
180
ある意味どえらい「カジノ法案」
政府が今国会の成立を目指しているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の議論があまりにひどい。「週3回、月10回以内」「入場料6千円」といった具体案がようやく提示されたが、いずれもギャンブル依存症対策とは名ばかりの内容と言わざるを得ない。こんな法案でホントに大丈夫か?
政府が今国会の成立を目指しているカジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の議論があまりにひどい。「週3回、月10回以内」「入場料6千円」といった具体案がようやく提示されたが、いずれもギャンブル依存症対策とは名ばかりの内容と言わざるを得ない。こんな法案でホントに大丈夫か?
目指すのものを間違えた日本のカジノ
紆余曲折の末、ようやく日本にもカジノが出来ることになった。せっかく作るなら世界に通用するカジノでなければならないが、そのためにはどうすればいいか考えてみたい。今回注目するのは日本人が陥りがちな悪い癖。その一つが本来の目的を見失ってしまうことだ。
五輪のメーン会場となる新国立競技場を思い出していただきたい。当初、世界一の競技場をアピールしていたので、どんな世界一かと思いきや、防犯や防災のハイテク技術の見本市のような構想となり、本来の目的である陸上競技場としての機能が後回しにされていた。やがて国民からの大ブーイングを受け、一からやり直す羽目になった。だが笑ってはいられない。カジノでもその気配があるからだ。
政府はこの夏、カジノ法案の元となる素案「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ」を発表したが、その中で打ち出されたのが「世界一厳格なカジノ」という方針だ。その柱が、カジノ運営会社に対する「厳格な参入規制」と、客への「厳格な入場規制」で、問題は後者のほう。日本人ならびに日本在住の外国人の入場の際にマイナンバーカードの提示を義務づけた上、1万円とも噂される入場料を課すというものだ。身のまわりのカジノファンに聞いたところ、そんなカジノには誰一人として行きたがらないし、高い入場料を取られるくらいならマカオや韓国に行くという。

関係者が言うには、これによってギャンブル依存症を防ぐ効果があるというのだが、世界のカジノで、高額な入場料がギャンブル依存症防止に効果をあげた例は聞いたことがない。そればかりか、シンガポールでは約8000円の入場料を取り返そうとしてハマるなど、逆にギャンブル依存症を招くという指摘まである。ハッキリ言って目指すものを間違えている気がするが、この規制が影響を及ぼすのは日本人客ばかりではない。ぼくもこれまで色んな国のカジノに行った。国や地域によってカジノの特色が異なり、違う面白さがあるからだが、その中でも最も楽しみなのは現地の人たちと一緒に遊ぶことだ。
ラスベガスではいかにも数字に強そうなアメリカ人と出くわすことがあるし、マカオではいかにも何も考えてなさそうな中国人に取り囲まれ、札束の嵐に見舞われたりする。ドイツでは楽しんでいるのかどうか怪しいほどニコリともせず黙々と賭けている人がいる。各地のカジノに行くのは、こうした現地人と一緒に遊ぶ楽しみがあるからだ。実をいえば、アジアのカジノは今やどこもかしこも中国人だらけである。そんな中で、日本のカジノが日本人の入場を規制したらますます中国人だらけになる。そうなればもはや日本に来る意味はなく、便利でユルいシンガポールでいいじゃないかということになる。
日本政府は、カジノによるインバウンド増を期待するが、そうであるなら、日本人がたくさん入っているカジノにすべきであり、過剰な入場規制は再考を求めたい。(作家、松井政就「新・カジノ情報局」zakzak 2017.11.5)
コメントを入力
返信を入力