ゴーンはそんなに悪いのか

ゴーンはそんなに悪いのか

日産自動車会長、カルロス・ゴーン氏の電撃逮捕の余波が収まらない。日本のメディアはゴーン氏の「負の側面」を追うことに躍起だが、一時は経営危機にあった日産を再建した彼の経営手腕を評価する声も根強い。ゴーン氏はそんなに悪いのか。

日産自動車会長、カルロス・ゴーン氏の電撃逮捕の余波が収まらない。日本のメディアはゴーン氏の「負の側面」を追うことに躍起だが、一時は経営危機にあった日産を再建した彼の経営手腕を評価する声も根強い。ゴーン氏はそんなに悪いのか。

「世界一への執着」

社外取締役も同罪?

長期政権の弊害

実刑も十分あり得る

支配か、独立か

 4月1日付で西川広人・副会長兼共同最高経営責任者(CEO)が社長兼CEOへ昇格する人事を日産は発表した。カルロス・ゴーン氏は社長兼CEOを返上し代表取締役会長に就く。三菱自動車と電撃的な資本提携の結果、ルノー・日産アライアンスは、宿敵のトヨタ自動車と独フォルクスワーゲン(VW)を追い抜き、自動車業界のトップレベルの規模を狙えるところまできた。この人事の狙いは、三菱自の取り組みも含め、巨大なアライアンス体制をマネジメントできる、次のステップを踏んだと理解すべきだ。
 さらに、日産の経営面でもいい節目である。現行の中期経営計画「日産パワー88」はこの3月で終了する。次期中期経営計画が5年程度の期間とすれば、その終わりをゴーン社長で見届けるには長期政権過ぎるだろう。新経営トップが計画立案に直接関わり、その結果責任を取るという意味でも、望むべき節目にあったのではないか。
横浜市の日産自動車グローバル本社=2018年11月(宮崎瑞穂撮影)
 日本人社長の西川体制となって、日産の経営方向が大きく変わるのだろうか。この機会にルノー支配を脱し、日産の独立を目指すべきだと国内業界関係者の声もあるが、それはまずありえない話だろう。西川社長兼CEOの経営体制下においても、日産の経営方針が大きく変化するものではない。ルノー・日産グループのより強固なアライアンスを推進するはずである。
 この人事は、ゴーン氏が主導するルノー・日産のアライアンスのより強固なマネジメント体制を目指したものである。ゴーン氏がグループ経営の強いリーダーであることには変わりはない。確かに、ゴーン次期会長は、日産自動車への直接的な経営関与は減少するだろう。そうは言っても、ルノー、日産、三菱のアライアンスを基にしたグループ経営の強いリーダーとして、アライアンスシナジーを追求することに変化はないと見るべきだ。
 欧州の業界関係者には、ルノーと日産の経営統合も含めた再編シナリオに強い関心がある。先日、フランス政府が保有株を削減する場合、ゴーン氏は「フランス政府が手を引き次第、あらゆる可能性が開かれる。それほど長い時間はかからないといえるだろう」とコメントを発した。フランス政府が保有するルノー株を売却するなら、両社の経営統合へ道を切り開いたとの見方もある。
 しかし、恐らく大きな影響はないのではないか。ゴーン氏がルノー・日産アライアンスを率い、世界トップの自動車グループへ邁進(まいしん)する限り、現在のルノーが日産の44%を保有する資本バランスに立ったグループガバナンスを継続する公算が大きいと考えるからだ。
 ゴーン氏の日産での経営成果に疑うところはない。ゴーン氏は日産を完全に復活させ、最も成功した国際的な企業アライアンスに育て上げた。日本的商習慣のタブーに切り込み、ゴーン氏は日産だけではなく、日本をも変えたと言って過言ではないだろう。この功績を高く評価したい。
 しかし課題も残したといえる。日産経営は結果重視のゴーン氏の経営の結果、短期志向が強く、また台数と収益の成長両立を欲張ることも多い。業績は不安定というイメージが定着している。ルノー・日産アライアンスでゴーン氏が両社のCEOを兼ねるガバナンス構造の不透明さも問題であった。ゴーン氏が日産の社長を退いても、ゴーン氏の日産経営への影響力に変化はないとすれば、ガバナンス構造のゆがみを解消できるとは言い切れない。
 これらの課題を克服し、持続可能な成功をもたらす新たなステージへ日産を導く意味で、新社長の西川氏の責任は非常に重いものとなるだろう。(自動車アナリスト・中西孝樹 SankeiBiz 2017.02.27)

経営統合を画策?

「通常運転」に戻れるか

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