表現者が苦しむ非情なる「ディスタンス」

表現者が苦しむ非情なる「ディスタンス」

新型コロナは多くの業界に災厄をもたらしたが、中でもコアな空間での「息吹」こそを重視する表現者の苦悩も計り知れない。徐々に日常を取り戻しつつあってもクラスター発生の危機に怯え、コロナ以前のように戻れないのが現実だ。今回は、iRONNAに手記を寄せた落語や演劇、芸術に携わる3人の苦悩と新境地をお届けする。

新型コロナは多くの業界に災厄をもたらしたが、中でもコアな空間での「息吹」こそを重視する表現者の苦悩も計り知れない。徐々に日常を取り戻しつつあってもクラスター発生の危機に怯え、コロナ以前のように戻れないのが現実だ。今回は、iRONNAに手記を寄せた落語や演劇、芸術に携わる3人の苦悩と新境地をお届けする。

痛撃を受けた若手

世間とのズレあらわ

怖いのは人に会わない「癖」

PCR検査費用の補助求める声も

 コロナ禍は演劇界に大打撃を与えた。「壊滅」という言葉を使うとすれば4~8月までの演劇界に該当する。演劇界は感染拡大を避けるため、早い時期から公演の中止や延期を決めてきた。
 だが秋に向けて一部に再開のめどが立った。明治座では8月28日から一カ月、氷川きよし特別講演を開催中だ。10月には細川たかし45周年特別公演などが入り、来年1月には五木ひろし、2月には坂本冬美の35周年記念公演も組まれている。
 新橋演舞場では、9月の「舟木一夫特別公演」は中止になったが、11月には大竹しのぶ座長による「女の一生」が控えている。
 8月から公演を再開した歌舞伎座は、厳しい感染予防策を行っている。歌舞伎座の観客席は約1800だが、国のガイドラインに沿って半分以下の約820席を販売。左右前後の間隔を空けて、密を避ける工夫をしている。
 演劇の世界は、演目が決まると出演者やスタッフが2週間以上にわたり稽古を重ね、公演では俳優たちが声を張り上げる。クラスターが発生しやすい環境だ。
大衆演劇場「朝日劇場」の入り口に張られた休演のお知らせ=2020年4月、大阪市浪速区
大衆演劇場「朝日劇場」の入り口に張られた休演のお知らせ=2020年4月、大阪市浪速区
 ライブ配信も多く利用されているように、映像で収益を上げることも必要だ。映像を使った舞台の表現は新しい演劇様式と考えることもできる。
 だが本来の「生の舞台の魅力」が失われるのは否定できない。舞台の空気、俳優のセリフ、観客の拍手など本来の魅力が損なわれる。熱狂的舞台ファンからみれば、配信には目を背けたくなる。
 そもそも演劇は人と人が密に触れることで感動は最大になる。一時は動画配信に希望を託したがソッポを向く演劇ファンも多いとか。
 コロナ禍での演劇活動は続くが、演劇そのものの本質を失うことは許されない。どういう形であれ、「舞台を見る」という基本を守るのは、演劇界の基本でもある。
 劇団は厳しい経営が今後も続く。すでに解散、倒産する中小劇団が出ており、多くの俳優が廃業の道を選んでいる。
 今こそ国はエンタメにも援助が必要だろう。スタッフ、俳優の全員に対するPCR検査の費用を国が全額補助することや、観客数をキャパの50%以内と求めるならば、採算が合う75%までの入場料の差額の補填(ほてん)を求める声がある。
 「2年間頑張る!」。芸能界ではこの言葉が口ずさまれている。絶望ではない。コロナから解放される日を芸能界は願っている。(文化芸能評論家・肥留間正明「緊急リポート ポストコロナの芸能界をいく」ZAKZAK 2020.9.24

韓国では「金のなる木」

伝統芸能にも変化

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