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北朝鮮非核化、日本はそれでも負担すべきか
「払うのは日本と韓国」。先の米朝会談後、トランプ大統領は北朝鮮の非核化費用負担についてこう言い放った。安倍首相も早々と負担を受け入れる意向を示したが、拉致問題の進展が見えない中で日本がなぜ負担しなければならないのか。多くの日本人が疑問に思う非核化負担の是非を考える。
「払うのは日本と韓国」。先の米朝会談後、トランプ大統領は北朝鮮の非核化費用負担についてこう言い放った。安倍首相も早々と負担を受け入れる意向を示したが、拉致問題の進展が見えない中で日本がなぜ負担しなければならないのか。多くの日本人が疑問に思う非核化負担の是非を考える。
繰り返された「空約束」
北朝鮮は何度となく国際社会を欺き、核開発を継続してきた。今回の約束が履行されるか否かは、いまだに分からない。この後、何が起ころうともおかしくはない、不安定な状況にあり続けていることを閑却(かんきゃく=いい加減に放っておくこと)すべきではないだろう。
政治という営みで重要なのは、政治的選択のもたらした結果である。素晴らしき結果を約束する言葉を、安易に信じるべきではない。結果なき言葉は、ただの空約束に過ぎないからだ。そして、北朝鮮の独裁者は「非核化」という空約束を繰り返してきた。その度に、国際社会は狂喜乱舞したが、結局は欺かれ続けてきた。こうした事実を、決して忘れるべきではない。

国際社会が欺かれ続けてきた表徴の1つが、北朝鮮の憲法だ。2012年4月、北朝鮮の最高人民会議で憲法改正が行われ、故金正日(キム・ジョンイル)総書記の功績をたたえる文言が憲法に書き加えられた。北朝鮮の憲法では、「祖国を政治思想強国、核保有国、無敵の軍事強国に変えた」ことが正日氏の偉業とされている。
憲法で「核武装国家」と規定されているのが北朝鮮なのだ。北朝鮮において「立憲主義」を守り抜くためには、核武装国家であり続けなければならないということになる。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の父であり、祖国の指導者とたたえ続けてきた正日氏の偉業とされるのが「核武装」だ。「核保有国」としての立場を捨てることは、正恩氏の政治的正統性を揺るがしかねない選択である。
偉大なる指導者の「核保有」という選択が誤ったものであったことを認めさせるのは、容易なことではない。今回、正恩氏は「朝鮮半島の完全な非核化に向けた、固く揺るぎない決意」を確認したというが、独裁者が「決意」を「確認」したと表明しただけで、平和は訪れない。確実に非核化を実施したのでなければ、平和は訪れないのである。
現在、米朝首脳会談を評価すべき時期ではない。歴史だけが、この会談を評価できる。今、われわれにできることは、北朝鮮が「完全な非核化」を実施するのか否かを、厳しく監視し続けることだ。(大和大学専任講師、政治学者・岩田温、zakzak 2018.06.14)
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