イージス・アショア「白紙撤回」の教訓
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イージス・アショア「白紙撤回」の教訓

河野太郎防衛相が突然表明したイージス・アショアの計画停止は、事実上の白紙撤回だけに波紋が広がっている。ただ、日本のミサイル防衛の在り方を根本から見直す契機と捉えれば、決してマイナスとはいえない。この教訓をどう生かすべきか、森本敏元防衛相と田母神俊雄元航空幕僚長が日本の防衛体制の未来像を説く。

河野太郎防衛相が突然表明したイージス・アショアの計画停止は、事実上の白紙撤回だけに波紋が広がっている。ただ、日本のミサイル防衛の在り方を根本から見直す契機と捉えれば、決してマイナスとはいえない。この教訓をどう生かすべきか、森本敏元防衛相と田母神俊雄元航空幕僚長が日本の防衛体制の未来像を説く。

森本敏元防衛相の提言

田母神俊雄元空幕長が警告

運営組織に問題は?

 河野太郎防衛相が、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると発表した。対北朝鮮などのミサイル防衛はどうすべきなのか。
 河野氏は、迎撃ミサイルのブースター(推進エンジン)が演習場外に落下する危険性を排除できないのが理由だと説明した。ブースターを確実に海上や演習場内に落下させるには、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアの改修が必要で、10年以上の開発期間と数千億円の費用がかかると分かり、計画停止もやむを得ないと判断したという。
 イージス・アショアの配備は防衛計画大綱にも明記されている。では計画停止で代替案はどうなるのか。河野外相は、当面はイージス艦でミサイル防衛体制を維持するという。再利用もしないブースターの回収に期間とコストをかけるのは意味がないと筆者も思うが、イージス・アショアの計画が停止になるのはかなり違和感がある。
 イージス・アショアの配備が予定されていたのは、秋田県新屋演習場と山口県むつみ演習場だ。新屋演習場は海に面しているのでブースターを海に落とすのは問題ない。むつみ演習場は海まで10キロほどあり、演習場内にブースターを落下させると説明してきた。
 はっきりいって、ブースターの落下はイージス・アショアの遂行目的と比較すれば、大した話ではない。イージス・アショアは北朝鮮の核攻撃に対処するものであり、数十万人から数百万人の人命を救う。それに比べると、軽乗用車と同程度の重量数百キロのブースターの落下被害は、山中に軽飛行機が墜落した程度であり、イージス・アショアの防衛による日本全体のメリットとは比較にならないほど軽微だ。
山口県知事らに謝罪する河野太郎防衛大臣(右)=2020年6月21日、山口県庁
山口県知事らに謝罪する河野太郎防衛大臣(右)=2020年6月21日、山口県庁
 各国にもそれぞれ防衛システムがあり、ブースターを使うものも少なくないが、ブースター落下を問題として、配備を見直すというのは聞いたことがないし、そもそも防衛システム配備においてブースター落下は考慮すべき問題ではない。こうした観点から見れば、今回の計画停止の理由としてブースター落下を問題としたことは、今後の防衛システムの構築にあたり禍根を残すのではないかと心配している。
 イージス・アショアの配備は、不手際続きだった。新屋演習場では、住民説明会で間違ったデータを示したり、説明側が居眠りをしていたりと散々だった。そして、むつみ演習場ではブースターを海か演習場に落下させると説明してきたができなかった。
 そもそもイージス・アショアの運営を陸上自衛隊とし、候補地を陸上自衛隊基地で考えてきたことに問題はなかったのか。イージス艦は海上自衛隊なので、イージス・アショアの運営も海上自衛隊が筋だといえる。海上自衛隊基地ならブースター落下を問題とすることもなかっただろう。
 今回の問題を機に、自衛隊の組織問題も再検討すべきではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一、zakzak 2020.06.20)

舞台裏に何が

日米での摩擦

気がかりな「開発力」

イージス・アショア「白紙撤回」の教訓

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