西部邁「自殺の死生観」の罪と罰
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西部邁「自殺の死生観」の罪と罰

「おのれの生の最期を他人に命令されたり弄り回されたくない」。今年1月に自殺した保守論客、西部邁氏は遺稿の中でこう綴っていた。西部氏の自殺に絡み、私淑の2人が幇助容疑で警察に逮捕されたが、彼らはなぜ罪を犯すまで心酔したのか。西部邁が遺した「死の哲学」を問う。

「おのれの生の最期を他人に命令されたり弄り回されたくない」。今年1月に自殺した保守論客、西部邁氏は遺稿の中でこう綴っていた。西部氏の自殺に絡み、私淑の2人が幇助容疑で警察に逮捕されたが、彼らはなぜ罪を犯すまで心酔したのか。西部邁が遺した「死の哲学」を問う。

「知行合一」の実践だった

それは絶望だったのか

心理学者が読み解く

時流におもねらない論客

西部邁さん=2012年12月(桐原正道撮影)
 西部邁(すすむ)さんが、亡くなられた。本当にびっくりした。西部さんとは、長いつきあいだった。僕が「朝まで生テレビ!」を始めた1987年のことだ。当時、日本の学者、評論家、ジャーナリストのほとんどが左翼であった。メディアもそうだ。「朝日新聞」は言うまでもないが、「読売新聞」「産経新聞」までもが左翼だった。そんな状況のなか、西部さんは数少ない「アンチ左翼」だったのだ。
 「民主主義がヒトラーを生み出した」と、彼はよく口にした。だから「民主主義は危ない」と考えていた。そういうことを堂々と言える、唯一といっていい論客だった。「大衆というのは戦争が好きだ」「人は差別するのが好きだ」とも言っていた。だから、満州事変、日中戦争が起きたとき、どの新聞も戦争を歓迎した。当時、言論弾圧はなかった。それにもかかわらず、むしろメディアは戦争を煽ったのである。それは今も同じだ。だから、中国、韓国の悪口を書くと受けるのだ。だから、在日韓国人への偏見がある。だから、西部さんは、こうした意見を堂々と言う、ラジカルな人だった。
 「朝生」に出演依頼をしたとき、僕は西部さんに、「悪役だけど出てほしい」とお願いした。他の出演者は、みな左翼だったからだ。でも、僕のこのひどい依頼を、すんなり快諾してくれた。今でも本当に感謝している。その後、世の中はすごい勢いで変わった。どんどん変わって、今はだいぶ右側に寄ってきている。世の中の流れに乗る人はたくさんいる。そんななかでも、西部さんはまったく揺るがない人だった。時流におもねらない人物だった。
 昨年4月の「朝生」30周年のパーティにきて、挨拶をしてくれた。10月、僕の文化放送のラジオ番組にも出てくれた。そこで、今の日本のあり方を痛烈に批判していた。しかし、2014年に奥さんを亡くされてからは、ずっと落ち込んでいたようだ。脳梗塞とガンを患い、体調が悪いとこぼしていた。「死ぬときは自殺する。自分でケリをつけたい」ともおっしゃっていた。
 かつて、評論家の江藤淳さんも自ら命を絶たれた。「自分でケリをつける」という、西部さんの気持ちは理解できないこともない。だが、まさか、ほんとうに自殺されるとは…。「安倍内閣は対米従属だ。日本人としての誇りを失っている。インチキだ」と、西部さんは言い切っていた。そんな誠に強烈な「個性」が、今の日本から失われてしまったことを、僕は残念に思う。ご冥福を祈ります。僕は、もっとあなたと議論をしたかった。(田原総一朗ブログ 2018.02.01

精神の病か、社会の問題か

西部邁が語った死生観

論壇に広がった虚無感

西部邁「自殺の死生観」の罪と罰

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