バイデン政権で何が失われるのか

バイデン政権で何が失われるのか

第46代米大統領にバイデン氏が就任した。昨年11月の大統領選以降、トランプ氏の「敗北」を巡って国際世論も激しく揺れた。最たるものは連邦議会議事堂占拠事件や2度目となる弾劾訴追だが、それでもトランプ氏への支持の高さは異例である。バイデン政権によって失われるものは何なのか、改めて考えたい。(写真はゲッティ=共同)

第46代米大統領にバイデン氏が就任した。昨年11月の大統領選以降、トランプ氏の「敗北」を巡って国際世論も激しく揺れた。最たるものは連邦議会議事堂占拠事件や2度目となる弾劾訴追だが、それでもトランプ氏への支持の高さは異例である。バイデン政権によって失われるものは何なのか、改めて考えたい。(写真はゲッティ=共同)

これまでの4年間が台無し

前例のない負け方

首脳会談の実現急げ

 米国でバイデン政権が発足した後、貿易戦争など米中の対立関係に変化はあるのか。日本はどのような役割を果たすことができるだろうか。
 このまま何もなければバイデン政権となるが、そのメンバーの中で別格はジョン・ケリー氏だ。気候変動担当大統領特使というが、副大統領格のような重鎮だ。ケリー氏はオバマ政権の国務長官当時にパリ協定に署名したが、パリ協定に復帰するバイデン政権での気候変動問題担当というのだから、政権の目玉だといえる。
 パリ協定では、温暖化ガス削減目標について各国に義務を課している。温暖化ガスの排出量は2018年時点で世界全体で約331億トンで、内訳は中国27・5%、米国14・8%、インド7・3%、ロシア4・7%、日本3・2%という順だ。上位3カ国で増加分の9割程度を占めており、協定の実施には中国の役割が大きい。
 悪いシナリオとしては、中国がこれを材料に、米国が安全保障面での強硬姿勢を控えるよう取引することだ。中国が環境カードをちらつかせて、米国による台湾などへの武器売却を抑えるという取引が考えられる。ケリー氏は環境を重視し、安全保障をおろそかにする可能性があるので、中国の戦略に乗るかもしれないのだ。
米デラウェア州ウィルミントンで勝利宣言した民主党のバイデン前副大統領(右)とハリス上院議員=2020年11月7日(肩書は当時、AP=共同)
米デラウェア州ウィルミントンで勝利宣言した民主党のバイデン前副大統領(右)とハリス上院議員=2020年11月7日(肩書は当時、AP=共同)
 バイデン政権は、トランプ政権とは違うことをやる可能性があるので、対中政策では、トランプ政権で課した対中制裁関税をやめる公算が大きい。バイデン氏は全米でのマスク着用の義務化を打ち出している。そのためには、中国からのマスク輸入に依存しなければいけないという事情もある。
 ただし、制裁関税以外のところは、まだ不透明だ。中国が軍事技術や知的財産を盗んで、米国の安全保障を脅かしているというロジックは、米議会では常識化しているので、華為技術(ファーウェイ)などの排除という方針は当面維持されるのではないか。
 前述したようなケリー氏による中国の環境カードとの取引のように、対中貿易関係では、バイデン政権はトランプ政権より若干、中国に融和的になるだろう。
 バイデン政権は、人権面では引き続き対中強硬姿勢をとるとみられるので、それを加味すれば、対中路線にはあまり変化が出ないという見方もある。
 ただし、それほど楽観的になれない。というのは、バイデン政権の「人権」はもっぱら米国内向けである。これは、日本の左派にも見られる現象だが、国内向けに人権を重視するだけで、中国の話は無視するかもしれない。実際、バイデン陣営の重要人物は、米国内では人権を主張するが、ウイグルや香港の話をあまりしない。
 こうした点を踏まえると、日本としては、外務省からブリンケン次期国務長官らの「官僚」ルートと、首相からバイデン次期大統領への「政治」ルートを早く機能させる必要がある。
 そのためにも、菅義偉首相はバイデン次期大統領との首脳会談を早期に実現しなければいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一「日本の解き方」ZAKZAK 2021.1.5

分断の「爪痕」大きく

波高き「船出」

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