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暴走する習近平
トラもハエも叩く――習近平国家主席が掲げた「反腐敗キャンペーン」も度が過ぎると反発を買う。経済が低成長時代に突入したいま、労働者から見放されたリーダーに巨大国家を率いていけるのだろうか。
トラもハエも叩く――習近平国家主席が掲げた「反腐敗キャンペーン」も度が過ぎると反発を買う。経済が低成長時代に突入したいま、労働者から見放されたリーダーに巨大国家を率いていけるのだろうか。
前田守人の視線

中国の本当の現状と先行き
中国政府は今週に入って中国株暴落の悪影響を止めるために、以前から噂されていた人民元の切り下げに踏み切りました。さまざまな経済メディアでは、中国経済の減速が再びクローズアップされるようになってきています。そこで今回は、中国経済の現状と先行きについて、簡潔に整理して述べたいと思います。
2013年頃から今に至るまで、中国はリーマン・ショック後に実施した4兆元投資の反動に苦しんでいます。将来の需要を無視した過剰な投資により、製造業を中心に供給過剰が慢性化しているのです。その結果として、企業の収益が悪化し、失業者数の増加が社会問題となっています。こうなってしまうと、増やした設備投資を次々と削減していくしかなく、4兆元投資の大半は無駄に終わってしまったといえるでしょう。

習近平体制は成長ペースを徐々に緩めながら、構造改革を通じて7%前後の安定成長の維持を目指しているため、2015年通年のGDPは最終的には7%を少し割れる数字をつくってくることが予想されます。中国政府はこれまで、「格差の拡大を止めるには、7%前後の成長が必要である」と国民に説明してきた手前、本当の数字を出したら民衆の大規模な暴動が止められなくなることを恐れているのです。【関連記事:中国の経済・金融の真相(その1) 2013.6.26】
中国経済の動向を精緻に分析している香港のエコノミストなどは、その多くが中国のGDP統計をまったく信用していません。たとえば、経済活動をより正確に映すエネルギー消費量は、2015年1~6月に0.7%しか伸びていないのです。エネルギー消費量は2011年~2012年には2桁の伸びを記録したにもかかわらず、現在の伸び率はGDPの伸び率から相当かけ離れた数字となっているわけです。その意味では、中国のGDP統計は政府目標を達成したという既成事実をつくるための儀式にすぎないと割り切る必要があるでしょう。(中原圭介の『経済を読む』2015.08.14)
批判高まる情報統制
市民の最大の不満は情報不足だ。事故発生の翌日、現場近くに住む市民のなかに、のどの痛みや目のかゆみを訴える人が多く、インターネットには「爆発で化学物質が空気中に充満している」「雨は猛毒で、あたれば病気になる」といった噂が出回ったが、地元の天津テレビはアニメや韓国ドラマを流し続けた。さらに、現場に駆けつけた消防隊員が倉庫に化学物質が保管されていることを知らされないまま放水したことが、大爆発を引き起こしたとの見方が強まっている。それが事実ならば、現場のずさんな対応が大惨事を誘発したことになる。しかし、対策本部は記者会見で事故原因について口を閉ざしたままで、市民の不信感が高まっている。
また、中国の法律では、危険物専用倉庫は住宅街から1キロ以上離れなければならないとの規定がある。しかし、今回、爆発が起きた倉庫は1キロ以内に複数の大きな団地があり、多くの世帯が住んでいる。倉庫建設の許認可をめぐり、贈収賄などの不正があった可能性がある。倉庫の経営者は天津市の指導者の親族との情報がネットで出回ったが、すぐに削除された。北京などから現場に多くの中国人記者が駆けつけたが、「中国国営新華社通信以外の原稿を使ってはならない」との党宣伝部の通達を受け、彼らが書いた原稿はすべてボツになった。北京の人権派弁護士は「市の中心部でこれだけの被害が出た爆発は人災にほかならない。当局者は責任を逃れようとして、なるべく市民に情報を与えないようにしている」と指摘する。(産経新聞 2015.08.15)
■天津爆発「人災」「情報統制」に不満も爆発 一党独裁国家がたどる崩壊への道(TheLibertyWeb 2015.08.16)