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もう太陽光には騙されない
2030(平成42)年の「エネルギーミックス(電源構成比)」の議論が佳境を迎えつつある。ところが、その前提となる電力需要の総量に疑義が示されている。つじつま合わせのために、「深掘り」される太陽光などの再エネと省エネが要注意だ。
2030(平成42)年の「エネルギーミックス(電源構成比)」の議論が佳境を迎えつつある。ところが、その前提となる電力需要の総量に疑義が示されている。つじつま合わせのために、「深掘り」される太陽光などの再エネと省エネが要注意だ。
大江紀洋の視点

ところが、その前提となる電力需要の総量に疑義が示されている。分数の分子の議論に集中していたら、分母がおかしかった、というようなものだ。
3月19日の日経新聞の経済教室で、野村浩二・慶應義塾大学准教授はこのように指摘している。
「政府はこの20年以上、コスト負担を顧みることなく、省エネ努力を数量的に積み上げることに腐心してきた。省エネの過大推計は、電力需要の過小推計を導く。そして二酸化炭素排出量を小さく、電力構成における再エネ比率を大きく見せる。ゆえに理想的な政策目標に近づけるには、禁断の果実となる」
世論受けを狙う政治家としては、再エネ比率をできる限り高く見せたい。地球温暖化問題で国際的にアピールしたい政治家としては、二酸化炭素排出量の削減目標を少しでも積み上げたい。しかし、どちらも、どれくらいの国民負担が必要かという現実問題を考えると、頭が痛くなる。だったら分母を小さくしてしまえばいいじゃないかというのが「省エネ努力の積み上げ」なのだ。
3月31日に開催される省エネルギー小委員会では、省エネの見積もりについての議論がなされるようだ。再エネや原子力に関心がある読者の皆さんには、ぜひこのテーマにも関心を持っていただきたい。(Wedge編集長 大江紀洋)
2030年電源構成の青写真

東日本大震災後、国内すべての原発が停止。電力の不足分を穴埋めする火力発電向けの燃料費が増加したため、震災前に比べて電気料金が2~3割上昇した。今後の議論で、火力などと比べて発電コストが安い原子力発電の比率や、再生可能エネルギーをどこまで拡大させるかが焦点になる。

■長期エネルギー需給見通し小委員会(第4回会合) ① ②
経産省指針「原発・水力・石炭で電源6割」

経済産業省は30日、平成42(2030)年の電源構成比を検討する有識者会議を開き、政府がベースロード電源と位置付ける原発、水力、石炭火力による発電量を、全体の6割以上に高めるべきだとの見解を示した。経産省は先進主要国並みの6~9割程度に近づけることが望ましいとした。東日本大震災前は、原発、水力、石炭火力による発電割合が6割程度で推移していた。だが、震災後は原発の停止により約4割に低下している。震災前は原発が電力供給の約3割を占めただけに、ベースロード電源を6割超に高めるには、一定程度の原発活用が不可欠になる。(産経新聞 2015.3.30)