パワハラ「ザル法」に怒り心頭
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パワハラ「ザル法」に怒り心頭

今年6月に施行される「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」に異論が噴出している。厚労省が指針案で示したパワハラの定義や具体例を詳しく見ると、「抜け穴」だらけで、根絶とは程遠いシロモノとの指摘も多いからだ。一筋縄ではいかない問題であることは百も承知だが、「ザル法」との批判が避けられそうもない。

今年6月に施行される「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」に異論が噴出している。厚労省が指針案で示したパワハラの定義や具体例を詳しく見ると、「抜け穴」だらけで、根絶とは程遠いシロモノとの指摘も多いからだ。一筋縄ではいかない問題であることは百も承知だが、「ザル法」との批判が避けられそうもない。

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 「昔はパワハラ(パワーハラスメント)なんてなかったもんなあ」。連日のようにパワハラ問題が報じられる中、こうしたつぶやきを耳にした人も多いだろう。その言外には「自分だってこれまで上司の厳しい指導やプレッシャーを乗り越えてきた」という思いがにじむ。
 パワハラは2001年にコンサルタント会社が提唱した和製英語だ。各地の労働局などに寄せられたパワハラに関する相談件数は02年度に6600件だったが、18年度に8万2797件と増加傾向に歯止めがかからない。海外でも長らく社会問題化しており、「モビング」「ブリイング」など、動物が獲物を襲うときの行動や、子供のいじめを意味する言葉が使われる国も多い。そのことからも、パワハラが人間社会において容易に根絶できない課題であることが分かる。
 国際労働機関(ILO)で19年6月に仕事上でのパワハラ・セクハラ(セクシュアルハラスメント)を禁じる初めての国際条約が採択され、日本でも同年5月に「パワハラ防止法」が成立した。今年6月から大企業、22年4月から中小企業を対象に、相談窓口の設置といったパワハラ防止対策が義務化されるのを前に、厚生労働省はパワハラに該当する行為の具体例などを盛り込んだ指針案を発表。ただ、その内容が議論を呼んでいる。
 「厚労省が指針案で示したパワハラの定義や具体例は、むしろ相談を控えさせる効果をもたらす可能性があり、法律の本来の目的に反する」。そう語るのは、長年、労務問題に取り組む笹山尚人弁護士だ。指針案では、パワハラを(1)優越的な関係に基づく(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により(3)就業環境を害すると定義し、パワハラに該当する例と該当しない例をそれぞれ示している(表を参考)。該当しない例を提示していることについて批判の声も多く、笹山弁護士によると、容認される例を示すことで両者に誤解を生み、裁判上でも労働者側に不利に働く可能性もあるという。
 指針案に対するパブリックコメント(意見公募)は1カ月で1139件という異例の数にのぼり、さまざまな課題や要望が示されたが、指針案の修正は行われなかった。その一方、パワハラ防止法によって、企業側の責任が大きく問われることになる。パワハラを行う従業員への対応は悩みの種であろう。
 「解決のためには、加害者本人と向き合うことが必要なのではないか」。パワーハラスメント防止協会(東京都千代田区)の田中恵理事長は、パワハラの加害者の更生支援も行っており、問題の根本を指摘した上でこう語った。
 「これまで面談した人は、仕事ができる人がほとんど。個人としての仕事の評価は非常に高く、頭の回転も速い。仕事に関して自分に高い課題を掲げ、クリアしてきているので、部下や相手に対し、同じようなやり方、結果を求めがちだ。自分がこれまで蓄積してきた価値観とズレたとき、乱暴な言動に及んでしまう傾向が見られる。被害者が会社側にパワハラを通報した段階で、人事部やコンプライアンス担当に伝えられると、多くのケースで企業側と推定加害者の間で、衝突してしまう」    
 その理由として田中氏は「加害者側からすれば、会社のため、部下のため、お客さんのため、さまざまな目的をもって自分なりに一生懸命仕事をしてきて、そのやり方を全否定されたと思ってしまう。担当者との間で意見の食い違いが発生し、信頼関係が崩壊し、話し合いもできない難しい状況に陥ってしまいがちだ」と根の深さを強調。加害者との面談で今までどのような人生を歩んできたかといったことなどを聞き、根本的な理由を共に見つけ、前に進むための話し合いをするという。パワハラは許されることはないが、加害者本人を処罰するだけでは解決にはならないという田中氏の言葉が印象的だった。
 パワハラ防止法の施行によって企業の取り組みは変わるが、識者への取材を通じ、それだけでは問題の解決がいかに難しいかを実感した。指針が示されたとはいえ、パワハラは線引きが曖昧なだけに、加害者も被害者も生まない職場をいかにしてつくるかを一人一人が考えていくことが重要だろう。(iRONNA編集部、本江希望)

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