松井一郎手記「安倍総理は敵じゃない」
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松井一郎手記「安倍総理は敵じゃない」

大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」をめぐり、逆風に立つ大阪府の松井一郎知事がiRONNAに手記を寄せた。今秋の住民投票実施は見送られたが、一度は否決された構想への抵抗感は強く議論は紛糾。安倍首相の発言も重なり、構想の先行きは不透明だ。渦中の松井氏は今、何を思う。

大阪市を廃止して特別区に再編する「大阪都構想」をめぐり、逆風に立つ大阪府の松井一郎知事がiRONNAに手記を寄せた。今秋の住民投票実施は見送られたが、一度は否決された構想への抵抗感は強く議論は紛糾。安倍首相の発言も重なり、構想の先行きは不透明だ。渦中の松井氏は今、何を思う。

「政治に百点満点はない」

そもそもネーミングが悪い

安倍政権に足りない視点

都構想に経済効果というウソ

 経済効果は通常、企業誘致やイベントなど新たな需要に対して計算されるものだが、大阪では現在、都市制度と経済効果を関連づけようという動きがある。今年に入ってから松井一郎府知事ら大阪維新の会は、大阪市を廃止して特別区を設置する、いわゆる大阪都構想の経済効果を算出しようと躍起になっている。なぜなのか。じつは、都構想のメリットを訴えようにも、訴えられるようなメリットがなく手詰まり感が出ているからである。
大阪維新の会の全体会議であいさつする松井一郎代表(中央)と吉村洋文政調会長(右から2人目)ら=2018年4月3日、大阪市中央区(鳥越瑞絵撮影)
大阪維新の会の全体会議であいさつする松井一郎代表(中央)と吉村洋文政調会長(右から2人目)ら=2018年4月3日、大阪市中央区(鳥越瑞絵撮影)
  大阪市では2年前に引き続き、都構想議論が再燃している。ただ2年前と違うのは、現行の24行政区を再編して、さらに予算と権限を増やす「総合区案」が都構想と比較検討されていることだ。ところが、両者のコストを計算してみたところ、総合区の初期費用は約62億円なのに対して、都構想はその約10倍もかかってしまうことが判明。焦った松井府知事らは都構想の経済効果を弾き、兆円単位の景気のいい数字を出すことで形勢逆転を狙ったわけである。 
  ただし、松井府知事らの思惑とは裏腹に、大都市の再編で行政の効率化やコスト削減を金額で表すことはできても、企業誘致などの経済効果と違い、都市制度の変更で経済効果をシミュレートするのは至難のワザだといえる。事実、都構想の経済効果を第三者に出してもらおうと大阪市は今年1月、シンクタンク向けに入札による業務委託をおこなう予定だったが、締め切りの2月7日になっても応募者はゼロ。大阪市の内部から聞こえてくる話では、この入札の説明会に来るのは小さなシンクタンクばかりで、大手はすべて尻込み。多くのシンクタンクは敬遠している有り様なのだ。
  そもそも、大阪市が廃止されて特別区ができ、大阪市の一部権限が大阪府に移ったところで、それだけでは経済効果は発生しない。そこには必ずアグレッシブな政策、企業などを誘致するための政策が不可欠だからだ。そのため都構想の経済効果を数値化するには、この政策を立案する府知事などの属人性や実現可能性といった、きわめて抽象的なものまで変数として組み込む必要がある。おまけに、それらの政策を提案された議会はすんなりOKなのか、地元住民の同意は得られるのかといった様々な仮定まで複雑に入り込んでしまう。
  このように、都構想の経済効果を計算しようにも前提や仮定が複雑怪奇に絡みすぎ、企業誘致のように単純に計算できるものではない。私は今回、大学で公共政策学や財政学を教える複数の大学教員にも話を聞いたが、いずれも同じ結論だった。都構想の経済効果を計算するのは、実は地震の完全予知並みに難しいのだ。
 かつてこの試みにチャレンジした政令市がある。都道府県と同等の権限と予算を持つ「特別自治市」への昇格を提唱している横浜市だ。横浜市では以前、その経済効果のシミュレートを大手シンクタンクに依頼。その結果、約5兆円の経済効果があると試算し、この数字を大々的に宣伝した。
  ところが横浜市は東京都に近く、首都の経済効果を受ける度合いも大きいことに加え、「せっかく出してきた経済効果には仮定の話が多いため客観性に疑問符がついた」(横浜市の事情を知る大阪市幹部)という。そのため横浜市もその後、この経済効果についてはあまり表に出さなくなったようである。
  横浜市の事例以外にも、道州制の経済効果といった研究はあるが、まだ確立した手法には至っていない。AI(人工知能)が極度に発達した未来はともかく、現段階において都構想の経済効果を測るのは、繰り返すが地震を完全予知するほど困難である。それでも諦めないのが松井府知事と大阪市の吉村洋文市長で、大阪市では金額や納期などの公募条件を変えて再公募をおこなう予定なのだという。
  とは言え、こんな難題を押しつけられた大阪市の担当者も気の毒だ。「経済効果を出せ」と命令された副首都推進局では、「そんなもん、どうやったらできるんや?」と頭を抱えていると聞く。
 経済効果のなんたるかを知っている者からすれば、大阪都構想の経済効果を弾き出すのは裸でエベレストに挑むようなもの。入札の結果が「応募者ゼロ」という赤っ恥も、きわめて当然の結末というわけである。(ジャーナリスト、吉富有治 大谷昭宏事務所Webコラム 2018.2.15

投票の行方「宿敵」が解説

避けられない「選択」

実際にはない地方の「自治」

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