける上限「週28時間」以内になるよう2カ所の牛丼チェーン店で調整しながら働いているという。職場については「大変なこともあったけど、楽しいこともあった。よい経験です」と前向きだが、アルバイト収入だけでは生活はギリギリといい、複雑な表情を見せた。大学の話になると「大学は僕の興味に合っていて、ふさわしいです」と、嬉しそうに専攻する総合機械学科の授業で製作した作品をみせてくれた。そして「将来の夢はエンジニア」と、目を輝かせた。
ものつくり大学(埼玉県行田市)に通うベトナム人男子学生、ズンさん(22)はベトナムで1年間、日本語学校で学び、朝日新聞の奨学生制度を利用して来日。その後1年半、日本語学校に通いながら新聞配達を続けた。大学合格後は、出入国管理法(入管法)で定められた留学生が働ける上限「週28時間」以内になるよう2カ所の牛丼チェーン店で調整しながら働いているという。職場については「大変なこともあったけど、楽しいこともあった。よい経験です」と前向きだが、アルバイト収入だけでは生活はギリギリといい、複雑な表情を見せた。大学の話になると「大学は僕の興味に合っていて、ふさわしいです」と、嬉しそうに専攻する総合機械学科の授業で製作した作品をみせてくれた。そして「将来の夢はエンジニア」と、目を輝かせた。

「受け入れ側の日本人がどれだけルールを理解し、留学生を育てていこうという気持ちがあるかどうか。週28時間以上働かせてしまった場合、入管法に触れて、発覚したら双方に罰則が科せられます。そうしたらもう終わりですよ」。こう懸念する黒江さんは、学生たちを見て「ちょっと元気がないな、変だな」と感じたら悩みを聞き、アドバイスをするという。当然だが彼らにとって日本は異国の地。ズンさんのような意欲のある留学生を支援する草の根的な活動は、広がっていくべきだろう。
そもそも一連の問題は、2008年に福田康夫首相が打ち出した「留学生30万人計画」など、受け入れる教育環境や法整備が不十分なまま拡大路線を進めたことが背景にあり、そのしわ寄せが留学生に及んでいる。
東京福祉大の問題を契機として、日本語教育機関の認定基準の厳格化など、政府は留学生による不法就労を防止する対策に乗り出した。加えて、今年4月に改正入管法が施行され、外国人労働政策は大きな転換期を迎えている。一方で、少子化による学生数の減少で経営難に陥る私立大学の対策など、課題が山積している。ゆえに、留学生の教育環境だけでなく、日本で働く外国人を取り巻く環境も含め、受け入れ側のわれわれが実態を理解し、真剣に向き合うことが必要だろう。(iRONNA編集部、本江希望)
※今回のテーマについてiRONNA編集部は、東京福祉大の藤田伍一学長の寄稿及びインタビュー、一連の問題に対する大学の見解などを求めたが、大学事務局は「現在は監督官庁の調査継続中につきお答えは控えさせていただきたく存じます」としている。