「オトコの育休」モヤモヤして何が悪い?
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「オトコの育休」モヤモヤして何が悪い?

育児休業の取得といった、子育てに積極的な男性に対する嫌がらせ「パタハラ」なる言葉をよく耳にするようになった。共働き世帯が急増する中、わずか6%にとどまる男性の育休取得率が象徴的だ。6月には「男性の育休義務化」を推進する自民議連が発足したが、何となく肩身が狭いオトコの育休は変わるのか?

育児休業の取得といった、子育てに積極的な男性に対する嫌がらせ「パタハラ」なる言葉をよく耳にするようになった。共働き世帯が急増する中、わずか6%にとどまる男性の育休取得率が象徴的だ。6月には「男性の育休義務化」を推進する自民議連が発足したが、何となく肩身が狭いオトコの育休は変わるのか?

あの育休宣言から3年

あまりにしらじらしい

下手すればペナルティーに

「男はつらいよ」をもう終わりにしよう

 6月の週末、地域子育て支援拠点「どろっぷ」(横浜市港区)では、梅雨空を吹き飛ばすような元気な子供たちの声であふれていた。この日開催されていたのは「とあるパパの育休報告会」だ。
 「子供たちがびっくりしないぐらいの音量で」と言いながらマイクを握るのは、「男もつらいよ 半人前パパの育休珍道中」というブログで情報発信を続ける主宰者の男性(36)。参加者は「今日から育休スタート」の夫婦、「男性育休の手本に」と勤務する会社の意向で取得した管理職の男性、これから妻と育休を交代し「ワンオペ育児」を始める男性ら約20人が集まった。
※画像はイメージ(GettyImages)
※画像はイメージ(GettyImages)
 男性の育休をめぐっては、6月5日に自民党の有志議員が「男性の育休取得義務化」を目指す議員連盟を発足し、注目を浴びた。議連が目指しているのは、本人の申請がなくても企業側から育休取得を促すことを義務付けるもので、個人に対する義務ではないという。だが、主宰者男性は議連の義務化に否定的だ。「例えば、男性の育休は妻の体調を考慮して出産前後が特に望ましい、とよく言われていますが、私の場合はそれが最適解なわけじゃなかった。家族によって状況が違うだけに、『正しい育休』みたいなものが広がるのは怖い」。実際に、仕事が嫌で育休を取った男性に話を聞いた経験から、「育休の取得率が上がったからって、いい社会になるとは思いません。政府の目標数値を達成すると言うけど、目的と手段が逆転していませんか?」と問題視する。
 厚生労働省の調査(平成30年度)によると、男性の育休取得率は6・16%と増加傾向にあるものの、目標の「2020年までに13%」にはほど遠く、女性の取得率82・2%に比べて圧倒的に低い。また、国連児童基金(ユニセフ)が発表した子育て支援策に関する報告書によると、日本の男性の育休制度は先進国41カ国の中で1位と評価されている一方、取得率の低さが特徴的だと指摘されている。
 では、制度はあっても利用されないのはなぜなのだろうか。「ある種トップダウンみたいなのがあることで日本って動くんじゃないかなって思う。働き方改革だって法律ができてやっとみんな始めたわけでしょ?」。男性育休の啓発活動に取り組むNPO法人ファザーリングジャパン代表理事の安藤哲也氏は、義務化についておおむね賛成だ。10年を超える活動を通して分かったことの一つに、男性が育休を取りづらい要因の変化があった。かつては育休中の経済ロスが壁だったが、補助金が増えても取得率は大して増えなかったという。今は職場環境やマネージメント層の理解が壁となっているといい、「男性の育休取得は社会を変える『一番ピン』。妻の家事育児負担が減ってキャリアが積みやすくなれば女性活躍につながるし、家計収入も増える。男性の長期休暇に職場はどう対応すればいいか分かれば、これから増えるであろう介護離職の予防策にもつながるかもしれない」と期待する。
 最近の男性の育休取得は、大企業の事例が目立つが、日本の全企業の約9割が中小企業であり、従業員数でみても約7割を占める。こうした現状を踏まえ、中小企業のワークライフバランスを支援するNPO法人ArrowArrow代表理事の海野千尋氏に中小企業の現状を聞けば、まだまだ女性からの相談が多いのが現状のようだ。「やっと女性が育休取得後に職場復帰する例が増えてきたところです。多様な働き方ができるよう取り組む企業も増えてきていますが、肌感覚的に、男性の育休取得の広がりはもう少し先ではないか」と指摘する。一方、近年増加しているフリーランスに目を向ければ、制度上、会社員より厳しい子育ての現実がある。一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会代表理事の平田麻莉氏は、「会社員とフリーランスを比べると、出産や育児の際にもらえるお金と出費に約300万円もの差がある」と懸念を示した。フリーランスは法律上個人事業主の扱いのため労働基準法の適用外で、産休や育休もなければ、国からの経済支援も乏しい。「どんな働き方でも、出産育児に伴うセーフティネットは公平であってほしい」と平田氏は強調する。
 こうした育休の問題は、働き方に直結する。働き方が変わらなければ、育休を取得した人も取得しない人も不公平感に苛まれ、悪循環が発生するだけだ。これから大量に出てくるであろう「介護離職」を想像すると分かりやすいかもしれない。これまで通りの働き方ができないから仕事を辞めなくてはならないと言う前に、一度現状を疑ってみるのはいかがだろうか。長時間労働や残業をこなしてこそ一人前、キャリアアップとはイコール管理職、そんな慣習を、多くの男性自身は本当に望んでいるのだろうか。もし、「女性より男性の方が仕事は辛い」と思うことがあるなら、変えるべきは女性の働き方だけではなく、自身を含めた働き方ではないか。男性の育休取得義務化も有効かもしれないが、制度があっても使われない現状を踏まえれば、形骸化しない本質的な取り組みを考えるべきだろう。(iRONNA編集部、中田真弥)

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