「ドクターX」では救えない地域医療クライシス
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「ドクターX」では救えない地域医療クライシス

『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)が高視聴率を記録し、今年のドラマ界の話題をさらった。主人公、大門未知子の「群れない生き方」に共感する人が多かったとはいえ、現実に目を向ければ、医師ゼロに直面した地域医療が崩壊の危機にある。ドクターXでは救えない僻地医療の「病巣」とは。

『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)が高視聴率を記録し、今年のドラマ界の話題をさらった。主人公、大門未知子の「群れない生き方」に共感する人が多かったとはいえ、現実に目を向ければ、医師ゼロに直面した地域医療が崩壊の危機にある。ドクターXでは救えない僻地医療の「病巣」とは。

南相馬を救った一人の常勤内科医

「僻地勤務の義務化」などもってのほか

「無駄死」するだけ

臨床医の人格形成には有効

「赤ひげ先生」を求めて

 地域に密着して住民の健康を支えてきた医師の功績を顕賞する「日本医師会 赤ひげ大賞」の表彰式が2月10日、皇太子さまご臨席の下に行われた。5回目を迎えた今回は、会場に多くの医学生の姿があったのが印象的であった。
 赤ひげ大賞は筆者が発案し、趣旨に賛同した日本医師会幹部の協力によって誕生したものだ。最先端医療や専門性の高い医療を目指す医師は多い。だが、そうした医師だけでは患者は救われない。地域住民の暮らしを知り、あるいは離島や寒村に身を投じる“医師魂”に光を当てたいとの思いが始まりであった。
 理由はそれだけではなかった。医師の使命は目の前の患者を助けることだけではなく、住民の健康管理も重要だ。企業も学校も医師なくしては立ち行かない。人々が不安を感じることなく生活を送ることができるのも、「いつでも医療を受けられる」という安心感があってこそだ。
 人口減少社会においては、医師のいない地域の存続はなおさら危ぶまれる。赤ひげ大賞のもう一つの大きな意義は、地域医療を目指す医師を一人でも増やすことにある。
テレビドラマ化された人気漫画「Dr.コトー診療所」のモデルとなった薩摩川内市下甑手打診療所の瀬戸上健二郎前所長
 安倍晋三政権は地方創生の方策として企業や国の機関の地方移転、東京における大学の新増設の抑制などを打ち出しているが、うまくいっているとはとても思えない。それよりも、地域で頑張る医療機関をどう存続させていくかを優先して考えるべきだ。
 高齢社会を乗り切るには「医療を中心とした町づくり」という視点が欠かせない。高齢社会を迎えて医師の高齢化も進んでいる。これらを考えあわせれば、地方創生の成功のカギは“赤ひげ先生”が握っていると言ってもよいだろう。
 政府は現在、医師不足や偏在対策として、都道府県単位で病床の機能転換や病院同士の連携を図る地域医療構想を描いている。75歳以上が激増する2025年以降をにらんで、地域ごとの疾病構造の変化や患者数といった医療需要を予測し、それに対応し得る医療提供態勢を整えていこうというのだ。
 住み慣れた地域で在宅医療や介護が受けられる「地域包括ケアシステム」へとつなげていくことも念頭に置いている。だが、それも地域に“赤ひげ先生”がいてこそできることだ。医療の提供態勢を整えるにあたって、医療機関の施設・設備を立派にしたり、医師数を増やしたりするだけでは事足りない。患者も高齢化するからだ。今後は医療機関にたどりつくのに苦労する人が増える。
 少しの段差を負担に感じ、電車やバスの乗降に不自由さを感じる。「地域の足」がなくなった地区では外出自体が簡単ではない。ますます、地域内における「かかりつけ医」の役割が重要となる。
 赤ひげ大賞を受賞した5人の医師は、単に病気を治すだけではなく、住民の暮らしに寄り添い「地域において、なくてはならない存在」となってきた。こうした医師をどう増やしていくのか。これこそ、地方創生のみならず医療を考える上で根幹をなすテーマである。(産経新聞論説委員・河合雅司、産経ニュース 2017.3.11

「地域枠」で奮闘する若い力

「医師ゼロ」は救えるか

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