このままではヤバい「2020大学入試改革」
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このままではヤバい「2020大学入試改革」

2020年、日本の教育はターニングポイントを迎える。教育改革という旗印の下、大学入試センター試験に代わって、「大学入学共通テスト」の導入が決まったからである。知識を詰め込むだけの受験勉強では乗り切れなくなるとのことだが、あの看板倒れに終わった「ゆとり教育」と同じ轍を踏むことにならないか。

2020年、日本の教育はターニングポイントを迎える。教育改革という旗印の下、大学入試センター試験に代わって、「大学入学共通テスト」の導入が決まったからである。知識を詰め込むだけの受験勉強では乗り切れなくなるとのことだが、あの看板倒れに終わった「ゆとり教育」と同じ轍を踏むことにならないか。

「ゆとり一期生」からの警告

「求められるもの」が激変する

今のままでいいじゃないか

欧米のトレンドに逆行

想定外になりがちな教育改革

1979年1月、初の共通一次試験がスタート。受験生はいっせいに
鉛筆をにぎりしめ、マークシート方式の問題に取り組んだ
=大阪・豊中市の大阪大学
 2021年1月から現行の「大学入試センター試験」にかわり、「大学入学共通テスト」が実施される。昨年末、試行調査のための問題が公表された。従来の知識と技能中心の学力から、これからの社会に必要な「新しい学力」にそった入試改革である。いままでのセンター入試では問われることが少なかった思考力や判断力、表現力、さらに主体性、多様性、協調性を問う試験改革とされている。
 今回の共通テストの要になっている「新しい学力」の提唱は、1989年の学習指導要領の改定から始まった。2007年の改正学校教育法において「課題を解決するための思考力・判断力・表現力」と「主体的に学習に取り組む態度」を養うと規定された。しかし、肝心のセンター入試が新しい学力を測定するには不十分との判断から、共通テストの導入になったわけである。大学入試が変わらなければ、新しい学力もかけ声だけに終わる。その意味では、大学入試改革は、出るべくして出てきたとはいえる。だが、思惑どおりに事が運ぶのか。それどころか、想定外の影響や結果が表れることはないのか。そのように言うのは、これまでの入試改革がそうであったように、教育改革は想定外の影響をもたらし、ともすると、初期の理念とまったく逆の結果になってしまうことが多いからである。
 1979年から実施された共通1次試験もそうだった。これで入試地獄がなくなるかのような幻想を抱かせながら導入されたが、入試地獄はなくならなかった。それどころか、むしろ大学の序列化が進行し、固定化した。入試地獄の部分的解消は、共通1次試験や後継の「大学入試センター試験」とはまったく別の、少子化という人口現象によるものだったことは今では誰の目にも明らかである。今回の大学入試改革もそのような想定外の影響や結果をもたらさないとはいえない。そこで、知識・技能の部分を基礎学力と呼んで、新しい学力の提唱による影響や結果をみていきたい。共通テストの実施で完成するかにみえる新しい学力への誘導は、基礎学力上位層と基礎学力中・下位層によって違った影響と結果をもたらすのではないだろうか。
 基礎学力上位層は基礎学力が土台にあって、そのもとに思考力や活用力が展開されるし、思考力や活用力を錬磨することで基礎学力の奥行きが深まるととらえやすい。入試改革の理念の意図どおりの影響がありうる。ところが基礎学力中・下位層では、知識や技能(だけで)は新しい時代に適応できないという雰囲気に惑わされることにはならないだろうか。人間は自分の都合の悪いことはスルーし、都合のよいことに食いつき、改変するからだ。この層に知識・技能の習得という地味な努力の軽視が起こりやすくなることを懸念するものである。
 実際、新しい学力観にもとづいて学校は討論型授業、総合学習、体験学習などをそろえた。コミュニケーション能力などが新しい学力だとされ、従来型学力では、21世紀社会を生き抜き、社会を機能させていくことは不十分であるとされた。その頃から大学では、次のようなことが起こっている。新入生のための基礎ゼミで本を読ませようとすると、こんな反応が返ってくることがある。「先生、本など読むよりディスカッションにしましょうよ」。なるほど「新しい学力」世代の学生は総合学習などで話し慣れし、大勢の前で臆せず自分の意見を言う。昔の学生と大違いである。しかし、基礎知識が十分でないところで社会問題を論じるから、井戸端会議か雑談の類いになりがちである。
 明治以来、日本の教育は、江戸時代に培われた読み書き算盤(そろばん)(算術)にはじまる基礎知識・技能を万人に身につけさせることに腐心してきた。そのことで世界に抜きんでた厚みのある優秀な勤労者を育ててきた。この日本の強みを水に流してしまうことがないように注視していきたいものである。(社会学者・竹内洋「正論」、産経ニュース 2018.02.13

入試「大改革」を解説

「正解」が正しいとは限らない

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