「オール沖縄」ってなんだ!?
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「オール沖縄」ってなんだ!?

翁長雄志前知事の急逝に伴う沖縄知事選がきょう投開票される。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設の是非が最大の争点となった構図は前回と同じだが、そういえば4年前ほど「オール沖縄」の合言葉が聞こえてこない。そもそもオール沖縄とはどんな組織なのか。現地リポートも交え、実態に迫る。

翁長雄志前知事の急逝に伴う沖縄知事選がきょう投開票される。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設の是非が最大の争点となった構図は前回と同じだが、そういえば4年前ほど「オール沖縄」の合言葉が聞こえてこない。そもそもオール沖縄とはどんな組織なのか。現地リポートも交え、実態に迫る。

「オール沖縄-おきなわ=?」

二つの側面を持つ

「保革共闘」の土壌

「オール沖縄」は自壊した

 沖縄知事選を一週間後に控えた那覇市内。若者が企画したという玉城デニー氏の支援集会を取材した。会場にはDJブースが設けられ、まるで音楽イベントのような演出である。満面の笑みで登場した玉城氏は、音楽に合わせて体を揺らし、マイクがハウリングすれば自らアンプを調節する。手慣れた様子に、会場のボルテージも上がる。元衆院議員でありながら、元タレントの肩書も持つ玉城氏は、今年8月に急逝した前知事、翁長雄志氏の後継候補として出馬した。いつも険しい表情だった翁長氏とは対照的な人柄が垣間見える。 
翁長雄治那覇市議=2018年9月23日、沖縄県那覇市
 集会には、翁長氏の次男で那覇市議の雄治氏も応援弁士として駆けつけた。すると、突然さーっと雨が降り始めた。天気雨である。「翁長さんが来てくれましたね」。司会者の女性がさりげなく言う。よもやそんなことはないだろうが、「神ってる」と思った支援者もきっと多かっただろう。翁長氏の「弔い合戦」を掲げる玉城陣営としては、支援者を奮い立たせる願ってもない「天の演出」ではなかったか。
 ただ、集会をのぞいてみて気になったことが一つある。2年前に取材した宜野湾市長選でしきりに耳にした「オール沖縄」というワードがほとんど聞かれなかったことだ。言わずもがな、オール沖縄は前回知事選で翁長氏を組織的に支援した運動体である。むろん玉城氏も支援を受けている。共産党や社民党、労働組合や平和団体などでつくるオール沖縄は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対し、推進派の政府与党とは真っ向から対立する。今回の知事選も基地移設が最大の争点だが、実は玉城氏の公約集にも「オール沖縄」の文字がない。
 玉城陣営を支えるオール沖縄が、なぜ前面に出てこないのか。その理由は、翁長氏在任中から続く求心力低下にある。筆者も取材した宜野湾市長選や名護市長選など基地移設が争点となった重要選挙で、翁長氏らが支援した候補は次々と落選した。県内有数の企業グループ「金秀」や地場ホテル大手の「かりゆしグループ」といった企業が離脱し、今や保守系政治家もほとんど残っていない。沖縄を一つにまとめる「オール」が目的でありながら、実態は「革新」だけの勢力なのである。
 「オール沖縄に翁長さんを支える保守がいなかったことは残念です。もともと翁長さんは『超保守』でした。知事時代は、三役にも外郭団体にも革新を一人も入れず、最期まで後継候補の指名もしなかった。知事の椅子を革新には譲りたくなかったんですね。玉城氏が後継者になったのは、いわば消去法の最たるものですよ」
 1998年から2期、沖縄県知事を務めた稲嶺恵一氏は、翁長氏の印象を「選挙の強い人」と語った。事実、稲嶺氏の選挙戦では、翁長氏が保守勢力のまとめ役として奔走し、勝利に導いた。「本土の人は誤解しているかもしれないが、翁長さんは死ぬまで沖縄の保守政治家を貫いたんです」
玉城デニー候補=2018年9月23日、沖縄県那覇市
 では、なぜ保守はオール沖縄から離れたのか。この答えの一つとして、自民党の照屋守之県議は、6年前にあったオール沖縄の「裏切り」を指摘した。2012年、オスプレイ配備に反対する超党派の県民大会で自身が事務局次長を務めていた当時を振り返り、こう語気を強めた。
 「当時、フロリダやモロッコでオスプレイの事故が起きたため、安全性が確保できないものを沖縄に持ち込むなというのは、県民共通の願いだったんです。でも、革新は勝手に建白書を作り、辺野古移設反対を盛り込んだ。しかも、選挙では使わないよう確認していたのに、彼らは今でもことあるごとに選挙で利用している」
 オール沖縄が県民に「反日」「反米」「反自民」といった県民感情を煽るやり方にも「不信感がある」と話した照屋氏は、こうも続けた。「『ウチナーンチュ、ウシェーティナイビランドー』という翁長氏の言葉が今また、選挙で使われています。『沖縄の人をバカにするな、ないがしろにするな』という意味なのですが、いったい誰が沖縄県民をバカにしているのでしょうか」。
 9月25日、翁長氏の父、助静氏が建てた沖縄戦の戦没者をまつる魂魄の塔と、ひめゆりの塔を訪れた。翁長氏が生前、沖縄の壮絶な歴史と県民の心情に寄り添い、知事として辺野古移設反対を訴え続けた気持ちも、この地にくれば何となく分かる気がする。かつて、翁長氏は朝日新聞のインタビューで「革新勢力は、全身全霊を運動に費やせば満足できる。でも政治は結果だ」と革新の限界を語ったことがある。だが、その翁長氏も結果を残すことができなかった。基地によって分断した沖縄を一つにするため、翁長氏が訴え続けた「イデオロギーよりアイデンティティー」。沖縄の保守と革新の間にある溝はあまりに深い。
 稲嶺氏は言う。「革新は、対立によって際立つ。対立がなかったら、革新は消えていくんです。だから、ある意味、翁長さんは『オール沖縄』によって革新のイデオロギーを封じてしまった。沖縄の革新陣営は、翁長さんにくっついたことで、自らの首を絞めたとも言えるでしょう」(文と写真/iRONNA編集部、川畑希望)

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