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北方領土問題、解決の糸口
戦後70年が経っても、不法占拠されたままの北方領土。島の状況を把握することは、将来の返還後の対応を考える上で必要不可欠だが、日本には情報がほとんど入ってこない。
戦後70年が経っても、不法占拠されたままの北方領土。島の状況を把握することは、将来の返還後の対応を考える上で必要不可欠だが、日本には情報がほとんど入ってこない。
「日本一の島」はいま
啓蒙CMに批判も
2月7日の「北方領土の日」に合わせて放送された、政府広報の北方領土問題に関するCMがインターネット上で物議をかもした。
放映された「北方領土を描く」篇は「そこは日本なのに。いま日本人が住むことができない場所。ほら、こんなに近いのに」というナレーションに乗せて島民が過ごした風景が描かれていくという、一見して普通の内容。

しかしCMを見たネットユーザーからは「嫌~な雰囲気です」「国民の愛国心煽る目的しか考えられない」「少しぞっとした。静かに何かが始まってる感じ」といった拒否反応から「ロシア語にしてロシアで流せよ」「日本人に向けてやって何の意味があるの?」などと実効性を疑問視する声も。さらには竹島や尖閣諸島のCMも作るように求めるユーザーも少なくなかった。
政府広報は民主党政権時代の事業仕分けによって2010年にテレビ番組が全廃された。平成27年度の政府広報予算では、歴史認識問題をめぐり日本政府による正確な情報発信を強化し、信頼回復を図るために83億400万円を計上、前年度から18億円の大幅な増額となった。
■北方領土問題 「北方領土を描く」篇(政府インターネットテレビ、2015.02.02)
「西の空間」失い東に向く
ロシア、ソ連は「空間の確保」によって、自国の安全を確保しようとしてきた習性を持っている。13世紀から約240年間、モンゴル人の支配を受けた「タタールのくびき」に始まり、ナポレオン戦争、ナチ・ドイツなど二つの世界大戦と攻め込まれた歴史がある。常に国外からの脅威が迫っていると考え、できるだけ国境を外に広げて、その外にさらに広い勢力圏を確保してきた。その犠牲になったのがポーランドやバルト三国であり、旧ソ連のウクライナだった。第二次大戦末期に対日参戦したのも、アジアに空間を広げようとする努力の一環と解釈できるだろう。
ウクライナ問題で、「西の空間」を失ったロシアが北方領土交渉で柔軟姿勢に転じる可能性は少ないだろう。しかし、北大西洋条約機構(NATO)が東方拡大された20世紀末、北方領土問題でクラスノヤルスク合意が生まれた。両首脳の緊密な関係に解決の期待がかかる。2015年はロシアのアジア接近に注目が集まりそうだ。(ビジネスアイ 2014.11.25)