監視社会はどこまで進んだか
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監視社会はどこまで進んだか

東京・渋谷のクレイジーハロウィーン事件で、警視庁が男4人を逮捕した。この捜査の決め手になったのは防犯カメラ。250台のカメラを徹底解析し、現場から容疑者の自宅まで特定したというのだから驚きである。犯罪抑止への効果は絶大だが、行き過ぎた「監視」には一抹の不安もある。監視社会はどこまで進んだか。

東京・渋谷のクレイジーハロウィーン事件で、警視庁が男4人を逮捕した。この捜査の決め手になったのは防犯カメラ。250台のカメラを徹底解析し、現場から容疑者の自宅まで特定したというのだから驚きである。犯罪抑止への効果は絶大だが、行き過ぎた「監視」には一抹の不安もある。監視社会はどこまで進んだか。

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痴漢は理不尽なれど…

東京・渋谷のセンター街で、
横転させられた軽トラックの上に乗る若者
=2018年10月28日午前1時ごろ
(ゆうきゆう・ゆうメンタルクリニック院長提供)
 逮捕の決め手は250台に及ぶ防犯カメラ映像の解析だった―。先日、こんなニュースが目に留まった。10月28日未明の東京・渋谷で、集団が軽トラックを横転させた「クレイジーハロウィーン」事件に関与した男4人が逮捕された。あの喧騒の中で、犯人の特定は難しいはずだが、警視庁は街頭や店舗などに設置されている防犯カメラ映像を丹念に調べ、解決に導いたという。筆者は大学でも防犯カメラについて議論していた矢先だっただけに衝撃を受けた。
 そもそも筆者が防犯カメラについて関心を持ったきっかけは、普段通学に利用しているJR埼京線の電車内で見た「防犯カメラ作動中」のステッカーだった。埼京線といえば、ラッシュ時の乗客が多く、首都圏屈指の痴漢多発路線としても知られる。「この電車は防犯カメラで見張られている」。ステッカーを見て少しほっとしたのを覚えている。
 かくいう筆者自身もいつ、痴漢被害に遭うか分からない。なぜ、女性が電車に乗るだけでこんな不安を感じなければならないのか。あまりに理不尽な話である。では、実際の痴漢被害はどれくらいあるのか。法務省の犯罪白書を調べてみると、平成26年の迷惑防止条例違反の痴漢行為の認知件数(電車外も含む)は3493件。ただ、この件数はあくまで認知件数であり、被害を受けて泣き寝入りしているケースを含めれば、氷山の一角に過ぎない。
 ゆえに今後、首都圏を走る電車のほぼ全てに防犯カメラが設置される見通しだが、何も痴漢抑制に役立つだけではない。今年6月には走行中の新幹線でナタを持った男が乗客の男女3人を殺傷した痛ましい事件が起きた。防犯カメラの設置が広く周知されれば、犯罪抑止につながることは間違いないだろう。むろん痴漢の冤罪をなくす切り札になるかもしれない。
 防犯カメラの設置がもっと増えれば、治安は良くなるばかりの気もするが、実はこの件について大学で議論した際、「視点を変えれば私たちは常に監視されているに等しい」と指摘され、ハッとした。よくよく考えれば、防犯カメラで撮影された映像が必ずしも「防犯」だけに使用される保証などどこにもない。渋谷は日本有数の繁華街であり、今後も防犯カメラの設置が増え続ければ、それは文字通り「監視カメラ」になってしまうのではないか。
 プライバシーの侵害を声高に懸念する声もある。今は法的に問題がないとしても、社会的な合意がどこまで取れているのか、一抹の不安がある。防犯カメラの設置効果は認めつつも、やはり「監視社会」へのデメリットも考えるべきではないのか。議論の一つの糧として、今回のテーマを提起したい。(専修大学3年、大江茉那)
 ※本テーマは、専修大文学部人文・ジャーナリズム学科、植村八潮教授のご協力を賜り、ゼミ生からの問題提起を受けてiRONNA編集部と共同制作しています。

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