ここが足りないニッポンの都市防災
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ここが足りないニッポンの都市防災

最大震度6弱を観測した大阪北部地震は、都市防災の弱点を改めて露呈した。ブロック塀の倒壊で女児が死亡した事故は、まさに「人災」とも言える悲劇だった。帰宅困難者の大量発生、人口密集地域で寸断されたライフライン…。さらなる都市直下地震の発生に私たちはどう備えるべきか。

最大震度6弱を観測した大阪北部地震は、都市防災の弱点を改めて露呈した。ブロック塀の倒壊で女児が死亡した事故は、まさに「人災」とも言える悲劇だった。帰宅困難者の大量発生、人口密集地域で寸断されたライフライン…。さらなる都市直下地震の発生に私たちはどう備えるべきか。

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 突然猛威を振るう自然災害は、人々が築きあげてきた日常をいとも簡単に壊してしまう。だが、それに立ち向かう人々の献身的な姿を見ると、普段当たり前のように享受している利便性が多くの人によって支えられていることを改めて実感させられる。
 6月18日午前7時58分に発生したマグニチュード(M)6・1の大阪北部地震は、まさに都市直下型だった。時間の経過とともに、ライフラインや交通網の寸断が明らかになり、都市部の脆弱さが浮き彫りになった。
 東京駅から運行を再開して間もない新幹線に乗り、新大阪駅に着いたのは午後10時すぎだった。地震発生からすでに14時間、地下鉄が運転を再開していたこともあり、混乱はほぼ終息していた。だが、ほんの数時間前まで主要駅にはタクシー待ちなどの人があふれていたといい、2011年の東日本大震災発生直後の東京都内と同じ混乱が起きていた。こうした混乱は、どの会社も地震発生などがあると、従業員を早く帰宅させるため、乗客が集中してしまうことから混乱が生じてしまう。帰宅時間の分散やむやみに出社させないなど、帰宅困難者を大量発生させないためのガイドラインを早急に検討し、共有すべきだろう。
 午後11時すぎ、予約していた大阪市淀川区のホテル着くと、エレベーターの復旧作業員とすれ違った。ホテルからエレベーターが使えないと聞いていたが、ちょうど復旧したばかりだったようだ。だが、翌朝、最も被害が大きかった高槻市に行くと、ライフラインの復旧は難航していた。特に遅れが目立ったのは、ガスの復旧だ。6月21日時点でガスが停止した世帯は11万件に達し、すべての復旧まで約1週間かかるという。
 高槻市に隣接する茨木市の市民体育館では、大阪ガスによるカセットコンロとガスボンベの無料配布に大勢の住民が集まっていた。茨木市では、総住宅数の約半分の6万戸でガスが停止していた。整理券を手にし、配布を待つ60代の女性は「昨日、配布を24時間受け付けしていると聞いて朝8時に来たのに、12時から配布するからまた来てくれって…」と、疲れた表情を見せた。女性によると、住民が整理券を出すようガス会社に求めたところ、整理券を渡しても配布を確約できないと説明していたが、結局配布されることになったという。整理券を受け取らずに帰った人も多く、「混乱時に確実な情報を得るのは難しい」と40代の女性はため息まじりにつぶやいた。
ガスコンロ配布の整理券を受け取る住民=2018年6月20日、大阪府茨木市(川畑希望撮影)
ガスコンロ配布の整理券を受け取る住民=2018年6月20日、大阪府茨木市(川畑希望撮影)
 配布については市と大阪ガスがホームページでそれぞれ発表したが、情報が統一されていなかったことが混乱を招いたようだ。また、インターネットを利用しない住民には伝わらなかった可能性も高い。地震発生後の混乱した状況下でいかに正確でスピーディーに情報を平等に伝えるか。そして情報格差についても深刻な課題だ。
 そもそも被害の大きい地域の都市ガスの復旧に時間を要する理由は、道路のガス管の検査をした上で各家庭を訪問するなどの手順が必要だからだ。ガスの開栓作業にも同行したが、地道な作業が行われていた。作業員は2人1組になって住宅を回る。まず、呼び鈴を鳴らして住人の在宅を確認する。ガスメーターのボタンを押して、圧力が下がらなければガス漏れの心配はない。ガスが問題なく使えることを住人が確認して作業が終了となる。外からメーターが操作できる場合は住人不在の場合でも作業する。住人がいる場合は8分、不在は4分かかる。この日、彼らは200戸を担当、全体で約5000戸の復旧作業が進められた。「テレビで25日に復旧すると知ってガスボンベを買ったばっかりだったけど、やっとお風呂に入れるようになってうれしい」と50代の女性は笑顔を見せた。
 大阪北部地震は、都市部の課題を改めて浮き彫りにしたが、それだけではない。小学4年の女児が小学校のブロック塀の下敷きになり死亡した事故は、これだけ対策が進む中で見落とされていたために起きた。ブロック塀崩壊は、建設基準などを満たしていれば防げただけに、「人災」として責任の所在の追及が続く。現場近くの献花台にいた70代の男性は「本来ならあの女の子は死なずにすんだはずだ。二度とこんなことが起きないようにちゃんと国家で予算を組んで整備してほしい」と涙ながらに訴えた。今回の事故はブロック塀の倒壊で18人が死亡した宮城県沖地震の教訓が生かされなかったと言われるが、今度こそ国を挙げて脆弱で危険な建築物の一掃に取り組まなければならない。
 当たり前だが、地震はいつどこで起きるかわからない。そして、起きるたびに何不自由ない便利な日常生活のもろさと思いがけない対策の盲点があることを思い知る。ただ、地震大国の日本にいる限り、犠牲者や被災者の思いを受け止めつつ、地道な問題提起と対策を続けていくしかないのだろう。被災地を取材しながら強くそう思った。(iRONNA編集部、川畑希望)

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