「禁煙五輪」パニックは防げない?
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「禁煙五輪」パニックは防げない?

来夏の東京五輪・パラリンピックは「タバコのない五輪」として、関連施設が原則全面禁煙となる。世界標準に照らせば、常識になりつつあり、当然の措置といえるだろう。とはいえ、そもそも五輪はあらゆる価値観を持つ国や地域が参加するだけに、分煙さえ許さない排除は混乱や対立を招きかねない。改めて禁煙問題を考えたい。

来夏の東京五輪・パラリンピックは「タバコのない五輪」として、関連施設が原則全面禁煙となる。世界標準に照らせば、常識になりつつあり、当然の措置といえるだろう。とはいえ、そもそも五輪はあらゆる価値観を持つ国や地域が参加するだけに、分煙さえ許さない排除は混乱や対立を招きかねない。改めて禁煙問題を考えたい。

失われる寛容性

「新鮮な空気」を残そう

規制強化を進めよ

「全面禁煙」に覚える違和感

 「タバコのない五輪」。来夏に迫った東京オリンピック・パラリンピックには、こうしたキャッチフレーズがあるらしい。関連施設は選手村の一部を除いて原則すべて禁煙、分煙できる喫煙スペースも一切ない大会になるという。タバコをやめて15年ほどの筆者にとってみれば「大歓迎」と言いたいところだが、ちょっと立ち止まって考えてみたい。
喫煙禁止地区に指定されている横浜スタジアムの最寄りのJR関内駅周辺=2019年4月、横浜市
喫煙禁止地区に指定されている
横浜スタジアムの最寄りの
JR関内駅周辺=2019年4月、横浜市
 先に述べた通り、筆者は15年ほど前までそれなりのスモーカーだった。記者という仕事柄、待ち時間の暇つぶしにもなるし、取材相手も喫煙者なら間合いをとるには、もってこい。また、特に食事の後の一服はたまらないし、お茶や飲酒時においても然りだ。さらに、考えを巡らすときの切り替えや休憩には非常に重宝した。今でも「やめなければよかった」と思うことがたびたびある。
 それでもやめた理由は、不健康であることはもちろん、喫煙がしづらい社会になったからだ。当時から禁煙の場所が増え、今や健康増進や受動喫煙に関する法整備が進み、路上喫煙禁止の条例化もあいまって、街中で喫煙できる場所を探すのは困難を極める。そもそも、タバコが健康に良くないこと、周囲に迷惑がかかることを認識していない喫煙者はごく少ないだろう。なぜなら、多くの喫煙者は喫煙所と呼ばれる「隔離部屋」のようなコーナーでつつましく吸っている。「禁煙」としている飲食店などで、それを無視して喫煙する人もほぼいない。
 要するに分煙は、かなり浸透しタバコの煙を避けようと思えば可能な環境になったと言ってよいだろう。こうした中で、官公庁や学校をはじめ、五輪関連施設も含め「全面禁煙」が相次いでいることに違和感を覚えるだけだ。筆者は今やタバコが嫌い(特に副流煙)ではあるが、「百害あって一利なし」とは思わない。あくまで大人の嗜好品であり、ルールとマナーを守る以上、喫煙者の立場を理解する余地があってよいと思う。
 言うまでもなく、五輪はスポーツの祭典だが、アスリートだけでなく、観客として楽しむ人たちが来日する。日本より「禁煙先進国」である欧米はもちろん、それ以外の価値観を持つ国や地域からも人が集まるだろう。五輪の「全面禁煙」はすでに常識になりつつあるだろうが、そこに日本独自のルール作りがあってもよいはずだ。筆者はタバコを嗜好する人がいなくなれば、それはそれでよいと思う。ただ、冷静に考えれば、多様性が重視される世の中である。喫煙という嗜好にも寛容な部分があって然るべきだ。少々極端だが、世界中でタバコを嗜好する人がたった一人になったとしても、分煙のあり方を模索する社会こそ「健全な社会」ではないだろうか。
 タバコに関する是非は単なる「喫煙者VS非喫煙者」の対立にとどまらない。非喫煙者であっても考えはそれぞれで、「嫌悪」や「偏見」のほかに、「寛容」や「権利」、「健康」など、さまざまな視点で議論される性質があり、まさに社会の縮図だ。だからこそ、今回のテーマも賛否双方の識者に寄稿を依頼した。「タバコのない五輪」を契機に、賛否両論に触れてもらい、改めて考えるきっかけになれば幸いである。(iRONNA編集長、津田大資)

吸える環境はどこに

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